JP5097499B2 - 低合金耐熱鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents

低合金耐熱鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ Download PDF

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本発明は、原子力、火力発電、石油精製等の各種プラントに使用される低合金耐熱鋼の溶接材料において、BaFを含んで靭性が良好な溶接金属を得ることができ、全姿勢での溶接作業性が優れた低合金耐熱鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤに関する。
低合金耐熱鋼用の溶接材料として、TiOを主要フラックスとするチタニヤ系のフラックス入りワイヤが知られているが(特許文献1)、このチタニヤ系フラックス入りワイヤは全姿勢における溶接性は良好であるが、溶接金属中の酸素量が他の施工法に比べて高く、必ずしも靭性は良好とはいえなかった。
一方、特許文献2には、Ba化合物を含有する亜鉛メッキ鋼板溶接用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤが記載されている。このBa化合物を含有するフラックス入りワイヤは、塩基性フラックス入りワイヤである。
特開2004−58086号公報 特許第3511366号公報
しかしながら、これらの特許文献1及び2に記載された従来技術においては、以下に示す問題点がある。即ち、ガスシールドアーク溶接チタニヤ系フラックス入りワイヤは、全姿勢溶接において優れた溶接作業性及び能率性を有しているが、造滓剤としてTiO等の酸化物をワイヤ中に多量に含有し、スラグの塩基度も酸性である。このため、溶接金属の酸素量は、一般に700〜900質量ppmと高く、靭性面からは劣っていた。一方、塩基性ワイヤは溶着金属の酸素量が比較的低く、良好な靭性が得られるものの、全姿勢溶接の作業性がチタニヤ系フラックス入りワイヤに比較すると格段に劣っている。
塩基性フラックス入りワイヤは弗化物の添加量を高くしているが、そうすると溶接ヒューム及びスパッタの発生量が多くなることに加え、CaF及びBaF等を使用することにより、スラグの塩基度が上昇して、立向姿勢での溶接性が極端に劣化するという問題点がある。このため、この従来技術は全姿勢溶接への適用が困難であった。
また、特許文献2に記載の塩基性フラックス入りワイヤは、正極性(ワイヤをマイナスとして溶接)にて溶接するものである。このワイヤ正極性の場合は、全姿勢溶接が可能になるが、正極性の特徴である溶融速度が遅いという問題点を含むものである。このため、ワイヤ逆極性(ワイヤをプラス)での溶接が可能な塩基性フラックス入りワイヤの開発が望まれていた。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、低合金耐熱鋼用の溶接材料において、全姿勢において靭性及び脆化特性が良好な溶接金属を得ることができ、ワイヤ逆極性で高能率溶接が可能なガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを提供することを目的とする。
本発明に係る低合金耐熱鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、鋼製外皮にフラックスを充填してなる直流逆極性にて使用する低合金耐熱鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤであって、鋼製外皮及びフラックスからなるワイヤ全体で、ワイヤ全質量に対して、
BaF:1.0乃至5.0質量%、
Al:0.3乃至3.0質量%、
C:0.04乃至0.15質量%、
N:0.005乃至0.040質量%、
Cr:1.0乃至2.7質量%、
Mo:0.4乃至1.3量%、
Si:0.05乃至0.5質量%、
Mn:0.5乃至1.5質量%、及び
Fe:85乃至95質量%を含有し、
Ni:0.1質量%以下に規制することを特徴とする。
この低合金耐熱鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、更に、ワイヤ全質量に対して、フラックス中に、Mgを0.1乃至0.5質量%含有することが好ましい。
また、ワイヤ全質量に対して、フラックス中に、鉄酸化物(FeO換算)、Mn酸化物(MnO換算)、Zr酸化物(ZrO換算)及びMg酸化物(MgO換算)からなる群から選択された1種又は2種以上を総計で0.5乃至2.5質量%含有することが好ましい。
更に、Al、C及びNの含有量を夫々[Al]、[C]、[N]とすると、
3.0≦[Al]/([C]+[N])≦15.0
の関係を満足することが好ましい。
本発明によれば、塩基性フラックス原料であるBaFを含むことにより、靭性が優れた溶接金属を得ることができ、また、スパッタ及びヒューム等の溶接作業性も優れている。しかも、全姿勢溶接の場合にも、溶接金属の垂れ等の問題が生じず、また、粗大δフェライトの析出が抑制されて、溶接金属の強度低下も防止することができる。
以下、本発明について更に詳細に説明する。低合金耐熱鋼用の溶接材料において、TiOを主要フラックスとするチタニヤ系のフラックス入りワイヤは全姿勢における溶接性は良好であるが、溶接金属中の酸素量が他の施工法に比べて高く、必ずしも靭性は良好とはいえなかった。このため、熱処理後の靭性及び脆化特性等の信頼性が高いことが要求されるリアクターなどの分野には、チタニヤ系のフラックス入りワイヤの適用は制限される。このため、チタニヤ系フラックス入りワイヤは、あまり広く適用されていないのが実情であった。
これに対し、塩基性フラックス原料又は弗化物をフラックス成分とするフラックス入りワイヤは、酸素量が低く、靭性が良好である。しかし、これらの塩基性フラックス原料及び弗化物はスパッタ及びヒューム等の溶接作業性を劣化させる傾向があり、適用が難しかった。また、立向溶接及び上向溶接等の全姿勢での溶接は作業性が悪く、困難であった。しかし、本発明者等が実験研究した結果、塩基性フラックス原料ではあるものの、Ba化合物は比較的低温で分解することと、Baのイオン化エネルギが比較的小さいため、アーク安定性を阻害する影響が小さいことが判明した。なかでも、特にBaFは他の弗化物に比べてスパッタ及びヒューム等の溶接作業性が優れている傾向を示した。
しかし、BaFを含有するフラックス入りワイヤであっても、全姿勢溶接の場合には、溶接金属の垂れ等の問題が生じた。
そこで、本発明者等が溶接金属の垂れを防止すべく種々検討した結果、BaFを含有するフラックス入りワイヤの場合、良好なアーク安定性を維持しつつ、溶接金属の垂れを防止するためには、溶接金属中にAlを添加することが好ましいことを見出した。
しかし、Alはフェライト生成元素であるため、溶接金属中に粗大なδフェライトを析出させやすく、この粗大δフェライトが析出すると、溶接金属の強度低下が生じてしまうという問題点がある。
このため、γフェライトの生成元素を投入し、δフェライトの析出を防止する必要がある。γ生成のための組織制御に用いる元素として、Ni、Mn、C、及びN等があることは公知である。
しかし、Ni及びMnは焼き戻し脆化を促進させる原因となるため、必要以上の添加は好ましくない。これは、Mn及びNiはオーステナイト結晶粒を粗大化させて、変態後の旧オーステナイト結晶粒界からの亀裂伝播エネルギを小さくして、破断を容易化するためである。更に、Mnは本発明のような塩基性フラックス入りワイヤにおいては、全姿勢、特に、立向上進溶接及び上向姿勢での作業性を劣化させる。これは、Mn酸化物はスラグ形成成分のうち、比較的融点が低く、溶接中の温度域では粘度が低く、流動性が高いことに起因する。
そこで、本発明においては、C及びNの添加によりフェライトの析出を抑制した。特に、Nはγ生成化元素であるだけでなく、窒化物及びMXを析出して、ピニング効果によりフェライトバンドの成長を抑制する効果があり、低合金耐熱鋼においては、特徴的にベイナイト組織及びマルテンサイト組織の安定化に対して有効な添加元素である。
従って、本発明のフラックス入りワイヤは、特に、BaF:1.0乃至5.0質量%、Al:0.3乃至3.0質量%、C:0.04乃至0.15質量%、N:0.005乃至0.040質量%を含有することに特徴がある。
以下、本発明の各成分の添加理由及び組成限定理由について説明する。
「BaF:1.0乃至5.0質量%」
塩基性フラックス原料及び各種弗化物は、フラックスに含まれて溶接金属中に入り、高いスラグ塩基度のゆえに、スラグメタル反応により溶接金属の酸素量を低減する。また、弗化物はアーク雰囲気で解離し、ガス化した弗素ガスが、弗素分圧を上げ、相対的な酸素分圧を下げるため、より一層溶接金属の酸素量低減に効果がある。また、アーク中で溶融金属の撹拌を促進する等により、溶融金属からのスラグの浮上・分離を促進することからも、溶接金属の酸素量を低減する作用を有する。
この溶接金属の低酸素化のためには、BaFの添加量は1.0質量%以上とする必要がある。BaFの添加量が1.0質量%よりも少ないと、その効果が無く、逆にBaFの添加量が5.0質量%よりも多いと、BaFによる酸素量の低減効果は既に飽和状態にあるうえ、アーク安定性を損ない、ワイヤ設計上のメリットがない。従って、BaFは1.0乃至5.0質量%とする。より好ましくは、BaFは1.5乃至3.5質量%である。
「Al:0.3乃至3.0質量%」
一般に、Alは融点が低く、イオン化エネルギも小さいため、アーク安定性を高めることは知られているが、本発明者等の研究によれば、特に、BaFとAlの複合添加は、アーク安定性を著しく向上させる効果がある。また、Alは溶接金属の粘性を向上させ、立向溶接姿勢での垂れを防止するうえでも顕著な効果がある。それらの効果はAl含有量が0.3質量%よりも少ないと不十分であるが、逆に3.0質量%を超えると、溶接金属の粘性が高くなり過ぎて、美麗な溶接ビードが得られなくなる。また、Al含有量が3.0質量%を超えると、溶接金属性能の靭性及び高温特性等の機械的性能も、1.25Cr−0.5Mo系及び2.25Cr−1Mo系低合金鋼として劣悪になってしまう。
従って、Alは0.3乃至3.0質量%添加することが必要である。より好ましくは、Alの添加量は0.5乃至1.5質量%である。なお、Alの添加は、金属外皮、又はフラックス中に、金属Al又はAl−Mg合金等のAl化合物の形で投入する。
「C:0.04乃至0.15質量%」
Cは、焼入れ性を高めて溶接金属の引張強度と靭性を向上させる効果を有し、低合金耐熱鋼の溶接金属が低合金耐熱鋼としての所定の性能を得るためには必須の元素である。本発明においては、この効果に加えて、Cは、上述のAlの添加によりδフェライトが析出しやすくなることを抑制するためのγ生成元素としての作用効果がある。このδフェライト抑制のためのγ生成元素としての作用のためには、Cは少なくともワイヤ中に0.04質量%以上含有されることが必要である。しかしながら、他方、Cの0.15質量%を超える添加は、溶接金属に焼入れ過剰及びMAの析出を引き起こす原因となり、溶接金属の引張強度が過度となり、靭性が著しく低下するうえ、高温割れを引き起こす場合もある。そのため、Cは0.04乃至0.15質量%とすることが必要である。
なお、Cは金属外皮又はフラックスのいずれか一方又は両方から添加する。フラックスから添加する場合は、グラファイト、クロムカーバイト、Si−C、高C−Fe−Mn、高C−Fe−Cr等の単体又は合金類を使用する。
「N:0.005乃至0.040質量%」
Nは、溶接金属中で窒化物となって析出することにより、フェライトバンドを抑制する効果を有する。また、本発明においては、フェライトバンドの抑制に加えて、Nは、上述のAlの添加によりδフェライトが析出することを抑制するためのγ生成元素としての作用効果がある。
このため、Nは少なくともワイヤ中に0.005質量%以上添加されることが必要である。一方、Nを0.040質量%を超えて添加すると、固溶Nが増加して靭性が劣化するうえ、過剰なNがブローホール生成及びスラグ剥離性劣化の原因となる。以上の理由からNは0.005乃至0.040質量%とする。
なお、Nをフラックスから添加する場合、N−Cr、N−Si、N−Ti等の金属窒化物を使用する。
「Cr:1.0乃至2.7質量%、Mo:0.4乃至1.3質量%」
Cr及びMoは、低合金耐熱鋼としての所定の機械的性能及び耐熱性を付与するために、Cr:1.0乃至2.7質量%、Mo:0.4乃至1.3質量%の範囲で添加することが必要である。JIS Z3318においては、YF1CM−Gに分類される低合金鋼用フラックス入りワイヤ(その溶着金属成分が、Cr:1.00〜1.50質量%及びMo:0.40〜0.65質量%)、YF2CM−Gに分類される低合金鋼用フラックス入りワイヤ(その溶着金属成分がCr:2.00〜2.50質量%及びMo:0.90〜1.20質量%)を本発明の対象とする。なお、AWS A5.29も、同様のCr及びMoの含有量範囲を有する。そして、この範囲に溶着金属のCr及びMoを入れるために、歩留を考慮して、本発明のフラックス入りワイヤは、Cr:1.0乃至2.7質量%及びMo:0.4乃至1.3質量%とする。
「Fe:85乃至95質量%」
Feは、フラックス中のFeと、鋼製外皮中のFeとの総和で規定する。Feは、フラックス中においては、鉄粉、Fe−Mn、Fe−Si、Fe−Al等の合金鉄の形で添加される。従来より、これらの鉄粉又は合金鉄が鉄分によって溶接金属量を増加させる効果があり、施工能率を向上させることが知られている。また、鉄粉及び合金鉄粉は他のフラックス成分と混合されてフラックス全体の流動性を大きく改善する。本発明では、フラックス成分として用いるBaFが著しくフラックスの流動性を阻害するため、特に鉄粉及び合金鉄粉の添加により、上述の溶接金属量増大作用を得ることにより、優れた溶接性が得られる。このため、施工能率とフラックス流動性の観点から、ワイヤ全質量あたり、Feは85質量%以上添加される必要がある。一方、Feが95質量%を超えると、上述の種々のフラックス成分を十分に添加することができなくなる。このため、Feの添加量は、85乃至95質量%とする。
「Si:0.05乃至0.5質量%」
Siは、フェライト形成元素であることと、焼き戻し脆化の促進元素であるために、低合金耐熱鋼の分野では0.5質量%を超える積極添加は好ましくない。しかし、Siは母材と溶接金属とのなじみ、いわゆるビードのなじみを良くするのに有効な成分である。鋼製外皮及びフラックス中のSiの総和が0.05質量%未満ではそのような効果は十分発揮されない。従って、Si量は0.05乃至0.5質量%の範囲とする。Siは、フラックス中のSiと鋼製外皮中のSiとの総和で規定し、フラックスからは、Fe−Si、Fe−Si−Zrなどの合金形態で添加できる。
「Mn:0.5乃至1.5質量%」
Mnは、γ形成元素であり、特に本発明のようなAlを大量に含んだ溶接金属での靭性を確保するのに有効な成分である。しかし、ワイヤ全質量中のMn量の総和が0.5質量%未満ではそのような効果が十分発揮されず、一方、Mnが1.5質量%を超えると、溶接金属が熱処理過程において焼き戻し脆化を生じて、実用上の適用は難しくなる。従って、Mn量は0.5乃至1.5質量%の範囲とする。Mnはフラックス中のMnと鋼製外皮中のMnとの総和で規定し、フラックスからは金属Mnの形のほか、Fe−Mn、Fe−Si−Mnなどの合金形態で添加できる。
「Ni:0.1質量%以下」
Niは、γ形成元素であり、本発明のようなAlを大量に含んだ溶接金属での靭性を確保するのに有効な成分である。しかし、高温での操業に供される低合金耐熱鋼の場合には、Niは焼き戻し脆化を促進してしまう作用がある。このため、Niの添加はワイヤ全質量中のNi量の総和として0.1質量%以下に規制する。
「Mg:0.1乃至0.5質量%」
Mgは酸素との親和力が高い強脱酸剤であり、溶接金属の酸素量を低減し、粘性を上昇させる。また、溶接金属の低酸素化は靭性を確保するためにも有効である。さらに、生成されるMg酸化物が高融点であることから溶接ビードを被包して、全姿勢での溶接作業性を向上させる。そのため、Mgは必要に応じて添加されるが、このMgの添加はワイヤ全質量中のMg量の総和として0.1質量%以上であることが必要である。しかし、Mg含有量が0.5質量%を超えた場合は、溶接金属の粘性を過度に上昇させてしまって溶接ビードが広がっていかず、結果として美麗な溶接部が得られなくなってしまう上、スパッタの大量発生を生じて溶接材料としては不適切となる。従って、Mg含有量は0.1乃至0.5質量%とする。Mgはフラックスから、金属Mgの形のほか、Al−Mg、Fe−Si−Mgなどの合金形態で添加できる。
「酸化物:0.5乃至2.5質量%」
ワイヤに含まれる酸化物は、溶接金属中で核生成サイトとして作用し、結晶粒の微細化に効果があり、As SRでの靭性はもとより、焼き戻し脆化の防止に効果がある。このため、酸化物は、必要に応じて、添加される。本発明では、他の必須添加フラックス元素との兼ね合いから、溶接作業性をあまり劣化させずに添加できる酸化物としては、鉄酸化物、Mn酸化物、Zr酸化物又はMg酸化物がある。そして、その効果が発揮されるのは、ワイヤ全質量に対して、1種又は2種以上の総計で0.5質量%以上である。一方、酸化物の2.5質量%以上の添加は、溶接時のスパッタの多発等の作業性の劣化を生じさせることと、溶接金属中の介在物量の増加による靭性低下を生じるため、避ける必要がある。よって、本発明ではフラックス中に鉄酸化物(FeO換算)、Mn酸化物(MnO換算)、Zr酸化物(ZrO2換算)及びMg酸化物(MgO換算)からなる群から選択された1種又は2種以上の酸化物を総計で0.5乃至2.5質量%添加する。
「[Al]/([C]+[N]):3.0乃至15.0」
Alを含んだ溶接金属で、フェライトバンド及びδフェライトの析出を抑制するためには、上述してきた如く、γ生成元素を添加する必要がある。本発明では、上述の如く、γ生成元素としてCとNが必要であるが、溶接金属中でのAlとの添加バランスを考慮することにより、その改善効果はより著しくなっていく。そのために、Al、C、Nのバランスとして、各元素の添加量を[]で表した場合に、[Al]/([C]+[N])を3.0乃至15.0とすることが好ましい。本発明者等は、[C]と[N]の総和に対して[Al]の比が3.0未満の場合、CとNの添加量が多すぎて強度が高くなりすぎ、良好な靭性が得られないことを見出した。また、この比が15.0を超えると、フェライト抑制の効果が現れない。よって、ワイヤ全質量による計算で、[Al]/([C]+[N]):3.0乃至15.0とすることが好ましい。
なお、本発明のフラックス入りワイヤは、直流逆極性にて使用する。直流逆極性とは、ワイヤをプラス極として溶接するものである。
以下、本発明の実施例及び比較例の比較試験により、本発明の効果について実証する。下記表1は、本試験において使用したフラックス入りワイヤの鋼製外皮の組成を示す。また、下記表2は、このフラックス入りワイヤの組成(ワイヤ全質量あたり)を示す。ワイヤ径は全て1.2mmである。
Figure 0005097499
Figure 0005097499
Figure 0005097499
Figure 0005097499
tr.は分析下限値未満を示す。
これらのワイヤに対し、「溶接作業性の評価」、「溶接後熱処理PWHT(Post Weld Heat Treatment)(690℃×1時間加熱、炉冷)後の溶接金属の引張試験と衝撃試験」、「溶着金属の脆化特性」、「δフェライト及びフェライトバンド発生有無の確認」に関する試験を実施した。なお、「δフェライト及びフェライトバンド発生有無の確認」においては、PWHTを690℃×28時間とした。
試験板鋼種は、ASTM A387 Gr.11及びASTM A387 Gr.22を使用した。図1はこれらの試験板の開先形状を示す。下記表3は、この試験板を下向き溶接したときの溶接条件であり、下記表4は、立向すみ肉溶接したときの溶接条件である。そして、溶接作業性として、溶接時のアーク安定性、スパッタ発生量、及びビード形状を官能評価した。なお、実施例比較例のシールドガス組成は、ワイヤNo.40〜42は、CO100%、それ以外は、Ar80%−CO20%を使用した。なお、シールドガスとしては、このほか、ArガスとCOガスとの比率を変化させたものと、Arガスの代わりに、不活性ガスとして、Heガスを使用したもの等が適用できる。
Figure 0005097499
Figure 0005097499
また、溶接金属を作成後、各種PWHTを施し、溶接金属の引張試験及び衝撃試験(n=3)を実施した。この溶接金属の引張試験及び衝撃試験については、下記表5に規定した性能が得られた場合に合格と評価した。
Figure 0005097499
δフェライト及びフェライトバンドの発生有無の確認は次のように行った。すなわち、溶接金属の断面ミクロ組織観察用試験片を、PWHT後の試験板溶接金属部分から溶接線方向に等間隔で6個採取して、研磨・エッチングの後、光学顕微鏡にて観察を行い、その有無を確認した。評価は、6断面中にδフェライトやフェライトバンドが認められないものを合格、一方、1断面でもδフェライトやフェライトバンドが認められたものを不合格とした。
下記表6は、以上の試験により得られた各ワイヤ性能の評価結果を示す。
Figure 0005097499
Figure 0005097499
この表6において、アーク安定性、スパッタ発生量、ビード形状、スラグ剥離性及び耐ブローホール性は、○が良好、×が不良である。フェライトバンド及びδフェライトの析出は、それらが発生しなかった場合を○、発生した場合を×とした。引張性能については、表5に示す引張強さの範囲内であれば○、表5の引張強さの範囲から外れるものを×とした。なお、表5に示す引張強さの範囲内でその上下限値に近いもの(10MPa以内)を△とした。衝撃性能は、n=3の試験片の平均値が55J以上であって、39J未満の試験片がない場合を○、n=3の試験片の平均値が55J以上であるが、39J未満の試験片もある場合を△、n=3の試験片の平均値が55J未満である場合を×とした。
この表2及び表6から明らかなように、本発明の範囲に入る実施例ワイヤは、アーク安定性、スパッタ発生量、ビード形状、スラグ剥離性及び耐ブローホール性が全て良好であった。また、実施例ワイヤは、フェライトバンド及びδフェライトの析出が生じず、衝撃性能及び引張性能も優れていた。
これに対し、本発明の範囲から外れる比較例ワイヤは、上記特性のうち、少なくともいずれかが劣るものであった。
本発明は、原子力、火力発電、石油精製等の各種プラントに使用される低合金耐熱鋼の溶接材料として、有効である。
本発明の実施例比較例における開先形状及び溶接金属を示す断面図である。

Claims (4)

  1. 鋼製外皮にフラックスを充填してなる直流逆極性にて使用する低合金耐熱鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤであって、鋼製外皮及びフラックスからなるワイヤ全体で、ワイヤ全質量に対して、
    BaF:1.0乃至5.0質量%、
    Al:0.3乃至3.0質量%、
    C:0.04乃至0.15質量%、
    N:0.005乃至0.040質量%、
    Cr:1.0乃至2.7質量%、
    Mo:0.4乃至1.3量%、
    Si:0.05乃至0.5質量%、
    Mn:0.5乃至1.5質量%、及び
    Fe:85乃至95質量%を含有し、
    Ni:0.1質量%以下に規制することを特徴とする低合金耐熱鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  2. ワイヤ全質量に対して、フラックス中に、Mgを0.1乃至0.5質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の低合金耐熱鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  3. ワイヤ全質量に対して、フラックス中に、鉄酸化物(FeO換算)、Mn酸化物(MnO換算)、Zr酸化物(ZrO換算)及びMg酸化物(MgO換算)からなる群から選択された1種又は2種以上を総計で0.5乃至2.5質量%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の低合金耐熱鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  4. Al、C及びNの含有量を夫々[Al]、[C]、[N]とすると、
    3.0≦[Al]/([C]+[N])≦15.0
    の関係を満足することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の低合金耐熱鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
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