JP6874425B2 - ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ及び溶接継手の製造方法 - Google Patents
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X=[Na3AlF6]+[NaF]+[MgF2]+1.5×([K2ZrF6])+3.5×([CaF2])・・・(式1)
ただし、前記式1に記載の括弧が付された化学式は、前記化学式に係る前記弗化物の、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%での含有量を表し、含有されない前記弗化物の含有量は0%とみなす。
(2)上記(1)に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、さらに、前記フラックス入りワイヤの前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く前記化学成分が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で、前記化学成分に含まれるFeの一部に代えて、V:0.5000%以下、Nb:0.50%以下、Ti:0.500%以下、及びTa:0.50%以下からなる群から選択される1種以上を含有してもよい。
(3)上記(1)又は(2)に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、さらに、前記フラックス入りワイヤの前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く前記化学成分が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で、前記化学成分に含まれるFeの一部に代えて、Cu:1.00%以下、Ni:1.0%以下、Co:5.0000%以下、及びB:0.0200%以下からなる群から選択される1種以上を含有してもよい。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、さらに、前記フラックス入りワイヤの前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く前記化学成分が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で、前記化学成分に含まれるFeの一部に代えて、W:4.0000%以下を含有してもよい。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、さらに、前記フラックス入りワイヤの前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く前記化学成分が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で、前記化学成分に含まれるFeの一部に代えて、Ca:0.500%以下、REM:0.0100%以下、Mg:0.80%以下、及びAl:0.400%以下からなる群から選択される1種以上を含有してもよい。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、前記フラックスが、さらに、CaCO3、Na2CO3、及びMgCO3からなる群から選択される一種以上の前記炭酸塩を、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で合計2.00%以下含有してもよい。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、前記フラックスの前記酸化物に含まれるTi酸化物の含有量が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.10%以上であってもよい。
(8)上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、前記鋼製外皮がスリット状の隙間のない形状であってもよい。
(9)上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、前記鋼製外皮がスリット状の隙間を有する形状であってもよい。
(10)上記(1)〜(9)のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、前記鋼製外皮の表面にパーフルオロポリエーテル油を有してもよい。
(11)本発明の別の態様に係る溶接継手の製造方法は、上記(1)〜(10)のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いて、鋼材を溶接する。
本実施形態に係るガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、鋼製外皮と、鋼製外皮に包まれたフラックスとを有する。鋼製外皮の内部に充填されるフラックスは、弗化物、酸化物、及び任意に含まれ得る炭酸塩等のスラグ成分と、金属粉及び合金粉等の合金成分とを含む。また、充填率の調整のために、フラックスは鉄粉を含む場合もある。最初に、ワイヤの鋼製外皮の内部に挿入されるスラグ成分について説明する。
本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、CaF2、MgF2、Na3AlF6、NaF、及びK2ZrF6からなる群から選択される一種以上の弗化物を、フラックス入りワイヤの全質量に対するF換算値合計で0.11%以上含有する。フラックス入りワイヤの全質量に対するF換算値とは、弗化物に含まれる弗素(F)の量を、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で示すものである。例えば、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%でn%のCaF2がフラックス入りワイヤに含まれる場合、CaF2のF換算値は以下の式2によって求められる。
(CaF2のF換算値)=n×(19.00×2/78.08)・・・(式2)
上の式2中の「19.00」は、Fの原子量であり、「2」は、1個のCaF2に含まれるF原子の個数であり、「78.08」は、CaF2の分子量である。CaF2以外の弗化物に関しても、同様にF換算値が算出できる。フラックス中に複数種類の弗化物が含まれる場合、各弗化物のF換算値の合計値が、フラックスに含まれる弗化物のF換算値とみなされる。
CaF2は、MgF2、Na3AlF6、NaF、及びK2ZrF6よりも、100%CO2ガスを使用するガスシールドアーク溶接において、スパッタを多量に発生させる。従って、本実施形態に係るフラックス入りワイヤはCaF2を含有しないことが好ましい。しかしながら、フラックスの原料にCaF2が含有されている場合がある。その場合、CaF2の含有量を1.00%未満に制限する。CaF2の含有量を1.00%未満に制限すれば、スパッタの問題は無視できる。スパッタの発生量をさらに低減するために、CaF2の含有量の上限を0.75%、又は、0.50%としてもよい。本実施形態に係るフラックス入りワイヤはCaF2を必要としないので、CaF2の含有量の下限値は0%である。
シールドガスが100%CO2ガスであるガスシールドアーク溶接において、CaF2がスパッタを増加させることは上述した。さらに、本発明者らは、多種の弗化物を含有し、鋼製外皮にスリット状の隙間がなく、植物油が鋼製外皮に塗布された、1.2mmφのワイヤを多数作成して、これらのスパッタ特性を調査した。銅製の捕集箱内で、鋼板上に、ビードオンプレートで、溶接電流280A、電圧27V、溶接速度25cm/min、シールドガス100%CO2(25l/min)、及び予熱なしの条件で、上述の種々のフラックス入りワイヤを用いて、1分間、溶接ビードを作製した。この溶接ビードの作成の間に箱内に飛散したスパッタおよび鋼板に付着したスパッタを回収し、これらのうち直径1.0mm超のものの総重量を測定した。スパッタ発生量、弗化物の種類、及び各弗化物の含有量のデータを多元解析した結果、式1を用いて算出されるX値とスパッタ発生量との間に、図1に示される良好な相関関係があることが見出された。
X=[Na3AlF6]+[NaF]+[MgF2]+1.5×([K2ZrF6])+3.5×([CaF2])・・・(式1)
式1において、括弧が付された化学式は、化学式に係る化合物(弗化物)の含有量を、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で表すものである。フラックス中に含まれない弗化物の含有量は0とする。式1で定義するX値を3.0%以下とすることで、上述の条件で溶接を行った際のスパッタ量を5g/min以下することができ、種々の条件で溶接を行ったとしてもスパッタ量を問題ない範囲に抑えることができることがわかった。X値の好ましい上限値は2.8%、2.5%、又は2.2%である。なお、本実施形態に係るフラックス入りワイヤでは、弗化物のX値の下限値を定める必要はない。弗化物の含有量の下限値は、上述されたF換算値を用いて規定されるからである。
本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、酸化物を合計で0.30%以上3.50%未満含有する。
酸化物は、溶接ビードの形状をよくすることができる。酸化物含有量の合計が0.30%未満である場合、溶接ビードの形状が悪くなることがある。溶接ビードの形状をよくするために、酸化物の合計含有量の下限を0.50%、又は、0.70%としてもよい。また、酸化物の合計含有量が3.50%以上である場合、溶接部の靭性を低下させることがある。溶接部の靱性の改善のために、酸化物の合計含有量の上限を3.00%、2.50%、又は、1.50%としてもよい。なお、酸化物の種類は、例えばTi酸化物、Ca酸化物、Si酸化物、Zr酸化物、Mg酸化物、及び、Al酸化物からなる群から選択される1種又は2種以上である。これら以外の酸化物である、フラックスの造粒に使用されるバインダーなどに含まれる酸化物がフラックス入りワイヤに含まれても良い。「酸化物の含有量の合計値」とは、Ti酸化物、Si酸化物、Zr酸化物、Mg酸化物、及び、Al酸化物等の合計量に加え、フラックスの造粒に使用されるバインダーなどに含まれる酸化物の含有量も含む。なお、上述した酸化物に含まれる場合があるTi酸化物及びCa酸化物(CaO)の含有量に関しては、後述する、別の規定が併せて行われる。
酸化物の種類は特に限定されない。従って、上に例示された酸化物のうちの一つであるTi酸化物の含有量の下限値は0%である。しかし、Ti酸化物の含有量を0.10%以上とすることで、溶接ビード形状を一層向上させることができる。また、Ti酸化物はアーク安定剤としての機能も有する。良好な溶接ビード形状を得るために、Ti酸化物の含有量の下限を0.30%、0.50%、又は、0.70%としてもよい。また、Ti酸化物の含有量が2.50%以上であると、溶接部の靭性を低下させることがある。溶接部の靱性の改善のために、Ti酸化物の上限を2.40%、2.00%、1.50%、1.00%、0.90%、又は、0.80%としてもよい。
Ca酸化物は、100%CO2ガスを使用するシールドアーク溶接においてスパッタを多く発生させる。フラックス入りワイヤが0.2%以上のCa酸化物(例えばCaO)を含有する場合、100%CO2ガスを使用するシールドアーク溶接に適用することが困難になる。したがって、Ca酸化物の含有量は0.20%未満とする。Ca酸化物の含有量の上限値を0.10%としてもよい。一方、Ca酸化物は本実施形態に係るフラックス入りワイヤにとって不要であるので、Ca酸化物の含有量の下限値は0%である。
本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、炭酸塩を含む必要はない。従って炭酸塩の含有量の下限値は0%である。しかしながら、本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、更に、MgCO3、Na2CO3、及びCaCO3からなる群から選択される1種又は2種以上の炭酸塩を合計で2.00%以下含有することが好ましい。
Cは、炭化物を形成し、溶接金属の高温強度の確保に寄与するとともにベイナイトならびにマルテンサイト組織を得るのに有効な元素であるため、必須の添加元素であり、0.150%以下の範囲で本実施形態に係るフラックス入りワイヤに含有させる。合金成分のC含有量が0.150%を上回る場合は、溶接金属が過剰に硬化し、溶接金属の靭性にとって好ましくない。C含有量の上限値を0.090%、0.080%、又は0.070%としてもよい。継手強度や鋼の製造の際の脱炭コストの点からは、C含有量の下限を0.003%とする。C含有量の下限値を0.015%または0.020%としてもよい。
Siは、脱酸元素である。本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、溶接金属のO量を低減して清浄度を高めるために、0.05%以上のSiを含有する必要がある。ただし、2.00%を超えてSiを含有させると溶接金属のクリープ延性および靭性を低下させる。従って、Si含有量は0.05〜2.00%とする。また、溶接金属の靭性を安定して確保するためには、Si含有量の下限を0.10%、0.20%、又は0.21%としてもよい。Si含有量の上限は、1.80%、1.60%又は1.40%としてもよい。
Mnは、溶接金属の焼入れ性を確保して強度を高める元素であり、必要とされる溶接金属の強度に応じて3.5%以下の範囲で本実施形態に係るフラックス入りワイヤに含有させる。3.5%を超えてMnを含有させると、溶接金属の粒界脆化感受性が増加して、溶接金属の靱性が劣化する。しかしMnは、SをMnSとして固定化し、高温割れの発生を防止する効果も有する。この効果を得るために、Mn含有量の下限を0.4%とすることが望ましい。Mn含有量の下限値を、0.6%、0.8%、0.9%、または1.0%としてもよい。Mn含有量の上限値を、3.4%、3.3%、または3.2%としてもよい。
Pは不純物元素であり、溶接金属の靱性を阻害するため、極力低減する必要があるが、靱性への悪影響が許容できる範囲として、P含有量は0.020%以下とする。靭性の一層の向上のため、Pの上限を0.015%に制限してもよい。
Sも不純物元素であり、過大に存在すると、溶接金属の靱性と延性とをともに劣化させるため、極力低減することが好ましい。溶接金属の靱性及び延性への悪影響が許容できる範囲として、S含有量は0.020%以下とする。溶接金属の靭性の一層の向上のため、Sの上限を0.010%に制限してもよい。
Crは耐熱鋼において耐酸化性および耐高温腐食性を確保するとともに、溶接金属のマトリックスのベイナイトならびにマルテンサイト組織を安定して得るために必須の元素である。その効果を得るためには、0.30%以上含有することが必要である。しかし、Crを過剰に含有すると、高温での使用中に多量のCr炭化物の生成により炭化物の安定性を低下させ、溶接金属のクリープ強度の低下を招くとともに、溶接金属の靭性も劣化させる。そのためCr含有量を13.00%以下とする必要がある。Cr含有量の望ましい範囲は0.50〜12.50%、さらに望ましい範囲は1.00〜12.00%または2.15〜11.00%である。
Moは、溶接金属のマトリックスを固溶強化し、クリープ強度の向上に寄与する元素である。この効果を得るために本実施形態に係るフラックス入りワイヤは0.10%以上のMoを含有する必要がある。しかし、2.50%を超えてMoを含有すると、その効果が飽和するとともに、粗大な炭化物を生成し、溶接金属の靭性の低下を招く。Mo含有量の望ましい範囲は0.30〜2.20%、さらに望ましい範囲は0.50〜2.00%である。
本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、V:0.5000%以下、Nb:0.50%以下、Ti:0.500%以下、Ta:0.50%以下からなる群から選択される一種以上を任意に含有しても良い。これらはいずれも高温での使用中に炭素や窒素と結合して炭窒化物として析出し、溶接金属のクリープ強度に寄与するため、本実施形態に係るフラックス入りワイヤはこれら元素を含有してもよい。しかし、これら元素を過剰に含有すると、上述の炭窒化物が多量に析出し、溶接金属の靭性の低下を招く。従ってV、Nb、Ti、及びTaをフラックス入りワイヤが含有する場合には、いずれの元素の上限値も上述の範囲内とする。これら元素それぞれの含有量は、望ましくは0.40%以下、さらに望ましくは0.30%以下とする。また、これら元素の効果を安定して得るためには、これら元素それぞれを0.03%以上、さらには0.04%以上含有することが望ましい。
本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、Cu:1.00%以下、Ni:1.0%以下、Co:5.0000%以下、B:0.0200%以下からなる群から選択される一種以上を含有しても良い。これらはいずれも溶接金属の焼入れ性を高め、ベイナイト組織又はマルテンサイト組織を得るのに有効な元素であるので、本実施形態に係るフラックス入りワイヤはこれら元素を含有してもよい。しかしながら、これら元素を過剰に含有した場合、溶接金属のクリープ延性の低下が生じる。従って、これら元素をフラックス入りワイヤが含有する場合には、Cuは1.00%、Niは1.0%、Coは5.0000%、Bは0.0200%を上限とする。望ましくは、CuおよびNiは0.80%以下、Coは4.5000%以下、並びにBは0.0180%以下である。さらに望ましくは、CuおよびNiは0.60%以下、Coは4.0000%以下、並びにBは0.0150%以下である。また、これらの効果を安定して得るためには、Cu、NiおよびCoは0.1%以上、Bは0.0005%以上とすることが望ましく、さらにはCu、NiおよびCoは0.2%以上、Bは0.001%以上とすることが望ましい。
Wは溶接金属のマトリックスを固溶強化し、クリープ強度の向上に寄与する元素であるので、本実施形態に係るフラックス入りワイヤはWを含有してもよい。しかし、Wを過剰に含有すると、Wが粗大な金属間化合物を生成し、溶接金属の靭性の低下を招く。従って、Wを含有する場合には、4.0000%を上限とする。W含有量は、望ましくは3.8000%以下、さらに望ましくは3.5000%以下とする。また、効果を安定して得るためには、Wを0.1000%以上、さらには0.2000%以上含有することが望ましい。
Mgは強脱酸元素であり、溶接金属中のO量を低減し、溶接金属の延性及び靭性を向上させる。この効果を得るために含有させる場合は、0.10%以上のMgを含有させるのがよい。しかし、フラックス入りワイヤ中のMg含有量が0.80%を超えると、Mgが溶接金属中で粗大酸化物を形成し、無視できない水準の靭性低下を招く。また、フラックス入りワイヤ中のMg含有量が0.80%を超えると、溶接中のアークの安定性が劣化し、ビード形状を悪化させる原因にもなる。そのため、Mgを含有させる場合には、その含有量を0.80%以下とする。
鉄粉(Fe粉)は、フラックス入りワイヤにおけるフラックスの充填率の調整のために、または溶着効率の向上のために必要に応じて含有させる場合がある。しかし、鉄粉の表層は酸化されているので、フラックスが鉄粉を過剰に含有すると、溶接金属の酸素量を増加させて靭性を低下させる場合がある。したがって、鉄粉は含有させなくてもよい。充填率の調整のために鉄粉を含有させる場合には、溶接金属の靭性を確保するために、鉄粉の含有量を10.0%未満にする。鉄粉の含有量の上限値を5.0%、3.0%、2.0%、又は1.7%としてもよい。一方、鉄粉は本実施形態に係るフラックス入りワイヤの課題解決のために必須ではないので、鉄粉の含有量の下限値は0%である。
図2に、フラックス入りワイヤの切断面を示す。図2(a)に、エッジ面を突合せて溶接して作ったフラックス入りワイヤ、図2(b)に、エッジ面を突合せて作ったフラックス入りワイヤ、及び、図2(c)に、エッジ面をかしめて作ったフラックス入りワイヤを示す。このように、フラックス入りワイヤには、図2(a)に示すように鋼製外皮にスリット状の隙間がないワイヤと、図2(b)、(c)に示すように鋼製外皮にスリット状の隙間を有するワイヤとに大別できる。本実施形態に係るフラックス入りワイヤでは、いずれの断面構造も採用することができるが、溶接金属の低温割れを抑制するためには、スリット状の隙間がないワイヤ(シームレスワイヤともいう)とすることが好ましい。
すなわち、まず、外皮となる鋼帯、並びに、弗化物、合金成分、酸化物、及び炭酸塩等が所定の含有量になるように配合したフラックスを準備する。鋼帯を、長手方向に送りながら成形ロールによりオープン管(U字型)に成形して鋼製外皮とする。この成形途中で、オープン管の開口部からフラックスを供給する。開口部の相対するエッジ面を突合せ、スリット状の隙間を溶接する。溶接法は、例えば電縫溶接、レーザー溶接、又は、TIG溶接などである。溶接により得られたスリット状の隙間のない管を伸線し、伸線途中又は伸線工程完了後に焼鈍処理して、所望の線径を有するスリット状の隙間のないワイヤを得る。また、開口部の相対するエッジ面を突合せた後にスリット状の隙間を溶接しないことにより、鋼製外皮をスリット状の隙間有りの管とし、それを伸線することで、スリット状の隙間を有するワイヤを得る。
れ性試験で用いた鋼板と同じ化学組成の厚さ20mm、幅150mm、長さ200mmの
鋼板上に溶接低温割れが発生しない下限の予熱温度(表3に記載の予熱温度)を適用し、前述と同じ溶接方法、溶接条件にて多層肉盛り溶接により全溶着金属を作製した。
16〜18、20、21、29、30はX値が高すぎるか、もしくはCa酸化物が過剰に添加されていたため、スパッタ発生量が多く溶接作業性が劣位で不合格となった。
19、22、23、27、及び28は、弗化物量が不足したので、溶接金属の拡散性水素量を十分に低減させることができず、U形割れ試験において割れが生じた。
一方、1〜15の実施例のフラックス入りワイヤは、溶接作業性が良好で、かつ必要な溶接金属のクリープ破断強さを有した。
させる効果と溶接作業性、溶接金属のクリープ破断強さを併せて具備し得ることが分かる。
Claims (11)
- 鋼製外皮の内部にフラックスが充填されたガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤであって、
前記フラックスが、
CaF2、MgF2、Na3AlF6、NaF、及びK2ZrF6からなる群から選択される一種以上の弗化物であって、前記フラックス入りワイヤの全質量に対するF換算値の合計が0.11%以上である弗化物と、
前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.30%以上3.50%未満の酸化物と、
前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0%以上10.0%未満の鉄粉と、
を含み、
前記弗化物に含まれる前記CaF2の含有量が前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で1.00%未満であり、
前記酸化物に含まれるTi酸化物の含有量が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0%以上2.50%未満であり、
前記酸化物に含まれるCa酸化物の含有量が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0%以上0.20%未満であり、
式1によって算出されるX値が3.0%以下であり、
さらに、前記弗化物、前記酸化物、及び炭酸塩を除く化学成分が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で、
C:0.003〜0.150%、
Si:0.05〜2.00%、
Mn:0.4〜3.5%、
P:0.020%以下、
S:0.020%以下、
Cr:0.30〜13.00%、及び
Mo:0.10〜2.50%、
を含有し、残部がFeおよび不純物からなることを特徴とするガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
X=[Na3AlF6]+[NaF]+[MgF2]+1.5×([K2ZrF6])+3.5×([CaF2])・・・(式1)
ただし、前記式1に記載の括弧が付された化学式は、前記化学式に係る前記弗化物の、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%での含有量を表し、含有されない前記弗化物の含有量は0%とみなす。 - さらに、前記フラックス入りワイヤの前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く前記化学成分が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で、前記化学成分に含まれるFeの一部に代えて、
V:0.5000%以下、
Nb:0.50%以下、
Ti:0.500%以下、及び
Ta:0.50%以下
からなる群から選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。 - さらに、前記フラックス入りワイヤの前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く前記化学成分が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で、前記化学成分に含まれるFeの一部に代えて、
Cu:1.00%以下、
Ni:1.0%以下、
Co:5.0000%以下、及び
B:0.0200%以下
からなる群から選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。 - さらに、前記フラックス入りワイヤの前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く前記化学成分が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で、前記化学成分に含まれるFeの一部に代えて、
W:4.0000%以下
を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。 - さらに、前記フラックス入りワイヤの前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く前記化学成分が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で、前記化学成分に含まれるFeの一部に代えて、
Ca:0.500%以下、
REM:0.0100%以下、
Mg:0.80%以下、及び
Al:0.400%以下
からなる群から選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。 - 前記フラックスが、さらに、CaCO3、Na2CO3、及びMgCO3からなる群から選択される一種以上の前記炭酸塩を、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で合計2.00%以下含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
- 前記フラックスの前記酸化物に含まれるTi酸化物の含有量が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.10%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
- 前記鋼製外皮がスリット状の隙間のない形状であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
- 前記鋼製外皮がスリット状の隙間を有する形状であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
- 前記鋼製外皮の表面にパーフルオロポリエーテル油を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
- 請求項1〜10のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いて、鋼材を溶接することを特徴とする溶接継手の製造方法。
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