JP4309172B2 - 低合金耐熱鋼用低水素系被覆アーク溶接棒 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、低合金Cr−Mo−V系耐熱鋼の溶接材料に関する。さらに詳しくは、例えば350〜500℃で使用される石油精製分野の反応塔や火力発電ボイラー、あるいはさらにクリープ破断強度、耐使用中脆化および低温靱性が要求される用途において使用される1.25〜3%Cr、0.9〜1.25%Mo、0.2〜0.4%V含有の高強度型低合金耐熱鋼を溶接するに最適の共金系の低合金耐熱鋼用低水素系被覆アーク溶接棒に関する。
【0002】
【従来の技術】
石油精製や化学工業分野に使用される反応塔、および火力発電ボイラーの一部には高温高圧の水素雰囲気で使用されることから、これまで2.25Cr−1Mo鋼や3Cr−1Mo鋼が使用されてきた。近年、反応効率や発電効率の向上を目的として、さらに高温高圧化の過酷な条件で使用できる鋼材が実用化されてきており、従来の2.25Cr−1Mo鋼や3Cr−1Mo鋼に、0.25%程度のVや0.03%程度のNbを添加して、鋼材の強度と耐水素脆性を高めたV、Nb添加タイプの低合金耐熱鋼が、石油関連の大型圧力容器や火力発電ボイラーの一部に実用化されてきている。
【0003】
これらの溶接構造物は350〜500℃の高温で長時間使用されることから、その溶接部は優れた高温強度とクリープ性能が要求され、さらに使用中脆化の少ない耐焼戻し脆性や耐クリープ脆性を具備していることが必須となる。また、材質の高強度化、装置の大型構造化、あるいは使用環境の寒冷地化に伴う脆性破壊事故防止から、現在では−18〜−29℃範囲の低温靭性が要求されている。
【0004】
こうした低合金鋼を対象として、従来から、焼戻し脆化を軽減するために、鋼中のP、S、Sb、Sn、As等の不純物やSi、Mn量を抑制することは周知の事実である。従って、かかる溶接材料の構成に関しては、この種の元素量を少なくすることが一般的であった。
【0005】
さらに前記目的のために、従来から種々の低水素系被覆アーク溶接棒が提案されおり、低温靭性を同時に確保する目的で溶接金属中の酸素量を低減して、被覆剤中の脱酸合金あるいはスラグ形成剤組成を適正なものにする。あるいは、組織微細化によるアプローチで低温靭性を同時に確保しようとする手段も開示されている。
【0006】
例えば、特開昭61−232094号公報には被覆剤中に0.4〜1.8%のSiC添加により脱酸効果を高めて溶接金属中のSi量および酸素量を同時に低減する技術が開示されている。また、特開昭57−142788号公報には被覆剤中にFe−ZrをZr換算値で3〜9%脱酸元素として使用する技術が開示されている。さらに、特開昭54−104466号公報、特開昭54−104467号公報、特開昭57−139459号公報、特開昭58−58995号公報および特開昭59−215297号公報には、Ti、Al、Nの組織改善元素を積極的に添加し、溶接金属の組織改善による技術が開示されている。
【0007】
一方、Cr−Mo−V系低合金鋼の溶接では、溶接金属にVやNbの添加によって微細炭化物の分散強化により高温強度やクリープ破断強度などの改善が図られているが、その反面、常温での強度がやや過剰気味の傾向があり、こうしたことから本鋼種への前述の低水素系被覆アーク溶接棒の適用では、従来の2.25Cr−1Mo鋼や3Cr−1Mo鋼と比べて低温靱性は良くない。
【0008】
また、従来のCr−Mo系低合金鋼へ適用した場合に比べて、実質的な変態挙動が大幅に変化する。溶接金属のミクロ組織は、必然的に溶接時の冷却速度、次パスの溶接熱サイクルや溶接後の熱処理に支配されるが、従来のCr−Mo系低合金鋼の溶接金属では溶接後熱処理を行った後は、ベイナイトまたはマルテンサイト組織が支配的であった。しかしながら、Cr−Mo−V系低合金鋼の溶接金属の場合には、マトリックス中の固溶炭素量が減少することにより、連続冷却変態図でいうフェライト・ノーズが短時間側に移動し、オーステナイト化温度からの冷却速度が緩やかな場合には、これら組織中に初析フェライトが混在するようになり低温靭性の低下を招く傾向がある。
【0009】
特に、被覆アーク溶接棒は立向の溶接姿勢に適した溶接材料であるが、能率の面から40kJ/cm程度までの高入熱で溶接される時代のニーズがあり、こうした場合脱酸不足気味の現象や旧オーステナイト粒粗大化の悪影響因子も相乗して、立向溶接ではさらに低温靭性が悪くなる傾向があった。
【0010】
このようなCr−Mo−V系低合金鋼に対して、前述の技術では低温靭性を改善することは困難である。例えば、特開昭61−232094号公報記載のSiCは、Cの含有量が30%程度と高い炭化物であり、このような場合所定の脱酸効果を得るためには、必然的にCの一部が溶接金属中に歩留まって過剰な焼入れ性を付与することになり、その結果、強度増加を助長するために靭性改善の効果は得られない。
【0011】
また、特開昭57−142788号公報に記載の技術でも同じく所定の脱酸効果を得るためには、必然的にフェライト生成傾向の強いZrの溶接金属中の歩留り量が多くなる。こうした鋼種では、応力除去焼鈍として比較的高温度(690〜720℃)の条件で溶接後熱処理を1〜3回実施することから、最終的なミクロ組織中には旧オーステナイト粒界に沿って初析フェライト、いわゆるフェライトバンドを形成して低温靭性や使用中脆化特性にも悪影響を及ぼす。
【0012】
特開昭58−58995号公報に記載の技術では、AlおよびNによるAlNによる微細化を狙っているが、特に立向姿勢の高入熱溶接では、かかる窒化物は密度が溶融金属に比べ低い(3.26g/cm3)のでその大半が溶接金属から 浮上してしまい、十分な組織改善効果が得られない。
【0013】
【引用文献】
(a)引用文献1(特開昭61−232094号公報)
(b)引用文献2(特開昭57−142788号公報)
(c)引用文献3(特開昭54−104466号公報)
(d)引用文献4(特開昭54−104467号公報)
(e)引用文献5(特開昭57−139459号公報)
(f)引用文献6(特開昭58−58995号公報)
(g)引用文献7(特開昭59−215297号公報)
(h)引用文献8(特開昭61−232094号公報)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、こうした現状に鑑みて、Cr−Mo−V系低合金鋼用共金系の低水素系被覆アーク溶接棒を対象として、大入熱で溶接を行った際にも、溶接作業性を損なうことなく、低温靱性と耐焼戻し脆化特性の両面に優れた低合金耐熱鋼用低水素系被覆アーク溶接棒を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、質量%で、ジルコニウムカーバイトおよび窒化ジルコニウムの1種または2種の合計0.5〜2.7%、金属炭酸塩40〜60%、金属弗化物15〜30%、酸化ジルコニウム1〜5%、金属シリコンおよびシリコン合金の1種または2種以上をSi換算値で2.5〜4.0%、金属マンガンおよびマンガン合金の1種または2種以上をMn換算値で2.5〜4.0%、金属マグネシウムおよびマグネシウム合金の1種または2種以上をMg換算値で0.5〜3.0%を含有し、その他合金剤、アーク安定剤、スラグ生成剤、粘結剤および不可避的不純物からなる被覆剤を、Cr:1.00〜3.25%、Mo:0.9〜1.20%、V:0.30%以下、Nb:0.03%以下、C:0.05〜0.12%、Si:0.3%以下、Mn:0.2〜0.7%、P:0.01%以下、S:0.01%以下、Ni:0.1%以下、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼心線に被覆率28〜33%で被覆したことを特徴とする低合金耐熱鋼用低水素系被覆アーク溶接棒である。
【0016】
また、上記の低合金耐熱鋼用低水素系被覆アーク溶接棒において、被覆剤にNiを0.1〜0.5%、硼化物およびボロン合金の1種または2種以上のB換算値で0.02〜0.10%含有し、前記NiとB換算値の積が0.003〜0.048であることも特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の低合金耐熱鋼用低水素系被覆アーク溶接棒の被覆剤各成分、またそれらの成分相互による作用、効果を説明する。
ジルコニウムカーバイドおよび窒化ジルコニウムの添加は本発明の中核をなすものであり、低温靭性および耐焼戻し脆性の改善に最も効果がある。ジルコニウムカーバイドおよび窒化ジルコニウムは、化学的および熱的にも非常に安定であるため、アーク熱によってのみ解離し、その場合それぞれ酸素と反応して、極めて効率的に脱酸効果を発揮する。また、密度が溶融金属に近いために凝固時あるいは溶接金属中に分散粒子としての存在比率が高く、オーステナイト粒形成の核となってフェライト形成能を抑制して粒成長を阻止して金属組織の細粒化に貢献する。また、ジルコニウムカーバイドおよび窒化ジルコニウムは、CやNの含有量が少ないので、過剰な焼入れ性を付与して常温強度を高くすることがない。
【0018】
ジルコニウムカーバイドおよび窒化ジルコニウムの1種または2種の合計が0.5質量%(以下、%という。)未満であると、低温靱性および耐焼戻し脆化の改善効果が得られず、2.7%を超えると、溶接金属中に未溶融のまま残留する量が多くなり低温靱性を劣化させる。したがって、ジルコニウムカーバイドおよび窒化ジルコニウムの1種または2種の合計は0.5〜2.7%とする。なお、ジルコニウムカーバイドはC含有量が9〜13%、窒化ジルコニウムはN含有量が10〜13%で、これらの平均粒子径は2〜10μmであることが好ましい。
【0019】
金属炭酸塩は、溶接中に炭酸塩が分解して生じるCO2 ガスを発生させると共に、CaOからなるスラグを生成し、溶融金属および凝固直後の溶接金属をそれぞれ大気からシールドする効果がある。CaCO3 、BaCO3 、MgCO3 等の金属炭酸塩の1種または2種以上の合計が40%未満ではシールド効果が不十分で低温靱性が得られず、耐気孔性も劣化する。また、60%を超えるとスラグの粘性が高くなりすぎビード形状が凸状となる。したがって、金属炭酸塩は40〜60%とする。
【0020】
金属弗化物は、アーク雰囲気中の水素分圧を下げて耐気孔性を改善すると共に、スラグの粘性を適正に調整し溶接金属のなじみ性やビード形状を良好にする。CaF2 、AlF3 、BaF2 等の金属弗化物の1種または2種以上が15%未満では、耐気孔性およびビード形状が劣化する。また、30%を超えるとスラグの粘性が下がりすぎ、特に立向き姿勢でビードが垂れやすくビード形状が劣化する。したがって、金属弗化物は15〜30%とする。
【0021】
酸化ジルコニウムは、スラグ形成剤として作用する。1%未満ではスラグの粘性を増加させる効果が不十分で特に立向姿勢でビードが垂れやすくビード形状が劣化する。また、5%を超えるとスラグの粘性が高くなりすぎスラグ巻込み欠陥の発生頻度が高くなる。したがって、酸化ジルコニウムは1〜5%とする。
【0022】
金属シリコンおよびシリコン合金は、溶接金属の脱酸と共にアーク安定化作用がある。金属シリコンおよびシリコン合金の1種または2種以上のSi換算値が2.5%未満ではアークが不安定で耐気孔性が劣化し、低温靱性も不十分であり、4.0%を超えると低温靭性および耐焼戻し脆性が悪くなる。したがって、金属シリコンおよびシリコン合金の1種または2種以上のSi換算値は2.5〜4%とする。
【0023】
金属マンガンおよびマンガン合金は、溶接金属の脱酸と共にミクロ組織を調整するためのオーステナイト生成元素として重要である。また、スラグ形成剤としてスラグ剥離性改善に効果がある。金属マンガンおよびマンガン合金の1種または2種以上のMn換算値が2.5%未満ではスラグ剥離性が劣化し低温靱性も不十分であり、4.0%を超えると低温靭性および耐焼戻し脆性が悪くなる。
【0024】
金属マグネシウムおよびマグネシウム合金は、溶接金属の脱酸と共にスラグ剥離性を改善させる効果がある。金属マグネシウムおよびマグネシウム合金の1種または2種以上のMg換算値が0.5%未満では耐気孔性が悪く低温靱性も不十分であり、3.0%を超えるとスラグの包被性が悪く低温靱性が悪くなる。
【0025】
以上が低合金耐熱鋼用低水素系被覆アーク溶接棒の基本成分であるが、本発明は、さらにNiとBを複合添加することにより、より低温の寒冷地(−29℃以下)での適用を可能とすることができる。NiとBの複合添加は、溶接金属の焼入れ性と微細化作用を高め、特に遷移温度を下げるのに効果があり、−29℃以下の低温での衝撃性能改善に有効である。
【0026】
Niを0.1〜0.5%とB2 O3 や硼砂などの硼化物およびFe−B、ZrB2 やボロン入り鉄粉などのボロン合金の1種または2種以上のB換算値で0.02〜0.10%を両方含有させ、これらのNiとB換算値の積を0.003〜0.048としたときその効果が得られる。Niが0.1%未満、硼化物およびボロン合金の1種または2種以上のB換算値が0.02%未満およびNiとB換算値の積が0.003未満であると、溶接金属の焼入れ性と微細化作用を高めることができず、遷移温度を下げる効果は得られない。したがって、−29℃以下の低温での衝撃性能改善効果はない。一方、Niが0.5%超、硼化物およびボロン合金の1種または2種以上のB換算値が0.10%超およびNiとB換算値の積が0.048%を超えると、溶接金属の焼き入れ性が過剰になり、常温強度が高くなり低温での衝撃性能も不良で、さらに焼戻し脆性も劣化する。
【0027】
本発明の低合金耐熱鋼用低水素系被覆アーク溶接棒は、その他の成分としてアーク安定剤である珪灰石や合成マイカを良好なアーク状態を確保するために用いる。スラグ生成剤には、珪砂、長石、マグネサイトなどがあり、スラグの流動性や被包性を調整する。また、溶接金属の成分調整および機械的性質の調整のために金属Cr、Fe−Cr、Mo、Fe−Mo、V、Fe−V、Fe−Nbなどの合金を含有する。また粘結剤には、珪酸カリウムと珪酸ナトリウムなどがあり、これらの1種または2種以上の組み合わせで使用する。
【0028】
なお、本発明に用いる鋼心線は、対象とするCr−Mo系低合金鋼の成分組成であるに見合った溶接金属が得られるように、Cr:1.00〜3.25%、Mo:0.9〜1.20%、V:0.30%以下、Nb:0.03%以下、C:0.05〜0.12%、Si:0.3%以下、Mn:0.2〜0.7%、P:0.01%以下、S:0.01%以下、Ni:0.1%以下、残部がFeおよび不可避不純物からなるものである。さらに耐焼戻し脆性を改善するためには、X=(10P+5Sb+4Sn+As)×10-2(ppm)で規定されるX値が低いほど好ましく、経済性も考慮してX値は12ppm以下になるようにP、S、Sb、As含有量の少ないものを用いる。
また、本発明は2〜3Cr−1Mo−V(Nb)系耐熱鋼のみならず1.25Cr−1Mo−V系耐熱鋼への適用も可能である。
【0029】
【実施例】
以下、実施例により本発明の効果を詳細に説明する。
表1に示す化学成分の心線(直径4.0mm、長さ400mm)を用いて、表2〜表4に示す成分からなる被覆剤を被覆率28〜33%で塗布して被覆アーク溶接棒を製造した。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
表5に示す化学成分の板厚20mmの鋼板を、図1に示す開先形状にして表6に示す溶接条件で溶接し、それぞれの溶接棒について溶接作業性を評価した後、X線透過試験を行い溶接欠陥の有無を調べた。また、同一試験片を705℃×8hrの応力除去焼鈍を行ってから、板厚中央より引張試験片およびシャルピー衝撃試験片を採取した。
【0035】
引張試験は、586〜758MPaを良好(○)とした。また、衝撃試験は、吸収エネルギーの遷移曲線を求めた。低温靭性の良否は、その吸収エネルギーが55Jとなる遷移温度(℃)をvTr55として、これが−18℃以下を良好(〇)とし、さらに−29℃以下を優秀(◎)とし、−18℃超を不良(×)として区分した。
【0036】
耐焼戻し脆性は、焼戻し脆化を短時間で再現する目的で、図2に示すステップクーリングと呼ばれる加速脆化熱処理(以下、SCという。)を行い、応力除去焼鈍後のシャルピー衝撃性能との変化を基に評価し、SC後の吸収エネルギーが55Jとなる遷移温度(℃)をvTr’55とし、脆化指数=vTr55+2.5(vTr’55−vTr55)を耐焼戻し脆性の良否判定として求めた。脆化指数が10℃以下を良好(〇)とした。それらの結果を表7〜8に示す。
【0037】
【表5】
【0038】
【表6】
【0039】
【表7】
【0040】
【表8】
【0041】
表2〜表4および表7、表8中、溶接棒No.1〜10が本発明例、溶接棒No.11〜20は比較例である。
本発明例である溶接棒No.1〜10は、ジルコニウムカーバイトおよび窒化ジルコニウムの1種または2種、金属炭酸塩、金属弗化物、酸化ジルコニウム、金属シリコンおよびシリコン合金の1種または2種以上のSi換算値、金属マンガンおよびマンガン合金の1種または2種以上のMn換算値および金属マグネシウムおよびマグネシウム合金の1種または2種以上のMg換算値が適正であるので、溶接作業性が良好で、溶接欠陥の発生がなく、応力除去焼鈍後の強度およびvTr55、SC後のvTr’55が良好で、さらに脆化指数も低く満足な結果が得られた。また、溶接棒No.4、5、6、8、9およびNo.10は、Niと硼化物およびボロン合金の1種または2種以上のB換算値、さらにNiとB換 算値の積が適量であるのでvTr55が−29℃以下で極めて満足な結果が得られた。
【0042】
比較例中溶接棒No.11は、金属弗化物が多いので、スラグの粘性が低くなってビードが垂れて形状が不良となった。また、ジルコニウムカーバイトが少ないので、vTr55およびvTr’55が不良であった。
溶接棒No.12は、金属弗化物が少ないので、ビード形状が不良でブローホールも生じた。また、ジルコニウムカーバイトおよび窒化ジルコニウムの合計が多いので、vTr55が不良であった。
【0043】
溶接棒No.13は、金属炭酸塩が少ないので、ブローホールが生じvTr55も不良であった。
溶接棒No.14は、金属炭酸塩が多いので、ビード形状が不良であった。また、Niが多いので、引張強さが高くvTr55およびvTr’55も不良であった。
【0044】
溶接棒No.15は、Si換算値が少ないので、アークが不安定でブローホールも生じた。また、NiとB換算値の積が高いので、引張強さが高くvTr55およびvTr’55も不良であった。
溶接棒No.16は、酸化ジルコニウムが少ないので、ビードが垂れて形状が不良となった。また、Si換算値が多いので、vTr55およびvTr’55が不良であった。
【0045】
溶接棒No.17は、酸化ジルコニウムが多いので、スラグ巻き込み欠陥が生じた。また、Mn換算値が多いので、vTr55およびvTr’55が不良であった。
溶接棒No.18は、Mg換算値が少ないので、ブローホールが生じvTr55も不良であった。
【0046】
溶接棒No.19は、Mg換算値が多いので、スラグ包被性が不良でvTr55も不良であった。
溶接棒No.20は、Mn換算値が少ないので、スラグ剥離性が不良でvTr55も不良であった。
【0047】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明の低合金耐熱鋼用低水素系被覆アーク溶接棒によれば、大入熱で溶接を行った際にも溶接作業性を損なうことなく、低温靱性と耐焼戻し脆化特性の両面に優れ、溶接欠陥のない溶接部を得ることができる低合金耐熱鋼用低水素系被覆アーク溶接棒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に用いた試験板の開先形状を示す断面図
【図2】本発明の実施例に用いた加速脆化処理条件を示す図
Claims (2)
- 質量%で、ジルコニウムカーバイトおよび窒化ジルコニウムの1種または2種の合計0.5〜2.7%、金属炭酸塩40〜60%、金属弗化物15〜30%、酸化ジルコニウム1〜5%、金属シリコンおよびシリコン合金の1種または2種以上をSi換算値で2.5〜4.0%、金属マンガンおよびマンガン合金の1種または2種以上をMn換算値で2.5〜4.0%、金属マグネシウムおよびマグネシウム合金の1種または2種以上をMg換算値で0.5〜3.0%を含有し、その他合金剤、アーク安定剤、スラグ生成剤、粘結剤および不可避的不純物からなる被覆剤を、Cr:1.00〜3.25%、Mo:0.9〜1.20%、V:0.30%以下、Nb:0.03%以下、C:0.05〜0.12%、Si:0.3%以下、Mn:0.2〜0.7%、P:0.01%以下、S:0.01%以下、Ni:0.1%以下、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼心線に被覆率28〜33%で被覆したことを特徴とする低合金耐熱鋼用低水素系被覆アーク溶接棒。
- 被覆剤にNiを0.1〜0.5%、硼化物およびボロン合金の1種または2種以上のB換算値で0.02〜0.10%含有し、前記NiとB換算値の積が0.003〜0.048であることを特徴とする請求項1記載の低合金耐熱鋼用低水素系被覆アーク溶接棒。
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