JP5076961B2 - 大入熱溶接部靭性に優れた高強度船舶用耐食鋼材およびその製造方法 - Google Patents

大入熱溶接部靭性に優れた高強度船舶用耐食鋼材およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、石炭船、鉱石船、鉱炭兼用船、原油タンカー、LPG船、LNG船、ケミカルタンカー、コンテナ船、ばら積み船、木材専用船、チップ専用船、冷凍運搬船、自動車専用船、重量物船、RORO船、石灰石専用船およびセメント専用船等の船舶用の鋼材、特に海水による厳しい腐食環境下にあるバラストタンク等に用いて好適な船舶用耐食鋼材に関するものである。また、本発明は上記のような船舶用の鋼材を大入熱溶接する場合に、溶接部靭性に優れた高強度船舶用耐食鋼材およびその製造方法に関するものである。
本発明において、船舶用耐食鋼材とは、厚鋼板をはじめとして、薄鋼板、形鋼および棒鋼を含むものである。
また、本発明において、大入熱溶接とは、入熱量が60kJ/cm以上の溶接を指し、REMは希土類元素を意味するものとする。
船舶のバラストタンクは、積荷がない時には、海水を注入して船舶の安定航行を可能にする役目を担うものであり、極めて厳しい腐食環境下におかれている。そのため、バラストタンクに用いられる鋼材の防食には、通常、エポキシ系塗料による防食塗膜の塗装と電気防食とが併用されている。
しかしながら、それらの防食対策を講じても、バラストタンクの腐食状態は依然として激しい状態にある。
すなわち、バラストタンクに海水を注入したとき、海水に完全に浸されている部分については、電気防食が機能している場合、腐食の進行を抑えることができる。しかしながら、バラストタンクの最上部付近、特に上甲板の裏側は、海水に漬からず、海水の飛沫を浴びる状態におかれているため、このような部位では、電気防食が機能しない。さらに、この部位は、太陽光によって鋼板の温度が上昇するため、より厳しい腐食環境となり、激しい腐食を受ける。また、バラストタンクに海水が注入されていない場合には、バラストタンク全体で,電気防食が全く働かないため、残留付着塩分の作用によって、激しい腐食を受ける。
このような厳しい腐食環境下にあるバラストタンクの防食塗膜の寿命は、一般に約10〜15年といわれており、船舶の寿命(20〜25年)の約半分である。従って、残りの約10年は、補修塗装を行うことよって耐食性を維持しているのが実情である。しかしながら、バラストタンクは、上記のように厳しい腐食環境にあるため、補修塗装を行ってもその効果を長時間持続させることが難しい。また、補修塗装は、狭い空間での作業となるため、作業環境としても好ましいものではない。
そのため、補修塗装までの期間をできる限り延長でき、かつ補修塗装作業をできるだけ軽減できる耐食性に優れた鋼材の開発が望まれている。
そこで、バラストタンク等の厳しい腐食環境にある部位に用いられる鋼材自体の耐食性を向上する技術が、幾つか提案されている。
例えば、特許文献1には、C:0.20mass%以下の鋼に、耐食性改善元素として、Cu:0.05〜0.50mass%、W:0.01〜0.05mass%未満を添加した耐食性低合金鋼が開示されている。
また、特許文献2には、C:0.20mass%以下の鋼材に、耐食性改善元素として、Cu:0.05〜0.50mass%、W:0.05〜0.5mass%を添加し、さらに、Ge,Sn,Pb,As,Sb,Bi,Te,Beのうちの1種もしくは2種以上を0.01〜0.2mass%添加した耐食性低合金鋼が開示されている。
さらに、特許文献3には、C:0.15mass%以下の鋼に、Cu:0.05〜0.15mass%未満、W:0.05〜0.5mass%を添加した耐食性低合金鋼が開示されている。
その他、特許文献4には、C:0.15mass%以下の鋼に、耐食性改善元素として、P:0.03〜0.10mass%、Cu:0.1〜1.0mass%、Ni:0.1〜1.0mass%を添加した低合金耐食鋼材に、タールエポキシ塗料、ピュアエポキシ塗料、無溶剤型エポキシ塗料および、ウレタン塗料等の防食塗料を塗布し、樹脂被覆したバラストタンクが開示されている。この技術は、鋼材自身の耐食性向上により防食塗装の寿命を延長し、船舶の使用期間である20〜30年に亘ってメンテナンスフリー化を実現しようとするものである。
特許文献5には、C:0.15mass%以下の鋼に、耐食性改善元素として、Cr:0.2〜5mass%を添加して耐食性を向上し、船舶のメンテナンスフリー化を実現しようとする提案がなされている。
特許文献6には、C:0.15mass%以下の鋼に、耐食性改善元素としてCr:0.2〜5mass%を添加した鋼材を構成材料として使用すると共に、バラストタンク内部の酸素ガス濃度を大気中の値に対して50%以下の比率とすることを特徴とするバラストタンクの防食方法が提案されている。
また、特許文献7には、C:0.1mass%以下の鋼に、Cr:0.5〜3.5mass%を添加することによって耐食性を向上させ、船舶のメンテナンスフリー化を実現しようとする提案がなされている。
特許文献8には、C:0.001〜0.025mass%の鋼に、Ni:0.1〜4.0mass%を添加することによって耐塗膜損傷性を向上させ、補修塗装などの保守費用を軽減する船舶用鋼材が開示されている。
さらに、特許文献9には、C:0.01〜0.25mass%の鋼に、Cu:0.01〜2.00mass%、Mg:0.0002〜0.0150mass%を添加することで、船舶外板、バラストタンク、カーゴオイルタンクおよび鉱炭石カーゴホールド等の使用環境において耐食性を有する船舶用鋼が開示されている。
特許文献10には、C:0.001〜0.2mass%の鋼において、Mo,WとCuとを複合添加し、不純物であるP,Sの添加量を限定することにより、原油油槽で生じる全面腐食、局部腐食を抑制した鋼が開示されている。
しかしながら、上記の特許文献1〜3には、バラストタンク等を構成する鋼材に対して一般的に塗布されているエポキシ系塗料等の塗膜存在下での耐食性については、検討がなされておらず、従って、上記のような塗膜存在下での耐食性向上については、別途検討の必要があった。
また、特許文献4の鋼材は、下地金属の耐食性を向上させるために、Pを0.03〜0.10mass%と比較的多量に添加しているため、溶接性および溶接部靭性の面からは問題が残る。
さらに、特許文献5および特許文献6の鋼材はCrを0.2〜5mass%、特許文献7の鋼材はCrを0.5〜3.5mass%と比較的多く含有しているため、いずれも溶接性および溶接部靭性に問題がある他、製造コストが高くなるという問題があった。また、特許文献8の鋼材は、C含有量が比較的低く、Ni含有量が比較的高いため、製造コストが高くなるという問題があった。
また、特許文献9の鋼材は、Mgの添加を必須としているが、Mgは製鋼歩留りが安定しないため、鋼材の機械的特性が安定しないという問題があった。さらに、特許文献10の鋼材は、原油油槽内というHSが存在する環境下で使用される耐食鋼であるため、HSが存在しないバラストタンクでの耐食性は不明であり、さらにバラストタンク用鋼材に一般的に使用されているエポキシ系塗料が塗布された状態での耐食性については検討がなされていないため、バラストタンクに適用するには、別途検討の必要があった。
特開昭48−050921号公報 特開昭48−050922号公報 特開昭48−050924号公報 特開平7−034197号公報 特開平7−034196号公報 特開平7−034270号公報 特開平7−310141号公報 特開2002−266052号公報 特開2000−017381号公報 特開2004−204344号公報
一方、造船分野における鋼構造物は、一般に鋼材を溶接により接合し、所望の形状に組み立てられることが多い。こうした溶接構造物に使用される鋼材には、安全性確保の観点から、母材靭性は勿論のこと、溶接部靭性にも優れることが要求される。
しかるに、近年、溶接構造物の大型化に伴い、構造物の施工効率の向上と施工コストの低減の観点から溶接効率の向上が求められ、溶接入熱の増大が指向されてきた。その際、最も問題となるのは溶接ボンド部の靭性である。溶接ボンド部は、溶接時に溶融点直下の高温に曝され、結晶粒が最も粗大化しやすく、しかも溶接入熱が増大するに伴い冷却速度が低下するため、脆弱な上部ベイナイト組織が形成されやすくなる。さらに、溶接ボンド部では、ウィドマンステッテン組織や島状マルテンサイトといった脆化組織が生成しやすく、靭性が低下しやすい。
この問題に対し、溶接ボンド部あるいはその近傍の溶接熱影響部の靭性改善を図る手段として以下のような提案がなされている。
すなわち、特許文献11および特許文献12では、Ti量,N量およびTi量とN量の比であるTi/Nを規定し、TiN粒子とMnSを複合化して、オーステナイト粒の粗大化を抑制している。
特許文献13では、Ti量およびN量を規定し、TiN粒子とREMオキシサルファイドを複合してオーステナイト粒の粗大化を抑制している。
特許文献14では、REMとTiとを複合添加し、オーステナイトの粒成長を抑制している。
特許文献15および特許文献16では、Ti酸化物を微細分散させ、フェライト変態の核生成サイトとして利用している。
特許文献17では、溶接時の冷却過程でTiNなどの上に析出するBNをフェライト変態の核として利用している。
特許文献18および特許文献19では、CaやREMを添加して硫化物の形態制御を行っている。
しかしながら、溶接部靭性に関しては、上述にように種々の改善手段が提案されているものの、以下にような問題があった。
Ti酸化物を用いる手段では、酸化物を均一かつ微細に分散させるのが困難なため、溶接部靭性のばらつきが大きくなる。
また、TiNを用いる手段では、その分散制御に注意を要する。すなわち、微細TiNの生成量が少ない場合、結晶粒微細化作用が失われて、溶接部靭性が向上しない。
さらに、AlやCaを活用する手段では、酸化物がクラスター化し、破壊の起点となって靭性が低下する場合がある。
しかも、従来のCaやREMを使用した硫化物形態制御方法の場合、溶接入熱が60kJ/cm以上の大入熱溶接部では、高靭性を確保することが困難という問題があった。
特開平2−250917号公報 特開平2−254118号公報 特公平3−53367号公報 特開昭60−184663号公報 特開昭60−245768号公報 特開昭61−79745号公報 特開昭61−253344号公報 特開昭60−204863号公報 特公平4−14180号公報
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、船舶のバラストタンク等の厳しい海水腐食環境下においても、優れた塗装耐食性を発揮して、補修塗装までの期間の延長が可能で、ひいては補修塗装の作業軽減を図ることができ、また強度特性にも優れ、さらには大入熱溶接部靭性にも優れた高強度船舶用耐食鋼材を、その有利な製造方法と共に提案することを目的とする。
一般に、船舶は、厚鋼板や薄鋼板、形鋼、棒鋼等の鋼材を溶接して建造されており、その鋼材の表面には防食塗装が施されて使用される。上記防食塗装は、一次防錆としてジンクプライマーを塗付し、小組み後あるいは大組み後に、二次塗装(本塗装)としてエポキシ系の塗装が施されるのが一般的である。したがって、船舶の鋼材表面の大部分は、ジンクプライマーとエポキシ塗装の2層構造となっている。
しかしながら、溶接部は、溶接熱によりジンクプライマーが焼失するため、溶接後から本塗装までの間の防錆のために、タッチアップとしてジンクプライマーを再塗装する。ただし、本塗装までの期間が短い場合には、ジンクプライマーの再塗装を行わないこともある。
船舶で最も腐食の厳しい部位は、バラストタンクであるが、バラストタンクにおける塗膜劣化は、塗膜損傷部、塗膜ピンホール、塗膜薄膜部からの腐食進行に起因する。ジンクプライマー+エポキシ塗装の2層構造部位では、船舶就航後から数年は、ジンクプライマーの作用により、腐食進行が遅く、塗膜劣化も軽微であるが、数年以降では、ジンクプライマーは腐食により徐々に消失し、塗膜劣化が顕著となる。したがって、ジンクプライマーが存在しない状態(ジンクプライマーの助けを借りない)で、塗装耐食性を発揮する鋼材の開発が望まれている。
そこで、発明者らは、上記の要請に応えるために、塗装耐食性の向上,特にジンクプライマーが存在しない状態での塗装耐食性の向上について、鋭意研究、検討を重ねた結果、以下に述べる知見を得た。ここで、塗装耐食性とは、塗料を塗布して表面に塗膜を形成した鋼材において、その表面に存在する塗膜欠陥部から発生する塗膜膨れを低減する性能である。
(1-1) 塗膜欠陥部でのさび層が、海水に含まれる塩化物イオンに対する保護皮膜となることが有効である。
(1-2) 塗膜欠陥部の低pH局部アノード部の腐食進行を抑制することが有効である。
(1-3) 腐食による鋼材からの溶出イオンが、鋼材表面へ吸着することが、腐食進行の抑制に有効である。
(1-4) 塗膜欠陥部の鋼材表面の低pH化を促進する元素、あるいは水素過電圧が小さく塗膜膨れを助長する元素の鋼中への含有を低減することが有効である。
また、上記(1-1)〜(1-4)のための好適元素については、次のとおりである。
(1-5) 上記(1-1)に対しては、鋼材が腐食するのに伴い、鋼材から溶出するイオンが酸素酸となって、さび層に取り込まれる合金元素の選択が有効であり、W,Moが有効である。
(1-6) 上記(1-2)に対しては、鋼材へのSn,Sbの含有が有効である。また、低pH環境で安定な腐食生成物となるFeWO4を形成するWが有効である。
(1-7) 上記(1-3)に対しては、WO4 2-となって、鋼材表面へ吸着するWが有効である。
(1-8) 上記(1-4)に対しては、Cr,Cu,NiおよびCoの低減が有効である。しかしながら、これらの元素は、一方で、強度を向上させる有用元素でもある。
上記した(1-1)〜(1-8)のコンセプトに基づき、各元素の塗装耐食性を実験検証した結果を、図1に示す。
実験方法として、3mmt×50mmW×150mmLの試験片を採取し、その後、その試験片の表面にショットブラストして、表面のスケールや油分を除去したのち、試験片表面に、タールエポキシ樹脂塗料(厚み:約100μm)の単層被膜を塗装した試験片を作製した。
ついで、塗膜の上からカッターナイフで地鉄表面まで達する80mmの長さのスクラッチ疵を一文字状に付与しておき、下記条件の腐食試験後に、スクラッチ疵の周囲に発生した塗膜膨れ面積を測定した(図2参照)。
腐食試験は、実船のバラストタンクの上甲板裏に相当する腐食環境を模擬した。すなわち、(35℃、5%NaCl溶液噴霧、2hr)→(60℃、RH25%、4hr)→(50℃、RH95%、2hrを1サイクルとする試験を132サイクル行った。
塗装耐食性は、基本組成の試験片の塗膜膨れ面積を1.0とし、この面積に対する各元素を添加したときの塗膜膨れ面積の相対比で評価した。
図1に示したとおり、Sn,W,Mo,Sbは塗装耐食性の改善に有効である一方、Cr,Cu,Ni,Coは塗装耐食性を劣化させており、従って、塗装耐食性向上の観点からは、Sn,W,Mo,Sbの鋼中への添加とCr,Cu,Ni,Coの低減が有効であることが分かる。
さらに、本発明者は、塗装耐食性向上の観点から、これらの元素の複合化について研究、検討を重ねた結果、次式(1)で示される実験的塗装耐食性指標式を見出した。
(1-9) ACP={1−(0.8×W+0.5×Mo)0.3}×{1−(Sn+0.4×Sb)0.3}
×(1+Cr)×(1+0.7×Cu)×(1+0.5×Ni)×(1+0.5×Co) --(1)
但し、W,Mo,Sn,Sb,Cr,Cu,Ni,Coはそれぞれ、各元素の成分含有量(mass%)
そして、このACP値が、0.50以下になるように、鋼中成分を調整することにより、所望の塗装耐食性を得ることが究明された。
(1-10) また、主に塗装耐食性向上の観点から含有させるSn,W,Mo,Sb、一方塗装耐食性向上の観点からは低減することが望ましいものの、強度向上の観点からは含有させることが有効なCr,Cu,Ni,Coについては、溶接部靭性の確保の観点からは、次式(2)の関係を満足させる必要があることも究明された。
WI=C+Mn/6+Cr/5+Mo/5+V/5+Ni/15+Cu/15+W/10+Co/15+Sn/2+Sb/2
≦0.50 ---(2)
但し、C,Mn,Cr,Mo,V,Ni,Cu,W,Co,Sn,Sbはそれぞれ、各元素の成分含有量(mass%)
一方で、大入熱溶接部靭性の高位安定化に向けて、該靭性に影響を及ぼす種々の要因について研究、検討を重ねた結果、以下の知見を得た。
(2-1) 大入熱溶接部とくに溶接ボンド部の靭性は、脆化組織の生成の有無に大きく影響される。
(2-2) 上記脆化組織の生成は、高温に加熱された領域におけるオーステナイトの粗大化抑制および冷却時にフェライト変態を促進するフェライト生成核の微細分散により防止できる。従来はこれらが不十分であったため、溶接部靭性の高位安定化を実現し得なかったものと考えられる。
(2-3) フェライト生成核の微細分散のためには、硫化物形態制御の役割を担うCaを活用し、凝固時にCaSを晶出させることが有効である。CaSは酸化物に比べて低温で晶出するので、凝固後の鋼中での微細かつ均一な分散が可能となる。
(2-4) CaSを晶出させるためには、Caを添加する直前の溶鋼中の溶存酸素量を、0.0030mass%以下に調整する必要がある。
(2-5) 溶存酸素量0.0030mass%以下に調整した溶鋼に対し、Caを次式(3)で示されるACR値が、所定の範囲を満足するように添加することにより、溶接部靭性が改善される。
ACR={Ca−(0.18+130×Ca)×O}/(1.25×S) ---(3)
但し、Ca,O,Sはそれぞれ、各元素の成分含有量(mass%)
そして、このACR値が0を超え1.00未満の範囲になるように、鋼中成分を調整することにより、CaS晶出後の固溶Sを確保でき、CaSの表面上にMnSが析出してなる複合硫化物を形成できる。このMnSが、フェライト核生成能を有する。さらに、MnSの周囲には、Mnの希薄帯が形成されるので、フェライト変態がさらに促進される。
(2-6) MnS上にTiN,BN,AlN等のフェライト生成核が析出し、より一層フェライト変態が促進される。
本発明は、上記の知見に基づき、さらに検討を加えた末に完成されたもので、その要旨構成は、次のとおりである。
1.C:0.01〜0.25mass%、
Si:0.05〜0.50mass%、
Mn:0.1〜2.0mass%、
P:0.035mass%以下、
S:0.0002〜0.01mass%、
Al:0.10mass%以下、
Ti:0.005〜0.030mass%、
N:0.0015〜0.0070mass%,
O:0.0030mass%以下および
Ca:0.0005〜0.0030mass%
を含有し、かつ
W:0.01〜0.5mass%および
Mo:0.02〜0.5mass%
のうちから選んだ1種または2種を含有し、かつ
Sn:0.001〜0.2mass%および
Sb:0.01〜0.2mass%
のうちから選んだ1種または2種を含有し、かつ
Cu:0.05〜0.35mass%
Ni:0.05〜0.40mass%
Cr:0.05〜0.20mass%および
Co:0.05〜0.50mass%
のうちから選んだ1種または2種以上を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、さらに下記(1)式で示すACP値が0.50以下、かつ下記(2)式で示すWI値が0.50以下、かつ下記(3)式で示すACR値が0を超え1.00未満、を満足することを特徴とする大入熱溶接部靭性に優れた高強度船舶用耐食鋼材。

ACP={1−(0.8×W+0.5×Mo)0.3}×{1−(Sn+0.4×Sb)0.3}
×(1+Cr)×(1+0.7×Cu)×(1+0.5×Ni)×(1+0.5×Co) ---(1)
但し、W,Mo,Sn,Sb,Cr,Cu,Ni,Coはそれぞれ、各元素の成分含有量(mass%)
WI=C+Mn/6+Cr/5+Mo/5+V/5+Ni/15+Cu/15+W/10+Co/15+Sn/2+Sb/2
---(2)
但し、C,Mn,Cr,Mo,V,Ni,Cu,W,Co,Sn,Sbはそれぞれ、各元素の成分含有量(mass%)
ACR={Ca−(0.18+130×Ca)×O}/(1.25×S) ---(3)
但し、Ca,O,Sはそれぞれ、各元素の成分含有量(mass%)
2.鋼材が、さらに、
Nb:0.001〜0.1mass%、
Zr:0.001〜0.1mass%および
V:0.002〜0.2mass%
のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする上記1に記載の大入熱溶接部靭性に優れた高強度船舶用耐食鋼材。
3.鋼材が、さらに、
B:0.0002〜0.003mass%
を含有することを特徴とする上記1または2に記載の大入熱溶接部靭性に優れた高強度船舶用耐食鋼材。
4.鋼材が、さらに、
REM:0.0001〜0.015mass%、
Mg:0.0001〜0.01mass%および
Y:0.0001〜0.1mass%
のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の大入熱溶接部靭性に優れた高強度船舶用耐食鋼材。
5.鋼材が、さらに、
Se:0.0005〜0.50mass%
を含有することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の大入熱溶接部靭性に優れた高強度船舶用耐食鋼材。
6.前記鋼材の表面に、エポキシ系塗膜を塗装してなることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の大入熱溶接部靭性に優れた高強度船舶用耐食鋼材。
7.前記鋼材の表面に、ジンクプライマー塗膜を塗装してなることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の大入熱溶接部靭性に優れた高強度船舶用耐食鋼材。
8.前記鋼材の表面に、ジンクプライマー塗膜とエポキシ系塗膜とを塗装してなることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の大入熱溶接部靭性に優れた高強度船舶用耐食鋼材。
9.上記1〜5のいずれか1項に記載の成分組成に溶製後、凝固させて鋼素材とするに際し、溶存酸素量:0.0030mass%以下に調整した直後の溶鋼に、下記(3)式で示されるACR値が0を超え1.00未満となるCa量を添加することを特徴とする大入熱溶接部靭性に優れた高強度船舶用耐食鋼材の製造方法。

ACR={Ca−(0.18+130×Ca)×O}/(1.25×S) ---(3)
但し、Ca,O,Sはそれぞれ、各元素の成分含有量(mass%)
本発明によれば、強度が高く、船舶のバラストタンク等の厳しい海水腐食環境下においても、優れた塗装耐食性を発揮して、補修塗装までの期間の延長が可能で、しかも補修塗装の作業軽減を図ることができ、さらには大入熱溶接を行った場合において、溶接部靭性に優れた船舶用耐食鋼材を得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、鋼材の成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。
C:0.01〜0.25mass%
Cは、鋼材強度を上昇させるのに有効な元素であり、本発明では所望の強度を得るために0.01mass%以上の含有を必要とする。一方、0.25mass%を超える含有は、溶接熱影響部の靭性を低下させる。よって、Cは0.01〜0.25mass%の範囲とする。好ましくは0.03〜0.20mass%の範囲であり、さらに好ましくは、0.05〜0.16mass%の範囲である。
Si:0.05〜0.50mass%
Siは、脱酸剤として、また、鋼材の強度を高めるために添加される元素であり、本発明では0.05mass%以上を含有させる。しかしながら、0.50mass%を超える添加は、鋼の靭性を劣化させるので、Siの上限は0.50mass%とする。
Mn:0.1〜2.0mass%
Mnは、熱間脆性を防止し、鋼材の強度を高める効果がある元素であり、0.1mass%以上添加する。しかしながら、2.0mass%を超えるMnの添加は、鋼の靭性および溶接性を低下させるため、2.0mass%以下とする。好ましくは、0.9〜1.6mass%の範囲である。
P:0.035mass%以下
Pは、鋼の母材靭性のみならず、溶接性および溶接部靭性を劣化させる有害な元素であるので、極力低減することが望ましい。特に、Pの含有量が0.035mass%を超えると、母材靭性および溶接部靭性の低下が大きくなる。よって、Pは0.035mass%以下とする。好ましくは、0.025mass%以下である。さらに好ましくは、0.010mass%以下である。
S:0.0002〜0.01mass%
Sは、溶鋼凝固時にCaSを微細分散状態で晶出させ、その上にMnS、あるいはさらにその上にTiN等を析出させてフェライト生成核として機能させるために少なくとも0.0002mass%の含有を必要とするが、過剰の含有は母材靭性および溶接部靭性を劣化させるので、S量は0.0002〜0.01mass%の範囲とする。なお、好ましくは0.0005〜0.0050mass%の範囲である。さらに好ましくは、0.0010〜0.0050mass%の範囲である。
Al:0.10mass%以下
Alは、脱酸剤として添加するが、0.10mass%を超える含有は、溶接部靭性に悪影響を及ぼすので、0.10mass%以下に制限した。
Ti:0.005〜0.030mass%
Tiは、Nとの親和力が強くTiNとして析出して、溶接熱影響部でのオーステナイト粒の粗大化を抑制し、あるいはフェライト生成核として溶接熱影響部の高靭性化に寄与する。かような効果は、0.005mass%以上の含有で認められるが、0.030mass%を超えて含有されるとTiN粒子が粗大化して前記効果が期待できなくなる。このため、Tiは0.005〜0.030mass%の範囲で含有させるものとする。
N:0.0015〜0.0070mass%
Nは、Tiと結合してTiNとして析出して、溶接熱影響部でのオーステナイト粒の粗大化を抑制し、あるいはフェライト生成核として溶接熱影響部の高靭化に寄与する。このような効果を有するTiNを必要量確保するためには、Nは0.0015mass%含有させる必要がある。一方、0.0070mass%を超えて含有されると、溶接熱によりTiNが溶解する温度まで加熱される領域では固溶N量が増加し、靭性の著しい低下を招く。このため,Nは0.0015〜0.0070mass%の範囲で含有させるものとする。
O:0.0030mass%以下
Oは、不可避的不純物として混入し、鋼中では酸化物として存在し、清浄度を低下させるので、本発明においては、極力低減することが好ましい。O含有量が0.0030mass%を超えるとCaO系介在物が粗大化して、靭性に悪影響を及ぼす。また、本発明では、晶出物としてCaSを得るために、Caとの結合力が強いOはCa添加前に、脱ガスを強化するか、もしくは脱酸剤を投入するかなどして、溶鋼中のOを0.0030mass%以下に低減しておくことが好ましい。
Ca:0.0005〜0.0030mass%
Caは、硫化物の形態を制御して鋼の靭性向上に寄与する元素である。このような効果を発揮させるためには、少なくとも0.0005mass%含有することが必要である。一方、0.0030mass%を超えて含有しても、その効果は飽和する。このため、Ca含有量は0.0005〜0.0030mass%の範囲に制限した。なお、後述するように、本発明にかかる製造方法において、Caは、CaSとして鋼材中に微細かつ均一に分散し、MnSと複合化してフェライト生成核として作用することにより、溶接部靭性向上に寄与する、重要な元素の一つである。
W:0.01〜0.5mass%およびMo:0.02〜0.5mass%のうちから選んだ1種または2種
Wは、上述したように、ジンクプライマーが存在しない状態でも、エポキシ塗膜の存在下で耐食性を顕著に向上する。従って、本発明の鋼材においては、最も重要な耐食性向上元素の1つである。上記の効果は、W:0.01mass%以上の含有で発現する。しかしながら、Wの含有量が0.5mass%を超えると、その効果が飽和する。よって、Wの含有量は0.01〜0.5mass%の範囲に限定した。好ましくは、0.02〜0.3mass%の範囲である。
Wが、上記の耐食性向上効果を呈する理由は、鋼板が腐食するに伴って、生成する錆の中にWO 2−が生成し、このWO 2−の存在によって、塩化物イオンが鋼板表面に侵入するのが抑制され、さらに、鋼板表面のアノード部などのpHが下がった部位で、難溶性のFeWOが生成し、このFeWOの存在によっても、塩化物イオンの鋼板表面への侵入が抑制され、塩化物イオンの鋼板表面への侵入が抑制されることによって、鋼板の腐食が効果的に抑制されるからである。また、WO 2−の鋼材表面への吸着によるインヒビター作用によっても、鋼の腐食が抑制されるからである。
Moは、ジンクプライマーが存在しない状態でも、エポキシ塗膜の存在下で耐食性を向上させる。従って、本発明の鋼材においては、重要な耐食性向上元素の1つである。上記の効果は、Mo:0.02mass%以上の含有で発現する。しかしながら、Moの含有量が0.5mass%超えると、その効果が飽和する。よって、Moの含有量は0.02〜0.5mass%の範囲に限定した。好ましくは、0.03〜0.35mass%の範囲である。
Moが、上記の耐食性向上効果を有する理由は、Wと同様、鋼板が腐食するのに伴って、生成する錆の中にMoO 2−が生成し、このMoO 2−の存在によって、塩化物イオンが鋼板表面に侵入するのが抑制され、塩化物イオンの鋼板表面への侵入が抑制されることによって、鋼板の腐食が効果的に抑制されるからである。
WとMoは、酸素酸を形成する点において一致するので、両元素を選択あるいは併用して含有させることができる。
なお、Moに対し、WはpHの低い環境下でも難溶性のFeWOが生成し易く、また鋼材表面への吸着によるインヒビター効果が高いという利点があり、そのため,WはMoよりもその含有量が少なくても、優れた耐食性を発揮する。
Sn:0.001〜0.2mass%およびSb:0.01〜0.2mass%のうちから選んだ1種または2種
SnおよびSbはいずれも、ジンクプライマーが存在しない状態でも、耐食性を向上させる効果がある。このSn,Sbの効果は、鋼板表面のアノード部など、pHが下がった部位での腐食を抑制するためである。この効果は、Snでは0.001mass%以上の含有で、Sbでは0.01mass%以上の含有で発現するが、いずれも0.2mass%を超える含有では、母材靭性および溶接熱影響部靭性を劣化させる。そのため、Snは0.001〜0.2mass%、Sbは0.01〜0.2mass%の範囲に限定する。
Cu:0.05〜0.35mass%、Ni:0.05〜0.40mass%、Cr:0.05〜0.20mass%およびCo:0.05〜0.50mass%のうちから選んだ1種または2種以上
Cu,Ni,CrおよびCoはいずれも、ジンクプライマーが存在しない状態で塗装耐食性を劣化させるため、塗装耐食性の観点からは、これらの含有量をできるだけ低減するのが好ましい。しかしながら、Cu,Ni,Cr,Coは、強度向上元素でもあるため、強度向上の観点からは、後述する塗装耐食性指標式ACP値が0.50以下で、かつ溶接部靭性の指標式であるWI値が0.50以下を満足する範囲で含有させることができる。これらの元素はいずれも、含有量が0.05mass%以上で強度向上効果が顕著となるが、一方で、Cuは、0.35mass%を超えると、Niは0.40mass%を超えると、Crは0.20mass%を超えると、Coは0.50mass%を超えると、それ自体で溶接熱影響部の劣化やコスト上昇を招くだけでなく、ACP値を満たすためにWやMo,Sn,Sbを必要以上に多く添加する必要が生じ、やはりコストの上昇を招き、さらにWI値が大きくなって溶接熱影響部の劣化を招くので、Cu,Ni,CrおよびCoはそれぞれ上記の範囲で含有させるものとした。
以上、基本成分について説明したが、本発明では、上記の成分組成範囲を満足するだけでは不十分で、次式(1)、(2)および(3)に示すACP値、WI値およびACR値について所定の範囲を満足させる必要がある。
ACP値:0.50以下
ACP={1−(0.8×W+0.5×Mo)0.3}×{1−(Sn+0.4×Sb)0.3}
×(1+Cr)×(1+0.7×Cu)×(1+0.5×Ni)×(1+0.5×Co) ---(1)
但し、W,Mo,Sn,Sb,Cr,Cu,Ni,Coはそれぞれ、各元素の成分含有量(mass%)
このACP値は、塗装耐食性の指標となるものであり、塗装耐食性に有効なW,Mo,Sn,Sbの含有量が多いほど、また塗装耐食性に有害であるCr,Cu,Ni,Coの含有量が少ないほど、塗装耐食性は向上し、ACP値が0.50以下で所望の塗装耐食性を得ることができる。
WI値:0.50以下
WI=C+Mn/6+Cr/5+Mo/5+V/5+Ni/15+Cu/15+W/10+Co/15+Sn/2+Sb/2
---(2)
但し、C,Mn,Cr,Mo,V,Ni,Cu,W,Co,Sn,Sbはそれぞれ、各元素の成分含有量(mass%)
このWI値は、溶接部靭性の指標となるものである。(2)式中の各元素は、鋼材の強度を向上させるのに有効であるが、一方で溶接部靭性を劣化させる元素である。しかしながら、WI値を0.50以下の範囲での各元素の含有であれば、所望の溶接部靭性を得ることができる。
ACR値:0を超え、1.00未満
ACR={Ca−(0.18+130×Ca)×O}/(1.25×S) ---(3)
但し,Ca,O,Sはそれぞれ、各元素の成分含有量(mass%)
このACR値は、溶接熱影響部靭性の指標となるものである。ACR値が0以下では、溶製段階でCaSが晶出しないため、MnSがCaSとの複合硫化物にならず単独で析出し、圧延で伸長された形態で鋼材中に存在するので、母材の靭性低下を惹起するとともに、溶接熱影響部靭性の向上が達成されない。一方、ACRが1.00以上では、SがCaにより完全に固定され、フェライト生成核として働くMnSがCaS上に析出しなくなるため、溶接熱影響部靭性の向上が達成されない。この点、ACR値を0を超え1.00未満とすることにより、CaS上にMnSが析出して複合硫化物の微細分散状態が実現される。この複合硫化物がフェライト生成核として機能し、溶接熱影響部の組織が微細化され、溶接熱影響部靭性が向上するのである。
また、本発明では、上記した基本成分の他、以下に述べる成分を必要に応じて適宜含有させることができる。
Nb:0.001〜0.1mass%、Zr:0.001〜0.1mass%およびV:0.002〜0.2mass%のうちから選んだ1種または2種以上
Nb,Zr,Vはいずれも、鋼材強度を高める元素であり、必要とする強度に応じて選択して含有させることができる。このような効果を得るためには、Nb,Zrはそれぞれ0.001mass%以上、Vは0.002mass%以上含有させることが好ましい。しかしながら、Nb,Zrは0.1mass%を超えて、Vは0.2mass%を超えて含有されると、靭性が低下するため、Nb,Zr,Vは、上記値を上限として含有させることが好ましい。
B:0.0002〜0.003mass%
Bは、鋼材の強度を高める元素であり、必要に応じて含有させることができる。このような効果を得るためには、0.0002mass%以上含有することが好ましいが、0.003mass%を超えて添加すると、靭性が劣化する。よって、Bは0.0002〜0.003mass%の範囲で含有させることが好ましい。
REM:0.0001〜0.015mass%,Mg:0.0001〜0.01mass%、Y:0.0001〜0.1mass%のうちから選んだ1種または2種以上
REM,Mg,Yはいずれも、溶接熱影響部の靭性向上に効果のある元素であり、必要に応じて選択して含有することができる。この効果は、REM:0.0001mass%以上、Mg:0.0001mass%以上,Y:0.0001mass%以上の含有で得られるが、REMは0.015mass%を超えて、Mgは0.01mass%を超えて、Yは0.1mass%を超えてそれぞれ含有されると、かえって靭性の低下を招くので、REM,Mg,Yは、それぞれ上記の範囲で含有させるのが好ましい。
Se:0.0005〜0.50mass%
Seは、鋼材の強度を高める元素であり、必要に応じて含有させることができる。この効果を得るためには,0.0005mass%以上含有させることが好ましいが、0.50mass%を超えて含有させると、靭性が劣化する。よって、Seは0.0005〜0.50mass%の範囲で含有させるのが好ましい。
本発明の鋼材において、上記以外の成分は、Feおよび不可避的不純物である。但し、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記以外の成分の含有を拒むものではない。
次に、本発明の鋼材の製造方法について説明する。
上記した好適成分組成になる溶鋼を、転炉や電気炉等の公知の炉で溶製し、連続鋳造法や造塊法等の公知の方法でスラブやビレット等の鋼素材とする。なお、溶製に際して、真空脱ガス精錬等を実施してもよい。
溶鋼の成分調整方法は、公知の鋼製錬方法に従えばよいが、次の2点については、特に留意する必要がある。
第1点は、Caを添加する直前の溶鋼中の溶存酸素量を、0.0030mass%以下に調整することである。これにより、Ca酸化物の生成が抑制され、CaSが効果的に晶出する。CaSは,溶鋼中で酸化物に比べて低温で晶出するため、凝固後の鋳片内で微細かつ均一に分散させることができる。このようなCaSの微細分散粒子は、MnSと複合して溶接時にフェライト生成核として作用し、溶接部靭性の向上に寄与する。Ca酸化物の生成を抑制する観点から、溶存酸素量のより好ましい範囲は0.0015mass%以下であり、さらに好ましい範囲は,0.0005mass%以下である。
第2点は、溶存酸素量を上記の第1点で述べた範囲内とした上で、溶鋼中にCaを、前記ACR値が0を超えて1.00未満の範囲になるように添加することである。このような手順でCaを添加することにより、溶接熱影響部の組織を微細化し、溶接熱影響部靭性を向上させることができる。
なお、実際の操業において、Caを添加する際には、溶鋼中のSの含有量を監視して、それに応じてCaの添加量を決定すればよい。また、溶鋼中にSが不足する場合には、不足分のSを添加することもできる。
次いで、上記の鋼素材を所望の寸法形状に熱間圧延する際には、結晶粒粗大化防止の観点から、鋼素材を1050〜1250℃の温度に加熱するのが好ましい。なお、鋼素材の温度が、熱間圧延が可能な程度に高温である場合は、そのまま熱間圧延をしてよい。また、高温の鋼素材の温度分布が大きい場合には、均熱になる程度に加熱したのち熱間圧延することが好ましい。
ただし、熱間圧延後における鋼板の強度を確保するためには、熱間仕上圧延終了温度および熱間仕上圧延終了後の冷却速度を適正化することが好ましい。熱間仕上圧延の終了温度は700℃以上、熱間仕上圧延終了後の冷却速度は、空冷または150℃/s以下の加速冷却とすることが好ましい。なお、冷却後、再加熱処理を施してもよい。
表1に示す成分組成になる溶鋼を、真空溶解炉で溶製または転炉溶製後、連続鋳造によりスラブとした。ついで、スラブを加熱炉に装入して1150℃に加熱後、熱間圧延により30mm厚の鋼板とした。これらの鋼板について、母材の引張特性(YS、TS、EL)および衝撃特性(vE(-40℃))を調査した。また、大入熱溶接部靭性として、入熱200kJ/cmの溶接熱影響部1mm(ヒュージョンラインから母材側に1mm入った箇所)相当の再現熱サイクルを付与し、シャルピー衝撃試験により−20℃での吸収エネルギーvE(−20℃)を測定した。
さらに、上記の鋼板から、3mmt×50mmW×150mmLの試験片を採取し、その試験片の表面をショットブラストして、表面のスケールや油分を除去したのち、試験片表面にタールエポキシ樹脂塗料(約100μm)の単層被膜を塗装した試験片を作製した。
耐食性は、塗膜の上からカッターナイフで地鉄表面まで達する80mmの長さのスクラッチ疵を一文字状に付与しておき、以下の条件の腐食試験後に、スクラッチ疵の周囲に発生した塗膜膨れ面積により評価した。
・腐食試験:実船のバラストタンクの上甲板裏に相当する腐食環境を模擬した、(35℃、5%NaCl溶液噴霧、2hr)→(60℃、RH25%、4hr)→(50℃、RH95%、2hr)を1サイクルとする試験を132サイクル行った。
表2に腐食試験結果と機械的特性調査結果を示す。
また、図3に、ACP値と塗膜膨れ面積の関係を示す。
さらに、図4は、表1および表2からまとめた、ACR値と再現熱サイクル付与材のシャルピー衝撃試験における-20℃での吸収エネルギーとの関係を示す。
Figure 0005076961
Figure 0005076961
図3より、ACP値が小さいほど、塗膜膨れ面積が小さくなっていることが分かる。また、表2から、本発明の成分組成およびACP値を満たす発明例のNo.1〜24の鋼は、ベース鋼であるNo.25の鋼に対して、塗膜膨れ面積が、50%以下であり、良好な塗装耐食性を有していることが分かる。また、発明例のNo.1〜24の鋼は、ベース鋼に比べて強度も向上している。
さらに、図4から、ACR値が0を超え1.00未満の範囲では、溶接熱影響部靭性が良好な値を示していることが分かる。実際、このACR値が所定範囲を満足する発明例のNo.1〜24の鋼はいずれも、母材機械的特性のみならず大入熱溶接部衝撃特性にも優れている。
これに対して、本発明の成分組成およびACP値を満たさないNo.26〜29の鋼の塗膜膨れ面積は、ベース鋼であるNo.25の鋼に対して、小さくなっているとはいえ、その面積はベース鋼に対して50%超えであり、十分な塗装耐食性を有しているとは言えない。
また、No.30〜35の鋼は、本発明の成分組成は満たすものの、ACP値が規定を満たさないため、塗膜膨れ面積は、ベース鋼に対して50%超えとなっており、十分な塗装耐食性を有していない。
No.36、37、39〜41の鋼は、本発明の耐食性改善成分(W,Mo,SnおよびSb)およびACP値を満たしているため、塗膜膨れ面積はベース鋼に対して50%以下となっており、十分な塗装耐食性を示すが、溶接部衝撃特性は、50J以下であり、十分な衝撃特性は得られていない。その理由は、それぞれ次のとおりである。
・No.36鋼:WI値が上限値(0.50)を超えている。
・No.37鋼:N量が上限値(0.007mass%)を超えている。
・No.39鋼:Ca量が下限値(0.0005mass%)未満、かつACR値が下限値(0)以下。
・No.40鋼:O量が上限値(0.0030mass%)を超え、かつACR値が下限値(0)以下。
・ No.41鋼:ACR値が上限値(1.00)以上。
No.38の鋼は、Ti量が上限値(0.030mass%)を超えているため、十分な溶接部衝撃特性が得られておらず、かつ、ACP値が規定を満たさないため、塗膜膨れ面積はベース鋼に対して50%超えとなっており、十分な塗装耐食性を有していない。
本発明の船舶用耐食鋼材は、バラストタンク内の腐食環境下において、優れた塗装耐食性を示し、過酷な腐食環境に置かれるバラストタンクへ適用した場合、その優れた塗装耐食性から、補修再塗装等の保守費用を大幅に削減できる。さらに優れた大入熱溶接部靭性を示すので、造船時に大入熱溶接を適用でき、溶接施工の高能率化という効果を奏する。そのため、産業上その貢献度は極めて大である。なお、本鋼材は、海水による腐食環境下で優れた塗装耐食性を示すので、船舶のバラストタンクだけでなく、他の類似の海水による腐食環境で使用される用途にも用いることができる。
鋼中元素であるW,Mo,SnおよびSbが塗装耐食性に及ぼす影響を示したグラフである。 塗装耐食性の評価試験要領を示した図である。 ACP値と塗膜膨れ面積との関係を示したグラフである。 ACR値と再現熱サイクル付与材のシャルピー衝撃試験における−20℃での吸収エネルギー[vE(−20℃)]との関係を示したグラフである。

Claims (9)

  1. C:0.01〜0.25mass%、
    Si:0.05〜0.50mass%、
    Mn:0.1〜2.0mass%、
    P:0.035mass%以下、
    S:0.0002〜0.01mass%、
    Al:0.10mass%以下、
    Ti:0.005〜0.030mass%、
    N:0.0015〜0.0070mass%,
    O:0.0030mass%以下および
    Ca:0.0005〜0.0030mass%
    を含有し、かつ
    W:0.01〜0.5mass%および
    Mo:0.02〜0.5mass%
    のうちから選んだ1種または2種を含有し、かつ
    Sn:0.001〜0.2mass%および
    Sb:0.01〜0.2mass%
    のうちから選んだ1種または2種を含有し、かつ
    Cu:0.05〜0.35mass%
    Ni:0.05〜0.40mass%
    Cr:0.05〜0.20mass%および
    Co:0.05〜0.50mass%
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、さらに下記(1)式で示すACP値が0.50以下、かつ下記(2)式で示すWI値が0.50以下、かつ下記(3)式で示すACR値が0を超え1.00未満、を満足することを特徴とする大入熱溶接部靭性に優れた高強度船舶用耐食鋼材。

    ACP={1−(0.8×W+0.5×Mo)0.3}×{1−(Sn+0.4×Sb)0.3}
    ×(1+Cr)×(1+0.7×Cu)×(1+0.5×Ni)×(1+0.5×Co) ---(1)
    但し、W,Mo,Sn,Sb,Cr,Cu,Ni,Coはそれぞれ、各元素の成分含有量(mass%)
    WI=C+Mn/6+Cr/5+Mo/5+V/5+Ni/15+Cu/15+W/10+Co/15+Sn/2+Sb/2
    ---(2)
    但し、C,Mn,Cr,Mo,V,Ni,Cu,W,Co,Sn,Sbはそれぞれ、各元素の成分含有量(mass%)
    ACR={Ca−(0.18+130×Ca)×O}/(1.25×S) ---(3)
    但し、Ca,O,Sはそれぞれ、各元素の成分含有量(mass%)
  2. 鋼材が、さらに、
    Nb:0.001〜0.1mass%、
    Zr:0.001〜0.1mass%および
    V:0.002〜0.2mass%
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の大入熱溶接部靭性に優れた高強度船舶用耐食鋼材。
  3. 鋼材が、さらに、
    B:0.0002〜0.003mass%
    を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の大入熱溶接部靭性に優れた高強度船舶用耐食鋼材。
  4. 鋼材が、さらに、
    REM:0.0001〜0.015mass%、
    Mg:0.0001〜0.01mass%および
    Y:0.0001〜0.1mass%
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の大入熱溶接部靭性に優れた高強度船舶用耐食鋼材。
  5. 鋼材が、さらに、
    Se:0.0005〜0.50mass%
    を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の大入熱溶接部靭性に優れた高強度船舶用耐食鋼材。
  6. 前記鋼材の表面に、エポキシ系塗膜を塗装してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の大入熱溶接部靭性に優れた高強度船舶用耐食鋼材。
  7. 前記鋼材の表面に、ジンクプライマー塗膜を塗装してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の大入熱溶接部靭性に優れた高強度船舶用耐食鋼材。
  8. 前記鋼材の表面に、ジンクプライマー塗膜とエポキシ系塗膜とを塗装してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の大入熱溶接部靭性に優れた高強度船舶用耐食鋼材。
  9. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の成分組成に溶製後、凝固させて鋼素材とするに際し、溶存酸素量:0.0030mass%以下に調整した直後の溶鋼に、下記(3)式で示されるACR値が0を超え1.00未満となるCa量を添加することを特徴とする大入熱溶接部靭性に優れた高強度船舶用耐食鋼材の製造方法。

    ACR={Ca−(0.18+130×Ca)×O}/(1.25×S) ---(3)
    但し、Ca,O,Sはそれぞれ、各元素の成分含有量(mass%)
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