JP5526667B2 - 耐食性に優れる船舶のバラストタンク用熱間圧延形鋼およびその製造方法 - Google Patents

耐食性に優れる船舶のバラストタンク用熱間圧延形鋼およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、石炭や鉱石の運搬船、原油タンカー、LPGやLNGの運搬船、ケミカルタンカー、コンテナ船、ばら積み船、木材専用船、チップ専用船、冷凍運搬船、自動車専用船、重量物船、RORO船、石灰石専用船、セメント専用船等の各種船舶に用いられる船舶用形鋼に関し、特に、厳しい海水による腐食環境下にあるバラストタンクの縦通材(ロンジ材)等に用いられる船舶用熱間圧延形鋼とその製造方法に関するものである。ここで、上記熱間圧延形鋼とは、具体的には、等辺山形鋼、不等辺山形鋼、不等辺不等厚山形鋼、溝形鋼、球平形鋼、T形鋼などの熱間圧延によって製造されたものを言う。
船舶のバラストタンクは、積荷がない時に、海水を注入して船舶の安定航行を可能とする役目を担うものであるため、海水による厳しい腐食を受ける環境下におかれている。そこで、バラストタンクに用いられる鋼材には、通常、防食のためにエポキシ樹脂塗膜形成による防食と電気防食とが施されている。
しかし、それらの防食対策を講じても、バラストタンクの腐食環境は依然として厳しい状態にある。たとえば、バラストタンクに海水を注入しているときは、海水に完全に浸されている部分は、電気防食が機能するため、腐食を効果的に抑制することができる。しかし、バラストタンクの最上部付近、特に上甲板の裏側部分は、海水に漬かることがなく、海水の飛沫のみを浴びる状態におかれているため、この部位では、電気防食が機能しない。さらに、この部位は、太陽光によって鋼板温度が上昇するため、腐食環境はより厳しいものとなる。一方、バラストタンクに海水が注入されていないときは、電気防食が全く働かないため、残留付着した塩分によって、激しい腐食を受けることになる。
そのため、上記のような激しい腐食環境下にあるバラストタンクの防食塗膜の寿命は、一般に約10年と言われており、船舶の寿命(約20年)の半分程度である。従って、残りの10年間は、補修塗装等の処理を施すことよって、耐食性を維持しているのが実情である。しかし、バラストタンクの腐食環境は非常に厳しいものがあるため、補修塗装を行ってもその効果を長時間持続させるのは難しい。また、補修塗装は、狭い空間での作業となるため、好ましい作業環境ではない。そこで、補修塗装までの期間をできる限り延長すると共に、作業負荷を軽減できる耐食性に優れた鋼材の開発が望まれている。
このような背景から、バラストタンク等、厳しい腐食環境下で用いられる鋼材自体の耐食性を向上する技術が幾つか提案されている。たとえば、特許文献1には、C:0.20mass%以下の鋼に、耐食性改善元素として、Cu:0.05〜0.50mass%、W:0.01〜0.05mass%未満を添加し、さらに、Ge,Sn,Pb,As,Sb,Bi,TeおよびBeのうちの1種または2種以上を0.01〜0.2mass%添加した耐食低合金鋼が開示されている。また、特許文献2には、C:0.20mass%以下の鋼材に、耐食性改善元素として、Cu:0.05〜0.50mass%、W:0.05〜0.5mass%を添加し、さらに、Ge,Sn,Pb,As,Sb,Bi,TeおよびBeのうちの1種もしくは2種以上を0.01〜0.2mass%添加した耐食性低合金鋼が開示されている。また、特許文献3には、C:0.15mass%以下の鋼に、Cu:0.05mass%以上0.15mass%未満、W:0.05〜0.5mass%を添加した耐食性低合金鋼が開示されている。
また、特許文献4には、C:0.15mass%以下の鋼に、耐食性改善元素として、P:0.03〜0.10mass%、Cu:0.1〜1.0mass%、Ni:0.1〜1.0mass%を添加した低合金耐食鋼材に、タールエポキシ塗料、ピュアエポキシ塗料、無溶剤型エポキシ塗料、ウレタン塗料等の防食塗料を塗布して樹脂被覆したバラストタンクが開示されている。この技術は、鋼材自身の耐食性向上により防食塗装の寿命を延長し、船舶の使用期間である20〜30年に亘ってメンテナンスフリー化を実現しようとするものである。
また、特許文献5には、C:0.15mass%以下の鋼に、耐食性改善元素として、Cr:0.2〜5mass%を添加して耐食性を向上し、船舶のメンテナンスフリー化を実現しようとする提案がなされている。さらに、特許文献6には、C:0.15mass%以下の鋼に、耐食性改善元素として、Cr:0.2〜5mass%を添加した鋼材を構成材料として使用すると共に、バラストタンク内部の酸素ガス濃度を大気中の値に対して0.5以下の比率とすることを特徴とするバラストタンクの防食方法が提案されている。
また、特許文献7には、C:0.1mass%以下の鋼に、Cr:0.5〜3.5mass%を添加することで耐食性を向上し、船舶のメンテナンスフリー化を実現しようとする提案がなされている。さらに、特許文献8には、C:0.001〜0.025mass%の鋼に、Ni:0.1〜4.0mass%を添加することで、耐塗膜損傷性を向上し、補修塗装などの保守費用を軽減する船舶用鋼材が開示されている。
また、特許文献9には、C:0.01〜0.25mass%の鋼に、Cu:0.01〜2.00mass%、Mg:0.0002〜0.0150mass%を添加することで、船舶外板、バラストタンク、カーゴオイルタンク、鉱炭石カーゴホールド等の使用環境においても耐食性を有する船舶用鋼が開示されている。さらに、特許文献10には、C:0.001〜0.2mass%の鋼において、Mo,WとCuとを複合添加し、不純物であるP,Sの含有量を低減することにより、原油油槽で生じる全面腐食、局部腐食を抑制する鋼が開示されている。
しかしながら、上記の特許文献1〜3では、バラストタンク等を構成する鋼材に通常塗布されているジンクエポキシ樹脂塗料等の塗膜存在下における耐食性については十分な検討がなされていない。また、特許文献4の鋼材は、下地金属の耐食性を向上させるために、Pを0.03〜0.10mass%と比較的多量に添加しており、溶接性および溶接部靭性の点で問題がある。また、特許文献5および特許文献6の鋼材は、Crを0.2〜5mass%含有し、また、特許文献7の鋼材は、Crを0.5〜3.5mass%と比較的多く含有しているため、いずれも溶接性および溶接部靭性に問題がある他、製造コストが高くなるという問題がある。
また、特許文献8の鋼材は、C含有量が低く、Ni含有量が高いため、製造コストが高くなるという問題がある。さらに、特許文献9の鋼材は、Mgの添加を必須としているため、製鋼歩留りが安定せず、鋼材の機械的特性も安定しないという問題がある。さらに、特許文献10の鋼材は、HSが存在する環境下で使用される原油油槽用の耐食鋼であり、HSが存在しないバラストタンクでの耐食性は不明である。さらに、バラストタンク用鋼材に一般的に使用されているジンクプライマー塗装が施された状態での耐食性については検討がなされていない。
したがって、バラストタンクに用いられる従来技術の鋼材には、塗膜存在下での耐食性を含めて、さらなる改善の余地が残されている。
ところで、一般に、船舶は、厚鋼板や薄鋼板、形鋼、棒鋼等の各種鋼材を溶接して建造されているが、これらの鋼材、中でも厚鋼板や形鋼は、使用量低減によるコスト削減や安全性確保の観点から、高強度化が進められている。そこで、厚鋼板の熱間圧延による製造においては、炭素当量を低めて高い溶接性を付与した鋼素材を、制御圧延と制御冷却を組み合わせたTMCP(Thermo−mechanical control process)を採用して、第2相として硬質のベイナイト組織を導入することで、降伏応力YSが315MPa以上の高強度化を達成している。
一方、バラストタンクのロンジ材等に使用される鋼材、中でも、不等辺不等厚山形鋼やT形鋼などの熱間圧延により製造される形鋼は、同じ船舶に用いられる厚鋼板などと比較して断面形状・寸法が複雑であり、製品に歪みや強度むらを発生しやすいという問題がある。そのため、形鋼の圧延においては、圧延途中での曲がりや反り等の歪を配慮しながら、製造する必要があるため、たとえば、降伏応力YSが235MPa以上で引張強さTS:400MPa以上のような高強度材の造り込み手段として、厚鋼板と同様の制御圧延・加速冷却プロセスするTMCPを採用するのは難しいという問題がある。
この問題に対しては、例えば、特許文献11に開示されているように、鋼素材を熱間圧延して製造する際に、フランジ(短辺側)部の表面温度が800〜600℃となるように仕上圧延することが行なわれている。しかし、この方法では、仕上圧延時に、温度調整のための待機時間が発生し、圧延能率の低下や製造コストの上昇を招くため、上記待機時間の発生のない製造方法の開発が望まれている。
特開昭48−050921号公報 特開昭48−050922号公報 特開昭48−050924号公報 特開平07−034197号公報 特開平07−034196号公報 特開平07−034270号公報 特開平07−310141号公報 特開2002−266052号公報 特開2000−017381号公報 特開2004−204344号公報 特開2007−216251号公報
船舶に使用されている鋼材の表面には、普通、防食塗装が施されている。上記防食塗装は、一次防錆として、ジンクプライマーを塗布し、小組み後あるいは大組み後に、二次塗装(本塗装)として、エポキシ樹脂塗装が施されるのが一般的である。したがって、船舶の鋼材表面の大部分は、ジンクプライマーとエポキシ樹脂の2層構造の防食塗装が施されている。しかし、鋼材の溶接部は、溶接時の熱によってジングプライマーが焼失するため、溶接後から本塗装までの間の防錆対策として、ジンクプライマーによる補修塗装(タッチアップ)が施されることがあるが、本塗装までの期間が短い場合には、補修塗装が行われないこともある。また、建造後、長年に亘って使用された船舶では、上記塗膜が劣化し、防錆機能を十分に果たしていない部分があったり、塗膜が剥離して鋼材表面が裸状態になっていたりする部分が存在する。
つまり、就航している船舶の鋼材の表面には、ジンクプライマーとエポキシ樹脂の2層塗膜が存在している部分と、エポキシ樹脂の塗膜のみの部分と、裸状態の部分の3つの状態が存在する。したがって、船舶の耐食性を向上させるという目的を達成するためには、それらのいずれの状態においても優れた耐食性を示す船舶用鋼材であることが必要とされる。
さらに、前述したように、バラストタンクのロンジ材等に使用される鋼材、中でも、不等辺不等厚山形鋼やT形鋼などの熱間圧延により製造される形鋼では、高強度を達成する手段として、厚鋼板と同様のTMCPを採用するのは難しい。したがって、降伏応力YSが235MPa以上で、引張強さTSが400MPa以上のような高強度形鋼を熱間圧延で製造するためには、独自の製造方法を検討する必要がある。
そこで、本発明の目的は、船舶のバラストタンク等の厳しい腐食環境下において、塗膜の存在状態に左右されることなく優れた耐食性を発揮して、補修塗装までの期間の延長が可能となり、ひいては補修塗装の作業軽減を図ることができる耐食性に優れる船舶のバラストタンク用熱間圧延形鋼を提供するとともに、熱間圧延における歪や強度むらを起こすことなく高い生産性をもって製造することができる船舶のバラストタンク用熱間圧延形鋼の製造方法を提案することにある。
発明者らは、海水による厳しい腐食を受ける環境下でも表面状態(塗膜の存在状態)に左右されることなく優れた耐食性を発揮すると共に、降伏応力YSが235MPa以上の高強度を有する形鋼の開発に向けて鋭意研究を重ねた。その結果、耐食性向上のための必須元素として、W,CrおよびNbを複合添加することによって、ジンクプライマーとエポキシ樹脂の2層塗膜存在下のみならず、エポキシ樹脂塗膜存在下および無塗装の裸状態のいずれの状態においても優れた耐食性を発揮する船舶用形鋼が得られること、および、これにさらに、Sb,Sn等の耐食性向上元素を適正量添加することにより、より優れた耐食性を示す船舶用形鋼が得られること、そしてさらに、上記のようにNbを必須元素として添加したことによって、熱間圧延での仕上温度を800℃超としても、圧延後の鋼組織が加工フェライトを含まないフェライトとパーライトからなる組織でありながら、所期した高強度化を達成することができるので、生産性や溶接性等を阻害することなく、安価に船舶用形鋼を製造し得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、C:0.05〜0.20mass%、Si:0.05〜0.50mass%、Mn:0.1〜2.0mass%、P:0.025mass%以下、S:0.01mass%以下、Al:0.005〜0.10mass%、W:0.01〜1.0mass%、Cr:0.01mass%以上0.20mass%未満、Nb:0.001〜0.03mass%、N:0.001〜0.008mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、加工フェライトを含まないフェライトとパーライト組織とからなるミクロ組織を有する船舶のバラストタンク用熱間圧延形鋼である。
また、本発明の船舶のバラストタンク用熱間圧延形鋼は、上記成分組成に加えてさらに、下記A〜E群のうちの少なくとも1群の成分を含有することが好ましい。

A群;Sb:0.001〜0.3mass%およびSn:0.001〜0.3mass%のうちから選ばれる1種または2種
B群;Cu:0.005〜0.5mass%、Ni:0.005〜0.25mass%、Mo:0.01〜0.5mass%およびCo:0.01〜1.0mass%のうちから選ばれる1種または2種以上
C群;Ti:0.001〜0.1mass%、Zr:0.001〜0.1mass%およびV:0.002〜0.2mass%のうちから選ばれる1種または2種以上
D群;B:0.0002〜0.003mass%
E群;REM:0.0002〜0.015mass%およびY:0.0001〜0.1mass%のうちから選ばれる1種または2
また、本発明の船舶のバラストタンク用熱間圧延形鋼は、形鋼の表面に、エポキシ樹脂塗膜、ジンクプライマー塗膜、および、ジンクプライマー塗膜とエポキシ樹脂塗膜のいずれかの塗膜を形成してなることを特徴とする。
また、本発明は、上記のいずれかに記載の成分組成を有する鋼素材を1000〜1350℃に加熱後、圧延仕上温度を800℃超とする熱間圧延し、放冷して、加工フェライトを含まないフェライトとパーライト組織とからなるミクロ組織とすることを特徴とする船舶のバラストタンク用熱間圧延形鋼の製造方法を提案する。
本発明によれば、高強度でかつ海水による厳しい腐食を受ける環境下でも優れた耐食性を発揮する船舶用熱間圧延形鋼を生産性よく安価に製造することができる。また、本発明の形鋼は、耐食性に優れるので、船舶の補修塗装までの期間の延長および補修塗装の作業負荷軽減にも大きく寄与することができる。
発明者らは、就航している船舶の鋼材に存在する3つの状態、即ち、ジンクプライマーとエポキシ樹脂の2層塗膜を有する状態、エポキシ樹脂塗膜のみを有する状態および保護被膜のない裸状態のいずれの状態においても優れた耐食性を示す船舶用熱間圧延形鋼を開発するために、以下の実験を行った。
種々の合金元素を添加した鋼を実験室的に溶製して鋼塊としたのち、熱間圧延して、板厚が5mmの熱延板とし、それらの熱延板から5mmt×100mmW×200mmLまたは5mmt×50mmW×150mmLの試験片を採取し、その試験片の表面にショットブラストを施して、表面のスケールや油分を除去した。
次いで、上記試験片に、下記3種類の表面処理を施し、耐食試験用試験片を作製した。
・条件A:試験片表面に、ジンクプライマー(膜厚約15μm)とタールエポキシ樹脂(膜厚約100μm)を塗布し、2層被膜を形成
・条件B:試験片表面に、タールエポキシ樹脂(膜厚約100μm)を塗布し、単層被膜を形成
・条件C:試験片表面にショットブラストを施したままの裸状態(防食被膜なし)
なお、塗膜を形成した上記条件A,Bの試験片については、試験前に、塗膜の上からカッターナイフで地鉄表面まで達する80mm長さのスクラッチ疵を一文字状に付与した。
上記のようにして作製した耐食試験用試験片は、その後、実船のバラストタンクの上甲板裏側の腐食環境を模擬した、(35℃、5mass%NaCl溶液噴霧×2hr)→(60℃、相対湿度(RH)5%×4hr)→(50℃、RH95%×2hr)を1サイクルとし、これを132サイクル繰返して行う塩水噴霧乾湿繰返し腐食試験に供して、耐食性を評価した。なお、耐食性は、塗膜を形成した条件AおよびBの試験片については、試験後、スクラッチ疵の周囲に発生した塗膜膨れの面積を測定することで、また、塗膜を形成してない条件Cの試験片については、試験後、脱錆した試験片質量と腐食試験前の試験片質量との差(減少量)から平均板厚減少量を算出することで評価した。
上記腐食試験の結果を基にして、各合金元素の耐食性向上効果を、試験片表面の塗膜条件ごとに纏めて示したのが表1である。この結果を簡単に述べると、以下のようになる。
1)条件A(ジンクプライマー+タールエポキシ樹脂の2層塗膜)の場合;耐食性の向上に最も有効な元素はCrであり、次いでW,Nb、次いでSbである。
2)条件B(タールエポキシ樹脂の1層塗膜)の場合;耐食性の向上に最も有効な元素はWであり、次いでNb、次いでSb,Snである。
3)条件C(裸状態)の場合;耐食性の向上に最も有効な元素はWであり、次いでNb、次いでSb,Snである。
4)W,CrおよびNbの複合添加は、単独添加より、条件Aにおける耐食性を向上し、さらにSb,Snを追加添加することにより、条件Aだけでなく、条件B,Cでも顕著な耐食性改善効果が得られる。
5)Moは、条件A,B,Cでの耐食性をやや向上し、Cu,Ni,Coは、条件A,Cでの耐食性をやや向上する。
Figure 0005526667
そこで、本発明では、上記表1に示した結果に基づいて、耐食性を向上する必須の基本元素としてW,CrならびにNbを複合添加し、さらに耐食性が要求される場合には、Sb,Snから選ばれる1種または2種を追加して添加する成分設計を採用することとした。そして、より優れた耐食性を要求される場合には、さらにCu,Ni,MoおよびCoから選ばれる1種または2種以上を添加することとした。
次に、本発明の耐食性に優れる船舶用形鋼が有すべき成分組成について説明する。
C:0.05〜0.20mass%
Cは、鋼の強度を高めるのに有効な元素であり、本発明では所望の強度を得るために0.05mass%以上含有させる必要がある。一方、0.20mass%を超える添加は、溶接熱影響部(HAZ)の靭性を低下させる。よって、Cは0.05〜0.20mass%の範囲とする。
Si:0.05〜0.50mass%
Siは、鋼の脱酸剤として、また、鋼の強度を高めるために添加される元素であり、本発明では、0.05mass%以上含有させる。しかし、0.50mass%を超える添加は、鋼の靭性を低下させるので、Siの上限は0.50mass%とする。
Mn:0.1〜2.0mass%
Mnは、Sによる熱間脆性を防止すると共に、鋼の強度を高める効果がある元素であり、0.1mass%以上含有させる。しかし、2.0mass%を超える添加は、鋼の靭性および溶接性を低下させるため、Mnの上限は2.0mass%とする。好ましくは、0.5〜1.6mass%の範囲である。
P:0.025mass%以下
Pは、鋼の母材靭性、溶接性および溶接部靭性を低下させる有害な元素であり、できるかぎり低減するのが望ましい。特に、Pの含有量が0.025mass%を超えると、母材靭性および溶接部靭性の低下が大きくなる。よって、Pは0.025mass%以下とする。好ましくは、0.014mass%以下である。
S:0.01mass%以下
Sは、鋼の靭性および溶接性を低下させる有害な元素であり、できるかぎり低減するのが望ましく、本発明では、0.01mass%以下に制限する。
Al:0.005〜0.10mass%
Alは、鋼の脱酸剤として添加される元素であり、0.005mass%以上添加する必要がある。しかし、0.10mass%を超えて添加すると、地鉄の腐食により溶出したA13+によって地鉄表面のpHが低下し、耐食性が低下するので、Alの上限は0.10mass%とする必要がある。
W:0.01〜1.0mass%
Wは、上述したように、ジングプライマーとエポキシ樹脂の2層塗膜の存在下での耐食性を向上し、さらに、エポキシ樹脂塗膜存在下および裸状態での耐食性を顕著に向上する効果があり、本発明では、耐食性向上元素として最も重要な元素の1つである。Wの上記効果は、0.01mass%以上の添加で発現する。しかし、添加量が1.0mass%超えると、上記効果は飽和してしまう。よって、Wは0.01〜1.0mass%の範囲とする。好ましくは0.02〜0.3mass%の範囲である。
なお、Wが上記のような耐食性向上効果を有する理由は、鋼板の腐食によって生成する錆の中にWO 2−が生成され、このWO 2−の存在によって塩化物イオンの鋼板表面からの侵入が阻止され、さらに、鋼板表面のアノード部など、pHが低下した部位に難溶性のFeWOが生成され、このFeWOの存在によっても、塩化物イオンの鋼板表面への侵入が阻止される結果、鋼の腐食が効果的に抑制されるからであると考えられる。また、WO 2−のインヒビター作用によっても、鋼の腐食が抑制されると考えられる。
Cr:0.01mass%以上0.20mass%未満
Crは、ジンクプライマーとエポキシ樹脂の2層塗膜の存在下での耐食性を大きく向上する元素であり、本発明の船舶用熱間圧延形鋼においては重要元素の1つである。上記耐食性向上効果が得られる理由は、ジンクプライマー存在下での腐食では、ジンクプライマー中のZnが溶出して、ZnOやZnCl・4Zn(OH)等のZn系腐食生成物が生成されるが、Crは、このZn系腐食生成物に作用して、Zn系腐食生成物による地鉄の防食効果をより向上させるためと推定される。このような、ジンクプライマー存在下でのCrの耐食性向上効果は、0.01mass%以上の添加で得られる。しかし、0.20mass%以上添加すると、溶接部の靭性が低下する。よって、Crは、0.01mass%以上0.20mass%未満の範囲とする。好ましくは0.02〜0.15mass%の範囲である。
Nb:0.001〜0.03mass%
Nbは、上述したように、鋼の存在状態にかかわらず耐食性を高める元素である。
また、Nbは、(フェライト+パーライト)組織中のフェライトの粒径を微細化し、鋼の強度を高める元素でもある。以下、Nbの強度特性に及ぼす影響を調査した基礎実験について説明する。
表2に示した成分組成を有するNo.1〜5の鋼を真空溶解炉または転炉で溶製してブルームとし、このブルームを加熱炉で再加熱後、表3に示した条件で熱間圧延して、同じく表3に示した断面寸法の不等辺不等厚山形鋼(NAB)を製造した。次いで、上記不等辺不等厚山形鋼の短辺から、JIS Z2201に規定された1A号引張試験片を採取して引張試験を行い、降伏応力YS、引張強さTSおよび伸びElを測定した。また、不等辺不等厚山形鋼の短辺を20kJ/cmの入熱で突合せ多層盛り溶接(GMAW)し、そのHAZ中央部から、シャルピー衝撃試験片(2mmVノッチ試験片)を採取し、−20℃でのシャルピー衝撃試験における吸収エネルギーを測定した。なお、不等辺不等厚山形鋼の短辺からは、別途、組織観察用の試料を採取し、光学顕微鏡を用いて、板厚1/4部におけるミクロ組織を倍率200倍で観察し、扁平化した加工フェライトが存在しないことを確認した。
上記の試験の結果を表4に示した。この結果から、Nbを0.001mass%以上添加した鋼素材を800℃超の仕上温度で熱間圧延することで、加工フェライトを含まないフェライトとパーライト組織とからなるミクロ組織でありながら、靭性の低下を伴うことなく高強度(TS≧400MPa)を達成できることを新規に見出した。ただし、Nbの添加量が0.03mass%を超えると、鋼の強度が上昇し過ぎて靭性が大きく低下する。よって、本発明では、Nbは0.001〜0.03mass%の範囲で添加する。好ましくは、0.005〜0.03mass%の範囲である。
Figure 0005526667
Figure 0005526667
Figure 0005526667
N:0.001〜0.008mass%
Nは、鋼の靭性を低下する有害な成分である。したがって、靭性の向上を図るためには、Nはできるだけ低減することが望ましく、本発明では、上限を0.008mass%とする。しかし、工業的規模で、Nを0.001mass%未満に低減するのは難しい。よって、Nは0.001〜0.008mass%の範囲とする。
また、本発明の船舶用熱間圧延形鋼は、より優れた耐食性を得ることを目的として、上記成分に加えてさらに、Sb:0.001〜0.3mass%およびSn:0.001〜0.3mass%のうちの1種または2種を添加することができる。
Sbは、ジンクプライマーとエポキシ樹脂の2層塗膜存在下のみならず、エポキシ樹脂塗膜存在下および裸状態における耐食性を向上させる効果がある。また、Snは、エポキシ樹脂塗膜の存在下および裸状態における耐食性を向上させる効果がある。Sb,Snの上記効果は、鋼板表面のアノード部などのpHが低下した部位での腐食が抑制されるためと考えられる。上記効果は、Sn,Sbとも、0.001mass%以上の添加により発現する。しかし、それぞれ0.3mass%を超えて添加すると、母材靭性およびHAZ部靭性が低下する。よって、SbおよびSnはそれぞれ0.001〜0.3mass%の範囲で添加するのが好ましい。なお、添加効果をより高めるには、SbとSnを複合添加するのが好ましい。
また、本発明の船舶用熱間圧延形鋼は、さらなる耐食性の向上を目的として、上記成分に加えてさらに、Cu:0.005〜0.5mass%、Ni:0.005〜0.25mass%、Mo:0.01〜0.5mass%およびCo:0.01〜1.0mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を添加することができる。
Cu,Ni,MoおよびCoは、ジンクプライマーとエポキシ樹脂の2層塗膜存在下および裸状態における鋼の耐食性を向上し、さらに、Moは、エポキシ樹脂の塗膜存在下でも、耐食性を向上する効果がある。したがって、これらの元素は、耐食性をより向上させたいときに補助的に添加することができる。Cu,Ni,MoおよびCoの上記効果は、錆粒子の微細化作用によるものと考えられ、さらに、Moは、錆中にMoO 2−を生成して、塩化物イオンの鋼板表面への侵入を抑制することも寄与していると考えられる。
これらの効果は、Cu,Niでは0.005mass%以上、Moでは0.01mass%以上、Coでは0.01mass%以上添加することで発現する。しかし、Cu:0.5mass%超、Ni:0.25mass%超、Mo:0.5mass%超、Co:1.0mass%超の添加は、上記耐食性向上効果が飽和し、原料コストの上昇を招くだけである。よって、Cu,Ni,MoおよびCoは、それぞれ上記範囲で添加するのが好ましい。
さらに、本発明の熱間圧延形鋼は、強度を高めたり、靭性を向上させたりするため、上記成分に加えてさらに、下記の成分を添加することができる。
Ti:0.001〜0.1mass%、Zr:0.001〜0.1mass%およびV:0.002〜0.2mass%のうちの1種または2種以上
Ti,ZrおよびVは、いずれも鋼の強度を高める元素であり、要求される強度に応じて選択して添加することができる。上記効果を得るためには、Ti,Zrは、それぞれ0.001mass%以上、Vは0.002mass%以上添加するのが好ましい。一方、Ti,Zrは0.1mass%超、Vは0.2mass%超添加すると、却って靭性が低下する。よって、Ti,Zr,Vは、それぞれ上記範囲で添加するのが好ましい。
B:0.0002〜0.003mass%
Bも、鋼の強度を高める元素であり、必要に応じて添加することができる。上記効果を得るためには、0.0002mass%以上添加するのが好ましい。しかし、0.003mass%を超えて添加すると、靭性が却って低下する。よって、Bは0.0002〜0.003mass%の範囲で添加するのが好ましい。
Ca:0.0002〜0.01mass%,REM:0.0002〜0.015mass%およびY:0.0001〜0.1mass%のうちの1種または2種以上
Ca,REMおよびYは、いずれも溶接熱影響部の靭性向上に効果のある元素であり、必要に応じて選択して添加することができる。この効果は、Ca:0.0002mass%以上、REM:0.0002mass%以上、Y:0.0001mass%以上の添加で得られる。しかし、Ca:0.01mass%、REM:0.015mass%、Y:0.1mass%を超えて添加すると、却って靭性の低下を招く。よって、Ca,REM,Yは、それぞれ上記範囲で添加するのが好ましい。
なお、本発明の熱間圧延形鋼においては、上記以外の成分は、Feおよび不可避的不純物である。ただし、本発明の効果を害さない範囲内であれば、上記以外の成分の含有を拒むものではない。
次に、本発明に係る高強度でかつ耐食性に優れる船舶用熱間圧延形鋼のミクロ組織について説明する。
前述したように、船舶用の厚鋼板、とりわけ、降伏応力YSが315MPa以上の高強度厚鋼板においては、一般に、炭素当量を低めて高い溶接性を付与した鋼素材を、制御圧延と制御冷却を組み合わせたTMCPを採用し、第2相として硬質のベイナイト組織を導入することで高強度化を達成している。そして、より低温靭性や厚肉化が求められる場合には、上記制御圧延および制御冷却の条件を制御し、最適化することで対応している。したがって、TMCPを採用した場合、通常、得られる鋼板のミクロ組織は、フェライトとベイナイトからなる組織である。
一方、船舶用の熱間圧延形鋼、例えば、断面が矩形ではない不等辺不等厚山形鋼の場合等では、短辺と長辺の幅や厚さが異なるために、必然的に圧延時や冷却時に、形鋼の部位間で温度の不均一が発生する。そのため、制御冷却(加速冷却)を適用した強化手段では、残留応力が不均一となり、ねじれや曲がり、反りを誘発して、寸法精度や形状の低下を招くため、圧延後の形状矯正負荷が増大する。したがって、第2相として硬質のベイナイト組織を導入して高強度化を図るTMCPを、熱間圧延形鋼に適用することは難しい。この点については、T形鋼など他の熱間圧延形鋼においても、全く同様のことが言える。
したがって、例えば、降伏応力YS:235MPa以上で引張強さTS:400MPa以上の高強度の船舶用熱間圧延形鋼を製造するには、圧延後の加速冷却を行うことなく、したがって、通常の熱間圧延組織であるフェライトとパーライトからなる鋼組織で高強度化を図ることが必要とされる。
ここで、(フェライト+パーライト)組織で高強度化を実現する手段としては、第2相のパーライト分率を増やしてやる方法、フェライト組織を微細化する方法、フェライト地を固溶強化や析出強化する方法、あるいは(γ+α)2相域で熱間圧延して、フェライトの一部を加工フェライト化(高転位密度化)する方法等が考えられる。
上記方法のうち、パーライト分率を高める方法は、Cを多量に添加する必要があるが、Cの過度な添加は溶接性の低下を招くため好ましくない。また、固溶強化元素や析出強化元素を添加してフェライト地を強化する方法は、合金元素の多量添加による溶接性の低下や、原料コストの上昇を招いたりする。また、加工フェライトの活用は、Cや合金元素の添加を最小限に抑制し、溶接性を維持した状態で、高強度化を図れる点で好ましい方法であるが、圧延能率を低下させる必要があるため、製造コストが上昇する。
一方、フェライト組織を微細化して高強度化を図る方法には、Nbの添加が有効である。さいわい、本発明では、耐食性向上元素としてNbを必須として添加している。そこで、本発明では、Nb添加による耐食性向上効果とフェライト組織の微細化効果を有効活用し、加工フェライトを含まないフェライト+パーライト組織のままで、フェライト相を微細化し、高強度化を図ることとした。
次に、加工フェライトを含まないフェライトと、パーライトとからなるミクロ組織を有する本発明の船舶用熱間圧延形鋼の製造方法について説明する。
本発明の船舶用熱間圧延形鋼を製造するに当たっては、先ず、上述した成分組成を有する鋼を、転炉や電気炉等、通常公知の方法で溶製し、連続鋳造法、造塊法等の通常公知の方法でスラブやビレット等の鋼素材とするのが好ましい。なお、鋼の溶製において、取鍋精錬や真空脱ガス等の処理を付加しても良いことはもちろんである。
次いで、上記鋼素材を、加熱炉に装入して1000〜1350℃の温度に再加熱し、熱間圧延して所望の寸法、組織および特性を有する船舶用熱間圧延形鋼とする必要がある。加熱温度が1000℃未満では、熱間圧延における変形抵抗が大きくなり、圧延することが難しくなる。一方、1350℃を超える加熱は、表面疵の発生原因となったり、スケールロスの増大や燃料原単位の上昇を招いたりする。好ましくは、1100〜1300℃の範囲である。
続く熱間圧延は、圧延仕上温度を800℃超として仕上圧延を行う必要がある。圧延仕上温度が800℃以下になると、圧延後のミクロ組織が加工フェライトを含んだ組織となり、鋼の強度は上昇するが、圧延時に温度調整のための待ち時間が発生するため、圧延能率が低下し、コストアップを招く。
熱間圧延後の冷却は、放冷する必要がある。これにより、圧延後の急速冷却に伴う不均一冷却から生じる曲がりや反りよる形状不良を低減でき、圧延後の製品の形状矯正に要する負担を軽減することができる。
表5に示した成分組成を有するNo.1〜19の鋼を真空溶解炉または転炉で溶製してブルームとし、これらのブルームを加熱炉に装入して表6に示した温度に加熱後、熱間圧延し、表6に示した断面寸法の不等辺不等厚山形鋼(NAB)およびT形鋼を製造した。次いで、下記の引張試験、靭性試験およびミクロ組織観察に供した。
<引張試験>
不等辺不等厚山形鋼については短辺から、T形鋼についてはフランジ部から、JIS 1A号引張試験片(JIS Z2201)を採取し、引張試験を行い、降伏応力YS、引張強さTSおよび伸びElを測定した。
<靭性試験>
不等辺不等厚山形鋼については短辺を、T形鋼についてはフランジ部を、20kJ/cmの入熱で突合せ多層盛り溶接(GMAW)し、そのHAZ中央部から、シャルピー衝撃試験片(2mmVノッチ試験片)を採取して、−20℃でのシャルピー衝撃試験における吸収エネルギーを測定し、上記吸収エネルギーの値が27J以上のものを、溶接部の衝撃特性が良好であると判定した。なお、不等辺不等厚山形鋼の短辺およびT形鋼のフランジ部の母材についても、同様の衝撃試験を行い、吸収エネルギーを測定した。
<ミクロ組織観察>
不等辺不等厚山形鋼については短辺から、T形鋼についてはフランジ部から組織観察用の試料を採取し、光学顕微鏡を用いて板厚1/4部のミクロ組織を倍率200倍で観察し、扁平化した加工フェライトが存在しないことを確認した。
Figure 0005526667
Figure 0005526667
さらに、上記熱間圧延形鋼について、以下の耐食性試験に供した。
<耐食性試験>
不等辺不等厚山形鋼は短辺から、T形鋼はフランジ部から、5mmt×100mmW×200mmLまたは5mmt×50mmW×150mmLの試験片を採取し、試験片表面にショットブラストを施した後、下記A〜Cの条件の表面処理を施して、耐食性試験片とした。
・条件A:試験片表面に、ジングプライマー(膜厚約15μm)とタールエポキシ樹脂(約200μm)を塗布し、2層被膜を形成
・条件B:試験片表面に、タールエポキシ樹脂(膜厚約200μm)を塗布し、単層被膜を形成
・条件C:試験片表面にショットブラストを施したままの裸状態(防食被膜なし)
なお、塗膜を形成した上記AおよびBの試験片には、塗膜の上からカッターナイフで地鉄表面まで達する長さ80mmのスクラッチ疵を一文字状に付与した。
次いで、上記試験片を、実船のバラストタンク上甲板裏側に2年間装着する暴露試験に供した。なお、この暴露試験の腐食環境は、平均して、バラストタンク内に海水が入っている期間が約20日、海水が入っていない期間が約20日を1サイクルとし、これを繰り返すものであった。そして、暴露試験後の耐食性の評価は、塗膜を有する条件AおよびBの試験片については、スクラッチ疵の周囲に発生した塗膜膨れ面積を測定し、また、塗膜を有しない条件Cの試験片については、試験後、脱錆した後の試験片質量と試験前の試験片質量との差(減少量)から平均板厚減少量を算出し、これらの値を、耐食性向上元素を特に含有していないNo.12のベース鋼材の値を基準(100)として相対化し、50%超えの値のもの耐食性が劣ると判定した。
表7に上記引張試験、衝撃試験、ミクロ組織観察よび腐食試験の結果をまとめて示した。この表から、本発明の成分組成を満たすNo.1〜11および17〜18の鋼材(発明例)は、表面処理条件がA〜Cのいずれの場合でも、ベース鋼材(No.12)に対する塗膜膨れ面積および板厚減少量の比がいずれも50%以下であり、良好な耐食性を示していることがわかる。これに対して、本発明の成分組成を満たさないNo.12〜16の鋼材(比較例)は、ベース鋼材(No.12)より耐食性が向上していても、ベース鋼材に対する塗膜膨れ面積や板厚減少量の比が50%超えであったり、溶接部の靭性が大きく低下していたりしている。また、No.19の鋼材(比較例)は、本発明の成分組成を満たしているが、圧延仕上温度を700℃と低くしているため、圧延中に温度低下待ちのための待機時間が約150sec発生し、発明例と比較して圧延能率が低下している。
Figure 0005526667
本発明の船舶用形鋼は、防食塗膜の存在状態にかかわらず、海水による腐食環境下において優れた耐食性を発現する。したがって、本発明の船舶用形鋼は、船舶のバラストタンク用としてだけでなく、海洋構造物や化学プラント等、類似の腐食環境下で使用される他の分野の形鋼としても好適に用いることができる。

Claims (10)

  1. C:0.05〜0.20mass%、
    Si:0.05〜0.50mass%、
    Mn:0.1〜2.0mass%、
    P:0.025mass%以下、
    S:0.01mass%以下、
    Al:0.005〜0.10mass%、
    W:0.01〜1.0mass%、
    Cr:0.01mass%以上0.20mass%未満、
    Nb:0.001〜0.03mass%、
    N:0.001〜0.008mass%を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、加工フェライトを含まないフェライトとパーライト組織とからなるミクロ組織を有する船舶のバラストタンク用熱間圧延形鋼。
  2. 上記成分組成に加えてさらに、Sb:0.001〜0.3mass%およびSn:0.001〜0.3mass%のうちから選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の船舶のバラストタンク用熱間圧延形鋼。
  3. 上記成分組成に加えてさらに、Cu:0.005〜0.5mass%、Ni:0.005〜0.25mass%、Mo:0.01〜0.5mass%およびCo:0.01〜1.0mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の船舶のバラストタンク用熱間圧延形鋼。
  4. 上記成分組成に加えてさらに、Ti:0.001〜0.1mass%、Zr:0.001〜0.1mass%およびV:0.002〜0.2mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の船舶のバラストタンク用熱間圧延形鋼。
  5. 上記成分組成に加えてさらに、B:0.0002〜0.003mass%を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の船舶のバラストタンク用熱間圧延形鋼。
  6. 上記成分組成に加えてさらに、REM:0.0002〜0.015mass%およびY:0.0001〜0.1mass%のうちから選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の船舶のバラストタンク用熱間圧延形鋼。
  7. 形鋼の表面に、エポキシ樹脂塗膜を形成してなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の船舶のバラストタンク用熱間圧延形鋼。
  8. 形鋼の表面に、ジンクプライマー塗膜を形成してなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の船舶のバラストタンク用熱間圧延形鋼。
  9. 形鋼の表面に、ジンクプライマー塗膜とエポキシ樹脂塗膜とを形成してなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の船舶のバラストタンク用熱間圧延形鋼。
  10. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の成分組成を有する鋼素材を1000〜1350℃に加熱後、圧延仕上温度を800℃超とする熱間圧延し、放冷して、加工フェライトを含まないフェライトとパーライト組織とからなるミクロ組織とすることを特徴とする船舶のバラストタンク用熱間圧延形鋼の製造方法。
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