JP2018150605A - 鋼材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】石炭やコークスを積載するばら積み貨物船ホールドが使用される特有の腐食環境において、優れた耐食性を示す鋼材を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.040%以上0.200%以下、Si:0.01%以上0.50%以下、Mn:0.10%以上2.00%以下、P:0.035%以下、S:0.010%以下、Al:0.003%以上0.100%以下、Cu:0.04%以上0.35%以下、Ni:0.04%以上0.40%以下、W:0.010%以上0.500%以下、Sb:0.010%以上0.300%以下、Nb:0.003%以上0.025%以下およびN:0.0010%以上0.0080%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の成分組成を有する鋼材であって、前記Wにおける固溶W量が0.005%以上であり、前記Nbにおける固溶Nb量が0.002%以上であり、加工フェライトを含むフェライトとパーライトとを含む組織を有する鋼材を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、主としてばら積み貨物船のホールド(船倉)に用いる鋼材に関し、特に、石炭やコークスを積載するばら積み貨物船のホールドに好適な鋼材に関する。本発明に係る鋼材は、厚鋼板および形鋼等を含むものとする。ここで、形鋼とは、具体的には、熱間圧延によって成形された等辺山形鋼、不等辺山形鋼、不等辺不等厚山形鋼、溝形鋼、球平形鋼、T形鋼などをいう。
エネルギー資源の運搬には、多くの場合に商船が用いられている。商船の中でもばら積み貨物船は、その約30%の船腹量を占めている。このばら積み貨物船において、1990年代初頭に海難事故が相次いで発生し、国際問題となった。特に、石炭運搬船での事故が数多く報告されており、その原因の大部分はホールド内での損傷であった。
ばら積み貨物船では、積荷を直接ホールドに積載するため、積荷が腐食性である場合には、その影響を受け易く、ホールド内の腐食、特に石炭運搬船のホールド内の側壁部、肋骨部での孔食による、局所的な強度の減少が問題と考えられる。実際に、この孔食が著しく進行した事例や、船の強度を確保する肋骨部分の板厚が孔食により極端に減少している事例が報告されている。
孔食の発生するばら積み貨物船ホールドの側壁部、肋骨部では、結露水が生じ易い。こうした結露水が生じた場所に石炭の硫黄成分が溶け出し、結露水と反応して硫酸を生成する。そのため、石炭運搬船のホールド内は硫酸腐食が生じ易い低pH環境となっている。
また、コークス運搬船のホールドにおいても激しい硫酸腐食が観察されている。これは、石炭と同様、コークスに含有する硫黄分が激しい腐食の原因となっている。
このようなホールド内の腐食対策として、ホールド内には変性エポキシ系塗装が被覆厚さ約150〜200μmで施されている。しかし、積荷によるメカニカルダメージや積荷搬出の際の重機による傷、磨耗により、塗装が剥がれる場合が多いため、塗装により十分な防食効果を得ることは難しい。
さらなる腐食対策として、定期的に再塗装したり、一部補修するなどの方法が採られている。しかしながら、このような方法は、非常に大きなコストがかかることから、船舶のメンテナンス費用を含め、ライフサイクルコストを低減させるために、新たな耐食鋼の開発が課題となっている。
ところで、船舶用の耐食鋼としては、カーゴオイルタンク用やバラストタンク用として開発された鋼が知られている。しかし、石炭運搬船やコークス運搬船のホールドの使用環境は、腐食環境(温度・湿度・腐食性物質など)および内容物によるメカニカルダメージの有無などの点で、カーゴオイルタンクやバラストタンクの使用環境と全く異なっている。このため、石炭運搬船やコークス運搬船のホールド用の鋼として、独自の材料設計や特性評価が必要とされると考えられる。
石炭運搬船のホールドに言及した従来技術としては、特許文献1〜3が挙げられる。特許文献1にはMgを必須成分とした鋼材が、また特許文献2および特許文献3にはSnを必須成分とした鋼材が開示されている。
特開2000-17381号公報 特開2007-262555号公報 特開2008-174768号公報
特許文献1には、船舶外板やバラストタンク、カーゴオイルタンク、鉱石船カーゴホールド等を、共通の環境で使用することを前提として、鋼材の耐食性について、カーゴオイルタンクとバラストタンクの腐食試験の結果が良好であることが示されている。バラストタンクでは主として海水による塗膜下腐食が生じ、カーゴオイルタンクの上甲板裏ではH2S(硫化水素)ガスによる全面腐食が主として生じ、カーゴオイルタンクの底板では高濃度塩水よる孔食が主として生じ、石炭ホールドでは石炭由来の希硫酸腐食が主として生じるように、使用される場所の環境により、主要な腐食因子および腐食の形態が異なる。しかしながら、特許文献1では、石炭運搬船やコークス運搬船のホールド使用環境に特有の腐食については考慮されていない。
また、特許文献2および特許文献3では、鉱石運搬船の環境を模擬した腐食環境における鋼材の耐食性を評価しているものの、石炭船および石炭・鉱石兼用船のホールド使用環境を考慮した試験結果は示されていない。
このように、石炭運搬船やコークス運搬船のホールドに用いられる耐食性に優れた鋼材の開発には、石炭運搬船やコークス運搬船のホールド特有の腐食環境を考慮すると同時に、塗膜が剥離して塗膜がない状態での鋼材の腐食の評価が重要であるにもかかわらず、従来は、これらの点について考慮されていなかった。
ところで、船舶に用いられる厚鋼板のような鋼材は、使用量の低減によるコスト削減および安全性確保の観点から、高強度化された鋼材の使用が進められており、降伏応力YSが315MPa以上かつ引張強さTSが440MPa以上の高強度材が多く使用される。このような強度グレードの場合、強度と靭性は、制御圧延・加速冷却プロセス(TMCP:熱加工制御)の条件を調整することにより制御されるのが一般的である。
しかしながら、TMCPの加速冷却プロセスにおいて、鋼板の冷却ムラにより、鋼板に反りが発生することが少なくない。鋼板に反りが発生した場合、レベラーなどにより矯正するが、板幅が4000mmを超える幅広鋼板では、レベラー能力不足により矯正が困難である場合がある。そのため、加速冷却を行わない製造方法を検討する必要がある。
また、不等辺不等厚山形鋼やT形鋼などの熱間圧延形鋼は、厚鋼板と比較して断面形状・寸法が複雑であるため、強度と靭性の制御方法として、厚鋼板と同様のTMCPを採用することは困難である。特に、圧延途中での曲がりや反りに配慮しながら、材質の造りこみを行う必要があるため、降伏応力YS315MPa以上かつ引張強さ440MPa以上の高強度形鋼とするためには、形鋼に適用可能な独自の製造方法を検討する必要がある。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、石炭やコークスを積載するばら積み貨物船のホールドが曝される特有の腐食環境においても、優れた耐食性および引張特性を示す鋼材を提供することにある。
一般に、船舶は防食塗膜が施されて使用される。しかし、石炭運搬船やコークス運搬船のホールド使用環境では、石炭やコークスのメカニカルダメージで塗装が剥がれやすい状況にあり、鋼材は、乾湿状態が繰返される低pH環境下に曝される。そこで、発明者らは、石炭運搬船やコークス運搬船のホールド使用環境に特化した材料開発が必要であると考え、鋼材の表面の防食塗膜が剥離した後も耐食性を発揮できる鋼材の開発を試みた。
すなわち、発明者らは、石炭運搬船およびコークス運搬船のホールド内の環境を模擬した試験法を開発し、その試験法を用いて各成分組成の影響を検討した。その結果、主としてCu、Ni、W、Sb、およびNbが、鋼材の耐食性の向上に有効に寄与することを見出した。また、生産性や溶接性等を害することなく高強度化を図るには、(α+γ)2相域圧延による加工フェライトの導入が有効であることを見出した。
本発明は、上記の新規な知見に基づき、さらに検討を重ねた末に完成されたもので、その要旨構成は、以下の通りである。
1.質量%で、
C:0.040%以上0.200%以下、
Si:0.01%以上0.50%以下、
Mn:0.10%以上2.00%以下、
P:0.035%以下、
S:0.010%以下、
Al:0.003%以上0.100%以下、
Cu:0.04%以上0.35%以下、
Ni:0.04%以上0.40%以下、
W:0.010%以上0.500%以下、
Sb:0.010%以上0.300%以下、
Nb:0.003%以上0.025%以下および
N:0.0010%以上0.0080%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の成分組成を有する鋼材であって、
前記Wにおける固溶W量が0.005%以上であり、
前記Nbにおける固溶Nb量が0.002%以上であり、
加工フェライトを含むフェライトとパーライトとを含む組織を有する鋼材。
2.前記成分組成は、さらに、
質量%で、
Ti:0.001%以上0.030%以下、
Zr:0.001%以上0.030%以下および
V:0.002%以上0.20%以下
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、上記1に記載の鋼材。
3.前記成分組成は、さらに、
質量%で、
Ca:0.0002%以上0.0050%以下
を含有する、上記1または2に記載の鋼材。
4.前記成分組成は、さらに、
質量%で、
B:0.0002%以上0.0030%以下
を含有する、上記1から3のいずれかに記載の鋼材。
5.前記成分組成は、さらに、
質量%で、
Co:0.01%以上0.50%以下、
Mo:0.01%以上0.50%以下および
Cr:0.01%以上0.20%以下
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、上記1から4のいずれかに記載の鋼材。
6.前記成分組成は、さらに、
質量%で、
REM:0.0002%以上0.015%以下、
Y:0.0001%以上0.1%以下および
Mg:0.0002%以上0.015%以下
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、上記1から5のいずれかに記載の鋼材。
7.質量%で、
C:0.040%以上0.200%以下、
Si:0.01%以上0.50%以下、
Mn:0.10%以上2.00%以下、
P:0.035%以下、
S:0.010%以下、
Al:0.003%以上0.100%以下、
Cu:0.04%以上0.35%以下、
Ni:0.04%以上0.40%以下、
W:0.010%以上0.500%以下、
Sb:0.010%以上0.300%以下、
Nb:0.003%以上0.025%以下および
N:0.0010%以上0.0080%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の成分組成を有し、
前記Wにおける固溶W量が0.005%以上であり、
前記Nbにおける固溶Nb量が0.002%以上である鋼素材を、1000℃以上1350℃以下に加熱し、
Ar3点以下での累積圧下率が5%以上80%以下および仕上温度が(Ar3−180)℃以上(Ar3−3)℃以下の熱間圧延を施す鋼材の製造方法。
8.前記熱間圧延は、前記鋼材の断面内の温度差を50℃以内として行う、上記7に記載の鋼材の製造方法。
9.前記成分組成は、さらに、
質量%で、
Ti:0.001%以上0.030%以下、
Zr:0.001%以上0.030%以下および
V:0.002%以上0.20%以下
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、上記7または8に記載の鋼材の製造方法。
10.前記成分組成は、さらに、
質量%で、
Ca:0.0002%以上0.0050%以下
を含有する、上記7から9のいずれかに記載の鋼材の製造方法。
11.前記成分組成は、さらに、
質量%で、
B:0.0002%以上0.0030%以下
を含有する、上記7から10のいずれかに記載の鋼材の製造方法。
12.前記成分組成は、さらに、
質量%で、
Co:0.01%以上0.50%以下、
Mo:0.01%以上0.50%以下および
Cr:0.01%以上0.20%以下
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、上記7から11のいずれかに記載の鋼材の製造方法。
13.前記成分組成は、さらに、
質量%で、
REM:0.0002%以上0.015%以下、
Y:0.0001%以上0.1%以下および
Mg:0.0002%以上0.015%以下
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、上記7から12のいずれかに記載の鋼材の製造方法。
本発明によれば、石炭やコークスを積載するばら積み貨物船ホールドが使用される特有の腐食環境において、優れた耐食性および引張特性を示し、降伏応力YSが315MPa以上かつ引張強さTSが440MPa以上の強度を有する厚鋼板および形鋼のような鋼材を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態による鋼材について説明する。まず、鋼材の成分組成の限定理由について述べる。なお、本明細書において、各成分元素の含有量を表す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
C:0.040%以上0.200%以下
Cは、鋼の強度を上昇させるのに有効な元素であり、本発明では強度を確保するために0.040%以上含有させる。一方、Cを0.200%を超えて含有させると、溶接性および溶接熱影響部靭性を低下させる。よって、C量は0.040%以上0.200%以下の範囲とする。好ましくは0.050%以上0.180%以下の範囲であり、より好ましくは、0.060%以上0.160%以下の範囲である。
Si:0.01%以上0.50%以下
Siは、脱酸剤として添加され、また鋼の強度を高める元素であるので、本発明では0.01%以上含有させる。しかしながら、Siを0.50%を超えて含有させると、鋼の靱性を劣化させるので、Si量の上限は0.50%とする。好ましくは0.05%以上0.40%以下の範囲であり、より好ましくは0.10%以上0.35%以下の範囲である。
Mn:0.10%以上2.00%以下
Mnは、鋼の強度を上げることができるため、0.10%以上含有させる。しかしながら、Mnを2.00%を超えて含有させると、鋼の靱性および溶接性を低下させるため、Mn量の上限は2.00%とする。好ましくは0.50%以上1.60%以下の範囲である。より好ましくは0.70%以上1.60%以下の範囲である。
P:0.035%以下
Pは、鋼の母材靱性を低下させる有害な元素であるが、Pの低減は製造コストの上昇を招く。そこで、母材靭性および製造コストの観点から、P量は0.035%以下とする。好ましくは0.020%以下であり、より好ましくは0.010%以下である。0.001%未満とするのは工業的規模の製造では難しいため、0.001%以上の含有は許容される。
S:0.010%以下
Sは、鋼の靭性および溶接性を劣化させる有害な元素であるので、極力低減することが好ましいため、0.010%以下とする。好ましくは0.006%以下であり、より好ましくは0.003%以下である。なお、0.0005%未満とするのは工業的規模の製造では難しいため、0.0005%以上の含有は許容される。
Al:0.003%以上0.100%以下
Alは、脱酸剤として0.003%以上含有させるが、0.100%を超える含有は、溶接部靭性に悪影響を及ぼすので、Al量は0.100%以下とする。好ましくは0.010%以上0.050%以下であり、より好ましくは0.015%以上0.040%以下である。
Cu:0.04%以上0.35%以下
Cuは、腐食生成物を緻密にし、地鉄表面へのH2O、O2、SO4 2-の拡散を抑制する。これにより、鋼の耐食性が向上する。この効果は、Cu量が0.04%以上になると発現するが、0.35%を超えて過剰に含有されると溶接性や母材靭性が低下する。そのため、Cu量は0.04%以上0.35%以下の範囲とする。好ましくは0.05%以上0.30%以下の範囲である。より好ましくは0.10%以上0.30%以下の範囲である。
Ni:0.04%以上0.40%以下
Niは、Cuと同様、腐食生成物を緻密にし、地鉄表面へのH2O、O2、SO4 2-の拡散を抑制する。これにより、鋼の耐食性が向上する。この効果は、Ni量が0.04%以上になると発現するが、0.40%を超えると効果が飽和するだけでなく、コストも上昇するため、Ni量は0.04%以上0.40%以下の範囲とする。好ましくは0.05%以上0.40%以下の範囲である。より好ましくは0.10%以上0.40%以下の範囲である。
W:0.010%以上0.500%以下
Wは、WO4 2-の生成により、地鉄表面へのSO4 2-の拡散を抑制すると共に、腐食生成物を緻密にして、地鉄表面へのH2O、O2、SO4 2-の拡散を抑制する。これにより、鋼の耐食性が向上する。この効果は、0.010%以上で発現するが、0.500%を超えて含有されると効果が飽和するだけでなく、コストも上昇する。そのため、W量は0.010%以上0.500%以下の範囲とする。好ましくは0.020%以上0.200%以下の範囲である。より好ましくは0.030%以上0.150%以下の範囲である。
固溶W:0.005%以上
Wは、上記したような耐食性向上作用を有するが、Wは鋼中で固溶W、あるいは、炭化物などの析出物として存在する。このうち、耐食性の向上に寄与しているのは固溶Wである。固溶Wは0.005%以上で耐食性が発現するため、固溶W量は0.005%以上とした。好ましくは0.010%以上0.100%以下である。より好ましくは0.020%以上である。ここで、固溶Wを0.005%以上とするには、鋼へのW添加量を0.007%以上にするとともに、熱間仕上圧延後の冷却速度を10℃/s以上とすることが必要である。
Sb:0.010%以上0.300%以下
Sbは、鋼材に合金元素として0.010%以上を含有させると、低pH環境において地鉄近傍に濃縮する。Sbは大きな水素過電圧を持つため、Sbが析出した部分では水素発生反応が抑制され、耐食性が向上する。また、SbはCuと金属間化合物であるCu2Sbを形成することで、さらに耐食性が向上する。この効果は0.010%以上で発現するが、0.300%を超えて含有させると靭性を低下するので、Sbは0.010%以上0.300%以下の範囲とする。好ましくは0.020%以上0.250%以下の範囲である。より好ましくは0.030%以上0.120%以下の範囲である。
Nb:0.003%以上0.025%以下
Nbは、腐食生成物を緻密にして、地鉄表面へのH2O、O2、SO4 2-の拡散を抑制する。これにより、鋼の耐食性が向上する。この効果を得るためにはNbを0.003%以上含有させる必要がある。一方、Nbを0.025%を超えて含有させても効果は飽和する。よって、Nb量は0.003%以上0.025%以下の範囲とする。好ましくは0.005%以上0.020%以下の範囲である。より好ましくは、0.007%以上0.020%以下の範囲である。
固溶Nb:0.002%以上
Nbは、上記したような耐食性向上作用を有するが、Nbは鋼中で固溶Nb、あるいは、炭化物、窒化物、炭窒化物などの析出物として存在する。このうち、耐食性の向上に寄与しているのは固溶Nbである。固溶Nbは0.002%以上で耐食性が発現するため、固溶Nb量は0.002%以上とした好ましくは、0.003%以上0.020%以下であり、より好ましくは0.005%以上である。ここで、固溶Nbを0.002%以上とするには、スラブ等の鋼素材の加熱温度を1050℃以上とすることが必要である。鋼素材の加熱温度は、Nbの固溶量と相関を有する。鋼素材の加熱温度を1050℃以上とすることにより、Nbの鋼中固溶量を必要量確保することができ、その結果耐食性を向上させることができる。
N:0.0010%以上0.0080%以下
Nは、靱性を低下させる元素であるので、極力低減することが望ましい。しかしながら、工業的には0.0010%未満に低減するのは難しい。一方、0.0080%を超えて含有させると靱性の著しい劣化を招く。よって本発明では、N量は0.0010%以上0.0080%以下の範囲とする。好ましくは0.0015%以上0.0060%以下であり、より好ましくは0.0020%以上0.0050%以下である。
以上、本発明の基本成分について説明した。上記成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物であるが、その他にも必要に応じて、以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Ti:0.001%以上0.030%以下、Zr:0.001%以上0.030%以下、およびV:0.002%以上0.20%以下のうちから選ばれる1種または2種以上
Ti、ZrおよびVはいずれも、鋼の強度を高める元素であり、必要とする強度に応じて選択して含有させることができる。このような効果を得るためには、TiおよびZrは0.001%以上、Vは0.002%以上含有させる必要がある。しかしながら、TiおよびZrはいずれも0.030%を超えて、またVは0.20%を超えて含有させると靱性が低下するため、Ti、ZrおよびVを含有させる場合には、それぞれ、上記の範囲で含有させることとする。
Ca:0.0002%以上0.0050%以下
Caは、介在物形態制御の効果があり、鋼の延性および靱性を高めることができる。この効果はCa量が0.0002%以上で発現する。一方、Caは0.0050%を超えて含有させると、粗大な介在物を形成し、母材の靱性を劣化させる。そこで、Ca量は0.0002%以上0.0050%以下の範囲とする。好ましくは0.0005%以上0.0040%以下の範囲である。より好ましくは0.0010%以上0.0030%以下の範囲である。
B:0.0002%以上0.0030%以下
Bは鋼の強度を高める元素であり、必要とする強度に応じて選択して含有させることができる。このような効果は、0.0002%以上で発現する。しかしながら、0.0030%を超えて含有させると靱性が低下するため、B量は0.0002%以上0.0030%以下とする。好ましくは0.0003%以上0.0025%以下であり、より好ましくは0.0005%以上0.0015%以下である。
Co:0.01%以上0.50%以下、Mo:0.01%以上0.50%以下、およびCr:0.01%以上0.20%以下のうちから選ばれる1種または2種以上
Co、Mo、Crはいずれも、鋼の強度を高める元素であり、必要に応じて選択して含有させることができる。このような効果は、Co、Mo、Cr共に0.01%以上で発現するが、Co、Moでは0.50%を超えて、また、Crでは0.20%を超えて含有させるとそれぞれ靱性が低下するため、Co、Mo、Crは上記の範囲で含有させることとする。
REM:0.0002%以上0.015%以下、Y:0.0001%以上0.1%以下、およびMg:0.0002%以上0.015%以下のうちから選ばれる1種または2種以上
REM(希土類元素)、Y、Mgはいずれも溶接熱影響部の靭性向上に効果のある元素であり、必要に応じて選択して添加することができる。この効果は、REM:0.0002%以上、Y:0.0001%以上、Mg:0.0002%以上で得られる。しかし、REM:0.015%、Y:0.1%、Mg:0.015%を超えて含有させると、却って靭性の低下を招くので、REM、Y、Mgは、それぞれ上記値を上限として添加するのが好ましい。
本発明における成分組成のうち、上記以外の成分はFeおよび不可避的不純物である。ただし、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、上記以外の成分の含有を拒むものではない。
次に、本発明に係る鋼材の組織について説明する。
船舶の大型化に伴い、船体の軽量化および建造時の溶接作業短縮が求められ、高強度・幅広の鋼板が適用される。具体的には、降伏応力YSが315MPa以上かつ引張強さTSが440MPa以上を示す、板幅4000mmを超える厚鋼板および形鋼が使用される。降伏応力YSが315MPa以上かつ引張強さTSが440MPa以上の高強度厚鋼板を製造する場合には、一般的に、低炭素当量として高い溶接性を付与した鋼素材に対して制御圧延と制御冷却を組み合わせたTMCPを施し、第2相として硬質のベイナイト組織を導入することで高強度化を達成している。そして、低温靭性や厚肉化が求められる場合には、上記制御圧延および制御冷却の条件を最適化することで、上記のような特性を有する鋼材を作製している。この場合、鋼板の組織は、通常、フェライトとベイナイトからなるミクロ組織である。
一方、厚鋼板をTMCPにより造り込む際、その加速冷却プロセスにおいて、鋼板の冷却ムラにより、鋼板に反りが発生することが少なくない。鋼板に反りが発生した場合、レベラーなどにより矯正するが、板幅が4000mmを超える幅広鋼板では、レベラーの性能不足により矯正が困難である場合がある。そのため、板幅が4000mmを超える幅広鋼板に加速冷却を行うのは適当でない。
また、形鋼の場合は、断面が矩形ではない不等辺不等厚山形鋼など、短辺と長辺の幅や厚さが異なる場合が多く、必然的に圧延時や冷却時に温度の不均一が発生する。特に、加速冷却を適用した強度調整は、残留応力が不均一となり、ねじれや曲がり、反りを誘発し、寸法精度の低下を招くため、圧延後の形状矯正負荷が増大する。そのため、加速冷却を形鋼に適用することは困難である。
以上のように、降伏応力YSが315MPa以上かつ引張強さTSが440MPa以上を示す、板幅4000mmを超える厚鋼板および形鋼を製造する場合には、圧延後の加速冷却を行うことなく、厚鋼板および形鋼のような鋼材を造り込むことが求められる。このためには、加速冷却を用いずに得ることができる、フェライト+パーライトの組織で高強度化を図る必要がある。フェライト+パーライトの組織で高強度化を実現する手段としては、第2相のパーライト分率を増やす方法、フェライト組織を一層細粒化する方法、フェライトを固溶強化や析出強化により硬度を高める方法、あるいは(γ+α)2相域で熱間圧延することによりフェライトの一部を高転位密度の加工フェライトとする方法等が考えられる。
上記方法のうち、フェライトを細粒化する方法は、降伏応力YSを上昇させるには有利であるが、引張強さTSの上昇は小さいため、この手法のみでは十分な高強度化は図れない。また、パーライト分率を増加する方法は、Cを多量に添加する必要があるが、Cの過度な添加は溶接性の低下を招くため好ましくない。また、固溶強化元素や析出強化元素を添加してフェライトを強化する方法は、合金元素の多量添加により溶接性の低下を招いたり、素材コストの上昇を招いたりする。
一方、加工フェライトの活用は、Cや合金元素の添加を最小限に抑制し、溶接性を維持した状態で、降伏応力YSおよび引張強さTSを上昇させることができる。すなわち、加工フェライトを利用する方法は、熱間圧延後、加速冷却することなく高強度化を図ることができるので、冷却時の曲がりや反りの発生を抑えながら、高強度化することが可能である。そこで、本発明においては、高強度化の手段として、鋼材の組織を、加工フェライトを含むフェライト+パーライト組織とする方法を採用することとした。
ここで、上記加工フェライトの分率は、面積率にして鋼組織全体の5%以上70%以下の範囲であることが好ましい。加工フェライトの分率が5%未満では、鋼の強化が十分に得られず、一方、70%を超えると、強度上昇が飽和すると共に、(α+γ)の2相域圧延時の荷重増大に伴うロール割損リスクが増加するからである。強度を安定的に確保するため、より好ましくは、15%以上70%以下の範囲であることとする。
なお、上記加工フェライトは、Ar3変態点以下の(α+γ)2相域での熱間圧延によって形成される加工歪が導入されたフェライトのことである。通常、扁平化した加工フェライトをトレースし、組織中に占める面積を定量化し、その分率を測定することができる。
組織の測定位置としては、最も板厚の厚い部位における板厚1/4部が好ましい。なお、上述のように、加工フェライトは、面積率で鋼組織全体の5〜70%程度存在することが好ましい。残部は、パーライト組織であるが、フェライト・パーライト以外の組織、即ち、ベイナイト等が面積率で10%以下存在してもよい。
次に、本発明に係る鋼材の製造方法について説明する。
本発明の鋼材の製造にあたっては、先ず、上記した成分組成を含む鋼を転炉、電気炉等公知の方法で溶製し、連続鋳造法、造塊法等の公知の方法でスラブやビレット等の鋼素材とするのが好ましい。なお、溶製後、取鍋精錬や真空脱ガス等の処理を付加しても良い。
1000℃以上1350℃以下で加熱
上記鋼素材を、加熱炉に装入して再加熱後、熱間圧延して所望の寸法、組織及び特性を有する厚鋼板あるいは形鋼(鋼材)とする。この際、鋼素材の再加熱温度は1000℃以上1350℃以下の範囲とする必要がある。加熱温度が1000℃未満では変形抵抗が大きく、熱間圧延が難しくなる。一方、1350℃を超える加熱は、表面痕の発生原因となったり、スケールロスや燃料原単位が増加したりする。好ましくは、1050℃以上1250℃以下の範囲である。
Ar3点以下での累積圧下率:5%以上80%以下
その後の熱間圧延は、Ar3点以下での累積圧下率を5%以上80%以下とする必要がある。圧延温度がAr3点超では、鋼材の組織が加工フェライトを含まないものとなり、必要な強度、靭性を確保することができない。同様に、Ar3点以下での累積圧下率が5%未満では、加工フェライトの生成量が少ないため、強靭化効果が小さい。逆に、80%を超える圧下率になると、圧延荷重が増大して圧延が困難となったり、圧延のパス回数が増えて生産性の低下を招くこととなる。
よって、Ar3点以下での累積圧下率は5%以上80%以下とする。好ましくは、10%以上60%以下の範囲である。なお、Ar3点以下での圧延は、少なくとも1パス行えばよく、複数パスとなっても構わない。ここで、累積圧下率とは、圧延前の断面積(A)に対する圧延終了後の鋼材の断面積(B)の断面減面率のことを指し、以下の式で表される。断面積(A)および断面積(B)は、例えば、圧延機に近接配置されたレーザ変位計により計測することができる。
(累積圧下率〔%〕)=100×[(A)−(B)]/(A)
仕上温度:(Ar3−180)℃以上(Ar3−3)℃以下
上記熱間圧延は、圧延仕上温度を(Ar3−180)℃以上(Ar3−3)℃以下とする条件で行う必要がある。圧延仕上温度が、(Ar3−3)℃超では、2相域圧延による強靭化効果が十分に得られず、一方、(Ar3−180)℃未満では、変形抵抗の増大により圧延荷重が増加し、圧延することが困難となるからである。安定的に所定の加工フェライト分率を確保するため、好ましくは、(Ar3−180)℃以上(Ar3−10)℃以下とする。なお、Ar3点は、以下の式(1)により求めることができる。
Ar3=910-310[C]-80[Mn]-20[Cu]-15[Cr]-55[Ni]-80[Mo] … (1)
ここで、式(1)の[]内における各元素記号は、それぞれの成分組成の鋼素材中の含有量(質量%)を示し、含有しないものは0として計算する。
熱間圧延後の冷却は、特に制限はないが、放冷により行うことが好ましい。これにより、圧延後の冷却不均一から生じる曲がりや反りといった形状変化を軽減することができ、圧延後の鋼材に対する矯正の負担を軽減することができる。
熱間圧延によって形鋼を製造する場合には、形鋼となる鋼素材の断面内の各部位における温度差が50℃以内となるように、Ar3点以下での圧延を行うことが好ましい。例えば、形鋼の中で、長辺と短辺とで肉厚に差のある不等辺不等厚山形鋼については、長辺側よりも肉厚の厚い短辺側を圧延機の前後で水冷して、長辺側と短辺側の温度差を50℃以内に抑えることが好ましい。
なお、断面とは、形鋼となる鋼素材の長さ方向に対して垂直な面を指し、長辺側と短辺側の断面内温度差は、例えば、それぞれの表面温度を放射温度計で測定し、シミュレーションにより得られた断面内の最高温度と最低温度との差により求めることができる。
また、上記水冷は、圧延機前後の前面のみ、後面のみあるいは、前後の両方で行ってもよい。また、圧延する形鋼の寸法や要求精度に応じて、複数回にわたって行っても構わない。なお、水冷の際の水量密度は、1m3/m・min以上であることが好ましい。
前記の温度差が50℃を超えると、短辺側と長辺側の強度、靭性特性のばらつきが大きくなるばかりでなく、圧延後の冷却工程での曲がりが大きくなり、矯正に要する負担が大きくなって生産性を低下させる。安定的に所定の機械的特性を得るため、より好ましくは、30℃以下とする。
表1に示す成分組成を有する鋼を転炉で溶製後、連続鋳造によりスラブとした。ついで、スラブを加熱炉に装入して1150℃に加熱後、表2に示す条件で熱間圧延し、25mm厚の厚鋼板とした。
Figure 2018150605
Figure 2018150605
これらの鋼板から、JIS1B号引張試験片を採取し、母材の引張特性(圧延C方向、降伏応力YS、引張強さTS、伸びEl)を測定した。また、2mmVノッチシャルピー試験片を、このシャルピー試験片の表面が鋼板表面から1mm入った距離に合うように採取し、母材の衝撃特性(圧延L方向、シャルピー衝撃試験により−20℃での吸収エネルギーvE-20を測定)を測定した。
また、溶接部靭性として、溶接入熱が150kJ/cmでサブマージアーク溶接した時の溶接継手における溶接熱影響部1mm位置(ヒュージョンラインから母材側に1mm入った箇所)での熱履歴に相当する再現熱サイクルを付与したのち、その後、2mmVノッチシャルピー試験片を採取し、シャルピー衝撃試験により0℃での吸収エネルギーvE0を測定した。
また、組織観察用の試料を採取し、板厚1/4部の組織を顕微鏡で倍率200倍で観察し、2相域圧延で生成した扁平化した加工フェライトをトレースし、ミクロ組織中に占める面積を画像解析により定量化し、加工フェライトの分率を求めた。
次に、表3に示す成分組成を含有する鋼を転炉で溶製してブルームとし、このブルームを加熱炉に装入して加熱後、表4に示す条件で熱間圧延し、表4に示す断面寸法の不等辺不等厚山形鋼(NAB)および圧延T形鋼を製造した。
Figure 2018150605
Figure 2018150605
なお、表4において、不等辺不等厚山形鋼(NAB)については、長辺側をウェブ、短辺側をフランジとして示している。不等辺不等厚山形鋼については短辺から、T形鋼についてはフランジから、JIS1B号引張試験片を採取し、引張特性(圧延L方向、降伏応力YS、引張強さTS、伸びEl)を測定した。
また、同様に、不等辺不等厚山形鋼については短辺から、T形鋼についてはフランジから、2mmVノッチシャルピー試験片を、このシャルピー試験片の表面が鋼材表面から1mm入った距離に合うように採取し、母材の衝撃特性(圧延L方向、シャルピー衝撃試験により−20℃での吸収エネルギーvE-20を測定)を測定した。
また、溶接部靭性として,溶接入熱が20kJ/cmのGMAW溶接した時の溶接継手における溶接熱影響部1mm(ヒュージョンラインから母材側に1mm入った箇所)相当の再現熱サイクルを付与し、その後、2mmVノッチシャルピー試験片を採取し、シャルピー衝撃試験により0℃での吸収エネルギーvE0を測定した。
また、不等辺不等厚山形鋼については短辺から、T形鋼についてはフランジから、組織観察用の試料を採取し、板厚1/4部の組織を顕微鏡で倍率200倍で観察し、2相域圧延で生成した扁平化した加工フェライトをトレースし、ミクロ組織中に占める面積を画像解析により定量化し、加工フェライトの分率を求めた。
耐食性については、以下に示す条件で試験を行うことで、石炭運搬船およびコークス運搬船のホールド内の腐食に大きな影響を及ぼす温湿度環境、結露状況を模擬した。硬度については、JIS Z 2244に準拠し、10kgfの荷重のもとビッカース硬度(HV)を測定した。
前記厚鋼板および形鋼から、5mmt×50mmW×75mmLの試験片を採取し、その表面をショットブラストして、表面のスケールや油分を除去した。この面を試験面として、塗膜剥離後の鋼材の耐食性を評価した。裏面と端面をシリコン系シールでコーティングした後、アクリル製の治具に嵌め込み、その上に石炭5gを敷き詰めた。
その後、恒温恒湿器により、雰囲気A(温度60℃、相対湿度95%、20時間)⇔雰囲気B(温度30℃、相対湿度95%、3時間)、遷移時間0.5時間の温度湿度サイクルを84日間与えた。ここで、記号「⇔」は繰り返しを意味している。なお、石炭は5gを秤量し、常温で100mlの蒸留水に2時間浸漬したのち、ろ過を行い、200mlに希釈した石炭浸出液のpHが3.0になるものを用いた。
本実施例では、上記の条件で試験を行うことにより、石炭運搬船およびコークス運搬船のホールド内の腐食に大きな影響を及ぼす温湿度環境、結露状況を模擬している。試験後、錆剥離液を用い、各試験片の錆を剥離し、鋼材の重量減少量を測定し腐食量とした。また、生じた最大孔食深さをデプスメーターを用いて測定した。
表5に上記厚鋼板の引張試験、衝撃試験、ミクロ組織調査、耐食性試験、および硬度試験の結果を示す。表5に示したとおり、発明例、比較例ともに良好な引張特性および衝撃特性を示した。引張試験については、降伏応力YSが315MPa以上、引張強さTSが440MPa以上、伸びElが19%以上を良好な強度を有すると判定した。衝撃試験については、シャルピー衝撃試験による−20℃での吸収エネルギーvE-20が31J以上、0℃での吸収エネルギーvE0が34J以上を良好な衝撃特性を有すると判定した。
しかしながら、耐食性試験については大幅な違いがみられた。すなわち、本発明の成分組成を満たす圧延符号A1-1、A2-1〜A2-2、A2-9〜A2-11、A3-1〜A12-1、A13-1〜A13-3、A14-1〜A35-1の鋼板の重量減および最大孔食深さは、ベース鋼の圧延符号A36-1の鋼板に対して70%以下と良好な耐食性を示したのに対し、比較例である圧延符号A37-1〜A48-1の鋼板の重量減および最大孔食深さは、ベース鋼の圧延符号A36-1の鋼板の90%以上であり、耐食性として不十分であった。
また、ミクロ組織が、加工フェライトを含むフェライト+パーライト組織では、十分な強度が得られており、反りなどの形状変化も軽微で、生産性も極めて良好であった。
Figure 2018150605
表6に上記形鋼の引張試験、衝撃試験、ミクロ組織調査、耐食性試験、および硬度試験の結果を示す。表6に示したとおり、発明例、比較例ともに良好な引張特性および衝撃特性を示した。引張試験については、降伏応力YSが315MPa以上、引張強さTSが440MPa以上、伸びElが19%以上を良好な強度を有すると判定した。衝撃試験については、シャルピー衝撃試験による−20℃での吸収エネルギーvE-20が31J以上、0℃での吸収エネルギーvE0が34J以上を良好な衝撃特性を有すると判定した。
しかしながら、耐食性試験については大幅な違いがみられた。すなわち、本発明の成分組成を満たす圧延符号B1-1〜B1-3、B1-6、B1-11〜B1-13、B2-1〜B12-1、B13-1〜B13-3、B14-1〜B21-1の形鋼の重量減および最大孔食深さは、ベース鋼の圧延符号B36-1およびB36-2の形鋼に対して70%以下と良好な耐食性を示したのに対し、比較例である圧延符号B37-1〜B52-1の形鋼の重量減および最大孔食深さは、ベース鋼の圧延符号B36-1およびB36-2の形鋼の90%以上であり、耐食性として不十分であった。
また、ミクロ組織が、加工フェライトを含むフェライト+パーライト組織では、十分な強度が得られており、反りなどの形状変化も軽微で、生産性も極めて良好であった。
Figure 2018150605
本発明に係る鋼材は、石炭やコークスを積載するばら積み貨物船のホールドの使用環境において、腐食減耗が抑制されて優れた耐食性を発揮するため、ホールドの再塗装や鋼材切替えの頻度を低減することができる。

Claims (13)

  1. 質量%で、
    C:0.040%以上0.200%以下、
    Si:0.01%以上0.50%以下、
    Mn:0.10%以上2.00%以下、
    P:0.035%以下、
    S:0.010%以下、
    Al:0.003%以上0.100%以下、
    Cu:0.04%以上0.35%以下、
    Ni:0.04%以上0.40%以下、
    W:0.010%以上0.500%以下、
    Sb:0.010%以上0.300%以下、
    Nb:0.003%以上0.025%以下および
    N:0.0010%以上0.0080%以下
    を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の成分組成を有する鋼材であって、
    前記Wにおける固溶W量が0.005%以上であり、
    前記Nbにおける固溶Nb量が0.002%以上であり、
    加工フェライトを含むフェライトとパーライトとを含む組織を有する鋼材。
  2. 前記成分組成は、さらに、
    質量%で、
    Ti:0.001%以上0.030%以下、
    Zr:0.001%以上0.030%以下および
    V:0.002%以上0.20%以下
    のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、請求項1に記載の鋼材。
  3. 前記成分組成は、さらに、
    質量%で、
    Ca:0.0002%以上0.0050%以下
    を含有する、請求項1または2に記載の鋼材。
  4. 前記成分組成は、さらに、
    質量%で、
    B:0.0002%以上0.0030%以下
    を含有する、請求項1から3のいずれかに記載の鋼材。
  5. 前記成分組成は、さらに、
    質量%で、
    Co:0.01%以上0.50%以下、
    Mo:0.01%以上0.50%以下および
    Cr:0.01%以上0.20%以下
    のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、請求項1から4のいずれかに記載の鋼材。
  6. 前記成分組成は、さらに、
    質量%で、
    REM:0.0002%以上0.015%以下、
    Y:0.0001%以上0.1%以下および
    Mg:0.0002%以上0.015%以下
    のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、請求項1から5のいずれかに記載の鋼材。
  7. 質量%で、
    C:0.040%以上0.200%以下、
    Si:0.01%以上0.50%以下、
    Mn:0.10%以上2.00%以下、
    P:0.035%以下、
    S:0.010%以下、
    Al:0.003%以上0.100%以下、
    Cu:0.04%以上0.35%以下、
    Ni:0.04%以上0.40%以下、
    W:0.010%以上0.500%以下、
    Sb:0.010%以上0.300%以下、
    Nb:0.003%以上0.025%以下および
    N:0.0010%以上0.0080%以下
    を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の成分組成を有し、
    前記Wにおける固溶W量が0.005%以上であり、
    前記Nbにおける固溶Nb量が0.002%以上である鋼素材を、1000℃以上1350℃以下に加熱し、
    Ar3点以下での累積圧下率が5%以上80%以下および仕上温度が(Ar3−180)℃以上(Ar3−3)℃以下の熱間圧延を施す鋼材の製造方法。
  8. 前記熱間圧延は、前記鋼材の断面内の温度差を50℃以内として行う、請求項7に記載の鋼材の製造方法。
  9. 前記成分組成は、さらに、
    質量%で、
    Ti:0.001%以上0.030%以下、
    Zr:0.001%以上0.030%以下および
    V:0.002%以上0.20%以下
    のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、請求項7または8に記載の鋼材の製造方法。
  10. 前記成分組成は、さらに、
    質量%で、
    Ca:0.0002%以上0.0050%以下
    を含有する、請求項7から9のいずれかに記載の鋼材の製造方法。
  11. 前記成分組成は、さらに、
    質量%で、
    B:0.0002%以上0.0030%以下
    を含有する、請求項7から10のいずれかに記載の鋼材の製造方法。
  12. 前記成分組成は、さらに、
    質量%で、
    Co:0.01%以上0.50%以下、
    Mo:0.01%以上0.50%以下および
    Cr:0.01%以上0.20%以下
    のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、請求項7から11のいずれかに記載の鋼材の製造方法。
  13. 前記成分組成は、さらに、
    質量%で、
    REM:0.0002%以上0.015%以下、
    Y:0.0001%以上0.1%以下および
    Mg:0.0002%以上0.015%以下
    のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、請求項7から12のいずれかに記載の鋼材の製造方法。
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