JP2023127303A - 厚鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐腐食摩耗性に優れた厚鋼板を提供することを目的とする。【解決手段】C:0.24%以上0.32%未満、Si:0.05%以上1.00%以下、Mn:0.20%以上2.00%以下、P:0.001%以上0.030%以下、S:0.0001%以上0.0100%以下、Al:0.005%以上0.100%以下、Cu:0.01%以上2.00%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、表面硬さがブリネル硬さHBW10/3000で460以上590以下であり、転位密度が3.0×1014/m2以上3.5×1015/m2以下であることを特徴とする厚鋼板。【選択図】なし

Description

本発明は、産業機械、運搬機器等で耐摩耗性が要求される部材用に用いられる厚鋼板に関し、特に、石炭採掘環境などの酸性の腐食環境における厚鋼板に関する。
パワーショベル、ブルドーザー、ホッパー、バケット、ダンプトラック、コンベア等の産業機械、運搬機器等の部材では、土砂や鉱石、石炭などとの接触により摩耗が生じる。このため、部材の寿命延長を目的に耐摩耗性に優れた厚鋼板が用いられている。実際の使用環境は、乾燥、湿潤など種々の状態が挙げられるが、とりわけ湿潤状態では腐食性物質を含むことが多い。そのような環境下における腐食摩耗は非常に厳しいことが知られている。特に、石炭採掘環境では、石炭からの浸出液が酸性を示す場合があり、そのような場合は一層腐食摩耗が厳しくなる。そのため、耐腐食摩耗性に優れた厚鋼板が求められていた。
このような要望に対して、例えば、特許文献1では、質量%で、C:0.18~0.25%、Si:0.05~1.00%、Mn:0.10~2.00%、P:0.020%以下、S:0.0050%以下、Al:0.005~0.100%、Cr:0.05~2.00%、Nb:0.005~0.100%、Ti:0.005~0.100%、W:0.05~1.00%、必要に応じて、Mo、Cu、Ni、V、B、REM、Ca、Mgの1種または2種以上を含む組成の腐食環境における耐摩耗性に優れる鋼が開示されている。しかしながら、石炭採掘環境などのような酸性環境における耐腐食摩耗性に関しては言及されていない。
また、特許文献2では、質量%で、C:0.20超~0.35%、Si:0.02~1.00%、Mn:0.1~2.0%、P:0.020%以下、S:0.005%以下、Al:0.005~0.100%、Sb:0.005~0.20%、B:0.0003~0.0030%を含み、更に、Cr:0.05~2.0%、Mo:0.05~1.0%のうちから選ばれた1種以上を含み、かつ0.05≦(CrSol+2.5Mosol)≦2.0(ここで、CrSol:鋼中固溶Cr量(質量%)、Mosol:鋼中固溶Mo量(質量%))を満足する組成の耐腐食摩耗性に優れる耐摩耗鋼板が開示されている。しかしながら、石炭採掘環境などのような酸性環境における耐腐食摩耗性に関しては言及されていない。
また、特許文献3では、C:0.01~0.25%、Si:0.01~0.50%、Mn:0.1~2.0%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Al:0.003~0.10%、Cu:0.05~0.35%、Ni:0.02~0.40%、Sb:0.01~0.2%、W:0.005~0.5%、Nb:0.003~0.025%、Cr:0.1%以下、N:0.0010~0.0080%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、かつ表面から深さ方向に2mmの位置のビッカース硬度が140以上であることで、特定環境下に置いて優れた耐食性、耐磨耗性、高靭性を示す耐食鋼が開示されている。しかしながら、鋼材の硬さはビッカース硬度で365以下と低く、産業機械や運搬機器等には適さないという問題点があった。
また、特許文献4では、質量%で、C:0.10~0.35%、Si:1.00%超、2.00%以下、Mn:0.10~2.00%、P:0.0200%以下、S:0.0100%以下、Cr:0.05%超、2.00%以下、Al:0.010~0.100%、N:0.0020~0.0100%、B:0.0003~0.0030%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、H≧235+706[C](1-0.3[C])(式中、Hは前記耐食性耐摩耗鋼板の表層部硬度(HV)を表し、[C]は前記Cの含有量(質量%)を表す)を満足することで靭性に優れかつ耐食性と耐摩耗性とを両立する耐食性耐摩耗鋼板が開示されている。しかしながら、石炭採掘環境などのような酸性環境における耐腐食摩耗性に関しては言及されていない。
また、特許文献5では、質量%で、C:0.01~0.15%、Si:0.05~1.00%、Mn:0.10~2.00%、P:0超~0.020%、S:0超~0.010%、Cr:0.05超~3.00%、Al:0.01~0.10%、B:0.0003~0.0020%、N:0.0020~0.0100%を含有し、Ceq(%)=[C]+[Mn]/6+[Si]/24+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/4(式中、[X]は、元素Xの質量%での含有量であり、含有しない元素Xの項には0を代入する。)によって求められる炭素当量Ceq(%)が0.20%以上であり、表層部のラス状組織の面積率が90%以上であり、前記ラス状組織に存在するセメンタイトの長軸/短軸比が2.00以上である金属組織を有し、表層部硬度が200HV5以上であることで、石炭専用船又は鉱炭兼用船の船倉に好適な、耐食性及び耐摩耗性に優れた鋼板が開示されている。しかしながら、鋼材の硬さはビッカース硬度で365以下と低く、産業機械や運搬機器等には適さないという問題点があった。
特開2015-193873号公報 特開2016-222969号公報 特開2017-128762号公報 特開2020-007589号公報 特開2020-132994号公報
本発明は、かかる事情に鑑み、耐腐食摩耗性に優れた厚鋼板を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、酸性環境の耐腐食摩耗性の観点から各種要因の影響について鋭意検討した。その結果、鋼材の耐摩耗性と耐食性を同時に向上させることで、石炭採掘環境のような酸性環境における耐腐食摩耗性が向上するとの知見を得た。
すなわち、耐摩耗性を向上させるためには、
(1)硬さを上昇させる、
耐食性を向上させるためには、
(2)Cuを含有する、
(3)転位密度を低下させる、
ことが重要であると知見した。
すなわち、前記課題を解決するためには、Cuを含有しつつ、耐摩耗性と耐食性が同時に向上するように硬さと転位密度を適切に制御することが重要である。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
[1] 質量%で、
C:0.24%以上0.32%未満、
Si:0.05%以上1.00%以下、
Mn:0.20%以上2.00%以下、
P:0.001%以上0.030%以下、
S:0.0001%以上0.0100%以下、
Al:0.005%以上0.100%以下、
Cu:0.01%以上2.00%以下を含有し、
残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、
表面硬さがブリネル硬さHBW10/3000で460以上590以下であり、
転位密度が3.0×1014/m以上3.5×1015/m以下であることを特徴とする厚鋼板。
[2] さらに、質量%で、
Cr:0.01%以上3.00%以下、
Mo:0.01%以上1.00%以下、
Nb:0.001%以上0.100%以下、
Ti:0.001%以上0.100%以下、
V:0.01%以上0.20%以下、
Zr:0.001%以上0.100%以下、
Sn:0.001%以上0.200%以下、
Sb:0.001%以上0.200%以下、
Ni:0.01%以上2.00%以下、
Co:0.01%以上2.00%以下、
W:0.01%以上1.00%以下、
B:0.0001%以上0.0030%以下、
REM:0.0001%以上0.0100%以下、
Ca:0.0001%以上0.0100%以下、
Mg:0.0001%以上0.0100%以下、
から選ばれる一種以上を含有することを特徴とする[1]に記載の厚鋼板。
本発明によれば、耐腐食摩耗性に優れた厚鋼板を得ることができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
先ず、高強度鋼板の成分組成の適正範囲およびその限定理由について説明する。なお、以下の説明において、鋼の成分元素の含有量を表す「%」は、特に明記しない限り「質量%」を意味する。
C:0.24%以上0.32%未満
Cは鋼板の硬さを高めるとともに転位密度を上昇させる元素である。所定の硬さを確保するため、C量は0.24%以上含有する必要がある。したがって、C含有量は0.24%以上とする。好ましくは、C量は0.25%以上である。一方、C量が0.32%以上になると転位密度が上昇しすぎてしまい、靭性が著しく劣化する。したがって、C含有量は0.32%未満とする。好ましくは、0.30%以下であり、より好ましくは0.29%以下である。
Si:0.05%以上1.00%以下
Siは、溶鋼の脱酸剤として作用する有効な元素であり、また、固溶強化により鋼板の硬さ上昇に有効に寄与する元素である。このような効果を確保するためには0.05%以上の含有を必要とする。そのため、Si含有量は0.05%以上とする。好ましくは、Si含有量は0.10%以上である。一方、1.00%を超えて多量に含有すると、延性、靭性が低下し、また介在物が増加する。したがって、Si含有量は1.00%以下とする。好ましくは0.40%以下である。
Mn:0.20%以上2.00%以下
Mnは焼入れ性を向上させる元素であり、所定の硬さを確保するために0.20%以上含有する必要がある。そのため、Mn含有量は0.20%以上とする。Mn含有量は、好ましくは0.40%以上であり、より好ましくは0.60%以上である。一方、2.00%を超えて過剰に含有すると靭性および溶接性が劣化する。したがって、Mn含有量は2.00%以下とする。Mn含有量は、好ましくは1.80%以下であり、より好ましくは1.65%以下である。
P:0.001%以上0.030%以下
Pは鋼中に多量に含有すると靭性や溶接性を劣化させる。そのため、P含有量は0.030%以下とする。好ましくは0.015%以下である。Pはできるだけ低減することが望ましいが、過度の低減は精錬コストの高騰を招くため、P含有量は0.001%以上とする。P含有量は好ましくは0.003%以上である。
S:0.0001%以上0.0100%以下
Sは、鋼中に多量に含まれるとMnSとして析出し、破壊発生の起点となり靭性の劣化を招くため、S含有量は0.0100%以下とする必要がある。したがって、S含有量は、0.0100%以下とする。好ましくは0.0040%以下、より好ましくは0.0020%以下である。ただし、過度の低減は精錬コストの増大を招くため、S含有量は0.0001%以上とする。好ましくは0.0003%以上、より好ましくは0.0005%以上である。
Al:0.005%以上0.100%以下
Alは、製鋼時の脱酸に必要な元素である。このような効果を得るため、Al含有量として0.005%以上含有する必要がある。したがって、Al含有量は0.005%以上とする。Al含有量は、好ましくは0.010%以上とする。一方、0.100%を超えると溶接性に悪影響を及ぼす。したがって、Al含有量は0.100%以下とする。Al含有量は、好ましくは0.070%以下であり、より好ましくは0.050%以下である。
Cu:0.01%以上2.00%以下
Cuは、本発明において重要な要件であり、特に石炭採掘環境などの酸性の腐食環境における耐腐食摩耗性を著しく向上させる効果を有する。Cuは腐食生成物を緻密にし、腐食促進因子である水、酸素、硫酸イオン、塩化物イオンなどの地鉄への透過を抑制することで、腐食反応を抑制する。この効果により、耐腐食摩耗性が向上する。このような効果はCu含有量が0.01%以上で得られる。したがって、Cu含有量は0.01%以上とする。Cu含有量は、好ましくは、0.05%以上であり、より好ましくは、0.20%以上である。一方、2.00%を超えると熱間加工性が低下し、製造コストが増大する。したがって、Cu含有量は2.00%以下とする。Cu含有量は、好ましくは、1.00%以下であり、より好ましくは、0.50%以下である。
以上の必須含有元素で、本発明鋼は目的とする特性が得られるが、上記の必須含有元素に加えて、必要に応じて下記の元素を含有することができる。
Cr:0.01%以上3.00%以下
Crは、焼入れ性を向上させる元素であり、硬さを上昇させる効果を有する。また、石炭採掘環境などの酸性の腐食環境において、アノード反応によりCr酸イオンとして溶出し、インヒビター効果により腐食を抑制することで、耐腐食摩耗性を向上させる効果を有する。このような効果を得るためには0.01%以上とする必要とする。したがって、Crを含有する場合には、Cr含有量は0.01%以上とする。好ましくは、0.10%以上、より好ましくは0.30%以上である。一方、3.00%を超えて含有すると、溶接性が低下するとともに、製造コストが高騰するため、3.00%以下とする。なお、Cr含有量は、好ましくは2.50%以下、より好ましくは2.00%以下である。
Mo:0.01%以上1.00%以下
Moは、焼入れ性を向上させる元素であり、硬さを上昇させる効果を有する。このような効果を得るためには、0.01%以上含有する必要がある。したがって、Moを含有する場合、Mo含有量は0.01%以上とする。好ましくは0.10%以上である。一方、1.00%を超えるとMo消費量増加に伴うコスト上昇を招く。したがって、Moを含有する場合、Mo含有量は1.00%以下とする。好ましくは0.80%以下である。
Nb:0.001%以上0.100%以下
Nbは、強度を高めるために必要な元素である。この効果を充分に得るためには、0.001%以上含有する必要がある。したがって、Nbを含有する場合、Nb含有量は0.001%以上とする。一方、0.100%を超えると靭性の劣化を招く。したがって、Nbを含有する場合、Nb含有量は0.100%以下とする。好ましくは0.050%以下である。
Ti:0.001%以上0.100%以下
Tiは、強度を高めるために必要な元素である。この効果を充分に得るためには、Tiは0.001%以上含有する必要がある。したがって、Tiを含有する場合、Ti含有量は0.001%以上とする。一方、0.100%を超えると靭性の劣化を招く。したがって、Tiを含有する場合、Ti含有量は0.100%以下とする。好ましくは0.050%以下である。
V:0.01%以上0.20%以下
Vは、強度を高めるために必要な元素である。この効果を充分に得るためには、0.01%以上含有する必要がある。したがって、Vを含有する場合、V含有量は0.01%以上とする。一方、0.20%を超えると効果が飽和する。したがって、Vを含有する場合、V含有量は0.20%以下とする。好ましくは0.10%以下である。
Zr:0.001%以上0.100%以下
Zrは、強度を高めるために必要な元素である。この効果を充分に得るためには、0.001%以上含有する必要がある。したがって、Zrを含有する場合、Zr含有量は0.001%以上とする。一方、0.100%を超えると効果が飽和する。したがって、Zrを含有する場合、Zr含有量は0.100%以下とする。好ましくは0.050%以下である。
Sn:0.001%以上0.200%以下
Snは、石炭採掘環境などの酸性の腐食環境において、鋼材のアノード反応を抑制するとともに、カソード反応である水素発生反応を抑制することで鋼材の耐候性を向上させる元素である。このような効果を充分に得るためには、Snは0.001%以上含有する必要がある。したがって、Snを含有する場合、Sn含有量は0.001%以上とする。一方、Snを過剰に含有すると靭性の劣化を招く。したがって、Snを含有する場合、Sn含有量は0.200%以下とする。好ましくは0.100%以下である。
Sb:0.001%以上0.200%以下
Sbは、石炭採掘環境などの酸性の腐食環境において、鋼材のアノード反応を抑制するとともに、カソード反応である水素発生反応を抑制することで鋼材の耐候性を向上させる元素である。このような効果を充分に得るためには、Sbを0.001%以上含有する必要がある。したがって、Sbを含有する場合、Sb含有量は0.001%以上とする。一方、Sbを過剰に含有すると靭性の劣化を招く。したがって、Sbを含有する場合、Sb含有量は0.200%以下とする。好ましくは0.100%以下である。
Ni:0.01%以上2.00%以下
Niは、焼入れ性を向上させる元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。したがって、Niを含有する場合には、Ni含有量は0.01%以上とする。一方、2.00%を超える含有は、製造コストを上昇させるため、Niを含有する場合には、Ni含有量は2.00%以下とする。好ましくは1.00%以下である。
Co:0.01%以上2.00%以下
Coは、焼入れ性を向上させる元素である。この効果を得るためには、Coは0.01%以上の含有を必要とする。したがって、Coを含有する場合には、Co含有量は0.01%以上とする。一方、2.00%を超える含有は、製造コストを上昇させるため、Coを含有する場合には、Co含有量は2.00%以下とする。好ましくは1.00%以下である。
W:0.01%以上1.00%以下
Wは、焼入れ性を向上させる元素であり、硬さを上昇させる効果を有する。このような効果を得るためには、Wを含有する場合、Wを0.01%以上含有する必要がある。W含有量は、好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは0.10%以上である。一方、1.00%を超えるとW消費量増加に伴うコスト上昇を招く。したがって、Wを含有する場合、W含有量は1.00%以下とする。好ましくは0.80%以下である。
B:0.0001%以上0.0030%以下
Bは、焼入れ性を向上させる元素である。この効果を得るためには、0.0001%以上含有する必要がある。したがって、Bを含有する場合、B含有量は0.0001%以上である。一方、0.0030%を超えると靭性の劣化を招く。したがって、Bを含有する場合、B含有量は0.0030%以下とする。好ましくは0.0020%以下である。
REM:0.0001%以上0.0100%以下
REMは、Sを固定し、靱性低下の原因となるMnSの生成を抑制する。このような効果を得るためには0.0001%以上含有する必要がある。したがって、REMを含有する場合には、REM含有量は、0.0001%以上である。なお、好ましくは0.0005%以上である。一方、0.0100%を超えて含有すると鋼中介在物量が増加し、靱性の低下を招くため、REMを含有する場合には、REM含有量は0.0100%以下とする。なお、REM含有量は、好ましくは0.0080%以下であり、より好ましくは0.0020%以下である。
Ca:0.0001%以上0.0100%以下
Caは鋼中のSを固定して溶接熱影響部の靭性向上に有効な元素である。この効果を十分に得るためには0.0001%以上含有する必要がある。したがって、Caを含有する場合、Ca含有量は0.0001%以上とする。一方、0.0100%を超えると鋼中の介在物の量が増加し、かえって靭性の劣化を招く。したがって、Caを含有する場合、Ca含有量は0.0100%以下とする。好ましくは0.0050%以下である。
Mg:0.0001%以上0.0100%以下
Mgは、鋼中のSを固定して溶接熱影響部の靭性向上に有効な元素である。この効果を充分に得るためには、0.0001%以上含有する必要がある。したがって、Mgを含有する場合、Mg含有量は0.0001%以上とする。一方、0.0100%を超えると鋼中の介在物の量が増加しかえって靭性の劣化を招く。したがって、Mgを含有する場合、Mg含有量は0.0100%以下とする。好ましくは0.0050%以下である。
残部は鉄および不可避的不純物である。ここで不可避的不純物として、N:0.0100%以下、O:0.0100%以下が許容できる。
次に、本発明で規定した鋼材の転位密度について説明する。
本発明の鋼材は、上記したように耐食性元素であるCuを所定量鋼材に含有することにより、腐食環境において形成される腐食生成物が緻密化し、各種腐食因子の拡散を抑制して、鋼材の腐食速度を減じるものである。一方、鋼材はその製造過程に由来する転位の形成を避けることはできず、この転位は熱力学的に不安定であるため、腐食環境においては鉄が溶解するアノードサイトとして機能する。鋼材の表面に形成された腐食生成物層は保護性を有し、鋼材の腐食速度を減じる効果があるがその効果は完全なものではなく、腐食生成物下の鋼材表面における転位密度によって腐食速度は変化する。転位密度が大きい場合には十分な耐食性が得られず、したがって十分な耐腐食摩耗性も得られない。
耐腐食摩耗性は、硬さに起因する耐摩耗性と、Cu含有量および転位密度に起因する耐食性によって決定される。
そこで発明者らは、表面硬さがブリネル硬さHBW10/3000で460以上590以下、Cu含有量が0.01%以上2.00%以下の鋼材を用いて、耐腐食摩耗性と転位密度との関係について調査したところ、転位密度が3.5×1015/mを超える場合には、十分な耐腐食摩耗性が得られないことが明らかとなった。そこで、本発明では、鋼材の転位密度を3.5×1015/m以下とする。また、転位密度が3.0×1014/m未満の場合、マルテンサイト組織を形成しておらず、より硬度の低いベイナイト組織などが形成しているため、所望の硬さを満足できなくなり、十分な耐腐食摩耗性が得られないことが明らかとなった。そこで、本発明では転位密度を3.0×1014/m以上とした。なお、転位密度は後述している方法にしたがい、測定した。
また、本発明の厚鋼板は、ブリネル硬さHBW10/3000で460以上590以下の表面硬さを有する。ここでいう「表面硬さ」は、表面から板厚方向に0.5mm入った位置で、JIS Z 2243(2008)の規定に準拠して測定した値(ブリネル硬さ)をさしている。
表面硬さ:ブリネル硬さHBW10/3000で460以上590以下
表面硬さが、HBW10/3000で460未満では、表面硬さが低いため、摩耗環境が厳しくより高い耐腐食摩耗性が要求される場合に、所望の摩耗寿命を確保できない。このため、本発明の厚鋼板では、表面硬さをブリネル硬さHBW10/3000で460以上とした。一方、表面硬さがHBW10/3000で590を超えると、曲げ加工性が劣化してしまう。このため、表面硬さをブリネル硬さHBW10/3000で590以下とした。なお、ブリネル硬さは、JIS Z 2243(2008)の規定に準拠して測定する。
次に、上記した厚鋼板の一実施形態に係る製造方法を説明する。
すなわち、上記した成分組成に調製した鋼を、転炉や電気炉、真空脱ガス等、公知の精錬プロセスを用いて溶製し、連続鋳造法あるいは造塊-分塊圧延法で鋼素材(スラブ)とし、ついでこの鋼素材を必要に応じて再加熱してから熱間圧延することにより、鋼板または形鋼等とすることで製造する。
なお、鋼材の厚さは特に限定されるものではないが、鋼材の厚さは好ましくは4mm以上であり、より好ましくは30mm以上であり、さらに好ましくは50mm超である。一方、鋼材の厚さは好ましくは100mm以下であり、より好ましくは80mm以下であり、さらに好ましくは70mm以下である。
上述したように、優れた耐腐食摩耗性を得るには、転位密度および硬さを制御することが重要であり、製造条件を下記の条件で制御することが好ましい。
前述した成分組成を有する鋼素材を、加熱温度950~1250℃で加熱し、Ar3点~950℃での累積圧下率を50%以下として、冷却開始温度がAr3変態点以上、冷却停止温度が50℃以上400℃以下、冷却速度が1℃/s以上となる条件で直接焼入れ処理を施して熱間圧延を行う。また、上記のように直接焼入れ処理を行わずに、再加熱後上記条件で焼入れ処理を施してもよい。その後、必要に応じて100℃以上400℃以下で焼戻し処理を施してもよい。
加熱温度:950~1250℃
上記の鋼素材を所望の寸法形状に熱間圧延する際には、950~1250℃の温度域に加熱することが好ましい。加熱温度が950℃未満では、変形抵抗が高くて圧延負荷が過大となり、熱間圧延ができない。一方、1250℃を超える高温では、スケールロスによる歩留まりの著しい低下が生じ、製造コストが悪化する。
加熱された鋼素材は、あるいは、鋳造後に加熱することなく所定の温度を保持した鋼素材は、熱間圧延を施して、所望の寸法形状の鋼板とする。
Ar3点~950℃での累積圧下率:50%以下
熱間圧延を施す際には、Ar3変態点~950℃での累積圧下率を厳密に制御することが好ましい。Ar3変態点~950℃での累積圧下率が高くなると、未再結晶域での圧下量が増大し、加工によって導入されたオーステナイト中の転位が、熱間圧延終了後に直ちに焼入れる直接焼入れ処理によってマルテンサイトへ受け継がれ、そのためマルテンサイトの転位密度が増加してしまい、Ar3変態点~950℃での累積圧下率が50%を超えると、所望の転位密度が得られない。したがって、Ar3点~950℃での累積圧下率は50%以下とすることが好ましい。
なお、Ar3変態点は、例えば、下記式で求めることができる。
Ar3(℃)=910-273×C-74×Mn-57×Ni-16×Cr-9×Mo-5×Cu
熱間圧延において圧延終了後は、直ちに焼入れる直接焼入れ処理を施すことが好ましい。
冷却開始温度:Ar3変態点以上
所望の硬さを得るため、冷却開始温度はAr3変態点以上の温度とし、マルテンサイトなどの所望の組織へ変態させることが好ましい。
また、冷却速度はマルテンサイトなどの所望の組織が形成される冷却速度以上とすることが好ましく、冷却開始温度から冷却停止温度の間における平均冷却速度1℃/s以上が好ましい。
冷却停止温度:50℃以上400℃以下
マルテンサイトなどの組織が自己焼戻しされることで、転位密度が低下し、硬度も低下する。冷却停止温度が400℃超では自己焼戻しが進みすぎて、所望の転位密度と硬度が得られないため、冷却停止温度は400℃以下とすることが好ましい。一方、過度の冷却は製造効率の低下を招くことから冷却停止温度は50℃以上が好ましい。
直接焼入れ処理を再加熱焼入れ処理としてもよい。再加熱温度としては、850~950℃とすることが望ましい。再加熱後の焼入れの冷却速度、冷却停止温度は直接焼入れ処理に準じる。
焼戻し温度:100℃以上400℃以下
必要に応じ、焼戻し処理を実施しても良い。焼戻しを行うことで、転位密度が低下し、硬度も低下する。この効果を得るため、焼戻し温度は100℃以上400℃以下とすることが好ましい。
表1に示す成分組成になる鋼(残部はFeおよび不可避的不純物である)を真空溶解炉で溶製し、鋳型に鋳造し、鋼素材とした。ついでこれらの鋼素材を表2に示す条件で熱間圧延し、ついで熱間圧延における圧延終了後ただちに水冷した。また、一部の鋼素材では、熱間圧延における圧延終了後、空冷した後さらに再加熱したのち、水冷した。
得られた鋼板から試験片を採取し、表面硬さ試験、転位密度測定、腐食摩耗試験を行った。
(1)表面硬さ試験
得られた鋼板の表面から板厚方向で0.5mm内部に入った鋼板表面と平行な面が測定面となるように表面硬さ測定用試験片を採取し、JIS Z 2243(2008)の規定に準拠して、表面硬さHBW10/3000を測定した。硬さ測定は、直径が10mmのタングステン硬球を使用し、荷重は3000kgfで行った。なお、表面から板厚方向で0.5mm内部に入った位置で、5点以上測定し、得られた測定値の算術平均を求め、算術平均値を、当該鋼板の表面硬さとした。
(2)転位密度測定
得られた耐摩耗鋼板から、測定位置が鋼板の幅方向中央となるように、幅25mm×長さ25mmの試験片を採取し、転位密度を測定した。鋼板表面に存在するスケールおよび加工組織の影響を除くため、研削、機械研磨、および電解研磨によって鋼板表面から1mmの深さまでの領域を除去したのちに実施した。したがって、測定された転位密度は、鋼板表面から1mmの深さの面における転位密度である。転位密度は、X線回折測定によりラインプロファイルを取得し、得られたラインプロファイルをmodified Williamson-Hall法およびmodified Warren-Averbach法を用いて解析することによって算出した。X線回折測定は、次の条件で実施した。電圧:40kV、電流:150mA、X線源:CuKα。
(3)腐食摩耗試験
得られた鋼板の1/4板厚の位置から、圧延方向と平行に摩耗試験片(大きさ:10mmφ×75mm長さ)を採取した。試験片を摩耗試験機に装着し、摩耗試験を実施した。摩耗試験片は、試験機回転子の回転軸と平行に、回転軸から150mmの位置に120°の角度で3本取り付けたのち、試験片を試験槽へ入れ、内部に摩耗材を導入した。摩耗材は平均粒径0.7mmの硅砂およびpH2の希硫酸を硅砂と希硫酸の重量比が5:3となるよう混合したものを用いた。
試験条件は、回転速度500rpm、回転数5000回、とした。試験終了後、各試験片の重量を測定した。そして、試験後重量と初期重量との差(=重量減少量)を算出した。なお、従来例として一般構造用圧延鋼材SS400(JIS G3101)から採取した試験片ついて、同様に摩耗試験を実施し、試験片の重量減少量を求めた。
耐腐食摩耗性は、SS400に対する重量減少量の比率で評価し、これが0.75以下であれば良好と評価した。
表面硬さおよび腐食摩耗試験の評価結果を表2に併記する。
表2に示したとおり、発明例はいずれも、表面硬さと耐腐食摩耗性を兼ね備えている。
これに対し、比較例では、表面硬さおよび耐腐食摩耗性の少なくとも一方について、十分な特性が得られていない。
Figure 2023127303000001
Figure 2023127303000002

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.24%以上0.32%未満、
    Si:0.05%以上1.00%以下、
    Mn:0.20%以上2.00%以下、
    P:0.001%以上0.030%以下、
    S:0.0001%以上0.0100%以下、
    Al:0.005%以上0.100%以下、
    Cu:0.01%以上2.00%以下を含有し、
    残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、
    表面硬さがブリネル硬さHBW10/3000で460以上590以下であり、
    転位密度が3.0×1014/m以上3.5×1015/m以下であることを特徴とする厚鋼板。
  2. さらに、質量%で、
    Cr:0.01%以上3.00%以下、
    Mo:0.01%以上1.00%以下、
    Nb:0.001%以上0.100%以下、
    Ti:0.001%以上0.100%以下、
    V:0.01%以上0.20%以下、
    Zr:0.001%以上0.100%以下、
    Sn:0.001%以上0.200%以下、
    Sb:0.001%以上0.200%以下、
    Ni:0.01%以上2.00%以下、
    Co:0.01%以上2.00%以下、
    W:0.01%以上1.00%以下、
    B:0.0001%以上0.0030%以下、
    REM:0.0001%以上0.0100%以下、
    Ca:0.0001%以上0.0100%以下、
    Mg:0.0001%以上0.0100%以下、
    から選ばれる一種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の厚鋼板。
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