JP6477516B2 - 耐食鋼およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、主に石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド内底板に用いられる、耐食性に優れ、かつ荷役装置および積荷の接触・衝突による磨耗が小さい鋼材に関するものである。本発明の鋼材は、厚鋼板をはじめとして、薄鋼板、形鋼および棒鋼等を含むものとする。
エネルギー資源の運搬の多くに商船が用いられていて、その中でもばら積み貨物船は、その約30%の船腹量を占めている。このばら積み貨物船において、1990年代初頭に海難事故が相次いで発生し、国際問題となった。特に、石炭船や石炭・鉱石兼用船での事故が数多く報告されており、その原因の大部分は船倉(以下「ホールド」とも言う)内での損傷であった。
ばら積み貨物船では、積荷を直接ホールドに積載するため、腐食性は積荷の影響を受け易く、船倉内の腐食、特に石炭船や石炭・鉱石兼用船の船倉内の側壁部、肋骨部での孔食により、局所的に強度が減少することが問題と考えられている。実際、この孔食が著しく進行した事例や、船の強度を確保する肋骨部分の板厚が極端に減少している事例が報告されている。
上述したように孔食の発生するばら積み貨物船の側壁部、肋骨部では、結露水が生じ易い。こうした結露水が生じた場所に石炭の硫黄成分が溶け出し、結露水と反応して硫酸を生成するので、船倉内は硫酸腐食が生じ易い低pH環境となっている。さらに、生成した硫酸はホールド内底板に蓄積されるので、ホールド内底板は激しく腐食される。このため、ホールド内底板は船舶寿命25年の間に一度は全面的な補修が必要とされている。
このような船倉内の腐食対策として、船倉内には変性エポキシ系塗装が被覆厚さ約150〜200μmで施されている。しかし、石炭や鉄鉱石によるメカニカルダメージや積荷搬出の際の重機による傷、磨耗により、塗装が剥がれる場合が多いため、十分な防食効果は得難かった。
そのため、さらなる腐食対策として、定期的な再塗装あるいは一部補修をするなどの方法が採られているが、このような方法は、非常に大きなコストがかかることから、船舶のメンテナンス費用を含め、ライフサイクルコストを低減させるために、新たな耐食鋼の開発が課題となっている。
ところで、船舶用の耐食鋼としては、カーゴオイルタンク用やバラストタンク用として開発された鋼が知られている。しかし、石炭船や石炭・鉱石兼用船のホールドの使用環境は、腐食環境(温度・湿度・腐食性物質など)および内容物によるメカニカルダメージの有無などの点で、カーゴオイルタンクやバラストタンクの使用環境と全く異なっている。このため、石炭船や石炭・鉱石兼用船ホールド用の鋼としては、独自の材料設計や特性評価が必要とされる。
一方で、石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールドの内底板は、ホールド内の他の部位に比べ、荷揚げの際におけるグラブバケット等の荷役装置との接触・衝突、または荷積みの際における石炭や鉱石との直接的な接触・衝突による鋼板表面磨耗が極めて激しい。
このような石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド用途に言及した従来技術としては、特許文献1〜4が知られている。特許文献1にはMgを必須成分とした鋼材が、また特許文献2および特許文献3にはSnを必須成分とした鋼材が開示されている。さらに、特許文献4には、Cu、Cr、Zn、Snを必須成分とした鋼材が開示されている。
特開2000−17381号公報 特開2007−262555号公報 特開2008−174768号公報 特開2013−28830号公報
しかしながら、特許文献1に示された鋼材は、船舶外板やバラストタンク、カーゴオイルタンク、鉱石船カーゴホールド等の共通的使用環境での耐食性の改善を目指しているため、鋼材の耐食性の評価として、カーゴオイルタンクとバラストタンクの腐食試験の結果が良好であることは挙げられているものの、石炭船および石炭・鉱石兼用船のホールド使用環境を考慮した試験結果については示されていない。
また、特許文献2、3では、鋼材に耐食性を与える重要な元素としてSnが用いられ、特許文献4では、Cu、Cr、Zn、Snを複合添加することで耐食性を高めた鋼材が開示されているが、これらの添加は鋼材の靭性を著しく劣化させ、母材・溶接継手靭性および熱間加工性・鋳造性の観点から実用的ではなかった。
以上述べたとおり、石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールドに用いられる耐食性に優れた鋼材の開発には、石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド特有の腐食環境を考慮すると同時に、耐食性を有しつつも造船用鋼材として必要な靭性を保持する成分設計が必要となるが、従来はこれらの点に対して考慮が払われていなかった。
加えて、特許文献1〜3は、石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド用途に言及した従来技術であるが、上述したホールド内底板適用時における、荷役装置および積荷の接触・衝突による磨耗を十分に低減できているとはまだ言えなかった。
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールドにおける腐食環境である、硫酸の生成した低pH環境下において、優れた耐食性を示し、かつ荷役装置および積荷の接触・衝突による磨耗を低減し、耐摩耗性に優れると共に靭性に優れた、石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド内底板等に用いられる耐食鋼およびその製造方法を提供することを目的とする。
一般に、船舶は、厚鋼板や薄鋼板、形鋼、棒鋼等の鋼材を溶接して建造されており、その鋼材の表面には防食塗膜が施されて使用される。しかし、石炭船や石炭・鉱石兼用船のホールド使用環境では、石炭や鉄鉱石のメカニカルダメージで塗装は剥がれやすい状況にあり、鋼材は腐食環境下に曝される。
そこで、本発明者らは、鋼材の表面の防食塗膜が剥離した後も耐食性を発揮できる鋼材の開発を試みた。すなわち、本発明者らは、石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド内の環境を模擬した試験法により、各合金元素の影響を検討した。
その結果、特定量のCu、Ni、Sb、WおよびNb等が、鋼材の耐食性の向上に有効に寄与することを知見した。
また、上述したように、石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド内底板の磨耗を抑制するためには、鋼板表面から深さ方向に2mmの位置の硬度を向上させることが有効であることも併せて知見した。
本発明は、上記の知見に立脚して完成されたものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
[1]質量%で、
C:0.01〜0.25%、
Si:0.01〜0.50%、
Mn:0.1〜2.0%、
P:0.035%以下、
S:0.035%以下、
Al:0.003〜0.10%、
Cu:0.05〜0.35%、
Ni:0.02〜0.40%、
Sb:0.01〜0.2%、
W:0.005〜0.5%、
Nb:0.003〜0.025%、
Cr:0.1%以下および
N:0.0010〜0.0080%
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、かつ表面から深さ方向に2mmの位置のビッカース硬度が140以上である耐食鋼。
[2]前記成分組成として、質量%で、さらに
Ti:0.001〜0.030%、
Zr:0.001〜0.030%および
V:0.002〜0.20%
のうちから選ばれる1種以上を含有する前記[1]に記載の耐食鋼。
[3]前記成分組成として、質量%で、さらに
Ca:0.0002〜0.010%
を含有する前記[1]または[2]に記載の耐食鋼。
[4]前記成分組成として、質量%で、さらに
Mo:0.01〜0.5%、
Co:0.01〜0.5%および
B:0.0002〜0.0050%
のうちから選ばれる少なくとも1種を含有する前記[1]〜[3]のいずれかに記載の耐食鋼。
[5]石炭船または石炭・鉱石兼用船ホールド内底板に用いられる前記[1]〜[4]のいずれかに記載の耐食鋼。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の耐食鋼の製造方法であり、
鋼素材を1050〜1250℃に加熱後、仕上圧延終了温度を700℃以上とする熱間圧延を施し、その後、620℃以上から冷却速度150℃/s以下の加速冷却を実施する耐食鋼の製造方法。
本発明によれば、石炭船や石炭・鉱石兼用船ホールド内等の、硫酸の生成した低pH環境下において、優れた耐食性を示し、かつ荷役装置および積荷の接触・衝突による磨耗を低減し、耐摩耗性に優れると共に、靭性に優れた耐食鋼を得ることができる。
なお、ここでいう、低pHとは、pHが4以下のことを指す。
鋼No.1(発明例)、鋼No.26(比較例)および鋼No.33(比較例)を、石炭船ホールド内底板の一部に適用した具体的な位置を示す図である。 平均板厚減少量の測定要領を示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の耐食鋼は、質量%で、C:0.01〜0.25%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Al:0.003〜0.10%、Cu:0.05〜0.35%、Ni:0.02〜0.40%、Sb:0.01〜0.2%、W:0.005〜0.5%、Nb:0.003〜0.025%、Cr:0.1%以下、N:0.0010〜0.0080%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、かつ表面から板厚方向に沿って2mmの位置のビッカース硬度が140以上である。本発明の耐食鋼は、石炭船や石炭・鉱石兼用船のホールド内底板に用いることができる。
まず、本発明において、鋼材の成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。なお、以下の成分組成を表す%は、特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.01〜0.25%
Cは、鋼の強度を上昇させるのに有効な元素であり、本発明では強度を確保するために0.01%以上含有させる。一方、Cを0.25%を超えて含有させると、溶接性および溶接熱影響部靭性を低下させる。よって、C含有量は0.01〜0.25%の範囲とする。好ましくは、C含有量は0.015〜0.18%の範囲である。
Si:0.01〜0.50%
Siは、脱酸剤として添加され、また鋼の強度を高める元素であるので、本発明では0.01%以上含有させる。しかしながら、Siを0.50%を超えて含有させると、鋼の靱性を劣化させるので、Si含有量の上限は0.50%とする。好ましくは、Si含有量は0.05〜0.40%の範囲である。
Mn:0.1〜2.0%
Mnは、鋼の強度を上げることができるため、0.1%以上含有させる。しかしながら、Mnを2.0%を超えて含有させると、鋼の靱性および溶接性を低下させるため、Mn含有量の上限は2.0%とする。好ましくは、Mn含有量は0.5〜1.6%の範囲である。
P:0.035%以下
Pは、鋼の母材靱性のみならず、溶接性および溶接部靱性を低下させる有害な元素であるので、極力低減することが望ましい。特に、P含有量が0.035%を超えると、母材靭性および溶接部靭性の低下が大きくなる。よって、P含有量は0.035%以下とする。好ましくは、P含有量は0.025%以下である。
S:0.035%以下
Sは、鋼の靭性および溶接性を劣化させる有害な元素であるので、極力低減することが好ましく、本発明ではS含有量は0.035%以下とする。
Al:0.003〜0.10%
Alは、脱酸剤として0.003%以上含有させるが、0.10%を超える含有は,溶接部靭性に悪影響を及ぼすので、Al含有量は0.003〜0.10%の範囲とする。
Cu:0.05〜0.35%
Cuは、腐食生成物を緻密にし、地鉄中へのH2O、O2、SO4 2-の拡散を抑制する。これにより、鋼の耐食性が向上する。この効果は、Cu含有量が0.05%以上になると発現するが、0.35%を超えて過剰に含有されると溶接性や母材靭性が低下する。そのため、Cu含有量は、0.05〜0.35%の範囲とする。好ましくは、Cu含有量は0.10〜0.30%の範囲である。
Ni:0.02〜0.40%
Niは、Cuと同様、腐食生成物を緻密にし、地鉄中へのH2O、O2、SO4 2-の拡散を抑制する。これにより、鋼の耐食性が向上する。この効果は、Ni含有量が0.02%以上になると発現するが、0.40%を超えると溶接性や母材靭性が低下する。そのため、Ni含有量は0.02〜0.40%の範囲とする。好ましくは、Ni含有量は0.04〜0.30%の範囲である。
Sb:0.01〜0.2%
Sbは、鋼材に合金元素として0.01%以上を含有させると、低pH環境において地鉄近傍に濃縮する。Sbは大きな水素過電圧を持つため、Sbが析出した部分では水素発生反応が抑制され、耐食性が向上する。また、SbがCuと金属間化合物であるCu2Sbを形成することで、さらに耐食性は向上する。一方、Sbは0.20%を超えて含有させると靭性を低下させる。よって、Sb含有量は0.01〜0.2%の範囲とする。好ましくは、Sb含有量は0.02〜0.15%の範囲である。
W:0.005〜0.5%
Wは、WO4 2-の生成により、地鉄中へのSO4 2-の拡散を抑制すると共に、腐食生成物を緻密にして、地鉄中へのH2O、O2、SO4 2-の拡散を抑制する。これらの効果を得るためには、Wを0.005%以上含有させる必要がある。しかし、Wを0.5%を超えて含有すると、この効果が飽和するだけでなく、コストも上昇するので、W含有量は0.005〜0.5%の範囲とする。好ましくは、W含有量は0.02〜0.2%の範囲である。
Nb:0.003〜0.025%
Nbは、腐食生成物を緻密にして、地鉄中へのH2O、O2、SO4 2-の拡散を抑制する。この効果を得るためにはNbを0.003%以上含有させる必要がある。一方、Nbを0.025%を超えて含有させてもこの効果は飽和する。よって、Nb含有量は0.003〜0.025%の範囲とする。好ましくは、Nb含有量は0.005〜0.020%の範囲である。
Cr:0.1%以下
Crは、低pH環境で加水分解を起こし、耐食性を低下させる元素であるので、極力低減することが好ましいが、0.1%以下であれば許容できる。
N:0.0010〜0.0080%
Nは、靱性を低下させる元素であるので、極力低減することが望ましい。しかしながら、工業的にはN含有量を0.0010%未満に低減するのは難しい。一方、Nを0.0080%を超えて含有させると靱性の著しい劣化を招く。よって、本発明では、N含有量は0.0010〜0.0080%の範囲とする。好ましくは、N含有量は0.0015〜0.0060%であり、さらに好ましくは0.0020〜0.0050%である。
以上、説明した成分が基本成分であり、本発明における成分組成のうち、上記以外の成分はFeおよび不可避的不純物である。
また、本発明では、上記の基本成分以外に必要に応じて、以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Ti:0.001〜0.030%、Zr:0.001〜0.030%、V:0.002〜0.20%
Ti、ZrおよびVはいずれも、鋼の強度を高める元素であり、必要とする強度に応じて選択して含有させることができる。このような効果を得るためには、TiおよびZrは0.001%以上、Vは0.002%以上含有させる必要がある。しかしながら、TiおよびZrはいずれも0.030%を超えて含有させると靱性が低下する場合があり、また、Vは0.20%を超えて含有させると靱性が低下する場合がある。そのため、Ti、ZrおよびVを含有させる場合には、それぞれ、Ti含有量は0.001〜0.030%の範囲であり、Zr含有量は0.001〜0.030%の範囲であり、V含有量は0.002〜0.20%の範囲である。
Ca:0.0002〜0.010%
Caは、介在物形態制御の効果があり、鋼の延性および靱性を高めることができる。この効果はCa含有量が0.0002%以上で発現する。一方、Caを0.010%を超えて含有させると、粗大な介在物を形成し、母材の靱性を劣化させる。そこで、Ca含有量は0.0002〜0.010%の範囲とする。好ましくは、Ca含有量は0.0005〜0.005%の範囲である。
Mo:0.01〜0.5%、Co:0.01〜0.5%、B:0.0002〜0.0050%
Mo、CoおよびBはいずれも、鋼の強度を高める元素であり、必要とする強度に応じて選択して含有させることができる。このような効果は、Mo、Coは0.01%以上で、またBは0.0002%以上で発現する。しかしながら、MoおよびCoはいずれも0.5%を超えて含有させるとそれぞれ靱性が低下する場合があり、また、Bは0.0050%を超えて含有させるとそれぞれ靱性が低下する場合がある。そのため、Mo、CoおよびBを含有させる場合には、それぞれ、Mo含有量は0.01〜0.5%の範囲であり、Co含有量は0.01〜0.5%の範囲であり、B含有量は0.0002〜0.0050%の範囲である。
なお、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、上記以外の成分の含有を拒むものではない。
次に、本発明の耐食鋼の特性について説明する。
表面から板厚方向に沿って2mmの位置の硬さがビッカース硬度で140以上
石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールドの内底板は、荷揚げの際におけるグラブバケット等の荷役装置との接触・衝突、または荷積みの際における石炭や鉱石との直接的な接触・衝突により、磨耗による減肉が生じやすい環境にある。そのため、石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールドの内底板には、ある程度の硬度を有した鋼板を適用する必要がある。鋼板表面付近の組織は腐食等により失われやすいため、鋼板表面よりある程度板厚中心部に近付いた位置において所定の硬度を有することが必要である。具体的には、表面から板厚方向に沿って2mmの位置の硬さがビッカース硬度で140以上であることが好ましい。なお、ビッカース硬度は、JIS Z 2244に準拠し測定することができる。
また、上記の表面から深さ方向に沿って2mmの位置のビッカース硬度の上限値は、特に限定されないが、硬度の著しい増大は靭性の低下に繋がるため、200以下とすることが好ましい。
また、上記の深さ方向は、耐食鋼を鋼板とする場合には、板厚方向を指す。
ここに、表面から深さ方向に沿って2mmの硬さがビッカース硬度で140以上の鋼材は、例えば、以下のようにして製造することができる。
上記した成分組成の溶鋼を、転炉、電気炉等の公知の方法で溶製し、連続鋳造法や造塊法等の公知の方法でスラブやビレット等の鋼素材とする。なお、溶鋼に、取鍋精錬や真空脱ガス等の処理を付加しても良いことは言うまでもない。熱間圧延においては、強度を確保するために、鋼素材の加熱温度および熱間圧延時の仕上終了温度および冷却速度を適正化することが好ましい。すなわち、結晶粒粗大化防止の観点から、好ましくは1050〜1250℃の温度に鋼素材を加熱したのち、所望の寸法形状に熱間圧延するか、あるいは鋼素材の温度が熱間圧延可能な程度に高温である場合には加熱することなく、あるいは均熱する程度で直ちに所望の寸法形状の鋼材に熱間圧延することが好ましい。
なお、熱間圧延では、強度を確保するために、熱間仕上圧延終了温度および熱間仕上圧延終了後の冷却速度を適正化することが好ましく、700℃以上の温度において熱間圧延を終了して、その後直ちにあるいは若干の放置時間の後、620℃以上の開始温度(水冷の場合は、水冷開始温度とする。)から冷却速度150℃/s以下の加速冷却(たとえば、水冷)を実施することが好ましいが、本発明を適用できる製造方法はこれに限らない。なお、冷却後、再加熱処理を施してもよい。
なお、本発明の石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド内底板用耐食鋼では、特に限定されないが、船体構造の部材として必要な機械的特性を満足するために、引張特性について、YS:390Mpa以上、TS:510〜650MPa、EL:20%以上とすることが好ましい。
また、本発明の石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド内底板用耐食鋼を底板とした場合の厚みも、特に限定されないが、20〜30mmとすることが好ましい。
以下、本発明の実施例について説明する。
表1に示す成分組成になる鋼を、真空溶解炉で溶製後、鋼素材とした。ついで、鋼素材を加熱炉に装入して1130℃に加熱し、圧延終了温度930℃の熱間圧延により、25mm厚の鋼板としたのち、表1のNo.1〜25については表2に示す水冷開始温度から室温まで以下の冷却速度で加速冷却(水冷)する一方、No.26〜33については930℃から空冷した。加速冷却での冷却速度については、鋼板の1/2t部(t:鋼板全厚)に熱伝対をつけ測定したところ、表1のNo.1〜25では、10〜20℃/s、No.26〜33では、0.5〜2℃/sであった。
これらの鋼板について、母材の引張特性および衝撃特性、鋼板表面から板厚方向に沿って2mmの位置のビッカース硬度Hvを調査した。引張特性については、丸棒引張試験、2mm V ノッチシャルピー衝撃試験により、強度、靭性を調査したが、試験片は試験片長手方向が圧延報告に直角になる方向で、板厚中心部から採取した。引張試験は室温で行い、2mm V ノッチシャルピー衝撃試験は-20℃で実施した。ビッカース硬度Hvは、JIS Z 2244に準拠し、10kgfの荷重のもと測定した。また、溶接部靭性として、入熱量50kJ/cmで作製したFCB溶接継手の熱影響部1mm(ヒュージョンラインから母材側に1mm入った箇所)の熱履歴に相当する再現熱サイクル試験(最高加熱温度1400℃、保持時間1s、800〜500℃の冷却時間40s)を付与し、シャルピー衝撃試験により0℃での吸収エネルギーvE0を測定した。
表2に機械的特性調査結果を示す。
機械的特性としては、ビッカース硬度Hvが140以上のものを荷役装置および積荷の接触・衝突による磨耗を低減できるものとし、合格(○)と判断した。一方、ビッカース硬度が140未満のものは、磨耗を十分には低減できていないものとし、不合格(×)と判断した。
また、再現熱サイクル試験付与後のシャルピー衝撃試験(0℃)の吸収エネルギーvE0が47J以上のものが靭性に優れているとみなした。
また、耐食性については、以下に示す条件で評価した。
前記鋼板から、5mmt×50mmW×75mmLの試験片を採取し、その表面をショットブラストして、表面のスケールや油分を除去した。この面を試験面として、鋼材の耐食性を評価した。裏面と端面をシリコン系シールでコーティングした後、アクリル製の治具に嵌め込み、その上に石炭50gを敷き詰め、蒸留水を200ml加え、恒温恒湿器により、温度30℃、相対湿度95%の雰囲気を84日間与えた。
石炭は、5gを秤量し、常温で100mlの蒸留水に2時間浸漬したのち、ろ過を行ない200mlに希釈した石炭浸出液のpHが3.0になるものを用いた。
本実施例では、上記の条件で試験を行うことにより、石炭船および石炭・鉱石兼用船のホールド内底板の腐食環境を模擬している。試験後、錆剥離液を用い、各試験片の錆を剥離し、鋼材の質量減少量を測定し腐食量とした。
表2に耐食性試験結果を示す。
鋼材の質量減少量が、4.55g以下のもの(鋼No.26(比較例)の質量減少量の70%以下のもの)を耐食性に優れているとし、合格(○)とした。
Figure 0006477516
Figure 0006477516
表2に示したとおり、機械的性質については、鋼No.1〜25の発明例はいずれも良好な値を示しており、耐摩耗性に優れていることが分かったが、鋼No.26〜33の比較例は、目標値であるビッカース硬度が得られておらず、耐摩耗性に劣っていることが分かった。
一方、耐食性については、発明例の質量減少量は、ベース鋼である比較例No.26の70%以下(4.55g以下)であり、良好な耐食性を示したのに対し、比較例であるNo.26〜No.32の質量減少量はベース鋼No.26の90%以上(5.85g以上)であり、耐食性として不十分であった。
表1に示した鋼板のうち、鋼No.1(発明例)、鋼No.26(比較例)および鋼No.33(比較例)を、実際の石炭船(小型ばら積み貨物船、載貨重量トン数:2400トン)ホールド内底板の一部に適用し、耐食性およびへこみ変形の程度について検証した。
以下にその方法を述べる。
上述の鋼板より24mmt×320mmW×1600mmLの板を4枚ずつ採取し、図1に示すように、ホールド内底板中央付近のロンジ間に適用した。適用から5年後、平均板厚減少量を計測した。
各試験片について、平均板厚減少量は、図2に示す2点(図中×印の点)で板厚計測を行い、2点の平均値とした。
なお、板厚減少量は、次式から求めた。
板厚減少量(mm)=初期板厚(mm)−計測板厚(mm)
表3に、平均板厚減少量についての調査結果を示す。
Figure 0006477516
表3に示したとおり、鋼No.1-1〜4(発明例)は、鋼No.26-1〜4(比較例)、および鋼No.33-1〜4(比較例)に比べて、平均板厚減少を低減できていることが分かる。鋼No.33(比較例)が鋼No.1(発明例)に劣ったのは、鋼No.33(比較例)は耐食性においては十分だが、耐磨耗性において不十分であったためと考えられる。
本発明に係る鋼材は、石炭船および石炭・鉱石兼用船ホールド内底板として使用した場合、優れた耐食性を発揮するだけでなく、優れた耐磨耗性能を示すので、荷役の影響による鋼板の減厚を抑制することができ、鋼材切り替えコストを低減できるなどの効果を奏する。

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C:0.01〜0.25%、
    Si:0.01〜0.50%、
    Mn:0.1〜2.0%、
    P:0.035%以下、
    S:0.035%以下、
    Al:0.003〜0.10%、
    Cu:0.05〜0.35%、
    Ni:0.02〜0.40%、
    Sb:0.01〜0.2%、
    W:0.005〜0.5%、
    Nb:0.003〜0.025%、
    Cr:0.1%以下および
    N:0.0010〜0.0080%
    を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、かつ表面から深さ方向に2mmの位置のビッカース硬度が140以上である耐食鋼。
  2. 前記成分組成として、質量%で、さらに
    Ti:0.001〜0.030%、
    Zr:0.001〜0.030%および
    V:0.002〜0.20%
    のうちから選ばれる1種以上を含有する請求項1に記載の耐食鋼。
  3. 前記成分組成として、質量%で、さらに
    Ca:0.0002〜0.010%
    を含有する請求項1または2に記載の耐食鋼。
  4. 前記成分組成として、質量%で、さらに
    Mo:0.01〜0.5%、
    Co:0.01〜0.5%および
    B:0.0002〜0.0050%
    のうちから選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の耐食鋼。
  5. 石炭船または石炭・鉱石兼用船ホールド内底板に用いられる請求項1〜4のいずれかに記載の耐食鋼。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の耐食鋼の製造方法であり、
    鋼素材を1050〜1250℃に加熱後、仕上圧延終了温度を700℃以上とする熱間圧延を施し、その後、620℃以上758℃以下の開始温度から冷却速度150℃/s以下の加速冷却を実施する耐食鋼の製造方法。
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