A.実施例:
A−1.印刷装置の構成:
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。図1は、実施例におけるプリンタ10の構成を示すブロック図である。プリンタ10は、液滴(具体的には、色材としてのインク)を用いてドットをシート上に形成することによって、印刷を行うインクジェットプリンタである。プリンタ10は、プリンタの全体を制御する制御装置100と、本実施例の印刷実行部としての印刷機構200と、を備えている。
制御装置100は、CPU110と、DRAMなどの揮発性記憶装置120と、フラッシュメモリやハードディスクドライブなどの不揮発性記憶装置130と、液晶ディスプレイなどの表示部140と、液晶ディスプレイのパネルと重畳されたタッチパネルやボタンなどを含む操作部150と、パーソナルコンピュータ(図示省略)などの外部装置との通信のための通信インタフェースを含む通信部160と、を備えている。
揮発性記憶装置120には、CPU110が処理を行う際に生成される種々の中間データを一時的に格納するバッファ領域125が設けられている。不揮発性記憶装置130には、プリンタ10を制御するためのコンピュータプログラム132が格納されている。
コンピュータプログラム132は、プリンタ10の出荷時に予め不揮発性記憶装置130に格納されている。なお、コンピュータプログラム132は、DVD−ROMなどに格納された形態や、サーバからダウンロードする形態で提供され得る。CPU110は、コンピュータプログラム132を実行することによって、後述するプリンタ10の制御処理を実現する。
印刷機構200は、搬送機構210と、主走査機構220と、ヘッド駆動回路230と、印刷ヘッド240と、を備えている。搬送機構210は、図示しない搬送モータを備え、搬送モータの動力でシートを所定の搬送経路に沿って搬送方向に搬送する。主走査機構220は、図示しない主走査モータを備え、主走査モータの動力で印刷ヘッド240を主走査方向に往復動(単に「主走査」とも呼ぶ)させる。ヘッド駆動回路230は、主走査機構220が印刷ヘッド240の主走査を行っている最中に、印刷ヘッド240に駆動信号DSを供給して、印刷ヘッド240を駆動する。印刷ヘッド240は、駆動信号DSに従って、搬送機構210によって搬送されるシート上に、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各インクを吐出してドットを形成する。詳細は後述するが、印刷機構200は、制御装置100のCPU110の制御に従って、印刷ヘッド240による部分印刷と、搬送機構210によるシートMの搬送とを、交互に複数回実行することで印刷を行う印刷を実行することができる。部分印刷は、1回の主走査中に、印刷ヘッド240によって行われる、印刷すべき画像の一部の画像の印刷である。
図2は、印刷ヘッド240の概略構成を示す図である。印刷ヘッド240のノズル形成面241(−Z側の面)には、上述したC、M、Y、Kの各インクを吐出するノズル列NC、NM、NY、NKが形成されている。各ノズル列は、複数個のノズルNZを含んでいる。複数個のノズルNZは、搬送方向の位置が互いに異なり、搬送方向に沿って所定のノズル間隔NTで並ぶ。ノズル間隔NTは、複数のノズルNZの中で搬送方向に隣り合う2個のノズルNZ間の搬送方向の長さである。なお、図2以降の図において、+Y方向は、シートの搬送方向(副走査方向)を示しており、X方向は、主走査方向を示している。各ノズル列に含まれる複数個のノズルNZのうち、搬送方向の最下流、すなわち、図2の+Y側の端に位置するノズルNZを最下流ノズルNZdとも呼び、搬送方向の最上流、すなわち、図2の−Y側の端に位置するノズルNZを最上流ノズルNZuとも呼ぶ。最上流ノズルNZuから最下流ノズルNZdまでの搬送方向の長さに、さらに、ノズル間隔NTを加えた長さを、ノズル長Dとも呼ぶ。
図3は、搬送機構210の概略構成を示す図である。図3(A)に示すように、搬送機構210は、シート台211と、シートを保持して搬送するための上流ローラ対217と、下流ローラ対218と、複数個の押さえ部材216と、を備えている。
上流ローラ対217は、印刷ヘッド240よりも搬送方向の上流側(−Y側)に設けられ、下流ローラ対218は、印刷ヘッド240よりも搬送方向の下流側(+Y側)に設けられている。上流ローラ対217は、図示しない搬送モータによって駆動される駆動ローラ217aと、駆動ローラ217aの回転に従って回転する従動ローラ217bと、を含む。同様に、下流ローラ対218は、駆動ローラ218aと従動ローラ218bと、を含む。なお、従動ローラに代えて、板部材を採用し、駆動ローラと板部材とによってシートを保持する構成を採用しても良い。
シート台211は、上流ローラ対217と、下流ローラ対218と、の間の位置であって、かつ、印刷ヘッド240のノズル形成面241と対向する位置に配置されている。複数個の押さえ部材216は、上流ローラ対217と、印刷ヘッド240と、の間に配置されている。
図3(B)、図3(C)には、シート台211と複数個の押さえ部材216との斜視図が示されている。図3(B)は、シートMが支持されていない状態を示し、図3(C)は、シートMが支持された状態を示している。シート台211は、複数個の高支持部材212と、複数個の低支持部材213と、平板214と、傾斜部215と、備えている。
平板214は、主走査方向(X方向)と搬送方向(+Y方向)とにほぼ平行な板部材である。平板214の−Y側の端部は、印刷ヘッド240の−Y側の端部よりも−Y側の位置にあり、上流ローラ対217の近傍に位置している。傾斜部215は、平板214の+Y側に位置し、+Y方向に向かって高くなるように傾斜した板部材である。傾斜部215の端部は、印刷ヘッド240の+Y側の端部よりも+Y側の位置にあり、下流ローラ対218の近傍に位置している。平板214のX方向の長さは、搬送されるシートMのX方向の長さより所定量だけ長い。これによって、シートMのX方向(主走査方向)の両端に余白を残さないように、シートMのX方向の両端まで印刷可能な縁なし印刷を実行した場合に、シートMのX方向の両端より外側に吐出されるインクを平板214で受けることができる。
複数個の高支持部材212と複数個の低支持部材213は、平板214上に、X方向に沿って交互に並んでいる。すなわち、各低支持部材213は、該低支持部材に隣接する2個の高支持部材212の間に配置されている。各高支持部材212は、Y方向に沿って延びるリブである。各高支持部材212の−Y側の端部は、平板214の−Y側の端部に位置している。各高支持部材212の+Y側の端部は、平板214のY方向の中央部に位置している。各高支持部材212の+Y側の端部は、印刷ヘッド240の複数個のノズルNZが形成されている領域NAのY方向の中央部に位置していると言うこともできる。各低支持部材213のY方向の両端の位置は、高支持部材212のY方向の両端の位置と同じである。
複数個の押さえ部材216は、上流ローラ対217と、最上流ノズルNZuと、の間のY方向の位置に設けられている。複数個の押さえ部材216は、上述した高支持部材212および低支持部材213の−Y側の端と+Y側の端との間のY方向の位置にある、とも言うことができる。また、複数個の押さえ部材216は、複数個の低支持部材213の+Z側に位置している。複数個の押さえ部材216のX方向の位置は、複数個の低支持部材213のX方向の位置と同じである。すなわち、各押さえ部材216のX方向の位置は、該押さえ部材に隣接する2個の高支持部材212の間に位置している。複数個の押さえ部材216は、+Y方向に向かうほど低支持部材213に近づくように傾斜した板部材である。複数個の押さえ部材216の+Y側の端部は、印刷ヘッド240の−Y側の端部と、上流ローラ対217と、の間に位置している。
複数個の高支持部材212と複数個の低支持部材213と複数個の押さえ部材216は、下流ローラ対218よりも上流ローラ217対に近い位置に配置されており、上流ローラ対217と下流ローラ対218との間のうち、上流ローラ対217側に設けられていると言うことができる。
図3(C)に示すように、シートMの搬送時には、複数個の高支持部材212と、複数個の低支持部材213は、印刷面Maとは反対の面Mb側から、シートMを支持し、複数個の押さえ部材216は、印刷面Ma側から、シートMを支持する。印刷面Maは、シートMの搬送時に、印刷ヘッド240のノズル形成面241と対向する面である。各高支持部材212がシートMを支持する位置(すなわち、各高支持部材212の+Z側の面212a(図3(A))の位置)は、各低支持部材213がシートMを支持する位置(すなわち、各低支持部材213の+Z側の面213a(図3(A))の位置)よりも+Z側に位置している。換言すれば、各高支持部材212がシートMを支持する位置と、印刷ヘッド240のノズル形成面241を含む平面と、の距離LZ1は、各低支持部材213がシートMを支持する位置と、ノズル形成面241を含む平面と、の距離LZ2より短い。
そして、各高支持部材212がシートMを支持する位置は、各押さえ部材216がシートMを支持する位置(すなわち、各押さえ部材216の+Y側の端部の−Z側の部分216a(図3(A))よりも+Z側に位置している。換言すれば、各高支持部材212がシートMを支持する位置と、印刷ヘッド240のノズル形成面241を含む平面と、の距離LZ1は、各押さえ部材216がシートMを支持する位置と、ノズル形成面241を含む平面と、の距離LZ3より短い。
このために、複数個の高支持部材212と、複数個の低支持部材213と、複数個の押さえ部材216と、によって、シートMは、X方向に沿って波状に変形された状態に支持される(図3(C))。そして、シートMは、波状に変形された状態で、搬送方向(+Y方向)に搬送される。シートMを波状に変形させると、Y方向に沿った変形に対するシートMの剛性を高めることができる。この結果、シートMがY方向に沿って反るように変形して、シートMがシート台211から印刷ヘッド240側へ浮き上がることや、シートMがシート台211側へ垂れさがることを抑制することができる。シートMが浮き上がると、あるいは、シートMが垂れさがると、ドットの形成位置のずれによって、印刷画像の画質低下が引き起こされ得る。また、シートMが浮き上がると、印刷ヘッド240にシートが接触して、シートMが汚れ得る。
なお、シートの繊維に沿う方向がX方向と平行である場合には、シートの繊維に沿う方向がY方向と平行である場合と比べて、印刷時にシートの反りが生じる可能性が高い。また、A4やA3サイズのシートMの長手方向をX方向と平行にし、シートMの短手方向をY方向と平行として印刷する場合は、比較的シートがY方向に沿って曲がりやすい。したがって、これらに該当する場合には、シートMを波状に変形された状態で搬送する必要性が高い。
なお、搬送機構210は、さらに、反転機構219(図1)を備えている。反転機構219は、シートMの第1面に対する印刷が完了した後に、下流ローラ対218より+Y側に排出されたシートMを、第1面とは反対側の第2面が印刷面となるように反転して、再び、上流ローラ対217より−Y側、すなわち、搬送方向の上流側から供給する。反転機構219の詳細な構成は、公知であるので、説明を省略する。
以上の説明から解るように、複数個の高支持部材212および複数個の低支持部材213は、第2支持部、第3支持部、第5支持部の例であり、複数個の押さえ部材216は、第1支持部、第4支持部の例である。上流ローラ対217は、上流保持部の例であり、下流ローラ対218は、下流保持部の例である。
A−2.印刷装置の動作
プリンタ10のCPU110は、ユーザからの指示に基づいて、両面印刷処理を実行する。具体的には、プリンタ10のCPU110は、ユーザからの指示に基づいて、シートMの第1面に印刷されるべき第1の画像を表す第1の画像データと、シートMの第2面に印刷されるべき第2の画像を表す第2の画像データと、を取得する。第1の画像データおよび第2の画像データは、所定のフォーマット、例えば、JPEG圧縮された画像データやページ記述言語で記述された画像データであり、例えば、パーソナルコンピュータやスマートフォンなどの外部装置から取得される。
CPU110は、取得された第1の画像データおよび第2の画像データに対してラスタライズ処理や色変換処理やハーフトーン処理などの公知の処理を実行してドットデータを生成する。ラスタライズ処理は、例えば、取得された画像データをRGBの3つの成分の階調値を含むRGB画像データに変換する処理である。色変換処理は、RGB画像データをインクの色(例えば、CMYKの4色)に対応する成分の階調値を含むCMYK画像データに変換する処理である。ハーフトーン処理は、CMYK画像データを印刷画像に含まれる画素ごとにドットの形成状態を示すドットデータに変換する処理である。各画素のドットの形成状態は、例えば、「ドット無し」と「ドット有り」の2階調、あるいは、「ドット無し」「小」「中」「大」の4階調で表される。
CPU110は、生成されたドットデータを用いて、印刷機構200を制御して両面印刷を実行させる両面印刷の制御処理を実行する。第1面に対する印刷と第2面に対する印刷とは、共に、搬送処理(副走査処理とも呼ぶ)と、主走査処理と、を交互に繰り返すことによって、実行される。1回の搬送処理では、CPU110は、搬送機構210を制御して、所定の搬送量だけシートMを搬送する。1回の主走査処理では、CPU110は、シートMが停止した状態で、主走査機構220(図1)を制御して印刷ヘッド240(図1、図2)を主走査方向(X方向)に1回移動させる。1回の主走査処理では、CPU110は、さらに、印刷ヘッド240の移動中に、ヘッド駆動回路230(図1)から印刷ヘッド240に駆動信号DSを供給して印刷ヘッド240の複数個のNZからインクを吐出させる。印刷すべき画像(第1の画像または第2の画像)のうち、1回の主走査処理によって印刷されるべき部分画像を、1回の主走査処理に対応する部分画像とも呼ぶ。
図4は、シートMに対する印刷ヘッド240の位置(以下、ヘッド位置と呼ぶ)を主走査処理ごとに示す第1の図である。図4には、第1面に対する印刷の5回の主走査処理に対応する5個のヘッド位置P11〜P15と、第2面に対する印刷の6回の主走査処理に対応する6個のヘッド位置P21〜P26と、が図示されている。これらのヘッド位置P11〜P15、P21〜P26は、図4の右側に示すシートMに対する印刷ヘッド240のY方向の位置である。
各ヘッド位置を示す枠のY方向の長さは、印刷ヘッド240のノズル形成領域NAのY方向の長さ、すなわち、ノズル長Dを示している。ヘッド位置Pmqは、第m面(mは、1または2)に対する印刷のq回目(qは1以上の整数)の主走査処理に対応する。
図4の各ヘッド位置を示す枠内のハッチングされた領域は、印刷ヘッド240に形成された複数個のノズルNZ(図2)のうちの印刷に使用されるノズル(以下、使用ノズルと呼ぶ)の位置を示している。
本実施例の印刷処理では、CPU110は、シートM上の1個の部分画像、例えば、搬送方向の幅がノズル長Dである部分画像を、1回の主走査処理だけを用いて印刷する1パス印刷を実行する。
図4の左側には、シートMに対応して、第1の画像および第2の画像が印刷されるべき印刷領域PAが破線で図示されている。なお、第1面に対して第1の画像が印刷されるべき印刷領域と、第2面に対して第2の画像が印刷されるべき印刷領域と、は、互いに異なるサイズおよび位置であっても良い。ただし、図4と後述する図5とでは、第1面に対して第1の画像が印刷されるべき印刷領域と、第2面に対して第2の画像が印刷されるべき印刷領域とは、互いに同じサイズであり、シートM上における位置も互いに同じである場合を例示している。したがって、図4、図5では、第1面における+Y側および−Y側の余白の搬送方向の幅BLd、BLuと、第2面における+Y側および−Y側の余白の搬送方向の幅BLd、BLuとも、互いに同じである。後述する図7〜図12についても同様である。
図4では、シートMの上流端(−Y側の端)および下流端(+Y側の端)を含む4つの端に余白を残す印刷、いわゆる縁あり印刷のうち、−Y側の端の余白の幅BLuおよび+Y側の端の余白の幅BLdが最小値Wminである場合(以下、最小余白の場合とも呼ぶ)について、図示されている。
図5は、印刷ヘッド240に対するシート位置を主走査処理ごとに示す第1の図である。図5には、第1面に対する印刷の5回の主走査処理に対応する5個のシート位置M11〜M15と、第2面に対する印刷の6回の主走査処理に対応する6個のシート位置M21〜M26と、が図示されている。シート位置Mmqは、第m面に対する印刷のq回目の主走査処理が実行される際のシートMの位置を示す。図5のシート位置Mmq上のハッチングされた領域は、対応する主走査処理によって印刷されるシート上の部分印刷領域を示している。図5の部分印刷領域は、図4のハッチングされた使用ノズルの位置に対応している。
なお、1回目の搬送処理は、シートMを印刷の開始位置まで搬送する処理、すなわち、1回目の主走査処理が実行されるときのシート位置までシートMを搬送する処理である。q回目(q≧2)の搬送処理は、(q−1)回目の主走査処理と、q回目の主走査処理と、の間に、実行される搬送処理である。図4、図5には、2回目以降の搬送処理の搬送量(具体的には、D、L1、L2)が図示されている。図4に示すように、搬送処理が実行される度に、ヘッド位置は、シートMに対して搬送方向の反対方向(−Y方向)に移動することが解る。図5に示すように、搬送処理が実行される度に、シートMは、印刷ヘッド240に対して搬送方向(+Y方向)に移動することが解る。
図5の位置Y1、Y6は、それぞれ、上流ローラ対217、下流ローラ対218によってシートが保持されるY方向の位置である。位置Y2は、複数個の高支持部材212と複数個の押さえ部材216とによってシートが両面側から支持されるY方向の位置である。また、位置Y3、Y5は、それぞれ、印刷ヘッド240の最上流ノズルNZu,最下流ノズルNZdのY方向の位置である。1回の主走査処理では、最大で、位置Y3から位置Y5までの範囲で印刷を行うことができる。位置Y4は、複数個の高支持部材212と複数個の低支持部材213との+Y側の端の位置である。位置Y4は、位置Y3と位置Y5との間の略中央に位置している。
図6は、両面印刷の制御処理のフローチャートである。図6のS100では、CPU110は、シートMの種類を特定する。シートMの種類は、例えば、ユーザによって印刷指示とともに入力される。CPU110は、当該ユーザの入力に基づいて、シートMの種類を特定する。これに代えて、プリンタ10が備えるセンサを用いて、シートMの種類が特定されても良い。
S105〜S120では、CPU110は、シートMの第1面に対する印刷の制御処理を実行する。第1面に対する印刷の制御処理では、第1面が印刷ヘッド240のノズル形成面241と対向する状態で、シートMの搬送処理が行われる。S105では、CPU110は、搬送機構210を制御して、通常開始位置まで、シートMを搬送する。すなわち、CPU110は、第1面に対する印刷の1回目の搬送処理を実行する。
通常開始位置は、図5のシート位置M11である。通常開始位置では、第1面に印刷されるべき第1の画像の+Y側の端、すなわち、印刷領域PAの+Y側の端DT(図4、図5)と、最下流ノズルNZdとは、Y方向の位置が一致している。ここで、最下流ノズルNZdの位置Y5から下流ローラ対218の位置Y6までのY方向の距離NLd(図5)は、+Y側の余白の幅BLdの最小値Wmin(図4、図5)より大きい。このために、最小余白の場合における通常開始位置では、シートMの+Y側の端は、位置Y6より−Y側に位置している。すなわち、最小余白の場合における通常開始位置では、シートMは、上流ローラ対217によって保持され、かつ、押さえ部材216と支持部材212、213とによって支持され、かつ、下流ローラ対218によって保持されない第1の状態MS1にある。換言すれば、通常開始位置では、シートMの+Y側の端は、上流ローラ対217と下流ローラ対218との間のY方向の位置、すなわち、位置Y1と位置Y6との間のY方向の位置にある。より正確には、シートMの+Y側の端は、位置Y5とY6との間のY方向の位置にある。
S110では、CPU110は、1回の主走査処理を実行して、現在のシート位置にあるシートMの第1面に対して、部分印刷を実行する。例えば、1回目の搬送処理の直後には、1回目の主走査処理が実行される。第1面に対する印刷の1回目の主走査処理で行われる部分印刷は、第1面に対する印刷が開始されていない状態、すなわち、インクが第1面に吐出されていない状態のシートMに対して行われる最初の印刷である。上述した通常開始位置、すなわち、シート位置M11に、シートMがあるために、1回目の主走査処理では、ノズル長D分の全てのノズルを用いて部分印刷を行うことができる。
S115では、CPU110は、第1面に対する印刷が完了したか否かを判断する。図4、図5の例では、5回の主走査処理が完了した場合には、第1面に対する印刷が完了したと判断される。第1面に対する印刷が完了していない場合には(S115:NO)、S120にて、CPU110は、2回目以降の搬送処理を実行する。2回目以降の搬送処理が実行されると、CPU110は、S110に戻って、2回目以降の主走査処理を実行する。第1面に対する印刷が完了した場合には(S115:YES)、CPU110は、S130に処理を進める。
このように、第1面に対する印刷の制御処理では、搬送処理と主走査処理とが、交互に所定回数(例えば、5回)だけ繰り返される。図4に示すように、2〜4回目の搬送処理の搬送量は、ノズル長Dであり、最後の5回目の搬送処理の搬送量は、ノズル長Dより小さな搬送量L1である。2〜4回目の主走査処理では、ノズル長D分の全てのノズルを用いて部分印刷が行うことができる。最後の5回目の主走査処理では、ノズル長D分の複数個のノズルのうち、−Y側の一部のノズルを用いて、+Y側の一部のノズルを用いずに、部分印刷が行われる。
2回目の搬送処理によって、シートMの+Y側の端は、下流ローラ対218の位置Y6より+Y側まで移動する。このために、2〜4回目の主走査処理の際のシート位置M12〜M14(図5)では、シートMは、上流ローラ対217によって保持され、かつ、押さえ部材216と支持部材212、213とによって支持され、かつ、下流ローラ対218によって保持される第2の状態MS2にある。
最後の5回目の搬送処理によって、シートMの−Y側の端は、上流ローラ対217の位置Y1の−Y側から、当該位置Y1より+Y側であって、かつ、押さえ部材216と支持部材212、213との支持位置Y2より−Y側の位置に移動する。このために、最後の5回目の主走査処理の際のシート位置M15(図5)では、シートMは、上流ローラ対217によって保持されず、かつ、押さえ部材216と支持部材212、213とによって支持され、かつ、下流ローラ対218によって保持される第3の状態MS3にある。押さえ部材216と支持部材212、213との支持位置Y2から、最上流ノズルNZuの位置Y3までのY方向の距離HL(図5)は、−Y側の余白の幅BLuの最小値Wminより小さい。このために、第1面に印刷すべき第1の画像の−Y側の端の印刷は、シートMの印刷ヘッド240より−Y側の部分が押さえ部材216と支持部材212、213とによって支持される第3の状態MS3で、実行できる。
シートMの第1面に対する印刷の制御処理(図6のS105〜S120)の後には、シートMの第2面に対する印刷の制御処理(図6のS135〜S170)が実行される。第1面に対する印刷の制御処理と、第2面に対する印刷の制御処理と、の間の図6のS130では、CPU110は、反転機構219を制御して、シートMを反転させて、印刷ヘッド240の−Y側から+Y側に向かって再度搬送する搬送経路上に、シートMを戻す。これによって、第2面に対する印刷の制御処理では、第2面が印刷ヘッド240のノズル形成面241と対向する状態で、シートMの搬送処理が行われる。
S135では、CPU110は、シートMは、第1種のシートであるか否かを判断する。シートMの種類は、S100にて特定されている。インクがシートM内に染みこむことや、シートM内に染みこんだインクが乾燥することなどによって、シートMの印刷面は伸縮する。このために、シートMに印刷が行われると、印刷時にシートMに付着したインクによって、シートMが変形し得る。シートMの変形は、シートMの紙の目の方向、材質、厚みなどの特性によって、様々である。例えば、シートMは、印刷面側に凸になるように撓む場合もあれば、印刷面とは反対の面側に凸になるように撓む場合もある。第1種のシートは、このようなインクに起因する変形が比較的発生しやすいシートであり、例えば、普通紙、薄手のインクジェット紙のように、比較的薄く、剛性が低いシートである。第2種のシートは、当該変形が比較的発生し難いシートであり、例えば、はがき、厚手のインクジェット紙のように、比較的厚く、剛性が高いシートである。
シートMが第1種のシートである場合には(S135:YES)、S140にて、CPU110は、第2面に対する印刷におけるシートMの下流側の端部TAに対して、第1面に対する印刷にて印刷済みの印刷量は、基準以上であるか否かを判断する。具体的には、CPU110は、シートMの下流側の端部TA(図4)の第1面に対して、第1面に対する印刷の制御処理(S105〜S120)にて形成されたドット数を、第1面に対する印刷にて用いられたドットデータに基づいてカウントする。シートMの端部TAの第1面に、所定の閾値TH1以上の個数のドットが形成されている場合には、印刷量は基準以上であると判断される。端部TAは、例えば、第2面に対する印刷におけるシートMの+Y側の端から、ノズル長D分の部分である。
シートMの+Y側の端部TAに対して印刷済みの印刷量が、基準以上である場合には(S140:YES)、S145にて、CPU110は、シートMの第2面の+Y側の余白の幅BLdは、閾値TH2未満であるか否かを判断する。具体的には、CPU110は、第2面に対する印刷におけるシートMの+Y側の端から、第2面に印刷されるべき第2の画像の+Y側の端までの長さ、すなわち、+Y側の余白の幅BLdが、閾値TH2未満であるか否かを判断する。閾値TH2は、最下流ノズルNZdの位置Y5から下流ローラ対218の位置Y6までのY方向の距離NLd(図5)に、所定の余裕分α(例えば、数mm)を加えた値である。+Y側の余白の幅BLdが閾値TH2以上である場合には、第2の画像の+Y側の端を、第2の状態MS2で印刷することができる。+Y側の余白の幅BLdが閾値TH2未満である場合には、第2の画像の+Y側の端を、第2の状態MS2で印刷では印刷できず、第1の状態MS1で印刷せざるを得ない。例えば、図4、図5の例では、第2面の+Y側の余白の幅BLdは、最小値Wminであり、距離NLdより短いので、該余白の幅BLdは閾値TH2未満であると判断される。
該余白の幅BLdが、閾値TH2未満である場合には(S145:YES)、S150にて、CPU110は、第2面に対する印刷の1回目の搬送処理として、搬送機構210により特別開始位置までシートMを搬送する。
最小余白の場合の特別開始位置は、図5のシート位置M21である。特別開始位置では、シートMの+Y側の端は、最上流ノズルNZuの位置Y3より+Y側であり、かつ、最下流ノズルNZdの位置Y5より−Y側である。このように、特別開始位置では、シートMの+Y側の端は、上述した通常開始位置、すなわち、図5のシート位置M11におけるシートMの+Y側の端より−Y側に位置している。図5に示すように、特別開始位置では、シートMの+Y側の端から、下流ローラ対218までのY方向の長さRL、すなわち、シートMの+Y側の端から位置Y6までの距離RLは、ノズル長Dより所定の余裕分β(例えば、数mm)だけ短い。なお、下流ローラ対218までのY方向の長さRLは、ノズル長と等しくても良い。
さらに、特別開始位置では、シートMの+Y側の端は、支持部材212、213の+Y側の端の位置Y4より−Y側に位置している。すなわち、特別開始位置では、シートMの+Y側の端は、支持部材212、213によって、支持されている。なお、上述した通常開始位置では、シートMの+Y側の端は、支持部材212、213によって、支持されていない。
特別開始位置では、通常開始位置と同様に、シートMは、上流ローラ対217によって保持され、かつ、押さえ部材216と支持部材212、213とによって支持され、かつ、下流ローラ対218によって保持されない第1の状態MS1にある。
なお、特別開始位置では、第2面に印刷されるべき第2の画像の+Y側の端、すなわち、印刷領域PAの+Y側の端DT(図4、図5)のY方向の位置は、ノズル長D分の複数個のノズルのうちのY方向の中央のノズルより、最上流ノズルNZuに近い。より正確には、+Y側の端DTは、Y方向の中央のノズルと、最上流ノズルNZuと、の略中央のY方向の位置にある。
S160では、CPU110は、1回の主走査処理を実行して、現在のシート位置にあるシートMの第2面に対して、部分印刷を実行する。例えば、1回目の搬送処理の直後には、1回目の主走査処理が実行される。第2面に対する印刷の1回目の主走査処理で行われる部分印刷は、第1面に対する印刷は完了し、かつ、第2面に対する印刷が開始されていない状態、すなわち、インクが第2面に吐出されていない状態のシートMに対して行われる最初の印刷である。上述した特別開始位置、すなわち、シート位置M21に、シートMがある場合には、1回目の主走査処理では、ノズル長D分の複数個のノズルのうち、−Y側の一部のノズルを用いて、+Y側の一部のノズルを用いずに、部分印刷が行われる。すなわち、特別開始位置にシートMがある場合には、通常開始位置にシートMがある場合とは異なり、ノズル長D分の全てのノズルを用いて部分印刷を行うことはできない。このために、特別開始位置にシートMがある場合には、1回目の主走査処理で使用されるノズルの個数は、特別開始位置にシートMがある場合に、使用されるノズルの個数より少ない。
S165では、CPU110は、第2面に対する印刷は完了したか否かを判断する。図4、図5の例では、6回の主走査処理が完了した場合には、第2面に対する印刷が完了したと判断される。第2面に対する印刷が完了していない場合には(S165:NO)、S170にて、CPU110は、2回目以降の搬送処理を実行する。2回目以降の搬送処理が実行されると、CPU110は、S160に戻って、2回目以降の主走査処理を実行する。第2面に対する印刷が完了した場合には(S165:YES)、S175にて、CPU110は、印刷機構200を制御して、両面が印刷済みのシートMを、図示しない排出トレイに排出して、両面印刷の制御処理を終了する。
このように、第2面に対する印刷の制御処理では、搬送処理と主走査処理とが、交互に所定回数(例えば、6回)だけ繰り返される。図4に示すように、2〜5回目の搬送量は、ノズル長Dであり、最後の6回目の搬送量は、ノズル長Dより小さな搬送量L2である。搬送量L2は、第1面に対する印刷の最後の5回目の搬送処理の搬送量L1より小さい。2〜5回目の主走査処理では、ノズル長D分の全てのノズルを用いて部分印刷が行うことができる。最後の6回目の主走査処理では、ノズル長D分の複数個のノズルのうち、−Y側の一部のノズルを用いて、+Y側の一部のノズルを用いずに、部分印刷が行われる。最後の6回目の主走査処理で使用されるノズルの個数は、第1面に対する印刷の制御処理の最後の5回目の主走査処理で使用されるノズルの個数より少ない。
2回目の搬送処理によって、シートMの+Y側の端は、下流ローラ対218の位置Y6より+Y側まで移動する。このために、2〜5回目の主走査処理の際のシート位置M22〜M24(図5)では、シートMは、上流ローラ対217によって保持され、かつ、押さえ部材216と支持部材212、213とによって支持され、かつ、下流ローラ対218によって保持される第2の状態MS2にある。
最後の6回目の搬送処理によって、シートMは、第1面に対する印刷の制御処理における最後の5回目の搬送処理後のシート位置M15と、同じ位置まで移動する。すなわち、最後の6回目の搬送処理後のシート位置M26(図5)では、シートMは、上流ローラ対217によって保持されず、かつ、押さえ部材216と支持部材212、213とによって支持され、かつ、下流ローラ対218によって保持される第3の状態MS3にある。このために、第1面に対する印刷と同様に、第2面に印刷すべき第2の画像の−Y側の端の印刷は、シートMの印刷ヘッド240より−Y側の部分が押さえ部材216と支持部材212、213とによって支持される状態で、実行できる。
図6に戻って説明を続ける。シートMが第2種のシートである場合(S135:NO)、または、シートMの+Y側の端部TAに対して印刷済みの印刷量が基準未満である場合(S140:NO)、または、シートMの第2面の+Y側の余白の幅BLdが閾値TH2以上である場合には(S145:NO)、S155にて、CPU110は、第2面に対する印刷の1回目の搬送処理として、搬送機構210により通常開始位置までシートMを搬送する。すなわち、この場合には、第2面に対する印刷の1回目の搬送処理(S155)は、第1面に対する印刷の1回目の搬送処理(S105)と同じである。そして、S160〜S170で実行される1回目以降の主走査処理および2回目以降の搬送処理も、S110〜S115で実行される第1面に対する印刷と同じ処理が実行される。したがって、この場合には、第2面に対する印刷の制御処理は、第1面に対する印刷の制御処理と、同じ処理となる。
以上の説明した両面印刷の制御処理によれば、第1面に対する印刷の制御処理(第1の制御処理とも呼ぶ)では、CPU110は、1回目の搬送処理にて、搬送機構210によりシートMをシート位置M12まで搬送した後に、1回目の主走査処理にて、印刷ヘッド240によりシート位置M12にあるシートMの第1面に対して部分印刷を実行することによって、第1面に対する印刷を開始する。第2面に対する印刷の制御処理(第2の制御処理とも呼ぶ)では、CPU110は、1回目の搬送処理にて、搬送機構210によりシートMをシート位置M21まで搬送した後に、1回目の主走査処理にて、印刷ヘッド240によりシート位置M21にあるシートMの第2面に対して部分印刷を実行することによって、第2面に対する印刷を開始する。シート位置M21にあるシートMの+Y側の端は、シート位置M11にあるシートMの+Y側の端より−Y側にある。
このために、第2面に対する印刷では、印刷の開始時にシートMの+Y側の端近傍の領域に対する印刷が、第1面に対する印刷において当該領域に対する印刷が行われる際と比較して、シートMの+Y側の端が−Y側にある状態で行われる。すなわち、第2面に対する印刷では、シートMの+Y側の端近傍に対する印刷が、第1面に対する印刷と比較して、上流ローラ対217からシートMの+Y側の端までの距離が短い状態で行われる。図4において、シート位置M21の上流ローラ対217からシートMの+Y側の端までの距離DL2は、シート位置M11の上流ローラ対217からシートMの+Y側の端までの距離DL1より、短いことが解る。図4の例では、距離DL2は、距離DL1の半分以下である。
ここで、距離DL1、DL2は、シートMが第1の状態MS1ある場合において、シートMのうち、上流ローラ対217から+Y方向へ飛び出している部分のY方向の長さと、言うことができる。シートMは、重力、シートの種類、プリンタの設置環境などにより、距離DL1、DL2が長いほど変形しやすい。特に、シートMの+Y側の端は、距離DL1、DL2が長いほど、Z方向に移動しやすい。したがって、距離DL1、DL2が長いほど、ノズル形成面241にシートMが接触してシートMがインクより汚れる不具合の発生率が高くなる。また、距離DL1、DL2が長いほど、シートMとノズル形成面241との距離が変動しやすいので、ドットの着弾位置のずれが発生して、印刷される画像の画質が低下する不具合の発生率が高くなる。
第2面に対する印刷時には、シートMの第1面には、既に第1の画像が印刷済みである。このために、第2面に対する印刷時には、シートMは、第1面に対する印刷時にシートMに付着したインクによって、変形しやすい。本実施例によれば、第2面に対する印刷において、上述したように、距離DL2が比較的短いので、シートMの+Y側の端(下流端)近傍の第2面に印刷する際に、第1面に対する印刷時にシートに付着したインクによるシートMの変形を抑制できる。したがって、上述したシートMの変形に起因する不具合が発生して、シートMの+Y側の端近傍の印刷の質が低下することを低減できる。
一方で、第1面に対する印刷時には、シートMの第2面には印刷が行われていないために、1回目の搬送処理および1回目の主走査処理の前には、シートMには、インクは付着していない。このために、第1面に対する印刷時には、距離DL1が長くても、シートMが変形する可能性は比較的低い。本実施例によれば、第1面に対する印刷において、距離DL1が比較的長いので、1回目の主走査処理で行われるシートMの+Y側の端近傍への印刷量を増やすことができる。
以上の説明から解るように、本実施例によれば、印刷の質の低下を低減できるとともに、印刷時間の増大を抑制できる適切な両面印刷を実現することができる。本実施例では、仮に、第1面に対する印刷を行うための制御処理を、両面の印刷に適用する場合と比較して、印刷の質の低下を低減できる。また、本実施例では、仮に、第2面に対する印刷を行うための制御処理を、両面の印刷に適用する場合と比較して、印刷時間の増大を抑制できる。
図4、図5の例では、第1面に対する印刷にて実行される搬送処理と主走査処理とを含む一組の処理の回数(図4、図5の例では、5回)は、第2面に対する印刷にて実行される当該一組の処理の回数(図4、図5の例では、6回)より少ない。換言すれば、第1の制御処理は、搬送機構210によるシートMの搬送と印刷ヘッド240による部分印刷とを含む一組の処理をK1回(K1は、2以上の整数)だけ含む。そして、第2の制御処理は、該一組の処理をK2回(K2は、K1より大きな整数)だけ含む。このように、第1面に対する印刷時間の増加、ひいては、両面印刷の全体の印刷時間の増大を適切に抑制することができていることが解る。
また、図4に示すように、第1面に対する印刷の1回目の主走査処理では、ノズル長D分の全てのノズルを用いて部分印刷を行い得るのに対して、第2面に対する印刷の1回目の主走査処理では、−Y側の一部のノズルのみを用いて部分印刷を行う。すなわち、第1面に対する印刷の制御処理では、複数個のノズルのうち、第1ノズルと、第1ノズルより+Y側に位置する第2ノズルと、を用いて、シート位置M11にあるシートMの第1面に対して部分印刷が実行され、第2面に対する印刷の制御処理では、該第1ノズルを用いて、該第2ノズルを用いずに、シート位置M21にあるシートMの第2面に対して部分印刷が実行される。この結果、第1面に対する印刷の1回目の主走査処理によって印刷される印刷量を、第2面に対する印刷の1回目の主走査処理によって印刷される印刷量より多くすることができる。第1面に対する印刷の1回目の主走査処理によって印刷される印刷量が少なくなると、印刷時間が増大し得る。第2面に対する印刷の1回目の主走査処理によって印刷される印刷量が多くなると、シートMの変形に起因して画質の低くなる可能性が比較的高い画像が、比較的広い領域に印刷され得る。また、第2面に対する印刷の1回目の主走査処理によって印刷される印刷量が多くなると、シートの+Y側の端近傍に付着するインクが増大するので、シートMの変形が促進され得る。シートMの変形が促進されると、例えば、2回目の搬送処理において、下流ローラ対218において、シートMの+Y側の端を保持することに失敗して、ジャムやシートMの搬送精度の低下が発生しえる。本実施例によれば、このような不都合を抑制して、シートMの第1面と第2面において、シートの端近傍の印刷を適切に行うことができる。
また、図4に示すように、第1面に対する印刷の1回目の主走査処理では、第1の個数のノズル(例えば、ノズル長D分の全てのノズル)を用いて、部分印刷が実行され、第2面に対する印刷の1回目の主走査処理では、第1の個数より少ない第2の個数のノズル(例えば、−Y側の一部のノズル)を用いて、部分印刷が実行される。換言すれば、第1の制御処理では、CPU110は、印刷ヘッド240の複数個のノズルNZのうち、N1個(N1は、2以上の整数)のノズルを用いて、シート位置M11にあるシートMの第1面に対して部分印刷を実行する。そして、第2の制御処理では、CPU110は、該複数個のノズルNZのうち、N2個(N2は、N1より小さな1以上の整数)のノズルを用いて、シート位置M21にあるシートMの第2面に対して部分印刷を実行する。この結果、第1面に対する印刷の1回目の主走査処理によって印刷される印刷量を、第2面に対する印刷の1回目の主走査処理によって印刷される印刷量より多くすることができる。したがって、上述したように、シートMの第1面と第2面において、シートの端近傍の印刷を適切に行うことができる。
さらに、本実施例によれば、シート位置M21は、シートMの+Y側の端から下流ローラ対218までの搬送方向の長さRL(図5)がノズル長D以下になるように、より好ましくは、ノズル長Dより余裕分βだけ短くなるように、決定されている。この結果、2回目の搬送処理によって、シートMをノズル長Dだけ搬送すれば、シートMを下流ローラ対218によって保持することができる。すなわち、第1の状態MS1と比べてシートMの変形を抑制できる第2の状態MS2で、2回目の主走査処理が行われることを担保できる。したがって、シートMの変形に起因する印刷の質の低下をより効果的に低減できる。
さらに、本実施例によれば、第1面に対する印刷の制御処理と、第2面に対する印刷の制御処理とは、いずれもノズル長Dだけシートを搬送する処理(例えば、両制御処理のそれぞれの2〜4回目の搬送処理)を含む。この結果、少なくとも一部の主走査処理では、最大数のノズルを用いて部分印刷を行うことができるので、印刷速度の低下を抑制できる。より具体的には、本実施例では、第1面に対する印刷の制御処理と、第2面に対する印刷の制御処理と、のいずれにおいても、最初の搬送処理と最後の搬送処理を除いた全ての搬送処理にて、ノズル長Dだけシートを搬送する。この結果、第1面に対する印刷の制御処理では1〜4回目の主走査処理にて最大数のノズルを用いて部分印刷を行うことができ、第2面に対する印刷の制御処理では2〜5回目の主走査処理にて最大数のノズルを用いて部分印刷を行うことができる。したがって、より効率的に印刷速度の低下を抑制できる。また、ノズル長Dだけ、シートを搬送する処理を含む比較的高速な両面印刷、いわゆる1パス印刷での両面印刷において、印刷時間の増加の抑制と印刷の質の低下の低減とを達成できる。
さらに、上記実施例の印刷機構200は、シートMをY方向と交差する方向に沿って波状に変形させる状態で支持するように構成されている押さえ部材216と支持部材212、213とを備えるので、第1の状態MS1のシートであっても、シートの+Y側の端の垂れ下がりや跳ね上がりを抑制できる。この結果、シートの+Y側の端近傍の印刷の質の低下をより効果的に低減できる。
さらに、上記実施例では、シート位置M21にあるシートMの+Y側の端は、支持部材212、213の+Y側の端の位置Y4より−Y側にある。この結果、シート位置M21にあるシートMの+Y側の端は、支持部材212、213によって、印刷面とは反対の面側から支持される。したがって、シート位置M21にあるシートMは、第1の状態MS1ではあるものの、支持部材212、213による支持によって、シートMの+Y側の端の変形が抑制される。この結果、シートの+Y側の端近傍の印刷の質の低下をさらに効果的に低減できる。
さらに、上記実施例では、シートMが第1種のシートである場合には(図6のS135:YES)、特別開始位置、すなわち、シート位置M21にあるシートMの第2面に対して1回目の主走査処理、すなわち、1回目の部分印刷が実行される。そして、シートMが第2種のシートである場合には(図6のS135:NO)、通常開始位置、すなわち、シート位置M11の位置にあるシートMの第2面に対して1回目の主走査処理が実行される。この結果、シートの種類に応じて、適切な両面印刷が実現される。例えば、変形し難いシートに対する両面印刷では、印刷時間をより短くすることができ、変形しやすいシートに対する両面印刷では、印刷時間の増大の抑制と、印刷の質の低下の低減とを両立できる。
さらに、上記実施例では、第2面に対する印刷におけるシートMの+Y側の端部TAに対して、第1面に対する印刷にて印刷済みの印刷量が、基準以上である場合には(図6のS140:YES)、特別開始位置、すなわち、シート位置M21にあるシートMの第2面に対して1回目の主走査処理、すなわち、1回目の部分印刷が実行される。そして、第2面に対する印刷におけるシートMの+Y側の端部TAに対して、第1面に対する印刷にて印刷済みの印刷量が、基準以上である場合には(図6のS140:NO)、通常開始位置、すなわち、シート位置M11の位置にあるシートMの第2面に対して1回目の主走査処理が実行される。この結果、シートMの+Y側の端部TAに既に印刷済みの印刷量に応じて、第2面に対する印刷が適切に制御できる。例えば、第2面に対する印刷時に、シートMの+Y側の端部TAが変形し難い場合、具体的には、端部TAの第1面に印刷済みの印刷量が比較的少ない場合には、印刷時間をより短くすることができる。そして、第2面に対する印刷時に、シートMの+Y側の端部TAが変形しやすい場合、具体的には、端部TAの第1面に印刷済みの印刷量が比較的多い場合には、第2面に対する印刷の質の低下を低減できる。
さらに、本実施例によれば、第1面に対する印刷の制御処理は、シート位置M15までシートMを搬送する5回目の搬送処理と、シート位置M15にあるシートMの第1面に対して部分印刷を実行する5回目の主走査処理と、を含む。また、第2面に対する印刷の制御処理は、シート位置M15と同じシート位置M26までシートMを搬送する6回目の搬送処理と、シート位置M26にあるシートMの第2面に対して部分印刷を実行する6回目の主走査処理と、を含む。すなわち、両方の制御処理において、シートMの−Y側の端の近傍を印刷する最後の主走査処理、すなわち、最後の部分印刷は、互いに同じシート位置にあるシートMに対して実行される。
シート位置M15、M26では、シートMのうちの印刷ヘッド240より−Y側の部分は、上流ローラ対217によって保持されていないものの、押さえ部材216と支持部材212、213とによって両側から支持されている。このために、シート位置M15、M26では、下流ローラ対218からシートMの−Y側の端までの長さDL3(図4)は、比較的長いものの、シートMの−Y側の端近傍の変形は、抑制される。この結果、シートMの−Y側の端については、第2面に対する印刷についても、第1面に対する印刷と同じシート位置で印刷しても、シートの−Y側の端近傍の印刷の質を低下させることなく、さらに、印刷時間の増加を抑制できる。
次に、図7、図8を参照して、シートMの+Y側の余白の幅BLdおよび−Y側の余白の幅BLuが、最小値Wminより大きく、かつ、最下流ノズルNZdの位置Y5から下流ローラ対218の位置Y6までのY方向の距離NLd(図8)より小さい値Wsである場合(以下、小余白の場合とも呼ぶ)について、説明する。図7は、シートMに対するヘッド位置を主走査処理ごとに示す第2の図である。図7には、第1面に対する印刷の5回の主走査処理に対応する5個のヘッド位置P11b〜P14b、P15と、第2面に対する印刷の6回の主走査処理に対応する6個のヘッド位置P21〜P26と、が図示されている。図7の右側には、シートMに対応して、余白の幅BLd、BLuが、値Wsである第1の画像および第2の画像が印刷されるべき印刷領域PAbが図示されている。
図8は、印刷ヘッド240に対するシート位置を主走査処理ごとに示す第2の図である。図8には、第1面に対する印刷の5回の主走査処理に対応する5個のシート位置M11b〜M15bと、第2面に対する印刷の6回の主走査処理に対応する6個のシート位置M21〜M26と、が図示されている。
小余白の場合における第1面に対する印刷の制御処理について説明する。1回目の搬送処理後のシート位置M11b(図8)は、通常開始位置である。シート位置M11bでは、第1の画像の+Y側の端、すなわち、印刷領域PAbの+Y側の端DTb(図7、図8)と、最下流ノズルNZdとは、Y方向の位置が一致している。小余白の場合には、図4、図5の最小余白の場合より余白の幅BLd、BLuが大きい。すなわち、シートMにおいて、印刷領域PAbの+Y側の端DTbが、最小余白の場合の+Y側の端DTより−Y側に位置している(図7)。このために、シート位置M11bは、余白の幅が大きい分(Ws−Wmin)だけ、図5のシート位置M11より+Y側にシフトしている。
その後の2〜4回目の搬送処理後のシート位置M12b〜M14bは、シート位置M11bと同様に、(Ws−Wmin)だけ図5のシート位置M12〜M14よりそれぞれ+Y側にシフトしている。最後の5回目の搬送処理後のシート位置M15は、図5のシート位置M15と同じ位置である。このために、シート位置M15には、図7において、図5と同じ符号を付している。
図7のヘッド位置P11b〜P14b、P15は、図8のシート位置M11b〜M14b、M15に、それぞれ対応している。ヘッド位置P15については、図4のヘッド位置P15と同じ位置であるので、図4と同じ符号を付している。
2〜4回目の搬送処理の搬送量は、最小余白の場合と同様にノズル長Dである。5回目の搬送処理の搬送量L1bは、最小余白の場合の搬送量L1(図4)より(Ws−Wmin)だけ短い。
小余白の場合には、ヘッド位置P15での5回目の主走査処理で用いられるノズル数は、最小余白の場合と比較して、2×(Ws−Wmin)だけ少ない。これは、+Y側と−Y側の余白の幅が(Ws−Wmin)だけそれぞれ大きいためである。具体的には、小余白の場合の5回目の主走査処理では、図7のヘッド位置P15内のハッチングで示すように、+Y側および−Y側の両端において、(Ws−Wmin)分ずつ使用されるノズルの個数が少ない。
第1面に対する印刷の制御では、小余白の場合においても、最小余白の場合と同様に、最後の主走査処理を除く全ての主走査処理において、ノズル長D分の全てのノズルが用いられるので、印刷時間の増加を抑制できる。
小余白の場合における第2面に対する印刷の制御処理について説明する。図7の1〜6回目の主走査処理におけるヘッド位置P21〜P26は、図4のヘッド位置P21〜P26と同じ位置であるので、図4と同じ符号を付している。同様に、図8の1〜6回目の搬送処理後のシート位置M21〜M26は、図5のシート位置M21〜M26と同じ位置であるので、図5と同じ符号を付している。ただし、小余白の場合には、1回目の主走査処理および最後の6回目の主走査処理で用いられるノズル数は、最小余白の場合と比較して、(Ws−Wmin)分ずつそれぞれ少ない。図7のヘッド位置P21、P26内のハッチングで示すように、図7の小余白の場合には、図4の最小余白の場合と比較して、ヘッド位置P21では+Y側の(Ws−Wmin)分のノズルが使用されない。また、図7の小余白の場合には、図4の最小余白の場合と比較して、ヘッド位置P26では−Y側の(Ws−Wmin)分のノズルが使用されない。
以上の説明から解るように、シートMの第2面に対する印刷について、シートMの+Y側の余白が、第1の幅(例えば、Wmin)を有する場合には、第3の個数のノズルを用いて、シート位置M21にあるシートMの第2面に対して部分印刷が実行される。そして、シートMの第2面に対する印刷について、シートMの+Y側の余白が、第1の幅より長い第2の幅(例えば、Ws)を有する場合には、第3の個数より少ない第4の個数のノズルを用いて、シート位置M21にあるシートMの第2面に対して部分印刷が実行される。換言すれば、第2の制御処理では、CPU110は、シートMの+Y側の余白が第1の幅を有する場合には、印刷ヘッド240の複数個のノズルNZのうち、N3個(N3は、2以上の整数)のノズルを用いて、シート位置M21にあるシートMの第2面に対して部分印刷を実行する。そして、第2の制御処理では、CPU110は、シートMの+Y側の余白が第1の幅より長い第2の幅を有する場合には、該複数個のノズルNZのうち、N4個(N4は、N3より小さな1以上の整数)のノズルを用いて、シート位置M21にあるシートMの第2面に対して部分印刷を実行する。この結果、印刷すべき第2の画像の余白に応じて、シートMの+Y側の端近傍の印刷を適切に行うことができる。
次に、図9、図10を参照して、シートMの+Y側の余白の幅BLdおよび−Y側の余白の幅BLuが、最下流ノズルNZdの位置Y5から下流ローラ対218の位置Y6までのY方向の距離NLd(図10)より大きな値Wbである場合(以下、大余白の場合とも呼ぶ)について、説明する。図9は、シートMに対するヘッド位置を主走査処理ごとに示す第3の図である。図9には、第1面に対する印刷の4回の主走査処理に対応する4個のヘッド位置P11c〜P14cと、第2面に対する印刷の4回の主走査処理に対応する4個のヘッド位置P21c〜P24cと、が図示されている。図9の右側には、シートMに対応して、余白の幅BLd、BLuが、値Wbである第1の画像および第2の画像が印刷されるべき印刷領域PAcが図示されている。
図10は、印刷ヘッド240に対するシート位置を主走査処理ごとに示す第3の図である。図10には、第1面に対する印刷の4回の主走査処理に対応する4個のシート位置M11c〜M14cと、第2面に対する印刷の4回の主走査処理に対応する4個のシート位置M21c〜M24cと、が図示されている。
大余白の場合における第1面に対する印刷の制御処理について説明する。1回目の搬送処理後のシート位置M11c(図10)は、通常開始位置である。シート位置M11cでは、第1の画像の+Y側の端、すなわち、印刷領域PAcの+Y側の端DTc(図9、図10)と、最下流ノズルNZdとは、Y方向の位置が一致している。大余白の場合には、図4、図5の最小余白の場合より余白の幅BLd、BLuが大きい。すなわち、シートMにおいて、印刷領域PAcの+Y側の端DTcが、最小余白の場合の+Y側の端DTより−Y側に位置している(図9)。このために、シート位置M11cは、余白の幅が大きい分(Wb−Wmin)だけ、図5のシート位置M11より+Y側にシフトしている。大余白の場合には、シートMの第1面の+Y側の余白の幅BLdが、上述したように距離NLdより大きいので、シート位置M11cでは、1回目の搬送処理の後のシート位置であるにも拘わらず、シートMは、上流ローラ対217によって保持され、かつ、押さえ部材216と支持部材212、213とによって支持され、かつ、下流ローラ対218によって保持される第2の状態MS2にある。
その後の2〜4回目の搬送処理後のシート位置M12c〜M14cは、シート位置M11cと同様に、(Wb−Wmin)だけ図5のシート位置M12〜M14よりそれぞれ+Y側にシフトしている。最後の4回目の搬送処理後のシート位置M14cは、シートMが、上述した第2の状態MS2にある。すなわち、大余白の場合には、−Y側の余白の幅BLuが、距離NLdより大きいために、シートMの第1面に対して印刷されるべき第1の画像の−Y側の端を、第2の状態MS2で印刷できる。
図9のヘッド位置P11c〜P14cは、図10のシート位置M11c〜M14cに、それぞれ対応している。
2〜4回目の搬送処理の搬送量は、全てノズル長Dである。第1面に対する印刷の制御では、大余白の場合においても、最小余白や小余白の場合と同様に、最後の主走査処理を除く全ての主走査処理において、ノズル長D分の全てのノズルが用いられるので、印刷時間の増加を抑制できる。
大余白の場合における第2面に対する印刷の制御処理について説明する。大余白の場合には、図6のS145にて、シートMの第2面の+Y側の余白の幅BLdが閾値TH2以上であると判断される。このために、大余白である場合には、S155にて、1回目の搬送処理として、通常開始位置までシートMが搬送される。このために、大余白の場合には、第2面に対する印刷の制御処理は、第1面に対する印刷の制御処理と同じ処理である。図9、図10から解るように、シート位置M11c〜M14cと、シート位置M21c〜M24cとは、互いに同じシート位置であり、ヘッド位置P11c〜P14cと、ヘッド位置P21c〜P24cとは、互いに同じヘッド位置である。
以上の説明から解るように、大余白の場合には、第1面に対する印刷と第2面に対する印刷との両方において、全ての主走査処理は、シートMの変形が生じ難い第2の状態MS2で実行できる。このために、全ての搬送処理の搬送量がノズル長Dに設定される。この結果、印刷時間の増加を抑制することができる。また、印刷画像の画質の低下が発生することもない。
次に、図11、図12を参照して、シートMの4つの端に余白を残さないようにシートMの4つの端まで印刷可能な、いわゆる縁なし印刷を実行する場合について、説明する。図11は、シートMに対するヘッド位置を主走査処理ごとに示す第4の図である。図11には、第1面に対する印刷の6回の主走査処理に対応する6個のヘッド位置P11d〜P14d、P15、P16dと、第2面に対する印刷の7回の主走査処理に対応する7個のヘッド位置P21d〜P25d、P26、P27dと、が図示されている。図11の右側には、シートMに対応して、縁なし印刷時の第1の画像および第2の画像が印刷されるべき印刷領域PAdが図示されている。縁なし印刷では、印刷領域PAdは、余白を残さないように、シートMの大きさより僅かに大きな領域であり、印刷領域PAdの4方向の端は、シートMの対応する端より僅かな余裕分γ(例えば、2mm)だけ外側に位置している。
図12は、印刷ヘッド240に対するシート位置を主走査処理ごとに示す第4の図である。図12には、第1面に対する印刷の6回の主走査処理に対応する6個のシート位置M11d〜M14d、M15、M16dと、第2面に対する印刷の7回の主走査処理に対応する7個のシート位置M21d〜M25d、M26、M27dと、が図示されている。
縁なし印刷の場合における第1面に対する印刷の制御処理について説明する。1回目の搬送処理後のシート位置M11d(図11)は、通常開始位置である。シート位置M11dでは、第1の画像の+Y側の端、すなわち、印刷領域PAdの+Y側の端DTd(図11、図12)と、最下流ノズルNZdとは、Y方向の位置が一致している。
ここで、縁なし印刷の場合には、シートMの端において、印刷時にインクがシートMより外側にこぼれ落ち得る。このために、シートMの端近傍を印刷する際には、シートMの端は、シート台211のうち、支持部材212、213が形成されていない部分、すなわち、インクの受け部として機能する部分の上方に位置することが好ましい。これは、支持部材212、213にインクが付着すると、支持部材212、213に付着したインクがシートMに付着してシートMが汚れる可能性があるからである。シートMの+Y側の端近傍を印刷する1回目の主走査処理時のシート位置M11dでは、シートMの+Y側の端が、支持部材212、213の+Y側の端の位置Y4より+Y側に位置しているので、問題はない。
縁なし印刷の場合には、余白がないので、シートMにおいて、印刷領域PAdの+Y側の端DTdが、最小余白の場合の+Y側の端DTより(Wmin+γ)だけ+Y側に位置している(図11)。このために、シート位置M11dは、(Wmin+γ)だけ図5のシート位置M11より−Y側にシフトしている。
その後の2〜4回目の搬送処理後のシート位置M12d〜M14dは、シート位置M11dと同様に、図5のシート位置M12〜M14よりそれぞれ(Wmin+γ)だけ−Y側にシフトしている。最後から2番目の5回目の搬送処理後のシート位置M15は、図5のシート位置M15と同じ位置である。このために、シート位置M15には、図12において、図5と同じ符号を付している。
なお、シート位置M15での5回目の主走査処理が終了した時点で、図5の最小余白の場合と同様に、シートMの−Y側の端近傍は、幅Wminの最小余白への印刷だけが未完了の状態になる。6回目の搬送処理後のシート位置M16dでは、最下流ノズルNZdの位置が、シートMにおいて印刷が未完了の幅Wminの最小余白の+Y側の端と一致する。
図11のヘッド位置P11d〜P14d、P15、P16dは、図12のシート位置M11d〜M14d、M15、M16dに、それぞれ対応している。ヘッド位置P15については、図4のヘッド位置P15と同じ位置であるので、図4と同じ符号を付している。
シート位置M16d(ヘッド位置P16d)での最後の6回目の主走査処理では、最下流ノズルNZdを含む+Y側の(Wmin+γ)分のノズルを用いて、シートMの−Y側の幅Wminの最小余白への印刷が行われる。
2〜4回目、および、6回目の搬送処理の搬送量は、ノズル長Dである。5回目の搬送処理の搬送量L1dは、上述したシート位置M15に、シートMを搬送するために、ノズル長Dより小さな値とされている。
縁なし印刷の場合には、ヘッド位置P15での5回目の主走査処理で用いられるノズル数は、最小余白の場合と比較して、(Wmin+γ)分だけ多い。これは、+Y側に余白がないので、+Y側の端の近傍にて印刷すべき領域が(Wmin+γ)だけ大きいためである。
第1面に対する印刷の制御では、縁なし印刷の場合においても、最後から2回分の主走査処理を除く全ての主走査処理において、ノズル長D分の全てのノズルが用いられるので、印刷時間の増加を抑制できる。
縁なし印刷の場合における第2面に対する印刷の制御処理について説明する。図12の1回目の搬送処理後のシート位置M21dでは、最小余白の場合の図5のシート位置M21と同様に、シートMは、第1の状態MS1にある。シート位置M21dでは、シートMの+Y側の端が、図5のシート位置M21におけるシートMの+Y側の端より+Y側に位置している。より具体的には、図5のシート位置M21では、シートMの+Y側の端は、支持部材212、213の+Y側の端の位置Y4より−Y側に位置しているが、シート位置M21dでは、シートMの+Y側の端は、当該位置Y4より+Y側に位置している。これは、シートMの+Y側の端近傍を印刷する1回目の主走査処理時に、支持部材212、213にインクが付着することを抑制するためである。
ただし、シート位置M21dでは、シートMの+Y側の端の位置が、支持部材212、213にインクが付着しない範囲で、できるだけ−Y側に決定されている。このために、シート位置M21dでは、シートMの+Y側の端は、第1面に対する印刷のシート位置M11dにおけるシートMの+Y側の端より−Y側に位置している。この結果、縁なし印刷においても、第2面に対する印刷時には、支持部材212、213にインクが付着しない範囲で、シートMの+Y側の端近傍の変形が抑制され、印刷の質の低下が抑制される。
その後の2〜5回目の搬送処理後のシート位置M22d〜M25dは、シート位置M21dと同様に、図5のM22〜M25よりそれぞれ+Y側にシフトしている。また、シート位置M22d〜M25dは、シート位置M21dと同様に、第1面に対する印刷のシート位置M12d〜M15dよりそれぞれ−Y側にシフトしている。最後から2番目の6回目の搬送処理後のシート位置M26は、図5のシート位置M26と同じ位置である。このために、シート位置M26には、図12において、図5と同じ符号を付している。シート位置M26は、第1面に対する印刷のシート位置M15とも同じ位置である。
なお、シート位置M25での6回目の主走査処理が終了した時点で、第1面に対する印刷の5回目の主走査処理が終了した時点と同様に、シートMの−Y側の端近傍は、幅Wminの最小余白への印刷だけが未完了の状態になる。7回目の搬送処理および7回目の主走査処理は、第1面に対する印刷の6回目の搬送処理および6回目の主走査処理と同じ処理である。したがって、7回目の搬送処理後のシート位置M27dは、第1面に対する印刷のシート位置M16dと、同じ位置である。
図11のヘッド位置P21d〜P25d、P26、P27dは、図12のシート位置M21d〜M25d、M26、M27dに、それぞれ対応している。ヘッド位置P26については、図4のヘッド位置P26と同じ位置であるので、図4と同じ符号を付している。
シート位置M27dでの最後の7回目の主走査処理では、第1面に対する印刷の6回目の主走査処理と同様に、最下流ノズルNZdを含む+Y側の(Wmin+γ)分のノズルを用いて、シートMの−Y側の幅Wminの最小余白への印刷が行われる。
2〜5回目、および、7回目の搬送処理の搬送量は、ノズル長Dである。6回目の搬送処理の搬送量L2dは、上述したシート位置M26に、シートMを搬送するために、ノズル長Dより小さな値とされている。
以上の説明から解るように、第2面に対する印刷について、シートMの+Y側に余白がある場合には、図4、図5、図7、図8を参照して説明した最小余白および小余白の例から解るように、シートMの+Y側の端が、支持部材212、213の+Y側の端の位置Y4より−Y側に位置するように、シート位置M21が設定される。そして、第2面に対する印刷について、シートMの+Y側に余白がない場合には、図11、図12を参照して説明した縁なし印刷の例から解るように、シートMの+Y側の端が、支持部材212、213の+Y側の端の位置Y4よりより+Y側に位置するように、シート位置M21dが設定される。この結果、シートの+Y側に余白がある場合には、シートの変形をより抑制することができる。また、シートの+Y側に余白がない場合には、支持部材212、213にインクが付着すること、ひいては、支持部材212、213に付着したインクがシートMに付着してシートMが汚れることを抑制することができる。
さらに、シート位置M16d、M27dでは、シートMは、上流ローラ対217によって保持されず、かつ、押さえ部材216と支持部材212、213とによって支持されず、かつ、下流ローラ対218によって保持される第4の状態MS4にある。このために、シート位置M16d、M27dでは、シートMの−Y側の端近傍が変形しやすい。本実施例では、第4の状態MS4よりシートMが変形し難い第3の状態MS3にあるシート位置M15、M26で行われる主走査処理までに、−Y側の幅Wminの最小余白を除く印刷を完了している。そして、第4の状態MS4にあるシート位置M16d、M27dで行われる最後の主走査処理では、−Y側の幅Wminの最小余白への印刷だけを行うので、−Y側の端近傍に印刷される画像の質の低下を低減できる。さらに、最後の主走査処理では、最下流ノズルNZdを含む+Y側の(Wmin+γ)分のノズルを用いるので、下流ローラ対218からシートMの−Y側の端までの長さDL4(図12)を、比較的短くすることができる。この結果、シートMの−Y側の端近傍の変形を抑制できるので、−Y側の端近傍に印刷される画像の質の低下をさらに低減できる。
以上の説明から解るように、図5のシート位置M11、図8のシート位置M11b、図12のシート位置M11dは、それぞれ、第1の位置の例であり、図5、図8のシート位置M21、図12のシート位置M21dは、それぞれ、第2の位置の例であり、図5、図8、図12のシート位置M15、M26は、それぞれ、第3の位置の例である。
なお、上記実施例では、上述したように、第1面に対して第1の画像が印刷されるべき印刷領域と、第2面に対して第2の画像が印刷されるべき印刷領域とは、互いに同じサイズであり、シートM上における位置も互いに同じである場合を例として説明した。すなわち、第1面における+Y側および−Y側の余白の幅BLd、BLuと、第2面における+Y側および−Y側の余白の幅BLd、BLuとも、互いに同じである場合を例として説明した。このことから解るように、上述した第1面に対する印刷の制御処理と、第2面に対する印刷の制御処理と、の違い、具体的には、シート位置、ヘット位置、搬送量、使用されるノズルの個数、ノズルの位置などの違いは、第1面に対して印刷される第1の画像と、第2面に対して印刷される第2の画像と、が互いに同じ画像であり、かつ、互いに同じ余白で、印刷される場合であっても発生する違いである。例えば、仮に、第1面に対して印刷される第1の画像と、第2面に対して印刷される第2の画像と、が互いに同じ画像であり、かつ、互いに同じ余白で、印刷される場合であっても、第1面に対する印刷が開始される際、すなわち、第1面に対する最初の部分印刷が行われる際のシート位置と、第2面に対する印刷が開始される際、すなわち、第2面に対する最初の部分印刷が行われる際のシート位置と、は異なる。具体的には、この場合であっても、第2面に対する最初の部分印刷が行われる際のシート位置(例えば、図5のシート位置M21)の+Y側の端は、第1面に対する最初の部分印刷が行われる際のシート位置(例えば、図5のシート位置M11)の+Y側の端より−Y側に位置する。また、仮に、第1面に対して印刷される第1の画像と、第2面に対して印刷される第2の画像と、が互いに同じ画像であり、かつ、互いに同じ余白で、印刷される場合であっても、第1面に対する最初の部分印刷は、N1個(N1は、2以上の整数)のノズルを用いて実行され、第2面に対する最初の部分印刷は、N2個(N2は、N1より小さな1以上の整数)のノズルを用いて実行される。
E.変形例:
(1)上記実施例では、例えば、最小余白の場合において、第2面に対する印刷の1回目の搬送処理後のシート位置M21が、第1面に対する印刷の1回目の搬送処理後のシート位置M11とは異なっており、かつ、第2面に対する印刷の1回目の主走査処理で用いられるノズルの個数が、第1面に対する印刷の1回目の主走査処理で用いられるノズルの個数より少なくされる。これに代えて、第2面に対する印刷の1回目の搬送処理後のシート位置は、第1面に対する印刷の1回目の搬送処理後のシート位置M11と同じであり、かつ、第2面に対する印刷の1回目の主走査処理で用いられるノズルの個数が、第1面に対する印刷の1回目の主走査処理で用いられるノズルの個数より少なくされても良い。小余白、縁なし印刷の場合についても同様である。
図13は、変形例におけるシートMに対するヘッド位置を主走査処理ごとに示す図である。図13の例では、第2面に対する印刷の1回目の搬送処理後のシート位置M21xは、第1面に対する印刷の1回目の搬送処理後のシート位置M11と同じである。これに伴って、第2面に対する印刷の2回目の搬送処理の搬送量が、図5の例とは異なり、ノズル長Dより小さなLxとされている。また、第2面に対する印刷の1回目の主走査処理にて使用されるノズルが、図5の例とは異なり、最下流ノズルNZdを含む下流側の一部のノズルとされている。なお、第2面に対する印刷の1回目の主走査処理にて使用されるノズルの個数は、図5の例と同じである。また、その他の構成、例えば、シート位置M11〜M15、M22〜M26は、図5の例と同じである。
この場合であっても、第2面に対する印刷では、第1の状態MS1で行われる1回目の主走査処理での印刷量を、第1面に対する印刷より少なくすることができる。この結果、シートの第2面の+Y側の端近傍に印刷する際に、印刷直後のシートの変形を抑制できる。したがって、シートの+Y側の端近傍の印刷の質が低下することを低減できる。
(2)上記実施例では、第2面に対する印刷のシート位置M21における上流ローラ対217からシートMの+Y側の端までの距離DL2は、第1面に対する印刷のシート位置M11における距離DL1の50%以下となっている。距離DL2は、これに限られないが、距離DL1と比較して短いほど好ましく、例えば、距離DL2は、距離DL1の75%以下が好ましく、50%以下がさらに好ましく、30%以下が特に好ましい。
(3)上記実施例では、パス数PSが1である1パス印刷を用いて印刷が実行される。これに代えて、パス数PSが、2、4などの1とは異なる値である印刷方式を用いて印刷が実行されても良い。パス数PSは、シートM上の1個の領域、例えば、搬送方向の幅がノズル長Dである部分領域を印刷するために要する主走査処理の数を示す。いずれのパス数PSの印刷方式が用いられる場合であっても、第2面に対する印刷の1回目の主走査処理が第1の状態MS1で行われる際のシートMの+Y側の端は、第1面に対する印刷の1回目の主走査処理が第1の状態MS1で行われる際のシートMの+Y側の端より−Y側にあることが好ましい。また、第2面に対する印刷の1回目の主走査処理が第1の状態MS1で行われる際に用いられるノズルの個数は、第1面に対する印刷の1回目の主走査処理が第1の状態MS1で行われる際に用いられるノズルの個数より少ないことが好ましい。
(4)上記実施例では、例えば、最小余白の場合において、第2面に対する印刷の1回目の主走査処理時のシート位置M21と、第1面に対する印刷の1回目の主走査処理時のシート位置M11とを、異ならせることによって、シートMの+Y側の端近傍において、印刷の質の低下の低減と印刷時間の増大の抑制を図っている。これに加えて、第2面に対する印刷の最後の主走査処理時のシート位置と、第1面に対する印刷の1回目の搬送処理後の最後の主走査処理時のシート位置とを、異ならせても良い。例えば、最後の主走査処理が、上述した第4の状態MS4で行われる場合には、シートMの−Y側の端近傍が変形しやすい。例えば、この場合には、第2面に対する印刷の最後の主走査処理時のシート位置におけるシートMの−Y側の端が、第1面に対する印刷の最後の主走査処理時のシート位置におけるシートMの−Y側の端より+Y側あるように、1回目の搬送処理を制御しても良い。こうすれば、シートMの−Y側の端近傍において、印刷の質の低下の低減と印刷時間の増大の抑制を図ることができる。
(5)上記実施例では、印刷機構200は、反転機構219を備え、反転機構219を用いて自動的に、シートMの反転が行われる。これに代えて、印刷機構200は、反転機構219を備えなくても良い。この場合には、例えば、CPU110は、第1面に対する印刷が完了すると、第1面に対する印刷が完了済みのシートMを、排出トレイに排出する。ユーザは、排出トレイに排出されたシートMを、手動で、給紙トレイに設置した後に、第2面に対する印刷の開始指示を、操作部150を介して、プリンタ10に入力する。CPU110は、入力された開始指示に基づいて、第2面に対する印刷の制御処理を開始すれば良い。
(6)上記実施例では、コンピュータプログラム132(図1)を実行することによって、プリンタ10のCPU110が、図4〜図12に示すように、搬送処理と主走査処理とを繰り返す両面印刷の制御処理を実現している。これに代えて、プリンタと接続されたパーソナルコンピュータなどの外部機器のCPUが、プリンタドライバプログラムを実行することによって、上記実施例の制御処理を実行して、プリンタに両面印刷を実行させても良い。
この場合には、例えば、外部機器のCPUは、印刷対象の画像を表す対象画像データ(例えば、JPEG圧縮された画像データや、ページ記述言語で記述された画像データ)を用いて、実施例で説明したラスタライズ処理や色変換処理やハーフトーン処理を実行して、ドットデータを生成する。外部機器のCPUは、さらに、ドットデータを用いて、ドットデータを複数回の主走査処理で用いられる順序に並び代えて得られる印刷データと、プリンタを制御するための制御データと、を含む印刷ジョブを生成する。制御データには、例えば、複数回の主走査処理で用いられる使用ノズルを指定するデータと、複数回の搬送処理の搬送量を指定するデータと、が含まれる。外部機器のCPUは、生成された印刷ジョブをプリンタに供給し、プリンタは、供給された印刷ジョブに従って印刷を実行する。
以上の説明から解るように、上記実施例では、印刷機構200(図1)が印刷実行部の例であり、本変形例では、印刷ジョブが供給されるプリンタが、印刷実行部の例である。
(7)上記実施例では、搬送機構210のシート台211(図3)には、平らな平板が用いられても良い。すなわち、シート台211は、複数個の支持部材212、213を備えておらず、かつ、搬送機構210は、押さえ部材216を備えていなくても良い。すなわち、上記実施例では、複数個の支持部材212、213と、押さえ部材216とによって、搬送中のシートMが支持されなくても良い。
さらに、シート台211は、複数個の支持部材212、213を備えており、かつ、搬送機構210は、押さえ部材216を備えていなくても良い。すなわち、例えば、シート位置M21、M21d、あるいは、シート位置M11、M11dにあるシートMは、上流ローラ対217と下流ローラ対218との間において、印刷面側から支持されず、かつ、複数個の支持部材212、213によって印刷面の反対の面側から支持されてしても良い。
(8)上記実施例において、搬送機構210は、シートMをX方向に沿って波状に変形させて支持する支持部材に代えて、シートMを波状に変形させることなく、平らな状態で支持する支持部材を備えても良い。例えば、図3のシート台211(図3)は、複数個の高支持部材212を備えずに、複数個の低支持部材213だけを備え、搬送機構210は、複数個の押さえ部材216を備えていても良い。なお、シートMを印刷面とは反対の面側から支持する部材(例えば、支持部材212、213)は、少なくともシートMを印刷面から支持する部材(例えば、押さえ部材216)が位置するY方向の位置に設けられ、シートMを両面側から支持するように構成されることが好ましい。
また、搬送機構210は、複数個の高支持部材212を備えずに、複数個の低支持部材213だけを備え、搬送機構210は、複数個の押さえ部材216を備えていなくても良い。このように、シートMは、上流ローラ対217と下流ローラ対218との間において、印刷面側から支持されず、かつ、複数個の低支持部材213によって印刷面の反対の面側から、平らな状態で支持されても良い。
(9)上記実施例の図6の制御処理は、適宜変更、省略されてもよい。例えば、図6のS100、および、S135は、省略され、用紙の種類に関わらずに、第2面に対する印刷の1回目の搬送処理では、特別開始位置までシートMを搬送することとしても良い。また、図6のS140は、省略され、シートMの+Y側の端近傍の第1面の印刷量に関わらずに、第2面に対する印刷の1回目の搬送処理では、特別開始位置までシートMを搬送することとしても良い。また、図6のS145は省略され、シートMの+Y側の余白の幅BLdに関わらずに、第2面に対する印刷の1回目の搬送処理では、特別開始位置までシートMを搬送することとしても良い。
(10)上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。