JP2023018844A - 印刷装置、および、コンピュータプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】印刷媒体の変形による不具合を抑制する。【解決手段】印刷実行部は、印刷ヘッドの複数個のノズルよりも搬送方向の上流側で印刷媒体の印刷面と対向可能な対向部材を備える。制御装置は、ドットを形成する部分印刷と、印刷媒体の搬送と、を複数回実行させることによって、印刷実行部に印刷画像を印刷させる。制御装置は、印刷画像を印刷させる際に、印刷媒体が対向部材と対向する状態で実行される最後の部分印刷である最終対向部分印刷を実行させ、最終対向部分印刷を実行させる前に、印刷媒体を最終対向搬送量搬送させる。制御装置は、印刷媒体の搬送方向と直交する直交方向の端の位置と、対向部材の直交方向の位置と、に応じて、印刷媒体の対向長さが変化するように、特定搬送量を制御する。対向長さは、印刷媒体のうち、最終対向部分印刷を実行させる際に対向部材と対向する部分の搬送方向の長さである。【選択図】 図5
Description
本明細書は、複数個のノズルを有する印刷ヘッドと印刷ヘッドに対して印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送部とを備える印刷実行部の制御装置に関する。
特許文献1に開示されたプリンタは、複数回のパス処理で印刷を行う際に、各パス処理で印刷されるバンド領域の境界付近の一部の領域を2回のパス処理で印刷する。これによってバンド領域の境界付近においてバンディングが目立つことを抑制している。このプリンタは、印刷ヘッドの複数個のノズルよりも搬送方向の上流側に、用紙を印刷面側から押さえる押さえ部材を備えている。
本明細書は、印刷媒体の印刷面と対向可能な対向部材(例えば、上記の押さえ部材)を有する印刷実行部による印刷において、印刷媒体の変形による不具合を抑制する技術を開示する。
本明細書に開示された技術は、以下の適用例として実現することが可能である。
[適用例1]印刷実行部と制御装置とを備える印刷装置であって、前記印刷実行部は、印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、特定色のインクを吐出する複数個のノズルであって前記搬送方向の位置が互いに異なる前記複数個のノズルを有し、前記印刷媒体にインクを吐出して前記印刷媒体にドットを形成する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドの前記複数個のノズルよりも前記搬送方向の上流側で前記印刷媒体の印刷面と対向可能な対向部材と、を備え、前記制御装置は、前記印刷ヘッドによって前記ドットを形成する部分印刷と、前記搬送部による前記印刷媒体の搬送と、を複数回実行させることによって、前記印刷実行部に印刷画像を印刷させ、前記制御装置は、前記印刷実行部に前記印刷画像を印刷させる際に、前記印刷媒体が前記対向部材と対向する状態で実行される最後の前記部分印刷である最終対向部分印刷を実行させ、前記最終対向部分印刷を実行させる前に、前記印刷媒体を最終対向搬送量搬送させ、前記制御装置は、前記印刷媒体の前記搬送方向と直交する直交方向の端の位置と、前記対向部材の前記直交方向の位置と、に応じて、前記印刷媒体の対向長さが変化するように、前記特定搬送量を制御し、前記対向長さは、前記印刷媒体のうち、前記最終対向部分印刷を実行させる際に前記対向部材と対向する部分の前記搬送方向の長さである、印刷装置。
印刷媒体の搬送方向の上流端部が直交方向に沿って変形すると、上流端部の直交方向の両端に位置する角部が印刷ヘッドの接触する不具合が発生し得る。上記不具合の発生しやすさは、印刷媒体の直交方向の端の位置と対向部材の直交方向の位置とに応じて変化する。また、印刷媒体の対向長さが長いほど印刷媒体の上流端部が印刷ヘッドから離れるので、上記不具合は発生し難くなる。上記構成によれば、印刷媒体の直交方向の端の位置と対向部材の直交方向の位置とに応じて、印刷媒体の対向長さを変化させる。この結果、例えば、印刷媒体の直交方向の端の位置と対向部材の直交方向の位置が、上記不具合が発生しやすい位置関係にある場合には、印刷媒体の対向長さを長くして、上記不具合を抑制することができる。したがって、印刷媒体の変形による不具合を抑制することができる。
なお、本明細書に開示された技術は、種々の形態で実現可能であり、例えば、印刷装置、印刷実行部の制御方法、印刷方法、これらの装置および方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、等の形態で実現することができる。
A.第1実施例:
A-1:プリンタ200の構成
次に、実施の形態を実施例に基づき説明する。図1は、実施例のプリンタ200の構成を示すブロック図である。
A-1:プリンタ200の構成
次に、実施の形態を実施例に基づき説明する。図1は、実施例のプリンタ200の構成を示すブロック図である。
プリンタ200は、例えば、印刷実行部としての印刷機構100と、制御装置としてCPU210と、ハードディスクドライブなどの不揮発性記憶装置220と、RAMなどの揮発性記憶装置230と、ユーザによる操作を取得するためのボタンやタッチパネルなどの操作部260と、液晶ディスプレイなどの表示部270と、通信部280と、を備えている。通信部280は、ネットワークNWに接続するための有線または無線のインタフェースを含む。プリンタ200は、通信部280を介して、外部装置、例えば、ユーザの端末装置300と通信可能に接続される。
揮発性記憶装置230は、CPU210が処理を行う際に生成される種々の中間データを一時的に格納するバッファ領域231を提供する。不揮発性記憶装置220には、コンピュータプログラムPGが格納されている。コンピュータプログラムPGは、本実施例では、プリンタ200を制御するための制御プログラムである。コンピュータプログラムPGは、プリンタ200の出荷時に不揮発性記憶装置220に格納されて提供され得る。これに代えて、コンピュータプログラムPGは、サーバからダウンロードされる形態で提供されても良く、DVD-ROMなどに格納される形態で提供されてもよい。CPU210は、コンピュータプログラムPGを実行することにより、例えば、後述する印刷処理を実行する。これによって、CPU210は、印刷機構100を制御して印刷媒体(例えば、用紙)上に画像を印刷する。
印刷機構100は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のそれぞれのインク(液滴)を用いてドットを用紙M上に形成可能であり、これによってカラー印刷を行う。印刷機構100は、印刷ヘッド110とヘッド駆動部120と主走査部130と搬送部140とを備えている。
図2は、印刷機構100の概略構成を示す図である。図2に示すように、主走査部130は、キャリッジ133と、摺動軸134と、を備えている。キャリッジ133は、印刷ヘッド110を搭載する。摺動軸134は、キャリッジ133を主走査方向(図2のX軸方向)に沿って往復動可能に保持する。主走査部130は、図示しない主走査モータの動力を用いて、キャリッジ133を摺動軸134に沿って往復動(走査とも呼ぶ)させる。これによって、用紙Mに対して主走査方向に沿って印刷ヘッド110を往復動させる主走査が実現される。
搬送部140は、用紙Mを保持しつつ、主走査方向と交差する搬送方向AR(図2の+Y方向)に用紙Mを搬送する。図2(A)に示すように、上流ローラ対142と、下流ローラ対141と、用紙台145と、複数個の押さえ部材146と、を備えている。以下では、搬送方向ARの上流側(-Y側)を、単に、上流側とも呼び、搬送方向ARの下流側(+Y側)を単に下流側とも呼ぶ。
上流ローラ対142は、印刷ヘッド110よりも上流側(-Y側)で用紙Mを保持し、下流ローラ対141は、印刷ヘッド110よりも下流側(+Y側)で用紙Mを保持する。用紙台145は、上流ローラ対142と、下流ローラ対141と、の間の位置であって、かつ、印刷ヘッド110のノズル形成面111と対向する位置に配置されている。図示しない搬送モータによって下流ローラ対141と上流ローラ対142とが駆動されることによって、用紙Mが搬送方向ARに搬送される。
ヘッド駆動部120(図1)は、主走査部130が印刷ヘッド110の主走査を行っている最中に、印刷ヘッド110に駆動信号を供給して、印刷ヘッド110を駆動する。印刷ヘッド110は、駆動信号に従って、搬送部140によって搬送される用紙上にインクを吐出してドットを形成する。
図2(B)は、-Z側(図2における下側)から見た印刷ヘッド110の構成が図示されている。図2(B)に示すように、印刷ヘッド110のノズル形成面111には、複数のノズルからなる複数のノズル列、すなわち、上述したC、M、Y、Kの各インクを吐出するノズル列NC、NM、NY、NKが形成されている。各ノズル列は、搬送方向ARに沿って並ぶ複数個のノズルNZを含んでいる。複数個のノズルNZは、搬送方向AR(+Y方向)の位置が互いに異なり、搬送方向ARに沿って所定のノズル間隔NTで並ぶ。ノズル間隔NTは、複数のノズルNZの中で搬送方向ARに隣り合う2個のノズルNZ間の搬送方向ARの長さである。これらのノズル列を構成するノズルのうち、最も上流側(-Y側)に位置するノズルNZを、最上流ノズルNZuとも呼ぶ。また、これらのノズルNZのうち、最も下流側(+Y側)に位置するノズルNZを、最下流ノズルNZdと呼ぶ。最上流ノズルNZuから最下流ノズルNZdまでの搬送方向ARの長さに、さらに、ノズル間隔NTを加えた長さを、ノズル長Dとも呼ぶ。ノズル長Dは、ノズル数を単位として、各ノズル列に含まれるノズル数で表される。なお、実際の製品では、複数個のノズルNZのうち、搬送方向ARの両端近傍のノズルNZを印刷に使用しない場合もあるが、本実施例では、ノズル長D分の全てのノズルNZを用いて印刷を行う場合を例として説明する。本実施例にて印刷に用いるノズルNZを使用可能ノズルと呼ぶ。
ノズル列NC、NM、NY、NKの主走査方向(図2(B)のX方向)の位置は、互いに異なり、搬送方向AR(図2(B)のY方向)の位置は、互いに重複している。例えば、図2(B)の例では、Yインクを吐出するノズル列NYの+X方向に、ノズル列NKが配置されている。
図3を参照して、搬送部140についてさらに説明する。図3は、用紙台145と複数個の押さえ部材146との斜視図である。図3(A)は、用紙Mが保持されていない状態を示し、図3(B)は、用紙Mが保持された状態を示している。用紙台145は、複数個の高支持部材HPと、複数個の低支持部材LPと、平板BBと、備えている。
平板BBは、主走査方向(X方向)と搬送方向(+Y方向)とにほぼ平行な板部材である。平板BBの上流側(-Y側)の端は、上流ローラ対142の近傍に位置している。平板BBの下流側(+Y側)の端は、下流ローラ対141の近傍に位置している。
図3(A)に示すように、複数個の高支持部材HPと複数個の低支持部材LPは、平板BB上に、X方向に沿って交互に並んでいる。すなわち、各低支持部材LPは、該低支持部材に隣接する2個の高支持部材HPの間に配置されている。各高支持部材HPと低支持部材LPは、Y方向に沿って延びるリブである。図2(A)に示すように、各高支持部材HPの上流側(-Y側)の端は、平板BBの上流側の端に位置している。各高支持部材HPの下流側(+Y側)の端は、平板BBのY方向の中央部に位置している。各低支持部材LPのY方向の両端の位置は、高支持部材HPのY方向の両端の位置と同じである。
複数個の押さえ部材146は、複数個の低支持部材LPの+Z側の位置に配置されている。複数個の押さえ部材146のX方向の位置は、複数個の低支持部材LPのX方向の位置と同じである。すなわち、各押さえ部材146のX方向の位置は、該押さえ部材146に隣接する2個の高支持部材HPの間に位置している。複数個の押さえ部材146は、+Y方向に向かうほど低支持部材LPに近づくように傾斜した板部材である。複数個の押さえ部材146のY方向の位置は、印刷ヘッド110よりも上流側(-Y側)であり、上流ローラ対142よりも下流側(+Y側)である。
図3(B)に示すように、用紙Mの搬送時には、複数個の高支持部材HPと、複数個の低支持部材LPは、印刷面とは反対側の面Mb側と対向し、面Mb側から用紙Mを支持する。複数個の押さえ部材146は、印刷面Maと対向し、印刷面Ma側から用紙Mを押さえる。このように、複数個の高支持部材HPと、複数個の低支持部材LPと、複数個の押さえ部材146と、は、用紙MをX方向に沿って波状に変形させた状態で保持する(図3(B))。そして、用紙Mは、印刷ヘッド110のノズル形成面111と対向する位置において、波状に変形された状態で搬送方向(+Y方向)に搬送される。用紙Mを波状に変形させると、Y方向に沿った変形に対する用紙Mの剛性を高めることができる。この結果、用紙MがY方向(搬送方向)に沿って反るように変形して、用紙Mが用紙台145から印刷ヘッド110側へ浮き上がることや用紙Mが用紙台145側へ垂れさがることを抑制することができる。このような用紙Mの変形を搬送方向変形とも呼ぶ。
用紙Mの搬送方向変形が生じると、ドットの形成位置のずれによって、印刷画像の画質低下、例えば、バンディングによる画質低下が引き起こされ得る。また、搬送方向変形に起因して、用紙Mの上流端Ed(図2(A))が浮き上がると、印刷ヘッド110に用紙Mの上流端Edが接触して、用紙Mが汚れ得る。図2(A)に示すように、用紙Mの上流側(-Y側)が押さえ部材146によって保持されず、用紙Mの下流側(+Y側)のみが下流ローラ対141によって保持された状態(片側保持状態とも呼ぶ)では、搬送方向変形に起因する用紙汚れが発生しやすい。
ここで、片側保持状態において、用紙Mが下流ローラ対141に保持されているY方向の位置Ydから用紙Mの上流端Edまでの長さを、片持用紙長Lyとも呼ぶ。片側保持状態では、片持用紙長Lyが長いほど用紙Mの上流端が印刷ヘッド110に近づきやすいので、片持用紙長Lyが長いほど搬送方向変形に起因する用紙汚れが発生しやすい。
ここで、用紙Mが複数個の押さえ部材146および支持部材HP、LPによって保持される態様は、用紙Mの主走査方向の長さによって異なる。図4は、第1実施例における用紙M1に対する印刷の説明図である。図4には、後述するヘッド位置P3での部分印刷時における複数個の押さえ部材146の位置SP(以下、特定位置SPとも呼ぶ)が示されている。用紙M1の主走査方向(X方向)の長さLxは、-X方向の端に位置する押さえ部材146l(図3)と、+X方向の端に位置する押さえ部材146r(図3)と、の間の距離とほぼ等しい。このために、用紙M1が用いられる場合には、印刷時には、複数個(図3の例では6個)の押さえ部材146の全てが、用紙M1と対向する、すなわち、対向部材として機能する。したがって、図4の特定位置SPl、SPrに示すように、印刷時には、用紙M1の-X方向の端Exlは、押さえ部材146lによって押さえられ、用紙M1の+X方向の端Exrは、押さえ部材146rによって押さえられる。
図5は、第1実施例における用紙M2に対する印刷の説明図である。図5には、図4と同様に、後述するヘッド位置P3での部分印刷時における複数個の押さえ部材146の特定位置SPが示されている。用紙M2の主走査方向(X方向)の長さL2は、用紙M1の主走査方向(X方向)の長さLxよりも僅かに短い。-X方向の端に位置する押さえ部材146lと+X方向の端に位置する押さえ部材146rとは、印刷時に用紙M2とは対向しない。すなわち、用紙M2が用いられる場合には、印刷時には、複数個(図3の例では6個)の押さえ部材146のうち、両端の2個の押さえ部材146l、146を除いた4個の押さえ部材146のみが対向部材として機能する。したがって、図5の特定位置SPl、SPrに示すように、印刷時には、用紙M2の-X方向の端Exlおよび+X方向の端Exrは、押さえ部材146l、146rによって押さえられない。
このために、用紙M1が用いられる場合には、用紙M1のX方向の両端Exl、Exrと、対向部材(押さえ部材146のうち用紙と対向する部材)と、の間の距離ΔLx(非押さえ長ΔLxとも呼ぶ)は、0である(図4)。一方、用紙M2が用いられる場合には、非押さえ長ΔLxは、0より大きな値である(図5)。このために、用紙M2が用いられる場合には、用紙M1が用いられる場合と比較して、押さえ部材146および支持部材HP、LPによって用紙が保持された場合に、X方向の両端Exl、Exrが上方(+Z方向)に向くように、用紙のX方向(主走査方向)に沿った変形が生じやすい。このような変形を用紙Mの主走査方向変形とも呼ぶ。
用紙Mの主走査方向変形が生じると、用紙Mの上流端Edの角Cl、Cr(図4、図5)が浮き上がりやすい。主走査方向変形に起因して、用紙Mの上流角Cl、Crが浮き上がると、印刷ヘッド110に用紙Mの上流角Cl、Crが接触して、用紙Mが汚れ得る。なお、用紙Mの上流側(-Y側)が押さえ部材146によって保持されていない片側保持状態では、用紙Mが主走査方向に沿って波状に変形しないので、用紙Mの主走査方向変形に起因する用紙汚れが生じにくい。本実施例では、主走査方向変形に起因する用紙汚れが問題になるのは、用紙Mの上流側(-Y側)が押さえ部材146によって保持され、用紙Mの下流側(+Y側)も下流ローラ対141によって保持された状態(両側保持状態とも呼ぶ)である。
ここで、両側保持状態において、印刷ヘッド110から用紙Mの上流端EdまでのY方向の距離ΔLyを、ヘッド離間長ΔLyと呼ぶ。図4、5には、後述するヘッド位置P3におけるヘッド離間長ΔLyが図示されている。ヘッド離間長ΔLyが短いほど、用紙Mの上流角Cl、Crが印刷ヘッド110に近くなるので、主走査方向変形に起因する用紙汚れが生じやすい。
なお、用紙Mの変形特性(用紙Mの変形しやすさなど)によって、主走査方向変形および搬送方向変形に起因する用紙汚れの生じやすさは異なる。用紙Mの変形特性は、用紙Mの材質、厚みによって変化するので、用紙Mの材質、厚みによって、主走査方向変形および搬送方向変形に起因する用紙汚れの生じやすさは異なる。以上の説明から解るように、主走査方向変形およびY方向の変形に起因する用紙汚れの生じやすさは、第1種の用紙(例えば、用紙M1)と、第1種の用紙とは少なくとも1つの特性(材質、厚み、主走査方向のサイズなど)が異なる第2種の用紙(例えば、用紙M2)と、の間で、互いに異なる。
本実施例では、後述するように、搬送方向変形に起因する用紙汚れと、主走査方向変形に起因する用紙汚れと、を適切に抑制するための工夫がなされている。
A-2.印刷処理
プリンタ200のCPU210(図1)は、操作部260を介してユーザによって入力される印刷指示に基づいて、印刷処理を実行する。印刷指示には、印刷すべき画像を示す画像データの指定が含まれる。印刷指示には、印刷に用いるべき用紙Mの種類の指定が含まれる。
プリンタ200のCPU210(図1)は、操作部260を介してユーザによって入力される印刷指示に基づいて、印刷処理を実行する。印刷指示には、印刷すべき画像を示す画像データの指定が含まれる。印刷指示には、印刷に用いるべき用紙Mの種類の指定が含まれる。
図6は、印刷処理のフローチャートである。S100では、CPU210は、印刷に用いるべき用紙Mの種類を特定する。本実施例で想定されている用紙Mは、規格などで規定された所定のサイズ(主走査方向および搬送方向の長さ)に裁断済みの紙(いわゆるカット紙)である。例えば、CPU210は、印刷指示に含まれる用紙Mの種類を示す情報を取得することによって、印刷に用いるべき用紙Mの種類を特定する。用紙Mの種類を示す情報は、例えば、用紙Mのサイズ(A4、B4、リーガル、レターなど)を示す情報や、用紙Mの材質や厚みに関連する紙種(普通紙、上質紙、コート紙など)を示す情報を含む。なお、用紙Mの種類は、例えば、印刷機構100に用紙のサイズや種類を検知するセンサを設けて、該センサによる検出結果に基づいて特定されても良い。
S105では、CPU210は、印刷に用いるべき用紙Mの種類に応じて、押さえ基準位置RPを決定する。押さえ基準位置RPは、S140の印刷データ出力処理において用いられる。押さえ基準位置RPは、用紙M上に定められる搬送方向ARの位置である。押さえ基準位置RPは、用紙Mの種類ごとに予め決定されており、押さえ基準位置RPを示す情報は、用紙Mの種類と対応付けて予めコンピュータプログラムPGに組み込まれている。図4には、用紙M1の押さえ基準位置RP1が図示されている。図5には、用紙M2の押さえ基準位置RP2が図示されている。図5には、用紙M1の押さえ基準位置RP1も図示されている。図5に示すように、押さえ基準位置RP1と押さえ基準位置RP2とは、ΔSだけ異なっていることが解る。
S110では、CPU210は、印刷指示によって指定される画像データを不揮発性記憶装置220から取得する。これに代えて、印刷指示および画像データは、端末装置300から取得されても良い。取得される画像データは、例えば、JPEG圧縮された画像データや、ページ記述言語で記述された画像データなどの各種のフォーマットを有する画像データである。
S120では、CPU210は、取得された画像データに対して、ラスタライズ処理を実行して、RGB画像データを生成する。これによって、本実施例の対象画像データとしてのRGB画像データが取得される。RGB画像データは、RGB値を画素ごとに含むビットマップデータである。RGB値は、例えば、赤(R)と緑(G)と青(B)との3個の成分値を含むRGB表色系の色値である。
S130では、CPU210は、RGB画像データを印刷データに変換する。具体的には、CPU210は、RGB画像データに対して色変換処理とハーフトーン処理とを実行する。色変換処理は、RGB画像データに含まれる複数個の画素のRGB値をCMYK値に変換する処理である。CMYK値は、印刷に用いられるインクに対応する成分値(本実施例では、C、M、Y、Kの成分値)を含むCMYK表色系の色値である。色変換処理は、例えば、RGB値とCMYK値との対応関係を規定する公知のルックアップテーブルを参照して実行される。ハーフトーン処理は、色変換済みの画像データを印刷データ(ドットデータとも呼ぶ)に変換する処理である。印刷データは、CMYKのそれぞれの色成分について、ドット形成状態を画素ごとに表すデータである。ドットデータの各画素の値は、例えば、「ドット無し」と「ドット有り」の2階調、あるいは、「ドット無し」「小」「中」「大」の4階調のドットの形成状態を示す。ハーフトーン処理は、ディザ法や誤差拡散法などの公知の手法を用いて実行される。
S140では、CPU210は、印刷データ出力処理を実行する。印刷データ出力処理は、後述する1回の部分印刷ごとに部分印刷データを生成し、該部分印刷データに各種の制御データを付加して印刷機構100に出力する処理である。制御データには、部分印刷の前に実行すべきシート搬送の搬送量TLを指定するデータが含まれる。印刷データ出力処理では、部分印刷データが、実行すべき部分印刷の回数分だけ出力される。印刷データ出力処理の詳細については、後述する。
これによって、CPU210は、印刷機構100に印刷画像PIを印刷させることができる。具体的には、CPU210は、ヘッド駆動部120と、主走査部130と、搬送部140と、を制御して、部分印刷とシート搬送とを、交互に繰り返し複数回に亘って実行させることによって印刷を行う。1回の部分印刷では、用紙Mを用紙台145上に停止させた状態で、1回の主走査を行いつつ、印刷ヘッド110のノズルNZから用紙M上にインクを吐出することによって、印刷画像の一部分が用紙Mに印刷される。1回のシート搬送では、印刷データ出力処理において決定される搬送量TLだけ用紙Mが搬送方向ARに搬送される。
図4、図5の印刷画像PIは、それぞれが図5のX方向(印刷時の主走査方向)に延び、Y方向(印刷時の搬送方向AR)の位置が互い異なる複数本のラスタラインRLを含んでいる。各ラスタラインRLは、複数個のドットが形成され得るラインである。
図4には、さらに、ヘッド位置P0~P3、すなわち、用紙Mに対する印刷ヘッド110の搬送方向の相対的な位置が図示されている。ヘッド位置P0~P3は、複数回の部分印刷のうち、最後に実行される4回の部分印刷のヘッド位置である。図4には、3回のシート搬送T0~T2が矢印で図示されている。例えば、シート搬送T0は、ヘッド位置P0にて実行される部分印刷の後に行われるシート搬送である。シート搬送T1、T2は、それぞれ、ヘッド位置P1、P2にて実行される部分印刷の後に行われるシート搬送である。
図5には、ヘッド位置P0~P4が図示されている。ヘッド位置P0~P4は、複数回の部分印刷のうち、最後に実行される5回の部分印刷のヘッド位置である。このように、用紙M2が用いられる場合(図5)には、用紙M1が用いられる場合(図4)と比較して、部分印刷の回数が1回多い。図5には、4回のシート搬送T0~T3が矢印で図示されている。
図4、図5のヘッド位置のうち、ハッチングされている範囲は、該ヘッド位置にて実行される部分印刷にて印刷に使用されるノズルNZ(使用ノズルとも呼ぶ)が位置する範囲である。使用ノズルは、使用可能ノズル(本実施例ではノズル長D分の全ノズル)のうちの全部または一部である。図4、図5の例では、ヘッド位置P0~P2にて実行される部分印刷では、全ての使用可能ノズルが使用されている。ヘッド位置P3にて実行される部分印刷では、上流側(-Y側)の一部のノズルNZのみが使用され、下流側(+Y側)の一部のノズルNZは使用されていない。図5の例では、ヘッド位置P4にて実行される部分印刷では、下流側(+Y側)の一部のノズルNZのみが使用され、上流側(-Y側)の一部のノズルNZは使用されていない。
用紙M上に形成される印刷画像PIは、複数個の部分領域を含む。例えば、図4の印刷画像PI1は、部分領域NA0~N3を含む。図5の印刷画像PI2は、部分領域NA0~NA4を含む。各部分領域は、領域内の各ラスタラインRLが1回の部分印刷のみで印刷される。例えば、図4、図5の部分領域NA1の各ラスタラインRLには、ヘッド位置P1で行われる部分印刷でドットが形成される。
本実施例では、出来るだけ、用紙Mが押さえ部材146によって押さえられている状態で印刷を行うために、最後の部分印刷、もしくは、最後から1回前の部分印刷を、用紙Mの上流端の近傍の特定位置SPが押さえ部材146によって押さえられた状態で行う。図4の例では、最後の部分印刷(ヘッド位置P3にて実行される部分印刷)が、特定位置SPが押さえ部材146によって押さえられた状態で行なわれる。図5の例では、最後から1回前の部分印刷(ヘッド位置P3にて実行される部分印刷)が、特定位置SPが押さえ部材146によって押さえられた状態で行なわれ、最後の部分印刷(ヘッド位置P4にて実行される部分印刷)が、片側保持状態で行われる。以下では、押さえ部材146が用紙Mの特定位置SPを押さえる状態となるヘッド位置P3を、端部押さえヘッド位置とも呼ぶ。
A-3.印刷データ出力処理
次に、図6のS140の印刷データ出力処理について説明する。印刷データ出力処理は、上述したように、S130にて生成される印刷データを用いて、部分印刷ごとに部分印刷データを生成し、該部分印刷データに各種の制御データを付加して印刷機構100に出力する処理である。図7は、印刷データ出力処理のフローチャートである。
次に、図6のS140の印刷データ出力処理について説明する。印刷データ出力処理は、上述したように、S130にて生成される印刷データを用いて、部分印刷ごとに部分印刷データを生成し、該部分印刷データに各種の制御データを付加して印刷機構100に出力する処理である。図7は、印刷データ出力処理のフローチャートである。
図6のS130にて生成される印刷データは、印刷すべき印刷画像PI(図4、図5)を示している。このため、印刷データは、印刷画像PIに含まれる複数本のラスタラインRLに対応する複数個のラスタデータを含んでいる。
S200では、CPU210は、複数個のラスタデータのうち、1本の注目ラスタラインに対応するラスタデータ(以下、注目ラスタデータとも呼ぶ)を取得する。注目ラスタラインは、印刷画像PIに含まれ、搬送方向ARに並ぶ複数本のラスタラインRLから、印刷時の搬送方向ARの下流側(例えば、図4、図5の+Y側)から順次に1本ずつ選択される。
ここで、注目ラスタラインを印刷する部分印刷を注目部分印刷とも呼ぶ。例えば、図4、図5のラスタラインRL1が、注目ラスタラインである場合には、注目部分印刷は、ヘッド位置P0で行われる部分印刷である。ラスタラインRL2が、注目ラスタラインである場合には、注目部分印刷は、ヘッド位置P1で行われる部分印刷である。注目部分印刷において注目ラスタライン上のドットの形成に用いられるノズルNZを注目ノズルとも呼ぶ。例えば、最初に処理されるラスタラインRL、すなわち、印刷画像PIの最下流に位置するラスタラインRLが注目ラスタラインである場合には、注目ノズルは、使用可能ノズルのうちの最下流に位置するノズルNZである。
S210では、CPU210は、注目ラスタデータを注目ノズルに割り当てる。
S220では、CPU210は、注目ノズルを示す番号を更新する。すなわち、CPU210は、注目ノズルを示す番号を、現在の注目ノズルより1つだけ上流側のノズルNZの番号に変更する。
S230では、CPU210は、注目部分印刷における全ての使用ノズルにラスタデータを割り当てたか否かを判断する。具体的には、更新後の注目ノズルを示す番号が、使用ノズルのうちの最上流のノズルの番号を超えた場合に、全ての使用ノズルにラスタデータが割り当てられたと判断される。ラスタデータが割り当てられていない使用ノズルがある場合には(S230:NO)、S200に戻る。
全ての使用ノズルにラスタデータが割り当てられた場合には(S230:YES)、S235にて、CPU210は、注目部分印刷のための部分印刷データと、搬送量データと、を印刷機構100に出力する。部分印刷データは、使用ノズルに割り当てられたラスタデータ群である。搬送量データは、搬送量TLを示す制御データである。注目部分印刷が最初の部分印刷である場合には、搬送量TLは、印刷画像PIの下流端を印刷すべき用紙M上の位置と、使用ノズルのうちの下流端のノズルNZの位置と、が一致するように、決定される。注目部分印刷が2回目の部分印刷である場合には、搬送量TLは、使用可能ノズルのノズル数分の長さ、すなわち、ノズル長Dである。この搬送量は、2回目の部分印刷のヘッド位置が端部押さえヘッド位置になることはない、という前提で予め決定されている。注目部分印刷が3回目以降の部分印刷である場合には、搬送量TLは、後述するS280にて決定される。印刷機構100は、部分印刷データと搬送量データとを受け取ると、搬送量データによって示される搬送量TLだけシート搬送を実行し、その後に、部分印刷データを用いて部分印刷を実行する。
S240では、CPU210は、全ての部分印刷データを出力したか否かを判断する。全ての部分印刷データが出力された場合には(S240:YES)、CPU210は、印刷データ出力処理を終了する。全ての部分印刷データが出力されていない場合には(S240:NO)、CPU210は、S245にて、注目部分印刷を更新する。すなわち、注目部分印刷を、現在の注目部分印刷の次の注目部分印刷とする。具体的には、次の注目部分印刷の注目ノズルの初期値が、新たに注目ノズルの番号に設定される。次の注目部分印刷の対応ノズルの初期値は、後述するS285にて決定済みである。
S250では、CPU210では、注目部分印刷は、最終対向部分印刷であるか否かを判断する。最終対向部分印刷は、用紙Mが押さえ部材146と対向する状態で実行される最後の部分印刷であり、具体的には、端部押さえヘッド位置(図4、図5のヘッド位置P3)にて実行される部分印刷である。注目部分印刷が最終対向部分印刷でない場合には(S250:NO)、S260に処理を進める。
S260では、CPU210は、注目部分印刷における押さえ基準位置RPの超過量VOを算出する。超過量VOは、注目部分印刷におけるヘッド位置における使用可能ノズルのうちの最上流のノズルNZが、押さえ基準位置RPよりも上流側に位置する場合において、押さえ基準位置RPから最上流のノズルNZまでの長さを示す。押さえ基準位置RP(図4、図5)は、上述したように用紙M上に定められる搬送方向ARの位置であり、図6のS105にて決定済みである。注目部分印刷における最上流のノズルNZが押さえ基準位置RPよりも上流側に位置する場合に、注目部分印刷の次の部分印刷は、端部押さえヘッド位置(図4、図5のヘッド位置P3)にて実行される最終対向部分印刷である。
図4、図5の例では、ヘッド位置P2にて実行される部分印刷が注目部分印刷である場合には、ヘッド位置P2における最上流のノズルNZは、押さえ基準位置RPよりも上流側に位置するので、図4、図5に示すように、0より大きな超過量VOが算出される。すなわち、注目部分印刷の次の部分印刷が、最終対向部分印刷である場合には、0より大きな超過量VOが算出される。超過量VOの単位は、例えば、ノズル数(ラスタライン数)で示される。
最上流のノズルが、押さえ基準位置RPと同じ、もしくは、押さえ基準位置RPよりも下流側に位置する場合には、超過量VOは0である。図4、図5の例では、ヘッド位置P0、P1にて実行される部分印刷が注目部分印刷である場合には、ヘッド位置P0、P1における最上流のノズルは、押さえ基準位置RPよりも下流側に位置するので、超過量VOは0である。
S265では、CPU210は、ノズルシフト量NSを超過量VOに設定する。ノズルシフト量NSは、注目部分印刷の次の部分印刷において、使用可能ノズルのうち、下流側において使用しないノズルNZ(下流側不使用ノズルとも呼ぶ)の数を示す。ノズルシフト量NSが0である場合には、下流側不使用ノズルは設けられない。ノズルシフト量NSが1以上である場合には、使用可能ノズルのうち、下流側(図4、図5の+Y側)のノズルシフト量NS分のノズルNZは、下流側不使用ノズルである。したがって、この場合には、使用可能ノズルのうち、下流側不使用ノズルを除いたノズルが、注目部分印刷の次の部分印刷の使用ノズルである。
注目部分印刷が最終対向部分印刷である場合には(S250:YES)、S270にて、CPU210は、ノズルシフト量NSを0に設定する。注目部分印刷が最終対向部分印刷である場合において、次の部分印刷が行われる場合には、次の部分印刷は、最後の部分印刷となる(図5)。最後の部分印刷では、使用可能ノズルのうちの下流側に不使用ノズルを設定しないために、ノズルシフト量NSは0に設定される。
S280では、CPU210は、ノズルシフト量NSに基づいて、注目部分印刷の後に行われるシート搬送の搬送量TLを決定する。搬送量TLは、ノズル数を単位として算出される。搬送量は、使用可能ノズルのノズル数から、ノズルシフト量NSを減じた値である。本実施例では、使用可能ノズルのノズル数は、ノズル長Dであるので、搬送量TLは、(D-NS)である。この結果、図4、図5に示すように、最終対向部分印刷の直前のシート搬送(図4、図5のシート搬送T2)の搬送量TLは、ノズル長Dより小さな量に調整されるので、最終対向部分印刷が実行される際に、端部押さえヘッド位置に印刷ヘッド110が位置するように、用紙Mが搬送される。そして、最終対向部分印刷の直前のシート搬送を除いたシート搬送(図4、図5のシート搬送T0、T1、T3)の搬送量TLは、ノズル長Dに決定される。ここで、最終対向部分印刷の直前のシート搬送T2の搬送量TLを、特定搬送量とも呼ぶ。
S285では、CPU210は、注目部分印刷の次の部分印刷の注目ノズルの番号を初期値に設定する。初期値は、使用可能ノズルのうち、下流端からノズルシフト量NSだけ上流側に位置するノズルの番号である。注目部分印刷の次の部分印刷が、最終対向部分印刷(例えば、図4、図5のヘッド位置P3での部分印刷)である場合には、ノズルシフト量NSは0より大きい。このために、この場合には、初期値は、使用可能ノズルのうちの下流端のノズルNZよりも上流側のノズルNZの番号である。注目部分印刷の次の部分印刷が、最終対向部分印刷とは異なる部分印刷である場合には、ノズルシフト量NSは、0である。このために、この場合には、初期値は、使用可能ノズルのうちの下流端のノズルNZである。
CPU210は、S285の後に、処理をS200に戻す。
以上の印刷データ出力処理が行われることによって、押さえ基準位置RPから1本のラスタラインRL分だけ上流側(-Y側)に、使用可能ノズルのうちの下流端のノズルNZが位置するように、端部押さえヘッド位置(図4、図5のヘッド位置P3)が決定される(図4、図5)。例えば、用紙M2が使用される場合の押さえ基準位置RP2(図5)は、用紙M1が使用される場合の押さえ基準位置RP1(図4)よりもΔSだけ下流側に設定されている。このために、用紙M2が使用される場合の端部押さえヘッド位置(図5のヘッド位置P3)は、用紙M1が使用される場合の端部押さえヘッド位置(図4のヘッド位置P3)よりもΔSだけ下流側に位置する。
用紙M1が使用される場合には、最終対向部分印刷にて、印刷画像PI1の上流端を印刷することができる(図4)。用紙M2が使用される場合には、最終対向部分印刷にて、印刷画像PI2の上流端を含む一部分を印刷することができない。このために、用紙M2が使用される場合には、最終対向部分印刷の後に、片側保持状態となるヘッド位置P4にて最後の部分印刷が実行される(図5)。
印刷ヘッド110と押さえ部材146との搬送方向の位置関係は、物理的に固定されている。このために、端部押さえヘッド位置が異なる場合には、用紙Mの対向長さも異なる。ここで、用紙Mの対向長さは、用紙Mのうち、端部押さえヘッド位置において押さえ部材146と対向する部分の搬送方向の長さである。具体的には、本実施例では、用紙M2が使用される場合の対向長さd2は、用紙M1が使用される場合の対向長さd1よりもΔSだけ長い。
本実施例では、上述した搬送方向変形に起因する用紙汚れと、主走査方向変形に起因する用紙汚れと、を適切に抑制するために、用紙Mの種類ごとに適切な押さえ基準位置RPを設定することによって用紙Mの種類ごとに適切な対向長さを設定している。以下では、押さえ基準位置RPの設定方法について説明する。
図8は、第1実施例の押さえ基準位置RPの設定方法の説明図である。図8(A)は、用紙M1が使用される場合における、押さえ基準位置RPと、不具合の確率と、の関係を示すグラフである。図8(B)は、用紙M2が使用される場合における、押さえ基準位置RPと、不具合の確率と、の関係を示すグラフである。
グラフの縦軸は、不具合の確率である。不具合の確率として、最後の部分印刷にて搬送方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R1と、最後の部分印刷にて主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R2と、最後から1回前の部分印刷にて主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R3と、が考慮される。最後から1回前の部分印刷は、必ず両側保持状態で行われることから、最後から1回前の部分印刷にて搬送方向変形が生じる確率は常に0であると考えられるので、当該確率は考慮しない。
グラフの横軸は、用紙の下端から押さえ基準位置RPまでの距離Hである。距離HがA(グラフの左端)である押さえ基準位置RPが採用される場合には、対向長さが下限値d1となるように端部押さえヘッド位置が設定される(図4)。対向長さの下限値d1は、用紙Mの上流端を押さえ部材146にて確実に押さえるために少なくとも必要な長さであり、用紙Mの搬送誤差を考慮して決定されている。距離Hが(A+D)(Dはノズル長D)よりも大きくなるように、押さえ基準位置RPが設定されることはない。
距離HがAである場合(H=A)には、端部押さえヘッド位置(例えば、図4のヘッド位置P3)にて、印刷画像PIの上流端を印刷できる(図4)。このために、この場合には、端部押さえヘッド位置での最終対向部分印刷が最後の部分印刷になり、片側保持状態での部分印刷は行われない。このために、距離HがAである位置に、押さえ基準位置RPが設定される場合には、最後の部分印刷にて搬送方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R1は、0である。
距離HがAよりも大きい場合には(H>A)、端部押さえヘッド位置(図5のヘッド位置P3)での最終対向部分印刷にて、印刷画像PIの上流端を印刷できない(図5)。このために、この場合には、片側保持状態での部分印刷が最後の部分印刷として行われるので、最後の部分印刷にて搬送方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R1は、0より大きくなる。片側保持状態では、上述したように、片持用紙長Lyが長いほど搬送方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R1が高くなる。そして、押さえ基準位置RPが用紙Mの上流端から離れるほど、端部押さえヘッド位置が下流側にシフトするので、最後の部分印刷におけるヘッド離間長ΔLyが長くなる。したがって、搬送方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R1は、距離Hが大きくなるほど高くなる(グラフのA<H<Bの範囲)。しかし、距離HがBより大きくなると、最後の部分印刷にて用紙Mの上流端が押さえ部材146で押さえられ始めるので、搬送方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R1は徐々に0まで低下する(グラフのB<H<(A+D)の範囲)。なお、搬送方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R1は、用紙M1であっても用紙M2であっても同じである。
用紙M1が用いられる場合には、図4に示すように、両側保持状態において、用紙M1のX方向の端Exl、Exrが押さえ部材146で押さえられる。また、片側保持状態では、上述のように、主走査方向変形に起因する用紙汚れは問題にならない。このために、用紙M1が用いられる場合には、両側保持状態でも片側保持状態でも、主走査方向変形は生じにくい。このために、用紙M1が用いられる場合には、主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R2、R3は、0である(図8(A))。
このために、用紙M1が用いられる場合には、図8(A)に示すように、搬送方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R1が最小となるように、距離Hは、Aに決定される。すなわち、用紙M1が用いられる場合における押さえ基準位置RP1は、用紙M1の上流端から距離Aだけ離れた位置に設定される(図4)。
用紙M2が用いられる場合には、図5に示すように、両側保持状態において、用紙M2のX方向の端Exl、Exrが押さえ部材146で押さえられない。このために、用紙M2が用いられる場合には、両端保持状態において、主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生し得る。用紙M2が用いられる場合であっても片側保持状態では、上述のように、主走査方向変形に起因する用紙汚れは問題にならない。
両端保持状態において主走査方向変形が生じた場合には、用紙M2の上流角Cl、Crが印刷ヘッド110に接触することで用紙汚れが発生する。このために、両端保持状態において、主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率は、用紙M2の上流角Cl、Crが印刷ヘッド110に近いほど高くなる。距離HがAである場合には、上述のように、端部押さえヘッド位置での部分印刷が最後の部分印刷である。そして、この場合には、両側保持状態において用紙M2の上流角Cl、Crが印刷ヘッド110に最も近い。このために、距離HがAである場合には、最後の部分印刷にて主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R2が最大となる(図8(B))。そして、距離HがAより大きくなると、端部押さえヘッド位置での部分印刷の後に、片側保持状態で最後の部分印刷を行う必要がある。片側保持状態では、主走査方向変形に起因する用紙汚れは問題にならないから、距離HがAより大きくなると、最後の部分印刷にて主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R2は、0になる(グラフのA<H<Bの範囲)。そして、距離HがBより大きくなると、最後の部分印刷にて用紙M2の上流端が押さえ部材146で押さえられ始めて主走査方向変形が生じ始めるので、最後の部分印刷にて主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R2は徐々に大きくなる(グラフのB<H<(A+D)の範囲)。
距離HがAである場合には、最後の部分印刷が端部押さえヘッド位置での最終対向部分印刷であるために、最後から1回前の部分印刷は、用紙M2の上流角Cl、Clrが印刷ヘッド110から十分に離れた状態で行われる。このために、距離HがAである場合には、最後から1回前の部分印刷にて主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R3は0である。
距離HがAよりも大きい場合には(H>A)、最後の部分印刷は、片側保持状態で行われるので、最後から1回前の部分印刷が端部押さえヘッド位置での最終対向部分印刷である(例えば、図5)。このために、距離HがAよりも大きい場合には、最後から1回前の部分印刷にて主走査方向変形が発生し得る。そして、距離HがAよりも大きい範囲では、距離Hが小さいほど用紙Mの上流端が印刷ヘッド110に近く、距離Hが大きくなるに連れて用紙Mの上流端が印刷ヘッド110から離れる。このために、距離HがAよりも大きい範囲では、距離Hが小さいほど主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R3が高く、距離Hが大きくなるに連れて確率R3が低下し、0になる(図8(B))。
このために、用紙M2が用いられる場合には、搬送方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R1と、主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R2、R3と、の両方が小さくなるように、距離Hが決定される。本実施例では、図8(B)に示すように、距離Hが(A+ΔS)に決定される。すなわち、用紙M2が用いられる場合における押さえ基準位置RP2は、用紙M2の上流端から距離(A+ΔS)だけ離れた位置に設定される(図5)。
以上の説明から解るように、本実施例によれば、CPU210は、印刷機構100に印刷画像PIを印刷させる際に、用紙Mが押さえ部材146と対向する状態で実行される最後の部分印刷である最終対向部分印刷を実行させ、最終対向部分印刷を実行させる前に、用紙Mを特定搬送量(D-NS)搬送させる。CPU210は、用紙Mの主走査方向の端Exr、Exlの位置と、押さえ部材146の主走査方向の位置と、に応じて、用紙Mの対向長さが変化するように、特定搬送量を制御する(図4、図5)。具体的には、用紙Mの主走査方向の長さLxに応じて、用紙Mの主走査方向の端Exr、Exlの位置と、押さえ部材146の主走査方向の位置と、の位置関係が異なる(図4、図5)ので、用紙Mの用紙Mの主走査方向の長さLxに応じて異なる押さえ基準位置RPが設定される(図6のS105、図4、図5)。これによって、用紙Mの主走査方向の端Exr、Exlの位置と、押さえ部材146の主走査方向の位置と、に応じて、用紙Mの対向長さが変化する(図4、図5)。
上述したように、主走査方向変形に起因する用紙汚れの発生しやすさは、用紙Mの主走査方向の端の位置と押さえ部材146の主走査方向の位置とに応じて変化する。また、用紙Mの対向長さが長いほど用紙の上流角Cl、Crが印刷ヘッド110から離れるので、主走査方向変形に起因する用紙汚れは発生し難くなる。本実施例によれば、用紙Mの主走査方向の端Exr、Exlの位置と押さえ部材146の主走査方向の位置とに応じて、印刷媒体の対向長さを変化させる。この結果、例えば、用紙Mの主走査方向の端Exr、Exlの位置と押さえ部材146の主走査方向の位置が、用紙汚れなどの不具合が発生しやすい位置関係にある場合には、用紙Mの対向長さを長くして、不具合を抑制することができる。したがって、用紙Mの変形に起因する不具合を抑制することができる。
さらには、図4に示すように、用紙Mの対向長さを短くすることで、部分印刷の回数を減らし得る。このために、例えば、用紙Mの主走査方向の端Exr、Exlの位置と押さえ部材146の主走査方向の位置が、用紙汚れなどの不具合が発生し難い位置関係にある場合には用紙Mの対向長さを短くすることで、印刷速度が低下することを抑制することができる。
さらに、上記実施例によれば、CPU210は、さらに、最終対向部分印刷(図5のヘッド位置P3での部分印刷)の後に、用紙Mを搬送させ(図5のシート搬送T3)、その後に、用紙Mが押さえ部材146と対向しない状態(片側保持状態)で実行される非対向部分印刷(図5のヘッド位置P4での部分印刷)を実行させる。非対向部分印刷は、使用可能な複数個のノズルNZのうち、搬送方向の下流端のノズルNZを用い、搬送方向の上流端のノズルNZを用いずに、実行される(図5)。具体的には、図5のシート搬送T3をノズル長Dとすることで、搬送方向の下流側の一部のノズルNZのみを用いて図5のヘッド位置P4での部分印刷を実行できる。
上記構成によれば、非対向部分印刷の際に、ヘッド離間長ΔLy(図2(A))を短くできるので、非対向部分印刷の際に、搬送方向変形に起因する用紙汚れを抑制できる。
さらに、本実施例によれば、特定搬送量(シート搬送T3の搬送量TL)は、用紙Mの主走査方向の端Exr、Exlと、対向部材(押さえ部材146のうち、用紙Mと対向する部材)との主走査方向の距離(図4、図5の非押さえ長ΔLx)に応じて異なる。すなわち、特定搬送量は、非押さえ長ΔLxが第1の距離(例えば、図4の非押さえ長ΔLx=0)である場合には、対向長さがd1(図4)になるように制御される。そして、特定搬送量は、非押さえ長ΔLxが第1の距離よりも長い第2の距離(例えば、図5の非押さえ長ΔLx>0)である場合には、対向長さがd1よりも長いd2(図5)になるように制御される。
上述のように、非押さえ長ΔLxが長いほど、主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生しやすい。本実施例によれば、非押さえ長ΔLxが長く、主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生しやすい場合には、用紙Mの上流角Cl、Crが印刷ヘッド110から離れるように対向長さを長くすることで、主走査方向変形に起因する用紙汚れを抑制することができる。
さらに、本実施例によれば、特定搬送量(シート搬送T3の搬送量TL)は、用紙Mの主走査方向の端Exr、Exlと押さえ部材146とが対向する場合(図4)には、用紙Mの対向長さがd1になるように制御され、用紙Mの主走査方向の端Exr、Exlと押さえ部材146とが対向しない場合(図5)には、用紙Mの対向長さがd1よりも長いd2になるように制御される。
上述のように、用紙Mの主走査方向の端Exr、Exlと押さえ部材146とが対向しない場合には、用紙Mの主走査方向の端Exr、Exlと押さえ部材146とが対向する場合よりも、主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生しやすい。本実施例によれば、端Exr、Exlと押さえ部材146とが対向せず、主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生しやすい場合には、用紙Mの上流角Cl、Crが印刷ヘッド110から離れるように対向長さを長くすることで、主走査方向変形に起因する用紙汚れを抑制することができる。
さらに、上記実施例では、用紙Mの種類に応じて、押さえ基準位置RPを変えることで、対向長さを変えている(図6のS106、図4、図5)。すなわち、特定搬送量(シート搬送T3の搬送量TL)は、用紙Mが第1種の用紙(例えば、用紙M1)である場合には、用紙Mの対向長さがd1になるように制御され、用紙Mが第1種の印刷媒体とは異なる第2種の印刷媒体(例えば、用紙M2)である場合には、用紙Mの対向長さがd1とは異なるd2になるように制御される、印刷装置。
用紙Mの種類(例えば、材質、厚み、サイズ)によって、用紙Mの撓みやすさ、押さえ部材146との位置関係が異なるので、主走査方向変形に起因する用紙汚れや搬送方向変形に起因する用紙汚れの発生しやすさも異なる。本実施例によれば、用紙Mの種類に応じて、押さえ基準位置RPを変えることで、例えば、主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生しやすい用紙Mが用いられる場合ほど、用紙Mの上流角Cl、Crが印刷ヘッド110から離れるようにすることができるので、例えば、主走査方向変形に起因する用紙汚れを抑制することができる。
本実施例では、第1種の印刷媒体(例えば、用紙M1)と第2種の印刷媒体(例えば、用紙M2)とは、少なくとも主走査方向の長さLx(図4、図5)が異なる。上述のように、用紙Mの主走査方向の長さLxが異なる場合には、用紙Mの主走査方向の端Exr、Exlの位置と、押さえ部材146の主走査方向の位置との位置関係が異なる。上記構成によれば、用紙Mの主走査方向の長さLxに応じて用紙Mの対向長さを変えることで、用紙Mの主走査方向の端Exr、Exlの位置と、押さえ部材146の主走査方向の位置との位置関係に応じて、用紙Mの対向長さを変えることができる。したがって、用紙Mの主走査方向の長さLxに応じて、主走査方向変形に起因する用紙汚れを適切に抑制することができる。
本実施例では、押さえ部材146は、用紙Mを主走査方向に沿って波状に変形させた状態で保持するための部材である(図3)。この構成では、用紙Mの主走査方向の端Exr、Exlが印刷ヘッド110に向かうように、用紙Mが変形され得るので、主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生しやすい。本実施例によれば、主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生しやすい場合に、主走査方向変形に起因する用紙汚れを適切に抑制することができる。
さらに、本実施例では、図8を参照して説明したように、用紙Mの対向長さは、搬送方向変形に起因して用紙汚れが発生する第1の確率(例えば、確率R1)と、主走査方向変形に起因して用紙汚れが発生する第2の確率(例えば、R2、R3)と、に基づいて、第1の確率と第2の確率との両方を抑制できるように、決定されている。この結果、用紙汚れを適切に抑制することができる。なお、用紙汚れは用紙が印刷ヘッド110に接触することで発生するので、用紙汚れが発生する確率は、用紙が印刷ヘッド110に接触する確率とも言うことができる。
B.第2実施例
図9は、第2実施例における用紙M1に対する印刷の説明図である。上記第1実施例では、対向長さが下限値d1に設定される場合には、最終対向部分印刷にて印刷画像PIの上流端を印刷することができるので、最終対向部分印刷が最後の部分印刷となる(図4)。第2実施例では、印刷機構の構成が異なり、印刷ヘッド110と押さえ部材146bとの間の搬送方向の距離hsb(図9)が、第1実施例の印刷ヘッド110と押さえ部材146との間の搬送方向の距離hs(図4)と比較して長い。このために、第2実施例では、対向長さが下限値db1に設定される場合であっても、最終対向部分印刷にて印刷画像PIの上流端を印刷することができない。このために、第2実施例では、対向長さが下限値db1に設定される場合であっても、最終対向部分印刷の後に、最後の部分印刷として片側保持状態での部分印刷(図9のヘッド位置P4での部分印刷)が実行される。
図9は、第2実施例における用紙M1に対する印刷の説明図である。上記第1実施例では、対向長さが下限値d1に設定される場合には、最終対向部分印刷にて印刷画像PIの上流端を印刷することができるので、最終対向部分印刷が最後の部分印刷となる(図4)。第2実施例では、印刷機構の構成が異なり、印刷ヘッド110と押さえ部材146bとの間の搬送方向の距離hsb(図9)が、第1実施例の印刷ヘッド110と押さえ部材146との間の搬送方向の距離hs(図4)と比較して長い。このために、第2実施例では、対向長さが下限値db1に設定される場合であっても、最終対向部分印刷にて印刷画像PIの上流端を印刷することができない。このために、第2実施例では、対向長さが下限値db1に設定される場合であっても、最終対向部分印刷の後に、最後の部分印刷として片側保持状態での部分印刷(図9のヘッド位置P4での部分印刷)が実行される。
図10は、第2実施例における用紙M2に対する印刷の説明図である。第2実施例では、用紙M2が用いられる場合の対向長さdb2は、第1実施例と同様に、用紙M1が用いられる場合の対向長さdb1よりも長い。
図11は、第2実施例の押さえ基準位置RPの設定方法の説明図である。図10(A)は、用紙M1が使用される場合における、押さえ基準位置RPと、不具合の確率と、の関係を示すグラフである。図10(B)は、用紙M2が使用される場合における、押さえ基準位置RPと、不具合の確率と、の関係を示すグラフである。
第2実施例においても第1実施例と同様に、最後の部分印刷にて搬送方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R1と、最後の部分印刷にて主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R2と、最後から1回前の部分印刷にて主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R3と、が考慮されて、押さえ基準位置RPが設定される。
距離HがAb(グラフの左端)である押さえ基準位置RPが採用される場合には、対向長さが下限値db1となるように端部押さえヘッド位置が設定される。対向長さの下限値db1は、例えば、第1実施例の下限値d1と同一である。押さえ基準位置RPより上流側(-Y側)に少なくとも一部のノズルNZが位置するヘッド位置にて行われる部分印刷の後に行われる部分印刷の回数は、2回以下である。このために、用紙の下端から押さえ基準位置RPまでの距離Hが2D(Dはノズル長D)よりも大きくなるように、押さえ基準位置RPが設定されることはない。
距離HがAbである場合(H=Ab)には、片側保持状態での最後の部分印刷が行われる際に、搬送方向変形に起因する用紙汚れが発生し得るので、当該用紙汚れの確率R1は、0より大きくなる。そして、押さえ基準位置RPが用紙Mの下端から離れるほど、端部押さえヘッド位置が下流側にシフトするので、最後の部分印刷におけるヘッド離間長ΔLyが長くなる。したがって、搬送方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R1は、距離Hが大きくなるほど高くなる(グラフのAb<H<2Dの範囲)。搬送方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R1は、用紙M1であっても用紙M2であっても同じである(図11(A)、図11(B))。
用紙M1が用いられる場合には、図9に示すように、両側保持状態において、用紙M1のX方向の端Exl、Exrが押さえ部材146で押さえられる。また、片側保持状態では、上述のように、主走査方向変形に起因する用紙汚れは問題にならない。このために、用紙M1が用いられる場合には、両側保持状態でも片側保持状態でも、主走査方向変形は生じにくい。このために、用紙M1が用いられる場合には、主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R2、R3は、0である(図11(A))。
このために、用紙M1が用いられる場合には、図11(A)に示すように、搬送方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R1が最小となるように、距離Hは、Abに決定される。すなわち、用紙M1が用いられる場合における押さえ基準位置RP1は、用紙M1の上流端から距離Abだけ離れた位置に設定される(図9)。
用紙M2が用いられる場合には、図10に示すように、両側保持状態において、用紙M2のX方向の端Exl、Exrが押さえ部材146で押さえられない。このために、用紙M2が用いられる場合には、両端保持状態において、主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生し得る。用紙M2の上流角Cl、Crが印刷ヘッド110に近いほど、両端保持状態で行われる最後から1回前の部分印刷にて、主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R3は、高くなる。距離Hが短いほど、最後から1回前の部分印刷にて、用紙M2の上流角Cl、Crが印刷ヘッド110に近くなる。このために、図11(B)の例では、距離HがAbであるときに、確率R3が最も高く、距離Hが大きくなるに連れて確率R3が低下して0になる。
用紙M2が用いられる場合であっても片側保持状態では、上述のように、主走査方向変形に起因する用紙汚れは問題にならない。このために、片側保持状態で行われる最後の部分印刷にて、主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R2は0である。
このために、用紙M2が用いられる場合には、最後の部分印刷にて搬送方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R1と、最後から1回前の部分印刷にて主走査方向変形に起因する用紙汚れが発生する確率R3と、の両方が小さくなるように、距離Hが決定される。本実施例では、図11(B)に示すように、距離Hが(Ab+ΔSb)に決定される。すなわち、用紙M2が用いられる場合における押さえ基準位置RP2は、用紙M2の上流端から距離(Ab+ΔSb)だけ離れた位置に設定される(図10)。この結果、最終対向部分印刷における用紙M2の対向長さは、下限値db1より大きなdb2に設定される。
以上の説明から解るように、第2実施例においても、用紙M1が用いられる場合と用紙M2が用いられる場合とのそれぞれで、適切な対向長さ(db1またはdb2)が設定される。この結果、主走査方向変形に起因する用紙汚れと搬送方向変形に起因する用紙汚れとの両方を適切に抑制することができる。
C.変形例
(1)上記各実施例では、用紙M1と用紙M2とは、主走査方向の長さLxが異なっており、該主走査方向の長さLxに応じて、最終対向部分印刷における用紙Mの対向長さが異なっている。これに代えて、例えば、用紙M1と用紙M2とのサイズが同じであっても、材質や厚みの少なくとも一方が異なる場合には、最終対向部分印刷における用紙Mの対向長さを変えても良い。例えば、用紙M1と用紙M2とのサイズが同じであっても材質や厚みの少なくとも一方が異なる場合には、用紙の変形特性(撓みやすさ、剛性など)が異なるので、上述した確率R1、R2、R3(図8、図11)が用紙M1と用紙M2との間で異なるためである。これによって、材質および厚みの少なくとも一方に応じて対向長さを変えることで、用紙汚れを適切に抑制することができる。
(1)上記各実施例では、用紙M1と用紙M2とは、主走査方向の長さLxが異なっており、該主走査方向の長さLxに応じて、最終対向部分印刷における用紙Mの対向長さが異なっている。これに代えて、例えば、用紙M1と用紙M2とのサイズが同じであっても、材質や厚みの少なくとも一方が異なる場合には、最終対向部分印刷における用紙Mの対向長さを変えても良い。例えば、用紙M1と用紙M2とのサイズが同じであっても材質や厚みの少なくとも一方が異なる場合には、用紙の変形特性(撓みやすさ、剛性など)が異なるので、上述した確率R1、R2、R3(図8、図11)が用紙M1と用紙M2との間で異なるためである。これによって、材質および厚みの少なくとも一方に応じて対向長さを変えることで、用紙汚れを適切に抑制することができる。
(2)上記各実施例では、押さえ部材146は、用紙Mを主走査方向に沿って波状に変形させた状態で保持するための部材である。これに限らず、押さえ部材146は、用紙Mを主走査方向に沿って変形させることなく、用紙Mと対向する部材であっても良い。この場合であっても、例えば、用紙にインクが染みこむことに起因する変形によって、用紙Mが主走査方向に沿って変形する場合がある。このような場合には、例えば、用紙Mの種類に応じて、用紙Mの対向長さを変えることで、実施例と同様に、用紙汚れを適切に抑制することができる。
(3)上記各実施例では、用紙Mとして、カット紙が用いられている。これに代えて、例えば、搬送方向の長さがカット紙よりも長い長尺用紙を円筒状に巻くことによって構成されるロール紙が用いられても良い。このようなロール紙が用いられる場合に、印刷機構において上流ローラ対142よりも搬送方向ARの上流側に設けられたカッターを用いて、ロール紙を裁断した後に、印刷を完了させるタイプのプリンタがある。このようなプリンタでは、ロール紙が用いられる場合であっても、裁断後の用紙の上流端において、主走査方向変形や搬送方向変形に起因する用紙汚れが問題になる場合がある。このような場合には、上記各実施例と同様に、用紙Mの種類に応じて、用紙Mの対向長さを変えることで、実施例と同様に、用紙汚れを適切に抑制することができる。
(4)図6の印刷処理および図7の印刷データ出力処理は、一例であり、これに限られない。例えば、図6、図7の処理では、画像データの全体を印刷データに変換し(図6のS130)、その後に図7の印刷データ出力処理が実行される。これに代えて、例えば、印刷データの変換は、例えば、図7のS200にてラスタデータを取得する度に、該ラスタデータごとに実行されても良い。また、印刷データ出力処理では、ラスタデータが順次に使用ノズルに割り当てられ、1回の部分印刷分の割り当てが完了する度に、割り当てられたラスタデータ群が1回の部分印刷のための部分印刷データとして出力される。これに代えて、印刷データを分割して全ての部分印刷データを生成し、全てのシート搬送の搬送量を決定した後に、部分印刷データの出力と搬送量データの出力とが行われても良い。
(5)印刷媒体として、用紙Mに代えて、他の媒体、例えば、OHP用のフィルム、CD-ROM、DVD-ROMが採用されても良い。
(6)上記各実施例では、図6の印刷処理を実行する制御装置は、CPU210である。これに代えて、制御装置は、他の種類の装置、例えば、ユーザの端末装置300であっても良い。この場合には、例えば、端末装置300は、ドライバプログラムを実行することによってプリンタドライバとして動作し、該プリンタドライバとしての機能の一部として図6の印刷処理を実行する。この場合には、端末装置は、部分印刷データと搬送量データとを、印刷実行部としてのプリンタ200に供給することによって、プリンタ200に印刷を実行させる。
(7)図6の印刷処理を実行する制御装置は、例えば、プリンタ200や端末装置300から画像データを取得して、該画像データを用いて上述した部分印刷データや搬送量データを生成し、これらのデータをプリンタ200に送信するサーバであっても良い。このようなサーバは、ネットワークを介して互いに通信可能な複数個の計算機であっても良い。
(8)上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、図6の印刷処理のうち、一部の処理は、CPU210の指示に従って動作する専用のハードウェア回路(例えば、ASIC)によって実現されてもよい。
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
100…印刷機構,110…印刷ヘッド,111…ノズル形成面,120…ヘッド駆動部,130…主走査部,133…キャリッジ,134…摺動軸,140…搬送部,141…下流ローラ対,142…上流ローラ対,145…用紙台,146,146b…押さえ部材,200…プリンタ,210…CPU,220…不揮発性記憶装置,230…揮発性記憶装置,231…バッファ領域,260…操作部,270…表示部,280…通信部,300…端末装置,HP…高支持部材,HP…各支持部材,LP…低支持部材M,M1,M2…用紙,NC,NM,NK,NY…ノズル列,NZ…ノズル,P0~P4…ヘッド位置,PG…コンピュータプログラム,PI,PI1,PI2…印刷画像,RL…ラスタライン,RP,RP1,RP2…押さえ基準位置,T0~T3…シート搬送
Claims (12)
- 印刷実行部と制御装置とを備える印刷装置であって、
前記印刷実行部は、
印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
特定色のインクを吐出する複数個のノズルであって前記搬送方向の位置が互いに異なる前記複数個のノズルを有し、前記印刷媒体にインクを吐出して前記印刷媒体にドットを形成する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドの前記複数個のノズルよりも前記搬送方向の上流側で前記印刷媒体の印刷面と対向可能な対向部材と、
を備え、
前記制御装置は、前記印刷ヘッドによって前記ドットを形成する部分印刷と、前記搬送部による前記印刷媒体の搬送と、を複数回実行させることによって、前記印刷実行部に印刷画像を印刷させ、
前記制御装置は、前記印刷実行部に前記印刷画像を印刷させる際に、
前記印刷媒体が前記対向部材と対向する状態で実行される最後の前記部分印刷である最終対向部分印刷を実行させ、
前記最終対向部分印刷を実行させる前に、前記印刷媒体を特定搬送量搬送させ、
前記制御装置は、前記印刷媒体の前記搬送方向と直交する直交方向の端の位置と、前記対向部材の前記直交方向の位置と、に応じて、前記印刷媒体の対向長さが変化するように、前記特定搬送量を制御し、
前記対向長さは、前記印刷媒体のうち、前記最終対向部分印刷を実行させる際に前記対向部材と対向する部分の前記搬送方向の長さである、印刷装置。 - 請求項1に記載の印刷装置であって、
前記制御装置は、さらに、
前記最終対向部分印刷の後に、前記印刷媒体を搬送させ、
前記印刷媒体を搬送させた後に、前記印刷媒体が前記対向部材と対向しない状態で実行される非対向部分印刷を実行させ、
前記非対向部分印刷は、使用可能な複数個のノズルのうち、前記搬送方向の下流端のノズルを用い、前記搬送方向の上流端のノズルを用いずに、実行される、印刷装置。 - 請求項1または2に記載の印刷装置であって、
前記特定搬送量は、
前記印刷媒体の前記直交方向の端と前記対向部材との前記直交方向の距離が第1の距離である場合には、前記印刷媒体の前記対向長さが第1の長さになるように制御され、
前記距離が第1の距離よりも長い第2の距離である場合には、前記印刷媒体の前記対向長さが前記第1の長さよりも長い第2の長さになるように制御される、印刷装置。 - 請求項1または2に記載の印刷装置であって、
前記特定搬送量は、
前記印刷媒体の前記直交方向の端と前記対向部材とが対向する場合には、前記印刷媒体の前記対向長さが第3の長さになるように制御され、
前記印刷媒体の前記直交方向の端と前記対向部材とが対向しない場合には、前記印刷媒体の前記対向長さが前記第3の長さよりも長い第4の長さになるように制御される、印刷装置。 - 請求項1~4のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記特定搬送量は、
前記印刷媒体が第1種の印刷媒体である場合には、前記印刷媒体の前記対向長さが第5の長さになるように制御され、
前記印刷媒体が第2種の印刷媒体である場合には、前記印刷媒体の前記対向長さが前記第5の長さとは異なる第6の長さになるように制御される、印刷装置。 - 請求項5に記載の印刷装置であって、
前記第1種の印刷媒体と前記第2種の印刷媒体とは、少なくとも前記直交方向の長さが異なる、印刷装置。 - 請求項5に記載の印刷装置であって、
前記第1種の印刷媒体と前記第2種の印刷媒体とは、材質および厚みの少なくとも一方が異なる、印刷装置。 - 請求項1~7のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記印刷媒体は、前記搬送方向の長さが規定の長さになるように裁断済みのカット紙である、印刷装置。 - 請求項1~8のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記対向部材は、前記印刷媒体を前記直交方向に沿って波状に変形させた状態で保持するための部材である、印刷装置。 - 請求項1~9のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記印刷媒体の前記対向長さは、前記印刷媒体が前記直交方向の変形に起因して前記印刷ヘッドに接触する第1の確率と、前記印刷媒体が前記搬送方向の変形に起因して前記印刷ヘッドに接触する第2の確率と、に基づいて、前記第1の確率と前記第2の確率との両方を抑制できるように、決定されている、印刷装置。 - 請求項1~10のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記印刷実行部は、さらに、前記印刷ヘッドを搭載し、前記印刷媒体に対して前記直交方向に走査するキャリッジを備え、
前記制御装置は、前記キャリッジを前記直交方向に走査させながら、前記印刷ヘッドから前記印刷媒体にインクを吐出させることによって、前記部分印刷を実行させる、印刷装置。 - 印刷実行部を制御する制御装置のためのコンピュータプログラムであって、
前記印刷実行部は、
印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
特定色のインクを吐出する複数個のノズルであって前記搬送方向の位置が互いに異なる前記複数個のノズルを有し、前記印刷媒体にインクを吐出して前記印刷媒体にドットを形成する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドの前記複数個のノズルよりも前記搬送方向の上流側で前記印刷媒体の印刷面と対向可能な対向部材と、
を備え、
前記コンピュータプログラムは、前記印刷ヘッドによって前記ドットを形成する部分印刷と、前記搬送部による前記印刷媒体の搬送と、を複数回実行させることによって、前記印刷実行部に印刷画像を印刷させることを前記制御装置のコンピュータに実現させ、
前記コンピュータプログラムは、前記印刷実行部に前記印刷画像を印刷させる際に、
前記印刷媒体が前記対向部材と対向する状態で実行される最後の前記部分印刷である最終対向部分印刷を実行させ、
前記最終対向部分印刷を実行させる前に、前記印刷媒体を特定搬送量搬送させ、
前記特定搬送量は、前記印刷媒体の前記搬送方向と直交する直交方向の端の位置と、前記対向部材の前記直交方向の位置と、に応じて、前記印刷媒体の対向長さが変化するように、制御され、
前記対向長さは、前記印刷媒体のうち、前記最終対向部分印刷を実行させる際に前記対向部材と対向する部分の前記搬送方向の長さである、コンピュータプログラム。
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