JP6656857B2 - 柱梁接合構造 - Google Patents
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タイプ1の例では、具体的には次の構成がある。
(1) 梁フランジを一部円弧形状に切欠くことで断面性能を連続的に減らす構成。
(2) 梁端部に組立H形鋼を用いてフランジにR形状(円弧形状)やテーパ形状を用いて断面性能を連続的に増やす構成。
(1) フランジの幅を部分的に広げるように、長方形状あるいは台形状、あるいは長方形とR形状を組み合わせた形状のプレートで補強する構成。
(2) 耐震補強などで使われるが、梁フランジ下にH形鋼あるいは組立てプレートを設置することで断面性能を増加させる構成。
(1) の梁フランジを一部円弧形状に切欠く構成では、その切欠のために、本来H形鋼が有している断面性能を発揮することができない。
(2) の梁端部に組立H形鋼を用いてフランジにR形状やテーパ形状を用いる構成では、端部だけプレートを組立ててH形状にした鋼材を使用するため、加工費用が増加するという点や、接続するH形鋼と強度が異なるため、設計の手間が増えるといったデメリットがある。
また、柱から離れるに従って鉛直断面の断面積が小さくなる形状の側面補強板を梁の側面に溶接して補強するため、側面補強板が一体となった梁の断面性能を連続的に変化させることができる。すなわち、側面補強板の断面性能は梁せい方向の大きさの2乗に比例するため、柱から離れるに従って鉛直断面の断面積が小さくなる形状の側面補強板とすることで、補強した部分の断面性能は、側面補強板の上下辺が直線状であっても放物線形状となる。この性質を利用することで、梁のフランジにプレート補強する構成ではこれまで課題であった、梁の断面性能が急激に変化する状態を解決することができる。このため、損傷する領域を広げることができる。
従来技術のフランジにR形状付きのプレートで補強する構成や、フランジの一部をR形状に切欠く構成では、製作上の理由で曲率が限られ易いが、この発明であれば前記側面補強板の上下辺の勾配で断面性能のR形状(放物線)を調整でき、加工し易い。フランジにR形状をつけて、かつ断面性能を落とさないために、従来はR加工された拡幅フランジを有する組立式のH形鋼としていたが、この発明であれば単独の鋼材からなるH形の梁への前記側面補強板による補強で同等の効果が得られる。
このように、この発明によると、断面性能を連続的に変化させることを、側面補強板を溶接するだけの簡単な構成で実現できる。
さらに、この発明は梁の側面に側面補強板を溶接して、例えばH形鋼の梁ではウェブに側面補強板を溶接して梁の端部付近の断面性能を上げる構成であるため、大地震時等に、側面補強板よりも先に梁母材で損傷させることができ、破壊性状が安定し易い。従来のようなフランジを補強するプレートを中心として損傷させる構成では、溶接部が損傷する部分に含まれるが、この発明では溶接部を回避して損傷させるような設計が可能である。
前述のように、側面補強板の断面性能は梁せい方向の大きさの2乗に比例するため、三角形の側面補強板を用いた場合、補強した部分の断面性能は放物線形状となる。そのため、加工し易い直線形状で形成される三角形のプレートを用いることで、力学的には適度なR形状を実現することができる。この性質を利用することで、従来の梁のフランジにプレート補強する構成ではこれまで課題であった、梁の断面性能が急激に変化する状態を、簡易な構成で解決することができる。
上記の作用は側面補強板が三角形である場合につき説明したが、三角形状の先端部分は補強効果が小さいため、条件にもよるが、台形状とすることで、梁を補強する長さを小さくすることによって、より省スペースで補強することができる。
この発明の柱梁接合構造は、種々の断面形状の梁に適用できるが、H形鋼の梁であると、前記側面補強板をウェブに接合することにより、梁の端部のみの補強することで、梁断面サイズを上げた場合と同様の効果が得られ、かつ端部のみの補強でありながら、断面性能を連続的に変化させることを簡単な構成で実現できる。そのため、前記梁に、例えばロール成形したH形鋼を用いても、従来のR加工された拡幅フランジを有する組立式のH形鋼と同等の効果が期待できる。
従来の鉄骨造ラーメン工法の建物では、大地震時の安全性は、特に梁端部の変形性能で決定することが多い。この発明では、従来は組立式のH形鋼断面などでしか実現できていない断面性能を、ロール成形のH形鋼に側面補強板の溶接を行うことで簡易に実現し、同等の効果が期待できる。
梁端部では、柱にボルト接合用部材を側面に突出させ、高力ボルトなどで梁の側面、例えばH形鋼の梁ではウェブと柱とを接合するなど、納まり上、三角形状等の側面補強板を柱の至近位置まで延長させることは困難であり、側面補強板と柱との間に間隔が生じて、断面性能の補強効果が無くなる場合がある。このような場合、前記側面補強板の溶接に加えて前記上・下面補強板を溶接することで、梁の断面性能を先端まで向上させることができる。これにより、損傷箇所は梁の側面、例えばH形鋼の梁ではウェブを、前記側面補強板で補強した部分を中心とし、損傷箇所を変形能力が発揮できる位置に調整することができる。
大地震等により建物躯体に変形が生じる場合、繰り返して生じる揺れにより、梁には上向きの荷重と下向きの荷重が交互に作用する。そのため、前記側面補強板は、前記梁の中立軸に対して上下対称となるようにすることで、側面補強板で梁を最も効果的に補強することができる。
梁2は、H形鋼とされて、ウェブ2aが上下方向に沿う姿勢とされている。なお、参考提案例として示すと、梁2は各種の形鋼など鉄骨梁であってもよく、溝形鋼や角形鋼管などであっても良い。
側面補強板8は、前記接合プレート5に干渉しない距離だけ柱1から離れた位置で、出来るだけ柱1に近づくように、柱1の近傍に配置し、外周の所定箇所(全周または一部)を隅肉溶接している。側面補強板8は、柱1から離れるに従って鉛直断面の断面積が小さくなる形状とされている。具体的には、側面補強板8は、上下幅が狭くなる形状の鋼板等の金属板であり、上下辺8a,8bが上下に傾斜した斜辺となり、残り1辺である底辺8cが上下方向に延びる形状とされている。側面補強板8は、上下幅の中心、図示の例では斜辺である上下辺8a,8b間の角部が、梁2の中立軸H0の高さ位置に位置している。より具体的には、側面補強板8は、中立軸H0を中心とした上下対称の2等辺三角形とされている。なお、参考提案例として示すと、前記側面補強板8は、柱1から離れるに従って上下幅が狭くなる形状に限らず、柱1から離れるに従って鉛直断面の断面積が小さくなる形状であれば良い。また、接合プレート5は、この実施形態では梁2のウェブ2aの片面だけに設けられている。
梁2の側面補強板8による補強範囲は梁2の長さ方向の一部であるが、力が最もかかる梁端部を補強するため、梁断面サイズを上げた場合と同様の効果が得られる。その結果、全長に渡って断面サイズを上げるよりも鋼材重量が落とせる。鉄骨造建物の梁の断面は、地震時のモーメントで決定するが、端部のみを効率的に補強することで、必要な強度を確保しながら、梁2を構成する部材のサイズを低減できる。
従来はフランジにR形状をつけて、かつ断面性能を落とさないために、R加工された拡幅フランジを有する組立式のH形鋼としていたが、この実施形態であれば、ロール成形したH形鋼への前記側面補強板8による補強で同等の効果が得られる。
梁2のウェブ2aの側面補強板8は、降伏しない設計であればよいため、梁2の母材となるH形鋼に使用する材料以下の強度でも設計可能である。側面補強板8は、ウェブ2aの片側での設計でも可能である。
このように設計することで、この柱梁接合構造は、大地震の発生時等に、フランジ補強板9で補強された個所では塑性化せず、梁2の母材であるH形鋼と側面補強板8とで構成されている箇所で塑性化することになる。したがって、より広い範囲で損傷させる設計が可能となる。
その他の構成、効果は、第1の実施形態と同様である。
1a…上柱材
1b…下柱材
1c…接合筒
2…梁
2a…ウェブ
2b,2c…フランジ
3,4…ダイヤフラム
5…接合プレート
8…側面補強板
9…フランジ補強板
10…上・下面補強板
H0…中立軸
Claims (3)
- 鋼製の柱に、ウェブが上下方向に沿う姿勢のH形鋼製の梁の端部が接合される柱梁接合構造であって、
前記梁の前記ウェブの側面に重なり、前記柱の近傍に位置して鋼製の側面補強板が溶接で接合され、この側面補強板は、前記柱から離れるに従って鉛直断面の断面積が小さくなる形状であって、かつ上下辺が上下に傾斜した辺となり、柱側端の辺である残り1辺が上下方向に延びる三角形、またはこの三角形の前記柱から離れた先端が欠如された形状の台形であり、前記側面補強板は前記梁の前記ウェブの側面のみに接合されている柱梁接合構造。 - 請求項1に記載の柱梁接合構造において、前記梁の端部の上面または下面に鋼製の上・下面補強板が溶接で接合され、前記上・下面補強板は前記柱にも溶接で接合されている柱梁接合構造。
- 請求項1または請求項2に記載の柱梁接合構造において、前記側面補強板は、前記梁の中立軸に対して上下対称になっている柱梁接合構造。
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