JP6964422B2 - 構造物 - Google Patents

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Description

本発明は、梁部材の長手方向端部を被接合部材に接合することで構築される構造物に係り、特に、梁部材の長手方向端部にあるフランジ部に拡張部を設けて当該長手方向端部の横幅を拡張させた構造物に関する。
建物の躯体等の構造物を構築する際に、梁部材の長手方向端部(以下、梁端部ともいう)を柱等に剛接合することがある。また、柱等と接合された梁端部の強度を向上させるために、梁端部に位置するフランジ部の側端に拡張部を取り付けることがある。
ただし、フランジ部の側端に拡張部を取り付けると、拡張部が取り付けられている範囲の境界位置(すなわち、拡張部の端位置)で梁部材の断面性能が著しく増加する。この結果、梁端部において強度が不連続に変化(増加)することになる。このような梁端部における強度の不連続変化を解消する方法としては、特許文献1に記載の方法が挙げられる。
特許文献1では、図8に示すように、拡張部105の幅が拡張部105の一端(被接合部材から離れている側の端)から他端(被接合部材に近い側の端)に向かって漸次的に大きくなっている。図8は、特許文献1に記載の梁端部接合構造を示す斜視図である。また、図8において、符号101が梁部材を、符号101aが梁端部を、符号102が柱(被接合部材)を、符号103がフランジ部を、符号104がウェブ部を、符号105が拡張部を、それぞれ示している。
上記の形状をなす拡張部105が設けられることにより、特許文献1の梁端部接合構造では、梁端部101aにおける強度の不連続変化を緩和させることが可能である。
特開2015−190258号公報
しかし、幅が漸次的に変化する拡張部105を梁部材101のフランジ部103、特にフランジ部103の側端に取り付けることは、作業上、困難であり、具体的には溶接作業が難しくなる。このため、梁端部101aにおける強度の不連続変化をより容易に解消することが求められている。
また、地震時に梁部材に荷重(外力であって、具体的には曲げモーメント)が掛かったとき、荷重の大きさは、梁部材と被接合部材との接合箇所において最も大きくなり、当該接合箇所から離れるに連れて小さくなる。梁端部の強度を向上させる場合には、このような荷重分布を考慮して適切に強度を確保するのが望ましい。
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被接合部材に接合された梁部材の長手方向端部を簡単かつ適切に補強することが可能な構造物を提供することである。
前記課題は、本発明の構造物によれば、対のフランジ部及びウェブ部を有する梁部材と、該梁部材の長手方向端部が接合される被接合部材と、を有する構造物であって、記長手方向端部に位置する前記フランジ部の側端から張り出すように設けられた拡張部と、記ウェブ部の側面から突出した突出部と、を有し、該突出部には、前記梁部材の長手方向において前記被接合部材から離れるほど前記ウェブ部の側面からの突出量が小さくなる部分が設けられ、前記突出部は、前記梁部材の幅方向の側面において前記拡張部と同じ側に設けられ、前記長手方向において前記拡張部が設けられている範囲と隣り合う位置、又は前記拡張部のうち前記被接合部材に遠い側の端部と、前記突出部のうち前記被接合部材に近い側の端部とが重なり合う位置に設けられ、前記長手方向に沿って延出していることにより解決される。
上記のように構成された本発明の構造物では、突出部がウェブ部の側面に設けられており、突出部の一部分では、被接合部材から離れるほど突出量が徐々に小さくなっている。このように突出量が徐々に小さくなる部分が設けられていることで、当該部分が位置する範囲では、被接合部材から離れるほど梁部材の強度が漸次的に小さくなる。これにより、梁端部における強度の不連続変化が緩和されることになる。
また、突出部がウェブの側面に取り付けられるので、フランジ部の側端に取り付けられる場合と比較して、拡張部の端位置付近に突出部を設けることが容易になる。
また、地震時に梁部材に荷重が掛かった際には、梁部材での荷重分布に順応して梁端部が適切に変形(延伸)するようになる。これにより、地震時の荷重に対する梁部材の靱性が向上する。
また、突出部の各々が梁部材の長手方向に沿って延出している。このような構成であれば、突出部が梁部材の長手方向に沿って延びている分、突出部による効果(強度の不連続変化を緩和させる効果)が適切に発揮されるようになる。
また、本発明の構造物に関して好適な構成を述べると、前記突出部は、前記梁部材の高さ方向における前記ウェブ部の中央を境にして対称となるように一対設けられているとよい
また、本発明の構造物に関して好適な構成を述べると、前記突出部は、前記長手方向において前記被接合部材に近い側の端部をなす第一部分と、前記長手方向において前記第一部分と隣接する第二部分と、を有し、前記第一部分では、前記長手方向における前記第一部分の一端から他端に亘って前記突出量が一定であり、前記第二部分では、前記長手方向において前記被接合部材から離れるほど前記突出量が小さくなっているとよい。
上記の構成では、突出部のうち、被接合部材に近い側の端部をなす第一部分では、突出量が均一となっており、第一部分と隣接する第二部分では、被接合部材から離れるほど突出量が小さくなっている。このような構成であれば、突出部の第二部分が設けられている範囲では、強度の不連続変化を緩和させることが可能となる。また、突出部の第一部分が設けられている範囲では、強度を十分に確保することが可能となる。
また、本発明の構造物に関して好適な構成を述べると、前記突出部の突出方向における前記第二部分の外側端面は、前記長手方向及び前記突出方向の各々に対して傾いた傾斜面である。
あるいは、前記突出部の突出方向における前記第二部分の外側端面は、湾曲面であってもよい。
上記2つの構成のうち、いずれかの構成であれば、被接合部材から離れるほど突出量が小さくなるような形状に第二部分を成形することが容易になる。
また、本発明の構造物に関して好適な構成を述べると、前記突出部は、前記長手方向において前記第一部分とは反対側で前記第二部分と隣接する第三部分を更に有し、該第三部分では、前記長手方向における前記第三部分の一端から他端に亘って前記突出量が一定であり、前記第一部分の前記突出量が前記第三部分の前記突出量よりも大きいとよい。
上記の構成では、突出部が、梁部材の長手方向において被接合部材に近い側から、第一部分、第二部分及び第三部分を有する。第一部分及び第三部分では、突出量が均一となっている。また、被接合部材に近い第一部分の突出量が、被接合部材から離れた第三部分の突出量よりも大きくなっている。このような構成であれば、梁端部中、突出部が取り付けられている部分において、より被接合部材に近い側で強度を確保することが可能となる。
また、本発明の構造物に関して好適な構成を述べると、前記梁部材の高さ方向における前記拡張部の端面は、矩形形状であるとよい。
上記の構成では、拡張部が上面視で矩形形状となっている。このような構成であれば、拡張部の端位置において強度が著しく変化(増加)するので、ウェブ部に突出部を設けて梁端部における強度の不連続変化を緩和するという効果がより有意義に発揮される。
本発明の構造物では、被接合部材に接合された梁部材の長手方向端部(梁端部)に設けられたフランジ部の側端に拡張部を取り付けた構成において、被接合部材から離れるほど突出量が徐々に小さくなった部分を有する突出部が、ウェブ部の側面に取り付けられている。これにより、より簡単に、梁端部における強度の不連続変化を緩和することが可能となる。また、地震時に梁部材に掛かる荷重に対する、梁端部の靱性を向上させることが可能になる。
本発明の一実施形態に係る構造物の梁端部接合構造を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る梁部材の上面図である。 本発明の一実施形態に係る梁部材の側面図である。 突出部の配置位置に関するバリエーションを示す図である。 突出部を上方から見たときの図である。 突出部による効果についての説明図である。 変形例に係る突出部を示す図である。 従来例に係る梁端部接合構造を示す斜視図である。
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内で変更、改良され得る。また、当然ながら、本発明にはその等価物が含まれ得る。
また、以下では、建物の躯体を構造物の一例として挙げ、当該躯体の構成について説明することとする。ただし、建物の躯体は、あくまでも構造体の一例に過ぎず、本発明は、建物の躯体以外の構造物、例えば設備据置用の架台や橋脚等にも適用可能である。
また、以下の説明中、「長手方向」とは、後述する形鋼梁10の長手方向を意味し、「梁幅方向」とは、形鋼梁10の横幅方向を意味し、「高さ方向」とは、形鋼梁10の高さ方向(梁せい方向)を意味する。また、「断面」とは、特に断る場合を除き、長手方向を法線方向とする断面を意味する。また、本発明において、「強度」とは、曲げ強度(厳密には、全塑性モーメント)のことである。
本実施形態に係る躯体、特に、躯体中の梁端部接合構造について図1乃至図7を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る躯体(以下、躯体1)の梁端部接合構造を示す斜視図である。図2及び図3は、本実施形態に係る梁部材(具体的には、形鋼梁10)の上面図及び側面図である。図4は、後述するリブ15の配置位置に関するバリエーションを示す図であり、図3と対応する図である。なお、梁部材の形状は、その長手方向中央を境にして対称形状であるため、図2乃至図4では、梁部材中の長手方向一端側半分のみを図示している。
図5は、リブ15の外形形状を示す図であり、リブ15を上方から見たときの図である。図6は、リブ15による効果についての説明図であり、リブ15を用いたときの梁端部の補強範囲における強度分布を示している。図6の横軸は、接合箇所からの距離(位置)を示しており、縦軸は、強度を示している。なお、図6には、地震時の荷重が形鋼梁10に掛かった際の梁端部10aでの荷重分布を、長破線にて図示している。図7は、変形例に係るリブ35の外形形状を示す図であり、変形例に係るリブ35を上方から見たときの図である。
躯体1は、鉄骨造の構造物であり、H形鋼からなる梁部材(以下、形鋼梁10)を構成部材として有する。形鋼梁10は、上下一対のフランジ部11とウェブ部12とを有する。また、形鋼梁10の中には、図1に示すように柱部材20に接合されるものがある。柱部材20は、被接合部材に相当し、例えば角筒型の鋼材からなる。そして、形鋼梁10は、その長手方向端部(以下、梁端部10a)にて柱部材20に接合される。
形鋼梁10と柱部材20との接合様式については、公知の接合様式が利用可能であり、例えば図1に示すように柱部材20の外表面に溶接された接合プレート21(具体的には、シアープレート)によって両部材を接合することが可能である。この接合方式を採用した場合には、接合プレート21に形鋼梁10が組み付けられている箇所(具体的には、ボルト留めされている箇所)が、形鋼梁10と柱部材20との接合箇所に該当する。
また、柱部材20の外表面に形鋼梁10の長手方向端面を突き当てて形鋼梁10を柱部材20に溶接してもよい。この接合方式を採用した場合には、柱部材20の外表面に形鋼梁10が溶接されている箇所が、形鋼梁10と柱部材20との接合箇所に該当する。
本実施形態に係る躯体1では、図1に図示の梁端部接合構造が採用されている。この梁端部接合構造によれば、形鋼梁10と柱部材20との接合箇所(以下、単に「接合箇所」という)での応力発生を軽減すると共に、形鋼梁10の所定部位(具体的には、後述する拡張部14の端位置)における歪みの集中を抑制することが可能となる。
図1に図示の梁端部接合構造について説明すると、当該梁端部接合構造では、地面に対して略鉛直に立設された柱部材20に対して、略水平に置かれた形鋼梁10の梁端部10aが接合される。例えば、前述したように、柱部材20の外表面に溶接された接合プレート21に形鋼梁10のウェブ部12の端部(長手方向において柱部材20側に位置する端部)を重ね合わせ、両者をボルト留めする。これにより、形鋼梁10が柱部材20に剛接合される。なお、図1に示すようにウェブ部12の端部の隅角部にはスカラップ13が形成されている。
また、図1に示すように、柱部材20の外表面において、鉛直方向において接合プレート21を挟む位置に上下一対のダイヤフラム22が設けられている。形鋼梁10が柱部材20に接合された状態では、形鋼梁10のフランジ部11が、鉛直方向においてダイヤフラム22の厚みの範囲内に収まっている。
以上の接合様式では、地震により形鋼梁10に荷重(外力)が掛かった際に、接合箇所において形鋼梁10の仕口部(梁端部10a)が破断する虞がある。そのため、本実施形態では、梁端部10aに位置する上下一対のフランジ部11の各々に拡張部14が設けられている。この拡張部14は、梁端部10aの横幅を拡張させる鋼材であり、梁端部10aに位置する各フランジ部11の両側端から梁幅方向外側に向かって略水平に張り出している。
拡張部14について図2を参照しながら説明すると、拡張部14は、上面視で矩形形状であり、換言すると、高さ方向における拡張部14の端面が矩形状の平面となっている。拡張部14は、形鋼梁10において柱部材20と接合している側の端から長手方向に沿って幾分長く延出しており、例えば、ウェブ部12において接合プレート21と重ね合わせられる部分の長さよりも幾分長くなっている。また、拡張部14は、梁端部10aに位置する各フランジ部11の側端に溶接、厳密には完全溶け込み溶接にて取り付けられている。
なお、拡張部14の形状については、特に限定されるものではなく、上面視で三角形状、台形状、側端が半円状に切り欠かれた矩形状、若しくはこれら以外の形状であってもよい。
梁端部10aに拡張部14を設けて梁端部10aを拡幅することで、接合箇所における形鋼梁10の断面性能(断面係数)を増やすことができ、これにより形鋼梁10の仕口部(梁端部10a)の破断を防止することが可能となる。
しかし、拡張部14を設けると、拡張部14の端位置(厳密には、接合箇所から離れている側の端位置)において形鋼梁10の断面性能が著しく変化(増加)するために、拡張部14の端位置にて形鋼梁10の強度が不連続に変化してしまう。特に、拡張部14が上方視で矩形状である場合には、強度の不連続変化が顕著となる。このように強度が不連続に変化している形鋼梁10に対して地震荷重(地震時に生じる外力)が掛かると、拡張部14の端位置において応力が集中してしまう。さらに、応力が集中する部位には歪みが生じ、最終的には歪み発生箇所にて形鋼梁10が破断してしまう可能性がある。
そこで、本実施形態では、梁端部10aにおける補強範囲(拡張部14によって補強された範囲)での強度の不連続変化を緩和する手段として、図1、図3乃至図5に図示のリブ15を形鋼梁10のウェブ部12の側面に取り付けている。以下、図3乃至図5を参照しながらリブ15について説明する。なお、以降では、説明の便宜上、接合箇所により近い側を「前側」とし、接合箇所からより離れている側を「後側」とする。
リブ15は、突出部に相当し、梁端部10aにおいてウェブ部12の側面から梁幅方向外側に向かって略水平に突出している。つまり、梁幅方向は、リブ15の突出方向に該当する。リブ15は、若干の厚みを有し、所定形状に加工成形された平鋼からなる。本実施形態において、リブ15は、形鋼梁10とは別部材からなり、形鋼梁10のウェブ部12の側面に溶接にて固定されている。また、リブ15は、図3に示すように、長手方向に沿って幾分長く延出している。
また、リブ15の前端位置は、長手方向において拡張部14の端位置(厳密には、後側の端位置)と略同じ位置にある。換言すると、リブ15は、長手方向において拡張部14が設けられている範囲と隣り合う位置に設けられている。ただし、これに限定されるものではなく、図4に示すように、リブ15は、長手方向において拡張部14が設けられている範囲と重なり合う位置(具体的には、リブ15の前端が拡張部14の後側の端位置よりも前側に配置された位置)に設けられてもよい。
また、リブ15は、図3に示すように上下一対設けられている。一対のリブ15は、高さ方向において互いに離れた状態にあり、ウェブ部12の高さ方向中央を境にして上下対称となるように配置されている。すなわち、上方のリブ15は、長手方向において下方のリブ15と同じ位置に配置されており、高さ方向において中立軸を挟んで下方のリブ15とは反対側に位置している。
ここで、ウェブ部12の高さ方向中央とは、ウェブ部12を側方から見たときの中立軸の位置(図3中、一点鎖線にて示す位置)に相当する。なお、ウェブ部12の高さ方向中央からリブ15までの距離(換言すると、高さ方向におけるリブ15の位置)については、特に限定されるものではないが、フランジ部11により近付けるようにリブ15を配置するのが望ましい。
リブ15の外形形状について図5を参照しながら説明すると、リブ15は、上面視で、前方内側角が直角となった台形に近似した外形形状となっている。より詳しく説明すると、リブ15は、長手方向において前側から前端部15a、中間部15b及び後端部15cを備えている。
前端部15aは、本発明の第一部分に相当し、リブ15のうち、長手方向において柱部材20に近い側の端部をなしている。前端部15aは、上面視で長方形状となっている。換言すると、前端部15aでは、前端部15aの前端(長手方向における一端)から後端(長手方向における他端)に亘って突出量が一定である。ここで、「突出量」とは、ウェブ部12の側面からの突出量であり、分かり易くは、梁幅方向におけるリブ15各部の長さ(幅)を意味する。なお、前端部15aは、その突出量が中間部15bや後端部15cの突出量に比して格段に大きくなるように形成されている。具体的に説明すると、前端部15aは、梁幅方向に長い矩形形状をなしており、前端部15aの突出量は、前端部15aの前後長(長手方向における長さ)よりも幾分大きくなっている。
中間部15bは、本発明の第二部分に相当し、長手方向において前端部15aの後側で前端部15aと隣接している。中間部15bの梁幅方向における外側端面(自由端側の端面)は、図5に示すように、長手方向及び梁幅方向の各々に対して傾斜した傾斜面となっており、厳密には、後側に向かうほど梁幅方向の内側(ウェブ部12が位置する側)に位置するような傾斜面となっている。つまり、中間部15bでは、長手方向において後側に向かうほど(換言すると、柱部材20から離れるほど)突出量が小さくなっている。
後端部15cは、本発明の第三部分に相当し、長手方向において前端部15aとは反対側で中間部15bと隣接している。後端部15cは、リブ15の後端部に位置し、上面視で方形状となっている。換言すると、後端部15cでは、後端部15cの前端(長手方向における一端)から後端(長手方向における他端)に亘って突出量が一定である。また、後端部15cの突出量は、図5に示すように、前端部15aの突出量に比べて格段に小さくなっている。つまり、図5に図示のリブ15では、前端部15aの突出量が後端部15cの突出量よりも大きくなっている。
以上までに説明してきたリブ15が梁端部10aにおいてウェブ部12の側面に取り付けられることにより、梁端部10aにおける補強範囲(特に、拡張部14の端位置)での強度の不連続変化が緩和される。かかる効果について図6を参照しながら詳しく説明する。なお、図6では、拡張部14の端位置(換言すると、リブ15の前端位置)を記号P1にて表し、リブ15における前端部15aと中間部15bとの境界位置を記号P2にて表し、中間部15bと後端部15cとの境界位置を記号P3にて表し、リブ15の後端位置を記号P4にて表している。
長手方向におけるリブ15の中途部分には、前述したように、柱部材20から離れるほど突出量が小さくなる部分、すなわち中間部15bが設けられている。中間部15bが設けられた範囲では、断面性能が線形状に変化し、厳密には、柱部材20から離れるほど漸次的に小さくなっている。
以上の結果、図6に示すように、梁端部10aにおいて中間部15bが設けられた範囲(図中、記号P2の位置から記号P3の位置までの範囲)では、柱部材20から離れるほど梁部材の強度が漸次的に(厳密には線形状に)小さくなる。これにより、梁端部10aにおける強度の不連続変化(すなわち、拡張部14の端位置における急激な強度の増加)が緩和されることになる。
なお、本実施形態では、上記のリブ15がウェブ部12の側面に固定されている。ウェブ部12の側面は、フランジ部11の側端面よりも格段に広くなっている。したがって、梁端部10aにおける強度の不連続変化を緩和する目的でリブ15を梁端部10aに固定する際、ウェブ部12の側面に固定する方が、フランジ部11の側端面に固定する場合に比べて、リブ15の取り付け作業が容易になる。より詳しく説明すると、リブ15をフランジ部11に溶接する場合には完全溶け込み溶接を行う必要があるのに対し、ウェブ部12に溶接する場合には、より簡単な溶接方式(具体的には、隅肉溶接)にて溶接することが可能となる。
なお、形鋼梁10に荷重が作用した際、高さ方向において形鋼梁10の中央(中立軸)から離れるほど曲げ応力が大きくなる。このため、本実施形態のようにリブ15をウェブ部12に溶接すれば、フランジ部11に溶接する場合に比べて、溶接箇所における曲げ応力を軽減させ、溶接箇所での破断が抑えられるようになる。つまり、本実施形態では、形鋼梁10においてより曲げ応力が小さくなる位置にてリブ15を溶接している。
さらに、上記のリブ15が梁端部10aにおいてウェブ部12の側面に取り付けられることにより、地震時の荷重に対する梁端部10aの順応性(靱性)が向上する。具体的に説明すると、地震時に形鋼梁10に掛かる荷重の大きさ(厳密には、周期的に変動する荷重の振幅)は、図6に示すように、接合箇所に向かうにつれて線形状に大きくなる。
一方、梁端部10aにおいてリブ15の中間部15bが設けられた範囲(すなわち、図6中、記号P2の位置から記号P3の位置までの範囲)では、接合箇所に向かうにつれて強度が徐々に大きくなるように変化している。つまり、梁端部10aにおいてリブ15の中間部15bが設けられた範囲では、図6に示すように、形鋼梁10の強度変化が地震時の荷重分布に同調することになる。この結果、地震時に荷重が形鋼梁10に掛かると、梁端部10aのうち、長手方向において中間部15bが設けられた範囲に在る部分が上記の荷重に順応しながら変形(延伸)し得るようになる。
なお、リブ15の形状(具体的には、ウェブ部12の側面からの突出量や長手方向における長さ)及び配置位置については、形鋼梁10の材質や躯体1の要求仕様を踏まえつつ、上記の効果を得るのに適した値に設定されるのが望ましい。
以上までに、本実施形態に係る躯体1の梁端部接合構造に関して、主に、梁端部の補強手段(具体的には、拡張部14やリブ15)について説明してきた。ただし、上述の実施形態は、あくまでも一例に過ぎず、上述の実施形態以外の実施形態も考えられる。特に、突出部であるリブ15の形状については、図5に図示の形状に限定されるものではない。例えば、図7に図示の形状をなしたリブ(以下、変形例に係るリブ35)を突出部として用いてもよい。
変形例に係るリブ35の外形形状について図7を参照しながら説明すると、変形例に係るリブ35は、上面視で、長手方向の略中央部分において外縁が円弧状に切り欠かれた略矩形形状をなしている。より詳しく説明すると、変形例に係るリブ35は、図7に示すように、長手方向において前側から前端部35a、前側切り欠き部35b、後側切り欠き部35c及び後端部35dを備えている。
前端部35aは、本発明の第一部分に相当し、変形例に係るリブ35のうち、長手方向において柱部材20に近い側の端部をなしている。また、前端部35aは、上面視で矩形形状となっている。換言すると、前端部35aでは、前端部35aの前端から後端に亘って突出量が一定である。
前側切り欠き部35bは、本発明の第二部分に相当し、長手方向において前端部35aの後側で前端部35aと隣接している。前側切り欠き部35bの梁幅方向における外側端面は、図7に示すように、後側に向かうほど梁幅方向の内側に位置するように湾曲した湾曲面となっている。つまり、前側切り欠き部35bでは、長手方向において後側に向かうほど(換言すると、柱部材20から離れるほど)突出量が小さくなっている。
後側切り欠き部35cは、長手方向において前端部35aとは反対側で前側切り欠き部35bと隣接している。後側切り欠き部35cの幅方向における外側端面は、図7に示すように、前側切り欠き部35bの外側端面と向かい合う湾曲面となっており、後側に向かうほど梁幅方向の外側に位置するように湾曲している。つまり、後側切り欠き部35cでは、長手方向において後側に向かうほど突出量が大きくなっている。
後端部35dは、変形例に係るリブ35の後端部をなし、長手方向において前側切り欠き部35bとは反対側で後側切り欠き部35cと隣接している。また、後端部35dは、上面視で矩形形状となっている。換言すると、後端部35dでは、後端部35dの前端から後端に亘って突出量が一定である。また、図7に示すように、後端部35dの突出量は、前端部35aの突出量と等しくなっている。
そして、変形例に係るリブ35が、上述の実施形態に係るリブ15の代わりに梁端部10aにおいてウェブ部12の側面に取り付けられた場合にも、上述したリブ15の効果が得られる。すなわち、変形例に係るリブ35には、柱部材20から離れるほど突出量が小さくなる部分としての前側切り欠き部35bが設けられている。したがって、変形例に係るリブ35が、長手方向において拡張部14が設けられている範囲と隣り合う位置又は当該範囲と重なり合う位置に設けられていれば、梁端部10aにおける補強範囲(特に、拡張部14の端位置)での強度の不連続変化が緩和される。また、変形例に係るリブ35をウェブ部12の側面に取り付ければ、フランジ部11の側端に取り付ける場合に比べて、変形例に係るリブ35の取り付け作業が容易になる。
さらに、梁端部10aにおいて変形例に係るリブ35をウェブ部12の側面に取り付ければ、地震時の荷重に対する梁端部10aの順応性(靱性)が確保される。つまり、地震時に形鋼梁10に荷重が掛かった際には、梁端部10aのうち、長手方向において変形例に係るリブ35の前側切り欠き部35bが設けられた範囲に在る部分が上記の荷重に順応しながら変形(延伸)し得るようになる。
以上までに本発明の構造物について具体例を挙げて説明したが、上述した実施形態以外の実施形態も考えられる。具体的に説明すると、突出部の形状、配置数及び配置位置については、上述した実施形態で説明した内容に限定されない。すなわち、突出部は、長手方向において後側に向かうにつれて突出量が小さくなる部分(第二部分)を備えたものであればよく、この条件を満たすものである限り、任意に設定することが可能である。例えば、したがって、上面視で略三角形状のリブ15が突出部としてウェブ部12の側面に取り付けられていてもよい。
1 躯体(構造物)
10 形鋼梁(梁部材)
10a 梁端部(長手方向端部)
11 フランジ部
12 ウェブ部
13 スカラップ
14 拡張部
15 リブ(突出部)
15a 前端部(第一部分)
15b 中間部(第二部分)
15c 後端部(第三部分)
20 柱部材(被接合部材)
21 接合プレート
22 ダイヤフラム
35 変形例に係るリブ(突出部)
35a 前端部(第一部分)
35b 前側切り欠き部(第二部分)
35c 後側切り欠き部
35d 後端部
101 梁部材
101a 梁端部
102 柱
103 フランジ部
104 ウェブ部
105 拡張部

Claims (7)

  1. 一対のフランジ部及びウェブ部を有する梁部材と、該梁部材の長手方向端部が接合される被接合部材と、を有する構造物であって、
    前記長手方向端部に位置する前記フランジ部の側端から張り出すように設けられた拡張部と、
    記ウェブ部の側面から突出した突出部と、を有し、
    該突出部には、前記梁部材の長手方向において前記被接合部材から離れるほど前記ウェブ部の側面からの突出量が小さくなる部分が設けられ
    前記突出部は、
    前記梁部材の幅方向の側面において前記拡張部と同じ側に設けられ、
    前記長手方向において前記拡張部が設けられている範囲と隣り合う位置、又は前記拡張部のうち前記被接合部材に遠い側の端部と、前記突出部のうち前記被接合部材に近い側の端部とが重なり合う位置に設けられ、
    前記長手方向に沿って延出していることを特徴とする構造物。
  2. 前記突出部は、前記梁部材の高さ方向における前記ウェブ部の中央を境にして対称となるように一対設けられていることを特徴とする請求項1に記載の構造物。
  3. 前記突出部は、前記長手方向において前記被接合部材に近い側の端部をなす第一部分と、前記長手方向において前記第一部分と隣接する第二部分と、を有し、
    前記第一部分では、前記長手方向における前記第一部分の一端から他端に亘って前記突出量が一定であり、
    前記第二部分では、前記長手方向において前記被接合部材から離れるほど前記突出量が小さくなっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の構造物。
  4. 前記突出部の突出方向における前記第二部分の外側端面は、前記長手方向及び前記突出方向の各々に対して傾いた傾斜面であることを特徴とする請求項3に記載の構造物。
  5. 前記突出部の突出方向における前記第二部分の外側端面は、湾曲面であることを特徴とする請求項3に記載の構造物。
  6. 前記突出部は、前記長手方向において前記第一部分とは反対側で前記第二部分と隣接する第三部分を更に有し、
    該第三部分では、前記長手方向における前記第三部分の一端から他端に亘って前記突出量が一定であり、
    前記第一部分の前記突出量が前記第三部分の前記突出量よりも大きいことを特徴とする請求項3又は4に記載の構造物。
  7. 前記梁部材の高さ方向における前記拡張部の端面は、矩形形状であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の構造物。
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