JP6936591B2 - 柱の補強構造 - Google Patents

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本発明は、柱の補強構造に関する。
建物の柱と梁とで構成される柱梁架構を補強する補強部材として、例えば特許文献1には、柱材と梁材とからなる直交軸に対して角度をもって直線状に延び、ガセットプレートを介して両端部が柱材及び梁材に固定された方杖材が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示されているような直線状に延びる方杖材は、柱梁架構における面外方向へ加わる外力によって座屈し易いという問題があった。
特開2013−177797号公報
本発明は上記事実に鑑み、補強部材の柱梁架構における面外方向への座屈を抑制することができる柱の補強構造を提供することを目的とする。
第1態様に係る柱の補強構造は、柱と、前記柱に接合された梁と、前記柱と前記梁とで構成される柱梁架構の構面内に設けられ、前記柱と前記梁に接合されるとともに上向き又は下向きに凸となるように湾曲する補強部材と、を有する。
上記構成によれば、柱と梁とで構成される柱梁架構の構面内に、柱と梁にそれぞれ接合される補強部材を設けることで、柱を補強することができる。また、補強部材が上向き又は下向きに凸となるように湾曲しているため、補強部材が直線状に延びる構成と比較して、補強部材の意匠性を高めることができるとともに、補強部材の柱梁架構における面外方向への座屈を抑制することができる。
第2態様に係る柱の補強構造は、第1態様に係る柱の補強構造であって、前記補強部材は、上向きに凸となるように湾曲しており、長手方向一端面が前記柱の一側面に接合され、長手方向他端面が前記梁の下面に接合されている。
上記構成によれば、補強部材の長手方向両端面が柱の一側面と梁の下面にそれぞれ接合されているため、補強部材の側面が柱と梁に接合されている構成と比較して、柱の曲げ変形をより抑制することができる。また、補強部材が上向きに凸となるように湾曲しているため、梁下の有効空間を広くとることができる。
第3態様に係る柱の補強構造は、第1又は第2態様に係る柱の補強構造であって、前記柱はH形鋼からなり、前記柱の一方のフランジに前記補強部材が接合されているとともに、前記一方のフランジと他方のフランジの間に補強プレートが取付けられている。
上記構成によれば、柱をH形鋼で構成することで、柱が円形鋼管等とされている比較してコストを削減することができる。また、柱の一方のフランジに補強部材が接合され、一方のフランジと他方のフランジの間に補強プレートが取付けられているため、補強部材によって柱梁架構の面内方向における柱の曲げ変形を抑制することができるとともに、補強プレートによって柱梁架構の面外方向における柱の曲げ変形を抑制することができる。
本発明によれば、補強部材の柱梁架構における面外方向への座屈を抑制することができる。
第1実施形態に係る柱の補強構造を示す全体図である。 図1におけるA−A線断面図である。 第2実施形態に係る柱の補強構造を示す全体図である。 (A)は図3における梁と補強部材の接合部を示す分解図であり、(B)はそのB−B線断面図である。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る柱の補強構造について、図1、図2を用いて説明する。
<構成>
図1に示すように、第1実施形態の柱10は例えばH形鋼で構成されており、複数(本実施形態では2本)の柱10が床11から立設している。また、柱10の上部には、例えばH形鋼で構成された梁12が架渡されて接合されており、この柱10と梁12とで柱梁架構14が構成されている。
さらに、柱梁架構14の構面14A内には、柱10を補強する補強部材としての方杖16が設けられている。方杖16は、例えばH形鋼で構成されており、全体が上向きに凸となるように湾曲している。また、方杖16の長手方向一端面は柱10の一側面に接合され、長手方向他端面は梁12の下面に接合されている。
具体的には、方杖16は、柱梁架構14の面内方向が強軸方向とされており、図2に示すように、複数のボルト孔18Aが形成されたプレート18が長手方向一端面に溶接されている。柱10の一方のフランジ10Aの対応する位置にも複数のボルト孔が形成されており、ボルト20によってプレート18が柱10のフランジ10Aに接合されることにより、方杖16の長手方向一端面が柱10に接合されている。
なお、図1に示すように、方杖16の長手方向他端面にもプレート22が溶接されており、ボルト24によってプレート22が梁12の下フランジ12Aに接合されることにより、方杖16の長手方向他端面が梁12に接合されている。
また、柱10と方杖16との接合部分において、柱10のウェブ10Bには複数(本実施形態では2つ)の補強用のリブプレート26が溶接されている。同様に、梁12と方杖16との接合部分において、梁12のウェブ12Bには複数(本実施形態では2つ)の補強用のリブプレート28が溶接されている。
さらに、柱10の一方のフランジ10Aと他方のフランジ10Cとの間には、補強用の一対の補強プレート30が溶接されている。補強プレート30は、リブプレート26を覆うように、柱10の長手方向中央部分から梁12との接合部分である上部にわたって設けられており、フランジ10A、10Cと補強プレート30とによって閉断面が形成されている。
なお、補強プレート30は、少なくとも柱10の上部に取付けられていればよく、フランジ10A、10C間に全面にわたって取付けられていてもよい。また、フランジ10A、10C間に間隔をあけて複数の補強プレート30が取付けられていてもよい。
<作用及び効果>
本実施形態によれば、柱10と梁12とで構成される柱梁架構14の構面14A内に、柱10と梁12にそれぞれ接合される方杖16を設けている。このため、方杖16によって柱10を補強することができ、柱梁架構14の面内方向における柱10の曲げ変形を抑制することができる。
また、本実施形態によれば、方杖16がH形鋼で構成されているため、方杖がKTブレース等の円形鋼管で構成されている構成と比較して、コストを削減することができる。ここで、一般的にH形鋼で構成された方杖16は、強軸方向、すなわち柱梁架構14の面内方向へ加わる外力に対する座屈耐力に対し、弱軸方向、すなわち柱梁架構14の面外方向へ加わる外力に対する座屈耐力が小さい。
しかしながら、本実施形態によれば、方杖16が湾曲形状とされているため、方杖が直線形状とされている構成と比較して、柱梁架構14の面外方向へ加わる外力に対する限界荷重が大きくなる。このため、方杖16を湾曲形状とすることで、直線形状とされた方杖と比較して、方杖16の柱梁架構14における面外方向への座屈を抑制することができる。また、直線形状とされた方杖と比較して、方杖16の断面積を小さくすることができるため、材料コストを削減することができる。
さらに、方杖16が上向きに凸となるように湾曲しているため、直線形状とされた方杖と比較して、方杖16や柱梁架構14全体の意匠性を高めることができるとともに、特に梁12の下部の有効空間を広くとることができる。
また、本実施形態によれば、方杖16の長手方向両端面が柱10の一側面と梁12の下面にそれぞれ接合されている。このため、方杖16の側面が柱10や梁12に接合されている構成と比較して、方杖16によって柱10の曲げ変形をより抑制することができる。
さらに、本実施形態によれば、柱10のフランジ10A、10C間に補強プレート30が溶接されている。このため、補強プレート30によって柱梁架構14の面外方向における柱10の曲げ変形を抑制することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る柱の補強構造について、図3、図4を用いて説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については適宜説明を省略する。
<構成>
図3に示すように、第2実施形態では第1実施形態と同様に、複数(本実施形態では2本)の柱40の上部に梁42が架渡されて接合されており、この柱40と梁42とで柱梁架構44が構成されている。
また、柱梁架構44の構面44A内には、柱40を補強する補強部材としてのアーチ部材46が設けられている。アーチ部材46は、例えばH形鋼で構成された一対の湾曲材48と、湾曲材48同士を連結するジョイント部材50とからなり、隣合う柱40同士を繋ぐように設けられている。
具体的には、一対の湾曲材48は、柱梁架構44の面内方向が強軸方向とされており、全体が上向きに凸となるようにそれぞれ湾曲している。また、湾曲材48の長手方向一端面は、ボルト52によって柱40の一方のフランジ40Aにプレート54を介して接合されている。なお、湾曲材48の長手方向他端部には、図4(A)に示すように、上フランジ48A、下フランジ48B、及びウェブ48Cにそれぞれ複数のボルト孔56が形成されている。
ジョイント部材50は、例えばH形鋼で構成されており、柱梁架構44の面内方向が強軸方向とされているとともに、全体が上向きに凸となるように湾曲している。また、ジョイント部材50の長手方向両端部には、上フランジ50A、下フランジ50B、及びウェブ50Cにそれぞれ複数のボルト孔58が形成されている。
図4(A)、図4(B)に示すように、湾曲材48の長手方向他端部とジョイント部材50の長手方向両端部は、ウェブ48C、50C間に跨り、かつウェブ48C、50Cを挟み込む一対のプレート60によって固定されている。
具体的には、プレート60には複数のボルト孔60Aが形成されており、湾曲材48のボルト孔56、ジョイント部材50のボルト孔58、及びプレート60のボルト孔60Aにボルト62を挿通させることによって、プレート60を介して一対の湾曲材48とジョイント部材50とが互いに連結されている。
同様に、湾曲材48の上フランジ48Aとジョイント部材50の上フランジ50Aは、上フランジ48A、50A間に跨り、かつ上フランジ48A、50Aを挟み込む一対のプレート64を介してボルト66で固定されている。湾曲材48の下フランジ48Bとジョイント部材50の下フランジ50Bも、下フランジ48B、50B間に跨り、かつ下フランジ48B、50Bを挟み込む一対のプレート68を介してボルト70で固定されている。
また、ジョイント部材50の上フランジ50Aには、接続プレート72が立設されており、接続プレート72が梁42の長手方向における略中央部の下フランジ42Aに溶接されることによって、ジョイント部材50が梁42に固定されている。
さらに、第1実施形態と同様に、柱40の一方のフランジ40Aと他方のフランジ40Cとの間には、補強用の一対の補強プレート74が溶接されている。補強プレート74は、柱40の長手方向中央部分から梁42との接合部分である上部にわたって設けられており、フランジ40A、40Cと補強プレート74とによって閉断面が形成されている。
<作用及び効果>
本実施形態によれば、第1実施形態の方杖16と同様に、アーチ部材46が湾曲形状とされている。このため、例えばアーチ部材46の湾曲材48が直線形状とされている構成と比較して、アーチ部材46全体の柱梁架構14における面外方向への座屈を抑制することができる。
また、補強部材としてアーチ部材46を用いることで、直線形状とされた方杖等を用いる場合と比較して、柱梁架構44全体の意匠性を高めることができるとともに、特に梁42の下部の有効空間を広くとることができる。
さらに、本実施形態によれば、アーチ部材46が隣合う柱40同士を繋ぐように設けられており、アーチ部材46の長手方向における略中央部が梁42に接合されている。このため、アーチ部材46に加わる外力を柱40や梁42に分散させることができ、柱40や梁42を補強するリブプレートが不要となる。
(その他の実施形態)
以上、本発明について実施形態の一例を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能である。
例えば、第1、第2実施形態において、補強部材としての方杖16やアーチ部材46が上向きに凸となる湾曲形状とされていたが、下向きに凸となる湾曲形状とされていてもよい。この場合でも、補強部材が直線形状とされている構成と比較して、方杖16やアーチ部材46の柱梁架構14、44における面外方向への座屈を抑制することができる。
また、第2実施形態において、アーチ部材46が一対の湾曲材48と、湾曲材48同士を連結するジョイント部材50とで構成されていたが、アーチ部材46はアーチ形状の一部材で構成されていてもよい。
以下、本発明の実施例1及び比較例1について具体的に説明する。なお、本発明の実施形態は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
実施例1では、第1実施形態の方杖16と同様の湾曲形状とされたH形鋼の方杖モデルを作成した。なお、方杖モデルの長手方向両端面は、柱の一側面及び梁の下面にそれぞれピン接合されており、接合点間の直線距離は3mとされている。
[比較例1]
比較例1では、柱及び梁に対して角度をもって直線状に延びる従来のH形鋼の方杖モデルを作成した。なお、方杖モデルの長手方向両端面は、柱の一側面及び梁の下面にそれぞれピン接合されており、接合点間の直線距離は3mとされている。
<座屈解析>
実施例1の方杖モデル及び比較例1の方杖モデルについて、有限要素解析プログラムMIDASを用いて柱梁架構における面外方向の座屈時限界荷重をそれぞれ比較した結果、実施例1の方杖モデルの座屈時限界荷重は、比較例1の方杖モデルの座屈時限界荷重のおよそ2.5倍であった。本解析により、湾曲形状とされた方杖は、直線形状とされた方杖と比較して、柱梁架構の面外方向へ加わる外力に対する座屈時限界荷重が大きくなることが確認できた。
10、40 柱
10A、10C、40A、40C フランジ
12、44 梁
14、44 柱梁架構
14A、44A 構面
16 方杖(補強部材の一例)
30、74 補強プレート
46 アーチ部材(補強部材の一例)

Claims (2)

  1. 柱と、
    前記柱に接合された梁と、
    前記柱と前記梁とで構成される柱梁架構の構面内に設けられ、前記柱と前記梁に接合されるとともに上向きに凸となるように湾曲する補強部材と、
    を有し、
    前記補強部材は、長手方向一端部の該長手方向に交差するように形成された端面が前記柱の一側面に接合され、長手方向他端部の該長手方向に交差するように形成された端面が前記梁の下面に接合されている、柱の補強構造。
  2. 前記柱はH形鋼からなり、前記柱の一方のフランジに前記補強部材が接合されているとともに、前記一方のフランジと他方のフランジの間に前記一方のフランジ及び前記他方のフランジとによって閉断面を形成するように補強プレートが取付けられている、請求項1に記載の柱の補強構造。
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