JP6654727B2 - 潤滑油用エステル基油 - Google Patents
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Description
また、特許文献3には、後述する本発明のエステルと類似の構造を有する脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを50質量%以上含有する金属加工用不水溶性切削油基油が記載されているが、当該基油に含まれるエステルにおいて、アルコール残基側のアルキル基の炭素数は1〜8である。また、当該基油のアルキレンオキシドの平均モル数は1〜6であるが、モル数が多ければ多いほど、当該使用用途では、経時でエステル中の水分量が多くなり、加水分解などの劣化が起こりやすくなり、加工油としての寿命が縮むため、好ましくない。
[1] 下記式(1)
R1は、炭素数15〜21の直鎖又は分鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基であり、
R2は、炭素数9〜12の直鎖又は分鎖状のアルキル基であり、
Aは、炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基であり、
nは、アルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、0.1〜3.0である。)
で表されるエステルを含むことを特徴とする、潤滑油用エステル基油。
[2] R1-CO-残基がオレイン酸であることを特徴とする、前記[1]に記載のエステル基油。
[3] R2が分岐ノニル基又は分岐デシル基であることを特徴とする、前記[1]又は[2]に記載のエステル基油。
[4] 動粘度が14.0mm2/s未満であり、かつ、引火点が250℃以上であり、かつ、流動点が−10℃以下であることを特徴とする、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のエステル基油。
[5] 金属加工用であることを特徴とする、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のエステル基油。
本発明の潤滑油用エステル基油は、下記式(1)
R1は、炭素数15〜21の直鎖又は分鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基であり、
R2は、炭素数9〜12の直鎖又は分鎖状のアルキル基であり、
Aは、炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基であり、
nは、アルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、0.1〜3.0である。)
で表されるエステル(以下、「本発明のエステル」とも呼ぶ。)を含むことを特徴とする。
エステルを構成する脂肪酸中のオレイン酸以外の他の成分として、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等の炭素数が17以下である脂肪酸を用いてもよい。本発明のエステル基油においては、エステルを構成する脂肪酸の炭素数が17以下であるエステルの割合が、潤滑油全体に対して約0〜17.0(GC%)程度であり、約0〜16.0(GC%)程度であることがより好ましく、約0〜15.0(GC%)程度であることがより好ましい。本発明の潤滑油中のエステルを構成する脂肪酸の炭素数が17以下であるエステルの割合が、上記範囲内であることにより、本発明の所望の効果を得ることができる。
なお、潤滑油におけるエステルを構成する脂肪酸の炭素数が17以下であるエステルの含有割合を測定する方法は、例えば、ガスクロマトグラフ(GC)又はガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)等が挙げられる。
また、このような脂肪酸の混合物としては、好ましくは、市販品を用いることが出来る。
本発明のエステル基油において、水酸基価が、約0〜2.0mgKOH/g程度であり、約0〜1.0mgKOH/g程度であることがより好ましい。本発明の潤滑油中の水酸基価の割合が、上記範囲内であることにより、本発明のエステル基油における遊離アルコールの含有割合がより小さく、より本発明の課題を解決することができ、又はより本発明の効果を奏することができる。
エステル基油における遊離アルコールの含有割合を測定する方法として、例えば、当該技術分野で常用されるJIS K 0070等に記載された水酸基価測定等が挙げられるが、その他にガスクロマトグラフ(GC)又はガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)等も挙げられる。これらのGC又はGC-MSの方法により遊離アルコールの含有割合を測定した場合、エステル基油における遊離アルコールの含有割合は可及的に検出されないことが好ましい。
なかでも、低い動粘度と高い引火点を実現させやすい点から、オキシエチレン基(EO基)又はオキシプロピレン基(PO基)がより好ましく、オキシエチレン基(EO基)がさらに好ましい。AOは、オキシアルキレン基が1種のみであってもよく、オキシアルキレン基が2種以上含まれていてもよい。また、2種以上のオキシアルキレン基が含まれる場合、各オキシアルキレン基は、ブロック状に付加されていてもよく、ランダムに付加されていてもよい。
なお、実質的にエステルからなるエステル基油とは、例えば、エステルを約95〜100質量%程度含むエステル基油のことをいう。
本発明の潤滑油用エステル基油の製造方法は、式 H-(OA)n-OR2 で表されるオキシアルキレン基(AO)を有する炭素数9〜12のアルコールと、式 R1-COOHで表される炭素数15〜21の脂肪酸とを反応させて、上記した式(1)で表されるエステルを得る工程を含む。当該エステル基油は、通常のエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。
混合工程において、オキシアルキレン基(AO)を有するアルコールと脂肪酸とを混合する。オキシアルキレン基(AO)を有するアルコールと脂肪酸との当量比は、ポリオキシアルキレンエーテルに対し、脂肪酸が好ましくは0.8〜1.5当量であり、生産効率と経済性の点からさらに好ましくは0.9〜1.2当量であり、このような当量比に調整し、必要に応じて触媒を加えて反応を行なう。触媒としては、例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、スズ、亜鉛等のルイス酸触媒や硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのブレンステッド酸を使用できるが、これらに限定されない。
窒素気流下、オキシアルキレン基(AO)を有するアルコールと脂肪酸との混合物を約160℃以上(好ましくは約210〜230℃程度、より好ましくは約220℃程度)に加熱し、エステル化反応を進める。加熱時間は約1〜3時間程度が好ましく、約2時間程度がより好ましい。加熱工程は常圧下で行うことが好ましい。
加熱工程中、又は加熱工程後、油水分離器に溜まる反応水を、適宜除去することが好ましい。
エステル化反応を進めるために、例えば、約100〜150Torrに減圧する。当該減圧工程1は、好ましくは約210〜230℃程度、より好ましくは約220℃程度下で行う。時間は約3〜8時間程度が好ましく、約5〜6時間程度がより好ましい。
反応液の水酸基価が約5以下、例えば約3〜4程度になっていることを確認する。
エステル粗生成物中の余剰の脂肪酸を除去するために、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウム等のアルカリによる脂肪酸の中和精製を行ってもよいが、行わなくてもよい。このようなアルカリとの中和による脂肪酸除去工程を行わなくても低い動粘度かつ高引火点の潤滑油を製造できる点で、本発明の潤滑油の製造方法は優れている。
本発明の潤滑油用エステル基油の引火点は高い。本発明の潤滑油の引火点は、より具体的には例えば250℃以上であることが好ましく、約256℃〜265℃程度であることがより好ましく、約260〜265℃程度であることがさらに好ましい。本発明のエステル基油の引火点の範囲が上記範囲であることにより、使用時において揮発する油による汚れや臭気などの作業環境の悪化を改善でき、保管時において消防法では指定可燃物に分類され、さらには作業の安全性が確保される。
引火点は、例えば、JIS K−2265に従い、クリーブランド式オープンカップ法にて測定することができる。
動粘度は、例えば、JIS K−2283に従って測定することができる。
流動点は、例えば、JIS K−2269に従って測定することができる。
水酸基価:JIS K 0070に従って測定した。
動粘度:JIS K−2283に従って測定した。
引火点:JIS K−2265に従い、クリーブランド式オープンカップ法にて測定した。
流動点:JIS K−2269に従って測定した。
経時での水分量:エステル基油20gをφ34mmの試験管にいれ、常温で72時間攪拌した後の水分量をカールフィッシャーで測定した。
攪拌器、温度計、冷却管付きディーンスターク管を備えた1Lの4つ口フラスコに、オレイン酸(炭素数:18)397g(1.42モル)、イソノナノールであって、オキシエチレン基(EO基)が平均付加モル数で2.0モル付加したものを300g(1.29モル)、及び触媒として、酸化スズを総量に対し0.1重量%仕込み、窒素雰囲気下で220℃まで昇温した。220℃到達後、減圧し、留出してくる生成水をディーンスターク管で除去しながら、エステル化反応を行った。水酸基価が5.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了した。反応終了後、過剰の酸と低沸点成分を蒸留により除去してエステル化粗物を得た。次いで、得られたエステル化粗物を酸価(すなわち、エステル化粗物中の残オレイン酸量)に対して過剰の苛性ソーダ水溶液で中和後、中性になるまで水洗した。更に、得られたエステル化粗物に対してそれぞれ0.5重量%の活性炭と活性白土を投入し、80℃で30分攪拌した後、1時間減圧下で攪拌した。その後、常圧に戻し、濾過してそれらを除去し、本発明のエステル基油(エステルA)を得た。エステルAの物性値は下記の表1に示す通りである。なお、以下の表1及び表2において、「判定」の基準は、動粘度が14.0mm2/s未満であり、かつ、引火点が250℃以上であり、かつ、流動点が−10℃以下である場合のみを「○」とし、動粘度、引火点及び流動点のうち、1つでも基準を下回るものがあれば、「×」とすることとした。
実施例1のイソノナノールの代わりに、炭素数10であるイソデカノールであって、オキシエチレン基(EO基)が平均付加モル数で1.5モル付加したものを289g(1.29モル)使用した以外は、実施例1と同様の方法により、本発明のエステル基油(エステルB)を得た。エステルBの物性値は下記の表1〜3に示す通りである。
実施例1のイソノナノールの代わりに、炭素数12である1−ドデカノールであって、オキシエチレン基(EO基)が平均付加モル数で0.5モル付加したものを269g(1.29モル)使用し、得られたエステルに、流動点降下剤であるアクルーブ132をエステルの総量に対して1.0重量%加えた以外は、実施例1と同様の方法により、本発明のエステル基油(エステルC)を得た。エステルCの物性値は下記の表1に示す通りである。
実施例2のイソデカノールの代わりに、イソデカノールであって、オキシエチレン基(EO基)が付加していないもの、すなわち、平均付加モル数が0であるものを289g(1.29モル)使用した以外は、実施例2と同様の方法により、エステル基油(エステルD)を得た。エステルDの物性値は下記の表2〜3に示す通りである。
実施例2のイソデカノールの代わりに、イソデカノールであって、オキシエチレン基(EO基)が平均付加モル数で平均3.5モル付加したものを374.5g(1.29モル)使用した以外は、実施例2と同様の方法により、エステル基油(エステルE)を得た。エステルEの物性値は下記の表2〜3に示す通りである。
実施例2のイソデカノールの代わりに、イソデカノールであって、オキシエチレン基(EO基)が平均付加モル数で平均6.0モル付加したものを544.8g(1.29モル)使用した以外は、実施例2と同様の方法により、エステル基油(エステルF)を得た。エステルFの物性値は下記の表2〜3に示す通りである。
さらに、本発明のエステル基油(実施例1〜3)は、いずれも250℃以上の引火点を有するため、潤滑油として有用である。さらに、実施例3(エステルC)は、265℃という高い引火点であったので、特に好ましいものであった。詳細は不明であるが、R2を含めたエステル全体の分子量が高いことによるものと考えられる。
また、本発明のエステル基油(実施例1〜3)は、いずれも流動点が低く、−10℃以下であるため、寒冷地でも固化せずに使用可能な潤滑油として有用である。
そして、本発明のエステル基油(実施例1〜3)が、特に優れている点は、いずれも、動粘度が14.0mm2/s未満であり、かつ、引火点が250℃以上であり、かつ、流動点が−10℃以下であることから、動粘度、引火点及び流動点の性能バランスがよいことである。
これらの結果から、本発明のエステル基油は高い引火点を維持したまま、低い動粘度と低い流動点を満足し、経時での水分量の増加も可能な限り抑えられたものであることが判明した。
Claims (6)
- 下記式(1)
R1は、炭素数15〜21の直鎖又は分鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基であり、
R2は、炭素数9〜12の直鎖又は分鎖状のアルキル基であり、
Aは、炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基であり、
nは、アルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、0.1〜2.0である。)
で表されるエステルを含むこと、及び引火点が256℃以上であることを特徴とする、潤滑油用エステル基油。 - R1-CO-残基がオレイン酸であることを特徴とする、請求項1に記載のエステル基油。
- R2が分岐ノニル基又は分岐デシル基であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のエステル基油。
- 動粘度が40℃で14.0mm2/s未満であり、かつ、引火点が256℃〜265℃であり、かつ、流動点が−10℃以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエステル基油。
- 金属加工用であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエステル基油。
- R 1 が、不飽和の脂肪族炭化水素基であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエステル基油。
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