JP5604360B2 - 潤滑油基油 - Google Patents
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例えば、ペンタエリスリトールと、炭素数6〜14の直鎖飽和モノカルボン酸成分及び炭素数6〜10のα分岐飽和モノカルボン酸成分を特定の割合で混合した酸成分とにより合成される合成エステルを含有する合成潤滑油基油が提案されている(例えば、特許文献1)。
また、特定の脂肪酸エステルを主体として含む潤滑油組成物が提案されている(例えば、特許文献2)。
あるいは、特定の脂肪族カルボン酸モノエステルを含有し、動粘度が5〜15mm2/s、粘度指数100以上の軸受用潤滑油が提案されている(例えば、特許文献3)。
このように、摩擦低減効果を安定して得るためには、潤滑油組成物を、動粘度が低く(低動粘度)、かつ温度変化に対する粘度変化が小さいものにする必要がある。温度変化に対する粘度変化の度合いは粘度指数で表され、粘度指数が高い(高粘度指数)ほど、温度変化に対する粘度変化の度合いが小さい。
このため、潤滑油組成物には、各種機能を高めるために、ポリメタクリレート系ポリマー化合物又はポリオレフィン系ポリマー化合物等の粘度指数向上剤又は流動点降下剤、ジアルキルジチオリン酸亜鉛等の各種リン酸エステル類に代表される摩擦低減剤、ラウリルアルコール、オレイン酸等の油性剤、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、硫化オレフィン、塩素化パラフィン等の極圧剤、2.6−ジ−t−ブチルパラクレゾール、ジオクチルフェニルアミン、トリフェニルフォスファイト等の酸化防止剤、イソステアレート、ソルビタンオレート、アルケニルコハク酸等の腐食防止剤、シリコーン等の消泡剤、ベンゾトリアゾール、チアジアゾール、ジチオカーバメート等の金属不活性化剤、コハク酸、カルシウムスルホネート等の防錆剤、アルキル土類金属スルホネート、ポリアルケニルコハク酸イミド等の清浄分散剤等の添加剤が配合される。
さらには、エンジン油や油圧作動油等の様々な用途向けに、複数種の添加剤を組み合わせたパッケージ品が用いられている。
こうした問題に対し、例えば、トリメチロールプロパン(TMP)トリカプリレート、又はこれと1−ドデセンとの重合物を用いることで添加剤の溶解性の改善を図った発明が提案されている(例えば、特許文献4)。
特許文献4の発明は、製造工程が煩雑である上、動粘度が高くなるという問題がある。
そこで、潤滑油添加剤を良好に溶解でき、低動粘度と高粘度指数とをより高い次元で両立できる潤滑油基油を目的とする。
R1−CO−Qn−OR2 ・・・(I)
((I)式中、R1は炭素数7〜19の直鎖状の一価の炭化水素基を表し、R2は炭素数1〜8の一価の炭化水素基を表し、Qは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはアルキレンオキシドの平均付加モル数を表す3〜9の数である。)
R3−COO−R4 ・・・(II)
((II)式中、R3は炭素数7〜19の直鎖状の一価の炭化水素基を表し、R4は炭素数3〜8の一価の炭化水素基を表す。)
R5−COO−R6 ・・・(III)
((III)式中、R5は炭素数7〜9の直鎖状又は分岐鎖状の一価の飽和炭化水素基又は炭素数17〜19の一価の不飽和炭化水素基を表し、R6は水素又は炭素数1〜8の一価の炭化水素基を表す。)
本発明の潤滑油基油は、脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A)と脂肪酸アルキルエステル(B)と、脂肪酸ポリオールエステル(C)と、を含有するものである。
潤滑油基油は、潤滑油組成物の主成分である。潤滑油組成物中の潤滑油基油の含有量は、例えば、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上が特に好ましい。
脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A)(以下、(A)成分ということがある)は、下記(I)式で表されるものである。
R1の好ましい炭素数は、R1が飽和炭化水素基であれば、添加剤溶解性、耐熱性、粘度指数を高める観点からは15〜19が好ましく、動粘度及び流動点を低くする観点からは7〜11が好ましい。また、R1が不飽和炭化水素基であれば、添加剤溶解性、耐熱性、粘度指数を高める観点からは15〜19が好ましく、流動点を低くする観点からは7〜11又は17〜19が好ましい。なお、(A)成分は、R1の炭素数が異なるものの混合物であってもよい。
R1としては、添加剤溶解性、耐熱性、粘度指数を高め、かつ流動点を低くする観点から、炭素数17〜19の不飽和炭化水素基が好ましい。
なお、(A)成分を2種以上併用する場合、(A)成分のナロー率は、それぞれの(A)成分におけるナロー率であり、2種以上の(A)成分の混合物におけるナロー率ではない。
例えば、(A)成分を後述するエステル化法又はエステル交換法で得る場合には、原料のグリコールエーテルを蒸留して低沸点分と高沸点分とを分離して所望のナロー率のグリコールエーテルを得、これをエステル化又はエステル交換に用いることで(A)成分のナロー率を調節してもよい。
また、(A)成分を後述する直接反応法で得る場合、触媒の種類を変更したり、水酸化アルミナ・マグネシウムを焼成して得られる触媒等とNaOHやKOH等の塩基性物質とを併用したりすることで、(A)成分のナロー率を調節できる。
なお、(A)成分中のnはアルキレンオキシドの平均付加モル数であるが、(A)成分は広い付加モル数分布を有し、n=3の場合でも、(A)成分中には、アルキレンオキシド付加モル数が1や2の化合物を含有する。また、n=9の場合も、アルキレンオキシド付加モル数が10、11、12等の高付加モル体を含有する。ナロー率の算出には、これらの構造の含有率(質量%)も算入した上で行う。即ち、iは1以上の整数を取り得る数である。
上述した(A)成分の中でも、低動粘度と高粘度指数とを両立させる観点から、(a2)成分、(a3)成分、(a4)成分、(a6)成分が好ましく、さらに耐熱性に優れる点で(a2)成分、(a3)成分、(a4)成分がより好ましい。
(A)成分の製造方法としては、例えば、脂肪酸又は脂肪酸エステルをグリコールエーテルでエステル化する方法(エステル化法)、脂肪酸エステルとグリコールエーテルとをエステル交換する方法(エステル交換法)、脂肪酸エステルにアルキレンオキシドを直接付加させる方法(直接反応法)等が挙げられ、中でも直接反応法が好ましい。エステル化法及びエステル交換法は、未反応原料等を除去するために、付加モル数の小さい(A)成分が除去されやすい。このため、エステル化法又はエステル交換法で得られる(A)成分はナロー率が高くなり、粘度指数が低くなりやすい。一方、直接反応法は、ナロー率が低い(A)成分を容易に製造できると共に、工程が簡略であり、工業的な製造に好適である。
なお、直接反応法としては、特開平8−169861号公報に記載の方法が挙げられる。
脂肪酸アルキルエステル(B)(以下、(B)成分ということがある)は、下記(II)式で表されるものである。潤滑油基油は、(B)成分を含有することで、添加剤溶解性が向上する。
R3の好ましい炭素数は、R3が飽和炭化水素基であれば、添加剤溶解性、粘度指数を高める観点からは9〜19が好ましく、また、流動点を低くする観点からは7〜11が好ましい。また、R3が不飽和炭化水素基であれば、粘度指数を高めつつ流動点を低くする観点からは17〜19が好ましい。
R3の炭素数は、添加剤溶解性、粘度指数を高め、かつ動粘度及び流動点を低くする観点から、9〜11がより好ましい。
R4の炭素数は、3〜8であり、4〜8が好ましい。上記範囲内であれば添加剤溶解性を向上できる。
R4は、添加剤溶解性をより高め、流動点を低くする観点から、炭素数4〜8の分岐鎖状であることが好ましい。
脂肪酸ポリオールエステル(C)(以下、(C)成分ということがある)は、下記一般式(III)で表される脂肪酸又は脂肪酸アルキルエステル(以下、総じて(c1)成分ということがある)と、下記一般式(IV)で表される多価アルコール(以下、(c2)成分ということがある)とを反応させて得られるものである。(C)成分を含有することで、添加剤溶解性、耐熱性を向上できる。
R5が炭素数7〜9の飽和炭化水素基である場合、該炭化水素基は直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよく、中でも、高い粘度指数が得られる観点から直鎖状が好ましい。
R5が炭素数17〜19の不飽和炭化水素基である場合、該炭化水素基は直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、中でも、高い粘度指数が得られる観点から直鎖状が好ましい。
また、R7は飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基のいずれであってもよいが、入手しやすさの観点から飽和炭化水素基が好ましい。
(C)成分の製造方法としては、例えば、(c1)成分である脂肪酸と(c2)成分とを触媒の存在下で任意の温度に加熱して、(c2)成分で(c1)成分をエステル化する(エステル化工程)もの(エステル化法)が挙げられる。
エステル化工程における触媒の使用量は、触媒の種類等を勘案して決定でき、例えば、(c1)成分と(c2)成分との合計100質量部に対し、0.01〜5.0質量部とされる。
エステル化工程における加熱温度は、例えば、150〜260℃とされる。
精製工程は、未反応の(c1)成分、(c2)成分、副生物の水及び触媒を除去する工程である。精製工程には、従来公知の精製方法を用いることができ、例えば、焼成珪藻土等の濾過助剤を用いて濾別する方法、遠心分離、減圧留去等が挙げられる。
エステル交換工程における触媒の使用量は、触媒の種類等を勘案して決定でき、例えば、(c1)成分と(c2)成分との合計100質量部に対し、0.01〜5.0質量部とされる。
エステル交換工程における加熱温度は、例えば、150〜260℃とされる。
精製工程は、未反応の(c1)成分、(c2)成分、副生物のアルコール及び触媒を除去する工程である。
エステル交換工程の後に設ける精製工程は、エステル化工程の後に設ける精製工程と同じである。
潤滑油基油は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて任意成分を含有できる。任意成分としては、例えば、鉱油、PAO、イソブテン等の炭化水素油等、(A)〜(C)成分以外の潤滑油基油(任意油基油)等が挙げられる。任意基油を含有することで、動粘度、粘度指数、耐熱性、流動点等の諸特性を調節できる。
潤滑油基油中の任意基油の含有量は、1〜50質量%が好ましく、高粘度指数を維持する観点から5〜20質量%がより好ましい。
潤滑油基油の40℃における動粘度は、7〜30mm2/sが好ましく、8〜22mm2/sがより好ましく、9.8〜15mm2/sがさらに好ましい。40℃における動粘度が上記下限値以上であれば、高温下において動粘度が低下して油膜が薄くなりすぎることを抑制しやすく、油膜切れによる摩擦力の増大や摩耗等を抑制しやすい。40℃における動粘度が上記上限値以下であれば、低摩擦損失(低トルク)で省エネとなり、潤滑油基油の持ち出しが少なく経済的である。
潤滑油基油の製造方法は、特に限定されず、(A)〜(C)成分を任意の温度条件下で攪拌混合する方法が挙げられる。攪拌混合する装置としては、従来公知の攪拌翼付きの配合槽、減圧により脱水可能な装置を備えた攪拌翼付の精製槽等が挙げられる。
本発明の潤滑油基油は、これらの潤滑油添加剤を良好に溶解できるため、潤滑油添加剤の機能を十分に発揮できる。
そして、低動粘度と高粘度指数とが高い次元で両立されているため、各種緩衝器の油圧作動油の基油に好適である。
(使用原料)
<(A)成分:脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A)>
(A)成分として、表1に示す仕様の下記A−1〜A−6を用いた。
A−1:ポリオキシプロピレンラウリン酸メチルエーテル(M12−7PO,プロピレンオキシド7モル付加物,後述する製造例1で製造したもの)
A−2:ポリオキシプロピレンC18混合脂肪酸メチルエーテル(M182−7PO,プロピレンオキシド7モル付加物,後述する製造例2で製造したもの)
A−3:ポリオキシアルキレンC18混合脂肪酸メチルエーテル(M182−5EO−3PO,エチレンオキシド5モルとプロピレンオキシド3モルとの付加物,商品名:レオファットOC−0503M,ライオン株式会社製)
A−4:ポリオキシプロピレンC18混合脂肪酸メチルエーテル(M182−5PO,プロピレンオキシド5モル付加物,後述する製造例3で製造したもの)
A−5:ポリオキシプロピレンC18混合脂肪酸メチルエーテル(M182−7PO,プロピレンオキシド7モル付加物,後述する製造例4で製造したもの)
A−6:ポリオキシプロピレンC18混合脂肪酸メチルエーテル(M182−3PO,プロピレンオキシド3モル付加物,後述する製造例5で製造したもの)
(A’)成分として、表1に示す仕様の下記A’−1、A’−2を用いた。
A’−1:ポリオキシプロピレンC18混合脂肪酸メチルエーテル(M182−5PO,プロピレンオキシド5モル付加物,後述する製造例6で製造したもの)
A’−2:ポリオキシプロピレンC18混合脂肪酸メチルエーテル(M182−5PO,プロピレンオキシド5モル付加物,後述する製造例7で製造したもの)
(B)成分として、表1に示す仕様の下記B−1〜B−4を用いた。
B−1:オレイン酸−2エチルヘキシル(C18:1−2EH,商品名:ユニスターMB−881,日油株式会社製)
B−2:ラウリン酸−2エチルヘキシル(C12−2EH,商品名:パステル2H−12,ライオン株式会社製)
B−3:カプリル酸−2エチルヘキシル(C8−2EH,商品名:パステル2H−08,ライオン株式会社製)
B−4:ラウリン酸−イソプロピル(C12−イソプロピル,後述する製造例8で製造したもの)
(B’)成分として、表1に示す仕様の下記B’−1を用いた。
B’−1:ラウリン酸メチルエステル(M12、商品名:パステルM12、ライオン株式会社製)
(C)成分として、表1に示す仕様の下記C−1〜C−4を用いた。
C−1:トリメチロールプロパントリカプリレート(TMP−C8,商品名:ルビノールF−308N,ライオン株式会社製)
C−2:トリメチロールプロパントリカプレート(TMP−C10,商品名:ルビノールF−310N,ライオン株式会社製)
C−3:トリメチロールプロパントリオレート(TMP−C18:1,商品名:ユニスターH−381R、日油株式会社製)
C−4:ペンタエリスリトールテトラオレート(ペンタエリスリトール−C18:1,商品名:ユニスターH−481R、日油株式会社製)
(C’)成分として、表1に示す仕様の下記C’−1を用いた。
C’−1:ネオペンチルグリコール−ジカプレート(ネオペンチルグリコール−C10,後述する製造例9で製造したもの)
<ナロー率>
(A)成分又は(A’)成分それぞれのアルキレンオキシドの付加モル数の分布測定及びナロー率の算出は下記の手順により行った。
(A)成分又は(A’)成分0.5gをアセトン10gに溶解して試料とした。この試料1μLを下記仕様の装置に注入して、(A)成分又は(A’)成分におけるアルキレンオキシドの付加モル数毎の濃度(質量%)を測定した。得られた濃度から、前述の(1)式によりナロー率を算出した。
ガスクロマトグラム:HP−5890(ヒューレットパッカード社製)
検出器:FID
カラム:Ultra2、φ0.25mm×長さ25m、膜厚0.1μm
Injection:320℃
Detecter:320℃
温度:80℃→100℃(昇温速度:5℃/min)
100℃→320℃(昇温速度:25℃/min)、20minホールド
キャリアガス:He
スプリット比:50対1
スプリットベント流量:50mL/min
パージベント流量:3.5mL/min
EO(エチレンオキシド),PO(プロピレンオキシド)の平均付加モル数は、原料及びアルキレンオキシドの仕込みの質量の収支から計算で求めた。ただし、EO、POの付加反応後に蒸留を行った場合には、以下の1H−NMR分析により平均付加モル数を求めた。
得られた化合物30mgを4mLの重クロロホルムに溶解し、1H−NMR(300MHz、日本電子株式会社製 FT NMR SYSTEM JNM−LA300)にて測定した。重クロロホルムのケミカルシフトを7.30ppm基準として、ケミカルシフト0.87ppm(脂肪酸の末端メチル)、1.13〜1.15ppm(POの側鎖メチル)、3.32〜3.66ppm(POのメチンとメチレン)、3.52〜3.71ppm(EOのメチレン)の各ピークの積分値比率から計算で求めた。
40℃又は100℃における動粘度をJIS K2283に準拠して測定した。
試料をキャノンフェンスケ型動粘度管に採取し、40℃又は100℃に保持した恒温槽で30分以上保温し、該キャノンフェンスケ型動粘度管において試料を流下させた際の時間を計測した。
粘度指数をJIS K2283に準拠し、40℃及び100℃の動粘度を下記(2)式及び下記(3)に引用して算出した。算出した粘度指数を下記評価基準に分類して評価した。
N=(logH−logU)/logY ・・・(3)
U:試料の40℃における動粘度(mm2/s)。
Y:試料の100℃における動粘度(mm2/s)。
H:100℃において試料と同一の動粘度をもつ、粘度指数100の石油製品の40℃における動粘度(mm2/s)。JIS K2283の付表から該当する動粘度を読み取って引用する。
N:YをHとUの比に一致させるために必要なべき数。
◎:粘度指数が170以上。
○:粘度指数が150以上170未満。
×:粘度指数が150未満。
流動点は、JIS K2269に準拠して測定した。
−20℃以下を「○」(合格)とし、−20℃超を「×」(不合格)とした。
耐熱性は、DRY−BLOCK−BATH装置(アズワン株式会社製、THB−2)にて測定した。ガラスビン(SV−30、NICHIDEN−RIKA GLASS CO,LTD.)に試料5gを採取し、130℃に到達した時点から、72時間保持した後の質量を記録し、試験前後の質量減少率を下記(4)式により求め、これを耐熱性の指標とした。求めた質量減少率を下記評価基準に分類し、「○」以上を合格とした。
◎:質量減少率が3質量%未満。
○:質量減少率が3質量%以上4質量%未満。
△:質量減少率が4質量%以上5質量%未満。
×:質量減少率が5質量%以上。
各例の潤滑油基油39.6gに、潤滑油添加剤としてHiTEC 9325G(添加剤パッケージ,Afton chemical社(アメリカ)製,以下、添加剤A)又はHiTEC 638(無灰分散剤,Afton chemical社(アメリカ)製,以下、添加剤B)0.4gを加え、振とう混合して試料を調製した。潤滑油添加剤の溶けやすさ、振とう混合後の外観から、添加剤溶解性を下記評価基準に従い評価した。添加剤A及びBのいずれも「○」又は「◎」のものを総合評価「○」(合格)とし、添加剤A及び/又はBが「×」又は「△」のものを総合評価「×」(不合格)とした。
◎:室温でも容易に均一に溶解し、かつ室温で1日間静置後の外観が透明液体。
○:60℃に加熱すると均一に溶解し、かつ室温で1日間静置後の外観が透明液体。
△:60℃に加熱すると均一に溶解し、60℃では透明だが、室温で1日静置後は沈殿又は濁りを生じる。
×:60℃に加熱しても、均一に溶解しない。
以下の手順に従い、ラウリン酸メチルエステルとグリコールエーテルとのエステル交換によりA−1を製造した。
4Lオートクレーブ内の窒素置換を2度行った後、メタノール(純正化学株式会社製)388gと、触媒として28質量%ナトリウムメトキシド8.9gを仕込んだ。その後、90℃まで昇温し、POを2112g(メタノール1モルに対して3.0モルに相当)を徐々に導入してPO付加反応を行った。PO導入時の圧力は0.48MPaであった。反応進行と共に圧力が低下し、2時間後に0.39MPaで一定となるまでPO付加反応を継続して行い、一次中間体A(メタノール−3PO体)を得た。
次いで、1223gの一次中間体Aを4Lオートクレーブに仕込み、90℃まで昇温した後、さらにPO861g(一次中間体A1モルに対して2.5モルに相当)を徐々に導入してPO付加反応を行った。PO導入時の圧力は0.49MPaであった。その後圧力が反応進行と共に低下し、2時間後に0.38MPaで一定となるまでPO付加反応を継続して行った。冷却後、キョーワード600S及びキョーワード700SL(以上、無機合成吸着剤,協和化学工業株式会社製)を各20g(粗製物に対して1質量%)添加し、95℃で30分間攪拌して触媒の吸着処理を行い、80℃で加圧ろ過による固液分離を行うことで二次中間体A(メタノール−5.5PO体)を得た。さらに、常圧から5Torr(0.7kPa)まで段階的に減圧しながら、常温から180℃まで昇温することで、POの付加モル数が0〜3の低沸点留分を除去した三次中間体A(メタノール−7PO体、蒸留品)を得た。
その後、攪拌翼付きの5L4つ口フラスコに、三次中間体A1097gと、ラウリン酸メチル(パーム油由来の炭素数12留分由来の脂肪酸メチルエステル、商品名:パステルM12、ライオン株式会社製)508g(三次中間体1モルに対して0.95モルに相当)と、炭酸水素ナトリウム7.3gを仕込み、攪拌下、常圧から5Torr(0.7kPa)まで段階的に減圧しながら、60℃から210℃まで昇温して、未反応のラウリン酸メチルが2質量%以下になるまでエステル交換反応を行い、粗製物を得た。その後、1000gの粗製物に対し、キョーワード500SH及びキョーワード700SL(いずれも協和化学工業株式会社製)を各10g(粗製物に対し1質量%)添加し、95℃で1時間加熱して吸着処理を行った。さらに、ハイフロスーパーセル(商品名,セライト社製)10g(粗製物に対し1質量%)を添加し、均一に分散させた後、80℃で加圧ろ過を行うことで、POの平均付加モル数が7モルのA−1(M12−7PO、R1=C11H23、R2=CH3)を得た。
ラウリン酸メチルエステルに換えて、オレイン酸メチル(パーム油由来の炭素数18留分由来のC18混合脂肪酸メチルエステル(C16/C18:0/C18:1/C18:2=3/10/70/17)、商品名:パステルM182、ライオン株式会社製)を三次中間体A1モルに対し0.95モル用い、常圧から5Torr(0.7kPa)まで段階的に減圧しながら、60℃から260℃まで昇温した以外は、製造例1と同様にして、A−2(M182−7PO、R1=C17H33、R2=CH3)を製造した。
以下の手順に従い、オレイン酸メチル(パーム油由来の炭素数18留分由来のC18混合脂肪酸メチルエステル(C16/C18:0/C18:1/C18:2=3/10/70/17)、商品名:パステルM182、ライオン株式会社製)にプロピレンオキシドを直接付加させてA−4を製造した。
2.5MgO・Al2O3・nH2Oで表される水酸化アルミナ・マグネシア(キョーワード300SN、協和化学工業株式会社製)を窒素気流下、750℃で3時間焼成し、焼成水酸化アルミナ・マグネシウム(Al/Mgモル比=0.44/0.56)触媒を得た。4Lオートクレーブに、パステルM182(商品名、ライオン株式会社製)908gと、焼成水酸化アルミナ・マグネシウム触媒7.2gを仕込み、窒素置換を行った。次いで、原料に含まれる水分を除去するため、100℃まで昇温し、5Torr(0.7kPa)で1時間脱水処理を行った。脱水処理後、180℃まで昇温して、窒素を導入してオートクレーブの反応缶内を常圧に戻し、プロピレンオキシド(PO)885g(オレイン酸メチル1モルに対して5モルに相当)を徐々に容器内へ導入した。導入終了直後、0.34MPaであった圧力が反応進行とともに低下し、2時間後に圧力0.29MPaで一定となるまでPO付加反応を継続して行った。得られた粗製物1350gにハイフロスーパーセル(セライト社製:珪藻土)20.25g(粗製物に対し1.5質量%)を添加し、均一に分散させた後、80℃で加圧ろ過を行い、A−4(M182−5PO、R1=C17H33、R2=CH3)を得た。
POの導入量を1239gとした以外は、製造例3と同様にしてA−5(M182−7PO、R1=C17H33、R2=CH3)を得た。
POの導入量を531gとした以外は、製造例3と同様にしてA−6(M182−3PO、R1=C17H33、R2=CH3)を得た。
製造例1の一次中間体A1412gを4Lオートクレーブに仕込み、90℃まで昇温した後、さらにPO795g(一次中間体A1モルに対して2モルに相当)を徐々に導入してPO付加反応を行った。PO導入時の圧力は0.49MPaであった。その圧力が反応進行と共に低下し、2時間後に0.38MPaで一定となるまでPO付加反応を継続して行った。その後、蒸留操作を行わずに、キョーワード600S及びキョーワード700SL(以上、無機合成吸着剤,協和化学工業株式会社製)を各22g(粗製物に対して1質量%)添加し、95℃で30分間攪拌して触媒の吸着処理を行い、80℃で加圧ろ過による固液分離を行うことで二次中間体A’(メタノール−5PO体)を得た。その後、二次中間体A’を5L4つ口フラスコに入れ、常圧から5Torr(0.7kPa)まで段階的に減圧しながら、常温から260℃まで昇温することで、POの付加モル数が0〜2の低沸点留分とPOの付加モル数が8以上の高沸点留分を除去し、三次中間体A’(メタノール−5PO体、蒸留品)を得た。
その後、オレイン酸メチル(パーム油由来の炭素数18留分由来のC18混合脂肪酸メチルエステル(C16/C18:0/C18:1/C18:2=3/10/70/17)、商品名:パステルM182、ライオン株式会社製)を三次中間体A’の1モルに対し0.95モル用いた以外、製造例2と同様にしてA’−1(M182−5PO、R1=C17H33、R2=CH3)を得た。
製造例6の二次中間体A’(メタノール−5PO体)1モルに対し、オレイン酸メチル(パーム油由来の炭素数18留分由来のC18混合脂肪酸メチルエステル(C16/C18:0/C18:1/C18:2=3/10/70/17)、商品名:パステルM182、ライオン株式会社製)を0.95モル用いた以外、製造例2と同様にしてA’−2(M182−5PO、R1=C17H33、R2=CH3)を得た。
製造例1の三次中間体Aに換えてイソプロパノール360gを用い、ラウリン酸メチル(パーム油由来の炭素数12留分由来の脂肪酸メチルエステル、商品名:パステルM12、ライオン株式会社製)を1223g(イソプロパノール1モルに対して0.95モルに相当)とした以外は、製造例1と同様にしてエステル交換反応を行い、B−4(C12−イソプロピル、R3=C11H23、R4=CH(CH3)2)を得た。
製造例1の三次中間体Aに換えてネオペンチルグリコール313gを用い、ラウリン酸メチルに換えてカプリン酸メチル(パーム油由来の炭素数10留分由来の脂肪酸メチルエステル、商品名:パステルM10、ライオン株式会社製)1339g(ネオペンチルグリコール1モルに対して2.4モルに相当)を用いた以外は、製造例1と同様にしてエステル交換反応を行い、C’−1(ネオペンチルグリコール−C10)を得た。
表2〜4に示す組成に従い、各成分を5L4つ口フラスコに投入し、室温(25℃)で、15分間攪拌した。攪拌後、100℃に昇温し、5Torr(0.7kPa)まで減圧して脱水し、各例の潤滑油基油を得た。得られた潤滑油基油について、動粘度、流動点、質量減少率を測定し、粘度指数、添加剤溶解性、耐熱性を評価した。これらの結果を表中に示す。
なお、表中の各成分の配合量は、純分換算量である。
(B)成分に換えて(B’)成分を用いた比較例3、5、7は、添加剤溶解性の総合評価が「×」、耐熱性の評価が「×」であった。
(C)成分に換えて(C’)成分を用いた比較例4、6、7は、添加剤溶解性の総合評価が「×」であった。
(A)成分の含有量が5質量%の比較例9は、粘度指数の評価、添加剤溶解性の総合評価が「×」であり、(A)成分の含有量が80質量%の比較例8は、粘度指数の評価が「◎」であるものの、添加剤溶解性の総合評価が「×」であった。
(B)成分の含有量が3質量%の比較例10は、粘度指数の評価が「◎」であるものの、添加剤溶解性の総合評価が「×」であり、(B)成分の含有量が70質量%の比較例11は、添加剤溶解性の総合評価及び耐熱性の評価が「×」であった。
(C)成分の含有量が70質量%の比較例12、及び(C)成分の含有量が3質量%の比較例13は、添加剤溶解性が「×」であった。
これらの結果から、本発明を適用することで、添加剤溶解性に優れ、低動粘度と高粘度指数とを両立できることが判った。
Claims (1)
- 下記一般式(I)で表され、下記(1)式で表されるナロー率が55〜80%である脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A)10〜70質量%と、
下記一般式(II)で表される脂肪酸アルキルエステル(B)5〜60質量%と、
下記一般式(III)で表される脂肪酸又は脂肪酸アルキルエステルと下記一般式(IV)で表される多価アルコールとを反応させて得られる脂肪酸ポリオールエステル(C)5〜60質量%と、を含有する潤滑油基油。
R1−CO−Qn−OR2 ・・・(I)
((I)式中、R1は炭素数7〜19の直鎖状の一価の炭化水素基を表し、R2は炭素数1〜8の一価の炭化水素基を表し、Qは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはアルキレンオキシドの平均付加モル数を表す3〜9の数である。)
R3−COO−R4 ・・・(II)
((II)式中、R3は炭素数7〜19の直鎖状の一価の炭化水素基を表し、R4は炭素数3〜8の一価の炭化水素基を表す。)
R5−COO−R6 ・・・(III)
((III)式中、R5は炭素数7〜9の直鎖状又は分岐鎖状の一価の飽和炭化水素基又は炭素数17〜19の一価の不飽和炭化水素基を表し、R6は水素又は炭素数1〜8の一価の炭化水素基を表す。)
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