JP6648867B1 - プレス部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
曲げ主体の成形工法に用いられる金型は、一般的に、ダイ(下型)、パンチ(上型)及び成形中にブランク材を安定させるパッドから構成される。しかしながら、湾曲部のフランジ端で発生する伸びフランジ割れは、上記の曲げ主体の成形においても問題となる場合が多い。
特許文献1には、L字形状部品の製造において、ブランク材のL字の下側に相当する部分の端部が製品の天板部と同一平面上にある状態でパッドによりブランク材を加圧し、その状態で、上型によって曲げ成形を行う方法が開示されている。
特許文献2には、ブランク材に対し短手縁部に沿って延びる直線状のビードや段差を形成した後に、縦壁部及びフランジ部を曲げ成形する方法が開示されている。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、簡易に且つより安定して湾曲部での伸びフランジ割れを抑えることが可能な技術を提供することを目的とする。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
まず、本発明に基づく第1実施形態について説明する。
本実施形態のプレス部品1の製造方法は、金属板(ブランク材とも呼ぶ)を予め設定したプレス形状にプレス成形して製造するプレス部品1の製造方法である。設定したプレス形状は、外周縁の一部が内方へ凹むように湾曲した湾曲外周縁部2aを有する天板部2と、天板部2の湾曲外周縁部2aに連続する縦壁部3Aと、その縦壁部3Aに連続して天板部2側に屈曲するフランジ部4Aとを有する部品形状(図1参照)である。
本実施形態のプレス部品1の製造方法は、金属板が、引張強度590MPa以上、好ましくは780MPa以上の高張力鋼板からなる場合に好適な技術である。
本実施形態のプレス部品1の製造方法は、曲げ主体のプレス成形でプレス部品1を製造する。本実施形態のプレス成形で使用するプレス成形金型は、上型40(曲げ型)、下型20(パンチ)及びパッド30を備える(図6、図7参照)。
材料の移動は、主として、湾曲外周縁部2aから金属板10の端部までの距離が小さい側で発生する。また、図3のような部品形状の場合、湾曲外周縁部2aの右側(紙面右側)に連続する直線状の外縁部に対し連続した縦壁部位置でも、曲げ成形時に縦壁部側への材料の移動が発生する。
このため、稜線20aを、湾曲外周縁部2aから金属板10の端部までの距離が小さい側に配置している。
稜線20aは、必ずしも直線状に延在している必要はなく、やや曲線を描くように形成しても良い。またCAD解析などの構造解析を行って、材料の移動方向Sを推定し、その推定した材料の移動方向Sと直交するように稜線20aの延在方向を設定しても良い。
また、本実施形態では、各稜線20aの設定位置について、上型40の相対移動による縦壁部3及びフランジ部4の成形が完了した状態では、天板部2が、全ての稜線20aの位置よりも縦壁部3側に存在している位置に設定することが好ましい。
以下の説明では、各稜線20aの設定位置について、上型40の相対移動による縦壁部3及びフランジ部4の成形が完了した状態では、天板部2の位置が、全ての稜線20a位置よりも縦壁部3側に存在するような位置に設定されているとして説明する(図9参照)。
以上の本成形工程の前工程として、天板面等に部分的な形状を付与する工程を設けても良い。また、以上の本成形工程の後工程として、最終製品へのリストライクや外周のトリム加工を実施しても良い。すなわちスポット溶接用の座面などの形状の付与やトリムピアス工程、リストライク工程を、前後の工程として追加することは可能である。また、材料移動が発生する天板部2の領域には折れ線以外の形状の付与は摺動痕が発生する恐れがあるため極力避けることが望ましい。しかし、材料移動が発生しない領域への形状付与は問題ない。
以下の例では、図2に示すような金属板10を、図3に示すような部品形状の部品1にプレス成形で製造する場合を例に挙げて説明する。
金属板10は、図4に示すように、下型20の天板面上に設置され、図5のように、湾曲部(内方へ凹むように湾曲した湾曲外周縁部2a)の天板部2に相当する金属板10部分を含む挟持領域Pを、下型20に対しパッド30で押さえて下型20とパッド30で挟持する。
このとき、縦壁部3及びフランジ部4を曲げ成形する際に、少なくとも湾曲部及びその近傍では、挟持している金属板10部分が縦壁部3側に移動可能なパッド圧に設定する。
このとき、図5の紙面下側部分に位置して天板部2の直線状に延びる、湾曲外周縁部2a以外の外縁部2bに連続する縦壁部3及びフランジ部4は、図6に示すように、上型40のプレス方向への移動によって、金属板10が、曲げ成形されて縦壁部3及びフランジ部4が形成される。
また、この成形の際、湾曲外周縁部2aに連続する縦壁部3A及びフランジ部4Aの部分では、図7に示すように、パッド30と下型20で挟持されている金属板10部分の材料が縦壁部3A側に移動する。
このように、本実施形態では、材料の移動の際に、金型と材料との間の摩擦抵抗以外に、材料に曲げ曲げ戻し抵抗を連続して発生させることができるため、成形中の天板面での材料の移動量が安定する。ここで、曲げ曲げ戻し抵抗は、摩擦抵抗より大きく、量産での変動を受けにくい。このため、本実施形態では、材料移動の量産での変動が小さくすることができ、散発的な伸びフランジ割れをより効果的に抑えることができる。
なお、上記の稜線20aの設定条件(折れ角度α、曲げ半径R1)は、製品形状やめっきなどの材料の表面状態、金属板10の形状などによって適切な条件が存在する。適切な条件はFEM解析によるコンピュータシミュレーションから求めることも可能である。また稜線20a、30aは材料移動が発生する領域の全長に設定することが好ましい。
また、成形中は湾曲部分の天板部2に相当する位置でシワが発生しやすく、パッド圧がシワ発生を抑えることができないほど小さい場合、パッド30と上型40の隙間が大きくなり、稜線20a、30aによる曲げ曲げ戻し抵抗の発生が不安定となる。よって、パッド30は成形中に湾曲部分の天板部2の面にシワが発生しない圧力で押さえることができるように、圧力や形状を設定することが好ましい。
以上のように、本実施形態にあっては、伸びフランジ割れが懸念されるL字やT字部品を量産でも安定して安価で製造ができる。
なお、図7では、上方に凸となるように稜線20aを設定した場合を例示しているが、図10に示すように、下方に凸となるように稜線20aを設定しても良い。
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。
第1実施形態では、挟持領域Pに設けた1条又は2条以上の稜線が、曲げ成形が完了した状態では、天板部2の位置が全ての稜線位置よりも縦壁部3側に存在する位置に設定する。これに対し、第2実施形態では、挟持領域Pに設けた全ての稜線のうちの少なくとも1条の稜線の少なくとも一部が、曲げ成形が完了した状態では、天板部2と重なるように、各稜線の位置を設定する点で、第1実施形態と異なる。
その他の構成については、第2実施形態の構成は、上記の第1実施形態と同様な構成となっている。
また、第1実施形態と同様な構成については、同一の符号を付して説明する。
本実施形態のプレス部品1の製造方法は、金属板が、引張強度590MPa以上、好ましくは780MPa以上の高張力鋼板からなる場合に好適な技術である。
本実施形態のプレス部品1の製造方法も、曲げ主体のプレス成形でプレス部品1を製造する。本実施形態のプレス成形で使用するプレス成形金型は、上型40(曲げ型)、下型20(パンチ)及びパッド30を備える(図13、図14参照)。
材料の移動は、主として、湾曲外周縁部2aから金属板10の端部までの距離が小さい側で発生する。また、図3のような部品形状の場合、湾曲外周縁部2aの右側(紙面右側)に連続する直線状の外縁部に対し連続した縦壁部位置でも、曲げ成形時に縦壁部側への材料の移動が発生する。
このため、稜線20aを、湾曲外周縁部2aから金属板10の端部までの距離が小さい側に配置している。
稜線20aは、必ずしも直線状に延在している必要はなく、やや曲線を描くように形成しても良い。またCAD解析などの構造解析を行って、材料の移動方向Sを推定し、その推定した材料の移動方向Sと直交するように稜線20aの延在方向を設定しても良い。
また、本実施形態では、各稜線20aの設定位置について、上型40の相対移動による縦壁部3及びフランジ部4の成形が完了した状態では、全ての稜線20aのうちの少なくとも1条の稜線20aの少なくとも一部が、曲げ成形が完了した状態では天板部2と重なるように、各稜線20aの位置を設定する。稜線20aが1条だけである場合には、その稜線20aの少なくとも一部が曲げ、成形が完了した状態では、上記天板部2と重なるように設定する(図16参照)。
以上の本成形工程の前工程として、天板面等に部分的な形状を付与する工程を設けても良い。また、以上の本成形工程の後工程として、最終製品へのリストライクや外周のトリム加工を実施しても良い。すなわちスポット溶接用の座面などの形状の付与やトリムピアス工程、リストライク工程を、前後の工程として追加することは可能である。また、材料移動が発生する天板部2の領域には折れ線以外の形状の付与は摺動痕が発生する恐れがあるため極力避けることが望ましい。しかし、材料移動が発生しない領域への形状付与は問題ない。
以下の例では、図2に示すような金属板10を、図3に示すような部品形状の部品1にプレス成形で製造する場合を例に挙げて説明する。
金属板10は、図11に示すように、下型20の天板面上に設置され、図12のように、湾曲部(内方へ凹むように湾曲した湾曲外周縁部2a)の天板部2に相当する金属板10部分を含む挟持領域Pを、下型20に対しパッド30で押さえて下型20とパッド30で挟持する。
このとき、縦壁部3及びフランジ部4を曲げ成形する際に、少なくとも湾曲部及びその近傍では、挟持している金属板10部分が縦壁部3側に移動可能なパッド圧に設定する。
このとき、図12の紙面下側部分に位置して天板部2の直線状に延びる、湾曲外周縁部2a以外の外縁部2bに連続する縦壁部3及びフランジ部4は、図13に示すように、上型40のプレス方向への移動によって、金属板10が、曲げ成形されて縦壁部3及びフランジ部4が形成される。
また、この成形の際、湾曲外周縁部2aに連続する縦壁部3A及びフランジ部4Aの部分では、図14に示すように、パッド30と下型20で挟持されている金属板10部分の材料が縦壁部3A側に移動する。
このように、本実施形態では、材料の移動の際に、金型と材料間の摩擦抵抗以外に、材料に曲げ曲げ戻し抵抗を連続して発生させることができるため、成形中の天板面での材料の移動量が安定する。ここで、曲げ曲げ戻し抵抗は、摩擦抵抗より大きく、量産での変動を受けにくい。このため、本実施形態では、材料移動の量産での変動が小さくすることができ、散発的な伸びフランジ割れをより効果的に抑えることができる。
なお、上記の稜線20aの設定条件(折れ角度α、曲げ半径R1)は、製品形状やめっきなどの材料の表面状態、金属板10の形状などによって適切な条件が存在する。適切な条件はFEM解析によるコンピュータシミュレーションから求めることも可能である。また稜線20a、30aは材料移動が発生する領域の全長に設定することが好ましい。
また、成形中は湾曲部分の天板部2に相当する位置でシワが発生しやすく、パッド圧がシワ発生を抑えることができないほど小さい場合、パッド30と上型40の隙間が大きくなり、稜線20a、30aによる曲げ曲げ戻し抵抗の発生が不安定となる。よって、パッド30は成形中に湾曲部分の天板部2の面にシワが発生しない圧力で押さえることができるように、圧力や形状を設定することが好ましい。
以上のように、本実施形態にあっては、伸びフランジ割れが懸念されるL字やT字部品を量産でも安定して安価で製造ができる。
なお、図14では、上方に凸となるように稜線20aを設定した場合を例示しているが、図17に示すように、下方に凸となるように稜線20aを設定しても良い。
下型20に稜線20a、30aを設けない平面形状とした場合(稜線20a、30aを設けない場合)には、湾曲部分において材料の移動が大きく、湾曲部分のブランク部下端での伸びフランジ割れの危険性が高かった。
一方、稜線20a、30aの折れ角度α、βを10度、曲げ半径R1、R2を10mmの稜線20a、30aを1条、下型20及びパッド30に設定する条件で解析したところ、材料移動量が安定し、伸びフランジ割れが発生することなく成形が可能となることを確認した。
2 天板部
2a 湾曲外周縁部
3 縦壁部
3A 湾曲外周縁部に連続する縦壁部
4、4A フランジ部
10 金属板
20 下型
20a 稜線
30 パッド
30a 稜線(第2の稜線)
40 上型
P 挟持領域
R1 曲げ半径
α 折れ角度
Claims (6)
- 外周縁の一部が内方へ凹むように湾曲した湾曲外周縁部を有する天板部と、上記天板部の上記湾曲外周縁部に連続する縦壁部と、上記縦壁部に連続して上記天板部側に屈曲するフランジ部とを有する部品形状に、金属板をプレス成形して製造するプレス部品の製造方法であって、
上記金属板における上記天板部に相当する領域の少なくとも一部を含む領域である挟持領域を、下型とパッドとで挟持した状態で、相対的に上記下型に対し上型をプレス方向に移動させることで、上記下型とパッドとで挟持している上記挟持領域の材料の少なくとも一部を上記縦壁部側に移動させながら上記縦壁部及び上記フランジ部を曲げ成形し、
上記曲げ成形する際に、上記下型とパッドとで挟持される金属板部分に対し、上記材料の移動に応じて、上記材料の移動方向に交差する方向へ延びる折り曲げ部位置で面外方向への曲げ曲げ戻し変形を連続して付与することで、材料の移動を制御することを特徴とするプレス部品の製造方法。 - 上記挟持領域を挟持する下型の面に対し、上記材料の移動方向に交差する方向へ延びる1条又は2条以上の稜線を上記折り曲げ部として設け、上記下型の面は、各稜線を境とした両側の面の傾きが異なり、
上記各稜線は、上記曲げ成形が完了した状態では、上記天板部の位置が、全ての稜線位置よりも縦壁部側に存在する位置に設定する
ことを特徴とする請求項1に記載したプレス部品の製造方法。 - 上記挟持領域を挟持する下型の面に対し、上記材料の移動方向に交差する方向へ延びる1条又は2条以上の稜線を上記折り曲げ部として設け、上記下型の面は、各稜線を境とした両側の面の傾きが異なり、
上記全ての稜線のうちの少なくとも1条の稜線の少なくとも一部が、上記曲げ成形が完了した状態では、上記天板部と重なるように、各稜線の位置を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載したプレス部品の製造方法。 - 上記稜線を境とした両側の面の傾きの差が1度以上90度未満で、稜線位置での曲げ半径が0.1mm以上30mm以下であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載したプレス部品の製造方法。
- 上記パッドの面における上記下型の面に設けた各稜線と対向する位置に、それぞれ対向する上記稜線と同方向に延在する第2の稜線を有し、上記パッドの面は、各第2の稜線を境とした両側の面が、対向する上記下型の面に追従した形状となっていることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載したプレス部品の製造方法。
- 上記金属板は、引張強度590MPa以上の高張力鋼板であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載したプレス部品の製造方法。
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