JP6708541B2 - 印刷版の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、配線パターン等の形成に用いられる印刷版、およびこの印刷版を用いた印刷方法ならびに印刷版の製造方法に関し、特に、高精細なパターンの形成に利用可能な印刷版、およびこの印刷版を用いた印刷方法ならびに印刷版の製造方法に関する。
現在、印刷は、文字および写真のみならず、配線基板等の形成にも利用されている。機能性材料をインク化して用い、印刷技術によって電子デバイスを製造する試みは、メタル配線形成のみならず受動素子およびアクティブ電子素子の新しい形成法として期待されている。印刷エレクトロニクス技術と呼ばれる技術分野は、常圧かつ比較的低温のプロセスであるため、低エネルギー、かつ簡便に電子デバイスの製造が可能であるとされており、注目が集まっている。
特許文献1には、印刷用の基材上に形成された凹状の画線部と非画線部とを備え、非画線部に対し画線部が窪んだ印刷用凹版が記載されている。特許文献1では、画線部と非画線部とが基材の主表面上に形成されている。画線部は溶媒保持層と樹脂層とを有し、樹脂層は基材の主表面に対向する対向面を有する。溶媒保持層は基材と樹脂層との間に配置されている。溶媒保持層は樹脂層の対向面と面接触する、接触面を有する。画線部の凹部内表面に溶媒保持層と樹脂層とが順に積層している。非画線部は基材上に金属膜が積層されて形成されている。なお、画線部は印刷時に被印刷物へインクが転写される部分である。非画線部は印刷時に被印刷物へインクが転写されない部分である。
特許文献2には、液状状態の転写材料を転写用凹版に充填して転写材料が硬化または固化してから引き剥がして被転写体側に転写材料からなる所望の物体を形成する凹版転写法で使用する転写用凹版が記載されている。版面の表面層の少なくとも一部分が臨界表面張力の低い物質よりなるもの、または臨界表面張力を低下させる作用を有する物質が偏析してなるものである。
臨界表面張力の低い物質がフッ素樹脂分またはシリコーン樹脂分を含むブロック共重合体またはグラフト共重合体であり、かつ感光硬化性を付与することが可能である。
臨界表面張力を低下させる作用を有する物質がシリコーン樹脂系添加剤またはフッ素樹脂系添加剤であり、版面の表面層の物質が析出してなる部分は、この部分を構成する材料が液状状態時であるときの硬化性材料にシリコーン樹脂系添加剤またはフッ素樹脂系添加剤を添加し、表面層として形成されて加熱処理を行った後に硬化したものである。
特許文献3には、版基材に、画線部に対応する凹部と非画線部に対応する土手部とからなる版パターンが設けられている凹版が記載されている。土手部が弾性変形可能であり、かつ土手部の上面の一部または全部が、インキを反発する撥インキ材料からなる。特許文献3では、直刷りにより、ガラス基板のような硬い基板に画像を形成する。
特開2011−11374号公報 特開2007-164070号公報 特開2005-305670号公報
特許文献1は、非画線部は金属膜で形成されており、表面が金属である。また、凹部内の樹脂層がシリコーンゴムで形成されており、凹部の表層はシリコーンゴムである。
特許文献2は、非画線部の表面が撥液性ではなく、印刷方法も版面全面にインクを塗布してなされる。特許文献3は、非画線部の表面がシリコーンであり、フッ素系材料ではない。
特許文献1〜3のいずれの凹版も、画線部、すなわち、凹部からインクが溢れるという問題点がある。また、インクが凹部から離れにくい。これにより、高精細なパターンを形成することができない。
本発明の目的は、前述の従来技術に基づく問題点を解消し、高精細なパターンを連続的に形成できる印刷版および印刷方法ならびに印刷版の製造方法を提供することにある。
上述の目的を達成するために、本発明は、画像部と非画像部とを有する印刷版であって、画像部が、シリコーンゴムを含む層の表面に設けられた、有機系官能基を有するシランカップリング剤を用いて形成された表面処理層で構成され、非画像部が、シリコーンゴムを含む層の表面に設けられた、フッ素化合物を含む層で構成されていることを特徴とする印刷版を提供するものである。
画像部が凹部であり、非画像部が凸部であり、画像部の表面と非画像部の表面との高低差が10μm以下であることが好ましい。
有機系官能基は、直鎖アルキル基を含むことが好ましい。
画像部に付与される印刷インクに対して、画像部の前進接触角よりも、非画像部の後退接触角の方が大きいことが好ましい。
画像部に付与される印刷インクは溶剤を含み、画像部の溶剤の吸収速度は、非画像部の溶剤の吸収速度よりも速いことが好ましい。
印刷インクの粘度が1mPa・s以上30mPa・s以下であることが好ましい。
また、電子デバイスの製造に用いられることが好ましく、配線パターンまたは電極の形成に用いられることが好ましい。
本発明は、画像部と非画像部とを有する印刷版を用いた印刷方法であって、画像部が、シリコーンゴムを含む層の表面に設けられた、有機系官能基を有するシランカップリング剤を用いて形成された表面処理層で構成され、非画像部が、シリコーンゴムを含む層の表面に設けられた、フッ素化合物を含む層で構成されており、画像部に印刷インクを付与するインク付与工程と、画像部に付与された印刷インクを被印刷物に転写する転写工程とを有することを特徴とする印刷方法を提供するものである。
画像部が凹部であり、非画像部が凸部であり、画像部の表面と非画像部の表面との高低差が10μm以下であることが好ましい。
有機系官能基は、直鎖アルキル基を含むことが好ましい。
インク付与工程は、インクジェット法で印刷インクを画像部に付与することが好ましい。インク付与工程は、画像部に対する印刷インクの付与量を変えることが好ましい。
本発明は、画像部と非画像部とを有し、画像部が、シリコーンゴムを含む層の表面に設けられた、有機系官能基を有するシランカップリング剤を用いて形成された表面処理層で構成され、非画像部が、シリコーンゴムを含む層の表面に設けられた、フッ素化合物を含む層で構成され、画像部が凹部であり、非画像部が凸部であり、画像部の表面と非画像部の表面との高低差が10μm以下である印刷版の製造方法であって、シリコーンゴムを含んでいる第1の層上の、非画像部となる領域に、シリコーンゴムを含んでいる第2の層を形成し、シリコーンゴムを含む層を得る工程と、シリコーンゴムを含んでいる第2の層の表面に、フッ素化合物を含む層を形成する工程と、画像部となる領域に、表面処理層を形成する工程を有することを特徴とする印刷版の製造方法を提供するものである。
本発明は、画像部と非画像部とを有し、画像部が、シリコーンゴムを含む層の表面に設けられた、有機系官能基を有するシランカップリング剤を用いて形成された表面処理層で構成され、非画像部が、シリコーンゴムを含む層の表面に設けられた、フッ素化合物を含む層で構成され、画像部が凹部であり、非画像部が凸部であり、画像部の表面と非画像部の表面との高低差が10μm以下である印刷版の製造方法であって、シリコーンゴムを含む層上に、フッ素化合物を含む層を形成する工程と、画像部となる領域のフッ素化合物を含む層と、画像部となる領域のシリコーンゴムを含む層を除去する工程と、画像部となる領域に、表面処理層を形成する工程とを有することを特徴とする印刷版の製造方法を提供するものである。
本発明は、画像部と非画像部とを有し、画像部が、シリコーンゴムを含む層の表面に設けられた、有機系官能基を有するシランカップリング剤を用いて形成された表面処理層で構成され、非画像部が、シリコーンゴムを含む層の表面に設けられた、フッ素化合物を含む層で構成され、画像部が凹部であり、非画像部が凸部であり、画像部の表面と非画像部の表面との高低差が10μm以下である印刷版の製造方法であって、シリコーンゴムを含む層上に、フッ素系界面活性剤およびシリコーン樹脂を含む層を形成する工程と、画像部となる領域の、フッ素系界面活性剤およびシリコーン樹脂を含む層を除去する工程と、画像部となる領域に、表面処理層を形成する工程とを有することを特徴とする印刷版の製造方法を提供するものである。
本発明は、画像部と非画像部とを有し、画像部が、シリコーンゴムを含む層の表面に設けられた、有機系官能基を有するシランカップリング剤を用いて形成された表面処理層で構成され、非画像部が、シリコーンゴムを含む層の表面に設けられた、フッ素化合物を含む層で構成され、画像部が凹部であり、非画像部が凸部であり、画像部の表面と非画像部の表面との高低差が10μm以下である印刷版の製造方法であって、印刷版の凹部を形成するための凸状のパターンを有する支持体上に、シリコーンゴムを含む層を形成する工程と、支持体とシリコーンゴムを含む層を分離する工程と、分離して得られたシリコーンゴムを含む層の、非画像部となる領域の表面に、フッ素化合物を含む層を形成する工程と、画像部となる領域に、表面処理層を形成する工程とを有することを特徴とする印刷版の製造方法を提供するものである。
本発明は、画像部と非画像部とを有する印刷版の製造方法であって、シリコーンゴムを含む層の表面のうち、非画像部となる領域に対して、化学的処理または物理的処理を施して水酸基を形成する工程と、水酸基が形成された領域のシリコーンゴムを含む層の表面にフッ素化合物を結合させ、非画像部を形成する工程と、シリコーンゴムを含む層の表面のうち、画像部となる領域に対して、有機系官能基を有するシランカップリング剤を用いて形成された表面処理層を形成し、画像部を形成する工程とを有し、画像部の表面と非画像部の表面との高低差が100nm以下であることを特徴とする印刷版の製造方法を提供するものである。
本発明は、画像部と非画像部とを有する印刷版の製造方法であって、シリコーンゴムを含む層の表面に対して、化学的処理または物理的処理を施して水酸基を形成する工程と、水酸基が形成されたシリコーンゴムを含む層の表面にフッ素化合物を結合させる工程と、画像部となる領域に、化学的処理または物理的処理を施してフッ素化合物を除去する工程と、画像部となる領域に対して、有機系官能基を有するシランカップリング剤を用いて形成された表面処理層を形成する工程とを有し、非画像部はシリコーンゴムを含む層の表面に設けられたフッ素化合物を含む層で構成され、画像部は表面処理層で構成され、画像部の表面と非画像部の表面との高低差が100nm以下であることを特徴とする印刷版の製造方法を提供するものである。
フッ素化合物を除去する化学的処理は、マスク露光法またはレーザもしくは集光光束を直接走査する直接描画法であり、フッ素化合物を除去する物理的処理は、プラズマ処理であることが好ましい。
フッ素化合物を除去する化学的処理は、波長126nm以上300nm以下の照射光を用いることが好ましい。
水酸基が形成された領域のシリコーンゴムを含む層の表面に、気相法または液相法を用いてシランカップリング剤を結合させる工程を有することが好ましい。
水酸基が形成された領域のシリコーンゴムを含む層の表面に、気相法または液相法を用いてフッ素系シランカップリング剤を結合させる工程を有することが好ましい。
水酸基を形成する化学的処理は、マスク露光法またはレーザもしくは集光光束を直接走査する直接描画法であり、水酸基を形成する物理的処理は、開口部を有するマスクを用いたプラズマ処理であることが好ましい。
本発明の印刷版によれば、高精細な印刷パターンを連続的に形成することができる。また、印刷方法では、高精細な印刷パターンを連続的に形成することができる。
印刷版の製造方法では、高精細な印刷パターンを連続的に形成することができる印刷版を得ることができる。
本発明の実施形態の印刷版の印刷に用いられる印刷装置の一例を示す模式図である。 本発明の実施形態の印刷装置の画像記録部を示す模式図である。 インクジェットヘッドのノズルの配置を示す平面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第1の例を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第1の例を示す模式的平面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第2の例を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第3の例を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の印刷パターンの一例を示す模式的平面図である。 本発明の実施形態の印刷版を用いて形成される薄膜トランジスタの一例を示す模式図である。 本発明の実施形態の印刷版の第1の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第1の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第1の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第1の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第1の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第1の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第2の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第2の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第3の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第3の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第3の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第3の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第4の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第4の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第4の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第4の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第5の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第5の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第5の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第5の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第6の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第6の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第6の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第6の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第6の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第7の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第7の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第7の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第7の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第7の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第8の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第8の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第8の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第9の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第9の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第9の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第9の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第9の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第9の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第10の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第10の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第10の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第10の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第10の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第11の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第11の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第11の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第11の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第11の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第12の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第12の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第12の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第12の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷版の第12の例の製造工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷方法を示すフローチャートである。 本発明の実施形態の印刷方法の第1の例の工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷方法の第1の例の工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷方法の第1の例の工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷方法の第1の例の工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷方法の第2の例の工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷方法の第2の例の工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷方法の第2の例の工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷方法の第3の例の工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の印刷方法の第3の例の工程を示す模式的断面図である。 サンプル1〜6の接触角を示すグラフである。 サンプル1を用いた版へのインキングした状態を示す模式図である。 サンプル1を用いた版の転写後の状態を示す模式図である。 サンプル5を用いた版へのインキングした状態を示す模式図である。 サンプル5を用いた版の転写後の状態を示す模式図である。 サンプル6を用いた版へのインキングした状態を示す模式図である。 サンプル6を用いた版の転写後の状態を示す模式図である。 サンプル10〜14の飛行時間型二次イオン質量分析法による測定結果を示すグラフである。 サンプル10〜14の飛行時間型二次イオン質量分析法による測定結果を示すグラフである。
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の印刷版および印刷方法ならびに印刷版の製造方法を詳細に説明する。
なお、以下において数値範囲を示す「〜」とは両側に記載された数値を含む。例えば、εが数値α1〜数値β1とは、εの範囲は数値α1と数値β1を含む範囲であり、数学記号で示せばα1≦ε≦β1である。
角度を表す「平行」、「垂直」および「直交」、ならびに特定の角度については、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
まず、印刷版の印刷に用いられる印刷装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態の印刷版の印刷に用いられる印刷装置の一例を示す模式図である。
図1に示すように印刷装置10は、印刷装置本体12と、記憶部14と、判定処理部16と、制御部18とを有する。
印刷装置本体12は、印刷版25を用いて、印刷法により、被印刷物である基板31に予め定められたパターンを形成するものである。印刷装置本体12については後に詳細に説明する。
記憶部14は、印刷装置10で利用される各種の情報が記憶されるものである。記憶部14には、特定のパターンに対して印刷インクが付与された印刷版25の版面25cの基準となる基準形状の情報が記憶される。
基準形状の情報とは、例えば、印刷版25の画像部25aで構成されるパターン形成領域に対して、印刷インクを付与した際の理想的な状態を示す画像データである。また、印刷版25のパターン形成領域に対して、複数回にわたり、印刷インクを付与する場合には、各回毎の理想的な状態を示す画像データである。例えば、パターン形成領域に対してインクジェット方式で印刷インクを吐出し、ドットを形成してパターン形成領域に印刷インクを付与した場合には、各回毎の印刷インクの吐出により形成されるドットの理想的な配置を示す画像データを上述の基準形状の情報という。
また、転写後の印刷版25の版面25cの理想的な状態を示す画像データも基準形状の情報に含まれる。
また、記憶部14には、印刷しようとするパターンのパターンデータが記憶されるが、このパターンデータは、外部から適宜入力される。記憶部14への基準形状の情報およびパターンデータの入力方法は、特に限定されるものではなく、各種のインターフェースを記憶部14に設け、記憶媒体、ならびに有線および無線を問わないネットワークを介して入力することができる。
また、記憶部14には、後に詳細に説明するが、インクジェットヘッド40から吐出する印刷インクの吐出パターンデータおよび吐出タイミングデータ、ならびに印刷インクの吐出パターンデータを印刷版25の取り付け状態に応じて補正した補正パターンデータも記憶される。
印刷インクの吐出パターンデータとは、インクジェットヘッド40を用いて印刷インクを印刷版25のパターン領域に付与する際の吐出パターンを示すデータのことである。
吐出タイミングデータとは、インクジェットヘッド40を用いて印刷版25のパターン領域に印刷インクを付与する際に、印刷版25のパターン領域に、どのタイミングで印刷インクを吐出するのかを示すデータのことである。
判定処理部16は、版胴24に設けられた印刷版25の取り付け情報の取得に利用されるものである。判定処理部16では、後述するアライメントカメラ42で得られたアライメントマークの位置情報を用いて、アライメントマークA〜Dの位置を特定するものである。これにより、版胴24に設けられた印刷版25の取り付け情報を取得することができる。
判定処理部16は、印刷版25の取り付け位置情報に基づき、印刷版25の傾き角度を許容範囲と比較し、許容範囲にあるかを判定するものである。判定結果に応じた判定情報を制御部18に出力するものである。印刷版25の傾き角度については後に説明する。
判定処理部16は、後述する印刷装置本体12の版面観察部26で得られた、特定のパターンに対して印刷インクが付与された印刷版25の版面25cの情報と、記憶部14で記憶された特定のパターンに対して印刷インクが付与された印刷版25の版面25cの基準となる基準形状の情報とを比較し、基準形状に対して予め定められた範囲にあるかを判定するものである。判定結果に応じた判定情報を制御部18に出力するものである。
また、判定処理部16では、予め定められた範囲から外れる場合、外れた箇所等の特定もするものである。例えば、パターン領域に対してはみ出して印刷インクが付与された場合には、印刷インクのはみ出した部分を特定する。また、判定処理部16では、インクジェット方式でパターン領域に対して印刷インクを付与する場合には、印刷インクにより形成されるドットの位置のずれ、ドットが抜けた領域等を特定することができる。これにより、後述するように制御部18で特定された箇所に応じて印刷インクの吐出量等を調整する。
アライメントカメラ42で得られた印刷版25の取り付け情報に基づき、印刷版25が理想的な配置の印刷版に対し、傾き角度β、傾いて配置された場合、判定処理部16は、印刷インクの吐出パターンデータを傾き角度βに応じて、cosβ倍し、補正パターンデータを作成する。この補正パターンデータは記憶部14に記憶される。
例えば、判定処理部16による補正パターンデータの作成は、印刷版25の取り付け情報に基づき、印刷版25の傾き角度βを許容範囲と比較し、許容範囲外と判定されたときになされる。
また、判定処理部16は、上述の版面観察部26で得られた、印刷版25の取り付け位置情報に基づいて、インクジェットヘッド40を回動させる回動量を算出し、記憶部14に記憶させる。制御部18にて、回動量に基づき、インクジェットヘッド40を回動させて印刷インクを吐出させる。
制御部18は、印刷装置本体12、記憶部14および判定処理部16に接続されており、印刷装置本体12、記憶部14および判定処理部16の各要素を制御するものである。さらに、制御部18は、判定処理部16での判定結果に応じて各部を制御する。
また、制御部18は、例えば、判定処理部16で吐出パターンデータの補正パターンデータが作成された場合、その補正パターンデータに基づいて印刷インクをインクジェットヘッド40から吐出させる。
次に、印刷装置本体12について説明する。
印刷装置本体12は、印刷を清浄な雰囲気でするためにケーシング20の内部20aに各部が設けられている。ケーシング20の内部20aを予め定められた清浄度となるように、フィルタ(図示せず)および空調設備(図示せず)が設けられている。
印刷装置本体12は、画像記録部22と、版胴24と、版面観察部26と、ステージ30と、乾燥部32と、イオナイザー33と、クリーニング部34と、メンテナンス部36とを有する。
版胴24の表面24aの周囲を囲むようにして、画像記録部22、版面観察部26、乾燥部32、イオナイザー33およびクリーニング部34が設けられている。クリーニング部34は版胴24の表面24aに接して設けられている。
ステージ30上に基板31が配置されており、ステージ30が版胴24の下方の印刷位置Ppに配置された状態で版胴24が回転すると印刷版25と、基板31の表面31aとが接するように配置されている。これにより、基板31の表面31aに印刷版25の版面25cに予め定められたパターン状に付与された印刷インクが転写される。版胴24とステージ30で転写部39が構成される。
なお、印刷された基板31では、印刷インクの特性に応じて、例えば、熱、光等により印刷インクが焼成される。熱、光を用いた印刷インクの焼成で利用される公知のものが適宜利用可能である。基板31に対する印刷インクの焼成は、ケーシング20の内部20aでなされても、外部でなされてもよい。
印刷装置10では、版胴24に設けた印刷版25のパターン形成領域に印刷インクを付与するが、この印刷インクの付与は1回で完了させてもよく、また複数回にわたって印刷インクを付与してもよい。複数回にわたって印刷インクを付与する場合、印刷インクを付与する回数分、版胴24を回転させる。例えば、4回に分けて印刷インクを付与する場合、版胴24を4回回転させる。印刷インクを付与することをインキングという。また、複数回のうち、印刷インクを1回行うことを走査するともいう。
以下、印刷装置本体12の各部について説明する。
画像記録部22は、印刷版25の版面25cの予め定められたパターン形成領域に印刷インクを付与するものであり、画像記録部22により、版面25cに予め定められたパターンで印刷インクが付与される。なお、画像記録部22の画像記録方式は特に限定されるものではなく、例えば、インクジェット方式が用いられる。
版胴24は、回転軸24bを中心にして、一方向、例えば、y方向に回転可能なものである。y方向が回転方向である。y方向のことを送り方向ともいう。また、版胴24は、印刷版25を保持した状態で回転させて、予め定められたパターン状に付与された印刷版25の版面25cの印刷インクを基板31の表面31aに転写するためのものである。
回転軸24bには、例えば、版胴24を回転させるためのモータ(図示せず)がギア(図示せず)等を介して設けられている。また、ギアを介さないダイレクトドライブモータを設けることもできる。モータは制御部18にて制御される。また、回転軸24bには回転と回転量を検出するローターリーエンコーダ(図示せず)が設けられている。ローターリーエンコーダは制御部18に接続されており、制御部18で版胴24の回転量が検出される。
転写される基板31は、特に限定されるものではないが、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)およびPC(ポリカーボネート)等のフイルム基板、ガラスエポキシ基板、セラミック基板、ならびにガラス基板を用いることができる。これ以外にも、電子デバイスに利用される基板の材質のものを適宜利用可能である。転写方法としては、ガラス基板等のリジッド基板では、上述のようにステージ30上に基板31を固定して版胴24に密着させることで転写できる。
なお、印刷版25にフイルムを使った場合には圧胴を用いて、フイルムを圧胴に固定して版胴24に密着させて転写する構成としてもよい。
版面観察部26は、画像記録部22よりも版胴24のy方向の下流側に配置されている。版面観察部26は、印刷インクが付与された印刷版25の版面25cの情報を取得するものである。また、版面観察部26は、基板31に印刷インクが転写された後の印刷版25の版面25cの情報も取得するものである。
版面観察部26は、インク転写前後の印刷版25の版面25cの情報を取得することができれば、その構成は特に限定されるものではない。印刷版25は矩形状のものが多いため、ラインセンサとライン状の照明を用いることが好ましい。この場合、版面25cの情報として、版面撮像データが得られる。この版面撮像データが、判定処理部16にて上述のように基準形状の情報と比較されて判定される。
ラインセンサは、例えば、モノクロCMOS(相補型金属酸化膜半導体)センサ、CCD(電荷結合素子)センサを用いることができる。なお、ラインセンサは、吐出されたインク液滴の陰影を観察するためカラーセンサーでなくてもよい。また、ラインセンサの前にレンズ、および各種のフィルタ等を設けてもよい。ライン状の照明としては、例えば、LED(発光ダイオード)を一直線状に並べたものを用いることができる。
版面観察部26は、制御部18に接続されており、版面観察部26での印刷版25の版面25cの情報の取得のタイミングは制御部18で制御され、取得された印刷版25の版面25cの情報は記憶部14に記憶される。
印刷インクに絶縁体等の透明インクを用いた場合、肉眼による識別が困難であるが、光源、ラインセンサ前に偏光フィルタを設けること、2箇所以上から照明を行う等により、ラインセンサによる印刷インクの識別性を改善することができる。
また、印刷版25の版面25cの情報の取得は、走査毎に行うことで、着弾位置ずれ、サテライトおよび吐出滴量変化による膜厚むらを検出することが可能となる。例えば、膜厚と光学特性のとの関係を予め測定しておき、記憶部14に記憶しておくことにより、上述の関係と検出された光学特性とを比較することで膜厚を推定することができる。
また、印刷インクに銀ナノインクを用いた場合、銀ナノインクでは、乾燥とともに銀光沢が発現して、色または反射率が変化する。膜厚が薄いと乾燥が早く、厚いと乾燥が遅いため、検出までの予め定められた時間における膜厚と色、膜厚と反射率との関係を、予め計測しておくことで、膜厚を推定できる。
絶縁体等の透明インクの場合には、干渉縞で膜厚を判断することが可能である。膜厚と干渉縞との関係を予め測定しておくことで膜厚を推定できる。半導体等結晶性のある印刷インクの場合には、偏光フィルタを設けて、色で膜厚を推定することもできる。この場合も、予め膜厚と色との関係を測定しておくことで、膜厚を推定することができる。
ステージ30は、基板31を載置し、搬送方向Vに移動して、基板31を予め定められた位置に搬送するものである。ステージ30には搬送機構(図示せず)が設けられている。この搬送機構は、制御部18に接続されており、制御部18にて搬送機構が制御されてステージ30が搬送方向Vに移動されて、ステージ30の位置が変えられる。
ステージ30は、まず、ケーシング20の外部から搬送された基板31が載置される開始位置Psに待機する。次に、ステージ30は、版胴24の下方の印刷位置Ppに移動される。次に、印刷後、ステージ30は印刷済みの基板31を載せた状態で終了位置Peに移動され、その後、基板31はケーシング20の外部に取り出される。ステージ30は、終了位置Peから開始位置Psに移動されて、基板31が搬入されるまでの間、待機する。
乾燥部32は、印刷版25の版面25cの印刷インクを乾燥させるものである。印刷インクを乾燥させることができれば、乾燥方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ファンによる温風、冷風の吹き付け、赤外線ヒーターによる加熱、高周波の照射、およびマイクロ波照射等が挙げられる。
なお、自然乾燥にて印刷版25の版面25cの印刷インクを乾燥できる場合、乾燥部32を必ずしも設ける必要がない。なお、印刷インクの乾燥の程度は、特に限定されるものではなく、完全に乾燥する前の状態である半乾燥状態でもよい。
半乾燥状態とは、塗布前の印刷インクの溶媒の一部が外部に消散した状態のことである。
なお、印刷を行う上で好ましい半乾燥状態とは、下記の1〜3の要件を満たす状態のことである。
1、印刷時(印刷版25から基板31へ印刷インクを転写する時)に版面25cの印刷インクが受ける応力によって、印刷インクが水平方向に変形しない、すなわち印刷によってパターン形状の劣化がおこらない程度の弾性を有するまで乾燥が進んでいて、かつ、
2、印刷時に印刷インクの泣き別れ(転写後に、印刷版25の版面25cと基板31の両方に印刷インクが残ってしまう状態)が発生しない程度に印刷インクの凝集力が上昇するまで乾燥が進んでいて、かつ、
3、印刷時に印刷インクの転写不良(転写後に、印刷版25の版面25cから基板31に印刷インクが移行しないこと)が発生しない程度であること、すなわち印刷版25の版面25cと印刷インクの付着力が、基板31と印刷インクの付着力よりも大きくなってしまうまで過度に乾燥が進んでいない状態のことである。
イオナイザー33は、印刷版25の版面25cの静電気を除電するものである。イオナイザー33により、印刷版25の版面25cの静電気が除去され、印刷版25の版面25cにゴミ、埃等の異物の付着が抑制される。また、印刷版25の版面25cが帯電している場合、印刷インクが曲がることがあるが、この印刷インクの曲がりを防止することができ、インクジェット吐出精度が向上する。
なお、イオナイザー33には、静電気除電器を用いることができ、例えば、コロナ放電方式、およびイオン生成方式のものを用いることができる。また、イオナイザー33は、乾燥部32のy方向における下流側に設けたが、画像記録部22により記録される前に、印刷版25の版面25cの静電気を除電することができれば、イオナイザー33を設ける位置は特に限定されるものではない。
クリーニング部34は、版胴24および印刷版25に付着した印刷インクを除去するものである。クリーニング部34は、版胴24および印刷版25に付着した印刷インクを除去することができれば、その構成は、特に限定されるものではない。例えば、ローラを版胴24に押し付け、ローラに印刷インクを転写させて、転写された印刷インクを拭き取る構成である。
メンテナンス部36は、画像記録部22の吐出特性等が予め定められた性能を発揮するかを調べる。メンテナンス部36は、予め定められた性能を発揮するようノズルのワイプ等をするところである。メンテナンス部36は、版胴24から離れた位置に設けられている。画像記録部22は、例えば、ガイドレール(図示せず)を介してメンテナンス部36に移送される。
以下、画像記録部22について詳細に説明する。
図2は、本発明の実施形態の印刷装置の画像記録部を示す模式図である。
画像記録部22に、インクジェット方式を用いたものを例にして説明する。
図2に示すように、画像記録部22は、インクジェットヘッド40と、アライメントカメラ42と、レーザ変位計44と、回動部49とを有し、これらはキャリッジ46に設けられている。このキャリッジ46はリニアモータ48により、版胴24の回転軸24bと平行な方向、すなわち、x方向に移動可能であり、インクジェットヘッド40はキャリッジ46によりx方向へ移動可能である。キャリッジ46の位置はリニアモータ48に設けられたリニアスケール(図示せず)の読み取り値から算出することができる。
インクジェットヘッド40はインク付与部であり、インクジェットヘッド40にはインクの吐出を制御するための吐出制御部43が設けられている。吐出制御部43で印刷インクの吐出波形が調整される。吐出制御部43は制御部18に接続されている。吐出制御部43では、例えば、ユーザーインターフェースを通して、ユーザーが吐出電圧または吐出波形を調整することが可能である。なお、後述するように印刷インクの温度が調整された状態で吐出される。
アライメントカメラ42、レーザ変位計44も制御部18に接続されている。キャリッジ46にはZ方向に移動させるための駆動部(図示せず)が設けられており、この駆動部は制御部18に接続されており、制御部18によりキャリッジ46のZ方向の移動が制御される。ここで、Z方向とは、版胴24の表面24aに垂直な方向である。
アライメントカメラ42は、印刷インクの吐出位置、印刷インクの吐出タイミング、パターンデータの補正をするためのアライメントマークの位置情報を得るためのものである。
アライメントカメラ42は、アライメントマークA〜Dを検出することができれば、その構成は特に限定されるものではない。
アライメントカメラ42により、アライメントマークA〜Dが撮像されて、その撮像データが記憶部14に記憶され、判定処理部16でアライメントマークA〜Dの位置が特定される。アライメントカメラ42と判定処理部16は、版胴24に設けられた印刷版25の取り付け情報を取得する取付位置情報取得部として機能する。
アライメントマークA、Bの位置情報により、y方向における印刷インクの吐出開始位置、x方向の印刷版の拡縮および印刷版の傾き角度θの情報を得ることができる。アライメントマークA、Cの位置情報により、x方向における印刷インクの吐出開始位置およびy方向の印刷版の拡縮の情報を得ることができる。アライメントマークA〜Dの位置情報により、例えば、印刷版の台形歪みの情報、すなわち、台形変形の情報を得ることができる。印刷インクの吐出開始位置のことをインキング開始位置という。
印刷版25は、アライメントマークAとアライメントマークCを通る線(図示せず)が上述のy方向に平行であることが理想的である。しかし、印刷版25を版胴24に取り付ける際に、印刷版25が版胴24に対して、わずかであるが傾いてしまう。アライメントマークA〜Dの位置情報により、版胴24上での印刷版25の取り付け情報、例えば、版胴24のy方向に対する印刷版25の傾き等の情報を得ることができる。
上述の得られた各種の情報により、印刷インクの吐出開始位置、インクジェットヘッド40の位置および印刷インクの吐出タイミングを補正する。なお、これらの補正には、いずれもインクジェットによる印刷インクの打滴の公知補正方法を用いることができる。
また、パターンデータについてのx方向の拡大縮小、y方向の拡大縮小、傾き、および台形補正は、公知補正方法を用いることができる。
なお、アライメントマークは、少なくとも3つあればよく、x方向の印刷版の拡縮、印刷版の傾き角度θおよびy方向の印刷版の拡縮の情報を得ることができる。アライメントマークが4つあれば、印刷版25の台形歪みの情報も得ることができるため、4つあることが好ましい。さらには、アライメントマークA〜Dの内側にも複数のアライメントマークを設けることにより、非線形の補正を行うことができる。この場合、アライメントマークを用いた補正も公知補正方法を用いることができる。
レーザ変位計44は、インクジェットヘッド40と印刷版25の版面25cとの距離を測定するものである。印刷インクによる版膨潤または温度等による版胴径+版厚の変化により、アライメントマークAとアライメントマークCとのy方向における距離、すなわち、AC長が変化する。ここで、インクジェットヘッド40の印刷インクは、ローターリーエンコーダのタイミングで吐出するため版胴径の変化を受けず版の長さの変化に対応するが、基板31に転写したとき長さが変化してしまう。
上述のAC長の変化があっても基板31上の印刷パターンの長さを一定にする目的で、このレーザ変位計44により、版胴径+版厚の変化を測定する。測定した結果に基づいて補正を行う。
補正の具体例としては、版胴24の回転軸24bから印刷版25の版面25cまでの距離変動を精密に測定して、その結果に基づいて、転写時の版胴24および基板31の移動相対速度を変化させることが挙げられる。
上述の補正の具体例以外に、例えば、版胴24または環境の温度を測定して、予め作成した版胴24の回転軸24bと印刷版25の版面25cまでの距離と温度との関係のテーブルに基づいて、転写時の版胴24および基板31の移動相対速度を変化させることが挙げられる。
上述の補正の具体例により、版膨潤または版胴径の変化があっても精度よく印刷が可能となる。なお、転写するときに、版側と基板側の送り速度に差を設けると転写パターンの送り方向の寸法が変化することが知られている。
レーザ変位計44については、インクジェットヘッド40と印刷版25の版面25cとの距離を測定することができれば、その構成は特に限定されるものではない。
また、レーザ変位計44は、印刷版25の版面25c迄の距離を測定することで、版胴径+版厚の変化を測定することができる。これをy方向の拡大縮小に利用することができる。例えば、版胴24の直径または印刷版25の膜厚が、温度変化により変化するとアライメントマークAとアライメントマークCの間の長さが変化する。この長さの変化をパターンデータの補正に利用することができる。
上述のようにアライメントカメラ42、レーザ変位計44を用いることで、アライメント精度を高くすることができる。印刷装置10では、後述するように薄膜トランジスタの形成に利用される。薄膜トランジスタでは、10μm程度のずれでも、設計した特性とは異なる特性になってしまう。複数の薄膜トランジスタを形成する場合、10μm程度のずれがあっても特性がばらつくことになり、例えば、電子ペーパーに用いた場合、高い性能が得られないことになるが、このような特性のバラつきを抑制することができる。
回動部49は、インクジェットヘッド40を版胴24の表面24aに垂直な線を中心として回動させるものである。回動部49により、印刷版25の傾きにインクジェットヘッド40の向きを合わせることができる。
インクジェットヘッド40の印刷インクを吐出させる方式は、特に限定されるものではなく、圧電素子のたわみ変形、ずり変形、縦振動等を利用して液体を吐出させる圧電方式、ヒーターによって液室内の液体を加熱して、膜沸騰現象を利用して液体を吐出させるサーマル方式、静電気力を利用する静電方式等、各種方式を用いることができる。
インクジェットヘッド40の具体的な構成としては、図3に示すように、印刷版25の全幅に対応する長さにわたって、複数のノズル41が、x方向に沿ってy方向の位置を交互に変えて配置されている。
x方向に沿ってy方向の位置を交互に変えて配置することで、ノズル41を高密度に配置させることができる。なお、ノズル41を配置する列数は、特に限定されるものではなく、一列でも二列でも、それ以上でもよい。また、ノズル41は、マトリクス状に配置してもよい。
インクジェットヘッド40の構成は、特に限定されるものではなく、例えば、複数のヘッドモジュールを一列につなぎ合わせた構成でもよく、複数のヘッドモジュールのノズル41がx方向に沿ってy方向の位置を交互に変わる配置となるように、複数のヘッドモジュールをつなぎ合わせた構成でもよい。インクジェットヘッド40が複数のヘッドモジュールを有する場合、ヘッドモジュール毎に吐出波形を調整することが可能である。また、ヘッドモジュール毎に吐出制御部を設ければ、吐出制御部毎に吐出波形を調整することが可能である。
画像記録部22においては、印刷インク51の付与はインクジェットヘッド40に限定されるものではなく、ブレードコート法、バーコート法、スプレーコート法、ディップコート法、スピンコート法、スリットコート法、およびキャピラリーコート法等の公知の方法を適宜用いることができる。この中でも、印刷版25へのインキングをインクジェット法、およびキャピラリーコート法等の非接触のインキング方法とすることで、印刷版25の耐久性が向上する。インクジェット法を用いた場合には、印刷インクは粘度が1mPa・s以上20mPa・s以下の範囲であることが好ましく、キャピラリーコート法を用いた場合には、印刷インクは粘度が1mPa・s以上30mPa・s以下の範囲であることが好ましい。また、インク膜厚を制御する必要がある場合にはインクジェット法が好適である。
次に、印刷版25について説明する。
印刷版25は、画像部と非画像部とを有し、画像部が、シリコーンゴムを含む層の表面に設けられた、有機系官能基を有するシランカップリング剤を用いて形成された表面処理層で構成され、非画像部が、シリコーンゴムを含む層の表面に設けられた、フッ素化合物を含む層で構成されている。
具体的には、図4〜図7に示す印刷版25の構成である。図4は本発明の実施形態の印刷版の第1の例を示す模式的断面図であり、図5は本発明の実施形態の印刷版の第1の例を示す模式的平面図である。図6は本発明の実施形態の印刷版の第2の例を示す模式的断面図であり、図7は本発明の実施形態の印刷版の第3の例を示す模式的断面図である。
図4に示す印刷版25は画像部25aと、画像部25a以外の非画像部25bを有する。印刷版25では、画像部25aが凹部27であり、パターン形成領域である。画像部25aは有機系官能基を有するシランカップリング剤を用いて形成された表面処理層55で構成される。表面処理層55は、印刷インク51に対する濡れ性が高く、かつ印刷インク51の離形性が良いものである。表面処理層55については後に詳細に説明する。
非画像部25bが凸部であり、非パターン形成領域である。非画像部25b、すなわち、凸部はフッ素化合物を含む層であるフッ素化合物層54で構成される。フッ素化合物層54については後に詳細に説明する。
パターン形成領域は、例えば、ゲート電極および配線等を形成するための領域であり、パターン形成領域で配線パターンが形成される。印刷版25では、画像部25aから基板31へ印刷インクが転写され、非画像部25bからは基板31へ印刷インクが転写されない。
例えば、図4に示す印刷版25では、支持材50上にシリコーンゴム層52が設けられている。シリコーンゴム層52に凹部27が設けられている。凹部27は側面27bを含め表面処理層55で構成される。シリコーンゴム層52の凸部52bの最表面52cにフッ素化合物層54が設けられている。
凹部27の深さを変えることで、印刷版25の版深を変えることができる。なお、一般的に、版深とは印刷版25の画像部25aと非画像部25bの相対的な高さの差のことである。
印刷版25の構成としては、図4に示す構成に限定されるものではなく、図6に示す印刷版25でもよい。図6に示す印刷版25は、支持材50上にシリコーンゴム層52が設けられている。このシリコーンゴム層52上に画像部25aを除いて、凹部27の隔壁となるシリコーンゴム層53が設けられている。凹部27は、シリコーンゴムを含む層であるシリコーンゴム層52とシリコーンゴム層53で構成されている。シリコーンゴム層53の厚みを変えることで、凹部27の深さを変えることできる。すなわち、印刷版25の版深を変えることができる。
また、シリコーンゴム層53で印刷版25の凸部が構成され、シリコーンゴム層53の表面53aに、フッ素化合物を含む層であるフッ素化合物層54が設けられている。フッ素化合物層54の表面54aが非画像部25bの表面となる。フッ素化合物層54は、印刷インクをはじき、印刷インクに対して撥液性を示す。
印刷版25では、画像部25aが印刷インクに対して親液性で、親インク部である。非画像部25bが印刷インクに対して撥液性であり、撥インク部である。
図4および図6に示す印刷版25は一般的に凹版と呼ばれるものである。印刷版25では画像部25aの表面と非画像部25bの表面との高低差δが、例えば、10μm以下である。図4および図6に示す印刷版25では、高低差δの下限値は、例えば、0.1μmである。
印刷版25の高低差δは、表面処理層55の表面55aからフッ素化合物層54の表面54aまでの距離のことである。高低差δについては、走査電子顕微鏡を用いて印刷版25の断面画像を取得し、断面画像から高低差δを求めることができる。
フッ素化合物層54は膜厚が1nm以上100nm以下であればよく、例えば、10nm程度であることが好ましい。フッ素化合物層54は膜厚が1nm以上であれば、溶媒の吸収を防止することができる。
印刷版25では、画像部25aを表面処理層55で構成することにより、図5に示すように、画像部25aにおける印刷インク51の濡れ広がりを多くすることができる。このため、印刷インク51の打滴間隔を広げても、隣接する打滴液同士がつながり、凹部27を印刷インク51で満たすことができ、印刷パターンを欠損なく形成することができる。これにより、配線を、断線することなく形成することができる。
また、印刷インク51の打滴間隔を広げても、隣接する打滴液同士がつながるため、印刷インク51の打滴間隔を広げることができる。このため、印刷インク51の打滴量を適正にでき、非画像部25bへの印刷インク51の溢れを抑制することができる。また、インクジェット法で印刷インク51を付与する場合、吐出間隔を長くすることができる。
また、表面処理層55は印刷インク51の離形性もよく、印刷版25の画像部25aに印刷インク51が残ることもなく、印刷インク51の転写性に優れる。このようなことから、印刷版25では高精細なパターンを形成することができ、しかも、表面処理層55は印刷インク51の転写性が優れることから、高精細なパターンを連続的に形成することができる。
さらには、フッ素化合物への印刷インクの溶媒の吸収を低減することで、フッ素化合物層54上の印刷インクのピニングを防止して、このフッ素化合物上に印刷インク51が残らないようにすることができる。
印刷版25は、シリコーンゴムを含む層を有するため、柔軟性がありオフセットが不要である。また、印刷版25は、ガラス等で作製する場合に比して低コストで作製することができる。
凹部27を表面処理層55で構成したが、これに限定されるものではなく、少なくともシリコーンゴム層52の表面52aにだけ表面処理層55が設けられていればよい。
また、シリコーンゴム層53を有する印刷版25では、シリコーンゴム層53を、フッ素化合物層とする構成としてもよい。この場合、フッ素化合物層54を設ける必要がない。
図7に示す印刷版25は、支持材50上に、シリコーンゴムを含む層であるシリコーンゴム層52が設けられている。
シリコーンゴム層52の表面52aに、フッ素化合物を含む層であるフッ素化合物層54と表面処理層55が設けられている。
シリコーンゴム層52の表面52aで、表面処理層55が設けれらている部分が画像部25aである。フッ素化合物層54の表面54aが非画像部25bである。画像部25aは表面処理層55で構成され、非画像部25bはフッ素化合物層54で構成されている。
フッ素化合物層54は、印刷インクをはじき、印刷インクに対して撥液性を示し、表面処理層55は印刷インクに対して親液性を示す。
図7に示す印刷版25では、画像部25aから基板31へ印刷インクが転写され、非画像部25bからは基板31へ印刷インクが転写されない。
図7に示す印刷版25でも、フッ素化合物層54は膜厚が1nm以上100nm以下であればよく、例えば、10nm程度であることが好ましい。フッ素化合物層54は膜厚が1nm以上であれば、溶媒の吸収を防止することができる。
図7に示す印刷版25は一般的に平版と呼ばれるものである。印刷版25は版面に明瞭な凹凸のない印刷版である。印刷版25では画像部25aの表面と非画像部25bの表面との高低差δが100nm以下である。印刷版25の高低差δは、表面処理層55の表面55aからフッ素化合物層54の表面54aまでの距離のことである。高低差δの下限値は1nmである。
高低差δについては、走査電子顕微鏡を用いて印刷版25の断面画像を取得し、断面画像から高低差δを求めることができる。
図7に示す印刷版25でも、表面処理層55を設けることにより、上述のように、図5に示すように、画像部25aにおける印刷インク51の濡れ広がりを多くすることができる。このため、印刷インク51の打滴間隔を広げても、隣接する打滴液同士がつながり、凹部27を印刷インク51で満たすことができ、パターンを欠損なく形成することができる。これにより、配線を、断線することなく形成することができる。
また、上述のように、印刷インク51の打滴間隔を広げることができるため、印刷インク51の打滴量を適正にでき、非画像部25bへの印刷インク51の溢れを抑制することができる。また、インクジェット法で印刷インク51を付与する場合、吐出間隔を長くすることができる。
また、表面処理層55は印刷インク51の離形性もよく、印刷版25の画像部25aに印刷インク51が残ることもなく、印刷インク51の転写性に優れる。このようなことから、図7に示す印刷版25でも高精細なパターンを形成することができ、しかも、表面処理層55は印刷インク51の転写性が優れることから、高精細なパターンを連続的に形成することができる。
さらには、図7に示す印刷版25でも、フッ素化合物への印刷インクの溶媒の吸収を低減することで、フッ素化合物層54上の印刷インクのピニングを防止して、このフッ素化合物上に印刷インクが残らないようにすることができる。
また、図7に示す印刷版25でも、シリコーンゴムを含む層を有するため、柔軟性がありオフセットが不要である。また、図7に示す印刷版25でも、ガラス等で作製する場合に比して低コストで作製することができる。
印刷版25では、図4、図6および図7に示すいずれの構成でも、例えば、図8に示すように画像部25aと非画像部25bが特定のパターンで形成される。画像部25aのパターンは、例えば、ゲート電極および配線等のパターンであり、ゲート電極および配線等が形成される。
印刷版25は、例えば、電子ペーパー等に用いられる薄膜トランジスタのゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の各種の電極の形成に用いることができる。また、印刷版25は、電子回路およびプリント配線基板の配線パターンの形成に用いることもできる。
図9は本発明の実施形態の印刷版を用いて形成される薄膜トランジスタの一例を示す模式図である。
図9に示す薄膜トランジスタ80(以下、TFT80という)は、ゲート電極82と、ゲート絶縁層(図示せず)と、ソース電極86aと、ドレイン電極86bと、半導体層(図示せず)と、保護層(図示せず)とを有する。
TFT80においては、ゲート電極82を覆うように、ゲート絶縁層(図示せず)が形成されている。このゲート絶縁層上にチャネル領域84として予め設定された隙間をあけて、ソース電極86aとドレイン電極86bとが形成されている。チャネル領域84上に活性層として機能する半導体層(図示せず)が形成されている。半導体層、ソース電極86aおよびドレイン電極86bを覆う保護層(図示せず)が形成されている。なお、チャネル領域84のチャネル長は数μm〜数十μmオーダである。薄膜トランジスタのドレイン電流は、チャネル長の影響を受け、チャネル長のばらつきは、薄膜トンランジスタの特性のばらつきに結びつく。
なお、印刷版25は上述の図9に示すTFT80以外に、電極膜、配線膜、および絶縁膜等の各種のパターン膜の形成に用いることができる。このような各種の膜を順次積層して形成することにより、TFT80以外に、電界発光トランジスタ、有機エレクトロルミネッセンス素子、太陽電池等の電子デバイスも製造することができる。印刷版25は電子デバイスの製造に用いることもできる。
印刷版25の支持材50は、シリコーンゴム層52を支持するものであり、例えば、樹脂、金属、ガラス等で構成される。また、支持材50は1種類の材料のみで構成することに限定されるものではなく、複数の材料を組み合わせてもよい。この場合、例えば、支持材50は、アルミニウム板とポリエチレンテレフタレート材の複合材とすることもできる。印刷版25は、支持材50がない構成でもよい。
印刷版25を版胴24に巻きつける場合には、支持材50は可撓性が必要になる。このため、例えば、支持材50がポリエチレンテレフタレート(PET)材である場合、厚みは50〜200μm程度であることが望ましい。また、支持材50がアルミニウム板である場合、アルミニウム板の厚みは0.1〜1mmであることが好ましく、望ましくは0.15〜0.4mmである。
印刷版25のシリコーンゴム層52は、画像部25aを構成する表面処理層55が形成されるものである。
ここで、シリコーンゴムとは、有機シロキサンを主鎖とする、ネットワーク構造を有したゴム状の物質をいう。シリコーン樹脂には、ゴム弾性を示さないものも含まれ、例えば、オルガノシロキサンポリマーである。また、シリコーン樹脂には、上述のようにシリコーンゴムも含まれる。
印刷版25のシリコーンゴム層52は、例えば、PDMS(ポリジメチルシロキサン)で構成される。なお、以下、ポリジメチルシロキサンのことを、単にPDMSともいう。PDMS(ポリジメチルシロキサン)は転写性が高いため、転写後、印刷版25に印刷インクが残ることが抑制され、印刷版25の洗浄なしでも連続印刷が可能となる。これにより、印刷効率を向上させることができる。
シリコーンゴム層52は、例えば、紫外線硬化型のPDMS(ポリジメチルシロキサン)、または熱硬化性のPDMS(ポリジメチルシロキサン)で構成される。紫外線硬化型のPDMS(ポリジメチルシロキサン)は、製造方法に応じて、紫外光が照射された領域が硬化するタイプ、および紫外光が照射された領域が軟化するタイプのいずれも用いることができる。
シリコーンゴム層52は、より具体的には、例えば、信越シリコーン社製 紫外線硬化型液状シリコーンゴム(品名、X−34−4184−A/B)が用いられる。
シリコーンゴム層53を有する印刷版25では、シリコーンゴム層52の厚みは、シリコーンゴム層53よりも厚く、例えば、500μm程度である。
シリコーンゴム層53は、凹部27の側面27bを構成しており、上述のようにシリコーンゴム層53の厚みで、上述の高低差δを調整することができる。シリコーンゴム層53の厚みは、例えば、数μm〜10μm程度であるが、印刷版25の上述の高低差δに応じて適宜設定される。
また、シリコーンゴム層53はシリコーンゴム層52の表面52aに設けられており、シリコーンゴム層52と同じくPDMS(ポリジメチルシロキサン)で構成されてもよい。シリコーンゴム層53は、シリコーンゴム層52と別体であり、上述のように凹部27の側面27bを構成する。このため、シリコーンゴム層53はパターン形成が可能なものであることが好ましい。シリコーンゴム層53は、例えば、紫外線硬化型のPDMS(ポリジメチルシロキサン)、または熱硬化性のPDMS(ポリジメチルシロキサン)で構成される。紫外線硬化型のPDMS(ポリジメチルシロキサン)は、製造方法に応じて、紫外光が照射された領域が硬化するタイプ、および紫外光が照射された領域が軟化するタイプのいずれも用いることができる。
紫外線硬化型のPDMS(ポリジメチルシロキサン)には、例えば、信越シリコーン社製 紫外線硬化型液状シリコーンゴム(品名、X−34−4184−A/B)が用いられる。これ以外に、例えば、信越シリコーン社製 2液混合型常温硬化タイプKE106(品名)、X−32−3279(試作品番号)、およびX−32−3094−2(試作品番号)を用いることができる。
シリコーンゴム層52の厚みは、10μm以上1mm以下が好ましい。シリコーンゴム層52の厚みが10μm未満と薄すぎると印刷インクの溶媒の吸収速度が低下してしまい好ましくない。一方、シリコーンゴム層52の厚みが1mmを超えるような、厚すぎると印刷時に受ける応力によってシリコーンゴム層52の変形が大きくなり、結果的に寸法再現性およびアライメント精度が悪化するため好ましくない。なお、後述の印刷インクの溶媒の吸収速度vについては、使用する印刷インクの溶媒によって大きく変化するため、それに伴い好ましいシリコーンゴム層52の厚みの下限値も変化する。
印刷版25のフッ素化合物層54は、非画像部25bを構成するものである。
フッ素化合物層54は、後述の印刷インクに対して撥液性を発現することに加えて、シリコーンゴム層53の表面53aと高い密着性を示すことが好ましい。また印刷時における、例えば、10kPaから1MPa程度の印圧によって負荷がかかるため、その際にクラックが発生しないように脆弱性が低いことが好ましい。そのため、フッ素化合物層54は、フルオロアルキル基を主成分とする高分子であることが好ましい。シリコーンゴム層53の表面53aとフッ素化合物層54の密着が悪い場合は、中間層として接着層を導入することもできる。
フッ素化合物層54は、より具体的には、例えば、株式会社ハーベス製durasurf(登録商標)(DS−5210TH(品名))またはダイキン工業株式会社製オプツール(登録商標)DSX(品名)で構成することができる。フッ素化合物層54は、上述のように1nm以上100nm以下であることが好ましい。
上述のように、表面処理層55は、画像部25aを構成するものであり、有機系官能基を有するシランカップリング剤を用いて形成された層である。
シランカップリング剤は、有機系官能基を有していれば特に構造は限定されない。有機系官能基としては、例えば、炭化水素基(例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基)、エポキシ基、アミノ基、および、パーフルオロ基等が挙げられる。上記アミノ基としては、1級アミノ基、2級アミノ基、および、3級アミノ基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、および、アルキニル基が挙げられる。脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基)中の炭素原子の数は特に制限されないが、1〜20が好ましく、3〜15がより好ましい。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、および、ナフチル基等が挙げられる。
脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、および、環状のいずれであってもよい。
炭化水素基としては、直鎖状アルキル基が好ましい。
なお、アルキル基を有するシランカップリング剤を、アルキルシラン処理剤とも称する。また、フッ素原子を有するシランカップリング剤を、フッ素系シランカップリング剤とも称する。フッ素系シランカップリング剤は、パーフルオロアルキル基を有することが好ましい。
シランカップリング剤の好適態様としては、以下の式(1)で表されるシランカップリング剤が挙げられる。
式(1) X−L−Si(Y)
Xは、有機系官能基を表す。有機系官能基の種類は上述の通りであり、直鎖状アルキルが好ましい。
Lは、単結合、または、2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、−O−、−CO−、−NH−、−CO−NH−、−COO−、−O−COO−、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環基(ヘテロアリール基)、および、それらの組み合わせから選ばれる2価の連結基が挙げられる。
Yは、加水分解性基を表す。加水分解性基としては、Si(ケイ素原子)に直結し、加水分解反応および/または縮合反応を進行し得る基であり、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基、および、イソシアネート基等が挙げられる。
なお、印刷インクに対して撥液性、印刷インクに対して親液性とは、以下に示すようにして評価することができる。
撥液性が予想される領域と親液性が予想される領域とに液滴を着滴させて、その液滴の挙動で評価を行う。着滴時の液滴量に対して液滴量が減少した領域が撥液性を有する撥インク部、液滴量が増加した領域が親液性を有する親インク部である。
なお、版作成の工程で撥液性と親液性が付与される。この場合、撥液性と親液性の評価は、撥液性の撥インク部、親液性の親インク部の境界に液滴を着滴させて、その液滴の挙動で評価を行う。着滴時の液滴量に対して液滴量が減少した領域が撥液性、液滴量が増加した領域が親液性である。
画像部25aの印刷インクの前進接触角をθA,sとし、非画像部25bの印刷インクの後退接触角をθR,fとするとき、印刷インクに対して、画像部25aの前進接触角θA,sよりも、非画像部25bの後退接触角θR,fの方が大きいことが好ましい。後退接触角θR,fと前進接触角θA,sの差が10°以上あることがより好ましい。上述の差が10°以上であれば、画像部25aと非画像部25bの、印刷インクに対する親液性と撥液性の差が明確になり、高精細なパターン形成ができる。
画像部25aの前進接触角θA,sよりも、非画像部25bの後退接触角θR,fの方が大きい場合、その境界に存在する印刷インクは撥液性の撥インク部(非画像部25b)から親液性の親インク部(画像部25a)に移動する。
理論的には、画像部25aと非画像部25bの境界にまたがった印刷インクには、非画像部25bから画像部25aの方向に、下記式に示す大きさの力Fが働く。ここで、下記式においてγは印刷インクの表面張力であり、rは液滴の接触面半径である。
F=-γπr(cosθR,f-cosθA,s
後退接触角θR,fおよび前進接触角θA,sが180°未満の場合(全ての液滴はこの条件を満たす)、θR,f>θA,sであれば、Fは正となり、液滴は画像部25a側に移動する。このほかに、印刷インクと版表面に摩擦が働くため、実際には、後退接触角θR,fと前進接触角θA,sの差が10°以上あることがより好ましい。
前進接触角と後退接触角は「傾斜法(滑落法ともいう)」、「ウィルヘルミー法」または「拡張収縮法」のいずれかで測定することができる。本発明では、「傾斜法(滑落法ともいう)」で測定した。
印刷インクが溶媒を含み、同じ溶媒に対して、画像部25aの溶媒の吸収速度は、非画像部25bの溶媒の吸収速度よりも速いことが好ましい。すなわち、画像部25aの溶媒の吸収速度をvとし、非画像部25bの溶媒の吸収速度をvとするとき、v<vであることが好ましい。これにより、印刷インク転写時に画像部25a上の印刷インクの広がりが抑制され、高精細なパターン形成が可能となる。
画像部25aの印刷インクの溶媒の吸収速度vは0.1μm/s以上であることが好ましく、より好ましくは1.0μm/s以上である。非画像部25bの印刷インクの溶媒の吸収速度vは0.1μm/s未満であることが好ましく、より好ましくは0.01μm/s未満である。
なお、上述の前進接触角と後退接触角は、印刷インクの溶媒に界面活性剤を添加することによって調整することができる。
印刷インクの溶媒の吸収速度vについて説明する。印刷インクの溶媒の吸収速度vは、まず、インクジェット法により印刷インクを画像部、非画像部に着滴させ、着滴した印刷インクの形状を真横からカメラにより撮像する。次に、着滴からの経過時間毎に撮像したインク形状の画像処理をすることで画像部、非画像部の上に残っているインク量を算出して、インク量を時間で微分することで、印刷インクの溶媒の吸収速度と蒸発速度を得る。
印刷インクの溶媒の溶媒蒸発の影響を考慮するため、Siウエハに非画像部と同等の撥液層を形成した基板を用意して、上述の画像部および非画像部と同様の実験を行い、印刷インクの溶媒の蒸発速度を算出する。なお、Siウエハであるので、溶媒吸収は無視でき、印刷インクの溶媒の蒸発のみとなる。
吸収速度と蒸発速度の合計から、Siウエハを用いて得た蒸発速度を引くことで、印刷インクの溶媒の吸収速度を得ることができる。
ここで、非画像部25bに付与するフッ素化合物の望ましい量は、上述の印刷版25のフッ素化合物層54の厚み、上述の後退接触角θR,fおよび前進接触角θA,s、ならびに上述の印刷インクの溶媒の吸収速度vを合わせて総合的に判断されるものである。しかしながら、非画像部25bに付与するフッ素化合物の望ましい量は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS:Time-of-Flight Secondary Mass Spectrometry)より求められるフッ素化合物の量とPDMS由来の成分量の比率、すなわち、後述するように後退接触角θR,fおよび撥液性と正の相関が認められるF/Si比にて推定することができる。後に詳細に説明するようにF/Si比が1689.75以上であれば、大きな後退接触角θR,fが得られ、良好な撥液性が得られる。このため、F/Si比は1689.75以上であることが好ましい。
下記式において、[COF]は質量電荷比m/z=184.98のカウント数である。[SiH]は質量電荷比m/z=196.90のカウント数である。[Si15]は質量電荷比m/z=223.03のカウント数である。
F/Si比=[COF]/([SiH]+[Si15])
次に、印刷版25の第1の例の製造方法について説明する。
図10〜図15は、印刷版25の第1の例の製造方法を工程順に示す模式的断面図である。図10〜図15において、図6に示す印刷版25と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
まず、図10に示すように、シリコーンゴムを含んでいる第1の層としてシリコーンゴム層52が設けられた支持材50を用意する。シリコーンゴム層52は、上述の紫外線硬化型のPDMSまたは熱硬化型のPDMSで構成される。
次に、シリコーンゴム層52上に感光性PDMSを塗布して、シリコーンゴム層60を形成する。感光性PDMSは、例えば、上述の紫外線硬化型のPDMSが用いられる。シリコーンゴム層60は紫外光Lvが照射された領域が硬化する。紫外光Lvは、半導体製造装置に用いられる一般的な紫外線露光装置により得られる。
次に、図11に示すように、シリコーンゴム層60上にマスク70を配置する。マスク70は、クロム層70a以外は紫外光Lvを透過するものであり、紫外光Lvを透過する領域70bが非画像部25bのパターン状に形成されており、クロム層70aが画像部25aのパターン状に形成されている。
そして、マスク70上からシリコーンゴム層60に向けて紫外光Lvを照射する。紫外光Lvが照射されると、シリコーンゴム層60の照射領域60aが硬化し、照射されない未照射領域60bは硬化しない。未照射領域60bが画像部25aとなる領域である。
次に、マスク70をシリコーンゴム層60上から外す。図12に示すように、紫外光Lvの照射後のシリコーンゴム層60に対して、例えば、室温の雰囲気で、予め定められた時間保持して、ポストベークを行う。ポストベークにより、シリコーンゴム層60の硬化が促進される。
次に、ポストベーク後、例えば、トルエンを用いてシリコーンゴム層60に現像処理を施し、未照射領域60bを溶解し除去され、図13に示すように、シリコーンゴム層52の表面52aの一部を露出させて、非画像部25bとなる領域に、シリコーンゴムを含んでいる第2の層としてシリコーンゴム層53を形成する。
印刷版25の第1の例の製造方法において、図13に示すシリコーンゴム層52およびシリコーンゴム層53のような、画像部25aが凹部の凹版形状のシリコーンゴムを含む層を形成するには、上述の紫外線硬化型のPDMSを用いた方法に限定されるものではなく、図4に示すシリコーンゴム層52およびシリコーンゴム層52の凸部52bの形成のように、熱硬化型のPDMSを鋳型に流し込み成型する方法でもよい。用いる鋳型の材質としては、ガラス、金属、Siおよびレジスト等が挙げられる。レジストとは、ガラス基板上等でレジスト層がパターニングされたもののことである。
また、多段階の凹凸構造を有する鋳型を用いることによって、印刷版25の面内で、シリコーンゴム層53の厚み、すなわち、凹部27の深さを多段階にすることができる。この方法を用いれば、後述の印刷インクの付与量の範囲をさらに広げることができる。
次に、図14に示すように、上述のマスク70をシリコーンゴム層53上に、紫外光Lvを透過する領域70bとシリコーンゴム層53の表面53aの位置を合わせて配置し、シリコーンゴム層53の表面53aに向けて紫外光Lvを照射する。紫外光Lvが照射されたシリコーンゴム層53の表面53aに水酸基が形成され、表面53aが活性化された状態となる。次に、マスク70をシリコーンゴム層53上から外す。
次に、例えば、支持材50ごとシリコーンゴム層53をシランカップリング剤(図示せず)に浸漬させて、シリコーンゴム層53の活性化された状態の表面53aにシランカップリング処理を施す。その後、未反応のシランカップリング剤をスピンコータによって回転させて除去し、例えば、予め定められた温度および時間にて、飽和水蒸気圧環境下でシランカップリング剤を活性化された状態の表面53aに定着させる。
シランカップリング剤としては、例えば、durasurf専用プライマー剤(DS−PC−3B(型番))が用いられる。
次に、シリコーンゴム層53の表面53aに、フッ素化合物(図示せず)を塗布し、予め定められた温度および時間にて定着処理を行う。その後、フッ素化合物の未定着分を、例えば、フッ素系溶媒(株式会社ハーベス製durasurf(DS−TH(品名)))をスピンコートすることによって洗浄除去する。これにより、図6に示す印刷版25を得ることができる。フッ素化合物は、例えば、株式会社ハーベス製durasurf(DS−5210TH(品名))またはダイキン工業株式会社製オプツール(登録商標)DSX(品名)が用いられる。
シランカップリング処理は、露光直後、具体的には、露光後30秒以内にシランカップリング剤に浸漬させる処理を開始することが望ましい。これは、露光処理によって照射領域の表面に形成された表面ラジカルが短時間で失活することと、シリコーンゴム層52内部の未架橋成分がブリードすることによって、照射領域表面が徐々に疎水性表面に戻ってしまうことによるためである。
活性化された状態の表面53aを形成する際、マスク70を利用したマスク露光法を用いたがこれに限定されるものではなく、開口部を有するマスクを用いたプラズマ処理、またはレーザもしくは集光光束を直接走査する直接描画法を用いることもできる。
また、活性化された状態の表面53aにシランカップリング処理を施す際に、シランカップリング剤に浸漬させた液相法を用いたが、これに限定されるものではなく、シランカップリング剤を気体にして、シランカップリング剤の気体を用いて、活性化された状態の表面53aにシランカップリング処理を施してもよい。
画像部25aの活性化の程度が不足している場合には、化学的または物理的処理を行ってシリコーンゴム層52の表面52a、シリコーンゴム層53の側面53bの活性化の程度を向上させることができる。
上述の印刷版25の製造方法では、シランカップリング処理した後にフッ素化合物を塗布したが、これに限定されるものではない。例えば、シランカップリング処理の際に、フッ素系シランカップリング剤を気相法または液相法により、上述の水酸基に結合させる。これにより、フッ素化合物層54(図6参照)を形成するようにしてもよい。
次に、図15に示す画像部25aとなる領域61に、例えば、表面処理層55(図6参照)を以下のようにして形成する。表面処理層55は、上述のように有機系官能基を有するシランカップリング剤を用いて形成された層である。
具体的には、例えば、マスク露光法を用いて、領域61にだけ紫外光Lvを照射する。次に、領域61を、アルキルシラン処理剤に、予め定めた時間、浸漬する。浸漬後、加熱処理し、アルキルシラン処理剤を熱定着させる。
アルキルシラン処理剤が、有機系官能基を有するシランカップリング剤である。アルキルシラン処理剤には、例えば、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、およびドデシルトリエトキシシラン等を用いることができる。
なお、上述の紫外光Lvは波長が126nm以上300nm以下であることが好ましい。
次に、印刷版25の第2の例の製造方法について説明する。
図16および図17は、印刷版25の第2の例の製造方法を工程順に示す模式的断面図である。図16および図17において、図6に示す印刷版25と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図13に示すようにシリコーンゴム層52上にシリコーンゴム層53が形成された状態で、図16に示すように、シリコーンゴム層53の表面53aを含め、シリコーンゴム層52に対して、紫外光Lvを照射し、シリコーンゴム層53の表面53a全面に水酸基を形成して、シリコーンゴム層53の表面53aを活性化された状態とする。この場合、シリコーンゴム層52の表面52aも活性化された状態となり、シリコーンゴム層53の側面53bに紫外光Lが照射されれば、側面53bも活性化された状態となる。
印刷版25の第2の例の製造方法において、図13に示すシリコーンゴム層52およびシリコーンゴム層53のような、画像部25aが凹部の凹版形状のシリコーンゴムを含む層を形成するには、上述の紫外線硬化型のPDMSを用いた方法に限定されるものではなく、図4に示すシリコーンゴム層52およびシリコーンゴム層52の凸部52bの形成のように、熱硬化型のPDMSを鋳型に流し込み成型する方法でもよい。用いる鋳型の材質は上述のとおりである。
次に、例えば、図17に示すように、シランカップリング剤を含む基体72をシリコーンゴム層53の表面53aにだけ押し付けて接触させて、表面53aに対してシランカップリング処理を施す。その後、シランカップリング処理された状態の表面53aに、フッ素化合物層54(図6参照)を形成する。フッ素化合物層54の形成方法は、上述のとおりである。なお、シランカップリング剤を含む基体72は、基体72の母材を、シランカップリング剤が溶解した溶液に一定時間浸漬させることによって形成することができる。基体72の母材に使用する材料は、シランカップリング剤およびその溶媒を吸収するものであればよく、例えば、PDMSで構成される。また、シランカップリング剤が溶解した溶液に母材を浸漬する時間は、シランカップリング剤濃度および母材の溶媒吸収速度から適宜決めればよい。
また、上述の方法に限定されるものではなく、例えば、フッ素系のシランカップリング剤を含む基体72をシリコーンゴム層53の表面53aにだけ押し付けて接触させて、表面53aに対してフッ素化合物層54を形成する方法もある。なお、基体72の母材は、例えば、PDMS、信越化学工業社製SHIN-ETSU SIFEL(登録商標)、ダイキン工業社製ダイエル(登録商標)等のうちのいずれかで構成される。
また、上述の方法に限定されるものではなく、例えば、シランカップリング剤に浸漬させてシリコーンゴム層52の表面52aおよびシリコーンゴム層53の表面53aに対してシランカップリング処理を施す。なお、シランカップリング処理方法は上述のとおりである。その後、図17に示すように、例えば、フッ素化合物を含む基体72をシランカップリング処理された状態の表面53aにだけ押し付けて接触させて、フッ素化合物層54(図6参照)を形成する。
その後、上述の図15に示すようにして、画像部25aとなる領域61に、表面処理層55(図6参照)を形成する。これにより、図6に示す印刷版25を得ることができる。なお、基体72の母材の構成は、上述のとおりである。
次に、印刷版25の第3の例の製造方法について説明する。
図18〜図21は、印刷版25の第3の例の製造方法を工程順に示す模式的断面図である。図18〜図21において、図6に示す印刷版25と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図13に示すようにシリコーンゴム層52上にシリコーンゴム層53が形成された状態で、図18に示すように、シリコーンゴム層53の凹部53cにレジストを充填し、レジスト層74を形成する。レジストは、シリコーンゴム層52に対してレジスト層74を形成することができれば、特に限定されるものではなく、公知のものを適宜利用可能である。
印刷版25の第3の例の製造方法において、図13に示すシリコーンゴム層52およびシリコーンゴム層53のようなシリコーンゴムによる凹版形状を形成するには、上述の紫外線硬化型のPDMSを用いた方法に限定されるものではなく、図4に示すシリコーンゴム層52およびシリコーンゴム層52の凸部52bの形成のように、熱硬化型のPDMSを鋳型に流し込み成型する方法でもよい。用いる鋳型の材質は上述のとおりである。
また、レジスト層74は紫外光Lvの透過率が低いこと、すなわち、紫外光Lvの吸収率が高いことが好ましい。これにより、レジスト層74が設けられた部分への紫外光Lvの照射を抑制することができる。
次に、図19に示すように、シリコーンゴム層53の表面53aに対して、レジスト層74を含め、紫外光Lvを照射する。これにより、シリコーンゴム層53の表面53aに水酸基が形成され、表面53aが活性化された状態となる。
次に、活性化された状態の表面53aに対して、シランカップリング処理を施し、その後、シランカップリング処理された状態の表面53aに、図20に示すように、フッ素化合物層54を形成する。なお、シランカップリング処理は上述のとおりであるため、詳細な説明は省略する。また、フッ素化合物層54の形成方法は、上述のフッ素化合物層54の形成方法のとおりである。
次に、図21に示すようにレジスト層74を除去する。レジスト層74の除去には、フォトリソグラフィ法で利用されるレジスト層74の公知の除去方法が適宜利用可能である。例えば、溶剤を使ってレジスト層74を溶解してレジスト層74を除去する。
その後、上述の図15に示すようにして、画像部25aとなる領域61に、表面処理層55(図6参照)を形成する。これにより、図6に示す印刷版25を得ることができる。
次に、印刷版25の第4の例の製造方法について説明する。
図22〜図25は、印刷版25の第4の例の製造方法を工程順に示す模式的断面図である。図22〜図25において、図6に示す印刷版25と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図13に示すようにシリコーンゴム層52上にシリコーンゴム層53が形成された状態で、レジストを用いて、図22に示すように、シリコーンゴム層53の凹部53cを充填し、かつシリコーンゴム層53の表面53aを覆うレジスト層75を形成する。レジストは、シリコーンゴム層52に対してレジスト層75を形成することができれば、特に限定されるものではなく、公知のものを適宜利用可能である。上述のレジスト層74と同じものを用いることができる。
印刷版25の第4の例の製造方法において、図13に示すシリコーンゴム層52およびシリコーンゴム層53のようなシリコーンゴムによる凹版形状を形成するには、上述の紫外線硬化型のPDMSを用いた方法に限定されるものではなく、図4に示すシリコーンゴム層52およびシリコーンゴム層52の凸部52bの形成のように、熱硬化型のPDMSを鋳型に流し込み成型する方法でもよい。用いる鋳型の材質は上述のとおりである。
次に、レジスト層75を、例えば、ドライエッチングまたはウエットエッチングにより、図23に示すように、シリコーンゴム層53の表面53aを露出させ、シリコーンゴム層53の凹部53cにだけレジスト層74を形成する。
次に、図24に示すように、シリコーンゴム層53の表面53aに対して、レジスト層74を含め、紫外光Lvを照射する。これにより、シリコーンゴム層53の表面53aに水酸基が形成され、表面53aが活性化された状態となる。
次に、活性化された状態の表面53aに対して、シランカップリング処理を施し、その後、シランカップリング処理された状態の表面53aに、図25に示すように、フッ素化合物層54を形成する。なお、シランカップリング処理は上述のとおりであるため、詳細な説明は省略する。また、フッ素化合物層54の形成方法は、上述のフッ素化合物層54の形成方法のとおりである。
次に、レジスト層74を除去する。レジスト層74の除去は、上述のように、フォトリソグラフィ法で利用されるレジスト層74の公知の除去方法が適宜利用可能である。例えば、溶剤でレジスト層74を溶解してレジスト層74を除去する。
その後、上述の図15に示すようにして、画像部25aとなる領域61に、表面処理層55(図6参照)を形成する。これにより、図6に示す印刷版25を得ることができる。
次に、印刷版25の第5の例の製造方法について説明する。
図26〜図29は、印刷版25の第5の例の製造方法を工程順に示す模式的断面図である。図26〜図29において、図6に示す印刷版25と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
まず、図26に示すように、シリコーンゴム層52が設けられた支持材50を用意する。シリコーンゴム層52は、例えば、PDMSで構成されている。そして、シリコーンゴム層52上に感光性PDMSを塗布して、シリコーンゴム層60を形成する。感光性PDMSは、例えば、上述の紫外線硬化型のPDMSである。
次に、図27に示すように、シリコーンゴム層60の表面60c全面に紫外光Lvを照射し、シリコーンゴム層60の表面60c全面に水酸基を形成して、表面60cを活性化された状態とする。
次に、シリコーンゴム層60の活性化された状態の表面60cに、シランカップリング処理を施し、次いで、図28に示すように、シリコーンゴム層60の表面60c全面にフッ素化合物層62を形成する。シランカップリング処理は上述のとおりであるため、詳細な説明は省略する。また、フッ素化合物層62の形成方法は、上述のフッ素化合物層54の形成方法と同じであるため、詳細な説明は省略する。
次に、フッ素化合物層62およびシリコーンゴム層60にパターン形成を施し、フッ素化合物層62における画像部25aとなる領域と、シリコーンゴム層60における画像部25aとなる領域を除去し、図29に示すように、シリコーンゴム層52の表面52aを露出させ、画像部25aとなる領域61を得る。その後、上述の図15に示すようにして、画像部25aとなる領域61に、表面処理層55(図6参照)を形成する。これにより、図6に示す印刷版25を得ることができる。
次に、印刷版25の第6の例の製造方法について説明する。
図30〜図34は、印刷版25の第6の例の製造方法を工程順に示す模式的断面図である。図30〜図34において、図6に示す印刷版25と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図26に示すようにシリコーンゴム層52上にシリコーンゴム層60が形成された状態で、図30に示すように、シリコーンゴム層60上に、例えば、紫外光Lvを透過する領域70bが非画像部25bのパターン状に形成され、クロム層70aが画像部25aのパターン状に形成されているマスク70を配置する。そして、マスク70上からシリコーンゴム層60に向けて紫外光Lvを照射する。紫外光Lvが照射されると、シリコーンゴム層60の照射領域60aが硬化し、照射されない未照射領域60bは硬化しない。未照射領域60bが画像部25aとなる領域である。
次に、マスク70をシリコーンゴム層60上から外す。図31に示すように、紫外光Lvの照射後のシリコーンゴム層60に対して、硬化を促進するためのポストベークを、例えば、室温の雰囲気で、予め定められた時間保持して行う。
次に、ポストベーク後、図32に示すように、シリコーンゴム層60の表面60c全面に紫外光Lvを照射し、シリコーンゴム層60の表面60c全面に水酸基を形成して、表面60cを活性化された状態とする。
このとき、上述のマスク70上からシリコーンゴム層60に向けて紫外光Lvを照射し、シリコーンゴム層60の照射領域60aを硬化させる工程と、上述のシリコーンゴム層60の表面60c全面に紫外光Lvを照射する工程とに用いられる紫外光Lvの波長および照度は、異なっていても同一であっても良く、各工程において、シリコーンゴム層60の硬化およびシリコーンゴム層60の表面60cを活性化させることができれば、紫外光Lvの波長および照度は特に限定されるものではない。
次に、シリコーンゴム層60の活性化された状態の表面60cに、シランカップリング処理を施し、次いで、図33に示すように、シリコーンゴム層60の表面60c全面にフッ素化合物層62を形成する。シランカップリング処理は上述のとおりであるため、詳細な説明は省略する。また、フッ素化合物層62の形成方法は、上述のフッ素化合物層54の形成方法と同じであるため、詳細な説明は省略する。
次に、フッ素化合物層62に未照射領域60bが露出するようにパターン形成する。次に、例えば、トルエンを用いてシリコーンゴム層60に現像処理を施し、シリコーンゴム層60の未照射領域60bを溶解して除去する。これにより、図34に示すように、シリコーンゴム層52の表面52aを露出させ、画像部25aとなる領域61を得る。その後、上述の図15に示すようにして、画像部25aとなる領域61に、表面処理層55(図6参照)を形成する。これにより、図6に示す印刷版25を得ることができる。
次に、印刷版25の第7の例の製造方法について説明する。
図35〜図39は、印刷版25の第7の例の製造方法を工程順に示す模式的断面図である。図35〜図39において、図6に示す印刷版25と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
まず、図35に示すように、シリコーンゴム層52が設けられた支持材50を用意する。
次に、図36に示すように、シリコーンゴム層52の最表面52c全面に紫外光Lvを照射し、シリコーンゴム層52の最表面52c全面に水酸基を形成して、シリコーンゴム層52の最表面52cを活性化された状態とする。
次に、シリコーンゴム層52の活性化された状態の最表面52c全面に、シランカップリング処理を施し、図37に示すように、シリコーンゴム層52の最表面52c全面にフッ素化合物層62を形成する。シランカップリング処理は上述のとおりであるため、詳細な説明は省略する。また、フッ素化合物層62の形成方法は、上述のフッ素化合物層54の形成方法と同じであるため、詳細な説明は省略する。
次に、図38に示すように、フッ素化合物層62の表面62c上にマスク64を配置する。マスク64は、クロム層64a以外は、例えば、エキシマレーザによるレーザ光Leを透過するものであり、クロム層64aが画像部25aに相当する領域64bを除いて形成されている。
そして、マスク64上からフッ素化合物層62に向けてレーザ光Leを照射する。レーザ光Leが照射されると、フッ素化合物層62の照射領域62aが下層のシリコーンゴム層52も含めエッチングされて除去され、照射されない未照射領域62bはエッチングされず除去されない。これにより、図39に示すように画像部25aとなる領域61が形成される。その後、上述の図15に示すようにして、画像部25aとなる領域61に、表面処理層55(図4参照)を形成する。これにより、図4に示す印刷版25を得ることができる。
印刷版25の第7の例の製造方法では、レーザ光Leを透過するマスク64を用いたが、これに限定されるものではなく、マスク64を用いることなく、エキシマレーザを画像部25aに相当する領域64bのみに照射することによって画像部25aを形成することができる。レーザ光Leは、エキシマレーザに限定されるものではなく、強照度レーザを用いることで、アブレーションを起こし、画像部25aを形成することができる。強照度レーザとは、エキシマレーザと同等の照度を有するレーザのことであり、エキシマレーザのようなガスレーザに限定されるものではなく、固体レーザでも半導体レーザでもよい。
また、レーザ光Leを透過するマスク64を用いる以外に、以下の方法を用いることもできる。まず、画像部25aに相当する領域64bに開口部を有するメタルマスクを、フッ素化合物層62の表面62c上に配置する。次に、フッ素と酸素の混合ガスからなるプラズマ処理を行い、エッチングすることにより、図39に示すように、シリコーンゴム層52の表面52aを露出させ、画像部25aとなる領域61を得る。その後、上述の図15に示すようにして、画像部25aとなる領域61に、表面処理層55(図4参照)を形成する。これにより、図4に示す印刷版25を得ることができる。
次に、印刷版25の第8の例の製造方法について説明する。
図40〜図42は印刷版25の第8の例の製造方法を工程順に示す模式的断面図である。図40〜図42において、図6に示す印刷版25と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
印刷版25としては、フッ素化合物層54(図6参照)をシリコーンゴム層53上に形成するものに限定されるものではなく、フッ素系界面活性剤およびシリコーン樹脂を含む層を用いて形成してもよい。この場合、フッ素化合物層54(図6参照)のように別途形成するのではなく、図40に示すように、支持材50にシリコーンゴム層52と、フッ素系界面活性剤およびシリコーン樹脂を含むシリコーンゴム層57が積層されたものを用意する。
フッ素系界面活性剤およびシリコーン樹脂を含むシリコーンゴム層57は、例えば、シリコーンゴムにフッ素系界面活性剤が含有されたものである。シリコーンゴムには、例えば、上述の紫外線硬化型のPDMSまたは熱硬化型のPDMSが用いられる。フッ素系界面活性剤には、例えば、ダイキン工業社製オプツール(登録商標)DAC(添加剤)、DIC社製メガファックシリーズ等が用いられる。
以下、フッ素系界面活性剤およびシリコーン樹脂を含むシリコーンゴム層57のことを単にシリコーンゴム層57という。
次に、図41に示すように、シリコーンゴム層57の表面57c上に、クロム層64a以外はレーザ光Leを透過するマスク64を配置する。マスク64は上述の図38に示すマスク64と同じ構成である。
そして、マスク64上からシリコーンゴム層57に向けてレーザ光Leを照射する。レーザ光Leが照射されると、シリコーンゴム層57の照射領域57aがエッチングされて除去され、照射されない未照射領域57bはエッチングされず除去されない。この場合、シリコーンゴム層57では含まれるフッ素系界面活性剤が、シリコーンゴム層57の表面57cに偏析する。照射領域57aが画像部25aとなる領域である。
そして、シリコーンゴム層57が図42に示すように、シリコーンゴム層53となる。フッ素系界面活性剤が表面53aに偏析することで、シリコーンゴム層53の表面53aにフッ素化合物77が存在する。フッ素化合物77は上述のフッ素化合物層54と同様の機能を発揮する。
このとき、シリコーンゴム層52の表面52aが露出されており、画像部25aとなる領域61が得られる。その後、上述の図15に示すようにして、画像部25aとなる領域61に、表面処理層55(図6参照)を形成する。これにより、図6に示す印刷版25を得ることができる。
なお、印刷版25の第8の例の製造方法では、上述の方法に限定されるものではなく、シリコーンゴム層57として、フッ素系界面活性剤が含有された紫外線硬化型のPDMSを用い、図6に示す印刷版25を作製してもよい。
この場合、まず、図12に示すように、シリコーンゴム層60上にマスク70を配置し、マスク70上からシリコーンゴム層60に向けて紫外光Lvを照射する。紫外光Lvが照射されると、シリコーンゴム層60の照射領域60aが硬化し、照射されない未照射領域60bは硬化しない。シリコーンゴム層60の未照射領域60bが画像部25aとなる領域である。
次に、マスク70をシリコーンゴム層60上から外し、図13に示すように、紫外光Lvの照射後のシリコーンゴム層60に対して、ポストベークを行い、ポストベーク後、シリコーンゴム層60に現像処理を施し、シリコーンゴム層60の照射領域60aが溶解せず除去されず、未照射領域60bが溶解し除去され、シリコーンゴム層52の表面52aの一部を露出させる(図14参照)。これにより、図42に示すように画像部25aとなる領域61が形成される。その後、上述の図15に示すようにして、画像部25aとなる領域61に、表面処理層55(図6参照)を形成する。これにより、図6に示す印刷版25が得られる。
次に、印刷版25の第9の例の製造方法について説明する。
図43〜図48は、印刷版25の第9の例の製造方法を工程順に示す模式的断面図である。図43〜図48において、図6に示す印刷版25と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
まず、図43に示すように、支持体76の表面76aに、印刷版25(図4参照)の凹部27(図4参照)を形成するためのレジスト膜78を形成し、凸状のパターンを有する支持体76を得る。レジスト膜78は、上述のレジスト層74と同じ構成であり、かつ同じ方法で形成することができるため、詳細な説明は省略する。
次に、図44に示すように、支持体76の表面76aにレジスト膜78を覆うシリコーンゴム膜90を形成する。シリコーンゴム膜90は、後に、上述のシリコーンゴム層52になるものである。このため、シリコーンゴム膜90の厚みおよび組成は、上述のシリコーンゴム層52同じ構成であり、かつ同じ方法で形成することができるため、詳細な説明は省略する。なお、支持体76は、例えば、ガラスで構成される。
次に、図45に示すように、支持体76とシリコーンゴム膜90を分離する。このとき、レジスト膜78も支持体76から分離する。これにより、図46に示すようにシリコーンゴム層52が得られる。支持体76とシリコーンゴム膜90を分離するとは、例えば、いずれか一方を、他方から剥すことである。シリコーンゴム膜90の方が支持体76よりも柔軟性があるため、例えば、シリコーンゴム膜90を支持体76から剥す。
次に、シリコーンゴム膜90を支持体76から分離して得られた、図46に示すシリコーンゴム層52の最表面52c全面に、紫外光Lvを照射する。この場合、レジスト膜78が充填されている領域が後に凹部27(図4参照)になるが、レジスト膜78が充填されている領域への紫外光Lvの照射は抑制される。
次に、レジスト膜78が充填された状態で、シリコーンゴム層52の最表面52c全面にシランカップリング処理を施し、その後、シランカップリング処理された状態の最表面52cに、すなわち、非画像部となる領域の表面に、図47に示すように、フッ素化合物層54を形成する。
シランカップリング処理、およびフッ素化合物層54の形成方法は、上述のとおりであるため、その詳細な説明は省略する。
次に、レジスト膜78を除去する。レジスト膜78の除去は、レジスト層の公知の除去方法が適宜利用可能である。例えば、溶液でレジスト膜78を溶解することで、レジスト膜78を除去することができる。これにより、図48に示すように、シリコーンゴム層52の表面52aを露出させ、画像部25aとなる領域61を得る。その後、上述の図15に示すようにして、画像部25aとなる領域61に、表面処理層55(図4参照)を形成する。これにより、図4に示す印刷版25を得ることができる。
支持体76にレジスト膜78を形成する構成としたが、これに限定されるものではなく、支持体76にレジスト膜78が形成された形状の型を用いてもよい。この場合、図46に示す状態では、レジスト膜78がないため、シリコーンゴム層52の凸部52bの最表面52cにだけシランカップリング処理を施す必要がある。図47に示す状態では、レジスト膜78がないため、シリコーンゴム層52の凸部52bの最表面52cにだけフッ素化合物層54を形成する必要がある。
次に、印刷版25の第10の例の製造方法について説明する。
図49〜図53は、印刷版25の第10の例の製造方法を工程順に示す模式的断面図である。図49〜図53において、図6に示す印刷版25と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
まず、図49に示すように、支持体76の表面76aに、印刷版25(図4参照)の凹部27(図4参照)と同じ形状のレジスト膜78を形成し、印刷版25(図4参照)の凹部27(図4参照)を形成するための凸状のパターンを有する支持体76を得る。支持体76にレジスト膜78が形成されたものを、印刷版25を形成するための鋳型とする。レジスト膜78は、上述のレジスト層74と同じ構成であり、かつ同じ方法で形成することができるため、詳細な説明は省略する。
ここで、後述する紫外光Lv照射後の離型性を高めるために、図49に示す鋳型に対して離型処理を行う工程を加えてもよい。離型処理は、公知の方法によればよいが、例えば、鋳型を洗浄したのち、温度120℃で気化したフッ素系シランカップリング剤、例えば、(heptadecafluoro-1,1,2,2-tetrahy- drodecyl)triethoxysilane雰囲気下に鋳型を2時間静置することによって、離型処理を完了できる。なお、鋳型の洗浄法としては、酸素プラブマ処理、真空紫外線照射処理、およびオゾン処理等のうちいずれかの方法を適宜選択すればよい。
次に、図50に示すように、支持体76の表面76aにレジスト膜78を覆うシリコーンゴム膜90を形成する。シリコーンゴム膜90は、後に、上述のシリコーンゴム層52になるものである。このため、シリコーンゴム膜90の厚みおよび組成は、上述のシリコーンゴム層52同じ構成であり、かつ同じ方法で形成することができるため、詳細な説明は省略する。なお、支持体76は、例えば、石英ガラスで構成される。
次に、図51に示すように、シリコーンゴム膜90の表面90c全面に、支持体76側から支持体76を通して紫外光Lvを照射する。この場合、レジスト膜78が充填されている領域が後に凹部27(図8参照)になるが、レジスト膜78が充填されている領域への紫外光Lvの照射は抑制される。シリコーンゴム膜90の表面90cがシリコーンゴム層52の最表面52cとなる、
なお、紫外光Lvは支持体76を通過して表面90c全面に照射されるため、支持体76は紫外光Lvの透過率が高いことが好ましい。
次に、支持体76とシリコーンゴム膜90を分離する。このとき、支持体76にレジスト膜78を残した状態とする。これにより、図52に示すようにシリコーンゴム層52を得る。この場合も、例えば、シリコーンゴム膜90の方が支持体76よりも柔軟性があるため、シリコーンゴム膜90を支持体76から剥す。
次に、シリコーンゴム膜90を支持体76から分離して得られた、シリコーンゴム層52の最表面52c全面にシランカップリング処理を施し、その後、シランカップリング処理された状態の最表面52cに、すなわち、非画像部となる領域の表面に、図53に示すように、フッ素化合物層54を形成する。シランカップリング処理、およびフッ素化合物層54の形成方法は、上述のとおりであるため、その詳細な説明は省略する。
図53に示すように、シリコーンゴム層52の表面52aが露出されており、画像部25aとなる領域61が得られている。その後、上述の図15に示すようにして、画像部25aとなる領域61に、表面処理層55(図4参照)を形成する。これにより、図4に示す印刷版25を得ることができる。
次に、印刷版25の第11の例の製造方法について説明する。
図54〜図58は、本発明の実施形態の印刷版の第11の例の製造工程を示す模式的断面図である。
まず、図54に示すように、シリコーンゴム層52が設けられた支持材50を用意する。シリコーンゴム層52はPDMSで構成されている。
次に、図55に示すように、シリコーンゴムを含む層としてシリコーンゴム層52の表面52aに、例えば、クロム層100aが特定のパターン状態に形成されたマスク100を密着させて配置する。そして、マスク100上からシリコーンゴム層52の表面52aに向けて紫外光Lvを照射する。紫外光Lvが照射されると、シリコーンゴム層52の表面52aのうち、照射領域52dに水酸基が形成され、照射領域52dが活性化する。図56に示すように、シリコーンゴム層52の表面52aに活性化領域52eが形成される。
次に、マスク100をシリコーンゴム層52から外す。照射領域52dおよび活性化領域52eが、シリコーンゴム層52の表面52aのうち、非画像部25bとなる領域である。
次に、支持材50ごとシリコーンゴム層52を、フッ素系のシランカップリング剤95に浸漬させ、活性化領域52eにシランカップリング剤95を結合させて、活性化領域52eにシランカップリング処理を施す(図57参照)。その後、未反応のシランカップリング剤をスピンコータによって回転させて除去し、例えば、予め定められた温度および時間にて、飽和水蒸気圧環境下でシランカップリング剤95を活性化領域52eに定着させる。
シランカップリング処理は、露光直後、具体的には、露光後30秒以内にシランカップリング剤95に浸漬させる処理を開始することが望ましい。これは、露光処理によって照射領域の表面に形成された表面ラジカルが短時間で失活することと、シリコーンゴム層52内部の未架橋成分がブリードすることによって、照射領域表面が徐々に疎水性表面に戻ってしまうことによるためである。
次に、図58に示すように、シリコーンゴム層52の表面52aに、フッ素化合物97を塗布し、活性化領域52eにフッ素化合物97を結合させて、予め定められた温度および時間にて活性化領域52eへのフッ素化合物97の定着処理を行う。これにより、その後、フッ素化合物97の未定着分を、例えば、スピンコータによって回転させて除去する。これにより、フッ素化合物97で、図7に示す非画像部25bであるフッ素化合物層54が形成される。
次に、シリコーンゴム層52の露出している表面52aに、上述の図15に示すようにして、表面処理層55(図7参照)を形成する。これにより、図7に示すように画像部25aが表面処理層55(図7参照)で構成された印刷版25を得ることができる。
シリコーンゴム層52の露出している表面52aが、シリコーンゴム層52の表面52aのうち、画像部25aとなる領域61である。
また、上述の印刷版25の製造方法では、クロム層を介して画像部となる領域のみを活性化させる方法について説明したが、以下の第12の例の製造方法によっても同等の印刷版を形成することができる。
なお、シリコーンゴム層にフッ素化合物を含む層であるフッ素化合物層を形成する過程において、フッ素化合物が結合する場所のシリコーンゴム層が削られ、非画像部のフッ素化合物層が画像部のシリコーンゴム層より低くなる場合がある。すなわち、フッ素化合物層が凹部となり、シリコーンゴム層が凸部なる。また、シリコーンゴム層にフッ素化合物層を形成する過程において、フッ素化合物が結合しない領域のシリコーンゴム層が隆起して、フッ素化合物層が凹部となり、シリコーンゴム層が凸部となることがある。
次に、印刷版25の第12の例の製造方法について説明する。
図59〜図63は、本発明の実施形態の印刷版の第12の例の製造工程を示す模式的断面図である。なお、印刷版25の第12の例の製造方法では、印刷版25の第11の例の製造方法を示す図54〜図58と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
まず、シリコーンゴム層52が設けられた支持材50を用意し、図59に示すように、シリコーンゴム層52の表面52a全面に紫外光Lvを照射する。紫外光Lvが照射されると、シリコーンゴム層52の表面52aの照射領域52dに水酸基が形成され、照射領域52dが活性化する。図60に示すように、シリコーンゴム層52の表面52a全面に活性化領域52eが形成される。
次に、支持材50ごとシリコーンゴム層52を、フッ素系のシランカップリング剤95に浸漬させ、活性化領域52eにシランカップリング剤95を結合させて、活性化領域52eにシランカップリング処理を施す(図61参照)。その後、未反応のシランカップリング剤をスピンコータによって回転させて除去し、例えば、予め定められた温度および時間にて、飽和水蒸気圧環境下でシランカップリング剤95を活性化領域52eに定着させる。
シランカップリング処理は、上述の第11の例の製造方法と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
次に、図62に示すように、シリコーンゴム層52の表面52a全面に、フッ素化合物97を塗布し、活性化領域52e全面にフッ素化合物97を結合させて、予め定められた温度および時間にて活性化領域52e全面へのフッ素化合物97の定着処理を行う。その後、フッ素化合物97の未定着分を、例えば、スピンコータによって回転させて除去する。これにより、フッ素化合物97がシリコーンゴム層52の表面52a全面に形成される。
次に、図63に示すように、画像部25aとなる領域61について、シリコーンゴム層52の表面52aを露出させる。例えば、上述の図38に示すように、レーザ光Le(図38参照)を照射して、フッ素化合物97およびシランカップリング剤95を除去して、シリコーンゴム層52の表面52aを露出させる。なお、シリコーンゴム層52の表面52aを露出させることができれば、上述のレーザ光Leを照射する方法に限定されるものではない。画像部25aとなる領域61に、化学的処理または物理的処理を施してフッ素化合物97を除去する。化学的処理または物理的処理としては、開口部を有するマスクを用いたプラズマ処理、またはマスク露光法、レーザもしくは集光光束を直接走査する直接描画法を用いた光照射処理のいずれを用いてもよい。
次に、シリコーンゴム層52の露出している表面52aに、上述の図15に示すようにして、表面処理層55(図7参照)を形成する。これにより、図7に示す画像部25aが表面処理層55(図7参照)で構成された平版の印刷版25を得ることができる。
上述のように、非画像部25bとなる領域である活性化領域52eを形成する際、マスク100を密着させたマスク露光法を用いた光照射処理に限定されるものではなく、開口部を有するマスクを用いたプラズマ処理、またはレーザもしくは集光光束を直接走査する直接描画法を用いた光照射処理を利用することもできる。上述のプラズマ処理が水酸基を形成する物理的処理に該当する。上述のマスク露光法、およびレーザもしくは集光光束を直接走査する直接描画法が水酸基を形成する化学的処理に該当する。化学的処理には、フッ素化合物等の化学結合を解離するために波長126nm以上300nm以下の照射光を用いることが好ましい。このため、上述の紫外光Lvは波長が126nm以上300nm以下であることが好ましい。
また、活性化領域52eにシランカップリング処理を施す際に、フッ素系のシランカップリング剤95に浸漬させた液相法を用いたが、これに限定されるものではなく、シランカップリング剤95を気体にして、シランカップリング剤95の気体を用い、活性化領域52eにシランカップリング剤95の気体を結合させてシランカップリング処理を施してもよい。シランカップリング剤95に浸漬させる処理方法のことを液相法といい、シランカップリング剤95の気体を活性化領域52eに結合させる処理方法のことを気相法という。
上述の印刷版25の製造方法では、シランカップリング処理した後にフッ素化合物97を塗布したが、これに限定されるものではない。例えば、シランカップリング処理の際に、フッ素系シランカップリング剤を気相法または液相法により、上述の水酸基に結合させる。これにより、フッ素化合物を含む層であるフッ素化合物層54を形成するようにしてもよい。フッ素系シランカップリング剤を用いた場合、シランカップリング剤95(図58参照)とフッ素化合物97(図58参照)が実質的に同一の分子からなる。
また、開口部を有するマスクを用いたプラズマ処理を行う際、フッ素プラズマを用いることによって、開口部に対応する活性化領域52eに直接フッ素化合物を付与し、非画像部25bを形成することもできる。フッ素プラズマを用いた場合には、フッ素化合物97とシリコーンゴム層52の間にシランカップリング剤95(図58参照)は存在しない。
次に、本実施形態の印刷装置10を用いた印刷方法についてより具体的に説明する。
図64は、本発明の実施形態の印刷方法を示すフローチャートである。図65〜図68は、それぞれ本発明の実施形態の印刷方法の第1の例の工程を示す模式的断面図である。
印刷方法では、例えば、図6に示す印刷版25を用いた例について説明する。
まず、アライメントを実施する(ステップS10)。
この場合、インクジェットヘッド40の位置と版位置とのアライメントを行う。まず、アライメントマークA〜Cをアライメントカメラ42で読み取り、その位置を検出する。
次に、x方向の絶対距離を求める。この場合、例えば、アライメントマークA、Bがアライメントカメラ42の視野のx方向で同じ位置になったときのキャリッジ46位置(リニアスケール読み取り値)から算出する。
次に、y方向の絶対距離を求める。この場合、アライメントマークA、Cのアライメントマークがアライメントカメラ42の視野のy方向で同じ位置になったときのローターリーエンコーダから出力される版胴24の回転位置情報から算出する。なお、y方向は距離ではなく角度でのアライメント調整になる。
次に、インクジェットヘッド40と印刷版25との相対的な傾きを求める。この場合、傾き角度θを求める。アライメントマークA,Bのx方向位置だけでなく、y方向についてもずれを計測する。アライメントカメラ42の視野のy方向も同じになったときのローターリーエンコーダから出力される版胴24の回転位置情報からy方向のずれを算出して、x方向の距離とy方向のずれから傾き角度θを算出する。または、カメラの視野内でのy方向のずれから傾き角度θを算出することもできる。
また、アライメントマークA〜Cの位置情報から、印刷版25の版胴24に対する取り付け位置情報を得る。すなわち、どのように印刷版25が版胴24に取り付けられているかの情報を得る。そして、印刷版25の傾き角度βを求める。例えば、傾き角度βは、x方向の距離とy方向のずれから算出することができる。
上述のように得られたx方向の距離、y方向の角度、傾き角度θは記憶部14に記憶される。制御部18では、x方向の距離、y方向の角度、傾き角度θと、記憶部14に記憶された印刷するパターンデータに対してx方向およびy方向の拡大縮小処理、傾き角度θに基づくパターンデータの回転処理を行い、パターンデータ補正する。補正されたパターンデータに必要に応じて印刷版25の傾き補正を行う。
補正パターンデータを得る。さらには、インクジェットヘッド40からの印刷インクの吐出のタイミングの調整も制御部18にて行う。
次に、ステップS10のアライメントの後、印刷版へのインキングを行う(ステップS12)。
パターンデータまたは補正パターンデータを吐出制御部43に送り、版胴24を回転させて、その時にローターリーエンコーダから出力される版胴24の回転位置情報に基づき、タイミングに合わせて、予め定められた吐出波形で、インクジェットヘッド40から印刷インクを印刷版25に吐出し、インキングを行う。例えば、版胴24を4回回転させて、すなわち、4回走査してパターン形成領域に印刷インクを付与する。この場合、図65に示すように、画像部25aに印刷インク51が打滴される。なお、印刷版へのインキングを行うステップS12がインク付与工程に相当する。
インキング工程において、インクジェット法、およびキャピラリーコート法等の非接触のインキング方法を用いることで、印刷版25の耐久性を向上させることができる。
なお、印刷版へのインキングの前、印刷版1枚毎、または印刷版100枚毎のようにある印刷枚数毎に、メンテナンス部36で吐出確認を行うようにしてもよい。
次に、インキングされた印刷版25を乾燥部32で乾燥させ(ステップS14)、印刷インク51を乾燥させる。ステップS14が乾燥工程に相当する。ステップS14では、印刷インクは半乾燥状態が望ましい。
次に、インキングされた印刷版25を基板31に転写する(ステップS16)。
まず、ステップS16の転写工程では、ステージ30上に基板31を載置しておき、開始位置Psにて待機する。そして、印刷版25のパターンの位置合わせのために基板31のアライメントを行う。
次に、ステージ30を搬送方向Vに移動させて基板31を版胴24の下方の印刷位置Ppに配置する。そして、版胴24を回転させ、図66に示すように印刷版25と基板31の表面31aとを接触させて、印刷版25の印刷インクを基板31に転写する。そして、転写後、ステージ30を搬送方向Vに移動させて、版胴24の下方の印刷位置Ppから印刷版25を終了位置Peに移動させる。その後、パターンが形成された印刷版25をステージ30から移動させ、ケーシング20の外部に取り出す。この場合、図67に示すように印刷版25の画像部25aには印刷インク51が残らず、印刷インク51が図68に示すように、基板31の表面31aに転写されて、パターン部58が形成される。
印刷版25では、画像部25a、すなわち、凹部27が表面処理層55で構成され、非画像部25b、すなわち、凸部の表面がフッ素化合物層54で構成されているため、凹部27からの印刷インク溢れが少なく、また、凹部27の側面27bも表面処理層55で構成されているため、印刷インク51の離形性がよい。これにより、高精細な印刷パターンを形成することができる。また、印刷インク51の離形性がよいため、パターン幅のバラつきを小さくでき、配線等の場合、特性を均一に形成することができる。しかも、パターン部58の厚みは、上述の高低差δに応じたものとなり、膜厚が厚いパターンも形成することができる。
さらには、上述のように印刷版25に印刷インク51が残らないので、インク除去工程が不要となり、インク使用効率が向上する。
また、画像部25a、すなわち、凹部27への印刷インク51の量を変えることで、パターン部58の厚みを変えることができる。
ここで、図69〜図71は、本発明の実施形態の印刷方法の第2の例の工程を示す模式的断面図である。図69〜図71において、図6に示す印刷版25と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
印刷版25に画像部25aが複数ある場合、例えば、図69に示す印刷版29のように画像部25aが2つある場合、インクジェット法により印刷インク51の吐出量を変えて、各画像部25aへの印刷インク51の付与量を変える。この場合、付与量を、一方の画像部25aには予め定められた量とし、他方の画像部25aには予め定められた量よりも少ない量とする。
そして、図70に示すように、印刷版25と基板31の表面31aとを接触させて、印刷版25の印刷インクを基板31に転写する。これにより、図71に示すように、基板31の表面31aに厚みが異なるパターン部58、58aを1度の転写工程で形成することができる。これにより、厚みが異なる配線を同時に形成することができる。この場合も、各パターン部58、58aのパターン幅のバラつきを小さくでき、配線等の場合、特性を均一に形成することができる。
図72および図73は、本発明の実施形態の印刷方法の第3の例の工程を示す模式的断面図である。図72および図73において、図8に示す印刷版25と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
印刷版25へのインキングを行い、図72に示すように、画像部25aに印刷インク51を打滴する。
インク付与工程における塗布後の印刷インク51の液厚は、印刷する仕様、インク濃度または焼成における膜厚収縮によって適宜決定される。インク付与工程で、印刷インク51の液厚は概ね1μm〜30μmであり、望ましくは10μm以下である。
次に、インキングされた印刷版25を乾燥部32で乾燥させる(ステップS14)。この場合、印刷インクは半乾燥状態が望ましい。
次に、インキングされた印刷版25を基板31に転写する(ステップS16)。この場合、図73に示すように印刷版25の画像部25aには印刷インク51が残らず、印刷インク51が図68に示すように、基板31の表面31aに転写されて、パターン部58が形成される。
表面処理層55で構成された画像部25aに印刷インク51が設けられ、画像部25aと非画像部25b境界での印刷インクの凝集破壊がなく印刷インク51を基板31の表面31aに転写でき、高精細印刷が可能となる。また、画像部25aを親液性とし、非画像部25bを撥液性とした平版としており、親撥表面によって印刷インク51が塗布される位置を選択できるため、印刷インクの使用効率を高くすることができる。さらには、上述のように印刷版25に印刷インクが残らないので、インク除去工程が不要となり、このことからもインク使用効率が向上する。
印刷版25はシート状のものとして、枚葉式で説明したが、特に限定されるものではなく、ロール状であってもよい。この場合、パターンはロール・ツー・シート方式、シート・ツー・ロール方式、またはロール・ツー・ロール方式で形成することができる。
印刷インク51としては、インクジェット用のナノメタルインクを利用することができる。具体的には、ULVAC製Agナノメタルインク(Ag1teH(型番)、L−Ag1TeH(型番))、およびAuナノメタルインク(シクロドデセン溶媒)インクジェットタイプを利用することができる。なお、これ以外にも各種のインクが適宜利用可能である。
印刷インクは特に限定されるものではないが、画像部25aで撥液されない必要があり、シリコーンゴムの臨界表面自由エネルギー以下の表面張力を有することが望ましい。
なお、基板と印刷インクの組み合わせによって限定される特徴、すなわち、前進接触角と後退接触角、吸収速度がある。前進接触角と後退接触角、および吸収速度の条件が満たされていれば、印刷インクは、シリコーンゴムの臨界表面自由エネルギー以下の表面張力でなくてもよい。
また、印刷インクはニュートン流体であることが好ましい。印刷インクは、粘度が1mPa・s以上30mPa・s以下の範囲であることが好ましい。ただし、画像部25aの印刷インクの溶媒の吸収速度vが大きい場合は、塗布直後に印刷インクの乾燥が進行し、撥液核の生成が抑制されるため、上述の粘度を必ずしも満たす必要はない。
以下、電子回路の配線、薄膜トランジスタ等の電子素子の構成部、または電子回路の配線、薄膜トランジスタ等の電子素子の構成部のプレカーサの形成に用いられる印刷インクの材料について具体的に説明する。
導電性材料としては、導電性微粒子を含み、この導電性微粒子の粒径が1nm以上、100nm以下であることが好ましい。導電性微粒子の粒径が100nmより大きいと、ノズルの目詰まりが起こりやすく、インクジェット法による吐出が困難になることによる。また、導電性微粒子の粒径が1nm未満であると、導電性微粒子に対するコーティング剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多になることによる。
分散質濃度は、分散質濃度の凝集性の観点から、1質量%以上、80質量%以下であることが好ましい。
導電性微粒子の分散液の表面張力は、20mN/m以上、70mN/m以下の範囲に入ることが好ましい。インクジェット法にて液体を吐出する際、表面張力が20mN/m未満であると、インク組成物のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じ易くなり、70mN/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量、吐出タイミングの制御が困難になるためである。
導電性材料としては、例えば、銀の微粒子が含まれるものである。銀以外の他の金属微粒子としては、例えば、金、白金、銅、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、イリジウム、鉄、錫、亜鉛、コバルト、ニッケル、クロム、チタン、タンタル、タングステン、およびインジウムのうち、いずれか1つが利用されてもよいし、または、いずれか2つ以上が組合せられた合金が利用されてもよい。さらには、ハロゲン化銀を用いてもよい。ただし、銀ナノ粒子が好ましい。金属微粒子の他、導電性ポリマーまたは超電導体の微粒子等を用いてもよい。
導電性微粒子の表面にコーティングするコーティング材としては、例えば、キシレン、トルエン等の有機溶剤またはクエン酸等が挙げられる。
使用する分散媒としては、上述の基板と印刷インクの組み合わせによって限定される特徴、すなわち、前進接触角と後退接触角、および溶媒吸収速度を満たすこと、ならびに上述の導電性微粒子を分散できるもので凝集を起こさないものであれば特に限定されないが、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、およびシクロヘキシルベンゼン等の炭化水素系化合物、またはエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサン等のエーテル系化合物、更にプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、およびシクロヘキサノン等の極性化合物を挙げることができる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また、インクジェット法への適用のし易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、およびエーテル系化合物が好ましく、更に好ましい分散媒としては水、および炭化水素系化合物を挙げることができる。これらの分散媒は、単独でも2種以上の混合物としても使用できる。
また、バインダー、すなわち、添加剤としては、アルキッド樹脂、変性アルキッド樹脂、変性エポキシ樹脂、ウレタン化油、ウレタン樹脂、ロジン樹脂、ロジン化油、マレイン酸樹脂、無水マレイン酸樹脂、ポリブテン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルオリゴマー、鉱物油、植物油、ウレタンオリゴマー、および(メタ)アリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体等を1種、または2種以上の組み合わせで使用することができる。無水マレイン酸との共重合体は、他のモノマー、例えば、スチレン等を共重合成分として加えてもよい。
また、金属ペーストには、添加剤として、分散剤、湿潤剤、増粘剤、レベリング剤、地汚れ防止剤、ゲル化剤、シリコンオイル、シリコーン樹脂、消泡剤、または可塑剤等を適宜選択して添加してもよい。
また、溶媒としては、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ナフテン、およびアルキルベンゼン類を用いることもできる。
また、導電性材料としては、導電性有機材料を用いることもでき、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、およびポリフェニレンビニレン等の高分子系の可溶性材料を含んでいてもよい。
金属の微粒子に代えて、有機金属化合物を含んでいてもよい。ここでいう有機金属化合物は、加熱による分解によって金属が析出するような化合物である。このような有機金属化合物には、クロロトリエチルホスフィン金、クロロトリメチルホスフィン金、クロロトリフェニルフォスフィン金、銀2,4−ペンタンヂオナト錯体、トリメチルホスフィン(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)銀錯体、および銅ヘキサフルオロペンタンジオナトシクロオクタジエン錯体等がある。
導電性微粒子の他の例としては、レジスト、線状絶縁材料としてのアクリル樹脂、加熱してシリコンになるシラン化合物、および金属錯体等が挙げられる。これらは液体中に微粒子として分散されていても良く、溶解されて存在してもよい。加熱してシリコンになるシラン化合物としては、例えば、トリシラン、ペンタシラン、シクロトリシラン、および1,1’−ビスシクロブタシラン等がある。
さらには、導電性有機材料を含有する液体として、導電性高分子であるPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)とPPS(ポリスチレンスルホン酸)の水溶液、ドープドPANI(ポリアニリン)、およびPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)にPSS(ポリスチレンスルホン酸)をドープした導電性高分子の水溶液等を用いることができる。
半導体層を構成するための材料として、CdSe、CdTe、GaAs、InP、Si、Ge、カーボンナノチューブ、Si、およびZnO等の無機半導体、ペンタセン、アントラセン、テトラセン、およびフタロシアニン等の有機低分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリパラフェニレンおよびその誘導体、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体等のポリフェニレン系導電性高分子、ポリピロールおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリフランおよびその誘導体等の複素環系導電性高分子、ならびにポリアニリンおよびその誘導体等のイオン性導電性高分子等の有機半導体を用いることができる。
なお、層間絶縁膜を構成する電気絶縁性の大きな材料、すなわち、絶縁性材料としては、以下のもの用いることができる。具体的には、有機材料としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、シルセスキオキサン、ポリビニルフェノール、ポリカーボネート、フッ素系樹脂、ポリパラキシリレン、およびポリビニルブチラール等が挙げられ、ポリビニルフェノールまたはポリビニルアルコールは適当な架橋剤によって、架橋して用いてもよい。ポリフッ化キシレン、フッ素化ポリイミド、フッ素化ポリアリルエーテル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリ(α、α、α’、α’―テトラフルオロ―パラキシレン)、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ素化エチレン、プロピレン共重合体の様なフッ素化高分子、ポリオレフィン系高分子、その他、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(α―ビニルナフタレン)、ポリビニルトルエン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(4―メチル―1―ペンテン)、ポリ(2―メチル―1、3―ブタジエン)、ポリパラキシレン、ポリ[1、1―(2―メチルプロパン)ビス(4―フェニル)カルボネート]、ポリシクロヘキシルメタクリレート、ポリクロロスチレン、ポリ(2、6―ジメチル―1、4―フェニレンエーテル)、ポリビニルシクロヘキサン、ポリアリレンエーテル、ポリフェニレン、ポリスチレン―コ―α―メチルスチレン、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、およびポリ2、4―ジメチルスチレン等が挙げられる。
多孔質の絶縁膜としては、二酸化珪素にリンを添加したリンシリケートガラス、二酸化珪素にリンおよびボロンを添加したホウ素リンリシケートガラス、ポリイミド、およびポリアクリル等の多孔質の絶縁膜が挙げられる。また、多孔質メチルシルセスキオキサン、多孔質ハイドロシルセスキオキサン、および多孔質メチルハイドロシルセスキオキサン等のシロキサン結合を有する多孔質の絶縁膜を形成することができる。
なお、印刷インクに含まれる材料としては上述のものに限定されず、用途に応じて、最適な材料が選択される。例えば、カラーフィルタを製造するために使用される着色剤を含む印刷インク等も適用できる。着色剤としては、公知の染料および顔料が挙げられる。また、このような印刷インクには、上述した分散媒およびバインダーが含まれていてもよい。
上述のように、表面処理層55を、有機系官能基を有するシランカップリング剤を用いて形成している。表面処理層55により、印刷インクの濡れ広がりが増し、かつ転写性が優れていることについて説明する。
以下に示すサンプル1〜サンプル6の版を用いて、印刷インクの接触角を測定した。印刷インクの接触角が小さいことは、濡れ性が高いことを意味する。
サンプル1は、PDMS(ポリジメチルシロキサン)で構成される版である。サンプル2はサンプル1に対して、VUV(真空紫外線)を照射し、VUV処理したものである。
サンプル3はサンプル1に対して、VUV(真空紫外線)を照射し、VUV処理した後、プロピルトリエトキシシランを用いたアルキルシラン処理して表面処理層を形成したものである。
サンプル4はサンプル1に対して、VUV(真空紫外線)を照射し、VUV処理した後、ヘキシルトリエトキシシランを用いたアルキルシラン処理して表面処理層を形成したものである。
サンプル5はサンプル1に対して、VUV(真空紫外線)を照射し、VUV処理した後、オクチルトリエトキシシランを用いたアルキルシラン処理して表面処理層を形成したものである。
サンプル6はサンプル1に対して、VUV(真空紫外線)を照射し、VUV処理した後、ドデシルトリエトキシシランを用いたアルキルシラン処理して表面処理層を形成したものである。
上述のVUV処理は、紫外線波長を172nm、露光時間を30秒とした。また、上述のアルキルシラン処理では、処理液に30分浸漬後、温度120℃、飽和水蒸気環境下で90分保持した、
印刷インクには、ULVAC製Agナノメタルインク(Ag1teH(型番)、L−Ag1TeH(型番))を用いた。接触角は、協和界面科学株式会社製DropMaster DM 500(商品名)を用いて測定した。
ここで、図74はサンプル1〜6の接触角を示すグラフである。図75はサンプル1を用いた版へのインキングした状態を示す模式図であり、図76はサンプル1を用いた版の転写後の状態を示す模式図である。図77はサンプル5を用いた版へのインキングした状態を示す模式図であり、図78はサンプル5を用いた版の転写後の状態を示す模式図である。図79はサンプル6を用いた版へのインキングした状態を示す模式図であり、図80はサンプル6を用いた版の転写後の状態を示す模式図である。なお、転写する基板にはPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムを用いた。
図74に示すように、表面処理層を有するサンプル3〜サンプル6は、表面処理層がないサンプル1およびサンプル2に比して接触角が小さい。
図75に示すように、サンプル1では、印刷インク51として銀インクを版110にインキングした際、印刷インク51が濡れ広がらず、印刷インク51が結合して一体化しななかった。図75に示す状態から、印刷インクを基板に転写した際、図76に示すように、版110には印刷インクは残らず転写性は良好であった。
図77に示すように、サンプル5では、印刷インク51aとして銀インクを版110にインキングした際、印刷インク51aが濡れ広がり、印刷インク51aが結合して直線状になった。図77に示す状態から、印刷インクを基板に転写した際、図78に示すように、版110には、印刷インクの溶媒等が吸収された跡112aが生じたが、いわゆるコーヒーリング等は生じず、転写性は良好であった。
図79に示すように、サンプル6では、印刷インク51bとして銀インクを版110にインキングした際、印刷インク51bが濡れ広がり、印刷インク51bが結合して直線状になった。図79に示す状態から、印刷インクを基板に転写した際、図80に示すように、版110には、印刷インクの溶媒等が吸収された跡112bが生じたが、いわゆるコーヒーリング等は生じず、転写性は良好であった。
このように、表面処理層を設けることにより、印刷インクの濡れ広がりが増し、かつ転写後、版には印刷インクの溶媒等が残らない。表面処理層を設けることで、印刷インクの濡れ広がりと転写性の両立を図ることができる。
また、以下に示すように、サンプル10〜サンプル14の5種類のサンプルを作製し、後退接触角θR,fと撥液性の関係を調べた。
具体的には、加熱硬化させたシリコーンゴム層に対し、エキシマランプを具備したオーク製作所製VUS−3150を光源とし、酸素濃度1%未満の窒素雰囲気下において、10秒間光照射して、紫外光処理を行い、活性化処理を施した。
その後、シランカップリング剤として、durasurf専用プライマー剤(DS−PC−3B(型番))を用いて、シランカップリング処理を完了した。その後、未反応のシランカップリング剤をスピンコータによって回転させて除去した。その後、加熱温度および加熱条件を変化させて、シランカップリング剤の定着状態が異なる5種類の水準を試験した。次に、スピンコータを用いて、フッ素化合物である株式会社ハーベス製durasurf(DS−5210TH(品名))を、シランカップリング処理後のシリコーンゴム層に塗布し、温度120℃のホットプレートで20分間、フッ素化合物の定着処理を行った。最後に、フッ素化合物の未定着分をフッ素系溶媒(株式会社ハーベス製durasurf(DS−TH(品名)))をスピンコートすることによって除去して、撥液性の異なる撥インク部と親インク部とからなるサンプル10〜サンプル14の5種類のサンプルを作製した。
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS:Time-of-Flight Secondary Mass Spectrometry)を用いて、作製したサンプル10〜14の表面の構造解析を実施した。フッ素化合物の量とPDMS成分量の比率で、フッ素化合物のPDMS被覆率を評価した。
測定にはION−TOF社製TOF.SIMS300を用いた。1次イオン源としてBiを利用して、高質量分解能モードで測定した。ビーム径:2〜5μm、照射量:1.3×1010ions/cm、測定範囲:500μm、測定範囲内のステップ数:128×128の条件で、負の2次イオンを計測した。サンプル10〜14の飛行時間型二次イオン質量分析法による測定結果の定性スペクトルを図81および図82に示す。
上述の飛行時間型二次イオン質量分析より求められるフッ素化合物の量とPDMS由来の成分量の比率は、上述のように下記式からフッ素化合物のPDMS被覆率を推定した。サンプル10〜14のF/Si比の結果を下記表1に示す。
F/Si比=[COF]/([SiH]+[Si15])
なお、上記式の[COF]、[SiH]および[Si15]は、上述のとおりであるため説明を省略する。
サンプル10〜14に対して、それぞれ後退接触角θR,fを測定した。後退接触角θR,fの結果を下記表1に示す。その結果、サンプル10では、F/Si比が0.38で、後退接触角θR,fは0°であった。一方、サンプル14では、F/Si比が1946.75で、後退接触角θR,fは43°であった。
後退接触角θR,fは、協和界面科学株式会社製DropMaster DM 500(商品名)に協和界面科学株式会社製傾斜ステージSA-30DMを装備した装置を用いて傾斜法で測定した。傾斜法では、印刷版の親インク部または撥インク部に印刷インクを液滴体積10μLで着滴させた後、ステージ傾斜角度を0°から90°まで1°ずつ変化させて、各傾斜角における液滴形状をCCDカメラで撮像した。ステージ傾斜角度を増加させていき、ステージ傾斜角度0度の液滴の接触線の位置に対して相対的に約50μm以上移動した時の液滴の接触角から後退接触角θR,fを求めた。
また、サンプル10〜14に対してインキング実験として、インクジェット装置(Dimatix社製、10pL(ピコリットル)ヘッド)を用いて、印刷インクを用いてインキングし、PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムへの印刷試験を行った。撥インク部に印刷インクが残らず、親インク部に印刷インクが流動したものを撥液性が良好、撥インク部に印刷インクが残ったものを撥液性が不良とした。
インキング実験には、印刷インクとして、銀ナノ粒子が分散した顔料インク(ULVAC株式会社製ナノ銀インク)を用いた。
サンプル10とサンプル14の中間の処理を行った、サンプル11〜13についてもF/Si比、後退接触角θR,fおよび撥液性に対して正の相関が認められた。F/Si比が1689.75以上あれば、大きな後退接触角θR,fが得られ、十分であることが明らかになった。
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の印刷版および印刷方法ならびに印刷版の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
10 印刷装置
12 印刷装置本体
14 記憶部
16 判定処理部
18 制御部
20 ケーシング
20a 内部
22 画像記録部
24 版胴
24a、31a、52a、53a、54a、55a、57c、60c、62c 表面
24b 回転軸
25 印刷版
25a 画像部
25b 非画像部
25c 版面
26 版面観察部
27 凹部
27b 側面
29 印刷版
30 ステージ
31 基板
32 乾燥部
33 イオナイザー
34 クリーニング部
36 メンテナンス部
39 転写部
40 インクジェットヘッド
41 ノズル
42 アライメントカメラ
43 吐出制御部
44 レーザ変位計
46 キャリッジ
48 リニアモータ
49 回動部
50、76 支持体
51 印刷インク
52 シリコーンゴム層
52b 凸部
52c 最表面
52d 照射領域
52e 活性化領域
53 シリコーンゴム層
53b 側面
53c 凹部
54 フッ素化合物層
55 表面処理層
57 シリコーンゴム層
57a 照射領域
57b 未照射領域
58 パターン部
58a パターン部
60 シリコーンゴム層
60a 照射領域
60b 未照射領域
61 領域
62 フッ素化合物層
62a 照射領域
62b 未照射領域
64、70、100 マスク
64a クロム層
64b 領域
70a、100a クロム層
70b 領域
72 基体
74、75 レジスト層
76a 表面
77 フッ素化合物
78 レジスト膜
80 薄膜トランジスタ
82 ゲート電極
84 チャネル領域
86a ソース電極
86b ドレイン電極
90 シリコーンゴム膜
90c 表面
95 シランカップリング剤
97 フッ素化合物
110 版
112a、112b 跡
A、B、C、D アライメントマーク
S10 ステップ
S12 ステップ
S14 ステップ
S16 ステップ
V 搬送方向
δ 高低差
θ 傾き角度

Claims (2)

  1. 画像部と非画像部とを有し、前記画像部が、シリコーンゴムを含む層の表面に設けられた、有機系官能基を有するシランカップリング剤を用いて形成された表面処理層で構成され、前記非画像部が、前記シリコーンゴムを含む層の前記表面に設けられた、フッ素化合物を含む層で構成され、前記画像部が凹部であり、前記非画像部が凸部であり、
    前記画像部の表面と前記非画像部の表面との高低差が10μm以下である印刷版の製造方法であって、
    前記シリコーンゴムを含む層上に、前記フッ素化合物を含む層を形成する工程と、
    前記画像部となる領域の前記フッ素化合物を含む層と、前記画像部となる領域の前記シリコーンゴムを含む層を除去する工程と、
    前記画像部となる領域に、前記表面処理層を形成する工程とを有することを特徴とする印刷版の製造方法。
  2. 画像部と非画像部とを有し、前記画像部が、シリコーンゴムを含む層の表面に設けられた、有機系官能基を有するシランカップリング剤を用いて形成された表面処理層で構成され、前記非画像部が、前記シリコーンゴムを含む層の前記表面に設けられた、フッ素化合物を含む層で構成され、前記画像部が凹部であり、前記非画像部が凸部であり、
    前記画像部の表面と前記非画像部の表面との高低差が10μm以下である印刷版の製造方法であって、
    前記シリコーンゴムを含む層上に、フッ素系界面活性剤およびシリコーン樹脂を含む層を形成する工程と、
    前記画像部となる領域の、前記フッ素系界面活性剤および前記シリコーン樹脂を含む層を除去する工程と、
    前記画像部となる領域に、前記表面処理層を形成する工程とを有することを特徴とする印刷版の製造方法。
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