JP6636411B2 - エレベーター制御装置及びエレベーター制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、エレベーター制御装置及びエレベーター制御方法に関する。
エレベーターには、乗りかごの昇降速度や昇降位置を検出する機構としてガバナが配置されている。ガバナには、乗りかごの昇降に連動して移動する無端のガバナロープが巻きかけられ、ガバナに設置されたパルス発生器(ロータリーエンコーダー)が、ガバナロープの移動状態(つまり乗りかごの移動状態)を検出する。
エレベーター制御装置は、ガバナに設置されたパルス発生器で検出した値を監視することで、乗りかごの位置を正確に判断することができる。例えば、各フロアに着床した乗りかごが、その階のフロアに正しい位置で着床したか、あるいはその階のフロアから数ミリ程度ずれた状態かを判断することができる。この判断に基づいて、エレベーター制御装置は、乗りかごが各フロアに着床した際の位置を高精度に補正する着床位置制御を行うことができる。
特許文献1には、ガバナ(調速機)に設置されたパルス発生器で、乗りかごの着床位置を検出する技術が記載されている。
特開平9−12245号公報
ところで、エレベーターを設置する建物の高層化に伴って、ガバナロープの長さについても長くなる傾向にあるが、長く配置されたガバナロープは振動が発生し易い。具体的には、乗りかごを上下方向に移動させる主ロープの共振周波数が、ガバナロープの共振周波数近くまで低下した場合、主ロープの振動がガバナロープに伝わり、ガバナが異常振動する可能性がある。ガバナロープ等で構成されるガバナシステムには減衰機構が配置され、その減衰機構がガバナロープの振動を抑える構成になっており、通常の運用時には主ロープが振動したとしても、ガバナロープが振動しないようになっている。しかしながら、減衰機構を構成する部品が劣化した場合には、ガバナロープの振動を抑制する機能が十分に働かない場合がある。
ガバナロープが異常振動すると、ガバナに設置されたパルス発生器で検出した値に基づいて着床位置制御を行う場合の床合わせ運転の精度が劣化してしまう。したがって、ガバナロープの減衰機構が劣化した状態でエレベーターの運転を続けることは好ましくない。従来、ガバナロープの減衰機構の劣化は、エレベーターの点検作業時に作業員が判断するようにしており、自動的に劣化を検知することはできなかった。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、エレベーターの運転を制御する場合に、ガバナシステムの機構部品が劣化した状態でも、乗りかごの高精度な着床位置制御ができるようにすることを目的とする。
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、乗りかごと連結されたガバナロープが巻きかけられたガバナに設置されたパルス発生器の出力に基づいて、乗りかごの位置を演算するかご位置演算部と、かご位置演算部が演算した乗りかご位置に基づいて、乗りかごが各フロアに着床した際の床合せを制御する床合せ指令部と、乗りかごが停止動作を行う際のパルス発生器の出力の判定結果に基づいて、ガバナシステムの異常を判定するガバナ異常判定部と、ガバナ異常判定部が異常を判定した場合に、床合せ指令部での床合せ制御の方法を、通常時とは別の制御方法に変更する床合せ方法設定部とを備え、ガバナ異常判定部が異常を判定した場合に、ガバナロープに張力を与えるガバナウェイトプーリに設置された減衰機構の異常又は劣化を、外部の監視センターに通知することを特徴とする。
本発明によれば、ガバナシステムが備える減衰機構の劣化などの異常を判定することができ、その判定結果に基づいて、ガバナに設置されたパルス発生器の出力を使用しない着床位置に切り替えることで、常に高精度な着床位置の制御ができるようになる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明の一実施の形態例によるエレベーター制御装置とエレベーターの例を示す構成図である。 本発明の一実施の形態例のエレベーター制御装置のハードウェア例を示すブロック図である。 本発明の一実施の形態例による位置検出器と被検出体の例を示す構成図である。 本発明の一実施の形態例による位置検出器が被検出体の位置を検出する状態を示す説明図である。 本発明の一実施の形態例によるガバナシステムの異常判定処理の流れ(例1)を示すフローチャートである。 本発明の一実施の形態例によるガバナ異常判定処理の流れ(例2)を示すフローチャートである。 本発明の一実施の形態例によるエレベーター停止時に検出する速度の例を示す特性図である。 本発明の一実施の形態例によるガバナ異常判定処理の流れ(例3)を示すフローチャートである。
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する)を、添付図面を参照して説明する。
[1.全体構成]
図1は、本例のエレベーター制御装置と、そのエレベーター制御装置により制御されるエレベーターの全体構成例を示す。
エレベーターの乗りかご1は、主ロープ9の一端に接続され、主ロープ9が巻きかけられた電動機12による駆動で、昇降路11内を昇降する。主ロープ9の他端には、つりあい錘10が接続されている。電動機12には、パルス発生器13が取り付けられ、電動機12の回転に同期したパルスをパルス発生器13が出力する。
電動機12の回転による乗りかご1の上昇及び下降は、エレベーター制御装置20により制御される。
また、エレベーターの乗りかご1には、無端のガバナロープ2が接続されている。ガバナロープ2は、昇降路11の上端側に配置されたガバナ3に巻きかけられると共に、昇降路11の下端側に配置されたガバナウェイトプーリ5にも巻きかけられ、乗りかご1の昇降に連動して移動する。ガバナウェイトプーリ5は、ガバナロープ2に張力を与えるものであり、ガバナウェイトプーリ5には減衰機構6が設置されている。
ガバナ3には、パルス発生器4が取り付けられ、パルス発生器4は、ガバナロープ2の移動に同期したパルスを出力する。ガバナロープ2には、乗りかご1が接続されているため、パルス発生器4が出力するパルスは、乗りかご1の昇降に同期したパルスになる。
なお、以下の説明では、ガバナロープ2、ガバナ3、パルス発生器4、ガバナウェイトプーリ5、及び減衰機構6を総称してガバナシステムと称する。
昇降路11内の乗りかご1の各停止階には、被検出体7が配置され、乗りかご1には、この被検出体7を検出するための位置検出器8が取り付けられている。乗りかご1が各階に停止する際には、位置検出器8が被検出体7を検出した状態に基づいて、エレベーター制御装置20が停止位置を設定する処理を行う。
また、エレベーター制御装置20は、乗りかご1が各階に停止した状態で、乗りかご1の床の位置が、各階の床と一致するように制御する床合せ制御を行う。すなわち、各階に停止してドアが開いた状態の乗りかご1は、乗客の乗り降りにより荷重が変化する場合があり、そのような荷重の変化があっても、乗りかご1の床の位置が、各階の床と一致するように、床合せ制御を行う必要がある。
エレベーター制御装置20は、床合わせ制御を行うために、かご位置演算部21、ガバナ異常判定部22、床合せ方法判定部23、及び床合せ指令部24を備える。なお、図1では、エレベーター制御装置20の床合わせ制御以外の構成については省略する。
かご位置演算部21は、ガバナ3に取り付けられたパルス発生器4が出力するカウント値から、乗りかご1の昇降位置を演算で求めるかご位置演算処理を行う。かご位置演算部21で演算した乗りかご1の昇降位置のデータは、ガバナ異常判定部22及び床合せ指令部24に供給される。
ガバナ異常判定部22は、パルス発生器4が出力するカウント値と、電動機12に接続されたパルス発生器13が出力するカウント値などに基づいて、ガバナシステムの異常の有無を判定するガバナ異常判定処理を行う。なお、ガバナ異常判定部22が異常を判定する処理の具体例については後述する。
床合せ方法判定部23は、ガバナ異常判定部22での異常の有無の判定結果に基づいて、異常がある場合に、床合せ指令部24に対して、床合せ制御を行う方法を切替える指示を行う。したがって、床合せ方法判定部23は、床合せ方法を設定する床合せ方法設定部として機能する。
床合せ指令部24は、かご位置演算部21が演算した乗りかご1の位置に基づいて、各階に停止中の乗りかご1の床合せ制御を行うための指令を出力する床合せ指令生成処理を行う。そして、その床合せ制御に基づいて、電動機12に昇降の指令を出力する。但し、床合せ指令部24が、かご位置演算部21が演算した乗りかご1の位置に基づいて床合せ制御を行うのは通常時である。床合せ方法判定部23から別の床合せ方法が指示される場合には、その指示された床合せ方法に切替える。また、床合せ指令部24は、位置検出器8が被検出体7を検出した位置に基づいて、床合せ制御する方法も用意する。そして、床合せ指令部24は、床合せ方法判定部23から別の床合せ方法が指示された場合に、位置検出器8が被検出体7を検出した位置に基づいて床合せ制御を行う。但し、その他の方法により床合せ指令部24が床合せ制御する方法を用意してもよい。
[2.エレベーター制御装置のハードウェア構成例]
図2は、エレベーター制御装置20のハードウェア構成例を示す。エレベーター制御装置20は、例えばコンピューター装置Cで構成される。
コンピューター装置Cは、バスC4にそれぞれ接続されたCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)C1、ROM(Read Only Memory)C2、及びRAM(Random Access Memory)C3を備える。さらに、コンピューター装置Cは、表示部C5、操作部C6、不揮発性ストレージC7、及びネットワークインターフェイスC8を備える。
CPU C1は、本例のエレベーター制御装置20が備える各機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM C2から読み出して実行する。RAM C3には、演算処理の途中に発生した変数やパラメータ等が一時的に書き込まれる。例えば、エレベーター制御装置20では、CPU C1がROM C2に記憶されているプログラムを読み出すことで、床合わせ制御を行う。
不揮発性ストレージC7としては、例えば、HDD(Hard disk drive)、SSD(Solid State Drive)、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリ等が用いられる。この不揮発性ストレージC7には、OS(Operating System)、各種のパラメータの他に、コンピューター装置Cをエレベーター制御装置として機能させるためのプログラムが記録されている。
ネットワークインターフェイスC8には、例えば、NIC(Network Interface Card)等が用いられ、端子が接続されたLAN(Local Area Network)、専用線等を介して各種のデータを送受信することが可能である。例えば、パルス発生器4,13が出力するカウント値や、乗りかご1内の釦や各階のよび釦の操作情報などが、ネットワークインターフェイスC8を介して取得する。また、ネットワークインターフェイスC8を介して、外部の機器と通信を行うこともできる。例えば、エレベーター制御装置20を構成するコンピューター装置Cが、エレベーターを管理する監視センターと通信を行う。
表示部C5や操作部C6は、エレベーターの保守作業時に使用する。例えば、表示部C5は、エレベーターの作動状態などを表示し、操作部C6は、操作モードなどを入力操作する。なお、エレベーター制御装置20の構成によっては、表示部C5や操作部C6を備えない場合もある。
[3.位置検出器と被検出体の例]
図3は、乗りかご1に配置された位置検出器8と、位置検出器8が検出する被検出体7の例を示す。被検出体7は、昇降路11の各停止階に設置される。
図3に示すように、位置検出器8には、水平に3つの受光器81,82,83が配置されている。この3つの受光器81,82,83は、発光器(不図示)からの光を検出する構成になっており、発光器と各受光器81,82,83との間に、被検出体7が存在しない場合には、各受光器81,82,83が光を検出する。
被検出体7は、上側に切欠部7aを有すると共に、下側にも切欠部7bを有する。上側の切欠部7aと下側の切欠部7bは切欠けられた位置が異なり、位置検出器8と被検出体7との相対位置によって、3つの受光器81,82,83での受光状態が変化する。
例えば、乗りかご1の昇降位置が、切欠部7aが形成された被検出体7の上側と位置検出器8が重なる位置であるときには、受光器81,82が被検出体7によって遮られ、受光器83だけが受光する。また、乗りかご1の昇降位置が、被検出体7のほぼ中央部と位置検出器8が重なる位置であるときには、全ての受光器81,82,83が受光しない。さらに、乗りかご1の昇降位置が、切欠部7bが形成された被検出体7の下側と位置検出器8が重なる位置であるときには、受光器81,83が被検出体7によって遮られ、受光器82だけが受光する。
エレベーター制御装置20は、位置検出器8の3つの受光器81,82,83での受光状態の情報を取得し、この取得した情報に基づいて、各階に乗りかご1を停止させる。
図4は、被検出体7と位置検出器8との相対位置の例を示す。
ここでは、位置検出器8の3つの受光器81,82,83が並んだラインLaを基準位置とする。
そして、被検出体7の上端から下端までの間に、4カ所の位置h1,h2,h3,h4を設定する。位置h1は、被検出体7の上端である。位置h2は、被検出体7の切欠部7aの下端である。位置h3は、被検出体7の切欠部7bの上端である。位置h4は、被検出体7の下端である。ここで、乗りかご1は、位置検出器8の基準位置のラインLaが、位置h2と位置h3の中間位置h0となったときが、各階に正しい位置に着床した状態である。
エレベーター制御装置20は、例えば乗りかご1が下降中に所定の階に停止させる場合、2つの受光器81,82が受光しなくなったタイミングで位置h1を検出し、さらに受光器83が受光しなくなったタイミングで位置h2を検出する。この位置h2を検出したタイミングから、さらに規定された距離だけ乗りかご1を移動させて、エレベーター制御装置20が乗りかご1を位置h0に停止させる。
乗りかご1が上昇中に所定の階に停止させる場合には、エレベーター制御装置20は、同様に3つの受光器81,82,83の状態から位置h4及びh3を検出し、位置h3を検出したタイミングから、さらに規定された距離だけ乗りかご1を移動させて、エレベーター制御装置20が乗りかご1を位置h0に停止させる。
エレベーター制御装置20が乗りかご1を位置h0に停止させた後、エレベーター制御装置20の床合せ指令部24が、床合せ制御を行う。このとき、床合せ指令部24は、パルス発生器4の出力を使って、かご位置演算部21が演算した乗りかご1の位置に基づいて、乗りかご1の昇降位置を調整する制御を行う。但し、床合せ方法判定部23から、別の床合せ制御方法とする指示がある場合、床合せ指令部24は、位置検出器8が被検出体7を検出する位置(上述した位置h1,h2,h3,h4)の検出を使って、乗りかご1の昇降位置を調整する制御を行う。
[4.床合せ制御の切替処理の例(例1)]
図5は、エレベーター制御装置20が行う床合せ制御の切替処理の例(例1)を示すフローチャートである。
まず、エレベーター制御装置20は、昇降中の乗りかご1がいずれかの階に停止する停止動作を行うか否かを判断する(ステップS11)。昇降中から停止動作に入るタイミングでない場合には(ステップS11のNO)、停止動作になるまで待機する。
ステップS11で停止動作を行うタイミングと判断したとき(ステップS11のYES)、エレベーター制御装置20は、位置検出器8が停止階の被検出体7の上端の位置h1又は下端の位置h4(図4)を検出したか否かを判断する(ステップS12)。ここで、位置h1又は位置h4を検出しない場合(ステップS12のNO)、エレベーター制御装置20は、位置h1又は位置h4を検出するまで待機する。
ステップS12で位置h1又は位置h4を検出したとき(ステップS12のYES)、エレベーター制御装置20は、この位置h1又は位置h4を検出したタイミングでの、ガバナ3に取り付けられたパルス発生器4が出力するカウント値を取得する(ステップS13)。このカウント値は、かご位置演算部21によって取得される。
次に、ガバナ異常判定部22は、かご位置演算部21が取得した乗りかご1の位置に相当するパルス発生器4のカウント値が、予め決められた基準となる閾値の範囲から外れるか否かを判断する(ステップS14)。
ここで、ステップS14で基準となる閾値の範囲内であると判断した場合には(ステップS14のNO)、ガバナシステムが正常であるため、床合せ方法判定部23は、床合せ制御運転の切替指示を行わない。
一方、ステップS14で基準となる閾値の範囲外であると判断した場合には(ステップS14のYES)、床合せ方法判定部23が、位置検出器8の検出を利用した床合せ制御に切替える指示を、床合せ指令部24に対して行う(ステップS15)。このステップS14で基準となる閾値の範囲外である場合は、例えばガバナシステムの減衰機構6の性能が低下したことによって、ガバナロープ2が異常振動した状態が想定される。
この切替え指示を受信した床合せ指令部24は、位置検出器8が検出した位置に基づいて、床合せ制御を行う。
そして、エレベーター制御装置20は、ガバナシステムの減衰機構6の性能低下を、外部の監視センターに通知する(ステップS16)。
[5.床合せ制御の切替処理の例(例2)]
図6は、エレベーター制御装置20が行う床合せ制御の切替処理の例(例2)を示すフローチャートである。
この図6のフローチャートでは、ステップS21,S22,S23での処理は、図5のステップS11,S12,S13での処理と同じであり、説明を省略する。
そして、ステップS23の処理の後、エレベーター制御装置20は、位置検出器8が停止階の被検出体7の中間の位置h2又は下端の位置h3(図4)を検出したか否かを判断する(ステップS24)。ここで、位置h2又は位置h3を検出しない場合(ステップS24のNO)、エレベーター制御装置20は、位置h2又は位置h3を検出するまで待機する。
ステップS22で位置h2又は位置h3を検出したとき(ステップS24のYES)、エレベーター制御装置20は、この位置h2又は位置h3を検出したタイミングでの、ガバナ3に取り付けられたパルス発生器4が出力するカウント値を取得する(ステップS25)。このカウント値は、エレベーター制御装置20のかご位置演算部21によって取得される。
そして、ガバナ異常判定部22は、ステップS23で取得したカウント値と、ステップS25で取得したカウント値の差分を判断し、その差分が、予め決められた基準となる閾値の範囲から外れるか否かを判断する(ステップS26)。
ここで、ステップS26で基準となる閾値の範囲内であると判断した場合には(ステップS26のNO)、ガバナシステムが正常であるため、床合せ方法判定部23は、床合せ制御運転の切替指示を行わない。
一方、ステップS26で基準となる閾値の範囲外であると判断した場合には(ステップS26のYES)、床合せ方法判定部23が、位置検出器8の検出を利用した床合せ制御に切替える指示を、床合せ指令部24に対して行う(ステップS27)。
この切替え指示を受信した床合せ指令部24は、位置検出器8が検出した位置に基づいて床合せ制御を行う。
そして、エレベーター制御装置20は、ガバナシステムの減衰機構6の性能低下を、外部の監視センターに通知する(ステップS28)。
[6.床合せ制御の切替処理の例(例3)]
図7は、昇降中の乗りかご1が停止する際に、電動機12に取り付けられたパルス発生器13が検出する速度と、ガバナ3に取り付けられたパルス発生器4が検出する速度との例を示す特性図である。次に、この図7に示す乗りかご停止時の速度の特性に基づいて、床合せ制御の切替処理を行う例(例3)を説明する。
まず、図7を参照して、昇降中の乗りかご1が停止する際に検出される速度の特性について説明する。図7の縦軸は速度、横軸は時間である。
昇降中の乗りかご1が何れかの階に停止する場合、電動機12に取り付けられたパルス発生器13が検出する速度V1は、一定の低速度まで徐々に低下し、その低速の一定速度での運転状態が維持される。そして、エレベーター制御装置20は、低速の一定速度での運転状態で、着床階に乗りかご1の位置を合わせて停止させる。このとき、乗りかご1の速度V1は0になる。
ここで、ガバナ3に取り付けられたパルス発生器4が検出する速度V2は、パルス発生器13が検出する速度V1と若干相違する。すなわち、電動機12側のパルス発生器13が検出する速度V1に連動して、ガバナ3側のパルス発生器4が検出する速度V2も低下する。但し、速度V1が一定の低速度になった場合でも、速度V2は一旦、若干低い速度まで低下した後、速度V1と同じ一定の低速度まで緩やかに戻る挙動を行う。
このガバナ3側のパルス発生器4が検出する速度V2の特性は、ガバナロープ2が振動していない正常時のものであるが、ガバナロープ2が異常振動した場合には、図7に示す特性の速度V3になる。
すなわち、正常時の速度V2は、電動機12側の速度V1と比較して、徐々に差が広がった後、速度V1に緩やかに戻る挙動を示す。一方、ガバナロープ2が異常振動した場合の速度V3は、ガバナロープ2の異常の影響で、比較的短い周期で変動しながら、速度V1に戻る挙動を示す。したがって、ガバナ異常判定部22は、この乗りかご1の停止時の速度V2と速度V3の相違を検出することで、ガバナシステムの異常を判定することができる。具体的には、ガバナ異常判定部22は、電動機12側のパルス発生器13のカウント値と、ガバナ3側のパルス発生器4のカウント値との差分がばらつく状態(図7に示すように振動した状態)を検出したとき、ガバナシステムの異常を判断することができる。
図8は、この異常判断を行う原理を適用した、エレベーター制御装置20が行う床合せ制御の切替処理の例(例3)を示すフローチャートである。
この図8のフローチャートでは、ステップS31での処理は、図5のステップS11での処理と同じであり、説明を省略する。
そして、ステップS31で停止動作を行うタイミングと判断したとき(ステップS31のYES)、エレベーター制御装置20のガバナ異常判定部22は、ガバナ3に取り付けられたパルス発生器4が出力するカウント値の取得を開始する(ステップS32)。さらに、ガバナ異常判定部22は、電動機12に取り付けられたパルス発生器13が出力するカウント値の取得を開始する(ステップS33)。
そして、ガバナ異常判定部22は、パルス発生器4が出力するカウント値の変化と、パルス発生器13が出力するカウント値の差分を判断し、その差分にばらつきがあるか否かを判断する(ステップS34)。ここでの差分にばらつきがある状態は、図7での速度V3のように振動した状態に相当する。
ステップS34で差分にばらつきがないと判断した場合には(ステップS34のNO)、ガバナシステムが正常であり、床合せ方法判定部23は、床合せ制御運転の切替指示を行わない。
一方、ステップS34で差分にばらつきがあると判断した場合には(ステップS34のYES)、床合せ方法判定部23が、位置検出器8の検出を利用した床合せ制御に切替える指示を、床合せ指令部24に対して行う(ステップS35)。
この切替え指示を受信した床合せ指令部24は、位置検出器8が検出した位置に基づいて床合せ制御を行う。
そして、エレベーター制御装置20は、ガバナシステムの減衰機構6の性能低下を、外部の監視センターに通知する(ステップS36)。
[7.床合せ制御を切替えることによる効果]
以上説明したように、ガバナ異常判定部22がガバナシステムの異常を判定して、エレベーター制御装置20が床合せ制御を行う際の制御方法を切替えることで、ガバナシステムに異常があった場合にも、正確な床合せ制御が可能になる。
また、ガバナ異常判定部22がガバナシステムの異常を判定する状態は、ガバナロープ2の振動を抑制する減衰機構6の構成部品が劣化して、ガバナロープ2が異常振動した場合であり、そのままでは床合せ制御の精度が劣化することが想定される。このため、本例のガバナ異常判定部22においては、床合せ制御を位置検出器8が検出した位置を使った制御方法に切替えることで、床合せ制御の精度の劣化を防ぐようにしている。
また、本例の場合には、減衰機構6などのガバナシステムの異常の判定に基づいて、監視センターなどにガバナシステムの異常を通知できるため、保守作業員を派遣して該当する部品の交換などの対処を迅速に行うことができるようになる。
[7.変形例]
なお、上述した実施の形態例では、ガバナ異常判定部22がガバナシステムの異常を判定した場合に、通常時とは異なる別の床合せ制御として、位置検出器8が検出した位置に基づいた床合せ制御を行うようにしたが、その他の別の床合せ制御に切り替えてもよい。例えば、例えば乗りかご1に搭載したカメラがドア付近を撮影して、その撮影画像の画像認識から建物側の床と、乗りかご1の床の差を検出して、床合せ制御を行うようにしてもよい。
また、図5,図6,図8のフローチャートに示した例1,例2,例3の処理では、検出した値が、閾値として設定された範囲外である場合に異常と判定して、床合せ制御を切り替えるようにしたが、判定する閾値として複数の閾値を設定するようにしてもよい。例えば、ガバナ異常判定部22は、第1の閾値の範囲と、第1の閾値の範囲よりも広い第2の閾値の範囲とを設定して、検出した値が第1の閾値の範囲から外れて、第2の閾値の範囲内であるとき、減衰機構6が劣化し始めた状態として判別する。さらに、ガバナ異常判定部22は、検出した値が第2の閾値の範囲から外れたとき、減衰機構6の部品交換が必要な状態であることを判別する。床合せ制御を切替える処理については、第1の閾値を外れたことを検出した場合と、第2の閾値を外れたことを検出した場合のいずれで行うようにしてもよい。
あるいは、ガバナ異常判定部22は、3段階異常の閾値を設定して、減衰機構6などのガバナシステムの劣化状態の程度をより精密に判断するようにしてもよい。
また、上述した実施の形態例では、ガバナシステムの異常を判定したとき、外部の監視センターに通知するようにしたが、エレベーター制御装置20が備える記憶装置にガバナシステムの異常判定結果を記憶させておき、監視センターには通知しないようにしてもよい。この場合には、保守作業員が定期点検などを行う際に、異常判定結果の記憶情報を確認して、減衰機構6の部品交換などの整備を行うことで対処ができる。
また、本発明は上記した実施の形態例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態例の構成の一部を他の実施の形態例や変形例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態例の構成に他の実施の形態例や変形例の構成に置き換えることも可能である。また、実施の形態例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
1…乗りかご、2…ガバナロープ、3…ガバナ、4…パルス発生器、5…ガバナウェイトプーリ、6…減衰機構、7…被検出体、8…位置検出器、9…主ロープ、10…つりあい錘、11…昇降路、12…電動機、13…パルス発生器、20…エレベーター制御装置、21…かご位置演算部、22…ガバナ異常判定部、23…床合せ方法判定部、24…床合せ指令部

Claims (7)

  1. 乗りかごと連結されたガバナロープが巻きかけられたガバナに設置されたパルス発生器の出力に基づいて、前記乗りかごの位置を演算するかご位置演算部と、
    前記かご位置演算部が演算した乗りかご位置に基づいて、前記乗りかごが各フロアに着床した際の床合せを制御する床合せ指令部と、
    前記乗りかごが停止動作を行う際の前記パルス発生器の出力の判定結果に基づいて、前記ガバナが設置されたガバナシステムの異常を判定するガバナ異常判定部と、
    前記ガバナ異常判定部が異常を判定した場合に、前記床合せ指令部での床合せ制御の方法を、通常時とは別の制御方法に変更する床合せ方法設定部とを備え、
    前記ガバナ異常判定部が異常を判定した場合に、前記ガバナロープに張力を与えるガバナウェイトプーリに設置された減衰機構の異常又は劣化を、外部の監視センターに通知する
    エレベーター制御装置。
  2. 前記ガバナ異常判定部が異常を判定する際の判定閾値として複数の閾値を持ち、前記ガバナ異常判定部は、前記複数の閾値を使った前記パルス発生器の出力の判定で、前記ガバナロープに張力を与えるガバナウェイトプーリに設置された減衰機構の劣化の程度を判定するようにした
    請求項1に記載のエレベーター制御装置。
  3. 前記別の制御方法は、前記乗りかごに設置された位置検出器と、前記乗りかごの昇降路の停止階に設置された被検出体との位置合わせによる制御方法である
    請求項1に記載のエレベーター制御装置。
  4. 前記ガバナ異常判定部は、前記乗りかごに設置された位置検出器が、前記乗りかごの昇降路の停止階に設置された被検出体を検出したときの前記パルス発生器の出力の値が、予め設定された閾値の範囲から外れるとき、前記ガバナシステムの異常を判定する
    請求項1に記載のエレベーター制御装置。
  5. 前記ガバナ異常判定部は、前記乗りかごに設置された位置検出器が、前記乗りかごの昇降路の停止階に設置された被検出体の第1位置を検出したときの前記パルス発生器の出力の値と、前記位置検出器が前記被検出体の第2 位置を検出したときの前記パルス発生器の出力の値との差分が、予め設定された閾値の範囲から外れるとき、前記ガバナシステムの異常を判定する
    請求項1に記載のエレベーター制御装置。
  6. 前記ガバナ異常判定部は、前記乗りかごを駆動する電動機に取り付けられたパルス発生器の出力と、前記ガバナに設置されたパルス発生器の出力とを比較して、前記ガバナシステムの異常を判定する
    請求項1に記載のエレベーター制御装置。
  7. 乗りかごと連結されたガバナロープが巻きかけられたガバナに設置されたパルス発生器の出力に基づいて、前記乗りかごの位置を演算するかご位置演算処理と、
    前記かご位置演算処理により演算した乗りかご位置に基づいて、前記乗りかごが各フロアに着床した際の床合せの指令を生成する床合せ指令生成処理と、
    前記乗りかごが停止動作を行う際の前記パルス発生器の出力の判定結果に基づいて、前記ガバナが設置されたガバナシステムの異常を判定するガバナ異常判定処理と、
    前記ガバナ異常判定処理で異常を判定した場合に、前記床合せ指令生成処理を行う際の床合せ床合せ指令を生成する方法を、通常時とは別の制御方法に変更する床合せ方法設定処理と、
    前記ガバナ異常判定処理で異常を判定した場合に、前記ガバナロープに張力を与えるガバナウェイトプーリに設置された減衰機構の異常又は劣化を、外部の監視センターに通知する通知処理と、を含む
    エレベーター制御方法。
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