JP6632790B2 - 現像装置及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
この種の現像装置では、現像電圧が印加された現像スリーブの表面電位と、潜像担持体の表面電位との電位差によって現像スリーブから潜像担持体にトナーが移動する。現像スリーブに現像電圧を印加する構成としては、直流成分のみの電圧を印加する構成(以下、「DCバイアス現像」と呼ぶ)と、交流成分を含む電圧を印加する構成(以下、「ACバイアス現像」と呼ぶ)(特許文献1等)とが知られている。
一方、ACバイアス現像では、DCバイアス現像に比べて上記周期的な濃度変動が改善されることを確認した。しかし、従来のACバイアス現像では、交流成分の周波数によって、DCバイアス現像に比べて周辺白抜けが悪化したり、DCバイアス現像に比べて粒状度が悪化したりすることが分かった。具体的には、周波数が高いほど周辺白抜けが悪化する傾向があり、周波数が低いほど粒状度が悪化する傾向があった。
ここで、「周辺白抜け」は、高濃度部と低濃度部との境界付近の画像が抜けて白くなる不具合である。また、「粒状度」は画像のざらつきを評価する値であって、値が小さい程、画質が良いことになる。
図2は、複写機500の概略構成図である。複写機500は、画像形成装置の本体部としてのプリンタ部100の上方に、原稿読込部4及び原稿搬送部3を備え、プリンタ部100の下方に給紙部7を備える。原稿搬送部3は、原稿読込部4に原稿を搬送し、原稿読込部4は搬送されてきた原稿の画像情報を読み込む。給紙部7は、記録媒体である転写紙Pを収容する記録媒体収容部であり、転写紙Pが収容される給紙カセット26と、給紙カセット26内の転写紙Pをプリンタ部100に向けて送り出す給紙ローラ27とを備える。図2中の一点鎖線は、複写機500内での転写紙Pの搬送経路を示す。
図2に示すように、中間転写ユニット10の中間転写ベルト8に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像ユニット6(Y,M,C,K)が並設されている。
また、プリンタ部100内の排紙トレイ30の下方、且つ、中間転写ユニット10の上方には、各色のトナー容器11(Y,M,C,K)が配置されている。各色のトナー容器11(Y,M,C,K)は、各現像装置5(Y,M,C,K)に供給する各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナーを収容する。
図3に示すように、作像ユニット6は、感光体1の周囲に現像装置5、感光体クリーニング装置2、潤滑剤塗布装置41、及び、帯電装置40を備える(図2では、感光体1の周囲の装置として現像装置5のみを表示)。本実施形態の作像ユニット6では、感光体クリーニング装置2は、クリーニングブレード2aによってクリーニングする構成であり、帯電装置40は帯電ローラ4aによって帯電する構成である。
まず、原稿搬送部3の原稿台に原稿がセットされた状態で、不図示のスタートボタンが押されると、原稿は、原稿搬送部3の搬送ローラによって原稿台から搬送されて、原稿読込部4のコンタクトガラス上に載置される。そして、原稿読込部4で、コンタクトガラス上に載置された原稿の画像情報が光学的に読み取られる。
露光装置において、四つの光源から画像信号に対応したレーザ光Lが各色に対応してそれぞれ射出される。各レーザ光Lは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過して、各感光体1(Y,M,C,K)の表面に照射される(露光工程)。
感光体クリーニング装置2との対向部を通過した感光体1の表面は、不図示の除電手段と対向する位置である除電位置に達して、この位置で感光体1の表面上の残留電荷が除去される。
このようにして、感光体1の表面上で行われる一連の作像プロセスが終了し、次の作像動作に備える。
中間転写ベルト8は、図2中の矢印方向に表面移動して、各一次転写バイアスローラ9(Y,M,C,K)の一次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体1(Y,M,C,K)上の各色のトナー像が、中間転写ベルト8上に重ねて一次転写される。
詳しくは、給紙カセット26には、被転写材である転写紙Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ27が図2中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の転写紙Pがレジストローラ対28のローラニップに向けて給送される。レジストローラ対28に搬送された転写紙Pは、回転駆動を停止したレジストローラ対28のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト8上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対28が回転駆動されて、転写紙Pが二次転写ニップに向けて搬送される。
定着装置20を通過した転写紙Pは、排紙ローラ対25のローラ間を経てプリンタ部100の外に排出される。排紙ローラ対25によって複写機500の装置本体外に排出された転写紙Pは、出力画像として、排紙トレイ30上に順次スタックされる。
このようにして、複写機500における画像形成装置としての一連の画像形成プロセスが完了する。
図4は、本実施形態の現像装置5の説明図であり、図4は、現像装置5の断面説明図である。現像装置5は、現像剤を収容する現像ケーシングとしてケーシング58を備え、このケーシング58は、現像下ケース58aと、現像上ケース58bと、現像カバー58cとから構成される。
図6は、現像装置5の説明図であり、図6(a)は、図5に示す現像カバー58cを取り外した状態の現像装置5の上面図であり、図6(b)は、現像装置5を図5中の矢印「A」方向から見た側面図である。また、図6(c)は、現像装置5を図5中の矢印「A」方向から見た側方断面図である。
ドクタブレード52は、現像ローラ50の表面に対向するように配設されるとともに、現像ローラ50の表面に担持された現像剤Gの量を規制する。
詳細は後述する現像スリーブ電源151から現像スリーブ51に現像電圧が印加されることにより、現像領域では現像スリーブ51と感光体1との間に現像電界が形成される。この現像電界により、現像領域では現像スリーブ51の表面上の現像剤G中のトナーが感光体1の表面上の潜像に供給され、感光体1上の潜像が現像される。
図7に示すように、供給搬送路53aにおける供給スクリュ53の搬送方向下流側端部に到達した現像剤Gは、矢印「d」で示すように仕切り部材57に設けられた開口部のうちの剤持上げ口72を通って回収搬送路54aにおける搬送方向上流側端部に受け渡される。一方、回収搬送路54aにおける回収スクリュ54の搬送方向下流側端部に到達した現像剤Gは、矢印「e」で示すように仕切り部材57に設けられた開口部のうちの剤落下口71を通って供給搬送路53aにおける搬送方向上流側端部に受け渡される。
供給スクリュ53による搬送経路である供給搬送路53aの下流側と、回収スクリュ54による搬送経路である回収搬送路54aの上流側とは剤持上げ口72を介して連通している。そして、供給搬送路53aの下流側端部に達した現像剤Gは、その位置に留まり後から搬送されてくる現像剤Gによって押し上げられ、回収搬送路54aの上流側端部に到達する。
このように、供給スクリュ53及び回収スクリュ54の現像剤搬送能力は、現像スリーブ51上の現像剤Gの搬送量を上回るように設定する必要があり、必然的にスクリュは高回転に設定になってしまう。
図1は、現像装置5が備える現像スリーブ51に現像スリーブ電源151が印加する現像バイアスVbの波形を示す説明図である。図1に示す説明図では、「GND」がアース電圧を示しており、「0[V]」である。また、図1中の上側ほどマイナス極性側に大きい値であり、図1中の下側ほどプラス極性側の大きい値である。図1中の「T」は、交流成分によって周期的に電圧が変化する現像バイアスVbの1[周期]を示している。また、図1中の「T1」は、現像バイアスVbの1[周期]の間にプラス極性側成分の電圧が印加される時間を示しており、図1中の「T2」は、現像バイアスVbの1[周期]の間にマイナス極性側成分の電圧が印加される時間を示している。
また、周波数は、一秒間に何周期の波形があるかを示すものであり、一周期の時間を「T」としたときに「1/T」となる。
図1に示す波形の例では、周波数が1[kHz]、プラス側デューティ比が7[%]、現像バイアスVbの最大値と最小値との差であるピークトゥピーク値Vppが1000[V]となっている。
図1に示す例では、現像バイアス平均値Vbavと露光電位VLとの電位差である現像ポテンシャルVpotは、400[V]となっている。
図8に示す波形では、周波数が9[kHz]、プラス側デューティ比(T1/T×100)が70[%]、現像バイアスVbの最大値と最小値との差であるピークトゥピーク値Vppが1500[V]となっている。また、図8に示す波形では、現像バイアス平均値Vbavは、−300[V]で露光電位VLは−100[V]である。
図8に示す例では、現像ポテンシャルVpotは、200[V]である。
また、従来のACバイアス現像では、周波数が図8に示す波形では9[kHz]となっているように5[kHz]以上の高周波数のものが主流である。一方、本実施形態の波形の周波数は2[kHz]以下となる990[Hz]である。
以下、本実施形態のように、本発明の特徴部を備えた波形を示すAC現像バイアスを便宜的に「RP現像バイアス」と呼び、RP現像バイアスを印加する現像方式を、便宜的に「RP現像」と呼ぶ。本発明者らがRP現像を用いて画像形成をおこなったところ、現像スリーブ51の回転周期による濃度ムラが抑制出来るとともに、周辺白抜けの発生や粒状性の悪化を抑制できることを確認した。本発明者らが現像スリーブ51に印加する現像バイアスの条件のみを変化させて画像形成を行ったところ、粒状性については従来のACバイアス現像よりも改善でき、DCバイアス現像と同等の粒状性を得られた。
よって、マイナス極性について、現像バイアス平均値Vbavが、帯電電位Vdよりも小さく、露光電位VLよりも大きければ(Vd>Vbav>VL)、感光体1の静電潜像に対して現像することができる。
また、RP現像では周波数を低くすることで、周波数の高いACバイアス現像で生じていた周辺白抜けの発生を抑制することができる。さらに、RP現像ではプラス側デューティ比を低くすることで、周波数の低く、且つ、プラス側デューティ比が高いACバイアス現像で生じていた粒状性の悪化を抑制することができる。
一方、現像スリーブ51にACバイアスを印加する場合は、微小な時間中に静電潜像に対して、現像スリーブ51から感光体1にトナーを現像する電位差と感光体1から現像スリーブ51側にトナーを引き戻す電位差とが交互に形成される。このように感光体1から現像スリーブ51側にトナーを引き戻す電位差が形成されることもあるにも関わらずトナーを静電潜像に現像できるのは、以下の理由による。すなわち、ACバイアスの平均の電位と、感光体1上の静電潜像の電位との電位差が、トナーを感光体1側に移動する電位差となっているからである。
すなわち、周波数を上げると、トナーの引き戻し作用が強くなることで、高濃度部と低濃度部との境界付近の白抜け(以下、「周辺白抜け」と呼ぶ)が発生し易くなる。この周辺白抜けを低減するためにACバイアスの周波数を2[kHz]以下とすることが望ましい。
また、ピークトゥピーク値を上げると、トナーの動きが大きくなり、濃度ムラはより低減されるが、感光体1上の非画像部へのトナーの付着(地汚れ)が発生しやすくなる。そのため、ピークトゥピーク値は1500[V]以下が望ましい。
〔実験例1〕
実験例1では、ピークトゥピーク値(以下、「Vpp値」ともいう)と地汚れとの関係に基づいてピークトゥピーク値の上限値を確認した。地汚れの評価は、任意の画像を出力したときの非画像部に対するトナーの付着状態を目視で確認した。
以下、実験例1の評価条件を示す。
・画像形成装置:imagio MP C5000
・現像剤 :シアン現像剤
・現像スリーブ:アルミスリーブにテトラヘデラルアモルファスカーボンコーティング(以下、「ta−Cコート」という)
・現像バイアス:DCバイアスのみ、DCバイアスにAC成分を重畳(周波数:990[Hz]、プラス側デューティ比:7[%])
ランク「5」:地汚れ無し
ランク「4」:問題無し
ランク「3」:許容可
ランク「2」:許容不可
ランク「1」:「2」よりも劣位
現像バイアスの条件は、DCバイアスと、ACバイアスとの両方で画像形成を行い、ACバイアスの場合は、Vpp値が1[kV]、1.25[kV]、1.5[kV]及び1.75[kV]の各条件で画像形成を行った。
図9に示す実験例1の結果より、DCバイアスでは地汚れの問題は生じないが、ACバイアスではVpp値を1.75[kV]とすると地汚れが許容不可となった。よって、ACバイアスを印加する際は、Vpp値を1.5[kV]以下とすることが望ましい。
実験例2では、現像バイアスの周波数と周辺白抜けとの関係に基づいて現像バイアスの周波数の上限値を確認した。周辺白抜けの評価には、ベタ部と50[%]濃度部とをチェッカー状に構成した画像を用いて、目視で確認した。
以下、実験例2の評価条件を示す。
・画像形成装置:imagio MP C5000
・現像剤 :シアン現像剤
・現像スリーブ:アルミスリーブにta−Cコート
・現像バイアス:DCバイアスのみ、及び、DCバイアスにAC成分を重畳(ピークトゥピーク値:800[V]、プラス側デューティ比:7[%])
ランク「5」:周辺白抜け無し
ランク「4」:問題無し
ランク「3」:許容可
ランク「2」:許容不可
ランク「1」:「2」よりも劣位
現像バイアスの条件は、DCバイアスと、ACバイアスとの両方で画像形成を行い、ACバイアスの場合は、周波数が0.99[kHz]、2[kHz]、5.5[kHz]及び9[kHz]の各条件で画像形成を行った。
990[Hz]よりも低い値で周波数をシフトさせたところ、800[Hz]までは画像濃度ムラが目視で確認することができなかった。周波数を700[Hz]としたときに、縞模様が目視で確認でき始め、600[Hz]では縞模様を明らかに確認できるようになった。このため、周波数は800[Hz]以上であることが望ましい。
実験例3では、現像バイアスのプラス側デューティ比と、画像の粒状性との関係に基づいて現像バイアスのプラス側デューティ比の上限値を確認した。粒状性の評価には、画像面積率が70[%]の画像を使用して、目視で確認した。
以下、実験例3の評価条件を示す。
・画像形成装置:imagio MP C5000
・現像剤 :シアン現像剤
・現像スリーブ:アルミスリーブにta−Cコート
・現像バイアス:DCバイアスのみ、及び、DCバイアスにAC成分を重畳(ピークトゥピーク値:800[V]、周波数:990[Hz])
ランク「5」:粒状性良好
ランク「4」:問題無し
ランク「3」:許容可
ランク「2」:許容不可
ランク「1」:「2」よりも劣位
現像バイアスの条件は、DCバイアスと、ACバイアスとの両方で画像形成を行った。また、ACバイアスの場合は、プラス側デューティ比が、4[%]、7[%]、20[%]及び50[%]の各条件で画像形成を行った。
図11に示す実験例3の結果より、DCバイアスでは粒状性は良好であった。一方、ACバイアスでは、プラス側デューティ比が50[%]のときに「許容不可」となるランク「2」よりも粒状性が悪く、ざらついた画像となった。また、プラス側デューティ比が20[%]のときには「許容可」となるランク「3」よりも粒状性が良い「問題無し」となるランク「4」となった。
図12に示すように、現像ギャップGPが0.25[mm]以上の範囲では、何れの現像条件においても現像ギャップGPが広くなるほどトナーの付着量が減少する傾向にある。一方、現像ギャップGPが0.25未満の範囲では、DCバイアス現像は現像ギャップGPが狭くなるほどトナーの付着量が増加する。これに対して、従来のACバイアス現像では、現像ギャップGPを狭くしてもトナーの付着量が0.4[mg/cm2]で頭打ちとなっている。さらに、RP現像では、現像ギャップGPを狭めるほどトナー付着量が増加する傾向にあったグラフが、現像ギャップGPが0.2[mm]のときには、現像ギャップGPを狭める前よりもトナーの付着量が減少している。
図14より、プラス側デューティ比を4[%]とし、周波数を990[Hz]とした条件では、実験した範囲においてはピークトゥピーク値Vppが800[V]が現像ギャップGPに対するトナー付着量の変動幅が小さい。現像ギャップGPに対するトナー付着量の変動幅が小さいほど、現像スリーブ51の回転周期に合わせた濃度ムラが生じ難くなる。このため、プラス側デューティ比を4[%]とし、周波数を990[Hz]とした条件では、ピークトゥピーク値Vppを800[V]とすることが望ましい。
すなわち、画像のエッジ部ではエッジ効果によって露光電位VLよりも電位が上がる。図8に示す波形は、図1に示す波形に比べて現像ポテンシャルVpotの値が小さく、少しの電位差の変動で現像し難くなり、エッジ効果の影響を受け易いと考えられる。
一方、図1に示す波形のRP現像では現像ポテンシャルVpotが400[V]であり、図8に示す波形よりも現像ポテンシャルVpotの値が大きい。このため、エッジ効果によって電位差が20[V]小さくなっても、現像スリーブ51の表面と静電潜像との電位差が小さくなる割合が図8に示す波形よりも小さい。このように、図1に波形の示すRP現像では、電位差が20[V]小さくなっても電位差が小さくなる割合が小さいため、画像が薄くなる程度も小さく、周辺白抜けの影響が小さくなると考えられる。
以下、濃度ムラの評価ランクの基準を示す。
ランク「5」:濃度ムラ無し
ランク「4」:問題無し
ランク「3」:許容可
ランク「2」:許容不可
ランク「1」:「2」よりも劣位
具体的には、感光体1の代わりに透明ガラスドラムを配置し、現像ニップを透明ガラスドラムの内側から連続的に撮影して、トナーの挙動を画像で確認した。
図8に示す波形のバイアスを印加した場合は、現像スリーブ51側から感光体1側に移動して感光体1の表面に一度付着したトナーは感光体1の表面上で振動しているだけで、ほとんど現像スリーブ51側に戻らなかった。一方、図1に示す波形のバイアスを印加した場合は、感光体1の表面上に付着したトナーのほとんどが周期的に現像スリーブ51側に戻り、再び感光体1に付着する、というような挙動となった。
ACバイアス現像では、現像バイアス平均値Vbavと露光電位VLとの電位差によって現像がなされる。また、現像バイアスVbのプラス極性側の最大値が同じであってもプラス側デューティ比が大きければ大きいほど、現像バイアス平均値Vbavの値がプラス側にシフトする。
この電位差が小さいため、感光体1上に付着したトナーを現像スリーブ51側に引き戻そうとする力が弱く、感光体1上に付着したトナーは現像スリーブ51まで戻ることができず、感光体1上で振動する状態で留まると考えられる。
この電位差が大きいため、感光体1上に付着したトナーを現像スリーブ51側に引き戻そうとする力が強くなり、感光体1上に付着したトナーのほとんどを周期的に現像スリーブ51側に戻すことが可能となると考えられる。
図1に示す波形のように、感光体1上に付着したトナーのほとんどを現像スリーブ51に戻せることで、次のような利点が考えられる。
図1に示す波形では、感光体1に付け過ぎたトナーを回収でき、足りない分は現像バイアス平均値Vbavと露光電位VLとの電位差によって最終的に感光体に付着させることができるため、画像濃度の均一化を図ることが出来る。
図12に示すように、RP現像の方が現像ギャップGPの変動に対するトナーの付着量の変動幅が小さいため、現像ギャップGPの変動に起因する濃度ムラの発生を抑制することができる。
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、上述したRP現像であっても感光体1の表面移動速度に対する現像スリーブ51の表面移動速度の比である線速比が適切でない場合は粒状性が悪化することがあることが分かった。
RP現像として、ピークトゥピーク値Vppが1000[V]、周波数が990[Hz]、プラス側デューティ比が7[%]のバイアス条件で、現像スリーブ51の回転速度の値を振った実験を行った。
現像スリーブ51の表面移動速度が、感光体1の表面移動速度と同じ場合、すなわち、線速比「Vs/Vg」が1.0の場合は、粒状性が悪くなっていた。線速比「Vs/Vg」が1.2の場合は、1.0の場合よりも改善したが、十分ではなかった。
よって、線速比「Vs/Vg」の範囲としては、1.3以上、1.8以下の範囲が望ましい。
例えば、ブラックのトナーを使用するブラック用現像装置5KにはDCバイアス現像を採用し、ブラック以外のトナーを使用するカラートナーを用いるの三つ現像装置5には上述したRP現像を採用する構成としてもよい。
現像剤の帯電量を変化させたときのドット面積標準偏差とボソツキランクとの評価を行った。
図17に印刷画像のドット面積標準偏差とトナー帯電量との関係を示す。ドット面積標準偏差とは、一様に等間隔で約80[μm]のドットを印刷し、その印刷されたドット100個をCCDカメラで取り込み、それぞれの二値化したドットの面積を算出し、そのドットの面積の標準偏差を算出した。
・評価装置:RICOH Pro C751EX
・現像装置:ブラック用現像装置、シアン用現像装置、マゼンタ用現像装置
・現像ポテンシャル(現像バイアスと感光体画像部電位の差):画像濃度が1.5になるように設定
・CCDカメラ:Keyence社製 マイクロスコープ VHX−100
図18に示すボソツキランクの基準を示す。
ランク「5」:ボソツキ無し
ランク「4」:ボソツキ問題なし
ランク「3」:ボソツキ許容レベル
ランク「2」:許容不可レベル
ランク「1」:許容不可レベル(「2」よりも劣位)
このため、シアン、マゼンタなどのブラック以外の画像は、ドット面積標準偏差が多少大きくなっても、粒状性への影響は小さいが、ブラックはドット面積標準偏差が大きくなると粒状性が悪くなり、ボソついた画像となってしまう。
よって、ブラック画像では、ボソツキが目立ちやすいと考えられる。
このようにブラック画像でボソツキが目立ち易い場合は、ブラックの現像には粒状性が良いDCバイアス現像を採用し、その他の色の現像には、濃度ムラが改善するRP現像を採用することで粒状性の悪化を抑制しつつ、画像濃度ムラも抑制できる。
上述したように、AC現像では、ACバイアスの平均の電位と、感光体1上の静電潜像の電位との電位差が、トナーを感光体1側に移動する電位差となっているため、トナーを静電潜像に現像できる。しかし、感光体1側から現像スリーブ51側にトナーを引き戻す電位差が大きいと、現像した感光体1上のトナー像には、引き戻された跡が残って、完全に静電潜像をトナーで埋めきることができずにところどころ白く抜けたようになる。それがボソツキ画像となってしまう。
感光体1から現像スリーブ51側への引き戻されるトナーを少なくするには、AC現像バイアスのプラス側デューティ比を小さくした上述したRP現像を採用することが有効である。
画像形成装置:imagio MP C5000改造機
現像剤:シアン現像剤、ブラック現像剤
現像スリーブ:アルミニウム製スリーブの表面にta−Cコート(0.6[μm]中心で偏差0.3[μm])
現像バイアス:DC成分にAC成分を重畳した電圧
AC成分の周波数:1[kHz]
AC成分の振幅(ピークトゥピークの値):800[V]
ACのプラス側デューティ比:1[%]〜30[%]
DC成分の電圧は、画像濃度が1.5になるように調整した。
「5」:無し
「4」:問題なし
「3」:許容レベル
「2」:NGレベル
「1」:NGレベル(「2」よりも悪い)
ブラック用現像装置5Kでは、DC現像バイアスを印加する条件(プラス側デューティ比が0[%])で、濃度ムラランクとボソツキランクがもっとも良い(NGとならない)。
よって、ブラック用現像装置5Kの現像バイアスはDC現像バイアスとし、その他の色の現像バイアスはRP現像バイアスとすることで、画像濃度ムラと粒状性を、すべての色の現像装置5で両立することができる。
図21は、現像装置5が備える現像ローラ50の拡大説明図である。
図21に示すように、現像装置5が備える現像ローラ50を構成する現像スリーブ51は、円筒形状を形成する基材からなるスリーブ素管51aと低摩擦膜51bとから構成される。低摩擦膜51bは、アルミニウムからなるスリーブ素管51aの表面よりもトナーとの摩擦係数が小さい低摩擦表面層である。
また、電子写真方式の画像形成装置に用いられる現像方式としては、トナーのみからなる現像剤を用いる一成分現像方式と、トナーとキャリアとからなる現像剤を用いる二成分現像方式とが有る。高速機の画像形成装置では主に耐久性の確保の観点から、二成分現像方式が採用されている。高速機の分野は、商業印刷にも対応できるように高画質化も要求されている。
潜像担持体上に付着するトナー量が変動する原因としては、トナー帯電量の変動などの要因もあるが、特許文献3に記載されるように、前画像の履歴を次画像が引き継ぐ不良画像(ゴースト画像)が知られている。
すなわち、前画像において感光体上の非画像部と対向した現像スリーブの表面と、前画像において感光体上の画像部と対向した現像スリーブの表面とでは、次画像において画像部と対向したときのトナー現像量が異なる。これにより、次画像においてゴースト画像が生じると考えられる。
図22では、感光体1と現像スリーブ51とが図中左側から右側に向けて表面移動する。図22に示すように、現像領域近傍の現像スリーブ51の表面上では、二成分現像剤中のキャリアCが磁気ブラシを形成しており、その磁気ブラシにトナーTが付着した状態である。図22において、トナーTの粒子中の「−」はトナーがマイナス極性に帯電していることを模式的に示し、図22中の「+」は、プラス極性の電荷があること示している。また、図22に示す構成では、現像スリーブ電源151がスリーブ素管51aに印加する現像バイアスは、直流成分の電圧のみである。
図22に示すように、感光体1の表面上の画像部は現像スリーブ51の表面よりもプラス極性側に帯電しており、現像スリーブ51との電位差によって磁気ブラシに付着したトナーTの一部が感光体1の表面に付着する。このとき、マイナス極性に帯電したトナーTが磁気ブラシから離間するため、図22(a)及び(b)中の左側の磁気ブラシのように磁気ブラシにはカウンタージャージの分のプラス極性の電荷が残った状態となる。
しかし、カウンターチャージ分のプラス極性の電荷を、図22(a)中の矢印Fで示すように、スリーブ素管51aに移動させることが出来れば、さらに、現像を行うことが可能となる。
テトラヘデラルアモルファスカーボン等からなる低摩擦膜51bは、アルミニウム等の金属からなるスリーブ素管51aよりも電気抵抗が大きいため、その厚みが薄いほどカウンターチャージ分のプラス極性の電荷がスリーブ素管51aに移動し易くなる。
図22(a)に示すように、低摩擦膜51bが薄い場合、矢印Fで示すように、カウンターチャージ分のプラス電荷がスリーブ素管51aに移動することができる。このため、図22(a)中の左側の磁気ブラシに示すように、一時的に電荷量が平衡状態となっても、カウンターチャージ分のプラス電荷のうち、スリーブ素管51aに移動した分だけ、さらに現像することが可能となる。これにより、図22中の「H」のように所定量のトナーTが付着していない画像部をトナーTで埋めることができ、他の画像部よりも画像濃度が薄い部分が生じ難い。
ここで、「飽和現像」とは、潜像担持体(感光体1)上の静電潜像と対向電極(現像スリーブ51)との電位差が作る現像電界を、現像したトナー電界でキャンセルし、現像電界が「0」になる状態である。すなわち、感光体1上の静電潜像に対して、これ以上トナーが電界の力で付着しなくなるまでトナーが付着した状態である。
飽和現像し難いと、感光体1と現像スリーブ51との隙間(以下、「現像ギャップ」と呼ぶ)の振れによって静電潜像に対するトナーの付着量が変動し、濃度変動が生じ易いという問題がある。
図23は、以下の条件で画像形成を行ったときの現像ギャップGPとトナー付着量(感光体上の現像された単位面積あたりのトナー量)との関係を示すグラフである。図23中のひし形のプロットがDC現像バイアスを用いたときのプロットであり、破線で示す直線がこのプロットを線形近似したものである。
・評価装置:RICOH Pro C751EX
・現像装置:ブラック用現像装置
・現像剤トナー濃度:7[%]
・現像ポテンシャル(現像バイアスと感光体画像部電位の差):500[V]
図23に示す結果より、同じ現像ポテンシャル時であっても現像ギャップが広くなると、トナー付着量が減少する。このため、現像ギャップの変動は濃度ムラの原因のひとつである。
ACバイアス現像を行うことで、飽和現像に近い現像を行うことが出来る理由は明確ではないが、本出願人による現像の可視化の実験等の結果より検討した結果、以下の理由によりものと考える。
このように、低摩擦膜51bが薄い箇所に比べて低摩擦膜51bの厚い箇所での画像濃度の低下を抑制できることで、低摩擦膜51bの膜厚のムラに応じた周期的な画像濃度ムラを抑制することが出来る。
特許文献4に記載の構成は、現像スリーブに交流電圧を印加する構成であるが、ゴースト画像を抑制する構成については記載されていない。
次に、ブラック用現像装置5KにDCバイアス現像を採用し、他の色の現像装置5にRPバイアス現像を採用する構成の適正を確認する実験を行った。
実験例4では、ブラック現像剤を使用するDCバイアス現像の構成で、低摩擦膜を備える構成を実施例1とし、シアン現像剤を使用するRPバイアス現像の構成で、低摩擦膜を備える構成を実施例2とした。他の構成を比較例1〜6としてゴースト画像と画像濃度ムラとの評価を行った実験例4について説明する。
図25は、実際のゴースト画像発生の概念図である。
ゴースト画像については、画像面積が5[%]のチャートを20[k枚]出力後に、ゴースト確認用画像を印刷し、現像スリーブ51の一周分の画像(a)と一周後以降の画像(b)との画像濃度の差を確認することで評価した。詳しくは、一周分の画像(a)と一周後以降の画像(b)との画像濃度について、X−Rite939(X−Rite社製)を用いて三箇所の平均濃度差(b1−a1,b2−a2,b3−a3)をΔIDとし、以下ランク分けした。
「◎」:0.01≦ΔID
「○」:0.01<ΔID≦0.03
「△」:0.03<ΔID≦0.06
「×」:0.06<ΔID
上述したゴースト画像の評価方法に基づいて、ゴースト画像の評価を行なった。
A3のサイズで、網点面積率75[%]の画像(シアン単色)を印刷し、画像面内の明度偏差(最大明度−最小明度)を測定した。明度の測定には、X−Rite939(X−Rite社製)を用いた。濃度ムラの評価基準としては、画像面内の明度偏差が2.0未満を「○」(問題ない)とし、2.0以上は「×」(濃度ムラ有り)とした。
現像スリーブ51としてアルミニウム製のスリーブ素管を用い、この現像スリーブ51に印加する現像バイアスとしてDC現像バイアスを印加した。比較例1で用いた画像形成装置は、使用する現像装置が、現像スリーブ51に低摩擦膜51bのコーティングが無く、印加する現像バイアスが直流成分のみとなっている。
以下、比較例1の設定条件を示す。
画像形成装置:imagio MP C5000改造機
現像剤:ブラック現像剤
現像スリーブ:アルミニウム製スリーブ
現像バイアス:DC現像バイアス
現像スリーブ51としてアルミニウム製のスリーブ素管を用い、この現像スリーブ51に印加する現像バイアスとして直流成分に交流成分を重畳したAC現像バイアスを印加した。比較例2で用いた画像形成装置は、使用する現像装置が、現像スリーブ51に低摩擦膜51bのコーティングが無く、印加する現像バイアスが直流成分に交流成分を印加したAC現像バイアスとなっている。
以下、比較例2の設定条件を示す。
・画像形成装置:imagio MP C5000改造機
・現像剤:ブラック現像剤
・現像スリーブ:アルミニウム製スリーブ
・現像バイアス:AC現像バイアス
周波数:1[kHz]
ピークトゥピーク値:1000[V]
プラス側デューティ比:4[%]
直流成分の電圧(オフセット):−230[V]
プラス側デューティ比は、周期的に変動する交流成分を含む現像バイアスの一周期中のプラス側の成分比である。言い換えると、現像バイアスが直流成分の電圧である−230[V]よりもプラス側の電位となる時間が現像バイアスの変動の一周期分の時間に占める時間比である。
現像スリーブ51として、アルミニウム製のスリーブ素管51aに低摩擦膜51bとしてta−Cコートを施したものを用い、この現像スリーブ51に印加する現像バイアスして直流成分に交流成分を重畳したAC現像バイアスを印加した。比較例3で用いた画像形成装置は、使用する現像装置が、現像スリーブ51に低摩擦膜51bのコーティングが有り、印加する現像バイアスが直流成分に交流成分を印加したAC現像バイアスとなっている。
以下、比較例3の設定条件を示す。
画像形成装置:imagio MP C5000改造機
現像剤:ブラック現像剤
現像スリーブ:アルミニウム製スリーブの表面にta−Cコート(0.6[μm]中心で偏差0.3[μm])
現像バイアス:AC現像バイアス
周波数:1[kHz]
ピークトゥピーク値:1000[V]
プラス側デューティ比:4[%]
直流成分の電圧(オフセット):−230[V]
現像スリーブ51として、アルミニウム製のスリーブ素管51aに低摩擦膜51bとしてのta−Cコートを施したものを用い、この現像スリーブ51に印加する現像バイアスしてDC現像バイアスを印加した。実施例1で用いた画像形成装置は、使用する現像装置が、現像スリーブ51に低摩擦膜51bのコーティングが有り、印加する現像バイアスがDC現像バイアスとなっている。
以下、実施例1の設定条件を示す。
・画像形成装置:imagio MP C5000改造機
・現像剤:ブラック現像剤
・現像スリーブ:アルミニウム製スリーブの表面にta−Cコート(0.6[μm]中心で偏差0.3[μm])
・現像バイアス:DC現像バイアス
現像スリーブ51としてアルミニウム製のスリーブ素管を用い、この現像スリーブ51に印加する現像バイアスとしてDC現像バイアスを印加した。比較例4で用いた画像形成装置は、使用する現像装置が、現像スリーブ51に低摩擦膜51bのコーティングが無く、印加する現像バイアスが直流成分のみとなっている。
以下、比較例4の設定条件を示す。
画像形成装置:imagio MP C5000改造機
現像剤:シアン現像剤
現像スリーブ:アルミニウム製スリーブ
現像バイアス:DC現像バイアス
現像スリーブ51としてアルミニウム製のスリーブ素管を用い、この現像スリーブ51に印加する現像バイアスとして直流成分に交流成分を重畳したAC現像バイアスを印加した。比較例5で用いた画像形成装置は、使用する現像装置が、現像スリーブ51に低摩擦膜51bのコーティングが無く、印加する現像バイアスが直流成分に交流成分を印加したAC現像バイアスとなっている。
以下、比較例5の設定条件を示す。
・画像形成装置:imagio MP C5000改造機
・現像剤:シアン現像剤
・現像スリーブ:アルミニウム製スリーブ
・現像バイアス:AC現像バイアス
周波数:1[kHz]
ピークトゥピーク値:1000[V]
プラス側デューティ比:4[%]
直流成分の電圧(オフセット):−230[V]
プラス側デューティ比は、周期的に変動する交流成分を含む現像バイアスの一周期中のプラス側の成分比である。言い換えると、現像バイアスが直流成分の電圧である−230[V]よりもプラス側の電位となる時間が現像バイアスの変動の一周期分の時間に占める時間比である。
現像スリーブ51として、アルミニウム製のスリーブ素管51aに低摩擦膜51bとしてのta−Cコートを施したものを用い、この現像スリーブ51に印加する現像バイアスしてDC現像バイアスを印加した。比較例6で用いた画像形成装置は、使用する現像装置が、現像スリーブ51に低摩擦膜51bのコーティングが有り、印加する現像バイアスがDC現像バイアスとなっている。
以下、比較例6の設定条件を示す。
・画像形成装置:imagio MP C5000改造機
・現像剤:シアン現像剤
・現像スリーブ:アルミニウム製スリーブの表面にta−Cコート(0.6[μm]中心で偏差0.3[μm])
・現像バイアス:DC現像バイアス
現像スリーブ51として、アルミニウム製のスリーブ素管51aに低摩擦膜51bとしてta−Cコートを施したものを用い、この現像スリーブ51に印加する現像バイアスして直流成分に交流成分を重畳したAC現像バイアスを印加した。実施例2で用いた画像形成装置は、使用する現像装置が、現像スリーブ51に低摩擦膜51bのコーティングが有り、印加する現像バイアスが直流成分に交流成分を印加したAC現像バイアスとなっている。
以下、実施例2の設定条件を示す。
画像形成装置:imagio MP C5000改造機
現像剤:シアン現像剤
現像スリーブ:アルミニウム製スリーブの表面にta−Cコート(0.6[μm]中心で偏差0.3[μm])
現像バイアス:AC現像バイアス
周波数:1[kHz]
ピークトゥピーク値:1000[V]
プラス側デューティ比:4[%]
直流成分の電圧(オフセット):−230[V]
次に、上記比較例2と上記実施例2との設定条件について、現像スリーブ51の表面の低摩擦膜51bの変動と画像濃度の変動との関係を確認した実験例5について説明する。
図26は、実験例5の実験結果を示すグラフであり、現像スリーブ51の表面移動方向における一周分の低摩擦膜51bの膜厚の変動と、当該現像スリーブ51を用いて作像した画像の通紙方向の明度の変動とを示すグラフである。図26(a)は、上記比較例2の設定条件の画像形成装置を用いた場合のグラフであり、図26(b)は、上記実施例2の設定条件の画像形成装置を用いた場合のグラフである。また、図26中の破線のグラフが低摩擦膜51bの膜厚を示しており、図26中の実線のグラフが破線で示した膜厚の位置で現像された画像の明度を示している。明度の変動を測定した画像としては、網点画像面積率75[%]の画像を作像した。
すなわち、直流成分のみの現像バイアス(DC現像バイアス)では、ta−Cコーティング層の厚みの差によりカウンターチャージが逃げやすい箇所(低摩擦膜51bの膜厚が薄い部分)と、逃げにくい箇所(低摩擦膜51bの膜厚が厚い部分)がある。このために、低摩擦膜51bの厚みムラが濃度ムラとなったと考える。
一方、AC現像バイアスを印加することで交流成分によりキャリアに発生したカウンターチャージが逃げ易くなり、DC現像バイアスを印加する構成よりも飽和現像に近い現像となることで、低摩擦膜51bの厚みムラが濃度ムラになり難いと考えられる。
図21に示すように、現像装置5が備える現像ローラ50を構成する現像スリーブ51には、その最表面を低摩擦膜51bによってコーティングしている。
現像スリーブ51の最表面の低摩擦化は以下の方法で行った。
FVCA方式によるta−C膜の成膜の概略を説明すると、ほぼ真空状態のチャンバ内にターゲットとして純度の高い炭素(黒鉛)を配置し、当該ターゲットに対しアーク放電を行う。そして、このアーク放電により発生したプラズマを電磁誘導により蒸着対象である現像スリーブ51のスリーブ素管51aに導く。その誘導過程において、電磁気的空間フィルターにより蒸着に不要なマクロ粒子や中性原子・分子などを除去して、イオン化した炭素のみを抽出する。そして、スリーブ素管51aの表面に到達したイオン化した炭素は基材表面に凝集してta−C膜を形成する。
このような、ta−C膜からなる低摩擦膜51bは、メッキや塗布などで形成された膜に比べて均一な厚みに形成できるとともに、比較的低温での成膜処理が可能であるので、現像スリーブ51の温度による歪みなどが発生しにくい。そのため、現像スリーブ51の形状精度を高めることができる。
なお、FVCA方式による蒸着技術については、例えば、米国特許第6,031,239号等に開示されており、既に広く実用化されているため、詳細説明は省略する。
物理蒸着法(PVD)の一つであるイオンプレーティング方式によれば、密着性に優れた膜が比較的容易に得られ、このイオンプレーティング方式の中でも、特にHCD方式を用いることで、均質で且つ膜厚が均一で母材の表面粗さに沿った被膜が得られる。
なお、HCD方式による蒸着技術については、例えば、特開平10−012431号公報や特開平08‐286516号公報等に開示されており、既に広く実用化されているため、詳細説明は省略する。
もちろんスリーブ素管51aよりもトナーとの摩擦係数の低い材料であれば、本発明の目的に反しない限り、例えば、炭化チタン(TiC)、炭窒化チタン(TiCN)、モリブデン酸など、ta−CやTiN以外の材料を用いても良い。
なお、各材料における摩擦係数は、アルミニウム合金が0.5(以上)、TiNが0.3〜0.4、ta−Cが0.1(以下)程度である。
低摩擦膜51bをコーティングした現像スリーブ51や低摩擦膜51bを備えていない現像スリーブ51の表面の摩擦係数の測定には、オイラーベルト方式を用いた。図27は、摩擦係数測定装置の概略構成図である。図27に示す摩擦係数測定装置は、オイラーベルト方式に基づくものである。ベルトとして中厚の上質紙を紙すきが長手方向になるようにして現像スリーブ51の円周1/4に張架し、ベルトの一方に例えば0.98[N](100[g])の荷重を掛け、他方にフォースゲージ(デジタルプッシュプルゲージ)を設置した。そして、上記加重によってフォースゲージを引っ張り、ベルトが移動した時点での荷重を読み取って、摩擦係数μs=2/π×1n(F/0.98)(但し、μ:静止摩擦係数、F:測定値)に代入して算出した。
(態様A)
トナーと磁性キャリアとからなる現像剤を表面上に担持して表面が無端移動し、感光体1等の潜像担持体と対向する現像領域で潜像担持体の表面の潜像に現像剤中のトナーを供給して現像する現像ローラ50等の現像剤担持体を備え、現像剤担持体は、複数の磁極を有するマグネットローラ55等の磁界発生手段と、磁界発生手段を内包する円筒形状で、磁界発生手段の磁力によって円筒形状の外周面に現像剤を担持し、装置本体に対して回転することによって表面移動する現像スリーブ51等の現像スリーブと、を有し、現像スリーブに対して現像電圧を印加する現像スリーブ電源151等の現像スリーブ電圧印加手段を備える現像装置5等の現像装置において、現像スリーブ電圧印加手段は、周波数が2.0[kHz]以下の交流成分を含む現像電圧を印加し、現像電圧の交流成分についてのトナーの正規帯電極性(マイナス極性等)とは逆極性(プラス極性等)の成分のデューティ比が4[%]以上、20[%]以下である。
これによれば、上記実施形態について説明したように、直流電圧のみを印加するDCバイアス現像に比べて、交流成分を含む電圧を印加するACバイアス現像は、潜像担持体へのトナーの付着量のばらつきを低減する効果がある。これにより、画像上での濃度変動の低減を実現できる。また、高周波数でトナーの正規帯電極性とは逆極性の成分のデューティ比が高いACバイアス現像では、周辺白抜けの程度がDCバイアス現像よりも低くなる。これに対して、低周波数でトナーの正規帯電極性とは逆極性の成分のデューティ比が低いACバイアス現像であれば、濃度変動低減効果を損なわずに、周辺白抜けの程度をDCバイアスと同等レベルにすることが可能である。具体的には、周波数を2.0[kHz]以下の周波数とすることで、それよりも高い周波数でのACバイアス現像よりも周辺白抜けの程度を軽減することができる。また、低周波数でトナーの正規帯電極性とは逆極性の成分のデューティ比が高いACバイアス現像では、粒状性の悪化が生じていたが、低周波数でトナーの正規帯電極性とは逆極性の成分のデューティ比が低いACバイアス現像であれば、粒状性の悪化を抑制出来る。具体的には、低周波数では粒状度が悪化する傾向にあるが、潜像担持体から現像スリーブにトナーを引き戻す電位差が形成される時間を最小限に抑えることで粒状度の悪化を軽減することができ、画像欠陥の発生しない安定した画像を提供できる。
このように、態様Aでは、周期的な濃度変動を抑制しつつ、周辺白抜けの発生や粒状度の悪化も抑制できる。
態様Aにおいて、現像バイアス等の現像電圧のトナーの正規帯電極性側の最大値と最小値との差が、1500[V]以下である。
これによれば、上記実施形態について説明したように、地汚れと呼ばれる非画像部へのトナーの付着を軽減することができる。
態様AまたはBの何れかの態様において、現像スリーブ51等の現像スリーブの外周面に、円筒形状を形成するスリーブ素管の材料よりもトナーとの摩擦係数が小さい低摩擦膜51b等の低摩擦表面層を設ける。
これによれば、上記実施形態について説明したように、低摩擦表面層を設けることでトナーの現像スリーブへの付着を抑制し、スリーブ汚れに起因するゴースト画像の発生を抑制することが出来る。また、本発明者らは、交流成分を含む電圧を印加することで、直流成分のみからなる電圧を印加する構成に比べて、低摩擦表面層の層厚のムラに起因する現像能力の変動を抑制することが可能であることを見出した。これにより、低摩擦表面層の層厚のムラに応じた周期的な画像濃度ムラの発生を抑制できる。このように、態様Cでは、ゴースト画像の発生を抑制しつつ、周期的な画像濃度ムラの発生も抑制できる。
態様Cにおいて、低摩擦膜51b等の低摩擦表面層は、テトラヘデラルアモルファスカーボンで構成されている。
これによれば、上記実施形態について説明したように、低摩擦表面層を有する現像スリーブを備える構成を実現することができる。
態様A乃至Dの何れかの態様において、現像スリーブ51等の現像スリーブは、現像領域で感光体1等の潜像担持体と同じ方向に表面移動し、現像スリーブの表面移動速度を「Vs」とし、潜像担持体の表面移動速度を「Vg」としたときに、「1.3≦Vs/Vg≦1.8」の関係が成り立つ。
これによれば、上記実施形態について説明したように、粒状度の悪化を軽減することができ、画像欠陥の発生しない安定した画像を提供できる。
少なくとも感光体1等の潜像担持体と、潜像担持体表面を帯電させるための帯電装置40等の帯電手段と、潜像担持体上に静電潜像を形成するための露光装置等の潜像形成手段と、静電潜像を現像してトナー像化するための現像手段とを有する複写機500等の画像形成装置において、現像手段として、態様A乃至Eの何れかの態様に係る現像装置5等の現像装置を用いる。
これによれば、上記実施形態について説明したように、周期的な濃度変動を抑制しつつ、周辺白抜けの発生や粒状度の悪化も抑制できるため、安定した画像形成を行うことができる。
態様Fにおいて、ブラック用現像装置5K等のブラックのトナーを使用するブラック用現像装置と、シアン用現像装置5C等のブラック以外のトナーを使用する非ブラック用現像装置との複数の現像装置を備え、非ブラック用現像装置として態様A乃至Eの何れかに係る現像装置5等の現像装置を用い、ブラック用現像装置としては態様A乃至Eに係る現像装置とは異なる構成の現像装置を用いる。
これによれば、上記実施形態について説明したように、非ブラック用現像装置では、周期的な濃度変動を抑制しつつ、周辺白抜けの発生や粒状度の悪化も抑制できるため、安定した画像形成を行うことができる。また、濃度ムラが目立ち難いブラック用現像装置では、DCバイアス現像等の濃度ムラは生じるが、粒状度が悪化し難い方式を採用することで、周期的な濃度変動を抑制しつつ、周辺白抜けの発生や粒状度の悪化も抑制できる。非ブラック用現像装置と、ブラック用現像装置とで周期的な濃度変動を抑制しつつ、周辺白抜けの発生や粒状度の悪化も抑制できるため、安定したカラーの画像形成を行うことができる。
潜像を担持する感光体1等の潜像担持体と、潜像担持体上の潜像を現像する現像手段とを備える複写機500等の画像形成装置における少なくとも潜像担持体と現像手段とを1つのユニットとして共通の保持体に保持させて画像形成装置本体に対して一体的に着脱可能に構成した作像ユニット6等のプロセスカートリッジにおいて、現像手段として、態様A乃至Eの何れかの態様に係る現像装置5等の現像装置を用いる。
これによれば、上記実施形態について説明したように、周期的な濃度変動を抑制しつつ、周辺白抜けの発生や粒状度の悪化も抑制できる現像装置の交換性を向上できる。また、複数のプロセスカートリッジを備える構成で、それぞれのプロセスカートリッジを個別に交換できる構成であれば、寿命や故障による交換が必要なプロセスカートリッジのみを交換できる。このような構成であれば、ユーザーにとってコストがかからず、安定した画像を提供することができる。
1Y イエロー用感光体
1C シアン用感光体
1K ブラック用感光体
1M マゼンタ用感光体
2a クリーニングブレード
2 感光体クリーニング装置
3 原稿搬送部
4 原稿読込部
4a 帯電ローラ
5C シアン用現像装置
5K ブラック用現像装置
5 現像装置
6 作像ユニット
7 給紙部
8 中間転写ベルト
9 一次転写バイアスローラ
10 中間転写ユニット
11 トナー容器
12 二次転写バックアップローラ
19 二次転写バイアスローラ
20 定着装置
25 排紙ローラ対
26 給紙カセット
27 給紙ローラ
28 レジストローラ対
30 排紙トレイ
40 帯電装置
41 潤滑剤塗布装置
50 現像ローラ
51 現像スリーブ
51a スリーブ素管
51b 低摩擦膜
52 ドクタブレード
53 供給スクリュ
53a 供給搬送路
54 回収スクリュ
54a 回収搬送路
55 マグネットローラ
57 仕切り部材
58 ケーシング
58a 現像下ケース
58b 現像上ケース
58c 現像カバー
58e 現像開口部
59 トナー補給口
71 剤落下口
72 剤持上げ口
100 プリンタ部
151 現像スリーブ電源
500 複写機
G 現像剤
GP 現像ギャップ
L レーザ光
P 転写紙
P1 第一磁極
P2 第二磁極
P3 第三磁極
P4 第四磁極
P5 第五磁極
T トナー
Vb 現像バイアス
Vbav 現像バイアス平均値
Vd 帯電電位
VL 露光電位
Vpot 現像ポテンシャル
Vpp ピークトゥピーク値
α 回収スクリュ下流端領域
β 供給スクリュ下流端領域
Claims (3)
- トナーと磁性キャリアとからなる現像剤を表面上に担持して表面が無端移動し、潜像担持体と対向する現像領域で前記潜像担持体の表面の潜像に現像剤中のトナーを供給して現像する現像剤担持体を備え、
前記現像剤担持体は、複数の磁極を有する磁界発生手段と、前記磁界発生手段を内包する円筒形状で、前記磁界発生手段の磁力によって円筒形状の外周面に現像剤を担持し、装置本体に対して回転することによって表面移動する現像スリーブと、を有し、
前記現像スリーブに対して現像電圧を印加する現像スリーブ電圧印加手段を備える現像装置において、
前記現像剤が、非ブラック現像剤であり、
前記現像スリーブ電圧印加手段は、周波数が2.0[kHz]以下の交流成分を含む現像電圧を印加し、
前記現像電圧の交流成分についてのトナーの正規帯電極性とは逆極性の成分のデューティ比が4[%]以上、20[%]以下(但し、20[%]を除く)であり、
前記現像電圧のトナーの正規帯電極性側の最大値と最小値との差が、1500[V]以下であり、
前記現像スリーブは、前記現像領域で前記潜像担持体と同じ方向に表面移動し、前記現像スリーブの表面移動速度を「Vs」とし、前記潜像担持体の表面移動速度を「Vg」としたときに、「1.3≦Vs/Vg≦1.8」の関係とし、
前記現像スリーブの表面がテトラヘデラルアモルファスカーボンでコートされていることを特徴とする現像装置。 - 少なくとも潜像担持体と、
前記潜像担持体表面を帯電させるための帯電手段と、
前記潜像担持体上に静電潜像を形成するための潜像形成手段と、
前記静電潜像を現像してトナー像化するための現像手段とを有する画像形成装置において、
前記現像手段として、請求項1に記載の現像装置を用いることを特徴とする画像形成装置。 - 請求項2に記載の画像形成装置において、
ブラックのトナーを使用するブラック用現像装置と、ブラック以外のトナーを使用する非ブラック用現像装置との複数の現像装置を備え、
前記非ブラック用現像装置として請求項1に記載の現像装置を用い、
前記ブラック用現像装置としては請求項1に記載の現像装置とは異なる構成の現像装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
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