JPH08286516A - 現像ローラ及び現像装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、現像ローラのスリーブ表面におけ
る耐摩耗性に優れ、かつゴースト現像のない高品質の画
像の得られる現像ローラ及び現像装置を提供することを
目的とする。 【構成】 本発明の現像ローラは、マグネットローラと
スリーブとを有する現像ローラにおいて、前記スリーブ
の表面にドライプレーティング法により金属、合金、金
属窒化物、金属酸化物、金属炭化物又は金属硫化物を主
材とする皮膜を形成した構造を有する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、電子写真方式の複写
機、プリンター、ファクシミリ等に用いられる現像ロー
ラ及び現像装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、複写機やレーザービームプリンタ
ー、ファクシミリ等に広く利用されている電子写真式印
刷装置には、トナーやキャリア等の現像剤の搬送等のた
めに現像ローラが用いられている。この現像ローラは磁
界発生手段としてのマグネットローラとその外周に自在
に回転し得る非磁性金属製のスリーブを有している。

【０００３】この金属製スリーブの材料としては、アル
ミニウム合金やステンレス合金が用いられている。しか
し、特にスリーブがアルミニウム合金製である場合、ア
ルミニウム合金が比較的柔らかい金属であるため、長期
間の使用していると現像装置内における現像剤、ブレー
ド又は現像剤搬送ローラとの擦れによってその表面に摩
耗が生じ、現像剤の搬送や帯電といった機能に障害が発
生したり、現像剤の種類によっては画像にゴーストと呼
ばれる画像不良が現れる場合がある（特開平２−３０６
２７４号）。また、現像剤の搬送や帯電といった機能を
向上して良質な画像を得るために、スリーブ表面に適当
な粗度の微小な凹凸を設ける場合があるが、この場合に
は長期使用による摩耗によってこの微小な凹凸の状態が
変化してしまい、良質な画像が得られなくなる等の欠点
がある。

【０００４】そこで、最近では、上記スリーブ表面の耐
摩耗性を向上させるため、アルミニウム合金又はステン
レス合金製スリーブの表面にこれらの母材と異なる材質
からなるめっき皮膜を設けることが提案されている（特
開平３−４１４８５号）。しかし、めっき法により皮膜
を形成した場合、スリーブの耐摩耗特性を向上するには
数ミクロン以上の厚みの電気めっき皮膜が必要である
が、このようなめっきを施すとめっき皮膜の厚みにばら
つきが生じるために、スリーブの寸法精度を低下させて
しまい、その結果として画像の品質を低下させる欠点が
ある。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に
鑑みなされたものであり、現像ローラのスリーブの表面
の寸法精度を低下させることなく、スリーブ表面の耐摩
耗性に優れ、かつゴースト現像のない高品質の画像が得
られる現像ローラ及び現像装置を提供することを目的と
する。

【０００６】

【課題を解決するための手段】請求項１の現像ローラ
は、マグネットローラと、その外周に自在に回転し得る
スリーブとを有する現像ローラにおいて、前記スリーブ
の表面に金属、合金、金属窒化物、金属酸化物、金属炭
化物又は金属硫化物を主材とし、かつ２０℃における固
有抵抗値が０．０１Ωｍ以下である皮膜をドライプレー
ティング法により形成したことを特徴とする。

【０００７】請求項２の現像ローラは、上記皮膜の材料
がクロム、銅−アルミニウム合金、ステンレス合金又は
窒化チタンであることを特徴とする。

【０００８】請求項３の本発明の現像ローラは、上記ド
ライプレーティング法がスパッタリング法であることを
特徴とする。

【０００９】請求項４の本発明の現像ローラは、上記ス
リーブの材料がアルミニウム合金であることを特徴とす
る。

【００１０】請求項５の本発明の現像ローラは、上記皮
膜を形成するスリーブの表面が微小な凹凸を有すること
を特徴とする。

【００１１】本発明の現像装置は、請求項１乃至５記載
のいずれか１項記載の現像ローラを用いることを特徴と
する。

【００１２】

【作用】本発明の現像ローラは、前記スリーブの表面に
金属、合金、金属窒化物、金属酸化物、金属炭化物又は
金属硫化物を主材とする皮膜を被覆したことにより、上
記皮膜の硬度が比較的高いためにスリーブ自身が摩耗す
ることなく長期間の使用においても初期の表面状態を維
持することができる。また、この皮膜の２０℃における
固有抵抗値が０．０１Ωｍ以下であることにより、現像
画質を低下させることがない。さらに、この皮膜をドラ
イプレーティング法により形成したことにより、皮膜の
厚みのばらつきを低減することができ、廃液が発生しな
いために環境衛生上も好ましい。

【００１３】

【実施例】以下、本発明について詳細に説明する。図１
は本発明の現像ローラの一実施例を示す断面図である。
ここで、１はマグネットローラ、２はスリーブ、３は皮
膜であり、皮膜３がスリーブ２の表面に形成されてい
る。なお、皮膜３の厚みとしては、０．２ミクロン以上
で３ミクロン以下が好ましく、皮膜３の厚みが０．２ミ
クロン未満であると耐摩耗特性が十分に向上されず、ま
た、その厚みが３ミクロンを超えると、皮膜の内部応力
が増大するために皮膜の剥離や割れ等が発生しやすくな
ったり、コストが高くなってしまったり、さらにはスリ
ーブ表面に微小な凹凸を形成した場合には表面状態が変
化したりする恐れもある。

【００１４】マグネットローラ１としては、特に限定さ
れず、ボンデッドマグネット、焼結磁石等の材料からな
るものが挙げられるが、特に成形性の点でボンデッドマ
グネットが好ましい。

【００１５】スリーブ２としては、特に限定されず、樹
脂又はアルミニウム合金、ステンレス 合金、銅合金等
金属等の材料からなるものが挙げられるが、特に材料コ
ストや加工性等の点でアルミニウム合金が好ましい。ま
た、スリーブ２の表面は、特に限定されないが、画像品
質を向上するために皮膜３を形成する前にブラスト処理
による微小な凹凸等を形成することができる。ブラスト
処理の方式としては、加圧式または吸引式のエアーブラ
スト法、バキュームブラスト法、ウォーターブラスト法
あるいは遠心ブラスト法のいずれでも良い。ブラスト処
理に用いる研削材としては、鋳鉄グリッド、スティール
グリッド、銅スラグ、ニッケルスラグ、溶融アルミナ、
炭化ケイ素などから選ぶことができるが、皮膜との密着
力を向上するなどの目的で、スリーブ２の表面を研磨又
は清掃するために、グラスビーズ、プラスチックビー
ズ、砂あるいはくるみの殻などを用いてもよい。ブラス
ト処理の圧力、距離、角度等は、特に制限されず、目的
とする微小な凹凸の形状や表面研磨の程度などに応じて
設定することができる。ブラスト処理とは別に、スリー
ブ２の表面と皮膜３との密着性を向上するために、皮膜
３を形成する前にスリーブ２の表面に前処理をすること
ができる。前処理方法としては、溶剤洗浄、酸・アルカ
リ洗浄、水洗浄、フレーム処理、コロナ放電処理、プラ
ズマ処理等があるが、特に処理効果の高さと廃液処理の
必要がない点で水洗浄とプラズマ処理が好適であるが、
特にドライプレーティング法による皮膜３形成の前処理
としては、プラズマ処理が処理効果が高いために好まし
い。

【００１６】皮膜３としては、金属、合金、金属窒化
物、金属酸化物、金属炭化物又は金属硫化物の少なくと
も１種を５０重量％以上含む材料からなるものが挙げら
れるが、例えば、金属としてはクロム、モリブデン、チ
タン、亜鉛等、合金としては銅−アルミニウム合金、ス
テンレス合金等、金属窒化物としては窒化チタン、金属
酸化物としては酸化錫、酸化錫−酸化インジウム複合
体、二酸化モリブテン等、金属炭化物としては炭化チタ
ン、炭化モリブテン等であるが、特にクロム、銅−アル
ミニウム合金、ステンレス合金又は窒化チタンが比較的
低コストでかつ耐摩耗性に優れた皮膜が得られるため好
ましい。また、皮膜３には絶縁性酸化物や絶縁性窒化物
等のセラミックス成分、ポリ四弗化エチレンやポリエチ
レン等の有機粒子を含んでいても良い。さらに、これら
の材料の２０℃における固有抵抗値は０．０１Ωｍ以下
であることが好ましく、０．０１Ωｍを超えると良好な
現像品質が得られない。なお、皮膜３は上記した材料を
２層以上の積層することもできる。

【００１７】次に、皮膜３を形成方法としては、均一で
高密度な薄膜が形成できるドライプレーティング法を利
用する。

【００１８】ドライプレーティング法としては、真空蒸
着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の
物理蒸着法（ＰＶＤ）と化学気相成長法（ＣＶＤ）等が
あるが、特に高沸点金属、合金、金属窒化物、金属酸化
物、金属炭化物又は金属硫化物合金からなる皮膜３を比
較的簡単に形成することができ、スリーブ２との密着性
が良く、耐摩耗性に優れた良質の膜を得ることができる
スパッタリング法又はイオンプレーティング法が好まし
く、成膜コストの点からスパッタリング法がより好まし
い。さらに、皮膜が非常に薄い場合でも膜厚のばらつき
が小さく、特に母材のスリーブ２の表面に微小な凹凸が
形成されている場合でも、皮膜３によって、実質的に微
小な凹凸がなくなってしまったり、凹凸の程度が小さく
なるといったレベリング効果は小さく、いわゆるステッ
プカバレッジ性の良い均一な厚みの皮膜３を形成するこ
とができる。また、スパッタリング法には、特に限定さ
れず通常使用されているどのような方法でも良いが、例
えば、マグネトロンスパッタリングが好適であり、直流
法と高周波法のいずれでも構わない。また、バイアスス
パッタリング法や反応性スパッタリング法等を利用する
こともできる。直流法マグネトロンスパッタリングの場
合は、金属、合金あるいは異なる金属や合金を組み合わ
せた複合型の導電性ターゲットを用いて、０．１〜１０
０Ｐａ（パスカル）のアルゴンガス雰囲気で、単位平方
センチメートル当たり１〜１５ワットの直流出力によっ
て、スリーブの表面に好適な皮膜を形成することができ
る。また、これらのドライプレーティング法では、電気
めっき法や無電解めっき法などの湿式めっき法と比較し
て、均質で密着性の良い薄い膜を作成できる上、湿式め
っきで問題となるような環境衛生上好ましくない廃液が
発生することもない。

【００１９】以下、実施例、比較例を挙げて本発明を更
に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるもの
ではない。 ［比較例１］アルミニウム合金「５０５２」を用いて、
外径３０ｍｍ、肉厚１．５ｍｍ、長さ３００ｍｍのパイ
プを５本作成し、この外側表面をアランダム＃４６を用
いて加圧式エアーブラスト処理を施した（以下、スリー
ブＡ）。これにより表面の粗度をＲｚ＝１８ミクロンに
調整した。なお表面の粗度は周方向と軸方向で各々異な
る４箇所測定した平均値とし、ミクロン以下の単位は四
捨五入した。

【００２０】［実施例１］上記比較例１で得たパイプを
純水中で超音波洗浄したのち、温風で乾燥した。これを
５０Ｐａのアルゴン雰囲気で、１３．５６ＭＨｚで単位
平方センチメートル当たりおよそ０．２Ｗの高周波出力
によるプラズマ放電に５分間接触させた。この後さら
に、直流マグネトロンスパッタリングにより、パイプ表
面上に皮膜を形成した。なお、実施例１〜４では４００
ｍｍ長、１００ｍｍ幅の大きさの平板ターゲットを用
い、プレーナー型磁気回路をもつスパッタリングガンを
使用した。パイプは中心軸をターゲット表面から５０ｍ
ｍ離して保持し、成膜中は回転させることで、周方向に
均一な成膜を得た。直流出力は０．２５〜０．２７ｋＷ
とし、膜の厚みは成膜時間の長さで調節した。また、皮
膜の固有抵抗値は平板ガラス基盤に同一条件で成膜した
後四端子法で測定した。次に、純度９９．９％の純クロ
ムをターゲットとして、１Ｐａのアルゴンガス中で厚さ
が０．４５〜０．４７ミクロンの皮膜を形成した（以
下、スリーブＢ）。表面の粗度を測定すると、Ｒｚ＝１
８ミクロンであり、固有抵抗値は０．００００１Ωｍで
あった。

【００２１】［実施例２］ターゲットとして、純度９
９．９％の純モリブデンを用い、０．５Ｐａのアルゴン
ガス中で厚さが０．２４〜０．２６ミクロンの皮膜を形
成した（以下、スリーブＣ）。表面の粗度を測定する
と、Ｒｚ＝１８ミクロンであり、固有抵抗値は０．００
００３Ωｍであった。

【００２２】［実施例３］ターゲットとして、銅を４０
重量％含む銅−アルミニウム合金を用い、４Ｐａのアル
ゴンガス雰囲気で厚さが０．８〜０．８３ミクロンの皮
膜を形成した（以下、スリーブＤ）。表面の粗度を測定
すると、Ｒｚ＝１７ミクロンであり、固有抵抗値は０．
００００１Ωｍであった。

【００２３】［実施例４］ターゲットとして、ステンレ
ス３０４を用い、０．５Ｐａのアルゴンガス中で０．９
〜０．９５ミクロンの皮膜を形成した（以下、スリーブ
Ｅ）。表面の粗度を測定すると、Ｒｚ＝１７ミクロンで
あり、固有抵抗値は０．００００１Ωｍであった。

【００２４】［比較例２］ターゲットとして、石英ガラ
ス（二酸化珪素）を用い、１Ｐａのアルゴンガス中で厚
さが０．３〜０．３２ミクロンの皮膜を形成した（以
下、スリーブＦ）。表面の粗度を測定すると、Ｒｚ＝１
８ミクロンであり、固有抵抗値は０．１Ωｍを超えてい
たために計測不可能であった。

【００２５】［現像ローラとしての評価］これらのスリ
ーブの内側に嵌合するサイズのマグネットローラと、ス
リーブ端部のキャップなどのアッセンブリー部品を組み
合わせて、５種類の現像ローラを作成した。これらの現
像ローラをレーザービームプリンターに組み入れて、
０．１ｍｍ〜３ｍｍの５種類のピッチの模様を含んだテ
ストパターンを連続して印刷させた。それぞれ印刷枚数
が５千枚、１万５千枚、４万枚になった時点で、現像ロ
ーラを取り出して、スリーブ表面の粗度を測定した。結
果を表１に示す。

【表１】

【００２６】また、随時、印刷されるテストパターンを
観察したところ、スリーブＡを使った現像ローラを用い
た場合は、印刷枚数が５千枚を越えたあたりから、印刷
されるテストパターンに乱れが観察されはじめたが、ス
リーブＢ、Ｃ、Ｄ、Ｅを使った現像ローラを用いた場合
は印刷枚数が４万枚に達して、実験を終了するまで印刷
品質に劣化が見られなかった。なお、スリーブＦを使用
した現像ローラは、最初から鮮明な印刷画像が得られな
かった。

【００２７】

【発明の効果】以上に説明したように、本発明の現像ロ
ーラは、スリーブの表面に金属、合金、金属窒化物、金
属酸化物、金属炭化物又は金属硫化物を主材とする皮膜
を被覆したことにより、スリーブ表面の耐摩耗性に優
れ、かつゴースト現像のない高品質の画像が得られる現
像ローラ及び現像装置を提供することができ、また、こ
の皮膜をドライプレーティング法により形成したことに
より、皮膜の厚みのばらつきを低減してスリーブの表面
の寸法精度を向上させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の現像ローラの一実施例を示す断面図で
ある。

【符号の説明】

１：マグネットローラ ２：スリーブ ３：皮膜

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 マグネットローラと、その外周に自在に
   回転し得るスリーブとを有する現像ローラにおいて、前
   記スリーブの表面に金属、合金、金属窒化物、金属酸化
   物、金属炭化物又は金属硫化物を主材とし、かつ２０℃
   における固有抵抗値が０．０１Ωｍ以下である皮膜をド
   ライプレーティング法により形成したことを特徴とする
   現像ローラ。
2. 【請求項２】 上記皮膜の材料がクロム、銅−アルミニ
   ウム合金、ステンレス合金又は窒化チタンであることを
   特徴とする請求項１記載の現像ローラ。
3. 【請求項３】 上記ドライプレーティング法がスパッタ
   リング法であることを特徴とする請求項１又は請求項２
   記載の現像ローラ。
4. 【請求項４】 上記スリーブの材料がアルミニウム合金
   であることを特徴とする請求項１乃至３いずれか１項記
   載の現像ローラ。
5. 【請求項５】 上記皮膜を形成するスリーブの表面が微
   小な凹凸を有することを特徴とする請求項１乃至４いず
   れか１項記載の現像ローラ。
6. 【請求項６】 請求項１乃至５いずれか１項記載の現像
   ローラを用いることを特徴とする現像装置。