JP6631352B2 - 反応物、導電性組成物、および、表面処理銅粉の製造方法 - Google Patents

反応物、導電性組成物、および、表面処理銅粉の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、導電性および信頼性に優れた導電性材料に関する。
プリンテッド・エレクトロニクス分野において、金属粉を分散した導電性組成物は、そ
の塗加工性と導電性を活かした印刷回路の形成や電磁波シールド等の用途に使用されてい
る。このような導電性組成物は、通常、加熱プロセスを経て、膜の硬化収縮や有機物の揮
散による金属粉の接触、さらには金属粉同士の融着が起こって導電性を発現すると考えら
れる。
従来、導電性組成物に使用される金属粉としては、大気中での安定性と導電性に優れた
銀粉が使用されてきた。しかし、銀粉の使用には、貴金属であるため高価であること、市
場価格の変動が大きいこと、高温高湿下の通電時のマイグレーションに起因するショート
等が問題となっている。
これらの銀粉の課題を克服するに際し、安価でありながら、銀とほぼ同等の導電性が期
待される銅粉を使用した導電性組成物にも大きな期待が寄せられている。しかしながら、
本質的に銅は銀に比較して酸素と湿度によって酸化されやすく、導電性が大きく劣る酸化
銅に容易に変化してしまう問題を抱えている。特に、湿度が銅粉の劣化を促進する最大の
要因と推察される。
このような銅粉の酸化は、銅粉状態での保管、銅粉を含む組成物の調製、組成物の塗工
、塗工物の乾燥・焼成、さらには、最終製品の大気下での長期使用といった、あらゆる工
程で進行するため、銅本来の導電性を初期に発現し、さらに、その導電性を長期間維持し
て製品の信頼性を確保することは非常に難しい。
このような銅粉の酸化を防止するための検討としては、銅粉の表面を防錆剤やカップリ
ング剤で処理し、結果として銅の表面を被覆したり、改質したりする方法が提案されてい
る。
例えば、銅粉の表面を防錆剤で被覆する方法としては、ベンゾトリアゾールに代表され
る防錆被膜を施した銅粉が開示されている(特許文献1)。また、銅粉の表面をカップリ
ング剤で処理する方法としては、有機チタネートで被覆して親油化する方法や、アミノ基
を有するカップリング剤の水溶液で処理する方法が開示されている(特許文献2、3)。
さらに、上記の防錆剤とカップリング剤を併用した銅や銅粉の処理方法や使用方法も開
示されている。このような方法としては、表面をチタネートカップリング剤で処理した金
属をベンゾトリアゾール剤添加の水中で使用する方法が開示されている(特許文献4)。
また、アゾールシラン化合物とベンゾトリアゾールとを含有する銅の表面処理剤も開示さ
れている(特許文献5)。
しかし、ベンゾトリアゾールに代表される公知の防錆剤で単純に銅粉を被覆する方法で
は、銅の酸化されやすさを克服するには効果が不足しているため、酸化が確実に進行し、
銅粉、あるいは、銅粉を使用した組成物の導電性は直ぐに著しく低下してしまう。
また、銅粉表面を有機チタネートで処理する方法は、銅粉表面を親油性にする効果があ
り、劣化要因の1つである湿度から銅粉をある程度、隔離することができるため、有望な
方法である。しかし、この方法によっても、長期に渡って酸化を抑止して、銅粉を十分な
信頼性を有する導電材料として使用することは困難で、銅粉の表面をさらに親油性にする
ための方法が必要であった。
一方、アミノ基を有するカップリング剤の水溶液で銅粉を処理する方法は、銅粉を被覆
する効果はあるものの、親水性の処理材であるため、銅粉の表面を親油性に改質する効果
がなく、劣化要因である湿度から銅粉を保護する効果は乏しかった。
表面をチタネートカップリング剤で処理した金属をベンゾトリアゾール剤添加の水中で
使用する方法は、導電性組成物に使用するための銅粉にそのまま展開することが難しいだ
けでなく、銅の酸化を抑止する方法としても不十分あった。
アゾールシラン化合物とベンゾトリアゾールとを含有する銅の表面処理剤は、銅粉の変
色防止の効果は認められるものの、銅粉を信頼性のある導電性材料として使用するには、
酸化防止の効果が不十分であった。特に、湿度に対する酸化防止効果は乏しかった。これ
は、特許文献5に開示された範囲の材料では、銅粉表面の被覆と親油化が不十分なためと
考えられる。
特開平4−308605号公報 特開昭59−174661号公報 特開2015−36442号公報 特開昭62−20883号公報 国際公開第2011/043236号パンフレット
本発明は、保存、塗工、乾燥、焼成といった導電性組成物が取り扱われる各プロセスに
おける酸素や湿度による酸化銅の生成が効果的に抑止され、初期の導電性に優れるだけで
なく、長期に渡って優れた導電性を維持することが可能な表面処理銅粉、および、その製
造方法を提供することを目的とする。さらに、この銅粉を使用した導電性組成物を提供す
ることをも目的とする。
本発明者らは、上記の諸問題点を考慮し解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至
った。すなわち本発明は、一般式(1)で示される化合物(A)で被覆された銅粉と、分
子中に少なくとも1つの炭素数8以上のアルキル基を有するチタネート系カップリング剤
(B)との反応物に関する。
一般式(1)
(式中、R1ないしR4は水素原子またはカルボキシル基を表す。ただし、R1ないしR
4の少なくとも1つはカルボキシル基である。)
さらに本発明は、分子中に少なくとも1つの炭素数8以上のアルキル基を有するチタネ
ート系カップリング剤(B)が下記一般式(2)で表される、上記反応物に関する。
一般式(2)
(式中、nおよびmは、それぞれ独立に、自然数を表し、n+m=4または6である。
R11は、n=1のときは炭素数1から8のアルコキシ基を表し、nが2以上の場合には
炭素数1から8のアルコキシ基を表すか、あるいは、R11が2つで下記一般式(3)で
表される基または下記一般式(4)で表される基となる。
R12は下記一般式(5)ないし下記一般式(9)から選ばれる置換基を表す。)
一般式(3)
(式中、R13は炭素数2から16のアルキレン基を表す。)。
一般式(4)
(式中、R14は炭素数1から15のアルキレン基を表す。)
一般式(5)
(式中、R21は炭素数8から30のアルキル基を表す。)
一般式(6)
(式中、R31およびR32は、それぞれ独立に、炭素数8から30のアルキル基を表す
。)
一般式(7)
(式中、R41およびR42は、それぞれ独立に、炭素数8から30のアルキル基を表す
。)
一般式(8)
(式中、R51およびR52は、それぞれ独立に、炭素数8から30のアルキル基を表す
。)
一般式(9)
(式中、R61は炭素数8から30のアルキル基を表す。)
さらに本発明は、一般式(2)中の置換基R12が、一般式(8)である、上記反応物
に関する。
さらに本発明は、上記反応物と、熱硬化性樹脂(C)とを含む、導電性組成物に関する
さらに本発明は、銅粉(D)を、下記一般式(1)で示される化合物(A)を含有する
溶液で処理した後、さらに、分子中に少なくとも1つの炭素数8以上のアルキル基を有す
るチタネート系カップリング剤(B)で処理する、表面処理銅粉の製造方法に関する。
一般式(1)
(式中、R1ないしR4は水素原子またはカルボキシル基を表す。ただし、R1ないしR
4の少なくとも1つはカルボキシル基である。)
本発明は、銅粉の表面を容易に被覆ができ、かつ、チタネート系カップリング剤との反
応点となるカルボキシル基を銅粉表面に富化することが可能な化合物(A)で被覆された
銅粉と、親油性を付与するための炭素数8以上のアルキル基を有するチタネート系カップ
リング剤(B)を反応させることにより、銅粉の表面に著しく親油化された被膜を形成す
ることが可能である。この被膜は、銅粉表面に存在しても抵抗成分になり難いだけでなく
、酸化の要因となる酸素や湿度から銅粉を十分に隔離することが可能である。その結果、
初期導電性に優れるだけでなく、長期に渡って優れた導電性を維持することが可能な銅粉
、さらには、それを用いた導電性組成物を得ることが可能となる。
導電性組成物を膜状にしての導電性を評価するための評価サンプルである。 上記評価サンプルの導電性を評価する際の接続点である。
本発明は、一般式(1)で示される化合物(A)で被覆された銅粉と、分子中に少なく
とも1つの炭素数8以上のアルキル基を有するチタネート系カップリング剤(B)との反
応物である。
一般式(1)
(式中、R1ないしR4は水素原子またはカルボキシル基を表す。ただし、R1ないしR
4の少なくとも1つはカルボキシル基である。)
背景技術の項で述べたが、カップリング剤によって銅粉の表面を親油化し、銅粉が酸化
される最大の要因である湿度から隔離する方法は、銅粉の導電性を維持する方法としては
有望な手法と考えられる。しかし、銅粉とカップリング剤との反応による表面改質を詳細
に考えた場合、下記の問題点が存在している。
銅は容易に酸化されるので、通常、銅粉の表面には酸化銅(CuO、Cu2O)の被膜
が存在すると考えられる。一方、カップリング剤による粒子の表面処理を考えた場合、そ
の反応点は、粒子表面に存在するヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基といった求
核性を有する置換基と考えられる。
一般的な銅粉をカップリング剤で処理することを考えた場合、表面に存在する金属銅自
体や酸化銅被膜はその反応点にはなり難く、酸化銅に混じって銅粉の表面に存在するヒド
ロキシル基(例えば、Cu−OHの状態)がその反応点になっていると考えられる。酸化
銅被膜に混じって存在するヒドロキシル基は、偶発的に生成するものであり、その量を制
御することも難しく、カップリング剤で改質するのに十分な量が確実には存在していない
本発明は、表面が予め、一般式(1)で示される化合物(A)で被覆された銅粉を用い
る。化合物(A)は、分子中にベンゾトリアゾール骨格と、少なくとも1つのカルボキシ
ル基を有している。ベンゾトリアゾール骨格は、古くから知られる公知の防錆剤の1つで
あり、銅粉の表面に容易に吸着して被膜を形成する特徴を有している。また、その被膜の
形態は、銅あるいは銅イオンとベンゾトリアゾール骨格の2次元のネットワークとも考え
られている。
実施例の項で詳細に述べるが、化合物(A)も銅粉に著しく容易に吸着して、被膜を形
成することがわかっている。化合物(A)は分子中にカルボン酸をも併せ持つため、化合
物(A)で被覆された銅粉には、その表面に著しく多数のカルボキシル基を意図的に存在
させることができる。
この著しく多数のカルボキシル基は、先に述べたように、カップリング剤との反応点に
なりうる。従って、一般式(1)で示される化合物(A)で被覆した銅粉と、チタネート
系カップリング剤(B)との反応物は、単なる銅粉とのカップリング剤の反応物に比較し
て、カップリング剤による銅粉表面の改質の度合いが著しく大きくなる。
ここで、チタネート系カップリング剤(B)として、親油性を付与しうる少なくとも1
つの炭素数8以上のアルキル基を有するチタネート系カップリング剤を選ぶことで、銅粉
の表面を著しく疎水化することができる。その結果、最大の酸化要因である湿度と銅粉が
直接接し難くなり、銅粉の劣化が抑止され、長期に渡って高い導電性を維持することが可
能となっている。
本発明は、一般式(1)で示される化合物(A)で被覆された銅粉と、分子中に少なく
とも1つの炭素数8以上のアルキル基を有するチタネート系カップリング剤(B)との反
応物であり、得られる銅粉の表面には劣化を抑止するための被膜が存在しているが、この
被膜は銅粉の導電性を著しく阻害するものではなく、初期の導電性にも優れている。現在
、この理由は明らかではないが、化合物(A)と銅あるいは銅イオンで形成されると考え
られる2次元ネットワークが通常の有機物よりも導電性に優れるためと考えられる。また
、本発明の反応物である銅粉は抵抗成分となる酸化被膜が生成し難いため、結果として、
初期導電性に優れる材料でもある。
本願の出願に際し、本来であれは、本発明の反応物、すなわち、表面処理された銅粉の
表面における被膜の化学構造と詳細な組成を特定すべきである。しかしながら、カップリ
ング剤との反応で得られた被膜は必ずしも単一の化学構造ではないこと、さらに、銅粉表
面の極薄膜における詳細な組成解析が必要であること、この2点が本発明物の特定を困難
としている。
銅粉表面の詳細な組成解析には、X線光電子分光装置を駆使した分析を多数のサンプル
に対して実施する必要があり、該装置を保有しない我々にとっては、依頼分析に要する時
間的および経済的な負担が著しく大きいため、現在のところ実施できていない。
しかしながら、先に述べた思想に基づき、確実かつ高度に劣化が抑止された反応物、す
わち、表面処理銅粉を確実に製造できており、さらには、それを得るための最適な製造方
法の特定には至っているので、反応物として本発明を出願するものである。
化合物(A)について詳細に説明する。
本発明で用いる化合物(A)は、一般式(1)で示され、ベンゾトリアゾール骨格中の
ベンゼン環上に、少なくとも1つのカルボキシル基を有していることを特徴とする。先に
述べたが、ベンゾトリアゾール骨格は銅粉表面への吸着部位となって銅粉表面への被膜を
形成する役割を担い、カルボキシル基は銅粉表面でチタネート系カップリング剤(B)と
の反応点を形成する役割を担う。従って、一般式(1)で示したように、分子中にベンゾ
トリアゾール骨格および少なくとも1つのカルボキシル基を有する材料であれば、いずれ
も、同様の効果が期待できる。
一般式(1)中のR1ないしR4について説明する。
R1ないしR4は水素原子またはカルボキシル基を表し、R1ないしR4の少なくとも
1つはカルボキシル基を表す。
一般式(1)で示される化合物の具体例としては、4−カルボキシベンゾトリアゾール
、5−カルボキシベンゾトリアゾール、6−カルボキシベンゾトリアゾール、7−カルボ
キシベンゾトリアゾール、5,6−ジカルボキシベンゾトリアゾール等を挙げることがで
きる。これらは公知の化合物であり、東京化成工業株式会社やシグマアルドリッチジャパ
ン株式会社等から試薬として入手可能である。
上記、カルボキシ基を有するベンゾトリアゾールの中で、溶解度が高く、銅粉を処理す
るための溶液が調製しやすい点で、R1ないしR4のうちの1つだけがカルボキシル基で
あることが好ましい。
本発明において、銅粉は、1種または2種以上の化合物(A)で被覆されていてもよい
銅粉を化合物(A)で被覆する際には、化合物(A)の結晶または粉体を、後述する溶
剤に溶解し、銅粉を浸して処理する。ここで用いる化合物(A)の結晶または粉体は、2
種以上の化合物(A)の混合物の結晶であっても良い。さらに、結晶中に水和水を有して
いてもよい。このような材料の例としては、城北化学工業株式会社製のベンゾトリアゾー
ル系化合物CBT−1が挙げられる。この材料は、2種の1置換のカルボキシベンゾトリ
アゾールの混合物の水和物の結晶であるが、本発明で用いる化合物(A)として、特に好
適に用いることが可能である。
次に、分子中に少なくとも1つの炭素数8以上のアルキル基を有するチタネート系カッ
プリング剤(B)について説明する。
本発明におけるチタネート系カップリング剤とは、中心元素であるTiに、アルコキシ
基に代表される加水分解性の置換基、および、有機酸の残基の両方が結合した、反応性の
表面改質剤を意味する。粒子の表面に存在する求核性の置換基と容易に反応し、結果とし
て、加水分解性の置換基が脱離し、Tiに結合した状態で残存する有機酸の残基によって
粒子表面の親油性や分散性を変化させること可能な材料である。
本発明において、チタネート系カップリング剤(B)は、化合物(A)で被覆した銅粉
の表面に存在するカルボキシル基の一部または全部と反応し、銅粉表面に著しい親油性を
付与する目的で用いる。従って、チタネート系カップリング剤の分子中に、銅粉表面の十
分に親油化する疎水基として、少なくとも1つ炭素数8以上のアルキル基が必須となって
いる。チタネート系カップリング剤の分子中に、炭素数7以下のアルキル基しか存在しな
ければ、銅粉表面を十分に親油化することができず、湿度によって銅粉の酸化が進行して
しまう。
本発明で使用する分子中に少なくとも1つの炭素数8以上のアルキル基を有するチタネ
ート系カップリング剤(B)は、一般式(2)で示されることが望ましい。
一般式(2)
(式中、nおよびmは、それぞれ独立に、自然数を表し、n+m=4または6である。
R11は、n=1のときは炭素数1から8のアルコキシ基を表し、nが2以上の場合には
炭素数1から8のアルコキシ基を表すか、あるいは、R11が2つで下記一般式(3)で
表される基または下記一般式(4)で表される基となる。
R12は下記一般式(5)ないし下記一般式(9)から選ばれる置換基を表す。)
一般式(3)
(式中、R13は炭素数2から16のアルキレン基を表す。)。
一般式(4)
(式中、R14は炭素数1から15のアルキレン基を表す。)
一般式(5)
(式中、R21は炭素数8から30のアルキル基を表す。)
一般式(6)
(式中、R31およびR32は、それぞれ独立に、炭素数8から30のアルキル基を表す
。)
一般式(7)
(式中、R41およびR42は、それぞれ独立に、炭素数8から30のアルキル基を表す
。)
一般式(8)
(式中、R51およびR52は、それぞれ独立に、炭素数8から30のアルキル基を表す
。)
一般式(9)
(式中、R61は炭素数8から30のアルキル基を表す。)
一般式(2)について詳細に説明する。
一般式(2)におけるnおよびmについて説明する。
nおよびmは、それぞれ独立に、自然数を表し、一般式(2)中、nはR11の置換基
数、mはR12の置換基数を表す。nとmの和は、チタン原子が形成可能な結合の数であ
って、4または6である。
一般式(2)中のR11は、化合物(A)で被覆された銅粉の表面に存在するカルボン
酸と反応して脱離しうる一方、R12は比較的安定な置換基としてTiに結合している。
従って、化合物(A)で被覆された銅粉と一般式(2)で示されるチタネート系カップリ
ング剤の反応の結果、銅粉の表面にCOO−Ti結合を介して多数のR12が親油基とし
て結合した反応物、すなわち、表面処理銅粉が得られる。この機構から、R11は本発明
の反応物、すなわち、表面処理銅粉の物性に与える影響は比較的小さく、入手の容易さや
製造コスト等の観点で適宜選択すればよいと考えられる。
一般式(2)における置換基について説明する。
R11は、炭素数1から8のアルコキシ基を表す。ここでいうアルコキシ基としては、
炭素数1から8の直鎖状、分岐鎖状、単環状アルキルオキシ基が挙げられる。具体的には
、例えば、メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペン
チルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、イソプロピル
オキシ基、イソブチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、te
rt−ブチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、te
rt−オクチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチ
ルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる
一般式(3)について説明する。
一般式(3)におけるR13は炭素数2から16のアルキレン基を表す。ここでいうア
ルキレン基とは、炭素数2から16の直鎖状、分岐鎖状、環状アルキレン基が挙げられる
。具体的には、例えば、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレ
ン基、n−へキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基、n−ノニレン基、n−
デシレン基、n−ドデシレン基、n−ヘキサデシレン基、イソプロピレン基、イソブチレ
ン基、イソペンチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、ビシクロ[2.2
.1]ヘプタン−2,6−ジイル基等を挙げることができるが、これらに限定されるもの
ではない。
一般式(4)について説明する。
一般式(4)におけるR14は炭素数1から15のアルキレン基を表す。ここでいうア
ルキレン基とは、炭素数が1から15の直鎖状、分岐鎖状、環状アルキレン基が挙げられ
る。具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基
、n−ペンチレン基、n−へキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基、n−ノ
ニレン基、n−デシレン基、n−ドデシレン基、n−ペンタデシレン基、イソプロピレン
基、イソブチレン基、イソペンチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、ビ
シクロ[2.2.1]ヘプタン−2,6−ジイル基等を挙げることができるが、これらに
限定されるものではない。
一般式(2)中のR12について説明する。
R12は、有機酸の残基であって、一般式(5)ないし一般式(9)から選ばれる置換
基を表す。
一般式(5)におけるR21、一般式(6)におけるR31およびR32、一般式(7
)におけるR41およびR42、一般紙(8)におけるR51およびR52、一般式(9
)におけるR61は、それぞれ独立に、炭素数8から30のアルキル基を表す。ここでい
うアルキル基とは、炭素数8から30の直鎖状、分岐鎖状、環状アルキル基が挙げられる
。具体的には、例えば、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基
、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、ドコシル基、ヘキサコシル基、トリ
アコンチル基、イソオクチル基、イソヘプタデシル基、tert−オクチル基、アダマン
チル基、ノルボルニル基、および、4−デシルシクロヘキシル基等が挙げられるが、これ
らに限定されるものではない。
これらのアルキル基の中で、一般式(5)におけるR21、一般式(6)におけるR3
1およびR32、一般式(7)におけるR41およびR42、一般紙(8)におけるR5
1およびR52、一般式(9)におけるR61は、銅粉を処理するための溶液を調製する
際の相溶性の面、および、工業的に容易に入手可能な面で、炭素数8から18であること
が特に好ましい。
これらのチタネート系カップリング剤(B)のうちで、R12が一般式(8)で表され
る材料である場合、本発明で得られる反応物、すなわち、表面処理銅粉に、特に優れた耐
酸化性を付与することができるため最も好ましい。
現在、この理由は完全には明らかではないが、一般式(8)中のリン原子に結合するO
H基が、銅粉、あるいは、その表面に形成された化合物(A)による被膜と強く相互作用
することで、より強固な疎水性被膜を形成するためと推察している。
一般式(2)で表される、少なくとも1つの炭素数8以上のアルキル基を有するチタネ
ート系カップリング剤(B)の具体例としては、
イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリステアロイルチタネー
ト、イソプロピルトリカプロイルチタネート、イソプロピルトリラウロイルチタネート、
イソプロピルトリパルミトイルチタネート、ジイソプロピルジイソステアロイルチタネー
ト、ジイソプロピルジラウロイルチタネート、ジイソプロピルジパルミトイルチタネート
、オクタン酸トリイソプロポキシチタン、
テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルビス
(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルビス(ジステアリルホスフ
ァイト)チタネート、テトライソプロピルビス(ジラウリルホスファイト)チタネート、
イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリス
(ジラウリルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリス(ジミリスチルパイ
ロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリス(ジステアリルパイロホスフェート)
チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス
(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ジイソプロピルビス(ジオクチ
ルパイロホスフェート)チタネート、ジイソプロピルビス(ジステアリルパイロホスフェ
ート)チタネート、オクチルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、ジオ
クチルビス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、
ビス(ジオクチルホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチル
ホスフェート)チタネート、イソプロピルトリス(ジステアリルホスフェート)チタネー
ト、ブチルトリス(ジオクチルホスフェート)チタネート、トリス(ジオクチルリン酸)
オクチルオキシチタン、
イソプロピルトリス(ドデシルベンゼンスルフォニル)チタネート、ジイソプロピルビス
(ドデシルベンゼンスルフォニル)チタネート等を挙げることができる。
上記に例示したチタネート系カップリング剤は、味の素ファインテクノ株式会社製の製
品名「プレンアクト」(登録商標)シリーズ等として入手可能であり、型番としては、プ
レンアクトTTS、プレンアクト46B、プレンアクト41B、プレンアクト38S、プ
レンアクト138S、プレンアクト238S、プレンアクト338X、プレンアクト9S
A等を挙げることができる。
次に、本発明の表面処理銅粉の製造方法について詳細に説明する。
本発明の表面処理銅粉の製造方法は、銅粉(D)を化合物(A)を含有する溶液で処理
して被覆する工程(工程1)と、第一の工程で得られる化合物(A)で被覆された銅粉を
分子中に少なくとも1つの炭素数8以上のアルキル基を有するチタネート系カップリング
剤(B)で処理して反応物を得る工程(工程2)の2つの工程を含む。
工程1について詳細に説明する。
銅粉(D)を化合物(A)を含有する溶液で処理する工程における「処理」とは、銅粉
(D)と化合物(A)を含有する溶液とを混合し、スラリー状態を経ることを意味する。
このスラリー中では、静置したままでも化合物(A)による銅粉(D)の被覆が進行する
し、より均一に被覆を進行させたい場合は、必要に応じて、このスラリーを撹拌したり振
り混ぜたりしてもよい。このような撹拌や振り混ぜには、公知のいかなる撹拌方法、混合
方法、分散方法をも使用することができる。また、この撹拌、混合、分散に伴って、銅粉
(D)が化合物に(A)に被覆されると同時に、変形を伴っていてもよい。
銅粉(D)について説明する。
本発明における導電性材料の優れた初期導電性と酸化耐性は、最終的に銅粉の表面に形
成される、化合物(A)とチタネート系カップリング剤(B)の反応物からなる被膜に起
因するものであるから、銅粉(D)の形状と粒径は特に限定されず、導電ペーストや電磁
波シールドシート等の所望の用途に対応した導電性を得ることができれば、いかなる形状
の銅粉を用いることが可能である。
銅粉(D)の形状の具体例としては、例えば、球状、フレーク状、葉状、樹枝状、プレ
ート状、針状、ブドウ状が好ましい。この中でも、銅粉同士の接触が良好で高い導電性が
得られる樹枝状、葉状、またはフレーク状がより好ましい。また、銅粉(D)は、異なる
粒径や形状の2種類以上の銅粉を混合したものであってもよい。このような銅粉は、金属
粉体を取り扱うメーカーから、容易に入手可能である。さらに、上記した形状の銅粉に物
理的な力を加えて、さらに形状を変形する加工をしていてもよい。
市販銅粉はその表面に既に酸化銅被膜や、保管のための防錆剤が存在することもあるが
、本発明においては、市販銅粉をそのまま、銅粉(D)として使用してもよいし、上記の
酸化銅被膜や防錆剤を除去した後に銅粉(D)として使用してもよい。
銅の表面から酸化銅被膜や防錆剤を除去する方法は公知のいかなる方法を使用してもよ
い。そのような方法の1例としては、ギ酸、酢酸、脂肪酸等の有機酸や、硫酸、塩酸等の
無機酸を使用した銅粉の酸洗浄があげられる。洗浄後は酸が残存しないように水や有機溶
剤によるリンスを施し、乾燥して用いてもよい。予め酸洗浄した銅粉を銅粉(D)として
使用すると、初期導電性が改善すると同時に、化合物(A)で被覆された銅粉が得やすく
なるため、特に好ましい。
銅粉(D)の具体的な粒径としては、平均粒子径0.5〜100μmが好ましく、1〜
50μmがより好ましい。この範囲にあれば、熱硬化性樹脂(C)をも含む導電性組成物
として用いる場合においても、後述の塗工や印刷適正が良好であるため好ましい。ここで
いう平均粒径とは、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置LS13320( ベックマ
ン・コールター社製)を使用し、トルネードドライパウダーサンプルモジュールにて、銅
粉を測定して得たD50平均粒子径であり、粒子の積算値が50%である粒度の直径の平
均粒子径である。なお、この測定は、粒子の屈折率を1.6に設定した実施した。
化合物(A)を含有する溶液について説明する。
化合物(A)を含有する溶液は、化合物(A)を含む結晶や粉体を溶剤に溶解すること
で得られる。先にも述べたが、ここで用いる化合物(A)を含む結晶または粉体は、2種
以上の化合物(A)の混合物の結晶であっても良いし、結晶中に水和水を有していてもよ
い。このような材料の例としては、城北化学工業株式会社製のベンゾトリアゾール系化合
物CBT−1が挙げられる。この材料は、2種の1置換のカルボキシベンゾトリアゾール
の混合物の水和物の結晶であるが、本発明で用いる化合物(A)として、特に好適に用い
ることが可能である。
化合物(A)は、分子状態で積極的に銅粉の表面に吸着して被膜を形成する材料である
から、その溶液を調製する際に使用する溶剤は、化合物(A)が均一に溶解し、液状をな
すものであれば、いかなる溶剤を使用してもよい。ただし、化合物(A)はカルボキシル
基を有するため極性が比較的高く、誘電率が高い溶剤が特に好適に用いることが可能であ
る。このような溶剤の例としては、水、アルコール系溶剤、エステル系、ケトン系溶剤、
ニトリル系溶剤、アミド系溶剤等を挙げることができる。さらに具体的には、アルコール
系溶剤としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノ
ール等、エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢
酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、および炭酸ジメチル等、
ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイ
ソブチルケトン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキ
サノン等、ニトリル系溶剤としてはアセトニトリル、プロピオニトリル、3−メトキシプ
ロピオニトリル等、アミド系溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル
ピロリジノン等をあげることができるが、これらに限定されるものではない。さらに、こ
れらは、2種以上を混合して使用してもよい。
後述するが、工程1と工程2をワンポットで実施して簡便に表面処理銅粉を製造する場
合、工程2で使用するチタネート系カップリング剤(B)が加水分解性を有するため、水
以外の溶剤を選択することが好ましい。
化合物(A)を含む溶液中における化合物(A)の量は特に限定されないが、処理する
銅粉(D)100重量部に対して、0.001重量部以上、2重量部以下を溶剤に溶解し
て使用することが好ましく、0.01重量部以上、1重量部以下であることが最も好まし
い。化合物(A)がこの範囲より少なければ、化合物(A)によって銅粉(D)が十分に
被覆できないため、表面処理銅粉の耐酸化性が低下する。化合物(A)がこの範囲を超え
ると、銅粉表面に存在する被膜が厚すぎるため、初期導電性が低下することがある。
この工程において、使用する化合物(A)は、その全量で銅粉に被膜を形成してもよい
し、その一部で被膜を形成してもよい。本発明において、化合物(A)は銅粉表面にチタ
ネート系カップリング剤(B)との反応点を富化することが目的で使用するものであるか
ら、必ずしも添加した全量を被膜の形成に使用する必要はない。すなわち銅粉に吸着され
ずに、溶液中に残存する化合物(A)があっても、発明の実施にはなんら問題はない。
なお、実施例の項で詳細に述べるが、上記記載の範囲の量で使用した化合物(A)は、
100重量部の銅粉に対して、使用した化合物(A)の全量から約50%が銅粉(D)の
表面に吸着し、被膜を形成することを確認している。この吸着率であれば、本発明を実施
するに十分な化合物(A)の被膜が銅粉表面に形成していると考えられる。
銅粉(D)を処理するための化合物(A)を含む溶液における、化合物(A)の濃度は
特に限定されないが、銅粉100重量部を処理する場合、溶剤を50重量部以上、200
0重量部以下の範囲で使用して、化合物(A)の溶液を調製することが好ましい。この範
囲より溶剤の量が少なければ、銅粉(D)を十分に浸して処理することが困難であるし、
この範囲より溶剤の量が多ければ、得られる銅粉に比して大きな容器や設備が必要となり
、製造の効率が低下してしまう。
銅粉(D)を化合物(A)を含有する溶液で処理する際の温度は特に限定されず、先に
述べた溶剤が液状をなす、沸点以下かつ融点以上の温度であればよい。ただし、温度が高
温すぎると、処理中に銅粉(D)の酸化が進行する可能性があるため、90℃以下で実施
することが好ましい。また、特に加熱や冷却をしなくとも、銅粉(D)を化合物(A)で
被覆する現象は進行するので、通常の室温付近で実施することが最も経済的で簡便である
銅粉(D)を化合物(A)を含有する溶液で処理する際の処理時間も特に限定されない
。多くの場合、30分から120分程度で化合物(A)による銅粉(D)の被覆は十分に
進行する。
銅粉(D)を化合物(A)を含有する溶液で処理する際の雰囲気は、大気中であっても
よいし、窒素やアルゴンといった不活性ガス雰囲気でもよい。また、水素やギ酸銅等の還
元性のガスを含んだ雰囲気であってもよい。
銅粉(D)を化合物(A)を含有する溶液で処理した後には、化合物(A)で被覆され
た銅粉が溶剤中に分散したスラリーが得られる。ここで得られたスラリーのまま、次の工
程2に進んでもよいし、ここで、化合物(A)で被覆された銅粉を粉体として単離した後
に工程2に進んでもよい。スラリーをそのまま、工程2に用いると、本発明の製造方法を
最も簡便に実施することが可能であるため、より好ましい。
工程1の終了後に得られるスラリーから、化合物(A)で被覆された銅粉を単離する方
法は特に限定されない。例えば、ろ紙、ろ布、グラスフィルターを介したろ過や、遠心分
離、デンカテーション等の方法が挙げられる。これらの方法で単離された銅粉は、必要に
応じて、有機溶剤や水で洗浄してもよく、さらに、乾燥した後に、工程2で使用してもよ
い。乾燥方法としては、減圧乾燥、熱風乾燥といった公知のいかなる乾燥方法も使用する
ことができる。
工程2について詳細に説明する。
化合物(A)で被覆された銅粉を、分子中に少なくとも1つの炭素数8以上のアルキル
基を有するチタネート系カップリング剤(B)で処理して反応物を得る工程における、「
処理」とは、化合物(A)で被覆された銅粉を、乾式または湿式で、分子中に少なくとも
1つの炭素数8以上のアルキル基を有するチタネート系カップリング剤(B)と混合する
ことを意味する。チタネート系カップリング剤(B)は反応性に富んでいるので、化合物
(A)で被覆された銅粉の表面に存在するカルボキシル基と速やかに反応する。この混合
により、本発明の反応物、すなわち、表面処理銅粉が完成する。
湿式による工程2は、具体的には、化合物(A)で被覆された銅粉と溶剤とからなるス
ラリーに、分子中に少なくとも1つの炭素数8以上のアルキル基を有するチタネート系カ
ップリング剤(B)を添加する方法である。
ここで、化合物(A)で被覆された銅粉と溶剤とからなるスラリーとは、工程1におけ
る銅粉(D)を化合物(A)を含む溶液で処理した後のスラリーを、ろ過や洗浄等をしな
いで、そのまま、工程2に使用してもよいし、
工程1の終了後のスラリーから銅粉を単離し、必要に応じて、洗浄や乾燥を施した後で
、改めて、溶剤と混合して調製したスラリーであってもよい。
工程2を湿式で実施する際の溶剤について説明する。
工程1の終了後に一度、化合物(A)で被覆された銅粉を単離し、あらたに、工程2で
使用する銅粉のスラリーを調製する際に使用する溶剤は、カップリング剤(B)が溶解し
、かつ、カップリング剤(B)と反応して反応性を喪失させなければ、特に限定されない
。このような溶剤としては、炭化水素系、芳香族系、エステル系、ケトン系、アルコール
系、アミド系、ニトリル系等を挙げることができる。具体的には、ヘキサン、オクタン、
シクロヘキサン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプ
ロパノール、n−ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチ
ルエーテルアセテート、アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、
プロピオニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル
ピロリジノン等をあげることができるが、これらに限定されるものではない。さらに、こ
れらは、2種以上を混合して使用してもよい。
工程1で得られたスラリーをそのまま、工程2で使用する際は、溶剤は、工程1で使用
した溶剤と同一となるが、なんら問題はない。さらに、工程1で得られたスラリーに、先
に述べた溶剤を添加して用いることも可能である。
化合物(A)で被覆された銅粉と溶剤からなるスラリーに、分子中に少なくとも1つの
炭素数8以上のアルキル基を有するチタネート系カップリング剤(B)を添加する際は、
カップリング剤(B)をそのまま添加してもよいし、必要に応じて、溶剤で希釈した溶液
の状態で添加してもよい。この際に用いる溶剤としては、先に、工程2で使用する溶剤の
項での列挙した溶剤と同様の溶剤を使用することが可能である。
湿式による工程2で使用する、分子中に少なくとも1つの炭素数8以上のアルキル基を
有するチタネート系カップリング剤(B)は、化合物(A)で被覆された銅粉中に含まれ
る銅粉(D)100重量部に対して、0.005重量部以上、10重量部以下の範囲で使
用することが好ましく、さらに、0.05重量部以上、5重量部以下の範囲で使用するこ
とが最も好ましい。チタネート系カップリング剤は、銅粉表面に存在する化合物(A)中
のカルボン酸を起点に、銅粉表面を十分に親油化する目的で用いるものであるから、この
範囲より少なければ、銅粉の耐酸化性が十分に改善し難い。また、この範囲を超過した場
合、銅粉に混じって未反応のチタネート系カップリング剤が大量に残存する場合があり、
本発明の導電性組成物を作成した場合に悪影響を発現する可能性があるため、好ましくな
い。
湿式による工程2において、処理する際の温度は特に限定されず、先に述べた溶剤が液
状をなす、沸点以下かつ融点以上の温度であればよい。ただし、温度が高温すぎると、処
理中に銅粉の酸化が進行する可能性があるため、90℃以下で実施することが好ましい。
また、特に加熱や冷却をしなくとも、を化合物(A)で被覆された銅粉表面に存在するカ
ルボン酸とカップリング剤(B)の反応は十分に進行するので、通常の室温付近で実施す
ることが最も経済的で簡便である。
湿式による工程2において、処理する際の時間も特に限定されないが、チタネート系カ
ップリング剤(B)は反応性に富んでいるため、通常、15分から120分程度で、チタ
ネート系カップリング剤(B)で十分に親油化された反応物、そなわち、表面処理銅粉を
得ることができる。
次に、乾式による工程2について説明する。
乾式による、化合物(A)で被覆された銅粉と分子中に少なくとも1つの炭素数8以上
のアルキル基を有するチタネート系カップリング剤(B)で処理する方法としては、
工程(1)の終了後のスラリーから単離され、必要に応じて、洗浄や乾燥を施した、化
合物(A)で被覆された銅粉と、分子中に少なくとも1つの炭素数8以上のアルキル基を
有するチタネート系カップリング剤(B)とを、公知の粉体ミキサーや粉砕器等の装置中
で混合、撹拌する方法が挙げられる。このような装置としては、レーディゲミキサー、ヘ
ンシェルミキサー、V型混合器等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また
、処理する際の温度や時間も特に限定されない。
上記、乾式による混合処理を実施する場合、分子中に少なくとも1つの炭素数8以上の
アルキル基を有するチタネート系カップリング剤(B)は、単独で化合物(A)で被覆さ
れた銅粉に添加してもよいし、必要に応じて、溶剤で希釈して添加してもよい。また、そ
の添加方法としては、化合物(A)で被覆された銅粉に対して、滴下やスプレーする方法
が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
乾式による工程2を実施する際の、分子中に少なくとも1つの炭素数8以上のアルキル
基を有するチタネート系カップリング剤(B)は、湿式による工程(2)の項で述べた量
と同一の範囲が好ましい。
以上、湿式および乾式による、化合物(A)で被覆された銅粉を分子中に少なくとも1
つの炭素数8以上のアルキル基を有するチタネート系カップリング剤(B)で処理する方
法について述べたが、湿式による処理がより好ましい。理由としては、工程(1)および
工程(2)をワンポットで実施でき、本発明の製造方法を最も均一かつ簡便に実施するこ
とが可能である点が挙げられる。
なお、湿式による工程2の終了後には、本発明の反応物すなわち、表面処理銅粉と、溶
剤とを含んでなるスラリー、すなわち、銅粉の分散体が得られる。本発明の導電性組成物
を作成する際は、この分散体をそのまま導電性組成物の調製に用いてもよいし、必要に応
じて、分散体中に存在する反応物、すなわち、表面処理銅粉を単離した上で使用してもよ
い。
湿式による工程2で得られるスラリーから本発明の反応物、すなわち、表面処理銅粉を
単離する方法は、特に限定されない。例えば、ろ紙、ろ布、グラスフィルターを介したろ
過や、遠心分離、デカンテーション等の方法が挙げられる。これらの方法で単離された銅
粉は、必要に応じて、有機溶剤や水で洗浄してもよく、さらに、乾燥した後に、工程(2
)で使用してもよい。乾燥方法としては、減圧乾燥、熱風乾燥といった公知のいかなる乾
燥方法も使用することができる。乾燥温度としては、0℃以上、90℃以下の範囲が好ま
しい。
次に本発明の反応物と熱硬化性樹脂(C)とを含む、導電性組成物について説明する。
熱硬化性樹脂(C)について説明する。
本発明で得られる反応物、すなわち、表面処理銅粉は、さらに、熱硬化性樹脂(C)を
含む導電性組成物として使用してもよい。熱硬化性樹脂(C)を含む本発明の導電性組成
物は、塗工によって電磁波シールド等に利用可能な導電膜を形成する場合、印刷によって
RFID用のアンテナ等の導電回路を形成する場合、さらには、多層プリント配線板の層
間接続用のビア用等の導電性の充填材として使用する場合などの各種用途に、特に好適に
用いることができる。
本発明における熱硬化性樹脂(C)は、硬化剤と反応する架橋性官能基を有するもので
ある。前記架橋性官能基は、例えば、水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、エ
ポキシ基、オキサゾリン基、オキサジン基、シラノール基、アルコキシシラン基、ヒドロ
キシル基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、ブロ
ック化カルボキシル基、アジリジン基、チオール基、シクロカーボネート基、ビニルエー
テル基、ビニルチオエーテル基、アミノメチロール基、アルキル化アミノメチロール基、
アセタール基及びケタール基など等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、架橋性官能
基を2種以上有することができる。
上記した熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、エポキシエステル樹脂、
ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリル樹
脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
熱硬化性樹脂(C)は、硬化剤を使用して硬化を促進してもよい。このような硬化剤は
、熱硬化性樹脂の架橋性官能基と反応できる官能基を1つ以上有する化合物であれば良く
、特に、限定されない。例えば、架橋性官能基がカルボキシル基の場合、硬化剤は、エポ
キシ化合物、アリジリン化合物、イソシアネート化合物、ポリオール化合物、アミン化合
物、メラミン化合物、シラン系、カルボジイミド系化合物、金属キレート化合物等が好ま
しく、架橋性官能基が水酸基の場合、硬化剤は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物
、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、金属キレート化合物が好ましい。また、架
橋性官能基がアミノ基の場合、硬化剤は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジ
リジン化合物、カルボジイミド化合物、金属キレート化合物が好ましい。さらに、これら
の硬化剤は、1種または2種以上使用できる。
上記した硬化剤は、熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜70重量部を使用すること
が好ましく、5〜60重量部がより好ましい。
本発明において、熱硬化性樹脂(C)は、本発明の反応物、すなわち、表面処理銅粉中
に含まれる銅粉100重量部に対して、5〜200重量部を配合することが好ましく、1
0から100重量部を配合することがさらに好ましい。熱硬化性樹脂は抵抗成分にもなり
うるが、表面処理された銅粉を強固に接触させて固定させる効果も有している。この配合
の範囲であれば、本発明の優れた導電性と十分な成膜性を両立することが可能である。
本発明の導電性組成物は、さらに、溶剤を含んでいてもよい。溶剤を含むことで、表面
処理銅粉の分散が容易になり、塗加工や印刷に適した粘度に調製することができる。 溶
剤は、使用する樹脂の溶解性や印刷方法等の種類に応じて、選択することができる。
このような溶剤としては、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤
、脂肪族系溶剤、脂環族系溶剤、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤を挙げることができる
。エステル系溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢
酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、および炭酸ジメチル等が挙げられるがこれらに
限定されない。ケトン系溶剤は、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチ
ルケトン、ジイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロ
ン、およびシクロヘキサノン等が挙げられるがこれらに限定されない。グリコールエーテ
ル系溶剤は、例えばエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイ
ソプロピルエーテル、およびエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコ
ールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコール
モノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール
モノメチルエーテル、およびプロピレングリコールモノエチルエーテル等、ならびにこれ
らの酢酸エステル等が挙げられるがこれらに限定されない。脂肪族系溶剤は、例えばn−
ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン等が挙げられるがこれらに
限定されない。芳香族系溶剤は、例えばトルエン、キシレン等が挙げられるがこれらに限
定されない。溶剤は、単独または2種類以上併用して用いてもよい。
本発明において、反応物、すなわち、表面処理銅粉と、熱硬化性樹脂(C)とを混合し
て導電性組成物とする方法は、先にも述べたが、工程2の終了後に得られる本発明の反応
物すなわち、表面処理銅粉と溶剤とを含んでなるスラリーに熱硬化性樹脂(C)を添加し
て調製してもよいし、このスラリーから反応物、すなわち、表面処理銅粉を単離した上で
、熱硬化性樹脂(C)と混合して、導電性組成物を調製してもよい。
本発明の導電性組成物を得るための混合と分散には、ディスパー、ホモジナイザー、2
本ロール、3本ロール等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
本発明の導電性組成物は、基材の上に膜状にして使用してもよく、その膜は回路等のパ
ターンをなしていてもよい。導電性組成物を膜状にするために、公知の塗工方法や印刷方
法を使用することができる。具体的には、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコ
ート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方
式、カーテンコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、ス
ピンコート方式、ディップコート方式、シルクスクリーン方式、インクジェット方式等が
挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、本発明の導電性組成物が溶剤を
含有する場合は、必要に応じて、溶剤を除去するための乾燥工程を設けてもよい。
本発明の導電性組成物の使用に際しては、熱硬化樹脂(C)の硬化を促進させ、反応物
、すなわち、表面処理銅粉の接触や融着を促進させる目的で、上記の乾燥工程とは異なる
加熱工程を設けてもよい。この工程は、空気中、不活性雰囲気、還元雰囲気から選ばれる
いずれであってもよい。不活性雰囲気としては、窒素、アルゴン、真空などが挙げられる
。還元雰囲気としては、水素ガス、ギ酸蒸気中、あるいは、これらを不活性ガスと混合し
た雰囲気等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の導電性組成物を加熱する方法としては、公知のいかなる方法を用いてもよい。
たとえば、各種オーブン、ホットプレート、電気炉、フラッシュキセノンランプ等が挙げ
られるがこれらに限定されるものではない。また、これらの加熱方法で加える温度も特に
限定されず、導電ペーストや電磁波シールドといった、本発明の導電性組成物の使用が想
定される用途に応じて設定することができる。さらに、過熱と同時に圧力を加えてもよい
本発明の導電性組成物を膜状にして用いる場合の厚みは、特に限定されないが、1〜1
00μmが好ましく、3〜50μmがより好ましい。この範囲であれば、良好な導電性と
耐酸化性を確実に発現し、本発明の導電性組成物の応用が想定される、電磁波シールドシ
ートや導電ペーストにて良好な特性が期待できる。
本発明の導電性組成物は、反応物、すなわち、表面処理銅粉と熱硬化性樹脂(C)に加
えて、必要に応じて、公知の他の材料をさらに添加してもよい。そのような材料としては
、溶剤、銅害防止剤、シランカップリング剤、防錆剤、還元剤、酸化防止剤、顔料、染料
、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤、充填剤、難燃剤等
が挙げられる。
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら
限定されるものではない。なお、部は重量部、%は重量%を意味する。
まず、本発明の実施例および比較例で使用した材料について説明する。
(銅粉(D))
下記の銅粉2点を使用した。
銅粉(D−1):銅粉(樹枝状、粒径D50=10μm)
銅粉(D−2):銅粉(フレーク状、粒径D50=7μm)
銅粉(1)および銅粉(2)はいずれも、市販の銅粉を、予め、酢酸を用いて洗浄した
ものである。すなわち、氷酢酸100部および銅粉100部からなるスラリーを、室温で
1時間撹拌した後、減圧ろ過し、ろ紙上に残った銅粉をアセトン、次いで、イオン交換水
、最後にメタノールで洗浄した後に、減圧乾燥して得た銅粉である。
(化合物(A))
下記2種類の化合物(A)を使用した。
化合物(A−1):5−カルボキシベンゾトリアゾール(試薬、東京化成工業株式会社
製)
化合物(A−2):5−カルボキシベンゾトリアゾールおよび4−カルボキシベンゾト
リアゾールからなる混合物(CBT−1、城北化学工業株式会社製)
(チタネート系カップリング剤)
使用したカップリング10点を表1に示した。
表1



(化合物(A)で被覆された銅粉の原理確認)
本発明で使用する、化合物(A)で被覆された銅粉が確実に生成していることは下記の
実験によって確認した。
2-ブタノン100部に化合物(A−2)を表2に示した部数を添加して溶解し、化合
物(A−2)を含有する溶液を得た。この溶液に銅粉(D−1)100部を添加してスラ
リーとし、マグネチックスターラーを使用して、室温で60分間撹拌した。
ここで得られたスラリーの上澄み液、および、銅粉を添加する前の化合物(A−2)を
含む溶液を、ガスクロマトグラフィを用いてそれぞれ分析し、化合物(A−2)のピーク
面積を比較することで、溶液中に含有される化合物(A−2)の減少率、すなわち、銅粉
への吸着率を計算した。結果を表2に示した。
表2から、化合物(A−2)の量が少ない際は全量、比較的多い場合でも50%以上が
銅粉の表面に吸着していることが確認された。従って、いずれの濃度においても、化合物
(A−2)で被覆された銅粉が確実に得られていることが確認された。さらに、ここで得
られた銅粉をXPSで解析した所、銅粉の表面に化合物(A−2)に由来するN原子が検
出され、このことも、銅粉(D−1)が化合物(A−2)で被覆されたことを支持してい
た。
表2
以下、本発明の反応物、すなわち、表面処理銅粉、および、それらを得るための製造方
法に関する実施例を記載する。
(実施例1)反応物(1)
2-ブタノン100部に、化合物(A−2)0.1部を溶解し、化合物(A−2)を含
有する溶液を得た。この溶液に銅粉(D−1)100部を添加してスラリーとし、マグネ
チックスターラーを使用して、室温で60分間撹拌した。先に述べたように、ここで得ら
れたスラリーには、化合物(A−2)で被覆された銅粉が含まれていた。このスラリーに
、チタネート系カップリング剤(B−1)1部を添加し、室温で撹拌しながら、30分反
応させて反応物を得た。ここで得られた反応物は、表面処理銅粉に相当する。このスラリ
ーを減圧ろ過し、ろ紙上に残った反応物を2−ブタノン20部で十分に洗浄し、40℃で
減圧乾燥することで、反応物(1)すなわち、表面処理銅粉100部を得た。
(反応物の表面に存在する元素)
反応物(1)の表面に存在する元素をXPSにて確認したところ、化合物(A−2)
に由来するN原子に加えて、チタネート系カップリング剤に由来するTi原子、P原子も
確認された。これは、化合物(A−2)で被覆された銅粉がチタネート系カップリング剤
(B−1)と反応して反応物、すなわち、表面処理銅粉が得られることを示唆する結果で
あった。
(反応物の初期導電性の評価)
実施例1で得られた反応物の導電性の評価を実施した。具体的には、粉体抵抗率測定シ
ステム(三菱化学アナリテック製)のプローブユニットに反応物の粉体3.0gを入れ、
3MPaの圧力を加えた際の体積低効率を測定したところ、1×10-3Ωcmであり、表
面処理された銅粉であっても、良好な初期導電性を維持していることが確認された。
(反応物の空気中−加熱下での保管試験)
実施例1で得られた反応物をシャーレに入れ、大気中、140℃に設定した熱風乾燥オ
ーブンSPHH−202(エスペック社製)中で30分加熱し、室温まで放冷した。その
後、先に述べた方法と同様に、粉体の体積抵抗率を測定したところ、5×10-3Ωcmで
あった。
(反応部の高温高湿下での保管試験)
実施例1で得られた反応物をシャーレに入れ、温度85℃、湿度85%に設定した恒温
恒湿器LHL−114(エスペック社製)中に2時間保管し、デシケーター中で室温まで
放冷した後、先に述べた方法と同様に、粉体の体積抵抗率を測定したところ、3×10-3
Ωcmであった。
(実施例2から20、および、比較例1から13)
化合物(A−2)、銅粉(D−1)、チタネート系カップリング剤(B−1)、それぞ
れを、表3に示した材料と重量部に置き換えた他は実施例1と同様の手順により、反応物
を得た。さらに、先に述べた方法で、反応物の初期導電性、すなわち、体積抵抗率を測定
した。さらに、空気中−加熱化での保管試験後、高温高湿下での保管試験後の体積抵抗率
もそれぞれ測定した。その結果も表3に併せて示した。比較のため、先に述べた実施例1
の結果も併せて記載した。
表3





表3から、本発明に従って得られる反応物、すなわち、表面処理銅粉は、銅の劣化要因
である大気、熱、湿度に晒されても酸化が抑止され、高い導電性を維持できる材料である
ことが明らかとなった。この耐酸化性は、化合物(A)あるいはチタネート系カップリン
グ剤(B)を、それぞれ単独で、銅粉の処理に使用した際(比較例)の耐酸化性を大幅に
凌駕する水準であった。また、チタネート系カップリング剤(B)は、炭素数8以上のア
ルキル基を有する時だけ、特異的に耐酸化性が改善することも示された。さらに、ピロリ
ン酸エステルの残基を有するチタネート系カップリング剤が最も耐酸化性に優れる反応物
であることも確認された。加えて、本発明の反応物は被膜によって十分に保護されている
と同時に、初期導電性にも優れる材料であることも明らかとなった。
実施例1および比較例1で得られた反応物、すなわち、表面処理銅粉をそれぞれXPS
で解析し、表面に存在する元素を定量したところ、実施例1の反応物(1)は比較例1の
反応物に比較してTi原子が3倍以上の比率で存在することが確認された。これは、化合
物(A−2)による被覆により銅粉表面に反応点が富化され、より多くのチタネート系カ
ップリング剤と反応できるようになった効果である。この結果、銅粉の表面が親油基で緻
密に覆われ、劣化要因から隔離されるために、銅粉の耐酸化性が向上したものと考えられ
る。
(実施例21)
アセトン100部に、化合物(A−2)0.1部を溶解し、化合物(A−2)を含有す
る溶液を得た。この溶液に銅粉(D−1)100部を添加してスラリーとし、マグネチッ
クスターラーを使用して、室温で60分間撹拌した。ここで得られたスラリーには、化合
物(A−2)で被覆された銅粉が含まれていた。このスラリーを減圧ろ過し、ろ紙上に残
った銅粉をアセトン15部で洗浄し、室温で減圧乾燥することで、化合物(A−2)で被
覆された銅粉100部を得た。
ここで得られた銅粉100部に、トルエン100部を添加してスラリーとし、チタネー
ト系カップリング剤(B−1)1部を添加し、室温で撹拌しながら、60分反応させて反
応物を得た。ここで得られた反応物は、表面処理された銅粉に相当する。このスラリーを
減圧ろ過し、ろ紙上に残った反応物をトルエン20部で洗浄し、40℃で減圧乾燥するこ
とで、反応物(21)すなわち、表面処理銅粉100部を得た。
(実施例22)
アセトン100部に、化合物(A−2)0.1部を溶解し、化合物(A−2)を含有す
る溶液を得た。この溶液に銅粉(D−1)100部を添加してスラリーとし、マグネチッ
クスターラーを使用して、室温で60分間撹拌した。先に述べたように、ここで得られた
スラリーには、化合物(A−2)で被覆された銅粉が含まれていた。このスラリーを減圧
ろ過し、ろ紙上に残った銅粉をアセトン20部で洗浄し、室温で減圧乾燥することで、化
合物(A−2)で被覆された銅粉100部を得た。
ここで得られた銅粉100部、チタネート系カップリング剤(B−1)1部を添加して
V型混合器にて60分間混合して反応せることで、反応物(22)を得た。
実施例21および実施例22で得られた反応物に対して、先に述べた方法で、反応物の
初期導電性、すなわち、体積抵抗率を測定した。さらに、空気中−加熱化での保管試験後
、高温高湿下での保管試験後の体積抵抗率もそれぞれ測定した。その結果を表3に併せて
示した。
実施例21と実施例22の結果から、化合物(A)で被覆された銅粉を単離、乾燥した
後に、チタネート系カップリング剤で処理しても、大気、熱、湿度に対して良好な耐酸化
性を有する反応物、すなわち、表面処理銅粉が得られることが明らかとなった。また、化
合物(A)で被覆された銅粉をチタネート系カップリング剤で処理する製造方法は、乾式
であっても湿式であってもよいことも明らかとなった。
以下、本発明の導電性組成物について記載する。なお、本実施例における熱硬化性樹脂(
C)としては、下記に示す材料を使用した。
(C−1)熱硬化性ウレタン樹脂(トーヨーケム社製/酸価=10mgKOH/g)
(実施例23)導電性組成物
ウレタン樹脂(C−1)を100部、実施例1と同様の方法で製造した反応物(1)3
00重量部、添加剤としてデカメチレンカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド(アデカス
タブCDA−6、ADEKA社)4.5重量部をガラス容器に仕込み、不揮発性分が40
%となるように、トルエンとイソプロピルアルコールの混合溶剤(体積比9:1)を加え
た。この混合物をディスパーで5分間撹拌を行うことで、導電性組成物を得た。
上記で得られた導電性組成物の100重量部に、硬化剤としてビスフェノールA型エポ
キシ樹脂(JER828、ジャパンエポキシレジン製)10重量部を加え、ディスパーで
10分間撹拌した後、ポリエチレンテレフタレート製の剥離性50μmフィルムに、乾燥
後の厚みが5μmとなるようにバーコーターを用いて塗工し、100℃に設定した熱風乾
燥オーブン中で2分間乾燥することで、膜状となった導電性組成物の積層体を得た。
(導電性組成物の導電性の評価)
上記で得た膜状の導電性組成物の積層体を縦横共に25mmの正方形に切り出し、横2
5mm、縦100mm、厚み0.5mmのステンレス板の端部に、導電性組成物の面がス
テンレス板と向かいあうように置き、80℃、2MPaの条件で仮圧着した。その後、ポ
リエチレンテレフタレートのフィルムを剥離し、新たに露出した導電性組成物の面に、先
と同じ大きさのステンレス板を図(1)に示した構成になるように重ねて置き、再度、8
0℃、2MPaの条件で仮圧着した。これを150℃、2MPaの条件で30分間、熱圧
着することで、導電性組成物の導電性評価のための評価サンプルとした。
ロレスターGP(三菱化学アナリテック製)にBSPプローブを接続し、図(2)にお
ける評価サンプルの4,5として矢印で示した2点に接触させることで、抵抗値を測定し
た。結果を表4に示した。
(導電性組成物の高温高湿下での保管試験)
上記、評価サンプルを温度85℃、湿度85%に設定した高温高湿下に5日間保管した
後、上記と同様の方法にて、抵抗値を測定した。結果を表4に併せて示した。
(実施例24〜27、比較例14〜15)
導電性材料を表4に記載した反応物、すなわち、表面処理銅粉に変更した他は、実施例
23と全く同様の方法にて得た評価サンプルに対して、抵抗値の測定を実施した。さらに
、これらの評価サンプルを上記と同様の高温高湿下での保管試験を実施し、抵抗値を測定
した結果も表4に併せて示した。
表4
表4より、本発明の反応物、すなわち、表面処理銅粉の優れた耐酸化性を反映して、そ
れらを用いて製造した導電性組成物も、塗工、乾燥、加圧といったプロセスを経た後にも
良好な初期導電性を示した。さらに、これらの導電性組成物は優れた湿熱耐性を示し、導
電膜として高い信頼性を有していることが確認された。
本発明によって提供された製造方法によって得られる反応物、すなわち、表面処理銅粉
は、銅粉を含んでいるために安価であるにもかかわらず、初期導電性に優れるだけでなく
、様々な加工プロセスを経た後にも高い導電性を維持し、さらに、高温高湿下での長期の
使用にも十分耐えうるものである。
従って、導電性材料として銀粉、合金粉、他の金属でコーティング保護された銅粉が使
用されている様々な用途において、それらを置き換えた形で利用することが可能である。
具体的には、多層プリント配線板のビアホール内の層間導通手段、基板上のアンテナや電
子回路配線部を形成するための導電性ペーストや導電インキ、電磁波シールドシート、導
電性マスターバッチ等に利用することが可能である。
1:導電性組成物
2:ステンレス板
3:ステンレス板
4:導電性の評価において、電極を接触させる部分
5:導電性の評価において、電極を接触させる部分

Claims (5)

  1. 一般式(1)で示される化合物(A)で被覆された銅粉と、分子中に少なくとも1つの
    炭素数8以上のアルキル基を有するチタネート系カップリング剤(B)との反応物。
    一般式(1)
    (式中、R1ないしR4は水素原子またはカルボキシル基を表す。ただし、R1ないしR
    4の少なくとも1つはカルボキシル基である。)
  2. 分子中に少なくとも1つの炭素数8以上のアルキル基を有するチタネート系カップリン
    グ剤(B)が下記一般式(2)で表される、請求項1記載の反応物。
    一般式(2)
    (式中、nおよびmは、それぞれ独立に、自然数を表し、n+m=4または6である。
    R11は、n=1のときは炭素数1から8のアルコキシ基を表し、nが2以上の場合には
    炭素数1から8のアルコキシ基を表すか、あるいは、R11が2つで下記一般式(3)で
    表される基または下記一般式(4)で表される基となる。
    R12は下記一般式(5)ないし下記一般式(9)から選ばれる置換基を表す。)
    一般式(3)
    (式中、R13は炭素数2から16のアルキレン基を表す。)。
    一般式(4)


    (式中、R14は炭素数1から15のアルキレン基を表す。)
    一般式(5)
    (式中、R21は炭素数8から30のアルキル基を表す。)
    一般式(6)
    (式中、R31およびR32は、それぞれ独立に、炭素数8から30のアルキル基を表す
    。)
    一般式(7)
    (式中、R41およびR42は、それぞれ独立に、炭素数8から30のアルキル基を表す
    。)
    一般式(8)
    (式中、R51およびR52は、それぞれ独立に、炭素数8から30のアルキル基を表す
    。)
    一般式(9)
    (式中、R61は炭素数8から30のアルキル基を表す。)
  3. 一般式(2)中の置換基R12が、一般式(8)である、請求項2記載の反応物。
  4. 請求項1〜3いずれか記載の反応物と、熱硬化性樹脂(C)とを含む、導電性組成物。
  5. 銅粉(D)を、下記一般式(1)で示される化合物(A)を含有する溶液で処理した後
    、さらに、分子中に少なくとも1つの炭素数8以上のアルキル基を有するチタネート系カ
    ップリング剤(B)で処理する、表面処理銅粉の製造方法。
    一般式(1)
    (式中、R1ないしR4は水素原子またはカルボキシル基を表す。ただし、R1ないしR
    4の少なくとも1つはカルボキシル基である。)
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