JP6630711B2 - 熱膨張係数の推算方法およびか焼コークスの品質管理方法 - Google Patents
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〔1〕か焼コークスの熱膨張係数を推算する方法であって、か焼コークスより黒鉛体を形成することなく水蒸気の存在下でか焼コークスを加熱ガス化し、か焼コークスの重量変化速度に応じてか焼コークスの昇温速度が連続的に変化するようにか焼コークスの温度を制御して熱重量変化曲線(TG曲線)を求め、この曲線に基づいて、か焼コークスに含まれる各炭素質成分のガス化開始温度および各炭素質成分の存在量を求め、各炭素質成分のガス化開始温度および存在量よりか焼コークスの熱膨張係数を推算することを特徴とする熱膨張係数を推算する方法。
〔2〕 前記か焼コークスの重量変化速度に応じてか焼コークスの昇温速度を連続的に変化させてか焼コークスの温度を制御して熱重量変化曲線(TG曲線)を求める方法は、
(A)あらかじめ任意の定速昇温条件を決めて定速昇温して定速昇温熱重量分析によりTG曲線を測定し、TG曲線より決定される又はTG曲線の微分曲線(DTG曲線)より推定される炭素質のガス化開始温度におけるDTG値(重量変化速度)の絶対値より小さい値を制御目標値に設定する工程と、
(B)工程(A)の定速昇温条件と同一又はその前後の条件でもって定速昇温して定速昇温熱重量分析し、か焼コークスの重量変化速度が前記の制御目標値よりもゆるやかなときには、昇温速度は前記定速昇温条件と同一、か焼コークスの重量変化速度が前記の制御目標値よりも急激なときには、昇温を停止もしくは昇温速度をゆるやかに制御して熱重量変化曲線(TG曲線)を求める工程
を含むことを特徴とする前記〔1〕に記載のか焼コークスの熱膨張係数の推算方法
〔3〕 前記TG曲線に基づいて、か焼コークスに含まれる結晶性もしくは配向性の異なる炭素成分を分離定量する方法は、
得られたTG曲線を用いて、結晶性もしくは配向性の異なる各炭素質のガス化開始温度を決定し、各炭素質のガス化開始温度で区分される温度範囲における各炭素質の存在量を決定することを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕のいずれかに記載のか焼コークスの熱膨張係数の推算方法。
〔4〕 前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のか焼コークスの熱膨張係数の推算方法により得たか焼コークスの熱膨張係数を用いて、製鋼用電極製造に用いられるか焼コークスを選定するか焼コークスの選定方法
〔5〕 前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のか焼コークスの熱膨張係数の推算方法により得たか焼コークスの熱膨張係数を用いて、か焼コークスの品質を管理するか焼コークスの品質管理方法
か焼コークスに含まれる各炭素質成分のガス化開始温度および各炭素質成分の存在量は、水蒸気の存在下でか焼コークスを加熱ガス化し、か焼コークスの重量変化速度に応じてか焼コークスの昇温速度が連続的に変化するようにか焼コークスの温度を制御してか焼コークスの加熱昇温時のガス化反応による重量変化量を計測することにより熱重量変化曲線(TG曲線)を求め、この曲線を解析することから求めることができる。
以下、か焼コークスを加熱ガス化する方法について説明する。
水蒸気分圧が高くなると、ガス流路および熱重量同時測定装置内にて結露することがある。装置内にて結露が生じるとガス化量の測定が困難になる。
さらに、水蒸気分圧が小さすぎるとガス化反応速度が遅くなり、また一定の測定時間におけるガス化量が小さくなるため測定が困難となるため、可能な範囲で高いことが望ましい。
水蒸気を電気炉中に流通させることにより、水蒸気を連続供給でき、且つ、炭素からガス化したガスや発生するタール成分を連続除去することが可能となり、再現性の高いガス化量の測定が実現できる。
例えば、結晶性炭素質と非結晶性炭素質からなるか焼コークスの場合、非結晶性炭素質の方がより低い温度、もしくは早い速度でガス化反応が進行する。さらに例えば、配向性の高い炭素質と配向性の低い炭素質からなるか焼コークスの場合、配向性の低い炭素質の方がより低い温度、もしくは早い速度でガス化反応が進行する。
なお、TG曲線およびDTG曲線の測定は、熱重量測定が可能な公知の熱分析装置を用いることができる。
段階的に変化させる方法としては、例えば、測定の初期は早い昇温速度で加熱し、重量変化が観測される評価温度付近では昇温速度を5〜20℃/minの間で段階的に制御する方法を挙げることができる。
上記の理由より、昇温速度は5〜20℃/minであることが好ましい。
TG曲線を微分することによりDTG曲線を描き、各炭素質のガス化開始温度におけるDTG値を求め、その絶対値より小さい値を昇温速度の制御目標値に設定することができる。
定速昇温熱重量分析により前記の制御目標値を決定することにより、異なるか焼コークスの分析をより正確に進めることが可能となる。そして、前記の制御目標値を、ガス化開始温度におけるDTG値(重量変化速度)の絶対値に近づけることにより、より迅速に異なるか焼コークスの分析を進めることが可能となる。
か焼コークスに含まれる炭素質を分離定量する方法は、得られたTG曲線を用いて、各炭素質のガス化開始温度を決定し、各炭素質のガス化開始温度で区分される温度範囲における各炭素質の存在量を測定することでできる。
また、ここで各炭素質の存在量の算出は、各炭素質がガス化する特定された温度域における試料の重量変化量より算出するのが好ましいが、発生ガスに含まれる炭素量を計測する等により行ってもよい。
CTEは、各炭素質成分のガス化開始温度および存在量により推算することができる。
CTE[×10−6/K]=A+BT (1)
で数式化される。
ここでAおよびBは実験値より決定される定数であり、Tはガス化開始温度[K]である。
CTEn=A+B×Tn (2)
Σαn=α1+α2+α3+・・・+αn=1 (3)
より、n成分の炭素質からなるか焼コークスのCTEは、式(4)より算出できる。
CTE=Σ(CTEn×αn)
=CTE1×α1+CTE2×α2+CTE3×α3+・・・+CTEn×αn
(4)
CTE=(A+B×T1)×α1+(A+B×T2)×α2
+(A+B×T3)×α3 (5)
α1+α2+α3=1 (6)
まず既知のCTE値を有するもしくは測定によりCTE値を得た複数種のか焼コークスを用いて、本発明における熱重量測定を実施し、各炭素質のガス化開始温度T、各炭素質の重量分率αを算出し、連立方程式を解くことにより、定数AおよびBを決定する。
CTE[×10−6/K]=α(A+BT1)+(1−α)(A+BT2)
(7)
黒鉛成形体のCTEは黒鉛の結晶性および配向性を表す指標の一つとして利用されている。熱膨張係数が4×10−6/Kより小さいものは黒鉛の結晶性が高く、粒子形状が針状になりやすい。一方、5×10−6/Kより大きいものはアスペクト比が小さくなるが黒鉛結晶が未発達である
なおこれら実施例は、それぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
評価試料NC−1、NC−2およびNC−3は、市場で調達した石炭由来のか焼コークスであり、評価試料NC−4、NC−5およびNC−6は、市場で調達した石油由来のか焼コークスである。
熱重量測定装置には、水蒸気作動型示差熱天秤(株式会社リガク製TG−DTA/HUM−1)を用いた。
石炭系か焼コークス試料(評価試料NC−1)をおよそ10mg、0.01mgまで精秤し、熱重量測定装置に導入した。ここにガス化剤として水蒸気と窒素を混合したガスを300ml/min流した。このときの水蒸気分圧は20kPaとした。ガス化剤を流通した条件で、10℃/min昇温速度で1350℃まで定速昇温し、TG曲線およびDTG曲線を計測した。
昇温時に試料重量が減少し始める温度より炭素質のガス化開始温度1153℃を決定した。ガス化開始温度付近である1160〜1170℃におけるDTG値(重量変化速度)の絶対値の平均値は0.0023%/秒であった。
従って0.002%/秒を昇温速度の制御値に設定した。
(CTE推算のための定数AおよびBの算出)
CTE値既知試料である石炭系か焼コークスである評価試料NC−1(CTE値=3.3×10−6/K℃)および石油系か焼コークスである評価試料NC−4(CTE値=4.5×10−6/K)を用いてCTE推算のための定数AおよびBを算出した。
まず評価試料NC−1(石炭系か焼コークス)をおよそ10mg、0.01mgまで精秤し、熱重量測定装置に導入した。ここにガス化剤として水蒸気と窒素を混合したガスを300ml/min流した。このときの水蒸気分圧は20kPaとした。ガス化剤を流通した条件で、重量変化速度の絶対値が制御値0.002%/秒よりも小さいときは10℃/minの昇温速度で昇温し、重量変化速度の絶対値が制御値0.002%/秒以上の場合には昇温を停止するように昇温速度を制御して、TG曲線を計測した。得られたTG曲線を図1に示した。
〔実施例2〕
評価試料NC−2(石炭系由来か焼コークス)のTG曲線を実施例1と同様に計測した。得られたTG曲線を図3に示した。評価試料NC−2は2段階の重量減少を示したことから、結晶化度もしくは配向性の異なる複数の炭素質が存在していることが確認できた。
TG曲線より、ガス化開始温度T1=1113℃、T2=1135℃、α=0.08を得た。
評価試料NC−3(石炭系由来か焼コークス)に変更した以外は、実施例2と同様に実施した。得られたTG曲線を図4に示した。
ガス化開始温度T1=1013℃、T2=1111℃、α=0.34を得た。CTEの推算値は8.7×10−6/Kと得られた。CTEの実測値とともに表1に記載した。
評価試料NC−5(石油系由来か焼コークス)に変更した以外は、実施例2と同様に実施した。得られたTG曲線を図5に示した。
ガス化開始温度T1=1108℃、T2=1132℃、α=0.12を得た。CTEの推算値は5.3×10−6/Kと得られた。CTEの実測値とともに表1に記載した。
評価試料NC−6(石油系由来か焼コークス)に変更した以外は、実施例2と同様に実施した。得られたTG曲線を図6に示した。
ガス化開始温度T1=1137℃、T2=1159℃、α=0.25を得た。CTEの推算値は3.6×10−6/Kと得られた。CTEの実測値とともに表1に記載した。
Claims (5)
- か焼コークスの熱膨張係数を推算する方法であって、か焼コークスより黒鉛体を形成することなく水蒸気の存在下でか焼コークスを加熱ガス化し、か焼コークスの重量変化速度に応じてか焼コークスの昇温速度が連続的に変化するようにか焼コークスの温度を制御して熱重量変化曲線(TG曲線)を求め、この曲線に基づいて、か焼コークスに含まれる各炭素質成分のガス化開始温度および各炭素質成分の存在量を求め、各炭素質成分のガス化開始温度および存在量よりか焼コークスの熱膨張係数を推算することを特徴とする熱膨張係数を推算する方法。
- 前記か焼コークスの重量変化速度に応じてか焼コークスの昇温速度を連続的に変化させか焼コークスの温度を制御して熱重量変化曲線(TG曲線)を求める方法は、
(A)あらかじめ任意の定速昇温条件を決めて定速昇温して定速昇温熱重量分析によりTG曲線を測定し、TG曲線より決定される又はTG曲線の微分曲線(DTG曲線)より推定される炭素質のガス化開始温度におけるDTG値(重量変化速度)の絶対値より小さい値を制御目標値に設定する工程と、
(B)工程(A)の定速昇温条件と同一又はその前後の条件でもって定速昇温して定速昇温熱重量分析し、か焼コークスの重量変化速度が前記重量変化速度の制御目標値よりもゆるやかなときには昇温速度は前記定速昇温条件と同一にし、か焼コークスの重量変化速度が前記重量変化速度の制御目標値よりも急激なときには昇温を停止もしくは昇温速度をゆるやかに制御して熱重量変化曲線(TG曲線)を求める工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のか焼コークスの熱膨張係数の推算方法 - TG曲線に基づいて、か焼コークスに含まれる結晶性もしくは配向性の異なる炭素成分を分離定量する方法は、
得られたTG曲線を用いて、結晶性もしくは配向性の異なる各炭素質のガス化開始温度を決定し、各炭素質のガス化開始温度で区分される温度範囲における各炭素質の存在量を決定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のか焼コークスの熱膨張係数の推算方法 - 請求項1〜3のいずれかに記載のか焼コークスの熱膨張係数の推算方法により得たか焼コークスの熱膨張係数を用いて、製鋼用電極製造に用いられるか焼コークスを選定するか焼コークスの選定方法
- 請求項1〜3のいずれかに記載のか焼コークスの熱膨張係数の推算方法により得たか焼コークスの熱膨張係数を用いて、か焼コークスの品質を管理するか焼コークスの品質管理方法
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