JP2024013316A - 石炭又はコークスの熱履歴推定方法 - Google Patents
石炭又はコークスの熱履歴推定方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】 900℃~1300℃の範囲において、石炭又はコークスが受けた熱履歴における最高到達温度を好適に推定することが可能な石炭又はコークスの熱履歴推定方法を提供すること。【解決手段】 石炭又はコークスが受けた熱履歴における最高到達温度を、[熱履歴における最高到達温度(℃)]=(a×Ro2+b×Ro+c)×Lc+(d×Ro2+e×Ro+f)により算出することを特徴とする石炭又はコークスの熱履歴推定方法。(ただし、Roは、推定対象の石炭又はコークスの平均反射率、Lcは、粉末XRD測定から得られる(002)回折線の結晶子の大きさ(nm)、a~fは、3種類以上の石炭又はコークスについて予め測定した実際の最高到達温度(℃)とRoとLcを用い、最小二乗法によりフィッティングさせた際に得られる定数である。)【選択図】 図4
Description
本発明は、石炭又はコークスの熱履歴推定方法に関する。
一般に製鉄原料として用いられるコークスは、石炭をコークス炉内で乾留して製造される。製鉄原料として用いられるコークスは、高強度と良好な通気性が求められる。前記特性は製造時の操業条件、特に炉内で受ける熱履歴に大きく影響を受ける。そのため、得られたコークスが製造時に何℃まで加熱されたか、すなわち、コークスが得られるまでに当該コークスが受けた熱履歴の最高到達温度を知ることは重要である。
従来、コークスの熱履歴推定方法(コークスが得られるまでに当該コークスが受けた熱履歴の最高到達温度の推定方法)としては、XRD測定を用いた(002)回折線の測定により得られる結晶子の大きさLcより推定する方法(非特許文献1)や、顕微ラマン分光を用いて推定する方法(非特許文献2)などが知られる。
特許文献1には、石炭またはコークスが受けた熱履歴における最高到達温度を、ラマン分光測定により得られるスペクトルのGバンドピークの強度に対するDバンドピークの強度の比であるR値により推定する石炭またはコークスの熱履歴推定方法が開示されている。特許文献1では、600℃未満の比較的低温度の熱履歴を推定する方法を提供することを目的としている。
特許文献2には、核磁気共鳴分光測定の結果を用いて石炭またはコークスが受けた熱履歴における最高到達温度を推定する、石炭またはコークスの熱履歴推定方法が開示され、特に、300℃~600℃の範囲の最高到達温度を推定することに好適であることが記載されている。
特許文献3には、高炉における所望の位置から採取したコークスの粒子毎の黒鉛化度を、マルチチャンネルディテクターを有するレーザーラマン分光装置により測定し、更に黒鉛化度の分布を求める高炉内コークスの熱履歴を推定する方法が開示されている。
成田他、鉄と鋼、第66年(1980)、1820
千野他、鉄と鋼、第76年(1990)、34
しかしながら、コークス製造時の熱履歴の最高到達温度は、一般的に、900℃~1300℃程度である。特許文献1の方法は、600℃未満の比較的低温度の熱履歴を推定する方法であり、コークス製造時の熱履歴の推定には適さない。同様に、特許文献2の方法も、300℃~600℃の範囲の最高到達温度の推定に適しており、コークス製造時の熱履歴の推定には適さない。つまり、特許文献1、特許文献2の方法は、石炭の軟化溶融温度範囲での熱履歴の推定方法であり、コークス製造時の熱履歴の推定には適さない。
また、特許文献3の方法は、1400℃~2000℃という高温での熱履歴を推定する方法であり、通常操業しているコークス炉(最高到達温度:900℃~1300℃程度)にて製造されるコークスの熱履歴の推定には適さない。
さらに、顕微ラマンによる測定(特許文献1、特許文献3)は、ごく狭い範囲の面積での測定であり、NMRによる測定(特許文献2)は、こく少量の試料による測定であるため、コークス試料の代表性に問題があると考えられる。
また、特許文献3の方法は、1400℃~2000℃という高温での熱履歴を推定する方法であり、通常操業しているコークス炉(最高到達温度:900℃~1300℃程度)にて製造されるコークスの熱履歴の推定には適さない。
さらに、顕微ラマンによる測定(特許文献1、特許文献3)は、ごく狭い範囲の面積での測定であり、NMRによる測定(特許文献2)は、こく少量の試料による測定であるため、コークス試料の代表性に問題があると考えられる。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、900℃~1300℃の範囲において、石炭又はコークスが受けた熱履歴における最高到達温度を好適に推定することが可能な石炭又はコークスの熱履歴推定方法を提供することにある。
本発明者らは、石炭又はコークスの熱履歴推定方法について鋭意研究を行った。その結果、XRD測定を用いた(002)回折線の測定により得られる結晶子の大きさ(Lc)と平均反射率(Ro)とを用いることにより、900℃~1300℃の範囲において、石炭又はコークスが受けた熱履歴における最高到達温度を好適に推定することが可能であことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
[1]石炭又はコークスが受けた熱履歴における最高到達温度を、下記式(1)により算出することを特徴とする石炭又はコークスの熱履歴推定方法。
[熱履歴における最高到達温度(℃)]=(a×Ro2+b×Ro+c)×Lc+(d×Ro2+e×Ro+f)・・・・・式(1)
(ただし、Roは、推定対象の石炭又はコークスの平均反射率、Lcは、粉末XRD測定から得られる(002)回折線の結晶子の大きさ(nm)、a~fは、3種類以上の石炭又はコークスについて予め測定した実際の最高到達温度(℃)とRoとLcを用い、最小二乗法によりフィッティングさせた際に得られる定数である。)
[1]石炭又はコークスが受けた熱履歴における最高到達温度を、下記式(1)により算出することを特徴とする石炭又はコークスの熱履歴推定方法。
[熱履歴における最高到達温度(℃)]=(a×Ro2+b×Ro+c)×Lc+(d×Ro2+e×Ro+f)・・・・・式(1)
(ただし、Roは、推定対象の石炭又はコークスの平均反射率、Lcは、粉末XRD測定から得られる(002)回折線の結晶子の大きさ(nm)、a~fは、3種類以上の石炭又はコークスについて予め測定した実際の最高到達温度(℃)とRoとLcを用い、最小二乗法によりフィッティングさせた際に得られる定数である。)
従来、熱履歴における最高到達温度が同じでも、石炭(コークス)の平均反射率(Ro)が異なると、(002)回折線の結晶子の大きさ(Lc)は異なることが知られている。
一方、平均反射率(Ro)や(002)回折線の結晶子の大きさ(Lc)は、測定方法が確立されており、測定の際の試料の採取方法によって測定値が大きく変わることがなく、また、採取した試料の測定箇所によって測定値が大きく変わることもない。そのため、平均反射率(Ro)や(002)回折線の結晶子の大きさ(Lc)を熱履歴の推定に用いることができれば、試料の代表性が確保されると、本発明者らは考え、鋭意検討を行った。
その結果、驚くべきことに、熱履歴における最高到達温度が、900℃~1300℃の範囲において、RoとLcとの関数になっていることを突き止めた。
具体的に、本発明者らは、焼成到達温度900℃~1300℃の範囲において、Roが異なる石炭の、Lcと最高到達温度(熱履歴)との関係式の傾きと切片がRoの関数として記述できることを見出した。つまり、前記傾きと前記切片とを、それぞれRoの二次関数として最小二乗法によりフィッティングさせると、決定係数(R2)は非常に1に近くなり、適切に記述できることを見出した。
本発明は、Roの異なる複数種の石炭(コークス)を既知の温度にて加熱し、予め、係数a~fを導き出した(算出した)式(1)を用いる。
本発明では、推定対象となる石炭又はコークスのRoとLcとを測定する。その後、係数a~fが確定した式(1)にRoとLcとを代入することにより、推定対象となる石炭又はコークスの熱履歴における最高到達温度を高精度に算出することができる。
一方、平均反射率(Ro)や(002)回折線の結晶子の大きさ(Lc)は、測定方法が確立されており、測定の際の試料の採取方法によって測定値が大きく変わることがなく、また、採取した試料の測定箇所によって測定値が大きく変わることもない。そのため、平均反射率(Ro)や(002)回折線の結晶子の大きさ(Lc)を熱履歴の推定に用いることができれば、試料の代表性が確保されると、本発明者らは考え、鋭意検討を行った。
その結果、驚くべきことに、熱履歴における最高到達温度が、900℃~1300℃の範囲において、RoとLcとの関数になっていることを突き止めた。
具体的に、本発明者らは、焼成到達温度900℃~1300℃の範囲において、Roが異なる石炭の、Lcと最高到達温度(熱履歴)との関係式の傾きと切片がRoの関数として記述できることを見出した。つまり、前記傾きと前記切片とを、それぞれRoの二次関数として最小二乗法によりフィッティングさせると、決定係数(R2)は非常に1に近くなり、適切に記述できることを見出した。
本発明は、Roの異なる複数種の石炭(コークス)を既知の温度にて加熱し、予め、係数a~fを導き出した(算出した)式(1)を用いる。
本発明では、推定対象となる石炭又はコークスのRoとLcとを測定する。その後、係数a~fが確定した式(1)にRoとLcとを代入することにより、推定対象となる石炭又はコークスの熱履歴における最高到達温度を高精度に算出することができる。
本発明によれば、900℃~1300℃の範囲において、石炭又はコークスが受けた熱履歴における最高到達温度を好適に推定することが可能な石炭又はコークスの熱履歴推定方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る石炭又はコークスの熱履歴推定方法は、
石炭又はコークスが受けた熱履歴における最高到達温度を、下記式(1)により算出する石炭又はコークスの熱履歴推定方法である。
[熱履歴における最高到達温度(℃)]=(a×Ro2+b×Ro+c)×Lc+(d×Ro2+e×Ro+f)・・・・・式(1)
(ただし、Roは、推定対象の石炭又はコークスの平均反射率、Lcは、粉末XRD測定から得られる(002)回折線の結晶子の大きさ(nm)、a~fは、3種類以上の石炭又はコークスについて予め測定した実際の最高到達温度(℃)とRoとLcを用い、最小二乗法によりフィッティングさせた際に得られる定数である。)
石炭又はコークスが受けた熱履歴における最高到達温度を、下記式(1)により算出する石炭又はコークスの熱履歴推定方法である。
[熱履歴における最高到達温度(℃)]=(a×Ro2+b×Ro+c)×Lc+(d×Ro2+e×Ro+f)・・・・・式(1)
(ただし、Roは、推定対象の石炭又はコークスの平均反射率、Lcは、粉末XRD測定から得られる(002)回折線の結晶子の大きさ(nm)、a~fは、3種類以上の石炭又はコークスについて予め測定した実際の最高到達温度(℃)とRoとLcを用い、最小二乗法によりフィッティングさせた際に得られる定数である。)
本実施形態では、Roの異なる複数種の石炭(コークス)を既知の温度にて加熱し、予め、係数a~fを導き出した(算出した)式(1)を用いる。
<係数a~fの導出>
係数a~fを導き出すために測定する、Roの異なる複数種の石炭(コークス)としては、少なくとも3種あればよい。詳しくは後述するが、Lcと最高到達温度(熱履歴)との関係式の傾きと切片は、Roの二次関数として表現できる。そのため、係数a~fを導き出すために測定する石炭(コークス)は、少なくとも3種あれば、係数a~fを求めることができるからである。
係数a~fを導き出すために測定する、Roの異なる複数種の石炭(コークス)としては、少なくとも3種あればよい。詳しくは後述するが、Lcと最高到達温度(熱履歴)との関係式の傾きと切片は、Roの二次関数として表現できる。そのため、係数a~fを導き出すために測定する石炭(コークス)は、少なくとも3種あれば、係数a~fを求めることができるからである。
一般的に、コークスの製造に使用する石炭のRoは、0.7~1.3の範囲内にある。従って、係数a~fを導き出すために測定する、Roの異なる複数種の石炭(コークス)としては、Roが0.7付近の石炭(例えば、Roが0.7~0.75の範囲内の石炭)と、Roが1.3付近の石炭(例えば、Roが1.2~1.3の範囲内の石炭)とを測定対象に含めることが好ましい。
係数a~fを導き出すために測定する、Roの異なる複数種の石炭(コークス)として、Roが0.7付近の石炭と、Roが1.3付近の石炭とを測定対象に含めることにより、より精度の高い推定値(熱履歴における最高到達温度)が得られる式(1)が得られる。
係数a~fを導き出すために測定する、Roの異なる複数種の石炭(コークス)として、Roが0.7付近の石炭と、Roが1.3付近の石炭とを測定対象に含めることにより、より精度の高い推定値(熱履歴における最高到達温度)が得られる式(1)が得られる。
なお、本実施形態に係る石炭又はコークスの熱履歴推定方法は、方法の発明に関するものであり、式(1)を用いるという方法(行為)自体に特徴があり、式(1)を求める際に測定する石炭の種類や数は、特に限定されず、要求される精度に応じて、決定すればよい。すなわち、本実施形態に係る石炭又はコークスの熱履歴推定方法は、RoとLcとを求めれば、熱履歴における最高到達温度の推定値が高精度に得られることに特徴があり、その精度の高さについては、要求される精度に応じて、係数a~fを導き出すために測定する石炭(コークス)の種類や数を決定し、式(1)を求めればよい。
<熱履歴における最高到達温度の算出>
本実施形態に係る石炭又はコークスの熱履歴推定方法では、熱履歴における最高到達温度が不明な、推定対象となる石炭又はコークスのRoとLcとを測定し、上述のようにして予め係数a~fが算出された式(1)にRoとLcの値を代入することにより得ることができる。
本実施形態に係る石炭又はコークスの熱履歴推定方法では、熱履歴における最高到達温度が不明な、推定対象となる石炭又はコークスのRoとLcとを測定し、上述のようにして予め係数a~fが算出された式(1)にRoとLcの値を代入することにより得ることができる。
<平均反射率(Ro)の測定>
石炭の平均反射率Roは、石炭化度を示す指標として用いられ、コークス製造における操業管理(石炭配合管理)で広く使用されている。ビトリニットの分析は、JIS M8816-1992によって標準化されている。
平均反射率(Ro)の測定方法の詳細は、実施例に記載の方法による。
石炭の平均反射率Roは、石炭化度を示す指標として用いられ、コークス製造における操業管理(石炭配合管理)で広く使用されている。ビトリニットの分析は、JIS M8816-1992によって標準化されている。
平均反射率(Ro)の測定方法の詳細は、実施例に記載の方法による。
<結晶子の大きさ(Lc)>
結晶子の大きさ(Lc)は、XRD測定を用いた(002)回折線の測定により得られる値である。結晶子の大きさ(Lc)の測定方法は、JIS R7651:2007によって標準化されている。
結晶子の大きさ(Lc)の測定方法の詳細は、実施例に記載の方法による。
結晶子の大きさ(Lc)は、XRD測定を用いた(002)回折線の測定により得られる値である。結晶子の大きさ(Lc)の測定方法は、JIS R7651:2007によって標準化されている。
結晶子の大きさ(Lc)の測定方法の詳細は、実施例に記載の方法による。
以上、本実施形態に係る石炭又はコークスの熱履歴推定方法によれば、推定対象となる石炭又はコークスのRoとLcとを測定し、その後、係数a~fが予め求められている式(1)にRoとLcとを代入することにより、推定対象となる石炭又はコークスの熱履歴における最高到達温度を高精度に算出することができる。推定対象となる石炭又はコークスの熱履歴における最高到達温度を高精度に算出することができる点については実施例からも明らかである。
なお、本実施形態に係る石炭又はコークスの熱履歴推定方法は、一度、式(1)の係数a~fを求めれば、その後は、熱履歴における最高到達温度を推定したい石炭又はコークスのRoとLcを測定すればよく、都度、式(1)の係数a~fを求める必要はない。
以上、本実施形態に係る石炭又はコークスの熱履歴推定方法について説明した。
以下、本発明に関し、実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<係数a~fの導出>
まず、表1に示す3種類の炭(A炭~C炭)を準備した。A炭~C炭は一般に入手可能な単味炭である。
表1には、これらの炭の性状(灰分、揮発分、logMF、Ro、TI)について示している。表1中、灰分、揮発分、logMF、Ro、TIは、下記を意味する。
灰分:石炭を空気中で加熱灰化した後に残留する灰の石炭全体に対する質量百分率(JIS M8812に規定されている)
揮発分:石炭を加熱した際の減量の石炭全体に対する質量百分率(JIS M8812に規定されている)
logMF:ギーセラー最高流動度(ギーセラ-プラストメーターを使用する試験(JIS M8801にその詳細が規定されている石炭の加熱軟化溶融特性試験)において回転翼が最高回転数を示す値の対数値。原料石炭の粘結性を代表する指標。)
Ro:平均反射率(JIS M8816-1992によって標準化されている)
TI:イナート組織全量の石炭全体に対する体積割合(JIS M 8816に従って測定できる。)
<係数a~fの導出>
まず、表1に示す3種類の炭(A炭~C炭)を準備した。A炭~C炭は一般に入手可能な単味炭である。
表1には、これらの炭の性状(灰分、揮発分、logMF、Ro、TI)について示している。表1中、灰分、揮発分、logMF、Ro、TIは、下記を意味する。
灰分:石炭を空気中で加熱灰化した後に残留する灰の石炭全体に対する質量百分率(JIS M8812に規定されている)
揮発分:石炭を加熱した際の減量の石炭全体に対する質量百分率(JIS M8812に規定されている)
logMF:ギーセラー最高流動度(ギーセラ-プラストメーターを使用する試験(JIS M8801にその詳細が規定されている石炭の加熱軟化溶融特性試験)において回転翼が最高回転数を示す値の対数値。原料石炭の粘結性を代表する指標。)
Ro:平均反射率(JIS M8816-1992によって標準化されている)
TI:イナート組織全量の石炭全体に対する体積割合(JIS M 8816に従って測定できる。)
準備した炭(A炭~C炭)を900℃、1100℃、1300℃で焼成した。その後、各温度で焼成した結晶子の大きさ(Lc)をそれぞれ測定した。結果を表2に示す。結晶子の大きさ(Lc)の測定は、具体的には、以下のようにして行った。
<結晶子の大きさ(Lc)の測定>
結晶子の大きさ(Lc)を、X線回折装置(X’Pert PRO MPD、PANalytical社製)を用いて測定した。すなわち、75μm以下に粉砕したコークス試料を用い、標準物質として75μm以下のシリコンを20重量%添加し、2θ=5°~90°の範囲で測定を実施した。測定結果は、Carbon analyzaer2004 Ver.3.51Aを用いて標準シリコンによる補正解析を行い、002面回折ピークから結晶子サイズ(以下「Lc」という)を算出した。結果を表2に示す。
結晶子の大きさ(Lc)を、X線回折装置(X’Pert PRO MPD、PANalytical社製)を用いて測定した。すなわち、75μm以下に粉砕したコークス試料を用い、標準物質として75μm以下のシリコンを20重量%添加し、2θ=5°~90°の範囲で測定を実施した。測定結果は、Carbon analyzaer2004 Ver.3.51Aを用いて標準シリコンによる補正解析を行い、002面回折ピークから結晶子サイズ(以下「Lc」という)を算出した。結果を表2に示す。
図1は、上記にて得られたA炭~C炭の結晶子の大きさ(Lc)と焼成温度(最高到達温度)との関係を示すグラフである。
図1から分かるように、それぞれの炭において、結晶子の大きさ(Lc)と焼成温度(最高到達温度)との関係は、一次関数で表現できる。
そこで、各炭のプロットに対して、最小二乗法により回帰直線を求めた。
その結果、A炭の回帰直線の傾きは411.48、切片は261.99となった。
B炭の回帰直線の傾きは509.57、切片は139.14となった。
C炭の回帰直線の傾きは848.95、切片は-221.61となった。
図1から分かるように、それぞれの炭において、結晶子の大きさ(Lc)と焼成温度(最高到達温度)との関係は、一次関数で表現できる。
そこで、各炭のプロットに対して、最小二乗法により回帰直線を求めた。
その結果、A炭の回帰直線の傾きは411.48、切片は261.99となった。
B炭の回帰直線の傾きは509.57、切片は139.14となった。
C炭の回帰直線の傾きは848.95、切片は-221.61となった。
図2は、横軸を平均反射率Ro、縦軸を図1で示したA炭~C炭の傾きとしてプロットしたグラフである。
図2から分かるように、Roと傾きとの関係は、二次関数で表現できる。
すなわち、
(傾き)=a×(Ro)2+b×(Ro)+c
で表現できる。
そこで、Roと傾きとのプロットに対して、最小二乗法により、二次回帰曲線を求めた。
その結果、
(傾き)=848×(Ro)2-2546×(Ro)+2256
となった。つまり、係数a:848、係数b:-2546、係数c:2256が得られた。
図2から分かるように、Roと傾きとの関係は、二次関数で表現できる。
すなわち、
(傾き)=a×(Ro)2+b×(Ro)+c
で表現できる。
そこで、Roと傾きとのプロットに対して、最小二乗法により、二次回帰曲線を求めた。
その結果、
(傾き)=848×(Ro)2-2546×(Ro)+2256
となった。つまり、係数a:848、係数b:-2546、係数c:2256が得られた。
図3は、横軸を平均反射率Ro、縦軸を図1で示したA炭~C炭の切片としてプロットしたグラフである。
図3から分かるように、Roと切片との関係は、二次関数で表現できる。
すなわち、
(切片)=d×(Ro)2+e×(Ro)+f
で表現できる。
そこで、Roと切片とのプロットに対して、最小二乗法により、二次回帰曲線を求めた。
その結果、
(切片)=-664×(Ro)2+2282×(Ro)-1534
となった。つまり、係数d:-664、係数e:2282、係数f:-1534が得られた。
図3から分かるように、Roと切片との関係は、二次関数で表現できる。
すなわち、
(切片)=d×(Ro)2+e×(Ro)+f
で表現できる。
そこで、Roと切片とのプロットに対して、最小二乗法により、二次回帰曲線を求めた。
その結果、
(切片)=-664×(Ro)2+2282×(Ro)-1534
となった。つまり、係数d:-664、係数e:2282、係数f:-1534が得られた。
以上、結晶子の大きさ(Lc)を横軸、焼成温度(最高到達温度)を縦軸としたときの傾きと切片とがそれぞれ、Roの二次関数として表現することができることから、
[熱履歴における最高到達温度(℃)]=(a×Ro2+b×Ro+c)×Lc+(d×Ro2+e×Ro+f)・・・・・式(1)
として表現することができ、本実施例では、A炭~C炭のRoとLcと最高到達温度との値から、係数a:848、係数b:-2546、係数c:2256:係数d:-664、係数e:2282、係数f:-1534が得られた。
[熱履歴における最高到達温度(℃)]=(a×Ro2+b×Ro+c)×Lc+(d×Ro2+e×Ro+f)・・・・・式(1)
として表現することができ、本実施例では、A炭~C炭のRoとLcと最高到達温度との値から、係数a:848、係数b:-2546、係数c:2256:係数d:-664、係数e:2282、係数f:-1534が得られた。
(実施例2)
<熱履歴における最高到達温度の実測値と推定値との相関関係の検証>
A炭とC炭とを質量比で1:1の割合で配合し、配合炭Xを得た。
<熱履歴における最高到達温度の実測値と推定値との相関関係の検証>
A炭とC炭とを質量比で1:1の割合で配合し、配合炭Xを得た。
次に、JIS M8816-1992に準拠して、配合炭XのRoを測定した。具体的には、アクリル樹脂2gと炭(配合炭X)3gを混合し、110℃でコアを成型した。そのコアの観察対象面を研磨して観察試料を作成した。研磨後の試料は偏光顕微鏡を用いて、試料表面の観察を行い、ビトリニットの輝度を測定して平均最大反射率を算出した。その結果、配合炭XのRoは0.98%であった。
配合炭Xを最高到達温度900℃で加熱した。その後、結晶子の大きさ(Lc)を測定したところ、1.44であった。
次に、上記にて係数a~fを求めた式(1)に、RoとLcを代入し、最高到達温度の推定値を求めたところ、892℃となった。この値は実測値の900℃に近い値といえる。
次に、上記にて係数a~fを求めた式(1)に、RoとLcを代入し、最高到達温度の推定値を求めたところ、892℃となった。この値は実測値の900℃に近い値といえる。
配合炭Xを最高到達温度1100℃で加熱した。その後、結晶子の大きさ(Lc)を測定したところ、1.78であった。
次に、上記にて係数a~fを求めた式(1)に、RoとLcを代入し、最高到達温度の推定値を求めたところ、1092℃となった。この値は実測値の1100℃に近い値といえる。
次に、上記にて係数a~fを求めた式(1)に、RoとLcを代入し、最高到達温度の推定値を求めたところ、1092℃となった。この値は実測値の1100℃に近い値といえる。
図4は、上記にて得られた配合炭Xの最高到達温度の実測値と推定値の関係を示すグラフである。図4から分かるように、900℃~1300℃の範囲において配合炭Xの最高到達温度の実測値と推定値とは、非常に近い値となっていることがわかる。
以上、実施例からも分かるように、本熱履歴推定方法によれば、900℃~1300℃の範囲において石炭又はコークスが受けた熱履歴における最高到達温度を高精度で推定することができる。
Claims (1)
- 石炭又はコークスが受けた熱履歴における最高到達温度を、下記式(1)により算出することを特徴とする石炭又はコークスの熱履歴推定方法。
[熱履歴における最高到達温度(℃)]=(a×Ro2+b×Ro+c)×Lc+(d×Ro2+e×Ro+f)・・・・・式(1)
(ただし、Roは、推定対象の石炭又はコークスの平均反射率、Lcは、粉末XRD測定から得られる(002)回折線の結晶子の大きさ(nm)、a~fは、3種類以上の石炭又はコークスについて予め測定した実際の最高到達温度(℃)とRoとLcを用い、最小二乗法によりフィッティングさせた際に得られる定数である。)
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