JP6722630B2 - ニードルコークスの製造方法 - Google Patents
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Description
これらの手法は、生コークスおよびか焼コークスに水蒸気を作用させる温度が、特許文献1では1000〜1600℃、特許文献2では800〜1400℃と温度領域が広く且つ高温であるために、複数の異なる炭素質からなるか焼コークス中の針状組織が発達していない炭素質のみをガス化除去するという方法ではなく、針状組織が発達した炭素質までもガス化除去し、形成される微細構造によりパッフィングを低減する手法であるためにニードルコークスの歩留まり低下の問題を生じてしまう。
しかしながら、上記技術は生コークスの原料を改質することにより、ニードルコークスの製造に適した生コークスを製造する技術であり、ニードルコークス中に存在する炭素質の結晶性に着目して、ニードルコークスに残留する結晶性の低い炭素質、もしくは針状組織が発達していない炭素質をガス化除去し、ニードルコークスのCTEを低減させる方法ではない。
本発明者らは、この針状組織に成長していない炭素質の制御について鋭意検討を行った。その結果、複数の異なる炭素質からなる、ニードルコークス中の炭素質を個別に化学的に制御するという方法を見出した。
〔1〕生コークスを1200〜1600℃の温度にてか焼してか焼コークスを得る第一工程の後、水蒸気を作用させて再か焼させる第二工程によりニードルコークスを製造する方法であって、前記第二工程の温度領域を、か焼コークスに残存している針状組織が発達していない炭素質がガス化する温度を求めることにより決定した温度領域とすることを特徴とするニードルコークスの製造方法
〔2〕 前記第二工程の温度領域を、か焼コークスの重量変化速度に応じてか焼コークスの昇温速度が連続的に変化するようにか焼コークスの温度を制御し、水蒸気の存在下でか焼コークスを加熱ガス化して熱重量変化曲線(TG曲線)を求め、この曲線に基づいて、か焼コークスに残存している針状組織が発達していない炭素質がガス化する温度を求めることにより決定した温度領域とすることを特徴とする前記〔1〕に記載のニードルコークスの製造方法
〔3〕前記か焼コークスの重量変化速度に応じてか焼コークスの昇温速度を連続的に変化させか焼コークスの温度を制御して熱重量変化曲線(TG曲線)を求める方法は、
(A)あらかじめ任意の定速昇温条件を決めて定速昇温して定速昇温熱重量分析によりTG曲線を測定し、TG曲線より決定される又はTG曲線の微分曲線(DTG曲線)より推定される炭素質のガス化開始温度におけるDTG値(重量変化速度)の絶対値より小さい値を制御目標値に設定する工程と、
(B)工程(A)の定速昇温条件と同一又はその前後の条件でもって定速昇温して定速昇温熱重量分析し、か焼コークスの重量変化速度が前記重量変化速度の制御目標値よりもゆるやかなときには昇温速度は前記定速昇温条件と同一にし、か焼コークスの重量変化速度が前記重量変化速度の制御目標値よりも急激なときには昇温を停止もしくは昇温速度をゆるやかに制御して熱重量変化曲線(TG曲線)を求める工程
を含むことを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載のニードルコークスの製造方法
〔4〕前記第二工程においてか焼コークスに水蒸気を作用させる方法が、か焼装置内に水蒸気を吹き込む、または、第一工程で得たか焼コークスと水を混合して再か焼を実施する前記〔1〕〜〔3〕に記載のニードルコークスの製造方法
これにより、針状組織が発達していない炭素質のみをガス化除去し、針状組織が発達した炭素質のみが残存したニードルコークスを製造することが可能であり、ニードルコークス製造における歩留まり改善が期待できる。
第一工程は、生コークスを1200〜1600℃の温度にてか焼してか焼コークスを製造する。ここで第一工程は、公知の装置、手法により実施すればよい。
本発明の特徴は、前記第二工程の温度領域を、か焼コークスに残存している針状組織が発達していない炭素質がガス化する温度を求めることにより決定した温度領域とする点にある。
ロータリーハース炉においては、固定屋根部分に水蒸気吹き込みノズルを設置し、本発明を実施することができる。
なお、TG曲線およびDTG曲線の測定は、熱重量測定が可能な公知の熱分析装置を用いることができる。
以下、か焼コークスを水蒸気の存在下で加熱ガス化するTG曲線を求める方法について説明する。
既存のニードルコークス製造装置の改良ではなく、新たにニードルコークス製造装置を設置する場合には、第一工程の操業条件に合わせて生コークスからか焼コークスを試作し、それを試料としてTG曲線を求める。
水蒸気を電気炉中に流通させることにより、水蒸気を連続供給でき、且つ、炭素からガス化したガスや発生するタール成分を連続除去することが可能となり、再現性の高いガス化量の測定が実現できる。
段階的に変化させる方法としては、例えば、測定の初期は早い昇温速度で加熱し、重量変化が観測される評価温度付近では昇温速度を5〜20℃/minの間で段階的に制御する方法を挙げることができる。
上記の理由より、昇温速度は5〜20℃/minであることが好ましい。
水蒸気分圧が高くなると、ガス流路および熱重量同時測定装置内にて結露することがある。装置内にて結露が生じるとガス化量の測定が困難になる。
さらに、水蒸気分圧が小さすぎるとガス化反応速度が遅くなり、また一定の測定時間におけるガス化量が小さくなるため測定が困難となるため、可能な範囲で高いことが望ましい。
例えば、結晶性炭素質と非結晶性炭素質からなるか焼コークスの場合、非結晶性炭素質の方がより低い温度もしくはより早い速度でガス化反応が進行する。さらに例えば、配向性の高い炭素質と配向性の低い炭素質からなるか焼コークスの場合、配向性の低い炭素質の方がより低い温度もしくはより早い速度でガス化反応が進行する。
測定の温度範囲は、か焼コークス中の各炭素質のガス化反応が計測できる温度範囲であればよい。具体的には、低温側はか焼コークス原料となる生コークス製造時のコーキング温度付近、例えば450℃付近から、高温側は結晶性炭素質(黒鉛質)のガス化反応が生じる1600℃付近までの温度範囲を測定すればよい。
TG曲線を微分することによりDTG曲線を描き、各炭素質のガス化開始温度におけるDTG値を求め、その絶対値より小さい値を昇温速度の制御目標値に設定することができる。
定速昇温熱重量分析により前記の制御目標値を決定することにより、異なる炭素質の分析をより正確に進めることが可能となる。そして、前記の制御目標値を、ガス化開始温度におけるDTG値(重量変化速度)の絶対値に近づけることにより、より迅速に異なるか焼コークスの分析を進めることが可能となる。
か焼コークスに含まれる炭素質を分離定量する方法は、得られたTG曲線を用いて、各炭素質のガス化開始温度を決定し、各炭素質のガス化開始温度で区分される温度範囲における各炭素質の存在量を測定することでできる。
また、ここで各炭素質の存在量の算出は、各炭素質がガス化する特定された温度領域における試料の重量変化量より算出するのが好ましいが、発生ガスに含まれる炭素量を計測する等により行ってもよい。
なおこれら実施例は、それぞれ、本発明を具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
評価試料としたか焼コークスは、市場で調達した石炭重質油由来のか焼コークスである。
熱重量測定装置には、水蒸気作動型示差熱天秤(株式会社リガク製TG−DTA/HUM−1)を用いた。
評価試料を、およそ10mg、0.01mgまで精秤し、熱重量測定装置に導入した。ここにガス化剤として水蒸気と窒素を混合したガスを300ml/min流した。このときの水蒸気分圧は20kPaとした。ガス化剤を流通した条件で、重量変化速度の絶対値が制御値0.002%/秒よりも小さいときは10℃/min昇温速度で加熱昇温し、重量変化速度の絶対値が制御値0.002%/秒以上の場合は昇温を停止するように試料温度を制御して、TG曲線を計測した。ここで、重量変化速度の制御値0.002%/秒は、事前に等速昇温分析により得たDTG曲線の解析より決定した値である。
得られたTG曲線を図1に示した。
図2の偏光顕微鏡写真を定量的に画像解析することにより、針状組織が発達していない炭素質と針状組織が発達している炭素質との面積比を算出した。解析の結果、針状組織が発達していない炭素質と針状組織が発達している炭素質との面積比は、28:72となった。
実施例1の結果より、評価試料中の針状組織が発達していない炭素質をガス化除去するために必要な温度は、1013℃以上、1113℃未満であることがわかった。このため第二工程における針状組織が発達していない炭素質をガス化除去する温度領域を1100℃付近に決定した。
画像解析結果からも、目視観察を支持する結果、すなわち、針状組織が発達していない炭素質と針状組織が発達している炭素質の面積比、0.3:99.7が得られた。
Claims (2)
- 生コークスを1200〜1600℃の温度にてか焼してか焼コークスを得る第一工程の後、水蒸気を作用させて再か焼させる第二工程によりニードルコークスを製造する方法であって、
前記第二工程の温度領域を、か焼コークスの重量変化速度に応じてか焼コークスの昇温速度が連続的に変化するようにか焼コークスの温度を制御し、水蒸気の存在下でか焼コークスを加熱ガス化して熱重量変化曲線(TG曲線)を求め、この曲線に基づいて、か焼コークスに残存している針状組織が発達していない炭素質がガス化する温度を求めることにより決定した温度領域とし、
前記か焼コークスの重量変化速度に応じてか焼コークスの昇温速度を連続的に変化させ、か焼コークスの温度を制御して熱重量変化曲線(TG曲線)を求める方法は、(A)あらかじめ任意の定速昇温条件を決めて定速昇温して定速昇温熱重量分析によりTG曲線を測定し、TG曲線より決定される又はTG曲線の微分曲線(DTG曲線)より推定される炭素質のガス化開始温度におけるDTG値(重量変化速度)の絶対値より小さい値を制御目標値に設定する工程と、(B)前記工程(A)の定速昇温条件と同一又はその前後の条件でもって定速昇温して定速昇温熱重量分析し、か焼コークスの重量変化速度が前記重量変化速度の制御目標値よりもゆるやかなときには昇温速度は前記定速昇温条件と同一にし、か焼コークスの重量変化速度が前記重量変化速度の制御目標値よりも急激なときには昇温を停止もしくは昇温速度をゆるやかに制御して熱重量変化曲線(TG曲線)を求める工程を含み、前記熱重量変化曲線(TG曲線)に基づいて、か焼コークスに残存している針状組織が発達していない炭素質がガス化する温度を求める方法であり、
前記第一工程で得られたか焼コークスを前記第二工程で前記第二工程の温度領域に加熱して水蒸気と作用させて、か焼コークスに残存している針状組織が発達していない炭素質をガス化させることを特徴とするニードルコークスの製造方法。 - 前記第二工程においてか焼コークスに水蒸気を作用させる方法が、か焼装置内に水蒸気を吹き込む、または、第一工程で得たか焼コークスと水を混合して再か焼を実施する請求項1に記載のニードルコークスの製造方法。
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