JP3918093B2 - 熱分析装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミック等の無機材料、鉄鋼等の金属材料、あるいは樹脂等の有機材料の熱機械分析(TMA),熱重量分析(TG)による特性評価試験を行なうようにした熱分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の熱分析装置として、従来、特開平9−26402号公報に提案されているものがある。この熱分析装置は、加熱炉と膨張収縮測定部を有する熱機械分析部とを基本型とし、この熱機械分析部のアタッチメントを取り外し、熱重量分析部のアタッチメントを取付けることにより、1つの加熱炉で熱機械分析と熱重量分析との両方を行えるようにしたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来公報の熱分析装置では、熱機械分析と熱重量分析とでデータの整合性が低いという問題がある。即ち、熱機械分析と熱重量分析とでそれぞれ個別に同じ試料を測定すると、昇温・雰囲気プロファイルを一致させても試料の重量の増減と試料寸法の膨張収縮温度領域がずれ、各データの整合性が得られない場合がある。これは、炉内容積や試料近辺の雰囲気状態、TG,TMAの各装置の炉内での試料環境条件が異なることから熱挙動データがその影響を受けるためであると考えられる。
【0004】
また上記従来装置では、例えば熱膨張率曲線の傾きが急に変化した場合、その現象が酸化によるものなのか,あるいは転移によるものなのかを判断することが難しく、熱分析に対する信頼性に欠けるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたもので、熱機械分析と熱重量分析とのデータの整合性を高めることができるとともに、熱分析に対する信頼性を向上できる熱分析装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、試料を所定の温度・雰囲気プログラムに基づいて加熱処理する加熱制御部を備えた熱処理炉と、上記試料の機械的特性を温度又は時間の関数として測定する熱機械分析部と、上記試料の重量変化を温度又は時間の関数として測定する熱重量分析部と、上記熱機械分析部のデータと熱重量分析部のデータとを同時にかつ連続して記録する記録部とを備えたことを特徴とする熱分析装置である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、上記記録部は、炉内雰囲気温度、試料温度、炉内雰囲気ガス濃度を同時に並行して記録するように構成されていることを特徴としている。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、熱重量分析用試料皿が所定間隔をあけて積み重ねられており、該各試料皿を貫通するよう穴が形成され、該穴内に上記熱機械分析部の計測部が挿入配置されていることを特徴としている。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3において、上記熱機械分析部及び熱重量分析部は相対的に昇降可能となっていることを特徴としている。
【0010】
請求項5の発明は、請求項3又は4において、上記熱処理炉は、炉内雰囲気ガスの流れを熱重量分析用試料皿の載置面に平行な平行ガス流、あるいは拡散ガス流、もしくは循環ガス流の何れかに設定できる機能を有していることを特徴としている。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1ないし5の何れかにおいて、上記熱処理炉によって熱機械分析用試料の線膨張をダイナミックにコントロールし、その際の熱重量分析用試料の質量変化を上記熱重量分析部によって測定することを特徴としている。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1ないし5の何れかにおいて、上記熱処理炉によって熱重量分析用試料の質量変化をダイナミックにコントロールし、その際の熱機械分析用試料の線膨張を上記熱機械分析部によって測定することを特徴としている。
【0013】
【発明の作用効果】
請求項1の発明に係る熱分析装置によれば、熱機械分析と熱重量分析とを同時に行い、かつ各データを同時に連続して記録するようにしたので、試料の機械的特性及び重量変化を同一の温度・雰囲気条件で測定することが可能となり、熱機械分析と熱重量分析とのデータの整合性を高めることができる。
【0014】
また各データを同時に測定するので、例えば熱機械分析のデータである熱膨張率曲線の傾きが急に変化した場合には、熱重量分析を同時に行なっていることからこの熱膨張率曲線の急変が酸化によるものか、あるいは転移によるものかを容易に判断することができ、熱分析に対する信頼性を向上できる。
【0015】
請求項2の発明では、炉内雰囲気温度、試料温度、炉内ガス濃度を並行して同時にかつ連続して記録するので、複数種類の異種計測センサによる各パラメータの同時測定が可能となる。
【0016】
請求項3の発明では、熱重量分析用試料皿を複数積み重ねるとともに、各試料皿を貫通する穴を形成し、該穴内に熱機械分析部の計測部を挿入配置したので、熱機械分析用試料と熱重量分析用試料とを近接させた状態で両試料を独立させてかつ同時に測定することができ、データの整合性をより高めることができる。
【0017】
また上記熱機械分析用試料と熱重量分析用試料とが同時に存在する空間内の温度及び雰囲気のばらつきを小さくすることができ、同一の温度・雰囲気条件で熱処理を行なうことができる。
【0018】
請求項4の発明では、熱機械分析部と熱重量分析部とを相対的に昇降可能としたので、加熱条件や雰囲気ガス流条件に応じて熱機械分析用試料,熱重量分析用試料のセッティング位置を自由に設定できる。
【0019】
請求項5の発明では、炉内雰囲気ガスの流れを試料皿の載置面に平行な平行ガス流,拡散ガス流,あるいは循環ガス流の何れかに設定したので、温度・雰囲気プロファイルに応じた最適な雰囲気ガス流に設定することができる。
【0020】
請求項6の発明では、熱機械分析用試料の線膨張をダイナミックにコントロールする際に熱重量分析用試料の質量変化を測定するようにし、また請求項7の発明では、熱重量分析用試料の質量変化をダイナミックにコントロールする際に熱機械分析用試料の線膨張を計測するようにしたので、一方の試料の機械的特性を測定しつつ他方の試料の重量変化を測定することができ、またその逆も行なうことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
図1ないし図4は、本発明の一実施形態による熱分析装置を説明するための図であり、図1は熱分析装置の全体構成図、図2は熱分析装置の熱処理炉の断面平面図、図3,図4は熱分析装置の昇降駆動部の概略図である。
【0023】
図において、1は熱分析装置を示しており、これは熱処理炉2と、該熱処理炉2内に収容された試料を所定の温度・雰囲気プログラムに基づいて加熱処理する加熱制御部(制御盤)3と、試料の機械的特性を温度又は時間の関数として測定する熱機械分析部4と、試料の重量変化を温度又は時間の関数として測定する熱重量分析部5とを備えている。上記熱機械分析部4は、例えば試料に一定荷重を加えた状態で予め決められた温度プログラムに従って温度を変化させたときの試料の寸法変化から試料の熱膨張率や軟化温度を測定したり、あるいはさらに引っ張りや曲げの機械的特性を測定する。また熱重量分析部5は、予め決められた温度プログラムにより温度を変化させたときの試料の重量変化を計測する。
【0024】
上記熱処理炉2の前壁部には引出式の前扉2aが配設され、天壁部には雰囲気ガス供給管6,6が水平方向に向けて挿入され、さらに側壁部には側面ヒータ7,7が配設されている。上記各雰囲気ガス供給管6には炉外に設置された雰囲気ガス供給装置8が接続されている。ここで、雰囲気ガスの炉内供給方法については各種の変形例が採用可能であり、例えば、雰囲気ガス供給管6a,6aを底壁2bから垂直方向に起立させて配置してもよく(図5(a)参照)、また雰囲気ガス供給管6b,6bを側壁2cから天壁2d,底壁2bに平行となるよう水平方向に向けて配置してもよい(図5(b)参照)。さらに雰囲気ガス供給口6c,6cを底壁2bと天壁2dに配置してもよい(図5(c)参照)。
【0025】
上記加熱制御部3は記憶装置を内蔵するCPU10を備えている。このCPU10には、予め設定された所定の温度・雰囲気プログラムを内蔵するシーケンサ11が変換器12,マルチプレクサ13,COM14を介在させて接続されており、また炉内温度を検出する炉内温度センサ15、酸素,炭酸ガス,水素等の炉内雰囲気ガス濃度を検出するガス濃度センサ16がAD変換器17を介在させて接続されている。
【0026】
また上記CPU10には上記熱機械分析部4が上記AD変換器17を介して接続され、上記熱重量分析部5がマルチプレクサ13,COM14を介して接続されている。
【0027】
そして上記CPU10は、各センサ15,16からの検出値及び各熱分析部4,5からのTMA,TGデータに基づいてヒータ出力値を算出し、DA変換器18,マスフローコントローラ19を介して雰囲気ガス供給装置8,側面ヒータ7の出力制御を行なうとともに、上記各検出値及び各TMA,TGデータを同時にかつ連続して記録するように構成されている。
【0028】
上記熱重量分析部5は、熱処理炉2の底壁に挿入配置された電子天秤20と、該電子天秤20にスペーサ22を介在させて上下方向に所定間隔をあけて積み重ねて配置された複数の熱重量分析用試料皿21とを備えている。
【0029】
上記各試料皿21は厚さ0.5〜3mm程度の円板状,矩形又は多角形状のもので、各試料皿21の中心部には15〜30mmφ程度の穴21aが同軸をなすように形成されている。上記各試料皿21には熱重量分析用試料23が載置されている。そして電子天秤20により測定された試料23の重量データとともに、熱電対24により検出された試料23の温度が上記マルチプレクサ13からCPU10に入力される。
【0030】
上記電子天秤20には昇降駆動機構27が配設されており、この昇降駆動機構27により電子天秤20を介して試料皿21が任意の高さ位置にセットされるようになっている。
【0031】
上記熱機械分析部4は、熱処理炉2の天井部に挿入配置され、熱機械分析用試料30が配設されたTMA計測管31と、該TMA計測管31の炉外上端に接続された接触式のTMA本体32とから構成されている。
【0032】
上記TMA計測管31は上記各試料皿21の穴21a内に挿入されている。そして上記試料30に押圧力,引張力を加えることにより試料30の寸法変化等の機械的特性データが上記CPU10に入力される。
【0033】
また上記TMA本体32には昇降駆動機構33が配設されており、この昇降駆動機構33によりTMA計測管31の試料30が任意の高さ位置にセットされるようになっている。
【0034】
本実施形態の熱分析装置1によれば、1つの熱処理炉2で熱機械分析と熱重量分析とを同時に行なうとともに、各TMA,TGデータを連続してCPU10の記録装置により記録するようにしたので、試料30の機械的特性及び各試料23の重量変化を同一の温度・雰囲気条件下で測定することができ、熱機械分析と熱重量分析とのデータの整合性を高めることができる。
【0035】
また各TMA,TGデータを同時に測定するので、熱機械分析部4のTMAデータである熱膨張率曲線の傾きが急に変化した場合には、熱重量分析部5によるTGデータから上記熱膨張率曲線の急変が酸化によるものか、あるいは転移によるものかを容易に判断することができ、熱分析に対する信頼性を向上できる。
【0036】
また上記TMA,TGデータとともに、炉内雰囲気温度,試料温度,炉内雰囲気ガス濃度を並行してかつ同時に連続して記録するので、複数種類の異種計測センサによる各パラメータの同時測定が可能となる。
【0037】
本実施形態では、各熱重量分析用試料皿21の中心部に同軸をなすように穴21aを形成し、該穴21a内にTMA計測部31を挿入配置したので、熱機械分析用試料30と熱重量分析用試料23とを近接させた状態で両試料30,23を独立させてかつ同時に測定することができ、データの整合性をより高めることができる。
【0038】
また上記熱機械分析用試料30と熱重量分析用試料23とが同時に存在する空間内の温度のばらつきを例えば2℃以内と極めて小さくできるとともに、雰囲気のばらつきを小さくすることができ、同一の温度・雰囲気条件で熱処理を行なうことができる。
【0039】
本実施形態では、上記熱機械分析部4及び熱重量分析部5にそれぞれ独立した昇降駆動機構33,27を配設したので、加熱条件や雰囲気ガス流条件に応じて熱機械分析用試料30,熱重量分析用試料23のセッティング位置を自由に設定できる。
【0040】
またTG測定用試料皿21の任意の位置におけるTMA測定が可能となるとともに、熱処理炉2内の雰囲気ガス供給管6に対して最適な位置にTG試料30を位置させることができる。
【0041】
図6は、本実施形態の効果を確認するために行った実験結果を示す特性図である。本実験では、無機物,樹脂,金属成分で構成された電子部品の半製品を採用し、該半製品を1つの熱処理炉にて同一の温度・雰囲気条件下で加熱し、熱重量分析測定と熱機械分析測定とを同時に行った。また比較するために、従来のTG,TMA単独測定装置による測定も行った。図7(a)はTG単独装置による測定データを示す特性図であり、図7(b)はTMA単独装置による測定データを示す特性図である。
【0042】
図6からも明らかなように、本実施形態のTG/TMA同時測定の場合には、同一の温度・雰囲気条件下で測定できることから、TGとTMAとのデータの整合性を得ることができる。これに対して、TG単独測定装置とTMA単独測定装置とでそれぞれ個別に同じ試料を測定した場合には、温度・雰囲気プロファイルを一致させても(TGの)重量の増減と(TMAの)試料寸法の膨張収縮温度領域がずれ易く、TG/TMAデータの整合性が低い。
【0043】
【表1】
【0044】
表1は検出できた樹脂分解挙動の温度幅を表している。表1からも明らかなように、樹脂成分の分解(原料・収縮)挙動完了温度に関して見ると、TG/TMA同時測定におけるTMAとTGとのデータ間の温度差は20℃である。これに対してTG,TMA単独測定装置では両者の間に70℃の開きが生じていることがわかる。
【0045】
【表2】
【0046】
表2は検出できた金属酸化挙動の温度幅を表している。表2からも明らかなように、金属酸化挙動に関して見ると、TG/TMA同時測定を行った場合ではTGの酸化重量増とTMAの膨張挙動の温度域とは430℃で一致している。一方、TG,TMA単独測定装置の場合では両者の間に80℃の開きがあり、温度域が不一致となっている。このように、TG/TMA同時測定を行なうことにより、TMA/TGデータの整合性が改善され、材料の特性評価を行なううえで極めて有効であることがわかる。
【0047】
近年、制御された所定の雰囲気下での熱処理が重要になっている。例えば、卑金属電極材料を用いた積層コンデンサでは、熱処理時の雰囲気コンディションによって特性に大きな影響を受ける。TGとTMAとを別個の装置で測定した場合には、その時の雰囲気が同じ状態になるとは限らない。例えば、ガス投入量等の条件を一致させても諸々の要因の影響でずれてくる可能性がある。このため、全く同じ雰囲気コンディション下でTGとTMAとを同時に測定することは重要な意味があり、測定後にデータ解析する際にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による熱分析装置の全体構成図である。
【図2】上記熱分析装置の熱処理炉の断面平面図である。
【図3】上記熱分析装置の昇降駆動部の概略図である。
【図4】上記熱分析装置の昇降駆動部の概略図である。
【図5】上記実施形態の雰囲気ガス供給管の配置構造の変形例を示す図である。
【図6】上記実施形態のTG/TMA同時測定データを示す特性図である。
【図7】従来のTG,TMA単独測定データを示す特性図である。
【符号の説明】
1 熱分析装置
2 熱処理炉
3 加熱制御部
4 熱機械分析部
5 熱重量分析部
10 CPU(記録部)
21 熱重量分析用試料皿
21a 穴
27,33 昇降駆動機構
Claims (7)
- 試料を所定の温度・雰囲気プログラムに基づいて加熱処理する加熱制御部を備えた熱処理炉と、上記試料の機械的特性を温度又は時間の関数として測定する熱機械分析部と、上記試料の重量変化を温度又は時間の関数として測定する熱重量分析部と、上記熱機械分析部のデータと熱重量分析部のデータとを同時にかつ連続して記録する記録部とを備えたことを特徴とする熱分析装置。
- 請求項1において、上記記録部は、炉内雰囲気温度、試料温度、炉内雰囲気ガス濃度を同時に並行して記録するように構成されていることを特徴とする熱分析装置。
- 請求項1又は2において、熱重量分析用試料皿が所定間隔をあけて積み重ねられており、該各試料皿を貫通するよう穴が形成され、該穴内に上記熱機械分析部の計測部が挿入配置されていることを特徴とする熱分析装置。
- 請求項3において、上記熱機械分析部及び熱重量分析部は相対的に昇降可能となっていることを特徴とする熱分析装置。
- 請求項3又は4において、上記熱処理炉は、炉内雰囲気ガスの流れを熱重量分析用試料皿の載置面に平行な平行ガス流、あるいは拡散ガス流、もしくは循環ガス流の何れかに設定できる機能を有していることを特徴とする熱分析装置。
- 請求項1ないし5の何れかにおいて、上記熱処理炉によって熱機械分析用試料の線膨張をダイナミックにコントロールし、その際の熱重量分析用試料の質量変化を上記熱重量分析部によって測定することを特徴とする熱分析装置。
- 請求項1ないし5の何れかにおいて、上記熱処理炉によって熱重量分析用試料の質量変化をダイナミックにコントロールし、その際の熱機械分析用試料の線膨張を上記熱機械分析部によって測定することを特徴とする熱分析装置。
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