(実施形態1)
以下、記録装置の一実施形態を、図面に従って説明する。
図1に示すように、記録装置11は、全体として鉛直方向Zに長い略直方体状をなしており、収容ユニットの一例としてのプリンター部12と、プリンター部12上に配置されたスキャナー部13と、スキャナー部13上に配置された自動給紙装置14とを備えている。プリンター部12上におけるスキャナー部13の隣には、記録装置11の各種の操作を行うための操作部15が設けられている。
図2に示すように、プリンター部12内には、媒体の一例としての用紙Pが搬送される搬送経路の一例としての媒体搬送路20と、複数のローラー(ローラー対)によって構成されるとともに用紙Pを媒体搬送路20に沿って搬送する搬送部21とが備えられている。また、プリンター部12内には、用紙Pを鉛直方向Zの下側から支持する支持台22と、支持台22に支持された用紙Pに画像を印刷(記録)するライン型の記録部23とが収容されている。
プリンター部12は、図2における紙面と直交する方向を用紙Pの幅方向Xとし、この幅方向Xと交差する方向を搬送方向として用紙Pを支持台22上及び媒体搬送路20に沿って搬送する。記録部23は、用紙Pの搬送方向と交差する幅方向Xの略全域に渡ってインクを同時に噴射可能な液体吐出ヘッドとしてのラインヘッドを下部に備え、支持台22上を搬送される用紙Pに対して鉛直方向Zの上側からインクを噴射して付着させることによって画像を印刷する。
印刷された用紙Pは、排紙ローラー対24や他の複数の搬送ローラー対25によって記録部23から媒体搬送路20に搬送され、媒体搬送路20の下流側の端部に設けられた排出部の一例としての媒体排出口26から排出される。媒体排出口26から排出された用紙Pは、落下して記録部23の鉛直方向Zの上側に配置された支持部の一例としての載置台27上に、図2において二点鎖線で示すように積層状態で載置される。すなわち、載置台27は、媒体排出口26から排出されて落下する印刷済みの用紙Pを順次受けて支持する。
図1及び図2に示すように、載置台27は、略矩形板状をなしており、用紙Pの排出方向Wに向かうほど高さが高くなるように傾斜している。載置台27の上面は、傾斜した載置面28とされ、この載置面28上に用紙Pが載置される。載置面28上における用紙Pの幅方向Xの略中央には、排出方向Wに延在する凸部29が形成されている。
そして、載置面28上に載置された用紙Pは、載置面28の傾斜に沿って排出方向Wとは反対の方向に滑落し、図2において二点鎖線で示すように、排出方向W側とは反対側の端部がプリンター部12における媒体排出口26の下側に設けられた縦側壁30に当接することによって位置決めされる。なお、用紙Pの排出方向Wは、水平面に対して載置面28よりも大きく傾斜している。
図2に示すように、本実施形態では、媒体搬送路20は、用紙Pを記録部23から媒体排出口26まで搬送する媒体排出路34と、用紙Pを記録部23に供給する媒体供給路とを有し、当該媒体供給路は、第1媒体供給路31と、第2媒体供給路32と、反転経路の一例としての第3媒体供給路33とによって構成されている。
媒体排出路34は、記録部23により印刷された用紙Pが媒体排出口26まで搬送される間において、記録部23により印刷された用紙Pの記録面を内側にして湾曲する湾曲路34Aと、この湾曲路34Aから媒体排出口26へ向かって用紙Pが一方向に搬送される直線路34Bとを有している。
そして、媒体排出路34は、用紙Pが湾曲路34A及び直線路34Bを搬送されることによって、用紙Pの記録面が鉛直方向において上側に向く状態から下側に向く状態に用紙Pを反転させる湾曲反転経路として機能する。したがって、用紙Pは、この湾曲反転経路として機能する媒体排出路34を通ることによって、その記録面が載置台27の載置面28と対峙する状態となって、媒体排出口26から、記録部23の上方に位置する載置台27上に排出される。
また、媒体搬送路20が有する媒体排出路34において、直線路34Bを搬送される用紙Pの搬送方向は直線路34Bが有する一方向であり、本実施形態では、この一方向は媒体排出口26に向かって上昇する先上がりの斜め方向とされている。したがって、この斜めとなった直線路34Bの方向(一方向)が媒体排出口26から排出される用紙Pの排出方向Wとなる。
第1媒体供給路31では、プリンター部12の一側面に備えられたカバー35を開けることによって露出する挿入口36から挿入される用紙Pが記録部23へ搬送される。すなわち、挿入口36へ挿入された用紙Pは、ホッパー37によって第1駆動ローラー38aに押し付けられ、第1駆動ローラー38aの回転駆動によって搬送されて第1駆動ローラー38aと第1従動ローラー38bとの間に挟まれた後、第1駆動ローラー38aの回転駆動によって記録部23へ向かって搬送される。
第2媒体供給路32では、プリンター部12の下側となる底部に挿抜可能に備えらえた用紙カセット39に積層可能に載置される用紙Pが記録部23へ搬送される。すなわち、用紙カセット39に積層状態で載置された用紙Pは、最上位の用紙Pがピックアップローラー40で送り出され、分離ローラー対41で一枚ずつに分離された後、第2駆動ローラー42aと第2従動ローラー42bとの間に挟まれ、第2駆動ローラー42aの回転駆動によって記録部23へ向かって搬送される。
第3媒体供給路33では、用紙Pに対して両側のシート面(紙面)に印刷する両面印刷を行う場合に、記録部23によって片側のシート面が印刷済みとされた用紙Pが、再び記録部23へ搬送される。すなわち、記録部23よりも用紙Pの搬送方向の下流側には、媒体排出路34の途中に設けられた分岐機構43の動作によって媒体排出路34から分岐する分岐搬送路44が設けられている。分岐搬送路44には、正転と逆転の双方の回転が可能な分岐搬送路ローラー対45が分岐機構43の下流側に設けられている。
そして、片側のシート面が印刷された用紙Pは、両面印刷に際して記録部23側から載置台27側に向かって一旦この分岐搬送路44へ、正転する分岐搬送路ローラー対45によって搬送される。このとき分岐搬送路44へ搬送された用紙Pはその搬送方向の先端側の一部Peが媒体排出口26から飛び出した場合、載置台27に積層状態で載置された用紙Pとは接触しないようにその飛び出し位置が設定されている。
その後、分岐搬送路44へ搬送された用紙Pは、逆転する分岐搬送路ローラー対45によって分岐搬送路44を載置台27側から記録部23側へ逆搬送される。このとき、逆搬送される用紙Pは第3媒体供給路33へ搬送され、複数の搬送ローラー対25によって記録部23に向かって搬送される。この第3媒体供給路33への搬送によって、用紙Pは印刷されていないシート面が記録部23と対向するように反転し、第3駆動ローラー46aと第3従動ローラー46bとの間に挟まれ、第3駆動ローラー46aの回転駆動によって記録部23へ向かって搬送される。
各媒体供給路を記録部23へ向かって搬送される用紙Pは、記録部23の搬送方向の上流側に配設された整列ローラー対47まで搬送されたのち、回転が停止した整列ローラー対47にその先端が突き当たる。そして、用紙Pは、このような整列ローラー対47へ突き当たった状態によって搬送方向に対する傾きが補正(スキュー取り)される。そして傾きが補正された用紙Pは、その後の整列ローラー対47の回転駆動によって、整列状態となって記録部23側へ搬送される。
整列ローラー対47によって記録部23側に搬送された用紙Pは、記録部23に対して用紙Pの搬送方向の上流側に配設された紙送りローラー対48や搬送方向の下流側に配設された排紙ローラー対24及び搬送ローラー対25などによって、記録部23に対向しながら搬送される。この搬送される用紙Pに、対向する記録部23からインクが噴射されて印刷が行われる。
図2に示すように、プリンター部12内には、記録部23に供給するインクを貯留する液体貯留部50が備えられている。すなわち、液体貯留部50は、チューブなどによって構成される図示しないインク供給路を介して、貯留したインクを記録部23に供給し、記録部23は供給されたインクを噴射して用紙Pに画像等を印刷する。本実施形態では、液体貯留部50は、載置台27に載置された用紙Pよりも鉛直方向Zの上側に配置されている。また、液体貯留部50は、鉛直方向Zの上側から見て媒体排出路34の少なくとも一部を覆うように配置されている。
すなわち、湾曲反転経路である媒体排出路34の上側は、湾曲路34Aから続く直線路34Bによって一方向に向く斜めの形状になっている。このため、プリンター部12内には、湾曲路34Aにおける上側の部分から斜め形状となった直線路34Bの媒体排出口26までの間の上側に、空間12Sが形成される。
本実施形態では、この空間12Sは、幅方向Xにおいて、上側から見て媒体排出路34を覆うようにプリンター部12内に形成される。そして、液体貯留部50は、この空間12S内において、上側から見て媒体排出路34の少なくとも一部を覆うように配置される。なお、本実施形態では、液体貯留部50は、上側から見て媒体排出路34を幅方向Xにおいて全部を覆うように配置されている。
また、この空間12Sにおいて、媒体排出路34に設けられた排出ローラーとして機能する複数の搬送ローラー対25のうち媒体排出路34において用紙Pの搬送方向の最も下流側に位置する搬送ローラー対25aは、液体貯留部50と水平方向から見て重なる位置に設けられている。
さらに、この空間12Sにおいて、液体貯留部50が占有する空間を除く空間内であって、媒体排出口26よりも用紙Pの排出方向Wの下流側に位置し、媒体排出口26から排出される用紙Pを載置面28側に押しつける方向に送風する送風部57が備えられている。この送風部57は回転ファン58を有して構成され、液体貯留部50と水平方向から見て重なる位置に設けられている。
なお、本実施形態では、送風部57は、その風の吹き出し口が載置面28の凸部29を中心にして用紙Pの幅方向Xの両端部と対向するように、用紙Pの幅方向Xにおいて一対設けられている。もちろん、送風部57は一つとされ、その風の吹き出し口が用紙Pの幅方向Xに連続する形状とされてもよい。
液体貯留部50は、複数種類(ここでは4つの色)のインクをそれぞれ貯留する液体貯留体としてのインクカートリッジ51,52,53,54と、各インクカートリッジ51,52,53,54が装着される枠体55を含んで構成されている。各インクカートリッジ51,52,53,54は長手方向を有する略直方体形状とされ、一面が開口する箱形状とされた枠体55に対して、その開口を介し、長手方向を挿抜方向として挿抜可能に装着される。
本実施形態では、各インクカートリッジ51,52,53,54の挿抜方向は幅方向Xに沿う方向とされている。このため、プリンター部12には、幅方向Xから見て枠体55の開口が露出する図示しない開口部が形成され、この開口部を開閉可能な貯留部カバー56(図1参照)が備えられている。そして、例えば、記録装置11の使用者が、貯留部カバー56(図1参照)を開けて図示しない開口部を露出させ、この露出した開口部を介して、各インクカートリッジ51,52,53,54を、幅方向Xに沿って枠体55へ挿入したり枠体55から抜出したりすることが可能とされている。
また、本実施形態では、各インクカートリッジ51,52,53,54は枠体55に装着された状態で、その短手方向が鉛直方向Z、その長手方向が幅方向Xとされるとともに、その厚さ方向が排出方向Wに沿う水平方向とされている。そして、各インクカートリッジ51,52,53,54は、それぞれ短手方向(鉛直方向Z)の長さが同じであって、厚さ方向に並んだ状態で枠体55に装着される。
また、各インクカートリッジ51,52,53,54のうちのインクカートリッジ54は、記録部23からの噴射頻度の最も高い色(例えば、黒色)のインクを貯留するインクカートリッジとされ、媒体排出口26に対して、載置台27側とは反対側へ最も離れた位置に配置されている。そして、インクカートリッジ54は、その厚さが他のインクカートリッジ51,52,53の厚さよりも厚くされ、他のインクカートリッジ51,52,53のインクの貯留量よりも多い液量のインクを貯留することが可能とされている。
図2に示すように、プリンター部における記録部23と載置台27との間には、載置台27とで用紙Pを反転させる反転経路である第3媒体供給路33の一部を形成する矩形板状をなす経路形成部材61が配置されている。すなわち、載置台27の下面と経路形成部材61の上面とによって第3媒体供給路33が形成される。経路形成部材61は、排出方向Wに向かうほど高さが高くなるように傾斜している。
図3に示すように、プリンター部12における縦側壁30の下側には幅方向Xにおいて対をなすように軸62が設けられており、これら一対の軸62は幅方向Xに延びている。載置台27の排出方向Wの上流側の端部における幅方向Xの一端部には扇形の扇歯車63が設けられ、他端部には図示しない軸受部が設けられている。扇歯車63は一方の軸62に対して一体回動可能に連結され、軸受部は他方の軸62に回動可能に支持されている。したがって、載置台27は、一対の軸62を中心として回動可能になっている。
すなわち、載置台27は、プリンター部12に対して開閉可能に設けられており、プリンター部12を閉塞する閉塞位置(図1に示す閉じた状態の位置)と、プリンター部12を開放する開放位置(図4に示す開けた状態の位置)との間で回動(開閉動作)可能になっている。したがって、載置台27が開閉動作(回動動作)する際の開閉支点(回動中心)は、排出方向Wの上流側(図3では左側)に位置している。
この場合、載置台27は、上から見たときの記録部23との重なり部分が、閉じた状態よりも少なくなるまで開くことが可能に構成されている。すなわち、載置台27は、上から見たときの記録部23との重なり部分が、閉塞位置にあるときよりも開放位置にあるときの方が少なくなるように構成されている。
図3に示すように、プリンター部12内の縦側壁30における載置台27とは反対側には、トルクヒンジ64が設けられている。トルクヒンジ64は、複数の歯車を有した歯車機構65を介して扇歯車63と噛合している。この場合、トルクヒンジ64は、歯車機構65を介して、常に、載置台27に対して載置台27が開放位置側に向かって回動する方向に付勢している。
トルクヒンジ64の付勢力は、載置台27を閉塞位置から開放位置へ自動的に回動させる程大きくはなく、使用者が載置台27を閉塞位置から開放位置へ回動させる際にアシストする程度の大きさに設定されている。さらに、トルクヒンジ64の付勢力は、開放位置へ回動された載置台27を開放位置で保持するのに必要な力よりも若干大きくなるように設定されている。
図3及び図5に示すように、載置台27における幅方向Xの両側部には、幅方向Xに延びる軸部材68を中心に回動可能な係止レバー66がそれぞれ設けられている。2つの係止レバー66は、経路形成部材61における幅方向Xの両側部に設けられたピン67に対してそれぞれ係止可能になっている。
すなわち、各係止レバー66は、載置台27が閉塞位置にあるときに、各ピン67に係止される係止位置(図3に二点鎖線で示す位置)と、各ピン67との係止状態が解除される解除位置(図3に実線で示す位置)との間で回動可能になっている。そして、各係止レバー66は、図示しない付勢部材によって常に係止位置に向かって軸部材68を中心に回動する方向(図3では時計回り方向)に付勢されている。したがって、載置台27は、閉塞位置にある場合、各係止レバー66が各ピン67に係止されることで、トルクヒンジ64の付勢力に抗して閉塞位置に保持される。
図5及び図6に示すように、経路形成部材61は、縦側壁30の端部における幅方向Xの両端部に支持アーム61aをそれぞれ有している。プリンター部12内における2つの支持アーム61aの先端部と対応する位置には、それぞれ軸部69が幅方向Xに沿って突設されている。各支持アーム61aは、先端部において、各軸部69に対して回動自在且つ着脱自在に支持されている。したがって、経路形成部材61は、各軸部69を中心として回動可能になっている。
すなわち、経路形成部材61は、プリンター部12に対して開閉可能に設けられており、プリンター部12を閉塞する閉塞位置(図5に示す閉じた状態の位置)と、プリンター部12を開放する開放位置(図6に示す開けた状態の位置)との間で回動(開閉動作)可能になっている。したがって、経路形成部材61が開閉動作(回動動作)する際の開閉支点(回動中心)は、排出方向Wの上流側(図5では左側)に位置している。
この場合、経路形成部材61は、上から見たときの記録部23との重なり部分が、閉じた状態よりも少なくなるまで開くことが可能に構成されている。すなわち、経路形成部材61は、上から見たときの記録部23との重なり部分が、閉塞位置にあるときよりも開放位置にあるときの方が少なくなるように構成されている。
経路形成部材61は、通常、閉塞位置にある状態では、プリンター部12に対して図示しないねじによってねじ止めされている。したがって、経路形成部材61は、ねじを外してプリンター部12に対するねじ止め状態を解除した後、各支持アーム61aを各軸部69から外すことで、プリンター部12から取り外すことが可能とされている。すなわち、経路形成部材61は、プリンター部12に対して着脱可能に構成されている。
次に、記録装置11における記録部23のメンテナンス作業を行う際の作用について説明する。
さて、記録部23のメンテナンス作業の一つである交換作業を行うに際し、記録装置11から記録部23を取り出す場合には、まず、図5に示すように、プリンター部12からスキャナー部13、自動給紙装置14、及び操作部15を取り外す。続いて、係止レバー66を解除位置に回動させた状態で、載置台27を開放動作させて開放位置へ回動させる。このとき、載置台27は、トルクヒンジ64の付勢力によって開放位置で保持される。
続いて、経路形成部材61をプリンター部12に固定しているねじを外してプリンター部12に対する経路形成部材61のねじ止め状態を解除した後、図6に示すように、経路形成部材61を開放動作させて開放位置へ回動する。これにより、記録部23が露出される。すなわち、載置台27が開いた状態で経路形成部材61を開放動作させることで、プリンター部12の外部から記録部23に対して上方からアクセス可能なアクセス経路AKが形成される。
続いて、経路形成部材61の各支持アーム61aを各軸部69から外すことで、図7に示すように、経路形成部材61をプリンター部12から取り外す。続いて、図8に示すように、アクセス経路AKを通して上方から記録部23にアクセスし、記録部23をプリンター部12内から取り出す。そして、この取り出した記録部23は、新しいものと交換されてプリンター部12内の所定の位置に組み付けられる。
続いて、経路形成部材61をプリンター部12における元の位置に取り付けた後、載置台27を閉塞位置へ回動させる。その後、プリンター部12に、スキャナー部13、自動給紙装置14、及び操作部15を組み付けることで、作業が完了する。
次に、プリンター部12に対する記録部23の取り付け構造について説明する。
図9に示すように、プリンター部12内の幅方向Xの両側面には記録部23を支持する板状の支持片70がそれぞれ突設されており、各支持片70上にはピン71が立設されている。記録部23における幅方向Xの両端部には、ピン71を挿通可能な挿通孔23aが鉛直方向Zに貫通するように形成されている。そして、各挿通孔23aに各ピン71を挿通することで、各支持片70によって記録部23が支持される。このとき、記録部23は、各ピン71によって鉛直方向Zと直交する水平方向の位置決めがなされる。
記録部23の上面における幅方向Xの両端部は、略矩形状の締結板72によってそれぞれ上側から押さえられるように支持されている。すなわち、各締結板72は、一端部に設けられた貫通孔72aにピン71の先端部が挿通され、他端部がねじ73によってプリンター部12に固定されている。このとき、記録部23は、各締結板72によって鉛直方向Zの位置決めがなされる。
そして、プリンター部12から記録部23を取り出す場合には、図10に示すように、まず、各ねじ73を外して各締結板72を取り外す。その後、図11に示すように、記録部23を上方に持ち上げると、各挿通孔23aから各ピン71が抜けて、プリンター部12から記録部23が取り出される。
一方、プリンター部12に記録部23を取り付ける場合には、図10に示すように、まず、各挿通孔23aに各ピン71を挿通し、各支持片70によって記録部23を支持させる。その後、図9に示すように、各締結板72の貫通孔72aに各ピン71が挿通された状態で各締結板72をプリンター部12に各ねじ73によって固定することで、プリンター部12に記録部23が取り付けられる。
以上、詳述した実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)記録装置11は、プリンター部12の一部である載置台27を開放した状態で経路形成部材61を開放動作させることにより、プリンター部12の外部から記録部23に対して上方からアクセス可能なアクセス経路AKが形成される。このため、プリンター部12の外部からアクセス経路AKを通して上方から記録部23に対してアクセスできる。加えて、載置台27及び経路形成部材61を開放動作する際に記録部23が移動することはない。したがって、記録部23の位置精度を確保しつつ、記録部23の交換作業などのメンテナンス作業を容易に行うことができる。
(2)記録装置11において、載置台27及び経路形成部材61は、上から見たときの記録部23との重なり部分が、それぞれ閉じた状態よりも少なくなるまで開くことが可能に構成されている。載置台27及び経路形成部材61を開けることで、記録部23に対して上方からアクセスし易くすることができる。
(3)記録装置11において、載置台27は、用紙Pが排出される排出方向Wに向かうほど高さが高くなるように傾斜しており、載置台27が開閉動作する際の開閉支点は、排出方向Wの上流側に位置している。このため、載置台27を容易に開くことができる。
(4)記録装置11において、経路形成部材61は、用紙Pが排出される排出方向Wに向かうほど高さが高くなるように傾斜しており、経路形成部材61が開閉動作する際の開閉支点は、排出方向Wの上流側に位置している。このため、経路形成部材61を容易に開くことができる。
(5)記録装置11において、経路形成部材61は、プリンター部12に対して着脱可能に構成されている。このため、経路形成部材61をプリンター部12から取り外すことで、記録部23に対してより一層上方からアクセスし易くすることができる。
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・記録装置11において、載置台27は、プリンター部12に対して着脱可能に構成してもよい。このようにすれば、載置台27をプリンター部12から取り外すことで、記録部23に対してより一層上方からアクセスし易くすることができる。
・記録装置11において、経路形成部材61は、必ずしもプリンター部12に対して着脱可能に構成する必要はない。
・記録装置11において、経路形成部材61は、必ずしも用紙Pが排出される排出方向Wに向かうほど高さが高くなるように傾斜させる必要はない。また、経路形成部材61が開閉動作する際の開閉支点は、必ずしも排出方向Wの上流側に位置している必要はない。
・記録装置11において、載置台27は、必ずしも用紙Pが排出される排出方向Wに向かうほど高さが高くなるように傾斜させる必要はない。また、載置台27が開閉動作する際の開閉支点は、必ずしも排出方向Wの上流側に位置している必要はない。
・記録装置11において、載置台27及び経路形成部材61は、必ずしも上から見たときの記録部23との重なり部分が、それぞれ閉じた状態よりも少なくなるまで開くことが可能に構成する必要はない。
・記録装置11において、プリンター部12からスキャナー部13、自動給紙装置14、及び操作部15を取り外すことなく、記録部23の交換作業(メンテナンス作業)を行うようにしてもよい。
・記録装置11において、経路形成部材61を開放位置で保持した状態で記録部23の交換作業を行うようにしてもよい。この場合、経路形成部材61を開放位置で保持するためのフックなどを設けることが好ましい。
・記録装置11において、載置台27をプリンター部12から取り外した状態で、記録部23の交換作業を行うようにしてもよい。
・記録装置11において第3媒体供給路33を省略してもよい。すなわち、記録装置11において経路形成部材61を省略してもよい。この場合、載置台27を開放動作させるだけで、プリンター部12の外部から記録部23に対して上方からアクセス可能なアクセス経路AKが形成される。
・媒体は、用紙Pだけでなく、布やプラスチックフィルムなどであってもよい。
図2の記録装置11における記録部23と載置台27との間には、用紙Pを反転させる反転経路である第3媒体供給路33の一部を形成する経路形成部材61が配置されたが、本発明は、経路形成部材61を備えない記録装置にも適用する。図26の記録装置11aには、図2の経路形成部材61、分岐機構43、分岐搬送路ローラー対45、分岐搬送路44、第3駆動ローラー46a、第3従動ローラー46bが備えられない。また、記録部23の上側には、搬送ローラー対25が備えられない。
図26の記録装置11aの載置台27は、図2の記録装置11と同様に、一対の軸62を中心として回動可能に備えられる。記録装置11aにおいて、載置台27は、上から見たときの記録部23との重なり部分が、それぞれ閉じた状態よりも少なくなるまで開くことが可能に構成されている。載置台27を開けることで、記録部23に対して上方からアクセスし易くすることができる。記録装置11aのその他の構成は、記録装置11の構成と同じである。
(実施形態2)
以下、記録装置の一実施形態として、液体の一例であるインクを吐出する記録部を備え、媒体の一例である用紙にインクを吐出して文字や図形などを含む画像を印刷(記録)するインクジェット式のプリンターについて、図を参照して説明する。
図12に示すように、本実施形態の記録装置の一例としてのプリンター111は、略直方体の筐体112と、図12に一点鎖線で示す搬送経路113に沿って用紙114を搬送する複数のローラー対を備える。さらに、搬送経路113には、用紙114を重力方向側から支持する支持台117と、搬送経路113を挟んで支持台117に対向するように配置された記録部118とを備える。
記録部118は、搬送方向Yと交差(ここでは直交)する幅方向Xに亘ってインクを同時に吐出可能な液体吐出ヘッド170(図14参照)を有する所謂ラインヘッドであって、支持台117に支持された状態で通過する用紙114に向かってインクを吐出することにより印刷を行う。なお、以下の説明では、搬送経路113において支持台117と記録部118との間の位置を印刷位置119と呼称する。
搬送経路113は、印刷位置119よりも搬送方向Yの上流側の第1供給経路121及び第2供給経路122と、印刷位置119よりも搬送方向Yの下流側の第3供給経路123、分岐経路124、及び排出経路125とにより構成されている。
第1供給経路121は、筐体112の重力方向側となる底部に挿抜可能に備えられた用紙カセット127と、印刷位置119とを結ぶ経路である。そして、第1供給経路121には、用紙カセット127に積層状態で載置された用紙114のうち、最上位の用紙114を送り出すピックアップローラー128と、ピックアップローラー128により送り出された用紙114を1枚ずつ分離する分離ローラー129とが設けられている。さらに、分離ローラー129よりも搬送方向の下流側には、第1供給ローラー対131が設けられている。
第2供給経路122は、筐体112一側面に備えられたカバー112aを開けることによって露出する挿入口112bと、印刷位置119とを結ぶ経路である。そして、第2供給経路122には、挿入口112bから挿入された用紙114を挟持して搬送する第2供給ローラー対132が設けられている。さらに、第1供給経路121と第2供給経路122と第3供給経路123とが合流した位置には、第3供給ローラー対133と第4供給ローラー対134とが設けられていると共に、第3供給経路123には、第5供給ローラー対135が設けられている。
第3供給経路123は、記録部118を囲うように設けられた経路であって、一旦印刷位置119を通過した用紙114を、再び印刷位置119よりも上流側へ戻すための経路である。すなわち、印刷位置119よりも下流側には、分岐機構136が設けられていると共に、排出経路125から分岐した分岐経路124には、正転と逆転の双方の回転が可能な分岐ローラー対137が設けられている。
排出経路125は、印刷済みの用紙114が排出される排出口138と、印刷位置119とを結ぶ経路である。なお、排出口138から排出された用紙114は載置台139に載置される。そして、排出経路125には、少なくとも1つ(本実施形態では6個)の第1搬送ローラー対141〜第6搬送ローラー対146が設けられている。さらに、第3供給経路123にも第7搬送ローラー対147、及び第8搬送ローラー対148が設けられている。これらの第1搬送ローラー対141〜第8搬送ローラー対148は、インクが付着した用紙114を挟持して搬送する。
すなわち、第1搬送ローラー対141〜第8搬送ローラー対148は、駆動源の駆動力に基づいて回転する円柱状の駆動ローラー150と、駆動ローラー150の回転に伴って従動回転する歯付きローラー149とにより構成されている。また、歯付きローラー149は、駆動ローラー150と対をなさずに単独でも設けられている。すなわち、歯付きローラー149は、第3供給経路123、分岐経路124、排出経路125において、用紙114の印刷が施された面である印刷面(すなわち、液体の一例であるインクが吐出されて付着する面)が通過する側に設けられている。また、歯付きローラー149は、搬送方向において第1搬送ローラー対141〜第8搬送ローラー対148の各搬送ローラー対の間にも設けられており、各搬送ローラー対と記録部118との間にも設けられている。一方、駆動ローラー150は、用紙114の印刷が施されていない非印刷面(非記録面)、もしくは両面印刷された用紙114では先に印刷された面が通過する側に設けられている。
本実施形態では、印刷位置119において、少なくとも第4供給ローラー対134が、記録部118に対向して、用紙114を支持台117に支持された状態で搬送する搬送部115として機能する。なお、第4供給ローラー対134は、図示しない駆動源によって回転駆動される駆動ローラー134aと、この駆動ローラー134aに従って回転する従動ローラー134bを有し、これらのローラー間に用紙114を挟持して搬送する。このため、駆動ローラー134aは用紙114が滑らないように表面が防滑処理されたローラーとされている。
図13に示すように、記録部118には、幅方向Xにおける一端側(ここでは−X側)において、一端側貫通孔151を有する筒部153が設けられ、他端側(ここでは+X側)において他端側貫通孔152を有する平板部154が設けられている(図18参照)。一端側貫通孔151および他端側貫通孔152には、筐体112に備えられた基台部199(図16、図19参照)に設けられた一端側挿入軸191および他端側挿入軸192がそれぞれ挿入され、記録部118は、搬送方向Yにおいて位置決めされている。
本実施形態では、筒部153が有する一端側貫通孔151は、軸断面が円形の一端側挿入軸191の軸線方向において間隔を設けて筒部153に装着された第1ブッシュ155と第2ブッシュ156によって形成されている。すなわち、筒部153には、挿入される一端側挿入軸191の挿入方向において、支持台117に近い側端部に第1ブッシュ155が、また支持台117から遠い側端部に第2ブッシュ156が、それぞれ打ち込みなどによって装着されている。
そして、第1ブッシュ155には円形孔の第1貫通孔151Aが設けられ、第2ブッシュ156には、記録部118の長手方向(幅方向X)に沿う直線状の平行縁部L3を有し、他の部分が半円縁部R3とされた、長孔の一例である長円形孔の第2貫通孔151B(図18参照)が設けられている。したがって、記録部118の長手方向の一端側には、第1貫通孔151Aと、この第1貫通孔151Aよりも用紙114の記録面114Pから遠い位置に設けられ、一端側挿入軸191が挿入される第2貫通孔151Bと、が備えられる。これらの円形の第1貫通孔151Aと長円形の第2貫通孔151Bとによって、一端側挿入軸191が挿入される一端側貫通孔151が形成されている。
一方、平板部154に設けられた他端側貫通孔152は、記録部118の長手方向(幅方向X)に沿う直線状の平行縁部L2を有し、他の部分が半円縁部R2とされた、長孔の一例である長円形孔(図18参照)で設けられている。そして、この長円形の他端側貫通孔152に挿入される他端側挿入軸192は、基台部199に固定された軸断面が円形の他端側固定軸193と、この他端側固定軸193の中心軸線から所定の寸法だけ偏心した軸線を中心軸とする円筒面を外面に有し、その円筒面が他端側固定軸193を中心に回動可能な偏心円筒部材194とで構成されている。
なお、一端側挿入軸191は基台部199の一端側に固定された一端側固定軸であり、この一端側挿入軸191には、固定された基台部199の部分から用紙114側へ突出した一端側軸突出部191Aが設けられている。また、基台部199の他端側に固定された他端側固定軸193には、同じく基台部199から用紙114側へ突出した他端側軸突出部193Aが設けられている。この一端側軸突出部191Aおよび他端側軸突出部193Aは、後述する記録部118に対するキャップ172の位置決めに際して用いられる。
また、本実施形態では、記録部118の長手方向となる幅方向Xは、搬送部115による用紙114の搬送方向Y及び当該用紙114の記録面114Pの法線に沿う方向の双方と交差する方向とされている。そして、この長手方向における両端部のそれぞれに設けられた一端側貫通孔151および他端側貫通孔152は、記録面114Pの法線に沿う方向に貫通する貫通孔とされ、貫通孔に挿入される挿入軸である一端側挿入軸191と他端側挿入軸192(詳しくは他端側固定軸193)の軸線方向は、用紙114の記録面114Pの法線に沿う方向とされている。
したがって、記録部118は、このように長手方向(幅方向X)の両側に設けられた一端側貫通孔151と他端側貫通孔152とが、それぞれに挿入された一端側挿入軸191と他端側挿入軸192(詳しくは偏心円筒部材194)の軸線方向に移動することによって用紙114の記録面114Pの法線方向に沿って移動する。この結果、記録部118は、用紙114(支持台117)に対して離れたり近づいたりする移動によって、搬送経路113を搬送される用紙114(あるいは支持台117)との間の隙間の大きさが調整される。
次に、記録部118と用紙114との間の隙間の調整構造について説明する。なお、一端側挿入軸191および他端側挿入軸192の軸線方向、つまり記録部118が移動可能な方向を、移動方向Aとして説明する。
図13および図14に示すように、記録部118には、少なくとも1つの被係合部157と複数の従節部158とが、記録部118における搬送方向Yの上流側の側面から突出して形成されている。なお、本実施形態では、幅方向Xに隣り合う1つの被係合部157と1つの従節部158とを1組として、2組の被係合部157と従節部158とが組ごとに幅方向Xにおいて間隔を有して設けられている。
また、被係合部157と従節部158は、幅方向X及び移動方向Aにおいて位置をずらして設けられるとともに、従節部158の用紙114側となる下面が、被係合部157の用紙114とは反対側となる上面よりも、用紙114から離れた位置に位置するように形成されている。
そして、記録部118の被係合部157と従節部158とが形成された側には、従節部158を介して記録部118を移動させることにより、記録部118を用紙114の表裏面のうちの少なくとも一方の面である記録面114P(印刷面)に対して相対的に移動させる移動部160が設けられている。
すなわち、移動部160は、図14に示すように、正転と逆転の双方の回転が可能な調整モーター161と、調整モーター161の駆動力を伝達するための伝達機構162と、伝達機構162に伝達された駆動力により正転と逆転の双方の方向に回動する回動軸163とを備えている。回動軸163は、幅方向Xに沿って延びるように設けられ、この回動軸163には、各従節部158と対応するように幅方向Xに間隔を有して複数(本実施形態では2つ)のカム165が設けられている。
カム165は、図13,図14に示すように略円盤形状をなし、中心とは異なる位置に回動軸163が挿通された偏心カムとされている。そして、このカム165は、カムフォロアーとしての従節部158に接触しながら回動軸163と共に回動することにより、従節部158を介して記録部118を移動方向Aに沿って移動させる。すなわち、カム165は、記録部118を、用紙114(支持台117)から離れるように移動方向Aに沿って上方へ移動させたり、用紙114に近づくように移動方向Aに沿って下方へ移動させたりして、記録部118の移動方向Aにおける位置を調整する。
さらに、回動軸163には、該回動軸163と共に回動して記録部118の被係合部157と係合可能な係合部166が、被係合部157と対応するように少なくとも1つ設けられている。すなわち、本実施形態では、2つの係合部166が幅方向Xにおいて間隔を有して設けられている。
係合部166は、回動軸163に支持された基端部167と、基端部167に対して折れ曲がるような形状に形成された鉤部168とにより構成されている。また、係合部166は、鉤部168の先端の厚みが他の部分の厚みよりも厚くされている。また、回動軸163の中心から被係合部157と係合する鉤部168の内側の面までの距離(内径)は、この距離(内径)と同方向におけるカム165の外径と同じ寸法とされている。
本実施形態では、被係合部157と回動軸163は、移動方向Aに沿って並んで設けられている。すなわち、被係合部157は、回動軸163の上まで延びるように形成されて、被係合部157と搬送経路113との間に回動軸163が位置している。そのため、図13に示す状態から調整モーター161が正転駆動すると、係合部166が回動軸163の回動に伴って正回動(図13では反時計回り方向に回動)する。そして、図14に示すように、移動方向Aに沿って回動軸163と被係合部157と係合部166の鉤部168とが並ぶ状態となる。したがって、係合部166は、移動方向Aにおいて、用紙114(支持台117)が位置する側とは逆の方向(図13では上側)から被係合部157に係合可能となる。
さらに、本実施形態では、回動軸163の両側を回動自在に支持する軸受のうち少なくとも一方の軸受が記録部118の移動方向Aに沿って移動可能とされている。すなわち、図14に示すように、幅方向Xにおける一端側(−X側)の軸受169が、調節ねじ169Aの回転によって移動方向Aに沿って移動する軸受移動機構が構成されている。
このように構成された軸受移動機構により、調節ねじ169Aを回転させることによって一端側の軸受169が移動方向Aにおいて上下移動し、この一端側の軸受169に軸支された回動軸163の一端側を他端側に対して相対的に上下移動させる。この回動軸163の一端側の上下移動に伴って一端側のカム165が従節部158を介して記録部118の一端側を移動方向Aに沿って上下移動させることになる。これにより、記録部118は幅方向Xにおいて用紙114(支持台117)と平行になるように調節される。
また、図13に示すように、記録部118の支持台117側となる下面には、インクを吐出するノズルNが複数(図13では1つのみ図示)形成された液体吐出ヘッド170が設けられている。そして、プリンター111は、支持台117側となる下面側から記録部118に接触してノズルNが臨む空間を密閉可能なキャップ172と、キャップ172及び支持台117を記録部118に対して相対移動させて入れ替える入替機構171と、を備えている。
キャップ172は、記録部118側となる上端が開口した有底矩形箱状のキャップホルダー173と、キャップホルダー173内に少なくとも1つのばねを介して配置された有底箱状のキャップ形成部材173Aとを備えている。キャップホルダー173には、その幅方向Xの両側に、移動方向Aに沿って上方へ延設された一端側延設部174と他端側延設部175とがそれぞれ形成されているとともに、一端側延設部174には一端側穴部174Aが設けられ、他端側延設部175には他端側穴部175Aが設けられている(図16参照)。
入替機構171は、正転と逆転の双方の回転が可能な移動モーターMと、移動モーターMの回転に伴って正方向と逆方向の双方の方向に回転するスクリュー軸176と、スクリュー軸176と螺合したキャップ側スライダー178及び支持台側スライダー179と、を備えている。そして、キャップ側スライダー178は、対をなして設けられた第1外側リンク部材181aと第1内側リンク部材181bとによりキャップ172と接続されている。また、支持台側スライダー179は、対をなして設けられた第2外側リンク部材182aと第2内側リンク部材182bとにより支持台117と接続されている。
また、壁部材183には、キャップ側ガイドレール184と支持台側ガイドレール185とが、直線部分となだらかなS字の曲線部分とを描くように設けられた長孔で形成されている。なお、キャップ側ガイドレール184と支持台側ガイドレール185は、搬送方向Yにおいて記録部118が設けられた位置を基準として、移動方向Aに延びる基準線(図示略)に対して線対称となるように形成されている。すなわち、キャップ側ガイドレール184と支持台側ガイドレール185は、基準線側となる中央側の各端部が移動方向Aにおいて記録部118に近い上側に位置し、基準線から離れた外側の各端部が移動方向Aにおいて記録部118から離れた下側に位置するように形成されている。
そして、キャップ側ガイドレール184には、キャップ172に接続された第1外側リンク部材181aに設けられたキャップ側ガイド部186がキャップ側ガイドレール184に沿って移動可能に挿入されている。一方、支持台側ガイドレール185には、支持台117に接続された第2外側リンク部材182aに設けられた支持台側ガイド部187が支持台側ガイドレール185に沿って移動可能に挿入されている。
図15および図16に示すように、キャップ172は、入替機構171の動作によって記録部118に対する支持台117との位置の入れ替えが行われる。すなわち、図13に示す状態において移動モーターMが逆転駆動すると、キャップ側スライダー178及び支持台側スライダー179は、移動モーターMから離れるようにスクリュー軸176の軸方向に沿って移動する。
すると、図15において二点鎖線で示すように、非密閉位置Dに位置したキャップ172はまずキャップ側ガイド部186がキャップ側ガイドレール184の直線部分に沿って移動することによって搬送方向Yに沿って搬送方向Yとは逆方向の中間位置Gへ移動する。次に、キャップ側ガイド部186がキャップ側ガイドレール184の曲線部分に沿って移動することによって、キャップ172は中間位置Gから移動方向Aに沿って上昇し、記録部118に対してその下面側に当接する密閉位置Bへ移動する。このとき、図13の支持位置Eに位置した支持台117は、支持台側スライダー179の移動によって、キャップ172の中間位置Gへの移動に先んじて図15の非支持位置Cへ移動する。
また、この状態から移動モーターMが正転駆動すると、キャップ側スライダー178及び支持台側スライダー179は、移動モーターMの回転に伴って移動モーターMに近づくようにスクリュー軸176の軸方向に沿って移動する。すると、図13に示すように、キャップ172は記録部118から離れるように移動して密閉位置Bとは異なる非密閉位置Dまで中間位置Gを経由して移動する。一方、支持台117は、記録部118に近づくように移動して用紙114を支持する支持位置Eまで移動する。したがって、入替機構171は、キャップ172を密閉位置Bと非密閉位置Dとの間で移動させると共に、支持台117を非支持位置Cと支持位置Eとの間で移動させる。
そして、図15、図16および図17に示すように、本実施形態では、キャップ172が中間位置Gから密閉位置Bへ、移動方向Aに沿って上昇移動する際に、記録部118に対して位置決めされる。すなわち、基台部199に固定された一端側挿入軸191の一端側軸突出部191Aが、キャップ172の一端側延設部174に設けられた一端側穴部174Aに挿入され、他端側挿入軸192に設けられた他端側軸突出部193Aが、キャップ172の他端側延設部175に設けられた他端側穴部175Aに挿入される。この結果、キャップ172は基台部199に固定された一端側挿入軸191および他端側挿入軸192(詳しくは他端側固定軸193)によって、搬送方向Yおよび幅方向Xにおいて位置決めされる。
一方、図17および図18に示すように、記録部118は一端側挿入軸191および他端側挿入軸192(詳しくは偏心円筒部材194)によって位置決めされる。すなわち、図18において符号S1で示す矩形領域内に拡大図示するように、記録部118の一端側の第1貫通孔151Aの外形寸法H1は、この第1貫通孔151A内に位置する一端側挿入軸191の外形寸法J1との差が、例えば製造誤差に起因する最少寸法差とされる。この結果、記録部118の一端側は、この第1ブッシュ155の第1貫通孔151Aに挿入される一端側挿入軸191によって、搬送方向Yおよび幅方向Xの双方への移動が抑制されて位置決めされる。
また、図18において符号S2で示す矩形領域内に拡大して図示するように、記録部118の他端側貫通孔152の平行縁部間の寸法H2は、この他端側貫通孔152内に位置する偏心円筒部材194の外形寸法J2との差が、例えば製造誤差に起因する最少寸法差とされる。この結果、記録部118の他端側は、この他端側貫通孔152に挿入される他端側挿入軸192の偏心円筒部材194によって搬送方向Yへの移動が抑制されて位置決めされる。
さらに、図18において符号S3で示す領域内に拡大して図示するように、記録部118の一端側の第2貫通孔151Bは、他端側貫通孔152と同様に、その平行縁部間の寸法H3は、第2貫通孔151B内に位置する一端側挿入軸191の外形寸法J3との差が、例えば製造誤差に起因する最少寸法差とされている。この結果、記録部118の一端側は、この第2ブッシュ156の第2貫通孔151Bに挿入される一端側挿入軸191によっても、搬送方向Yへの移動が抑制されて位置決めされる。このため、記録部118は搬送方向Yから見て異なる3つの位置にそれぞれ配設された第1貫通孔151A、第2貫通孔151B、および他端側貫通孔152において搬送方向Yへの移動が抑制され、幅方向Xに沿う軸線を中心とする回転(傾き)が抑制される。
従って、図17に示すように、搬送方向Yおよび幅方向Xの双方において、記録部118は、基台部199に固定された一端側挿入軸191と他端側挿入軸192とによって位置決めされ、キャップ172は、基台部199に固定された一端側挿入軸191と他端側挿入軸192とによって位置決めされる。換言すれば、キャップ172は、基台部199に固定された一端側挿入軸191と他端側挿入軸192とを介して、記録部118に対して位置決めされる。このようにキャップ172が記録部118に対して位置決めされることで、記録部118の下面に設けられた液体吐出ヘッド170に対して、キャップ172が密閉位置Bにおいて位置ずれが抑制された適切な状態で接触して、記録部118が臨む空間を覆う。
なお、キャップ172が密閉位置Bに位置する際、記録部118はキャップホルダー173内に少なくとも1つのばね(不図示)を介して配置された有底箱状のキャップ形成部材173Aによって移動方向Aに沿って下方から押し上げられる。そこで、本実施形態では、図15に示すように、係合部166を回動軸163の回動に伴って正回動させ、移動方向Aに沿って回動軸163と被係合部157と係合部166の鉤部168とが並ぶ状態にさせる。こうすることによって、係合部166は、移動方向Aにおいて、用紙114(支持台117)が位置する側とは逆の方向から被係合部157に係合する。この係合部166の被係合部157への上方からの係合によって、記録部118がキャップ形成部材173Aによって用紙114側の下方側から押し上げられた際に、移動方向Aにおける記録部118の上方への移動を抑制する。
さて、図18に示すように、記録部118が備える液体吐出ヘッド170は、その長手方向(幅方向X)の両端が、長手方向と直交する方向から傾いた斜辺を有する略平行四辺形の外形形状とされ、記録部118の長手方向に沿って併設された複数(ここでは6つ)の個別ヘッドを含んで構成されている。この液体吐出ヘッド170には、複数のノズルNが液体吐出ヘッド170の平行四辺形の斜辺170Rと平行に並んで配列されたノズル列NRが、記録部118の長手方向に所定の間隔をあけて複数並んで設けられている。したがって、キャップ172は、この略平行四辺形とされた液体吐出ヘッド170に応じて、キャップホルダー173内のキャップ形成部材173Aが、外形が略平行四辺形の複数の有底箱状の個別キャップで形成されるとともに、複数の個別ヘッドを含んで構成される液体吐出ヘッド170に対して複数の個別キャップが接触する構成とされている(図16参照)。
また、図18に示すように、記録部118は、移動方向Aから見て略矩形形状の外形を有し、この矩形形状内に略平行四辺形とされた液体吐出ヘッド170が設けられている。このため、記録部118における平板部154の長手方向の両端には、この長手方向と直交する短手方向(搬送方向Y)において互いにずれた位置に、液体吐出ヘッド170が設けられていない略三角形領域Rがそれぞれ形成される。そこで、本実施形態では、この長手方向の両側の略三角形領域Rにおいて、一方側に一端側貫通孔151を、他方側に他端側貫通孔152を、それぞれ形成する。こうすることによって、一端側貫通孔151および他端側貫通孔152は、液体吐出ヘッド170の内の、最も記録部118の長手方向における一方の端部の側および他方の端部の側に近い液体吐出ヘッド170(個別ヘッド)と、記録部118の搬送方向Yにおいて重なるように配置される。この結果、記録部118の外形を長手方向や短手方向へ延ばしてその形状を大きくすることなく、記録部118を位置決めするための貫通孔を形成することが可能であり、記録部118の傾き補正を行うための機構を配置するスペースを省スペース化して、プリンター111の外形サイズが大きくならないように抑制することができる。
図19に示すように、本実施形態の基台部199は、一端側挿入軸191が固定された一端側基台199Aと、他端側挿入軸192が固定された他端側基台199Bと、一端側基台199Aと他端側基台199Bとを連結する連結基台199Cとを有し、搬送方向Yから見てU字状に構成されている。また、一端側基台199Aと他端側基台199Bは金属材料の射出成形加工(例えばアルミダイキャスト)によって形成され、基台部199は例えば撓みや捩じり変形が生じ難い高い剛性を有している。
この基台部199には、記録部118に対して用紙114を搬送する搬送部115となる第4供給ローラー対134の駆動ローラー134aが回転自在に軸支される軸受部199Jが設けられている。したがって、高い剛性を有する基台部199の軸受部199Jに軸支された駆動ローラー134aによって搬送方向Yへ搬送される用紙114に対して、基台部199に固定された一端側挿入軸191と他端側挿入軸192(詳しくは他端側固定軸193)の相対位置は、変化せず安定した位置が維持される。なお、本実施形態では、記録部118に対して搬送方向Yの直ぐ下流側に位置する第1搬送ローラー対141の駆動ローラーを軸支する軸受部も基台部199に設けられ、記録部118の前後に位置する2つの駆動ローラー間の位置ずれが抑制され、用紙114が安定して搬送方向Yに搬送される構成とされている。
そこで、本実施形態では、第4供給ローラー対134の駆動ローラー134aによって搬送される用紙114に対する記録部118の位置、詳しくは用紙114の搬送方向Yと直交する幅方向Xからの記録部118の長手方向の傾きを、基台部199に固定された一端側挿入軸191と他端側挿入軸192とを用いて調節する。すなわち、移動部160によって記録部118を用紙114の記録面114Pに対して移動方向Aに沿って移動させる際の案内軸としての一端側挿入軸191および他端側挿入軸192を、幅方向Xに対する記録部118の長手方向の傾き調節のための軸として用いる。
次に、本実施形態の作用、すなわち記録部118の幅方向Xに対する傾き調節の動作について説明する。以下の説明では、まず他端側挿入軸192が有する偏心円筒部材194について説明し、そのあと記録部118の傾き調節動作について説明する。
図20A、図20Bに示すように、偏心円筒部材194は、外面として有する半径Rcの円筒面194Sの中心軸C1から所定寸法Lcだけその軸線が平行にずれた中心軸C2を有する半径Raの円形の孔部195を有し、この孔部195に他端側固定軸193が挿通される。そして、円筒面194Sの中心軸C1の軸線方向における2か所に、例えば所謂「イモネジ」などの固定ねじ196が固定部材として取り付けられる。
固定ねじ196は、本実施形態では、偏心円筒部材194において、円筒面194Sの中心軸C1の軸線に対して、他端側固定軸193が挿入される孔部195の中心軸C2の軸線の位置とは反対の位置に取り付けられる。この結果、固定ねじ196は、偏心円筒部材194において、円筒面194Sの中心軸C1の軸線と交差する面で切断した断面における部材厚が最大となる位置に取り付けられる。また、固定ねじ196は、偏心円筒部材194に回転して取り付けられることによって、孔部195に挿入された他端側固定軸193を、円筒面194Sの中心軸C1の軸線から離れるように孔部195において締め付ける。
したがって、孔部195に挿入された他端側固定軸193と孔部195との間に隙間が生じても、偏心円筒部材194に取り付けられる固定ねじ196が他端側固定軸193を締め付けることによって、その隙間は、他端側固定軸193の中心軸に対する偏心円筒部材194の円筒面194Sの中心軸C1のずれ量を多くする。すなわち、固定ねじ196の締め付けは、偏心円筒部材194の他端側固定軸193に対する偏心量を多くするように作用する。
また、本実施形態では、偏心円筒部材194は、この偏心円筒部材194の孔部195に他端側固定軸193が挿入された状態で固定ねじ196が回転され、孔部195において他端側固定軸193が締め付けられることによって、他端側固定軸193に対する円筒面194Sの回動が拘束された状態で固定される。すなわち、本実施形態では、偏心円筒部材194は、他端側固定軸193を中心とする回転トルクが所定のトルク値以上とされた、回動が拘束された状態で、固定ねじ196によって他端側固定軸193に対して取り付けられる。
したがって、所定のトルク値以上の回転トルクによって他端側固定軸193を中心に強制的に偏心円筒部材194を回転させることが可能であり、回転を停止させた状態において偏心円筒部材194は他端側固定軸193に対して容易に回転しない回転が拘束された状態に維持される。換言すれば、固定ねじ196は、偏心円筒部材194が他端側固定軸193に対して強制的に回転されても、その回転後において回転が拘束された状態が維持されるように、偏心円筒部材194を他端側固定軸193に対して取り付ける。
そして、本実施形態では、偏心円筒部材194が他端側固定軸193に取り付けられた状態で、偏心円筒部材194を回転させるため、偏心円筒部材194には、円筒面194Sの少なくとも一部に、円筒面194Sの中心軸C1の軸線と平行なカット面194Cが少なくとも一つ設けられている。具体的に、本実施形態では、カット面194Cは、円筒面194Sにおいて、固定ねじ196を挟んだ両側であって、移動方向Aの上側端部において、互いに平行となるように一対設けられている。したがって、このカット面194Cをスパナなどの工具で挟んで偏心円筒部材194を強制的に回転させることが可能であり、この偏心円筒部材194を強制的に回転させることによって、記録部118の傾き調節が行われる。
次に、図21A、図21Bを参照して、記録部118の傾き調節について説明する。なお、ここで参照する図21A、図21Bは、説明を解りやすくするため、符号を付した各構成部材について模式化されて図示されている。
図21Aに示すように、記録部118が、駆動ローラー134aによって搬送される用紙114の搬送方向Yと交差(ここでは直交)する幅方向Xから、他端側(+X側)が一端側(−X側)に対して搬送方向Yの上流側に位置する斜め状態に傾いている場合であるとする。このような場合、液体吐出ヘッド170に形成されたノズルNの幅方向Xにおける間隔が不揃いになる状態が生じる。
すなわち、搬送方向Yから見た各ノズルNの幅方向Xにおける間隔は均一ではなく、例えば図21AにおいてノズルNaとノズルNbに示すように、ノズル列NR間に位置する2つのノズルNの間隔が、ノズル列NR内でのノズルNの間隔よりも狭くなってしまう。あるいは、ここでは図示を省略するが、記録部118が、幅方向Xから、他端側(+X側)が一端側(−X側)に対して搬送方向Yの下流側に位置する斜め状態に傾いている場合は、ノズル列NR間に位置する2つのノズルNの間隔が、ノズル列NR内でのノズルNの間隔よりも広くなってしまう。このため、例えば記録部118によって用紙114に記録された画像に黒スジ(あるいは白スジ)などが発生し、記録品質の低下を招く虞がある。
そこで、図21Bに示すように、記録部118の長手方向が、駆動ローラー134aによって搬送される用紙114の搬送方向Yに対して直交する幅方向Xとなるように、記録部118の傾きを補正する。
すなわち、他端側貫通孔152に挿入された他端側挿入軸192において、他端側固定軸193に対して偏心円筒部材194を回転させる。一例として、偏心円筒部材194を、図21Aにおいて網掛けで示す位置から、白抜き矢印で示すように紙面の表側から見て時計回り方向へ回転させる。この回転により偏心円筒部材194は、図21Bにおいて網掛けで示す位置へ移動し、記録部118の他端側(+X側)を、他端側固定軸193を基準として、最大で、他端側固定軸193の中心軸からの偏心量分、搬送方向Yの下流側へ移動させる。
このとき、記録部118の一端側(−X側)は、一端側貫通孔151に挿入された一端側挿入軸191によって搬送方向Yおよび幅方向Xの双方において位置決めされている。このため、記録部118は、一端側挿入軸191を回転の中心軸(基準軸)として回転(揺動)する。したがって、偏心円筒部材194の回転量を調節することによって、記録部118の他端側(+X側)の搬送方向Yに沿う移動量を調節することができる。この調節された移動量に応じて、記録部118は一端側挿入軸191を中心に回転(揺動)し、用紙114の搬送方向Yと直交する幅方向Xに対する記録部118の長手方向の傾きが調節される。
このように記録部118の長手方向の傾きを調節することができるので、偏心円筒部材194を記録部118の外縁と当接させる構成を採用する必要はなく、偏心円筒部材194を配置するスペースを省スペース化することができる。そして、記録部118の長手方向が搬送方向Yと直交する幅方向Xと一致した場合、液体吐出ヘッド170に形成されたノズルNの幅方向Xにおける間隔が均一になる。例えば、図21BにおいてノズルNaとノズルNbに示すように、搬送方向Yから見た各ノズルNの幅方向Xにおける各間隔において、ノズル列NR間に位置する2つのノズルNの間隔と、ノズル列NR内での各ノズルNの間隔とが等しくなる。このため、例えば記録部118によって用紙114に記録された画像において白スジや黒スジなどの発生を抑制する。
なお、液体吐出ヘッド170に形成されたノズルNの幅方向Xにおける間隔が均一になるように、記録部118の傾きを調節した状態において、必ずしも記録部118の長手方向が搬送方向Yと直交する幅方向Xと一致していなくても差し支えない。
また、本実施形態の他の作用として、支持台117上を搬送される用紙114の記録面114Pと記録部118の液体吐出ヘッド170との間の距離(隙間)が、軸受移動機構によって幅方向Xに沿って均一な状態、すなわち平行状態に調節される際に、記録部118を円滑に移動させる移動作用を有している。
図22A、図22Bを参照して、この移動作用について説明する。なお、ここで参照する図22A、図22Bは、説明を解りやすくするため、符号を付した各構成部材は模式化されて図示されている。
図22Aに示すように、記録部118が、支持台117上を搬送される用紙114の記録面114Pに対して、搬送方向Yと交差(直交)する幅方向Xにおいて、一端側(−X側)が他端側(+X側)よりも下がって記録面114P側に近づいた斜め状態で傾いている場合であるとする。このような場合、液体吐出ヘッド170から吐出されたインク(不図示)は、一端側(−X側)の方が他端側(+X側)よりも早く記録面114Pに到達するため、この記録面114Pへの到達までの時間差に起因して記録面114Pに印刷される画像に歪が生じる虞がある。そこで、図22A、図22Bに示すように、記録部118の一端側(−X側)の調節ねじ169Aを回して一端側の軸受169を基台部199に対して上昇させ、一端側の軸受169に軸支された回動軸163の一端側を上昇させる。
この結果、図22Bに示すように、回動軸163が上昇することによって、回動軸163に設けられた一端側のカム165が従節部158を介して記録部118の一端側を移動方向Aに沿って上方へ移動させる。この一端側が上昇することによって、記録部118は用紙114(支持台117)と幅方向Xにおいて平行となるように調節される。
このとき、記録部118は筒部153に設けられた第1ブッシュ155の円形の第1貫通孔151Aと、この第1貫通孔に対して僅かな隙間を有して挿入された一端側挿入軸191と、によって搬送方向Y及び幅方向Xの双方が位置決めされた状態で、記録部118の一端側の上方へ移動する。このために、記録部118は、相対的に、第1ブッシュ155を中心にして、搬送方向Yの上流側から見て時計回り方向へ回転することになる。この記録部118の第1ブッシュ155を中心とする時計回り方向への回転に伴って、筒部153に設けられた第2ブッシュ156は記録部118の長手方向における他端側(+X側)の方向へ向かって移動するとともに、平板部154に設けられた他端側貫通孔152も記録部118の長手方向における他端側(+X側)の方向へ向かって移動する。
このとき、第2ブッシュ156の第2貫通孔151Bが記録部118の長手方向(幅方向X)に沿う平行縁部L3を有する長円形孔とされているので、第2ブッシュ156は、第2貫通孔151Bと、この第2貫通孔151Bに挿入されている一端側挿入軸191との間での抉りが発生することなく、円滑に移動する。また、他端側貫通孔152も記録部118の長手方向(幅方向X)に沿う平行縁部L2を有する長円形孔とされているので、他端側貫通孔152が設けられた記録部118の平板部154は、他端側貫通孔152と、この他端側貫通孔152に挿入されている他端側挿入軸192との間での抉りが発生することなく、円滑に移動する。
なお、第2貫通孔151Bおよび他端側貫通孔152のそれぞれの長手方向(幅方向X)に沿う平行縁部の長さは、軸受移動機構によって幅方向Xに沿って均一な状態(平行状態)に調節される際に、記録部118を円滑に移動させることができる長さに設定される。
上記実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)記録部118の長手方向の両側の略三角形領域R(図18参照)において、一端側貫通孔151および他端側貫通孔152を、それぞれ形成するようにしたので、記録部118の外形を長手方向や短手方向へ延ばしてその形状を大きくすることなく、記録部118の長手方向の傾きを調節する機構を配置することができる。
また、記録部118を付勢部材によって付勢することなく、貫通孔と、その貫通孔に挿入された挿入軸(例えば偏心円筒部材194)とによって、搬送部115により搬送される用紙114の搬送方向Yと直交する幅方向Xに対する記録部118の傾きを補正する。この結果、貫通孔および挿入軸の摩耗が抑制され、記録部118の傾き補正を適切に行うことができるので、記録品質(例えば画質)の低下を抑制することができる。また、付勢部材に起因する記録部118の振動が生じないので、記録品質の低下を抑制することができる。
(2)固定ねじ196によって他端側固定軸193に偏心円筒部材194を固定する際に、その偏心量が小さくならないように抑制することができるので、記録部118の傾き補正を適切に行うことができる。
(3)設けられたカット面194Cによって、他端側固定軸193に偏心円筒部材194を固定する際に、偏心円筒部材194の他端側固定軸193に対する回転位置を容易に判別することができるので、記録部118の傾き補正を適切に行うことができる。また、カット面194Cを用いることによって偏心円筒部材194を他端側固定軸193回りに容易に回転させることができる。
(4)一端側挿入軸191および他端側挿入軸192は記録部118を移動方向Aに沿って移動させる際に記録部118の移動を案内するので、記録部118を用紙114の記録面114Pに対して相対的に移動させる際の案内軸を別途設ける必要がない。したがって、プリンター111の構造が複雑化することを抑制することができる。
(5)記録部118を用紙114の記録面114Pに対して平行となるように調節する場合、移動方向Aへの記録部118の移動量が長手方向の両端部において異なる場合であっても、一端側挿入軸191が長円形孔の第2貫通孔151Bにおいて抉られることなく円滑に移動することができる。
(6)一端側挿入軸191および他端側固定軸193が固定された基台部199の部分と、軸受部199Jが設けられた基台部199の部分とは一体であるので、駆動ローラー134aによる用紙114の搬送方向Yに対して、一端側挿入軸191および他端側挿入軸192(他端側固定軸193)の位置ずれが抑制される。したがって、駆動ローラー134aにより搬送される用紙114に対して、搬送方向Yと直交する幅方向Xに対する傾きを精度良く調節することができる。
(7)一端側挿入軸191および他端側挿入軸192は、キャップ172を記録部118に対して位置決めするので、キャップ172が記録部118を覆う際の記録部118に対する位置決め部材を別途設ける必要がない。したがって、プリンター111の構造が複雑化することを抑制することができる。
なお、上記実施形態は、以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態において、他端側挿入軸192は、キャップ172が記録部118を覆う際に、偏心円筒部材194によって、キャップ172を記録部118に対して位置決めすることが好ましい。このキャップ172の位置決め構造の変形例について図を参照して説明する。
図23A、図23Bに示すように、本変形例の偏心円筒部材194は、外面の円筒面194Sの中心軸と同じ中心軸を有し、基台部199の用紙114側となる下側に位置するように設けられた円柱部材198が、略C字形の連結部197によって偏心円筒部材194の円筒面194Sと繋がれている。そして、偏心円筒部材194の孔部195に挿入された他端側固定軸193は、上記実施形態における他端側軸突出部193A(図13参照)が設けられることなく、基台部199に設けられた略半円形の庇部199Hに固定されている。
また、偏心円筒部材194の連結部197は、偏心円筒部材194がカット面194Cを用いて回転させられたとき、図23Bにおいて二点鎖線で示すように、基台部199に設けられた庇部199Hの略半円形の外周に沿って約半周分、回転可能に形成されている。この結果、この連結部197によって繋がれた円柱部材198は、記録部118の傾き調節において偏心円筒部材194が回転させられる際、偏心円筒部材194と一緒に他端側固定軸193を中心に回転する。この結果、円柱部材198は、図23Bにおいて二点鎖線で示すように、搬送方向Yにおいて移動する。
そこで、本変形例では、記録部118に対するキャップ172の位置決めを、他端側軸突出部193Aに替えて、偏心円筒部材194の円筒面の中心軸と同一の中心軸を有する円柱部材198によって行うようにする。すなわち、キャップ172が記録部118を覆う際に、キャップ172の他端側延設部175に設けられた他端側穴部175Aに円柱部材198が挿入することによって、偏心円筒部材194の回転によって搬送方向Yにおける傾きが調節された記録部118に対して、その回転後の偏心円筒部材194の円筒面194Sの中心に合わせてキャップ172が位置決めされる。
なお、円柱部材198は、図23Bにおいて二点鎖線で示すように、搬送方向Yにおいて移動するとともに、幅方向Xにおいても移動する。したがって、円柱部材198が挿入する他端側延設部175に設けられる他端側穴部175Aは、他端側貫通孔152と同様に、キャップ172の長手方向(幅方向X)に沿う直線状の平行縁部を有する長孔とされることが好ましい。
この変形例によれば、上記実施形態の効果(1)〜(7)に加えて次の効果を奏する。
(8)キャップ172が記録部118を覆う際の記録部118に対する位置決めを、傾きが調節された記録部118の位置に合わせて行うことができるので、キャップ172は記録部118に対する位置ずれが抑制された状態で記録部118を覆うことができる。
・上記実施形態において、必ずしも一端側挿入軸191および他端側挿入軸192は、キャップ172が記録部118を覆う際に、当該キャップ172を記録部118に対して位置決めしなくてもよい。例えば、キャップ172の位置決めは別途設けられた位置決め部材によって行われるようにしてもよい。もとより、キャップ172が備えられていない場合は、キャップ172の位置決めは不要である。
・上記実施形態では、記録部118が備える液体吐出ヘッド170は、その長手方向(幅方向X)の両端が、長手方向と直交する方向から傾いた斜辺を有する略平行四辺形の外形形状とされた複数(ここでは6つ)の個別ヘッドを記録部118の長手方向に沿って併設した構成としたが、これに限るものではない。
図24A〜図24Dに示す模式図を参照して、本変形例を説明する。
図24Aに示した上記実施形態の液体吐出ヘッド170、一端側貫通孔151、他端側貫通孔152に対して、図24Bに示すように、記録部118が備える液体吐出ヘッド170は、各液体吐出ヘッド170が千鳥に配置される千鳥配置であっても良い。この場合には、三角形領域Rではなく、記録部118の長手方向の両側の図24Bに示す矩形領域Kにおいて、一端側貫通孔151および他端側貫通孔152を、それぞれ形成するようにする。
これにより、同様に記録部118の傾き補正を行うための機構を配置するスペースを省スペース化して、プリンター111の大型化を抑制することができる。
また、図24C、図24Dに示すように、他端側貫通孔152のみを三角形領域Rもしくは矩形領域Kに形成するようにしても良い。さらに、一端側貫通孔151のみを三角形領域Rもしくは矩形領域Kに形成するようにしても良いことは言うまでもない。これにより、同様にプリンター111が大型化することを抑制するという効果を得ることができる。
・上記実施形態において、一端側固定軸である一端側挿入軸191、および他端側固定軸193がそれぞれ固定された基台部199の部分と、駆動ローラー134aの軸受部199Jが設けられた基台部199の部分とは、必ずしも一体でなくてもよい。例えば、駆動ローラー134aによって搬送される用紙114に対する位置ズレが抑制された状態で一端側挿入軸191および他端側固定軸193が固定される構造であれば、一端側挿入軸191および他端側固定軸193が固定された基台部199の部分と、駆動ローラー134aの軸受部199Jが設けられた基台部199の部分とは別体であってもよい。
・上記実施形態において、一端側挿入軸191が挿入される一端側貫通孔151は、第1貫通孔151Aのみとし、第2貫通孔151Bを備えない構成であってもよい。例えば、第1貫通孔151Aの記録部118の移動方向Aにおける長さを長くすることによって記録部118を移動方向Aに沿って安定して移動させる構成としてもよい。あるいは、例えば記録部118を搬送方向Yの両側において挟むように支持する支持部材を別途設けて、記録部118が移動方向Aに沿って円滑に移動できる構成としてもよい。
・上記実施形態において、一端側挿入軸191および他端側挿入軸192は、必ずしも、移動部160が記録部118を移動方向Aに沿って移動させる際に記録部118の移動を案内する案内軸でなくてもよい。すなわち、記録部118の移動を案内する案内軸は、一端側挿入軸191および他端側挿入軸192とは別に設けてもよい。
・上記実施形態において、偏心円筒部材194は、必ずしも、円筒面194Sの少なくとも一部に、円筒面194Sの中心軸線と平行なカット面194Cが設けられなくてもよい。例えば、円筒面194Sが、工具によって挟んで回すことによって偏心円筒部材194を回転させることが可能な面であれば、カット面は不要である。例えば、円筒面194Sの少なくとも一部において凹凸面を形成して工具との間の摩擦係数を大きくすることによって、工具によって挟まれる部分がすべり難くなるようにしてもよい。
・上記実施形態において、偏心円筒部材194の固定部材となる固定ねじ196は、偏心円筒部材194において、必ずしも円筒面194Sの中心軸C1の軸線に対して他端側固定軸193の中心軸線の位置とは反対の位置に取り付けられなくてもよい。偏心円筒部材194の他端側固定軸193に対する回転が拘束される位置であれば、固定ねじ196は、どのような位置に取り付けられてもよい。また、固定ねじ196の本数も必ずしも2本に限らず、1本でもよいし、2本より多くてもよい。
・上記実施形態において、一端側貫通孔151である第2貫通孔151B、および他端側貫通孔152は、必ずしも、一対の平行縁部とその両端が半円縁部の長円形状の長孔でなくてもよい。例えば、記録部118の長手方向に沿って、その長手方向を有する矩形の長孔であってもよい。要は、記録部118の長手方向と交差(直交)する短手方向において、貫通孔に挿入される挿入軸の外径(直径)寸法と略同じ大きさの幅寸法を有する部分が、記録部118の長手方向において、傾き調節時や平行状態の調節時などにおいて軸が抉られない所定長さを有する形状であればよい。
・上記実施形態において、一端側貫通孔151は、必ずしも、液体吐出ヘッド170の内の、最も記録部118の長手方向における一方の端部の側に近い液体吐出ヘッド170(個別ヘッド)と、記録部118の搬送方向Yにおいて重なるように配置しなくてもよい。例えば、一端側貫通孔151は、記録部118の傾き補正を行う際の記録部118の回転の中心軸(基準軸)であるので、軸を細くして省スペース化を図るようにしてもよい。
・上記実施形態において、記録部118から吐出する記録液であるインクの供給元は、例えばプリンター111の筐体112の内部に設けられるインク収容体であってもよい。あるいは、筐体112の外部に設けられる所謂外付けタイプのインク収容体であってもよい。特に外付けタイプのインク収容体の場合はインクの容量を大きくできるので、記録部118からより多くのインクの吐出を行うことが可能である。
なお、筐体112の外部に設けられたインク収容体から記録部118にインクを供給する場合には、インクを供給するためのインク供給チューブを筐体112の外部から内部へ引き回す必要がある。よって、この場合には、筐体112にインク供給チューブを挿通可能な孔や切り欠きなどを設けることが好ましい。あるいは筐体112に隙間を設け、この隙間を通してインク供給チューブを筐体112の外部から内部へ引き回しても良い。このようにすれば、インク供給チューブのインク流路を用いた記録部118に対するインクの供給を容易に行うことができる。
・上記実施形態において、記録装置11,11a、プリンター111は、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体、流体として流して吐出できる固体を含む)を吐出したり噴射したりして記録を行う流体吐出装置であってもよい。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を吐出して印刷を行う液状体吐出装置であってもよい。また、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を吐出する流状体吐出装置、トナーなどの粉体(粉粒体)を例とする固体を吐出する粉粒体吐出装置(例えばトナージェット式印刷装置)であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体吐出装置に本発明を適用することができる。なお、本明細書において「流体」とは、気体のみからなる流体を含まない概念であり、流体には、例えば液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、液状体、流状体、粉粒体(粒体、粉体を含む)などが含まれる。