JP6615731B2 - 多葉型単糸を有する高密度織物 - Google Patents
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Description
本発明者らが検討したところによると、イラツキ品位は、織物表面に光の正反射部が多く、その中に乱反射部があることで生じる現象であると考えられる。特許文献1においては、まず単糸が略四角形状であるため、織物表面に出る単糸は平坦で光を正反射しやすい構造であった。更に、特許文献1に記載の単糸の配置状態は、製織時の経・緯の張力変動や組織時の屈曲・扱き等により、長さ方向に不規則に捩れ、乱れを生じるため一様ではなく、単糸の角が表面に出ることがわかった。このような織物にカレンダー加工をすると、略四角形の辺の光の正反射部とそれ以外の角等の乱反射部の混合状態がイラツキ状(光沢斑)の織物外観を生んでしまうため、問題と考えられる。
特許文献1に記載の織物では、単糸の断面形状が略四角形状であり、単糸が密着して一列に並ぶ構造となるため、曲がり難いことが硬さを感じさせる理由と考えられる。
(i)イラツキ品位解消には、丸みのある凸部と凹部が繰り返して存在する多葉断面含有の単糸を使用し、更にカレンダー加工により形成される平坦部の幅を狭くすることが重要である。
(ii)風合いの向上には、多葉型単糸の断面形状を丸みのある低異形度のものにし、曲がりやすく、手との接触面積を増大させることとする。
(iii)耐摩耗性の向上には、多葉型単糸の凸部の径を大きくし、高さを低くして擦過されにくくすることが有効である。
(iv)低通気度保持性のためには、隣り合う多葉型単糸の凸部と凹部を接触させ、接触長を長くすることで空気の通過を妨げ、外力によっても単糸同士が分離しないようにすることが重要である。
[1] 繊維横断面の外形に3〜6個ずつの凸部と凹部を有する多葉型単糸を含む合繊マルチフィラメント織物であり、
織物に含まれる多葉型単糸100%中、80〜100%の多葉型単糸が、隣り合う多葉型単糸と、凸部及び/又は凹部で、曲線的及び/又は直線的に接し、前記接触長が6μm以上30μm以下であり、
表面及び裏面の少なくとも一方にカレンダー加工面があり、カレンダー加工により前記多葉型単糸の凸部に形成される平坦部の幅が3.5μm以上15μm以下であることを特徴とする織物。
[2] 前記多葉型単糸の異型度が1.2以上2.0以下であり、
前記凸部の高さが2.0μm以上8.0μm以下であり、
前記凸部における丸み部分の直径R1が4.5μm以上15μm以下であり、
前記直径R1と、前記凹部における丸み部分の直径R2との比(R1/R2)が0.5以上2.5以下である[1]に記載の織物。
[3] 前記合繊マルチフィラメントの総繊度が11dtex以上67dtex以下であり、
前記多葉型単糸の単糸繊度が1.5dtex以上6.0dtex以下であり、
カバーファクターが1450以上2300以下である[1]又は[2]に記載の織物。
[4] JIS L 1096 8.27.1 通気性A法(フラジール形法)に基づいて測定される洗濯10回後の通気度が1.5cm3/cm2・s以下である[1]〜[3]のいずれかに記載の織物。
[5] 摩耗等級が2級以上である[1]〜[4]のいずれかに記載の織物。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の織物を含む衣料。
[7] [1]〜[5]のいずれかに記載の織物を含む寝具。
[8] [1]〜[5]のいずれかに記載の織物を含む鞄。
多葉型単糸とは、繊維横断面の外形に3〜6個ずつの凸部と凹部を有するモノフィラメントである。本発明では、単糸として多葉型単糸を使用するが、多葉型単糸であれば、カレンダー加工中に隣接する単糸同士の凹部と凸部が噛合い、カレンダー加工後もその噛合い構造が維持されるため、織物を洗濯後であっても低通気度に維持できる。
前記ポリエステル類の樹脂の相対粘度は、好ましくは0.60以上、より好ましくは0.65以上、更に好ましくは0.70以上であり、好ましくは1.00以下、より好ましくは0.95以下、更に好ましくは0.90以下である。
本発明では低異型度の多葉型単糸を使用するため、高異型度の単糸の製造に用いられる相対粘度の高い樹脂を採用しなくても、相対粘度が前記範囲内であれば、繊維横断面が明瞭な多葉型である単糸を製糸できる。また相対粘度が前記範囲内であれば、適当な破断強度と破断伸度を有する多葉型単糸を製造でき、単糸の破断強度不足に起因する製品の引き裂き強力及び破断強度の低下、並びに、単糸の破断伸度不足に起因する加工操業性の悪化及び製品耐久性の悪化を回避できる。
合繊マルチフィラメントは、前記多葉型単糸を複数含有する。合繊マルチフィラメントの総繊度は、好ましくは11dtex以上、より好ましくは15dtex以上、更に好ましくは18dtex以上であり、好ましくは67dtex以下、より好ましくは56dtex以下、更に好ましくは35dtex以下である。合繊マルチフィラメントの総繊度を前記範囲内に調整することにより、製糸がスムーズなものとなり、また低目付の織物を得易くなるため好ましい。
本発明の織物は、織物に含まれる多葉型単糸100%中、80〜100%(より好ましくは90〜100%)の多葉型単糸が、隣り合う多葉型単糸と、凸部及び/又は凹部で、曲線的及び/又は直線的に(より好ましくは曲線的に)接する多葉型単糸接触部を有する。多葉型単糸の接触状態をこのような構成とすることで、繰返しの着用や洗濯後であっても低通気度が損なわれない織物となる。また、隣り合う多葉型単糸が曲線的に接触することは、外力に対して単糸同士が分離することなく動き易くなるため、織物をソフトに仕上げる際には有効である。
織物のカバーファクターは、好ましくは1450以上、より好ましくは1500以上、更に好ましくは1550以上であり、好ましくは2300以下、より好ましくは2000以下、更に好ましくは1900以下である。カバーファクターを前記範囲内に調整することにより、滑脱抵抗力が高く、メヨレがなく、更には軽量で柔らかな風合いを有する織物を得やすくなる。
織物の織組織は特に限定されるものではなく、平組織、綾組織、朱子組織など任意の組織を用いることができ、中でも無地感と軽量性の観点から、平組織が好ましく用いられる。さらに、優れたデザイン性及び高引き裂き強力の観点からは、織組織はリップストップタフタが好ましい。
また織物の緯密度は、例えば、80本/2.54cm以上が好ましく、100本/2.54cm以上がより好ましく、400本/2.54cm以下が好ましく、350本/2.54cm以下がより好ましく、250本/2.54cm以下が更に好ましい。なお、生機密度と仕上密度は同一であっても異なっていてもよい。
なお前記平坦部は、具体的には、織物表面に形成される押圧部であるから、織物中の隣り合う多葉型単糸同士が直線的に接している部分は平坦部には数えない。
なお、織物の引裂き強力は、JIS L 1096 8.15.5に規定されている引裂強さD法(ペンジュラム法)に準拠して測定できる。
本発明によれば、繰返しの着用や洗濯後においても低通気度を損なわず、耐摩耗性に優れ、イラツキがなく品位が良好でソフトな織物が提供される。このため本発明の織物を含む製品としては、実用性に優れた、スポーツウェア、アウトドアウェア、カジュアルウェア、コーティングまたはラミネート加工されていてもよい雨衣、コーティングまたはラミネート加工されていてもよいウィンドブレーカー等の衣料(好ましくは上着);寝袋、布団等の寝具;コーティングまたはラミネート加工されていてもよい鞄等;等が例示される。
これらの評価項目は、JIS L 1096に記載の方法に準拠して測定した。
96.3±0.1質量%の試薬特級濃硫酸中にポリマー濃度が10mg/mlになるように試料を溶解させてサンプル溶液を調製した。20℃±0.05℃の温度で水落下秒数が6秒から7秒のオストワルド粘度計を用い、20℃±0.05℃の温度で、調製したサンプル溶液20mlの落下時間T1(秒)及び試料を溶解するのに用いた96.3±0.1質量%の試薬特級濃硫酸20mlの落下時間T0(秒)を、それぞれ測定した。使用する樹脂の相対粘度(RV)は下記の式により算出する。
RV=T1/T0
多葉型単糸の凸部の中心点から凸部における丸み部分までの最長距離をD1とし、多葉型単糸の凹部の中心点から凹部における丸み部分までの最長距離をD2としたときに、多葉型単糸の異型度はこれらの比D1/D2で定義される。異型度は、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JSM−6610型)を用いて織物に垂直な方向の断面SEM写真を撮影し、撮影したSEM写真からカレンダー加工による変形の少ない任意の多葉型単糸を5本選定して単糸毎に異型度を求め、これら5本の平均値を以って評価した。
なお凸部の中心点は最長の凸部頂点と次いで長い凸部頂点をつなぐ外接円の直径の中心であり、凹部の中心点は最長の凹部低点と次いで長い凹部低点を結ぶ内接円の直径の中心である。図1の多葉型単糸dには、凸部の中心点と凹部の中心点が同じ位置にある例を示しているが、カレンダー加工により、凸部の中心点と凹部の中心点が異なる位置にある場合もある。
多葉型単糸の凸部の高さは、多葉型単糸の凸部の中心点から凸部における丸み部分までの最長距離D1と、多葉型単糸の凹部の中心点から凹部における丸み部分までの最長距離D2との差(すなわち、D1−D2)で定義する。凸部の高さは、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JSM−6610型)を用いて織物に垂直な方向の断面SEM写真を撮影し、撮影したSEM写真からカレンダー加工による変形の少ない任意の多葉型単糸を5本選定して単糸毎に凸部の高さを求め、これら5本の平均値を以って評価した。
直径(R1)及び直径(R2)はそれぞれ、平坦部箇所を除いた丸みのある凸部と凹部を測定対象とする。図1の単糸dに、凸部における丸み部分の直径(R1)と凹部における丸み部分の直径(R2)の測定方法を例示する。直径(R1)は、一個の凸部の外周を出来る限り多く含む最大円の直径とし、直径(R2)は、一個の凹部の外周を出来る限り多く含む最大円の直径とした。直径(R1)及び直径(R2)は、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JSM−6610型)を用いて織物に垂直な方向の断面SEM写真を撮影し、撮影したSEM写真からカレンダー加工による変形の少ない任意の多葉型単糸を5本選定して単糸毎に直径(R1)及び直径(R2)を求め、これら5本の平均値を以って評価した。
走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JSM−6610型)を使い、織物中の経方向及び緯方向のそれぞれに含まれる1本の合繊マルチフィラメントに垂直な断面を350倍で撮影した。撮影したSEM写真から、カレンダー加工による変形が少なく、隣接する多葉型単糸同士が曲線的に接している5組を選定し、隣接する多葉型単糸の接触長さを測定し平均値を求めた。
織物表面に存在する多葉型単糸の凸部のうち、単独で潰れて形成された平坦部の幅を測定する。平坦部の幅が広そうな5本の多葉型単糸を選定し、その最大幅を以って平坦部の幅とした。なお測定に際しては、以下の凹み度合いを考慮した。式中、「直線距離L0」は、隣接する凸部の平坦部端同士を結ぶ最長の直線距離を意味し、「凹み高さH」は、直線距離L0から凹部底部までの垂直最長距離を意味する。
凹み度合い(%)=凹み高さH/直線距離L0×100
2個の凸部が潰れて略平坦部が形成され、略平坦部に凹みがあり、且つ、前記式に基づいて得られる凹み度合いが4%未満である場合には1個の平坦部が存在するとみなし、2個の凸部が潰れて略平坦部が形成され、略平坦部に凹みがあり、且つ、前記式に基づいて得られる凹み度合いが4%以上の場合には、凹部を境に2個の平坦部が存在するとみなす。
織物のカバーファクター(CF)は、下記の式により計算した。
CF=T×(DT)1/2+W×(DW)1/2
[式中、TおよびWは織物の経密度および緯密度(本/2.54cm)を示し、DTおよびDWは織物を構成する経糸および緯糸の太さ(dtex)を示す。]
1.摩耗試験:摩耗試験には、JIS L 0849で用いられる摩擦堅牢度試験機II型(学振形)試験機及び、市販の面ファスナーとしてクラレ製#A0380オスを用いる。
摩擦堅牢度試験機II型(学振形)試験機を図10−1に示す。摩擦堅牢度試験機II型(学振形)試験機は、試験片台、摩擦子、荷重腕、水平往復運動装置などから構成される。前記試験片台は、金属製の台であり、表面半径Rが200mmのかまぼこ形である。前記摩擦子は、表面半径R45mmの円筒状の曲面であり、摩擦用白綿布(本実施例では面ファスナー)を固定できる耐薬品性の金属材質のものである。前記荷重腕は、一端が固定軸でとめられ、他端の摩擦糸に荷重2N(質量約200gのおもりを載せたものに相当)を加えたものであり、固定軸中心から摩擦子中心までの距離は約110mmであり、固定軸を中心に自由に回転することができる。前記水平往復運動装置は、クランク、ハンドルなどで試験片台を毎分30回往復の速度で120mmの間を水平に往復運動でき、摩擦子が100mmの間で往復運動可能なものである。なお、図10−1に示す寸法の単位はmmである。
前記面ファスナーは、長さ約60mm、幅約20mmにカットし、試験機の摩擦子に沿って長手方向に固定する。図10−2は、摩擦子に固定された面ファスナーの側面写真であり、図10−3は、摩擦子に固定された面ファスナーの上面写真である。なお摩擦子の荷重は、摩擦子に300gの荷重を追加して合計500gに調整する。
織物は、図10−4に示すような幅60mm、縦230mmの形にカットして試験片とする。織物の経方向の摩耗試験を行う場合は、織物の経糸が図10−4の長手方向と平行になるようにカットして試験片台にセットする。また、織物の緯方向の摩耗試験を行う場合は、織物の緯糸が図10−4の長手方向と平行になるようにカットして試験片台にセットする。
試験片台に両面テープ(TERAOKA ANCHOR BRAND 幅25mm)を貼り、その上に織物の試験片を自然な状態でセットする。織物の両端は、試験機の試料止め金具で固定する。
測定長は10cmとし、摩擦速度は毎分30回往復とし、往復回数は200回とする。測定一回毎(200回往復毎)に、新しい面ファスナーに取り変える。
また各状態の評価に際し、引きつれ、毛羽立ち、穴空きが複数生じた場合には、いずれも最も長いものを評価した。経方向及び緯方向それぞれに一回ずつ測定を行い、経緯のうち、評価が悪い方の結果を摩耗評価の測定結果とする。判定は優、良、不可の三段階で行い、優を3級、良を2級、不可を1級と数値化した。
なお引きつれ、毛羽立ち、穴空きの長さの測定基準は以下の通りである。
引きつれの長さは、織物が収縮している部位の摩擦方向の長さとする。
毛羽立ちの長さは、織物表面から垂直方向に立ち上がっている毛羽の長さとする。
穴空きの長さは、織物から裏が透けて見える部位の摩擦方向の長さとする。
織物の洗濯は、JIS L 0217 103法に規定される条件に準拠して実施した。「洗濯10回後」とは、洗濯−脱水−乾燥を10回繰り返した後の測定結果である。なお乾燥はライン乾燥で行った。洗濯10回後の通気度は、JIS L 1096 8.27.1に規定されている通気性A法(フラジール形法)に準拠して測定した。
丸型単糸を用いた比較例1の品位(イラツキの程度)を「A」とし、三角型単糸を用いた比較例2の品位を「D」としたときに、5人のベテランの評価者が得られた織物を目視して、以下の4段階の評価を行った。
A:イラツキがない、B:ややイラツキがある
C:ややイラツキが目立つ、D:イラツキが目立つ
丸型単糸を用いた比較例1の風合い(柔らかさの程度)を「A」とし、三角型単糸を用いた比較例2の風合いを「D」としたときに、5人のベテランの評価者が得られた織物を触って、以下の4段階の評価を行った。
A:非常にソフト、B:ややソフト、C:やや硬い、D:非常に硬い
各性能評価は、以下を合格の基準とした。
・耐摩耗性…2級以上が合格
・洗濯10回後の通気度…1.5cm3/cm2・s以下が合格
・織物の品位…C以上が合格
・織物の風合い…C以上が合格
総合評価では、上記の全てで「合格」だったものを「総合評価の合格」とし、上記のうち一つでも不合格があれば「総合評価の不合格」とした。
図6(a)に示すような3葉断面を有する多葉型単糸からなるブライトナイロン6の22dtex、6フィラメント糸(レジン相対粘度:3.5、破断強力:19.6cN(破断強度:5.4cN/dtex)、破断伸度:50%、単糸形状は表に示される数字に極近似)を経糸及び緯糸に用いてタフタ組織(平組織)で製織した。
得られた生機を常法に従ってオープンソーパーを用いて精錬、ピンテンターを用いてプレセットし、液流染色機(日阪製作所製:サーキュラーNS)を用い、酸性染料で濃紺に染色した後中間セットした。中間セット後、非フッ素系撥水剤にて撥水処理を行い、その後、カレンダー加工(加工条件:180℃、圧力:2.5MPa、速度:20m/分)を織物の片面に2回施した。得られた織物のカバーファクターは1680、目付は37.2g/m2であった。
多葉型単糸の形状はカレンダー加工により少し変形したものの、カレンダー加工後の数値はカレンダー前と極近似であった。多葉型単糸において平坦部のある凸部の数は図1に示されるように2個以下であった。
多葉型単糸の形状を表のように変更したこと以外は実施例1と同様にして織物を得た。実施例2では、接触長が長くなることで、洗濯10回後の通気度の点でよりよい織物となった。実施例3では、凸部高さが高くなったため、擦過の影響を受けやすく、耐摩耗性の評価は「2」に留まったが、総合的には実用的な織物となった。
多葉型単糸を図7(a)に示すような4葉断面とし、多葉型単糸の形状を表のように変更したこと以外は実施例1と同様にして織物を得た。実施例6では、接触長が長くなることで、洗濯10回後の通気度の点でよりよい織物となった。しかし凸部高さが高くなったため、擦過の影響を受けやすく、耐摩耗性の評価は「2」に留まったが、総合的には実用的な織物となった。
多葉型単糸を図8(a)に示すような5葉断面とし、多葉型単糸の形状を表のように変更し、更にカレンダー温度を180℃から160℃に変えたこと以外は実施例1と同様にして織物を得た。実施例7では、多葉型単糸において平坦部のある凸部の数は2個以下であり、図2(a)に示されるような、凸部2個の側面が潰れて巾の広い平坦部を形成している部分は存在しなかった。実施例8〜9では、凸部における丸み部分の直径(R1)が小さくなったため、耐摩耗性は「2」に留まったが、総合的には実用的な織物となった。
多葉型単糸を図9(a)に示すような6葉断面とし、多葉型単糸の形状を表のように変更し、更にカレンダー温度を180℃から160℃に変えたこと以外は実施例1と同様にして織物を得た。実施例10では、多葉型単糸において平坦部のある凸部の数は2個以下であり、図2(a)に示されるような、凸部2個の側面が潰れて巾の広い平坦部を形成している部分は存在しなかった。得られた織物は、耐摩耗性・低通気度保持性は実施例7〜9と同様であるが、品位・風合いについては丸断面糸(比較例1)に極近似する織物であった。これは多葉型単糸の繊維横断面が6葉となることで、より円形に近い形状になったことに起因すると推測される。
図6(a)に示すような3葉断面を有する多葉型単糸からなるブライトナイロン6の22dtex、10フィラメント糸(レジン相対粘度:3.5、破断強力:13.2cN(破断強度:6.0cN/dtex)、破断伸度:34%、単糸形状は表に示される数字に極近似)を経糸及び緯糸に用いてタフタ組織(平組織)で製織したこと以外は実施例1と同様にして織物を得た。
図6(a)に示すような3葉断面を有する多葉型単糸からなるブライトナイロン6の22dtex、8フィラメント糸(レジン相対粘度:3.5、破断強力:16.0cN(破断強度:5.8cN/dtex)、破断伸度:37%、単糸形状は表に示される数字に極近似)を経糸及び緯糸に用いてタフタ組織(平組織)で製織したこと以外は実施例1と同様にして織物を得た。
図9(a)に示すような6葉断面を有する多葉型単糸からなるブライトナイロン6の33dtex、6フィラメント糸(レジン相対粘度:3.5、破断強力:31.9cN(破断強度:5.8cN/dtex)、破断伸度:37%、単糸形状は表に示される数字に極近似)を経糸及び緯糸に用いてタフタ組織(平組織)で製織したこと以外は実施例1と同様にしてカバーファクターが1924の織物を得た。
図6(a)に示すような3葉断面を有する多葉型単糸からなるブライトナイロン6の44dtex、20フィラメント糸(レジン相対粘度:3.5、破断強力:13.2cN(破断強度:6.0cN/dtex)、破断伸度:34%、単糸形状は表に示される数字に極近似)を経糸及び緯糸に用いてタフタ組織(平組織)で製織したこと以外は実施例1と同様にしてカバーファクターが2070の織物を得た。
織物のカバーファクターを下げたこと以外は実施例1と同様にして織物を得た。
実施例2で使用した合繊マルチフィラメントを用いて、ピン仮撚機(三菱重工製ST−5)で仮撚加工糸を得た。仮撚条件は、断面変形が少なく、捲縮性が得られ易いように仮撚数3960tpm、仮撚温度170℃、仮撚速度70m/分、オーバーフィード率−3.00%、スピナー捲数1回とした。仮撚加工糸の伸縮復元率は19.8%であった。該仮撚加工糸を経糸及び緯糸に用い、タフタ組織(平組織)で製織した(カバーファクター1790)。その後、実施例1と同様にして織物を得た。
次いで、温度160℃、加工速度20m/分のシュリンクサーファーを通し、織物中の拘束力を緩和する処理を施した。実施例16の仮撚加工糸及び織物の評価結果を表に示す。
織物中の仮撚糸の単糸の異形度は断面が楕円状に変形し、異型度が1.5を呈した。得た織物のカバーファクターは1960、目付は43.3g/m2で、織物の緯方向の伸び率は9.6%であった。実施例2より生地品位が向上した理由は、仮撚加工糸の捲縮により糸表面の乱反射が増したことによると考えられる。捲縮性があるため通常であれば低通気度が得られにくい織物でありながら、本実施例16では低通気度保持性が良いのは、仮撚加工糸段階で単糸間の噛合いが図6(a)に示されるより促進され、単糸同士が比較的分離し難い構造を形成しているためと考えられる。また、擦過に弱い仮撚加工糸を用いながら耐摩耗性が良くなっているのは、単糸の凸部の径の大きさが寄与し、カレンダー加工により織物表面が比較的平滑になったためと考えられる。
丸型単糸からなるブライトナイロン6を、それぞれ経糸及び緯糸に用いてタフタ組織(平組織)で製織したこと以外は実施例1と同様にして織物を得たが、低通気度保持性が不十分であり、本発明の求めるレベルには到達しなかった。
正三角形断面を有する三角型単糸からなるブライトナイロン6を、それぞれ経糸及び緯糸に用いてタフタ組織(平組織)で製織したこと以外は実施例1と同様にして織物を得たが、イラツキが多く、風合いは硬いものであった。平坦部が広く、形状に丸みがないことが影響しているためと考えられる。
多葉型単糸を図5(a)に示すような4葉断面とし、多葉型単糸の形状を表のように変更したこと以外は実施例1と同様にして織物を得た。品位は実施例4〜6より悪化し、耐摩耗性は1級と不良であった。四葉でも形状が適正でないと本発明の目的とする織物は得られないことがわかる。
多葉型単糸を図5(b)に示すような5葉断面とし、多葉型単糸の形状を表のように変更したこと以外は実施例1と同様にして織物を得た。織物中の単糸同士は点接触であるため洗濯中に単糸同士が分離してしまい、洗濯後の通気度は大きく上昇した。五葉でも形状が適正でないと本発明の目的とする織物は得られないことがわかる。
多葉型単糸を図5(c)に示すような5葉断面とし、多葉型単糸の形状を表のように変更したこと以外は実施例1と同様にして織物を得た。実施例7〜9に比べ、品位、風合いが悪化し、耐摩耗性は1級と不良であった。五葉でも形状が適正でないと本発明の目的とする織物は得られないことがわかる。品位不良は比較例2と同様に平坦部の幅が広過ぎたためと考えられる。
図9(a)に示すような6葉断面を有する多葉型単糸からなるブライトナイロン6の22dtex、20フィラメント糸で製織し、更にカレンダー温度を180℃から160℃に変えたこと以外は、実施例1と同様にして織物を得た。単糸の凸部の直径が細かったことから、擦過により単糸が引き出されやすくなり、耐摩耗性が不良になったと考えられる。
L0、L01、L02:隣接する凸部の平坦部端同士を結ぶ最長の直線距離
W1〜W3:接触長
R1:凸部における丸み部分の直径
R2:凹部における丸み部分の直径
D1:多葉型単糸の凸部の中心点から凸部における丸み部分までの最長距離
D2:多葉型単糸の凹部の中心点から凹部における丸み部分までの最長距離
a、b、c、d:多葉型単糸
H、H1、H2:凹み高さ
Claims (8)
- 繊維横断面の外形に3〜6個ずつの凸部と凹部を有する多葉型単糸を含む合繊マルチフィラメント織物であり、
織物に含まれる多葉型単糸100%中、80〜100%の多葉型単糸が、隣り合う多葉型単糸と、凸部及び/又は凹部で、曲線的及び/又は直線的に接し、前記接触長が6μm以上30μm以下であり、
表面及び裏面の少なくとも一方にカレンダー加工面があり、カレンダー加工により前記多葉型単糸の凸部に形成される平坦部の幅が3.5μm以上15μm以下であり、
前記凸部における丸み部分の直径R 1 が4.5μm以上15μm以下であり、
前記直径R 1 と、前記凹部における丸み部分の直径R 2 との比(R 1 /R 2 )が0.5以上2.5以下であることを特徴とする織物。 - 前記多葉型単糸の異型度が1.2以上2.0以下であり、
前記凸部の高さが2.0μm以上8.0μm以下である請求項1に記載の織物。 - 前記合繊マルチフィラメントの総繊度が11dtex以上67dtex以下であり、
前記多葉型単糸の単糸繊度が1.5dtex以上6.0dtex以下であり、
カバーファクターが1450以上2300以下である請求項1又は2に記載の織物。 - JIS L 1096 8.27.1 通気性A法(フラジール形法)に基づいて測定される洗濯10回後の通気度が1.5cm3/cm2・s以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の織物。
- 摩耗等級が2級以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の織物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の織物を含む衣料。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の織物を含む寝具。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の織物を含む鞄。
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