JP3835616B2 - ポリアミドマルチフィラメント織物及びその製造法 - Google Patents
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Description
1.繊度40dtex以下のポリアミドマルチフィラメントを経糸及び/又は緯糸に用いて製織され、膜加工が施されておらず、織物の片面のみに複数回カレンダー加工が施されてなり、1cm以下の格子柄のリップストップ組織であり、織物厚みが0.10mm以下、織物目付けが55g/m2以下であり、シングルタング法による経糸切断方向及び緯糸切断方向の引裂強力が1.5kgf以上、通気度が1cm3/cm2・s以下であり、経糸および緯糸の2.54cm間における単糸本数の総和が8000以上であることを特徴とするポリアミドマルチフィラメント織物。
2.経糸及び/又は緯糸が、単糸繊度が1.5dtex以下のポリアミドマルチフィラメントであることを特徴とする上記第1に記載のポリアミドマルチフィラメント織物。
3.上記第1又は第2に記載のポリアミドマルチフィラメント織物の製造法であって、相対粘度が2.5以上のポリアミドレジンから製糸された破断強度4.5cN/dtex以上、破断伸度35〜50%のポリアミドマルチフィラメントを経糸及び/又は緯糸に用いて製織することを特徴とするポリアミドマルチフィラメント織物の製造法。
4.経糸にサイジングを施した後、製織することを特徴とする上記第3に記載のポリアミドマルチフィラメント織物の製造法。
本発明のポリアミドマルチフィラメント織物は織物厚みが0.15mm以下であることが好ましく、織物目付けが80g/m2以下であることが好ましく、シングルタング法による経糸切断方向及び/又は緯糸切断方向の引裂強力が1.5kgf以上を有することが好ましい(1kgf=9.8N)。ポリアミドマルチフィラメントは高強力、高タフネス、耐磨耗性、寸法安定性に優れた繊維であり、ベルト、ホース、タイヤコード、鞄、寝袋、テント類、パラグライダー、パラシュート等の資材用途あるいはスキー・スノーボードウェア、アウトドアウェアなどのスポーツ衣料用途に好適である。但し、本発明では主にダウンウェア、ダウンジャケット、ダウンプルーフ、寝袋などコンパクトでソフトな薄地織物用途をターゲットとしており、織物厚みは0.15mm以下が好ましく、更に好ましくは0.13mm以下である。織物目付けは80g/m2以下であることが好ましく、更に好ましくは70g/m2以下、一層好ましくは60g/m2以下である。シングルタング法による経糸切断方向及び/又は緯糸切断方向の引裂強力が1.5kgf以上であることが好ましい(1kgf=9.8N)。1.5kgf未満では、用途によっては織物の引裂強力が不足気味となり易く、好ましくない。より好ましくは経緯ともに1.5kgf以上、更に好ましくは1.8kgf以上であり、基本的には高いほど好ましいが、織物の引裂強力を高めるため、繊維強力を高めようとして、あまりにも相対粘度の高過ぎるレジンを使用して製糸すると、製糸操業性が害する場合もあり、織物の引裂強力は、5.0kgf以下であることが好ましい。そして、通気度は1cm3/cm2・s以下であることが好ましく、より好ましくは0.8cm3/cm2・s以下、更に好ましくは0.58cm3/cm2・s以下である。ダウンウェアー、ダウンジャケット、ダウンプルーフ、寝袋などの用途は織物が側地として用いられ、詰め綿される。従って、織物の通気度が1cm3/cm2・sを超えると繊維径が細く、クリンプの少ない、剛毛タイプの詰め綿、ステープルが内側から飛び出す不具合を起こしやすくなり好ましくない。低い通気度を達成する上で、本発明の織物を構成する経糸および緯糸の2.54cm(=1インチ)間における単糸本数の総和が8000以上であることが好ましい。前記はマルチフィラメントを構成するフィラメント数と経糸又は緯糸の2.54cm間の本数とを掛け合わせて、その経糸による数値と緯糸による数値の和が8000以上であることを意味する。従来、ナイロンマルチフィラメント織物では経糸は無撚無糊で製織する場合に比較的単糸繊度が太く、フィラメント本数の少ないナイロンマルチフィラメントが使われていたが、フィラメント本数が少ないと織物の緻密性が下がり、低い通気度を有する織物を得るには限界があることが判った。そこで、低い通気度を得る為にフィラメント本数の多いマルチフィラメントを使用し、サイジングすることによって本発明の織物を得ることが好ましい。その結果、低通気性であり、ソフトで柔軟な織物に仕上げることができる。経糸および緯糸の2.54cm間における単糸本数の総和が6000以下では、低い通気性が得られず、ソフト、柔軟性も不十分になり易く好ましくない。更に望ましくは10000以上、一層望ましくは12000以上である。但し、あまりにも経糸および緯糸の2.54cm間における単糸本数の総和を大きくしようとして、織密度を高くし過ぎると、製織性を害する場合があるので、単糸本数の総和は25000以下であることが好ましい。なお、経緯のバランスについては、余りにも経糸又は緯糸によるものの割合が大きいことは好ましくなく、経:緯が3:7〜7:3の範囲であることが好ましく、更に好ましくは4:6〜6:4の範囲である。
(相対粘度)
96.3±0.1重量%試薬特級濃硫酸中に重合体濃度が10mg/mlになるように試料を溶解させてサンプル溶液を調整し、20℃±0.05℃の温度で水落下秒数6〜7秒のオストワルド粘度計を用い、溶液相対粘度を測定する。測定に際し、同一の粘度計を用い、サンプル溶液を調整したときと同じ硫酸20mlの落下時間T0(秒)と、サンプル溶液20mlの落下時間T1(秒)の比より、相対粘度RVを下記の式を用いて算出する。
RV=T1/T0
インストロンジャパン(株) 4310型を用いて測定する。初荷重として糸条繊度(dtex)に対し1/33グラムを加え、糸長20cm、引張速度20cm/minの条件下でS−Sチャートを作成し、1試料に対しn=3で測定し破断伸度および破断強度をチャートより読みとりそれぞれの平均値を求め、破断強度については、繊度(dtex)で除して求める。
100m長のポリアミドマルチフィラメントのカセを3つ作成し、各々の重量(g)を測定し、平均値を求め、100倍した。
JIS−L−1096 8.27.1に規定されている通気度(フラジール形法 A法)を採用し、測定した。
コーティング、ラミネート等の膜加工が施されていない織物については、織物厚さ(mm)は、厚み計にてランダムに5カ所測定し、その平均値を求める。
(実施例1)
相対粘度ηr=3.51のナイロン6ポリマーを紡糸温度280℃で丸孔を24個有する口金から溶融吐出、冷却後、紡糸引き取りゴデットローラ周速2200m/minで紡糸後、連続して延伸熱セットし、破断強度が6.50cN/dtex、破断伸度が43.0%の33デシテックス24フィラメントのマルチフィラメントを得た。織物経糸として該マルチフィラメントを無撚の状態で互応化学工業(株)製のアクリル酸エステル共重合体アンモニウム塩タイプのプラスサイズ(R)J−30を用いて糊付けを行い、緯糸には糊を付けることなく無撚の状態でそのまま用いて、図1のリップストップ組織で製織を行った。なお、製織性は良好であり、経糸切れ、毛羽の発生はなく織機の稼働率は高いものでり、なお且つ得られた生機も品質の高いものであった。得られた生機を常法に従って精錬、染色した後、カレンダー加工(条件:シリンダー温度120℃、圧力25kgf/cm2、速度20m/分)を織物片面に2回施して仕上げ、経糸密度249本/2.54cm、緯糸密度137本/2.54cmの織物を得た。得られた織物は経引裂強力が2.0kgf、緯引裂強力が1.5kgfであり、厚みは0.10mm、目付けは55g/m2、通気度が0.65cm3/cm2・sであった。風合いは非常にソフトであり、薄地にもかかわらず引裂強力に優れ、尚且つ低い通気性に優れた織物であった。結果を表1に示す。
相対粘度ηr=3.5のナイロン6ポリマーを紡糸温度285℃で丸孔を34個有する口金から溶融吐出し、冷却後、紡糸引き取りゴデットローラ周速2300m/minで引き取り、連続して延伸熱セットし、破断強度が6.0cN/dtex、破断伸度が47.4%の44デシテックス34フィラメントのマルチフィラメントを得た。以下、実施例1と同様に該マルチフィラメントは経糸用として糊付けを行い、緯糸は無撚の状態でそのまま用いて、図1のリップストップ組織で製織を行った。実施例1と同様に製織性は良好であり、経糸切れ、毛羽の発生はなく織機の稼働率は高いものであり、なお且つ得られた生機欠点のない好ましいものであった。得られた生機を常法に従って精錬・染色した後、カレンダー加工(条件:シリンダー温度120℃、圧力25kgf/cm2、速度20m/分)を織物片面に2回施して仕上げ、経糸密度217本/2.54cm、緯糸密度119本/2.54cmの織物を得た。得られた織物は経引裂強力が2.5kgf、緯引裂強力が1.8kgf、厚みは0.10mm、目付けは65g/m2であった。風合いは非常にソフトであり、薄地にもかかわらず引裂強力が非常に優れた高タフネスを有するポリアミドマルチフィラメント織物であった。結果を表1に示す。
相対粘度ηr=2.5のナイロン6ポリマーを紡糸温度255℃で丸孔を12個有する口金から溶融吐出し、冷却後、紡糸引き取りゴデットローラ周速3300m/minで紡糸後、連続して延伸熱セットし、破断強度が4.0cN/dtex、破断伸度が43.0%の33デシテックス12フィラメントのマルチフィラメントを得た。織物経糸として該マルチフィラメントを無撚の状態で経糸、緯糸ともに糊を付けることなく無撚の状態でそのまま用いて、図1のリップストップ組織で製織を行った。製織性において、経糸切れが散見され、必ずしも万全ではなかったが、一通り生機を得ることができた。得られた生機を常法に従って精錬・染色した後、カレンダー加工(条件:シリンダー温度120℃、圧力25kgf/cm2、速度20m/分)を織物片面に2回施して仕上げ、経糸密度249本/2.54cm、緯糸密度137本/2.54cmの織物を得た。得られた織物は経引裂強力が1.5kgf、緯引裂強力が1.0kgfであり、厚みは0.10mm、目付けは55g/m2、通気度が0.85cm3/cm2・sであった。風合いはやや硬く、引裂強力が若干低い織物であった。結果を表1に示す。
相対粘度ηr=3.51のナイロン6ポリマーを紡糸温度280℃で丸孔を24個有する口金から溶融吐出後冷却し、紡糸引き取りゴデットローラ周速2200m/minで紡糸後、連続して延伸熱セットし、破断強度が6.50cN/dtex、破断伸度が43.0%の33dtex24フィラメントのマルチフィラメントを得た。織物経糸として該マルチフィラメントを無撚の状態で互応化学工業(株)製のアクリル酸エステル共重合体アンモニウム塩タイプのプラスサイズ(R)J−30を用いて糊付けを行い、緯糸には糊を付けることなく無撚の状態でそのまま用いて、ヒラ組織で製織を行った。なお、製織性は良好であり、経糸切れ、毛羽の発生はなく織機の稼働率は高く、得られた生機は特に生機欠点を問題にするものではなかった。得られた生機を常法に従って精錬・染色仕上げを行い、経糸密度244本/2.54cm、緯糸密度131本/2.54cmの織物を得た。なお、カレンダー加工は実施しなかった。得られた織物は経引裂強力が1.7kgf、緯引裂強力が0.9kgfであり、厚みは0.10mm、目付けは55g/m2、通気度が1.2cm3/cm2・sであった。風合いは非常にソフトであるが、引裂強力が若干弱く、また通気性もやや高めであった。結果を表1に示す。
相対粘度ηr=3.5のナイロン6ポリマーを紡糸温度285℃で丸孔を20個有する口金から溶融吐出し、冷却後、紡糸引き取りゴデットローラ周速2000m/minで引き取り、連続して延伸熱セットし、破断強度が6.1cN/dtex、破断伸度が45.0%の22デシテックス20フィラメントのマルチフィラメントを得た。以下、実施例1と同様に該マルチフィラメントは経糸用として糊付けを行い、緯糸は無撚の状態でそのまま用いて、図2のリップストップ組織で製織を行った。実施例1と同様に製織性は良好であり、経糸切れ、毛羽の発生はなく織機の稼働率は高いものであり、なお且つ得られた生機欠点のない好ましいものであった。得られた生機を常法に従って精錬・染色した後、カレンダー加工(条件:シリンダー温度120℃、圧力25kgf/cm2、速度20m/分)を織物片面に2回施して仕上げ、経糸密度200本/2.54cm、緯糸密度200本/2.54cmの織物を得た。得られた織物は経引裂強力が1.8kgf、緯引裂強力が1.5kgf、厚みは0.07mm、目付けは37.2g/m2であった。風合いは非常にソフトであり、薄地にもかかわらず引裂強力が非常に優れた高タフネスを有するポリアミドマルチフィラメント織物であった。結果を表1に示す。
スノーボードウェア、アウトドアウェア、取り分けダウンウェア、ダウンジャケット、ダウンプルーフなどの資材用途や、衣料用途で好適に用いることができる軽く、薄くても引裂強力や低通気性に優れ、ソフトで柔軟な風合いを有し、コンパクト性に優れたポリアミドマルチフィラメント織物を提供することを可能とした。また、製織性に優れ、光沢感を抑制できる前記の様なポリアミドマルチフィラメント織物の製造法の提供を可能とした。
Claims (4)
- 繊度40dtex以下のポリアミドマルチフィラメントを経糸及び/又は緯糸に用いて製織され、膜加工が施されておらず、織物の片面のみに複数回カレンダー加工が施されてなり、1cm以下の格子柄のリップストップ組織であり、織物厚みが0.10mm以下、織物目付けが55g/m2以下であり、シングルタング法による経糸切断方向及び/又は緯糸切断方向の引裂強力が1.5kgf以上、通気度が1cm3/cm2・s以下であり、経糸および緯糸の2.54cm間における単糸本数の総和が8000以上であることを特徴とするポリアミドマルチフィラメント織物。
- 経糸及び/又は緯糸が、単糸繊度が1.5dtex以下のポリアミドマルチフィラメントであることを特徴とする請求項1に記載のポリアミドマルチフィラメント織物。
- 請求項1又は2に記載のポリアミドマルチフィラメント織物の製造法であって、相対粘度が2.5以上のポリアミドレジンから製糸された破断強度4.5cN/dtex以上、破断伸度35〜50%のポリアミドマルチフィラメントを経糸及び/又は緯糸に用いて製織することを特徴とするポリアミドマルチフィラメント織物の製造法。
- 経糸にサイジングを施した後、製織することを特徴とする請求項3に記載のポリアミドマルチフィラメント織物の製造法。
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