JP7483658B2 - 織物および織物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ダウンウェア、ダウンジャケット、寝袋等のアウトドア用品等のダウン製品に好ましく用いることができる織物に関するものである。
中ワタに羽毛が用いられているダウン製品は軽量で保温性が高く、ダウンウェアや寝袋等に用いられている。ダウン製品において、特にダウンウェアや寝袋等のアウトドア用品の側地には、高い引裂強度が要求される。
ダウン製品の側地の引裂強度を高めるために、織物を構成する組織はリップストップ(以下、「リップ」と称することがある)組織を使うのが通例である。しかし、リップ組織は、織物構造の地の糸をベースにしながら一定の間隔で引き揃えた糸もしくは太い糸を経糸および緯糸に用いるため、織物の表面における凹凸が目立つものである。そのため、意匠性も求められる高級ファッション衣料用途でのダウンウェアや寝袋等には使用を避けられていた。
高級ファッション衣料用途でのダウン製品の側地に用いることができ、高い引裂強度を有する織物を得るために、例えば、特許文献1には、織物の組織がリップ組織であり、かつリップ組織の柄(格子柄)が1.5mm以下である織物が開示されている。
特開2005-048298号公報
しかし、特許文献1のような織物は、高い引裂強度は有しているものの依然として織物の表面にリップ組織の柄が存在しているため、高級ファッション衣料としては受け入れられないものであった。高級カジュアルファッション衣料の市場では、織物の表面の柄が目立ちにくいタフタ組織等の平織の織物が求められているが、タフタ組織かつ高い引裂強度を得るためには、織物を構成する合成繊維の総繊度を33dtex以上とする必要がある。しかし、総繊度が33dtex以上の合成繊維を使うと、高い引裂強度を有するタフタ組織の織物は得られるものの軽量さに欠ける織物となってしまい、改善の余地があった。
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ダウン漏れが抑えられていてダウンウェアや寝袋等のダウン製品の側地として好適に用いられ、タフタ組織でありながら軽量かつ薄地であり、さらに引裂強度が高い織物を提供することにある。
ダウン製品の側地となる織物は、織物にカレンダー加工を施して織物を構成する糸を押し潰して糸の断面形状を変形させ、糸同士の隙間を減らすことによってダウン漏れを抑えている。しかし、カレンダー加工によって織物を構成する糸が扁平に変形することで、糸間の隙間が埋まって織物内の糸同士の拘束が強まり、織物の剪断変形が阻害されてしまう。織物の剪断変形が阻害されることにより、織物に応力が加わった際に、織物を構成する糸が動くことによって応力を緩和することが行いにくく、織物の引裂強度が低下するという問題があった。
さらに、カレンダー加工によって織物を構成する糸の単繊維の断面形状も変形し、単繊維の強度が低下することによって、織物の引裂強度が大きく低下してしまう問題もあった。特に、織物を構成する糸の繊度が28dtex以下になると、織物の製造時や加工時、使用時に問題となるほど引裂強度の低下が顕著になっていた。
そのため、従来のダウン製品の側地は、地糸を引き揃えたり、従来の織物を構成する糸よりも2倍以上太い糸を用いて、平織へ格子状にこの太い糸を織り込んだりすることによって、織物の強度を高めたリップ組織とする必要があった。しかし、リップ組織の織物は、リップ組織が独特の柄として目立つため、ファッション性を重視する商品には敬遠されていた。
そこで本発明者らは、織物の表面に柄ができないタフタ組織等の平織組織であっても引裂強度が高い薄地織物の構造を鋭意検討して、下記の構成にたどり着いた。すなわち、織物に用いる糸の単繊維の断面形状を略四角形とすること等によって、織物を構成する糸内の単繊維同士の接触面積を大きくする。この単繊維同士の接触面積を大きくすることによって、従来の織物のように、ダウン漏れを防ぐためにカレンダー加工を強く施さなくてもダウンの吹き出しを防止することができ、その結果、カレンダー加工による糸の変形および単繊維の変形を抑えることができることを見出した。これにより、平織であっても織物の強度の維持とダウンの吹き出し防止の効果を両立することに成功した。この技術によると、糸間の隙間が埋まって織物内の糸の拘束が強まることを抑制でき、織物の剪断変形が阻害されることを抑えることができた。つまり、織物の組織において、互いに隣り合う緯糸の重なり係数であるWPが0.95≦WP≦1.08を満たし、かつ、互いに隣り合う経糸の重なり係数であるWFが0.85≦WF≦0.99を満たすことになった。
本発明に係る織物は、以下の点に要旨を有する。
[1]合成マルチフィラメントで構成される織物であって、織物の組織は、タフタ組織であり、少なくとも片面にカレンダー加工が施されており、前記合成マルチフィラメントの単糸繊度は、2dtex以上7dtex以下であり、前記合成マルチフィラメントの総繊度は、5dtex以上28dtex以下であり、カバーファクターは、1400以上2500以下であり、織物の組織において、互いに隣り合う緯糸の重なり係数WPは、下記の(A)式を満たし、かつ、互いに隣り合う経糸の重なり係数WFは、下記の(B)式を満たす織物。
0.95≦WP≦1.08 (A)
0.85≦WF≦0.99 (B)
[2]前記合成マルチフィラメントの単糸の断面形状は、四角形である[1]に記載の織物。
[3]前記合成マルチフィラメントを構成する材料は、ポリアミドあるいはポリエステルを含み、経方向および緯方向の引裂強度は、7N以上であり、初期通気度は、0.5cc/cm・sec以上1.5cc/cm・sec以下である[1]または[2]に記載の織物。
[4][1]~[3]のいずれか一項に記載の織物を側地に用いたダウン製品。
[5]単糸繊度が2dtex以上7dtex以下であり、総繊度が5dtex以上28dtex以下である合成マルチフィラメントを製織する工程と、織物の少なくとも片面に100℃以上180℃以下の温度でカレンダー加工を施す工程と、を含み、織物の組織は、タフタ組織であり、カバーファクターは、1400以上2500以下であり、織物の組織において、互いに隣り合う緯糸の重なり係数WPは、下記の(A)式を満たし、かつ、互いに隣り合う経糸の重なり係数WFは、下記の(B)式を満たす織物の製造方法。
0.95≦WP≦1.08 (A)
0.85≦WF≦0.99 (B)
本発明の織物は、表面に柄ができないタフタ組織の織物でありながら、従来にない特性として、通気性が低く高密度であってダウンの吹き出しが起こりにくく、かつ、軽量薄地であり、さらに、高い引裂強度を有する。本発明の織物を側地に用いたダウン製品は、側地が薄くても破れにくく、高い耐久性を付与することができる。
織物のタフタ織組織を模式的に例示した織物組織図を示す。 従来の織物の表面のSEM写真を示す。 従来の織物の断面のSEM写真を示す。 従来の織物のモノフィラメントの断面のSEM写真を示す。 本発明の実施の形態におけるモノフィラメントの繊維断面の説明図を示す。 本発明の実施の形態における織物の表面のSEM写真を示す。 本発明の実施の形態における織物の断面のSEM写真を示す。 織物において互いに隣り合う緯糸の重なり係数の測定方法の説明図を示す。 織物において互いに隣り合う経糸の重なり係数の測定方法の説明図を示す。 図7に示す織物の断面を一部拡大したSEM写真を示す。 互いに隣り合うモノフィラメント同士の接触長の測定方法の説明図を示す。 本発明の実施の形態におけるモノフィラメントを製造するノズルの口金吐出孔の形状の模式図を示す。
以下、本発明に係る織物に関して、図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
図1は織物のタフタ織組織を模式的に例示した織物組織図であり、図2は従来の織物の表面のSEM写真であり、図3は従来の織物の断面のSEM写真であり、図4は従来の織物のモノフィラメントの断面のSEM写真である。従来の織物では、ダウンウェア等のダウン製品の側地として必要な低通気性を確保するために、カレンダー加工で織物の生地を圧縮する必要があった。図2~図4は、カレンダー加工後のタフタ織物のSEM写真である。なお、織物の表面とは、織物の上下面のうち、相対的に光沢面が弱い方を表面と定義する。
一般的に、合成マルチフィラメントにおけるモノフィラメントの形状は丸断面であるが、これを織物にして、ダウン製品の側地に用いるための低い通気性とするには、カレンダー加工時の温度を高く設定して一定以上の圧力で押し潰し、モノフィラメントの断面形状を変形させる必要がある。図4に示すように、モノフィラメントの断面形状を押し潰し、モノフィラメント同士を接触させることによって、織物の空気の透過性が抑えられる。しかし、上記の従来の方法では、薄くて低通気性のタフタ組織の織物を得ることは可能であったが、引裂強度を高めることは困難であった。その理由について、以下に説明する。
隣り合うモノフィラメント同士の隙間をより小さくするために、カレンダー加工の温度や圧力を高くする必要がある。カレンダー加工時の温度を高くすると、図4に示すように、モノフィラメントの断面形状である丸形状が大きく変形し、元の形を保持せず、異形化してしまう。モノフィラメントの断面の形状が異形化することにより、モノフィラメントの単糸強度が著しく低下する。その結果、モノフィラメントの集合体である合成マルチフィラメントの糸そのものの強度も低下し、カレンダー加工後の織物の引裂強度が低下してしまう。
カレンダー加工による織物の強度の低下への対策として、一般的には、織物の組織を設計する際に、織物を構成する地の糸よりも2倍~4倍程度大きい繊度の糸を織物の経糸と緯糸の各々において何本かに1本挿入させるか、もしくは地の糸を2倍~4倍程度になるように引き揃えにしたリップ組織にて織物を製造する手法がとられてきた。これらの製造手法のおかげで、高機能を求めるアウトドアの市場ではリップ組織で構成された織物が積極的に採用されてきた。一方、近年では、高級ファッション市場においても、従来の風合いや見た目といった、所謂感性ばかりを求めず、高い機能性を追求するようになってきた。しかし高級ファッションの市場、特にダウンウェアやウインドブレーカー等の製品において、リップ組織の織物は表面の柄の特長が目立ちすぎるために敬遠されてきた。そこで、表面の柄が目立たないタフタ組織の織物であっても、薄く、ダウン製品用の側地として使用することのできる低通気性を維持し、かつ、高い引裂強度を得るために鋭意検討を行った結果、本発明に至った。以下、発明を実施する具体的な方法について説明する。
図5は本発明の織物のモノフィラメントの繊維断面の説明図であり、図6は織物の表面のSEM写真であり、図7は織物の断面のSEM写真である。
本発明に係る織物は、合成マルチフィラメントで構成される織物であって、図1に示すように、織物の組織はタフタ組織であり、図6および図7に示すように、少なくとも片面にカレンダー加工が施されている。
タフタは、密度が緻密な平織物、またはこれに類するものである。一般的なタフタは、経糸および緯糸の合成マルチフィラメントの総繊度が56~90dtex程度であり、経緯の合計密度が200~220本/2.54cm程度であることが多いが、本発明においては、合成マルチフィラメントの総繊度や経緯の合計密度がこれらの範囲から外れているものもタフタに含むものとする。特に、本発明のタフタは、一般的なタフタよりも経糸および緯糸の合成マルチフィラメントの総繊度が小さく、かつ、経緯の合計密度が高い、所謂高密度タフタであることが好ましい。
合成マルチフィラメントの単糸繊度は、2dtex以上7dtex以下である。つまり、合成マルチフィラメントを構成するモノフィラメントの繊度は、2dtex以上7dtex以下である。合成マルチフィラメントの単糸繊度が2dtex以上7dtex以下であることにより、合成マルチフィラメントを構成するモノフィラメントの強度を保ちつつ、合成マルチフィラメントによって構成する織物の柔軟性を高めることができる。
モノフィラメントが切れて織物の通気度や強度が低下しないように、モノフィラメントは、比較的太いことが好ましい。このような観点から、モノフィラメントの繊度は、2.2dtex以上であることが好ましく、2.4dtex以上であることがより好ましく、2.6dtex以上であることがさらに好ましい。モノフィラメントの繊度の下限値を上記の範囲に設定することにより、モノフィラメントの強度を十分なものとすることができ、モノフィラメントが切れにくくなる。また、モノフィラメントの繊度は、6.8dtex以下であることが好ましく、6.5dtex以下であることがより好ましく、6.0dtex以下であることがさらに好ましい。モノフィラメントの繊度の上限値を上記の範囲に設定することにより、織物を構成する際にモノフィラメントの密度を高めることができ、通気度を低下させてダウン漏れが起こりにくくなるという効果や、織物の柔軟性を高めることができる。
合成マルチフィラメントの総繊度は、5dtex以上28dtex以下である。合成マルチフィラメントの総繊度が5dtex以上28dtex以下であることにより、織物の強度を高め、なおかつ軽量であって柔軟な織物とすることができる。
モノフィラメントを含む合成マルチフィラメントは、総繊度が10dtex以上であることが好ましく、15dtex以上であることがより好ましく、20dtex以上であることがさらに好ましい。合成マルチフィラメントの総繊度の下限値を上記の範囲に設定することにより、織物の強度を高めて、耐久性を高めることができる。また、合成マルチフィラメントは、総繊度が25dtex以下であることが好ましく、23dtex以下であることがより好ましく、22dtex以下であることがさらに好ましい。合成マルチフィラメントの総繊度の上限値を上記の範囲に設定することにより、織物を軽量かつ薄地なものとして、風合いを向上させることができる。
1本の合成マルチフィラメントに含まれるモノフィラメントの本数は、2本以上であることが好ましく、3本以上であることがより好ましく、5本以上であることがさらに好ましい。合成マルチフィラメントに含まれるモノフィラメントの数の下限値を上記の範囲に設定することにより、合成マルチフィラメントの強度を高めることができる。また、1本の合成マルチフィラメントに含まれるモノフィラメントの本数は、14本以下であることが好ましく、13本以下であることがより好ましく、12本以下であることがさらに好ましい。合成マルチフィラメントに含まれるモノフィラメントの数の上限値を上記の範囲に設定することにより、モノフィラメントの単糸繊度を大きくすることができ、合成マルチフィラメントが切れにくくなる。
織物のカバーファクター(CF)は、1400以上2500以下である。カバーファクターが1400以上2500以下であることにより、織物が軽量かつ薄地であって、低通気度性を確保することができる。なお、織物のカバーファクターは、下記式により計算することができる。
CF=(T×(DT))1/2+(W×(DW))1/2
式中、Tは織物の経密度(本/2.54cm)を示し、Wは織物の緯密度(本/2.54cm)を示し、DTは織物を構成する経糸の太さ(dtex)を示し、DWは織物を構成する緯糸の太さ(dtex)を示す。
織物のカバーファクターは、1500以上であることが好ましく、1600以上であることがより好ましく、1700以上であることがさらに好ましい。織物のカバーファクターの下限値を上記の範囲に設定することにより、織物が低通気度なものとなり、ダウン漏れが起こりにくくなる。また、織物のカバーファクターは、2200以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1900以下であることがさらに好ましい。織物のカバーファクターの上限値を上記の範囲に設定することにより、織物の軽量化を図ることができる。
<生地の圧縮状態の設定>
図8は1単位のタフタの完全組織において、緯糸(X1、X2)での合成マルチフィラメント同士の重なり係数を求めるための説明図であり、図9は経糸(Y1、Y2)での合成マルチフィラメント同士の重なり係数を求めるための説明図である。例えば、図2~図4に示す従来の織物のように、隣り合う合成マルチフィラメント同士が重なるように構成されている場合、その織物を表面から見ると、図8の緯糸X1の合成マルチフィラメントのa部分と、緯糸X2の合成マルチフィラメントのb部分とが図面での上下方向において重なり合う。具体的には、図8の紙面において、合成マルチフィラメントのa部分の幅方向における下端が合成マルチフィラメントのb部分の幅方向における上端よりも下側に位置しており、WX1と記している合成マルチフィラメントのa部分の幅方向における一方端から他方端までの長さの範囲と、WX2と記している合成マルチフィラメントのb部分の幅方向における一方端から他方端までの長さの範囲とが重なる。この重なりが大きいほど、織物上での合成マルチフィラメント同士の隙間が減り、低通気性を得やすくなる一方、この重なりを大きくするために温度や圧力を上げてカレンダー加工をすることで、合成マルチフィラメントの断面形状の変形が大きくなり、かつ合成マルチフィラメント間の隙間がなくなって合成マルチフィラメント同士の拘束が強まり、織物の剪断変形が妨げられる。その結果、織物がペーパーライクとなって、織物生地の引裂強度が低下する。なお、織物の経糸(Y1、Y2)についても同様のことがいえる。
織物の組織において、互いに隣り合う緯糸の重なり係数WPは、下記の(A)式を満たし、かつ、互いに隣り合う経糸の重なり係数WFは、下記の(B)式を満たす。
0.95≦WP≦1.08 (A)
0.85≦WF≦0.99 (B)
図8に示すように、WPは、互いに隣り合う緯糸X1およびX2の重なり係数である。WPは、下記の(1)式で計算される。
WP=(WX1+WX2)/WXT (1)
上記式中、WX1は、緯糸X1の幅方向における一方端から緯糸X1の幅方向における他方端までの長さ、
WX2は、緯糸X2の幅方向における一方端から緯糸X2の幅方向における他方端までの長さ、
WXTは、緯糸X1側を一方側、緯糸X2側を他方側とした場合での、緯糸X1の幅方向における一方端から緯糸X2の幅方向における他方端までの長さをそれぞれ示す。
図9に示すように、WFは、互いに隣り合う経糸Y1およびY2の重なり係数である。WFは、下記の(2)式で計算される。
WF=(WY1+WY2)/WYT (2)
上記式中、WY1は、経糸Y1の幅方向における一方端から経糸Y1の幅方向における他方端までの長さ、
WY2は、経糸Y2の幅方向における一方端から経糸Y2の幅方向における他方端までの長さ、
WYTは、経糸Y1側を一方側、経糸Y2側を他方側とした場合での、経糸Y1の幅方向における一方端から経糸Y2の幅方向における他方端までの長さをそれぞれ示す。
WPは、0.95以上1.08以下である。中でも、WPは、0.96以上であることが好ましく、0.97以上であることがより好ましく、0.98以上であることがさらに好ましく、0.99以上であることが特に好ましい。WPの値の下限値を上記の範囲に設定することにより、緯糸を構成するモノフィラメント同士の隙間を十分に減らし、接触面積を増やすことができる。その結果、織物の通気性をより低くしてダウン漏れを防ぐ効果を高めることができ、かつ、緯糸を構成するモノフィラメントの断面変形が抑えられるため、緯糸およびそのモノフィラメントが拘束されにくくなり、織物の緯糸における引裂強度を向上させることができる。また、WPは、1.07以下であることが好ましく、1.06以下であることがより好ましく、1.05以下であることがさらに好ましく、1.03以下であることが特に好ましい。WPの値の上限値を上記の範囲に設定することにより、緯糸を構成する合成マルチフィラメント同士の重なりが大きくなりすぎることを防止し、織物が薄地となって、風合いを向上させることができる。
WFは、0.85以上0.99以下である。中でも、WFは、0.87以上であることが好ましく、0.90以上であることがより好ましく、0.91以上であることがさらに好ましく、0.92以上であることが特に好ましい。WFの値の下限値を上記の範囲に設定することにより、WPと同様に、経糸を構成するモノフィラメント同士の隙間を減らして、隣接するモノフィラメント同士の接触面積を増やすことができるので、織物の通気性を低下させてダウン漏れ防止効果を高めることができ、かつ、経糸を構成するモノフィラメントの断面変形を抑えて拘束されにくくなり、織物の経糸における引裂強度を向上させることが可能となる。また、WFは、0.98以下であることが好ましく、0.97以下であることがより好ましく、0.96以下であることがさらに好ましく、0.95以下であることが特に好ましい。WFの値の上限値を上記の範囲に設定することにより、WPと同様に、経糸を構成する合成マルチフィラメント同士の重なりが過度に大きくなることを妨げ、織物を薄地なものとして風合いを高められる。
WPの値は、WFの値よりも大きいことが好ましい。従来の織物では、織物の生産性を高めるために緯糸よりも経糸の方を密にすることが一般的であり、WPよりもWFの方が大きい値となることが多い。しかしながら、本発明において、WPの値をWFの値よりも大きくすることにより、織物のダウン漏れ防止効果および引裂強度と、織物の柔軟性とのバランスをとることが可能となる。
WPの値がWFの値よりも大きい場合、WPの値とWFの値との差(WP-WF)は、0.01以上であることが好ましく、0.03以上であることがより好ましく、0.05以上であることがさらに好ましく、0.07以上であることが特に好ましい。WPとWFとの差の下限値を上記の範囲に設定することにより、ダウン漏れ防止効果、引裂強度および柔軟性を兼ね備えた織物とすることができる。また、WPの値とWFの値との差は、0.12以下であることが好ましく、0.11以下であることがより好ましく、0.10以下であることがさらに好ましく、0.09以下であることが特に好ましい。WPとWFとの差の上限値を上記の範囲に設定することにより、織物の緯糸と経糸との密度のバランスがとれ、織物の緯方向および経方向における引裂強度に大きな差が生じにくく、織物の全体の耐久性を高めることができる。
合成マルチフィラメントを構成する繊維は、樹脂からなる合成繊維であることが望ましい。合成マルチフィラメントを構成する樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612あるいはその共重合体等のポリアミド類ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール等の合成ポリマーが挙げられる。ポリエステル類ではポリエチレンテレフタレート、ポリアミド類ではナイロン6およびナイロン66が好ましく用いられる。中でも、合成マルチフィラメントを構成する樹脂は、ポリアミドあるいはポリエステルを含むことが好ましく、ポリアミドあるいはポリエステルであることがより好ましい。さらに好ましくはポリアミドである。合成マルチフィラメントを構成する樹脂がポリアミドあるいはポリエステルであることにより、織物の風合いを柔らかくすることができ、また、織物の引裂強度も高くすることができる。
合成マルチフィラメントを構成する樹脂の相対粘度は、例えば、ナイロン等のポリアミドの場合、2.0以上であることが好ましく、2.5以上であることがより好ましく、3.0以上であることがさらに好ましい。合成マルチフィラメントを構成する樹脂の相対粘度が2.0以上であれば、得られるモノフィラメントの破断強度を十分なものとすることができる。また、樹脂の相対粘度が2.5以上であれば、モノフィラメントの破断強度と破断伸度を高めることができる。さらに、樹脂の相対粘度が3.0以上であれば、モノフィラメントの繊維横断面の形状を四角形にする場合、4つの角が明確に形成されやすくなる。一方、樹脂の相対粘度が2.0未満であると、異形断面は丸断面に比べて破断強度が弱いこともあり、破断強度不足による織物の引裂強度、破断強度の低下、破断伸度不足により加工操業性の悪化、製品耐久性の悪化という問題が生じる場合がある。なお、合成マルチフィラメントを構成する樹脂の相対粘度の上限値は特に限定されないが、例えば、4.5以下とすることができる。
合成マルチフィラメントを構成する樹脂としてポリエステルを用いる場合、樹脂の極限粘度は、例えば、0.5以上であることが好ましく、0.55以上であることがより好ましく、0.58以上であることがさらに好ましい。合成マルチフィラメントを構成する樹脂の極限粘度の下限値を上記の範囲に設定することにより、モノフィラメントの強度を高めることができる。また、樹脂の極限粘度が0.5以上であれば、得られるモノフィラメントの破断強度が十分なものとなる。一方、樹脂の極限粘度が0.5未満であると、異形断面は丸断面に比べて破断強度が弱いこともあり、破断強度不足による織物の引裂強度、破断強度の低下、破断伸度不足により加工操業性の悪化、製品の耐久性の悪化という問題が生じる場合がある。なお、合成マルチフィラメントを構成する樹脂の極限粘度の上限値は特に限定されないが、例えば、1.5以下とすることができる。
モノフィラメントには、必要に応じて、吸湿性物質、酸化防止剤、つや消し剤、紫外線吸収剤、抗菌剤等が単独または複合添加されてもよい。また、モノフィラメントの沸水収縮率、熱応力、複屈折率、太さ斑等は特に限定されず、適宜設定することができる。
<合成マルチフィラメント・異形モノフィラメント>
隣り合うモノフィラメント同士の接触面積を大きくするため、本発明に係る織物には、四角形の繊維横断面を有する異形モノフィラメントを含む合成マルチフィラメントを用いることが好ましい。つまり、合成マルチフィラメントの単糸の断面形状は、四角形であることが好ましい。「四角形」とは、4本の辺を有する多角形であり、正方形、長方形、平行四辺形、菱形等が挙げられる。四角形は、理想的には、4つの頂点が明確で4つの辺が直線であることが望ましい。しかしながら、異形モノフィラメントを製造する工程において、樹脂の押し出し速度、吐出量、冷却速度のムラ等により、四角形は、必ずしも頂点が明確にならない場合や、辺の一部が曲線になる場合がある。そのため、本発明の「四角形」には、このような製造上の問題を包含する略四角形(すなわち、頂点が明確でない略四角形や、辺の一部が曲線の略四角形)も含まれるものとする。また、本発明における「四角形」は、各辺の長さが異なっているものも含まれる。
モノフィラメントの断面形状の四角形(略四角形)としては、図5に示すように、2組の対辺がそれぞれ平行である平行四辺形が好ましい。2組の対辺がそれぞれ平行であれば、隣り合う異形モノフィラメントが接触しやすくなるうえ、織物の厚さ方向において、経糸に用いられる異形モノフィラメントと、緯糸に用いられる異形モノフィラメントも重なりやすくなり、異形モノフィラメントのずれを高いレベルで抑制することが可能となる。モノフィラメントの断面形状の平行四辺形には、例えば、2組の対角の大きさがそれぞれ等しい、2組の対辺の長さがそれぞれ等しいといった特徴がある。本発明におけるモノフィラメントの断面形状の平行四角形には、4本の辺の長さが全て等しい菱形、4つの内角が全て等しい長方形、4本の辺の長さおよび4つの内角が全て等しい正方形等も含まれることとする。なお、前述の通り、本発明における「平行四辺形」は、頂点が明確でないものや辺の一部が曲線であるものである略平行四辺形も含まれる。また、平行四辺形の1組の対角の大きさのうち、一方の対角の大きさが他方の対角の大きさの±20%の範囲に含まれ、かつ、平行四辺形の1組の対辺の長さのうち、一方の対辺の長さが他方の対辺の長さの±20%の範囲に含まれるものは、略平行四辺形であるとし、本発明における「平行四辺形」に含まれるものとする。
<生地の圧縮状態>
織物は、カレンダー加工によって織物生地を圧縮しない方が生地の柔軟性を維持することができ、また、織物を構成する糸や、糸を構成する単繊維の形状が大きく変形することがなく、糸同士の拘束が強まることを抑制して織物の剪断変形が可能となって、織物の引裂強度を高める面において優位である。例えば、図2および図3に示すように、織物の両面に高い温度や高い圧力にてカレンダー加工を強く施す等して生地を圧縮しすぎると、通気性を低くすることは可能であるが、互いに隣り合う糸同士の間の拘束が強くなり、結果的に引裂強度が低下する。
<糸の形状を変形させないための方策>
引裂強力の低下を抑制しながら織物の通気度を低く抑えるためには、織物を構成する合成マルチフィラメントのモノフィラメント断面の形状を大きく変形させずに、隣り合うモノフィラメント同士の接触長を長くする手段が別に必要である。本発明ではモノフィラメントの横断面を四角形にすることで、予め隣り合うモノフィラメント同士が接触したときに接触部の面積を大きくできるようにしており、カレンダー加工では、モノフィラメント同士を押しつけ合わせるだけの弱い圧縮をかけることで、隣り合う四角断面の辺同士をぴったりと重なり合わせることで、モノフィラメントが強い断面変形を起こさせることなく高い接触面積を稼ぐことを可能にしている。このことにより、従来の織物でのカレンダー加工の温度よりも低めの温度にて生地を圧縮しても、横断面におけるモノフィラメント同士の接触長を長くすることができる。
モノフィラメントの断面形状の平行四辺形としては、1組の対角が30°以上のものが好ましく、35°以上がより好ましく、40°以上がさらに好ましい。1組の対角が30°以上であると、互いに隣接する異形モノフィラメント同士が接しやすく、低通気度を保持しやすくなる。モノフィラメントの断面形状の平行四辺形において、1組の対角は90°以下が好ましく、85°以下がより好ましく、80°以下がさらに好ましい。例えば、正方形や長方形等、1組の対角が90°付近である平行四辺形は、異形モノフィラメントを並べる際に、異形モノフィラメントが、長さ方向の中心軸周りに稀に回転する場合があり、隣り合う異形モノフィラメントが綺麗に辺同士で重ならないことがある。そのため、モノフィラメントの断面形状の平行四辺形として、1組の対角は85°以下にすることがより好ましい。1組の対角を85°以下にすれば、隣り合う異形モノフィラメントが綺麗に辺同士で重なり合い、一列に均等に並びやすくなる。
また、モノフィラメントの断面形状の平行四辺形は、4本の辺の長さが全て等しい菱形であることが特に好ましい。例えば、二対の辺の長さが大きく違う(扁平度が高すぎる)平行四辺形や長方形の場合、異形モノフィラメントが長さの違う辺同士で接触する場合にモノフィラメント同士の配列が乱れやすく、異形モノフィラメントが綺麗に一列に並ばない部分が生じやすいが、4本の辺の長さを統一することで、より一列に並びやすくなる。
モノフィラメントの断面形状の四角形の辺の長さは、6μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、8μm以上がさらに好ましい。モノフィラメントの断面形状の四角形の辺の長さの下限値を上記の範囲に設定することにより、モノフィラメントの強度が高まり、切れにくくすることができる。また、モノフィラメントの断面形状の四角形の辺の長さは、20μm以下が好ましく、18μm以下がより好ましく、15μm以下がさらに好ましい。モノフィラメントの断面形状の四角形の辺の長さの上限値を上記の範囲に設定することにより、モノフィラメントが一列に並びやすく、生地を薄くすることができる。また、モノフィラメントの断面形状の四角形において、2組の対辺の長さを揃えない場合には、短辺と長辺の比率(短辺/長辺)は、0.3/1以上であることが好ましく、0.4/1以上であることがより好ましく、また、0.9/1以下であることが好ましく、0.8/1以下であることがより好ましい。
合成マルチフィラメントに垂直な方向の断面において、隣り合うモノフィラメントは接触していることが好ましい。隣り合うモノフィラメント同士が接触している長さ(以降、「接触長」と称する場合がある)の平均値は、6μm以上であることが好ましく、7μm以上であることがより好ましく、8μm以上であることがさらに好ましい。隣り合うモノフィラメント同士の接触長の下限値を上記の範囲に設定することにより、織物の通気度を低くすることができる。また、隣り合うモノフィラメント同士の接触長の平均値は、20μm以下であることが好ましく、18μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましい。隣り合うモノフィラメント同士の接触長の上限値を上記の範囲に設定することにより、生地が柔軟なものとなり、感触を向上させることができる。
なお、隣り合うモノフィラメント同士の接触長は、以下の方法に基づき測定することができる。隣り合うモノフィラメント同士の接触長の測定方法について、図10および図11を用いて説明する。図10は、モノフィラメントを7本含む総繊度22dtexの1本の合成マルチフィラメントを用いて構成された、合成マルチフィラメントに垂直な方向の断面SEM写真である。合成マルチフィラメントに垂直な方向の断面において、各モノフィラメントは、隣り合うモノフィラメント同士が6箇所で接触している。接触長を測定するときは、この接触箇所を全て観察する。図11は、図10における接触箇所に番号を付け、隣り合うモノフィラメントが接触している箇所に、接糸線を加えたものである。接触長の測定には、1本の合成マルチフィラメントを構成するモノフィラメントの接触箇所の長さ、すなわち、全ての接糸線の長さを測定し、全ての接糸線の長さの合計値を接触箇所の数で除し(図11に示す織物の場合は「6」で除す)、モノフィラメントの接触箇所の長さの平均値を求め、得られたモノフィラメントの接触箇所の長さの平均値を接触長として用いる。接触長測定の一例として、図11から求められる個々の合成マルチフィラメントにおける接触長とその平均値の結果を下の表1に示す。図11に示す1本の合成マルチフィラメントにおける接触長は9.5μmである。本発明では、同様の方法にて任意の経糸および緯糸についてそれぞれ10本ずつ、合計20本の合成マルチフィラメントについて接触長を求め、これらの平均値を「接触長の平均値」として使用する。
Figure 0007483658000001
接触長の測定に用いた合計20本の任意の経糸および緯糸の合成マルチフィラメントの全測定箇所のうち、接触長が6μm以上20μm以下である測定箇所が、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、60%以上であることがよりさらに好ましい。全測定箇所に対する接触長が6μm以上20μm以下である測定箇所の割合の下限値を上記の範囲に設定することにより、隣り合うモノフィラメントの接触面積が十分なものとなって、低通気度でかつ高い引裂強度を維持した織物とすることができる。また、全測定箇所に対する接触長が6μm以上20μm以下である測定箇所の割合の上限値は特に限定されないが、例えば、100%以下(100%を含む)、90%以下とすることができる。
合成マルチフィラメントの破断強度は、3.3cN/dtex以上であることが好ましく、4.0cN/dtex以上であることがより好ましい。合成マルチフィラメントの破断強度の下限値を上記の範囲に設定することにより、合成マルチフィラメントに高異形度のモノフィラメントを用いていても、十分な引裂強度を有する織物が得られる。なお、合成マルチフィラメントの破断強度の上限は特に限定されないが、例えば、10cN/dtex以下とすることができる。
合成マルチフィラメントの破断伸度は、30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。合成マルチフィラメントの破断伸度の下限値を上記の範囲に設定することにより、織物を形成する際に単糸切れが発生しにくく、引き揃えが行いやすくなる。また、合成マルチフィラメントの破断伸度は、55%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、45%以下であることがさらに好ましい。合成マルチフィラメントの破断伸度の上限値を上記の範囲に設定することにより、織物の引張強度を高めることができる。
織物100質量%中における異形モノフィラメントを含む合成マルチフィラメントの含有率は、45質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましく、85質量%以上であることがよりさらに好ましい。異形モノフィラメントを含む合成マルチフィラメントの含有比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、安定した通気と高い引裂強度を兼ね備えた織物が得られやすくなる。なお、織物100質量%中における異形モノフィラメントを含む合成マルチフィラメントの含有率の上限値は特に限定されないが、例えば、100質量%、95質量%以下とすることができる。
合成マルチフィラメントには、前述した異形モノフィラメント以外のフィラメントが含まれていてもよいが、1本の合成マルチフィラメントにおける異形モノフィラメントの含有率は高いほど好ましい。1本の合成マルチフィラメントにおける異形モノフィラメントの含有率は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、85質量%以上であることがよりさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
合成マルチフィラメントは生糸で用いてもよく、仮撚加工等の捲縮加工が施されたり、二種類以上の合成マルチフィラメントが混用されたりしていてもよいが、好ましくは同一の断面の単繊維のみからなる生糸の合成マルチフィラメントを用いることがよい。また、合成マルチフィラメントは、エアー交絡や撚糸とすることも可能であるが、極力施さないか、あるいは生産性を向上するために最低限の施用に抑えるのが好ましい。合成マルチフィラメントをエアー交絡するのであれば、JIS L1013 8.15交絡度(フック法)で1~35程度にするのがよい。
<モノフィラメントの製造方法>
図12はモノフィラメントを製造するノズルの口金吐出孔の形状の模式図である。合成マルチフィラメントにおいて、各々のモノフィラメントの断面の形状を四角形(特に菱形)とするためには、ノズルの口金吐出孔の形を図12に示すような星型状の形状に設計することが好ましい。四角形の異形モノフィラメントを形成し得る星型状の口金吐出孔は、4つの凸部(例えば、図12におけるP、Q、R、S)と4つの凹部(例えば、図12におけるT、U、V、W)を有しており、凸部の2組の対角はそれぞれ等しく、凸部の対角線は直交していることが望ましい。このような星型の口金吐出孔を通じて原料樹脂を紡糸すると、溶融した樹脂が4つの凹部内を広がるように膨らみ、その結果、4つの凸部を結ぶ四角形の繊維横断面を有する異形モノフィラメントが得られる。すなわち、四角形の辺の長さは、隣り合う2つの凸部の頂点間の距離におおよそ等しくなる。図12に示す口金吐出孔では、四角形の辺の長さL1およびL2は、それぞれ凸部の頂点R-S、S-P間の距離におおよそ等しくなる。そのため、吐出孔の3つの凸部を結んで形成される角度を調整することにより、四角形の内角を設計することができる。つまり、四角形におけるQの内角は、凸部の3つの頂点P、Q、Rを結んで形成される角度とほぼ等しくなる。
また、図12に示すような星型状の形状の口金吐出孔において、4つの凸部の先端は鋭角にせず丸めることが好ましい。凸部の先端を丸めておくことにより、四角形の頂点が歪むことなく明確な頂点を形成しやすくなる。
モノフィラメントの断面の形状である四角形を平行四辺形にするために、凹部の深さ(図12中のL3)を、4つの凹部で全て等しくすることが好ましい。凹部の深さは、0.02mm以上であることが好ましく、0.04mm以上であることがより好ましい。凹部の深さの下限値を上記の範囲に設定することにより、フィラメントが紡出されたときにポリマーが外側に膨らみにくく、綺麗な平行四辺形を形成しやすい。また、凹部の深さは、0.14mm以下であることが好ましく、0.12mm以下であることがより好ましい。凹部の深さの上限値を上記の範囲に設定することにより、紡出したポリマーが十分に膨らむことができ、平行四辺形の繊維横断面としやすくなる。
紡出したポリマーを冷却する際、図12に示すP、Q、R、Sの各凸部に冷却風が当たるようにノズルの孔の位置を設定することが好ましい。また、図12に示すT、U、V、Wの凹部には、冷却風が直接当たらないようにノズルの孔の位置を設定することが好ましい。モノフィラメントを製造するノズルの口金吐出孔において、凸部には冷却風を当て、凹部には冷却風を当てないことにより、モノフィラメントの断面の形状が平行四辺形となりやすくなる。特に、モノフィラメントの断面の形状を菱形にするための条件としては、前記の条件を満たしながら、さらに4辺の長さを等しくする必要があるため、ポリマーの粘度をポリエステルであれば極限粘度を0.5以上とすることが好ましく、ポリアミドであれば相対粘度を2.5以上とすることが好ましい。モノフィラメントを構成するポリマーの粘度を調整することによって、4辺の長さが等しい菱形断面が形成されやすくなる。
合成マルチフィラメントの製造方法は特に限定されないが、例えば、ポリアミド系合成マルチフィラメントやポリエステル系合成マルチフィラメントでは、スピンドロー方式による紡糸延伸連続装置、または紡糸装置と延伸装置を用いて2工程で行うことにより製造が可能である。スピンドロー方式の場合、紡糸引取りゴデットローラーの速度は1500m/分~4000m/分に設定することが好ましく、2000m/分~3000m/分にすることがより好ましい。
<織物の製造方法>
本発明にかかる織物の製造方法は、単糸繊度が2dtex以上7dtex以下であり、総繊度が5dtex以上28dtex以下である合成マルチフィラメントを製織する工程と、織物の少なくとも片面に120℃以上180℃以下の温度でカレンダー加工を施す工程と、を含む。
製織する工程において、総繊度が5dtex以上28dtex以下であり、単糸繊度が2dtex以上7dtex以下の四角形の繊維横断面を有する異形モノフィラメントを含有する合成マルチフィラメントを、織物100質量%中、45質量%以上含まれるようにすることが好ましい。
異形モノフィラメントを含有する合成マルチフィラメントは、織物100質量%中、45質量%以上含まれることが好ましく、55質量%以上含まれることがより好ましく、65質量%以上含まれることがさらに好ましく、75質量%以上含まれることがよりさらに好ましい。異形モノフィラメントを含有する合成マルチフィラメントの含有比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、織物が薄地でありながら通気度を低くすることができる。また、異形モノフィラメントを含有する合成マルチフィラメントの含有比率の上限値は特に限定されず、例えば、100質量%以下(100質量%を含む)、98質量%以下、95質量%以下とすることができる。
織物にカレンダー加工を施すステップでは、織物の少なくとも片面にカレンダー加工を施す。織物の両面にカレンダー加工を施してもよいが、織物の片面にのみカレンダー加工を施すことが好ましい。織物の片面にのみカレンダー加工を施すことにより、隣り合うモノフィラメントの辺同士がぴったりと接しやすくなり、モノフィラメントの断面の形状が著しく変形しないことで、モノフィラメントの見掛けの強度が増す。カレンダー加工の回数は1回のみであってもよく、2回以上の複数回であってもよい。
カレンダー加工の温度は、100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることがさらに好ましく、150℃以上であることがよりさらに好ましい。カレンダー加工の温度の下限値を上記の範囲に設定することにより、カレンダー加工後のモノフィラメント同士の接触長を十分に長く確保することができ、織物が低通気性を得ることができる。また、カレンダー加工の温度は、180℃以下であることが好ましく、175℃であることがより好ましく、170℃以下であることがさらに好ましい。カレンダー加工の温度の下限値を上記の範囲に設定することにより、カレンダー加工によってモノフィラメントが大きく潰れにくく、モノフィラメントの強度が高まって織物の強度も高めることができる。
カレンダーの圧力は、1MPa以上であることが好ましく、1.5MPa以上であることがより好ましく、2.0MPa以上であることがさらに好ましい。また、カレンダーの圧力は、10MPa以下であることが好ましく、6MPa以下であることがより好ましく、4MPa以下であることがさらに好ましい。カレンダーの圧力が1MPa未満であると、合成マルチフィラメントが互いにぴったりと密着しないところが出てくる恐れがある。カレンダーの圧力が10MPa以上であると、カレンダー加工の温度が高い温度でなくてもモノフィラメントが潰れて、目的のWP、WFの範囲から逸脱しやすく、引裂強力が低下する恐れがある。
カレンダー加工の速度は、5m/分以上であることが好ましく、8m/分以上であることがより好ましく、10m/分以上であることがさらに好ましい。カレンダー加工の速度の下限値を上記の範囲に設定することにより、カレンダー加工時にモノフィラメントが大きく変形しにくく、モノフィラメントの強度を維持することができる。また、カレンダー加工の速度は、30m/分以下であることが好ましく、25m/分以下であることがより好ましく、20m/分以下であることがさらに好ましい。カレンダー加工の速度の上限値を上記の範囲に設定することにより、カレンダー加工によってモノフィラメント同士の接触長を十分なものとすることができ、織物の通気度を低くすることができる。
織物の製造に使用する織機は特に限定されず、例えば、ウォータージェットルーム織機、エアージェット織機、レピア織機等を使用することができる。中でも、織機は、ウォータージェットルーム織機またはエアージェット織機が好ましく用いられる。
織物の製造において、低張力サイジング機が好適に用いられる。また、織機に使うヘルドは、糸との摩擦を軽減するために、セラミックの材質を使うことが好ましい。モノフィラメントが、接する面積が丸断面より大きい四角形や平行四辺形、菱形では毛羽立ちを誘発させやすい。織機に使うヘルドにセラミックの材質を使うことによって、低摩擦で製織することができ、毛羽立ちを抑えることができる。
織物の経密度は、100本/2.54cm以上であることが好ましく、110本/2.54cm以上であることがより好ましく、120本/2.54cm以上であることがさらに好ましく、また、400本/2.54cm以下であることが好ましく、350本/2.54cm以下であることがより好ましく、250本/2.54cm以下であることがさらに好ましい。織物の経密度を上記の範囲内に調整することにより、モノフィラメントが1列配列または2列配列の状態になりやすいため好ましい。また、織物の緯密度は、80本/2.54cm以上であることが好ましく、90本/2.54cm以上であることがより好ましく、100本/2.54cm以上であることがさらに好ましく、また、380本/2.54cm以下であることが好ましく、360本/2.54cm以下であることがより好ましく、350本/2.54cm以下であることがさらに好ましい。なお、生機密度と仕上密度は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
製織した織物は、一般的な薄地織物の加工機械を使って、精錬、リラックス、プリセット染色、仕上げ加工をすることが好ましい。
織物は、必要に応じて、撥水処理や、風合いや織物の強度を調整するために柔軟加工、樹脂加工、シリコーン加工を行うことも可能である。柔軟加工においては、例えば、柔軟剤として、アミノ変性シリコーンやポリエチレン系、ポリエステル系、パラフィン系柔軟剤等を使用することができる。また、樹脂加工においては、例えば、樹脂加工剤として、メラミン樹脂、グリオキザール樹脂、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系等の各種樹脂を使用することができる。
織物の目付は、15g/m以上であることが好ましく、20g/m以上であることがより好ましく、25g/m以上であることがさらに好ましい。織物の目付の下限値を上記の範囲に設定することにより、織物の通気性を低くすることができ、織物からダウンが漏れ出にくくなる。また、織物の目付は、60g/m以下であることが好ましく、55g/m以下であることがより好ましく、50g/m以下であることがさらに好ましい。織物の目付の上限値を上記の範囲に設定することにより、薄くて軽く、風合いのよい織物とすることができる。
織物の経方向および緯方向の引裂強度は、7N以上であることが好ましく、8N以上であることがより好ましく、9N以上であることがさらに好ましい。織物の経方向および緯方向の引裂強度の下限値を上記の範囲に設定することにより、織物の耐久性を高めることができる。また、織物の経方向および緯方向の引裂強度は、30N以下であることが好ましく、28N以下であることがより好ましく、25N以下であることがさらに好ましい。織物の経方向および緯方向の引裂強度の上限値を上記の範囲に設定することにより、織物の耐久性を十分に維持しながら、織物を薄く、かつ柔らかい風合いを持つものとすることができる。なお、織物の引裂強度は、JIS L1096の8.17.4のD法(ペンジュラム法)に準拠して測定することができる。
織物の初期通気度は、0.5cc/cm・sec以上であることが好ましく、0.6cc/cm・sec以上であることがより好ましい。織物の初期通気度の下限値を上記の範囲に設定することにより、織物をダウン製品の側地に用いた際にダウンが漏れにくく、かつ、適度に空気が抜けるために小さく折り畳みやすくすることができる。また、織物の初期通気度は、1.5cc/cm・sec以下であることが好ましく、1.4cc/cm・sec以下であることがより好ましく、1.2cc/cm・sec以下であることがさらに好ましい。織物の初期通気度の上限値を上記の範囲に設定することにより、ダウンプルーフ性能に優れる織物が得られる。なお、織物の通気度は、JIS L1096の8.26.1のA法(フラジール形法)に準拠して測定することができる。
本発明の織物は、隣り合うモノフィラメントの側面同士の接触面積が大きく、ぴったりと密着しており、モノフィラメント同士が動きにくくなっている。そのため、洗濯時における繊維のズレを抑制することができる。織物の10回洗濯後の通気度は、2.0cc/cm・sec以下であることが好ましく、1.5cc/cm・sec以下であることがより好ましく、1.2cc/cm・sec以下であることがさらに好ましい。また、本発明に係る薄地織物の20回洗濯後の通気度は、2.5cc/cm・sec以下であることが好ましく、2.3cc/cm・sec以下であることがより好ましく、2.0cc/cm・sec以下であることがさらに好ましい。10回洗濯後の通気度および20回洗濯後の通気度の下限値は、それぞれ特に限定されるものではないが、例えば、0.5cc/cm・sec以上、0.9cc/cm・sec以上とすることができる。
本発明にかかる織物は、表面に柄のできないタフタ組織の織物でありながら、軽量であって薄地であり、低通気性を有する高密度織物でありつつ、従来にない高い引裂強度をもつ優れた特性を有している。そのため、本発明の織物は、ダウン製品の側地に用いることが好ましい。ダウン製品の中でも、アウトドアやスポーツ向けのダウンジャケット等のダウンウェアや、寝袋等に用いることがより好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
<極限粘度>
極限粘度(IV)は、p-クロルフェノールとテトラクロルエタンからなる混合溶媒(p-クロルフェノール/テトラクロルエタン=75/25)を用い、30℃で測定した極限粘度〔η〕を、下記の式によりフェノールとテトラクロルエタンからなる混合溶媒(フェノール/テトラクロルエタン=60/40)の極限粘度(IV)に換算したものである。
IV=0.8325×〔η〕+0.005
<相対粘度>
96.3±0.1質量%の試薬特級濃硫酸中にポリマー濃度が10mg/mlになるように試料を溶解させてサンプル溶液を調製した。20℃±0.05℃の温度で水落下秒数が6秒から7秒のオストワルド粘度計を用い、20℃±0.05℃の温度で、調製したサンプル溶液20mlの落下時間T(秒)および試料を溶解するに用いた96.3±0.1質量%の試薬特級濃硫酸20mlの落下時間T(秒)を、それぞれ測定した。使用する樹脂の相対粘度(RV)は下記の式により算出した。
RV=T/T
<単繊維断面の測定>
(1)辺の長さの測定
VH-Z450型顕微鏡およびVH-6300型測定器(KEYENCE社製)を用い、1500倍の倍率で異型モノフィラメントの断面の各辺の長さを測定し、3本の平均値を辺の長さとした。
(2)内角の測定
VH-Z450型顕微鏡およびVH-6300型測定器(KEYENCE社製)を用い、1500倍の倍率で異型モノフィラメントの断面を撮影し、市販(コクヨ社製)の分度器で鋭角と鈍角を測定し、それぞれ3本の平均値を角度とした。
<単糸繊度(モノフィラメント繊度)>
合成マルチフィラメントの総繊度からフィラメント数を除して求めた。
単糸繊度=総繊度/フィラメント本数
<総繊度(合成マルチフィラメントの繊度)>
100m長の合成マルチフィラメントのカセを3つ作製し、各々の質量(g)を測定し、平均値を求め、平均値を100倍して求めた。
<カバーファクター>
下記の式により計算した。
CF=(T×(DT))1/2+(W×(DW))1/2
式中、Tは織物の経密度(本/2.54cm)を示し、Wは織物の緯密度(本/2.54cm)を示し、DTは織物を構成する経糸の太さ(dtex)を示し、DWは織物を構成する緯糸の太さ(dtex)を示す。
<通気度>
織物の通気度は、JIS L1096 8.26.1に規定されているA法(フラジール形法)に準拠して測定した。
<洗濯方法>
織物の洗濯は、JIS L1096 寸法変化の103法に規定される条件に準拠して実施した。「洗濯10回後」とは、洗濯-脱水-乾燥を10回繰り返した後の測定結果であり、「洗濯20回後」とは、洗濯-脱水-乾燥を20回繰り返した後の測定結果である。なお、乾燥は吊干し乾燥で行った。洗濯10回後および洗濯20回後の通気度は、前述の通気度の測定方法により測定した。
<接触長>
走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製JSM-6610型)を用い、織物の断面を350倍で撮影し、1本のマルチフィラメントにおいてモノフィラメントが接している箇所に接糸線を引き、この長さを全て測定し平均値を求めた。さらに、任意の経糸および緯糸をそれぞれ10本、合計20本の合成マルチフィラメントについても同様に接触長を測定し、これら20本の平均値を接触長とした。
<糸の重なり係数>
走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製JSM-6610型)を用い、織物の任意のタフタの完全組織1単位を500倍で撮影した、これを任意に5カ所撮影し、これらの平均値を求め、緯糸の重なり係数WPおよび経糸の重なり係数WFを求めた。
<引裂強度>
JIS L1096 8.17.4に規定されているD法(ペンジュラム法)に準拠して、経方向および緯方向について測定した。
<ダウン漏れ試験>
IDFLもしくはQ-TEC機関において、EN12132-1法に従って試験を行い、EN13186の判定方法に基づく評価がgoodまたはacceptableであるかどうかを確認した。
実施例1
相対粘度3.5のナイロン6ポリマーチップを紡糸温度282℃で、7個の吐出孔(図12に示す形状で(L1:0.481mm、L2:0.481mm、L3:0.07mm、角a:54°)を備える紡糸口金から溶融紡糸した。2つのゴデットローラーのうち、第1ゴデットローラー速度を2800m/分、第2ゴデットローラーの速度を4000m/分に設定し、第2ゴデットのロールの温度を160℃にて延伸し、図1に示す四角形において、角度aが54°、辺Aおよび辺A’:18.7μm、辺Bおよび辺B’:18.7μmの菱形断面のモノフィラメント7本からなる繊度22dtexの合成マルチフィラメントを得た。該合成マルチフィラメントを経糸および緯糸に用い、織経密度170本/2.54cm、織緯密度180本/2.54cmに設定し、タフタ組織(平組織)で製織した。
得られた生機を常法に従ってオープンソーパーを用いて精錬、ピンテンターを用いて190℃で30秒間プレセットし、液流染色機(日阪製作所:サーキュラーNS)を用い酸性染料でグレーに染色した後、柔軟仕上げ加工を行って180℃で30秒間中間セットを行った。その後、カレンダー加工(加工条件:165℃、圧力:2.45MPa、速度:15m/分)を織物の片面に1回施した。
得られた生地の経密度、緯密度、通気度、引裂強度のそれぞれを評価した。結果を表2に示す。
実施例2
押し出し機の吐出量を、得られる合成マルチフィラメントの繊度が6dtexになるように変更し、口金の孔数を2個にした以外は実施例1と同様の方法で、モノフィラメント2本からなる、繊度6dtexの合成マルチフィラメントを得た。また、該合成マルチフィラメントを実施例1と同様の方法で織物を作製した。得られた合成マルチフィラメント糸を経密度を350本/2.54cm、緯密度を330本/2.54cmで製織した以外は実施例1と同じ方法で加工を行い、評価を行った。
実施例3
押し出し機の吐出量を、得られる合成マルチフィラメントの繊度が25dtexになるように変更し、口金の孔数を8個にした以外は実施例1と同様の方法で、モノフィラメント8本からなる、繊度25dtexの合成マルチフィラメントを得た。また、該合成マルチフィラメント糸を経密度を160本/2.54cm、緯密度を170本/2.54cmで作製した。得られた織物について実施例1と同じ方法で加工を行い、評価を行った。
実施例4
口金の孔数を10個にした以外は実施例1と同様の方法で、モノフィラメント10本からなる、繊度22dtexの合成マルチフィラメントを得た。また、該合成マルチフィラメントを実施例1と同様の方法で織物を作製した。得られた合成マルチフィラメントおよび織物について実施例1と同じ方法で評価を行った。
実施例5
口金の孔数を3個にした以外は実施例1と同様の方法で、モノフィラメント10本からなる、繊度22dtexの合成マルチフィラメントを得た。また、該合成マルチフィラメントを実施例1と同様の方法で織物を作製した。得られた合成マルチフィラメントおよび織物について実施例1と同じ方法で評価を行った。
実施例6
織経密度150本/2.54cm、織緯密度150本/2.54cmに設定した以外は実施例1と同じ方法で評価を行った。
実施例7
織経密度310本/2.54cm、織緯密度190本/2.54cmに設定した以外は実施例1と同じ方法で評価を行った。
実施例8
極限粘度0.55のポリエステルポリマーチップを紡糸温度300℃で紡糸した以外は実施例1と同じ方法で評価を行った。
比較例1
カレンダーの温度を180℃で実施した以外は実施例1と同じ方法で加工を行った。
比較例2
ノズルの孔径が0.2mmφの丸断面のノズルを用いて22dtex7フィラメントのポリアミドの合成マルチフィラメントを得た以外は実施例1と同じ方法で製織を行い、カレンダー温度を190℃で実施した以外は実施例1と同じ方法で加工、評価を行った。
比較例3
カレンダーの温度を165℃で実施した以外は比較例2と同じ条件で加工、評価を行った。
Figure 0007483658000002

Claims (4)

  1. 合成マルチフィラメントで構成される織物であって、
    織物の組織は、タフタ組織であり、
    少なくとも片面にカレンダー加工が施されており、
    前記合成マルチフィラメントの単糸繊度は、2dtex以上7dtex以下であり、
    前記合成マルチフィラメントの総繊度は、5dtex以上28dtex以下であり、
    カバーファクターは、1400以上2500以下であり、
    前記合成マルチフィラメントの単糸の断面形状は、四角形であり、
    織物の組織において、互いに隣り合う経糸の単糸同士が接触している長さの平均値および互いに隣り合う緯糸の単糸同士が接触している長さの平均値は、それぞれの単糸の断面形状の四角形の辺の長さの44%以上80%以下であり、
    織物の組織において、互いに隣り合う緯糸の重なり係数WPは、下記の(A)式を満たし、かつ、互いに隣り合う経糸の重なり係数WFは、下記の(B)式を満たす織物。
    0.95≦WP≦1.03 (A)
    0.85≦WF≦0.99 (B)
  2. 前記合成マルチフィラメントを構成する材料は、ポリアミドあるいはポリエステルを含み、
    経方向および緯方向の引裂強度は、7N以上であり、
    初期通気度は、0.5cc/cm・sec以上1.5cc/cm・sec以下である請求項1に記載の織物。
  3. 請求項1または2に記載の織物を側地に用いたダウン製品。
  4. 単糸繊度が2dtex以上7dtex以下であり、総繊度が5dtex以上28dtex以下である合成マルチフィラメントを製織する工程と、
    織物の少なくとも片面に100℃以上180℃以下の温度でカレンダー加工を施す工程と、を含み、
    織物の組織は、タフタ組織であり、
    カバーファクターは、1400以上2500以下であり、
    前記合成マルチフィラメントの単糸の断面形状は、四角形であり、
    織物の組織において、互いに隣り合う経糸の単糸同士が接触している長さの平均値および互いに隣り合う緯糸の単糸同士が接触している長さの平均値は、それぞれ単糸の断面形状の四角形の辺の長さの44%以上80%以下であり、
    織物の組織において、互いに隣り合う緯糸の重なり係数WPは、下記の(A)式を満たし、かつ、互いに隣り合う経糸の重なり係数WFは、下記の(B)式を満たす織物の製造方法。
    0.95≦WP≦1.03 (A)
    0.85≦WF≦0.99 (B)
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