JP5368824B2 - 複合糸及びこれを用いた織編物 - Google Patents

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Description

本発明は、吸水速乾性に優れた複合糸、及びこの複合糸を用いた織編物に関するものである。
スポーツ衣料に使用される織編物には、激しい発汗による汗を良好に吸収できると共に、速やかに外気中に蒸散させて乾燥できること、即ち吸水速乾性に優れることが求められる。
吸水性を高める方法としては、繊維断面を異形化したり極細化することが知られている。これにより糸全体として繊維表面積が増大し、繊維同士の隙間による毛細管現象が促進されることで、吸収した水分(汗)が繊維長方向(繊維軸方向)に拡散し、吸水ポイント(以下、布帛における吸水した位置を概念的に意味する)における水分率が減少して吸水性が高められる。また水分が織編物に広く拡散することで、広い面積で外気と接触することになり、速やかに乾燥される。
この様な糸として、例えば特許文献1には、糸の芯部に繊維断面W型または十字型のマルチフィラメントを配置し、鞘部に単糸繊度2.2dtex以下の扁平マルチフィラメントを配置した芯鞘構造の複合捲縮糸が提案されている。この複合捲縮糸においては、断面W型または十字型のフィラメントを用いることに加え、捲縮糸とすることで、繊維間空隙を増大させ、毛細管現象の促進を図っている。
特許文献2には、糸の芯部に単糸繊度3.0〜10.0dtexの扁平マルチフィラメントを配置し、鞘部に、単糸繊度1.0〜3.0dtexで繊維断面として凹部を有する扁平フィラメントをループ状に配置した複合糸が提案されている。この複合糸においては、芯部に単糸繊度の大きい繊維を用いることで脱水後の含水率を低下させると共に、鞘部に断面凹部を有するフィラメントを用いることで、繊維間の空隙を増加させ、毛細管現象の促進を図っている。
他方、特許文献3には、シルクベルベット調の優雅な光沢感とソフトドライなタッチ、及び良好な発色性を示す糸条を提供することを目的として、断面扁平繊維の並列構造を有する混繊糸が示されている。この混繊糸は、単糸繊度0.2〜0.8デニール(0.22〜0.89dtex)の断面扁平繊維からなる糸条を側糸として含む混繊糸であって、上記断面扁平繊維の3本以上がその断面長径方向に沿って並列した構造を備え、この並列構造に寄与する断面扁平繊維が混繊糸中の断面扁平繊維の50%以上を占めるというものである。この混繊糸においても、極細繊維を用いているので、毛細管現象によって吸水速乾性が良いと考えられる。
特開2006−104630号公報 特開2004−218146号公報 特開平11−140734号公報
以上のように、従来より吸水速乾性を示す糸として様々なものが提案されているが、本発明は、より一層吸水速乾性の高い複合糸及び織編物を提供することを目的とする。
上記特許文献1,2の如く、従来においては繊維間空隙を増加させて毛細管現象の促進を図っているが、本発明者らは、繊維間空隙を単純に増加させるだけでは吸水性の更なる向上が図れないとの知見を得た。
ところで毛細管現象は空隙が狭い(小さい)程、水分移送力が高くなる。この際、繊維断面が丸形のフィラメントを束ねた場合では、最密充填構造を採ることができたとしても略三角形状の断面を持つ空隙が繊維間に形成されるに留まり、繊維断面が扁平のフィラメントを束ねた場合は、扁平フィラメントの扁平面同士が重なった部分に極めて薄い空隙が形成されるので、丸形マルチフィラメント同士の場合よりも扁平マルチフィラメント同士の場合の方が毛細管現象が顕著になる。
しかし扁平フィラメントの重なり部分を存在せしめただけでは直ちに期待される程の吸水拡散性能が発現されないことを知った。例えば繊維断面が扁平なフィラメントだけで構成したマルチフィラメント糸の場合では、3〜5本の扁平フィラメントが一塊となってあたかも四角い1本のフィラメントのように振る舞い、この塊同士の間に大きな空隙を形成し易く、この大きな空隙のために毛細管現象が中断されてしまって、糸全体として吸水拡散性があまり向上しない。
そこで本発明者らが鋭意検討したところ、複合糸の外周側部分に扁平フィラメントを層状に配し、且つこの個々の扁平フィラメントの繊維断面の長軸方向を複合糸の外周に沿うように配置した場合には、非常に優れた吸水拡散性及び速乾性を発揮するとの知見を得た。またこの様な扁平フィラメントの配置形態を安定化させるには、糸の中心側に構造を安定させる非扁平フィラメントを配置するのが良いとの知見を得た。
こうして得られた知見に基づいて構成された本発明の複合糸における吸水速乾機能について述べる。肌からの汗(水分)はまず複合糸の前記吸水ポイント、即ち肌側に対面して多く存在する外周側の扁平フィラメントに吸収され、次に扁平フィラメント同士の重なり部分(狭い隙間部分)に生じる毛細管現象によって繊維長方向(繊維軸方向)に拡散すると共に、周方向にも拡散する。またこれらの拡散プロセスにおいて汗の一部は複合糸の中心側に移行し、中心側のマルチフィラメントの隙間を繊維長方向に拡散すると共に、複合糸における肌とは反対側(反肌側)の外周側扁平フィラメントの隙間にも移行する。こうして複合糸の反肌側に移行した汗(複合糸中心側から移行した汗及び外周回りに拡散してきた汗を含む)は、扁平フィラメント同士の重なり部分での毛細管現象で繊維長方向に拡散すると共に、外気と接触して蒸発する。この様に汗は繊維長方向、従って布帛面に広く拡散して蒸発するので、優れた速乾性が発揮され、またこれにより前記吸水ポイントにおける吸水性能が良好に継続される。
なお繊維断面長軸の方向が複合糸外周に沿う扁平フィラメントは、複合糸の外周の全てに配置されていなくても十分に優れた吸水速乾性を発現し得ることも分かった。
以上の知見から得られた本発明に係る複合糸は、繊維軸方向に直交する断面が扁平であるフィラメントと、繊維軸方向に直交する断面が非扁平であるフィラメントを備えた複合糸であり、前記扁平フィラメントが、前記複合糸の外周側のうち少なくとも40%(周長比)の範囲に層状に配置され、この扁平フィラメントのうちの60%(本数比)以上が、下記交角θ=50〜130°となっていることを特徴とする。
交角θ:前記扁平フィラメントの前記直交断面における長軸線分の中点をC、前記複合糸の中心をAとしたとき、この直線A−Cと前記長軸線分との交角。
扁平フィラメントが上記交角θ=50〜130°で複合糸の外周側に層状配置されているということは、扁平フィラメントの繊維断面長軸方向が複合糸の外周の接線に対し±40°の範囲となるようにして複合糸外周側に積層配置されていることを意味する。扁平フィラメントの断面長軸方向が複合糸の外周にほぼ沿った糸であれば、大きな空隙を形成し難く、また複合糸周方向への水分の回り込みが円滑となり、これにより複合糸の肌側からの汗を反肌側に円滑且つ広範に拡散して移行させることができるからである。より好ましくは交角θが70〜110°であり、更に好ましくは交角θが80〜100°である。
上記の様に扁平フィラメントは複合糸の外周側のうち少なくとも40%の範囲に配置されている必要があり、これより少ないと、複合糸の周方向への水分の回り込みが不十分となり、また扁平フィラメントの重なり部による繊維長方向への拡散も少ない範囲でしか生じないことになるので、吸水速乾性の向上があまり期待できないからである。より好ましくは、扁平フィラメントが複合糸外周側の60%以上に配置されたものであり、更に好ましくは複合糸外周側の80%以上に配置されたものである。最も好ましくは複合糸外周側全てに扁平フィラメントが配置されたものである。
また上記の通りこの扁平フィラメントのうちの60%以上の本数が上記交角θ=50〜130°となって配置されている必要があり、60%未満であると、扁平フィラメントの配列が乱雑なために毛細管現象が高く現れず、複合糸の周方向への水分の回り込みが不十分となるからである。より好ましくは、交角θ=50〜130°の扁平フィラメントが70%以上であり、更に好ましくは80%以上である。最も好ましくは全ての扁平フィラメントが交角θ=50〜130°で配置されたものである。
更に本発明の複合糸においては、前記扁平フィラメントの扁平度が平均2.0〜6.0であることが好ましい。なお扁平度とは、繊維軸方向に直交する断面に外接する長方形を描き、この長方形の長辺Nを短辺Sで割った値(N/S)を言う(図4:扁平度を説明するための図参照)。
扁平度が高くなる程、即ち扁平フィラメントがより扁平となることによって、扁平フィラメント同士の重なり部分が広くなり、毛細管現象を良好に発現させることができて水分拡散性が向上する。但し、扁平度が高すぎると、フィラメントが屈曲乃至湾曲し易くなり、却って扁平フィラメント同士の重なり部分が狭くなって毛細管現象が生じ難くなる。加えて扁平度の高い扁平フィラメントは形状が不安定となり易い為に、複合糸の外周側に安定して配置させ難く、本発明の複合糸構造にし難い。このため上記の様に扁平度が平均2.0〜6.0であることが好ましい。より好ましくは3.0以上、5.0以下である。
次に、前記非扁平フィラメントについて説明すれば、本来的には丸断面フィラメントが用いられるが、若干の角部が存在することは許容され、この際の角部の内角(外面に向かって凸部分の角度に等しい)が108°以上であることが好ましい。また前記非扁平フィラメントの異形度が平均1.0〜1.5であることが好ましい。なお異形度とは、繊維軸方向に直交する断面の形状において、その内接円の半径r1と外接円の半径r2の半径との比(r2/r1)である。
上記の様に断面形状における内角が108°以上で異形度が平均1.0〜1.5である非扁平フィラメントとしては、前出の断面丸形フィラメントや、凹部のない5角以上の多角形フィラメント等が挙げられる。
非扁平フィラメントは主として複合糸の中心側に配置され、この様な集束的配置をとることにより、上記の様に外周側を扁平フィラメントが取り囲む配置形態をとるにあたっての芯の役割を果たす。また上述の通り外周側の扁平フィラメントに吸収された水分が、この中心側の非扁平フィラメント同士の狭い空隙に移行したときに、毛細管現象により繊維長方向に水分を拡散させる役割を果たす。これらの役割を果たすにあたり、上記の様に断面丸形ないし丸に近い多角形の非扁平フィラメントであれば、扁平フィラメントに既述したような好ましい配置形態に安定してとらせることができる共に、非扁平フィラメント同士の間に形成される空間が比較的狭くなるので毛細管現象も比較的良好に現れる。
非扁平フィラメントの断面形状における前記内角が108°未満の鋭角的な凸部を有する場合や、異形度が大きすぎる場合には、非扁平フィラメント同士の間に形成される空隙が大きくなり、この為に水分があまり拡散せず滞留することになって、吸水速乾性に劣る懸念がある。従って上記の通り内角が108°以上、異形度が平均1.0〜1.5であることが好ましい。
本発明の複合糸においては、前記扁平フィラメントの混率が20〜80%であり、該扁平フィラメントの単糸繊度が平均3.0dtex以下、総繊度が平均50dtex以上であり、前記非扁平フィラメントの単糸繊度が平均4.0dtex以下であることが好ましい。
複合糸における扁平フィラメントの混率が低い場合は、扁平フィラメントが少なすぎて上記の水分拡散性を十分に発揮し難い。一方、混率が高すぎる場合では、扁平フィラメントの塊が多く形成され、この塊同士の間に大きな空隙を形成することとなる。強力な毛細管現象は扁平フィラメント同士が重なり合った部分(非常に狭い隙間の部分)で発現され、大きな空隙においては比較的弱い毛細管現象しか発現されず、結果として水分拡散性が低いものとなる。従って上記の様に扁平フィラメントの混率が20〜80%であることが好ましい。より好ましくは30%以上、70%以下である。
次に各フィラメントの繊度について説明する。扁平フィラメントの総繊度が、低すぎるとフィラメント本数が少なくなり、複合糸の外周側に十分に配置し難くなって良好な吸水速乾性を発揮し難くなる。従って上記の通り総繊度は平均50dtex以上であることが好ましい。より好ましくは75dtex以上である。なお扁平フィラメントの総繊度の上限は300dtexとすることが好ましく、総繊度が高すぎると、複合糸全体として太くなりすぎ、この複合糸から製織、製編された織編物は衣料用として不適当となるからである。より好ましくは200dtex以下である。
扁平フィラメントの単糸繊度(1フィラメントの太さ)に関しては、高すぎる(太すぎる)と、扁平フィラメント同士の形成する空隙として大きい箇所が多くなり、強力な毛細管現象を発現させ難くなる。従って上記の通り単糸繊度が平均3.0dtex以下であることが好ましい。より好ましくは、2.0dtex以下である。なお扁平フィラメントの単糸繊度が小さすぎると、染色性が悪くなり、濃い色に発色させ難くなるので、0.5dtex以上であることが好ましい。より好ましくは1.0dtex以上である。
前記非扁平フィラメントの単糸繊度についても、高すぎると、非扁平フィラメント同士の形成する空隙として大きい箇所が多くなって毛細管現象が弱くなり、繊維長方向に良好に水分を拡散させ難くなる懸念がある。従って上記の様に平均4.0dtex以下であることが好ましい。より好ましくは3.0dtex以下であり、更に好ましくは2.0dtex以下である。なお上記と同様に非扁平フィラメントの単糸繊度が小さすぎると、染色性が悪く、濃い色に発色させ難くなるので、0.3dtex以上であることが好ましく、より好ましくは0.5dtex以上であり、更に好ましくは1.0dtex以上である。
更に本発明の複合糸において、前記非扁平フィラメントが、5〜100個/mのインターレース処理を施されものであることが好ましい。
上記の様にインターレース処理を施すことで、複合糸の中心側を構成する非扁平マルチフィラメントがかたまってしっかりとした芯を形成することができ、よってこの周りに扁平フィラメントを配置することによって得られる複合糸形態が安定するからである。
インターレース処理の個数としては、少なすぎると、しっかりとした芯部分を形成し難くなって複合糸形態(非扁平フィラメントの周りに扁平フィラメントを配置する形態)の安定性を向上させる効果があまり発揮されない。一方で多すぎると、ループが形成されて複合糸の長手方向への水分拡散が損なわれやすい。従って上記の通り5〜100個/mが好ましい。より好ましくは10個/m以上、90個/m以下である。
また本発明に係る複合糸としては、撚られたものであることが好ましい。複合糸に撚りを加えることにより、上記の如く扁平フィラメントが外周側に配置された形態が安定するからである。
上記複合糸の撚係数としては1000〜30000であることが好ましい。より好ましくは3000以上、18000以下である。撚係数が低すぎると、複合糸の表面に繊維のループを生じ、編織物としたときに品位が悪くなる虞があるからである。一方撚り係数が高すぎると、繊維間が締まって生地の風合が硬くなり過ぎ、衣料用途にあまり適さないからである。
上記本発明の複合糸を用いて織編物を製織、製編した場合において、上記複合糸の含有率が高い程、良好な吸水速乾性を発揮させることができる。そして衣服とした場合を想定すると、少なくとも肌側の面に上記複合糸が多く配置されていれば、複合糸の有する吸水速乾能により快適でドライな着用感を得ることができる。つまり例えば二重編物の衣服を着用した場合、これに吸水された汗は、外気に曝された二重編物の外側の層にて専ら蒸散されるが、蒸散し難い肌側の層に吸水拡散性の高い上記複合糸を多く存在させることで、この肌側層に吸水された汗を効率的に外側層に移動させることが可能となり、その結果、衣服全体として吸水速乾性の良好なドライな着用感を奏することとなる。なお肌側の層だけでなく、肌・外側両層に上記複合糸を用いても勿論良く、これにより更に吸水速乾性が良好となる。
この様な観点から本発明に係る織編物は、前記複合糸が、単層又は複数層の織編物における少なくとも片面の30%(面積比)に用いられていることを特徴とする。
尚、上記「片面の30%」とは、例えば二重織物や二重編物の場合には一方の層の織編組織における複合糸の含有割合を言い、編物の場合においては片面組織のループ数の割合がこれに相当する。
本発明の織編物における上記複合糸の含有率としては、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70%以上である。上記複合糸の含有率が低いと、複合糸の有する吸水速乾能を十分に発揮し難くなるからである。
更に本発明の織編物においては、親水処理が施されていることが好ましい。殊に疎水性繊維を用いた場合には吸水性が低くなる懸念があるが、親水処理を施して繊維表面を親水化することにより吸水性を向上させることができる。
本発明に係る複合糸及び織編物においては、優れた吸水拡散性及び速乾性を発揮でき、これを用いた衣服においては、濡れ感が殆どなくドライで快適な着用感を得ることができる。
本発明の実施形態1に係る複合糸を繊維軸方向に直交する断面で表した概略図である。 本発明の実施形態2に係る複合糸の断面を示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る複合糸について、その吸水速乾作用の機構を説明するための断面図であり、(a)は吸水の様子を表した断面図、(b)は乾燥の様子を表した断面図である。 フィラメントの扁平度を説明するための図である。
<実施形態>
本発明の実施形態に係る複合糸並びに織編物を説明するにあたり、以下に、1:複合糸の全体構成、2:扁平フィラメント、3:非扁平フィラメント、4:扁平フィラメント及び非扁平フィラメントの素材、5:複合糸の製造方法、6:織編物、7:複合糸並びに織編物の吸水速乾機構について順次説明する。
1:複合糸の全体構成
図1は、本発明の実施形態1に係る複合糸10を繊維軸方向に直交する断面で表した概略図である。図2は、本発明の実施形態2に係る複合糸10の断面を示す斜視図である。
複合糸10は、複数の非扁平フィラメント11と複数の扁平フィラメント12からなる。非扁平フィラメント11は複合糸10の中心側に位置しており、これを取り囲むようにして複合糸10の外周側に扁平フィラメント12が層状に配置されている。
そして個々の扁平フィラメント12は、その断面形状における長軸が複合糸10の外周(図1に二点鎖線Dで示す)に沿うように位置している。つまり扁平フィラメント12の断面における長軸線分B−Bの中点をC、複合糸10の中心をAとしたとき、この直線A−Cと長軸線分B−Bとの交角θが、ほぼ90°となっている。なお上記交角θとしては90°が最も好ましいが、90°に限らず、50〜130°の範囲内であれば良い。
また図1に示すように、扁平フィラメント12が複合糸10の外周側の全てに層状配置されていることが最も好ましいが、これに限るものではなく、複合糸10の外周側のうち少なくとも40%の範囲に配置されていれば良い。例えば図2に示す例では、複合糸10断面における図の右上部分にて、扁平フィラメント12が単層で配置されているが、その他の部分では、扁平フィラメント12が2〜4層程度に層状配置されており、この層状配置された部分は複合糸10の外周側の約70%を占めている。
複合糸10中の扁平フィラメント12の混率は20〜80%であり、例えば図2に示す例では50%である。
2:扁平フィラメント
扁平フィラメント12は、断面(繊維軸方向に直交する断面)が長細い扁平形となっており、その扁平度は2.0〜6.0である。また扁平フィラメント12は延伸されたものであり、仮撚加工による捲縮等を有さない直線状のフィラメントである。
扁平フィラメント12の単糸繊度は0.5〜3.0dtexであり、複合糸10中の扁平フィラメント12の総繊度は50〜300dtexである。
3:非扁平フィラメント
非扁平フィラメント11は、断面(繊維軸方向に直交する断面)が丸形または5角以上の多角形であって、凹部がなく、上記多角形の角部(凸部)はいずれも108°以上の鈍角となっている。非扁平フィラメント11の異形度は1〜1.5である。また非扁平フィラメント11は延伸されたものであり、仮撚加工による捲縮等を有さない直線状のフィラメントである。
非扁平フィラメント11の単糸繊度は0.3〜4.0dtexであり、複合糸10中の非扁平フィラメント11の総繊度は30〜400dtexである。
非扁平フィラメント11束(非扁平マルチフィラメント)は空気交絡したものである。非扁平フィラメント11束は必ずしも交絡する必要はないが、非扁平フィラメント11束を交絡することにより、複合糸とした際に非扁平フィラメント11と扁平フィラメント12が混ざり難くなる上、非扁平フィラメント11を芯にしてこの周りに扁平フィラメント12を配置するという複合糸形態の安定性が増し、ひいては吸水速乾性能が良好となる。この場合の交絡度Iは10〜200である。交絡度が10未満であると、交絡の効果があまり見られない為に上記複合糸形態が安定し難く、一方、交絡度が200超であると、非扁平フィラメント11の繊維配列の乱れが大きくなりすぎ、繊維軸方向の水分拡散性が低下するからである。
4:扁平フィラメント及び非扁平フィラメントの素材
扁平フィラメント12及び非扁平フィラメント11の素材としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系等の熱可塑性ポリマーの他、セルロース系の再生繊維や半合成繊維等を用いることができる。このうちでもポリエステル系合成繊維が好ましく、繊維物性が高く、吸水拡散性能を発現させ易いので、スポーツ用途に好適に使用できるからである。
ポリエステル系合成繊維は、エチレンテレフタレートを主な繰り返し単位とするポリエステルであるが、少量の第3成分を共重合したポリエステルであっても良く、例えばイソフタル酸や5−スルホイソフタル酸を共重合したポリエステル等を用いても良い。またエチレンテレフタレートの代わりにポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートを繰り返し単位としたポリエステルでも良い。更にこれらのポリエステル系合成繊維には、艶消し剤(例えば酸化チタン)、安定剤、難燃剤、制電剤、着色剤などの改質剤などを含んでも差し支えない。
5:複合糸の製造方法
非扁平フィラメント11に対し扁平フィラメント12にオーバーフィードを掛け、インターレースを入れた後に合撚または混繊する。その後、この複合糸に撚りを加える。このようにして製造することで、図1,2に示すように、非扁平フィラメント11を中心側とし、扁平フィラメント12を交角θ50〜130°で外周側に層状配置した複合糸10となる。
なお上記の扁平フィラメント12に掛けるオーバーフィード(OF%)は1〜5%が好適であり、より好ましくは2〜4%である。このオーバーフィードとは、非扁平フィラメント11に対して扁平フィラメント12を混繊機に多めに供給させる割合のことであり、オーバーフィード2%とは非扁平フィラメントを100の長さに対し扁平フィラメントを102の長さで供給することである。
オーバーフィードが小さすぎる場合は、中心側(芯)及び外周側(鞘)のフィラメント長さに差がつかないために、上記複合糸10のような芯鞘構造ととなり難い。また、オーバーフィードが大きすぎる場合は、糸表面の所々に大きなループを生じ、長手方向に芯鞘構造のバラつきを生じるからである。
上記複合糸に収束性をもたせるため、上記の様にインターレース処理を行ってもかまわない。但し、インターレース処理をする場合、交絡度は100個/m以内にすることが好ましい。交絡度が大きくなると扁平糸の配列が乱れて吸水性が低下する虞があるからである。
上記複合糸に加える撚りについては、撚係数が1000〜30000が好適であり、より好ましくは3000〜18000である。
6:織編物
本発明の実施形態の織編物は、上記複合糸10を用いたものであり、織編物の全部に上記複合糸10を用いても良いし、一部に使用しても良い。一部に使用する場合において、複合糸10以外の糸については本発明の目的を損なわない範囲で使用することとし、織編物における複合糸10の混率を50質量%以上とすることが好ましい。より好ましくは70質量%以上である。編物の片面(肌面)に複合糸10を用いる場合は、片面組織のループ数の30%以上含有させることが好ましい。複合糸10の含有率が高い程、本発明の作用効果である吸水速乾性を十分に発揮させることができ、織編物における混率が50質量%未満の場合や、編物の片面に用いるときの片面組織のループ数の30%以下の含有であった場合には、水分拡散が少なくなり織編物の吸水拡散性能が芳しくないものとなる。
二重織やスムース編等の2重織編物の場合には、肌側の織編組織に複合糸10を一部または全部に用いると良い。
織編物に用いる複合糸10以外の糸には、その繊維種としてポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系等の熱可塑性ポリマー、セルロース系の再生繊維、半合成繊維など様々な繊維を用いることができ、その糸種としてフィラメント、仮撚加工糸、合撚糸、紡績糸、カバードヤーン、コア・スパン・ヤーン、フィラメント・ツイスト・ヤーンなどとして併用しても良い。
編物組織としては、横編、丸編、経編等、何れの組織でも良く、好適には丸編のダブル編地であり、スムース編、フライス編などが挙げられる。編ゲージとしては18〜40ゲージが好ましい。織物組織としては、平織、ツイル織、サテン織、経二重織、緯二重織、ドビー織等が挙げられ、何れの組織であっても良い。
本実施形態の織編物においては、吸水加工を行なって繊維表面を親水化する。複合糸10に疎水性繊維を用いた場合には吸水性が低くなる懸念があるが、上記吸水加工により吸水性を向上させ得る。尤も複合糸10の繊維が疎水性であっても、ポリマー改質などにより、繊維表面が親水性となっている場合には上記吸水加工は不要である。
吸水加工としては、液流染色機などを用いたバッチ加工においては吸尽処理、仕上でテンター等を用いた連続加工においてはパディング処理等を行う方法が好ましい。吸水加工に使用する吸水剤としては、公知の吸水剤を用いることができ、特に吸水性ポリアミド樹脂、吸水性ポリエステル樹脂またはエポキシ変性シリコン等の親水性シリコン樹脂などを主成分としたものを用いることが好ましい。
更に上記織編物には、用途及び使用形態により、蓄熱剤、紫外線遮蔽又は吸収剤、制電剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射材等で加工して各種の機能を付与しても良い。
7:複合糸並びに織編物の吸水速乾機構
図3は上記実施形態の複合糸10についての吸水速乾作用の機構を説明するための図である。
上記複合糸10を用いた織編物製の衣服を着用した場合において、肌60から発汗した汗(水分)61は、図3(a)に示すように、まず複合糸10における肌に接する箇所の扁平フィラメント12に吸収される(矢印E)。続いて複合糸外周側の扁平フィラメント12同士の重なり部分における毛細管現象で、複合糸を周方向に回り込むように拡散すると共に(矢印F)、扁平フィラメント12の繊維長方向(図3における紙面の手前方向及び奥方向)に拡散する。また上記汗は外周側の扁平フィラメント12を超えて複合糸10の中心側の非扁平フィラメント11束にも移行する(矢印G)。中心側の非扁平フィラメント11束では繊維長方向に汗61が拡散する。次いで図3(b)に示すように、非扁平フィラメント11束の汗61は複合糸10の肌と反対側(反肌側)に位置する扁平フィラメント12に拡散される(矢印H)。この反肌側の扁平フィラメント12では、扁平フィラメント12同士の重なり部分の毛細管現象で更に繊維長方向へ汗61が拡散し、また複合糸の周方向に回るように拡散する(矢印J)。反肌側に位置する扁平フィラメント12に拡散移行した汗61、つまり非扁平フィラメント11束を経て拡散した汗61や肌側から周方向に回り込んで拡散した汗61は、外気に接触して蒸発する(矢印K)。この様にして蒸発することで、新たな汗61の吸水が可能となり、複合糸10の吸水性能が継続される。
扁平フィラメント12同士の重なり部分においては毛細管現象による水分移送力が高く現れることから、複合糸10に広く汗が拡散して良好な吸水拡散性を示すと共に、外気と接触する面積が広くなることで優れた速乾性を示す。非扁平フィラメント11束での毛細管現象は、扁平フィラメント12の層状配置部分よりも浸透力の低いものではあるが、扁平フィラメント12の層状配置部分に汗61を順次拡散させ、複合糸10全体として非常に良好な吸水速乾性を示すこととなる。例えば上記複合糸10の100%使いの編地では、吸水拡散面積500mm2以上の吸水拡散性を示し、45分以内に乾燥する速乾性能を示すことを実験により確認している。
また中心側に非扁平フィラメント11束が位置することで、扁平フィラメント12の上記配置状態(複合糸外周に沿って扁平フィラメント12の断面長軸が配置される状態)が安定化される。
<実験例>
以下、実験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
《測定方法》
まず下記実験例における各種値の測定方法について述べる。
[1]扁平度
扁平度はメタルセクション法にて測定する。つまり、扁平フィラメント1本をアクリル製のワタで包んだ後、0.5mmの孔を開けたステンレス板に通し、ステンレス板から飛び出た両端部分を鋭利なカミソリで切り落とし、繊維軸に直交する断面を作製する。この繊維断面(繊維軸方向に直交する断面)をステンレス板ごと光学顕微鏡により撮影し、この顕微鏡写真から繊維断面の外接長方形を描き(図4参照)、この外接長方形の長辺Nと短辺Sの長さを測定し、下記式(1)により扁平度を算出する。なお扁平度の測定にあたっては、複合糸とする前の扁平フィラメント及び非扁平フィラメントについてそれぞれ100本測定することとし、n=100の平均値を扁平度とする。
扁平度=長辺N/短辺S …(1)
[2]異形度
異形度は、上記と同じくメタルセクション法にて測定することとし、光学顕微鏡により撮影した繊維断面写真(繊維軸方向に直交する断面の写真)において、その内接円の半径r1と外接円の半径r2の半径を求め、これらの比(r2/r1)を算出する。
なお、繊維断面形状が概ね線対称性や点対称性であると判断される場合は、内接円については繊維断面の形状における輪郭をなす曲線に内接する円とし、外接円については繊維断面の形状における輪郭をなす曲線に外接する円とする。また、繊維断面形状が線対称性や点対称性でないと判断される場合には、内接円については、繊維断面の形状における輪郭をなす曲線に対して少なくとも2点で内接し、且つ繊維断面形状の内部にのみ存在する円であって、その円周と繊維断面形状の輪郭をなす曲線とが交差しない範囲においてとり得る最大の半径を有する円を内接円とする。外接円については、繊維断面形状の輪郭を示す曲線において少なくとも2点で外接し、且つ繊維断面形状の外部にのみ存在する円であって、その円周と繊維断面形状の輪郭が交差しない範囲においてとり得る最小の半径を有する円を外接円とする。
異形度の測定にあたっては、複合糸とする前の扁平フィラメント及び非扁平フィラメントについてそれぞれ100本測定することとし、n=100の平均値を異形度とする。
[3]交角θ
複合糸における扁平フィラメントの交角θの測定にあたっては、まず複合糸1本を織編物より静かに取出し、走査型電子顕微鏡(SEM)の試料台に粘着テープで固定する。次いで液体窒素により試料台ごと上記複合糸を凍らせ、凍った状態でカミソリを用いて糸の軸方向に垂直にカットして横断面を切出し、SEMにより糸断面(糸の軸方向に直交する断面)の写真を撮る。このSEM顕微鏡写真において、複合糸中の1本の扁平フィラメントの断面における長軸の線分B−Bを描き、この長軸線分B−Bの中点Cと複合糸の中心Aとを結んだ直線A−C描き、この直線A−Cと長軸線分B−Bが交わる角度(交角θ)を測定する(図1参照)。なお複合糸の中心Aは複合糸の断面における最も長い直径M−Mの中点とする。
なお交角θが50〜130°となっている扁平フィラメントの割合(%)については、複合糸における扁平フィラメント全てについて上記交角θを測定し、全扁平フィラメント本数のうちの、交角θが50〜130°の範囲にある扁平フィラメントの本数の割合を求め、この割合について、1本の複合糸の別々の部分から上記SEM顕微鏡写真を5枚撮影してそれぞれ求め、これらの平均値を交角θ50〜130°の扁平フィラメントの割合(%)とする。
[4]扁平フィラメントが複合糸の外周側に占める割合
扁平フィラメントが外周側に占める割合(Q)について、上記と同様にメタルセクション法にて測定することとし、光学顕微鏡で撮影した繊維断面写真において、複合糸が占める全体面積(Q2)と、実際に外周側に位置する扁平フィラメントが占める全体面積(Q1)を測定し、下記式(2)の通りこれらの比率を算出する。
Q=(Q1/Q2)×100 …(2)
Q:扁平フィラメントの外周側に占める割合(%)
1:外周側に位置する扁平フィラメントが占める全体面積
2:複合糸が占める全体面積
上記外周側に位置する扁平フィラメントが占める全体面積(Q1)は、繊維断面写真における外周側に位置する扁平フィラメントそれぞれの断面積を合計した値とする。
なおコンピューターソフトを使って、画像解析からこれらの面積を導く方法を以下に記す。画像データとして繊維断面写真を取り込み、画像処理ソフトである、Adobe PhotoShop ver.6.0を用いて、複合糸が占める全体面積の範囲、および外周側に位置する扁平フィラメント各々の横断面積についてそれぞれ範囲指定し、さらに2値化処理を行い、解析用の画像とする。このとき、複合糸が占める全体面積は、最外層に位置する繊維の横断面輪郭の外側を全て結んだ範囲とする。これらの作業により作られた解析用の画像を、更に、画像解析ソフトである、Lia32 ver.0.376β1を用いて、複合糸が占める全体面積(Q2)および、外周側に位置する扁平フィラメントそれぞれの断面積の総計の面積(Q1)を算出し、これらの値を用いて上記「扁平フィラメントの外周側に占める割合(Q(%))」を求める。
1つの複合糸について、別々の部分から上記SEM顕微鏡写真を5枚撮影し、それぞれの写真ついて上記占める割合(%)を求め、これらの平均値を「扁平フィラメントの外周側に占める割合(Q(%))」とする。
[5]交絡度
交絡度はJIS−L−1013 8.15に準じて測定する。即ち、試料の一端を適切な性能を持つ垂下装置の上部つかみに取り付け、つかみ部から1m下方の位置におもりを吊り下げて試料を垂直に垂らす。試料の上部つかみから1cm下の位置に糸束を2分割するようにしてフックを挿入する。フックの他端に所定荷重を取り付け、約2cm/sの速度でフックを下降させる。フックが糸の絡みによって停止した点までフックの下降距離を求め、下記式(3)によって交絡度を算出する。この測定算出を50回行い、この平均をJIS−Z−8401によって小数第1位まで求めて交絡度(I)とする。
I=1000/L …(3)
L:フックが下降した距離(mm)
[6]交織・交編率
交織・交編率は、織り上げた織地または編立てた編地に関し、10cm角の生地(織地、編地)を分解して複合糸を取り出し、全体質量に対する複合糸の質量を百分率で示す。
[7]撚数、撚係数
JIS L1013 8.13.1の撚数の試験方法に従って測定した。測定回数は10回とし、この平均値を撚数とした。また撚係数は、撚数×√繊度で算出した。
[8]吸水性
JIS L1907の滴下法に準じて滴下吸水時間を測定し、これを吸水性の評価とする。なお上記滴下法は、試験片上に水を滴下させ、水滴が吸収され特別な反射をしなくなるまでに要する時間により吸水速度を表す方法である。
[9]吸水拡散面積
布帛(織編物)を直径15cmの刺繍用丸枠に取り付け、布帛表面に水溶性青染料溶液(C.I.アシッドブルー62を0.005質量%含有)を0.1ml滴下し、3分後に濡れ拡がった吸水拡散面積(mm2)を下記式(4)により求める。測定はサンプル毎に5回行い、これら測定値の平均を吸水拡散面積の値とする。
吸水拡散面積(mm2)=[PL×PS]×π÷4 …(4)
L:濡れ広がった部分の縦の長さ(mm)
S:濡れ広がった部分の横の長さ(mm)
[10]乾燥性
10cm角の布帛(織編物)を室温20℃、室内湿度65%の恒温室内に24時間放置し、放置後の質量W0を測定する。その後、布帛表面に水0.1mlを滴下し、滴下直後の質量Wを測定する。その後、室温20℃、室内湿度65%の恒温室内に当該布帛を放置し、布帛の質量Wxを5分毎に測定する。Wx、W0、Wの値を下記式(5)に代入し、水分率(%)を計算する。乾燥性の評価は、この水分率が10%未満となった時点までの乾燥に要した時間とする。
水分率(%)=((Wx−W0)/(W−W0))×100 …(5)
[11]風合い
熟練した被験者が試料の布帛(織物、編物)を触り、布帛の柔らかさを、下記3段階で官能評価した。
○:柔らかい
△:やや柔らかい
×:硬い。
《実験No.1》
中心側に56dtex/24fの丸断面ポリエステルフィラメント(異形度1、沸水収縮率5%、インターレース交絡度I:20個/m)、外周側に56dtex/36fのセミダル扁平ポリエステルフィラメント(扁平度4.5、沸水収縮率4%)を用い、中越機械(株)社製コンポジットワインダーMT−CWにて中心側のフィラメントに対し3%のオーバーフィードで外周側のフィラメントを挿入し、エアーノズル部でエアー圧3kgにて混繊し、パーンに巻き取った。巻き取り後の糸を、村田機械(株)製ダブルツイスターNO308−F116にて350T/mの撚り入れをし、実験No.1の複合糸を得た。
この複合糸の100%使いで、30インチ22ゲージの福原製LPJ丸編機を用いて糸長300mm/100ウエールの編条件にて組織スムースで編立した。得られた編地を、液流染色機を用いて精練剤サンモールWX−24(日華化学社製)を2g/l、浴比1:15、90℃で30分処理にて精練し、その後、ポリエステル吸水加工剤SR−1000(高松油脂社製)を2%owf、浴比1:15、80℃で15分処理にて吸水加工を施した。次いで該編地をテンターにて乾燥温度130℃で2分間ファイナルセットし、実験No.1の編物を得た。
《実験No.2》
中心側のフィラメントとして、56dtex/36fの五角形断面ポリエステルフィラメント(異形度1.2、沸水収縮率5%)を用い、交絡度を25とした以外は上記実験No.1と同様にして複合糸及び編物を得た。
《実験No.3》
外周側のフィラメントとして、56dtex/36fのセミダル扁平ポリエステルフィラメント(扁平度2.5、沸水収縮率4%)のポリエステルフィラメントを用いた以外は上記実験No.1と同様にして複合糸及び編物を得た。
《実験No.4》
ダブルツイスターによる撚り入れ条件を100T/mにした以外は上記実験No.1と同様にして複合糸及び編物を得た。
《実験No.5》
実験No.1と同じ複合糸を用い、該複合糸をフィラメント織物の常法により整経及び緯糸打ち込みして津田駒製織機(株)製レピア織機により平織に製織した。製織条件はオサ入巾146.7cm、オサ番手55(鯨寸)、引込数2本とした。得られた織物の密度は経75本/2.54cm、緯62本/2.54cmであった。該織物を、オープンソーパー型精練機を用いて糊抜・精練を行い、シリンダー乾燥機で乾燥した。その後、ピンテンターを用いて中間セット(セット温度190℃×40秒)を施し、引続いて上記実験No.1と同様にして吸水加工及びファイナルセットを施し、実験No.5の織物を得た。得られた仕上織物(実験No.5)は経78本/2.54cm、緯67本/2.54cmであった。
《実験No.6》
実験No.1におけるダブルツイスターの撚り入れ条件を650T/mに変更した以外は、実験No.1と同様にして実験No.6の複合糸を得た。
この実験No.6の複合糸と110dtex/48fのセミダル丸断面フィラメント(これを以下、交編糸と称する)を用い、上記実験No.6の複合糸12本使い、上記交編糸28本使いの割合で、30インチ22ゲージの福原社製LPJ丸編機で糸長300mm/100ウエールの編条件にて組織スムースで編立した。その後実験No.1と同様にして精練、吸水加工及びファイナルセットを施し、実験No.6の編物を得た。
《実験No.7》
実験No.1におけるダブルツイスターの撚り入れ条件を1800T/mに変更した以外は、実験No.1と同様にして実験No.7の複合糸及び編物を得た。
《実験No.8》
実験No.1と同じ複合糸を用い、該複合糸を、精練剤サンモールWX−24(日華化学社製)を2g/l、浴比1:15、90℃で30分処理にて精練し、その後、吸水加工を施さずにテンターを用いて乾燥温度130℃で2分間ファイナルセットし、実験No.8の編地を得た。
《実験No.9》
中心側に56dtex/24fの丸断面ポリエステルフィラメント(異形度1、沸水収縮率5%、インターレース処理を行っていないもの)、外周側に56dtex/36fのセミダル扁平ポリエステルフィラメント(扁平度4.5、沸水収縮率4%)を用い、実験No.1と同様にして混繊した。以降、上記実験No.1と同様にして編物を得た。
《実験No.10》
実験No.1における複合糸中心側の丸断面ポリエステルフィラメントに換えて、56dtex/36fセミダル扁平ポリエステルフィラメント(扁平度4.5、沸水収縮率4%)を用いることとし、これ以外は上記実験No.1と同様にして実験No.10の複合糸及び編物を得た。
《実験No.11》
実験No.1における複合糸外周側の扁平ポリエステルフィラメントに換えて、56dtex/24fの丸断面ポリエステルフィラメント(異形度1、扁平度1、沸水収縮率5%)を用いることとし、これ以外は上記実験No.1と同様にして実験No.11の複合糸及び編物を得た。
《実験No.12》
実験No.1における複合糸中心側の丸断面ポリエステルフィラメントに換えて、56dtex/24fの三角断面ポリエステルフィラメント(異形度1.6、沸水収縮率4%、交絡度I:25個/m)を用い、これ以外は上記実験No.1と同様にして実験No.12の複合糸及び編物を得た。
《実験No.13》
この実験No.1の複合糸と110dtex/48fセミダル丸断面フィラメント(交編糸と称する)を用い、上記実験No.1の複合糸8本使い、上記交編糸32本使いの割合で、30インチ22ゲージの福原社製LPJ丸編機を用いて糸長300mm/100ウエールの編条件にて組織スムースで編立した。精練、吸水加工及びファイナルセットの処理を上記実験No.1と同様に行い実験No.13の編物を得た。
《評価結果》
上記実験No.1〜13の複合糸及び織編物の各種値や評価結果を表1,2に示す。
表1,2から分かるように、扁平フィラメントのみで構成された実験No.10、断面丸形のフィラメントのみで構成された実験No.11、中心側が断面三角形のフィラメントで構成された実験No.12において、乾燥性(乾燥に要する時間)が45〜50分であるのに対し、中心側に断面丸形または五角形のフィラメントを配置し、外周側に扁平フィラメントを配置した実験No.1〜7,9では乾燥性が15〜25分であり、速乾性が良好である。吸水加工を行わなかった実験No.8では吸水性が30秒、乾燥性が40分であったが、同じ複合糸を用いた実験No.1では吸水性が瞬時で、速乾性が20分であり、吸水加工(親水処理)を行うことで吸水速乾性が向上することが分かる。編物における複合糸(中心側に断面丸形または五角形のフィラメントを配置し、外周側に扁平フィラメントを配置した糸)の混率が20%と少ない実験No.13では乾燥性が50分であるのに対し、混率30%の実験No.6では35分、混率100%の実験No.1では20分であり、混率を多くすることで乾燥性が向上することが分かる。
10 複合糸
11 非扁平フィラメント
12 扁平フィラメント
60 肌
61 汗
A 複合糸の中心
C 断面長軸線分B−Bの中点

Claims (8)

  1. 繊維軸方向に直交する断面が扁平であるフィラメントと、繊維軸方向に直交する断面が非扁平であるフィラメントを備えた複合糸であり、
    前記扁平フィラメントは、複合糸の中心側に配置される5〜100個/mのインターレース処理が施されている非扁平フィラメントの外側に、複合糸の周長に対し60%以上(周長比)となるように配置されており、
    前記扁平フィラメントは、単層配置及び/又は扁平フィラメント同士の2〜4層の積層配置を有し、
    更に、この扁平フィラメントのうちの60%(本数比)以上が、下記交角θ=50〜130°となっていることを特徴とする複合糸。
    交角θ:前記扁平フィラメントの前記直交断面における長軸線分の中点をC、前記複合糸の中心をAとしたとき、この直線A−Cと前記長軸線分との交角。
  2. 前記扁平フィラメントの扁平度が平均2.0〜6.0である請求項1に記載の複合糸。
  3. 前記非扁平フィラメントの異形度が平均1.0〜1.5である請求項1または2に記載の複合糸。
  4. 前記非扁平フィラメントが多角形である場合に、その繊維軸方向に直交する断面の形状における内角が108°以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合糸。
  5. 前記複合糸における前記扁平フィラメントの混率が20〜80%(質量比)であり、
    該扁平フィラメントの単糸繊度が平均3.0dtex以下、総繊度が平均50dtex以上であり、
    前記非扁平フィラメントの単糸繊度が平均4.0dtex以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合糸。
  6. 撚係数が1000〜6880である請求項1〜のいずれか1項に記載の複合糸。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の複合糸が、単層又は複数層の織編物における少なくとも片面の30%(面積比)に用いられていることを特徴とする織編物。
  8. 前記織編物に親水処理が施されている請求項に記載の織編物。
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