JP7376436B2 - 織物 - Google Patents

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本発明は、ダウンジャケット等のアウトドア用衣料等の羽毛製品に好ましく用いることができるダウンプルーフ織物に関するものである。
ダウンウェアや寝袋等の中ワタに羽毛が用いられているものは、軽量で保温性が高い。このような製品の側地には、羽毛が外部へ漏れ出ないように密度が高い織物が用いられている。
羽毛製品の側地に適する高密度の織物を製造する技術として、例えば、特許文献1には、薄くて軽いにも関わらず引裂強度が大きく、しかも防水性能に優れる織物が提案されている。この織物は、全繊度が120デニール以下の長繊維糸条がそれぞれ経糸および緯糸に配された高密度織物において、該織物を構成する経糸および緯糸のそれぞれの断面重なりをもった高密度織物であり、織物の表面を真上から見た際に、経糸と緯糸のそれぞれにおいて隣接する糸条同士が、上下に重なる部分がある程の高密度に設計することによって、透湿防水性やダウンプルーフ性能を得るものである。
また、特許文献2には、薄さ、軽さと低通気度と高引裂強力のいずれにも優れる織物として、ペンジュラム法による経糸切断方向の引裂強力と緯糸切断方向の引裂強力のいずれもが10~50Nであって、目付けが50g/m2以下、通気度が1.5cm3/cm2・s以下である織物が提案されている。
国際公開第1994/021848号 特開2005-048298号公報
しかしながら、特許文献1のような織物は、隣接する糸同士において上下に重なる部分があるほどに密度を高めて通気性を非常に低く抑えているので、この織物を側地に用いた羽毛製品の使用時に蒸れ感が強くなる問題や、織物の風合いが固くなる問題があった。また、特許文献2の織物は薄くて風合いが非常に柔らかい織物であるが、この織物においてもダウンプルーフ性をもたせるために、通気性が非常に低く抑えられている。
これらのように、ダウンプルーフ性を求めた織物は、羽毛が漏れないようにするために生地の通気性を非常に低く抑えるよう設計してある。しかし、その弊害として、登山等の運動に長時間着用すると衣服内が著しく蒸れるという問題点があった。また、衣服の内部の空気が抜けにくいために、ダウンウェアから空気を抜いて小さく折り畳み、リュック等へ収納することに非常に手間が掛かり時間も要していた。
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、通気度が高く、かつダウン漏れが起こりにくい織物を提供することにある。
本発明者らは、糸条同士の重なり合いが必要なほどの高密度にしなくともダウンプルーフ性を維持した織物ができないか鋭意検討した結果、経糸および緯糸の織クリンプの大きさが織物のダウンプルーフ性に大きな影響を及ぼすことに気が付いた。つまり、経糸と緯糸の両方の織クリンプを大きくすることにより、ダウンやフェザー(羽毛)の羽枝の先端が織物の糸条に沿って織物の内部に入り込んだ際に、経糸および緯糸が大きく湾曲した状態となっていることにより、羽毛の羽枝の先端が織物深部へ侵入しにくく、羽毛が織物を貫通することを防ぐことが可能であることを見出し、本発明に至った。
本発明は前記課題を解決するために、次のような構成を有する。
[1]繊度が66dtex以下の長繊維糸条で構成されたダウンプルーフ織物であって、通気度は、1.0cc/cm2・sec以上50cc/cm2・sec以下であり、EN12132-1に基づくダウン漏れ試験において、EN13186の判定方法に基づく評価がacceptableまたはgoodであることを特徴とする織物。
[2]経糸および緯糸の少なくとも一方の長手方向に垂直な断面において、経糸および緯糸のうち単糸繊度が大きい方の糸条と、該糸条と隣接している糸条とが、下記式(1)を満たし、経糸および緯糸のうち単糸繊度が大きい方の糸条と、該糸条と隣接している糸条との間に隙間を有しており、前記隙間の両側に配置されている糸条がそれぞれ有する単繊維の最大直径の平均値と、前記隙間の長さとの比は、下記式(2)を満たす[1]に記載の織物。
0<L/L≦1 (1)
(式中、Lは、織物の厚み方向における該糸条の最大厚みを示し、Lは、織物の厚み方向における該糸条と、該糸条と隣接している糸条との重なり部分の厚みの長さを示す。)
1<W/W≦60 (2)
(式中、Wは、前記隙間の両側に配置されている糸条がそれぞれ有する単繊維の最大直径の平均値を示し、Wは、前記隙間の長さを示す。)
[3]経糸および緯糸は、下記式(3)により算出される織クリンプ係数が1.3以上10.0以下である糸条をそれぞれ有している[1]に記載の織物。
織クリンプ係数=R/R (3)
(式中、Rは、織物の厚み方向における前記糸条の屈曲部分での、前記糸条の上端から下端までの高さを示し、Rは、織物の厚み方向における該糸条の屈曲部分での、前記糸条の上端を通る垂線と前記糸条の表面とが接する地点Aから、前記糸条の下端を通る垂線と前記糸条の表面とが接する地点Bまでの高さを示す。)
[4]経糸および緯糸のいずれか一方の長手方向に垂直な断面において、経糸および緯糸のうち単糸繊度が大きい方の糸条と、該糸条と隣接している糸条との間に1μm以上40μm以下の隙間を有している[1]~[3]のいずれかに記載の織物。
[5]経糸および緯糸のいずれか一方が有している単糸の繊度は、4dtex以上15dtex以下であり、前記経糸および前記緯糸のいずれか他方が有している単糸の繊度は、0.1dtex以上2.5dtex以下である[1]~[4]のいずれかに記載の織物。
[6]表面および裏面の少なくとも一方は、カレンダー加工が施されている[1]~[5]のいずれかに記載の織物。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の織物を側地に用いたダウン製品。
本発明の織物は、繊度が66dtex以下の長繊維糸条で構成されたダウンプルーフ織物であって、通気度は、1.0cc/cm2・sec以上50cc/cm2・sec以下であり、EN12132-1に基づくダウン漏れ試験において、EN13186の判定方法に基づく評価がacceptableまたはgoodであることを特徴とする。織物が上記構成を有することにより、通気度が高く、かつダウン漏れが起こりにくい織物を得ることができる。
従来の織物の緯糸の断面の写真を示す。 従来の織物の経糸の断面の写真を示す。 本発明の実施の形態における緯糸の断面の写真を示す。 本発明の実施の形態における経糸の断面の写真を示す。 本発明の実施の形態における織物から抜き出した糸の織クリンプについての模式図を示す。 本発明の実施例1における織物から抜き出した経糸(糸条B)の織クリンプの写真を示す。 本発明の実施の形態における緯糸の断面の模式図を示す。 織物のタフタ織組織を模式的に例示した説明図を示す。 織物のリップストップ織組織を模式的に例示した説明図を示す。
以下、本発明に係る織物に関して、図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
まず、以下に本発明の織物の特徴について説明する。
図3は本発明の実施の形態における織物1の緯糸20の断面の写真を示し、図4は経糸10の断面の写真を示す。図3および図4に示すように、本発明の織物1は、経糸10と緯糸20の両方の織クリンプが特定の大きさを有している。
図1は従来の織物100の緯糸120の断面の写真を示し、図2は経糸110の断面の写真を示している。図1および図2に示すように、従来の織物100では、経糸110または緯糸120のいずれか一方の織クリンプの大きさが小さくなる。例えば、経糸および緯糸の繊度が同じ糸で織り上げた高密度な平織やリップストップの織物規格の場合には、緯糸の織クリンプは大きくなるが、経糸の織クリンプはあまり大きくならない。本発明者らが鋭意研究した結果、織クリンプが小さい方の糸と直交する糸に、ダウンプルーフ用織物では通常あまり使用しないくらい単糸繊度が大きい糸条を用いると、本来なら織クリンプが大きくならない方の糸の織クリンプも大きくすることができ、結果として経緯ともに織クリンプを高められることが分かった。
本発明では、そのようにして織られた生機を、その後の工程にて上下方向に圧縮する作業を行う。圧縮操作が行われたとき、単糸繊度が小さくフィラメント数が多い通常の糸条であれば、圧縮方向と直角方向に圧力を逃がすように個々の繊維が移動して、糸条全体として扁平に変形する。しかし、単糸繊度が大きい糸条は容易に変形せず、その代わりに単糸繊度が大きい糸条に直交している単糸繊度が小さい糸条が扁平になりながらも、単糸繊度の大きい糸条断面に沿って変形して大きな織クリンプを形作ることで、経緯両方の織クリンプを大きくすることが可能となった。
本発明者らは、羽毛製品の中ワタである羽毛が側地から飛び出すときの状況を観察した結果、羽毛は、織物の経糸または緯糸に沿って平行に付着し、運動中や洗濯時における羽毛と側地とのズレや振動等によって徐々に糸条の繊維軸に沿って織物の組織点に入り込み、やがて羽毛の羽枝の先端が織物の組織点から露出するようになる。そして、側地の表面が他物と摩擦するときに、飛び出た羽毛の羽枝の先端が引っ張り出され、羽毛の吹き出しが発生することが観察された。
従来の織物100では、図1および図2に示すように、経糸110同士および緯糸120同士の少なくとも一方において、織物の厚み方向からみて隣り合う糸条が接するほど高密度に製織し、さらに、織物にカレンダー加工を施すことによって、織物断面を上から見たときに隣り合う糸条同士に重なり140ができるほど高密度としている。従来の織物100は、このように構成することにより、羽毛200の羽枝の先端が織物100の裏面100aから織物100の内部に侵入して織物100の表面100bに到達するまでの距離を長くし、織物100からの羽毛200の吹き出しを防いでいたと考えられる。具体的には、図1および図2に示すように、従来の織物100の裏面100aに羽毛200の羽枝の先端が接触して、羽毛200の羽枝の先端が織物100の内部に侵入して織物100を構成する糸条の単繊維の表面に沿って移動し、羽毛200の羽枝の先端が織物100の表面100bに到達することによって羽毛200の吹き出しが発生していたが、織物100を高密度とすることによって、織物100の裏面100aから表面100bに達するまでに羽毛200の羽枝の先端が移動しなければならない距離を長くしていた。しかし、本発明では、図3に示すように、経糸および緯糸において、織物の厚み方向からみて複数の糸条が接して重なり合うようには配置されておらず、カレンダー後でも隣り合う糸条間の断面における重なりがなく、むしろ広い隙間が観察されているにも関わらず、羽毛の吹き出しが見られない。この理由としては、経糸および緯糸の織クリンプを高めることで、経糸および緯糸の両方の糸条の織組織中における曲率を高めて、羽毛の羽枝の先端が容易に糸条繊維軸に沿って動かないようになっており、羽枝の先端が織物の深部へ侵入することを妨げているものと推測している。なお、図1は、従来の織物100における羽毛200の吹き出しのメカニズムの説明のために、織物の断面写真を加工して羽毛200等を図示したものであり、織物100や羽毛200の相対的な縮尺は実物とは異なっている。
次に、本発明の織物の構成について説明する。
本発明の織物は、繊度が66dtex以下の長繊維糸条で構成されたダウンプルーフ織物である。織物が、繊度が66dtex以下の長繊維糸条で構成されていることにより、織物の強度を十分なものとしながら、軽量化を図ることができる。
織物を構成している長繊維糸条の繊度は、66dtex以下であればよいが、60dtex以下であることが好ましく、56dtex以下であることがより好ましく、44dtex以下であることがさらに好ましい。織物を構成している長繊維糸条の繊度の上限値を上記の範囲に設定することにより、織物の目付が大きくなりにくく、軽量な織物とすることができる。また、織物を構成している長繊維糸条の繊度は、5dtex以上であることが好ましく、8dtex以上であることがより好ましく、11dtex以上であることがさらに好ましい。織物を構成している長繊維糸条の繊度の下限値を上記の範囲に設定することにより、織物の強度を高めることができる。
織物を構成している長繊維糸条は、合成繊維であることが好ましい。長繊維糸条を構成する合成樹脂としては、ポリエチレテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ボリブチレンテレフターレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、またはこれらの共重合体等のポリアミド系樹脂等が挙げられる。中でも、長繊維糸条を構成する合成樹脂は、ポリエチレンテレフタレートやナイロン6、ナイロン66、ナイロン610であることが好ましい。長繊維糸条を構成する合成樹脂が、ポリエチレンテレフタレートやナイロン6、ナイロン66、ナイロン610であることにより、織物の強度が高まり、扱いやすくなる。また、これらの長繊維糸条を構成する原料は、工場で発生した糸屑を回収した再生原料も用いることもできる。
<通気度>
織物の通気度は、1.0cc/cm2・sec以上50cc/cm2・sec以下である。織物の通気度を上記の範囲に設定することにより、登山等の運動時にダウンジャケット等の織物を有する羽毛製品を着用していても衣服内が蒸れにくく、快適な着心地とすることができる。また、羽毛製品の内部の空気が抜けやすくなるため、羽毛製品の収納時等に羽毛製品を折り畳みやすくなる。なお、従来のダウンプルーフ織物はダウン漏れを防止するために、糸条を隙間なく並べ、織物の厚み方向に糸条同士が接して重なりが生じるように配置し、通気度が1.0cc/cm2・sec未満となるように設計することが一般的であるが、本発明の技術をもってすれば、経糸および緯糸の織クリンプを大きくすることによってダウン漏れを防止しているため、ダウン漏れ防止効果を十分に有しつつ、織物の通気度を大幅に高めて蒸れにくくすることが可能となる。
織物の通気度は、1.0cc/cm2・sec以上であればよいが、1.1cc/cm2・sec以上であることが好ましく、1.3cc/cm2・sec以上であることがより好ましく、1.5cc/cm2・sec以上であることがさらに好ましい。織物の通気度の下限値を上記の範囲に設定することにより、織物が十分に空気を通し、織物を有する羽毛製品の着用感や折り畳み性を高めることができる。また、織物の通気度の上限値は、50cc/cm2・sec以下であればよいが、例えば、40cc/cm2・sec以下、30cc/cm2・sec以下とすることもできる。
<ダウンプルーフ性能>
羽毛漏れの評価にあたっては、IDLF機関が行っているEN12132-1法で実施する。EN12132-1法は、日本やヨーロッパ等においてよく使用されている。なお、米国やカナダにおいては、IDFL機関が行っているIDFL20-1法がよく使用されている。本発明の織物は、EN12132-1法での90%のダウン、10%のフェザー混を充填したダウン漏れ試験における評価にて、EN13186の判定基準においてacceptableもしくはgoodが得られる。なお、本発明の織物は、IDFL20-1法での75%のダウン、25%のフェザー混を充填した評価では、3級~5級の結果が得られる。
<糸条の構成>
織物を構成している長繊維糸条は、必要に応じて、吸湿性物質、酸化防止剤、つや消し剤、紫外線吸収剤、抗菌剤等が、単独または複合して添加されていてもよい。また、織物を構成している長繊維糸条の沸水収縮率、熱応力、複屈折率、太さ斑などは、織物の用途等に応じて適宜設定すればよい。
織物を構成している長繊維糸条の破断強度は、3.3cN/dtex以上であることが好ましく、3.6cN/dtex以上であることがより好ましく、4.0cN/dtex以上であることがさらに好ましい。織物を構成している長繊維糸条の破断強度の下限値を上記の範囲に設定することにより、引裂強度の高い織物を得ることが可能となる。また、織物を構成している長繊維糸条の破断強度の上限は、例えば、10cN/dtex以下とすることができる。
織物を構成している長繊維糸条の破断伸度は、30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。糸条の破断伸度の下限値を上記の範囲に設定することにより、糸条を織物に形成する前の工程であって、経糸を揃える工程である整経工程において、断糸が発生しにくくなる。また、織物を構成している長繊維糸条の破断伸度は、55%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、45%以下であることがさらに好ましい。糸条の破断伸度の上限値を上記の範囲に設定することにより、糸条が伸びにくくなり、織物の耐久性を高めることができる。
<織物の厚み方向における糸断面の重なり係数>
図7に示すように、織物1は、経糸10および緯糸20の少なくとも一方の長手方向に垂直な断面において、経糸10および緯糸20のうち単糸繊度が大きい方の糸条と、該糸条と隣接している糸条とが、下記式(1)を満たすことが好ましい。
0<L/L≦1 (1)
(式中、Lは、織物の厚み方向における糸条の最大厚みを示し、Lは、織物の厚み方向における糸条と、該糸条と隣接している糸条との重なり部分の厚みの長さを示す。)
なお、織物の厚み方向における糸条と、該糸条と隣接している糸条との重なりとは、図7に示すように、経糸10および緯糸20のうち単糸繊度が大きい方の単繊維で構成されている糸条の長手方向に垂直な断面において、糸条と、この糸条と隙間を空けて並行して隣接している糸条とで、織物の厚み方向において、これらの糸条が互いに重なり合っている部分についての厚みの長さを示すものである。
つまり、織物1は、経糸10および緯糸20のうち単糸繊度が大きい方の単繊維で構成されている糸条と、該糸条と隣接している糸条との重なり係数(L/L)が、0を超えており、かつ、1以下であることが好ましい。重なり係数の数値を上記の範囲に設定することにより、経糸10および緯糸20のうち単糸繊度が大きい方の単繊維で構成されている糸条同士の、織物の厚み方向における位置が近いものとなり、その結果、単糸繊度が大きい方の単繊維で構成されている糸条と接している、単糸繊度が小さい方の単繊維で構成されている糸条の織クリンプを大きくすることができる。具体的には、図7に示された経糸10および緯糸20のうち、単糸繊度が大きい方の単繊維で構成されている糸条Aである緯糸20において、隣接する糸同士の重なり係数が0<L/L≦1を満たしていることが好ましい。経糸10および緯糸20のうち、単糸繊度が大きい方の単繊維で構成されている糸条がこのように構成されていることにより、単糸繊度が小さい方の単繊維で構成されている糸条が大きく湾曲し、織クリンプが大きくなって織物1のダウン漏れを十分に防ぐことができる。なお、重なり係数(L/L)が0を超えており、かつ1以下である糸条は、経糸10および緯糸20の少なくとも一方の50%以上含まれていることが好ましく、65%以上含まれていることがより好ましく、80%以上含まれていることがさらに好ましい。
経糸10および緯糸20のうち単糸繊度が大きい方の単繊維で構成されている糸条と、該糸条と隣接している糸条との重なり係数(L/L)は、0を超えていることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.2以上であることがさらに好ましく、0.3以上であることがよりさらに好ましい。重なり係数(L/L)の下限値を上記の範囲に設定することにより、糸条の織クリンプを大きくすることができ、ダウン漏れのしにくい織物1とすることができる。また、経糸10および緯糸20のうち単糸繊度が大きい方の単繊維で構成されている糸条と、該糸条と隣接している糸条との重なり係数(L/L)は、1以下であることが好ましく、0.95以下であることがより好ましく、0.9以下であることがさらに好ましく、0.85以下であることがよりさらに好ましい。重なり係数(L/L)の上限値を上記の範囲に設定することにより、単糸繊度が小さい方の単繊維で構成されている糸条の織クリンプが高められるため、羽毛の吹き出しを防止しやすくなる。
<空隙比>
図7に示すように、織物1は、経糸10および緯糸20のうち、単糸繊度が大きい方の単繊維で構成されている糸条(図7では、緯糸20)の長手方向に垂直な織物断面において、単糸繊度が大きい方の単繊維で構成されている糸条と、該糸条と隣接している糸条との間に隙間を有しており、隙間の両側に配置されている糸条がそれぞれ有する単繊維の最大直径の平均値と、隙間の長さとの比は、下記式(2)を満たすことが好ましい。
1<W/W≦60 (2)
(式中、Wは、隙間の両側に配置されている糸条がそれぞれ有する単繊維の最大直径の平均値を示し、Wは、隙間の長さを示す。)
つまり、織物1は、隙間の両側に配置されている、単糸繊度が大きい方の単繊維で構成されている糸条がそれぞれ有する単繊維の最大直径の平均値と、隙間の長さとの比(W/W)が、1を超えており、かつ、60以下であることが好ましい。単繊維の最大直径の平均値と隙間の長さとの比の数値を上記の範囲に設定することにより、糸条間にある隙間の大きさが、単繊維の直径と比較して適度なものとなり、隙間を空気が十分に通ることが可能となって、通気性を有しながらダウン漏れしにくい織物1とすることができる。
織物1は、隙間の両側に配置されている糸条がそれぞれ有する単繊維の最大直径の平均値と、隙間の長さとの比(W/W)が、1を超えていることが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることがさらに好ましい。単繊維の最大直径の平均値と隙間の長さとの比の下限値を上記の範囲に設定することにより、2つの糸条間の隙間が適切な大きさとなり、織物1の通気度を高めて蒸れ感を低減することができる。また、織物1は、隙間の両側に配置されている糸条がそれぞれ有する単繊維の最大直径の平均値と、隙間の長さとの比(W/W)が、60以下であることが好ましく、55以下であることがより好ましく、50以下であることがさらに好ましい。単繊維の最大直径の平均値と隙間の長さとの比の上限値を上記の範囲に設定することにより、羽毛が織物を通過しにくく、ダウン漏れを効果的に防止することができる。
経糸10および緯糸20の少なくとも一方の長手方向に垂直な断面において、経糸10および緯糸20のうち単糸繊度が大きい方の糸条と、該糸条と隣接している糸条との間に1μm以上40μm以下の隙間を有していることが好ましい。隙間の長さが1μm以上40μm以下であることにより、織物1の通気性を十分に確保することができる。
経糸10および緯糸20のうち単糸繊度が大きい方の糸条と、該糸条と隣接している糸条との間に有している隙間の長さは、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。隙間の長さの下限値を上記の範囲に設定することにより、織物1の通気性が高まり、織物1を用いた羽毛製品の蒸れ感の低減や折り畳み性を向上させることが可能となる。また、経糸10および緯糸20のうち単糸繊度が大きい方の糸条と、該糸条と隣接している糸条との間に有している隙間の長さは、40μm以下であることが好ましく、38μm以下であることがより好ましく、35μm以下であることがさらに好ましい。隙間の長さの上限値を上記の範囲に設定することにより、隙間から羽毛が漏れにくくなり、ダウン漏れしにくい織物1とすることができる。なお、ダウンプルーフ性を維持しながら、隙間の長さを50μm以上とすることが可能である場合もある。
<織クリンプ係数>
図5は織物から抜き出した糸の織クリンプについて説明する模式図であり、図6は後述する本発明の実施例1において織物から抜き出した経糸(糸条B)の織クリンプの写真である。図5および図6に示すように、経糸および緯糸は、下記式(3)により算出される織クリンプ係数が1.3以上10.0以下である糸条30を有していることが好ましい。
織クリンプ係数=R/R (3)
(式中、Rは、織物の厚み方向における糸条30の屈曲部分での、糸条30の上端31から下端32までの高さを示し、Rは、織物の厚み方向における該糸条30の屈曲部分での、糸条30の上端31を通る垂線と糸条30の表面とが接する地点Aから、糸条30の下端32を通る垂線と糸条30の表面とが接する地点Bまでの高さを示す。)
つまり、織物は、経糸と緯糸の両方が、織クリンプ係数(R/R)が1.3以上10.0以下である糸条30を有していることが好ましい。織物の経糸および緯糸の糸条30の織クリンプ係数(R/R)の数値を上記の範囲に設定することにより、糸条30が大きく屈曲した形状となって、羽毛の先端が織物の内部に侵入しにくくなる。そのため、羽毛の抜けにくい織物となって、ダウン漏れを防ぐ効果を高めることができる。
織物の経糸および緯糸が有している糸条30の織クリンプ係数(R/R)は、1.3以上であることが好ましく、1.4以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。織物の経糸および緯糸が有している糸条30の織クリンプ係数の下限値を上記の範囲に設定することにより、糸条30の織クリンプ形状を、羽毛が抜けにくい形状とすることができ、織物のダウン漏れ防止効果を高めることができる。また、織物の経糸および緯糸の糸条30の織クリンプ係数(R/R)は、10.0以下であることが好ましく、9.5以下であることがより好ましく、9.0以下であることがさらに好ましい。織物の経糸および緯糸の糸条30の織クリンプ係数の上限値を上記の範囲に設定することにより、織物の風合いを柔らかくし、羽毛製品がダウンジャケット等の衣料である場合に着心地を向上させることができる。
<経糸および緯糸の単糸繊度>
織物において、経糸および緯糸のいずれか一方の糸条の単糸繊度(繊維一本の繊度)は、4dtex以上15dtex以下であり、経糸および緯糸のいずれか他方の糸条の単糸繊度は、0.1dtex以上2.5dtex以下であることが好ましい。織物の経糸および緯糸のそれぞれ単糸繊度を上記の範囲に設定することにより、単糸繊度が大きくて、断面形状の変形が少ない糸条と、単糸繊度が小さくて、単糸繊度の大きい糸条に沿って断面形状が変形しやすい糸条の両方を織物が有することとなり、経糸および緯糸の織クリンプが高まって、通気性とダウン漏れ防止性能とを両立させた織物とすることができる。
以下では、単糸繊度が4dtex以上15dtex以下である糸条を「糸条A」、単糸繊度が0.1dtex以上2.5dtex以下である糸条を「糸条B」と称することがある。
<糸条Aの単糸繊度>
糸条Aの単糸繊度は、4dtex以上であることが好ましく、4.5dtex以上であることがより好ましく、5dtex以上であることがさらに好ましく、また、15dtex以下であることが好ましく、14dtex以下であることがより好ましく、13dtex以下であることがさらに好ましい。糸条Aの単糸繊度の下限値および上限値を上記の範囲に設定することにより、カレンダー加工時等の糸条Aに外力が加わった際に糸条Aの断面形状が変形しにくく、また、もう一方の糸条B(具体的には、糸条Aが経糸ならば糸条Bは緯糸、糸条Aが緯糸ならば糸条Bは経糸となる)が適切な織クリンプ形状を維持しやすくなるため、織物の通気性とダウン漏れ防止性能の両方を向上させることができる。
<糸条Aの単繊維の直径>
織物にする前の元糸としての糸条Aの単繊維の直径は、18μm以上であることが好ましく、21μm以上であることがより好ましく、23μm以上であることがさらに好ましい。糸条Aの単繊維の直径の下限値を上記の範囲に設定することにより、糸条Aを織物とした後にカレンダー加工を施す等、織物に外力が加わった際に糸条Aの断面形状が潰れにくく、糸条Bが糸条Aに沿って変形しやすくなって適切な織クリンプ形状をとりやすくなる。また、糸条Aの単繊維の直径は、45μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましく、38μm以下であることがさらに好ましい。糸条Aの単繊維の直径の上限値を上記の範囲に設定することにより、織物が柔らかくなり、ダウンジャケット等の衣料の羽毛製品に適した織物とすることが可能となる。
<糸条Aの断面>
糸条Aを構成する単繊維の断面形状は、例えば、直径が大きく、応力が加わってもつぶれにくい形状にするのがよい。具体的には、糸条Aを構成する単繊維の断面形状として、丸、楕円、菱形や四角形等の多角形が挙げられる。中でも、糸条Aを構成する単繊維は、丸断面であることが好ましい。
例えば、織物にカレンダー加工を施すと、織物の糸条Aを構成する単繊維の断面は、糸条が押し潰されることで変形する。具体的には、織物のカレンダー加工後の糸条Aを構成する単繊維の直径は、製糸後における糸条Aの単繊維の直径(元直径)から変化する。つまり、製糸後における糸条Aの単繊維の元直径と比較して、織物が仕上がった後の糸条Aを構成する単繊維の直径は、糸条Aの単繊維の断面において、縦方向(織物の厚み方向)に短く、横方向(織物の幅方向または長さ方向)に長くなるように変形する。織物の糸条Aの単繊維の縦方向の直径は、17μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、22μm以上であることがさらに好ましく、また、37μm以下であることが好ましく、35μm以下であることがより好ましく、34μm以下であることがさらに好ましい。一方、織物の糸条Aの単繊維の横方向の直径は、19μm以上であることが好ましく、22μm以上であることがより好ましく、24μm以上であることがさらに好ましく、また、42μm以下であることが好ましく、38μm以下であることがより好ましく、36μm以下であることがさらに好ましい。織物の糸条Aを構成する単繊維の縦方向および横方向での直径を上記の範囲に設定することにより、糸条Bの織クリンプ形状を適切な形としやすくなる。また、仕上がった織物において、糸条Aの各単繊維は、布面に沿って一列に配列されていることが好ましく、糸条Aの厚みの最大値と、糸条Aに含まれる単繊維の厚み方向の直径の最大値とは、同じ値になっていることが好ましい。また、糸条Aの短繊維が変形しにくいことにより、糸条Aがカレンダー加工しても扁平に広がらないため、従来のダウンプルーフ織物に近い糸密度やカバーファクターであっても、織物の上面から見たときに糸条A間に隙間が見える構成とすることが可能となる。
<糸条Aのフィラメント数>
糸条Aの単糸繊度を大きくし、かつ、フィラメント数を少なくすることによって、糸条Aの断面形状が外力によって変形しにくくなり、その分、糸条Bの織クリンプを高めることができる。糸条Aのフィラメント数は、2フィラメント以上10フィラメント以下であることが好ましく、より好ましくは5フィラメント以下であり、さらに好ましくは4フィラメント以下である。糸条Aのフィラメント数を1フィラメントに設定すると、糸条Bの織クリンプは高くなるが、糸条A同士の隙間が大きくなり過ぎて羽毛が噴出しやすくなる。また、糸条Aのフィラメント数が10フィラメントを超えると、カレンダー加工により糸条Aに外力が加わった際に糸条Aの断面形状の変形が大きくなってしまい、糸条Bの断面形状を変化させて織クリンプを大きくする効果が低下する可能性がある。
<糸状A ST10:10%伸長時強力>
糸条Aにおける10%伸張時の強度は、1.2cN/dtex以上であることが好ましく、1.4cN/dtex以上がより好ましく、1.6cN/dtex以上がさらに好ましい。糸条Aの10%伸張時の強度の下限値を上記の範囲に設定することにより、糸条Aが適切な形状の織クリンプを形成しやすくなる。また、糸条Aにおける10%伸張時の強度は、3.5cN/dtex以下であることが好ましく、3.3cN/dtex以下であることがより好ましく、3.0cN/dtex以下であることがさらに好ましい。糸条Aの10%伸張時の強度の上限値を上記の範囲に設定することにより、織物の染色や加工をした際に織クリンプを形成しやすく、また、外的衝撃によっても織クリンプの形状が崩れにくくなる。
<糸条Aを構成する合成樹脂の粘度>
糸条Aを構成する合成樹脂の相対粘度は、例えば、ナイロンの場合、2.0以上であることが好ましく、2.5以上であることがより好ましく、3.0以上であることがさらに好ましい。糸条Aを構成する合成樹脂の相対粘度の下限値を上記の範囲に設定することにより、織物にカレンダー加工を施して圧縮した際に糸条Aが変形しにくく、織クリンプ形状が維持されやすい。また、糸条Aを構成する合成樹脂の相対粘度の上限値は特に限定されないが、通常、4.5以下とすることができる。糸条Aを構成する合成樹脂の相対粘度の上限値を上記の値に設定することにより、糸条Aの柔軟性が高まり、織物の風合いを向上させることが可能となる。
糸条Aを構成する合成樹脂の極限粘度は、例えば、ポリエステルの場合、0.5以上であることが好ましく、0.55以上であることがより好ましく、0.58以上であることがさらに好ましい。糸条Aを構成する合成樹脂の極限粘度の下限値を上記の範囲に設定することにより、織物をカレンダー加工した際に糸条Aの形状が変わりにくく、糸条Aの織クリンプ形状が保たれやすくなる。また、糸条Aを構成する合成樹脂の極限粘度の上限値は特に限定されないが、通常、1.5以下とすることができる。糸条Aを構成する合成樹脂の極限粘度の上限値を上記の値に設定することにより、糸条Aが柔軟なものとなり、織物の柔軟性が高まる。
<糸条Bの単糸繊度>
糸状Bの単糸繊度は、0.1dtex以上であることが好ましく、0.2dtex以上であることがより好ましく、0.3dtex以上であることがさらに好ましく、また、2.5dtex以下であることが好ましく、2.3dtex以下であることがより好ましく、2.0dtex以下であることがさらに好ましい。糸条Bの単糸繊度の下限値および上限値を上記の範囲に設定することにより、糸条Bの断面形状が糸条Aに沿って変形しやすくなり、織クリンプを大きくすることができる。また、織物の風合いが柔らかくなり、かつ、織物の通気度が過度に高まってダウンプルーフ性能が低下することを防止することができる。
<糸条Bのフィラメント数>
糸条Bのフィラメント数は、5フィラメント以上100フィラメント以下であることが好ましい。糸条Bのフィラメント数を5フィラメント以上100フィラメント以下に設定することにより、糸条Bの断面形状が糸条Aの断面形状よりも変形しやすくなって織クリンプを大きくすることができる。糸条Bのフィラメント数が5フィラメント未満であると、糸条断面の変形が少なくなり、織クリンプを大きくすることが困難となりやすい。また、糸条Bのフィラメント数が100フィラメントを超えると、織物の経方向と緯方向の曲げ硬さが極端に異なることがあり、織物を羽毛製品の側地等に利用しにくくなることや、摩擦に弱い織物になりやすくなることがある。
<糸条Aと糸条Bの単糸繊度比>
糸条Aが有している単繊維と糸条Bが有している単繊維との繊度比(糸条Aの単糸繊度/糸条Bの単糸繊度)は、0.05以上であることが好ましく、0.08以上であることがより好ましく、0.09以上であることがさらに好ましい。また、糸条Aと糸条Bとの単糸繊度比は、0.9以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、0.5以下であることがさらに好ましい。糸条Aと糸条Bとの単糸繊度比を上記の範囲に設定することにより、織物の経糸および緯糸の織クリンプ形状が適切なものとなりやすく、羽毛漏れの防止効果を高めることが可能となる。
<糸条Aと糸条Bの総繊度比>
経糸および緯糸の両方の織クリンプを高めるために、経糸と緯糸の繊度差を大きくし過ぎない方が好ましい。糸条Aの総繊度と糸条Bの総繊度との比(糸条Aの総繊度/糸条Bの総繊度)は、0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.4以上であることがさらに好ましい。糸条Aと糸条Bの総繊度比の下限値を上記の範囲に設定することにより、糸条Aと糸条Bの両方が適切な織クリンプ形状を形成しやすくなる。また、糸条Aの総繊度と糸条Bの総繊度との比は、2.0以下であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。糸条Aと糸条Bの総繊度比の上限値を上記の範囲に設定することにより、糸条Aの繊度が糸条Bの繊度に対して大きくなりすぎることを防ぎ、糸条Aと糸条Bの両方の織クリンプ形状を高めることができる。
<織物の組織>
織物の組織としては、例えば、図8に示すようなタフタ、図9に示すようなリップストップタフタ、綾組織等を任意に用いることができる。中でも、織物の組織は、タフタ、または、リップストップタフタであることが好ましい。織物の組織がタフタまたはリップストップタフタであることにより、経糸と緯糸の交点が多く構成されることとなるため、織物の羽毛漏れを防ぐ効果を高めることができる。
<リップ組織>
リップストップ組織において、リップ部には、大きい繊度の糸を用いることが一般的である。本発明において、リップ部の糸には、平組織の緯糸を2本以上引き揃えたもの、または、平組織の緯糸の1.8~4.2倍程度の繊度を有する1本の糸を使用することができる。すなわち、リップ部が「2本リップ」のときは、リップ部に、緯糸を2本引き揃えて打ち込んでもよく、緯糸の2倍の太さの糸を1本打ち込んでもよい。同様にして、リップ部が「3本リップ」のときは、リップ部に、緯糸を3本引き揃えて打ち込むことも、緯糸の3倍の太さの糸を1本打ち込むことも可能であり、リップ部が「4本リップ」のときは、リップ部に、緯糸を4本引き揃えて打ち込んでもよく、緯糸の4倍の太さの糸を1本打ち込んでもよい。
<リップ組織の密度の数え方>
本発明において、密度は、例えば、2本リップの場合は、緯糸を2本引き揃えて打ち込んでも、緯糸の2倍の太さの糸を1本打ち込んだとしても、地の糸を2本打ち込んだとみなし、2本と数える。同様に3本リップの場合もリップ部に、緯糸を3本引き揃えて打ち込むことも、緯糸の3倍の太さの糸を1本打ち込むことも可能であり、その場合には、地の糸を3本打ち込んだとして、3本として数える。いずれも、経糸および緯糸とも同じ数え方である。
<織物の経密度のカバーファクター>
織物の経密度のカバーファクターは、600以上であることが好ましく、650以上であることがより好ましく、700以上であることがさらに好ましい。織物の経密度のカバーファクターの下限値を上記の範囲に設定することにより、織物がダウン漏れしにくくなる。また、織物の経密度のカバーファクターは、1600以下であることが好ましく、1550以下であることがより好ましく、1500以下であることがさらに好ましい。織物の経密度のカバーファクターの上限値を上記の範囲に設定することにより、織物の通気度が高まり、また、織物の風合いを柔らかくすることができる。
<織物の緯密度のカバーファクター>
織物の緯密度のカバーファクターは、500以上であることが好ましく、550以上であることがより好ましく、600以上であることがさらに好ましい。織物の緯密度のカバーファクターの下限値を上記の範囲に設定することにより、織物を構成する糸条同士の間に隙間が生じにくく、ダウン漏れを防止する効果が高まる。また、織物の緯密度のカバーファクターは、1500以下であることが好ましく、1450以下であることがより好ましく、1400以下であることがさらに好ましい。織物の緯密度のカバーファクターの上限値を上記の範囲に設定することにより、織物の緯密度が高くなりすぎることを防ぎ、整経工程の際に毛羽が発生しにくくなる。
<トータルカバーファクター>
織物のトータルカバーファクターは、1300以上であることが好ましく、1400以上であることがより好ましく、1500以上であることがさらに好ましい。織物のトータルカバーファクターの下限値を上記の範囲に設定することにより、織物の通気性が高く、また、織物の組織が崩れにくいため、耐久性を高めることが可能となる。また、織物のトータルカバーファクターは、2500以下であることが好ましく、2450以下であることがより好ましく、2400以下であることがさらに好ましい。織物のトータルカバーファクターの上限値を上記の範囲に設定することにより、織物の柔軟性を向上させることができる。
<織物の密度>
織物の経密度および緯密度は、50本/インチ以上であることが好ましく、60本/インチ以上であることがより好ましく、70本/インチ以上であることがさらに好ましい。織物の経密度および緯密度の下限値を上記の範囲に設定することにより、織物の経糸と緯糸との交差点の数が十分なものとなり、織物の目ずれが起こりにくくなる。また、織物の経密度および緯密度は、400本/インチ以下であることが好ましく、380本/インチ以下であることがより好ましく、360本/インチ以下であることがさらに好ましい。織物の経密度および緯密度の上限値を上記の範囲に設定することにより、織物の通気性を高め、かつ、織物が柔軟なものとなる。
<カレンダー加工>
織物の表面および裏面の少なくとも一方は、カレンダー加工が施されていることが好ましい。カレンダー加工することで、単糸繊度が小さな糸条Bの織クリンプをより大きくすることができる。より好ましくは、織物の表面および裏面の両方にカレンダー加工が施されていることである。カレンダー加工の温度は特に限定されないが、織物を構成する糸条に使用されている素材のガラス転移温度よりも80℃以上高いことが好ましく、120℃以上高いことがより好ましい。また、織物を構成する糸条に使用されている素材の融点よりも20℃以上低いことが好ましく、30℃以上低いことがより好ましい。カレンダー加工の温度を上記の範囲に設定することにより、織物を構成する糸条の織クリンプ形状を適切な形状に保つことが可能となる。例えば、織物を構成する糸条がポリアミドを素材としている場合、カレンダー加工の温度は、120℃以上であることが好ましく、125℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることがさらに好ましく、また、200℃以下であることが好ましく、195℃以下であることがより好ましく、190℃以下であることがさらに好ましい。
カレンダー加工の圧力は、0.98MPa(10kgf/cm2)以上であることが好ましく、1.47MPa(15kgf/cm2)以上であることがより好ましく、1.96MPa(20kgf/cm2)以上であることがさらに好ましい。カレンダー加工の圧力の下限値を上記の範囲に設定することにより、織物を構成する糸条の織クリンプ形状が適切な形状に維持されやすくなる。また、カレンダー加工の圧力は、5.88MPa(60kgf/cm2)以下であることが好ましく、5.39MPa(55kgf/cm2)以下であることがより好ましく、4.90MPa(50kgf/cm2)以下であることがさらに好ましい。カレンダー加工の圧力の上限値を上記の範囲に設定することにより、織物を構成する繊維が適度に圧縮され、引裂強度の高い織物とすることができる。
<引裂強度>
織物のペンジュラム法による引裂強度は、経方向および緯方向のいずれも5N以上であることが好ましく、6N以上であることより好ましく、7N以上がさらに好ましい。織物の引裂強度の下限値を上記の範囲に設定することにより、織物の耐久性が増す。また、織物のペンジュラム法による引裂強度は、経方向および緯方向のいずれも50N以下であることが好ましく、40N以下であることがより好ましく、30N以下であることがさらに好ましい。織物の引裂強度の上限値を上記の範囲に設定することにより、織物の厚みが過度に厚くなることを防ぎ、軽量な織物とすることができる。
<目付>
織物の目付は、80g/m2以下であることが好ましく、70g/m2以下であることがより好ましく、60g/m2以下であることがさらに好ましい。織物の目付の上限値を上記の範囲に設定することにより、織物の通気性が高まり、かつ、織物が柔軟で軽量なものとなる。また、織物の目付の下限値は、例えば、20g/m2以上、25g/m2以上、30g/m2以上とすることができる。
<染色・加工>
織物は、一般的な薄地織物の加工機械を使って、精錬、撥水処理、および風合いや織物の強力を調整するための柔軟加工、樹脂加工、シリコーン加工を行うことが可能である。例えば、柔軟剤としてはアミノ変性シリコーン、ポリエチレン系、ポリエステル系、パラフィン系柔軟剤等を使用することができる。また樹脂加工においては、例えば、樹脂加工剤としてメラミン樹脂、グリオキザール樹脂、ウレタン系、およびポリエステル系等の各種樹脂を使用することができる。
本発明の織物は、ダウン製品の側地に用いることが好ましい。ダウン製品の中でも、アウトドアやスポーツ向けのダウンジャケット等のダウンウェアや、寝袋等に用いることがより好ましい。
次に、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に含まれる。本発明で用いた測定方法は、以下の通りである。
<繊度>
糸条の総繊度(dtex)は、100m長の糸条のカセを3つ作製し、各々の質量(g)を測定して平均値を求め、100倍して求めた。単糸繊度は、糸条の繊度をフィラメント数で除したものとした。
<相対粘度>
96.3±0.1質量%の試薬特級濃硫酸中にポリマー濃度が10mg/mlになるように試料を溶解させてサンプル溶液を調製した。20℃±0.05℃の温度で水落下秒数が6~7秒のオストワルド粘度計を用い、20℃±0.05℃の温度で、調製したサンプル溶液20mlの落下時間T(秒)および試料を溶解するために用いた96.3±0.1質量%の試薬特級濃硫酸20mlの落下時間T(秒)をそれぞれ測定した。使用する素材の相対粘度(RV)は下記の式により算出した。
RV=T/T
<破断強度>
糸条の破断強度は、インストロンジャパン社製の4301型万能材料試験機を用い、試料長:20cm、引張速度:20cm/分、1デニールに対して33gの荷重をかけ、糸条が破断したときの強度を測定し、3回の測定の平均値を破断強度とした。
<破断伸度>
糸条の破断伸度は、上記破断強度の測定方法と同様の操作を行い、糸条が破断したときの伸度を測定し、3回の測定の平均値を破断伸度とした。
<10%伸張時破断強度>
糸条の10%伸張時破断強度は、インストロンジャパン社製の4301型万能材料試験機を用い、試料長:20cm、引張速度:20cm/分、1デニールに対して33gの荷重をかけ、元長より10%伸張した際の破断強度を測定し、3回の測定の平均値を10%伸張時破断強度とした。
<目付>
織物の目付は、JIS L 1096 8.4に規定されている単位面積あたりの質量に準拠して測定した。
<カバーファクター>
織物のトータルカバーファクター(CF)は、下記式により計算した。
CF=T×(DT)1/2+W×(DW)1/2
式中、TおよびWは織物の経密度および緯密度(本/2.54cm)を示し、DTおよびDWは織物を構成する経糸および緯糸の太さ(dtex)を示す。
<引裂強力>
織物の引裂強力は、JIS L 1096 8.15.5に規定されている引裂強さD法(ペンジュラム法)に準拠して、経緯の両方向において測定した。
<通気度>
織物の通気度は、JIS L 1096 8.27.1に規定されている通気性A法(フラジール形法)に準拠して測定した。
<織物の厚み方向における糸条の重なり係数>
織物の厚み方向における糸条の重なり係数は、経糸および緯糸のうち単糸繊度が大きい方の単繊維で構成されている糸条(太単糸繊度糸)に垂直な横断面になるよう織物をカットして、糸条が複数本含まれるように撮影する。なお、織物をカットする際に経糸および緯糸のうち単糸繊度が小さい方の単繊維で構成されている糸条(細単糸繊度糸。太単糸繊度糸に直交している糸条。)の太さの中心を狙って、該糸条に沿って織物を垂直にカットする。そうすることで隣接する太単糸繊度糸が細単糸繊度糸の上下位置の最も高い部分と低い部分を狙って太単糸繊度糸をカットすることができ、太単糸繊度糸の横断面が観察しやすくなる。また、糸条を綺麗にカットするためには、織物を測定用試料台に乗せたまま、液体チッソで凍結させて、使い捨て安全カミソリ等の鋭利な刃物でカットすることがよい。写真撮影は日立製作所(株)のS-3500N形走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて300倍で撮影した。得られた写真から図7に示すように隣接する糸条の高さ方向でみた重なりLおよび糸条の太さLを測定して、糸条断面の重なりの係数を算出する。なお、織物の任意の3箇所を測定した平均値を糸条の重なり係数とした。
糸条の重なり係数=L/L (図7参照)
<織クリンプ係数>
織物を構成する糸の織クリンプが伸ばされないようにそっと解して、経糸と緯糸を織物から取り出して水平台の上に静置し、夫々の糸について織クリンプに垂直な角度(織クリンプが最大に見える角度)でVH-Z450型顕微鏡(KEYENCE社製)を用いて100倍にて写真撮影する。図5および図6に示すようにRおよびRを写真から測定して、経糸および緯糸のそれぞれの織クリンプ係数を算出する。織物から経糸と緯糸を夫々任意の箇所から3本抜き出して測定し、その平均値を織クリンプ係数とした。
糸条の織クリンプ係数=R/R (図5、図6参照)
<隣接する太単繊維糸間の隙間と空隙比>
糸条の空隙比は、前記の<織物の厚み方向における糸条の重なり係数>と同様にして、
織物の横断面(太単糸繊度糸の横断面)を撮影する。織物断面の任意の3箇所について、太単糸繊度糸の単繊維の最大直径および太単糸繊度糸同士の隙間を測定し、単繊維の最大直径と糸条間の隙間との比を算出して、その平均値を空隙比とした。日立製作所(株)のS-3500N形走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。SEMの試料台に紡績糸を真っ直ぐに伸した状態で、SEM専用の両面テープで固定した後、使い捨ての安全カミソリを用いて紡績糸長手方向及び試料台に垂直にカットした。その後通常の方法でSEM撮影の前処理及び撮影を行い紡績糸の横断面写真を得た。撮影倍率は300倍とした。
糸条の空隙比=W/W (図7参照)
<ダウン漏れ試験>
織物のダウン漏れ試験は、IDFLもしくはQ-TEC機関おいてEN12132-1法に従って試験を行い、EN13186の判定方法に基づく評価がgoodまたはacceptableであるかどうかを確認した。
実施例1
相対粘度3.5のナイロン6ポリマーチップを紡糸温度288℃で、2個の吐出孔(直径:0.30mm、スリット長0.55mm)を備える紡糸口金から溶融紡糸した。2つのゴデットローラのうち、第1ゴデットローラの速度を2400m/分、第2ゴデットローラの速度を3600m/分に設定し延伸した。巻き取り速度を3545m/分にして、11dtex、2フィラメントの糸を得た。この糸を糸条Aとした。
次に、相対粘度3.5のナイロン6ポリマーチップを紡糸温度288℃で、20個の吐出孔(直径:0.20mm、スリット長0.45mm)を備える紡糸口金から溶融紡糸した。2つのゴデットローラのうち、第1ゴデットローラの速度を2450m/分、第2ゴデットローラの速度を3500m/分に設定し延伸した。巻き取り速度を3345m/分にして、22dtex、20フィラメントの糸を得た。この糸を糸条Bとした。
前記の糸条Aである11dtex、2フィラメントの糸を緯糸に、前記の糸条Bである22dtex、20フィラメントの糸を経糸にそれぞれ用い、生機経密度を180本/2.54cm、生機緯密度を235本/2.54cmに設定し、タフタ組織にてウォータージェット織機で製織した(以下、2.54cmをインチと表記することがある)。
得られた生地を常法に従って、オープンソーパーを用いて精練、ピンテンターを用いて190℃×30秒でプレセットし、液流染色機(日阪製作所製:サーキュラーNS)を用い酸性染料でブルーに染色した後、180℃×30秒で中間セットを行った。その後、カレンダー加工(加工条件:シリンダー加工、温度150℃、圧力2.45MPa(25kgf/cm2)、速度20m/分)を織物の片面に2回施した後、柔軟仕上げ加工を行って、密度が経方向で206本/2.54cm、緯方向で247本/2.54cmであり、カバーファクターが1785で、目付けが33g/m2である織物を得た。緯糸である糸条Aの隣接する糸との間には20μの隙間があるが、カバーファクターは値が819と、従来の織物と大差ない値となっていた。得られた織物について、マルチフィラメントにおけるモノフィラメントの重なり状態、カンチレバーによる風合い、引裂強度、通気度を測定した。その結果を表1に示す。
実施例2
実施例1に記載の紡糸法において、7個の吐出孔(直径:0.30mm、スリット長0.55mm)を備える紡糸口金から溶融紡糸した。2つのゴデットローラのうち、第1ゴデットローラの速度を2400m/分、第2ゴデットローラの速度を3600m/分に設定し延伸した。巻き取り速度を3545m/分にして、11dtex、7フィラメントの糸を得た。この糸を糸条Bとした。糸条Aには、実施例1と同じものを用いた。糸条Aの糸を緯糸に、糸条Bの糸を経糸にそれぞれ用い、織組織を図10のリップ組織とし、カレンダー加工を表面に1回、裏面に1回施した以外は実施例1と同じ方法で織物を得た。緯糸である糸条Aの隣接する糸との間には8μの隙間があるが、緯糸のカバーファクターの値は955と従来の織物と大差なく、高い値となっていた。各種の測定結果を表1に示す。
実施例3
紡糸口金の吐出孔の数を3個にし、実施例1に記載の紡糸法で22dtex、3フィラメントの糸を得た。この糸を糸条Aとした。生機経密度は、180本/インチに設定した。糸条Bとしては、実施例1に記載の経糸と同じ紡糸法で、44dtex、34フィラメントの糸を得た。生機緯密度は、120本/インチに設定した。糸条Aの糸を経糸に、糸条Bの糸を緯糸にそれぞれ用い、実施例1と同じ方法で織物を得た。経糸である糸条Aの隣接する糸の間には9μの隙間があるが、緯糸のカバーファクターの値は862と、従来の織物と大差なく、高い値となっていた。その結果を表1に示す。
実施例4
総繊度が38dtexになるように紡糸時の吐出量を調整し、吐出孔の数を3個にし、実施例1と同じ方法で紡糸して糸条Aを得た。一方、総繊度が56dtexになるように紡糸時の吐出量を調整し、紡糸口金の吐出孔の数を48個にし、実施例1と同じ方法で紡糸し糸条Bを得た。糸条Aを緯糸、糸条Bを経糸としてそれぞれ用い、生機経密度をインチあたり140本に設定し、生機緯密度をインチあたり135本にしたこと以外は実施例1と同じ処方で織物を加工・評価した。その結果を表1に示す。
実施例5
11dtex、2フィラメントの糸に変更した以外は実施例1と同じ方法で糸条Aを得た。糸条Bは、総繊度が22dtexになるように紡糸時の吐出量を調整し、紡糸口金の吐出孔の数を48個にして、実施例1と同じ方法で紡糸した。糸条Aを緯糸、糸条Bを経糸としてそれぞれ用い、生機経密度をインチあたり180本に設定し、生機緯密度をインチあたり235本にしたこと以外は実施例1と同じ処方で加工・評価した。その結果を表1に示す。
比較例1
相対粘度3.5のナイロン6ポリマーチップを紡糸温度288℃で、48個の吐出孔(直径0.15mm、スリット長0.45mm)を備える紡糸口金から溶融紡糸して糸条Bを得た。糸条Bを経糸および緯糸に用い、生機経密度を180本/2.54cm、生機緯密度を190本/2.54cmに設定し、平組織にてウォータージェット織機で製織したこと以外は実施例1と同じ処方で加工した。得られた生地は、織物の厚み方向において、互いに隣接する糸条同士が重なり合っておらず、糸条の空隙比の値が小さく、糸条の織クリンプ係数も小さいものであった。また、織物の通気度が低いために、蒸れ感が強いものであった。その結果を表1に示す。なお、糸条Bの織クリンプ係数については緯糸に用いた糸条にて測定を行った。
比較例2
押し出しの吐出量を22dtex、紡糸口金の吐出孔の数を3個として、3フィラメントにした以外は実施例1と同じ紡糸方法で生産して糸条Aを得た。比較例2の糸条Aを経糸に用いて、また、実施例1の糸条Aを緯糸に用いて、糸条Aのみで経緯密度を実施例1と同じにして平織で製織した。その後、実施例1と同じ処方で加工した。得られた生地は、糸条間の隙間が大きく通気度が高すぎるものであり、その結果、羽毛漏れが多く羽毛漏れ試験に合格しないものであった。その結果を表1に示す。なお、糸条A間の隙間の長さ、および糸条Aの単繊維の空隙比については、経糸に用いた、単糸繊度が大きい方の糸条にて測定を行い、糸条Aの重なり係数については、緯糸に用いた、単糸繊度が小さい方の糸条にて測定を行った。
Figure 0007376436000001
1:織物
10:経糸
20:緯糸
30:糸条
31:糸条の上端
32:糸条の下端
100:従来の織物
100a:従来の織物の裏面
100b:従来の織物の表面
110:従来の織物の経糸
120:従来の織物の緯糸
140:隣り合う糸条同士の重なり
200:羽毛
A:地点A
B:地点B

Claims (4)

  1. 繊度が66dtex以下の長繊維糸条で構成されたダウンプルーフ織物であって、
    通気度は、1.0cc/cm2・sec以上50cc/cm2・sec以下であり、
    経糸および緯糸のいずれか一方の長手方向に垂直な断面において、経糸および緯糸のうち単糸繊度が大きい方の糸条と、該糸条と隣接している糸条との間に1μm以上40μm以下の隙間を有し、
    経糸および緯糸のいずれか一方が有している単糸の繊度は、4dtex以上15dtex以下であり、
    前記経糸および前記緯糸のいずれか他方が有している単糸の繊度は、0.1dtex以上2.5dtex以下であり、
    経糸および緯糸のうち単糸繊度が大きい方の糸条を大糸条とし、経糸および緯糸のうち単糸繊度が小さい方の糸条を小糸条としたとき、
    大糸条の単糸繊度に対する小糸条の単糸繊度の比(小糸条の単糸繊度/大糸条の単糸繊度)は、0.09以上0.5以下であり、
    小糸条の総繊度に対する大糸条の総繊度の比(大糸条の総繊度/小糸条の総繊度)は、0.5以上2.0以下であり、
    表面および裏面の少なくとも一方は、カレンダー加工が施されており、
    EN12132-1に基づくダウン漏れ試験において、EN13186の判定方法に基づく評価がacceptableまたはgoodであることを特徴とする織物。
  2. 経糸および緯糸の少なくとも一方の長手方向に垂直な断面において、
    経糸および緯糸のうち単糸繊度が大きい方の糸条と、該糸条と隣接している糸条とが、下記式(1)を満たし、
    経糸および緯糸のうち単糸繊度が大きい方の糸条と、該糸条と隣接している糸条との間に隙間を有しており、
    前記隙間の両側に配置されている糸条がそれぞれ有する単繊維の最大直径の平均値と、前記隙間の長さとの比は、下記式(2)を満たす請求項1に記載の織物。
    0<L/L≦1 (1)
    (式中、Lは、織物の厚み方向における該糸条の最大厚みを示し、Lは、織物の厚み方向における該糸条と、該糸条と隣接している糸条との重なり部分の厚みの長さを示す。)
    1<W/W≦60 (2)
    (式中、Wは、前記隙間の両側に配置されている糸条がそれぞれ有する単繊維の最大直径の平均値を示し、Wは、前記隙間の長さを示す。)
  3. 経糸および緯糸は、下記式(3)により算出される織クリンプ係数が1.3以上10.0以下である糸条をそれぞれ有している請求項1に記載の織物。
    織クリンプ係数=R/R (3)
    (式中、Rは、織物の厚み方向における前記糸条の屈曲部分での、前記糸条の上端から下端までの高さを示し、Rは、織物の厚み方向における該糸条の屈曲部分での、前記糸条の上端を通る垂線と前記糸条の表面とが接する地点Aから、前記糸条の下端を通る垂線と前記糸条の表面とが接する地点Bまでの高さを示す。)
  4. 請求項1~のいずれか一項に記載の織物を側地に用いたダウン製品。
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