JP4584762B2 - 裏地用織物 - Google Patents

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本発明は、夏物衣料の裏地として用いるのに最適な裏地用織物に関するものである。
衣料の裏地に用いられる織物としては、例えば、100%ポリエステル系繊維からなるもの、あるいはポリエステル系繊維とセルロース系繊維を組み合わせたもの等が知られている(例えば、特許文献1参照)が、手で触った感触に清涼感がなく、夏物衣料に用いると着用感に問題がある。そこで、通気性、滑り性等の物性の他、さらりとした感触で清涼感を備えた夏物衣料用の裏地が強く望まれている。例えば、特許文献2には、熱可塑性合成繊維のフィラメント糸条からなる特殊な仮撚り加工糸を用いると、従来にはないしゃり感の織物を得ることができる旨が記載されており、夏物衣料用裏地への適用が期待されている。
特許第3338029号公報 特開昭59−125929号公報
しかしながら、上記特許文献2の特殊な仮撚り加工糸を経緯に用いた織物は、しゃり感があって清涼感こそ優れているものの、滑らかさに欠けるため、裏地に用いた場合、肌着やシャツ、パンティストッキング等との摩擦が大きく、上着が体にまとわりついたり、スカートがまくれ上がる等のトラブルが生じるおそれがある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、通気性、滑り性等の裏地本来の物性に加え、優れた清涼感を備えた夏物衣料に適した裏地用織物の提供を、その目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明は、夏物衣料の裏地に用いられる織物であって、経糸および緯糸の一方として、ポリエステル系繊維からなる仮撚未解撚糸が用いられ、経糸および緯糸の他方として、ポリエステル系繊維からなる、沸水30分処理後の捲縮率40%以上のサイドバイサイド型捲縮糸が用いられている裏地用織物を第1の要旨とする。
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記仮撚未解撚糸の特性が、伸縮復元率3〜10%、トルク(T/m)10〜50に設定されている裏地用織物を第2の要旨とし、上記サイドバイサイド型捲縮糸の撚数が、300〜1500(T/m)に設定されている裏地用織物を第3の要旨とする。
さらに、本発明は、それらのなかでも、特に、上記サイドバイサイド型捲縮糸が、ビスフェノールA誘導体とイソフタール酸とホモポリエステルとを共重合してなる第1成分と、ホモポリエステルからなる第2成分とを貼り合わせたものである裏地用織物を第4の要旨とする。
なお、本発明において、「伸縮復元率」、「トルク(T/m)」、「沸水30分処理後の捲縮率」とは、それぞれ以下に述べる方法に従って得られる値である。
〔伸縮復元率〕
0.88mN/dtexの荷重をかけ、ラップリールで捲き数10回の小カセを試料より採取する。これを温水処理(沸水20分処理)し、0.018×20mN/dtexの軽荷重と0.88×20mN/dtexの重荷重を加えて温度20℃の水中に浸漬した後、カセ長(L)を測った。そして、重荷重を取り除いて軽荷重のみで2分間放置後のカセ長(L′)を測り、下記の式(1)により算出した。
Figure 0004584762
〔トルク〕
試料80cmを取り、試料中間点に0.044mN/dtexの荷重をつるし、試料を2つ折りにして、その上部をクランプで固定した。そして、回転が停止した時点で撚りが戻らないようにして25cmの検撚機(初荷重0.88mN/dtex)にかけ、下記の式(2)により、トルク(T/m)を算出した。
Figure 0004584762
〔沸水30分処理後の捲縮率〕
検尺機を用いて5回かせ取りした潜在捲縮性サイドバイサイド型複合糸を二重にして0.0015mN/dtexの荷重W1 をかけスタンドに吊り、さらに0.88mN/dtexの荷重W2 をかけて長さ(a)を測定する。そして、上記荷重W1 をかけたまま30分間放置し、ついで、この状態を維持したまま、沸水中に入れて30分間処理する。その後、30分間風乾し、0.018mN/dtexの荷重W3 をかけ、長さ(b)を測定する。つぎに、上記荷重W3 を外した後、0.44mN/dtexの荷重W4 をかけて、その長さ(c)を測定する。さらに、上記荷重W4 を外し、再び0.018mN/dtexの荷重W3 をかけ、その長さ(d)を測定する。そして、以下の式(3)によって、沸水30分処理後の捲縮率を算出する。
Figure 0004584762
すなわち、本発明の裏地用織物は、経糸および緯糸の一方として、ポリエステル系繊維からなる仮撚未解撚糸を用い、経糸および緯糸の他方として、ポリエステル系繊維からなる、沸水30分処理後の捲縮率40%以上のサイドバイサイド型捲縮糸を用いているため、夏物衣料の裏地に最適な、適度なしゃり感による清涼感を備えている。しかも滑り性や通気性、伸度にも優れているため、裏地として使用した場合に、肌や下着にまとわりつくことがなく、良好な着用感を得ることができる。
なお、本発明の裏地用織物のなかでも、特に、上記仮撚未解撚糸の特性が、伸縮復元率3〜10%、トルク(T/m)10〜50に設定されているものを用いると、とりわけ清涼感に優れたものが得られる。
また、同様に、上記サイドバイサイド型捲縮糸の撚数が、300〜1500(T/m)に設定されているものを用いると、とりわけ清涼感に優れたものが得られる。
そして、上記サイドバイサイド型捲縮糸として、ビスフェノールA誘導体とイソフタール酸とホモポリエステルとを共重合してなる第1成分と、ホモポリエステルからなる第2成分とを貼り合わせたものを用いると、上記好適な捲縮特性のものを容易に得ることができる。
つぎに、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
まず、本発明の裏地用織物は、経糸および緯糸の一方として、ポリエステル系繊維からなる仮撚未解撚糸を用いたものでなければならない。
上記ポリエステル系繊維としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテフタレート(PTT)等、繊維形成性を有するポリエステルからなる繊維が用いられる。また、シャンブレ感を得る上で、カチオンポリエステルを用いることが好適である。そして、これらのポリエステルは、100%ホモポリエステルであっても、各種の共重合成分とホモポリエステルとを共重合してなる共重合ポリエステルであってもよい。
そして、上記ポリエステル系繊維は、集束されてマルチフィラメントにされ、さらに仮撚未解撚糸として経糸に用いられる。経糸として用いるときの繊度は、50〜150dtex/12〜150fに設定することが好適である。上記範囲よりも糸が細いと、裏地としての強度が弱くなるおそれがあり、逆に、上記範囲よりも糸が太いと、着用感や表地への追従性が悪くなるおそれがあるからである。
なお、上記「仮撚未解撚糸」とは、糸長方向に加撚時の撚り状態を保持している部分(いわゆる「未解撚部分」)と、解撚作用が集中して形成された解撚と同一方向の撚りとなっている過剰解撚部分とを有している糸である。上記未解撚部分は、単繊維間の一部が融着した高い密度の撚りを有するため、集束性の高い剛直な糸特性を持ち、一方、過剰解撚部分は、過剰な解撚作用を受け、融着していた単繊維は殆ど剥離し、撚り密度は未解撚部分に比べて甘く、やや嵩高な形態となっている。
上記仮撚未解撚糸は、例えば、通常よりも低い延伸倍率(例えば正規倍率の0.5〜0.7倍)で得られた延伸糸を、仮撚機(例えば、村田製作所製、マッハクリンパー33H等)にかけて、加撚と解撚を付与することによって得られる。なお、上記仮撚機において、加撚張力(T1 )と解撚張力(T2 )の割合(T1 /T2 )は、1.0より大きくなるよう設定することが好適であり、なかでも、1.5以上に設定することが特に好適である。すなわち、解撚張力を加撚張力よりも極端に低くすることによって、撚りを解こうとする力を弱くして、解撚後も加撚時の実撚を部分的に残すことができるからである。
また、上記仮撚機において、一次ヒータの温度を220〜240℃に設定し、二次ヒータの温度を180〜200℃に設定することが好適である。すなわち、一次ヒータの温度を上記のように高く設定することにより、糸を部分的に融着させることができ、上記二次ヒータによって、糸のトルクを下げることができる。
そして、上記仮撚機による加撚と解撚の付与により、本発明の仮撚未解撚糸は、伸縮復元率3〜10%、トルク(T/m)10〜50に設定することが好適である。すなわち、伸縮復元率が3%より小さいと、織物にした場合に、融着が強すぎて棒状の糸となり、しゃり感が強くなりすぎるおそれがある。また、伸縮復元率が10%より大きい場合、ウーリー状の捲縮糸となり、しゃり感が不足するおそれがある。また、トルクが10より小さいと、糸のヨロケが少なく、真っ直ぐな糸に近くなり、外観の面白みがなくなるおそれがあり、トルクが50より大きいと、整経時や製織時にビリが発生して糸がからみついてトラブルを招きやすいという問題がある。
一方、本発明の裏地用織物を構成する経糸および緯糸の他方は、ポリエステル系繊維からなるサイドバイサイド型捲縮糸でなければならない。
上記サイドバイサイド型捲縮糸とは、固有粘度の異なる2種類のポリマーを貼り合わせて得られる糸条で、沸水処理等によって生じる2成分の収縮差により、繊維にコイル状等のクリンプを発生させて捲縮糸としたものである。そして、このものの沸水30分処理後の捲縮率は、40%以上でなければならず、なかでも45%以上であることが好適である。すなわち、上記捲縮率が40%未満では、捲縮力が弱く、縮もうとする力が不足することから、無理に縮ませようとすると、得られる織物に大きな凹凸が生じてしまう。また、伸度も低くなるため、裏地としての実用性に乏しいものとなる。
また、本発明に用いるサイドバイサイド型捲縮糸の沸水30分処理後の弾性率は、60%以上に設定することが好適である。すなわち、上記の範囲よりも弾性率が小さいと、織物にした場合に、表地への追従性や着心地が悪くなるおそれがあるからである。なお、上記「弾性率」は、前記〔沸水30分処理後の捲縮率〕と同様の方法によって測定される数値から、下記の式(4)によって算出することができる。
Figure 0004584762
上記サイドバイサイド型捲縮糸を構成する2種類のポリマーとしては、通常、低粘度ポリマーとしてホモポリエステルを用い、高粘度ポリマーとして、ビスフェノールA誘導体、イソフタール酸、スルフォン酸ナトリウム等の共重合成分とホモポリエステルと共重合してなる共重合ポリエステルや、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)等が用いられる。
そして、上記サイドバイサイド型捲縮糸は、生糸の状態で集束されてマルチフィラメントにされ、経糸および緯糸のうち、前記仮撚未解撚糸が用いられる方とは異なる方の糸として用いられる。経糸もしくは緯糸として用いるときの繊度は、30〜100dtex/12〜100fに設定することが好適である。上記範囲よりも糸が細いと、裏地としての強度が弱くなるおそれがあり、逆に、上記範囲よりも糸が太いと、着用感や表地への追従性が悪くなるおそれがあるからである。
そして、上記サイドバイサイド型捲縮糸は、300〜1500(T/m)の実撚を施すことが好適である。すなわち、実撚を入れることによって、糸の締まりをよくしてしゃり感を与えることができる。また、実撚によって、経糸もしくは緯糸として用いる仮撚未解撚糸との摩擦が大きくなり、経方向および緯方向に目よれしにくくなる。そして、撚数が300より小さいと、しゃり感が不足するおそれがあり、撚数が1500より大きいと、しゃり感が強くなりすぎてじゃりじゃりした感じになるおそれがある。
本発明の裏地用織物は、前記仮撚未解撚糸を経糸および緯糸の一方とし、上記サイドバイサイド型捲縮糸を経糸および緯糸の他方として、これらを製織することにより得ることができる。
上記織物の織組織は、特に限定するものではなく、例えば、平織、綾織、朱子織等があげられる。なかでも、薄さ、軽さの点で、平織もしくは綾織が好適である。
そして、本発明の裏地用織物を得るための、経糸・緯糸の打ち込み本数は、通常、経が50〜140本/2.54cm、緯が50〜130本/2.54cmに設定することが好適である。すなわち、経糸・緯糸の打ち込み本数が、上記の範囲から外れると、好ましいしゃり感と滑り性が得られにくくなるからである。
また、本発明の裏地用織物のカバーファクター(CF)は、通気性および軽さの点から、経方向のCF1 が600〜1200、緯方向のCF2 が300〜1000、トータルCFが1000〜2000となるように設定することが好適である。なかでも、経方向のCF1 が700〜1100、緯方向のCF2 が400〜900、トータルCFが1300〜1700となるように設定することが好適である。
なお、上記経方向のCF1 および緯方向のCF2 は、下記の式(5)によって求めることができ、上記トータルCFは、下記の式(6)によって求めることができる。
Figure 0004584762
Figure 0004584762
そして、本発明の裏地用織物は、下記の方法で測定される動擦摩擦係数(μ)が、0.35以下であることが望ましい。すなわち、上記動擦摩擦係数(μ)が0.35を超えると、織物表面の滑り性が悪くなり、着用感が悪くなるおそれがあるからである。
〔動擦摩擦係数(μ)〕
カトーテック社製のKES−SE(商品名)を用いて、摩擦面寸法が1cm×1cmで重量が0.49Nの摩擦子に、カナキン3号精錬上がりの綿布を取り付け、5cm/分の速度で、固定した試料の表面上を滑らせ、そのときの摩擦抵抗力から、下記の式(7)により動擦摩擦係数を求めた。そして、試料(裏地用織物)の経糸方向に滑らせたときの動擦摩擦係数と、緯糸方向に滑らせたときの動擦摩擦係数の平均値を、試料の動擦摩擦係数(μ)とした。
Figure 0004584762
また、本発明の裏地用織物は、下記の方法で測定される伸度(%)が、8〜20であることが望ましく、さらには、10〜20%であることが好ましい。すなわち、上記伸度が、この範囲より小さいと、裏地として用いた場合に伸びにくく、表地への追従性が悪く着用感も悪くなるおそれがあるからである。また、上記伸度が、この範囲より大きいと、伸びすぎて体へのフィット感が得られにくいからである。
〔伸度(%)〕
カトーテック社製のKES−FB1(商品名)を用いて、20cm×20cmの試料を、引張速度0.2mm/秒で、緯方向に伸長したときの、4.9N/cm応力下での伸び(A:cm)より、下記の式(8)にしたがって算出した。
Figure 0004584762
さらに、本発明の裏地用織物は、JIS L1096(フラジール形法)で測定される通気度が、150〜300cc/cm2 /秒であることが望ましい。すなわち、上記通気度が、この範囲より小さいと、通気性が悪く、肌に接した部分が蒸れやすいため、着用感が悪くなるおそれがある。また、上記通気度が、この範囲より大きいと、通気性は良好であるが、織物の経緯に隙間が開きすぎて見栄えが悪くなり、経糸および緯糸がスリップしやすくなったり、織物が薄すぎて引張強度が不足するおそれがあるからである。
このようにして得られる本発明の裏地用織物は、経糸および緯糸の一方として、ポリエステル系繊維からなる仮撚未解撚糸が用いられ、経糸および緯糸の他方として、ポリエステル系繊維からなる、沸水30分処理の捲縮率40%以上のサイドバイサイド型捲縮糸が用いられているため、夏物衣料の裏地に最適な、適度なしゃり感による清涼感を備えている。しかも滑り性や通気性、伸度にも優れているため、裏地として使用した場合に、肌や下着にまとわりつくことがなく、良好な着用感を得ることができる。
つぎに、本発明の実施例と比較例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
経糸用の元糸として、3500m/分の紡速で紡糸したポリエステルPOY(セミダル)であって、128dtex/36fのマルチフィラメントを準備した。この糸を、仮撚機(村田機械社製、マッハクリンパー33H)にかけ、下記の条件で仮撚未解撚糸を得た。
〔仮撚条件〕
糸速 :400m/分
延伸倍率 :1.23
一次ヒータ温度 :230℃
二次ヒータ温度 :190℃
クロスベルト角度 :90℃
加撚張力T1 /解撚張力T2 :1.73
このようにして得られた仮撚未解撚糸は、糸質が、107dtex/36f、伸縮復元率7.5%、トルク(T/m)20であった。
一方、緯糸を得るために、第1成分として、ビスフェノールA誘導体とイソフタール酸とホモポリエステルとを、5:5:90のモル比で共重合させてなる共重合ポリエステル(固有粘度0.686)を準備した。また、第2成分として、ホモポリエステル(固有粘度0.470)を準備した。そして、下記の条件で溶融紡糸することにより、上記異なる2つの成分が1:1の断面積割合で貼り合わされた、サイドバイサイド型フィラメントからなる、56dtex/24fのマルチフィラメントを得た。このものの沸水30分処理後の捲縮率は47%であった。また、沸水30分処理後の弾性率は68%であった。
〔紡糸条件〕
口金温度 :295℃
第1ゴデッドローラ:80℃×1500m/分
第2ゴデッドローラ:150℃×4000m/分
前記仮撚未解撚糸を経糸(無撚)として用いた。また、上記サイドバイサイド型捲縮糸を緯糸とし、S撚:1000T/m、Z撚:1000T/mの撚りを施して、S:Z=2:2の割合で交互に打ち込んで、目的とする裏地用織物を得た。製織条件と仕上形態は、下記のとおりである。
〔製織条件〕
生機幅 :155cm
生機密度 :経74本/2.54cm、緯84本/2.54cm
〔仕上形態〕
仕上幅 :123cm
仕上密度 :経94本/2.54cm、緯90本/2.54cm
減量率 :6%
CF1 :922
CF2 :639
トータルCF:1561
〔実施例2〕
緯糸を構成する第1成分である共重合ポリエステルとして、その共重合成分のモル比を変えることにより、固有粘度0.688のものを得た。そして、沸水30分処理後の捲縮率が40.5%、同じく弾性率が63%のサイドバイサイド型捲縮糸を得た。それ以外は、上記実施例1と同様にして、目的とする裏地用織物を得た。なお、このものは、製織条件は、実施例1と同様であるが、緯方向の収縮力が弱いため、仕上形態は実施例1と異なるものとなった。
〔仕上形態〕
仕上幅 :130cm
仕上密度 :経88本/2.54cm、緯90本/2.54cm
〔比較例1〕
実施例1において経糸として用いた仮撚未解撚糸を経緯(無撚)に用いて、目的とする裏地用織物を得た。製織条件と仕上形態は、下記のとおりである。
〔製織条件〕
生機幅 :128cm
生機密度 :経76本/2.54cm、緯76本/2.54cm
〔仕上形態〕
仕上幅 :123cm
仕上密度 :経80本/2.54cm、緯80本/2.54cm
減量率 :6%
CF1 :785
CF2 :785
トータルCF:1570
〔比較例2〕
経糸として、56dtex/24fのホモポリエステルマルチフィラメント(セミダル、丸断面)を生糸(無撚)のまま用いた。また、緯糸として、84dtex/36fのホモポリエステルマルチフィラメント(セミダル、丸断面)を生糸(無撚)のまま用いた。そして、目的とする裏地用織物を得た。製織条件と仕上形態は、下記のとおりである。
〔製織条件〕
生機幅 :137cm
生機密度 :経103本/2.54cm、緯79本/2.54cm
〔仕上形態〕
仕上幅 :123cm
仕上密度 :経114本/2.54cm、緯84本/2.54cm
減量率 :10%
CF1 :809
CF2 :730
トータルCF:1539
これらの実施例品、比較例品について、織物の表面における動摩擦係数、通気度、伸度を、前記の方法にしたがって測定した。また、清涼感、手触り、着用感について、下記のとおり評価した。これらの結果を、後記の表1にまとめて示す。
〔清涼感〕
裏地用織物を、実際に女性用の夏用スカートの裏地として用い、女性モニター5名に着用させた。そして、室温25℃に設定された室内で3時間、事務作業に従事させ、スカート裏地に清涼感を感じたか否かを回答させた。3名以上のモニターが「感じた」と答えた場合を○、2名以下のモニターが「感じた」と答えた場合を△、だれも感じなかった場合を×として評価した。
〔手触り〕
上記と同様の条件において、スカート裏地の手触りを良好と感じたか否かを回答させた。3名以上のモニターが「感じた」と答えた場合を○、2名以下のモニターが「感じた」と答えた場合を△、だれも感じなかった場合を×として評価した。
〔着用感〕
上記と同様の条件において、スカートの着用感を良好と感じたか否かを回答させた。3名以上のモニターが「感じた」と答えた場合を○、2名以下のモニターが「感じた」と答えた場合を△、だれも感じなかった場合を×として評価した。
Figure 0004584762
上記の結果から、実施例品は、いずれの項目も概ね良好な結果が得られているのに対し、比較例品は、好ましくない項目が複数あり、夏物衣料の裏地として用いるには不適であることがわかる。
〔比較例3〕
第1成分として固有粘度0.686のホモポリエステルを準備し、第2成分として固有粘度0.686のホモポリエステルを準備した。そして、実施例1と同様の紡糸条件で紡糸し、1:1の断面積割合で貼り合わせたサイドバイサイド型フィラメントからなる、56dtex/24fのマルチフィラメントを得た。このものの特性は、沸水30分処理後の捲縮率が38%、同じく沸水30分処理後の弾性率が59%であった。
この糸を緯糸として用いる他は、実施例1と同様にして、目的とする裏地用織物を得た。このものは、ソフサーを用いたリラックス工程における緯方向の縮みが悪く、織物表面にシボ状の大きな凹凸が発生した。また、液流染色機を用いた染色工程においても、上記大きな凹凸は消えず、裏地としての商品価値に乏しいものであった。

Claims (4)

  1. 夏物衣料の裏地に用いられる織物であって、経糸および緯糸の一方として、ポリエステル系繊維からなる仮撚未解撚糸が用いられ、経糸および緯糸の他方として、ポリエステル系繊維からなる、沸水30分処理後の捲縮率40%以上のサイドバイサイド型捲縮糸が用いられていることを特徴とする裏地用織物。
  2. 上記仮撚未解撚糸の特性が、伸縮復元率3〜10%、トルク(T/m)10〜50に設定されている請求項1記載の裏地用織物。
  3. 上記サイドバイサイド型捲縮糸の撚数が、300〜1500(T/m)に設定されている請求項1または2記載の裏地用織物。
  4. 上記サイドバイサイド型捲縮糸が、ビスフェノールA誘導体とイソフタール酸とホモポリエステルとを共重合してなる第1成分と、ホモポリエステルからなる第2成分とを貼り合わせたものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の裏地用織物。
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