JP6596006B2 - 注型用エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、耐熱衝撃性に優れた電子機器等の絶縁処理に好適な注型用エポキシ樹脂組成物、及びそれから得られる硬化物に関する。
従来、注型用エポキシ樹脂組成物は、電気・電子機器に組み込まれるコイル、モーター、固体絶縁開閉装置の電気導体などを絶縁保護するために使用されている。注型用エポキシ樹脂組成物は、一般的に、エポキシ樹脂、硬化剤とシリカからなる。シリカを配合することで、エポキシ樹脂組成物の熱膨張係数が低くなる。また、シリカを配合した場合、エポキシ樹脂組成物の熱膨張係数と絶縁保護する金属部品の熱膨張係数の差が小さくなる。それにより、金属部品とエポキシ樹脂組成物の間で生じる応力が小さくなり、クラックが発生しにくくなる。
近年、注型品の高電圧化、小型化や軽量化のための薄化などの理由で、注型用エポキシ樹脂組成物には、耐熱性に加え、耐熱衝撃性が要求される。耐熱衝撃性は、耐衝撃性と必ずしも関係していない。そのため、その改良は容易ではなく、様々な試みが行われている。例えば特許文献1には、シリカ充填エポキシ樹脂に分子量1000以下のポリエーテルポリオールを用いて内部応力を緩和させることが記載されている。しかしながら、この方法では、十分な耐熱衝撃性を得ることができない。特許文献2には、多量のシリカおよび分子量1000のポリプロピレングリコールと共に、末端カルボン酸を有するブタジエン・アクリロニトリル液状ゴム(CTBN)を用いることが記載されている。しかしながら、この方法では、ある程度改善された耐熱衝撃性を得ることができるが、未だ不十分であり、さらには、耐熱性を大きく損なってしまう。特許文献3には、エポキシ樹脂とコアシェルポリマーの配合物にポリオールを用いることができることが記載されている。しかしながら、ポリオールは硬化剤と同列に挙げられているだけであり、その使用目的や効果が記述されていない。実際、特許文献3に基づいて配合物を調製しても、耐熱衝撃性に優れた組成物を作ることは難しい。
特開平2−117914号公報 特開平11−279262号公報 特開平6−157715号公報
特に本発明者の検討によると、埋め込む金属の形状が複雑になるとシリカ粉末含有液状エポキシ樹脂では、ポリエーテルポリオールやコアシェルポリマーをそれぞれ別々に添加しても、無添加時に比べて、耐熱衝撃性は殆ど向上しないことが分かっている。
本発明の目的は、耐熱性および改善された耐熱衝撃性を有する注型用エポキシ樹脂組成物を提供することである。また、本発明は、当該組成物を硬化して得られる硬化物を提供することも課題とする。
本発明者は、このような問題を解決するため鋭意検討した結果、シリカ粉末(A)、液状エポキシ樹脂(B)、ポリエーテルポリオール(C)、液状酸無水物(D)、硬化促進剤(E)およびコアシェルポリマー(F)を含む注型用エポキシ樹脂組成物が、前記課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、シリカ粉末(A)、液状エポキシ樹脂(B)、ポリエーテルポリオール(C)、液状酸無水物(D)、硬化促進剤(E)およびコアシェルポリマー(F)を含む注型用エポキシ樹脂組成物に関する。
ポリエーテルポリオール(C)の含有量が、液状エポキシ樹脂(B)100重量部に対して10〜30重量部であることが好ましい。
ポリエーテルポリオール(C)がポリオキシアルキレンジオールであることが好ましい。
ポリエーテルポリオール(C)がポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールから選ばれることが好ましい。
ポリエーテルポリオール(C)がポリプロピレングリコールであることが好ましい。
ポリエーテルポリオール(C)が、平均分子量400以上5000以下であることが好ましい。
ポリエーテルポリオール(C)として、平均分子量400以上2500未満のポリエーテルポリオール(C1)および平均分子量2500以上5000以下のポリエーテルポリオール(C2)を含むことが好ましい。
ポリエーテルポリオール(C1)とポリエーテルポリオール(C2)の合計100重量%に対し、ポリエーテルポリオール(C2)が50〜90重量%であることが好ましい。
コアシェルポリマー(F)中のコア層の比率が80〜95重量%であり、かつ該コアシェルポリマーのメチルエチルケトン不溶分量が95重量%以上であることが好ましい。
コアシェルポリマー(F)中のコア層が、ジエン系ゴム、シロキサン系ゴム、及び(メタ)アクリレート系ゴムからなる群より選択されることが好ましい。
コアシェルポリマー(F)が一次分散していることが好ましい。
シリカ粉末(A)が注型用エポキシ樹脂組成物に占める割合は、40〜85重量%((A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)=100重量%)が好ましい。
コアシェルポリマー(F)が注型用エポキシ樹脂組成物に占める割合は、0.3〜10重量%((A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)=100重量%)が好ましい。
また、本発明には、前記注型用エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物も含まれる。
前記注型用エポキシ樹脂組成物の硬化物で保護されたコイル及び前記コイルを組み込んだ電気・電子機器は本発明の態様に包含される。本発明の別の態様には、前記注型用エポキシ樹脂組成物の硬化物を電気絶縁部材として使用した固体絶縁開閉装置も含まれる。
本発明の注型用エポキシ樹脂組成物から得られる硬化物は、耐熱性および改善された耐熱衝撃性を有する。
本発明の注型用エポキシ樹脂組成物は、シリカ粉末(A)、液状エポキシ樹脂(B)、ポリエーテルポリオール(C)、液状酸無水物(D)、硬化促進剤(E)およびコアシェルポリマー(F)を含む注型用エポキシ樹脂組成物である。ポリエーテルポリオールは、注型用途では古くから適用されているが、その主目的は、組成物の粘度を下げることであり、実際、耐熱衝撃性の改善にはほとんど効果が見られない。また、コアシェルポリマーは、耐熱衝撃性の改善のため、古くから適用されているものの、コアシェルポリマーだけに依存して、さらなる耐熱衝撃性の改善は難しく、実際、シリカ粉末(A)と液状エポキシ樹脂(B)にコアシェルポリマーだけを添加しても、耐熱衝撃性の改善効果は乏しい。
本発明の驚くべき点は、ポリオールの中からポリエーテルポリオールを選択し、これとコアシェルポリマーとを組み合わせると、それぞれの単独添加では乏しかった耐熱衝撃性の改善効果が著しく高められることである。好ましくは特定分子量領域のポリエーテルポリオールを1種以上、より好ましくは特定分子量領域であって互いに分子量が異なるポリエーテルポリオールの2種を適当な割合で使用し、かつコアシェルポリマーを同時に使用すると、全く予想外に、耐熱衝撃性が相乗的に向上し、かつ耐熱性も大きく損なわれないことである。以下、本発明の注型用エポキシ樹脂組成物について詳述する。

<シリカ粉末(A)>
本発明のシリカ粉末(A)は、前記注型用エポキシ樹脂組成物の熱膨張係数を下げるために、また、強靭性を向上させるために使用される。
本発明のシリカ粉末(A)の配合量としては、(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)=100重量%として、40〜85重量%が好ましい。また、注型での成形性の観点から、40〜80重量%がより好ましく、50〜75重量%がさらに好ましく、60〜70重量%が特に好ましい。(A)の配合量が多いと、エポキシ樹脂組成物が高粘度となり、注型が難しくなる。また、(A)の配合量が少ないと、耐熱衝撃性が悪くなる。

本発明のシリカ粉末(A)の重量平均粒子径(メジアン径D50)としては、3〜50μmが好ましく、5〜40μmがより好ましく、5〜30μmが特に好ましい。3μmより小さくなると、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなり、注型が難しくなる。また、50μmより大きくなると、シリカ粉末(A)のエポキシ樹脂組成物中での分散安定性が悪くなる。また、異なる粒子径のシリカを2種以上混合して使用してもよい。前記粒子径は、レーザー回折・散乱方式の粒子径・粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製のマイクロトラックMT3000シリーズ)や走査型電子顕微鏡などを用いて得ることができる。
前記シリカ粉末(A)としては、球状溶融シリカ、溶融破砕シリカ、結晶性シリカが例示される。エポキシ樹脂組成物の粘度および強靭化の観点から、結晶性シリカが好ましい。球状溶融シリカとしては電気化学株式会社製のFB−5D、FB−12D、FB−20D、溶融破砕シリカとしては株式会社龍森製のヒューズレックスシリーズ、結晶性シリカとしては株式会社龍森製のクリスタライトシリーズやシベルコエヌヴィ製(SIBELCO N.V.)のミリシル(MILLISIL)シリーズといった市販品が例示される。
前記シリカ粉末(A)を使用前に100〜150℃で乾燥させることが、前記注型エポキシ樹脂組成物の硬化物中での気泡を少なくできる点で好ましい。

<液状エポキシ樹脂(B)>
本発明の液状エポキシ樹脂(B)としては、分子内に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば、任意のものを使用することができる。例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;3,4−エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル等の環状脂肪族型エポキシ樹脂;1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等の直鎖脂肪族型エポキシ樹脂;ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂のような液状エポキシ樹脂を使用することができる。好ましい液状エポキシ樹脂(B)は、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂である。
これら液状エポキシ樹脂(B)に加えて、ポリジメチルシロキサンの末端あるいは側鎖にエポキシ基を有するポリシロキサン型エポキシ樹脂あるいは、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルグリシジルエーテルメタン樹脂、テトラフェニルグリシジルエーテルメタン樹脂;ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂等の固体あるいは半固体の多官能エポキシ樹脂を使用することができる。
前記液状エポキシ樹脂及び固体あるいは半固体の多官能エポキシ樹脂は、単独で又は組み合わせて用いることができるが、注入作業性の点から、注入材料が液状を示すように組み合わせる。例えば、液状のビスフェノールAジグリシジルエーテルと固体のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂とを混合する場合には、多官能エポキシ樹脂の割合が30重量%以上となると、注型材料の粘度が高くなり作業性が低下するので、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂は30重量%未満とした方がよい。すなわち液状エポキシ樹脂(B)の量は、液状エポキシ樹脂(B)と固体あるいは半固体の多官能エポキシ樹脂との合計100重量%に対して、例えば、70〜100重量%、好ましくは80〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%であり、特に好ましくは100重量%である。
また、液状エポキシ樹脂(B)に、分子内に1つのエポキシ基を有する反応性希釈剤を添加してもよい。また、必要であれば分子内に1つ以上のエポキシ基以外の反応性基、例えば、水酸基やカルボン酸基を有する反応性希釈剤を使用してもよい。反応性希釈剤は、前記注型用エポキシ樹脂組成物の粘度を下げる効果をもつ。反応性希釈剤は、上記エポキシ樹脂100重量部に対して45重量部まで使用するのが好ましい。反応性希釈剤をあまりにも多く使用すると、硬化物の耐熱性が低くなる。
前記分子内に1つのエポキシ基を有する反応性希釈剤としては、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテルなどの炭素数8〜14のアルキルグリシジルエーテルなどのアルキルモノグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテルなどのフェノールモノグリシジルエーテルなどを挙げることができる。これらは2種以上組み合わせて使用してもよい。
前記分子内に1つ以上の水酸基あるいはカルボン酸基を有する反応性希釈剤の具体例としては、カルボン酸基あるいは水酸基を有するシリコーンオイルなどを挙げることができる。これらは2種以上組み合わせて使用してもよい。また、これらは後述する液状酸無水物と混合してから使用してもよい。
液状エポキシ樹脂(B)の含有量は、組成物100重量%中、好ましくは10重量%以上50重量%未満、より好ましくは12重量%以上40重量%以下、さらに好ましくは15重量%以上30重量%以下である。

<ポリエーテルポリオール(C)>
前記ポリエーテルポリオール(C)は、ポリプロピレングリコールやポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコールのように主鎖に複数のエーテル結合を有し、かつ末端に水酸基を有する化合物である。ポリエーテルポリオール(C)は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA等のジオール類;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等のトリオール類;ジグリセリン、ペンタエリスリトール等のテトラオール;単糖、オリゴ糖、多糖等の糖類;ソルビトール;アンモニア、エチレンジアミン、尿素、モノメチルジエタノールアミン、モノエチルジエタノールアミン等のアミン類;などの1種又は2種以上の活性水素を含有する開始剤の存在下、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等を開環重合して得られる化合物である。また、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどの重縮合により合成される重縮合体であってもよい。なお、合成時に複数の種類の成分を用いることで得られる、ランダムまたはブロック共重合体であってもよい。
ポリエーテルポリオール(C)としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールのようなポリオキシアルキレンジオールが好ましく;3官能以上のアルコール(例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等のトリオール類;ジグリセリン、ペンタエリスリトール等のテトラオールなど)の各ヒドロキシ基に前記ポリオキシアルキレンジオールの片端がエーテル結合によって結合し、他端がヒドロキシ基のまま存在している3官能以上の化合物(例えば、ポリオキシプロピレングリセリルエーテルなど)、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレントリオール、およびポリオキシ(プロピレン・エチレン)共重合型トリオールのようなポリオキシアルキレントリオールなども好ましい。
好ましいポリエーテルポリオール(C)は、ポリオキシアルキレン単位を有するポリオールであり、耐熱衝撃性の観点から、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレンジオールがより好ましい。耐熱衝撃性および低粘度で取り扱いの観点から、ポリプロピレングリコールが特に好ましい。
本発明のポリエーテルポリオール(C)の平均分子量は、GPCにおけるポリスチレン換算によって求められる数平均分子量である。耐熱衝撃性および取り扱い易さから、平均分子量は400以上5000以下が好ましく、1000以上4000以下がより好ましい。
さらには、本発明のポリエーテルポリオール(C)としては、前記平均分子量を満足するもののなかから1種又は2種以上を組み合わせて使用するのが好ましく、より好ましくは平均分子量400以上2500未満のポリエーテルポリオール(C1)および平均分子量2500以上5000以下のポリエーテルポリオール(C2)から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましく、前記ポリエーテルポリオール(C1)とポリエーテルポリオール(C2)とを組み合わせることがより好ましい。ポリエーテルポリオール(C1)の平均分子量は、400以上2000以下であることが好ましく、800以上2000以下であることがより好ましく、1000以上2000以下であることが特に好ましい。ポリエーテルポリオール(C2)の平均分子量は、2500以上4500以下であることが好ましく、3000以上4000以下であることがより好ましい。
ポリエーテルポリオール(C1)とポリエーテルポリオール(C2)とを組み合わせる場合、前記C1とC2の重量比(C1/C2)としては、C1とC2の合計100重量%に対し、耐熱衝撃性の観点から、C2が20〜90重量%であることが好ましく、50〜90重量%であることがより好ましく、60〜85重量%であることがさらに好ましい。
ポリエーテルポリオール(C1)、ポリエーテルポリオール(C2)などのポリエーテルポリオール(C)は、組成物中に前記重量比で存在すればよく、組成物中への導入法は限定されない。ポリエーテルポリオール(C1)とポリエーテルポリオール(C2)とを組み合わせる場合は、ポリエーテルポリオール(C1)とポリエーテルポリオール(C2)とを予め混合しておいてもよいし、他の成分と順次混合してもよい。
ポリエーテルポリオール(C)の含有量(使用量)は、耐熱衝撃性の観点から、液状エポキシ樹脂(B)100重量部に対して、5〜40重量部が好ましく、10〜30重量部がより好ましく、10〜25重量部がさらに好ましい。含有量が少ないと耐熱衝撃性を十分発揮できない虞があり、含有量が多いと耐熱性が低下する虞がある。

<液状酸無水物(D)>
本発明の液状酸無水物(D)は、前記液状エポキシ樹脂(B)の硬化剤として使用される。液状酸無水物(D)としては、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、クロレンディック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロフタル酸無水物、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、トリアルキルテトラヒドロフタル酸無水物−マレイン酸無水物付加物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物が例示される。その中で、エポキシ樹脂組成物の耐熱性が高いという観点から、メチルナジック酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物あるいはメチルヘキサヒドロフタル酸無水物が好ましく、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物がより好ましい。これらは、単独で又は組み合わせて用いることができる。
室温で固体状酸無水物は、液状酸無水物と混合することで、液状にして使用することができる。
前記液状酸無水物(D)の配合量としては、前記液状エポキシ樹脂(B)100重量部に対する配合量(重量部)は、式:[酸無水物(D)の配合量(重量部)]=(酸無水物(D)の分子量/酸無水物(D)1分子中の酸無水物基の数)×(酸無水物(D)の酸無水物基の数/エポキシ樹脂(B)のエポキシ基の数)×(100/エポキシ樹脂(B)のエポキシ当量)で表わされる。
液状酸無水物の配合量は、酸無水物(D)の酸無水物基の数とエポキシ樹脂(B)のエポキシ基の数との比(酸無水物基の数/エポキシ基の数)が以下の範囲を満たす限り、特に限定されない。
本発明においては、酸無水物(D)の酸無水物基の数とエポキシ樹脂(B)のエポキシ基の数との比(酸無水物基の数/エポキシ基の数)の値が、あまりにも大きい場合には、注型用エポキシ樹脂組成物から得られた硬化物の機械的特性が低下することから、例えば1.5以下、好ましくは1.2以下となるように調整し、またあまりにも小さい場合にも、注型用エポキシ樹脂組成物から得られた硬化物の機械的特性が低下するので、例えば0.5以上、好ましくは0.7以上となるように調整する。最も好ましくは0.8〜1.0である。

<硬化促進剤(E)>
本発明の硬化促進剤(E)としては、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の3級アミン、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、亜リン酸トリフェニル等の有機リン系化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ−p−トリルボレート、テトラフェニルホスフィンブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラn−ブチルホスホニウムo,o−ジエチルホスホロジチオネート等の4級ホスホニウム塩、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7やその有機酸塩類等のジアザビシクロアルケン類、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫やアルミニウムアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物類、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩類、三フッ化ホウ素、トリフェニルボレート等のホウ素化合物、塩化亜鉛、塩化第二錫等の金属ハロゲン化合物が挙げられる。更には、高融点イミダゾール化合物、ジシアンジアミド、リン系、ホスフィン系促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性促進剤、アミン塩型潜在性硬化促進剤、ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型熱カチオン重合型の潜在性硬化促進剤等に代表される潜在性硬化促進剤も使用することができる。これらの硬化促進剤(E)は単独又は2種類以上を混合して使用することができる。
これらの硬化促進剤の中では、それ自体が無色透明であることやエポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性の観点から、イミダゾール類、4級ホスホニウム塩類、ジアザビシクロアルケン類、有機金属化合物類、4級アンモニウム塩が好ましく、イミダゾール類、4級ホスホニウム塩類がより好ましく、2−エチル−4−メチルイミダゾール、テトラn−ブチルホスホニウムo,o−ジエチルホスホロジチオネ−トがさらに好ましい。
前記硬化促進剤(E)の配合量としては、硬化工程における発熱と硬化速度のバランスの観点から、前記液状酸無水物(D)100重量部に対して、0.05〜4重量部が好ましく、0.1〜2重量部がより好ましい。

<コアシェルポリマー(F)>
本発明のコアシェルポリマー(F)は、前記注型エポキシ樹脂組成物の硬化物を強靭化(タフニング)し、破壊靭性や耐熱衝撃性などを改良するために用いられ、弾性ポリマーのコア層をポリマーシェル層で被覆した粒状物である。
本発明のコアシェルポリマーは、少なくとも2層の構造からなる粒子状ポリマーである。
すなわち、前記コアシェルポリマー(F)は、架橋ポリマーを含むコア層と、これにグラフト重合されたポリマー成分からなるシェル層より構成されるポリマーであることが好ましい。シェル層は、グラフト成分を構成するモノマーをコア成分にグラフト重合することでコア部の表面の一部もしくは全体を覆うことができる。
前記コア層は、エポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱衝撃性を高める為に、ゴム状の架橋ポリマーであることが好ましい。コア層が、ゴム状の性質を有するためには、コア層のガラス転移温度(以下、単に「Tg」と称する場合がある)は、0℃以下であることが好ましく、−20℃以下がより好ましく、−40℃以下であることが特に好ましい。前記Tgは、動的粘弾性測定法や示差走査熱量分析法により測定できる。
ゴムとしての性質を有する前記コア層を形成し得るポリマーとしては、天然ゴムや、ジエン系モノマー(共役ジエン系モノマー)および(メタ)アクリレート系モノマーから選ばれる少なくとも1種のモノマー(第1モノマー)を50〜100重量%、および他の共重合可能なビニル系モノマー(第2モノマー)を0〜50重量%含んで構成されるゴムポリマーや、ポリシロキサンゴム、あるいはこれらを併用したものが挙げられる。得られる硬化物の強靭化効果が高い点、およびマトリックス樹脂との親和性が低い為にコア層の膨潤による経時での粘度上昇が起こり難い点から、ジエン系モノマーを用いたジエン系ゴムが好ましい。多種のモノマーの組合せにより、幅広いポリマー設計が可能なことから、(メタ)アクリレート系ゴム(アクリルゴムともいう)が好ましい。また、硬化物の耐熱性を低下させることなく、低温での耐クラック性や耐衝撃性などを向上しようとする場合には、コア層はシロキサン系ゴム(ポリシロキサンゴム)であることが好ましい。なお、本発明において(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
前記コア層の形成に用いるジエン系ゴムを構成するモノマー(共役ジエン系モノマー)としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンなどが挙げられる。これらのジエン系モノマーは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
強靭化効果が高い点、およびマトリックス樹脂との親和性が低い為にコア層の膨潤による経時での粘度上昇が起こり難い点から、1,3−ブタジエンを用いるブタジエンゴム、1,3−ブタジエンとスチレンの共重合体であるブタジエン−スチレンゴム、1,3−ブタジエンとブチルアクリレートあるいは2−エチルヘキシルアクリレートの共重合体であるブタジエン−アクリレートゴムが好ましく、ブタジエンゴムがより好ましい。また、ブタジエン−スチレンゴムは、屈折率の調整により得られる硬化物の透明性を高めることができ、良好な外観および耐衝撃性のバランスに優れたものを得る場合には、より好ましい。また、ブタジエン−アクリレートゴムは、アクリレートの導入により、ブタジエンの二重結合のゴム中の濃度が低くなるため、耐候性や耐熱性が良好になり、そのような特性が必要な場合は、好ましい。
また、前記コア層の形成に用いるアクリルゴムを構成するモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜22のアルキル(メタ)アクリレート類;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの炭素数6〜20の芳香環含有(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜20のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアルキル(メタ)アクリレートなどのグリシジル(メタ)アクリレート類;アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;アリル(メタ)アクリレート、アリルアルキル(メタ)アクリレートなどのアリルアルキル(メタ)アクリレート類;モノエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレート類などが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート系モノマーは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは炭素数1〜20のアルキル(メタ)アクリレート類、アリル(メタ)アクリレート類であり、より好ましくはエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートである。
上記第1モノマーと共重合可能なビニル系モノマー(第2モノマー)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレンなどのビニルアレーン類;アクリル酸、メタクリル酸などのビニルカルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのビニルシアン類;塩化ビニル、臭化ビニル、クロロプレンなどのハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのアルケン類;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼンなどの多官能性モノマーなどが挙げられる。これらのビニル系モノマーは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に好ましくはスチレンである。
また、前記コア層を構成し得るポリシロキサンゴムとしては、例えば、ジメチルシロキサン、ジエチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、ジフェニルシロキサン、ジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサンなどの、アルキル或いはアリール2置換シリルオキシ単位から構成されるポリシロキサン系ポリマーや、側鎖のアルキルの一部が水素原子に置換されたオルガノハイドロジェンシロキサンなどの、アルキル或いはアリール1置換シロキサン単位から構成されるポリシロキサン系ポリマーが挙げられる。これらのポリシロキサン系ポリマーは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらには、(メタ)アクリレート系ゴムと組み合わせた、(メタ)アクリレート系ゴム/ポリシロキサンゴムからなる複合ゴムを用いてもよい。中でも、ジメチルシロキサンゴム、メチルフェニルシロキサンゴム、ジメチルシロキサン/ブチルアクリレート複合ゴムが硬化物に耐熱性を付与する上で好ましく、ジメチルシロキサンゴムおよびジメチルシロキサン/ブチルアクリレート複合ゴムが容易に入手できて経済的でもあることから最も好ましい。

前記コア層がポリシロキサンゴムから形成される態様において、ポリシロキサン系ポリマー部位は、硬化物の耐熱性を損なわないために、コア層全体を100重量%として少なくとも10重量%以上含有していることが好ましい。
コアシェルポリマー(F)の注型用エポキシ樹脂組成物中での分散安定性を保持する観点から、コア層は、上記モノマーを重合してなるポリマー成分やポリシロキサン系ポリマー成分に架橋構造が導入されていることが好ましい。架橋構造の導入方法としては、一般的に用いられる手法を採用することができる。例えば、上記モノマーを重合してなるポリマー成分に架橋構造を導入する方法としては、ポリマー成分を構成するモノマーに多官能性モノマーやメルカプト基含有化合物等の架橋性モノマーを添加し、次いで重合する方法などが挙げられる。また、ポリシロキサン系ポリマーに架橋構造を導入する方法としては、重合時に多官能性のアルコキシシラン化合物を一部併用する方法や、ビニル反応性基、メルカプト基、メタクリロイル基などの反応性基をポリシロキサン系ポリマーに導入し、その後ビニル重合性のモノマーあるいは有機過酸化物などを添加してラジカル反応させる方法、あるいは、ポリシロキサン系ポリマーに多官能性モノマーやメルカプト基含有化合物などの架橋性モノマーを添加し、次いで重合する方法などが挙げられる。
前記多官能性モノマーとしては、ブタジエンは含まれず、アリル(メタ)アクリレート、アリルアルキル(メタ)アクリレート等のアリルアルキル(メタ)アクリレート類;アリルオキシアルキル(メタ)アクリレート類;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレート類;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。特に好ましくはアリルメタアクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、及びジビニルベンゼンである。
本発明において、コア層は単層構造であることが多いが、多層構造であってもよい。また、コア層が多層構造の場合は、各層のポリマー組成が各々相違していてもよい。
コアシェルポリマーにおける、コア層の比率としては、エポキシ樹脂組成物の粘度の観点から、80〜95重量%が好ましく、82〜93重量%がより好ましい。コア層の比率が小さいと、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなり、取り扱い性が悪くなる。コア成分量があまりにも多い場合、コアシェルポリマーの調製が難しくなる(合成自体は、可能であるが、反応液から実用的な形態で取り出すことが難しくなる)。なお、コアシェルポリマー中のコア層の比率は、赤外分光分析のスペクトルの吸光度比から測定できる。
また、コアシェルポリマー(F)のメチルエチルケトン(MEK)不溶分量は、93重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましく、97重量%以上がさらに好ましく、98重量%以上がさらにより好ましい。93重量%未満の場合には、エポキシ樹脂組成物の粘度が上昇する傾向がある。
コアシェルポリマー(F)のMEK不溶分量の算出方法としては、先ず、コアシェルポリマー(F)を含有する水性ラテックスを凝固・脱水し、最後に乾燥してポリマー微粒子のパウダーあるいはフィルムを得る。次いで、得られたコアシェルポリマー約2gを秤量してメチルエチルケトン(MEK)100gに23℃で24時間浸漬する。その後、得られたMEK不溶分を分離し、乾燥して重量を計り、測定に使用したコアシェルポリマーの重量に対する重量分率(%)をMEK不溶分量として算出する。
コアシェルポリマー(F)の最も外側に存在するシェル層、すなわちシェルポリマーは、本発明に係る、コアシェルポリマー(F)と液状エポキシ樹脂(B)との相溶性を制御する。本発明では、注型用エポキシ樹脂組成物の硬化物中においてコアシェルポリマーを効果的に分散させる役割をする。
このようなシェルポリマーは、好ましくは前記コア層にグラフトしている。より正確には、シェルポリマーの形成に用いるモノマー成分が、コア層を形成するコアポリマーにグラフト重合して、実質的にシェルポリマーとコアポリマーとが化学結合していることが好ましい。
即ち、好ましくは、シェルポリマーは、コアポリマーの存在下に前記シェル形成用モノマーをグラフト重合させることで形成され、このようにすることで、このコアポリマーにグラフト重合されており、コアポリマーの一部又は全体を覆っている。この重合操作は、水性のポリマーラテックス状態で調製され存在するコアポリマーのラテックスに対して、シェルポリマーの構成成分であるモノマーを加えて重合させることで実施できる。
シェル層形成用モノマーとしては、コアシェルポリマーの注型用エポキシ樹脂組成物中での相溶性及び分散性の点から、例えば、後述する通り、芳香族ビニルモノマー、ビニルシアンモノマー、アルキル(メタ)アクリレートモノマー、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等が好ましい。
硬化物中でコアシェルポリマーの分散状態をコントロールするために、シェル層形成用モノマーとして、エポキシ基、オキセタン基、水酸基、アミノ基、イミド基、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、環状エステル、環状アミド、ベンズオキサジン基、及びシアン酸エステル基からなる群から選ばれる1種以上を含有する反応性基含有モノマーを含有させてもよい。この場合、エポキシ基を有するモノマーが好ましい。反応性基含有モノマーは、前記液状エポキシ樹脂(B)と前記液状酸無水物(D)との反応に参加して化学結合を形成させるので、分散状態の変動を抑えることができる。
前記エポキシ基を有するモノマーは、シェル形成用モノマー100重量%中に、10重量%以下含まれていることが好ましく、さらに5重量%以下がより好ましい。エポキシ基を有するモノマーがシェル形成用モノマー中の10重量%より多い場合、注型用エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性が悪くなり好ましくない。したがって、高度に貯蔵安定性を高める必要がある場合、エポキシ基を有するモノマーを使用しないことが好ましい。
また、シェル層形成用モノマーとして、二重結合を2個以上有する多官能性モノマーを使用すると、シェル層に架橋構造が導入される。このため、注型用エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂成分などがコアシェルポリマーに膨潤するのを防止し、また、注型用エポキシ樹脂組成物の粘度が低く取扱い性がよくなる傾向があることから、二重結合を2個以上有する多官能性モノマーの使用が好ましい場合がある。一方、得られる硬化物の強靱化(タフネス)改良効果を最大化するには、シェル層形成用モノマーとして、二重結合を2個以上有する多官能性モノマーを使用しないことが好ましい。
前記二重結合を2個以上有する多官能性モノマーの具体例としては、上述の多官能性モノマーと同じモノマーが例示されるが、好ましくはアリルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレートである。
多官能性モノマーは、使用する場合、シェル形成用モノマー100重量%中に、0.5〜10重量%含まれていることが好ましく、より好ましくは1〜5重量%である。
前記芳香族ビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
前記ビニルシアンモノマーの具体例としては、アクリロニトリル、又はメタクリロニトリル等が挙げられる。
前記アルキル(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記エポキシ基を有するモノマーの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。特に、グリシジルメタクリレートが安定性およびその反応性から好ましい。
本発明では、例えば、スチレン0〜50重量%(好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜50重量%)、メチルメタクリレート0〜100重量%(好ましくは50〜99重量%、より好ましくは70〜95重量%)、グリシジルメタクリレート0〜10重量%(好ましくは1〜10重量%、より好ましくは3〜10重量%)を組み合わせて100重量%にしたシェル形成用モノマーのポリマーであるシェル層とすることが好ましい。これにより、所望の強靭化効果と機械特性をバランス良く実現することができる。特に、メチルメタクリレートを主要な構成成分として含ませることで、前記エポキシ樹脂(B)と前記酸無水物(D)との反応により得られる硬化物との親和性が適度になり好ましい。
これらのモノマー成分は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シェル層は、上記モノマー成分の他に、他のモノマー成分を含んで形成されてもよい。
コアシェルポリマー(F)における、シェル層の割合は、コアシェルポリマー全体を100重量%として、5〜20重量%が好ましく、7〜18重量%がより好ましい。シェル層の割合が多すぎる場合や少なすぎる場合は、コアシェルポリマー中のゴム含量が80〜95重量%の範囲から外れ、エポキシ樹脂組成物の取り扱い性が悪くなる。
本発明のコアシェルポリマー(F)の算術数平均粒子径は、エポキシ樹脂組成物の粘度と耐熱衝撃性のバランスの観点から、0.03〜0.4μmが好ましく、0.05〜0.3μmがより好ましく、0.05〜0.2μmがさらに好ましい。前記算術数平均粒子径が小さい場合、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなり、注型が難しくなる。また、それが大きい場合、エポキシ樹脂の硬化物の耐熱衝撃性が低下する。
前記コアシェルポリマー(F)の注型用エポキシ樹脂組成物に占める割合(配合量)としては、耐熱衝撃性と組成物粘度のバランスの観点から、(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)=100重量%として、0.3〜10重量%であることが好ましく、1〜6重量%であることがより好ましく、1.5〜5重量%であることがさらに好ましい。コアシェルポリマー(F)が多いと、硬化物の耐熱衝撃性が改善するが、組成物の粘度が高くなる。

≪コアシェルポリマー(F)の製造方法≫
(コア層の製造方法)
本発明で用いるコアシェルポリマー(F)を構成するコア層を形成するポリマーが、ジエン系モノマー(共役ジエン系モノマー)および(メタ)アクリレート系モノマーから選ばれる少なくとも1種のモノマー(第1モノマー)を含んで構成される場合には、コア層の形成は、例えば、乳化重合、懸濁重合、マイクロサスペンジョン重合などによって製造することができ、例えばWO2005/028546号公報に記載の方法を用いることができる。
また、コア層を形成するポリマーがポリシロキサン系ポリマーを含んで構成される場合には、コア層の形成は、例えば、乳化重合、懸濁重合、マイクロサスペンジョン重合などによって製造することができ、例えばEP1338625号公報に記載の方法を用いることができる。

(シェル層の形成方法)
シェル層は、シェル層形成用モノマーを、公知のラジカル重合により重合することによって形成することができる。コア層をコアシェルポリマー粒子前駆体のエマルジョンとして得た場合には、シェル層形成用モノマーの重合は乳化重合法により行うことが好ましく、例えば、WO2005/028546号公報に記載の方法に従って製造することができる。
乳化重合において用いることができる乳化剤(分散剤)としては、ジオクチルスルホコハク酸やドデシルベンゼンスルホン酸などに代表されるアルキルまたはアリールスルホン酸、アルキルまたはアリールエーテルスルホン酸、ドデシル硫酸に代表されるアルキルまたはアリール硫酸、アルキルまたはアリールエーテル硫酸、アルキルまたはアリール置換燐酸、アルキルまたはアリールエーテル置換燐酸、ドデシルザルコシン酸に代表されるN−アルキルまたはアリールザルコシン酸、オレイン酸やステアリン酸などに代表されるアルキルまたはアリールカルボン酸、アルキルまたはアリールエーテルカルボン酸などの各種の酸類、これら酸類のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩などのアニオン性乳化剤(分散剤);アルキルまたはアリール置換ポリエチレングリコールなどの非イオン性乳化剤(分散剤);ポリビニルアルコール、アルキル置換セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸誘導体などの分散剤が挙げられる。これらの乳化剤(分散剤)は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
コアシェルポリマーの水性ラテックスの分散安定性に支障を来さない限り、乳化剤(分散剤)の使用量は少なくすることが好ましい。また、乳化剤(分散剤)は、その水溶性が高いほど好ましい。水溶性が高いと、乳化剤(分散剤)の水洗除去が容易になり、最終的に得られる硬化物への悪影響を容易に防止できる。
乳化重合法の開始剤として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、有機過酸化物、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの熱分解型開始剤が良く知られているが、本発明においては、有機過酸化物が特に好ましい。
好ましい有機過酸化物として、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラメンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイドなどを挙げることができる。なかでも、10時間半減期の熱分解温度(以下、T10ともいう)が120℃以上である、ジ−t−ブチルパーオキサイド(T10:124℃)、パラメンタンハイドロパーオキサイド(T10:128℃)、クメンハイドロパーオキサイド(T10:158℃)、t−ブチルハイドロパーオキサイド(T10:167℃)などの有機過酸化物を使用することが、コアシェルポリマーのMEK不溶分量を高くできる点で好ましい。
また有機過酸化物と、必要に応じてナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、グルコースなどの還元剤、および必要に応じて硫酸鉄(II)などの遷移金属塩、さらに必要に応じてエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなどのキレート剤、さらに必要に応じてピロリン酸ナトリウムなどのリン含有化合物などを併用したレドックス型開始剤を使用することが好ましい。
レドックス型開始剤を用いた場合には、前記過酸化物が実質的に熱分解しない低い温度でも重合を行うことができ、重合温度を広い範囲で設定できるようになり好ましい。
前記開始剤の使用量、レドックス型開始剤を用いる場合には前記還元剤・遷移金属塩・キレート剤などの使用量は公知の範囲で用いることができる。
また、要すれば連鎖移動剤も使用できる。該連鎖移動剤は通常の乳化重合で用いられているものであればよく、特に限定されない。
前記連鎖移動剤の具体例としては、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタンなどがあげられる。
重合に際しての重合温度、圧力、脱酸素などの条件は、公知の範囲のものが適用できる。

<その他の配合成分>
本発明では、必要に応じて、その他の配合成分を使用することができる。その他の配合成分としては、酸化カルシウムなどの脱水剤、水酸化アルミニウムなどの耐トラッキング低減剤・難燃剤、酸化アルミニウムのような放熱フィラー、シランカップリング剤、消泡剤、沈降防止剤、顔料や染料等の着色剤、体質顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定化剤(ゲル化防止剤)、可塑剤、レベリング剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、減粘剤、低収縮剤、有機質充填剤、熱可塑性樹脂、乾燥剤、分散剤等が挙げられる。特にシランカップリング剤は、シリカと樹脂との接着性を改良することから、特に好ましい。具体例としては、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。使用量は、シリカに対して0.1〜2重量%が好ましい。また、注型用エポキシ樹脂組成物は、気泡を極力減らす必要があるので、消泡剤を配合中に添加することが好ましい。消泡剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、アクリル系、ポリオキシエチレン系、ポリオキシプロピレン系等の消泡剤より適宜選択すればよい。具体的な例としては、ビックケミー社のBYK−A500やBYK−1790などを挙げることができる。使用量は、液状エポキシ樹脂(B)100重量部に対して、0.01〜4重量部を使用することが好ましい。
また、注型用エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性を高めることから、沈降防止剤を配合することが好ましい。沈降防止剤としては、エポキシ樹脂組成物のチキソ性を高める添加剤、例えばヒュームドシリカや微粉末有機ベントナイトなどが好ましい。沈降防止剤の使用量は、液状エポキシ樹脂(B)100重量部に対して0.1〜5重量部使用することが好ましい。難燃剤としては、水酸化アルミニウムなどの無機難燃剤を液状エポキシ樹脂(B)100重量部に対して10〜200重量部使用することが好ましい。

<注型用エポキシ樹脂組成物の製法>
本発明の注型用エポキシ樹脂組成物は、シリカ粉末(A)を主成分とし、液状エポキシ樹脂(B)、ポリエーテルポリオール(C)、液状酸無水物(D)、硬化促進剤(E)およびコアシェルポリマー(F)から構成せしめられる硬化性樹脂組成物((B)〜(F)成分からなる)がシリカ粉末(A)のバインダーとして配合される。
前記配合において、コアシェルポリマー(F)を1次粒子の状態で前記液状エポキシ樹脂(B)に、一旦分散させた分散物を用いることが、前記注型用エポキシ樹脂組成物の粘度を制御しやすい点で好ましい。
コアシェルポリマー(F)を前記液状エポキシ樹脂(B)に1次粒子の状態で分散させた前記分散物を得る方法は、種々の方法が利用できるが、例えば水性ラテックス状態で得られたコアシェルポリマー(F)を液状エポキシ樹脂(B)と接触させた後、水等の不要な成分を除去する方法、コアシェルポリマー(F)を一旦有機溶媒に抽出後に液状エポキシ樹脂(B)と混合してから有機溶媒を除去する方法等が挙げられるが、WO2005/028546に記載の方法を利用することが好ましい。その具体的な製造方法は、順に、コアシェルポリマー(F)を含有する水性ラテックス(詳細には、乳化重合によってコアシェルポリマーを製造した後の反応混合物)を、20℃における水に対する溶解度が5%以上40%以下の有機溶媒と混合した後、さらに過剰の水と混合して、コアシェルポリマーを凝集させる第1工程と、凝集したコアシェルポリマー(F)を液相から分離・回収した後、再度有機溶媒と混合して、コアシェルポリマー(F)の有機溶媒溶液を得る第2工程と、有機溶媒溶液をさらに液状エポキシ樹脂(B)と混合した後、前記有機溶媒を留去する第3工程とを含んで調製されることが好ましい。
液状エポキシ樹脂(B)は、23℃で液状であると、前記第3工程が容易となる為、好ましい。「23℃で液状」とは、軟化点が23℃以下であることを意味し、23℃で流動性を示すものである。
上記の工程を経て得た、液状エポキシ樹脂(B)にコアシェルポリマー(F)が1次粒子の状態で分散した組成物(以下、1次粒子分散組成物ともいう)に、必要があれば、液状エポキシ樹脂(B)を加えて、1次粒子分散組成物を適宜希釈し、更に、シリカ粉末(A)、液状酸無水物(D)、硬化促進剤(E)を追加混合し、また必要があれば前記その他配合成分を混合する事により、コアシェルポリマー(F)が分散(好ましくは一次分散)した本発明の注型用エポキシ樹脂組成物が得られる。
一方、塩析等の方法により凝固させた後に乾燥させて得た、粉体状のコアシェルポリマー(F)は、3本ペイントロールやロールミル、ニーダー等の高い機械的せん断力を有する分散機を用いて、液状エポキシ樹脂(B)中に再分散することが可能である。この際、液状エポキシ樹脂(B)とコアシェルポリマー(F)の混合物に、高温で機械的せん断力を与えることで、コアシェルポリマー(F)が液状エポキシ樹脂(B)中に効率良く分散することを可能にする。分散させる際の温度は、50〜200℃が好ましく、70〜170℃がより好ましく、80〜150℃が更に好ましく、90〜120℃が特に好ましい。温度が50℃よりも小さいと、十分にコアシェルポリマー(F)が分散しない場合があり、200℃よりも大きいと、液状エポキシ樹脂(B)とコアシェルポリマー(F)が熱劣化する場合がある。
また、本発明の注型用エポキシ樹脂組成物は、シリカ粉末(A)、液状エポキシ樹脂(B)、液状酸無水物(D)、硬化促進剤(E)、コアシェルポリマー(F)を主成分と硬化成分の2液として混合して調製してもよい。例えば、シリカ粉末(A)、液状エポキシ樹脂(B)およびコアシェルポリマー(F)の混合成分を主成分とし、液状酸無水物(D)、硬化促進剤(E)、場合によりシリカ粉末(A)を含めた混合成分を硬化成分としてから混合して本発明の注型用エポキシ樹脂組成物を調製してもよい。

<硬化物>
本発明には、上記注型用エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物が含まれる。特定のポリエーテルポリオールとコアシェルポリマーを併用することで、得られた硬化物は耐熱性および耐熱衝撃性に優れる。
本発明の硬化物の衝撃強度は、例えば11kJ/m2超であり、好ましくは12kJ/m2以上50kJ/m2以下である。衝撃強度は、JIS K7111−1により測定可能である。
本発明の硬化物の曲げ強度は、80MPa以上200MPa以下であることが好ましい。曲げ強度は、JIS K7171に準拠して測定できる。
本発明の硬化物のガラス転移温度は、例えば100℃以上、好ましくは105℃以上、さらに好ましくは110℃以上160℃以下である。
ガラス転移温度は、従来公知の示差走査熱量計により求めることができる。
本発明の硬化物の耐熱衝撃性指数は、例えば20超であり、好ましくは22以上、より好ましくは23以上、さらに好ましくは25以上、さらにより好ましくは30以上50程度である。耐熱衝撃性指数は、150℃〜−40℃を1サイクルとして硬化物に対して50回行い、硬化物のクラックの平均値を耐熱衝撃指数とするものであり、50サイクルでクラックが発生しないものは>50とし、クラックが発生したサイクル数の平均値を当該指数としてもよい。ポリエーテルポリオールとコアシェルポリマーの併用により、耐熱衝撃性は顕著に改善される。

<用途>
本発明の組成物は、耐熱性および耐熱衝撃性に優れることから、電子機器等の絶縁処理に好適である。本発明の組成物を用いる好適な具体例は、前記注型用エポキシ樹脂組成物の硬化物で必要な部分が封止又は保護されたコイル、コンデンサ若しくは抵抗体、又は当該コイル、コンデンサ、若しくは抵抗体を組み込んだ電気・電子機器である。加えて、本発明の組成物は、前記注型用エポキシ樹脂組成物の硬化物を電気絶縁部材として使用した固体絶縁開閉装置に好適に使用されてもよい。
本願は、2014年9月11日に出願された日本国特許出願第2014−185608号に基づく優先権の利益を主張するものである。2014年9月11日に出願された日本国特許出願第2014−185608号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
以下、実施例および比較例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更して実施することが可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお下記実施例および比較例において「部」および「%」とあるのは、重量部または重量%を意味する。
なお、以下の製造例、実施例および比較例における測定および試験は次のように行った。
[1]ポリマー粒子の平均粒子径の測定
水性ラテックスに分散しているポリマー粒子の算術数平均粒子径(Mn)は、マイクロトラックUPA150(日機装株式会社製)を用いて測定した。脱イオン水で希釈したものを測定試料として用いた。
[2]シリカの重量平均粒子径(メジアン径D50)の測定
シリカの重量平均粒子径(メジアン径D50)は、マイクロトラックMT3000EX(日機装株式会社製)を用いて測定した。1%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液を撹拌しながら、0.5gのシリカを投入して分散させ測定試料を作製した。測定は、水の屈折率、およびシリカの屈折率を入力し、計測時間20秒、Signal Levelが緑色範囲内になるように試料濃度を調整して行った。
[3]コアシェルポリマーのMEK不溶分量の測定
ラテックスから乾燥させて得られたコアシェルポリマーの2gを23℃にて、MEK100gに24時間浸漬した後にMEK不溶分を遠心分離した。得られた不溶分を乾燥させて重量を計り、コアシェルポリマーの重量に対するMEK不溶分の重量分率(%)を算出した。
[4]硬化物の耐熱衝撃性の評価
エポキシ樹脂組成物を鉄製六角ナット(M8)が中心に埋め込まれるようにセットされた型枠に注型して、加熱硬化した(硬化条件は、実施例の文中に示す)。得られた直径30mm、高さ9mmの硬化物を各3個、150℃1時間〜−40℃1時間を1サイクルとするヒートサイクルテストを50サイクル行った。硬化物にクラックが発生したサイクル数を記録し、3つの平均値を耐熱衝撃性指数とした。値が大きい程、高い耐熱衝撃性を示す。50サイクルでクラック発生しなかったものは、>50と表した。なお、例えば、3つのうち、2つが>50であり、1つが40である場合は、50、50、40として、平均値を算出した。
[5]硬化物のガラス転移温度(Tg)の測定
上記[4]硬化物の耐熱衝撃性の評価と同様にして硬化物を得た。ただし、六角ナットは用いなかった。得られた硬化物をダイヤモンドカッターにより切削した。20mgの硬化物を用いて、セイコーインスツルメント社製の示差走査熱量計DSC220Cにより窒素フロー下で測定した。測定方法は、50℃から220℃まで1分間20℃の昇温速度で昇温し、その後ただちに1分間40℃で50℃まで温度を下げることにより熱履歴を消した。その後、50℃から220℃まで1分間20℃の昇温速度で昇温してガラス転移温度を測定した。
[6]硬化物の衝撃強度の評価
衝撃強度の評価は、シャルピー試験により行った。JIS K7111−1に準じて、23℃でのノッチなしのシャルピーフラットワイズ衝撃試験により評価した。使用した試験片のサイズは、50mm(長さ)×6mm(幅)×5mm(厚み)である。
[7]硬化物の曲げ強度の評価
JIS K7171に準じて、23℃で曲げ試験により、硬化部の曲げ強度を測定した。使用した試験片のサイズは、100mm(長さ)×10mm(幅)×5mm(厚み)である。
実施例および比較例において用いたシリカ粉末(A)、液状エポキシ樹脂(B)、ポリエーテルポリオール(C)、液状酸無水物(D)、硬化促進剤(E)およびコアシェルポリマー(F)を示す。なお、コアシェルポリマー(F)がエポキシ樹脂(B)に分散したものを分散物(G)とした。
<シリカ粉末(A)>
A−1:クリスタライトCMC−12S((株)龍森製、メジアン径D50:6μm)
A−2:ミリシル(MILLISIL)M10(シベルコエヌヴィ(SIBELCO N.V.)製、メジアン径D50:23μm)
<液状エポキシ樹脂(B)>
B−1:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(三菱化学(株)製jER828EL、エポキシ当量184〜194)
B−2:ビスフェノールFジグリシジルエーテル(モーメンティヴ社製Epikote862、エポキシ当量165〜173)
<ポリエーテルポリオール(C)>
C1−1:平均分子量1000のポリプロピレングリコール(ジオールタイプ、三井化学(株)製アクトコールD−1000)
C1−2:平均分子量2000のポリプロピレングリコール(ジオールタイプ、三井化学(株)製アクトコールD−2000)
C1−3:平均分子量1000のポリテトラメチレングリコール(ジオールタイプ、三菱化学(株)製PTMG1000)
C1−4:平均分子量1000のポリオキシプロピレングリセリルエーテル(トリオールタイプ、三井化学(株)製アクトコールT−1000)
C2−1:平均分子量3000のポリプロピレングリコール(ジオールタイプ、三井化学(株)製アクトコールD−3000)
C2−2:平均分子量4000のポリプロピレングリコール(ジオールタイプ、三井化学(株)製アクトコールD−4000)
C2−3:平均分子量3000のポリオキシプロピレングリセリルエーテル(トリオールタイプ、三井化学(株)製アクトコールT−3000)
<液状酸無水物(D)>
D−1:メチルテトラヒドロフタル酸無水物(日立化成(株)製HN2200,MTHPA)
D−2:メチルヘキサヒドロフタル酸無水物とヘキサヒドロフタル酸無水物の7対3混合物(新日本理化(株)製リカシッドMH700)
<硬化促進剤(E)>
E−1:2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業(株)製キュアゾール2E4MZ)
E−2:テトラn−ブチルホスホニウムo,o−ジエチルホスホロジチオネート(日本化学工業(株)製ヒシコーリンPX−4ET)
<コアシェルポリマー(F)>
F−1〜F−5:F−1〜F−3は、コアの主成分がブタジエンゴムコアであるコアシェルポリマー、F−4はコアの主成分がポリオルガノシロキサンゴムであるコアシェルポリマー、F−5はコアの主成分がアクリルゴムであるコアシェルポリマーである。詳細は、下記製造例に記載する通りである。
F−6:市販品。ダウケミカル製パラロイドEXL−2655。赤外分光分析法により推定したゴム量は、ブタジエンゴム約70%、MEK不溶分量は、95%であった。
以下に、コアシェルポリマー(F−1〜F−5)の製造例およびコアシェルポリマー(F−1〜F−5)が液状エポキシ樹脂(B−1)あるいは(B−2)に分散した分散物(G−1〜G−5)の製造例を示す。
(コアシェルポリマーの製造例)
1.コア層の形成
製造例1−1;ポリブタジエンゴムラテックス(R−1)の調製
耐圧重合機中に、脱イオン水200部、リン酸三カリウム0.03部、リン酸二水素カリウム0.25部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)0.002部、硫酸第一鉄・7水和塩(Fe)0.001部およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDS)0.2部を投入し、撹拌しつつ十分に窒素置換を行なって酸素を除いた後、ブタジエン(BD)100部を系中に投入し、45℃に昇温した。パラメンタンハイドロパーオキサイド(PHP)0.015部、続いてナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.04部を投入し重合を開始した。重合開始から4時間目に、SDS0.3部、PHP0.01部、EDTA0.0015部およびFe0.001部を投入した。さらに重合から7時間目に、SDS0.4部を投入した。重合10時間目に減圧下残存モノマーを脱揮除去して重合を終了し、ポリブタジエンゴム粒子を含むラテックス(R−1)を得た。重合反応率は99%以上であった。得られたラテックスに含まれるポリブタジエンゴム粒子の算術数平均粒子径は0.14μmであった。
製造例1−2:ポリジメチルシロキサンゴムラテックス(R−2)の調製
脱イオン水251部、SDS0.5部、オクタメチルシクロテトラシロキサン100部、テトラエトキシシラン2部、γ−アクリロイルオキシプロピル ジメトキシメチルシラン2部の混合液をホモミキサーにてより10000rpmで5分間撹拌してエマルジョンを調製した。このエマルジョンを撹拌、還流冷却器、窒素吹込口、モノマーと乳化剤の追加口、温度計を備えた5口ガラス容器に一括して仕込んだ。混合物を撹拌しながら、10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液1部(固形分)を添加し、80℃に約40分かけて昇温後、80℃で6時間反応させた。その後、25℃に冷却して、20時間放置後、混合物のpHを水酸化ナトリウムで6.8に戻して重合を終了し、ポリオルガノシロキサン粒子(R−2)を含むラテックスを得た。重合反応率は87%であった。得られたラテックスに含まれるポリオルガノシロキサンゴム粒子の算術数平均粒子径は0.13μmであった。
製造例1−3:アクリルゴムラテックス(R−3)の調製
還流冷却器、窒素吹込口、モノマーと乳化剤の追加口、温度計を備えた5口ガラス容器に、脱イオン水225部、EDTA0.002部、Fe0.001部、SFS0.05部、及びSDS0.6部を仕込み、窒素気流中で撹拌しながら60℃に昇温した。
次に、そこに2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA)3部、ブチルアクリレート(BA)6.6部、アリルメタクリレート(ALMA)0.4部、及びクメンハイドロパーオキサイド(CHP)0.002部の混合物を一括で追加し、1時間撹拌した。
さらに、2−EHA27部、BA59.4部、ALMA3.6部、及びCHP0.02部の混合物を、4時間かけて連続的に滴下した。また、前記混合物の添加後2時間目と4時間目に、SDS0.2部をそれぞれ追加した。前記混合物添加終了から1時間撹拌を続けて重合を完結し、アクリルゴム粒子を含むラテックス(R−3)を得た。重合反応率は99%以上であった。得られたラテックスに含まれるアクリルゴム粒子の算術数平均粒子径は0.07μmであった。
2.コアシェルポリマー(F)の調製(シェル層の形成)
製造例2−1;コアシェルポリマー(F−1)を含有するラテックス(F−1LX)の調製
還流冷却器、窒素吹込口、モノマーと乳化剤の追加口、温度計を備えた5口ガラス容器に、製造例1−1で得たラテックス(R−1)1575部(ポリブタジエンゴム粒子518部相当)および脱イオン水315部を仕込み、窒素置換を行いながら60℃で撹拌した。EDTA0.024部、Fe0.006部、SFS1.2部を加えた後、グラフトモノマー(スチレン(ST)3部、メチルメタクリレート(MMA)35部)、およびCHP0.1部の混合物を2時間かけて連続的に添加しグラフト重合した。添加終了後、更に2時間撹拌して反応を終了させ、コアシェルポリマー(F−1)のラテックス(F−1LX)を得た。重合反応率は99%以上であった。コアシェルポリマー(F−1)のコア成分量は、仕込み量と反応率から93%であった。得られたラテックスに含まれるコアシェルポリマー(F−1)の算術数平均粒子径は0.14μmであり、MEK不溶分量は98%であった。
製造例2−2;コアシェルポリマー(F−2)を含有するラテックス(F−2LX)の調製
製造例2−1において、グラフトモノマーとして<ST3部、MMA35部、CHP0.1部>の代わりに<ST5部、グリシジルメタクリレート(GMA)5部、MMA80部、CHP0.3部>を用いたこと以外は製造例2−1と同様にして、コアシェルポリマー(F−2)のラテックス(F−2LX)を得た。重合反応率は99%以上であった。コアシェルポリマー(F−2)のコア成分量は、仕込み量と反応率から85%であった。得られたラテックスに含まれるコアシェルポリマー(F−2)の算術数平均粒子径は0.15μmであり、MEK不溶分量は98%であった。
製造例2−3;コアシェルポリマー(F−3)を含有するラテックス(F−3LX)の調製
製造例2−2において、CHP0.3部の代わりに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.6部を使用し、グラフトモノマーを追加する前に、反応系にAIBNを追加したこと以外は製造例2−2と同様にして、コアシェルポリマー(F−3)のラテックス(F−3LX)を得た。重合反応率は99%以上であった。コアシェルポリマー(F−3)のコア成分量は、仕込み量と反応率から85%であった。得られたラテックスに含まれるコアシェルポリマー(F−3)の算術数平均粒子径は0.15μmであり、コアシェルポリマーのMEK不溶分量は93%であった。
製造例2−4;コアシェルポリマー(F−4)を含有するラテックス(F−4LX)の調製
還流冷却器、窒素吹込口、モノマーと乳化剤の追加口、温度計を備えた5口ガラス容器に、製造例1−2で得たラテックス(R−2)2060部(ポリジメチルシロキサンゴム粒子510部相当)を仕込み、窒素置換を行いながら60℃で撹拌した。EDTA0.024部、Fe0.006部、SFS1.2部を加えた後、グラフトモノマー(ST7部、MMA83部)、およびCHP0.3部の混合物を2時間かけて連続的に添加しグラフト重合した。添加終了後、更に2時間撹拌して反応を終了させ、コアシェルポリマー(F−4)のラテックス(F−4LX)を得た。重合反応率は99%以上であった。コアシェルポリマー(F−4)のコア成分量は、仕込み量と反応率から85%であった。得られたラテックスに含まれるコアシェルポリマー(F−4)の算術数平均粒子径は0.14μmであり、MEK不溶分量は96%であった。
製造例2−5;コアシェルポリマー(F−5)を含有するラテックス(F−5LX)の調製
還流冷却器、窒素吹込口、モノマーと乳化剤の追加口、温度計を備えた5口ガラス容器に、製造例1−3で得たラテックス(R−3)1680部(アクリルゴム粒子510部相当)およびSDS0.1部を仕込み、窒素置換を行いながら60℃で撹拌した。EDTA0.024部、Fe0.006部、SFS1.2部を加えた後、グラフトモノマー(ST6部、MMA83部、ALMA1部)、およびt−ブチルハイドロパーオキサイド(t−BHP)0.3部の混合物を2時間かけて連続的に添加しグラフト重合した。添加終了後、更に2時間撹拌して反応を終了させ、コアシェルポリマー(F−5)のラテックス(F−5LX)を得た。重合反応率は99%以上であった。コアシェルポリマー(F−5)のコア成分量は、仕込み量と反応率から85%であった。得られたラテックスに含まれるコアシェルポリマー(F−5)の算術数平均粒子径は0.07μmであり、MEK不溶分量は99%であった。
3.コアシェルポリマー(F)が液状エポキシ樹脂(B−1)あるいは(B−2)に分散した分散物(G−1〜G−5)の調製
製造例3−1:液状エポキシ樹脂(B−1)ベースの分散物(G−1)の調製
25℃の1L混合槽にメチルエチルケトン(MEK)100部を導入し、撹拌しながら、それぞれ前記製造例2−1で得られたコアシェルポリマーの水性ラテックス(F−1LX):コアシェルポリマー30部相当分を投入した。均一に混合後、水150部を60部/分の供給速度で投入した。供給終了後、速やかに撹拌を停止したところ、浮上性の凝集体および有機溶媒を一部含む水相からなるスラリー液を得た。次に、水相を槽下部の払い出し口より排出させた。得られた凝集体にMEK70部を追加して均一に混合し、コアシェルポリマーが均一に分散した分散体を得た。この分散体に、液状エポキシ樹脂(B−1)70部を混合した。この混合物から、回転式の蒸発装置で、MEKを除去した。このようにして、液状エポキシ樹脂にコアシェルポリマー(F−1)が30重量%分散した分散物(G−1)を得た。
製造例3−2:液状エポキシ樹脂(B−1)ベースの分散物(G−2)の調製
製造例3−1において使用したコアシェルポリマーの水性ラテックス(F−1LX)の代わりにコアシェルポリマーの水性ラテックス(F−2LX)を用いた以外は、製造例3−1と同様にして液状エポキシ樹脂(B−1)にコアシェルポリマー(F−2)が30重量%分散した分散物(G−2)を得た。
製造例3−3:液状エポキシ樹脂(B−1)ベースの分散物(G−3)の調製
製造例3−1において使用したコアシェルポリマーの水性ラテックス(F−1LX)の代わりにコアシェルポリマーの水性ラテックス(F−3LX)を用いた以外は、製造例3−1と同様にして液状エポキシ樹脂(B−1)にコアシェルポリマー(F−3)が30重量%分散した分散物(G−3)を得た。
製造例3−4:液状エポキシ樹脂(B−2)ベースの分散物(G−4)の調製
製造例3−1において使用したコアシェルポリマーの水性ラテックス(F−1LX)の代わりにコアシェルポリマーの水性ラテックス(F−4LX)を用い、液状エポキシ樹脂(B−1)の代わりに液状エポキシ樹脂(B−2)を用いた以外は、製造例3−1と同様にして液状エポキシ樹脂(B−2)にコアシェルポリマー(F−4)が30重量%分散した分散物(G−4)を得た。
製造例3−5:液状エポキシ樹脂(B−2)ベースの分散物(G−5)の調製
製造例3−1において使用したコアシェルポリマーの水性ラテックス(F−1LX)の代わりにコアシェルポリマーの水性ラテックス(F−5LX)を用い、液状エポキシ樹脂(B−1)の代わりに液状エポキシ樹脂(B−2)を用いた以外は、製造例3−1と同様にして液状エポキシ樹脂(B−2)にコアシェルポリマー(F−5)が30重量%分散した分散物(G−5)を得た。
表1に実施例および比較例において、使用したコアシェルポリマーの特性を示す。
Figure 0006596006
(実施例1〜5、比較例1〜3)
表2に示す処方に従い、各成分をそれぞれ計量し、撹拌装置(自転公転ミキサー、あわとり練太郎、株式会社シンキー製)を用いて均一に混合した。混合物の脱泡を減圧下で行い、注型用エポキシ樹脂組成物を得た。得られた組成物を、90℃で3時間、130℃で3時間硬化して、硬化物を得た。得られた硬化物を用いて、耐熱衝撃性、ガラス転移温度、衝撃強度および曲げ強度の評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 0006596006
表2から、本発明の注型用エポキシ樹脂組成物から得られる硬化物は、高い耐熱衝撃性だけでなく、良好な物性バランスを有することが分かる。
(実施例6〜11、比較例4)
表3に示す処方に従い、各成分をそれぞれ計量し、撹拌装置(自転公転ミキサー、あわとり練太郎、株式会社シンキー製)を用いて均一に混合した。混合物の脱泡を減圧下で行い、注型用エポキシ樹脂組成物を得た。得られた組成物を、90℃で3時間、130℃で3時間硬化して、硬化物を得た。得られた硬化物を用いて、耐熱衝撃性およびガラス転移温度の評価を行なった。結果を表3に示す。
Figure 0006596006
表3から、本発明の注型用エポキシ樹脂組成物から得られる硬化物は、110℃以上のガラス転移温度および高い耐熱衝撃性を有することが分かる。
(実施例12〜16)
表4に示す処方に従い、各成分をそれぞれ計量し、撹拌装置(自転公転ミキサー、あわとり練太郎、株式会社シンキー製)を用いて均一に混合した。混合物の脱泡を減圧下で行い、注型用エポキシ樹脂組成物を得た。得られた組成物を、90℃で3時間、130℃で3時間硬化して、硬化物を得た。得られた硬化物を用いて、耐熱衝撃性の評価およびガラス転移温度を測定した。結果を表4に示す。
Figure 0006596006
表4から、本発明の注型用エポキシ樹脂組成物から得られる硬化物は、130℃以上のガラス転移温度および高い耐熱衝撃性を有することが分かる。
(実施例17〜18、比較例5〜6)
表5に示す処方に従い、各成分をそれぞれ計量し、撹拌装置(自転公転ミキサー、あわとり練太郎、株式会社シンキー製)を用いて均一に混合した。混合物の脱泡を減圧下で行い、注型用エポキシ樹脂組成物を得た。得られた組成物を、100℃で3時間、150℃で3時間硬化して、硬化物を得た。得られた硬化物を用いて、耐熱衝撃性およびガラス転移温度の評価を行なった。結果を表5に示す。
Figure 0006596006
表5から、本発明の注型用エポキシ樹脂組成物から得られる硬化物は、130℃以上のガラス転移温度および高い耐熱衝撃性を有することが分かる。

Claims (17)

  1. シリカ粉末(A)、液状エポキシ樹脂(B)、ポリエーテルポリオール(C)、液状酸無水物(D)、硬化促進剤(E)およびコアシェルポリマー(F)を含み、前記ポリエーテルポリオール(C)が、平均分子量400以上2500未満のポリエーテルポリオール(C1)および平均分子量2500以上5000以下のポリエーテルポリオール(C2)を含む注型用エポキシ樹脂組成物。
  2. ポリエーテルポリオール(C1)とポリエーテルポリオール(C2)の合計100重量%に対し、ポリエーテルポリオール(C2)が50〜90重量%である請求項に記載の注型用エポキシ樹脂組成物。
  3. シリカ粉末(A)が注型用エポキシ樹脂組成物に占める割合が、40〜85重量%((A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)=100重量%)である請求項1又は2に記載の注型用エポキシ樹脂組成物。
  4. シリカ粉末(A)、液状エポキシ樹脂(B)、ポリエーテルポリオール(C)、液状酸無水物(D)、硬化促進剤(E)およびコアシェルポリマー(F)を含み、
    シリカ粉末(A)が注型用エポキシ樹脂組成物に占める割合が、40〜85重量%((A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)=100重量%)である注型用エポキシ樹脂組成物。
  5. ポリエーテルポリオール(C)の含有量が、液状エポキシ樹脂(B)100重量部に対して10〜30重量部である請求項1〜4のいずれかに記載の注型用エポキシ樹脂組成物。
  6. ポリエーテルポリオール(C)がポリオキシアルキレンジオールである請求項1〜5のいずれかに記載の注型用エポキシ樹脂組成物。
  7. ポリエーテルポリオール(C)がポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールから選ばれる請求項1〜5のいずれかに記載の注型用エポキシ樹脂組成物。
  8. ポリエーテルポリオール(C)がポリプロピレングリコールである請求項1〜5のいずれかに記載の注型用エポキシ樹脂組成物。
  9. ポリエーテルポリオール(C)が、平均分子量400以上5000以下である請求項4〜8のいずれかに記載の注型用エポキシ樹脂組成物。
  10. コアシェルポリマー(F)中のコア層の比率が80〜95重量%であり、かつ該コアシェルポリマーのメチルエチルケトン不溶分量が95重量%以上である請求項1〜9のいずれかに記載の注型用エポキシ樹脂組成物。
  11. コアシェルポリマー(F)中のコア層が、ジエン系ゴム、シロキサン系ゴム、及び(メタ)アクリレート系ゴムからなる群より選択される請求項10に記載の注型用エポキシ樹脂組成物。
  12. コアシェルポリマー(F)が一次分散している請求項1〜11のいずれかに記載の注型用エポキシ樹脂組成物。
  13. コアシェルポリマー(F)が注型用エポキシ樹脂組成物に占める割合が、0.3〜10重量%((A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)=100重量%)である請求項1〜12のいずれかに記載の注型用エポキシ樹脂組成物。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載の注型用エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
  15. 請求項14に記載の注型用エポキシ樹脂組成物の硬化物で保護されたコイル。
  16. 請求項15に記載のコイルを組み込んだ電気・電子機器。
  17. 請求項14に記載の注型用エポキシ樹脂組成物の硬化物を電気絶縁部材として使用した固体絶縁開閉装置。
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