以下では、本発明の実施形態および参考形態(第1〜第4参考形態)を、添付図面を参照して詳細に説明する。
<本発明の第1参考形態>
図1は、本発明の第1参考形態に係る双方向ツェナーダイオード1の模式的な斜視図である。
図1に示すように、双方向ツェナーダイオード1は、微小なチップ部品であり、本体部を構成する半導体基板2を含む。
半導体基板2は、一端部および他端部を有する略長方体形状に形成されており、その表面の内方部に複数のダイオードが形成される矩形状の素子領域3が設定されている。以下では、素子領域3が設定された面を素子形成面4といい、その反対側の面を裏面5という。
半導体基板2の平面形状は、長手方向に沿う長辺6の長さL1が、0.3mm〜0.6mmであり、短手方向に沿う短辺7の長さD1が、0.15mm〜0.3mmである。また、半導体基板2の厚さT1は、たとえば0.1mmである。つまり、半導体基板2としては、いわゆる0603チップ、0402チップ、03015チップ等が適用される。
半導体基板2の各コーナー部8は、平面視で面取りされたラウンド形状であってもよい。ラウンド形状であれば、製造工程や実装時におけるチッピングを抑制できる構造となる。半導体基板2の素子形成面4における一端部側および他端部側には、第1電極9の第1接続電極9aと、第2電極10の第2接続電極10aとが形成されている。
第1接続電極9aおよび第2接続電極10aは、素子形成面4の一端部側および他端部側から素子領域3を挟み込むように、互いに間隔を空けて形成されている。第1接続電極9aおよび第2接続電極10aは、半導体基板2の短辺7に沿って、平面視略長方形状に形成されている。
なお、半導体基板2では、素子形成面4および側面のそれぞれの全域がパッシベーション膜11a,11bで覆われている。また、素子形成面4上のパッシベーション膜11aの全域を覆うように樹脂膜12が形成されている。そのため、厳密には、図1では、素子形成面4および側面のそれぞれの全域は、パッシベーション膜11a,11bおよび樹脂膜12の内側(裏側)に位置していて、外部に露出されていない。パッシベーション膜11a,11bおよび樹脂膜12については、以降で詳説する。
図2は、図1に示す双方向ツェナーダイオード1の模式的な平面図である。図3は、図2に示すn+型拡散領域13(ダイオード領域14および疑似ダイオード領域15)の配置を示す平面図である。図4は、図2に示す切断面線IV-IVから見た断面図である。なお、図2〜図4は、n+型拡散領域13(ダイオード領域14および疑似ダイオード領域15)の一配置例を代表例として示すものである。
半導体基板2は、p+型の半導体基板2(シリコン基板)である。素子領域3における半導体基板2の表面部(素子形成面4)には、複数のn+型拡散領域13が形成されている。複数のn+型拡散領域13は、同一の深さおよび同一の不純物濃度で形成されており、半導体基板2との間でpn接合を形成している。図3に示すように、複数のn+型拡散領域13は、素子領域3において規則的に整列するように形成されている。
より具体的に、素子領域3には、行方向および列方向に沿って行列状に区画された複数のセル3A(この形態では12行×5列=60マスからなるセル3A)が設定されている。
各セル3Aは、平面視略長方形状に区画されており、その内方部にn+型拡散領域13が一つずつ形成されている。つまり、各n+型拡散領域13は、行方向および列方向に沿って、互いに間隔を空けて配列されている。行方向および列方向に互いに隣り合う各n+型拡散領域13は、行方向および列方向に沿って、互いに平行に形成されている。
n+型拡散領域13は、各セル3Aにおいて、行方向に沿って延びるように平面視略矩形状に形成されている。より具体的に、各n+型拡散領域13は、同一の面積を有しており、4隅が切除された略長方形状に形成されている。なお、セル3Aとは、複数のn+型拡散領域13を規則的に配置するために定められた仮想的な領域であり、むろん、12行×5列以上からなる複数のセル3Aを素子領域3に設定してもよい。
素子領域3内において、複数のn+型拡散領域13は、第1および第2接続電極9a,10aに電気的に接続されるダイオード領域14と、第1および第2接続電極9a,10aから電気的に分離される疑似ダイオード領域15とを含む。第2接続電極10a側から第1接続電極9a側に向けて順に第1列目、第2列目、・・・第5列目と定義すると、本配置例では、第2列目〜第4列目にダイオード領域14が設定され、第1列目および第5列目に疑似ダイオード領域15が設定されている。
図4に示すように、半導体基板2の素子形成面4には、絶縁膜16(図1〜図3では図示せず)が形成されている。絶縁膜16は、たとえば、シリコン酸化膜である。絶縁膜16には、ダイオード領域14を選択的に露出させるコンタクト孔17が形成されている(図2および図3の一点鎖線部も併せて参照)。コンタクト孔17は、各n+型拡散領域13の幅よりも狭い幅で形成されている。より具体的に、コンタクト孔17は、n+型拡散領域13の内方領域側において、n+型拡散領域13の周縁部から一定の間隔を空けた位置に形成されている。
一方、絶縁膜16における疑似ダイオード領域15上の部分には、絶縁膜16が選択的に薄くされた薄膜部18が形成されている。この薄膜部18によって、当該絶縁膜16に凹部16aが形成されている。絶縁膜16上には、第1電極9と第2電極10とが形成されている。
第1電極9は、第1接続電極9aと、第1接続電極9aに電気的に接続された第1電極膜19とを含む。第1電極膜19は、さらに、第1パッド21と、第1パッド21と一体的に形成された第1引出し電極22とを有している。
第1パッド21は、素子形成面4の一端部側に平面視略矩形状に形成されている。第1パッド21に第1接続電極9aが接続されている。これにより、第1引出し電極22は、第1パッド21を介して第1接続電極9aに電気的に接続されている。
第1引出し電極22は、第1パッド21から行方向に沿って直線状に形成されている。より具体的には、第1引出し電極22は、第1パッド21から素子領域3における奇数行に向けて直線状に形成されている。つまり、第1引出し電極22は、櫛歯形状に形成されている。第1引出し電極22は、n+型拡散領域13(ダイオード領域14および疑似ダイオード領域15)の幅よりも広く形成されていて、行方向に並んだn+型拡散領域13を覆うように形成されている。第1引出し電極22は、n+型拡散領域13から第1パッド21まで間の至るところで一様な幅を有している。第1引出し電極22の先端部は、角部が切除された略矩形状に形成されていて、素子領域3の第1列目を横切って、第2電極10に間隔を隔てて近接する位置に配置されている。
ダイオード領域14を覆う第1引出し電極22は、コンタクト孔17内に入り込み、当該ダイオード領域14との間でオーミック接触を形成している。つまり、ダイオード領域14は、第1引出し電極22を介して第1接続電極9aに電気的に接続されている。一方、疑似ダイオード領域15を覆う第1引出し電極22は、絶縁膜16の凹部16a内に入り込み、薄膜部18を挟んで疑似ダイオード領域15と対向している。つまり、疑似ダイオード領域15は、その表面が絶縁膜16(薄膜部18)で覆われた状態となり、第1接続電極9aから電気的に分離されている。
第2電極10は、第2接続電極10aと、第2接続電極10aに電気的に接続された第2電極膜20とを含む。第2電極膜20は、さらに、第2パッド23と、第2パッド23と一体的に形成された第2引出し電極24とを有している。
第2パッド23は、素子形成面4の他端部(第1パッド21と反対側の端部)に平面視略矩形状に形成されている。第2パッド23に第2接続電極10aが接続されている。これにより、第2引出し電極24は、第2パッド23を介して第2接続電極10aに電気的に接続されている。
第2引出し電極24は、第2パッド23から行方向に沿って直線状に形成されている。より具体的には、第2引出し電極24は、第2パッド23から素子領域3における偶数行に向けて直線状に形成されている。つまり、第2引出し電極24は、第1引出し電極22の長手方向に沿って、櫛歯形状に形成されている。これにより、第1および第2電極膜19,20は、第1および第2引出し電極22,24が、互いに噛み合う櫛歯形状に形成されている。
また、第2引出し電極24は、n+型拡散領域13(ダイオード領域14および疑似ダイオード領域15)の幅よりも広く形成されていて、行方向に並んだn+型拡散領域13を覆うように形成されている。第2引出し電極24は、n+型拡散領域13から第2パッド23まで間の至るところで一様な幅を有している。第2引出し電極24の先端部は、角部が切除された略矩形状に形成されていて、素子領域3の第5列目を横切って、第1電極9に間隔を隔てて近接する位置に配置されている。
ダイオード領域14を覆う第2引出し電極24は、コンタクト孔17内に入り込み、当該ダイオード領域14との間でオーミック接触を形成している。つまり、ダイオード領域14は、第2引出し電極24を介して第2接続電極10aに電気的に接続されている。一方、疑似ダイオード領域15を覆う第2引出し電極24は、絶縁膜16の凹部16a内に入り込み、薄膜部18を挟んで疑似ダイオード領域15と対向している。つまり、疑似ダイオード領域15は、その表面が絶縁膜16(薄膜部18)で覆われた状態となり、第2接続電極10aから電気的に分離されている。
第1および第2電極膜19,20は同一の導電材料からなっており、たとえば、Al,AlCu,AlSiCu等を例示できる。第1および第2電極9,10は、絶縁膜16上において、第1および第2引出し電極22,24の各周縁部を縁取るスリット25によって、電気的に分離されている。
絶縁膜16上には、第1および第2電極膜19,20を覆うようにパッシベーション膜11aおよび樹脂膜12がこの順に形成されている。また、半導体基板2の側面には、パッシベーション膜11bが形成されている。パッシベーション膜11a,11bは、たとえば窒化シリコンからなり、樹脂膜12は、たとえばポリイミドからなる。
パッシベーション膜11a,11bおよび樹脂膜12は、保護膜を構成しており、第1および第2引出し電極22,24および素子形成面4への水分の浸入を抑制または防止すると共に、外部からの衝撃等を吸収し、双方向ツェナーダイオード耐久性の向上に寄与している。
パッシベーション膜11aおよび樹脂膜12には、第1および第2パッド21,23を選択的に露出させるパッド開口26,27が形成されている。このパッド開口26,27を埋め戻すように第1および第2接続電極9a,10aが形成されている。第1および第2接続電極9a,10aは、一層の導電材料(たとえばNi層)からなる。第1および第2接続電極9a,10aは、樹脂膜12の表面から突出するように形成されている。
次に、図5を参照して、ダイオード領域14および疑似ダイオード領域15のサイズについて具体的に説明する。
図5は、図3に示すn+型拡散領域13(ダイオード領域14および疑似ダイオード領域15)を含む領域を拡大した平面図である。
図5に示すように、ダイオード領域14および疑似ダイオード領域15の列方向の幅W1は、5μm〜15μm(この形態では、9μm)であり、行方向の幅W2は、20μm〜40μm(この形態では、28.8μm)である。また、各ダイオード領域14間の幅W3および各疑似ダイオード領域15間の幅W3は、5μm〜25μmであってもよい。
また、コンタクト孔17の列方向の幅W4は、1μm〜10μm(この形態では、4μm)であり、行方向の幅W5は、10μm〜30μm(この形態では、23.8μm)である。当該平面視において、n+型拡散領域13の周縁部からコンタクト孔17の周縁部までの幅W6は、2.5μm程度であってもよい。
また、第1および第2引出し電極22,24の列方向の各幅W7は、10μm〜20μm(この形態では、14μm)である。当該平面視において、ダイオード領域14および疑似ダイオード領域15の各周縁部から第1および第2引出し電極22,24のスリット25までの幅W8は、2.5μm程度であってもよい。また、スリット25間の幅W9は、3μm〜10μmであってもよい。
次に、図6(a),(b)を参照して、双方向ツェナーダイオード1の電気的構造について説明する。
図6(a)は、図2に示す双方向ツェナーダイオード1の電気的構造を説明するための電気回路図であり、図6(b)は、図2に示す端子間容量Ct(第1電極9および第2電極10間の総容量)を説明するための図である。なお、図6(a),(b)は、互いに隣り合う一対の第1および第2引出し電極22,24を抜き出して、電気回路図に直した図である。
図6(a)に示すように、第1接続電極9aに電気的に接続されたダイオード領域14には、第1ツェナーダイオードD1が形成されている。各第1ツェナーダイオードD1のカソードは、第1接続電極9aに対して共通に接続されている(カソードコモン)。また、第2接続電極10aに電気的に接続されたダイオード領域14には、第2ツェナーダイオードD2が形成されている。各第2ツェナーダイオードD2のカソードは、第2接続電極10aに対して共通に接続されている(カソードコモン)。
第1および第2ツェナーダイオードD1,D2の各アノードは、半導体基板2に対して共通に接続されている(アノードコモン)。このように、第1ツェナーダイオードD1と第2ツェナーダイオードD2とは、半導体基板2を介して逆直列接続されている。
一方、絶縁膜16(薄膜部18)によって第1および第2接続電極9a,10aから電気的に分離された疑似ダイオード領域15には、疑似ツェナーダイオードD3が形成されている(図4参照)。疑似ツェナーダイオードD3のアノード側は、半導体基板2において第1および第2ツェナーダイオードD1,D2と共通に接続されている(アノードコモン)。その一方で、疑似ツェナーダイオードD3のカソード側は、絶縁膜16(薄膜部18)によって電気的に開放されている。つまり、疑似ツェナーダイオードD3は、電気的に動作し得ない。
このように、第1および第2ツェナーダイオードD1,D2と、疑似ツェナーダイオードD3とによって、一つの双方向ツェナーダイオード1が構成されている。
図6(b)に示すように、第1および第2引出し電極22,24には、それぞれ5つのキャパシタCが寄生容量として並列に接続されている。この形態では、全てのn+型拡散領域13(ダイオード領域14および疑似ダイオード領域15)が、等しい容量成分(この形態では、1pF。)を有している。
疑似ダイオード領域15の寄生容量は電気的に開放されているので、無視してもかまわない。したがって、第1および第2引出し電極22,24は、それぞれ3pFの寄生容量を有している。また、一対の第1および第2引出し電極22,24は、互いに直列に接続されている。したがって、一対の第1および第2引出し電極22,24は、1.5pFの寄生容量を有している。
この形態では、図2に示すように、このような一対の第1および第2引出し電極22,24が6つ並列に接続されている。したがって、図2に示す代表例の場合、理論値として、1.5pF×6対=9.0pFの端子間容量Ctを得ることができる。
このように、理論上では、第1および第2ツェナーダイオードD1,D2における寄生容量は、端子間容量Ctの増加に寄与するものの、疑似ツェナーダイオードD3における寄生容量は、端子間容量Ctの増加に寄与しない。したがって、予め定められた複数のn+型拡散領域13の範囲内において、ダイオード領域14および疑似ダイオード領域15の構成比率を調節することにより、端子間容量Ctの値を調節できることが分かる。
この形態は、全てのn+型拡散領域13に対する疑似ダイオード領域15(疑似ツェナーダイオードD3)の個数を増減させることにより、端子間容量Ctを調整するものである。疑似ダイオード領域15(疑似ツェナーダイオードD3)の個数を増減させた場合における、ダイオード領域14および疑似ダイオード領域15の配置例を図7に示す。
図7は、ダイオード領域14および疑似ダイオード領域15の配置例を説明するための模式的な平面図である。
図7(a)〜図7(f)は、順に配置例1、配置例2、・・・配置例6を示す平面図である。なお、図7(d)に示す配置例4は、前述した代表例である。
図7(a)に示す配置例1は、第3列目にのみ、すなわち素子領域3の中央部のみにダイオード領域14が設定されており、それ以外の列には、疑似ダイオード領域15が設定されている。配置例2における端子間容量Ctの理論値は3pFである。
図7(b),(c)に示す配置例2,3では、素子領域3の第2列目および第4列目にもダイオード領域14が設定されている。配置例2,3の順に、ダイオード領域14の個数が多く設定されている。配置例2における端子間容量Ctの理論値は5.3pFであり、配置例3における端子間容量Ctの理論値は7pFである。
図7(e),(f)に示す配置例5,6に示す配置例では、素子領域3の第1列目および第5列目にもダイオード領域14が設定されている。配置例5,6の順に、ダイオード領域14の個数が多く設定されている。配置例5における端子間容量Ctの理論値は、11pFであり、配置例6における端子間容量Ctの理論値は、14pFである。
また、図7(a)〜図7(f)に示すように、各配置例1〜6におけるダイオード領域14および疑似ダイオード領域15が、いずれも行方向または列方向に沿って規則的に整列するように形成されている。
また、各配置例1〜6を参照すれば、各n+型拡散領域13は、平面視において、互いに対称に構成されている。より具体的には、ダイオード領域14および疑似ダイオード領域15は、平面視において、素子形成面4の中央部(たとえば、重心)に対して点対称に構成されている。すなわち、素子形成面4に直交する所定の鉛直軸線周りに半導体基板2を180度回転させた場合、ダイオード領域14および疑似ダイオード領域15の位置は、回転前におけるダイオード領域14および疑似ダイオード領域15の位置と一致している。また、配置例1,4を参照すれば、ダイオード領域14および疑似ダイオード領域15は、平面視において、第3行目を通る直線に対して、互いに線対称に形成されている。
これらのような対称構造によれば、第1電極9および第2電極10間における電気的特性を対称にすることができる。つまり、第1接続電極9aを正極とし第2接続電極10aを負極として電圧を印加した場合の電圧対電流特性、および第2接続電極10aを正極とし第1接続電極9aを負極として電圧を印加した場合の電圧対電流特性を実質的に等しくできる。
図7(a)〜図7(f)に示す配置例1〜6の各端子間容量Ctを調べたところ、図8および図9に示す結果が得られた。
図8は、図7に示す各配置例1〜6のn+型拡散領域13の面積、および端子間容量Ctを示す表である。図9は、図8の結果を反映させたグラフである。
図8および図9に示すように、ダイオード領域14の個数が多く設定されるにつれて、端子間容量Ctも増加している。また、n+型拡散領域13を全く形成しない場合の端子間容量Ctは、1.71pFある。この端子間容量Ct(=1.71pF)を、各理論値に加えると、概ね、測定値と一致した結果が得られた(たとえば、配置例1の場合、1.71pF+3.0pF=4.71pF≒4.69pFである)。
以上のように、この形態によれば、電気的に動作する複数の第1および第2ツェナーダイオードD1,D2、ならびに電気的に動作し得ない複数の疑似ツェナーダイオードD3によって1つの双方向ツェナーダイオード1が形成されている。
第1および第2ツェナーダイオードD1,D2の各寄生容量は、端子間容量Ctの増加に寄与するものの、疑似ダイオード領域15の寄生容量は、端子間容量Ctの増加に寄与することが殆どない。したがって、端子間容量Ctに寄与するダイオード領域14と端子間容量Ctに寄与しない疑似ダイオード領域15との構成比率を調節することにより、予め定められた複数のn+型拡散領域13の範囲内において、端子間容量Ctの値を調節できる。
しかも、ダイオード領域14および疑似ダイオード領域15の各個数は、各n+型拡散領域13の配列パターンを変更することなく、各n+型拡散領域13に対する第1電極9および第2電極10の接続の有無によって調節できる。よって、大幅な設計変更を施すまでもなく、目的に応じた種々の端子間容量Ctを容易に実現できる双方向ツェナーダイオード1を提供できる。
また、この構成によれば、n+型拡散領域13の各容量成分(寄生容量)が1pFに設定されているので、双方向ツェナーダイオード1の端子間容量Ctを[pF]単位で調節できる。よって、双方向ツェナーダイオード1が使用されるアプリケーションの仕様や目的に併せて、端子間容量(Ct)を精確に調節できる。
また、半導体基板2がp型の半導体基板であるので、半導体基板2上にエピタキシャル層を形成しなくても、安定した特性を実現できる。すなわち、n型の半導体基板は、抵抗率の面内ばらつきが大きいので、抵抗率の面内ばらつきの少ないエピタキシャル層を表面に形成し、このエピタキシャル層に不純物拡散層を形成してpn接合を形成する必要がある。これに対して、p型の半導体基板2は、抵抗率の面内ばらつきが少ないので、エピタキシャル層を形成することなく、安定した特性の双方向ツェナーダイオードをp型の半導体基板2のいずれの箇所からも切り出すことができる。よって、p型の半導体基板2を用いることによって、製造工程を簡単にでき、かつ製造コストを低減できる。
次に、図10〜図13を参照して、双方向ツェナーダイオード1の製造工程の一例について説明する。
図10は、図1に示す双方向ツェナーダイオード1の製造工程の一例を説明するためのフローチャートである。図11は、図10の製造工程に適用される半導体ウエハ32の模式的な平面図である。図12A〜図12Dは、図10に示す製造工程の一工程を説明するための模式的な断面図である。図13Aおよび図13Bは、図10に示す裏面研磨および個片化工程を説明するための模式的な断面図である。なお、図12A〜図12Dでは、ダイオード領域14および疑似ダイオード領域15が形成される領域を部分的に拡大して示している。また、図13Aおよび図13Bでは、n+型拡散領域13の図示を省略して示している。
まず、図11に示すように、半導体基板2の元基板としてのp+型の半導体ウエハ32が用意される。半導体ウエハ32の表面34は半導体基板2の素子形成面4に対応しており、半導体ウエハ32の裏面35は半導体基板2の裏面5に対応している。
半導体ウエハ32の表面には、複数の双方向ツェナーダイオード1が形成されるチップ領域31が、行列状に配列されて設定されている。互いに隣り合うチップ領域31の間には、境界領域30が設けられている。境界領域30は、略一定の幅を有する帯状の領域であり、直交する2方向に延びて格子状に形成されている。
次に、図12Aに示すように、半導体ウエハ32の表面34に、絶縁膜16が形成される(ステップS1:絶縁膜形成)。次に、絶縁膜16上にレジストマスクが形成される(ステップS2:レジストマスク形成)。このレジストマスクを用いたエッチングによって、複数のn+型拡散領域13に対応する開口33が絶縁膜16に形成される(ステップS3:絶縁膜開口)。
次に、図12Bに示すように、レジストマスクを剥離した後に、絶縁膜16に形成された開口33から露出する半導体ウエハ32の表面34にn型不純物が注入される(ステップS4:n型不純物注入)。n型不純物の注入は、n型不純物としての燐を表面に堆積させる工程(いわゆるリンデポ)によって行われてもよいし、n型不純物イオン(たとえば燐イオン)の注入によって行われてもよい。
次に、必要に応じてCVD法により絶縁膜16を厚膜化した後、半導体ウエハ32に注入された不純物イオンを活性化するための熱処理(ドライブ)が行われる(ステップS5:熱処理(ドライブ))。これにより、半導体ウエハ32の表面部に複数のn+型拡散領域13が形成される。
次に、コンタクト孔17に整合する開口を有するレジストマスクが絶縁膜16の上に形成される(ステップS6:コンタクト孔形成)。レジストマスクを介するエッチングによって、絶縁膜16にコンタクト孔17が形成される。その後、レジストマスクが剥離される。
次に、図12Cに示すように、半導体ウエハ32の表面に熱酸化処理が施される(ステップS7:熱酸化処理)。これにより、コンタクト孔17から露出する各n+型拡散領域13の表面に絶縁膜16と一体的に連なる薄膜部18が形成される。
次に、図12Dに示すように、複数のn+型拡散領域13のうち、疑似ダイオード領域15とすべき領域を選択的に覆うレジストマスク36が絶縁膜16上に形成される。次に、レジストマスク36を介するエッチングにより(ステップS8:薄膜部形成)、各n+型拡散領域13(ダイオード領域14)を覆う薄膜部18が除去される。これにより、絶縁膜16に凹部16aおよびコンタクト孔17が形成される。また、これと同時に、後の工程で、第1および第2電極9,10に電気的に接続されるダイオード領域14と、第1および第2電極9,10から電気的に分離される疑似ダイオード領域15とが形成される。
次に、たとえばスパッタリングによって、第1および第2電極膜19,20を構成する電極膜が絶縁膜16上に形成される(ステップS9:電極膜形成)。この形態では、Alからなる電極膜が形成される。そして、電極膜上に、スリット25に対応する開口パターンを有するレジストマスクが形成される(ステップS10:レジストマスク形成)。レジストマスクを介するエッチング(たとえば反応性イオンエッチング)によって、電極膜にスリット25が形成される(ステップS11:電極膜パターニング)。これにより、電極膜が、第1および第2電極膜19,20に分離される。
次に、レジストマスクを剥離した後、たとえばCVD法によって窒化膜等のパッシベーション膜11aが形成される(ステップS12:パッシベーション膜形成)。次に、感光性ポリイミド等を塗布することにより樹脂膜12が形成される(ステップS13:ポリイミド塗布)。次に、パッド開口26,27に対応するパターンで樹脂膜12を露光する。その後、樹脂膜12が現像される(ステップS14:露光・現像工程)。
次に、必要に応じて、樹脂膜12をキュアするための熱処理が行われる(ステップS15:ポリイミドキュア)。そして、樹脂膜12をマスクとしたドライエッチング(たとえば反応性イオンエッチング)によってパッシベーション膜11aが除去される(ステップS16:パッド開口)。これにより、パッド開口26,27が形成される。
次に、たとえば、パッド開口26,27を埋め戻すように、導電材料(たとえばNi層)がめっき成膜される(ステップS17:電極形成)。これにより、第1および第2接続電極9a,10aが形成される。
次に、図13Aに示すように、境界領域30(図11も併せて参照)に切断用の溝37を形成するためのレジストパターン38が形成される(ステップS18:レジストマスク形成)。レジストパターン38は、境界領域30に整合する格子状の開口を有している。レジストパターン38を介してプラズマエッチングが行われる(ステップS19:溝形成)。これにより、半導体ウエハ32が表面から所定の深さまでエッチングされて、境界領域30に沿った切断用の溝37が形成される。
切断用の溝37に取り囲まれたチップ領域31に半製品41が1つずつ位置していて、これらの半製品41は、行列状に整列配置されている。このように切断用の溝37を形成することによって、半導体ウエハ32を複数のチップ領域31毎に分離可能にする。切断用の溝37が形成された後、レジストパターンは、剥離される。
次に、CVD法によって、窒化シリコンからなるパッシベーション膜11bを、半導体ウエハ32の表面に形成する。このとき、パッシベーション膜11bは、切断用の溝37の内周面(底面および側面)の全域に形成される。
次に、図13Bに示すように、半導体ウエハ32が裏面35側から、切断用の溝37の底面に到達するまで研削される(ステップS20:裏面研磨/個片化)。これによって、複数のチップ領域31が個片化された双方向ツェナーダイオード1を得ることができる。このように、切断用の溝37を形成してから半導体ウエハ32を裏面35側から研削すれば、半導体ウエハ32に形成された複数のチップ領域31を一斉に個片化できる。よって、製造時間の短縮によって双方向ツェナーダイオード1の生産性の向上を図ることができる。なお、完成した半導体基板2の裏面5を研磨やエッチングすることによって鏡面化して裏面5を綺麗にしてもよい。
以上のように、この製造工程によれば、薄膜部18を除去する際に使用するレジストマスク36(図12D参照)のレイアウトを変更するだけで、ダイオード領域14および疑似ダイオード領域15を設定することができる。また、このようなレイアウトの変更により、ダイオード領域14を形成するのと同時にコンタクト孔17を形成しない部分に疑似ダイオード領域15を形成できる。これにより、ダイオード領域14および疑似ダイオード領域15を、容易に形成できる。
よって、端子間容量Ctに寄与するダイオード領域14と端子間容量Ctに寄与しない疑似ダイオード領域15との構成比率を容易に調節できるので、予め定められた複数のn+型拡散領域13の範囲内において、端子間容量Ctの値を容易に調節できる。
なお、前述の製造工程では、ステップS6のコンタクト孔形成工程において、全てのn+型拡散領域13を露出させるコンタクト孔17を形成する方法について述べたが、ダイオード領域14のみを選択的に露出させるコンタクト孔17を形成するようにしてもよい。この製造工程であれば、ステップS7の熱酸化処理工程およびステップS8の薄膜部形成工程を省略できる。
<本発明の第2参考形態>
図14は、本発明の第2参考形態に係る双方向ツェナーダイオード101の模式的な斜視図である。
図14に示すように、双方向ツェナーダイオード101は、微小なチップ部品であり、本体部を構成する半導体基板102を含む。
半導体基板102は、一端部および他端部を有する略長方体形状に形成されており、その表面の内方部に複数のダイオードが形成される矩形状の素子領域103が設定されている。以下では、素子領域103が設定された面を素子形成面104といい、その反対側の面を裏面105という。
半導体基板102の平面形状は、長手方向に沿う長辺106の長さL101が、0.3mm〜0.6mmであり、短手方向に沿う短辺107の長さD101が、0.15mm〜0.3mmである。また、半導体基板102の厚さT101は、たとえば0.1mmである。つまり、半導体基板102としては、いわゆる0603チップ、0402チップ、03015チップ等が適用される。
半導体基板102の各コーナー部108は、平面視で面取りされたラウンド形状であってもよい。ラウンド形状であれば、製造工程や実装時におけるチッピングを抑制できる。半導体基板102の素子形成面104における一端部側および他端部側には、第1電極109の第1接続電極109aと第2電極110の第2接続電極110aとが形成されている。
第1接続電極109aおよび第2接続電極110aは、素子形成面104の一端部側および他端部側から素子領域103を挟み込むように、互いに間隔を空けて形成されている。第1接続電極109aおよび第2接続電極110aは、半導体基板102の短辺107に沿って、平面視略長方形状に形成されている。
なお、半導体基板102では、素子形成面104および側面のそれぞれの全域がパッシベーション膜111a,111bで覆われている。また、素子形成面104上のパッシベーション膜111aの全域を覆うように樹脂膜112が形成されている。そのため、厳密には、図14では、素子形成面104および側面のそれぞれの全域は、パッシベーション膜111a,111bおよび樹脂膜112の内側(裏側)に位置していて、外部に露出されていない。パッシベーション膜111a,111bおよび樹脂膜112については、以降で詳説する。
図15は、図14に示す双方向ツェナーダイオード101を示す模式的な平面図である。図16は、図15に示す第1拡散領域114および第2拡散領域115の配置を示す平面図である。図17は、図15に示す切断面線XVII-XVIIから見た断面図である。図18は、図15に示す切断面線XVIII-XVIIIから見た断面図である。なお、図15〜図18は、第1拡散領域114および第2拡散領域115の一配置例を代表例として示すものである。
半導体基板102は、p+型の半導体基板102(シリコン基板)である。素子領域103における半導体基板102の表面部(素子形成面104)には、n+型の複数の第1拡散領域114と、n+型の複数の第2拡散領域115とが形成されている。第1および第2拡散領域114,115は、同一の深さおよび同一の不純物濃度で形成されており、半導体基板102との間でpn接合を形成している。図16に示すように、複数の第1および第2拡散領域114,115は、素子領域103において規則的に整列するように形成されている。
より具体的に、図16に示すように、素子領域103には、行方向および列方向に沿って行列状に区画された複数のセル103A(この形態では12行×5列=60マスからなるセル103A)が設定されている。
各セル103Aは、平面視略長方形状に区画されており、その内方部に第1拡散領域114または第2拡散領域115が一つずつ形成されている。第1および第2拡散領域114,115は、各セル103Aにおいて、行方向に沿って延びるように平面視略矩形状に形成されている。より具体的に、各第1および第2拡散領域114,115は、同一の面積を有しており、4隅が切除された長方形状に形成されている。なお、セル103Aとは、第1および第2拡散領域114,115を規則的に配置するために定められた仮想的な領域であり、むろん、12行×5列以上からなる複数のセル103Aを素子領域103に設定してもよい。
第1拡散領域114は、奇数行の行方向に沿って互いに間隔を空けて複数(この形態では5つ)形成されている。一方、第2拡散領域115は、偶数行の行方向に沿って互いに間隔を空けて複数(この形態では5つ)形成されている。第1および第2拡散領域114,115は、それぞれ、行方向および列方向に沿って互いに平行に形成されている。
第2接続電極110a側から第1接続電極109a側に向けて順に第1列目、第2列目、・・・第5列目と定義すると、第1および第2拡散領域114,115は、第1列目〜第5列目の各列方向において、互いに隣り合うように形成されている。
図17および図18に示すように、半導体基板102の素子形成面104には、絶縁膜116(図14〜図16では図示せず)が形成されている。絶縁膜116は、たとえば、シリコン酸化膜である。絶縁膜116には、第1および第2拡散領域114,115を選択的に露出させるコンタクト孔117が形成されている(図15および図16の一点鎖線部も併せて参照)。
コンタクト孔117は、第1および第2拡散領域114,115の幅よりも狭い幅で形成されている。より具体的に、コンタクト孔117は、第1および第2拡散領域114,115の内方領域側に、第1および第2拡散領域114,115の周縁部から一定の間隔を空けた位置に形成されている。絶縁膜116上には、第1電極109と第2電極110とが形成されている。
第1電極109は、第1接続電極109aと、第1接続電極109aに電気的に接続された第1電極膜119とを含む。第1電極膜119は、さらに、第1パッド121と、第1パッド121と一体的に形成された第1引出し電極122とを有している。
第1パッド121は、素子形成面104の一端部側に平面視略矩形状に形成されている。第1パッド121に第1接続電極109aが接続されている。これにより、第1引出し電極122は、第1パッド121を介して第1接続電極109aに電気的に接続されている。
第1引出し電極122は、第1パッド121から行方向に沿って直線状に形成されている。より具体的には、第1引出し電極122は、第1パッド121から素子領域103における奇数行に向けて直線状に形成されている。つまり、第1引出し電極122は、櫛歯形状に形成されている。第1引出し電極122は、第1拡散領域114の幅よりも広く形成されていて、第1拡散領域114を覆うように形成されている。第1引出し電極122は、第1拡散領域114から第1パッド121まで間の至るところで一様な幅を有している。
第1引出し電極122の先端部は、角部が切除された略矩形状に形成されていて、素子領域103の第1列目を横切って、第2電極110に間隔を隔てて近接する位置に配置されている。第1拡散領域114を覆う第1引出し電極122は、コンタクト孔117内に入り込み、当該第1拡散領域114との間でオーミック接触を形成している。
第2電極110は、第2接続電極110aと、第2接続電極110aに電気的に接続された第2電極膜120とを含む。第2電極膜120は、さらに、第2パッド123と、第2パッド123と一体的に形成された第2引出し電極124とを有している。
第2パッド123は、素子形成面104の他端部(第1パッド121と反対側の端部)に平面視略矩形状に形成されている。第2パッド123に第2接続電極110aが接続されている。これにより、第2引出し電極124は、第2パッド123を介して第2接続電極110aに電気的に接続されている。
第2引出し電極124は、第2パッド123から行方向に沿って直線状に形成されている。より具体的には、第2引出し電極124は、第2パッド123から素子領域103における偶数行に向けて直線状に形成されている。つまり、第2引出し電極124は、第1引出し電極122の長手方向に沿って、櫛歯形状に形成されている。これにより、第1および第2電極膜119,120は、第1および第2引出し電極122,124が互いに噛み合う櫛歯形状に形成されている。また、第2引出し電極124は、第2拡散領域115の幅よりも広く形成されていて、第2拡散領域115を覆うように形成されている。第2引出し電極124は、第2拡散領域115から第2パッド123まで間の至るところで一様な幅を有している。
第2引出し電極124の先端部は、角部が切除された略矩形状に形成されていて、素子領域103の第5列目を横切って、第1電極109に間隔を隔てて近接する位置に配置されている。第2拡散領域115を覆う第2引出し電極124は、コンタクト孔117内に入り込み、当該第2拡散領域115との間でオーミック接触を形成している。
第1および第2電極膜119,120は同一の導電材料からなっており、たとえば、Al,AlCu,AlSiCu等を例示できる。第1および第2電極109,110は、絶縁膜116上において、第1および第2電極膜119,120の各周縁部を縁取るスリット125によって、電気的に分離されている。
図17および図18に示すように、絶縁膜116上には、第1および第2電極膜119,120を覆うようにパッシベーション膜111aおよび樹脂膜112がこの順に形成されている。また、半導体基板102の側面には、パッシベーション膜111bが形成されている。パッシベーション膜111a,111bは、たとえば窒化シリコンからなり、樹脂膜112は、たとえばポリイミドからなる。
パッシベーション膜111a,111bおよび樹脂膜112は、保護膜を構成しており、第1および第2引出し電極122,124および素子形成面104への水分の浸入を抑制または防止すると共に、外部からの衝撃等を吸収し、双方向ツェナーダイオード耐久性の向上に寄与している。
パッシベーション膜111aおよび樹脂膜112には、第1および第2パッド121,123を選択的に露出させるパッド開口126,127が形成されている。パッド開口126,127を埋め戻すように第1および第2接続電極109a,110aが形成されている。第1および第2接続電極109a,110aは、一層の導電材料(たとえばNi層)からなる。第1および第2接続電極109a,110aは、樹脂膜112の表面から突出するように形成されている。
次に、図19を参照して、第1および第2拡散領域114,115の各配置および各サイズについて具体的に説明する。
図19は、図15に示す第1および第2拡散領域114,115を含む領域を拡大した平面図である。
図19に示すように、第1および第2拡散領域114,115の列方向の幅W101は、5μm〜15μm(この形態では、9μm)であり、行方向の幅W102は、20μm〜40μm(この形態では、28.8μm)である。また、第1および第2拡散領域114,115間の幅W103は、5μm〜25μmであってもよい。
また、コンタクト孔117の列方向の幅W104は、1μm〜10μm(この形態では、4μm)であり、行方向の幅W105は、10μm〜30μm(この形態では、23.8μm)である。当該平面視において、第1拡散領域114の周縁部からコンタクト孔117の周縁部までの幅W106は、2.5μm程度であってもよい。
また、第1および第2引出し電極122,124の列方向の各幅W107は、10μm〜20μm(この形態では、14μm)である。当該平面視において、第1および第2拡散領域114,115の周縁部から第1および第2引出し電極122,124のスリット125までの幅W108は、2.5μm程度であってもよい。また、スリット125間の幅W109は、3μm〜10μmであってもよい。
次に、図20(a),(b)を参照して、双方向ツェナーダイオード101の電気的構造について説明する。
図20(a)は、図14に示す双方向ツェナーダイオード101の電気的構造を説明するための電気回路図であり、図20(b)は、図14に示す双方向ツェナーダイオード101の端子間容量Ct(第1電極109および第2電極110間の総容量)を説明するための電気回路図である。なお、図20(a),(b)は、互いに隣り合う一対の第1および第2引出し電極122,124を抜き出して、電気回路図に直した図である。
図20(a)に示すように、複数の第1ツェナーダイオードD101および複数の第2ツェナーダイオードD102によって、1つの双方向ツェナーダイオード101が構成されている。第1ツェナーダイオードD101は、半導体基板102とpn接合された各第1拡散領域114に形成されている(図17および図18参照)。各第1ツェナーダイオードD101のカソードは、第1接続電極109aに対して共通に接続されている(カソードコモン)。他方、第2ツェナーダイオードD102は、半導体基板102とpn接合された各第2拡散領域115に形成されている(図17および図18参照)。各第2ツェナーダイオードD102のカソードは、第2接続電極110aに対して共通に接続されている(カソードコモン)。
一方、第1および第2ツェナーダイオードD101,D102の各アノードは、半導体基板102を介して共通に接続されている(アノードコモン)。つまり、第1ツェナーダイオードD101と第2ツェナーダイオードD102とは、半導体基板102を介して逆直列接続されている。このようにして、1つの双方向ツェナーダイオード101が構成されている。
図20(b)に示すように、第1および第2引出し電極122,124には、それぞれ5つのキャパシタC101が寄生容量として並列に接続されている。第1および第2拡散領域114,115は、等しい容量成分(寄生容量。この形態では、1pF)を有している。
つまり、第1および第2引出し電極122,124は、それぞれ5pFの寄生容量を有している。また、一対の第1および第2引出し電極122,124は、互いに直列に接続されている。したがって、一対の第1および第2引出し電極122,124は、2.5pFの寄生容量を有している。
図15に示すように、このような一対の第1および第2引出し電極122,124が6つ並列に接続されている。したがって、図15に示す配置例の場合、理論値として、2.5pF×6対=15.0pFの端子間容量Ctを得ることができる。
この形態では、代表例に加えて、第1および第2拡散領域114,115の配置を変更したものを複数用意して、端子間容量Ct、ピークパルス電力(Ppk:Peak Pulse Power)、ESD(Electrostatic Discharge)耐量を調べた。以下、図21において参考例に係る双方向ツェナーダイオード150の構成を説明した後、この形態に係る双方向ツェナーダイオード101の配置例および評価結果について説明する。
図21は、参考例に係る双方向ツェナーダイオード150の模式的な平面図である。
参考例に係る双方向ツェナーダイオード150が、この形態に係る双方向ツェナーダイオード101と異なる点は、第1拡散領域114および第2拡散領域115が素子領域103に1つずつ形成されている点である。図21において、図14〜図20に示された各部に対応する部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
第1および第2拡散領域114,115の列方向の幅W110は、114μmであり、行方向の幅W111は、174μmである。また、コンタクト孔117の列方向の幅W112は、104μmであり、行方向の幅W113は、164μmである。また、第1および第2引出し電極122,124の列方向の各幅W114は、124μmである。
このように、参考例に係る双方向ツェナーダイオード150では、比較的に大きな面積を有する第1および第2拡散領域114,115が形成されている。
図22は、この形態に係る双方向ツェナーダイオード101の第1および第2拡散領域114,115の配置例を説明するための模式的な平面図である。
図22(a)〜図22(g)は、順に配置例101、配置例102、・・・配置例107を示す平面図である。配置例101、配置例102、・・・配置例107の順に、第1および第2拡散領域114,115の個数を減らして形成している。なお、図22(a)に示す配置例101は、図14〜図20において述べた代表例である。
図22(a)〜図22(g)に示すように、各配置例101〜107において、第1および第2拡散領域114,115は、互いに対称に構成されている。より具体的には、第1および第2拡散領域114,115は、平面視において、素子形成面104の中央部(たとえば、重心)に対して点対称に構成されている。すなわち、素子形成面104に直交する所定の鉛直軸線周りに半導体基板102を180度回転させた場合、第1および第2拡散領域114,115の位置は、回転前における第1および第2拡散領域114,115の位置と一致している。さらに、配置例101,104,107を参照すれば、第1および第2拡散領域114,115は、平面視において、第3行目を通る直線に対して、互いに線対称に形成されている。
これらの対称構造によれば、第1電極109および第2電極110間における電気的特性を対称にすることができる。つまり、第1接続電極109aを正極とし第2接続電極110aを負極として電圧を印加した場合の電圧対電流特性、および第2接続電極110aを正極とし第1接続電極109aを負極として電圧を印加した場合の電圧対電流特性を実質的に等しくできる。
図23は、図21に示す参考例に係る双方向ツェナーダイオード150および図22に示すこの形態に係る双方向ツェナーダイオード101の配置例101〜107の仕様および電気的特性を示す表である。図24は、端子間容量Ct対第1および第2拡散領域114,115の面積を示すグラフである。図25は、ピークパルス電力Ppk対第1および第2拡散領域114,115の面積を示すグラフである。図26は、ピークパルス電力Ppk対第1および第2拡散領域114,115の周囲長を示すグラフである。
図23の表および図24のグラフに示すように、双方向ツェナーダイオード101の端子間容量Ctは、第1および第2拡散領域114,115の各面積に依存していることが分かる。すなわち、第1および第2拡散領域114,115の各面積の増加に伴い端子間容量Ctも増加し、第1および第2拡散領域114,115の各面積の減少に伴い端子間容量Ctも減少する。
なお、第1拡散領域114の面積とは、半導体基板102の素子形成面104を法線方向から見た平面視において、半導体基板102と第1拡散領域114との境界線によって取り囲まれた領域の総面積を意味する。同様に、第2拡散領域115の面積とは、半導体基板102の素子形成面104を法線方向から見た平面視において、半導体基板102と第2拡散領域115との境界線によって取り囲まれた領域の総面積を意味する。
一般的に、ピークパルス電力Ppkは、第1および第2拡散領域114,115の各面積を大きくすることによって、向上させることが可能である。しかしながら、第1および第2拡散領域114,115の面積を大きくすると、端子間容量Ctも同時に大きくなる(図24のグラフ参照)という背反が生じる。そのため、高いピークパルス電力Ppkおよび低い端子間容量Ctを両立するのは困難であると考えられる。
ここで、図23の表および図25のグラフを参照すれば、配置例101〜107に係るピークパルス電力Ppkは、第1および第2拡散領域114,115の各面積が大きくなるにつれて、向上しているのが分かる。つまり、配置例101〜107においては、第1および第2拡散領域114,115の各面積と、ピークパルス電力Ppkとが比例関係にあると言える。
一方、参考例に係る第1および第2拡散領域114,115の各面積(=43923μm2)は、配置例101に係る第1および第2拡散領域114,115の各面積(=31595μm2)よりも比較的に大きく形成されているが、ピークパルス電力Ppkの値が低い。
図25のグラフをピークパルス電力Ppk対第1および第2拡散領域114,115の各周囲長に直したものが、図26のグラフである。
図23の表および図26のグラフに示すように、ピークパルス電力Ppkは、第1および第2拡散領域114,115の各周囲長に依存していることが確認できる。すなわち、ピークパルス電力Ppkは、第1および第2拡散領域114,115の各周囲長の増加に伴い増加し、第1および第2拡散領域114,115の各周囲長の減少に伴い減少している。このことから、ピークパルス電力Ppkは、第1および第2拡散領域114,115の各面積と相関関係がなく、第1および第2拡散領域114,115の各周囲長に比例していることが分かる。
つまり、限られた面積(素子領域103)の範囲内において、第1および第2拡散領域114,115の各周囲長を長くすることにより、ピークパルス電力Ppkを向上できることが分かる。より具体的に、配置例101〜107のように、第1および第2拡散領域114,115の各面積を6000μm2〜32000μm2、第1および第2拡散領域114,115の各周囲長を470μm〜2500μmにすることにより、20W〜80pFのピークパルス電力Ppkを達成できる。
さらに、この実験結果より、第1および第2拡散領域114,115の各面積を所定の値に固定しつつ、第1および第2拡散領域114,115の各周囲長を長くすることにより、端子間容量Ctとピークパルス電力Ppkとを互いに切り離して設定できることが分かる。
各配置例101〜107における第1および第2拡散領域114,115の個数と、端子間容量Ctとの関係を図27に示す。図27は、端子間容量Ct対第1および第2拡散領域114,115の個数を示すグラフである。
図23の表および図27のグラフに示すように、第1および第2拡散領域114,115の個数が多く設定されるにつれて、端子間容量Ctも比例的に増加している。図23の表を参照すれば、端子間容量Ctの理論値と測定値との間に若干の誤差が生じている。これは、第1および第2拡散領域114,115を全く形成しない場合の容量成分(たとえば、第1および第2電極膜119,120における寄生容量等)が端子間容量Ctに含まれて検出されているためである。図27のグラフを参照すれば、第1および第2拡散領域114,115を全く形成しない場合の端子間容量Ctは1.5pF程度である。この端子間容量Ct(=1.5pF)を、各理論値に加えると、概ね、測定値と一致した結果が得られた(たとえば、配置例101の場合、1.5pF+15.0pF=16.5pF≒16.58pFである)。
この結果から、双方向ツェナーダイオード101の端子間容量Ctを、第1および第2拡散領域114,115の構成比率を調節することによって、調節できることが分かる。また、配置例101〜107によれば、[pF]単位で、双方向ツェナーダイオード101の端子間容量Ctを、調節できることが分かる。
以上のように、この形態によれば、複数の第1および第2拡散領域114,115によって、複数の第1および第2ツェナーダイオードD101,D102からなる1つの双方向ツェナーダイオード101が形成されている。
双方向ツェナーダイオード101における端子間容量Ctは、第1および第2拡散領域114,115の各面積と比例関係にある。つまり、第1および第2拡散領域114,115の各面積を小さく形成することによって、端子間容量Ctを小さくできる。一方、双方向ツェナーダイオード101におけるピークパルス電力Ppkは、第1および第2拡散領域114,115の各周囲長と比例関係にある。すなわち、第1および第2拡散領域114,115の各周囲長を長く形成することにより、ピークパルス電力Ppkを向上できる。
したがって、限られた素子領域103の面積の範囲内において、複数の第1および第2拡散領域114,115を形成することにより、比較的に大きな第1拡散領域114および第2拡散領域115を1つずつ形成する場合(図21も併せて参照)に比べて、周囲長を長くできる。したがって、ピークパルス電力Ppkを向上させる手段として、第1および第2拡散領域114,115の各面積を必要以上に増加させなくて済むので、端子間容量Ctの増加を抑制しつつ、ピークパルス電力Ppkを向上できる(図25のグラフおよび図26のグラフ参照)。
また、この構成によれば、予め定められた容量成分(寄生容量)を有する複数の第1および第2拡散領域114,115(複数の第1および第2ツェナーダイオードD101,D102)が形成されている(図20(a)および図20(b)参照)。したがって、第1および第2ツェナーダイオードD101,D102の構成比率を調節することにより、端子間容量Ctの値を容易に調節できる。よって、大幅な設計変更を施すまでもなく、目的に応じた種々の端子間容量Ctを容易に実現できる。これにより、設計の自由度を高めることができる。
しかも、この構成によれば、第1および第2拡散領域114,115の各容量成分(寄生容量)が1pFに設定されているので、双方向ツェナーダイオード101の端子間容量Ctを[pF]単位で調節できる。よって、双方向ツェナーダイオード101が使用されるアプリケーションの仕様や目的に併せて、端子間容量Ctを精確に調節できる。
また、半導体基板102がp型の半導体基板であるので、半導体基板102上にエピタキシャル層を形成しなくても、安定した特性を実現できる。すなわち、n型の半導体基板は、抵抗率の面内ばらつきが大きいので、抵抗率の面内ばらつきの少ないエピタキシャル層を表面に形成し、このエピタキシャル層に不純物拡散層を形成してpn接合を形成する必要がある。これに対して、p型の半導体基板102は、抵抗率の面内ばらつきが少ないので、エピタキシャル層を形成することなく、安定した特性の双方向ツェナーダイオードをp型の半導体基板102のいずれの箇所からも切り出すことができる。よって、p型の半導体基板102を用いることによって、製造工程を簡単にでき、かつ製造コストを低減できる。
次に、双方向ツェナーダイオード101の製造工程の一例について説明する。
図28は、図14に示す双方向ツェナーダイオード101の製造工程の一例を説明するためのフローチャートである。図29は、図28の製造工程に適用される半導体ウエハ132の模式的な平面図である。図30Aおよび図30Bは、図28に示す裏面研磨および個片化工程を説明するための模式的な断面図である。なお、図30Aおよび図30Bでは、第1および第2拡散領域114,115の図示を省略して示している。
まず、図29に示すように、半導体基板102の元基板としてのp+型の半導体ウエハ132が用意される。半導体ウエハ132の表面134は半導体基板102の素子形成面104に対応しており、半導体ウエハ132の裏面135は半導体基板102の裏面105に対応している。
半導体ウエハ132の表面134には、複数の双方向ツェナーダイオード101が形成されるチップ領域131が、行列状に配列されて設定されている。互いに隣り合うチップ領域131の間には、境界領域130が設けられている。境界領域130は、略一定の幅を有する帯状の領域であり、直交する二方向に延びて格子状に形成されている。
次に、図28に示すように、半導体ウエハ132の表面134に、絶縁膜116が形成される(ステップS101:絶縁膜形成)。次に、絶縁膜116上にレジストマスクが形成される(ステップS102:レジストマスク形成)。レジストマスクを用いたエッチングによって、複数の第1および第2拡散領域114,115に対応する開口が絶縁膜116に形成される(ステップS103:絶縁膜開口)。
次に、レジストマスクを剥離した後に、絶縁膜116に形成された開口から露出する半導体ウエハ132の表面134にn型不純物が注入される(ステップS104:n型不純物注入)。n型不純物の注入は、n型不純物としての燐を表面に堆積させる工程(いわゆるリンデポ)によって行われてもよいし、n型不純物イオン(たとえば燐イオン)の注入によって行われてもよい。
次に、必要に応じてCVD法により絶縁膜116を厚膜化した後、半導体ウエハ132に注入された不純物イオンを活性化するための熱処理(ドライブ)が行われる(ステップS105:熱処理(ドライブ))。これにより、半導体ウエハ132の表面部に複数の第1および第2拡散領域114,115が形成される。
次に、コンタクト孔117に整合する開口を有するレジストマスクが絶縁膜116の上に形成される(ステップS106:コンタクト孔形成)。レジストマスクを介するエッチングによって、絶縁膜116にコンタクト孔117が形成される。その後、レジストマスクが剥離される。
次に、たとえばスパッタリングによって、第1および第2電極膜119,120を構成する電極膜が絶縁膜116上に形成される(ステップS107:電極膜形成)。この形態では、Alからなる電極膜が形成される。そして、電極膜上に、スリット125に対応する開口パターンを有するレジストマスクが形成される(ステップS108:レジストマスク形成)。レジストマスクを介するエッチング(たとえば反応性イオンエッチング)によって、電極膜にスリット125が形成される(ステップS109:電極膜パターニング)。これにより、電極膜が、第1および第2電極膜119,120に分離される。
次に、レジストマスクを剥離した後、たとえばCVD法によって窒化膜等のパッシベーション膜111aが形成される(ステップS110:パッシベーション膜形成)。次に、感光性ポリイミド等を塗布することにより樹脂膜112が形成される(ステップS111:ポリイミド塗布)。次に、パッド開口126,127に対応するパターンで樹脂膜112を露光する。その後、樹脂膜112が現像される(ステップS112:露光・現像)。
次に、必要に応じて、樹脂膜112をキュアするための熱処理が行われる(ステップS113:ポリイミドキュア)。そして、樹脂膜112をマスクとしたドライエッチング(たとえば反応性イオンエッチング)によってパッシベーション膜111aが除去される(ステップS114:パッド開口)。これにより、パッド開口126,127が形成される。
次に、たとえば、パッド開口126,127を埋め戻すように、導電材料(たとえばNi層)がめっき成膜される(ステップS115:電極形成)。これにより、第1および第2接続電極109a,110aが形成される。
次に、図30Aに示すように、境界領域130(図29も併せて参照)に切断用の溝137を形成するためのレジストパターン138が形成される(ステップS116:レジストマスク形成)。レジストパターン138は、境界領域130に整合する格子状の開口を有している。レジストパターン138を介してプラズマエッチングが行われる(ステップS117:溝形成)。これにより、半導体ウエハ132が表面134から所定の深さまでエッチングされて、境界領域130に沿った切断用の溝137が形成される。
切断用の溝137に取り囲まれたチップ領域131に半製品141が1つずつ位置していて、これらの半製品141は、行列状に整列配置されている。このように切断用の溝137を形成することによって、半導体ウエハ132を複数のチップ領域131毎に分離可能にする。切断用の溝137が形成された後、レジストパターンは、剥離される。
次に、CVD法によって、窒化シリコンからなるパッシベーション膜111bを、半導体ウエハ132の表面に形成する。このとき、パッシベーション膜111bは、切断用の溝137の内周面(底面および側面)の全域に形成される。
次に、図30Bに示すように、半導体ウエハ132が裏面135側から、切断用の溝137の底面に到達するまで研削される(ステップS118:裏面研磨/個片化)。これによって、複数のチップ領域131が個片化されて、双方向ツェナーダイオード101を得ることができる。このように、切断用の溝137を形成してから半導体ウエハ132を裏面135側から研削すれば、半導体ウエハ132に形成された複数のチップ領域131を一斉に個片化できる。よって、製造時間の短縮によって双方向ツェナーダイオード101の生産性の向上を図ることができる。なお、完成した半導体基板102の裏面105を研磨やエッチングすることによって鏡面化して裏面105を綺麗にしてもよい。
<本発明の実施形態>
図31は、本発明の一実施形態に係る双方向ツェナーダイオード201の模式的な斜視図である。
図31に示すように、双方向ツェナーダイオード201は、微小なチップ部品であり、本体部を構成する半導体基板202を含む。
半導体基板202は、一端部および他端部を有する略長方体形状に形成されており、その表面の内方部に複数のダイオードが形成される矩形状の素子領域203が設定されている。以下では、素子領域203が設定された面を素子形成面204といい、その反対側の面を裏面205という。
半導体基板202の平面形状は、長手方向に沿う長辺206の長さL201が、0.3mm〜0.6mmであり、短手方向に沿う短辺207の長さD201が、0.15mm〜0.3mmである。また、半導体基板202の厚さT201は、たとえば0.1mmである。つまり、半導体基板202としては、いわゆる0603チップ、0402チップ、03015チップ等が適用される。
半導体基板202の各コーナー部208は、平面視で面取りされたラウンド形状であってもよい。ラウンド形状であれば、製造工程や実装時におけるチッピングを抑制できる。半導体基板202の素子形成面204における一端部側および他端部側には、第1電極209の第1接続電極209aと第2電極210の第2接続電極210aとが形成されている。
第1接続電極209aおよび第2接続電極210aは、素子形成面204の一端部側および他端部側から素子領域203を挟み込むように、互いに間隔を空けて形成されている。第1接続電極209aおよび第2接続電極210aは、半導体基板202の短辺207に沿って、平面視略長方形状に形成されている。
なお、半導体基板202では、素子形成面204および側面のそれぞれの全域がパッシベーション膜211a,211bで覆われている。また、素子形成面204上のパッシベーション膜211aの全域を覆うように樹脂膜212が形成されている。そのため、厳密には、図31では、素子形成面204および側面のそれぞれの全域は、パッシベーション膜211a,211bおよび樹脂膜212の内側(裏側)に位置していて、外部に露出されていない。パッシベーション膜211a,211bおよび樹脂膜212については、以降で詳説する。
この形態では、大別して2つの方式で複数のダイオードを素子領域203に形成している。この異なる2つの方式を、それぞれ第1配置例および第2配置例と呼ぶこととする。以下、第1配置例について説明した後、第2配置例について説明する。
<第1配置例>
図32は、図31に示す双方向ツェナーダイオード201の第1配置例を示す模式的な平面図である。図33は、図32に示す第1拡散領域214および第2拡散領域215の配置を示す平面図である。図34は、図32に示す切断面線XXXIV-XXXIVから見た断面図である。図35は、図32に示す切断面線XXXV-XXXVから見た断面図である。なお、図32〜図35では、第1配置例の一配置例を代表例として示している。
半導体基板202は、p+型の半導体基板202(シリコン基板)である。素子領域203における半導体基板202の表面部(素子形成面204)には、n+型の複数の第1拡散領域214と、n+型の複数の第2拡散領域215とが形成されている。第1および第2拡散領域214,215は、同一の深さおよび同一の不純物濃度で形成されており、半導体基板202との間でpn接合を形成している。複数の第1および第2拡散領域214,215は、図33に示すように、素子領域203において規則的に整列するように形成されている。
より具体的に、素子領域203には、図33に示すように、行方向および列方向に沿って行列状に区画された複数のセル203A(この形態では12行×5列=60マスからなるセル203A)が設定されている。
各セル203Aは、平面視略長方形状に区画されており、その内方部に第1拡散領域214または第2拡散領域215が一つずつ形成されている。第1および第2拡散領域214,215は、各セル203Aにおいて、行方向に沿って延びる平面視略矩形状に形成されている。より具体的に、各第1および第2拡散領域214,215は、同一の面積を有しており、4隅が切除された長方形状に形成されている。なお、セル203Aとは、第1および第2拡散領域214,215を規則的に配置するために定められた仮想的な領域であり、むろん、12行×5列以上からなる複数のセル203Aを有する素子領域203に設定してもよい。
図32および図33において二点鎖線で示すように、複数の第1拡散領域214および複数の第2拡散領域215が素子領域203の中央部に集約して形成されている。より具体的には、複数の第1拡散領域214および複数の第2拡散領域215が、素子領域203の中央部において、第1接続電極209aおよび第2接続電極210aの対向方向の中央部を横切る横断方向に沿う中央拡散領域群228と、中央拡散領域群228と隣り合う補助拡散領域群229とを構成している。
第2接続電極210a側から第1接続電極209a側に向けて順に第1列目、第2列目、・・・第5列目と定義すると、素子領域203の第3列目の列方向に沿って、複数の第1拡散領域214および複数の第2拡散領域215が互いに隣り合うように形成されている。これにより、第3列目において、複数の第1拡散領域214および複数の第2拡散領域215を含む帯状の中央拡散領域群228が構成されている。中央拡散領域群228は、素子領域203の第3列目の列方向に沿って、第1行目から第12行目に至るまで形成されている。
また、第2列目および第4列目の各列方向に沿って、複数の第1拡散領域214および複数の第2拡散領域215が互いに隣り合うように形成されている。これにより、複数の第1拡散領域214および複数の第2拡散領域215を含む補助拡散領域群229が構成されている。補助拡散領域群229は、中央拡散領域群228の列方向中央部に選択的に形成されている。より具体的には、第2列目における補助拡散領域群229は、第3行目から第7行目に至るように形成されている。また、第4列目における補助拡散領域群229は、第4行目から第9行目に至るように形成されている。このようにして、補助拡散領域群229が、列方向に関して、中央拡散領域群228よりも短い帯状に形成され、中央拡散領域群228の列方向中央部を互いに挟むように形成されている。
図33に示すように、第1拡散領域214が、奇数行に配置されており、第2拡散領域215が、偶数行に配置されている。したがって、中央拡散領域群228および補助拡散領域群229において、第1および第2拡散領域214,215は、列方向に沿って交互に配列されている。
半導体基板202の素子形成面204には、絶縁膜216(図31〜図33では図示せず)が形成されている。絶縁膜216は、たとえば、シリコン酸化膜である。絶縁膜216には、第1および第2拡散領域214,215を選択的に露出させるコンタクト孔217が形成されている(図32および図33の一点鎖線部も併せて参照)。
コンタクト孔217は、各第1および第2拡散領域214,215の幅よりも狭い幅で形成されている。より具体的に、コンタクト孔217は、各第1および第2拡散領域214,215の内方領域側に、各第1および第2拡散領域214,215の周縁部から一定の間隔を空けた位置に形成されている。絶縁膜216上には、第1電極209と第2電極210とが形成されている。
第1電極209は、第1接続電極209aと、第1接続電極209aに電気的に接続された第1電極膜219とを含む。第1電極膜219は、さらに、第1パッド221と、第1パッド221と一体的に形成された第1引出し電極222とを有している。
第1パッド221は、素子形成面204の一端部側に平面視略矩形状に形成されている。第1パッド221に第1接続電極209aが接続されている。これにより、第1引出し電極222は、第1パッド221を介して第1接続電極209aに電気的に接続されている。
第1引出し電極222は、第1パッド221から行方向に沿って直線状に形成されている。より具体的には、第1引出し電極222は、第1パッド221から素子領域203における奇数行に向けて中央拡散領域群228および/または補助拡散領域群229を横切るように直線状に形成されている。つまり、第1引出し電極222は、櫛歯形状に形成されている。第1引出し電極222は、第1拡散領域214の幅よりも広く形成されていて、第1拡散領域214を覆うように形成されている。第1引出し電極222は、第1拡散領域214から第1パッド221まで間の至るところで一様な幅を有している。
第1引出し電極222の先端部は、角部が切除された略矩形状に形成されていて、素子領域203の第1列目を横切って、第2電極210に間隔を隔てて近接する位置に配置されている。すなわち、平面視において、第1拡散領域214が、第1引出し電極222の長手方向の中央部の領域に形成されている。第1拡散領域214を覆う第1引出し電極222は、コンタクト孔217内に入り込み、当該第1拡散領域214との間でオーミック接触を形成している。
第2電極210は、第2接続電極210aと、第2接続電極210aに電気的に接続された第2電極膜220とを含む。第2電極膜220は、さらに、第2パッド223と、第2パッド223と一体的に形成された第2引出し電極224とを有している。
第2パッド223は、素子形成面204の他端部(第1パッド221と反対側の端部)に平面視略矩形状に形成されている。第2パッド223に第2接続電極210aが接続されている。これにより、第2引出し電極224は、第2パッド223を介して第2接続電極210aに電気的に接続されている。
第2引出し電極224は、第2パッド223から行方向に沿って直線状に形成されている。より具体的には、第2引出し電極224は、第2パッド223から素子領域203における偶数行に向けて中央拡散領域群228および/または補助拡散領域群229を横切るように直線状に形成されている。つまり、第2引出し電極224は、第1引出し電極222の長手方向に沿って、櫛歯形状に形成されている。これにより、第1および第2電極膜219,220は、第1および第2引出し電極222,224が、互いに噛み合う櫛歯形状に形成されている。また、第2引出し電極224は、第2拡散領域215の幅よりも広く形成されていて、第2拡散領域215を覆うように形成されている。第2引出し電極224は、第2拡散領域215から第2パッド223まで間の至るところで一様な幅を有している。
第2引出し電極224の先端部は、角部が切除された略矩形状に形成されていて、素子領域203の第5列目を横切って、第1電極209に間隔を隔てて近接する位置に配置されている。すなわち、平面視において、第2拡散領域215が、第2引出し電極224の長手方向の中央部の領域に形成されている。第2拡散領域215を覆う第2引出し電極224は、コンタクト孔217内に入り込み、当該第2拡散領域215との間でオーミック接触を形成している。
第1および第2電極膜219,220は同一の導電材料からなっており、たとえば、Al,AlCu,AlSiCu等を例示できる。第1および第2電極209,210は、絶縁膜216上において、第1および第2電極膜219,220の各周縁部を縁取るスリット125によって、電気的に分離されている。
図34および図35に示すように、絶縁膜216上には、第1および第2電極膜219,220を覆うようにパッシベーション膜211aおよび樹脂膜212がこの順に形成されている。また、半導体基板202の側面には、パッシベーション膜211bが形成されている。パッシベーション膜211a,211bは、たとえば窒化シリコンからなり、樹脂膜212は、たとえばポリイミドからなる。
パッシベーション膜211a,211bおよび樹脂膜212は、保護膜を構成しており、第1および第2引出し電極222,224および素子形成面204への水分の浸入を抑制または防止すると共に、外部からの衝撃等を吸収し、双方向ツェナーダイオード耐久性の向上に寄与している。
パッシベーション膜211aおよび樹脂膜212には、第1および第2パッド221,223を選択的に露出させるパッド開口226,227が形成されている。このパッド開口226,227を埋め戻すように第1および第2接続電極209a,210aが形成されている。第1および第2接続電極209a,210aは、一層の導電材料(たとえばNi層)からなる。第1および第2接続電極209a,210aは、樹脂膜212の表面から突出するように形成されている。
次に、図36を参照して、第1および第2拡散領域214,215の各配置および各サイズについて具体的に説明する。
図36は、図32に示す第1および第2拡散領域214,215を含む領域を拡大した平面図である。
図36に示すように、第1および第2拡散領域214,215の列方向の幅W201は、5μm〜15μm(この形態では、9μm)であり、行方向の幅W202は、20μm〜40μm(この形態では、28.8μm)である。また、第1および第2拡散領域214,215間の幅W203は、5μm〜25μm(この形態では、12.5μm)である。
また、コンタクト孔217の列方向の幅W204は、1μm〜10μm(この形態では、4μm)であり、行方向の幅W205は、10μm〜30μm(この形態では、23.8μm)である。当該平面視において、第1拡散領域214の周縁部からコンタクト孔217の周縁部までの幅W206は、2.5μm程度であってもよい。
また、第1および第2引出し電極222,224の列方向の各幅W207は、10μm〜20μm(この形態では、14μm)である。当該平面視において、第1および第2拡散領域214,215の周縁部から第1および第2引出し電極222,224のスリット125までの幅W208は、2.5μm程度であってもよい。また、スリット125間の幅W209は、3μm〜10μmであってもよい。
次に、図37を参照して、双方向ツェナーダイオード201の電気的構造について説明する。
図37は、図31に示す双方向ツェナーダイオード201の内部の電気的構造を説明するための電気回路図である。
図37に示すように、複数の第1ツェナーダイオードD201および複数の第2ツェナーダイオードD202によって、1つの双方向ツェナーダイオード201が構成されている。第1ツェナーダイオードD201は、半導体基板202とpn接合された各第1拡散領域214に形成されている(図34および図35参照)。各第1ツェナーダイオードD201のカソードは、第1接続電極209aに対して共通に接続されている(カソードコモン)。また、第2ツェナーダイオードD202は、半導体基板202とpn接合された各第2拡散領域215に形成されている(図34および図35参照)。各第2ツェナーダイオードD202のカソードは、第2接続電極210aに対して共通に接続されている(カソードコモン)。
一方、第1および第2ツェナーダイオードD201,D202の各アノードは、半導体基板202を介して共通に接続されている(アノードコモン)。つまり、第1ツェナーダイオードD201と第2ツェナーダイオードD202とは、半導体基板202を介して逆直列接続されている。このように、1つの双方向ツェナーダイオード201が構成されている。
<第1配置例の評価>
第1配置例では、代表例に加えて、第1および第2拡散領域214,215の配置をさらに変更したものを複数用意して、ピークパルス電力(Ppk:Peak Pulse Power)、端子間容量Ct(第1電極209および第2電極210間の総容量)、およびESD(Electrostatic Discharge)耐量を調べた。以下、図38〜図41を参照して、より具体的に説明する。
図38は、第1配置例における第1および第2拡散領域214,215の配置例を説明するための模式的な平面図である。
図38(a)〜図38(c)は、順に配置例201、配置例202、および配置例203を示す平面図である。なお、図38(a)に示す配置例201は、図31〜図37において説明した第1配置例の代表例である。
図38(b)に示す配置例202が、前述の代表例(配置例201)と異なる点は、補助拡散領域群229が、列方向に関して、中央拡散領域群228の両端部側に形成されている点である。すなわち、補助拡散領域群229は、中央拡散領域群228の列方向中央部を互いに挟み込まないように形成されている。
図38(c)に示す配置例203が、前述の代表例(配置例201)と異なる点は、中央拡散領域群228および補助拡散領域群229が形成されていない点である。より具体的に、第1および第2拡散領域214,215は、素子領域203における第3列目以外の列に形成されている。第1列目および第2列目には、第2拡散領域215が列方向に沿って形成されており、第4列目および第5列目には、第1拡散領域214が列方向に沿って形成されている。第2列目に形成された第2拡散領域215の総数は、第1列目に形成された第2拡散領域215の総数よりも1つ少ない(第2列目の3行目参照)。同様に、第4列目に形成された第1拡散領域214の総数は、第5列目に形成された第1拡散領域214の総数よりも1つ少ない(第4列目の11行目参照)。
各配置例201〜203を参照すれば、第1および第2拡散領域214,215は、平面視において、互いに対称に構成されている。より具体的には、第1および第2拡散領域214,215は、平面視において、素子形成面204の中央部(たとえば、重心)に対して点対称に構成されている。すなわち、素子形成面204に直交する所定の鉛直軸線周りに半導体基板202を180度回転させた場合、第1および第2拡散領域214,215の位置は、回転前における第1および第2拡散領域214,215の位置と一致している。
このような対称構造によれば、第1電極209および第2電極210間における電気的特性を対称にすることができる。つまり、第1接続電極209aを正極とし第2接続電極210aを負極として電圧を印加した場合の電圧対電流特性、および第2接続電極210aを正極とし第1接続電極209aを負極として電圧を印加した場合の電圧対電流特性を実質的に等しくできる。
図39は、図38に示す各配置例201〜203の仕様を示す表である。図40は、図39の表に示す端子間容量Ctを反映させたグラフである。図41は、図39の表に示すピークパルス電力Ppkを反映させたグラフである。図42は、図39の表に示すESD耐量を反映させたグラフである。
図39の表に示すように、配置例201〜203は、第1および第2拡散領域214,215の各面積および各周囲長がいずれも同一になるように形成されている。第1および第2拡散領域214,215の各面積は11585μm2であり、第1および第2拡散領域214,215の各周囲長は872μmである。
第1拡散領域214の面積とは、半導体基板202の素子形成面204を法線方向から見た平面視において、半導体基板202と第1拡散領域214との境界線によって取り囲まれた領域の総面積を意味する。同様に、第2拡散領域215の面積とは、半導体基板202の素子形成面204を法線方向から見た平面視において、半導体基板202と第2拡散領域215との境界線によって取り囲まれた領域の総面積を意味する。
また、第1拡散領域214の周囲長とは、半導体基板202の素子形成面204における半導体基板202と第1拡散領域214との境界線の総延長を意味する。また、同様に、第2拡散領域215の周囲長とは、半導体基板202の素子形成面204における半導体基板202と第2拡散領域215との境界線の総延長を意味する。
双方向ツェナーダイオード201の端子間容量Ctは、第1および第2拡散領域214,215の各面積に依存している。すなわち、第1および第2拡散領域214,215の各面積の増加に伴い端子間容量Ctも増加し、第1および第2拡散領域214,215の各面積の減少に伴い端子間容量Ctも減少する。
一方、双方向ツェナーダイオード201のピークパルス電力Ppkは、第1および第2拡散領域214,215の各面積に依存している。すなわち、第1および第2拡散領域214,215の各面積の増加に伴いピークパルス電力Ppkも増加し、第1および第2拡散領域214,215の各面積の減少に伴いピークパルス電力Ppkも減少する。つまり、ピークパルス電力Ppkと端子間容量Ctとは、背反の関係にある。
配置例201〜203のように、第1および第2拡散領域214,215の各面積が同一(=11585μm2)であれば、第1および第2拡散領域214,215の各容量成分(寄生容量)を実質的に同一にすることができる。つまり、第1および第2拡散領域214,215の各面積を同一にすることにより、第1および第2拡散領域214,215の配置に依らずに、双方向ツェナーダイオード201の端子間容量Ctの値を実質的に同一にすることができる。
ここで、図39の表および図40のグラフに示すように、配置例201〜203によれば、いずれも7.1pF以下(具体的には、6.8pF<端子間容量Ct<7.1pF)の端子間容量Ctを実現できている。このことから、第1および第2拡散領域214,215の各配置による端子間容量Ctの大幅な変動がないことが確認できた。
図39の表および図41のグラフに示すように、配置例201〜203によれば、30W〜38Wのピークパルス電力Ppkを実現できている。この結果から、第1および第2拡散領域214,215の各面積を固定することにより、不所望な端子間容量Ctの増加を確実に抑制しつつ、良好なピークパルス電力Ppkを達成できることが確認できた。
一方、ESD耐量は、第1および第2拡散領域214,215の各周囲長に依存していることが知られている。すなわち、第1および第2拡散領域214,215の各周囲長が長くなるにつれてESD耐量が増加し、第1および第2拡散領域214,215の各周囲長が短くなるにつれてESD耐量が減少する。つまり、良好なESD耐量を望む場合、第1および第2拡散領域214,215の各周囲長を長くすればよい。
図39の表および図42のグラフに示すように、配置例201〜203は、いずれも第1および第2拡散領域214,215が同一の周囲長(=872μm)を有しているが、ESD耐量が配置例203、配置例202、配置例201の順に向上している。この結果から、ESD耐量は、第1および第2拡散領域214,215の各周囲長に加えて、第1および第2拡散領域214,215の配置にも依存していることが分かる。特に、配置例203の場合には、10.5kVのESD耐量であるのに対して、配置例202の場合には16kV、配置例201の場合には、18kVのESD耐量を実現できている。したがって、第1および第2拡散領域214,215を素子領域203の中央部に集約させることにより、ESD耐量を向上できることが確認できた。
以上のように、第1配置例(配置例201〜203)によれば、複数の第1および第2拡散領域214,215が、素子領域203に形成されている。この複数の第1および第2拡散領域214,215によって、複数の第1および第2ツェナーダイオードD201,D202からなる1つの双方向ツェナーダイオード201が形成されている。第1および第2拡散領域214,215の各周囲長は872μmであり、第1および第2拡散領域214,215の各面積は11585μm2である。
これにより、7.1pF以下(より具体的には、6.8pF<端子間容量Ct<7.1pF)の端子間容量Ctを実現しつつ(図39の表および図40のグラフ参照)、30W〜38Wのピークパルス電力Ppkを有する双方向ツェナーダイオード201を実現できる(図39の表および図41のグラフ参照)。
また、配置例201〜203によれば、10kV〜20kV(より具体的には、10.5V〜18.0V)のESD耐量を実現できる。したがって、ESD耐量の下限値を8kV以上と規定するIEC61000−4−2(国際規格)に準拠できる。
さらに、ESD耐量は、第1および第2拡散領域214,215の配置に依存している。配置例201および配置例202のように、第1および第2拡散領域214,215を素子領域203の中央部に集約させることにより、第1および第2拡散領域214,215が素子領域203の中央部に集約されていない配置例203のESD耐量(=10.5kV)よりも高いESD耐量(=16kV〜18kV)を実現できる(図39の表および図42のグラフ参照)。
したがって、配置例201および配置例202によれば、良好な端子間容量Ctおよびピークパルス電力Ppkを実現しつつ、優れたESD耐量を実現できる。よって、信頼性を向上できる双方向ツェナーダイオード201を提供できる。
また、半導体基板202がp型の半導体基板であるので、半導体基板上にエピタキシャル層を形成しなくても、安定した特性を実現できる。すなわち、n型の半導体基板は、抵抗率の面内ばらつきが大きいので、抵抗率の面内ばらつきの少ないエピタキシャル層を表面に形成し、このエピタキシャル層に不純物拡散層を形成してpn接合を形成する必要がある。これに対して、p型の半導体基板202は、抵抗率の面内ばらつきが少ないので、エピタキシャル層を形成することなく、安定した特性の双方向ツェナーダイオードをp型の半導体基板202のいずれの箇所からも切り出すことができる。よって、p型の半導体基板202を用いることによって、製造工程を簡単にでき、かつ製造コストを低減できる。
<第1配置例の製造方法>
図43は、図31に示す双方向ツェナーダイオード201の製造工程の一例を説明するためのフローチャートである。図44は、図43の製造工程に適用される半導体ウエハ232の模式的な平面図である。図45Aおよび図45Bは、図43に示す裏面研磨および個片化工程を説明するための模式的な断面図である。なお、図45Aおよび図45Bでは、第1および第2拡散領域214,215の図示を省略して示している。
まず、図44に示すように、半導体基板202の元基板としてのp+型の半導体ウエハ232が用意される。半導体ウエハ232の表面234は半導体基板202の素子形成面204に対応しており、半導体ウエハ232の裏面235は半導体基板202の裏面205に対応している。
半導体ウエハ232の表面234には、複数の双方向ツェナーダイオード201が形成されるチップ領域231が、行列状に配列されて設定されている。互いに隣り合うチップ領域231の間には、境界領域230が設けられている。境界領域230は、略一定の幅を有する帯状の領域であり、直交する二方向に延びて格子状に形成されている。
次に、半導体ウエハ232の表面234に、絶縁膜216が形成される(ステップS201:絶縁膜形成)。次に、絶縁膜216上にレジストマスクが形成される(ステップS202:レジストマスク形成)。レジストマスクを用いたエッチングによって、複数の第1および第2拡散領域214,215に対応する開口が絶縁膜216に形成される(ステップS203:絶縁膜開口)。
次に、レジストマスクを剥離した後に、絶縁膜216に形成された開口から露出する半導体ウエハ232の表面234にn型不純物が注入される(ステップS204:n型不純物注入)。n型不純物の注入は、n型不純物としての燐を表面に堆積させる工程(いわゆるリンデポ)によって行われてもよいし、n型不純物イオン(たとえば燐イオン)の注入によって行われてもよい。
次に、必要に応じてCVD法により絶縁膜216を厚膜化した後、半導体ウエハ232に注入された不純物イオンを活性化するための熱処理(ドライブ)が行われる(ステップS205:熱処理(ドライブ))。これにより、半導体ウエハ232の表面部に複数の第1および第2拡散領域214,215が形成される。
次に、コンタクト孔217に整合する開口を有するレジストマスクが絶縁膜216の上に形成される(ステップS206:コンタクト孔形成)。レジストマスクを介するエッチングによって、絶縁膜216にコンタクト孔217が形成される。その後、レジストマスクが剥離される。
次に、たとえばスパッタリングによって、第1および第2電極膜219,220を構成する電極膜が絶縁膜216上に形成される(ステップS207:電極膜形成)。この形態では、Alからなる電極膜が形成される。そして、この電極膜上に、スリット125に対応する開口パターンを有するレジストマスクが形成される(ステップS208:レジストマスク形成)。このレジストマスクを介するエッチング(たとえば反応性イオンエッチング)によって、電極膜にスリット125が形成される(ステップS209:電極膜パターニング)。これにより、電極膜が、第1および第2電極膜219,220に分離される。
次に、レジストマスクを剥離した後、たとえばCVD法によって窒化膜等のパッシベーション膜211aが形成される(ステップS210:パッシベーション膜形成)。次に、感光性ポリイミド等を塗布することにより樹脂膜212が形成される(ステップS211:ポリイミド塗布)。次に、パッド開口226,227に対応するパターンで樹脂膜212を露光する。その後、樹脂膜212が現像される(ステップS212:露光・現像工程)。
次に、必要に応じて、樹脂膜212をキュアするための熱処理が行われる(ステップS213:ポリイミドキュア)。そして、樹脂膜212をマスクとしたドライエッチング(たとえば反応性イオンエッチング)によってパッシベーション膜211aが除去される(ステップS214:パッド開口)。これにより、パッド開口226,227が形成される。
次に、たとえば、パッド開口226,227を埋め戻すように、導電材料(たとえばNi層)がめっき成膜される(ステップS215:電極形成)。これにより、第1および第2接続電極209a,210aが形成される。
次に、図45Aに示すように、境界領域230(図44も併せて参照)に切断用の溝237を形成するためのレジストパターン238が形成される(ステップS216:レジストマスク形成)。レジストパターン238は、境界領域230に整合する格子状の開口を有している。レジストパターン238を介してプラズマエッチングが行われる(ステップS217:溝形成)。これにより、半導体ウエハ232が表面234から所定の深さまでエッチングされて、境界領域230に沿った切断用の溝237が形成される。
切断用の溝237に取り囲まれたチップ領域231に半製品241が1つずつ位置していて、これらの半製品241は、行列状に整列配置されている。このように切断用の溝237を形成することによって、半導体ウエハ232を複数のチップ領域231毎に分離可能にする。切断用の溝237が形成された後、レジストパターンは、剥離される。
次に、CVD法によって、窒化シリコンからなるパッシベーション膜211bを、半導体ウエハ232の表面に形成する。このとき、パッシベーション膜211bは、切断用の溝237の内周面(底面および側面)の全域に形成される。
次に、図45Bに示すように、半導体ウエハ232が裏面235側から、切断用の溝237の底面に到達するまで研削される(ステップS218:裏面研磨/個片化)。これによって、複数のチップ領域231が個片化された双方向ツェナーダイオード201を得ることができる。このように、切断用の溝237を形成してから半導体ウエハ232を裏面235側から研削すれば、半導体ウエハ232に形成された複数のチップ領域231を一斉に個片化できる。よって、製造時間の短縮によって双方向ツェナーダイオード201の生産性の向上を図ることができる。なお、完成した半導体基板202の裏面205を研磨やエッチングすることによって鏡面化して裏面205を綺麗にしてもよい。
<第2配置例>
図46は、図31に示す双方向ツェナーダイオード201の第2配置例を示す模式的な平面図である。図47は、図46に示す第1拡散領域214、第2拡散領域215、および疑似ダイオード領域213の配置を示す平面図である。図48は、図46に示す切断面線XLVIII-XLVIIIから見た断面図である。なお、図46〜図48は、第2配置例の一配置例を代表例として示すものである。
第2配置例が、前述の第1配置例と異なる点は、疑似ダイオード領域213をさらに含む点である。その他の構成は、前述の第1配置例と同様である。図46〜図48において、図31〜図45に示された各部に対応する部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
第2配置例における半導体基板202の素子領域203(素子形成面204)には、複数の第1拡散領域214および複数の第2拡散領域215に加えて、複数の疑似ダイオード領域213が規則的に整列するように形成されている。疑似ダイオード領域213は、第1および第2拡散領域214,215と同一の深さおよび同一濃度で形成されており、半導体基板202との間でpn接合を形成している。
疑似ダイオード領域213は、第1および第2拡散領域214,215が形成されている領域以外の領域に形成されている。つまり、疑似ダイオード領域213は、第1および第2拡散領域214,215が素子領域203の中央部に集約されている領域(すなわち、中央拡散領域群228および補助拡散領域群229)以外の領域に形成されている。
より具体的に、疑似ダイオード領域213は、図47に示すように、第1列目および第5列目の列方向に沿って形成されている。また、第2列目および第4列目においては、疑似ダイオード領域213は、補助拡散領域群229が形成されたセル203A以外のセル203A(列方向に関して、中央拡散領域群228の両端部側)に形成されている。セル203Aの内方部において、疑似ダイオード領域213は、第1および第2拡散領域214,215と同一の形状で形成されている。
図48に示すように、絶縁膜216における疑似ダイオード領域213上の部分には、絶縁膜216が選択的に薄くされた薄膜部218が形成されている。この薄膜部218によって、当該絶縁膜216に凹部216aが形成されている。
疑似ダイオード領域213を覆う第1引出し電極222は、絶縁膜216の凹部216a内に入り込み、薄膜部218を挟んで疑似ダイオード領域213と対向している。一方、疑似ダイオード領域213を覆う第2引出し電極224は、絶縁膜216の凹部216a内に入り込み、薄膜部218を挟んで疑似ダイオード領域213と対向している。これにより、疑似ダイオード領域213は、第1および第2接続電極209a,210aから電気的に分離されている。
第2配置例の構成について別の見方をすれば、複数のn+型の拡散領域が素子領域203に行列状に配置されており、複数のコンタクト孔217が、素子領域203の中央部に集約して形成されている(中央拡散領域群228および補助拡散領域群229が形成されている位置と同じ位置に形成されている)と言える。
次に、図49を参照して、第2配置例の電気的構造について説明する。図49は、第2配置例の電気的構造を説明するための電気回路図である。なお、図49は、互いに隣り合う一対の第1および第2引出し電極222,224を抜き出して、電気回路図に直した図である。
図49に示すように、第2配置例では、第1および第2ツェナーダイオードD201,D202に加えて、疑似ツェナーダイオードD203が形成されている。疑似ツェナーダイオードD203は、絶縁膜216(薄膜部218)によって第1および第2接続電極209a,210aから電気的に分離された疑似ダイオード領域213に形成されている(図48も併せて参照)。
疑似ツェナーダイオードD203は、アノード側が、半導体基板202において第1および第2ツェナーダイオードD201,D202と共通に接続(アノードコモン)されている。その一方で、疑似ツェナーダイオードD203は、カソード側が、絶縁膜216(薄膜部218)によって電気的に開放されている。つまり、疑似ツェナーダイオードD203は、電気的に動作し得ない。
このように、第2配置例では、第1および第2ツェナーダイオードD201,D202と、疑似ツェナーダイオードD203とによって、一つの双方向ツェナーダイオード201が構成されている。
図50は、第2配置例における第1拡散領域214、第2拡散領域215、および疑似ダイオード領域213の配置例を説明するための模式的な平面図である。
図50(a)〜図50(c)は、順に配置例204、配置例205、配置例206を示す平面図である。なお、図50(a)に示す配置例204は、図46〜図49において説明した第2配置例の代表例である。
図50(b),(c)に示す配置例205,206は、各々前述の図38(b),(c)に示す第1配置例の配置例202,203に対応しており、疑似ダイオード領域213が形成されている点が異なっている。その他の構成は、前述の配置例202,203と同様である。
<第2配置例の評価>
図51は、図50に示す各配置例204〜206の仕様および電気的特性を示す表である。図52は、図51の表に示す端子間容量Ctを反映させたグラフである。図53は、図51の表に示すピークパルス電力Ppkを反映させたグラフである。図54は、図51の表に示すESD耐量を反映させたグラフである。
図51の表に示すように、第2配置例における第1および第2拡散領域214,215は、いずれも第1配置例における第1および第2拡散領域214,215と同一の周囲長および面積(図39参照)で形成されている。
また、図51の表および図52のグラフに示すように、配置例204〜206の端子間容量Ctは、前述の第1配置例と同様に、7.1pF以下(より具体的には、6.8pF<端子間容量Ct<7.1pF)の端子間容量Ctを実現できている。また、図51の表および図53のグラフに示すように、配置例204〜206によれば、7.1pF以下の端子間容量Ctを確保しつつ、30W〜38W(より具体的には、32W〜34W)のピークパルス電力Ppkを実現できている。
また、図51の表および図54のグラフに示すように、ESD耐量の値は、5kV〜20kV(より具体的には、7.0V〜18.5V)であり、配置例206、配置例205、配置例204の順にESD耐量が向上している。
このように、素子領域203に疑似ダイオード領域213を形成している場合であっても、前述の第1配置例と同様の効果を達成できることが確認できた。
<第2配置例の製造方法>
第2配置例のような双方向ツェナーダイオード201を製造するには、図43に示すステップS204のn型不純物注入の工程の際に、素子領域203の全てのセル203Aにn+型拡散領域を形成する。そして、ステップS206のコンタクト孔形成の工程の後、ステップS207の電極膜形成の工程に先立って、疑似ダイオード領域213を覆う薄膜部218を形成する工程を追加すれば良い。
より具体的に、ステップS206において、絶縁膜216に、全てのn+型拡散領域の表面を露出させるコンタクト孔217が形成される。次に、レジストマスクが剥離された後、半導体ウエハ232の表面234に熱酸化処理が施される。これにより、コンタクト孔217から露出する各n+型拡散領域の表面に絶縁膜216と一体的に連なる薄膜部218が形成される。
次に、複数のn+型拡散領域のうち、第1および第2拡散領域214,215とすべきn+型拡散領域を選択的に露出させるレジストマスクを絶縁膜216上に形成する。換言すれば、疑似ダイオード領域213とすべきn+型拡散領域を選択的に覆うレジストマスクを絶縁膜216上に形成する。
次に、レジストマスクを介するエッチングにより、n+型拡散領域(第1および第2拡散領域214,215)を覆う薄膜部218が選択的に除去される。これにより、絶縁膜216に凹部216aおよびコンタクト孔217が形成される。また、これと同時に、後の工程で、第1および第2電極209,210に電気的に接続される第1および第2拡散領域214,215と、第1および第2電極209,210から電気的に分離される疑似ダイオード領域213とが形成される。その後、ステップS207〜ステップS218が順に実行されて、疑似ダイオード領域213を含む双方向ツェナーダイオード201が形成される。
このように、第2配置例では、素子領域203の全域に複数のn+型拡散領域が行列状に配列される。そして、コンタクト孔217を素子領域203の中央部に集約させることにより、前述の第1配置例と同様に、第1および第2拡散領域214,215が素子領域203の中央部に集約された構成と同様の構成にできる。
なお、第2配置例の製造工程では、ステップS206のコンタクト孔形成工程において、全てのn+型拡散領域を露出させるコンタクト孔217を形成する方法について述べたが、ステップS206のコンタクト孔形成工程において、第1および第2拡散領域214,215のみを選択的に露出させるコンタクト孔217を形成するようにしてもよい。この製造工程であれば、前述の熱酸化処理工程および薄膜部形成工程を省略できる。
<本発明の第3参考形態>
図55は、本発明の第3参考形態に係る双方向ツェナーダイオード301の模式的な斜視図である。
図55に示すように、双方向ツェナーダイオード301は、微小なチップ部品であり、本体部を構成する半導体基板302を含む。
半導体基板302は、一端部および他端部を有する略長方体形状に形成されており、その表面の内方部に複数のダイオードが形成される矩形状の素子領域303が設定されている。以下では、素子領域303が設定された面を、素子形成面304といい、その反対側の面を裏面305という。
半導体基板302の平面形状は、長手方向に沿う長辺306の長さL301が、0.3mm〜0.6mmであり、短手方向に沿う短辺307の長さD301が、0.15mm〜0.3mmである。また、半導体基板302の厚さT301は、たとえば0.1mmである。つまり、半導体基板302としては、いわゆる0603チップ、0402チップ、03015チップ等が適用される。半導体基板302の各コーナー部308は、平面視で面取りされたラウンド形状であってもよい。ラウンド形状であれば、製造工程や実装時におけるチッピングを抑制できる構造となる。
半導体基板302の素子形成面304における一端部側および他端部側には、第1電極309の第1接続電極309aと第2電極310の第2接続電極310aとが形成されている。第1接続電極309aおよび第2接続電極310aは、素子形成面304の一端部側および他端部側から素子領域303を挟み込むように、互いに間隔を空けて形成されている。第1接続電極309aおよび第2接続電極310aは、半導体基板302の短辺307に沿って、平面視略長方形状に形成されている。
なお、半導体基板302では、素子形成面304および側面のそれぞれの全域がパッシベーション膜311a,311bで覆われている。また、素子形成面304上のパッシベーション膜311aの全域を覆うように樹脂膜312が形成されている。そのため、厳密には、図55では、素子形成面304および側面のそれぞれの全域は、パッシベーション膜311a,311bおよび樹脂膜312の内側(裏側)に位置していて、外部に露出されていない。パッシベーション膜311a,311bおよび樹脂膜312については、以降で詳説する。
図56は、図55に示す双方向ツェナーダイオード301の模式的な平面図である。図57は、図56に示す第1拡散領域314および第2拡散領域315の配置を示す平面図である。図58は、図56に示す切断面線LVIII-LVIIIから見た断面図である。図59は、図56に示す切断面線LIX-LVIXから見た断面図である。
半導体基板302は、p+型の半導体基板302(シリコン基板)である。素子領域303における半導体基板302の表面部(素子形成面304)には、n+型の複数の第1拡散領域314と、n+型の複数の第2拡散領域315とが形成されている。第1および第2拡散領域314,315は、同一の深さおよび同一の不純物濃度で形成されており、半導体基板302との間でpn接合を形成している。図57に示すように、複数の第1および第2拡散領域314,315は、素子領域303において規則的に整列するように形成されている。
より具体的に、図57に示すように、素子領域303には、行方向および列方向に沿って行列状に区画された複数のセル303A(この形態では12行×5列=60マスからなるセル303A)が設定されている。
各セル303Aは、平面視略長方形状に区画されており、その内方部に第1拡散領域314または第2拡散領域315が一つずつ形成されている。第1および第2拡散領域314,315は、各セル303Aにおいて、行方向に沿って延びるように平面視略矩形状に形成されている。より具体的に、各第1および第2拡散領域314,315は、同一の面積を有しており、4隅が切除された略矩形状に形成されている。なお、セル303Aとは、第1および第2拡散領域314,315を規則的に配置するために定められた仮想的な領域であり、むろん、12行×5列以上からなる複数のセル303Aを素子領域303に設定してもよい。
図57に示すように、第1および第2拡散領域314,315は、素子領域303の中央部において、第1接続電極309aおよび第2接続電極310aの対向方向の中央部を横切る横断方向に沿って形成されている。
より具体的には、第2接続電極310a側から第1接続電極309a側に向けて順に第1列目、第2列目、・・・第5列目と定義すると、素子領域303の第3列目の列方向に沿って、複数の第1拡散領域314および複数の第2拡散領域315が形成されている。第1拡散領域314が奇数行に配置されており、第2拡散領域315が偶数行に配置されている。つまり、第1および第2拡散領域314,315は、列方向に沿って、交互に配列されている。
図56および図57を参照すれば、第1および第2拡散領域314,315は、平面視において、互いに対称に構成されている。より具体的には、第1および第2拡散領域314,315は、平面視において、素子形成面304の中央部(たとえば、重心)に対して点対称に構成されている。すなわち、素子形成面304に直交する所定の鉛直軸線周りに半導体基板302を180度回転させた場合、第1および第2拡散領域314,315の位置は、回転前における第1および第2拡散領域314,315の位置と一致している。また、第1および第2拡散領域314,315は、第3行目を通る直線に対して、互いに線対称に形成されている。
これらのような対称構造によれば、第1電極309および第2電極310間における電気的特性を対称にすることができる。つまり、第1接続電極309aを正極とし第2接続電極310aを負極として電圧を印加した場合の電圧対電流特性、および第2接続電極310aを正極とし第1接続電極309aを負極として電圧を印加した場合の電圧対電流特性を実質的に等しくできる。
図58および図59に示すように、半導体基板302の素子形成面304には、絶縁膜316(図55〜図57では図示せず)が形成されている。絶縁膜316は、たとえば、シリコン酸化膜である。絶縁膜316には、第1および第2拡散領域314,315を選択的に露出させるコンタクト孔317が形成されている(図56および図57も併せて参照)。
コンタクト孔317は、各第1および第2拡散領域314,315の幅よりも狭い幅で形成されている。より具体的に、コンタクト孔317は、各第1および第2拡散領域314,315の内方領域側に、各第1および第2拡散領域314,315の周縁部から一定の間隔を空けた位置に形成されている。絶縁膜316上には、第1電極309と第2電極310とが形成されている。
第1電極309は、第1接続電極309aと、第1接続電極309aに電気的に接続された第1電極膜319とを含む。第1電極膜319は、さらに、第1パッド321と、第1パッド321と一体的に形成された第1引出し電極322とを有している。
第1パッド321は、素子形成面304の一端部側に平面視略矩形状に形成されている。第1パッド321に第1接続電極309aが接続されている。これにより、第1引出し電極322は、第1パッド321を介して第1接続電極309aに電気的に接続されている。
第1引出し電極322は、第1パッド321から行方向に沿って直線状に形成されている。より具体的には、第1引出し電極322は、第1パッド321から素子領域303における奇数行に向けて直線状に形成されている。つまり、第1引出し電極322は、櫛歯形状に形成されている。第1引出し電極322は、第1拡散領域314の幅よりも広く形成されていて、第1拡散領域314を覆うように形成されている。第1引出し電極322は、第1拡散領域314から第1パッド321まで間の至るところで一様な幅を有している。
第1引出し電極322の先端部は、角部が切除された略矩形状に形成されていて、素子領域303の第1列目を横切って、第2電極310に近接する位置に配置されている。すなわち、平面視において、第1拡散領域314が、第1引出し電極322の長手方向の中央部の領域に形成されている。第1拡散領域314を覆う第1引出し電極322は、コンタクト孔317内に入り込み、当該第1拡散領域314との間でオーミック接触を形成している。
第2電極310は、第2接続電極310aと、第2接続電極310aに電気的に接続された第2電極膜320とを含む。第2電極膜320は、さらに、第2パッド323と、第2パッド323と一体的に形成された第2引出し電極324とを有している。
第2パッド323は、素子形成面304の他端部(第1パッド321と反対側の端部)に平面視略矩形状に形成されている。第2パッド323に第2接続電極310aが接続されている。これにより、第2引出し電極324は、第2パッド323を介して第2接続電極310aに電気的に接続されている。
第2引出し電極324は、第2パッド323から行方向に沿って直線状に形成されている。より具体的には、第2引出し電極324は、第2パッド323から素子領域303における偶数行に向けて直線状に形成されている。つまり、第2引出し電極324は、第1引出し電極322の長手方向に沿って、櫛歯形状に形成されている。これにより、第1および第2電極膜319,320は、第1および第2引出し電極322,324が、互いに噛み合う櫛歯形状に形成されている。
また、第2引出し電極324は、第2拡散領域315の幅よりも広く形成されていて、第2拡散領域315を覆うように形成されている。第2引出し電極324は、第2拡散領域315から第2パッド323まで間の至るところで一様な幅を有している。
第2引出し電極324の先端部は、角部が切除された略矩形状に形成されていて、素子領域303の第5列目を横切って、第1電極309に近接する位置に配置されている。すなわち、平面視において、第2拡散領域315が、第2引出し電極324の長手方向の中央部の領域に形成されている。第2拡散領域315を覆う第2引出し電極324は、コンタクト孔317内に入り込み、当該第2拡散領域315との間でオーミック接触を形成している。
第1および第2電極膜319,320は同一の導電材料からなっており、たとえば、Al,AlCu,AlSiCu等の導電材料を例示できる。第1および第2電極309,310は、絶縁膜316上において、第1および第2電極膜319,320の各周縁部を縁取るスリット325によって、電気的に分離されている。
絶縁膜316上には、第1および第2電極膜319,320を覆うようにパッシベーション膜311aおよび樹脂膜312がこの順に形成されている。また、半導体基板302の側面には、パッシベーション膜311bが形成されている。パッシベーション膜311a,311bは、たとえば窒化シリコンからなり、樹脂膜312は、たとえばポリイミドからなる。パッシベーション膜311a,311bおよび樹脂膜312は、保護膜を構成しており、第1および第2引出し電極322,324および素子形成面304への水分の浸入を抑制または防止すると共に、外部からの衝撃等を吸収し、双方向ツェナーダイオード耐久性の向上に寄与している。
パッシベーション膜311aおよび樹脂膜312には、第1および第2パッド321,323を選択的に露出させるパッド開口326,327が形成されている。パッド開口326,327を埋め戻すように第1および第2接続電極309a,310aが形成されている。第1および第2接続電極309a,310aは、一層の導電材料(たとえばNi層)からなる。第1および第2接続電極309a,310aは、樹脂膜312の表面から突出するように形成されている。
次に、図60を参照して、第1および第2拡散領域314,315の各配置および各サイズについて具体的に説明する。図60は、図56に示す第1および第2拡散領域314,315を含む領域を拡大した平面図である。
図60に示すように、第1および第2拡散領域314,315の列方向の幅W301は、5μm〜15μm(この形態では、9μm)であり、行方向の幅W302は、20μm〜40μm(この形態では、28.8μm)である。また、第1および第2拡散領域314,315間の幅W303は、5μm〜25μmであってもよい。
また、コンタクト孔317の列方向の幅W304は、1μm〜10μm(この形態では、4μm)であり、行方向の幅W305は、10μm〜30μm(この形態では、23.8μm)である。当該平面視において、第1拡散領域314の周縁部からコンタクト孔317の周縁部までの幅W306は、2.5μm程度であってもよい。
また、第1および第2引出し電極322,324の列方向の各幅W307は、10μm〜20μm(この形態では、14μm)である。当該平面視において、第1および第2拡散領域314,315の周縁部から第1および第2引出し電極322,324のスリット325までの幅W308は、2.5μm程度であってもよい。また、スリット325間の幅W309は、3μm〜10μmであってもよい。
次に、図61を参照して、双方向ツェナーダイオード301の電気的構造について説明する。
図61は、図55に示す双方向ツェナーダイオード301の電気的構造を説明するための電気回路図である。
図61に示すように、複数の第1ツェナーダイオードD301および複数の第1ツェナーダイオードD302によって、1つの双方向ツェナーダイオード301が構成されている。第1ツェナーダイオードD301は、半導体基板302とpn接合された各第1拡散領域314に形成されている(図58および図59参照)。各第1ツェナーダイオードD301のカソードは、第1接続電極309aに対して共通に接続されている(カソードコモン)。また、第1ツェナーダイオードD302は、半導体基板302とpn接合された各第2拡散領域315に形成されている(図58および図59参照)。各第1ツェナーダイオードD302のカソードは、第2接続電極310aに対して共通に接続されている(カソードコモン)。
一方、第1および第2ツェナーダイオードD301,D302の各アノードは、半導体基板302を介して共通に接続されている(アノードコモン)。つまり、第1ツェナーダイオードD301と第1ツェナーダイオードD302とは、半導体基板302を介して逆直列接続されている。このようにして、1つの双方向ツェナーダイオード301が構成されている。
この形態では、第1および第2拡散領域314,315間の幅W303(図60参照)を増減させることにより、ピークパルス電力Ppk(Peak Pulse Power)を調整するものである。以下、図62〜図65を参照して、より具体的に説明する。
図62は、図55に示す双方向ツェナーダイオード301の仕様を示す表である。図63は、図62の表に示すESD耐量を反映させたグラフである。図64は、図62の表に示す逆降伏電圧Vbrを反映させたグラフである。図65は、図62の表に示すピークパルス電力Ppkを反映させたグラフである。
図62の表に示すように、この形態では、第1および第2拡散領域314,315間の幅W303が異なる6つの配置例301〜306を用意した。配置例301〜306の順に第1および第2拡散領域314,315間の幅W303が狭くなっている。
図62の表に示すように、第1および第2拡散領域314,315の各面積および各周囲長がいずれも同一になるように形成されている。第1および第2拡散領域314,315の各周囲長は、476μmであり、第1および第2拡散領域314,315の各面積は、6319μm2である。
第1拡散領域314の周囲長とは、半導体基板302の素子形成面304における半導体基板302と第1拡散領域314との境界線の総延長を意味する。同様に、第2拡散領域315の周囲長とは、半導体基板302の素子形成面304における半導体基板302と第2拡散領域315との境界線の総延長を意味する。
また、第1拡散領域314の面積とは、半導体基板302の素子形成面304を法線方向から見た平面視において、半導体基板302と第1拡散領域314との境界線によって取り囲まれた領域の総面積を意味する。同様に、第2拡散領域315の面積とは、半導体基板302の素子形成面304を法線方向から見た平面視において、半導体基板302と第2拡散領域315との境界線によって取り囲まれた領域の総面積を意味する。
双方向ツェナーダイオード301におけるESD耐量は、第1および第2拡散領域314,315間の各周囲長に依存していることが知られている。第1および第2拡散領域314,315間の各周囲長を同一の値にすることにより、第1および第2拡散領域314,315のESD耐量を実質的に同一にすることができる。
図62の表および図63のグラフに示すように、配置例301〜306は、いずれも11.0kV〜12.0kVのESD耐量を実現できており、第1および第2拡散領域314,315の間の幅W303の変動による大幅な変化は見受けられない。よって、ESD耐量は、第1および第2拡散領域314,315の間の幅W303に依存していないことが分かる。
一方、双方向ツェナーダイオード301の端子間容量Ct(第1電極309および第2電極310間の総容量)は、第1および第2拡散領域314,315の各面積に依存している。すなわち、第1および第2拡散領域314,315の各面積の増加に伴い端子間容量Ctも増加し、第1および第2拡散領域314,315の各面積の減少に伴い端子間容量Ctも減少する。
図62の表および図64のグラフに示すように、第1および第2拡散領域314,315の各面積を、同一の値にすることにより、第1および第2拡散領域314,315の各容量成分(寄生容量)を実質的に同一にすることができる。この場合、配置例301〜306は、いずれも5pF以下(より具体的には、4pF<端子間容量Ct<5pF)の端子間容量Ctを実現できている。
図62の表、図64のグラフおよび図65のグラフに示すように、逆降伏電圧Vbrおよびピークパルス電力Ppkは、第1および第2拡散領域314,315間の幅W303に依存していることが分かる。より具体的には、第1および第2拡散領域314,315間の幅W303の増加に伴いピークパルス電力Ppkが増加し、第1および第2拡散領域314,315間の幅W303の減少に伴いピークパルス電力Ppkが減少している。
この場合、第1および第2拡散領域314,315間の幅W303が5μm〜15μmであれば、10W〜25Wのピークパルス電力Ppkを実現できる。より具体的に、第1および第2拡散領域314,315間の幅W303が7μm〜12.5μmであれば、16W〜21.5Wのピークパルス電力Ppkを実現できる。このサイズによれば、双方向ツェナーダイオードの微細化を達成しつつ、良好なピークパルス電力Ppkを得ることができる。
一般的に、双方向ツェナーダイオード301のピークパルス電力Ppkは、端子間容量Ctと背反の関係にあることが知られている。つまり、第1および第2拡散領域314,315の各面積を大きくすることによって、ピークパルス電力Ppkを向上させることが可能であるが、端子間容量Ctも同時に大きくなるという問題がある。
配置例301〜306によれば、第1および第2拡散領域314,315の各面積は、いずれも同一の値に固定されている。そのため、ピークパルス電力Ppkと端子間容量Ctとの間に背反の関係が生じることを効果的に抑制できる。このことから、第1および第2拡散領域314,315間の幅W303の調整のみによって、良好なピークパルス電力Ppkを達成できることが分かる。
なお、第1および第2拡散領域314,315間の幅W303の伸張に伴い、ピークパルス電力Ppkの上昇に飽和傾向が確認できる。これは、素子領域303の面積の制限を受けているためであると考えられる。つまり、限られた領域(素子領域303の面積)内において、一定の面積および周囲長を保ちつつ、第1および第2拡散領域314,315間の幅W303を際限なく広げることはできない。その結果、ピークパルス電力Ppkが飽和していると考えられる。
以上のように、この形態によれば、複数の第1および第2ツェナーダイオードD301,D302によって1つの双方向ツェナーダイオード301が形成されている。双方向ツェナーダイオード301におけるピークパルス電力Ppkは、第1および第2拡散領域314,315間の幅W303に依存している(図62の表および図65のグラフ参照)。
この構成のように、第1および第2拡散領域314,315間の幅W303を、5μm〜15μmとすることにより、10W〜25Wのピークパルス電力Ppkを達成できる。より具体的に、第1および第2拡散領域314,315間の幅W303が7μm〜12.5μmであれば、16W〜21.5Wのピークパルス電力Ppkを達成できる。
また、第1および第2拡散領域314,315は、同一の周囲長で形成されている。これにより、第1および第2拡散領域314,315のESD耐量を実質的に同一にすることができる。また、第1および第2拡散領域314,315の各周囲長を476μmに設定することにより、11.5kV〜12.0kVのESD耐量を実現できる。したがって、ESD耐量の下限値を8kV以上と規定するIEC61000−4−2(国際規格)に準拠できる双方向ツェナーダイオード301を提供できる。
さらに、第1および第2拡散領域314,315は、同一の面積で形成されている。これにより、第1および第2拡散領域314,315の各容量成分(寄生容量)を実質的に同一にすることができる。また、第1および第2拡散領域314,315の各周囲長を6319μm2に設定することにより、5pF以下(より具体的には、4pF<端子間容量Ct<5pF)の端子間容量Ctを実現できる。これにより、不所望な端子間容量Ctの増加を効果的に抑制でき、かつ低い端子間容量Ctを維持した状態で、良好なESD耐量およびピークパルス電力Ppkを実現できる。
以上のように、第1および第2拡散領域314,315の形状、配置位置(第1および第2拡散領域314,315間の幅W303、第1および第2拡散領域314,315の各周囲長、第1および第2拡散領域314,315の各面積)等を最適化することにより、微細化を実現でき、優れたESD耐量、端子間容量Ct、およびピークパルス電力Ppkを有し、信頼性の向上に寄与する双方向ツェナーダイオード301を提供できる。
また、半導体基板302がp型の半導体基板であるので、半導体基板上にエピタキシャル層を形成しなくても、安定した特性を実現できる。すなわち、n型の半導体基板は、抵抗率の面内ばらつきが大きいので、抵抗率の面内ばらつきの少ないエピタキシャル層を表面に形成し、このエピタキシャル層に不純物拡散層を形成してpn接合を形成する必要がある。これに対して、p型の半導体基板302は、抵抗率の面内ばらつきが少ないので、エピタキシャル層を形成することなく、安定した特性の双方向ツェナーダイオードをp型の半導体基板302のいずれの箇所からも切り出すことができる。よって、p型の半導体基板302を用いることによって、製造工程を簡単にでき、かつ製造コストを低減できる。
<双方向ツェナーダイオード301の製造工程>
図66は、図55に示す双方向ツェナーダイオード301の製造工程の一例を説明するためのフローチャートである。図67は、図66の製造工程に適用される半導体ウエハ332の模式的な平面図である。図68Aおよび図68Bは、図66に示す裏面研磨および個片化工程を説明するための模式的な断面図である。なお、図68Aおよび図68Bでは、第1および第2拡散領域314,315の図示を省略して示している。
まず、図67に示すように、半導体基板302の元基板としてのp+型の半導体ウエハ332が用意される。半導体ウエハ332の表面334は半導体基板302の素子形成面304に対応しており、半導体ウエハ332の裏面335は半導体基板302の裏面305に対応している。
半導体ウエハ332の表面334には、複数の双方向ツェナーダイオード301が形成されるチップ領域331が、行列状に配列されて設定されている。互いに隣り合うチップ領域331の間には、境界領域330が設けられている。境界領域330は、略一定の幅を有する帯状の領域であり、直交する二方向に延びて格子状に形成されている。
次に、半導体ウエハ332の表面334に、絶縁膜316が形成される(ステップS301:絶縁膜形成)。次に、絶縁膜316上にレジストマスクが形成される(ステップS302:レジストマスク形成)。レジストマスクを用いたエッチングによって、複数の第1および第2拡散領域314,315に対応する開口が絶縁膜316に形成される(ステップS303:絶縁膜開口)。
次に、レジストマスクを剥離した後に、絶縁膜316に形成された開口から露出する半導体ウエハ332の表面334にn型不純物が注入される(ステップS304:n型不純物注入)。n型不純物の注入は、n型不純物としての燐を表面に堆積させる工程(いわゆるリンデポ)によって行われてもよいし、n型不純物イオン(たとえば燐イオン)の注入によって行われてもよい。
次に、必要に応じてCVD法により絶縁膜316を厚膜化した後、半導体ウエハ332に注入された不純物イオンを活性化するための熱処理(ドライブ)が行われる(ステップS305:熱処理(ドライブ))。これにより、半導体ウエハ332の表面部に複数の第1および第2拡散領域314,315が形成される。
次に、コンタクト孔317に整合する開口を有するレジストマスクが絶縁膜316の上に形成される(ステップS306:コンタクト孔形成)。レジストマスクを介するエッチングによって、絶縁膜316にコンタクト孔317が形成される。その後、レジストマスクが剥離される。
次に、たとえばスパッタリングによって、第1および第2電極膜319,320を構成する電極膜が絶縁膜316上に形成される(ステップS307:電極膜形成)。この形態では、Alからなる電極膜が形成される。そして、電極膜上に、スリット325に対応する開口パターンを有するレジストマスクが形成される(ステップS308:レジストマスク形成)。レジストマスクを介するエッチング(たとえば反応性イオンエッチング)によって、電極膜にスリット325が形成される(ステップS309:電極膜パターニング工程)。これにより、電極膜が、第1および第2電極膜319,320に分離される。
次に、レジストマスクを剥離した後、たとえばCVD法によって窒化膜等のパッシベーション膜311aが形成される(ステップS310:パッシベーション膜形成)。次に、感光性ポリイミド等を塗布することにより樹脂膜312が形成される(ステップS311:ポリイミド塗布)。次に、パッド開口326,327に対応するパターンで樹脂膜312を露光する。その後、樹脂膜312が現像される(ステップS312:露光・現像)。
次に、必要に応じて、樹脂膜312をキュアするための熱処理が行われる(ステップS313:ポリイミドキュア)。そして、樹脂膜312をマスクとしたドライエッチング(たとえば反応性イオンエッチング)によってパッシベーション膜311aが除去される(ステップS314:パッド形成)。これにより、パッド開口326,327が形成される。
次に、たとえば、パッド開口326,327を埋め戻すように、導電材料(たとえばNi層)がめっき成膜される(ステップS315:電極形成)。これにより、第1および第2接続電極309a,310aが形成される。
次に、図68Aに示すように、境界領域330(図67も併せて参照)に切断用の溝337を形成するためのレジストパターン338が形成される(ステップS316:レジストマスク形成)。レジストパターン338は、境界領域330に整合する格子状の開口を有している。レジストパターン338を介してプラズマエッチングが行われる(ステップS317:溝形成)。これにより、半導体ウエハ332が表面334から所定の深さまでエッチングされて、境界領域330に沿った切断用の溝337が形成される。
切断用の溝337に取り囲まれたチップ領域331に半製品341が1つずつ位置していて、これらの半製品341は、行列状に整列配置されている。このように切断用の溝337を形成することによって、半導体ウエハ332を複数のチップ領域331毎に分離可能にする。切断用の溝337が形成された後、レジストパターンは、剥離される。
次に、CVD法によって、窒化シリコンからなるパッシベーション膜311bを、半導体ウエハ332の表面334の全域に亘って形成する。このとき、パッシベーション膜311bは、切断用の溝337の内周面(底面および側面)の全域にも形成される。
次に、図68Bに示すように、半導体ウエハ332が裏面335側から、切断用の溝337の底面に到達するまで研削される(ステップS318:裏面研磨/個片化)。これによって、複数のチップ領域331が個片化された双方向ツェナーダイオード301を得ることができる。このように、切断用の溝337を形成してから半導体ウエハ332を裏面335側から研削すれば、半導体ウエハ332に形成された複数のチップ領域331を一斉に個片化できる。よって、製造時間の短縮によって双方向ツェナーダイオード301の生産性の向上を図ることができる。なお、完成した半導体基板302の裏面305を研磨やエッチングすることによって鏡面化して裏面305を綺麗にしてもよい。
<本発明の第4参考形態>
図69は、本発明の第4参考形態に係る双方向ツェナーダイオード401の模式的な斜視図である。
図69に示すように、双方向ツェナーダイオード401は、微小なチップ部品であり、本体部を構成する半導体基板402を含む。
半導体基板402は、一端部および他端部を有する略長方体形状に形成されており、その表面の内方部に複数のダイオードが形成される矩形状の素子領域403が設定されている。以下では、素子領域403が設定された面を素子形成面404といい、その反対側の面を裏面405という。
半導体基板402の平面形状は、長手方向に沿う長辺406の長さL401が、0.3mm〜0.6mmであり、短手方向に沿う短辺407の長さD401が、0.15mm〜0.3mmである。また、半導体基板402の厚さT401は、たとえば0.1mmである。つまり、半導体基板402としては、いわゆる0603チップ、0402チップ、03015チップ等が適用される。この形態では、0603チップを適用している。
半導体基板402の各コーナー部408は、平面視で面取りされたラウンド形状であってもよい。ラウンド形状であれば、製造工程や実装時におけるチッピングを抑制できる構造となる。半導体基板402の素子形成面404における一端部側および他端部側には、第1電極409の第1接続電極409aと第2電極410の第2接続電極410aとが形成されている。
第1接続電極409aおよび第2接続電極410aは、素子形成面404の一端部側および他端部側から素子領域403を挟み込むように、互いに間隔を空けて形成されている。第1接続電極409aおよび第2接続電極410aは、半導体基板402の短辺407に沿って、平面視略長方形状に形成されている。
なお、半導体基板402では、素子形成面404および側面のそれぞれの全域がパッシベーション膜411a,411bで覆われている。また、素子形成面404上のパッシベーション膜411aの全域を覆うように樹脂膜412が形成されている。そのため、厳密には、図69では、素子形成面404および側面のそれぞれの全域は、パッシベーション膜411a,411bおよび樹脂膜412の内側(裏側)に位置していて、外部に露出されていない。パッシベーション膜411a,411bおよび樹脂膜412については、以降で詳説する。
図70は、図69に示す双方向ツェナーダイオード401の模式的な平面図である。図71は、図70に示す第1拡散領域414および第2拡散領域415の配置を示す平面図である。図72は、図70に示す切断面線LXXII-LXXIIから見た断面図である。図73は、図70に示す切断面線LXXIII-LXXIIIから見た断面図である。
半導体基板402は、p+型の半導体基板402(シリコン基板)である。素子領域403における半導体基板402の表面部(素子形成面404)には、n+型の複数の第1拡散領域414と、n+型の複数の第2拡散領域415とが形成されている。第1および第2拡散領域414,415は、同一の深さおよび同一の不純物濃度で形成されており、半導体基板402との間でpn接合を形成している。第1および第2拡散領域414,415は、その最深部の深さが、素子形成面404に対して2μm〜3μmである。複数の第1および第2拡散領域414,415は、図71に示すように、素子領域403において規則的に整列するように形成されている。
より具体的に、図71に示すように、素子領域403には、行方向および列方向に沿って行列状に区画された複数のセル403A(この形態では12行×5列=60マスからなるセル403A)が設定されている。
各セル403Aは、平面視略長方形状に区画されており、その内方部に第1拡散領域414または第2拡散領域415が一つずつ形成されている。第1および第2拡散領域414,415は、各セル403Aにおいて、行方向に沿って延びるように平面視略矩形状に形成されている。より具体的に、各第1および第2拡散領域414,415は、同一の面積を有しており、4隅が切除された長方形状に形成されている。なお、セル403Aとは、第1および第2拡散領域414,415を規則的に配置するために定められた仮想的な領域であり、むろん、12行×5列以上からなる複数のセル403Aを素子領域403に設定してもよい。
第2接続電極410a側から第1接続電極409a側に向けて順に第1列目、第2列目、・・・第5列目と定義すると、素子領域403の第3列目の列方向に沿って、複数の第1拡散領域414および複数の第2拡散領域415が形成されている。より具体的には、各第1拡散領域414は、奇数行に形成されており、各第2拡散領域415は、偶数行に形成されている。つまり、複数の第1および第2拡散領域414,415は、列方向において互いに隣り合うように形成されている。
また、第2列目における第10行目〜第12行目には、2つの第2拡散領域415が1つの第1拡散領域414を挟み込むように形成されている。一方、第4列目における第1行目〜第3行目には、2つの第1拡散領域414が1つの第2拡散領域415を挟み込むように形成されている。
図70および図71を参照すれば、第1および第2拡散領域414,415は、平面視において、互いに対称に構成されている。より具体的には、第1および第2拡散領域414,415は、平面視において、素子形成面404の中央部(たとえば、重心)に対して点対称に構成されている。すなわち、素子形成面404に直交する所定の鉛直軸線周りに半導体基板402を180度回転させた場合、第1および第2拡散領域414,415の位置は、回転前における第1および第2拡散領域414,415の位置と一致している。
このような対称構造によれば、第1電極409および第2電極410間における電気的特性を対称にすることができる。つまり、第1接続電極409aを正極とし第2接続電極410aを負極として電圧を印加した場合の電圧対電流特性、および第2接続電極410aを正極とし第1接続電極409aを負極として電圧を印加した場合の電圧対電流特性を実質的に等しくできる。
図72および図73に示すように、半導体基板402の素子形成面404には、絶縁膜416(図69〜図71では図示せず)が形成されている。絶縁膜416は、たとえば、シリコン酸化膜である。絶縁膜416には、第1および第2拡散領域414,415の表面を選択的に露出させるコンタクト孔417が形成されている(図70および図71も併せて参照)。
コンタクト孔417は、各第1および第2拡散領域414,415の幅よりも狭い幅で形成されている。より具体的に、コンタクト孔417は、各第1および第2拡散領域414,415の内方領域側に、各第1および第2拡散領域414,415の周縁部から一定の間隔を空けた位置に形成されている。このコンタクト孔417に連続するように、第1および第2拡散領域414,415の各表面には凹部413が形成されている。
凹部413は、その全体が第1および第2拡散領域414,415の内方領域に形成され、その側面がコンタクト孔417の側面と段差を介さずに滑らかに連続している。したがって、凹部413およびコンタクト孔417は、組み合わさって段差のない滑らかな側面を有する一つの孔を形成している。そして、この孔の周縁部(凹部413の周縁部)には、凹部絶縁膜418が形成されている。凹部絶縁膜418は酸化膜からなり、この形態では、凹部413の底面中央を露出させるように、凹部413の辺に沿って環状に形成されている。また、凹部絶縁膜418は、凹部413とコンタクト孔417との境界を横切るように形成されており、その一部(上部)が素子形成面404よりも上方に突出している。なお、図73では、説明の便宜上、凹部絶縁膜418の図示を省略して示している。絶縁膜416上には、第1電極409と第2電極410とが形成されている。
第1電極409は、第1接続電極409aと、第1接続電極409aに電気的に接続された第1電極膜419とを含む。第1電極膜419は、さらに、第1パッド421と、第1パッド421と一体的に形成された第1引出し電極422とを有している。
第1パッド421は、素子形成面404の一端部側に平面視略矩形状に形成されている。第1パッド421に第1接続電極409aが接続されている。これにより、第1引出し電極422は、第1パッド421を介して第1接続電極409aに電気的に接続されている。
第1引出し電極422は、第1パッド421から行方向に沿って直線状に形成されている。より具体的には、第1引出し電極422は、第1パッド421から素子領域403における奇数行に向けて直線状に形成されている。つまり、第1引出し電極422は、櫛歯形状に形成されている。第1引出し電極422は、第1拡散領域414の幅よりも広く形成されていて、第1拡散領域414を覆うように形成されている。第1引出し電極422は、第1拡散領域414から第1パッド421まで間の至るところで一様な幅を有している。
第1引出し電極422の先端部は、角部が切除された略矩形状に形成されていて、素子領域403の第1列目を横切って、第2電極410に間隔を隔てて近接する位置に配置されている。すなわち、平面視において、第1拡散領域414が、第1引出し電極422の長手方向の中央部の領域に形成されている。第1拡散領域414を覆う第1引出し電極422は、コンタクト孔417内に入り込み、当該第1拡散領域414との間でオーミック接触を形成している。
第2電極410は、第2接続電極410aと、第2接続電極410aに電気的に接続された第2電極膜420とを含む。第2電極膜420は、さらに、第2パッド423と、第2パッド423と一体的に形成された第2引出し電極424とを有している。
第2パッド423は、素子形成面404の他端部(第1パッド421と反対側の端部)に平面視略矩形状に形成されている。第2パッド423に第2接続電極410aが接続されている。これにより、第2引出し電極424は、第2パッド423を介して第2接続電極410aに電気的に接続されている。
第2引出し電極424は、第2パッド423から行方向に沿って直線状に形成されている。より具体的には、第2引出し電極424は、第2パッド423から素子領域403における偶数行に向けて直線状に形成されている。つまり、第2引出し電極424は、第1引出し電極422の長手方向に沿って、櫛歯形状に形成されている。これにより、第1および第2電極膜419,420は、第1および第2引出し電極422,424が、互いに噛み合う櫛歯形状に形成されている。
また、第2引出し電極424は、第2拡散領域415の幅よりも広く形成されていて、第2拡散領域415を覆うように形成されている。第2引出し電極424は、第2拡散領域415から第2パッド423まで間の至るところで一様な幅を有している。
第2引出し電極424の先端部は、角部が切除された略矩形状に形成されていて、素子領域403の第5列目を横切って、第1電極409に間隔を隔てて近接する位置に配置されている。すなわち、平面視において、第2拡散領域415が、第2引出し電極424の長手方向の中央部の領域に形成されている。第2拡散領域415を覆う第2引出し電極424は、コンタクト孔417内に入り込み、当該第2拡散領域415との間でオーミック接触を形成している。
第1および第2電極409,410は、絶縁膜416上において、第1および第2電極膜419,420の各周縁部を縁取るスリット425によって、電気的に分離されている。第1および第2電極膜419,420は同一の導電材料からなっており、たとえば、Al,AlCu,AlSiCu等を例示できる。この形態では、AlSiCuを用いている。
図72および図73に示すように、絶縁膜416上には、第1および第2電極膜419,420を覆うようにパッシベーション膜411aおよび樹脂膜412がこの順に形成されている。また、半導体基板402の側面には、パッシベーション膜411bが形成されている。パッシベーション膜411a,411bは、たとえば窒化シリコンからなり、樹脂膜412は、たとえばポリイミドからなる。
パッシベーション膜411a,411bおよび樹脂膜412は、保護膜を構成しており、第1および第2引出し電極422,424および素子形成面404への水分の浸入を抑制または防止すると共に、外部からの衝撃等を吸収し、双方向ツェナーダイオード耐久性の向上に寄与している。
パッシベーション膜411aおよび樹脂膜412には、第1および第2パッド421,423を選択的に露出させるパッド開口426,427が形成されている。このパッド開口426,427を埋め戻すように第1および第2接続電極409a,410aが形成されている。第1および第2接続電極409a,410aは、一層の導電材料(たとえばNi層)からなる。第1および第2接続電極409a,410aは、樹脂膜412の表面から突出するように形成されている。
次に、図74を参照して、第1および第2拡散領域414,415の各配置および各サイズについて具体的に説明する。
図74は、図70に示す第1および第2拡散領域414,415を拡大した平面図である。
図74に示すように、第1および第2拡散領域414,415の列方向の幅W401は、5μm〜15μm(この形態では、9μm)であり、行方向の幅W402は、20μm〜40μm(この形態では、28.8μm)である。また、第1および第2拡散領域414,415間の幅W403は、5μm〜25μm(この形態では、12.5μm)である。
また、コンタクト孔417の列方向の幅W404は、1μm〜10μm(この形態では、4μm)であり、行方向の幅W405は、10μm〜30μm(この形態では、23.8μm)である。当該平面視において、第1拡散領域414の周縁部からコンタクト孔417の周縁部までの幅W406は、2.5μm程度であってもよい。
また、第1および第2引出し電極422,424の列方向の各幅W407は、10μm〜20μm(この形態では、14μm)である。当該平面視において、第1および第2拡散領域414,415の周縁部から第1および第2引出し電極422,424のスリット425までの幅W408は、2.5μm程度であってもよい。また、スリット425間の幅W409は、3μm〜10μmであってもよい。
次に、図75を参照して、双方向ツェナーダイオード401の電気的構造について説明する。
図75は、図69に示す双方向ツェナーダイオード401の電気的構造を説明するための電気回路図である。
図75に示すように、複数の第1ツェナーダイオードD401および複数の第2ツェナーダイオードD402によって、1つの双方向ツェナーダイオード401が構成されている。第1ツェナーダイオードD401は、半導体基板402とpn接合された各第1拡散領域414に形成されている(図72および図73参照)。各第1ツェナーダイオードD401のカソードは、第1接続電極409aに対して共通に接続されている(カソードコモン)。また、第2ツェナーダイオードD402は、半導体基板402とpn接合された各第2拡散領域415に形成されている(図72および図73参照)。各第2ツェナーダイオードD402のカソードは、第2接続電極410aに対して共通に接続されている(カソードコモン)。
一方、第1および第2ツェナーダイオードD401,D402の各アノードは、半導体基板402を介して共通に接続されている(アノードコモン)。つまり、第1ツェナーダイオードD401と第2ツェナーダイオードD402とは、半導体基板402を介して逆直列接続されている。このようにして、1つの双方向ツェナーダイオード401が構成されている。
次に、双方向ツェナーダイオード401の製造工程の一例について説明する。
図76は、図69に示す双方向ツェナーダイオード401の製造工程の一例を説明するためのフローチャートである。図77は、図76の製造工程に適用される半導体ウエハ432の模式的な平面図である。図78(a)〜(d)は、図76に示す一工程途中の構成を示す断面図である。図79Aおよび図79Bは、図76に示す裏面研磨および個片化工程を説明するための模式的な断面図である。図80は、第1および第2拡散領域414,415の濃度プロファイルを示す図である。なお、図79Aおよび図79Bでは、第1および第2拡散領域414,415の図示を省略して示している。
まず、図77に示すように、半導体基板402の元基板としてのp+型の半導体ウエハ432が用意される。半導体ウエハ432の表面434は半導体基板402の素子形成面404に対応しており、半導体ウエハ432の裏面435は半導体基板402の裏面405に対応している。
半導体ウエハ432の表面434には、複数の双方向ツェナーダイオード401が形成されるチップ領域431が、行列状に配列されて設定されている。互いに隣り合うチップ領域431の間には、境界領域430が設けられている。境界領域430は、ほぼ一定の幅を有する帯状の領域であり、直交する二方向に延びて格子状に形成されている。
次に、図78(a)に示すように、半導体ウエハ432の表面434に、絶縁膜416が形成される(ステップS401:絶縁膜形成)。次に、絶縁膜416上にレジストマスク(図示せず)が形成される(ステップS402:レジストマスク形成)。このレジストマスクを用いたエッチングによって、第1および第2拡散領域414,415に対応する開口428が絶縁膜416に形成される(ステップS403:絶縁膜開口)。
次に、レジストマスクを剥離した後に、絶縁膜416に形成された開口428から露出する半導体ウエハ432の表面434にn型不純物が導入される(ステップS404:n型不純物導入)。n型不純物の導入は、n型不純物としての燐を表面に堆積させる工程(いわゆるリンデポ)によって行う。リンデポとは、半導体ウエハ432を拡散炉内に搬入し、拡散路内でPOCl3ガスを流して行う熱処理によって、絶縁膜416の開口428内で露出する半導体ウエハ432の表面434に燐を堆積させる処理である。
次に、図78(b)に示すように、必要に応じて開口428よりも広い幅の開口429に整合する開口を有するさらに別のレジストマスク(図示せず)が絶縁膜416の上に形成される。レジストマスクを介するエッチングによって、開口428が広げられて開口429となる。そして、開口429内における半導体ウエハ432の表面434を選択的に熱酸化して、熱酸化膜439が形成される(ステップS405:熱酸化)。
熱酸化膜439は、半導体ウエハ432の表面434の上方だけでなく、半導体ウエハ432の表面434付近のシリコンを酸化シリコンに変質させて裏面側にも成長する。これにより、表面434には、開口429に連続する凹部413が形成される。その後、半導体ウエハ432に導入された不純物イオンを活性化するための熱処理(ドライブイン処理)が行われる(ステップS406:熱処理(ドライブ))。ドライブイン処理の条件(温度、時間)は、目標とする第1および第2拡散領域414,415の深さに応じて選択すればよい。これにより、半導体ウエハ432の表層部に第1および第2拡散領域414,415が形成される。
この方法によれば、n型不純物の導入をリンデポで行うので、図80に示すように、第1および第2拡散領域414,415に、半導体ウエハ432の表面434(半導体基板402の素子形成面404)から所定の深さまで、一定の濃度プロファイルを与えることができる。対照的に、イオン注入によってn型不純物を導入した場合には、その濃度プロファイルは、半導体ウエハ432の表面434から所定の深さまで減少し続けることになる。
次に、図78(c)に示すように、コンタクト孔417に整合する開口を有するさらに別のレジストマスク(図示せず)が絶縁膜416の上に形成される(ステップS407:レジストマスク形成)。レジストマスクを介するエッチングによって、絶縁膜416にコンタクト孔417が形成される(ステップS408:コンタクト孔開口)。それと共に、熱酸化膜439の一部が選択的に除去されて、残った部分が凹部絶縁膜418として形成される。その後、レジストマスクが剥離される。
次に、図78(d)に示すように、スパッタリングによって、第1および第2電極膜419,420を構成する電極膜が絶縁膜416上に形成される(ステップS409:電極膜形成)。この形態では、AlSiCuからなる電極膜(たとえば厚さ10000Å)が形成される。そして、この電極膜上に、スリット425に対応する開口パターンを有するレジストマスク(図示せず)が形成される(ステップS410:レジストマスク形成)。レジストマスクを介するエッチング(たとえば反応性イオンエッチング)によって、電極膜にスリット425が形成される(ステップS411:電極膜パターニング)。これにより、電極膜が、第1および第2電極膜419,420に分離される。
p+型半導体ウエハ432(半導体基板402)上にAlSiCu電極膜を形成したときの、p+型半導体ウエハ432(半導体基板402)とAlSiCu電極膜との間における電圧対電流特性を、図81に示す。
図81は、AlSiCu電極膜とp+型半導体基板との間で形成されるオーミック接触を説明するための図である。図81には、比較のために、p+型シリコン基板上に形成する電極膜を、Ti膜、TiN膜およびAlCu膜を基板表面から順に積層した積層膜で構成した場合における同様の特性を曲線で示している。
図81のグラフに示すように、AlSiCu電極膜の場合、印加電圧に対して電流が比例しており、良好なオーミック接触が形成されていることが分かる。一方、Ti/TiN/AlCu電極膜の場合、電圧対電流特性がリニアな特性となっておらず、オーミック接触が得られないことが分かる。このことから、電極膜としてAlSiCu電極膜を用いることによって、p+型半導体基板に高濃度領域を形成することなく、p+型半導体基板との間でオーミック接触を形成する第1および第2電極膜419,420を形成でき、それによって、製造工程を簡単にできることが分かる。
次に、レジストマスクを剥離した後、たとえばCVD法によって窒化膜等のパッシベーション膜411aが形成される(ステップS412:パッシベーション膜形成)。次に、感光性ポリイミド等を塗布することにより樹脂膜412が形成される(ステップS413:ポリイミド塗布)。次に、パッド開口426,427に対応するパターンで樹脂膜412を露光する。その後、樹脂膜412が現像される(ステップS414:露光・現像工程)。
次に、必要に応じて、樹脂膜412をキュアするための熱処理が行われる(ステップS415:ポリイミドキュア)。そして、樹脂膜412をマスクとしたドライエッチング(たとえば反応性イオンエッチング)によってパッシベーション膜411aが除去される(ステップS416:パッド開口)。これにより、パッド開口426,427が形成される。
次に、たとえば、パッド開口426,427を埋め戻すように、導電材料(たとえばNi層)がめっき成膜される(ステップS417:電極形成)。これにより、第1および第2接続電極409a,410aが形成される。
次に、図79Aに示すように、境界領域430(図76も併せて参照)に切断用の溝437を形成するためのレジストパターン438が形成される(ステップS418:レジストマスク形成)。レジストパターン438は、境界領域430に整合する格子状の開口を有している。レジストパターン438を介してプラズマエッチングが行われる(ステップS419:溝形成)。これにより、半導体ウエハ432が表面434から所定の深さまでエッチングされて、境界領域430に沿った切断用の溝437が形成される。
切断用の溝437に取り囲まれたチップ領域431に半製品441が1つずつ位置していて、これらの半製品441は、行列状に整列配置されている。このように切断用の溝437を形成することによって、半導体ウエハ432を複数のチップ領域431毎に分離可能にする。切断用の溝437が形成された後、レジストパターンは、剥離される。
次に、CVD法によって、窒化シリコンからなるパッシベーション膜411bを、半導体ウエハ432の表面434の全域に亘って形成する。このとき、パッシベーション膜411bは、切断用の溝437の内周面(底面および側面)の全域にも形成される。
次に、図79Bに示すように、半導体ウエハ432が裏面435側から、切断用の溝437の底面に到達するまで研削される(ステップS420:裏面研磨/個片化)。これによって、複数のチップ領域431が個片化された双方向ツェナーダイオード401を得ることができる。このように、切断用の溝437を形成してから半導体ウエハ432を裏面435側から研削すれば、半導体ウエハ432に形成された複数のチップ領域431を一斉に個片化できる。よって、製造時間の短縮によって双方向ツェナーダイオード401の生産性の向上を図ることができる。なお、完成した半導体基板402の裏面405を研磨やエッチングすることによって鏡面化して裏面405を綺麗にしてもよい。
図82は、逆降伏電圧Vbrの調整に関する特徴を説明するための図である。
双方向ツェナーダイオード401では、製造工程において、ステップS406の熱処理(ドライブイン処理)が行われる(図76参照)。この熱処理の温度および時間に応じて、逆降伏電圧Vbrが変化する。具体的には、熱処理時に半導体ウエハ432(半導体基板402)に加えられる熱量が多い程、逆降伏電圧Vbrが高くなる傾向がある。この傾向を利用して、逆降伏電圧Vbrを調整することができる。図82から理解されるように、逆降伏電圧Vbrは、不純物のドーズ量よりも、熱処理時の熱量に大きく依存している。
図83は、逆降伏電圧Vbrの調整に関する別の特徴を説明するための図である。
具体的には、半導体ウエハ432に導入されたn型不純物を活性化するための熱処理時の温度に対する逆降伏電圧Vbrの変化が示されており、曲線493は抵抗率の比較的低い(たとえば5mΩ)半導体ウエハを用いた場合の逆降伏電圧Vbrを示し、曲線494は抵抗率の比較的高い(たとえば15〜18mΩ)半導体ウエハを用いた場合の逆降伏電圧Vbrを示している。曲線493,494の比較から、逆降伏電圧Vbrが半導体ウエハの抵抗率に依存することが分かる。したがって、目的とする逆降伏電圧Vbrに応じて適切な抵抗率の半導体ウエハを適用することによって、逆降伏電圧Vbrを設計値に合わせることができる。
図84は、逆降伏電圧の調整に関するさらに別の特徴を説明するための図である。
具体的には、半導体ウエハの抵抗率(Sub抵抗)に対する逆降伏電圧Vbrの変化が示されており、上側の曲線495は熱処理時に加えられる熱量が比較的多い(ドライブ条件:1100℃ 60min)場合の逆降伏電圧Vbrを示し、下側の曲線496は当該熱量が比較的少ない(ドライブ条件:1000℃ 60min)場合の逆降伏電圧Vbrを示している。曲線495,496およびその他のドライブ条件での結果から、10mΩ・cm以上の抵抗率を有する半導体ウエハを用いれば、6.5V以上の逆降伏電圧Vbrを発現できることが分かる。特に、25mΩ・cmの抵抗率を有する半導体ウエハを用いれば、8.2Vもの高い逆降伏電圧Vbrを発現できることが分かる。したがって、抵抗率が10mΩ・cm〜30mΩ・cmの半導体ウエハを使用し、2μm〜3μmの深さまでn型不純物が拡散するような条件でドライブイン処理すれば、双方向ツェナーダイオード401の逆降伏電圧Vbrを6.5V〜9.0Vに正確にコントロールすることができる。
以上の製造方法および逆降伏電圧Vbrの調整法は、通常のツェナーダイオードにも適用できる。以下、参考例としてツェナーダイオード450について説明する。
<ツェナーダイオード450>
図85は、参考例に係るツェナーダイオード450の模式的な平面図である。図86は、図85に示す切断面線LXXXVI-LXXXVIから見た断面図である。図85および図86において、図69〜図84に示された各部に対応する部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
ツェナーダイオード450における素子領域403には、複数(この例では4個)のダイオードセルC401〜C404が配置されている。ダイオードセルC401〜C404は、半導体基板402の長手方向および短手方向に沿って、正方行列状に等間隔で二次元配列されている。
ダイオードセルC401〜C404の各領域内における半導体基板402の表面部には、n+型領域451が形成されている。n+型領域451は、個々のダイオードセル毎に分離されている。n+型領域451は、同一の深さで形成されており、半導体基板402との間でpn接合を形成している。各n+型領域451は、その最深部の深さが、素子形成面404に対して2μm〜3μmである。このように、ダイオードセルC401〜C404は、ダイオードセル毎に分離されたpn接合をそれぞれ有している。
複数のダイオードセルC401〜C404は、この例では等しい大きさおよび等しい形状で形成されている。具体的には、複数のダイオードセルC401〜C404は、平面視矩形形状に形成されており、各ダイオードセルの矩形領域内に、多角形形状(本参考例では、正八角形)のn+型領域451が形成されている。n+型領域451は、ダイオードセルC401〜C404の矩形領域を形成する4辺にそれぞれ沿う4つの辺と、ダイオードセルC401〜C404の矩形領域の4つの角部にそれぞれ対向する別の4つの辺とを有している。
図85および図86に示すように、ツェナーダイオード450では、第1電極409がカソード電極、第2電極410がアノード電極として形成されている。第1電極409における第1引出し電極422は、互いに間隔を空けて形成された第1引出し電極422a,422bを含む。
第1引出し電極422aは、第1パッド421から行方向に向けて引き出され、ダイオードセルC401,C403を覆うように形成されている。第1引出し電極422aは、ダイオードセルC401からダイオードセルC403を通って第1パッド421に至る直線に沿って直線状に形成されている。第1引出し電極422aは、絶縁膜416の表面からダイオードセルC401,C403のコンタクト孔417および凹部413内に入り込み、各凹部413内でダイオードセルC401,C403の各n+型領域451との間でオーミック接触を形成している。
同様に、第1引出し電極422bは、第1パッド421から行方向に向けて引き出され、ダイオードセルC402,C404を覆うように形成されている。第1引出し電極422bは、ダイオードセルC402からダイオードセルC404を通って第1パッド421に至る直線に沿って直線状に形成されている。第1引出し電極422bは、絶縁膜416の表面からダイオードセルC402,C404のコンタクト孔417および凹部413内に入り込み、各凹部413内でダイオードセルC402,C404の各n+型領域451との間でオーミック接触を形成している。
一方、第2電極410における第2パッド423以外の領域には、第2引出し電極424がアノード引出し電極として形成されている。第2引出し電極424は、アノードコンタクト孔452から行方向に向けて引き出されている。
第2引出し電極424は、絶縁膜416の表面からアノードコンタクト孔452の内方へと延びており、アノードコンタクト孔452内で半導体基板402との間でオーミック接触を形成している。第2引出し電極424は、スリット425に対応した間隔を開けて、第1引出し電極422a,422bを取り囲むように、絶縁膜416の表面に形成されている。これにより、第1および第2電極膜419,420は、第1引出し電極422a,422bおよび第2引出し電極424が、互いに噛み合う櫛歯形状に形成されている。
次に、図87を参照して、ツェナーダイオード450の電気的構造について説明する。
図87は、ツェナーダイオード450の電気的構造を示す電気回路図である。ダイオードセルC401〜C404によって4つのツェナーダイオードD404が形成されている。ツェナーダイオードD404は、カソード側が第1接続電極409aによって共通接続(カソードコモン)され、アノード側が第2接続電極410aによって共通接続(アノードコモン)されている。つまり、4つのツェナーダイオードD404が並列に接続されている。このようにして、全体として1つのダイオードとして機能するツェナーダイオード450が形成されている。
図88は、図85に示すツェナーダイオード450の電気的特性を示す表である。図89は、図85に示すツェナーダイオード450の電気的特性を示すグラフである。なお、横軸は、制限電圧(Clamping Voltage)VCLであり、縦軸は、ピークパルス電流Ippである。
図88では、図76〜図84に示す逆降伏電圧Vbrの調整法を適用して製造したツェナーダイオード450の電気的特性を示している。なお、ツェナーダイオードにおけるツェナー電圧VZは、双方向ツェナーダイオードの逆降伏電圧Vbrに相当するものである。
図88のグラフに示すように、制限電圧VCLおよびピークパルス電流Ippは、ツェナー電圧VZの増加に伴い増加していることが分かる。すなわち、ツェナーダイオード450では、図76〜図84に示す製造方法および逆降伏電圧Vbr(ツェナー電圧VZ)の調整法を適用することにより、ピークパルス電力Ppk(=制限電圧VCL×ピークパルス電流Ipp)を向上できることが分かる(図88の表参照)。
なお、ツェナー電圧VZが8.2V時では、良好なピークパルス電力Ppkを確保できている一方で、ESD耐量が減少している。これは、ステップS406の熱処理(図76参照)時における熱量の増加に伴って、n+型領域451が横方向(つまり、半導体ウエハ432の深さ方向と直交する方向)に拡がるためであると考えられる。
以上の結果から、このようなピークパルス電力Ppkの向上効果は、前述の双方向ツェナーダイオード401についても得られることが分かる。以下、図90および図91を参照して、より具体的に説明する。
図90は、図69に示す双方向ツェナーダイオード401の電気的特性を示す表である。図91は、双方向ツェナーダイオード401およびツェナーダイオード450の各ピークパルス電力Ppkの特性を比較するためのグラフである。
図90の表に示すように、双方向ツェナーダイオード401では、逆降伏電圧Vbrを増加させるに応じて、ピークパルス電力Ppkが向上しているのが分かる。より具体的には、逆降伏電圧Vbrが6.8V以上であれば、22.1W以上のピークパルス電力Ppkを達成できる。また、逆降伏電圧Vbrが7.5V〜8.9Vであれば、24.7W〜28.4Wのピークパルス電力Ppkを達成できる。
また、双方向ツェナーダイオード401において、逆降伏電圧Vbrが8.2V時のピークパルス電力Ppkは、逆降伏電圧Vbrが6.8V時のピークパルス電力Ppkよりも、21%程度向上している。同様に、ツェナーダイオード450において、ツェナー電圧VZが8.2V時のピークパルス電力Ppkは、ツェナー電圧VZが6.8V時のピークパルス電力Ppkよりも、21%程度向上している。
また、逆降伏電圧Vbrが8.2Vのとき、24kVのESD耐量、5.1pFの端子間容量Ct(第1電極409および第2電極410間の総容量)を実現できている。ここで、シミュレーションによって、逆降伏電圧Vbrが6.8V時の端子間容量Ct(=5.5pF)に基いて、逆降伏電圧Vbrが8.2V時における端子間容量Ct(=5.1pF)を5.5pFに設定して、ピークパルス電力Ppkを換算したところ、28.8Wのピークパルス電力Ppkを実現できることが確認できた。同様に、端子間容量Ctを6.5pFに設定した場合、34Wのピークパルス電力Ppkを実現できることが確認できた。
なお、逆降伏電圧Vbrが8.9V時では、良好なピークパルス電力Ppkを確保できている一方で、ESD耐量が減少している。これは、ステップS406の熱処理(図76参照)時における熱量の増加に伴って、第1および第2拡散領域414,415が横方向(つまり、半導体ウエハ432の深さ方向と直交する方向)に拡がるためであると考えられる。
以上の結果から、双方向ツェナーダイオード401およびツェナーダイオード450の相互間において、逆降伏電圧Vbr(ツェナー電圧VZ)の向上に伴うピークパルス電力Ppkの向上効果が確認できた。
以上のように、ステップS406のドライブイン処理の前に、ステップS405において熱酸化膜を形成することによって、半導体基板402(半導体ウエハ432)の表面部における不純物(n型不純物またはp型不純物)の濃度を小さくすることができる。しかも、使用される半導体基板402(半導体ウエハ432)の抵抗率が10mΩ・cm〜30mΩ・cmである。そのため、2μm〜3μmの深さまで不純物が拡散するようにドライブイン処理し、当該ドライブンイン処理時の熱量を半導体基板402(半導体ウエハ432)に与えることによって、逆降伏電圧Vbrが6.5V〜9.0Vの双方向ツェナーダイオード401を製造できる。
また、このような製造方法および逆降伏電圧Vbrの調整法によれば、22W〜29Wのピークパルス電力Ppkを実現できる。また、逆降伏電圧Vbrが7.5V〜8.9Vであれば、24.7W〜28.4Wのピークパルス電力Ppkを達成できる。特に、逆降伏電圧Vbrが8.2V時においては、24kVのESD耐量を実現できる。
さらに、双方向ツェナーダイオード401によれば、6pF以下の比較的に低い端子間容量Ctを実現できる。これにより、優れたピークパルス電力Ppk、ESD耐量および端子間容量Ctを達成でき、信頼性を向上できる双方向ツェナーダイオード401を提供することができる。
また、双方向ツェナーダイオード401によれば、半導体基板402(半導体ウエハ432)がp型半導体基板であるので、半導体基板上にエピタキシャル層を形成しなくても、安定した特性を実現できる。すなわち、n型の半導体基板は、抵抗率の面内ばらつきが大きいので、抵抗率の面内ばらつきの少ないエピタキシャル層を表面に形成し、このエピタキシャル層に不純物拡散層を形成してpn接合を形成する必要がある。これに対して、p型半導体基板は、抵抗率の面内ばらつきが少ないので、エピタキシャル層を形成することなく、安定した特性の双方向ツェナーダイオードをp型半導体基板のいずれの箇所からも切り出すことができる。よって、p型半導体基板を用いることによって、製造工程を簡単にでき、かつ製造コストを低減できる。
以上、本発明の実施形態および参考形態について説明したが、本発明の実施形態および参考形態はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の第1参考形態において、樹脂膜12の表面から突出する第1および第2接続電極9a,10aの例について説明したが、第1および第2接続電極9a,10aは、パッド開口26,27の開口端から樹脂膜12の表面に跨るオーバラップ部を有していてもよい。また、第1および第2接続電極9a,10aは、樹脂膜12の表面よりも低い位置(半導体基板2に近い位置)に表面を有していてもよい。
また、前述の第1参考形態では、一層の導電材料(Ni層)からなる第1および第2接続電極9a,10aが形成されている例を示しているが、Ni層/Pd層/Au層の積層(3層)構造を有していてもよい。この場合、Ni層/Pd層/Au層を順にめっき成膜すればよい。
また、前述の第1参考形態において、平面視矩形状のn+型拡散領域13に代えて、平面視円形状のn+型拡散領域13を複数形成するようにしてもよい。また、複数のn+型拡散領域13が互いに異なる形状で形成されていてもよい。この場合、複数のn+型拡散領域13は、互いに等しい寄生容量で形成されていてもよいし、互いに異なる寄生容量(たとえば、0.5pFの複数のn+型拡散領域13と、2pFの複数のn+型拡散領域13と)で形成されていてもよい。互いに異なる寄生容量で複数のn+型拡散領域13を形成する場合でも、各寄生容量の値を予め定めておけば、容易に端子間容量Ctを調節できる。
また、前述の第1参考形態のような行列状(複数のセル3A)に区画された素子領域3から切り離したランダムなドッド状に複数のn+型拡散領域13を形成してもよい。また、1行置きに各n+型拡散領域13の位置を行方向にずらして千鳥状に配列させてもよい。
また、前述の第1参考形態において、各半導体部分の導電型を反転してもよい。すなわち、p型の部分をn型とし、n型の部分をp型としてもよい。
また、前述の第2参考形態において、樹脂膜112の表面から突出する第1および第2接続電極109a,110aの例について説明したが、第1および第2接続電極109a,110aは、パッド開口126,127の開口端から樹脂膜112の表面に跨るオーバラップ部を有していてもよい。また、第1および第2接続電極109a,110aは、樹脂膜112の表面よりも低い位置(半導体基板102に近い位置)に表面を有していてもよい。
また、前述の第2参考形態では、一層の導電材料(Ni層)からなる第1および第2接続電極109a,110aが形成されている例を示しているが、Ni層/Pd層/Au層の積層(3層)構造を有していてもよい。この場合、Ni層/Pd層/Au層を順にめっき成膜すればよい。
また、前述の第2参考形態において、平面視矩形状の第1および第2拡散領域114,115に代えて、平面視円形状の第1および第2拡散領域114,115を複数形成してもよい。また、複数の第1および第2拡散領域114,115が互いに異なる形状で形成されていてもよい。この場合、複数の第1および第2拡散領域114,115は、互いに等しい寄生容量で形成されていてもよいし、互いに異なる寄生容量で形成されていてもよい。互いに異なる寄生容量で複数の第1および第2拡散領域114,115を形成する場合であっても、予め各寄生容量を定めておけば、容易に端子間容量Ctを調節できる。
また、前述の第2参考形態のような行列状(複数のセル103A)に区画された素子領域103から切り離したランダムなドッド状に複数の第1および第2拡散領域114,115を形成してもよい。また、1行置きに各第1および第2拡散領域114,115の位置を行方向にずらして、複数の第1および第2拡散領域114,115を千鳥状に配列させてもよい。
また、前述の第2参考形態において、各半導体部分の導電型を反転してもよい。すなわち、p型の部分をn型とし、n型の部分をp型としてもよい。
また、前述の実施形態において、樹脂膜212の表面から突出する第1および第2接続電極209a,210aの例について説明したが、第1および第2接続電極209a,210aは、パッド開口226,227の開口端から樹脂膜212の表面に跨るオーバラップ部を有していてもよい。また、第1および第2接続電極209a,210aは、樹脂膜212の表面よりも低い位置(半導体基板202に近い位置)に表面を有していてもよい。
また、前述の実施形態では、一層の導電材料(Ni層)からなる第1および第2接続電極209a,210aが形成されている例を示しているが、Ni層/Pd層/Au層の積層(3層)構造を有していてもよい。この場合、Ni層/Pd層/Au層を順にめっき成膜すればよい。
また、前述の実施形態において、平面視矩形状の第1および第2拡散領域214,215に代えて、平面視円形状の第1および第2拡散領域214,215を複数形成するようにしてもよい。また、複数の第1および第2拡散領域214,215が互いに異なる形状で形成されていてもよい。この場合、複数の第1および第2拡散領域214,215は、互いに等しい面積および周囲長で形成されていることが好ましい。
また、素子領域203の中央部に集約して形成されているのであれば、前述の実施形態のような行列状(複数のセル203A)に区画された素子領域203から切り離したランダムなドッド状に、複数の第1および第2拡散領域214,215を形成してもよい。また、1行置きに各第1および第2拡散領域214,215の位置を行方向にずらして、複数の第1および第2拡散領域214,215を千鳥状に配列させてもよい。
また、前述の実施形態において、各半導体部分の導電型を反転してもよい。すなわち、p型の部分をn型とし、n型の部分をp型としてもよい。
また、前述の第3参考形態において、樹脂膜312の表面から突出する第1および第2接続電極309a,310aの例について説明したが、第1および第2接続電極309a,310aは、パッド開口326,327の開口端から樹脂膜312の表面に跨るオーバラップ部を有していてもよい。また、第1および第2接続電極309a,310aは、樹脂膜312の表面よりも低い位置(半導体基板302に近い位置)に表面を有していてもよい。
また、前述の第3参考形態では、一層の導電材料(Ni層)からなる第1および第2接続電極309a,310aが形成されている例を示しているが、Ni層/Pd層/Au層の積層(3層)構造を有していてもよい。この場合、Ni層/Pd層/Au層を順にめっき成膜すればよい。
また、前述の第3参考形態において、第3列目にのみに第1および第2拡散領域314,315が形成された例について説明したが、第1および第2拡散領域314,315を、行方向に沿って、複数形成するようにしてもよい。
また、前述の第3参考形態において、平面視矩形状の第1および第2拡散領域314,315に代えて、平面視円形状の第1および第2拡散領域314,315を複数形成するようにしてもよい。また、複数の第1および第2拡散領域314,315が互いに異なる形状で形成されていてもよい。この場合、複数の第1および第2拡散領域314,315は、互いに等しい寄生容量で形成されていることが好ましい。
また、前述の第3参考形態のような行列状(複数のセル303A)に区画された素子領域303から切り離して、複数の第1および第2拡散領域314,315をランダムなドッド配列にしてもよい。また、1行置きに各第1および第2拡散領域314,315の位置を行方向にずらして、複数の第1および第2拡散領域314,315を千鳥状に配列させてもよい。
また、前述の第3参考形態において、各半導体部分の導電型を反転してもよい。すなわち、p型の部分をn型とし、n型の部分をp型としてもよい。
また、前述の第4参考形態において、樹脂膜412の表面から突出する第1および第2接続電極409a,410aの例について説明したが、第1および第2接続電極409a,410aは、パッド開口426,427の開口端から樹脂膜412の表面に跨るオーバラップ部を有していてもよい。また、第1および第2接続電極409a,410aは、樹脂膜412の表面よりも低い位置(半導体基板402に近い位置)に表面を有していてもよい。
また、前述の第4参考形態では、一層の導電材料(Ni層)からなる第1および第2接続電極409a,410aが形成されている例を示しているが、Ni層/Pd層/Au層の積層(3層)構造を有していてもよい。この場合、Ni層/Pd層/Au層を順にめっき成膜すればよい。
また、前述の第4参考形態において、平面視矩形状の第1および第2拡散領域414,415に代えて、平面視円形状の第1および第2拡散領域414,415を複数形成してもよい。また、複数の第1および第2拡散領域414,415が互いに異なる形状で形成されていてもよい。この場合、複数の第1および第2拡散領域414,415は、互いに等しい寄生容量で形成されていることが好ましい。互いに等しい寄生容量にすることにより、不所望な端子間容量Ctの増加を抑制することができる。
また、前述の第4参考形態のような行列状(複数のセル403A)に区画された素子領域403から切り離したランダムなドッド状に複数の第1および第2拡散領域414,415を形成してもよい。また、1行置きに各第1および第2拡散領域414,415の位置を行方向にずらして、複数の第1および第2拡散領域414,415を千鳥状に配列させてもよい。
また、前述の第4参考形態において、各半導体部分の導電型を反転してもよい。すなわち、p型の部分をn型とし、n型の部分をp型としてもよい。
双方向ツェナーダイオード1,101,201,301,401は、電子機器、たとえば携帯電子機器等のモバイル端末に、メモリ(たとえばフラッシュメモリ等の記憶装置)の保護素子として組み込むことができる。この場合、電子機器は、双方向ツェナーダイオード1,101,201,301,401が実装された回路アセンブリを収容した筐体を含む。すなわち、電子機器に採用される回路アセンブリには、実装基板と、実装基板に実装された双方向ツェナーダイオード1,101,201,301,401が含まれる。このとき、双方向ツェナーダイオード1,101,201,301,401は、実装基板にワイヤレスボンディングによって接続(表面実装)されていてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。この明細書および図面から抽出される特徴を以下に示す。
たとえば、図14〜図30Bを参照して、端子間容量の増加を抑制しつつ、ピークパルス電力を向上できる双方向ツェナーダイオードを提供することを目的とする場合、以下のA1〜A17に示すような特徴を有する双方向ツェナーダイオードが抽出され得る。
A1:第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板上に形成された第1電極および第2電極と、前記半導体基板の表面部に形成され、前記第1電極に接続された第2導電型の複数の第1拡散領域と、前記半導体基板の表面部に前記第1拡散領域から間隔を空けて形成され、前記第2電極に接続された第2導電型の複数の第2拡散領域とを含む、双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、第1電極に電気的に接続された複数の第1拡散領域には、カソードが第1電極と接続された複数の第1ツェナーダイオードが形成されている。また、第2電極に電気的に接続された複数の第2拡散領域には、カソードが第2電極と接続された複数の第2ツェナーダイオードが形成されている。第1および第2ツェナーダイオードの各アノードは、半導体基板において共通に接続されている。このように、第1ツェナーダイオードと第2ツェナーダイオードとが、半導体基板を介して逆直列接続されているので、第1電極と第2電極との間に、双方向ツェナーダイオードが構成されている。
ここで、双方向ツェナーダイオードの特性には、逆降伏電圧(Vbr:Reverse Breakdown Voltage)、ピークパルス電力(Ppk:Peak Pulse Power)、端子間容量(Ct)、ESD(Electrostatic Discharge)耐量等がある。とりわけ携帯電話を始めとした電子機器等では、電気信号を良好に伝達する観点から、比較的に低い端子間容量(第1電極および第2電極間の総容量)が求められ、信頼性確保の観点から、比較的に高いピークパルス電力が求められている。
ピークパルス電力は、双方向ツェナーダイオードを構成する拡散領域の面積を大きくすることによって向上させることが可能である。しかしながら、拡散領域の面積を大きくすると、端子間容量も同時に大きくなってしまうという背反が生じてしまう。そのため、良好なピークパルス電力および端子間容量の両立が困難であるという問題がある。
このような問題に対して、双方向ツェナーダイオードにおける端子間容量が、第1拡散領域および第2拡散領域の各面積と比例関係にあること、および、ピークパルス電力が、第1拡散領域および第2拡散領域の各周囲長と比例関係にあることが突き止められた。つまり、第1拡散領域および第2拡散領域の各面積を小さく形成することによって、端子間容量を小さくできる一方、第1拡散領域および第2拡散領域の各周囲長を長くすることにより、ピークパルス電力を向上できる。
したがって、限られた面積の範囲内において、複数の第1拡散領域および複数の第2拡散領域を形成することにより、比較的に大きな面積を有する第1拡散領域および第2拡散領域を1つずつ形成する場合に比べて、周囲長を長くできる。これにより、ピークパルス電力を向上させる手段として、第1拡散領域および第2拡散領域の各面積を必要以上に増加させなくて済むので、端子間容量の増加を抑制しつつ、ピークパルス電力Ppkを向上できる。
なお、第1拡散領域の面積とは、半導体基板の表面を法線方向から見た平面視において、半導体基板と第1拡散領域との境界線によって取り囲まれた領域の総面積である。同様に、第2拡散領域の面積とは、半導体基板の表面を法線方向から見た平面視において、半導体基板と第1拡散領域との境界線によって取り囲まれた領域の総面積である。
また、第1拡散領域の周囲長とは、半導体基板の表面における半導体基板と第1拡散領域との境界線の総延長である。同様に、第2拡散領域の周囲長とは、半導体基板の表面における半導体基板と第2拡散領域との境界線の総延長である。
A2:前記第1電極は、前記複数の第1拡散領域を覆うように形成された第1引出し電極を含み、前記第2電極は、前記第1引出し電極の引出し方向に沿い、前記複数の第2拡散領域を覆うように形成された第2引出し電極を含む、A1に記載の双方向ツェナーダイオード。
A3:複数の前記第1引出し電極および複数の前記第2引出し電極が、互いに噛み合う櫛歯形状に形成されている、A2に記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、複数の第1引出し電極および複数の第2引出し電極が、互いに噛み合う櫛歯形状に形成されているので、限られた面積の範囲内において、第1拡散領域および第2拡散領域の各周囲長を効率的に長く形成できる。
A4:前記複数の第1拡散領域および前記複数の第2拡散領域が、前記第1引出し電極および前記第2引出し電極の前記引出し方向に沿って配列されている、A2またはA3に記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、第1拡散領域および第2拡散領域と、第1引出し電極および第2引出し電極との良好な接続を保ちながら、第1引出し電極および第2引出し電極の引出し方向において、無駄なく第1拡散領域および第2拡散領域を配置できる。よって、効率的に第1拡散領域および第2拡散領域の各周囲長を長く形成できる。
A5:前記複数の第1拡散領域および前記複数の第2拡散領域が、前記第1引出し電極および前記第2引出し電極の前記引出し方向に直交する方向に沿って、隣り合うように形成されている、A2〜A4のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、第1引出し電極および第2引出し電極の引出し方向に直交する方向において、無駄なく第1拡散領域および第2拡散領域を配置できる。よって、効率的に第1拡散領域および第2拡散領域の各周囲長を長く形成できる。
A6:前記第1引出し電極および前記第2引出し電極が、前記複数の第1拡散領域および前記複数の第2拡散領域の各幅よりも広い幅で形成されている、A2〜A5のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、第1引出し電極および第2引出し電極と、第1拡散領域および第2拡散領域とを良好に接続できる。
A7:前記半導体基板の表面を覆う絶縁膜をさらに含み、前記絶縁膜には、前記複数の第1拡散領域および前記複数の第2拡散領域を選択的に露出させるコンタクト孔が形成されている、A1〜A6のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
A8:各前記コンタクト孔が、前記複数の第1拡散領域および前記複数の第2拡散領域の各幅よりも狭い幅で形成されている、A7に記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、第1電極および第2電極と、第1拡散領域および第2拡散領域とを良好に電気的に接続できる。
A9:前記複数の第1拡散領域および前記複数の第2拡散領域が、それぞれ、同一の面積および同一の深さで形成されている、A1〜A8のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、複数の第1拡散領域における容量成分(寄生容量)および複数の第2拡散領域における容量成分(寄生容量)を実質的に等しくすることができる。よって、この構成の下で、第1拡散領域および第2拡散領域の周囲長を長くすることにより、不所望な端子間容量の増加を効果的に抑制しつつ、ピークパルス電力を向上できる。
また、複数の第1拡散領域における容量成分(寄生容量)および複数の第2拡散領域における容量成分(寄生容量)が等しいので、双方向ツェナーダイオードの端子間容量を、第1拡散領域および第2拡散領域の構成比率を調節することにより調節できる。よって、設計の自由度を高めることができる。
A10:前記複数の第1拡散領域および前記複数の第2拡散領域が、それぞれ、等しい寄生容量を有している、A1〜A9のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
A11:前記寄生容量が、1.0pFである、A10に記載の双方向ツェナーダオード。
この構成によれば、[pF]単位で、双方向ツェナーダイオードの端子間容量を、調節できる。よって、双方向ツェナーダイオードが使用されるアプリケーションの仕様や目的に併せて、精確に端子間容量を調節できる。
A12:前記複数の第1拡散領域および前記複数の第2拡散領域が、同一の周囲長を有している、A1〜A11のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
A13:前記複数の第1拡散領域および前記複数の第2拡散領域が、対称となるように配列されている、A1〜A12のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、第1ツェナーダイオードの電気的特性と、第2ツェナーダイオードの電気的特性とを実質的に等しくすることができる。これにより、第1電極から第2電極に向けて流れる電流特性と、第2電極から第1電極に向けて流れる電流特性とを実質的に等しくすることができる。対称には、点対称および線対称が含まれる。また、対称には、厳密な対称形でなくても、電気的特性が対称となる限りにおいて、実質的に対称とみなせる形態も含まれる。
A14:第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板上に形成された第1電極および第2電極と、前記半導体基板の表面部に形成され、前記第1電極に接続された第2導電型の複数の第1拡散領域と、前記半導体基板の表面部に前記第1拡散領域から間隔を空けて形成され、前記第2電極に接続された第2導電型の複数の第2拡散領域とを含み、前記半導体基板を法線方向から見た平面視において、前記第1拡散領域および前記第2拡散領域の各周囲長が、それぞれ470μm以上である、双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、第1電極に電気的に接続された第1拡散領域には、カソードが第1電極と接続された第1ツェナーダイオードが形成されている。また、第2電極に電気的に接続された第2拡散領域には、カソードが第2電極と接続された第2ツェナーダイオードが形成されている。第1および第2ツェナーダイオードの各アノードは、半導体基板において共通に接続されている。このように、第1ツェナーダイオードと第2ツェナーダイオードとが、半導体基板を介して逆直列接続されているので、第1電極と第2電極との間に、双方向ツェナーダイオードが構成されている。また、この構成のように、第1拡散領域および第2拡散領域の各周囲長をそれぞれ470μm以上にすることにより、20W以上のピークパルス電力を達成できる。
A15:前記第1拡散領域および前記第2拡散領域の各周囲長が、それぞれ2500μm以下である、A14に記載の双方向ツェナーダイオード。この構成によれば、20W〜80Wのピークパルス電力を達成できる。
A16:前記第1拡散領域および前記第2拡散領域の各面積が、それぞれ6000μm2〜32000μm2である、A14または15に記載の双方向ツェナーダイオード。この構成によれば、4pF〜20pFの端子間容量を達成できる。
A17:前記第1電極は、前記複数の第1拡散領域を覆う複数の第1引出し電極を含み、前記第2電極は、前記複数の第2拡散領域を覆う複数の第2引出し電極を含み、前記第1引出し電極および前記第2引出し電極が、互いに噛み合う櫛歯形状に形成されている、A14〜A16のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、複数の第1引出し電極および複数の第2引出し電極が、互いに噛み合う櫛歯形状に形成されているので、限られた面積の範囲内において、第1拡散領域および第2拡散領域の各周囲長を効率的に長く形成できる。
また、図31〜図54を参照して、優れたESD耐量を達成でき、信頼性を向上できる双方向ツェナーダイオードを提供することを目的とする場合、以下のB1〜B17に示すような特徴を有する双方向ツェナーダイオードが抽出され得る。
B1:素子領域を有する第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板上に形成された第1電極および第2電極と、前記半導体基板の表面部に形成され、前記第1電極に接続された第2導電型の複数の第1拡散領域と、前記半導体基板の表面部に前記第1拡散領域から間隔を空けて形成され、前記第2電極に接続された第2導電型の複数の第2拡散領域とを含み、前記素子領域の中央部に、前記複数の第1拡散領域および前記複数の第2拡散領域が集約されている、双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、第1電極に電気的に接続された第1拡散領域には、カソードが第1電極と接続された第1ツェナーダイオードが形成されている。また、第2電極に電気的に接続された第2拡散領域には、カソードが第2電極と接続された第2ツェナーダイオードが形成されている。第1および第2ツェナーダイオードの各アノードは、半導体基板を介して共通に接続されている。このように、第1ツェナーダイオードと第2ツェナーダイオードとが、半導体基板を介して逆直列接続されているので、第1電極と第2電極との間に、双方向ツェナーダイオードが構成されている。
双方向ツェナーダイオードの特性には、逆降伏電圧(Vbr:Reverse Breakdown Voltage)、ピークパルス電力(Ppk:Peak Pulse Power)、端子間容量(Ct)、ESD(Electrostatic Discharge)耐量等がある。双方向ツェナーダイオードでは、信頼性確保の観点から、高いESD耐量が求められている。
双方向ツェナーダイオードにおけるESD(Electrostatic Discharge)耐量は、複数の第1拡散領域および複数の第2拡散領域(第1ツェナーダイオードおよび第2ツェナーダイオード)が形成される位置によって変動する。この構成のように、複数の第1拡散領域および複数の第2拡散領域を素子領域の中央部に集約させることにより、素子領域における中央部に複数の第1拡散領域および複数の第2拡散領域を集約させない場合に比べて、ESD耐量を向上できる。これにより、信頼性を向上できる双方向ツェナーダイオードを提供できる。
B2:前記第1電極および前記第2電極が、前記素子領域を挟み込むように形成されており、前記複数の第1拡散領域および前記複数の第2拡散領域が、前記素子領域の中央部において、前記第1電極および前記第2電極の対向方向の中央部を横切る横断方向に沿って、中央拡散領域群を構成している、B1に記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、複数の第1拡散領域および複数の第2拡散領域が、中央拡散領域群を構成しているので、ESD耐量の向上効果を確実に達成できる。
B3:前記複数の第1拡散領域および前記複数の第2拡散領域が、前記素子領域の中央部において、前記中央拡散領域群と隣り合う補助拡散領域群をさらに構成している、B2に記載の双方向ツェナーダイオード。
B4:前記補助拡散領域群が、前記横断方向の長さに関して、前記中央拡散領域群よりも短く形成されている、B3に記載の双方向ツェナーダイオード。
B5:前記補助拡散領域群が、前記中央拡散領域群の前記横断方向の中央部に選択的に配置されている、B4に記載の双方向ツェナーダイオード。
B6:前記複数の第1拡散領域および前記複数の第2拡散領域が、前記対向方向に沿って長方形状に形成されている、B2〜B5のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
B7:前記複数の第1拡散領域および前記複数の第2拡散領域が、前記横断方向に沿って互いに隣り合うように形成されている、B2〜B6いずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
B8:前記第1電極が、前記複数の第1拡散領域を覆う複数の第1引出し電極を含み、前記第2電極が、前記複数の第2拡散領域を覆う複数の第2引出し電極を含み、前記第2引出し電極は、前記第1引出し電極の長手方向に沿って形成されている、B1〜B7のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
B9:前記第1引出し電極および前記第2引出し電極が、互いに噛み合う櫛歯形状に形成されている、B8に記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、複数の第1引き出し電極および複数の第2引き出し電極が互いに噛み合う櫛歯形状に形成されているので、第1電極および第2電極に接続される複数の第1拡散領域および複数の第2拡散領域を効率的に配置することができる。
B10:前記第1引出し電極および前記第2引出し電極が、前記複数の第1拡散領域および前記複数の第2拡散領域の幅よりも広い幅で形成されている、B8またはB9に記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、第1引出し電極および第2引出し電極と、複数の第1拡散領域および複数の第2拡散領域とを良好に接続できる。
B11:前記半導体基板を覆う絶縁膜をさらに含み、前記絶縁膜には、前記複数の第1拡散領域および前記複数の第2拡散領域を選択的に露出させるコンタクト孔が形成されている、B1〜B10のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
B12:前記コンタクト孔が、前記複数の第1拡散領域および前記複数の第2拡散領域の幅よりも狭い幅で形成されている、B11に記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、第1電極および第2電極と、複数の第1拡散領域および複数の第2拡散領域とを良好に電気的に接続できる。
B13:前記複数の第1拡散領域および前記複数の第2拡散領域が、同一の面積を有している、B1〜B12のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、複数の第1拡散領域および複数の第2拡散領域における各容量成分(寄生容量)を実質的に同一にすることができる。したがって、不所望な端子間容量の増加を効果的に抑制でき、かつ低い端子間容量を維持した状態で、良好なESD耐量を得ることができる。
なお、第1拡散領域の面積とは、半導体基板の表面を法線方向から見た平面視において、半導体基板と第1拡散領域との境界線によって取り囲まれた領域の総面積を意味する。同様に、第2拡散領域の面積とは、半導体基板の表面を法線方向から見た平面視において、半導体基板と第2拡散領域との境界線によって取り囲まれた領域の総面積を意味する。
B14:前記複数の第1拡散領域および前記複数の第2拡散領域が、同一の周囲長を有している、B1〜B13のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
B15:前記複数の第1拡散領域および前記複数の第2拡散領域が、互いに対称に形成されている、B1〜B14のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、第1ツェナーダイオードの電気的特性と、第2ツェナーダイオードの電気的特性とを略等しくすることができる。これにより、各電流方向に対する特性を実質的に等しくすることができる。対称には、点対称および線対称が含まれる。また、対称には、厳密な対称形でなくても、電気的特性が対称となる限りにおいて、実質的に対称とみなせる形態も含まれる。
B16:前記第1電極および前記第2電極から電気的に分離された疑似ダイオード領域をさらに含み、前記疑似ダイオード領域が、前記複数の第1拡散領域および前記複数の第2拡散領域が形成されている領域以外の領域に形成されている、B1〜B15のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
B17:前記半導体基板が、p型半導体基板であり、前記第1拡散領域および前記第2拡散領域が、n型拡散領域である、B1〜B16のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、半導体基板がp型半導体基板であるので、半導体基板上にエピタキシャル層を形成しなくても、安定した特性を実現できる。すなわち、n型の半導体基板は、抵抗率の面内ばらつきが大きいので、抵抗率の面内ばらつきの少ないエピタキシャル層を表面に形成し、このエピタキシャル層に不純物拡散層を形成してpn接合を形成する必要がある。これに対して、p型半導体基板は、抵抗率の面内ばらつきが少ないので、エピタキシャル層を形成することなく、安定した特性の双方向ツェナーダイオードをp型半導体基板のいずれの箇所からも切り出すことができる。よって、p型半導体基板を用いることによって、製造工程を簡単にでき、かつ製造コストを低減できる。
また、図55〜図68Bを参照して、優れたピークパルス電力を達成でき、信頼性を向上できる双方向ツェナーダイオードを提供することを目的とする場合、以下のC1〜C17に示すような特徴を有する双方向ツェナーダイオードが抽出され得る。
C1:第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板上に形成された第1電極および第2電極と、前記半導体基板の表面部に形成され、前記第1電極に接続された第2導電型の第1拡散領域と、前記半導体基板の表面部に前記第1拡散領域から間隔を空けて形成され、前記第2電極に接続された第2導電型の第2拡散領域とを含み、前記第1拡散領域および前記第2拡散領域の間の間隔が、5μm以上である、双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、第1電極に電気的に接続された第1拡散領域には、カソードが第1電極と接続された第1ツェナーダイオードが形成されている。また、第2電極に電気的に接続された第2拡散領域には、カソードが第2電極と接続された第2ツェナーダイオードが形成されている。第1および第2ツェナーダイオードの各アノードは、半導体基板において共通に接続されている。このように、第1ツェナーダイオードと第2ツェナーダイオードとが、半導体基板を介して逆直列接続されているので、第1電極と第2電極との間に、双方向ツェナーダイオードが構成されている。
双方向ツェナーダイオードの特性には、逆降伏電圧(Vbr:Reverse Breakdown Voltage)、ピークパルス電力(Ppk:Peak Pulse Power)、端子間容量(Ct)、ESD(Electrostatic Discharge)耐量等がある。双方向ツェナーダイオードでは、良好な信頼性確保の観点から、高いピークパルス電力(Ppk)が求められている。
双方向ツェナーダイオードにおけるピークパルス電力(Ppk:Peak Pulse Power)は、第1拡散領域および第2拡散領域の間の間隔に依存している。この構成のように、第1拡散領域および第2拡散領域の間の間隔を、5μm以上にすることにより、10W以上のピークパルス電力を達成することができる。これにより、優れたピークパルス電力を達成でき、信頼性を向上できる双方向ツェナーダイオードを提供できる。
C2:前記第1拡散領域および前記第2拡散領域の間の間隔が、15μm以下である、C1に記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成のように、第1拡散領域および第2拡散領域の間の間隔を、15μm以下に設定することにより、双方向ツェナーダイオードの微細化を達成しつつ、10W〜25Wのピークパルス電力を達成できる。
C3:ピークパルス電力が、10W〜25Wである、C1またはC2に記載の双方向ツェナーダイオード。
C4:前記第1電極が、前記第1拡散領域を覆う第1引出し電極を含み、前記第2電極が、前記第2拡散領域を覆う第2引出し電極を含み、前記第2引出し電極は、前記第1引出し電極の長手方向に沿って形成されている、C1〜C3のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、第1引出し電極および第2引出し電極が平行に形成されているので、第1拡散領域および第2拡散領域を互いに隣り合うように配置できる。そのため、第1拡散領域および第2拡散領域の間の間隔を、より良好に調整することができる。
C5:前記第1拡散領域および前記第2拡散領域が、平面視において、前記第1引出し電極および前記第2引出し電極の前記長手方向の中央部の領域にそれぞれ形成されている、C4に記載の双方向ツェナーダイオード。
C6:前記第1拡散領域および前記第2拡散領域は、前記長手方向に直交する方向に沿って互いに隣り合うように形成されている、C4またはC5に記載の双方向ツェナーダイオード。
C7:前記第1拡散領域および前記第2拡散領域が、前記第1引出し電極および前記第2引出し電極の長手方向に沿って延びるように形成されている、C4〜C6のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
双方向ツェナーダイオードにおけるピークパルス電力は、第1拡散領域および第2拡散領域の各面積を大きく形成することにより増加させることができる。この構成のように、第1引出し電極および第2引出し電極の長手方向に沿って延びるように第1拡散領域および第2拡散領域を形成することにより、第1拡散領域および第2拡散領域の各面積を効率的に大きくすることができる。よって、良好なピークパルス電力を容易に得ることができる。
なお、第1拡散領域の面積とは、半導体基板の表面を法線方向から見た平面視において、半導体基板と第1拡散領域との境界線によって取り囲まれた領域の総面積を意味する。同様に、第2拡散領域の面積とは、半導体基板の表面を法線方向から見た平面視において、半導体基板と第2拡散領域との境界線によって取り囲まれた領域の総面積を意味する。
C8:前記第1引出し電極および前記第2引出し電極が、互いに噛み合う櫛歯形状に形成されている、C4〜C7のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、第1引出し電極および第2引出し電極が互いに噛み合う櫛歯形状に形成されているので、第1拡散領域および第2拡散領域を効率的に配置することができる。これにより、第1拡散領域および第2拡散領域の各面積を効率的に大きく形成できる。
C9:前記第1引出し電極および前記第2引出し電極が、前記第1拡散領域および前記第2拡散領域の幅よりも広い幅で形成されている、C4〜C8のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、第1引出し電極および第2引出し電極と、第1拡散領域および第2拡散領域とを良好に接続できる。
C10:前記第1拡散領域および前記第2拡散領域が、同一の面積を有している、C1〜C9のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
双方向ツェナーダイオードのピークパルス電力は、第1拡散領域および第2拡散領域の各面積を大きくすることによって、向上させることが可能であるが、この場合、端子間容量(第1電極および第2電極間の総容量)も大きくなってしまう、という背反がある。
この構成のように、第1拡散領域および第2拡散領域を同一の面積を固定することにより、第1拡散領域および第2拡散領域の各容量成分(寄生容量)を実質的に同一にすることができる。したがって、不所望な端子間容量の増加を効果的に抑制でき、かつ低い端子間容量を維持した状態で、良好なピークパルス電力を実現できる。
C11:前記第1拡散領域および前記第2拡散領域の各面積が、6500μm2以下である、C10に記載の双方向ツェナーダイオード。この構成によれば、端子間容量を5pF以下に抑えることができる。
C12:前記第1拡散領域および前記第2拡散領域が、同一の周囲長を有している、C1〜C11のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
双方向ツェナーダイオードのESD(Electrostatic Discharge)耐量は、第1拡散領域および第2拡散領域の各周囲長に依存している。すなわち、各周囲長を長くするに応じてESD耐量の値は向上し、各周囲長を短くするに応じてESD耐量の値が低下する。したがって、この構成のように、第1拡散領域および第2拡散領域の各周囲長を同一にすることにより、第1拡散領域および第2拡散領域のESD耐量を実質的に同一にすることができる。また、第1拡散領域および第2拡散領域の各周囲長を同一にすることにより、良好なESD耐量を維持した状態を保ちながら、良好なピークパルス電力を得ることが可能となる。
なお、第1拡散領域の周囲長とは、半導体基板の表面における半導体基板と第1拡散領域との境界線の総延長である。また、第2拡散領域の周囲長とは、半導体基板の表面における半導体基板と第2拡散領域との境界線の総延長である。
C13:前記第1拡散領域および前記第2拡散領域の各周囲長が、480μm以下である、C12に記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、10kV以上のESD耐量を実現できる。したがって、ESD耐量の下限値を8kV以上と規定するIEC61000−4−2(国際規格)に準拠できる双方向ツェナーダイオードを提供できる。
C14:前記第1拡散領域および前記第2拡散領域が、互いに対称に形成されている、C1〜C13のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、第1ツェナーダイオードの電気的特性と、第2ツェナーダイオードの電気的特性とを略等しくすることができる。これにより、各電流方向に対する特性を実質的に等しくすることができる。対称には、点対称および線対称が含まれる。また、対称には、厳密な対称形でなくても、電気的特性が対称となる限りにおいて、実質的に対称とみなせる形態も含まれる。
C15:前記半導体基板の表面を覆う絶縁膜をさらに含み、前記絶縁膜には、前記第1拡散領域および前記第2拡散領域を選択的に露出させるコンタクト孔が形成されている、C1〜C14のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
C16:前記コンタクト孔が、前記第1拡散領域および前記第2拡散領域の各幅よりも狭い幅で形成されている、C15に記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、第1電極および第2電極と、第1拡散領域および第2拡散領域とを良好に電気的に接続できる。
C17:前記半導体基板が、p型半導体基板であり、前記第1拡散領域および前記第2拡散領域が、n型拡散領域である、C1〜C16のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、半導体基板がp型半導体基板であるので、半導体基板上にエピタキシャル層を形成しなくても、安定した特性を実現できる。すなわち、n型の半導体基板は、抵抗率の面内ばらつきが大きいので、抵抗率の面内ばらつきの少ないエピタキシャル層を表面に形成し、このエピタキシャル層に不純物拡散層を形成してpn接合を形成する必要がある。これに対して、p型半導体基板は、抵抗率の面内ばらつきが少ないので、エピタキシャル層を形成することなく、安定した特性の双方向ツェナーダイオードをp型半導体基板のいずれの箇所からも切り出すことができる。よって、p型半導体基板を用いることによって、製造工程を簡単にでき、かつ製造コストを低減できる。
また、図69〜図91を参照して、優れたピークパルス電力を達成でき、信頼性を向上できる双方向ツェナーダイオードおよびその製造方法を提供することを目的とする場合、以下のD1〜D18に示すような特徴を有する双方向ツェナーダイオードが抽出され得る。
D1:逆降伏電圧が6.5V〜9.0Vの双方向ツェナーダイオードであって、10mΩ・cm〜30mΩ・cmの抵抗率を有する第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板上に形成された第1電極および第2電極と、前記半導体基板の表面部に形成され、前記第1電極と接続された第2導電型の第1拡散領域と、前記第1拡散領域から間隔を空けて前記半導体基板の表面部に形成され、前記第2電極と接続された第2導電型の第2拡散領域とを含み、前記第1拡散領域および前記第2拡散領域は、前記半導体基板の表面に対して、2μm〜3μmの深さを有している、双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、第1電極に電気的に接続された第1拡散領域には、カソードが第1電極と接続された第1ツェナーダイオードが形成されている。また、第2電極に電気的に接続された第2拡散領域には、カソードが第2電極と接続された第2ツェナーダイオードが形成されている。第1および第2ツェナーダイオードの各アノードは、半導体基板において共通に接続される。このように、第1ツェナーダイオードと第2ツェナーダイオードとが、半導体基板を介して逆直列接続されるので、第1電極と第2電極との間に、双方向ツェナーダイオードが構成されている。
双方向ツェナーダイオードの特性には、逆降伏電圧(Vbr:Reverse Breakdown Voltage)、ピークパルス電力(Ppk:Peak Pulse Power)、端子間容量(Ct)、ESD(Electrostatic Discharge)耐量等がある。双方向ツェナーダイオードでは、良好な信頼性確保の観点から、高いピークパルス電力が求められている。
この構成によれば、半導体基板の抵抗率が10mΩ・cm〜30mΩ・cmであり、第1拡散領域および第2拡散領域が、半導体基板の表面に対して、2μm〜3μmの深さを有している。これにより、22W〜29Wのピークパルス電力Ppkを実現できる結果、優れたピークパルス電力を達成でき、信頼性を向上できる双方向ツェナーダイオードを提供できる。
D2:前記第1電極は、前記第1拡散領域を覆うように形成された第1引出し電極を含み、前記第2電極は、前記第1引出し電極の引出し方向に沿い、前記第2拡散領域を覆うように形成された第2引出し電極を含む、D1に記載の双方向ツェナーダイオード。
D3:複数の前記第1引出し電極および複数の前記第2引出し電極が、互いに噛み合う櫛歯形状に形成されている、D2に記載の双方向ツェナーダイオード。
D4:前記第1拡散領域および前記第2拡散領域が、前記第1引出し電極および前記第2引出し電極の前記引出し方向に沿って配列されている、D2またはD3に記載の双方向ツェナーダイオード。
D5:前記第1拡散領域および前記第2拡散領域が、前記第1引出し電極および前記第2引出し電極の前記引出し方向に直交する方向に沿って、隣り合うように形成されている、D2〜D4のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
D6:前記第1引出し電極および前記第2引出し電極が、前記第1拡散領域および前記第2拡散領域の各幅よりも広い幅で形成されている、D2〜D5のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、第1引出し電極および第2引出し電極と、第1拡散領域および第2拡散領域とを良好に接続できる。
D7:前記第1拡散領域および前記第2拡散領域が、対称となるように配列されている、D1〜D6のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、第1ツェナーダイオードの電気的特性と、第2ツェナーダイオードの電気的特性とを略等しくすることができる。これにより、各電流方向に対する特性を実質的に等しくすることができる。対称には、点対称および線対称が含まれる。また、対称には、厳密な対称形でなくても、電気的特性が対称となる限りにおいて、実質的に対称とみなせる形態も含まれる。
D8:前記半導体基板が、p型半導体基板であり、前記第1拡散領域および前記第2拡散領域が、n型拡散領域である、D1〜D7のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、半導体基板がp型半導体基板であるので、半導体基板上にエピタキシャル層を形成しなくても、安定した特性を実現できる。すなわち、n型の半導体基板は、抵抗率の面内ばらつきが大きいので、抵抗率の面内ばらつきの少ないエピタキシャル層を表面に形成し、このエピタキシャル層に不純物拡散層を形成してpn接合を形成する必要がある。これに対して、p型半導体基板は、抵抗率の面内ばらつきが少ないので、エピタキシャル層を形成することなく、安定した特性の双方向ツェナーダイオードをp型半導体基板のいずれの箇所からも切り出すことができる。よって、p型半導体基板を用いることによって、製造工程を簡単にでき、かつ製造コストを低減できる。
D9:前記第1電極および前記第2電極は、AlSiCuからなる導電材料を含む、D8に記載の双方向ツェナーダイオード。
AlSiCuは、p型半導体(特にp型シリコン半導体)と仕事関数が近似している。そのため、AlSiCu電極膜は、p型半導体との間で良好なオーミック接触を形成することができる。よって、p型半導体基板との間でオーミック接触を形成するための高不純物濃度拡散層を形成する必要がない。これにより、製造工程が一層簡単になるので、それに応じて生産性および生産コストを低減できる。p型半導体との間でオーミック接触を形成できる電極膜としては、他にも、AlSi電極膜材料を適用できるが、このAlSi電極膜に比べて、AlSiCu電極膜は信頼性を向上させることができる。
D10:前記半導体基板の表面を覆い、前記第1拡散領域および前記第2拡散領域を選択的に露出させるコンタクト孔が形成された絶縁膜をさらに含み、前記第1拡散領域および前記第2拡散領域には、前記コンタクト孔に連続する凹部が形成されている、D1〜D9のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
D11:前記凹部の周縁部に選択的に形成された凹部絶縁膜をさらに含む、D10に記載の双方向ツェナーダイオード。
D12:前記凹部絶縁膜は、前記凹部と前記コンタクト孔との境界を横切るように形成されている、D11に記載の双方向ツェナーダイオード。
D13:前記第コンタクト孔が、前記第1拡散領域および前記第2拡散領域の幅よりも狭い幅で形成されている、D10〜D12のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
D14:前記第1拡散領域および前記第2拡散領域は、前記半導体基板の表面から所定の深さまで、一定の濃度プロファイルを有している、D1〜D13のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
D15:10mΩ・cm〜30mΩ・cmの抵抗率を有する第1導電型の半導体基板の表面上に、選択的に開口が形成された絶縁膜を形成する工程と、前記半導体基板の表面に、前記開口を介して不純物を選択的に導入する工程と、少なくとも前記不純物が導入された領域を覆うように、前記半導体基板の表面に熱酸化膜を形成する工程と、前記半導体基板の表面を前記熱酸化膜で覆った状態でドライブイン処理を施して前記不純物を拡散させることによって、前記半導体基板の表面に対して2μm〜3μmの深さを有する第1拡散領域および第2拡散領域を前記半導体基板の表面部に形成する工程と、前記熱酸化膜を除去した後、前記開口を埋め戻すように前記絶縁膜上に電極膜を形成する工程と、前記電極膜の不要な部分を除去して、前記第1拡散領域に接続される第1電極および前記第2拡散領域に接続される第2電極を形成する工程とを含む、双方向ツェナーダイオードの製造方法。
この方法によれば、第1電極に電気的に接続された第1拡散領域には、カソードが第1電極と接続された第1ツェナーダイオードが形成される。また、第2電極に電気的に接続された第2拡散領域には、カソードが第2電極と接続された第2ツェナーダイオードが形成される。第1および第2ツェナーダイオードの各アノードは、半導体基板において共通に接続される。このように、第1ツェナーダイオードと第2ツェナーダイオードとが、半導体基板を介して逆直列接続されるので、第1電極と第2電極との間に、双方向ツェナーダイオードが構成される。
また、この方法によれば、ドライブイン処理の前に熱酸化膜を形成することによって、半導体基板の表面部における不純物(n型不純物またはp型不純物)の濃度を小さくすることができる。しかも、使用される半導体基板の抵抗率が10mΩ・cm〜30mΩ・cmである。そのため、2μm〜3μmの深さまで不純物が拡散するようにドライブイン処理し、当該ドライブンイン処理時の熱量を半導体基板に与えることによって、22W〜29Wのピークパルス電力Ppkを実現できる。これにより、優れたピークパルス電力を達成でき、信頼性を向上できる双方向ツェナーダイオードを提供できる。
D16:前記第1電極および前記第2電極を形成する工程が、前記第1拡散領域を覆う第1引出し電極と、当該第1引出し電極の引出し方向に沿い、前記第2拡散領域を覆う第2引出し電極とを形成する工程を含む、D15に記載の双方向ツェナーダイオードの製造方法。
D17:前記第1電極および前記第2電極を形成する工程が、前記第1引出し電極と前記第2引出し電極とを互いに噛み合う櫛歯形状に形成する工程を含む、D15またはD16に記載の双方向ツェナーダイオードの製造方法。
この方法によれば、第1引き出し電極部および第2引き出し電極部が互いに噛み合う櫛歯形状に形成されるので、第1拡散領域および第2拡散領域を互いに間隔を空けて効率的に配置できるとともに、良好な電気的接続を達成できる。
D18:前記熱酸化膜を形成する工程が、前記開口の前記半導体基板の表面を選択的に熱酸化して、前記熱酸化膜を前記半導体基板の裏面側にも成長させることによって、前記開口に連続する凹部を前記半導体基板に形成する工程を含む、D15〜D17のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオードの製造方法。
また、図1〜図13Bを参照して、レイアウトを工夫することにより、種々の端子間容量を容易に実現できる双方向ツェナーダイオードを提供することを目的とする場合、以下のE1〜E13に示すような特徴を有する双方向ツェナーダイオードが抽出され得る。
E1:第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板上に形成された第1電極および第2電極と、前記半導体基板の表面部に互いに間隔を空けて形成され、当該半導体基板との間にpn接合を形成する第2導電型の複数の拡散領域とを含み、前記複数の拡散領域が、前記第1電極および前記第2電極に電気的に接続されたダイオード領域と、前記第1電極および前記第2電極から電気的に分離された疑似ダイオード領域とを含む、双方向ツェナーダイオード。
双方向ツェナーダイオードの特性には、逆降伏電圧(Vbr:Reverse Breakdown Voltage)、ピークパルス電力(Ppk:Peak Pulse Power)、端子間容量(Ct)、ESD(Electrostatic Discharge)耐量等がある。
これらの特性の内、端子間容量(Ct)は、使用されるアプリケーションの用途に応じて種々の値が選定される。しかしながら、この端子間容量(Ct)は、双方向ツェナーダイオードを構成する拡散領域の形状、大きさ等に大きく依存している。そのため、アプリケーションの用途に応じた狙い通りの端子間容量(Ct)を得ようとすると、双方向ツェナーダイオードの大幅な設計変更を余儀なくされる場合も少なくない。
この構成によれば、疑似ダイオード領域を含むので、大幅な設計変更を施すまでもなく、目的に応じた種々の端子間容量を容易に実現できる双方向ツェナーダイオードを提供できる。
すなわち、第1電極に電気的に接続されたダイオード領域には、カソードが第1電極と接続された第1ツェナーダイオードが形成されている。また、第2電極に電気的に接続されたダイオード領域には、カソードが第2電極と接続された第2ツェナーダイオードが形成されている。第1および第2ツェナーダイオードの各アノードは、半導体基板において共通に接続されている。このように、第1ツェナーダイオードと第2ツェナーダイオードとが、半導体基板を介して逆直列接続されているので、第1電極と第2電極との間に、双方向ツェナーダイオードが構成されている。
一方、第1電極および第2電極から電気的に分離された疑似ダイオード領域では、オープン状態とされ、電気的に動作し得ない疑似ツェナーダイオードが形成されている。すなわち、この構成によれば、第1および第2ツェナーダイオードにおける寄生容量は、端子間容量(第1電極および第2電極間の総容量)の増加に寄与するものの、疑似ダイオード領域における寄生容量は、端子間容量の増加に寄与することが殆どない。
したがって、端子間容量に寄与するダイオード領域と端子間容量に寄与しない疑似ダイオード領域との構成比率を調節することにより、予め定められた複数の拡散領域の範囲内において、端子間容量の値を調節できる。しかも、ダイオード領域および疑似ダイオード領域の各個数は、各拡散領域の配列パターンを変更することなく、複数の拡散領域に対する第1電極および第2電極の接続の有無によって調節できる。よって、大幅な設計変更を施すまでもなく、目的に応じた種々の端子間容量を容易に実現できる双方向ツェナーダイオードを提供できる。
E2:前記複数の拡散領域が、それぞれ、同一の面積および同一の深さで形成されている、E1に記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、各拡散領域における寄生容量を全て等しくすることができる。そのため、より一層精確に端子間容量を調節することができる。
E3:前記複数の拡散領域が、行列状に形成されている、E1またはE2に記載の双方向ツェナーダイオード。
E4:前記複数の拡散領域が、行方向または列方向に沿って規則的に整列するように形成されている、E3に記載の双方向ツェナーダイオード。
E5:前記複数の拡散領域が、行方向に延びる長方形状に形成されている、E3またはE4に記載の双方向ツェナーダイオード。
E6:前記半導体基板の表面を覆う絶縁膜をさらに含み、前記絶縁膜には、前記ダイオード領域を選択的に露出させるコンタクト孔が形成されている、E1〜E5のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、ダイオード領域において、第1電極および第2電極は、コンタクト孔内に入り込むように形成される。第1電極および第2電極は、ダイオード領域との間でオーミック接触を形成する。これにより、第1ツェナーダイオードおよび第2ツェナーダイオードが形成される。一方、疑似ダイオード領域において、第1電極および第2電極は、絶縁膜を挟んで当該疑似ダイオード領域と対向している。このようなコンタクト孔の有無は、製造工程におけるマスクのレイアウトで調節できる。よって、一つのマスクでコンタクト孔を形成してダイオード領域を形成するのと同時に、コンタクト孔を形成しない部分に疑似ダイオードを形成することができる。これにより、ダイオード領域および疑似ダイオード領域を、容易に形成できる。
E7:各前記コンタクト孔が、各前記ダイオード領域の幅よりも狭い幅で形成されている、E6に記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、コンタクト孔内において拡散領域(ダイオード領域)のみに第1電極および第2電極を接続させることができるので、良好なコンタクトを得ることができる。
E8:前記第1電極が、前記複数の拡散領域を覆う複数の第1引出し電極を含み、前記第2電極が、前記複数の拡散領域を覆う複数の第2引出し電極を含み、前記第1引出し電極および前記第2引出し電極が、互いに噛み合う櫛歯形状に形成されている、E1〜E7のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、複数の第1引出し電極部および複数の第2引出し電極部が互いに噛み合う櫛歯形状に形成されているので、複数の拡散領域(ダイオード領域および疑似ダイオード領域)を効率的に配列できる。
E9:各前記第1引出し電極および各前記第2引出し電極が、各前記拡散領域の幅よりも広い幅で形成されている、E8に記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、第1電極および第2電極と、ダイオード領域とを良好に接続することができる。
E10:前記ダイオード領域および前記疑似ダイオード領域が、対称となるように配列されている、E1〜E9のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、第1ツェナーダイオードの電気的特性と、第2ツェナーダイオードの電気的特性とを実質的に等しくすることができる。これにより、第1電極から第2電極に向けて流れる電流特性と、第2電極から第1電極に向けて流れる電流特性とを実質的に等しくすることができる。対称には、点対称および線対称が含まれる。また、対称には、厳密な対称形でなくても、電気的特性が対称となる限りにおいて、実質的に対称とみなせる形態も含まれる。
E11:前記半導体基板が、一端および他端を含む矩形形状を有しており、前記第1電極および前記第2電極が、前記半導体基板の一端および他端における表面上にそれぞれ形成されている、E1〜E10のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
E12:前記半導体基板が、コーナー部を丸めた矩形形状を有している、E11に記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、双方向ツェナーダイオードチップの角部の欠け(チッピング)を抑制または防止できるので、外観不良の少ない双方向ツェナーダイオードを提供できる。
E13:前記半導体基板が、p型半導体基板であり、前記拡散領域が、n型拡散領域である、E1〜E12のいずれか一つに記載の双方向ツェナーダイオード。
この構成によれば、半導体基板がp型半導体基板であるので、半導体基板上にエピタキシャル層を形成しなくても、安定した特性を実現できる。すなわち、n型の半導体基板は、抵抗率の面内ばらつきが大きいので、抵抗率の面内ばらつきの少ないエピタキシャル層を表面に形成し、このエピタキシャル層に不純物拡散層を形成してpn接合を形成する必要がある。これに対して、p型半導体基板は、抵抗率の面内ばらつきが少ないので、エピタキシャル層を形成することなく、安定した特性の双方向ツェナーダイオードをp型半導体基板のいずれの箇所からも切り出すことができる。よって、p型半導体基板を用いることによって、製造工程を簡単にでき、かつ製造コストを低減できる。