JP6590105B1 - 磁気記録媒体およびカートリッジ - Google Patents
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Abstract
Description
(wmax−wmin)/wmin≦400[ppm] ・・・(1)
1 第1の実施形態
2 第2の実施形態
3 変形例
図1は、本開示の第1の実施形態に係る記録再生システム100の構成の一例を示す概略図である。記録再生システム100は、磁気テープ記録再生システムであり、カートリッジ10と、カートリッジ10をロードおよびアンロード可能に構成された記録再生装置50とを備える。
図2は、カートリッジ10の構成の一例を示す分解斜視図である。カートリッジ10は、LTO(Linear Tape-Open)規格に準拠した磁気テープカートリッジであり、下シェル12Aと上シェル12Bとで構成されるカートリッジケース12の内部に、磁気テープ(テープ状の磁気記録媒体)MTが巻かれたリール13と、リール13の回転をロックするためのリールロック14およびリールスプリング15と、リール13のロック状態を解除するためのスパイダ16と、下シェル12Aと上シェル12Bに跨ってカートリッジケース12に設けられたテープ引出口12Cを開閉するスライドドア17と、スライドドア17をテープ引出口12Cの閉位置に付勢するドアスプリング18と、誤消去を防止するためのライトプロテクト19と、カートリッジメモリ11とを備える。リール13は、中心部に開口を有する略円盤状であって、プラスチック等の硬質の材料からなるリールハブ13Aとフランジ13Bとにより構成される。磁気テープMTの一端部には、リーダーピン20が設けられている。
図3は、カートリッジメモリ11の構成の一例を示すブロック図である。カートリッジメモリ11は、規定の通信規格でリーダライタ57と通信を行うアンテナコイル(通信部)31と、アンテナコイル31により受信した電波から、誘導起電力を用いて発電、整流して電源を生成する整流・電源回路32と、アンテナコイル31により受信した電波から、同じく誘導起電力を用いてクロックを生成するクロック回路33と、アンテナコイル31により受信した電波の検波およびアンテナコイル31により送信する信号の変調を行う検波・変調回路34と、検波・変調回路34から抽出されるデジタル信号から、コマンドおよびデータを判別し、これを処理するための論理回路等で構成されるコントローラ(制御部)35と、情報を記憶するメモリ(記憶部)36とを備える。また、カートリッジメモリ11は、アンテナコイル31に対して並列に接続されたキャパシタ37を備え、アンテナコイル31とキャパシタ37により共振回路が構成される。
図4は、磁気テープMTの構成の一例を示す断面図である。磁気テープMTは、長尺状の基体41と、基体41の一方の主面上に設けられた下地層42と、下地層42上に設けられた磁性層43と、基体41の他方の主面上に設けられたバック層44とを備える。なお、下地層42およびバック層44は、必要に応じて備えられるものであり、無くてもよい。
基体41は、下地層42および磁性層43を支持する非磁性支持体である。基体41は、長尺のフィルム状を有する。基体41の平均厚みの上限値は、好ましくは4.2μm以下、より好ましくは3.8μm以下、さらにより好ましくは3.4μm以下である。基体41の平均厚みの上限値が4.2μm以下であると、1データカートリッジ内に記録できる記録容量を一般的な磁気テープよりも高めることができる。基体41の平均厚みの下限値は、好ましくは3μm以上、より好ましくは3.2μm以上である。基体41の平均厚みの下限値が3μm以上であると、基体41の強度低下を抑制することができる。
磁性層43は、信号を記録するための記録層である。磁性層43は、例えば、磁性粉および結着剤を含む。磁性層43が、必要に応じて、潤滑剤、帯電防止剤、研磨剤、硬化剤、防錆剤および非磁性補強粒子等のうちの少なくとも1種の添加剤をさらに含んでいてもよい。
割合RS[%]=(((サーボバンド幅WSB)×(サーボバンドSBの本数))/(磁気テープMTの幅))×100
装置:TEM(日立製作所製H9000NAR)
加速電圧:300kV
倍率:100,000倍
次に、得られたTEM像を用い、磁気テープMTの長手方向に少なくとも10点以上の位置で磁性層43の厚みを測定した後、それらの測定値を単純に平均(算術平均)して磁性層43の平均厚みを求める。なお、測定位置は、試験片から無作為に選ばれるものとする。
磁性粉は、ε酸化鉄を含有するナノ粒子(以下「ε酸化鉄粒子」という。)の粉末を含む。ε酸化鉄粒子は、微粒子でも高保磁力を得ることができる硬磁性粒子である。ε酸化鉄粒子に含まれるε酸化鉄は、磁気テープMTの厚み方向(垂直方向)に優先的に結晶配向していることが好ましい。
V=(π/6)×DLave3
V=Lave3
結着剤としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−塩化ビニル共重合体、メタクリル酸エステル−エチレン共重合体、ポリフッ化ビニル、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(セルロースアセテートブチレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロセルロース)、スチレンブタジエン共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、合成ゴム等が挙げられる。
潤滑剤としては、例えば、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸と、炭素数2〜12の1価〜6価アルコールのいずれかとのエステル、これらの混合エステル、ジ脂肪酸エステル、トリ脂肪酸エステル等が挙げられる。潤滑剤の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ペンチル、ステアリン酸ヘプチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル等が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えば、カーボンブラック、天然界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が挙げられる。
研磨剤としては、例えば、α化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、窒化珪素、チタンカ−バイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、2硫化モリブデン、磁性酸化鉄の原料を脱水、アニール処理した針状α酸化鉄、必要によりそれらをアルミおよび/またはシリカで表面処理したもの等が挙げられる。
硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)と活性水素化合物との付加体等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)と活性水素化合物との付加体等の脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。これらポリイソシアネートの重量平均分子量は、100〜3000の範囲であることが望ましい。
防錆剤としては、例えばフェノール類、ナフトール類、キノン類、窒素原子を含む複素環化合物、酸素原子を含む複素環化合物、硫黄原子を含む複素環化合物等が挙げられる。
非磁性補強粒子として、例えば、酸化アルミニウム(α、βまたはγアルミナ)、酸化クロム、酸化珪素、ダイヤモンド、ガーネット、エメリー、窒化ホウ素、チタンカーバイト、炭化珪素、炭化チタン、酸化チタン(ルチル型またはアナターゼ型の酸化チタン)等が挙げられる。
下地層42は、非磁性粉および結着剤を含む非磁性層である。下地層42が、必要に応じて、潤滑剤、帯電防止剤、硬化剤および防錆剤等のうちの少なくとも1種の添加剤をさらに含んでいてもよい。
非磁性粉は、例えば無機粒子粉または有機粒子粉の少なくとも1種を含む。また、非磁性粉は、カーボンブラック等の炭素粉を含んでいてもよい。なお、1種の非磁性粉を単独で用いてもよいし、2種以上の非磁性粉を組み合わせて用いてもよい。無機粒子は、例えば、金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物または金属硫化物等を含む。非磁性粉の形状としては、例えば、針状、球状、立方体状、板状等の各種形状が挙げられるが、これらの形状に限定されるものではない。
結着剤は、上述の磁性層43と同様である。
潤滑剤、帯電防止剤、硬化剤および防錆剤はそれぞれ、上述の磁性層43と同様である。
バック層44は、結着剤および非磁性粉を含む。バック層44が、必要に応じて潤滑剤、硬化剤および帯電防止剤等のうちの少なくとも1種の添加剤をさらに含んでいてもよい。結着剤および非磁性粉は、上述の下地層42と同様である。
tb[μm]=tT[μm]−tB[μm]
磁気テープMTの平均厚み(平均全厚)の上限値が、好ましくは5.6μm以下、より好ましくは5.0μm以下、さらにより好ましくは4.6μm以下、特に好ましくは4.4μm以下である。磁気テープMTの平均厚みが5.6μm以下であると、1データカートリッジ内に記録できる記録容量を一般的な磁気テープよりも高めることができる。磁気テープMTの平均厚みの下限値は特に限定されるものではないが、例えば3.5μm以上である。
温度、相対湿度が(10℃、10%)、(10℃、80%)、(29℃、80%)、(45℃、10%)である4つの環境下で測定された磁気テープMTの幅の平均値のうちの最大値、最小値をそれぞれwmax、wminとした場合、wmaxおよびwminが以下の関係式を満たす。
(wmax−wmin)/wmin≦400[ppm]
wmaxおよびwminが上記の関係式(1)を満たすことで、データトラック幅Wが1500nm以下である磁気テープMTにおいて、オフトラックを抑制することができる。
磁気テープMTの長手方向における磁性層43の保磁力Hcの上限値が、好ましくは2000Oe以下、より好ましくは1900Oe以下、さらにより好ましくは1800Oe以下である。長手方向における磁性層43の保磁力Hcが2000Oe以下であると、高記録密度であっても十分な電磁変換特性を有することができる。
磁気テープMTの垂直方向(厚み方向)における磁性層43の角形比S1が、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらにより好ましくは75%以上、特に好ましくは80%以上、最も好ましくは85%以上である。角形比S1が65%以上であると、磁性粉の垂直配向性が十分に高くなるため、より優れた電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。
角形比S1(%)=(Mr/Ms)×100
垂直方向における磁性層43の保磁力Hc1と、長手方向における磁性層43の保磁力Hc2の比Hc2/Hc1が、Hc2/Hc1≦0.8、好ましくはHc2/Hc1≦0.75、より好ましくはHc2/Hc1≦0.7、さらにより好ましくはHc2/Hc1≦0.65、特に好ましくはHc2/Hc1≦0.6の関係を満たす。保磁力Hc1、Hc2がHc2/Hc1≦0.8の関係を満たすことで、磁性粉の垂直配向度を高めることができる。したがって、磁化遷移幅を低減し、かつ信号再生時に高出力の信号を得ることができるので、電磁変換特性(例えばSNR)を向上することができる。なお、上述したように、Hc2が小さいと、記録ヘッドからの垂直方向の磁界により感度良く磁化が反応するため、良好な記録パターンを形成することができる。
磁気テープMTのSFD(Switching Field Distribution)曲線において、メインピーク高さXと磁場ゼロ付近のサブピークの高さYとのピーク比X/Yが、好ましくは3.0以上、より好ましくは5.0以上、さらにより好ましくは7.0以上、特に好ましくは10.0以上、最も好ましくは20.0以上である(図9参照)。ピーク比X/Yが3.0以上であると、実際の記録に寄与するε酸化鉄粒子の他にε酸化鉄特有の低保磁力成分(例えば軟磁性粒子や超常磁性粒子等)が磁性粉中に多く含まれることを抑制できる。したがって、記録ヘッドからの漏れ磁界により、隣接するトラックに記録された磁化信号が劣化することを抑制できるので、より優れた電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。ピーク比X/Yの上限値は特に限定されるものではないが、例えば100以下である。
活性化体積Vactが、好ましくは8000nm3以下、より好ましくは6000nm3以下、さらにより好ましくは5000nm3以下、特に好ましくは4000nm3以下、最も好ましくは3000nm3以下である。活性化体積Vactが8000nm3以下であると、磁性粉の分散状態が良好になるため、ビット反転領域を急峻にすることができ、記録ヘッドからの漏れ磁界により、隣接するトラックに記録された磁化信号が劣化することを抑制できる。したがって、より優れた電磁変換特性(例えばSNR)が得られなくなる虞がある。
Vact(nm3)=kB×T×Χirr/(μ0×Ms×S)
(但し、kB:ボルツマン定数(1.38×10-23J/K)、T:温度(K)、Χirr:非可逆磁化率、μ0:真空の透磁率、S:磁気粘性係数、Ms:飽和磁化(emu/cm3))
非可逆磁化率Χirrは、残留磁化曲線(DCD曲線)の傾きにおいて、残留保磁力Hr付近における傾きと定義される。まず、磁気テープMT全体に−1193kA/m(15kOe)の磁界を印加し、磁界をゼロに戻し残留磁化状態とする。その後、反対方向に約15.9kA/m(200Oe)の磁界を印加し再びゼロに戻し残留磁化量を測定する。その後も同様に、先ほどの印加磁界よりもさらに15.9kA/m大きい磁界を印加しゼロに戻す測定を繰り返し行い、印加磁界に対して残留磁化量をプロットしDCD曲線を測定する。得られたDCD曲線から、磁化量ゼロとなる点を残留保磁力Hrとし、さらにDCD曲線を微分し、各磁界におけるDCD曲線の傾きを求める。このDCD曲線の傾きにおいて、残留保磁力Hr付近の傾きがΧirrとなる。
まず、上記の角形比S1の測定方法と同様にして、バックグラウンド補正後のM−Hループを得る。次に、得られたM−Hループの飽和磁化Ms(emu)の値と、測定サンプル中の磁性層43の体積(cm3)から、Ms(emu/cm3)を算出する。なお、磁性層43の体積は測定サンプルの面積に磁性層43の平均厚みを乗ずることにより求められる。磁性層43の体積の算出に必要な磁性層43の平均厚みの算出方法は、上述した通りである。
まず、磁気テープMT(測定サンプル)全体に−1193kA/m(15kOe)の磁界を印加し、磁界をゼロに戻し残留磁化状態とする。その後、反対方向に、DCD曲線より得られた残留保磁力Hrの値と同等の磁界を印加する。磁界を印加した状態で1000秒間、磁化量を一定の時間間隔で継続的に測定する。このようにして得られた、時間tと磁化量M(t)の関係を以下の式に照らし合わせて、磁気粘性係数Sを算出する。
M(t)=M0+S×ln(t)
(但し、M(t):時間tの磁化量、M0:初期の磁化量、S:磁気粘性係数、ln(t):時間の自然対数)
磁気テープMTの長手方向のテンション変化に対する磁気テープMTの幅方向の寸法変化量Δw[ppm/N]は、好ましくは650ppm/N≦Δwであり、より好ましくは700ppm/N≦Δwであり、さらにより好ましくは750ppm/N≦Δwであり、特に好ましくは800ppm/N≦Δwである。寸法変化量Δwが650ppm/N≦Δwであると、記録再生装置50による磁気テープMTの長手方向のテンションの調整により、磁気テープMTの幅の変化をさらに効果的に抑制することができる。寸法変化量Δwの上限値は特に限定されるものではないが、例えばΔw≦1700000ppm/N、好ましくはΔw≦20000ppm/N、より好ましくはΔw≦8000ppm/N、さらにより好ましくはΔw≦5000ppm/N、Δw≦4000ppm/N、Δw≦3000ppm/N、またはΔw≦2000ppm/Nでありうる。
磁気テープMTの温度膨張係数αは、6[ppm/℃]≦α≦8[ppm/℃]であることが好ましい。温度膨張係数αが上記範囲であると、記録再生装置50による磁気テープMTの長手方向のテンションの調整により、磁気テープMTの幅の変化を更に抑制することができる。
磁気テープMTの湿度膨張係数βは、β≦5[ppm/%RH]であることが好ましい。湿度膨張係数βが上記範囲であると、記録再生装置50による磁気テープMTの長手方向のテンションの調整により、磁気テープMTの幅の変化を更に抑制することができる。
磁気テープMTのポアソン比ρは、0.3≦ρであることが好ましい。ポアソン比ρが上記範囲であると、記録再生装置50による磁気テープMTの長手方向のテンションの調整により、磁気テープMTの幅の変化を更に抑制することができる。
磁気テープMTの長手方向の弾性限界値σMDが、0.8[N]≦σMDであることが好ましい。弾性限界値σMDが上記範囲であると、記録再生装置50による磁気テープMTの長手方向のテンションの調整により、磁気テープMTの幅の変化を更に抑制することができる。また、記録再生装置50側の制御がし易くなる。磁気テープMTの長手方向の弾性限界値σMDの上限値は特に限定されるものではないが、例えばσMD≦5.0[N]である。弾性限界値σMDが、弾性限界測定を行う際の引張速度Vに依らないことが好ましい。弾性限界値σMDが上記引張速度Vに依らないことで、記録再生装置50における磁気テープMTの走行速度や、記録再生装置50のテンション調整速度とその応答性に影響を受けること無く、効果的に磁気テープMTの幅の変化を抑制できるからである。弾性限界値σMDは、例えば、下地層42、磁性層43およびバック層44の硬化条件の選択、基体41の材質の選択により所望の値に設定される。例えば、下地層形成用塗料、磁性層形成用塗料およびバック層形成用塗料の硬化時間を長くするほど、あるいは硬化温度を上げるほど、これらの各塗料に含まれるバインダと硬化剤の反応が促進する。これにより、弾性的な特徴が向上し、弾性限界値σMDが向上する。
Δλ(%)=((λ−λ0)/λ0)×100
次に、上記のグラフ中、σ≧0.2Nの領域で、グラフが直線となる領域を算出し、その最大荷重σを弾性限界値σMD(N)とする。
磁性面とバック面の層間摩擦係数μが、0.20≦μ≦0.80であることが好ましい。層間摩擦係数μが上記範囲であると、磁気テープMTをリール(例えば図2のリール13)に巻いたときに、巻ズレが発生することを抑制できる。より具体的には、層間摩擦係数μがμ<0.20であると、カートリッジリールに既に巻かれている磁気テープMTのうち最外周に位置する部分の磁性面と、その外側に新たに巻こうとしている磁気テープMTのバック面との間の層間摩擦が極端に低い状態となり、新たに巻こうとしている磁気テープMTが、既に巻かれている磁気テープMTのうち最外周に位置する部分の磁性面からズレやすくなる。したがって、磁気テープMTの巻ズレが発生する。一方、層間摩擦係数μが0.80<μであると、ドライブ側リールの最外周から正に巻き出されようとしている磁気テープMTのバック面と、その直下に位置する、未だドライブリールに巻かれたままの磁気テープMTの磁性面との間の層間摩擦が極端に高い状態となり、上記バック面と上記磁性面とが貼り付いた状態となる。したがって、カートリッジリールへと向かう磁気テープMTの動作が不安定となり、これにより磁気テープMTの巻ズレが発生する。
バック面の表面粗度(バック層44の表面粗度)Rbが、Rb≦6.0[nm]であることが好ましい。バック面の表面粗度Rbが上記範囲であると、電磁変換特性を向上することができる。
装置:光干渉を用いた非接触粗度計
(株式会社菱化システム製 非接触表面・層断面形状計測システム VertScan R5500GL-M100-AC)
対物レンズ:20倍(約237μm×178μm視野)
分解能:640points×480points
測定モード:phase
波長フィルター:520nm
面補正:2次多項式近似面にて補正
上述のようにして、長手方向で少なくとも5点以上の位置にて面粗度を測定したのち、各位置で得られた表面プロファイルから自動計算されたそれぞれの算術平均粗さSa(nm)の平均値をバック面の表面粗度Rb(nm)とする。
磁気テープMTの長手方向のヤング率は、好ましくは8.0GPa未満、より好ましくは7.9GPa以下、さらにより好ましくは7.5GPa以下、特に好ましくは7.1GPa以下である。磁気テープMTの長手方向のヤング率が8.0GPa未満であると、外力による磁気テープMTの伸縮性がさらに高くなるため、テンションコントロールによる磁気テープMTの幅の調整がさらに容易となる。したがって、オフトラックをさらに適切に抑制することができ、磁気テープMTに記録されたデータをさらに正確に再生することが可能となる。
E=(ΔN/S)/(Δx/L) ×10-3
ΔN:応力の変化(N)
S:試験片の断面積(mm2)
Δx:伸び量(mm)
L:つかみ治具間距離(mm)
応力の範囲としては0.5Nから1.0Nとし、この時の応力変化(ΔN)と伸び量(Δx)を計算に使用する。
基体41の長手方向のヤング率は、好ましくは7.5GPa未満、より好ましくは7.4GPa以下、さらにより好ましくは7.0GPa以下、特に好ましくは6.6GPa以下である。基体41の長手方向のヤング率が7.5GPa未満であると、外力による磁気テープMTの伸縮性がさらに高くなるため、テンションコントロールによる磁気テープMTの幅の調整がさらに容易となる。したがって、オフトラックをさらに適切に抑制することができ、磁気テープMTに記録されたデータをさらに正確に再生することが可能となる。
潤滑剤を除去した状態における磁気テープMTの全体のBET比表面積の下限値は、3.5m2/mg以上、好ましくは4m2/mg以上、より好ましくは4.5m2/mg以上、さらにより好ましくは5m2/mg以上である。BET比表面積の下限値が3.5m2/mg以上であると、繰り返し記録または再生を行った後にも(すなわち磁気ヘッドを磁気テープMTの表面に接触させて繰り返し走行を行った後にも)、磁性層43の表面と磁気ヘッドの間に対する潤滑剤の供給量の低下を抑制することができる。したがって、動摩擦係数の増加を抑制することができる。
測定装置:Micromeritics社製 3FLEX
測定吸着質:N2ガス
測定圧力範囲(p/p0):0〜0.995
磁性面の算術平均粗さRaは、好ましくは2.5nm以下、より好ましくは2.0nm以下である。Raが2.5nm以下であると、より優れた電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。
次に、上述の構成を有する磁気テープMTの製造方法について説明する。まず、非磁性粉および結着剤等を溶剤に混練、分散させることにより、下地層形成用塗料を調製する。次に、磁性粉および結着剤等を溶剤に混練、分散させることにより、磁性層形成用塗料を調製する。磁性層形成用塗料および下地層形成用塗料の調製には、例えば、以下の溶剤、分散装置および混練装置を用いることができる。
記録再生装置50は、上述の構成を有する磁気テープMTの記録および再生を行う。記録再生装置50は、磁気テープMTの長手方向に加わるテンションを調整可能な構成を有している。また、記録再生装置50は、カートリッジ10を装填可能な構成を有している。ここでは、説明を容易とするために、記録再生装置50が、1つのカートリッジ10を装填可能な構成を有している場合について説明するが、記録再生装置50が、複数のカートリッジ10を装填可能な構成を有していてもよい。
以下、図10を参照して、データ記録時における記録再生装置50の動作の一例について説明する。
以下、図11を参照して、データ再生時における記録再生装置50の動作の一例について説明する。
以上説明したように、第1の実施形態に係る磁気テープMTでは、垂直方向における磁性層43の角形比S1が、65%以上である。これにより、1500nm以下のデータトラック幅で磁気テープMTにデータを記録した場合にも、良好な電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。
[記録再生装置の構成]
図12は、本開示の第2の実施形態に係る記録再生システム100Aの構成の一例を示す概略図である。記録再生システム100Aは、カートリッジ10と、記録再生装置50Aとを備える。
以下、図13を参照して、データ記録時における記録再生装置50Aの動作の一例について説明する。
以下、図14を参照して、データ再生時における記録再生装置50Aの動作の一例について説明する。
Tn2=Tn1+TmD×α+HD×β
W2=W1(1+TmD×γ+HD2×δ)
Tn2=Tn1+WD×ε
以上説明したように、第2の実施形態では、磁気テープMTのデータ記録時情報がカートリッジメモリ11に記憶されているので、この情報をデータ再生時に利用することで、磁気テープMTの幅を適切に調整することができる。したがって、磁気テープMTの幅が何らかの理由で変動したような場合でも、磁気テープMTに記録されたデータを正確に再生することができる。
(変形例1)
上述の第1の実施形態では、ε酸化鉄粒子が2層構造のシェル部112を有している場合について説明したが、図15に示すように、ε酸化鉄粒子が単層構造のシェル部113を有していてもよい。この場合、シェル部113は、第1シェル部112aと同様の構成を有する。但し、ε酸化鉄粒子の特性劣化を抑制する観点からすると、上述した第1の実施形態におけるように、ε酸化鉄粒子が2層構造のシェル部112を有していることが好ましい。
上述の第1の実施形態では、ε酸化鉄粒子がコアシェル構造を有している場合について説明したが、ε酸化鉄粒子が、コアシェル構造に代えて添加剤を含んでいてもよいし、コアシェル構造を有すると共に添加剤を含んでいてもよい。この場合、ε酸化鉄粒子のFeの一部が添加剤で置換される。ε酸化鉄粒子が添加剤を含むことによっても、ε酸化鉄粒子全体としての保磁力Hcを記録に適した保磁力Hcに調整できるため、記録容易性を向上することができる。添加剤は、鉄以外の金属元素、好ましくは3価の金属元素、より好ましくはAl、GaおよびInのうちの少なくとも1種、さらにより好ましくはAlおよびGaのうちの少なくとも1種である。
磁性粉が、ε酸化鉄粒子の粉末に代えて、六方晶フェライトを含有するナノ粒子(以下「六方晶フェライト粒子」という。)の粉末を含むようにしてもよい。六方晶フェライト粒子は、例えば、六角板状またはほぼ六角板状を有する。六方晶フェライトは、好ましくはBa、Sr、PbおよびCaのうちの少なくとも1種、より好ましくはBaおよびSrのうちの少なくとも1種を含む。六方晶フェライトは、具体的には例えばバリウムフェライトまたはストロンチウムフェライトであってもよい。バリウムフェライトは、Ba以外にSr、PbおよびCaのうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。ストロンチウムフェライトは、Sr以外にBa、PbおよびCaのうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
V=3√3/8×DAave×DBave2
磁性粉は、ε酸化鉄粒子の粉末に代えて、Co含有スピネルフェライトを含有するナノ粒子(以下「コバルトフェライト粒子」という。)の粉末を含むようにしてもよい。コバルトフェライト粒子は、一軸異方性を有することが好ましい。コバルトフェライト粒子は、例えば、立方体状またはほぼ立方体状を有している。Co含有スピネルフェライトが、Co以外にNi、Mn、Al、CuおよびZnのうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
CoxMyFe2OZ ・・・(1)
(但し、式(1)中、Mは、例えば、Ni、Mn、Al、CuおよびZnのうちの少なくとも1種の金属である。xは、0.4≦x≦1.0の範囲内の値である。yは、0≦y≦0.3の範囲内の値である。但し、x、yは(x+y)≦1.0の関係を満たす。zは3≦z≦4の範囲内の値である。Feの一部が他の金属元素で置換されていてもよい。)
磁気テープMTをライブラリ装置に用いるようにしてもよい。この場合、ライブラリ装置は、磁気テープMTの長手方向に加わるテンションを調整可能な構成を有しており、第1の実施形態における記録再生装置50または第2の実施形態における記録再生装置50Aを複数備えるものであってもよい。
サーボライタが、サーボ信号の記録時等に磁気テープMTの長手方向のテンションを調整することで、磁気テープMTの幅を一定またはほぼ一定に保つようにしてもよい。この場合、サーボライタが、磁気テープMTの幅を検出する検出装置を備え、この検出装置の検出結果に基づき、磁気テープMTの長手方向のテンションを調整するようにしてもよい。
磁気テープMTは、垂直記録型の磁気テープに限定されるものであなく、水平記録型の磁気テープであってもよい。この場合、磁性粉としてはメタル磁性粉等の針状磁性粉を用いてもよい。
上述の第1の実施形態では、データ記録時における磁気テープMTに関連する幅関連情報として、サーボバンドSB間の距離を用いる場合について説明したが、磁気テープMTの幅を用いるようにしてもよい。
上述の第2の実施形態では、データ記録時情報として、温度Tm1、Tm2、湿度H1、H2、テンションTn1、Tn2、幅W1、W2の全てが用いられる場合について説明したが、データ記録時情報は、温度Tm1、Tm2、湿度H1、H2、テンションTn1、Tn2、および幅W1、W2のうちいずれか1つであってもよいし、任意の2つ、3つの組合せであってもよい。
上述の第1、第2の実施形態では、磁気テープMTが、下地層および磁性層等が塗布工程(ウエットプロセス)により作製された塗布型の磁気テープである場合について説明したが、下地層および磁性層等がスパッタリング等の真空薄膜の作製技術(ドライプロセス)により作製される薄膜型の磁気テープであってもよい。薄膜型の磁気テープの場合、磁性層の平均厚みtmは、好ましくは9[nm]≦tm≦90[nm]、より好ましくは9[nm]≦tm≦20[nm]、更により好ましくは9[nm]≦tm≦15[nm]である。磁性層の平均厚みtmが9[nm]≦tm≦90[nm]であると、電磁変換特性を向上することができる。
(磁性層形成用塗料の調製工程)
磁性層形成用塗料を以下のようにして調製した。まず、下記配合の第1組成物をエクストルーダで混練した。次に、ディスパーを備えた攪拌タンクに、混練した第1組成物と、下記配合の第2組成物を加えて予備混合を行った。続いて、さらにサンドミル混合を行い、フィルター処理を行い、磁性層形成用塗料を調製した。
バリウムフェライト(BaFe12O19)粒子の粉末(六角板状、平均アスペクト比3.0、平均粒子体積2450nm3):100質量部
塩化ビニル系樹脂(シクロヘキサノン溶液30質量%):10質量部
(重合度300、Mn=10000、極性基としてOSO3K=0.07mmol/g、2級OH=0.3mmol/gを含有する。)
酸化アルミニウム粉末:5質量部
(α−Al2O3、平均粒径0.2μm)
カーボンブラック:2質量部
(東海カーボン社製、商品名:シーストTA)
塩化ビニル系樹脂:1.1質量部
(樹脂溶液:樹脂分30質量%、シクロヘキサノン70質量%)
n−ブチルステアレート:2質量部
メチルエチルケトン:121.3質量部
トルエン:121.3質量部
シクロヘキサノン:60.7質量部
下地層形成用塗料を以下のようにして調製した。まず、下記配合の第3組成物をエクストルーダで混練した。次に、ディスパーを備えた攪拌タンクに、混練した第3組成物と、下記配合の第4組成物を加えて予備混合を行った。続いて、さらにサンドミル混合を行い、フィルター処理を行い、下地層形成用塗料を調製した。
針状酸化鉄粉末:100質量部
(α−Fe2O3、平均長軸長0.15μm)
塩化ビニル系樹脂:55.6質量部
(樹脂溶液:樹脂分30質量%、シクロヘキサノン70質量%)
カーボンブラック:10質量部
(平均粒径20nm)
ポリウレタン系樹脂UR8200(東洋紡績製):18.5質量部
n−ブチルステアレート:2質量部
メチルエチルケトン:108.2質量部
トルエン:108.2質量部
シクロヘキサノン:18.5質量部
バック層形成用塗料を以下のようにして調製した。下記原料を、ディスパーを備えた攪拌タンクで混合を行い、フィルター処理を行うことで、バック層形成用塗料を調製した。
カーボンブラック(旭カーボン株式会社製、商品名:#80):100質量部
ポリエステルポリウレタン:100質量部
(日本ポリウレタン社製、商品名:N−2304)
メチルエチルケトン:500質量部
トルエン:400質量部
シクロヘキサノン:100質量部
上述のようにして作製した塗料を用いて、基体(ベースフィルム)としての長尺のPENフィルム(平均厚み4.2μm)上に平均厚み0.65μmの下地層、および平均厚み85nmの磁性層を以下のようにして形成した。まず、PENフィルムの一方の主面上に、下地層形成用塗料を塗布し、乾燥させることにより、PENフィルムの一方の主面上に下地層を形成した。次に、下地層上に、磁性層形成用塗料を塗布し、乾燥させることにより、下地層上に磁性層を形成した。なお、磁性層形成用塗料の乾燥の際に、ソレノイドコイルにより、磁性粉をPENフィルムの厚み方向に磁場配向させた。また、磁性層形成用塗料の乾燥条件(乾燥温度および乾燥時間)を調整し、磁気テープの厚み方向(垂直方向)における角形比S1を65%および長手方向における角形比S2を35%に設定した。
上述のようにして得られた磁気テープを1/2インチ(12.65mm)幅に裁断した。これにより、目的とする長尺状の磁気テープ(平均厚み5.24μm)が得られた。
上述のようにして得られた長尺状の磁気テープに、サーボライタを用いてサーボ信号を書き込むことにより、サーボバンド幅WSBが95μmである5本のサーボバンドを形成した。なお、サーボ信号の書き込みにより、各サーボバンドには、既知の間隔でハの字の磁気パターンの列が形成された。
サーボ信号が書き込まれた磁気テープを102mm×105mm×22mmサイズのカートリッジ(LTOに準拠したカートリッジ)に巻き取った。
まず、記録再生装置にカートリッジをローディングし、スピンドルにカードリッジを装着し、スピンドル駆動装置およびリール駆動装置を回転駆動させた。そして、カートリッジに収容された磁気テープ全体を往復走行させると共に、サーボ信号によるトラック制御をしつつ、データの書き込みを行った。この際、記録トラック幅Wが1100nm、記録波長λが180nmの単一記録波長となるように記録再生装置を制御した。なお、データ信号の記録波長λ[nm]は、最短記録波長で記録された際の磁化反転間距離L[nm]の4倍(すなわち、最短記録波長L’=2×Lであり、記録波長λ=L’の2倍長)とした。記録ヘッドにはギャップ長0.2μmのリングヘッドを用いた。
磁性層形成用塗料の乾燥条件(乾燥温度および乾燥時間)を調整し、磁気テープの厚み方向(垂直方向)における角形比S1を75%および長手方向における角形比S2を25%に設定したこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。次に、実施例1と同様にして、得られた磁気テープに対してサーボ信号およびデータ信号を書き込んだ。
磁性塗料のサンドミルでの分散時間を長くし塗料分散状態を特に良好にしたものを用い、かつ、磁性塗料の配向工程において垂直配向用ソレノイドの磁束の印加時間を実施例1よりも長くすることにより、磁気テープの厚み方向(垂直方向)における角形比S1を80%および長手方向における角形比S2を21%に設定したこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。
磁性塗料のサンドミルでの分散時間を長くし塗料分散状態を特に良好にしたものを用い、磁性塗料の配向工程において垂直配向用ソレノイドの磁束の印加時間を実施例6よりも長くし、さらに乾燥時間を調整することにより、磁気テープの厚み方向(垂直方向)における角形比S1を85%および長手方向における角形比S2を18%に設定したこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。
基体(ベースフィルム)として平均厚み3.5μmのPENフィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、平均厚み4.54μmの磁気テープを得た。
基体(ベースフィルム)として平均厚み3.2μmのPENフィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、平均厚み4.24μmの磁気テープを得た。
磁性層形成用塗料の塗布厚を調整し、下地層上に平均厚み35nmの磁性層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、平均厚み5.19μmの磁気テープを得た。
磁性粉としてバリウムフェライト(BaFe12O19)粒子の粉末(六角板状、平均アスペクト比2.5、平均粒子体積1500nm3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。
磁性粉としてバリウムフェライト(BaFe12O19)粒子の粉末(六角板状、平均アスペクト比2.8、平均粒子体積1800nm3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。
まず、実施例9と同様にして磁気テープを得た。次に、記録再生装置を用いて、サーボバンド間のデータバンドにデータ信号を書き込んだ。この際、記録トラック幅Wが1000nm、記録波長λが180nmの単一記録波長となるように記録再生装置を制御した。
磁性粉としてコバルトフェライト粒子の粉末(立方体状、平均粒子体積1200nm3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。
磁性粉としてε酸化鉄粒子の粉末(球状、平均粒子体積1405nm3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。
下地層の平均厚みを0.60μm、バック層の平均厚みを0.25μm、磁気テープの平均厚みを5.14μmに変更することにより、長手方向における磁気テープのヤング率を7.0GPaに設定したこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。
基体(ベースフィルム)としての長尺のPETフィルム(平均厚み4.2μm)を用いることにより、長手方向における磁気テープのヤング率を6.6GPaに設定したこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。
まず、比較例2と同様にして磁気テープを得た。次に、実施例1と同様にして磁気テープにサーボ信号を書き込んだ。続いて、データトラック幅Wが1900nmとなるように記録再生装置を制御したこと以外は実施例1と同様にして磁気テープにデータ信号を書き込んだ。
まず、磁性層形成用塗料の乾燥条件(乾燥温度および乾燥時間)を調整し、磁気テープの厚み方向(垂直方向)における角形比S1を55%および長手方向における角形比S2を45%に設定したこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。次に、実施例1と同様にして、得られた磁気テープに対してサーボ信号およびデータ信号を書き込んだ。
基体(ベースフィルム)としての長尺のアラミドフィルム(平均厚み4.2μm)を用いることにより、長手方向における磁気テープのヤング率を13.5GPaに設定したこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。
磁気テープの記録容量をA、B、Cの3段階で評価した。A、B、Cの3段階の判定基準は、以下に示す通りである。
A:18TB以上の記録容量を達成可能である
B:16TB以上18TB未満の記録容量を達成可能である
C:記録容量が16TB未満である
まず、記録再生装置にカートリッジをローディングし、スピンドルにカードリッジを装着し、スピンドル駆動装置およびリール駆動装置を回転駆動させた。そして、カートリッジに収容された磁気テープ全体を往復走行させると共に、サーボ信号によるトラック制御をしつつ、データの読み取りを行った。
9:オフトラックすることはない
8:走行時に、1か所/240秒の割合でオフトトラックすることがある
7:走行時に、1か所/120秒の割合でオフトトラックすることがある。
6:走行時に、1か所/60秒の割合でオフトトラックすることがある。
5:走行時に、1か所/30秒の割合でオフトトラックすることがある。
4:走行時に、1か所/10秒の割合でオフトトラックすることがある。
3:走行時に、1か所/2秒の割合でオフトトラックすることがある。
2:オフトラックでシステムエラーが発生し停止することがある
1:オフトラックによりシステムエラーで即時に停止する
記録再生装置により磁気テープを往復走行の際に、磁気テープの長手方向のテンションを調整すること以外は、上述した「張力調整なしの場合のオフトラック特性」の場合と同様にしてオフトラック時間を計測し、計測したオフトラック時間に基づき、磁気テープを9段階で評価した。
まず、磁気テープからの再生信号をスペクトラムアナライザーにて測定し、再生信号キャリアの大きさをS、積算ノイズの大きさ(0Hz近傍の低周波〜再生信号キャリア周波数の2倍の帯域までを積算)をNとし、SとNからSNR(Signal-to-Noise Ratio)を計算した。次に、求めたSNRを、リファレンスメディアとしての比較例1のSNRを基準とした相対値(dB)に変換した。
tpi:track per inch
bpsi:bit per square inch
巻長:リールに巻いた状態で、102mm×105mm×22mmサイズのカートリッジ(LTOに準拠したカートリッジ)に収容可能な磁気テープの巻長
実施例1、5〜7の評価結果から、SNRの向上の観点からすると、垂直方向における角形比が75%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましいことがわかる。
実施例1、11、12の評価結果から、SNRの向上の観点からすると、磁性粉の平均粒子体積は1800nm3以下であることが好ましく、1500nm3以下であることがより好ましいことがわかる。
実施例1、14、15の評価結果から、上記の構成(1)〜(3)を満たしていれば、磁性粉の種類によらず、上記効果を得ることができることがわかる。
比較例3の評価結果から、トラック幅が1500nmを超える場合には、上記の構成(1)を満たしていなくても、磁気テープの再生時におけるSNRの低下およびオフトラックを抑制することができることがわかる。
比較例7の評価結果から、基体(ベースフィルム)がアラミドを含む場合には、磁気テープの長手方向のテンションを調整した場合にも、磁気テープの長手方向のテンションを調整しない場合と同等のオフトラック特性しか得られないことがわかる。これは、基体(ベースフィルム)がアラミドを含む場合には、磁気テープの長手方向のヤング率が13.5GPaであり、外力による磁気テープMTの伸縮性が低いため、テンションコントロールにより磁気テープMTの幅を調整することが困難となるためである。
また、比較例7では、磁気テープの長手方向のヤング率が非常に高く、伸縮性が悪いため、磁気テープがサーボ信号の書き込みやドライブ走行時の張力変化に敏感となり、サーボ信号品質に悪化が見られた。
(磁気テープの作製工程、サーボ信号の書き込み工程)
まず、実施例1〜17、比較例1〜7と同様にして磁気テープを作製した。次に、この磁気テープに実施例1〜17、比較例1〜7と同様にしてサーボ信号を書き込んだ。
まず、カートリッジとして、テンション調整情報を書き込む領域をカートリッジメモリに有し、上記領域に対するテンション調整情報の書き込み、および上記領域からのテンション調整情報の読み出しを行うことが可能なものを準備した。このカートリッジのサイズは、実施例1〜17、比較例1〜7と同様のサイズ(102mm×105mm×22mm)であった。
まず、記録再生装置にカートリッジをローディングし、スピンドルにカードリッジを装着し、スピンドル駆動装置およびリール駆動装置を回転駆動させた。そして、カートリッジに収容された磁気テープ全体を往復走行させると共に、サーボ信号によるトラック制御をしつつ、データの書き込みを行った。さらに、このデータの書き込みと共に、サーボ信号の再生波形の形状から、データ記録時の磁気パターン列の間隔d1を一定間隔(1mの間隔毎)で計測し、その位置と間隔をカートリッジメモリに書き込んだ。データ書き込み時の記録トラック幅Wおよび記録波長λは、実施例1〜17、比較例1〜7と同様にした。
記録再生装置により磁気テープを往復走行させる際に、磁気テープの長手方向のテンションを調整すること以外は、上述した「張力調整なしの場合のオフトラック特性」の場合と同様にしてオフトラック時間を計測し、計測したオフトラック時間に基づき、磁気テープを9段階で評価した。
(1)
テープ状の磁気記録媒体であって、
基体と、
前記基体上に設けられた磁性層と
を備え、
温度、相対湿度が(10℃、10%)、(10℃、80%)、(29℃、80%)、(45℃、10%)である4つの環境下で測定された前記磁気記録媒体の幅の平均値のうちの最大値、最小値をそれぞれwmax、wminとした場合、wmaxおよびwminが以下の関係式(1)を満たし、
前記基体は、ポリエステルを含み、
垂直方向における前記磁性層の角形比が、65%以上である磁気記録媒体。
(wmax−wmin)/wmin≦400[ppm] ・・・(1)
(2)
前記磁性層が、複数のデータトラックを形成可能に構成され、
前記データトラックの幅が、1500nm以下である(1)に記載の磁気記録媒体。
(3)
1500nm以下のデータトラック幅でデータを記録可能に構成された記録再生装置に用いられる(1)または(2)に記載の磁気記録媒体。
(4)
長手方向における前記磁気記録媒体のヤング率が、8.0GPa未満である(1)から(3)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(5)
長手方向における前記基体のヤング率が、7.5GPa未満である(1)から(4)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(6)
長手方向における前記磁性層の角形比が、35%以下である(1)から(5)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(7)
前記磁性層が、磁化反転間距離の最小値Lとデータトラックの幅Wの比率W/LがW/L≦35の関係を満たすように、データを記録可能に構成されている(1)から(6)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(8)
前記磁性層が、磁化反転間距離の最小値Lとデータトラックの幅Wの比率W/LがW/L≦30の関係を満たすように、データを記録可能に構成されている(1)から(7)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(9)
前記磁性層が、磁化反転間距離の最小値Lが48nm以下となるように、データを記録可能に構成されている(1)から(8)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(10)
前記磁性層が、複数のサーボバンドを有し、
前記磁性層の表面の面積に対する前記サーボバンドの総面積の割合が、4.0%以下である(1)から(9)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(11)
前記サーボバンドの数が、5以上である(10)に記載の磁気記録媒体。
(12)
前記サーボバンドの数が、5+4n(但し、nは正の整数である。)以上である(10)に記載の磁気記録媒体。
(13)
前記サーボバンドの幅が、95μm以下である(10)から(12)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(14)
前記磁気記録媒体の平均厚みが、5.6μm以下である(1)から(13)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(15)
前記基体の平均厚みが、4.2μm以下である(1)から(14)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(16)
前記磁性層の平均厚みが、90nm以下である(1)から(15)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(17)
長手方向のテンション変化に対する幅方向の寸法変化量Δwが、650[ppm/N]≦Δwである(1)から(16)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(18)
温度膨張係数αが、6[ppm/℃]≦α≦8[ppm/℃]であり、且つ、湿度膨張係数βが、β≦5[ppm/%RH]である(1)から(17)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(19)
ポアソン比ρが、0.3≦ρである(1)から(18)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(20)
長手方向の弾性限界値σMDが、0.8[N]≦σMDである(1)から(19)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(21)
前記磁性層は、磁性粉を含み、
前記磁性粉は、六方晶フェライト、ε酸化鉄またはCo含有スピネルフェライトを含む(1)から(20)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(22)
前記磁性粉の平均アスペクト比が、1.0以上3.0以下である(21)に記載の磁気記録媒体。
(23)
前記六方晶フェライトが、BaおよびSrのうちの少なくとも1種を含み、
前記ε酸化鉄が、AlおよびGaのうちの少なくとも1種を含む(21)または(22)に記載の磁気記録媒体。
(24)
前記磁性粉は、六方晶フェライトを含み、
前記磁性粉の平均粒子体積が、1000nm3以上1800nm3以下である(21)に記載の磁気記録媒体。
(25)
前記基体と前記磁性層の間に設けられた下地層をさらに備える(1)から(24)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(26)
(1)から(25)のいずれかに記載された前記磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体の長手方向にかかるテンションを調整するための調整情報を書き込む領域を有する記憶部と
を備えるカートリッジ。
(27)
記録再生装置と通信を行う通信部と、
前記通信部を介して前記記録再生装置から受信した前記調整情報を前記領域に記憶し、かつ、前記記録再生装置の要求に応じて、前記領域から前記調整情報を読み出し、前記通信部を介して前記記録再生装置に送信する制御部と
をさらに備える(26)に記載のカートリッジ。
11 カートリッジメモリ
31 アンテナコイル
32 整流・電源回路
33 クロック回路
34 検波・変調回路
35 コントローラ
36 メモリ
36A 第1の記憶領域
36B 第2の記憶領域
41 基体
42 下地層
43 磁性層
44 バック層
50、50A 記録再生装置
51 スピンドル
52 リール
53 スピンドル駆動装置
54 リール駆動装置
55 ガイドローラ
56 ヘッドユニット
57 リーダライタ
58 通信インターフェース
59 制御装置
60 温度計
61 湿度計
100、100A 記録再生システム
MT 磁気テープ
Claims (27)
- テープ状の磁気記録媒体であって、
基体と、
前記基体上に設けられた磁性層と
を備え、
温度、相対湿度が(10℃、10%)、(10℃、80%)、(29℃、80%)、(45℃、10%)である4つの環境下で測定された前記磁気記録媒体の幅の平均値のうちの最大値、最小値をそれぞれwmax、wminとした場合、wmaxおよびwminが以下の関係式(1)を満たし、
前記基体は、ポリエステルを含み、
垂直方向における前記磁性層の角形比が、65%以上である磁気記録媒体。
(wmax−wmin)/wmin≦400[ppm] ・・・(1) - 前記磁性層が、複数のデータトラックを形成可能に構成され、
前記データトラックの幅が、1500nm以下である請求項1に記載の磁気記録媒体。 - 1500nm以下のデータトラック幅でデータを記録可能に構成された記録再生装置に用いられる請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
- 長手方向における前記磁気記録媒体のヤング率が、8.0GPa未満である請求項1から3のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 長手方向における前記基体のヤング率が、7.5GPa未満である請求項1から4のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 長手方向における前記磁性層の角形比が、35%以下である請求項1から5のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 前記磁性層が、磁化反転間距離の最小値Lとデータトラックの幅Wの比率W/LがW/L≦35の関係を満たすように、データを記録可能に構成されている請求項1から6のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 前記磁性層が、磁化反転間距離の最小値Lとデータトラックの幅Wの比率W/LがW/L≦30の関係を満たすように、データを記録可能に構成されている請求項1から7のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 前記磁性層が、磁化反転間距離の最小値Lが48nm以下となるように、データを記録可能に構成されている請求項1から8のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 前記磁性層が、複数のサーボバンドを有し、
前記磁性層の表面の面積に対する前記サーボバンドの総面積の割合が、4.0%以下である請求項1から9のいずれかに記載の磁気記録媒体。 - 前記サーボバンドの数が、5以上である請求項10に記載の磁気記録媒体。
- 前記サーボバンドの数が、5+4n(但し、nは正の整数である。)以上である請求項10に記載の磁気記録媒体。
- 前記サーボバンドの幅が、95μm以下である請求項10から12のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 前記磁気記録媒体の平均厚みが、5.6μm以下である請求項1から13のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 前記基体の平均厚みが、4.2μm以下である請求項1から14のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 前記磁性層の平均厚みが、90nm以下である請求項1から15のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 長手方向のテンション変化に対する幅方向の寸法変化量Δwが、650[ppm/N]≦Δwである請求項1から16のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 温度膨張係数αが、6[ppm/℃]≦α≦8[ppm/℃]であり、且つ、湿度膨張係数βが、β≦5[ppm/%RH]である請求項1から17のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- ポアソン比ρが、0.3≦ρである請求項1から18のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 長手方向の弾性限界値σMDが、0.8[N]≦σMDである請求項1から19のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 前記磁性層は、磁性粉を含み、
前記磁性粉は、六方晶フェライト、ε酸化鉄またはCo含有スピネルフェライトを含む請求項1から20のいずれかに記載の磁気記録媒体。 - 前記磁性粉の平均アスペクト比が、1.0以上3.0以下である請求項21に記載の磁気記録媒体。
- 前記六方晶フェライトが、BaおよびSrのうちの少なくとも1種を含み、
前記ε酸化鉄が、AlおよびGaのうちの少なくとも1種を含む請求項21または22に記載の磁気記録媒体。 - 前記磁性層は、磁性粉を含み、
前記磁性粉は、六方晶フェライトを含み、
前記磁性粉の平均粒子体積が、1000nm3以上1800nm3以下である請求項1から20のいずれかに記載の磁気記録媒体。 - 前記基体と前記磁性層の間に設けられた下地層をさらに備える請求項1から24のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 請求項1から25のいずれかに記載された前記磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体の長手方向にかかるテンションを調整するための調整情報を書き込む領域を有する記憶部と
を備えるカートリッジ。 - 記録再生装置と通信を行う通信部と、
前記通信部を介して前記記録再生装置から受信した前記調整情報を前記領域に記憶し、かつ、前記記録再生装置の要求に応じて、前記領域から前記調整情報を読み出し、前記通信部を介して前記記録再生装置に送信する制御部と
をさらに備える請求項26に記載のカートリッジ。
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