JP2007250147A - 磁気記録テープ - Google Patents

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Abstract

【課題】狭トラックの記録再生特性に優れ、オフトラックによる再生不能が生じにくい磁気記録テープおよび磁気記録テープカートリッジを提供する。
【解決手段】可撓性支持体上に少なくともガスバリア層と高剛性層と磁性層とを有し、高剛性層に分子量1000以下の有機化合物が高剛性層当たりに0.05wt%〜1.2wt%含有させる。この結果磁性層のテープ幅方向の温度膨張係数が0×10−6〜8×10−6/℃、湿度膨張係数は0×10−6〜10×10−6/%RHとなる。
【選択図】図2

Description

本発明は、記録容量及び転送速度が高い磁気記録テープおよびこれを備えた磁気記録テープカートリッジに関しており、特にトラッキングサーボ用の磁気信号または光学信号が記録され、磁気抵抗効果素子を利用した再生ヘッド(MRヘッド)によって磁気記録信号が再生される磁気テープと、これを備えたデータバックアップ用として好適な磁気記録テープカートリッジに関する。
磁気テープには、オーディオテープ、ビデオテープ、コンピユーターテープなど種々の用途がある。特にデータバックアップ用の磁気記録テープ(バックアップテープ)の分野ではバックアップ対象となるハードディスクの大容量化に伴い、1巻当たり300GB以上の記録容量のものも商品化されており、今後ハードディスクのさらなる大容量化に対応するためこの種のバックアップテープの高容量化は不可欠となっている。また転送速度を高くするため、テープの送り速度、テープとヘッド間の相対速度を高めることも必要不可欠となっている。
バックアップテープ1巻当たりの高容量化のためには、テープ全厚を薄くして1巻あたりのテープ長さを長くすること、磁性層厚さを90nm以下と極めて薄くすることで厚み減磁を小さくして記録波長を短くすること、記録トラック幅を20μm以下と極めて狭くして、テープ幅方向の記録密度を高くすることが必要である。
特に記録トラック幅を狭した場合オフトラックが起こりやすくなり、これによる再生出力の低下さらには再生そのものが不能になるという問題生じる。これを避けるために走行系にトラッキングサーボ方式を採用するものが提案されており、光学トラックサーボ方式(特許文献1〜3)や磁気サーボ方式がある。光学サーボ方式は、凹部アレイからなるサーボトラックバンドをレーザー照射等でバックコート層に形成し、これを光学的に読み取ってサーボトラッキングを行うものである。これにはバックコート層に光を吸収する材料等で光学サーボ信号を記録する方式(特許文献4)もある。また磁気サーボ方式は、サーボトラックバンドを磁気記録により磁性層に形成し、これを磁気的に読み取ってサーボトラッキングを行うものである。さらにバックコート層にも磁性を持たせ、このバックコート層に磁気サーボ信号を記録する方式(特許文献5)もある。
ここで、磁気サーボ方式を例にとってトラッキングサーボの原理を簡単に説明する。図1に示すように、磁気サーボ方式を採用する磁気テープ3では、磁性層にそれぞれテープ長手方向に沿って延びる、例えば約2.8mm間隔のトラックサーボ用のサーボバンド200とデータ記録用のデータトラック300とが設けられる。このうちサーボバンド200は、各々サーボトラック番号を磁気的に記録した複数のサーボ信号記録部201からなる。磁気テープ3に対してデータの記録・再生を行う磁気ヘッドアレイは、両端に1対(順走行用と逆走行用)のサーボトラック用MRヘッドと、両端のサーボトラック用MRヘッドに挟まれた例えば8×1対の記録・再生用ヘッド(記録ヘッドは磁気誘導型ヘッドで構成され、再生ヘッドはMRヘッドで構成される)とを有している。サーボ信号を読み取ったサーボトラック用MRヘッドからの信号に基づいて磁気ヘッドアレイ全体が連動して動くことで、記録・再生用ヘッドがテープ幅方向に移動してデータトラック300に到達する。
このような場合において、記録トラック幅Twが30μm以下と狭く、再生トラック幅Trに関してTw−Trが15μm以下の場合(例えばTw〜約25μm、Tr〜約17.5μmであるような場合)に問題となってくる。なぜなら書き込み時の記録トラックのセンター位置と、再生時の再生トラックのセンター位置が7.5μmを超えてずれてしまった場合、再生ヘッドの一部は記録トラック上には既に無く、オフトラックを起こしてしまうことになる。記録時と再生時のトラックのずれの原因は、テープ幅方向の揺動及び、以下に述べる幅方向の伸縮が考えられる。
磁気記録テープは走行時及び保存時に温度や湿度の環境の変化があると、これに伴って幅方向の伸縮を引き起こす。幅方向の伸縮は走行時のテンションによっても引き起こされる。また保存時の巻き取りテンションによって組成変形(クリープ)を引き起こし、これによっても伸縮が起こる。なお磁気テープ長手方向の温度膨張や湿度膨張は、記録波長等の変化の原因とはなるが、これについては回路補正が可能である。
このような走行時及び保存時の温湿度やテンションの変化を伴う幅方向の伸縮によって、前述したオフトラックが引き起こされる。テープ幅方向の伸縮が、トラッキングサーボ方式による磁気テープの記録再生におよぼす影響に関して、図2を使って説明する。ここで用いられるヘッドユニット2は、磁気テープ3が始端側から終端側に向かう順走行時に磁気テープのデータトラック領域(図1:300)にデータトラック(A1−41T−1等)を形成する8個のデータヘッド(A1〜A8)からなるヘッド群31と、磁気テープ3が終端側から始端側に向かう逆走行時にデータトラック(B1−42T−1等)を形成する8個のデータヘッド(B1〜B8)からなるヘッド群32の二つのヘッド群を備える。各ヘッド群31・32の磁気テープ3の幅方向(Y方向)の端部には、予め磁気テープ1上に形成されたサーボトラック(41T−1〜4、42T−1〜4等)をトレースするためのサーボヘッド41・42が設けられている。
各データヘッド(A1〜A8、B1〜B8)には、上述した一対の記録ヘッドと再生ヘッドとが組み込まれている。このヘッドユニット2を用いて、まず順走行する磁気テープ1に対して、サーボヘッド41にてサーボトラック(41T−1)をトレースして、トラッキングサーボを行いながら、ヘッドユニット(A1〜A8)にてデータトラックを書き込む。図2では、かかる書き込み・記録動作で形成されたデータトラックを、(A1−41T−1)〜(A8−41T−1)と記している。
磁気テープ1が終端に至ると、データヘッド(B1〜B8)に切り換え、サーボヘッド42でサーボトラック42Tをトレースして、トラッキングサーボを行いながら、データトラック(B1−42T−1)〜(B8−42T−1)を書き込む。これらデータトラック(B1−42T−1)〜(B8−42T−1)は、先の順走行時に形成されたデータトラック(A1−41T−1)〜(A8−41T−1)に完全には重ならないように、ヘッドユニット2を磁気テープ1の幅方向(Y方向)にずらせて形成される。磁気テープ1がその始端に至ると、再びデータヘッド(A1〜A8)に切り換え、ヘッドユニット2をずらせて、サーボヘッド41にてサーボトラック(41T−2)をトレースして、トラッキングサーボを行いながら、データトラック(A1−41T−2)〜(A8−41T−2)を形成する。さらに、磁気テープ1がその終端に至ると、データヘッド(B1〜B8)に切り換え、ヘッドユニット2をずらせて、サーボヘッド42にてサーボトラック(42T−2)をトレースして、トラッキングサーボを行いながら、データトラック(B1−42T−2)〜(B8−42T−2)を形成する。この例では以上のような動作を4度繰り返し行うことにより、データトラック領域(3−1)を書き終えることとなるため、次のデータトラック領域(3−2)にヘッドユニット2は大きく移動し、当該領域(3−2)にデータトラックを形成する。
再生動作は、先の記録動作と逆の手順で行う。すなわち、サーボトラック(41T−1等)をトレースしてトラッキングサーボを行い、データヘッド(A1〜A8、B1〜B8)を対応するデータトラックに向かい合う位置に位置合わせしたうえで、これらデータヘッド(A1〜A8、B1〜B8)内の再生ヘッドで、データトラックに書き込まれたデータ信号を読み取る。
このようなサーボトラッキング方式であるので、各データヘッド(A1〜A8、B1〜B8)の磁気テープ1の幅方向(Y方向)の寸法が同一に設定されている。従って全てのデータトラックのトラック幅は、同一寸法となるようにしてある。データトラックのトラック幅は、小さいほうが磁気テープ上のトラック本数を多くすることができるため、磁気テープの記録容量の増加を図るうえで有利であるが、一方でトラッキングサーボの精度、温度や湿度などの外部環境の変化に起因して、ヘッドユニット2と磁気テープ3との膨張係数の差から生じる寸法ずれや、テープ巻き取り後の放置によるテープ幅の変化等を考慮すると、おのずと下限値が定まる。データトラックのトラック幅がこの下限値を超えて小さいと、データヘッドがデータトラックからずれることが多くなるので、データの読み出しが不安定となり、エラーレートが大きくなる。
前述のデータトラックとデータヘッドとの相対位置のずれ要因のうち、走行時のテープの幅方向の揺動はトラッキングサーボの性能の向上を図れば対応可能であるが、温度や湿度変化によるヘッドユニットと磁気テープとの膨張係数の差から生じる寸法ずれや、巻き取り後の放置によるテープ幅の変化等は、トラッキングサーボの性能向上では対応できない。すなわち、ヘッドユニット2上のサーボヘッド41・42と、該サーボヘッド41・42から最も離れた位置にあるデータヘッド(A8・B1)との距離と、これに対応するサーボトラック(41T−1〜4、42T−1〜4)とデータトラック(A8−41T−1〜4、B1−42T−1〜4)との距離との、外部環境の変化等に起因するずれが、前述したオフトラックが起きる状況に近づいてくると、エラー性能の低下を招く。
具体例を挙げると、サーボヘッド41・42と該サーボヘッド41・42から最も離れた位置にあるデータヘッドA8・B1との距離が250μmであり、当該データヘッドA8・B1内の記録ヘッドのトラック幅が20μm、再生ヘッドのトラック幅が12μmの場合には、再生ヘッドのずれマージンは片側4μmしかない。ヘッドユニット2と、温度湿度に起因する磁気テープ1の幅方向の膨張変化は、湿度差に拠るところが大きいので、湿度膨張係数で考えてみると、湿度膨張係数が2×10―5/%RHの磁気テープ1の場合には、記録時に対して再生時に40%RHの湿度変化があった場合、上記図2に示す形態では、最大、2.0μmのずれが生じる。このため、サーボトラック近傍のデータトラックでは、走行時の幅方向の揺動に対して振幅8μm程度まで問題がないのに対し、サーボトラックから最も離れた位置にあるデータトラックでは、振幅の許容範囲は4μmと小さなものとなり、当該トラックからのオフトラックとなりやすい。このことは、今後さらに磁気テープの高容量化を図ることを目的として、データトラックの高記録密度化を図った場合に避けることのできない大きな問題となる。
このような問題は下記の特許文献2のように、磁気テープのデータトラック中に書き込まれた微動用サーボ信号に用いて、磁気ヘッド内の記録用ヘッドや再生用ヘッドを個別に微動制御すれば解決できる。
特開平11−213384号公報 特開平11−339254号公報 特開2000−293836号公報 特開平11−126328号公報 特開平11−126327号公報 特開2003−173508号公報
以上のように高密度記録用の磁気テープでは、トラッキングサーボ性能が非常に重要である。前述のように、磁気テープのデータトラック中に微動用サーボ信号を書き込むことで、トラッキング性能を向上させることは出来るが、微動用サーボ信号の領域分だけデータ記録面積が減少することが避けられず、高記録密度化の妨げとなる。何よりも磁気テープやヘッドユニットの構成が複雑となり、制御が複雑となる不利がある。
従って磁気テープの記録密度の向上とサーボ制御を有効に働かせるためには、磁気テープの幅方向の温度・湿度寸法安定性の向上が求められる。
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、可撓性支持体上に少なくともガスバリア層と高剛性層と磁性層とを有し、高剛性層に分子量1000以下の有機化合物が高剛性層当たりに0.05wt%〜1.2wt%含有させることで、十分な寸法安定性が実現できることを見出した。
本発明は、以上の知見をもとにして、完成されたものである。すなわち、本発明は可撓性支持体上に少なくともガスバリア層と高剛性層と磁性層とを有する磁気記録テープにおいて、該高剛性層に分子量1000以下の有機化合物が高剛性層当たりに0.05wt%〜1.2wt%含まれることを特徴とする磁気記録テープ(請求項1)と、前記高剛性層が電子線硬化して形成されたことを特徴とする請求項1記載の磁気記録テープ(請求項2)と、前記ガスバリア層の表面電気抵抗が10〜10Ωであることを特徴とする請求項1記載の磁気記録テープ(請求項3)に関わるものである。
本発明によれば、電磁変換特性に優れ、しかもエラーレートが小さく、温度や湿度が変化した場合でもオフトラック量が小さい温度・湿度安定性に優れた磁気テープが得られる。
次に本発明の実施の形態について説明する。なお本発明は以下の形態に限られるものではない。本発明は可撓性支持体上に少なくともガスバリア層と高剛性層と磁性層とを有する。特に走行高信頼性が必要であるテープ媒体では、可撓性支持体の前記磁気記録層の他面上にバックコート層を、耐久性が必要なテープ媒体では磁性層と高剛性層の間に下層を設けることができる。以下に本発明を実施するための、可撓性支持体、ガスバリア層、高剛性層、下層、磁気記録層、バックコート層について詳述する。
(可撓性支持体)
可撓性支持体の幅方向の温度膨張係数は、−10×10−6〜8×10−6/℃が好ましく、−10×10−6〜5×10−6/℃がより好ましい。この範囲が好ましいのは、この範囲を外れた場合に、磁気テープの幅方向の温度膨張係数値が、0×10−6〜8×10−6/℃の範囲から外れるためオフトラックが生じ、エラーレートが大きくなるためである。
可撓性支持体の幅方向の湿度膨張係数は、0×10−6〜10×10−6/%RHの範囲が好ましく、0×10−6〜7×10−6/%RHがより好ましい。この範囲が好ましいのは、この範囲を外れた場合、磁気テープの幅方向の湿度膨張係数が、0×10−6〜10×10−6/%RHの範囲から外れるため、オフトラックが生じ、エラーレートが大きくなるためである。
可撓性支持体の厚さは、6.0μm以下が好ましく、2.0〜6.0μmがより好ましい。この範囲の厚さの可撓性支持体がより好ましいのは、2μm未満では製膜が難しく、またテープ強度が小さくなり、6.0μmを越えるとテープ全厚が厚くなり、テープ1巻当りの記録容量が小さくなるためである。
可撓性支持体の長手方向のヤング率Eは、可撓性支持体の厚さによって異なるが、通常4.9GPa(500kg/mm)以上のものが好ましい。5.9GPa(600kg/mm)以上がより好ましく6.9GPa(700kg/mm)以上がさらに好ましい。この範囲のヤング率の可撓性支持体が好ましいのは、4.9GPa(500kg/mm)未満では、磁気テープの強度が弱くなったり、磁気テープの走行が不安定になるためである。
長手方向のヤング率をMD、幅方向のヤング率をTDとした時の比(MD/TD)は、0.1〜1.8が好ましく、0.3〜1.7がより好ましく、0.5〜1.6がさらに好ましい。この範囲が好ましいのは、ヘッドタッチが良くなるためである。このような可撓性支持体には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、芳香族ポリアミドフィルム、芳香族ポリイミドフィルム等がある。
可撓性支持体は通常、磁性層形成面、バックコート層形成面共に、中心線平均表面粗さRaが5.0〜10nmのものが使用されるが、磁性層の表面粗さRaを小さくしてスペーシングロスを小さくする目的で、磁性層形成面のRaを1.0〜5.0nmとした可撓性磁性支持体(バックコート層形成面のRaは5.0〜10nm)が使用される場合がある。このような可撓性支持体はデュアルタイプと呼ばれ、2種の可撓性磁性支持体を貼り合わせて作製される。
(ガスバリア層)
ガスバリア層は通常用いられる金属蒸着法によって形成できる。蒸着する金属としてはAl、Alなどがある。ガスバリア層の厚みは10nm〜150nmが好ましく、30nm〜100nmがさらに好ましい。ガスバリア層の表面電気抵抗が10〜10Ωであることが好ましい。電気抵抗が10Ωを上回ると静電気により磁気記録テープに塵埃等が付着してしまうからである。また10Ωを下回ると、ドライブ側の金属ガイドロールとの電位差が大きくなってしまうからである。
(高剛性層)
高剛性層の厚さは、0.3〜1.0μmが好ましく、0.3〜0.8μmがより好ましい。この範囲が好ましいのは、0.3μm未満では磁気記録媒体の耐久性が悪くなる場合があり、1.0μmを越えると磁気記録媒体の耐久性向上効果が飽和するばかりでなく、磁気テープの場合は全厚が厚くなって、1巻当りのテープ長さが短くなり、記録容量が小さくなるためである。
該高剛性層に分子量1000以下の有機化合物が高剛性層当たりに0.05wt%〜1.2wt%含まれる。分子量1000以下の有機化合物が1.2wt%以上含まれると、ガスバリア層との接着強度が極端に低下してしまう。また0.05wt%より少なくなると、高剛性層の上に設ける磁性層や下層非磁性層との接着強度が不足するからである。
高剛性層には、幅方向の温度・湿度の寸法安定性が向上しサーボ制御の安定性が向上するので、粒子径が10〜100nmの範囲の粒子形状が板状である非磁性の酸化物粒子、好ましくは酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化鉄の内から選ばれた少なくとも一種の酸化物粒子を含有させる。これらの酸化物粒子の添加量としては、高剛性層中の全無機粉体100重量に対して、20〜85重量部とすることが好ましい。このような添加量にすることにより、テープ幅方向の熱膨張係数が0×10−6〜8×10−6/℃、湿度膨張係数が0×10−6〜10×10−6/%RHになると同時に、ウエット・オン・ウエットで、その上に形成した下層非磁性層・または磁性層の表面粗さも小さくなるので好ましい。
高剛性層は、電子線硬化性樹脂を含有させて、電子線照射によるバインダー樹脂硬化処理を施すことが好ましい。このようにすれば可撓性支持体上にバリア層、高剛性層、下層、磁性層、バックコート層を塗布、乾燥、カレンダー後、高剛性層が塗布された面から電子線を照射することにより、バインダーの架橋硬化反応を起こすことができ、後述する熱変形を効果的に防止できるので、バインダー樹脂を硬化させるのに従来行われていた加熱エージングを完全に不要化することもできる。
ここで、熱変形について説明する。電子線硬化工程においても、従来のような下塗層と磁性層の厚さの合計が1.2μm以上あるような磁気記録媒体では、100kV以上の加速電圧により、電子線照射を行う必要があった。このような条件での電子線硬化では、磁気テープは熱変形するために、そのまま使用すると熱歪が残り、使用環境下(特に60℃以上の高温下)での使用・保存で収縮するのでトラックずれが生じ、エラーが増加する問題があるため、後のスリット工程の前に、歪取りの目的で加熱エージングを必要とした。加熱エージングを行うとバックコート粗さが磁性層へ転写することにより出力の低下やエラーの増加などの原因となる。その上、磁性層や下塗層のバインダー樹脂として使用している塩化ビニル系樹脂やバックコート層に使用しているセルロース系樹脂、潤滑剤として使用している脂肪酸や脂肪酸エステル類、可撓性支持体の分子鎖が一部切断され、耐久性が低下する場合がある。
そこで本発明者らは鋭意検討した結果、本発明の高剛性層の厚さが、1.2μm以下、全厚が7.7μm以下の磁気テープにおいては、20kV以上、100kV未満、より好ましくは、30〜70kVの加速電圧で電子線照射を行うことが好ましいことを見出した。加速電圧が30kVより小さくなると、塗膜の硬化が不十分となり、70kVより大きくなると、前記の問題点が生ずる。
電子線硬化性樹脂としては、通常、一分子中に電子線感応性二重結合が2個以上あるアクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリル酸エステル類、メタクリル酸アミド類、アリル化合物、ビニルエ−テル類、ビニルエステル類が用いられ、二重結合1個当りの重量平均分子量が50〜4000の電子線硬化性樹脂が好ましい。このような電子線硬化性樹脂としては、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ノボラックジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグルコールジアクリレートなどの二官能アクリレートおよび上記アクリレートと同様の二官能メタクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化グリセリルトリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレートなどの三官能アクリレートおよび上記アクリレートと同様の三官能メタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの四官能以上のアクリレートおよび上記アクリレートと同様の四官能以上のメタクリレートなどのモノマーアクリレート(メタクリレート)やエーテル、エステル、カーボネート、エポキシ、塩化ビニル、ウレタンなどの骨格を有するオリゴマーやポリマーを上記モノマーで変性し、電子線感応性二重結合を含有させたものが用いられる。電子線感応性二重結合を含有させたポリマーとしては、電子線硬化性塩化ビニル系共重合体(東洋紡績(株)製:TB0246)(重合度=300、極性基:−OSOK=1.5個/分子)、電子線硬化性ポリウレタン樹脂(東洋紡績(株)製:TB0242)(Mn=25000、極性基:リン化合物=1個/1分子)などの具体例がある。
2種以上の電子線硬化性樹脂を組み合わせてバインダー樹脂とすることができる。この場合、ポリマータイプとモノマータイプを組み合わせることが好ましい。ポリマータイプは重量平均分子量が3000〜10万、モノマータイプは重量平均分子量が100〜2000のものが好ましい。前記、モノマータイプの電子線硬化性樹脂は、二重結合1個当りの重量平均分子量が50〜300の範囲であることがより好ましい。
高剛性層を硬化させるために、熱可塑性樹脂を排除するものではない。電子線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂と組み合わせることが好ましい。非磁性粉などに対して分散性の大変優れた樹脂が数多く提供されている熱可塑性樹脂が使用できるので、記録再生特性の優れた高剛性層を設計しやすい。しかし電子線硬化処理を行うと電子線硬化性樹脂の分子間には架橋ネットワークが形成され、そのネットワークで塗膜を硬化させることはできるが、熱可塑性樹脂と電子線硬化性樹脂の分子間には架橋ネットワークが形成されないので、塗膜の樹脂全体が架橋ネットワークで結合しているとはいえず、耐久性の優れた塗膜を設計するためには、バインダー樹脂、潤滑剤、非磁性粉の選択に関して工夫が必要である。
上記の電子線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを組み合わせて本発明の磁気テープに用いるバインダー樹脂とすることができる。組み合わせる電子線硬化性樹脂としては、特に硬化性に優れた樹脂が好ましく、二重結合1個当りの重量平均分子量が50〜300の電子線硬化性樹脂が好ましい。前記、二重結合1個当りの重量平均分子量が50〜300の電子線硬化性樹脂はモノマータイプがより好ましい。
二重結合1個当りの重量平均分子量が50〜300の電子線硬化性樹脂は、バインダー樹脂全体に対して5〜20重量部の範囲で用いるのが好ましい。この範囲が好ましいのは、5重量部未満だと塗膜全体の架橋密度が小さく塗膜の耐久性が不足する一方、20重量部を超えると塗膜が硬くなりすぎて可撓性支持体との接着性が低下したり、却って粉落ちが大きくなったり、磁性塗膜の記録再生特性が低下したりするからである。
これらのバインダー樹脂(熱可塑性樹脂+電子線硬化性樹脂)は、高剛性層においては、非磁性粉末などの粉末100重量部に対して、7〜50重量部、好ましくは10〜35重量部の範囲で用いられる。特に7〜25重量部の範囲にするのがより好ましい。バインダー樹脂として、塩化ビニル系樹脂5〜15重量部と、ポリウレタン樹脂2〜10重量部とを、複合して用いるのが最も好ましい。
また塗料粘度やテープ剛性の制御を目的に、上述した板状の酸化物粒子以外に、さらに非磁性酸化鉄、アルミナのような非磁性粒子を添加することもできる。この場合、添加する非磁性の酸化鉄としては、針状の場合、長軸長50〜200nm、短軸長5〜100nmのものが好ましく、粒状または無定形のものでは、粒径5〜200nmが好ましい。粒径5〜150nmがより好ましく、粒径5〜100nmがさらに好ましい。添加量としては、主要酸化物粒子である板状酸化物粒子の種類にもよるが、全無機粉体100重量に対して0〜20重量部が好ましい。この範囲が好ましいのは、20重量部を越えると板状粒子が塗膜面に平行に並びにくくなるためである。このように、粒子径が10nmから100nmの範囲にあり、粒子形状が板状である酸化物粒子、好ましくは酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化鉄の内から選ばれた少なくとも一種の酸化物粒子を主酸化物粒子として使用し、塗料粘度やテープ剛性の調整目的に、他の形状、粒子径の酸化物粒子を併用してもよい。また、これらの非磁性粒子はAlまたはSiで表面処理されていると、分散性が良くなるので、より好ましい。
(下層非磁性層)
下層非磁性層には、強度を高める目的で非磁性の無機質粉体を含み、この無機質粉体としては、金属酸化物、アルカリ土類金属塩等であることが好ましい。更に下層非磁性層に添加する無機質粉体としては、酸化鉄が好ましく、その粒径は50〜400nmがより好ましく、添加量は、全無機質粉体100重量に対して35〜83重量部が好ましい。この範囲の粒径が好ましいのは、粒径50nm未満では均一分散が難しく、400nmを越えると下層非磁性層とその直上の層との界面の凹凸が増加するためである。また、この範囲の添加量が好ましいのは、35重量部未満では塗膜強度向上効果が小さく、83重量部を越えると反って塗膜強度が低下するためである。
下層非磁性層にはアルミナを添加することが好ましい。アルミナの添加量は、全非磁性粉体100重量に対して2〜30重量部がより好ましく、8〜20重量部がさらに好ましく、11〜20重量部が一層好ましい。添加するアルミナの粒径は、100nm以下が好ましく、10〜100nmのアルミナ添加がより好ましく、30〜90nmがさらに好ましく、50〜90nmが一層好ましい。また、下層非磁性層のアルミナはコランダム相を主体とするアルミナが特に好ましい。上記範囲のアルミナ添加量が好ましいのは、2重量部未満では塗料流動性が不充分となり、30重量部を越えると下層非磁性層とその直上の層との凹凸が大きくなるためである。また、100nm以下のアルミナが良いのは、磁性層形成面の表面粗さが2.5nm以上の平滑度が低い非磁性支持体を使用し、下層非磁性層が1.5μm以下と薄い場合に、アルミナの粒径が100nmを越えると、下層非磁性層表面の平滑効果が不充分になるためである。コランダム相を主体とするアルミナ(α化率:30%以上)が特に良いのは、σ、θやγアルミナ等を使用した場合に比べて少量で下層非磁性層のヤング率が高くなり、テープ強度が増すためである。また、テープ強度も高くなることで、テープエッジの波打ち(エッジウィーブ)による出力のばらつきも改善される。
なお、上記粒径のアルミナと共に、全無機質粉体100重量に対して3重量部未満の100〜800nmのαアルミナを添加することを排除するものではない。
下層非磁性層には、導電性向上を目的にカーボンブラック(CB)を添加する。添加するCBとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等を使用できる。粒径が5nm〜200nmのものが使用されるが、粒径10〜100nmのものが好ましい。この範囲が好ましいのは、CBがストラクチャーを持っているため、粒径が10nm以下になるとCBの分散が難しく、100nm以上では平滑性が悪くなるためである。CB添加量は、CBの粒径によって異なるが、全非磁性粉体に対して15〜40重量%が好ましい。この範囲が好ましいのは、15重量%未満では導電性向上効果が乏しく、40重量%を越えると効果が飽和するためである。粒径15nm〜80nmのCBを15〜35重量%使用するのがより好ましく、粒径20nm〜50nmのCBを20〜30重量%用いるのがさらに好ましい。このような粒径・量のCBを添加することにより電気抵抗が低減され、静電ノイズの発生やテープ走行むらが小さくなる。
(磁性層)
上層磁性層に添加する磁性粉には、Fe粉末やFe−Co粉末のような針状の強磁性鉄系金属粉末が使用される。強磁性鉄系金属粉末の保磁力は、80〜320kA/mが好ましく、飽和磁化量は、強磁性鉄系金属粉末では、80〜200A・m/kg(80〜200emu/g)が好ましく、100〜180A・m/kg(100〜180emu/g)がより好ましい。このような範囲の強磁性鉄系金属粉を得るためには、Co/Fe=20〜40重量%であることが好ましい。なお、この磁性層の磁気特性と、強磁性粉末の磁気特性は、いずれも試料振動形磁束計で外部磁場1.273kA/m(16kOe)での測定値をいうものである。
本発明の磁気記録媒体において使用するFe粉末、Fe−Co粉末の針状の強磁性鉄系金属粉末の平均長軸長としては、0.02〜0.06μmが好ましく、0.03〜0.05μmがより好ましい。この範囲が好ましいのは、平均長軸長が0.02μm未満となると保磁力が低下したり、磁性粉の凝集力が増大したりするため塗料中への分散が困難になるために、短波長の出力が低下するためである。0.06μmより大きいと、また粒子の大きさに基づく粒子ノイズが大きくなる。
平均長軸長が小さくなると磁性塗膜の耐久性や耐食性が低下する傾向になる。耐久性や耐食性の低下を最小限に留めるためには、Alや希土類元素を強磁性鉄系金属粉に含ませることが好ましい。希土類元素としてはY、Nd、Sm、Prなどが好ましい。Alを含ませる量としては、Al/Fe=3〜10重量%であることが好ましい。希土類元素を含ませる量としては、希土類/Fe=10〜30重量%であることが好ましい。
なお、上記の平均長軸長は、透過型電子顕微鏡(TEM)にて撮影した写真から粒子サイズを実測し、100個の平均値により求めたものである。また、この強磁性鉄系金属粉末のBET比表面積は、35m/g以上が好ましく、40m/g以上がより好ましく、50m/g以上が最も好ましい。通常100m/g以下である。
針状の強磁性鉄系金属粉末の平均長軸長が小さくなると、長手方向に磁場配向処理を行っても、針状磁性粉に十分な配向モーメントを与えることが難しくなるために、長手方向の角型比(Br/Bm)が小さくなる傾向にあり、また、磁性層の厚さが小さくなることによっても、針状磁性粉が下塗層に斜めにはみ出す傾向が無視できなくなるため、同様の傾向にある。本願発明のように、平均長軸長が20〜60nmの針状の鉄系磁性粉を含む、厚さが90nm以下の磁性層では、針状磁性粉を長手方向に良好に配向させることは難しいが、大きな短波長出力を得るためには、(Br/Bm)≧0.80であることが好ましい。本願発明者らは、鋭意検討の結果、下塗層に平均粒子径が10〜100nmの板状非磁性酸化物粒子を含ませることによって、針状磁性粉が下塗層に斜めにはみ出す傾向がなくなり、上記範囲の角型比の磁性層を得ることができた。
磁性層には、導電性向上と表面潤滑性向上を目的に従来公知のカーボンブラック(CB)を添加する。これらのカーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等を使用できる。通常、粒子径が5〜100nmのものが使用されるが、粒径10〜100nmのものが好ましい。この範囲が好ましいのは、粒径が10nm未満になるとカーボンブラックの分散が難しく、100nmを超えると多量のカーボンブラックを添加することが必要になり、何れの場合も表面が粗くなり、出力低下の原因になるためである。カーボンブラックの添加量は強磁性粉末100重量部に対して0.2〜5重量部が好ましく、0.5〜4重量部がより好ましく、0.5〜3.5重量部がさらに好ましく、0.5〜3重量部がいっそう好ましい。この範囲が好ましいのは、0.2重量部未満では効果が小さく、5重量部を超えると、磁性層表面が粗くなりやすいからである。
また板状の導電性粒子を添加する場合は、0.5〜10重量部とすることが好ましく、導電性粒子としては、板状のスズ含有酸化インジウムやアンチモン含有酸化スズ粒子、グラファイト、板状カーボン、板状酸化物粒子表面にカーボン皮膜を形成した粒子が使用できる。これらの板状粒子としては、平均粒子径が10〜100nmのものが電気抵抗低減効果が大きく、特に好ましい。
(バックコート層)
表層塗布層の裏面に設けたバックコート層は、従来公知のものであり、走行性向上を目的としている。バックコート層の厚さは、0.2〜0.8μmが好ましい。この範囲が良いのは、0.2μm未満では、走行性向上効果が不充分で、0.8μmを越えるとテープ全厚が厚くなり、1巻当たりの記憶容量が小さくなるためである。またバックコート層の塗布には、従来公知のグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、ダイ塗布装置などで行うことができる。
バックコート層に用いられるカーボンブラック(CB)としては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、等を使用できる。通常、小粒径カーボンと大粒径カーボンを使用する。小粒径カーボンには、粒径が5nm〜200nmのものが使用されるが、粒径10nm〜100nmのものがより好ましい。この範囲がより好ましいのは、粒径が5nm以下になるとCBの分散が難しく、粒径が200nm以上では多量のCBを添加することが必要になり、何れの場合も表面が粗くなり、磁性層への裏移り(エンボス)原因になるためである。大粒径カーボンとして、小粒径カーボンの5〜15重量%、粒径300〜400nmの大粒径カーボンを使用すると、表面も粗くならず、走行性向上効果も大きくなる。小粒径カーボンと大粒径カーボン合計の添加量は無機粉体重量を基準にして60〜98重量%が好ましく、70〜95重量%がより好ましい。表面粗さRaは3〜8nmが好ましく、4〜7nmがより好ましい。
また、バックコート層には、強度向上を目的に、粒径が100nm〜600nmの酸化鉄を添加するのが好ましく、200nm〜500nmがより好ましい。添加量は無機粉体重量を100重量部として2〜40重量部が好ましく、5〜30重量部がより好ましい。
(熱可塑性樹脂)
磁性層、下層非磁性層、バックコート層に用いる熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体樹脂、ニトロセルロース樹脂などのセルロース系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂とを組み合わせものが挙げられる。磁性層、下塗層には、中でも、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体樹脂とポリウレタン樹脂を併用するのが好ましい。バックコート層には、中でも、ニトロセルロース樹脂などのセルロース系樹脂とポリウレタン樹脂を併用するのが好ましい。ポリウレタン樹脂には、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリエステルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン樹脂などがある。
官能基として−COOH、−SOM、−OSOM、−P=O(OM)、−O−P=O(OM)[これらの式中、Mは水素原子、アルカリ金属塩基又はアミン塩を示す]、−OH、−NR' R''、−N+ R''' R''''R''''' [これらの式中、R' 、R''、R''' 、R''''、R''''' は水素または炭化水素基を示す]、エポキシ基を有する高分子からなるウレタン樹脂等の結合剤が使用される。このような結合剤を使用するのは、上述のように磁性粉等の分散性が向上するためである。2種以上の樹脂を併用する場合には、官能基の極性を一致させるのが好ましく、中でも−SOM基どうしの組み合わせが好ましい。
これらの結合剤は、磁性層では強磁性粉末100重量部に対して、また下塗層ではカーボンブラックと非磁性粉末との合計量100重量部に対して、高剛性層に関しては非磁性粉末100重量部に対して、7〜50重量部、好ましくは10〜35重量部の範囲で用いられる。特に、下塗層、磁性層には結合剤として、塩化ビニル系樹脂5〜30重量部とポリウレタン樹脂2〜20重量部とを組み合わせて用いるのが最も好ましい。
これらの結合剤とともに、結合剤中に含まれる官能基などと結合させて架橋する熱硬化性の架橋剤を併用するのが望ましい。この架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどや、これらのイソシアネート類とトリメチロールプロパンなどの水酸基を複数個有するものとの反応生成物、上記イソシアネート類の縮合生成物などの各種のポリイソシアネートが好ましい。これらの架橋剤は、結合剤100重量部に対して、通常5〜50重量部の割合で用いられる。より好ましくは7〜35重量部である。なお、磁性層に使用する架橋剤の量を、下塗層に使用する量に対して減らしても(0〜100%未満)、下層から架橋剤が拡散にて供給されるので差し支えない。
(潤滑剤)
下層非磁性層と磁性層とを含んでなる塗布層に、役割の異なる潤滑剤を使用することができる。下塗層には磁性層と下塗層に含まれる全粉体100重量部に対して0.5〜5.0重量部の高級脂肪酸を含有させ、0.2〜3.0重量部の高級脂肪酸のエステルを含有させると、ヘッドとの摩擦係数が小さくなるので好ましい。この範囲の高級脂肪酸添加が好ましいのは、0.5重量部未満では、摩擦係数低減効果が小さく、5.0重量部を越えると下塗層が可塑化してしまい強靭性が失われるおそれがあるからである。また、この範囲の高級脂肪酸のエステル添加が好ましいのは、0.2重量部未満では、摩擦係数低減効果が小さく、3.0重量部を越えると磁性層への移入量が多すぎるため、テープとヘッドが貼り付く等の副作用を生じるおそれがあるためである。
脂肪酸としては、炭素数10以上の脂肪酸を用いるのが好ましい。炭素数10以上の脂肪酸としては、直鎖、分岐、シス・トランスなどの異性体のいずれでもよいが、潤滑性能にすぐれる直鎖型が好ましい。このような脂肪酸としては、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸などが挙げられる。これらの中でも、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸などが好ましい。磁性層における脂肪酸の添加量としては、下塗層と磁性層の間で脂肪酸が転移するので、特に限定されるものではなく、磁性層と下塗層を合わせた脂肪酸の添加量を上記の量とすればよい。下塗層に脂肪酸を添加すれば、必ずしも磁性層に脂肪酸を添加しなくてもよい。
磁性層には磁性粉末100重量部に対して0.5〜3.0重量部の脂肪酸アミドを含有させ、0.2〜3.0重量部の高級脂肪酸のエステルを含有させると、テープ走行時の摩擦係数が小さくなるので好ましい。
この範囲の脂肪酸アミドが好ましいのは、0.5重量部未満ではヘッド/磁性層界面での直接接触が起こりやすく焼付き防止効果が小さく、3.0重量部を越えるとブリードアウトしてしまいドロップアウトなどの欠陥が発生するおそれがあるからである。脂肪酸アミドとしてはパルミチン酸、ステアリン酸等の炭素数が10以上の脂肪酸アミドが使用可能である。
また、上記範囲の高級脂肪酸のエステル添加が好ましいのは、0.2重量部未満では摩擦係数低減効果が小さく、3.0重量部を越えるとヘッドに貼り付く等の副作用を生じるおそれがあるためである。なお、磁性層の潤滑剤と下塗層の潤滑剤の相互移動を排除するものではない。
(磁気テープの物性)
可撓性支持体を含めた磁気テープ全厚は2.5〜7.7μmが好ましい。この範囲の全厚が好ましいのは、2.5μm未満では、テープ強度が小さくなり、7.7μmを越えるとテープ1巻当たりの記録容量が小さくなるためである。
磁性層の厚さは0.09μm以下とするが、0.06μm以下がより好ましい。磁性層の厚さが0.09μmを越えると厚さ損失により、再生出力が小さくなったり、短波長記録の分解能が低下したりするおそれがある。また、0.01μm未満では均一な塗膜を得るのが困難になるので、通常0.01μm以上である。
長手方向の残留磁束密度と厚さの積は0.0018〜0.06μTmが好ましく、0.0036〜0.050μTmがより好ましい。この範囲が好ましいのは、0.0018μTm未満では、MRヘッドによる再生出力が小さく、0.06μTmを越えるとMRヘッドによる再生出力が歪みやすいからである。このような磁性層からなる磁気テープは、記録波長を短くでき、しかも、MRヘッドで再生した時の再生出力を大きくでき、しかも再生出力の歪が小さく出力対ノイズ比を大きくできるので好ましい。
磁性層の保磁力は、80〜320kA/mが好ましく、100〜320kA/mがより好ましく、120〜320kA/mがさらに好ましい。この範囲が好ましいのは、80kA/m未満では記録波長を短くすると反磁界減磁で出力低下が起こり、320kA/mを越えると磁気ヘッドによる記録が困難になるためである。
磁性層の中心線平均表面粗さRaは、0.5〜6nm以下が好ましく、0.5〜5nmがより好ましく、0.7〜4nmがさらに好ましく、0.7〜3nmがいっそう好ましい。0.5〜6nmが好ましいのは、0.5nm未満では磁気テープの走行が不安定になり、Raが6nmを越えると、スペーシングロスにより、PW50(再生出力の半値幅)が広くなったり出力が低下したりして、エラーレートが高くなるためである。
以上の場合において、サーボ信号は磁気テープの磁気記録面またはバックコート層に磁気信号として記録したものであってもよいし、磁気テープのバックコート層に凹部や光を吸収する材料で光学信号を形成したものであってもよい。つまり、本発明の磁気テープカートリッジは、磁気サーボ方式および光学サーボ方式のいずれにも適用できるものである。
また、高記録密度化のためには、本発明の磁気テープカートリッジは磁気テープにおける磁気記録信号が、磁気抵抗効果型素子を利用した再生ヘッド(MRヘッド)によって再生されるものであることが好ましい。さらに、磁気サーボ方式では、サーボ信号もMRヘッドによって再生されるものであることが好ましい。
磁気テープの磁性層とMRヘッドのスライダとの動摩擦係数はPESを小さくするため0.35以下にすることが好ましい。より好ましくは0.1〜0.3、さらに好ましくは0.1〜0.25である。この範囲がより好ましいのは、0.35を越えると、スライダ汚れによるスペーシングロスが起こりやすいためである。また、磁気ヘッドアレイが磁気テープ幅方向に移動する際に、磁気テープも幅方向に動くために、オフトラック量が大きくなる。なお、0.10未満は実現が困難である。通常、磁気テープ磁性層とSUSとの動摩擦係数は0.1〜0.3で、0.10〜0.25が好ましく、0.12〜0.20がより好ましい。この範囲が好ましいのは、0.3を越えるとガイドローラが汚れやすくなるためである。なお、この動摩擦係数を0.10未満にすることは難しい。また、磁性層とスライダ材料との動摩擦係数をμmsul、磁性層とSUSとの動摩擦係数をμmsusとした時の[(μmsul)/(μmsus)]を0.7〜1.3が好ましく、0.8〜1.2がより好ましい。この範囲が好ましいのは、磁気テープの走行異常によるトラッキングずれ(オフトラック)が小さくなるためである。
磁気サーボ信号が記録される特殊用途のバックコート層には、使用する無機粉体100重量部中、磁性層に使用する上述の強磁性粉末を30〜60重量部、先に述べた板状の非磁性酸化物粒子の添加量を2〜15重量部、カーボンブラックを40〜70重量部添加することが好ましい。結合剤には、強磁性粉末、板状酸化物粒子とカーボンブラックとの合計量100重量部に対して、上記バックコート層に用いる樹脂を通常、40〜150重量部、好ましくは50〜120重量部使用する。また架橋剤には、上述の架橋剤を結合剤100重量部に対して通常10〜50重量部の割合で用いることができる。上述の磁性層で述べたと同じ理由で、保磁力は80〜320kA/m、残留磁束密度Brと膜厚の積は、0.018〜0.06μTmが好ましい。
以下本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例の部は重量部を示す。
(実施例1)
まず、この実施例で用いた板状形状を有する酸化物粒子の合成について説明する。
(酸化アルミニウム粒子の合成)
375モルの水酸化ナトリウムと50Lの2−アミノエタノールを400Lの水に溶解し、アルカリ水溶液を調整した。このアルカリ水溶液とは別に、37モルの塩化アルミニウム(III)七水和物を200Lの水に溶解して塩化アルミニウム水溶液を調整した。前記アルカリ水溶液に前記塩化アルミニウム水溶液を滴下して、水酸化アルミニウムを含む沈殿物を作製し、その後塩酸を滴下することにより、pHを10.2にした。この沈殿物を懸濁液の状態で20時間熟成させたのち、約1000倍の水で水洗した。次に、上澄み液を除去した後、この沈殿物の懸濁液を、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH10.0に再調整し、オートクレーブに仕込み、200℃で2時間、水熱処理を施した。
水熱処理生成物を、ろ過し、90℃で空気中乾燥した後、乳鉢で軽く解砕し、空気中600℃で1時間の加熱処理を行って酸化アルミニウム粒子とした。加熱処理後、未反応物や残存物を除去するために、さらに超音波分散機を使って水洗し、ろ過乾燥した。
得られた酸化アルミニウム粒子について、X線回折スペクトルを測定したところ、γ−アルミナに対応するスペクトルが観測された。さらに、透過電子顕微鏡で形状観察を行ったところ、粒子径分布が30〜50nmの四角板状の粒子であることがわかった。得られた酸化アルミニウム粒子を、さらに空気中1250℃で1時間、加熱処理した。得られた酸化アルミニウム粒子を、X線回折スペクトルを測定したところ、α−アルミナに対応するスペクトルが観測された。さらに、透過電子顕微鏡で形状観察を行い、100個の粒子の粒子径(各粒子の最大径)を測定したところ、平均粒子径が50nmの四角板状の粒子であった。
(スズ含有酸化インジウム(ITO)粒子の合成)
375モルの水酸化ナトリウムと50Lの2−アミノエタノールを400Lの水に溶解して、アルカリ水溶液を調製した。これとは別に、33.5モルの塩化インジウム(III)四水和物と3.5モルの塩化スズ(IV)五水和物を200Lの水に溶解して、塩化スズと塩化インジウムの水溶液を調製した。前者のアルカリ水溶液に、後者の塩化スズと塩化インジウムの水溶液を滴下して、スズとインジウムから成る水酸化物あるいは水和物の沈殿を作製した。このときのpHは10.2であった。この沈殿物を懸濁液の状態で20時間熟成させたのち、pHが7.6になるまで水洗した。
次にこの沈殿物の懸濁液に水酸化ナトリウムの水溶液を添加して、pHを10.8に調整し、オートクレーブに仕込み、200℃で2時間、水熱処理を施した。
得られた水熱処理生成物を、pHが7.8になるまで水洗した後ろ過し、90℃で空気中乾燥した後、乳鉢で軽く解砕し、空気中800℃で1時間の加熱処理を行ってスズ含有酸化インジウム粒子とした。加熱処理後、未反応物や残存物を除去するために、さらに超音波分散機を使って水洗した。このスズ含有酸化インジウムに対して、SiO2換算で、1wt%になるようにケイ酸ナトウム溶液を攪拌しなが添加し、塩酸によりpHを7.3に調整して、SiOによる被覆処理を行った。ろ過・乾燥後、空気中、600℃で1時間加熱処理を行った。
得られたスズ含有酸化インジウム粒子について、透過電子顕微鏡で形状観察を行い、100個の粒子の粒子径(各粒子の最大径)を測定したところ、粒子径分布が30〜50nm(平均粒子径:40nm)の六角板状の粒子であることがわかった。X線回折からは、単一構造の物質から構成されており、インジウムがスズで置換されたスズ含有酸化インジウムとなっていることがわかった。
次に高剛性層塗料成分、下層非磁性層用塗料成分、磁性層用塗料成分およびバックコート層用塗料成分について説明する。
<<高剛性層成分>>
(1)板状アルミナ粒子(平均粒子径:50nm) 40部
板状ITO粒子(平均粒子径:40nm) 60部
ステアリン酸 0.5部
塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体共重合体 8.8部
(含有−SO3 Na基:0.7×10−4当量/g)
ポリエステルポリウレタン樹脂 4.4部
(Tg:40℃、含有−SO3Na基:1×10−4当量/g)
シクロヘキサノン 25部
メチルエチルケトン 40部
トルエン 10部
(2)ステアリン酸ブチル 0.5部
シクロヘキサノン 70部
メチルエチルケトン 50部
トルエン 20部
(3)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 2.5部
シクロヘキサノン 10部
メチルエチルケトン 15部
トルエン 10部
<<下層非磁性層用塗料成分>>
(1)酸化鉄粉体(粒径:0.11×0.02μm) 68部
アルミナ(α化率:50% 粒径:70nm) 8部
カ−ボンブラック(粒径:25nm) 24部
ステアリン酸 2部
塩化ビニル共重合体 10部
(含有−SONa基:0.7×10−4当量/g)
ポリエステルポリウレタン樹脂 4.5部
(Tg:40℃、含有−SONa基:1×10−4当量/g)
シクロヘキサノン 25部
メチルエチルケトン 40部
トルエン 10部
(2)ステアリン酸ブチル 1部
シクロヘキサノン 70部
メチルエチルケトン 50部
トルエン 20部
(3)ポリイソシアネート 4.5部
シクロヘキサノン 10部
メチルエチルケトン 15部
トルエン 10部
<<磁性層用塗料成分>>
(1)強磁性鉄系金属磁性粉 100部
(Co/Fe:30at%、Y/Fe:2at%、
Al/Fe:5wt%、σs:110A・m/kg、
Hc:280kA/m、pH:9.5、長軸長:45nm)
塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 10部
(含有−SONa基:0.7×10−4当量/g)
ポリエステルポリウレタン樹脂 4部
(含有−SONa基:1.0×10−4当量/g)
α−アルミナ 15部
(中心粒径100nm)
カ−ボンブラック 2部
(平均粒径:75nm、DBP吸油量:72cc/100g)
メチルアシッドホスフェート 2部
パルミチン酸アミド 1.5部
テトラヒドロフラン 65部
メチルエチルケトン 245部
トルエン 85部
(2)ポリイソシアネート 4部
シクロヘキサノン 167部
上記高剛性層用塗料成分において(1)をニーダで混練したのち、(2)を加えて攪拌の後サンドミルで滞留時間を60分として分散処理を行い、これに(3)を加え攪拌・濾過した後、高剛性層用塗料とした。これとは別に上記下層非磁性層用塗料成分において(1)をニーダで混練したのち、(2)を加えて攪拌の後サンドミルで滞留時間を60分として分散処理を行い、これに(3)を加え攪拌・濾過した後、下層非磁性層用塗料とした。これとは更に別に、上記の磁性層用塗料成分(1)混連工程成分を予め高速混合しておき、その混合粉末を連続式2軸混練機で混練し、さらに(2)希釈工程成分を加え連続式2軸混練機で少なくとも2段階以上に分けて希釈を行い、サンドミルで滞留時間を45分として分散し、これに(3)配合工程成分を加え攪拌・ろ過後、磁性塗料とした。
ポリエチレンナフタレートフィルム(PEN、厚さ5.2μm、湿度膨張係数(テープ幅方向(TD)におけるもの)=9.0×10-6/%RH、熱膨張係数(TD)=3.0×10-6/℃、MD=8.8GPa、長手方向のヤング率MD/幅方向のヤング率TD=1.2、帝人社製)からなる可撓性支持体上に、金属蒸着法によってAlを蒸着したガスバリア層を設けた。バリア層50nmとした。
上記のバリア層つき支持体に、高剛性層塗料を、乾燥・カレンダー後の厚さが0.6μmとなるように塗布し、この高剛性層塗料上に、下層非磁性層用塗料を乾燥・カレンダー後の厚さが0.6μmとなるように塗布し、さらにこの下層非磁性層上に、上記の磁性塗料を磁場配向処理、乾燥、カレンダー処理後の磁性層の厚さが0.06μmとなるようにウエット・オン・ウエット方式で塗布した。磁場配向処理後、ドライヤを用いて乾燥し、磁気シートを得た。なお、磁場配向処理は、ドライヤ前にN−N対抗磁石(5kG)を設置し、ドライヤ内で塗膜の指触乾燥位置の手前側75cmからN−N対抗磁石(5kG)を2基50cm間隔で設置して行った。塗布速度は100m/分とした。
<<バックコ−ト層用塗料成分>>
カ−ボンブラック(粒径:25nm) 80部
カ−ボンブラック(粒径:370nm) 10部
酸化鉄(粒径:400nm) 10部
ニトロセルロ−ス 45部
ポリウレタン樹脂(SONa基含有) 30部
シクロヘキサノン 260部
トルエン 260部
メチルエチルケトン 525部
上記バックコート層用塗料成分をサンドミルで滞留時間45分として分散した後、架橋剤であるポリイソシアネート13部を加えてバックコート層用塗料を調整し濾過した後、ベースフイルムに直接、あるいは磁気シートの磁性層の反対面に、乾燥・カレンダー後の厚みが0.5μmとなるように塗布し、乾燥した。このようにして得られたバックコート層塗布シートを金属ロールからなる7段カレンダーで、温度100℃、線圧150kg/cmの条件で鏡面化処理した。
カレンダー処理後の磁気シートを窒素ガス雰囲気中で、加速電圧50kV、照射量4Mradの電子線を磁性層側およびバックコート層側からそれぞれ照射した。
スリットマシン(磁気テープ原反を所定幅の磁気テープに裁断する装置)は、構成している各種要素を下記のように改良したものを用いた。巻き出し原反からスリット刃物群に至るウェブ経路中にテンションカットローラを設け、このテンションカットローラをサクションタイプとし、吸引部を多孔質金属を埋め込んだメッシュサクションとした。刃物駆動部に動力を伝達する機構を持たないモーター直結のダイレクトドライブとした。
裁断後のテープを200m/分で走行させながら磁性層表面に対しラッピングテープ研磨、ブレード研磨そして表面拭き取りの後処理を行い、磁気テープを作製した。この時、ラッピングテープにはK10000、ブレードには超硬刃、表面拭き取りには東レ社製トレシー(商品名)を用い、走行テンション0.294Nで処理を行った。上記のようにして磁気テープ得た。
(実施例2)
上記高剛性層用塗料の成分中、板状アルミナ粒子(平均粒子径:50nm)10部、板状ITO粒子(平均粒子径:40nm)5部の代わりに、粒状アルミナ粒子(平均粒子径:80nm)10部、カーボンブラック(平均粒子径:75nm)5部を用いた以外は実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作成した。
(実施例3)
上記高剛性層用塗料成分中、ステアリン酸を0.8部にした以外は、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作成した。
(実施例4)
上記高剛性層用塗料成分中、ステアリン酸を0.1部に、ステアリン酸ブチルを0部にした以外は、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作成した。
(実施例5)
上記高剛性層用塗料成分中、スジペンタエリスリトールヘキサアクリレートをポリイソシアネートに変更し、カレンダー処理後の電子線照射工程のかわりに60℃で48時間の熱硬化工程を用いた以外は、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作製した。
(比較例1)
上記ガスバリア層を設けないことを除き、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作成した。
(比較例2)
上記高剛性層を設けないことを除き、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作成した。
(比較例3)
上記高剛性層用塗料成分中、ステアリン酸及びステアリン酸ブチルを配合しないことを除き、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作成した。
(比較例4)
上記高剛性層用塗料成分中、ステアリン酸を1部としたことを除き、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作成した。
以上のコンピュータ用テープについて以下の測定を行うことにより特性を評価した。
(テープの温度、湿度膨張係数)
作製した磁気テープ原反の幅方向から、幅12.65mm、長さ150mmの試料を準備し、温度膨張係数は、20℃、60%RHと40℃、60%RHとの試料長の差から求めた。湿度膨張係数は、20℃、30%RHと20℃、70%RHとの試料長の差から求めた。ここで求めた温度膨張係数および湿度膨張係数は、いずれもテープ幅方向におけるものである。
(剥離試験)
剥離試験は、JIS K6854:180度はく離試験に従って行い、磁性層を含む面が剥離する(×)か、しないか(○)によって判定した。表1に各実施例および比較例で採用した条件と結果を示す。
Figure 2007250147
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜5の各コンピュータ用テープは、比較例1〜4のコンピュータ用テープに比べて、温度・湿度安定性が良好で、剥離しないテープを提供することが出来る。
ヘッドユニットと、磁気テープに書き込まれるデータトラックとの関係を説明するための図である。 磁気テープに用いられるトラックサーボ方式の一例(磁気サーボ方式)を説明するために使用したもので、磁気テープの磁気記録面(磁性層)にデータトラックとサーボバンドとを交互に設けた状態を示す模式図である。
符号の説明
200 サーボバンド
300 データバンド
3 磁気テープ
2 ヘッドユニット
3−1〜3 データトラック領域
41、42 サーボヘッド
41T〜45T サーボトラック領域
41T−1〜5 サーボトラック
42T−1〜5 サーボトラック
A1〜A8 データヘッド
B1〜B8 データヘッド

Claims (3)

  1. 可撓性支持体上に少なくともガスバリア層と高剛性層と磁性層とを有する磁気記録テープにおいて、該高剛性層に分子量1000以下の有機化合物が高剛性層当たりに0.05wt%〜1.2wt%含まれることを特徴とする磁気記録テープ。
  2. 前記高剛性層が電子線硬化して形成されたことを特徴とする請求項1記載の磁気記録テープ。
  3. 前記ガスバリア層の表面電気抵抗が10〜10Ωであることを特徴とする請求項1記載の磁気記録テープ。
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