JP2004288301A - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】高密度記録において安定したエラーレートと走行耐久性の両立化を低コストで実現できる磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】非磁性支持体上に、放射線照射により重合可能な化合物を含有する下塗り層を設け、その上に強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を設けた磁気記録媒体であって、前記下塗り層の厚みが0.1〜1μmで、前記磁性層に含まれる結合剤は、ガラス転移温度が100〜200℃であるポリウレタン樹脂を含み、前記磁性層の厚みが20〜150nmで、かつ前記強磁性粉末の平均サイズが20〜60nmであることを特徴とする。
【選択図】 なし
【解決手段】非磁性支持体上に、放射線照射により重合可能な化合物を含有する下塗り層を設け、その上に強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を設けた磁気記録媒体であって、前記下塗り層の厚みが0.1〜1μmで、前記磁性層に含まれる結合剤は、ガラス転移温度が100〜200℃であるポリウレタン樹脂を含み、前記磁性層の厚みが20〜150nmで、かつ前記強磁性粉末の平均サイズが20〜60nmであることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗布型の磁気記録媒体に関し、特に高密度記録において安定したエラーレートと走行耐久性の両立化を低コストで実現できる磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
強磁性粉末が結合剤(バインダ)中に分散された磁性層を非磁性支持体上に設けた磁気記録媒体は、録音用テープ、ビデオテープあるいはフロッピー(登録商標)ディスクなどとして広く用いられている。そして、その電磁変換特性、走行耐久性および走行性能などの諸特性は高いレベルにあることが要求されている。例えば、音楽録音再生用のオーディオテープにおいては、より高度の原音再生能力が要求されている。また、ビデオテープについては、原画再生能力が優れているなど電磁変換特性が優れていることが要求されている。
【0003】
かかる要求に対応するよう優れた電磁変換特性を有するために、磁性層中の強磁性粉末はγ酸化鉄からメタル磁性体へと改良が進められ、高Hc化、高 σs化がなされている。特に、8mmビデオテープや放送分野における映像記録用ビデオテープのメタル化が進められている。また、最近では映像、音楽のデジタル記録再生化が進み、再生編集過程での原画、原音の再生劣化をなくし、原画・原音を忠実に再現できるようになってきた。このデジタル化におけるテープ性能評価には、再生時のエラーレート(符号誤り率)が用いられ、特許第2829972号では、装置系のエラーレート、テープのエラーレートを分離して評価する方法も提案されている。
【0004】
高記録密度媒体で安定したエラーレートを維持するためには、高いSNRとPW50(パルスの半値幅)を低くする必要がある。高いSNRを得るためには、▲1▼高出力化、▲2▼低ノイズ化が考えられるが、▲1▼高出力化に関しては磁性層の平滑化が有効である。
磁性層を平滑にするために、平滑な面性を持つ支持体を使用すると一般的にコスト高になる。そこで、表面が粗い安価な支持体を用いて、該支持体の表面突起を、放射線照射により重合可能な化合物を含有する下塗り層で遮蔽して平滑化することで、コストを抑えかつ高記録密度媒体として性能を満足させることができる(例えば、特許文献1参照)。
また、▲2▼低ノイズ化に関しては、微粒子の磁性体を使用することが有効である。
一方、PW50を低くするためには、磁性層の厚み制御(薄層化)が効果的である。
【0005】
【特許文献1】
特公平5−57647号公報(第1頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、磁性体の微粒子化と磁性層の薄層化により磁性層の塗膜強度が劣化して、媒体の走行耐久性が悪化するという問題があった。
本発明は、上記従来技術の問題点を克服するためになされたものであり、高密度記録において安定したエラーレートと走行耐久性の両立化を低コストで実現できる磁気記録媒体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するたに鋭意検討した。その結果、放射線照射により重合可能な化合物を含有する下塗り層の厚みを適切化し、ガラス転移温度が100〜200℃の範囲にあるポリウレタン樹脂を含む結合剤を磁性層に含有させ、さらに微小な平均サイズを有する強磁性粉末を薄層の磁性層において使用することにより、安定したエラーレートと走行耐久性を低コストで実現する磁気記録媒体を得ることにはじめて成功し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の目的は、以下の磁気記録媒体により達成される。
非磁性支持体上に、放射線照射により重合可能な化合物を含有する下塗り層を設け、その上に強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を設けた磁気記録媒体であって、
前記下塗り層の厚みが0.1〜1μmで、前記磁性層に含まれる結合剤は、ガラス転移温度が100〜200℃であるポリウレタン樹脂を含み、前記磁性層の厚みが20〜150nmで、かつ前記強磁性粉末の平均サイズが20〜60nmであることを特徴とする磁気記録媒体。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の磁気記録媒体について、詳細に説明する。
[下塗り層]
本発明の磁気記録媒体において、非磁性支持体上に設ける下塗り層としては、放射線照射により重合可能な化合物を含有する。
この下塗り層に含有する、放射線照射により重合可能な化合物は、放射線によるエネルギーが与えられると重合乃至架橋して高分子化して硬化する性質を有する。そして、該化合物は、それらのエネルギーを与えない限り反応が進まない。そのため該化合物を含む塗布液は、放射線を照射しない限り粘度が安定しており、高い塗膜平滑性を得ることができる。また、放射線による高いエネルギーにより瞬時に反応が進むため、高い塗膜強度を得ることができる。
【0010】
これは、該化合物は数mPa・s〜200mPa・sと比較的低粘度であり、下塗り層を塗布した後のレベリング効果により支持体の突起を遮蔽し、平滑な支持体が形成されるためである。そして、その下塗り層上に磁性液を塗布することで塗膜表面の平滑性に優れた磁性層が得られ、ひいては安定したエラーレートが得られる磁気記録媒体を提供できたものと考えられる。特にこの効果は磁性層厚みが20nm〜150nmといった比較的薄い厚みのもので顕著であり、塗膜表面の平滑性のなかでも、近年の高記録密度化に伴い使用されているMRヘッドを用いた磁気記録においてノイズとなりやすい磁性層表面の微小突起を低減できる効果がある。
【0011】
この下塗り層に含有する、放射線照射により重合可能な化合物としては、特に限定されないが、特開昭60−133529号公報、特開昭61−13429号公報、特開昭60−150227号公報、特公平5−57647号公報、特開昭57−40747号公報、特開昭61−13430号公報等に記載のものや、特願2001−334528号明細書に記載の脂環式環状構造を有しかつ1分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有する化合物、特願2002−276088号明細書に記載の、環状エーテル骨格を有し、かつ分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有する化合物、又は環状構造及びエーテル基を有し、かつ分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有する化合物等が挙げられる。
上記の化合物の中でも、特に、特願2002−276088号明細書に記載の、環状エーテル骨格を有し、かつ分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有する化合物、又は環状構造及びエーテル基を有し、かつ分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有する化合物が好ましい。
【0012】
特願2002−276088号明細書に記載の、環状エーテル骨格を有し、かつ分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有する化合物、又は環状構造及びエーテル基を有し、かつ分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有する化合物は、環状構造を有するので、従来下塗り層に使用されていた脂肪族系化合物に比べて、下塗り層の弾性率を向上させることができ、下塗り層塗布後の工程において、ロール等への粘着故障が発生しないという利点もある。
更に、環状構造を有することにより、硬化収縮を低減できるため、支持体との密着性を向上させることができるという特徴もある。これにより、磁性層の脱落等の走行耐久性の低下を抑制することができる。
更に、本発明における下塗り層と支持体との密着性の高さは、上記化合物がエーテル基を有することにより、適度な伸性が付与されることにも起因すると考えられる。
また、上記化合物は、エステル基を含まないため、加水分解する等の保存性での問題が生じないという利点もある。
【0013】
上記化合物は、環状エーテル構造を有するジオール化合物や環状構造及びエーテル基を有するジオール化合物に、アクリル酸やメタクリル酸を反応させて得ることができる。
環状エーテル構造を有するジオール化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジオキシン、ジオキセン、ジオキソラン等の構造を有するジオール化合物を用いることができる。環状エ−テル構造を有するジオール化合物の具体例としては、テトラヒドロフランジメタノール、テトラヒドロピランジメタノール、1,3−ジオキサン−2−エタノール−5−エチル−5−ヒドロキシメチル−β,β−ジメチル、1,3−ジオキソラン−2−エタノール−5−エチル−5−ヒドロキシメチル−β,β−ジメチル、3,9ビス−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ−(5,5)−ウンデカン等が挙げられる。
【0014】
環状構造及びエ−テル基を有するジオール化合物としては、例えば、シクロヘキサン環、ビスフェノール、水素化ビスフェノール、ビフェニル、ビフェニルエーテル等の環構造を有するジオールを重縮合して得られるものや、前記の環状構造を有するジオールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を付加したもの等を用いることができる。環状構造を有するジオールの具体例としては、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールS、水素化ビスフェノールS、ビスフェノールF、水素化ビスフェノールF、ビスフェノールP、水素化ビスフェノールP、ジフェニルビスフェノールA、ジフェニルビスフェノールS、ジフェニルビスフェノールF、5,5’ −(1−メチルエチリデン)−ビス−(1、1’−ビシクロヘキシル)−2−オール、4,4’ −(1−メチルエチリデン)−ビス−2−メチルシクロヘキサノール、5,5’ −(1,1’ −シクロヘキシリデン)−ビス−(1,1’ −ビシクロヘキシル)−2−オール、5,5’ −(1,1’ −シクロヘキルメチレン)−ビス−(1,1’ −ビシクロヘキシル)−2−オール等が挙げられる。
【0015】
本発明において、環状エーテル骨格を有し、かつ分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有する化合物、又は環状構造及びエーテル基を有し、かつ分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有する化合物のエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドの付加数は、分子中に2〜6モルであることが好ましい。2モル以上であれば、支持体との密着力が良好であり、6モル以下であれば、得られる下塗り層の弾性率が高く、塗布工程で粘着故障が生じ難い。
【0016】
上記化合物に導入される放射線硬化官能基としては、アクリロイル基やメタクリロイル基を用いることができ、アクリロイル基を用いることが好ましい。前記放射線硬化官能基は、分子中に2個以上含まれる。特に、放射線硬化官能基が、分子中に2個含まれることが好ましい。
【0017】
上記化合物の分子量は、250〜1000であることが好ましく、更に好ましくは250〜500である。分子量が上記範囲内であれば、レベリング効果が高く、高い平滑性を有する磁気記録媒体を得ることができる。
【0018】
本発明において、環状エーテル骨格を有し、かつ分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有する化合物としては、B1−(A1)n−X1−(A1’)n’−B1’(式1)で示される化合物を用いることができる。
式1中、X1は、
【0019】
【化1】
【0020】
であり、
A1は、
【0021】
【化2】
【0022】
であり、
A1’は、
【0023】
【化3】
【0024】
であり、
B1は、
【0025】
【化4】
【0026】
であり
B1’は、
【0027】
【化5】
【0028】
であり、n及びn’は、それぞれ独立に0〜6であり、好ましくは0〜4である。n及びn’が6を超えると、下塗り層の弾性率が低くなり、塗布工程において粘着故障を起こし易い。
【0029】
式1で示される化合物としては、例えば、テトラヒドロフランジメタノールジアクリレート、テトラヒドロピランジメタノールジアクリレート、3,9−ビス−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ−(5,5)−ウンデカンジアクリレート、5−エチル−2−(2−ヒドロキシ−1,1’ −ジメチルエチル)−5−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサンジアクリレート、テトラヒドロフランジメタノールジメタクリレート、テトラヒドロピランジメタノールジメタクリレート、3,9−ビス−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ−(5,5)−ウンデカンジメタクリレート、5−エチル−2−(2−ヒドロキシ−1,1’ −ジメチルエチル)−5−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサンジメタクリレート及びこれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらの中で好ましいものは、5−エチル−2−(2−ヒドロキシ−1,1’ −ジメチルエチル)−5−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサンジアクリレート、テトラヒドロフランジメタノールジアクリレート、3,9−ビス−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ−(5,5)−ウンデカンジアクリレートである。
【0030】
本発明において、環状構造及びエーテル基を有し、かつ分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有する化合物としては、B2−(A2)m−X2−(A2’)m’−B2’(式2)で示される化合物を用いることができる。
式2中、X2は、
【0031】
【化6】
【0032】
であり、
A2は、
【0033】
【化7】
【0034】
であり、
A2’は、
【0035】
【化8】
【0036】
であり、
B2は、
【0037】
【化9】
【0038】
であり
B2’は、
【0039】
【化10】
【0040】
であり、m及びm’は、それぞれ独立に2〜6であり、好ましくは2〜4である。m及びm’が2未満では、支持体との密着力が不足し、6を超えると、下塗り層の弾性率が低くなり、塗布工程において粘着故障を起こし易い。
【0041】
式2で示される化合物としては、例えば、シクロヘキサンジメタノ−ルエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジアクリレ−ト、水素化ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ヒドロキシビフェニルエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールSエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、水素化ビスフェノールSエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、水素化ビスフェノールFエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールPエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、水素化ビスフェノールPエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ジフェニルビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ジフェニルビスフェノールSエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ジフェニルビスフェノールFエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、5,5’ −(1−メチルエチリデン)−ビス−(1、1’−ビシクロヘキシル)−2−オールエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、4,4’ −(1−メチルエチリデン)ビス−2−メチルシクロヘキサノールエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、5,5’ −(1,1’ −シクロヘキシリデン)ビス−(1,1’ −ビシクロヘキシル)−2−オールエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、5,5’ −(1,1’ −シクロヘキルメチレン)ビス−(1,1’−ビシクロヘキシル)−2−オールエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、シクロヘキサンジメタノ−ルプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジアクリレ−ト、水素化ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、ヒドロキシビフェニルプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールSプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、水素化ビスフェノールSプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールFプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、水素化ビスフェノールFプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールPプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、水素化ビスフェノールPプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、ジフェニルビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、ジフェニルビスフェノールSプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、ジフェニルビスフェノールFプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、5,5’−(1−メチルエチリデン)−ビス−(1、1’−ビシクロヘキシル)−2−オールプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、4,4’ −(1−メチルエチリデン)−ビス−2−メチルシクロヘキサノールプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、5,5’ −(1,1’ −シクロヘキシリデン)−ビス−(1,1’ −ビシクロヘキシル)−2−オールプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、5,5’ −(1,1’ −シクロヘキルメチレン)−ビス−(1,1’ −ビシクロヘキシル)−2−オールプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、シクロヘキサンジメタノ−ルエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジメタクリレ−ト、水素化ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ヒドロキシビフェニルエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールSエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、水素化ビスフェノールSエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、水素化ビスフェノールFエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールPエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、水素化ビスフェノールPエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ジフェニルビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ジフェニルビスフェノールSエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ジフェニルビスフェノールFエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、5,5’ −(1−メチルエチリデン)−ビス−(1、1’−ビシクロヘキシル)2−オールエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、4,4’ −(1−メチルエチリデン)−ビス−2−メチルシクロヘキサノールエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、5,5’ −(1,1’ −シクロヘキシリデン)−ビス−(1,1’ −ビシクロヘキシル)−2−オールエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、5,5’ −(1,1’ −シクロヘキルメチレン)−ビス−(1,1’ −ビシクロヘキシル)−2−オールエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、シクロヘキサンジメタノ−ルプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレ−ト、水素化ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ヒドロキシビフェニルプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールSプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、水素化ビスフェノールSプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールFプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、水素化ビスフェノールFプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールPプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、水素化ビスフェノールPプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ジフェニルビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ジフェニルビスフェノールSプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ジフェニルビスフェノールFプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、5,5’ −(1−メチルエチリデン)−ビス−(1、1’−ビシクロヘキシル)−2−オールプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、4,4’ −(1−メチルエチリデン)−ビス−2−メチルシクロヘキサノールプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、5,5’ −(1,1’ −シクロヘキシリデン)−ビス−(1,1’ −ビシクロヘキシル)−2−オールプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、5,5’ −(1,1’ −シクロヘキルメチレン)−ビス−(1,1’ −ビシクロヘキシル)−2−オールプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレートが挙げられる。中でも好ましいものは、シクロヘキサンジメタノ−ルエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジアクリレ−ト、水素化ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ジヒドロキシビフェニルエチレンオキサイド付加物ジアクリレートである。
【0042】
式1又は式2で示される化合物は、環状エーテルを有するジオール化合物や、環状構造及びエーテル基を有するジオール化合物に、アクリル酸やメタクリル酸を反応させて得ることができる。両末端に導入する置換基は、アクリロイル基であることが好ましい。
【0043】
本発明では、下塗り層において、前記化合物のほかに1官能のアクリレ−ト、メタクリレ−ト化合物を反応性希釈剤として併用することができる。反応性希釈剤は、下塗り剤の物性や下塗り剤の硬化反応を調整する機能を有する。好ましい構造は脂環式炭化水素骨格をもつアクリレ−ト化合物である。具体的な例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、イソボニル(メタ)アクリレ−ト、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレ−トを挙げることができる。反応性希釈剤の配合量は、前記化合物100質量部に対して10質量部〜100質量部であることが好ましい。
【0044】
上記の化合物を含む下塗り剤は、必要により溶媒に溶解して用いることができる。下塗り剤の粘度は、25℃において5〜200mPa・sであることが好ましく、更に好ましくは5〜100mPa・sである。上記範囲内の粘度であれば、下塗り層を塗布した後のレベリング効果により、支持体の突起を遮断して、平滑な磁性層を得ることができる。溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール、エタノール、トルエン等が好ましい。
【0045】
下塗り剤は、支持体上に塗布、乾燥後に放射線照射され、硬化する。その下塗り層の硬化後のガラス転移温度Tgは、80〜150℃であることが好ましく、更に好ましくは100〜130℃である。80℃以上であれば、塗布工程で粘着故障を起こすことがなく、150℃以下であれば、塗膜強度が高く好ましい。
【0046】
上記下塗り層の厚みは、0.1〜1.0μmであることが好ましく、更に好ましくは0.3〜0.8μmである。0.1μm以上であれば、十分な平滑性を得ることができ、1.0μmであれば、塗膜が乾燥し易く、粘着故障を起こすことがない。
【0047】
後述の支持体上に塗布、乾燥された下塗り層には、放射線が照射され、前記化合物を硬化させる。
本発明において使用される放射線としては、電子線や紫外線を用いることができる。紫外線を使用する場合には、前記の化合物に光重合開始剤を添加することが必要となる。電子線硬化の場合は重合開始剤が不要であり、透過深さも深いので好ましい。
【0048】
電子線加速器としては、スキャニング方式、ダブルスキャニング方式又はカーテンビーム方式を採用することができる。好ましくは、比較的安価で大出力が得られるカーテンビーム方式である。電子線特性としては、加速電圧が30〜1000kVであることが好ましく、より好ましくは50〜300kVであり、吸収線量として0.5〜20Mradであることが好ましく、より好ましくは2〜10Mradである。加速電圧が30kV以上であれば十分なエネルギーの透過量が得られ、1000kV以下であれば重合に使われるエネルギーの効率が高く経済的である。電子線を照射する雰囲気は窒素パージにより酸素濃度を200ppm以下にすることが好ましい。酸素濃度が高いと表面近傍の架橋、硬化反応が阻害される。
【0049】
紫外線光源としては、水銀灯を用いることができる。水銀灯としては、例えば20〜240W/cmのランプを用いることができ、速度0.3m/分〜20m/分で使用することができる。基体と水銀灯との距離は一般に1〜30cmであることが好ましい。
紫外線硬化に用いる光重合開始剤として、光ラジカル重合開始剤を用いることができる。詳細は例えば「新高分子実験学第2巻 第6章 光・放射線重合」(共立出版1995発行、高分子学会編)に記載されている。具体例としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルメチルケタール、ベンジルエチルケタール、ベンゾインイソブチルケトン、ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−2−ジエトキシアセトフェノンなどが挙げられる。芳香族ケトンの混合比率は、放射線硬化化合物100質量部に対し0.5〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜15質量部、さらに好ましくは3〜10質量部である。
放射線硬化装置、条件などについては、「UV・EB硬化技術」(株)総合技術センタ−発行)や「低エネルギー電子線照射の応用技術」(2000、(株)シーエムシー発行)などに記載されている公知のものを用いることができる。
【0050】
本発明の磁気記録媒体は、上記下塗り層を設けることにより、原子間力顕微鏡(AFM)によって測定される高さが10〜20nmである突起数が、後述の磁性層表面100μm2当たり5〜1000個に制御することができる。
原子間力顕微鏡(AFM)で測定される高さとは、原子間力顕微鏡にて求められる中心面(平面と磁性層表面の粗さ曲面で囲まれた体積が平面に対し上下で等しくかつ最小になる平面)を基準面とした高さと定義する。
従って、磁性層表面100μm2当たりの高さが10〜20nmの突起数(以下、PNとも記す)とは、この基準面以上の高さが10〜20nmである突起の10μm角当りの総数で突起密度を示す。PNは5〜100個/100μm2であることが更に好ましい。このPNが5以上であれば、摩擦係数が低く、1000個以下であれば、出力が高く、ドロップアウト(DO)個数も少なくなる傾向がある。
【0051】
本発明の磁気記録媒体は、上記下塗り層を形成し、次いで、下塗り層上に非磁性下層または磁性下層を形成した後に磁性層を形成するか、あるいは下塗り層上に直接に磁性層を形成して作製される。下塗り層は支持体の少なくとも一方に設けられ、両方に設けることもできる。非磁性層、磁性下層、あるいは磁性層は、非磁性粉末、磁性粉末を結合剤中に分散した組成物を塗布することによって形成される。
【0052】
[磁性層]
<Tg100〜200℃のポリウレタン樹脂>
本発明の磁気記録媒体は、少なくとも磁性層で用いられる結合剤が、Tgが100〜200℃であるポリウレタン樹脂を含む。
【0053】
本発明において、少なくとも磁性層において高いTgを有するポリウレタン樹脂を含む結合剤が用いられると、記録再生ヘッドと磁性層表面との摺動により発生する摩擦熱による磁性層の塑性流動が抑制され、良好な塗膜強度が得られ、優れた走行耐久性を達成することができる。特に、その効果は磁性層が薄層である場合に顕著である。さらに、後述の非磁性層で上記ポリウレタン樹脂を含む結合剤を使用すれば、高い塗膜強度が得られ、ドライブ内でテープを走行させた時に、規制ガイドとの摺動によるテープのエッジ削れを防止できるため好ましい。
【0054】
本発明において結合剤に含まれるポリウレタン樹脂のTgは、100〜200℃の範囲であり、好ましくは120〜170℃の範囲である。Tgが100℃以上であれば、塗膜強度が低下することなく、良好な走行耐久性を得ることができる。また、Tgが200℃以下であれば、カレンダ処理時の平滑化効果が得られ、良好な電磁変換特性及び走行耐久性が得られる。
【0055】
前記ポリウレタン樹脂は、ウレタン基濃度が2.5〜6.0mmol/gの範囲であることが好ましく、3.0〜4.5mmol/gであることがさらに好ましい。ウレタン基濃度が2.5mmol/g以上であると、塗膜のTgが高く良好な耐久性を得ることができ、6.0mmol/g以下であると、溶剤溶解性が高いため分散性が良好である。ウレタン基濃度が過度に高いと必然的にポリオールを含有することができなくなるため、分子量コントロールが困難になる等、合成上好ましくない。
【0056】
前記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、30,000〜200,000の範囲であることが好ましく、50,000〜100,000の範囲であることがさらに好ましい。分子量が30,000以上であると、塗膜強度が高く良好な耐久性を得ることができ、200,000以下であると溶剤溶解性が高く分散性が良好である。
【0057】
前記ポリウレタン樹脂の極性基としては、−SO3M、−OSO3M、−PO3M2、−COOMが好ましく、−SO3M、−OSO3M(但し、Mは水素原子、アルカリ金属、アンモニウムから選ばれる)であることがさらに好ましい。極性基の含有量は、1×10−5〜2×10−4eq/gであることが好ましい。1×10−5eq/g以上であると、強磁性粉末や非磁性粉末への吸着性が高く分散性が良好である。一方、2×10−4eq/g以下であると、溶剤溶解性が高く、分散性が良好である。
【0058】
前記ポリウレタン樹脂中のOH基含有量は、1分子当たり2〜20個であることが好ましく、1分子当たり3〜15個であることがさらに好ましい。1分子当たり2個以上のOH基を含むことにより、イソシアネート硬化剤と良好に反応するため、塗膜強度が高く、良好な耐久性を得ることができる。一方、1分子当たり15個以下のOH基を含むと、溶剤溶解性が高く分散性が良好である。OH基を付与するために用いる化合物としては、OH基が3官能以上の化合物、例えばトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、無水トリメリット酸、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、3官能以上OH基を持つ分岐ポリエステル又はポリエーテルエステルを用いることができる。これらのなかでも、3官能のものが好ましい。4官能以上になると硬化剤との反応が速くなりすぎポットライフが短くなる。
【0059】
本発明において結合剤に含まれるポリウレタン樹脂のポリオール成分としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリオレフィンポリオールやダイマージオール等の環構造及び長鎖アルキル鎖を有するジオール化合物等の公知のポリオールを用いることができる。
上記ポリオールの分子量は500〜2000程度が好ましい。分子量が上記範囲内であると、実質的にジイソシアネートの重量比を増やすことができるため、ウレタン結合が増えて分子間の相互作用が強まり、ガラス転移温度が高く、力学強度の高い塗膜を得ることができる。
【0060】
上記ジオール成分は、環状構造及び長鎖アルキル鎖を有するジオール化合物であることが好ましい。ここで、長鎖アルキル鎖とは、炭素数2〜18のアルキル基をいう。環状構造及び長鎖アルキル鎖を有すると、屈曲した構造を有するため、溶剤への溶解性に優れる。これにより、塗布液中で磁性体又は非磁性体表面に吸着したウレタン分子鎖の広がりを大きくできるので、分散安定性を向上させる作用があり、優れた電磁変換特性(SNR)を得ることができる。また、環状構造を有することにより、ガラス転移温度が高いポリウレタンを得ることができる。
環状構造及び長鎖アルキル鎖を有するジオール化合物は、下式で示されるジオール化合物が特に好ましい。
【0061】
【化11】
【0062】
式中、Zは、シクロヘキサン環、ベンゼン環及びナフタレン環から選ばれる環状構造であり、R1及びR2は炭素数1〜18のアルキレン基であり、R3及びR4は炭素数2〜18のアルキル基である。
【0063】
上記ジオール成分は、ポリウレタン樹脂中に10〜50wt%含まれることが好ましく、15〜40wt%含まれることがさらに好ましい。10wt%以上であると、溶剤溶解性が高く分散性が良好であり、50wt%以下であると、Tgが高く優れた耐久性を有する塗膜が得られる。
【0064】
上記ポリウレタン樹脂には、鎖延長剤として上記ジオール成分以外のジオール成分を併用することもできる。ジオール成分の分子量が大きくなると、必然的にジイソシアネート含有量が少なくなるため、ポリウレタン中のウレタン結合が少なくなり、塗膜強度に劣る。よって、十分な塗膜強度を得るためには、併用される鎖延長剤は、分子量500未満、好ましくは300以下である低分子量ジオールであることが好ましい。
【0065】
具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、、ネオペンチルグリコール(NPG)、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、シクロヘキサンジオール(CHD)、水素化ビスフェノールA(H−BPA)等の脂環族グリコール及びこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールA(BPA)、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールF等の芳香族グリコール及びこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物を用いることができる。特に好ましいものは水素化ビスフェノールAである。
【0066】
上記ポリウレタン樹脂に用いるジイソシアネートとしては、公知のものを用いることができる。具体的には、TDI(トリレンジイソシアネート)、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、p−フェニレンジイソシアネート、o−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が好ましい。
【0067】
本発明において、上記ポリウレタン樹脂は、塩化ビニル系の合成樹脂と併用してもよい。併用することができる塩化ビニル系樹脂の重合度は200〜600が好ましく、250〜450が特に好ましい。塩化ビニル系樹脂はビニル系モノマー、例えば酢酸ビニル、ビニルアルコール、塩化ビニリデン、アクリロニトリルなどを共重合させたものでもよい。
【0068】
上記ポリウレタン樹脂は、上記塩化ビニル系樹脂の他、さらに各種の合成樹脂と併用できる。そのような合成樹脂としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ニトロセルロース樹脂などのセルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂等を挙げることができる。これらは、単独でも組み合わせでも使用することができる。
【0069】
上記ポリウレタン樹脂と上記合成樹脂とを併用する場合、磁性層に含まれるポリウレタン樹脂は、結合剤中に10〜90質量%含有されていることが好ましく、20〜80質量%含有されることがさらに好ましく、25〜60質量%含有されることが特に好ましい。また塩化ビニル系樹脂は、結合剤中に10〜80質量%含有されていることが好ましく、20〜70質量%含有されていることがさらに好ましく、30〜60質量%含有されていることが特に好ましい。
【0070】
また、本発明の結合剤とともに、ポリイソシアネート化合物等の硬化剤を使用することができる。ポリイソシアネート化合物の例としては、トリレンジイソシアネート3モルとトリメチロールプロパン1モルとの反応性生物(例、デスモジュールL−75(バイエル社製))、キシリレンジイソシアネートあるいはヘキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネート3モルとトリメチロールプロパン1モルとの反応生成物、ヘキサメチレンジイソシアネート3モルとのビューレット付加化合物、トリレンジイソシアネート5モルのイソシアヌレート化合物、トリレンジイソシアネート3モルとヘキサメチレンジイソシアネート2モルのイソシアヌレート付加化合物、イソホロンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネートのポリマーを挙げることができる。
【0071】
磁性層に含まれるポリイソシアネート化合物は、結合剤中に10〜50質量%の範囲で含有されていることが好ましく、さらに好ましくは20〜40質量%の範囲である。また、電子線照射による硬化処理を行う場合には、ウレタンアクリレート等のような反応性二重結合を有する化合物を使用できる。樹脂成分と硬化剤との合計(すなわち結合剤)の重量は、強磁性粉末100重量部に対して、通常15〜40重量部の範囲内にあることが好ましく、さらに好ましくは20〜30重量部である。
【0072】
<強磁性粉末>
本発明において、磁性層で用いられる強磁性粉末の平均サイズは20〜60nmである。本発明では、安定したエラーレートを得るために、より高いSNRが得られる平均サイズは20〜60nm、好ましくは20〜50nm、さらに好ましくは20〜45nmの微小な強磁性粉末が用いられる。
【0073】
本発明において、磁性層で用いられる強磁性粉末は、20〜60nmの平均サイズを有する強磁性粉末であればその種類は特に限定されない。本発明で使用可能な強磁性粉末としては、例えば、20〜60nmの平均長軸長を有する強磁性金属粉末、又は20〜60nmの平均板径を有する六方晶系フェライト強磁性粉末が挙げられる。
【0074】
(強磁性金属粉末)
本発明において磁性層で用いられる強磁性金属粉末は、SBET比表面積が40〜80m2/g 、好ましくは50〜70m2/gであるコバルト含有強磁性酸化鉄又は強磁性合金粉末であることが好ましい。結晶子サイズは12〜25nm、好ましくは13〜22nmであり、特に好ましくは14〜20nmである。平均長軸長は20〜60nmであり、好ましくは20〜50nmであり、特に好ましくは20〜45nmであることが適当である。強磁性粉末としては、イットリウムを含むFe、Fe−Co、Fe−Ni、Co−Ni−Feが挙げられ、強磁性粉末中のイットリウム含有量は、鉄原子に対してイットリウム原子の比、Y/Feが0.5原子%〜20原子%が好ましく、さらに好ましくは、5〜10原子%であることが適当である。0.5原子%以上であると、強磁性粉末の高飽和磁化(σS)化が可能となり磁気特性が向上し、良好な電磁変換特性を得ることができる。20原子%以下であると、鉄の含有量が適当であり磁気特性が良好であり、電磁変換特性が向上する。さらに、鉄100原子%に対して20原子%以下の範囲内で、アルミニウム、ケイ素、硫黄、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、銅、亜鉛、モリブデン、ロジウム、パラジウム、錫、アンチモン、ホウ素、バリウム、タンタル、タングステン、レニウム、金、鉛、リン、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、テルル、ビスマス等を含むことができる。また、強磁性金属粉末が少量の水、水酸化物または酸化物を含むものなどであってもよい。
【0075】
本発明において使用可能なコバルト、イットリウムを導入した強磁性粉末の製造方法の一例を示す。第一鉄塩とアルカリを混合した水性懸濁液に、酸化性気体を吹き込むことによって得られるオキシ水酸化鉄を出発原料とする例を挙げることができる。このオキシ水酸化鉄の種類としては、α−FeOOHが好ましく、その製法としては、第一鉄塩を水酸化アルカリで中和してFe(OH)2の水性懸濁液とし、この懸濁液に酸化性ガスを吹き込んで針状のα−FeOOHとする第一の製法がある。一方、第一鉄塩を炭酸アルカリで中和してFeCO3の水性懸濁液とし、この懸濁液に酸化性気体を吹き込んで紡錘状のα−FeOOHとする第二の製法がある。このようなオキシ水酸化鉄は第一鉄塩水溶液とアルカリ水溶液とを反応させて水酸化第一鉄を含有する水溶液を得て、これを空気酸化等により酸化して得られたものであることが好ましい。この際、第一鉄塩水溶液にNi塩や、Ca塩、Ba塩、Sr塩等のアルカリ土類元素の塩、Cr塩、Zn塩などを共存させてもよく、このような塩を適宣選択して用いることによって粒子形状(軸比)などを調製することができる。
【0076】
第一鉄塩としては、塩化第一鉄、硫酸第一鉄等が好ましい。またアルカリとしては水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等が好ましい。また、共存させることができる塩としては、塩化ニッケル、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化クロム、塩化亜鉛等の塩化物が好ましい。次いで、鉄にコバルトを導入する場合は、イットリウムを導入する前に、硫酸コバルト、塩化コバルト等のコバルト化合物の水溶液を前記のオキシ水酸化鉄のスラリーに撹拌混合する。コバルトを含有するオキシ水酸化鉄のスラリーを調製した後、このスラリーにイットリウムの化合物を含有する水溶液を添加し、撹拌混合することによって導入することができる。
【0077】
本発明の強磁性粉末には、イットリウム以外にもネオジム、サマリウム、プラセオジウム、ランタン等を導入することができる。これらは、塩化イットリウム、塩化ネオジム、塩化サマリウム、塩化プラセオジウム、塩化ランタン等の塩化物、硝酸ネオジム、硝酸ガドリニウム等の硝酸塩などを用いて導入することができ、これらは、二種以上を併用しても良い。強磁性粉末の形状に特に制限はないが、通常は針状、粒状、サイコロ状、米粒状及び板状のものなどが使用される。特に針状の強磁性粉末を使用することが好ましい。
【0078】
上記の樹脂成分、硬化剤及び強磁性粉末を、通常磁性塗料の調製の際に使用されているメチルエチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル等の溶剤と共に混練分散して磁性塗料とする。混練分散は通常の方法に従って行うことができる。なお、磁性塗料中には、上記成分以外に、α−Al2O3、Cr2O3等の研磨材、カーボンブラック等の帯電防止剤、脂肪酸、脂肪酸エステル、シリコーンオイル等の潤滑剤、分散剤など通常使用されている添加剤あるいは充填剤を含むものであってもよい。
【0079】
(六方晶系フェライト強磁性粉末)
本発明において磁性層に含まれる六方晶系フェライトとしては、例えば、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライトの各置換体、Co置換体等を挙げることができる。具体的にはマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネトプランバイト型フェライト、更に一部スピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等が挙げられる。その他、所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。一般にはCo−Zn、Co−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Nb−Zn−Co、Sb−Zn−Co、Nb−Zn等の元素を添加したものを使用することができる。原料・製法によっては特有の不純物を含有するものもある。
【0080】
本発明で使用可能な六方晶系フェライト粉末の平均板径は、記録密度によって異なるが、通常、20〜60nmであり、20〜50nmであることが好ましく、20〜35nmであることが特に好ましい。ここで板径とは、六方晶系フェライト磁性粉の六角柱底面の六角径の最大径を意味し、平均板径とはその算術平均である。特にトラック密度を上げるため、磁気抵抗ヘッドで再生する場合は、低ノイズにする必要があり、板径は35nm以下であることが好ましいが、20〜60nmの範囲であれば、熱揺らぎの影響を受けない安定な磁化が望め、かつ、ノイズを抑えることができるため、高密度磁気記録に好適となる。板状比(板径/板厚)は1〜15であることが望ましく、1〜7であることが好ましい。板状比が1以上であれば、磁性層中の高充填性を維持しつつ、充分な配向性が得られる。また板状比が15以下であれば、粒子間のスタッキングによる影響を受け難くなり、ノイズが大きくなることもない。
【0081】
上記粒子サイズ範囲のBET法による比表面積は30〜200m2/gであることが適当である。比表面積は、概ね粒子板径と板厚からの算術計算値と符号する。粒子板径・板厚の分布は、通常、狭いほど好ましい。数値化は困難であるが粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定することで比較できる。分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すとσ/平均サイズ=0.1〜2.0である。粒子サイズ分布をシャープにするには粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。例えば、酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。
【0082】
六方晶系フェライト強磁性粉末で測定される抗磁力(Hc)は、特に限定されないが、119〜239kA/m(1500〜3000Oe)程度の範囲が好ましい。抗磁力(Hc)は高い方が高密度記録に有利であるが、記録ヘッドの能力で制限される。抗磁力(Hc)は粒子サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。六方晶系フェライト強磁性粉末の飽和磁化(σs)は、30〜80A・m2/kgであることが適当であり、40〜70A・m2/kgであることが好ましい。微粒子になるほど小さくなる傾向がある。製法では結晶化温度又は熱処理温度時間を小さくする方法、添加する化合物を増量する、表面処理量を多くする方法等がある。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。磁性体を分散する際に磁性体粒子表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することも行われている。
【0083】
表面処理剤は、無機化合物、有機化合物が使用される。主な化合物としてはSi、Al、P、等の酸化物又は水酸化物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。添加量は磁性体に対して0.1〜10%である。磁性体のpHも分散に重要である。通常4〜12程度で分散媒、ポリマーにより最適値があるが、媒体の化学的安定性、保存性から6〜11程度が選択される。磁性体に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが、通常0.01〜2.0%の範囲が選ばれる。
【0084】
六方晶フェライトの製法としては、▲1▼酸化バリウム、酸化鉄、鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得るガラス結晶化法、▲2▼バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後、100℃以上で液相加熱し、洗浄、乾燥及び粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る水熱反応法、▲3▼バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後乾燥し1100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る共沈法等があるが、本発明は製法を選ばない。
【0085】
<磁性層の厚み及び抗磁力Hc>
本発明において、磁性層の厚みは20〜150nmである。磁性層の厚みは、好ましくは20〜100nmであり、さらに好ましくは20〜50nmである。
磁性層の厚みが150nm以下であれば、PW50(パルスの半値幅)の値を低くすることができ、高密度記録時に安定したエラーレートが得られるため好ましい。その他、高いSNRを得ることができ、安定したエラーレートが得られる。
【0086】
本発明において、磁性層の長手方向又は面内方向の抗磁力(Hc)の値は、特に限定されないが、自己減磁損失を減少させ、高密度記録を達成するために、159〜239kA/m(2000〜3000 Oe)であることが適当である。抗磁力(Hc)の値が159kA/m以上であれば、良好な高密度記録を達成できる。一方、抗磁力(Hc)の値は、高いほど高密度記録時に高SNRが得られるため好ましいが、余りに高すぎると消去率が低下することから、本発明では磁性層の長手方向又は面内方向のHcの上限値を239kA/mとすることが適当である。抗磁力(Hc)の値は、好ましくは175〜207kA/m(2200〜2600 Oe)の範囲であり、さらに好ましくは183〜199kA/m(2300〜2500 Oe)の範囲である。
【0087】
なお、本明細書において、磁性層の長手方向とは、テープ状磁気記録媒体の走行方向と一致する方向であり、幅方向と垂直関係にある方向をいう。また、本明細書において磁性層の面内方向とは、ディスク状磁気記録媒体における走行方向と幅方向で形成される面をいう。
【0088】
本発明において、磁性層の長手方向又は面内方向における上記抗磁力(Hc)を実現するために、本発明では、例えば、平均サイズが20〜60nmの微小な強磁性粉末であって、飽和磁化(σs)が110〜155Am2 /kgであり、強磁性粉末の抗磁力(Hc)が159kA/m以上である強磁性粉末を使用することが適当である。
【0089】
次に、本発明において上記の結合剤、強磁性粉末とともに磁性層に含有させることのできる添加物について説明する。
<カーボンブラック>
本発明において、磁性層で使用されるカーボンブラックとしては、ゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を挙げることができる。比表面積は5〜500m2/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、平均粒子径は5〜300nm、pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/ml、が好ましい。具体的には、WO98/35345に記載のもが挙げられる。
【0090】
カーボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。したがって、本発明が多層構成の場合には、各層でその種類、量、組み合わせを変え、粒子径、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきものである。
【0091】
<研磨剤>
本発明において、磁性層に研磨剤を含有させることができる。研磨剤としてはα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイヤモンド、窒化珪素、炭化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素など、主としてモース硬度6以上の公知の材料が単独又は組み合わせで使用される。また、これらの研磨剤どうしの複合体(研磨剤を他の研磨剤で表面処理したもの)を使用してもよい。
【0092】
本発明において研磨剤は、主成分以外の化合物又は元素を含む場合もあるが、主成分が90%以上であれば効果に変わりはない。これら研磨剤の平均粒子径は、0.01〜2μmであることが好ましく、特に電磁変換特性(SNR)を高めるためには、その粒度分布が狭い方が好ましい。また耐久性を向上させるには、必要に応じて粒子径の異なる研磨剤を組み合わせ、あるいは単独の研磨剤でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることも可能である。
【0093】
研磨剤のタップ密度は、0.3〜2g/ml、含水率は0.1〜5%、pHは2〜11、比表面積は1〜30m2/gであることが好ましい。本発明に用いられる研磨剤の形状は、針状、球状及びサイコロ状のいずれでもよいが、形状の一部に角を有するものが、研磨性が高くて好ましい。具体的には、WO98/35345に記載のものが挙げられ、中でもダイヤモンドを同記載のごとく用いると、走行耐久性及び電磁変換特性の改善に有効である。磁性層に添加する研磨剤の粒径、量は、むろん最適値に設定すべきものである。
【0094】
<その他の添加剤>
本発明において磁性層に添加できるその他の添加剤としては、潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果などを有するものが挙げられ、これらを組み合わせることにより総合的な性能向上を図ることができる。潤滑効果を示すものとしては、物質表面同士の摩擦により生じる凝着に著しい作用を示す潤滑剤が使用される。潤滑剤には2つの型のものがある。磁気記録媒体に使用される潤滑剤は、完全に流体潤滑か境界潤滑であるか判定することはできないが、一般的概念で分類すれば流体潤滑を示す高級脂肪酸エステル、流動パラフィン、シリコーン誘導体などや境界潤滑を示す長鎖脂肪酸、フッ素系界面活性剤、含フッ素系高分子などに分類される。塗布型媒体では、潤滑剤は結合剤に溶解した状態、また一部は強磁性粉末表面に吸着した状態で存在するものであり、磁性層表面に潤滑剤が移行してくるが、その移行速度は結合剤と潤滑剤との相溶性の良否によって決まる。結合剤と潤滑剤との相溶性が高いときは移行速度が小さく、相溶性の低いときには早くなる。相溶性の良否に対する一つの考え方として、両者の溶解パラメーターの比較がある。流体潤滑には非極性潤滑剤が有効であり、境界潤滑には極性潤滑剤が有効である。
【0095】
本発明において、これら特性の異なる流体潤滑を示す高級脂肪酸エステルと境界潤滑を示す長鎖脂肪酸とを組み合わせることが好ましく、少なくとも3種組み合わせることがさらに好ましい。これらに組み合わせて固体潤滑剤を使用することもできる。
固体潤滑剤としては例えば二硫化モリブデン、二硫化タングステングラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛などが使用される。境界潤滑を示す長鎖脂肪酸としては、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、及びこれらの金属塩(Li、Na、K、Cuなど)が挙げられる。フッ素系界面活性剤、含フッ素系高分子としてはフッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、フッ素含有アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩などが挙げられる。流体潤滑を示す高級脂肪酸エステルとしては、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)と炭素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコールのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)とからなるモノ脂肪酸エステル、ジ脂肪酸エステル又はトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエーテルの脂肪酸エステルなどが挙げられる。また流動パラフィン、そしてシリコーン誘導体としてジアルキルポリシロキサン(アルキルは炭素数1〜5個)、ジアルコキシポリシロキサン(アルコキシは炭素数1〜4個)、モノアルキルモノアルコキシポリシロキサン(アルキルは炭素数1〜5個、アルコキシは炭素数1〜4個)、フェニルポリシロキサン、フロロアルキルポリシロキサン(アルキルは炭素数1〜5個)などのシリコーンオイル、極性基をもつシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーンなどが挙げられる。
【0096】
その他の潤滑剤として炭素数12〜22の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコール(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、炭素数12〜22のアルコキシアルコール(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、フッ素含有アルコールなどのアルコール、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレングリコール、ポリエチレンオキシドワックスなどのポリグリコール、アルキル燐酸エステル及びそのアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、ポリフェニルエーテル、炭素数8〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミンなどが挙げられる。
【0097】
帯電防止効果、分散効果、可塑効果などを示すものとして、フェニルホスホン酸、具体的には、日産化学(株)社の「PPA」など、αナフチル燐酸、フェニル燐酸、ジフェニル燐酸、p−エチルベンゼンホスホン酸、フェニルホスフィン酸、アミノキノン類、各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、フッ素含有アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、などが使用できる。
【0098】
本発明において使用される潤滑剤は、特に脂肪酸と脂肪酸エステルであることが好ましく、具体的にはWO98/35345に記載のものが挙げられる。これらに加えて別異の潤滑剤、添加剤も組み合わせて使用することができる。
【0099】
また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加体、等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウム又はスルホニウム類等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルフォン酸、燐酸、硫酸エステル基、燐酸エステル基などの酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸又は燐酸エステル類、アルキルベダイン型、等の両性界面活性剤等も使用できる。
これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
本発明は、脂肪酸エステルとしてWO98/35345に記載のようにモノエステルとジエステルを組み合わせて使用することも好ましい。
【0100】
本発明において、磁性層での潤滑剤の含有量は、強磁性粉末100質量部に対し5〜30質量部であることが好ましい。
【0101】
本発明で使用されるこれらの潤滑剤、界面活性剤は個々に異なる物理的作用を有するものであり、その種類、量及び相乗的効果を生み出す潤滑剤の併用比率は、目的に応じ最適に定められるべきものである。非磁性層、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い表面への滲み出しを制御する、沸点、融点や極性の異なるエステル類を用い表面への滲み出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を中間層で多くして潤滑効果を向上させるなど考えられ、無論ここに示した例のみに限られるものではない。一般には潤滑剤の総量として磁性粉末または非磁性粉末100質量部に対し、0.1〜50質量部、好ましくは2〜25質量部の範囲で選択される。
【0102】
また本発明で用いられる添加剤のすべて又はその一部は、磁性塗料製造のどの工程で添加してもかまわない、例えば、混練工程前に磁性体と混合する場合、磁性体と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。また、目的に応じて磁性層を塗布した後、同時または逐次塗布で、添加剤の一部または全部を塗布することにより目的が達成される場合がある。また、目的によってはカレンダ処理した後、またはスリット終了後、磁性層表面に潤滑剤を塗布することもできる。
【0103】
[非磁性層]
本発明の磁気記録媒体は、前記磁性層の下層として非磁性層を有することができる。以下に非磁性層について詳細に説明する。
本発明における非磁性層は、実質的に非磁性であればその効果を発揮するものであり、たとえば不純物として、或いは意図的に少量の磁性粉を含んでも、本発明の効果を示すものである限り、本発明と実質的に同一の構成と見なすことができることは言うまでもない。
ここで、実質的に非磁性層とは、非磁性層の残留磁束密度が10T・m以下又は抗磁力(Hc)が8kA/m(100 Oe)以下であることを示し、好ましくは残留磁束密度と抗磁力をもたないことを示す。また、非磁性層に磁性粉を含む場合は、非磁性層の全無機粉末の1/2未満含むことが好ましい。さらに下層として、非磁性層に代えて軟磁性粉末と結合剤を含む軟磁性層を形成してもよい。軟磁性層の厚みは非磁性層と同様である。
【0104】
本発明において非磁性層は、非磁性無機粉末と結合剤とを主体とするものが好ましい。非磁性層に用いられる非磁性無機粉末としては、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、等の無機質化合物から選択することができる。無機化合物としては例えばα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ヘマタイト、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカ−バイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどが単独又は組み合わせで使用される。特に好ましいのは、粒度分布の小ささ、機能付与の手段が多いこと等から、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、さらに好ましいのは二酸化チタン、α酸化鉄である。
【0105】
上記の非磁性無機粉末の平均粒子径は5〜200nmであることが好ましい。また、必要に応じて平均粒子径の異なる非磁性無機粉末を組み合わせることができ、さらに単独の非磁性無機粉末であっても粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましいのは非磁性無機粉末の平均粒子径は10〜200nmである。特に、非磁性無機粉末が粒状金属酸化物である場合は、平均粒子径80nm以下であることが好ましく、針状金属酸化物である場合には、平均長軸長が300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがさらに好ましい。
【0106】
タップ密度は、通常、0.05〜2g/ml、好ましくは0.2〜1.5g/mlである。非磁性無機粉末の含水率は通常、0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%、さらに好ましくは0.3〜1.5質量%である。非磁性無機粉末のpHは通常、2〜11であるが、pHは5.5〜10の間が特に好ましい。非磁性無機粉末の比表面積は通常、1〜100m2/gであり、5〜80m2/gであることが好ましく、10〜70m2/gであることがさらに好ましい。非磁性無機粉末の結晶子サイズは、0.004〜1μmであることが好ましく、0.04〜0.1μmであることがさらに好ましい。DBP(ジブチルフタレート)を用いた吸油量は通常、5〜100ml/100gであり、10〜80ml/100gであることが好ましく、20〜60ml/100gであることがさらに好ましい。比重は、通常、1〜12であり、3〜6であることがさらに好ましい。形状は、針状、球状、多面体状、板状のいずれであってもよい。モース硬度は、4〜10であることが好ましい。非磁性無機粉末のSA(ステアリン酸)吸着量は、1〜20μmol/m2であり、2〜15μmol/m2、であることがより好ましく、3〜8μmol/m2であることがさらに好ましい。pHは、3〜6の間にあることが好ましい。
【0107】
これらの非磁性無機粉末の表面には、表面処理によりAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb2O3、ZnO、Y2O3が存在することが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2であるが、さらに好ましいのはAl2O3、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせて使用してもよいし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナを存在させた後にその表層にシリカを存在させる方法、又はその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
本発明の下層に用いられる非磁性無機粉末の具体的な例及び製造法としては、WO98/35345に記載のものが例示される。
【0108】
非磁性層にはさらに目的に応じて、有機質粉末を添加することもできる。例えば、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられる。また、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。その製法は特開昭62−18564号公報、特開昭60−255827号公報に記されているようなものが使用できる。
【0109】
非磁性層の結合剤、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法、含有量その他は、上記の磁性層のそれが適用できる。特に、結合剤の量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
【0110】
[非磁性支持体]
本発明の磁気記録媒体に用いられる支持体は、非磁性可撓性支持体であることが好ましく、支持体の面内各方向に対し、100℃30分での熱収縮率は、3%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましい。80℃30分での熱収縮率は、1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。さらに前記支持体の100℃30分での熱収縮率及び80℃30分での熱収縮率が前記支持体の面内各方向に対し、10%以内の差で等しいことが好ましい。支持体は非磁性であることが好ましい。
これら支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、芳香族又は脂肪族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、ポリアラミド、ポリベンゾオキサゾールなどの公知のフィルムが使用できる。ポリエチレンナフタレート、ポリアミドなどの高強度支持体を用いることが好ましい。また必要に応じて、磁性層面と支持体のベース面での表面粗さを変えることができ、例えば、特開平3−224127号公報に示されるような積層タイプの支持体を用いることもできる。これらの支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理などを行ってもよい。また本発明の支持体としてアルミニウム又はガラス基板を適用することも可能である。
【0111】
好ましくは、支持体としてWYKO社製HD−2000型を用いて測定した中心面平均表面粗さRaは4.0nm以下、好ましくは2.0nm以下のものを使用することである。これらの支持体は単に中心面平均表面粗さが小さいだけではなく、0.5μm以上の粗大突起がないことが好ましい。また表面の粗さ形状は必要に応じて支持体に添加されるフィラーの大きさと量により自由にコントロールされるものである。これらのフィラーとしては一例としてはCa、Si、Tiなどの酸化物や炭酸塩の他、アクリル系などの有機粉末が挙げられる。支持体の最大高さRmaxは1μm以下、十点平均粗さRzは0.5μm以下、中心面山高さRpは0.5μm以下、中心面谷深さRvは0.5μm以下、中心面面積率Srは10〜90%、平均波長λaは5〜300μmが好ましい。所望の電磁変換特性と耐久性を得るため、これら支持体の表面突起分布をフィラーにより任意にコントロールできるものであり、0.01〜1μmの大きさのもの各々を0.1mm2当り0〜2000個の範囲でコントロールすることができる。
【0112】
本発明に用いられる支持体のF−5値は、49〜490MPa(5〜50kg/mm2)であることが好ましい。破断強度は、49〜980MPa(5〜100kg/mm2)であることが好ましい。また弾性率は、980〜19600MPa(100〜2000kg/mm2)であることが好ましい。温度膨張係数は10−4〜10−8/℃であり、10−5〜10−6/℃であることが好ましい。湿度膨張係数は10−4/RH%以下であり、好ましくは10−5/RH%以下である。これらの熱特性、寸法特性、機械強度特性は、支持体の面内各方向に対し10%以内の差でほぼ等しいことが好ましい。
【0113】
[バックコート層]
本発明の磁気記録媒体は、必要に応じて磁性層を有する面とは反対側の非磁性支持体上の面にバックコート層を設けることもできる。磁気ディスクでもバックコート層を設けることはできるが、一般に、コンピューターデータ記録用の磁気テープは、ビデオテープ、オーディオテープに比較して、繰り返し走行性が強く要求される。このような高い走行耐久性を維持させるために、バックコート層には、カーボンブラックと無機粉末が含有されていることが好ましい。
【0114】
バックコート層で使用するカーボンブラックは、平均粒子径の異なる二種類のものを組み合わせて使用することが好ましい。この場合、平均粒子径が10〜20nmの微粒子状カーボンブラックと平均粒子径が230〜300nmの粗粒子状カーボンブラックを組み合わせて使用することが好ましい。一般に、上記のような微粒子状のカーボンブラックの添加により、バックコート層の表面電気抵抗を低く設定でき、また光透過率も低く設定できる。磁気記録装置によっては、テープの光透過率を利用し、動作の信号に使用しているものが多くあるため、このような場合には特に微粒子状のカーボンブラックの添加は有効になる。また微粒子状カーボンブラックは、一般に液体潤滑剤の保持力に優れ、潤滑剤併用時、摩擦係数の低減化に寄与する。一方、平均粒子径が230〜300nmの粗粒子状カーボンブラックは、固体潤滑剤としての機能を有しており、またバックコート層の表面に微小突起を形成し、接触面積を低減化して、摩擦係数の低減化に寄与する。
【0115】
本発明においてバックコート層に用いられる微粒子状カーボンブラック及び粗粒子状カーボンブラックとして、市販のものを用いる場合、具体的な商品としては、WO98/35345に記載のものを挙げることができる。
バックコート層において、平均粒子径の異なる二種類のものを使用する場合、10〜20nmの微粒子状カーボンブラックと230〜300nmの粗粒子状カーボンブラックの含有比率(質量比)は、前者:後者=98:2〜75:25の範囲にあることが好ましく、95:5〜85:15の範囲にあることがさらに好ましい。
バックコート層中のカーボンブラック(二種類のものを使用する場合には、その全量)の含有量は、結合剤100質量部に対して、通常30〜80質量部の範囲であり、好ましくは、45〜65質量部の範囲である。
【0116】
バックコート層で使用する無機粉末は、硬さの異なる二種類のものを併用することが好ましい。具体的には、モース硬度3〜4.5の軟質無機粉末とモース硬度5〜9の硬質無機粉末とを使用することが好ましい。モース硬度が3〜4.5の軟質無機粉末を添加することで、繰り返し走行による摩擦係数の安定化を図ることができる。しかもこの範囲の硬さでは、摺動ガイドポールが削られることもない。またこの無機粉末の平均粒子径は、30〜50nmの範囲にあることが好ましい。
モース硬度が3〜4.5の軟質無機粉末としては、例えば、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、及び酸化亜鉛を挙げることができる。これらは、単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
バックコート層内の軟質無機粉末の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して10〜140質量部の範囲にあることが好ましく、35〜100質量部であることがさらに好ましい。
【0117】
モース硬度が5〜9の硬質無機粉末を添加することにより、バック層の強度が強化され、走行耐久性が向上する。これらの無機粉末をカーボンブラックや前記軟質無機粉末と共に使用すると、繰り返し摺動に対しても劣化が少なく、強いバックコート層となる。また、この無機粉末の添加により、適度の研磨力が付与され、テープガイドポール等への削り屑の付着が低減する。特に軟質無機粉末と併用すると、表面の粗いガイドポールに対しての摺動特性が向上し、バックコート層の摩擦係数の安定化も図ることができる。
硬質無機粉末の平均粒子径は80〜250nmの範囲にあることが好ましく、100〜210nmの範囲にあることがさらに好ましい。
モース硬度が5〜9の硬質無機質粉末としては、例えば、α−酸化鉄、α−アルミナ、及び酸化クロム(Cr2O3)を挙げることができる。これらの粉末は、それぞれ単独で用いてもよいし、あるいは併用してもよい。これらの内では、α−酸化鉄又はα−アルミナが好ましい。硬質無機粉末の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して通常、3〜30質量部であり、3〜20質量部であることが好ましい。
【0118】
バックコート層に前記軟質無機粉末と硬質無機粉末とを併用する場合、軟質無機粉末と硬質無機粉末との硬さの差が、2以上(さらに好ましくは、2.5以上、特に、3以上)であるように軟質無機粉末と硬質無機粉末とを選択して使用することが好ましい。
バックコート層には、前記それぞれ特定の平均粒子径を有するモース硬度の異なる二種類の無機粉末と、前記平均粒子径の異なる二種類のカーボンブラックとが含有されていることが好ましい。
【0119】
バックコート層には、潤滑剤を含有させることができる。潤滑剤は、前述した非磁性層、あるいは磁性層に使用できる潤滑剤として挙げた潤滑剤の中から適宜選択して使用できる。バック層において、潤滑剤は、結合剤100質量部に対して通常1〜5質量部の範囲で添加される。
【0120】
バックコート層の結合剤、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法、含有量その他は、上記の磁性層および非磁性層のそれが適用できる。特に、結合剤の量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
【0121】
本発明の磁気記録媒体は、磁気記録媒体に磁気記録された信号をMRヘッドにより再生する磁気記録再生システムで用いることができる。再生に用いられるMRヘッドは特に制限はなく、例えばGMRヘッドやTMRヘッドを用いることもできる。また、磁気記録に用いるヘッドの飽和磁化量は特に制限されないが、飽和磁化量が1.0T以上であり、1.5T以上であることが好ましい。
【0122】
[層構成]
本発明の磁気記録媒体の厚み構成は、非磁性支持体が通常、2〜100μmであり、2〜80μmであることが好ましい。コンピューターテープの非磁性支持体は、3.0〜6.5μm(好ましくは、3.0〜6.0μm、さらに好ましくは、4.0〜5.5μm)の範囲の厚みのものが使用される。
【0123】
下塗層の厚みは、0.1〜1.0μm、好ましくは0.3〜0.8μmである。また、バックコート層を設ける場合、バックコート層の厚みは、0.2〜1.0μm、好ましくは0.3〜0.7μmである。
【0124】
本発明の磁気記録媒体の非磁性層及び磁性層の厚みは、用いるヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化される。本発明では前述したとおり、磁性層の厚みを20〜150nmとし、20〜100nmの範囲とすることが好ましく、20〜50nmの範囲とすることがさらに好ましい。また、非磁性層の厚みは、通常1.0〜3.0μmであり、1.0〜2.5μmであることが好ましく、1.0〜1.5μmであることがさらに好ましい。
【0125】
磁性層を2層有する磁気記録媒体の場合、非磁性層や軟磁性層は設けても設けなくともよく、例えば、支持体から遠い側の磁性層の厚みを0.01〜0.1μm、好ましくは0.01〜0.05μmとして、支持体から近い側の磁性層の厚みを0.05〜0.15μmとすることができる。なお、磁性層を単独で有する場合、上述したように磁性層の厚みを20〜150nmとする。
【0126】
[製法]
本発明の磁気記録媒体の磁性塗料を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、及びこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程は、それぞれ2段階以上に別れていてもかまわない。本発明の磁気記録媒体に使用する磁性粉末、非磁性粉末、放射線硬化型樹脂、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などのすべての原料は、どの工程の最初又は途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。
【0127】
本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。ニーダを用いる場合、磁性粉末又は非磁性粉末と結合剤のすべて又はその一部(但し、全結合剤の30%以上が好ましい)は、磁性粉末100質量部に対し15〜500質量部の範囲で混練処理される。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性層用塗料及び非磁性層用塗料を分散させるには、ガラスビーズを用いることができるが、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
【0128】
非磁性層用塗料と磁性層用塗料とは、逐次又は同時に重層塗布されてもよく、また、磁性層を2層有する場合には、下層磁性層用塗料と上層磁性層用塗料とは、逐次又は同時に重層塗布されてもよい。好ましくは非磁性層及び磁性層が、非磁性支持体上に非磁性粉末及び結合剤を含む非磁性層用塗料を塗布した後に乾燥して非磁性層を形成し、次いでこの非磁性層上に強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層用塗料を塗布した後に乾燥して磁性層を形成すること、すなわち、乾燥後塗布法(wet on dry塗布法)で磁性層を形成することである。
【0129】
上記磁性層用塗料又は非磁性層用塗料を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。これらについては例えば株式会社総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にできる。
【0130】
なお、本発明で重層構成の磁気記録媒体を塗布する場合、以下のような方式を用いることが好ましい。
(1)磁性塗料の塗布で一般的に用いられるグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布装置等により、まず下層を塗布し、下層がウェット状態のうちに特公平1−46186号公報や特開昭60−238179号公報、特開平2−265672号公報に開示されている支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により上層を塗布する方法。
(2)特開昭63−88080号公報、特開平2−17971号公報、特開平2−265672号公報に開示されているような塗布液通液スリットを二つ内蔵する一つの塗布ヘッドにより上下層をほぼ同時に塗布する方法。
(3)特開平2−174965号公報に開示されているバックアップロール付きエクストルージョン塗布装置により上下層をほぼ同時に塗布する方法。
【0131】
なお、磁性粒子の凝集による磁気記録媒体の電磁変換特性等の低下を防止するため、特開昭62−95174号公報や特開平1−236968号公報に開示されているような方法により塗布ヘッド内部の塗布液にせん断を付与することが望ましい。さらに、塗布液の粘度については、特開平3−8471号公報に開示されている数値範囲を満足する必要がある。
【0132】
ディスク状磁気記録媒体の場合、配向装置を用いず無配向でも十分に等方的な配向性が得られることもあるが、コバルト磁石を斜めに交互に配置すること、ソレノイドで交流磁場を印加するなど公知のランダム配向装置を用いることが好ましい。六方晶系フェライトは、一般的に面内及び垂直方向の3次元ランダムになりやすいが、面内2次元ランダムとすることも可能である。また異極対向磁石など公知の方法を用い、垂直配向とすることで円周方向に等方的な磁気特性を付与することもできる。特に高密度記録を行う場合は垂直配向が好ましい。また、スピンコートを用い円周配向としてもよい。
【0133】
テープ状磁気記録媒体の場合は、コバルト磁石やソレノイドを用いて長手方向に配向する。乾燥風の温度、風量、塗布速度を制御することで塗膜の乾燥位置を制御できるようにすることが好ましく、塗布速度は20〜1000m/分、乾燥風の温度は60℃以上が好ましい。また磁石ゾーンに入る前に適度の予備乾燥を行うこともできる。
カレンダ処理ロールとしてエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロールまたは金属ロールで処理するが、特に両面磁性層とする場合は金属ロール同志で処理することが好ましい。処理温度は、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。線圧力は好ましくは196kN/m(200kg/cm)以上、さらに好ましくは294kN/m(300kg/cm)以上である。
【0134】
[物理特性]
ディスク状磁気記録媒体の場合、角形比は2次元ランダムの場合、通常、0.55〜0.67であり、0.58〜0.64であることが好ましい。また、3次元ランダムの場合、角形比は0.45〜0.55であることが好ましい。垂直配向の場合、角形比は垂直方向に通常0.6以上であり、0.7以上であることが好ましい。また、反磁界補正を行った場合は、通常0.7以上であり、0.8以上であることが好ましい。2次元ランダム及び3次元ランダムとも配向度比は0.8以上であることが好ましい。2次元ランダムの場合、垂直方向の角形比、垂直方向のBr及び垂直方向のHcは面内方向の0.1〜0.5倍以内とすることが好ましい。テープ状磁気記録媒体の場合、角形比は0.7以上、好ましくは0.8以上である。
【0135】
本発明の磁気記録媒体のヘッドに対する摩擦係数は、温度−10〜40℃、湿度0〜95%の範囲において、通常0.5以下であり、0.3以下であることが好ましい。表面固有抵抗は、磁性面104〜1012Ω/sqであることが好ましく、帯電位は−500V〜+500Vであることが好ましい。磁性層の0.5%伸びでの弾性率は、面内各方向で980〜19600MPa(100〜2000kg/mm2)であることが好ましく、破断強度は、98〜686MPa(10〜70kg/mm2)であることが好ましい。磁気記録媒体の弾性率は、面内各方向で980〜14700MPa(100〜1500kg/mm2)であることが好ましい。残留伸びは、0.5%以下であることが好ましく、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は、1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることがさらに好ましい。
【0136】
磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は、80〜120℃であり、非磁性層のそれは非磁性層に本発明で用いられるポリウレタン樹脂を含む結合剤を使用した場合は、80〜120℃であり、使用しない場合は、70〜90℃であることが好ましい。損失弾性率は、1×105〜8×108Paの範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が大きすぎると粘着故障が発生しやすい。これらの熱特性や機械特性は媒体の面内各方向で10%以内であり、かつ、ほぼ等しいことが好ましい。磁性層中に含まれる残留溶媒は、100mg/m2以下であることが好ましく、10mg/m2以下であることがさらに好ましい。塗布層が有する空隙率は、非磁性層、磁性層とも30容量%以下であることが好ましく、20容量%以下であることがさらに好ましい。空隙率は、高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方がよい場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるディスク媒体では空隙率が大きい方が走行耐久性は好ましいことが多い。
【0137】
本発明の磁性層における中心面平均表面粗さRa及び10点平均粗さRzは、それぞれ5〜50nmであることが好ましい。また、磁性層の最大高さRmaxは0.5μm以下、中心面山高さRpは0.3μm以下、中心面谷深さRvは0.3μm以下、中心面面積率Srは20〜80%、平均波長λaは5〜300μmが好ましい。磁性層の表面の突起数は、10〜20nmの大きさのものを100μm2あたり5〜1000個の範囲であることが好ましい。これらは支持体のフィラーによる表面性のコントロールや磁性層に添加する粉体の粒径と量、カレンダ処理のロール表面形状などで容易にコントロールすることができる。カールは±3mm以内とすることが好ましい。本発明の磁気記録媒体は、目的に応じ非磁性層と磁性層でこれらの物理特性を変えることができるのは容易に推定されることである。例えば、磁性層の弾性率を高くし、走行耐久性を向上させると同時に非磁性層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りをよくするなどである。
【0138】
マルチメデイア社会になり、画像記録へのニーズは産業界のみならず家庭でも益々強くなっており、本発明の磁気記録媒体は単に文字、数字などのデータ以外に、画像記録用媒体としての機能/コストの要請に十分応えられる能力を持つものである。
本発明の磁気記録媒体は、磁気抵抗型の再生ヘッド(MRヘッド)を用いる磁気記録再生システムに好適に用いることができる。MRヘッドの種類には特に制限はなく、GMRヘッドやTMRヘッドを用いることもできる。記録に用いるヘッドに特に制限はないが、飽和磁化量が1.2T以上であることが好ましく、2.0T以上がさらに好ましい。
本発明の磁気記録媒体は、コンピューターデータ記録用として好適である。
【0139】
【実施例】
以下に、本発明の具体的実施例を説明するが、本発明はこれに限定されるべきものではない。なお、以下の「部」とは別段断らない限り「質量部」のことである。
【0140】
(実施例1)
磁性層形成用塗布液の調製
(磁性層形成用成分)
【0141】
強磁性金属粉末 100部
抗磁力(Hc):189.6kA/m(2400 Oe)
BET法による比表面積:75m2/g
結晶子サイズ:13nm(130Å)
飽和磁化量(σs):120A・m2/kg(120emu/g)
粒子サイズ(平均長軸径):45nm
針状比:5.5
組成Fe/Co=100/30
表面処理層:Al2O3、Y2O3
極性基(−SO3Na基)含有塩化ビニル系共重合体 10部
日本ゼオン製 MR−110
極性基(−SO3Na基)含有ダイマジオール系 10部
ポリウレタン樹脂
[Tg 160℃ −SO3Na基含有量:6×10−5eq/g]
α−アルミナ(粒子サイズ:0.1μm) 5部
カーボンブラック(粒子サイズ: 0.08μm) 0.5部
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 2部
メチルエチルケトン 90部
シクロヘキサノン 30部
トルエン 60部
【0142】
(非磁性層形成用成分)
非磁性粉末 αFe203 ヘマタイト 80部
BET法による比表面積:110m2/g
粒子サイズ(平均長軸長):0.15μm
pH:9.3
タップ密度:0.98g/ml
表面処理層:Al2O3、SiO2
カーボンブラック 20部
平均一次粒子径:16nm(16mμ)
DBP吸油量:80ml/100g
pH:8.0
BET法による比表面積:250m2/g
揮発分:1.5%
極性基(−SO3Na基、エポキシ基) 12部
含有塩化ビニル樹脂[MR−104、日本ゼオン製]
極性基(−SO3Na基)含有ダイマジオール系 10部
ポリウレタン樹脂
[Tg 160℃ −SO3Na基含有量:6×10−5eq/g]
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 2部
メチルエチルケトン 100部
シクロヘキサノン 50部
トルエン 50部
【0143】
上記磁性層、非磁性層を形成する各成分をそれぞれオープンニーダで混練した後、サンドミルを用いて分散させた。得られたそれぞれの分散液にメチルエチルケトン40部を加えて、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層形成用塗布液および磁性層形成用塗布液をそれぞれ調製した。
【0144】
(バックコート層形成用成分)
微粒子状カーボンブラック粉末 100部
[ファーネスブラック、平均粒子サイズ:17nm]
粗粒子状カーボンブラック粉末 30部
[ファーネスブラック、平均粒子サイズ:100nm]
α−アルミナ(硬質無機粉末) 5部
[平均粒子サイズ:100nm、モース硬度:9]
ニトロセルロース樹脂 140部
ポリウレタン樹脂 15部
ポリエステル樹脂 5部
メチルエチルケトン 1200部
酢酸ブチル 300部
トルエン 600部
【0145】
上記バックコート層を形成する各成分をチルドロールで混練した後、サンドミルを用いて分散させた。得られた分散液にポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製コロネートL)40部とメチルエチルケトン1000部を添加した後、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、バックコート層形成用塗布液を調製した。
【0146】
〔磁気テープの作製性〕
下記の化合物を30質量%メチルエチルケトン溶液に調製したものを乾燥後の厚さが0.5μmになるようにコイルバーを用いて、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)支持体(厚さ:6μm、長さ(MD)方向のヤング率800kg/mm2、幅(TD)方向のヤング率750kg/mm2、磁性層塗布面の中心線平均表面粗さRa(カットオフ値:0.25mm)、2nm)上に塗布した後、乾燥させ、塗膜表面に加速電圧175kV、ビ−ム電流5mAで吸収線量が5Mradになるように電子線を照射し下塗り層を形成した。
【0147】
【化12】
【0148】
次いで下塗り層の上に、非磁性層、磁性層の順に乾燥後の厚みがそれぞれ1.5μm、0.1μmとなるように同時重層塗布した。次いで磁性層がまだ湿潤状態にあるうちに、0.3T(3000ガウス)の磁束密度を持つCo磁石と0.15T(1500ガウス)の磁束密度を持つソレノイド磁石を用いて配向処理を行った。その後乾燥させることにより磁性層を形成した。
【0149】
その後、支持体の他方の側(磁性層とは反対側)に、上記バックコート層形成用塗布液を乾燥後の厚さが、0.5μmとなるように塗布し、乾燥してバックコート層を形成した。支持体の一方の面に磁性層そして他方の面にバックコート層がそれぞれ設けられた磁気記録媒体ロールを得た。
上記ロールを加熱金属ロールと熱硬化性樹脂を芯金に被覆した弾性ロールから構成される7段のカレンダー処理機(温度90℃、線圧300kg/cm、速度300m/分)に通してカレンダー処理をおこない、テンション5kg/mで巻き取った。加熱金属ロールの材質はクロムモリブデン鋼にハードクロムメッキを施したものであり、表面粗さRaは0.005μm(カットオフ値0.25mm)である。弾性ロールの熱硬化性樹脂はビス(2−オキソゾリン)加工物と芳香族ジアミンとエポキシ化合物を反応させたものである。
次いで該ロールを1/2インチ幅にスリットした後、0.3T(3000G)の磁束密度を持つソレノイド中を通過させて消磁した。
【0150】
(実施例2)
実施例1の磁気テープの作製において、磁性層、非磁性下層共にTgが105℃のダイマージオール系ポリウレタン樹脂を使用した以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
(実施例3)
実施例1の磁気テープの作製において、磁性層、非磁性下層共にTgが195℃のダイマージオール系ポリウレタン樹脂を使用した以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
(実施例4)
実施例1の磁気テープの作製において、磁性層厚みを30nmに変更した以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
【0151】
(実施例5)
実施例1の磁気テープの作製において、以下の磁性体を使用した以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
【0152】
強磁性金属粉末
抗磁力(Hc):189.6kA/m(2400 Oe)
BET法による比表面積:70m2/g
結晶子サイズ:130Å
飽和磁化量(σs):120A・m2/kg(120emu/g)
粒子サイズ(平均長軸長):60nm
針状比:6
Fe/Co=100/30
表面処理層 Al2O3、Y2O3
【0153】
(実施例6)
実施例1の磁気テープの作製において、磁性層厚みを145nmに変更した以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
【0154】
(比較例1)
実施例1の磁気テープの作製において、磁性層、非磁性下層共に以下のTgが90℃の極性含有ポリエステルポリウレタン樹脂を使用した以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
【0155】
【0156】
(比較例2)
実施例1の磁気テープの作製において、磁性層、非磁性下層共に、Tgが205℃のポリウレタン樹脂を使用した以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
(比較例3)
実施例1の磁気テープの作製において、磁性層厚みを160nmに変更した以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
【0157】
(比較例4)
実施例1の磁気テープの作製において、以下の磁性体を使用した以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
【0158】
強磁性金属粉末
抗磁力(Hc):189.6kA/m(2400 Oe)
BET法による比表面積:65m2/g
結晶子サイズ:130Å
飽和磁化量(σs):125A・m2/kg(125emu/g)
粒子サイズ(平均長軸長):100nm
針状比:6.5
Fe/Co=100/30
表面処理層 Al2O3、Y2O3
【0159】
(比較例5)
実施例1の磁気テープの作製において、下塗り層を塗布せずに磁性層、非磁性層を支持体上に塗布した以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
(比較例6)
実施例1の磁気テープの作製において、下塗り層の厚みを1.5μmに変更した以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
【0160】
[評価方法]
<ポリウレタンのTg>
エーアンドディ社製動的粘弾性測定装置レオバイブロンを用いて周波数110Hz、昇温速度2℃/minで測定し、損失弾性率のピーク温度から求めた。
<強磁性粉末の粒子径>
透過型電子顕微鏡写真を撮影し、その写真から強磁性粉末の短軸径と長軸径とを直接読み取る方法と画像解析装置カールツァイス社製IBASS1で透過型顕微鏡写真をトレースして読み取る方法とを適宜併用して平均粒子径を求めた。
<中心線平均粗さ>
WYKO社製TOPO3Dを用いて、媒体表面をMIRAU法で約250nm×250nmの面積のRaを測定した。測定波長は約650nmで球面補正、円筒補正を加えている。本方式は光干渉にて測定する非接触の表面粗さ計である。
【0161】
<走行耐久性>
40℃80%環境で、磁性層面をDLT4ドライブ記録再生ヘッドに対し2万回往復摺動させた後、ヘッドに付着する汚れの量を5点法で評価した。テープ長は20m、走行テンションは100gr、走行速度は3m/secである。
【0162】
5点:ヘッド汚れ無し
4点:ヘッド汚れがあるがテープとの摺動面に入っていない
3点:ヘッド汚れがテープ摺動面に入っている
2点:ヘッドギャップ付近に汚れ付着
1点:ヘッドギャップ部が汚れで覆われている
【0163】
<PW50測定方法>
二つのリール間でテープを走行させる独自の走行系を組み立て、その間にテープガイドを設けて、精度よく走行させる工夫を盛り込んだ。サーボライト走行は行っていない。
記録ヘッドにはトラック幅25μmでギャップ幅0.3μm、再生ヘッドにはトラック幅12μmでシールド間隔を変更したMRセンサーを持ったSALタイプのマージヘッドを採用している。150kfciで最適記録電流を設定し、100khzの矩形波を記録再生して、孤立波のPW50(孤立波の半値幅)を測定した。
走行速度は2.55m/secで行った。
【0164】
<SNRの測定方法>
(磁気テープのSNR)
DLT7000ドライブを改造したものに、記録ヘッド(MIG、ギャップ0.15μm、1.8T)と、再生ヘッド用MRヘッド(最適Br・t:0.035T・μm)とを取り付けた。これらのヘッドは固定ヘッドである。
SNRについては、線記録密度100kFCIでの再生出力とノイズ(キャリア周波数より1MHz離れた周波数での信号成分)とから求めた。尚、再生出力及びSNRは比較例2の磁気テープを基準とする相対評価とした。
【0165】
【表1】
【0166】
表1より磁性層で使用されるポリウレタン樹脂のTgが100〜200℃であり、強磁性金属粉末の平均長軸長が20〜60nmであり、かつ磁性層の厚みが20〜150μmであり、放射線照射により重合可能な化合物を含有する下塗り層の厚みが0.1〜1μmである磁気記録媒体は、SNR及びPW50が良好であり、走行耐久性が良好であった。
これに対し、ポリウレタン樹脂のTgが100℃未満や、下塗り層の厚みが1μmより大きい場合には、走行耐久性が悪かった(比較例1、5)。さらに、磁性層の厚みが150nmより厚くなると、SNRが低下し、かつPW50が大きくなった(比較例2)。また、強磁性金属粉末の平均長軸長が60nmより大きくなるか、下塗り層の厚みが0.1μm未満になると、SNRが低下した(比較例3、4)。
【0167】
以上のことより、磁性層で使用する結合剤(ポリウレタン樹脂)のTgを高くすることにより、従来の磁気記録媒体よりも安定した耐久性が得られ、さらに用いる強磁性粉末の平均長軸長(平均板径)を小さくし、磁性層の厚みを薄くし、かつ下塗り層の厚みを0.1〜1μmとしたものであれば、高SNRと低PW50値が得られ、エラーレートの安定化を図れることが分かる。
【0168】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に、放射線照射により重合可能な化合物を含有する下塗り層と、その上に磁性層を設け、下塗り層の厚みを0.1〜1μmとし、磁性層のポリウレタン樹脂のガラス転移温度を100〜200℃とし、磁性層の厚みを20〜150nmとし、かつ磁性層の強磁性粉末の平均サイズを20〜60nmとする。これにより、高密度記録において安定したエラーレートと走行耐久性の両立化を低コストで実現できる磁気記録媒体を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗布型の磁気記録媒体に関し、特に高密度記録において安定したエラーレートと走行耐久性の両立化を低コストで実現できる磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
強磁性粉末が結合剤(バインダ)中に分散された磁性層を非磁性支持体上に設けた磁気記録媒体は、録音用テープ、ビデオテープあるいはフロッピー(登録商標)ディスクなどとして広く用いられている。そして、その電磁変換特性、走行耐久性および走行性能などの諸特性は高いレベルにあることが要求されている。例えば、音楽録音再生用のオーディオテープにおいては、より高度の原音再生能力が要求されている。また、ビデオテープについては、原画再生能力が優れているなど電磁変換特性が優れていることが要求されている。
【0003】
かかる要求に対応するよう優れた電磁変換特性を有するために、磁性層中の強磁性粉末はγ酸化鉄からメタル磁性体へと改良が進められ、高Hc化、高 σs化がなされている。特に、8mmビデオテープや放送分野における映像記録用ビデオテープのメタル化が進められている。また、最近では映像、音楽のデジタル記録再生化が進み、再生編集過程での原画、原音の再生劣化をなくし、原画・原音を忠実に再現できるようになってきた。このデジタル化におけるテープ性能評価には、再生時のエラーレート(符号誤り率)が用いられ、特許第2829972号では、装置系のエラーレート、テープのエラーレートを分離して評価する方法も提案されている。
【0004】
高記録密度媒体で安定したエラーレートを維持するためには、高いSNRとPW50(パルスの半値幅)を低くする必要がある。高いSNRを得るためには、▲1▼高出力化、▲2▼低ノイズ化が考えられるが、▲1▼高出力化に関しては磁性層の平滑化が有効である。
磁性層を平滑にするために、平滑な面性を持つ支持体を使用すると一般的にコスト高になる。そこで、表面が粗い安価な支持体を用いて、該支持体の表面突起を、放射線照射により重合可能な化合物を含有する下塗り層で遮蔽して平滑化することで、コストを抑えかつ高記録密度媒体として性能を満足させることができる(例えば、特許文献1参照)。
また、▲2▼低ノイズ化に関しては、微粒子の磁性体を使用することが有効である。
一方、PW50を低くするためには、磁性層の厚み制御(薄層化)が効果的である。
【0005】
【特許文献1】
特公平5−57647号公報(第1頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、磁性体の微粒子化と磁性層の薄層化により磁性層の塗膜強度が劣化して、媒体の走行耐久性が悪化するという問題があった。
本発明は、上記従来技術の問題点を克服するためになされたものであり、高密度記録において安定したエラーレートと走行耐久性の両立化を低コストで実現できる磁気記録媒体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するたに鋭意検討した。その結果、放射線照射により重合可能な化合物を含有する下塗り層の厚みを適切化し、ガラス転移温度が100〜200℃の範囲にあるポリウレタン樹脂を含む結合剤を磁性層に含有させ、さらに微小な平均サイズを有する強磁性粉末を薄層の磁性層において使用することにより、安定したエラーレートと走行耐久性を低コストで実現する磁気記録媒体を得ることにはじめて成功し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の目的は、以下の磁気記録媒体により達成される。
非磁性支持体上に、放射線照射により重合可能な化合物を含有する下塗り層を設け、その上に強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を設けた磁気記録媒体であって、
前記下塗り層の厚みが0.1〜1μmで、前記磁性層に含まれる結合剤は、ガラス転移温度が100〜200℃であるポリウレタン樹脂を含み、前記磁性層の厚みが20〜150nmで、かつ前記強磁性粉末の平均サイズが20〜60nmであることを特徴とする磁気記録媒体。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の磁気記録媒体について、詳細に説明する。
[下塗り層]
本発明の磁気記録媒体において、非磁性支持体上に設ける下塗り層としては、放射線照射により重合可能な化合物を含有する。
この下塗り層に含有する、放射線照射により重合可能な化合物は、放射線によるエネルギーが与えられると重合乃至架橋して高分子化して硬化する性質を有する。そして、該化合物は、それらのエネルギーを与えない限り反応が進まない。そのため該化合物を含む塗布液は、放射線を照射しない限り粘度が安定しており、高い塗膜平滑性を得ることができる。また、放射線による高いエネルギーにより瞬時に反応が進むため、高い塗膜強度を得ることができる。
【0010】
これは、該化合物は数mPa・s〜200mPa・sと比較的低粘度であり、下塗り層を塗布した後のレベリング効果により支持体の突起を遮蔽し、平滑な支持体が形成されるためである。そして、その下塗り層上に磁性液を塗布することで塗膜表面の平滑性に優れた磁性層が得られ、ひいては安定したエラーレートが得られる磁気記録媒体を提供できたものと考えられる。特にこの効果は磁性層厚みが20nm〜150nmといった比較的薄い厚みのもので顕著であり、塗膜表面の平滑性のなかでも、近年の高記録密度化に伴い使用されているMRヘッドを用いた磁気記録においてノイズとなりやすい磁性層表面の微小突起を低減できる効果がある。
【0011】
この下塗り層に含有する、放射線照射により重合可能な化合物としては、特に限定されないが、特開昭60−133529号公報、特開昭61−13429号公報、特開昭60−150227号公報、特公平5−57647号公報、特開昭57−40747号公報、特開昭61−13430号公報等に記載のものや、特願2001−334528号明細書に記載の脂環式環状構造を有しかつ1分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有する化合物、特願2002−276088号明細書に記載の、環状エーテル骨格を有し、かつ分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有する化合物、又は環状構造及びエーテル基を有し、かつ分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有する化合物等が挙げられる。
上記の化合物の中でも、特に、特願2002−276088号明細書に記載の、環状エーテル骨格を有し、かつ分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有する化合物、又は環状構造及びエーテル基を有し、かつ分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有する化合物が好ましい。
【0012】
特願2002−276088号明細書に記載の、環状エーテル骨格を有し、かつ分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有する化合物、又は環状構造及びエーテル基を有し、かつ分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有する化合物は、環状構造を有するので、従来下塗り層に使用されていた脂肪族系化合物に比べて、下塗り層の弾性率を向上させることができ、下塗り層塗布後の工程において、ロール等への粘着故障が発生しないという利点もある。
更に、環状構造を有することにより、硬化収縮を低減できるため、支持体との密着性を向上させることができるという特徴もある。これにより、磁性層の脱落等の走行耐久性の低下を抑制することができる。
更に、本発明における下塗り層と支持体との密着性の高さは、上記化合物がエーテル基を有することにより、適度な伸性が付与されることにも起因すると考えられる。
また、上記化合物は、エステル基を含まないため、加水分解する等の保存性での問題が生じないという利点もある。
【0013】
上記化合物は、環状エーテル構造を有するジオール化合物や環状構造及びエーテル基を有するジオール化合物に、アクリル酸やメタクリル酸を反応させて得ることができる。
環状エーテル構造を有するジオール化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジオキシン、ジオキセン、ジオキソラン等の構造を有するジオール化合物を用いることができる。環状エ−テル構造を有するジオール化合物の具体例としては、テトラヒドロフランジメタノール、テトラヒドロピランジメタノール、1,3−ジオキサン−2−エタノール−5−エチル−5−ヒドロキシメチル−β,β−ジメチル、1,3−ジオキソラン−2−エタノール−5−エチル−5−ヒドロキシメチル−β,β−ジメチル、3,9ビス−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ−(5,5)−ウンデカン等が挙げられる。
【0014】
環状構造及びエ−テル基を有するジオール化合物としては、例えば、シクロヘキサン環、ビスフェノール、水素化ビスフェノール、ビフェニル、ビフェニルエーテル等の環構造を有するジオールを重縮合して得られるものや、前記の環状構造を有するジオールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を付加したもの等を用いることができる。環状構造を有するジオールの具体例としては、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールS、水素化ビスフェノールS、ビスフェノールF、水素化ビスフェノールF、ビスフェノールP、水素化ビスフェノールP、ジフェニルビスフェノールA、ジフェニルビスフェノールS、ジフェニルビスフェノールF、5,5’ −(1−メチルエチリデン)−ビス−(1、1’−ビシクロヘキシル)−2−オール、4,4’ −(1−メチルエチリデン)−ビス−2−メチルシクロヘキサノール、5,5’ −(1,1’ −シクロヘキシリデン)−ビス−(1,1’ −ビシクロヘキシル)−2−オール、5,5’ −(1,1’ −シクロヘキルメチレン)−ビス−(1,1’ −ビシクロヘキシル)−2−オール等が挙げられる。
【0015】
本発明において、環状エーテル骨格を有し、かつ分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有する化合物、又は環状構造及びエーテル基を有し、かつ分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有する化合物のエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドの付加数は、分子中に2〜6モルであることが好ましい。2モル以上であれば、支持体との密着力が良好であり、6モル以下であれば、得られる下塗り層の弾性率が高く、塗布工程で粘着故障が生じ難い。
【0016】
上記化合物に導入される放射線硬化官能基としては、アクリロイル基やメタクリロイル基を用いることができ、アクリロイル基を用いることが好ましい。前記放射線硬化官能基は、分子中に2個以上含まれる。特に、放射線硬化官能基が、分子中に2個含まれることが好ましい。
【0017】
上記化合物の分子量は、250〜1000であることが好ましく、更に好ましくは250〜500である。分子量が上記範囲内であれば、レベリング効果が高く、高い平滑性を有する磁気記録媒体を得ることができる。
【0018】
本発明において、環状エーテル骨格を有し、かつ分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有する化合物としては、B1−(A1)n−X1−(A1’)n’−B1’(式1)で示される化合物を用いることができる。
式1中、X1は、
【0019】
【化1】
【0020】
であり、
A1は、
【0021】
【化2】
【0022】
であり、
A1’は、
【0023】
【化3】
【0024】
であり、
B1は、
【0025】
【化4】
【0026】
であり
B1’は、
【0027】
【化5】
【0028】
であり、n及びn’は、それぞれ独立に0〜6であり、好ましくは0〜4である。n及びn’が6を超えると、下塗り層の弾性率が低くなり、塗布工程において粘着故障を起こし易い。
【0029】
式1で示される化合物としては、例えば、テトラヒドロフランジメタノールジアクリレート、テトラヒドロピランジメタノールジアクリレート、3,9−ビス−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ−(5,5)−ウンデカンジアクリレート、5−エチル−2−(2−ヒドロキシ−1,1’ −ジメチルエチル)−5−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサンジアクリレート、テトラヒドロフランジメタノールジメタクリレート、テトラヒドロピランジメタノールジメタクリレート、3,9−ビス−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ−(5,5)−ウンデカンジメタクリレート、5−エチル−2−(2−ヒドロキシ−1,1’ −ジメチルエチル)−5−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサンジメタクリレート及びこれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらの中で好ましいものは、5−エチル−2−(2−ヒドロキシ−1,1’ −ジメチルエチル)−5−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサンジアクリレート、テトラヒドロフランジメタノールジアクリレート、3,9−ビス−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ−(5,5)−ウンデカンジアクリレートである。
【0030】
本発明において、環状構造及びエーテル基を有し、かつ分子中に2個以上の放射線硬化官能基を有する化合物としては、B2−(A2)m−X2−(A2’)m’−B2’(式2)で示される化合物を用いることができる。
式2中、X2は、
【0031】
【化6】
【0032】
であり、
A2は、
【0033】
【化7】
【0034】
であり、
A2’は、
【0035】
【化8】
【0036】
であり、
B2は、
【0037】
【化9】
【0038】
であり
B2’は、
【0039】
【化10】
【0040】
であり、m及びm’は、それぞれ独立に2〜6であり、好ましくは2〜4である。m及びm’が2未満では、支持体との密着力が不足し、6を超えると、下塗り層の弾性率が低くなり、塗布工程において粘着故障を起こし易い。
【0041】
式2で示される化合物としては、例えば、シクロヘキサンジメタノ−ルエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジアクリレ−ト、水素化ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ヒドロキシビフェニルエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールSエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、水素化ビスフェノールSエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、水素化ビスフェノールFエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールPエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、水素化ビスフェノールPエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ジフェニルビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ジフェニルビスフェノールSエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ジフェニルビスフェノールFエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、5,5’ −(1−メチルエチリデン)−ビス−(1、1’−ビシクロヘキシル)−2−オールエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、4,4’ −(1−メチルエチリデン)ビス−2−メチルシクロヘキサノールエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、5,5’ −(1,1’ −シクロヘキシリデン)ビス−(1,1’ −ビシクロヘキシル)−2−オールエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、5,5’ −(1,1’ −シクロヘキルメチレン)ビス−(1,1’−ビシクロヘキシル)−2−オールエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、シクロヘキサンジメタノ−ルプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジアクリレ−ト、水素化ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、ヒドロキシビフェニルプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールSプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、水素化ビスフェノールSプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールFプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、水素化ビスフェノールFプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールPプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、水素化ビスフェノールPプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、ジフェニルビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、ジフェニルビスフェノールSプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、ジフェニルビスフェノールFプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、5,5’−(1−メチルエチリデン)−ビス−(1、1’−ビシクロヘキシル)−2−オールプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、4,4’ −(1−メチルエチリデン)−ビス−2−メチルシクロヘキサノールプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、5,5’ −(1,1’ −シクロヘキシリデン)−ビス−(1,1’ −ビシクロヘキシル)−2−オールプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、5,5’ −(1,1’ −シクロヘキルメチレン)−ビス−(1,1’ −ビシクロヘキシル)−2−オールプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、シクロヘキサンジメタノ−ルエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジメタクリレ−ト、水素化ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ヒドロキシビフェニルエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールSエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、水素化ビスフェノールSエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、水素化ビスフェノールFエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールPエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、水素化ビスフェノールPエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ジフェニルビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ジフェニルビスフェノールSエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ジフェニルビスフェノールFエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、5,5’ −(1−メチルエチリデン)−ビス−(1、1’−ビシクロヘキシル)2−オールエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、4,4’ −(1−メチルエチリデン)−ビス−2−メチルシクロヘキサノールエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、5,5’ −(1,1’ −シクロヘキシリデン)−ビス−(1,1’ −ビシクロヘキシル)−2−オールエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、5,5’ −(1,1’ −シクロヘキルメチレン)−ビス−(1,1’ −ビシクロヘキシル)−2−オールエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、シクロヘキサンジメタノ−ルプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレ−ト、水素化ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ヒドロキシビフェニルプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールSプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、水素化ビスフェノールSプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールFプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、水素化ビスフェノールFプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールPプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、水素化ビスフェノールPプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ジフェニルビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ジフェニルビスフェノールSプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ジフェニルビスフェノールFプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、5,5’ −(1−メチルエチリデン)−ビス−(1、1’−ビシクロヘキシル)−2−オールプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、4,4’ −(1−メチルエチリデン)−ビス−2−メチルシクロヘキサノールプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、5,5’ −(1,1’ −シクロヘキシリデン)−ビス−(1,1’ −ビシクロヘキシル)−2−オールプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、5,5’ −(1,1’ −シクロヘキルメチレン)−ビス−(1,1’ −ビシクロヘキシル)−2−オールプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレートが挙げられる。中でも好ましいものは、シクロヘキサンジメタノ−ルエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジアクリレ−ト、水素化ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ジヒドロキシビフェニルエチレンオキサイド付加物ジアクリレートである。
【0042】
式1又は式2で示される化合物は、環状エーテルを有するジオール化合物や、環状構造及びエーテル基を有するジオール化合物に、アクリル酸やメタクリル酸を反応させて得ることができる。両末端に導入する置換基は、アクリロイル基であることが好ましい。
【0043】
本発明では、下塗り層において、前記化合物のほかに1官能のアクリレ−ト、メタクリレ−ト化合物を反応性希釈剤として併用することができる。反応性希釈剤は、下塗り剤の物性や下塗り剤の硬化反応を調整する機能を有する。好ましい構造は脂環式炭化水素骨格をもつアクリレ−ト化合物である。具体的な例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、イソボニル(メタ)アクリレ−ト、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレ−トを挙げることができる。反応性希釈剤の配合量は、前記化合物100質量部に対して10質量部〜100質量部であることが好ましい。
【0044】
上記の化合物を含む下塗り剤は、必要により溶媒に溶解して用いることができる。下塗り剤の粘度は、25℃において5〜200mPa・sであることが好ましく、更に好ましくは5〜100mPa・sである。上記範囲内の粘度であれば、下塗り層を塗布した後のレベリング効果により、支持体の突起を遮断して、平滑な磁性層を得ることができる。溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール、エタノール、トルエン等が好ましい。
【0045】
下塗り剤は、支持体上に塗布、乾燥後に放射線照射され、硬化する。その下塗り層の硬化後のガラス転移温度Tgは、80〜150℃であることが好ましく、更に好ましくは100〜130℃である。80℃以上であれば、塗布工程で粘着故障を起こすことがなく、150℃以下であれば、塗膜強度が高く好ましい。
【0046】
上記下塗り層の厚みは、0.1〜1.0μmであることが好ましく、更に好ましくは0.3〜0.8μmである。0.1μm以上であれば、十分な平滑性を得ることができ、1.0μmであれば、塗膜が乾燥し易く、粘着故障を起こすことがない。
【0047】
後述の支持体上に塗布、乾燥された下塗り層には、放射線が照射され、前記化合物を硬化させる。
本発明において使用される放射線としては、電子線や紫外線を用いることができる。紫外線を使用する場合には、前記の化合物に光重合開始剤を添加することが必要となる。電子線硬化の場合は重合開始剤が不要であり、透過深さも深いので好ましい。
【0048】
電子線加速器としては、スキャニング方式、ダブルスキャニング方式又はカーテンビーム方式を採用することができる。好ましくは、比較的安価で大出力が得られるカーテンビーム方式である。電子線特性としては、加速電圧が30〜1000kVであることが好ましく、より好ましくは50〜300kVであり、吸収線量として0.5〜20Mradであることが好ましく、より好ましくは2〜10Mradである。加速電圧が30kV以上であれば十分なエネルギーの透過量が得られ、1000kV以下であれば重合に使われるエネルギーの効率が高く経済的である。電子線を照射する雰囲気は窒素パージにより酸素濃度を200ppm以下にすることが好ましい。酸素濃度が高いと表面近傍の架橋、硬化反応が阻害される。
【0049】
紫外線光源としては、水銀灯を用いることができる。水銀灯としては、例えば20〜240W/cmのランプを用いることができ、速度0.3m/分〜20m/分で使用することができる。基体と水銀灯との距離は一般に1〜30cmであることが好ましい。
紫外線硬化に用いる光重合開始剤として、光ラジカル重合開始剤を用いることができる。詳細は例えば「新高分子実験学第2巻 第6章 光・放射線重合」(共立出版1995発行、高分子学会編)に記載されている。具体例としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルメチルケタール、ベンジルエチルケタール、ベンゾインイソブチルケトン、ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−2−ジエトキシアセトフェノンなどが挙げられる。芳香族ケトンの混合比率は、放射線硬化化合物100質量部に対し0.5〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜15質量部、さらに好ましくは3〜10質量部である。
放射線硬化装置、条件などについては、「UV・EB硬化技術」(株)総合技術センタ−発行)や「低エネルギー電子線照射の応用技術」(2000、(株)シーエムシー発行)などに記載されている公知のものを用いることができる。
【0050】
本発明の磁気記録媒体は、上記下塗り層を設けることにより、原子間力顕微鏡(AFM)によって測定される高さが10〜20nmである突起数が、後述の磁性層表面100μm2当たり5〜1000個に制御することができる。
原子間力顕微鏡(AFM)で測定される高さとは、原子間力顕微鏡にて求められる中心面(平面と磁性層表面の粗さ曲面で囲まれた体積が平面に対し上下で等しくかつ最小になる平面)を基準面とした高さと定義する。
従って、磁性層表面100μm2当たりの高さが10〜20nmの突起数(以下、PNとも記す)とは、この基準面以上の高さが10〜20nmである突起の10μm角当りの総数で突起密度を示す。PNは5〜100個/100μm2であることが更に好ましい。このPNが5以上であれば、摩擦係数が低く、1000個以下であれば、出力が高く、ドロップアウト(DO)個数も少なくなる傾向がある。
【0051】
本発明の磁気記録媒体は、上記下塗り層を形成し、次いで、下塗り層上に非磁性下層または磁性下層を形成した後に磁性層を形成するか、あるいは下塗り層上に直接に磁性層を形成して作製される。下塗り層は支持体の少なくとも一方に設けられ、両方に設けることもできる。非磁性層、磁性下層、あるいは磁性層は、非磁性粉末、磁性粉末を結合剤中に分散した組成物を塗布することによって形成される。
【0052】
[磁性層]
<Tg100〜200℃のポリウレタン樹脂>
本発明の磁気記録媒体は、少なくとも磁性層で用いられる結合剤が、Tgが100〜200℃であるポリウレタン樹脂を含む。
【0053】
本発明において、少なくとも磁性層において高いTgを有するポリウレタン樹脂を含む結合剤が用いられると、記録再生ヘッドと磁性層表面との摺動により発生する摩擦熱による磁性層の塑性流動が抑制され、良好な塗膜強度が得られ、優れた走行耐久性を達成することができる。特に、その効果は磁性層が薄層である場合に顕著である。さらに、後述の非磁性層で上記ポリウレタン樹脂を含む結合剤を使用すれば、高い塗膜強度が得られ、ドライブ内でテープを走行させた時に、規制ガイドとの摺動によるテープのエッジ削れを防止できるため好ましい。
【0054】
本発明において結合剤に含まれるポリウレタン樹脂のTgは、100〜200℃の範囲であり、好ましくは120〜170℃の範囲である。Tgが100℃以上であれば、塗膜強度が低下することなく、良好な走行耐久性を得ることができる。また、Tgが200℃以下であれば、カレンダ処理時の平滑化効果が得られ、良好な電磁変換特性及び走行耐久性が得られる。
【0055】
前記ポリウレタン樹脂は、ウレタン基濃度が2.5〜6.0mmol/gの範囲であることが好ましく、3.0〜4.5mmol/gであることがさらに好ましい。ウレタン基濃度が2.5mmol/g以上であると、塗膜のTgが高く良好な耐久性を得ることができ、6.0mmol/g以下であると、溶剤溶解性が高いため分散性が良好である。ウレタン基濃度が過度に高いと必然的にポリオールを含有することができなくなるため、分子量コントロールが困難になる等、合成上好ましくない。
【0056】
前記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、30,000〜200,000の範囲であることが好ましく、50,000〜100,000の範囲であることがさらに好ましい。分子量が30,000以上であると、塗膜強度が高く良好な耐久性を得ることができ、200,000以下であると溶剤溶解性が高く分散性が良好である。
【0057】
前記ポリウレタン樹脂の極性基としては、−SO3M、−OSO3M、−PO3M2、−COOMが好ましく、−SO3M、−OSO3M(但し、Mは水素原子、アルカリ金属、アンモニウムから選ばれる)であることがさらに好ましい。極性基の含有量は、1×10−5〜2×10−4eq/gであることが好ましい。1×10−5eq/g以上であると、強磁性粉末や非磁性粉末への吸着性が高く分散性が良好である。一方、2×10−4eq/g以下であると、溶剤溶解性が高く、分散性が良好である。
【0058】
前記ポリウレタン樹脂中のOH基含有量は、1分子当たり2〜20個であることが好ましく、1分子当たり3〜15個であることがさらに好ましい。1分子当たり2個以上のOH基を含むことにより、イソシアネート硬化剤と良好に反応するため、塗膜強度が高く、良好な耐久性を得ることができる。一方、1分子当たり15個以下のOH基を含むと、溶剤溶解性が高く分散性が良好である。OH基を付与するために用いる化合物としては、OH基が3官能以上の化合物、例えばトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、無水トリメリット酸、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、3官能以上OH基を持つ分岐ポリエステル又はポリエーテルエステルを用いることができる。これらのなかでも、3官能のものが好ましい。4官能以上になると硬化剤との反応が速くなりすぎポットライフが短くなる。
【0059】
本発明において結合剤に含まれるポリウレタン樹脂のポリオール成分としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリオレフィンポリオールやダイマージオール等の環構造及び長鎖アルキル鎖を有するジオール化合物等の公知のポリオールを用いることができる。
上記ポリオールの分子量は500〜2000程度が好ましい。分子量が上記範囲内であると、実質的にジイソシアネートの重量比を増やすことができるため、ウレタン結合が増えて分子間の相互作用が強まり、ガラス転移温度が高く、力学強度の高い塗膜を得ることができる。
【0060】
上記ジオール成分は、環状構造及び長鎖アルキル鎖を有するジオール化合物であることが好ましい。ここで、長鎖アルキル鎖とは、炭素数2〜18のアルキル基をいう。環状構造及び長鎖アルキル鎖を有すると、屈曲した構造を有するため、溶剤への溶解性に優れる。これにより、塗布液中で磁性体又は非磁性体表面に吸着したウレタン分子鎖の広がりを大きくできるので、分散安定性を向上させる作用があり、優れた電磁変換特性(SNR)を得ることができる。また、環状構造を有することにより、ガラス転移温度が高いポリウレタンを得ることができる。
環状構造及び長鎖アルキル鎖を有するジオール化合物は、下式で示されるジオール化合物が特に好ましい。
【0061】
【化11】
【0062】
式中、Zは、シクロヘキサン環、ベンゼン環及びナフタレン環から選ばれる環状構造であり、R1及びR2は炭素数1〜18のアルキレン基であり、R3及びR4は炭素数2〜18のアルキル基である。
【0063】
上記ジオール成分は、ポリウレタン樹脂中に10〜50wt%含まれることが好ましく、15〜40wt%含まれることがさらに好ましい。10wt%以上であると、溶剤溶解性が高く分散性が良好であり、50wt%以下であると、Tgが高く優れた耐久性を有する塗膜が得られる。
【0064】
上記ポリウレタン樹脂には、鎖延長剤として上記ジオール成分以外のジオール成分を併用することもできる。ジオール成分の分子量が大きくなると、必然的にジイソシアネート含有量が少なくなるため、ポリウレタン中のウレタン結合が少なくなり、塗膜強度に劣る。よって、十分な塗膜強度を得るためには、併用される鎖延長剤は、分子量500未満、好ましくは300以下である低分子量ジオールであることが好ましい。
【0065】
具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、、ネオペンチルグリコール(NPG)、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、シクロヘキサンジオール(CHD)、水素化ビスフェノールA(H−BPA)等の脂環族グリコール及びこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールA(BPA)、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールF等の芳香族グリコール及びこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物を用いることができる。特に好ましいものは水素化ビスフェノールAである。
【0066】
上記ポリウレタン樹脂に用いるジイソシアネートとしては、公知のものを用いることができる。具体的には、TDI(トリレンジイソシアネート)、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、p−フェニレンジイソシアネート、o−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が好ましい。
【0067】
本発明において、上記ポリウレタン樹脂は、塩化ビニル系の合成樹脂と併用してもよい。併用することができる塩化ビニル系樹脂の重合度は200〜600が好ましく、250〜450が特に好ましい。塩化ビニル系樹脂はビニル系モノマー、例えば酢酸ビニル、ビニルアルコール、塩化ビニリデン、アクリロニトリルなどを共重合させたものでもよい。
【0068】
上記ポリウレタン樹脂は、上記塩化ビニル系樹脂の他、さらに各種の合成樹脂と併用できる。そのような合成樹脂としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ニトロセルロース樹脂などのセルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂等を挙げることができる。これらは、単独でも組み合わせでも使用することができる。
【0069】
上記ポリウレタン樹脂と上記合成樹脂とを併用する場合、磁性層に含まれるポリウレタン樹脂は、結合剤中に10〜90質量%含有されていることが好ましく、20〜80質量%含有されることがさらに好ましく、25〜60質量%含有されることが特に好ましい。また塩化ビニル系樹脂は、結合剤中に10〜80質量%含有されていることが好ましく、20〜70質量%含有されていることがさらに好ましく、30〜60質量%含有されていることが特に好ましい。
【0070】
また、本発明の結合剤とともに、ポリイソシアネート化合物等の硬化剤を使用することができる。ポリイソシアネート化合物の例としては、トリレンジイソシアネート3モルとトリメチロールプロパン1モルとの反応性生物(例、デスモジュールL−75(バイエル社製))、キシリレンジイソシアネートあるいはヘキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネート3モルとトリメチロールプロパン1モルとの反応生成物、ヘキサメチレンジイソシアネート3モルとのビューレット付加化合物、トリレンジイソシアネート5モルのイソシアヌレート化合物、トリレンジイソシアネート3モルとヘキサメチレンジイソシアネート2モルのイソシアヌレート付加化合物、イソホロンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネートのポリマーを挙げることができる。
【0071】
磁性層に含まれるポリイソシアネート化合物は、結合剤中に10〜50質量%の範囲で含有されていることが好ましく、さらに好ましくは20〜40質量%の範囲である。また、電子線照射による硬化処理を行う場合には、ウレタンアクリレート等のような反応性二重結合を有する化合物を使用できる。樹脂成分と硬化剤との合計(すなわち結合剤)の重量は、強磁性粉末100重量部に対して、通常15〜40重量部の範囲内にあることが好ましく、さらに好ましくは20〜30重量部である。
【0072】
<強磁性粉末>
本発明において、磁性層で用いられる強磁性粉末の平均サイズは20〜60nmである。本発明では、安定したエラーレートを得るために、より高いSNRが得られる平均サイズは20〜60nm、好ましくは20〜50nm、さらに好ましくは20〜45nmの微小な強磁性粉末が用いられる。
【0073】
本発明において、磁性層で用いられる強磁性粉末は、20〜60nmの平均サイズを有する強磁性粉末であればその種類は特に限定されない。本発明で使用可能な強磁性粉末としては、例えば、20〜60nmの平均長軸長を有する強磁性金属粉末、又は20〜60nmの平均板径を有する六方晶系フェライト強磁性粉末が挙げられる。
【0074】
(強磁性金属粉末)
本発明において磁性層で用いられる強磁性金属粉末は、SBET比表面積が40〜80m2/g 、好ましくは50〜70m2/gであるコバルト含有強磁性酸化鉄又は強磁性合金粉末であることが好ましい。結晶子サイズは12〜25nm、好ましくは13〜22nmであり、特に好ましくは14〜20nmである。平均長軸長は20〜60nmであり、好ましくは20〜50nmであり、特に好ましくは20〜45nmであることが適当である。強磁性粉末としては、イットリウムを含むFe、Fe−Co、Fe−Ni、Co−Ni−Feが挙げられ、強磁性粉末中のイットリウム含有量は、鉄原子に対してイットリウム原子の比、Y/Feが0.5原子%〜20原子%が好ましく、さらに好ましくは、5〜10原子%であることが適当である。0.5原子%以上であると、強磁性粉末の高飽和磁化(σS)化が可能となり磁気特性が向上し、良好な電磁変換特性を得ることができる。20原子%以下であると、鉄の含有量が適当であり磁気特性が良好であり、電磁変換特性が向上する。さらに、鉄100原子%に対して20原子%以下の範囲内で、アルミニウム、ケイ素、硫黄、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、銅、亜鉛、モリブデン、ロジウム、パラジウム、錫、アンチモン、ホウ素、バリウム、タンタル、タングステン、レニウム、金、鉛、リン、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、テルル、ビスマス等を含むことができる。また、強磁性金属粉末が少量の水、水酸化物または酸化物を含むものなどであってもよい。
【0075】
本発明において使用可能なコバルト、イットリウムを導入した強磁性粉末の製造方法の一例を示す。第一鉄塩とアルカリを混合した水性懸濁液に、酸化性気体を吹き込むことによって得られるオキシ水酸化鉄を出発原料とする例を挙げることができる。このオキシ水酸化鉄の種類としては、α−FeOOHが好ましく、その製法としては、第一鉄塩を水酸化アルカリで中和してFe(OH)2の水性懸濁液とし、この懸濁液に酸化性ガスを吹き込んで針状のα−FeOOHとする第一の製法がある。一方、第一鉄塩を炭酸アルカリで中和してFeCO3の水性懸濁液とし、この懸濁液に酸化性気体を吹き込んで紡錘状のα−FeOOHとする第二の製法がある。このようなオキシ水酸化鉄は第一鉄塩水溶液とアルカリ水溶液とを反応させて水酸化第一鉄を含有する水溶液を得て、これを空気酸化等により酸化して得られたものであることが好ましい。この際、第一鉄塩水溶液にNi塩や、Ca塩、Ba塩、Sr塩等のアルカリ土類元素の塩、Cr塩、Zn塩などを共存させてもよく、このような塩を適宣選択して用いることによって粒子形状(軸比)などを調製することができる。
【0076】
第一鉄塩としては、塩化第一鉄、硫酸第一鉄等が好ましい。またアルカリとしては水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等が好ましい。また、共存させることができる塩としては、塩化ニッケル、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化クロム、塩化亜鉛等の塩化物が好ましい。次いで、鉄にコバルトを導入する場合は、イットリウムを導入する前に、硫酸コバルト、塩化コバルト等のコバルト化合物の水溶液を前記のオキシ水酸化鉄のスラリーに撹拌混合する。コバルトを含有するオキシ水酸化鉄のスラリーを調製した後、このスラリーにイットリウムの化合物を含有する水溶液を添加し、撹拌混合することによって導入することができる。
【0077】
本発明の強磁性粉末には、イットリウム以外にもネオジム、サマリウム、プラセオジウム、ランタン等を導入することができる。これらは、塩化イットリウム、塩化ネオジム、塩化サマリウム、塩化プラセオジウム、塩化ランタン等の塩化物、硝酸ネオジム、硝酸ガドリニウム等の硝酸塩などを用いて導入することができ、これらは、二種以上を併用しても良い。強磁性粉末の形状に特に制限はないが、通常は針状、粒状、サイコロ状、米粒状及び板状のものなどが使用される。特に針状の強磁性粉末を使用することが好ましい。
【0078】
上記の樹脂成分、硬化剤及び強磁性粉末を、通常磁性塗料の調製の際に使用されているメチルエチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル等の溶剤と共に混練分散して磁性塗料とする。混練分散は通常の方法に従って行うことができる。なお、磁性塗料中には、上記成分以外に、α−Al2O3、Cr2O3等の研磨材、カーボンブラック等の帯電防止剤、脂肪酸、脂肪酸エステル、シリコーンオイル等の潤滑剤、分散剤など通常使用されている添加剤あるいは充填剤を含むものであってもよい。
【0079】
(六方晶系フェライト強磁性粉末)
本発明において磁性層に含まれる六方晶系フェライトとしては、例えば、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライトの各置換体、Co置換体等を挙げることができる。具体的にはマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネトプランバイト型フェライト、更に一部スピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等が挙げられる。その他、所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。一般にはCo−Zn、Co−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Nb−Zn−Co、Sb−Zn−Co、Nb−Zn等の元素を添加したものを使用することができる。原料・製法によっては特有の不純物を含有するものもある。
【0080】
本発明で使用可能な六方晶系フェライト粉末の平均板径は、記録密度によって異なるが、通常、20〜60nmであり、20〜50nmであることが好ましく、20〜35nmであることが特に好ましい。ここで板径とは、六方晶系フェライト磁性粉の六角柱底面の六角径の最大径を意味し、平均板径とはその算術平均である。特にトラック密度を上げるため、磁気抵抗ヘッドで再生する場合は、低ノイズにする必要があり、板径は35nm以下であることが好ましいが、20〜60nmの範囲であれば、熱揺らぎの影響を受けない安定な磁化が望め、かつ、ノイズを抑えることができるため、高密度磁気記録に好適となる。板状比(板径/板厚)は1〜15であることが望ましく、1〜7であることが好ましい。板状比が1以上であれば、磁性層中の高充填性を維持しつつ、充分な配向性が得られる。また板状比が15以下であれば、粒子間のスタッキングによる影響を受け難くなり、ノイズが大きくなることもない。
【0081】
上記粒子サイズ範囲のBET法による比表面積は30〜200m2/gであることが適当である。比表面積は、概ね粒子板径と板厚からの算術計算値と符号する。粒子板径・板厚の分布は、通常、狭いほど好ましい。数値化は困難であるが粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定することで比較できる。分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すとσ/平均サイズ=0.1〜2.0である。粒子サイズ分布をシャープにするには粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。例えば、酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。
【0082】
六方晶系フェライト強磁性粉末で測定される抗磁力(Hc)は、特に限定されないが、119〜239kA/m(1500〜3000Oe)程度の範囲が好ましい。抗磁力(Hc)は高い方が高密度記録に有利であるが、記録ヘッドの能力で制限される。抗磁力(Hc)は粒子サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。六方晶系フェライト強磁性粉末の飽和磁化(σs)は、30〜80A・m2/kgであることが適当であり、40〜70A・m2/kgであることが好ましい。微粒子になるほど小さくなる傾向がある。製法では結晶化温度又は熱処理温度時間を小さくする方法、添加する化合物を増量する、表面処理量を多くする方法等がある。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。磁性体を分散する際に磁性体粒子表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することも行われている。
【0083】
表面処理剤は、無機化合物、有機化合物が使用される。主な化合物としてはSi、Al、P、等の酸化物又は水酸化物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。添加量は磁性体に対して0.1〜10%である。磁性体のpHも分散に重要である。通常4〜12程度で分散媒、ポリマーにより最適値があるが、媒体の化学的安定性、保存性から6〜11程度が選択される。磁性体に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが、通常0.01〜2.0%の範囲が選ばれる。
【0084】
六方晶フェライトの製法としては、▲1▼酸化バリウム、酸化鉄、鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得るガラス結晶化法、▲2▼バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後、100℃以上で液相加熱し、洗浄、乾燥及び粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る水熱反応法、▲3▼バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後乾燥し1100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る共沈法等があるが、本発明は製法を選ばない。
【0085】
<磁性層の厚み及び抗磁力Hc>
本発明において、磁性層の厚みは20〜150nmである。磁性層の厚みは、好ましくは20〜100nmであり、さらに好ましくは20〜50nmである。
磁性層の厚みが150nm以下であれば、PW50(パルスの半値幅)の値を低くすることができ、高密度記録時に安定したエラーレートが得られるため好ましい。その他、高いSNRを得ることができ、安定したエラーレートが得られる。
【0086】
本発明において、磁性層の長手方向又は面内方向の抗磁力(Hc)の値は、特に限定されないが、自己減磁損失を減少させ、高密度記録を達成するために、159〜239kA/m(2000〜3000 Oe)であることが適当である。抗磁力(Hc)の値が159kA/m以上であれば、良好な高密度記録を達成できる。一方、抗磁力(Hc)の値は、高いほど高密度記録時に高SNRが得られるため好ましいが、余りに高すぎると消去率が低下することから、本発明では磁性層の長手方向又は面内方向のHcの上限値を239kA/mとすることが適当である。抗磁力(Hc)の値は、好ましくは175〜207kA/m(2200〜2600 Oe)の範囲であり、さらに好ましくは183〜199kA/m(2300〜2500 Oe)の範囲である。
【0087】
なお、本明細書において、磁性層の長手方向とは、テープ状磁気記録媒体の走行方向と一致する方向であり、幅方向と垂直関係にある方向をいう。また、本明細書において磁性層の面内方向とは、ディスク状磁気記録媒体における走行方向と幅方向で形成される面をいう。
【0088】
本発明において、磁性層の長手方向又は面内方向における上記抗磁力(Hc)を実現するために、本発明では、例えば、平均サイズが20〜60nmの微小な強磁性粉末であって、飽和磁化(σs)が110〜155Am2 /kgであり、強磁性粉末の抗磁力(Hc)が159kA/m以上である強磁性粉末を使用することが適当である。
【0089】
次に、本発明において上記の結合剤、強磁性粉末とともに磁性層に含有させることのできる添加物について説明する。
<カーボンブラック>
本発明において、磁性層で使用されるカーボンブラックとしては、ゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を挙げることができる。比表面積は5〜500m2/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、平均粒子径は5〜300nm、pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/ml、が好ましい。具体的には、WO98/35345に記載のもが挙げられる。
【0090】
カーボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。したがって、本発明が多層構成の場合には、各層でその種類、量、組み合わせを変え、粒子径、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきものである。
【0091】
<研磨剤>
本発明において、磁性層に研磨剤を含有させることができる。研磨剤としてはα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイヤモンド、窒化珪素、炭化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素など、主としてモース硬度6以上の公知の材料が単独又は組み合わせで使用される。また、これらの研磨剤どうしの複合体(研磨剤を他の研磨剤で表面処理したもの)を使用してもよい。
【0092】
本発明において研磨剤は、主成分以外の化合物又は元素を含む場合もあるが、主成分が90%以上であれば効果に変わりはない。これら研磨剤の平均粒子径は、0.01〜2μmであることが好ましく、特に電磁変換特性(SNR)を高めるためには、その粒度分布が狭い方が好ましい。また耐久性を向上させるには、必要に応じて粒子径の異なる研磨剤を組み合わせ、あるいは単独の研磨剤でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることも可能である。
【0093】
研磨剤のタップ密度は、0.3〜2g/ml、含水率は0.1〜5%、pHは2〜11、比表面積は1〜30m2/gであることが好ましい。本発明に用いられる研磨剤の形状は、針状、球状及びサイコロ状のいずれでもよいが、形状の一部に角を有するものが、研磨性が高くて好ましい。具体的には、WO98/35345に記載のものが挙げられ、中でもダイヤモンドを同記載のごとく用いると、走行耐久性及び電磁変換特性の改善に有効である。磁性層に添加する研磨剤の粒径、量は、むろん最適値に設定すべきものである。
【0094】
<その他の添加剤>
本発明において磁性層に添加できるその他の添加剤としては、潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果などを有するものが挙げられ、これらを組み合わせることにより総合的な性能向上を図ることができる。潤滑効果を示すものとしては、物質表面同士の摩擦により生じる凝着に著しい作用を示す潤滑剤が使用される。潤滑剤には2つの型のものがある。磁気記録媒体に使用される潤滑剤は、完全に流体潤滑か境界潤滑であるか判定することはできないが、一般的概念で分類すれば流体潤滑を示す高級脂肪酸エステル、流動パラフィン、シリコーン誘導体などや境界潤滑を示す長鎖脂肪酸、フッ素系界面活性剤、含フッ素系高分子などに分類される。塗布型媒体では、潤滑剤は結合剤に溶解した状態、また一部は強磁性粉末表面に吸着した状態で存在するものであり、磁性層表面に潤滑剤が移行してくるが、その移行速度は結合剤と潤滑剤との相溶性の良否によって決まる。結合剤と潤滑剤との相溶性が高いときは移行速度が小さく、相溶性の低いときには早くなる。相溶性の良否に対する一つの考え方として、両者の溶解パラメーターの比較がある。流体潤滑には非極性潤滑剤が有効であり、境界潤滑には極性潤滑剤が有効である。
【0095】
本発明において、これら特性の異なる流体潤滑を示す高級脂肪酸エステルと境界潤滑を示す長鎖脂肪酸とを組み合わせることが好ましく、少なくとも3種組み合わせることがさらに好ましい。これらに組み合わせて固体潤滑剤を使用することもできる。
固体潤滑剤としては例えば二硫化モリブデン、二硫化タングステングラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛などが使用される。境界潤滑を示す長鎖脂肪酸としては、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、及びこれらの金属塩(Li、Na、K、Cuなど)が挙げられる。フッ素系界面活性剤、含フッ素系高分子としてはフッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、フッ素含有アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩などが挙げられる。流体潤滑を示す高級脂肪酸エステルとしては、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)と炭素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコールのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)とからなるモノ脂肪酸エステル、ジ脂肪酸エステル又はトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエーテルの脂肪酸エステルなどが挙げられる。また流動パラフィン、そしてシリコーン誘導体としてジアルキルポリシロキサン(アルキルは炭素数1〜5個)、ジアルコキシポリシロキサン(アルコキシは炭素数1〜4個)、モノアルキルモノアルコキシポリシロキサン(アルキルは炭素数1〜5個、アルコキシは炭素数1〜4個)、フェニルポリシロキサン、フロロアルキルポリシロキサン(アルキルは炭素数1〜5個)などのシリコーンオイル、極性基をもつシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーンなどが挙げられる。
【0096】
その他の潤滑剤として炭素数12〜22の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコール(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、炭素数12〜22のアルコキシアルコール(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、フッ素含有アルコールなどのアルコール、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレングリコール、ポリエチレンオキシドワックスなどのポリグリコール、アルキル燐酸エステル及びそのアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、ポリフェニルエーテル、炭素数8〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミンなどが挙げられる。
【0097】
帯電防止効果、分散効果、可塑効果などを示すものとして、フェニルホスホン酸、具体的には、日産化学(株)社の「PPA」など、αナフチル燐酸、フェニル燐酸、ジフェニル燐酸、p−エチルベンゼンホスホン酸、フェニルホスフィン酸、アミノキノン類、各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、フッ素含有アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、などが使用できる。
【0098】
本発明において使用される潤滑剤は、特に脂肪酸と脂肪酸エステルであることが好ましく、具体的にはWO98/35345に記載のものが挙げられる。これらに加えて別異の潤滑剤、添加剤も組み合わせて使用することができる。
【0099】
また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加体、等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウム又はスルホニウム類等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルフォン酸、燐酸、硫酸エステル基、燐酸エステル基などの酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸又は燐酸エステル類、アルキルベダイン型、等の両性界面活性剤等も使用できる。
これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
本発明は、脂肪酸エステルとしてWO98/35345に記載のようにモノエステルとジエステルを組み合わせて使用することも好ましい。
【0100】
本発明において、磁性層での潤滑剤の含有量は、強磁性粉末100質量部に対し5〜30質量部であることが好ましい。
【0101】
本発明で使用されるこれらの潤滑剤、界面活性剤は個々に異なる物理的作用を有するものであり、その種類、量及び相乗的効果を生み出す潤滑剤の併用比率は、目的に応じ最適に定められるべきものである。非磁性層、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い表面への滲み出しを制御する、沸点、融点や極性の異なるエステル類を用い表面への滲み出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を中間層で多くして潤滑効果を向上させるなど考えられ、無論ここに示した例のみに限られるものではない。一般には潤滑剤の総量として磁性粉末または非磁性粉末100質量部に対し、0.1〜50質量部、好ましくは2〜25質量部の範囲で選択される。
【0102】
また本発明で用いられる添加剤のすべて又はその一部は、磁性塗料製造のどの工程で添加してもかまわない、例えば、混練工程前に磁性体と混合する場合、磁性体と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。また、目的に応じて磁性層を塗布した後、同時または逐次塗布で、添加剤の一部または全部を塗布することにより目的が達成される場合がある。また、目的によってはカレンダ処理した後、またはスリット終了後、磁性層表面に潤滑剤を塗布することもできる。
【0103】
[非磁性層]
本発明の磁気記録媒体は、前記磁性層の下層として非磁性層を有することができる。以下に非磁性層について詳細に説明する。
本発明における非磁性層は、実質的に非磁性であればその効果を発揮するものであり、たとえば不純物として、或いは意図的に少量の磁性粉を含んでも、本発明の効果を示すものである限り、本発明と実質的に同一の構成と見なすことができることは言うまでもない。
ここで、実質的に非磁性層とは、非磁性層の残留磁束密度が10T・m以下又は抗磁力(Hc)が8kA/m(100 Oe)以下であることを示し、好ましくは残留磁束密度と抗磁力をもたないことを示す。また、非磁性層に磁性粉を含む場合は、非磁性層の全無機粉末の1/2未満含むことが好ましい。さらに下層として、非磁性層に代えて軟磁性粉末と結合剤を含む軟磁性層を形成してもよい。軟磁性層の厚みは非磁性層と同様である。
【0104】
本発明において非磁性層は、非磁性無機粉末と結合剤とを主体とするものが好ましい。非磁性層に用いられる非磁性無機粉末としては、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、等の無機質化合物から選択することができる。無機化合物としては例えばα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ヘマタイト、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカ−バイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどが単独又は組み合わせで使用される。特に好ましいのは、粒度分布の小ささ、機能付与の手段が多いこと等から、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、さらに好ましいのは二酸化チタン、α酸化鉄である。
【0105】
上記の非磁性無機粉末の平均粒子径は5〜200nmであることが好ましい。また、必要に応じて平均粒子径の異なる非磁性無機粉末を組み合わせることができ、さらに単独の非磁性無機粉末であっても粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましいのは非磁性無機粉末の平均粒子径は10〜200nmである。特に、非磁性無機粉末が粒状金属酸化物である場合は、平均粒子径80nm以下であることが好ましく、針状金属酸化物である場合には、平均長軸長が300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがさらに好ましい。
【0106】
タップ密度は、通常、0.05〜2g/ml、好ましくは0.2〜1.5g/mlである。非磁性無機粉末の含水率は通常、0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%、さらに好ましくは0.3〜1.5質量%である。非磁性無機粉末のpHは通常、2〜11であるが、pHは5.5〜10の間が特に好ましい。非磁性無機粉末の比表面積は通常、1〜100m2/gであり、5〜80m2/gであることが好ましく、10〜70m2/gであることがさらに好ましい。非磁性無機粉末の結晶子サイズは、0.004〜1μmであることが好ましく、0.04〜0.1μmであることがさらに好ましい。DBP(ジブチルフタレート)を用いた吸油量は通常、5〜100ml/100gであり、10〜80ml/100gであることが好ましく、20〜60ml/100gであることがさらに好ましい。比重は、通常、1〜12であり、3〜6であることがさらに好ましい。形状は、針状、球状、多面体状、板状のいずれであってもよい。モース硬度は、4〜10であることが好ましい。非磁性無機粉末のSA(ステアリン酸)吸着量は、1〜20μmol/m2であり、2〜15μmol/m2、であることがより好ましく、3〜8μmol/m2であることがさらに好ましい。pHは、3〜6の間にあることが好ましい。
【0107】
これらの非磁性無機粉末の表面には、表面処理によりAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb2O3、ZnO、Y2O3が存在することが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2であるが、さらに好ましいのはAl2O3、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせて使用してもよいし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナを存在させた後にその表層にシリカを存在させる方法、又はその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
本発明の下層に用いられる非磁性無機粉末の具体的な例及び製造法としては、WO98/35345に記載のものが例示される。
【0108】
非磁性層にはさらに目的に応じて、有機質粉末を添加することもできる。例えば、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられる。また、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。その製法は特開昭62−18564号公報、特開昭60−255827号公報に記されているようなものが使用できる。
【0109】
非磁性層の結合剤、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法、含有量その他は、上記の磁性層のそれが適用できる。特に、結合剤の量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
【0110】
[非磁性支持体]
本発明の磁気記録媒体に用いられる支持体は、非磁性可撓性支持体であることが好ましく、支持体の面内各方向に対し、100℃30分での熱収縮率は、3%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましい。80℃30分での熱収縮率は、1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。さらに前記支持体の100℃30分での熱収縮率及び80℃30分での熱収縮率が前記支持体の面内各方向に対し、10%以内の差で等しいことが好ましい。支持体は非磁性であることが好ましい。
これら支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、芳香族又は脂肪族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、ポリアラミド、ポリベンゾオキサゾールなどの公知のフィルムが使用できる。ポリエチレンナフタレート、ポリアミドなどの高強度支持体を用いることが好ましい。また必要に応じて、磁性層面と支持体のベース面での表面粗さを変えることができ、例えば、特開平3−224127号公報に示されるような積層タイプの支持体を用いることもできる。これらの支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理などを行ってもよい。また本発明の支持体としてアルミニウム又はガラス基板を適用することも可能である。
【0111】
好ましくは、支持体としてWYKO社製HD−2000型を用いて測定した中心面平均表面粗さRaは4.0nm以下、好ましくは2.0nm以下のものを使用することである。これらの支持体は単に中心面平均表面粗さが小さいだけではなく、0.5μm以上の粗大突起がないことが好ましい。また表面の粗さ形状は必要に応じて支持体に添加されるフィラーの大きさと量により自由にコントロールされるものである。これらのフィラーとしては一例としてはCa、Si、Tiなどの酸化物や炭酸塩の他、アクリル系などの有機粉末が挙げられる。支持体の最大高さRmaxは1μm以下、十点平均粗さRzは0.5μm以下、中心面山高さRpは0.5μm以下、中心面谷深さRvは0.5μm以下、中心面面積率Srは10〜90%、平均波長λaは5〜300μmが好ましい。所望の電磁変換特性と耐久性を得るため、これら支持体の表面突起分布をフィラーにより任意にコントロールできるものであり、0.01〜1μmの大きさのもの各々を0.1mm2当り0〜2000個の範囲でコントロールすることができる。
【0112】
本発明に用いられる支持体のF−5値は、49〜490MPa(5〜50kg/mm2)であることが好ましい。破断強度は、49〜980MPa(5〜100kg/mm2)であることが好ましい。また弾性率は、980〜19600MPa(100〜2000kg/mm2)であることが好ましい。温度膨張係数は10−4〜10−8/℃であり、10−5〜10−6/℃であることが好ましい。湿度膨張係数は10−4/RH%以下であり、好ましくは10−5/RH%以下である。これらの熱特性、寸法特性、機械強度特性は、支持体の面内各方向に対し10%以内の差でほぼ等しいことが好ましい。
【0113】
[バックコート層]
本発明の磁気記録媒体は、必要に応じて磁性層を有する面とは反対側の非磁性支持体上の面にバックコート層を設けることもできる。磁気ディスクでもバックコート層を設けることはできるが、一般に、コンピューターデータ記録用の磁気テープは、ビデオテープ、オーディオテープに比較して、繰り返し走行性が強く要求される。このような高い走行耐久性を維持させるために、バックコート層には、カーボンブラックと無機粉末が含有されていることが好ましい。
【0114】
バックコート層で使用するカーボンブラックは、平均粒子径の異なる二種類のものを組み合わせて使用することが好ましい。この場合、平均粒子径が10〜20nmの微粒子状カーボンブラックと平均粒子径が230〜300nmの粗粒子状カーボンブラックを組み合わせて使用することが好ましい。一般に、上記のような微粒子状のカーボンブラックの添加により、バックコート層の表面電気抵抗を低く設定でき、また光透過率も低く設定できる。磁気記録装置によっては、テープの光透過率を利用し、動作の信号に使用しているものが多くあるため、このような場合には特に微粒子状のカーボンブラックの添加は有効になる。また微粒子状カーボンブラックは、一般に液体潤滑剤の保持力に優れ、潤滑剤併用時、摩擦係数の低減化に寄与する。一方、平均粒子径が230〜300nmの粗粒子状カーボンブラックは、固体潤滑剤としての機能を有しており、またバックコート層の表面に微小突起を形成し、接触面積を低減化して、摩擦係数の低減化に寄与する。
【0115】
本発明においてバックコート層に用いられる微粒子状カーボンブラック及び粗粒子状カーボンブラックとして、市販のものを用いる場合、具体的な商品としては、WO98/35345に記載のものを挙げることができる。
バックコート層において、平均粒子径の異なる二種類のものを使用する場合、10〜20nmの微粒子状カーボンブラックと230〜300nmの粗粒子状カーボンブラックの含有比率(質量比)は、前者:後者=98:2〜75:25の範囲にあることが好ましく、95:5〜85:15の範囲にあることがさらに好ましい。
バックコート層中のカーボンブラック(二種類のものを使用する場合には、その全量)の含有量は、結合剤100質量部に対して、通常30〜80質量部の範囲であり、好ましくは、45〜65質量部の範囲である。
【0116】
バックコート層で使用する無機粉末は、硬さの異なる二種類のものを併用することが好ましい。具体的には、モース硬度3〜4.5の軟質無機粉末とモース硬度5〜9の硬質無機粉末とを使用することが好ましい。モース硬度が3〜4.5の軟質無機粉末を添加することで、繰り返し走行による摩擦係数の安定化を図ることができる。しかもこの範囲の硬さでは、摺動ガイドポールが削られることもない。またこの無機粉末の平均粒子径は、30〜50nmの範囲にあることが好ましい。
モース硬度が3〜4.5の軟質無機粉末としては、例えば、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、及び酸化亜鉛を挙げることができる。これらは、単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
バックコート層内の軟質無機粉末の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して10〜140質量部の範囲にあることが好ましく、35〜100質量部であることがさらに好ましい。
【0117】
モース硬度が5〜9の硬質無機粉末を添加することにより、バック層の強度が強化され、走行耐久性が向上する。これらの無機粉末をカーボンブラックや前記軟質無機粉末と共に使用すると、繰り返し摺動に対しても劣化が少なく、強いバックコート層となる。また、この無機粉末の添加により、適度の研磨力が付与され、テープガイドポール等への削り屑の付着が低減する。特に軟質無機粉末と併用すると、表面の粗いガイドポールに対しての摺動特性が向上し、バックコート層の摩擦係数の安定化も図ることができる。
硬質無機粉末の平均粒子径は80〜250nmの範囲にあることが好ましく、100〜210nmの範囲にあることがさらに好ましい。
モース硬度が5〜9の硬質無機質粉末としては、例えば、α−酸化鉄、α−アルミナ、及び酸化クロム(Cr2O3)を挙げることができる。これらの粉末は、それぞれ単独で用いてもよいし、あるいは併用してもよい。これらの内では、α−酸化鉄又はα−アルミナが好ましい。硬質無機粉末の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して通常、3〜30質量部であり、3〜20質量部であることが好ましい。
【0118】
バックコート層に前記軟質無機粉末と硬質無機粉末とを併用する場合、軟質無機粉末と硬質無機粉末との硬さの差が、2以上(さらに好ましくは、2.5以上、特に、3以上)であるように軟質無機粉末と硬質無機粉末とを選択して使用することが好ましい。
バックコート層には、前記それぞれ特定の平均粒子径を有するモース硬度の異なる二種類の無機粉末と、前記平均粒子径の異なる二種類のカーボンブラックとが含有されていることが好ましい。
【0119】
バックコート層には、潤滑剤を含有させることができる。潤滑剤は、前述した非磁性層、あるいは磁性層に使用できる潤滑剤として挙げた潤滑剤の中から適宜選択して使用できる。バック層において、潤滑剤は、結合剤100質量部に対して通常1〜5質量部の範囲で添加される。
【0120】
バックコート層の結合剤、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法、含有量その他は、上記の磁性層および非磁性層のそれが適用できる。特に、結合剤の量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
【0121】
本発明の磁気記録媒体は、磁気記録媒体に磁気記録された信号をMRヘッドにより再生する磁気記録再生システムで用いることができる。再生に用いられるMRヘッドは特に制限はなく、例えばGMRヘッドやTMRヘッドを用いることもできる。また、磁気記録に用いるヘッドの飽和磁化量は特に制限されないが、飽和磁化量が1.0T以上であり、1.5T以上であることが好ましい。
【0122】
[層構成]
本発明の磁気記録媒体の厚み構成は、非磁性支持体が通常、2〜100μmであり、2〜80μmであることが好ましい。コンピューターテープの非磁性支持体は、3.0〜6.5μm(好ましくは、3.0〜6.0μm、さらに好ましくは、4.0〜5.5μm)の範囲の厚みのものが使用される。
【0123】
下塗層の厚みは、0.1〜1.0μm、好ましくは0.3〜0.8μmである。また、バックコート層を設ける場合、バックコート層の厚みは、0.2〜1.0μm、好ましくは0.3〜0.7μmである。
【0124】
本発明の磁気記録媒体の非磁性層及び磁性層の厚みは、用いるヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化される。本発明では前述したとおり、磁性層の厚みを20〜150nmとし、20〜100nmの範囲とすることが好ましく、20〜50nmの範囲とすることがさらに好ましい。また、非磁性層の厚みは、通常1.0〜3.0μmであり、1.0〜2.5μmであることが好ましく、1.0〜1.5μmであることがさらに好ましい。
【0125】
磁性層を2層有する磁気記録媒体の場合、非磁性層や軟磁性層は設けても設けなくともよく、例えば、支持体から遠い側の磁性層の厚みを0.01〜0.1μm、好ましくは0.01〜0.05μmとして、支持体から近い側の磁性層の厚みを0.05〜0.15μmとすることができる。なお、磁性層を単独で有する場合、上述したように磁性層の厚みを20〜150nmとする。
【0126】
[製法]
本発明の磁気記録媒体の磁性塗料を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、及びこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程は、それぞれ2段階以上に別れていてもかまわない。本発明の磁気記録媒体に使用する磁性粉末、非磁性粉末、放射線硬化型樹脂、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などのすべての原料は、どの工程の最初又は途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。
【0127】
本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。ニーダを用いる場合、磁性粉末又は非磁性粉末と結合剤のすべて又はその一部(但し、全結合剤の30%以上が好ましい)は、磁性粉末100質量部に対し15〜500質量部の範囲で混練処理される。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性層用塗料及び非磁性層用塗料を分散させるには、ガラスビーズを用いることができるが、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
【0128】
非磁性層用塗料と磁性層用塗料とは、逐次又は同時に重層塗布されてもよく、また、磁性層を2層有する場合には、下層磁性層用塗料と上層磁性層用塗料とは、逐次又は同時に重層塗布されてもよい。好ましくは非磁性層及び磁性層が、非磁性支持体上に非磁性粉末及び結合剤を含む非磁性層用塗料を塗布した後に乾燥して非磁性層を形成し、次いでこの非磁性層上に強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層用塗料を塗布した後に乾燥して磁性層を形成すること、すなわち、乾燥後塗布法(wet on dry塗布法)で磁性層を形成することである。
【0129】
上記磁性層用塗料又は非磁性層用塗料を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。これらについては例えば株式会社総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にできる。
【0130】
なお、本発明で重層構成の磁気記録媒体を塗布する場合、以下のような方式を用いることが好ましい。
(1)磁性塗料の塗布で一般的に用いられるグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布装置等により、まず下層を塗布し、下層がウェット状態のうちに特公平1−46186号公報や特開昭60−238179号公報、特開平2−265672号公報に開示されている支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により上層を塗布する方法。
(2)特開昭63−88080号公報、特開平2−17971号公報、特開平2−265672号公報に開示されているような塗布液通液スリットを二つ内蔵する一つの塗布ヘッドにより上下層をほぼ同時に塗布する方法。
(3)特開平2−174965号公報に開示されているバックアップロール付きエクストルージョン塗布装置により上下層をほぼ同時に塗布する方法。
【0131】
なお、磁性粒子の凝集による磁気記録媒体の電磁変換特性等の低下を防止するため、特開昭62−95174号公報や特開平1−236968号公報に開示されているような方法により塗布ヘッド内部の塗布液にせん断を付与することが望ましい。さらに、塗布液の粘度については、特開平3−8471号公報に開示されている数値範囲を満足する必要がある。
【0132】
ディスク状磁気記録媒体の場合、配向装置を用いず無配向でも十分に等方的な配向性が得られることもあるが、コバルト磁石を斜めに交互に配置すること、ソレノイドで交流磁場を印加するなど公知のランダム配向装置を用いることが好ましい。六方晶系フェライトは、一般的に面内及び垂直方向の3次元ランダムになりやすいが、面内2次元ランダムとすることも可能である。また異極対向磁石など公知の方法を用い、垂直配向とすることで円周方向に等方的な磁気特性を付与することもできる。特に高密度記録を行う場合は垂直配向が好ましい。また、スピンコートを用い円周配向としてもよい。
【0133】
テープ状磁気記録媒体の場合は、コバルト磁石やソレノイドを用いて長手方向に配向する。乾燥風の温度、風量、塗布速度を制御することで塗膜の乾燥位置を制御できるようにすることが好ましく、塗布速度は20〜1000m/分、乾燥風の温度は60℃以上が好ましい。また磁石ゾーンに入る前に適度の予備乾燥を行うこともできる。
カレンダ処理ロールとしてエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロールまたは金属ロールで処理するが、特に両面磁性層とする場合は金属ロール同志で処理することが好ましい。処理温度は、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。線圧力は好ましくは196kN/m(200kg/cm)以上、さらに好ましくは294kN/m(300kg/cm)以上である。
【0134】
[物理特性]
ディスク状磁気記録媒体の場合、角形比は2次元ランダムの場合、通常、0.55〜0.67であり、0.58〜0.64であることが好ましい。また、3次元ランダムの場合、角形比は0.45〜0.55であることが好ましい。垂直配向の場合、角形比は垂直方向に通常0.6以上であり、0.7以上であることが好ましい。また、反磁界補正を行った場合は、通常0.7以上であり、0.8以上であることが好ましい。2次元ランダム及び3次元ランダムとも配向度比は0.8以上であることが好ましい。2次元ランダムの場合、垂直方向の角形比、垂直方向のBr及び垂直方向のHcは面内方向の0.1〜0.5倍以内とすることが好ましい。テープ状磁気記録媒体の場合、角形比は0.7以上、好ましくは0.8以上である。
【0135】
本発明の磁気記録媒体のヘッドに対する摩擦係数は、温度−10〜40℃、湿度0〜95%の範囲において、通常0.5以下であり、0.3以下であることが好ましい。表面固有抵抗は、磁性面104〜1012Ω/sqであることが好ましく、帯電位は−500V〜+500Vであることが好ましい。磁性層の0.5%伸びでの弾性率は、面内各方向で980〜19600MPa(100〜2000kg/mm2)であることが好ましく、破断強度は、98〜686MPa(10〜70kg/mm2)であることが好ましい。磁気記録媒体の弾性率は、面内各方向で980〜14700MPa(100〜1500kg/mm2)であることが好ましい。残留伸びは、0.5%以下であることが好ましく、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は、1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることがさらに好ましい。
【0136】
磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は、80〜120℃であり、非磁性層のそれは非磁性層に本発明で用いられるポリウレタン樹脂を含む結合剤を使用した場合は、80〜120℃であり、使用しない場合は、70〜90℃であることが好ましい。損失弾性率は、1×105〜8×108Paの範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が大きすぎると粘着故障が発生しやすい。これらの熱特性や機械特性は媒体の面内各方向で10%以内であり、かつ、ほぼ等しいことが好ましい。磁性層中に含まれる残留溶媒は、100mg/m2以下であることが好ましく、10mg/m2以下であることがさらに好ましい。塗布層が有する空隙率は、非磁性層、磁性層とも30容量%以下であることが好ましく、20容量%以下であることがさらに好ましい。空隙率は、高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方がよい場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるディスク媒体では空隙率が大きい方が走行耐久性は好ましいことが多い。
【0137】
本発明の磁性層における中心面平均表面粗さRa及び10点平均粗さRzは、それぞれ5〜50nmであることが好ましい。また、磁性層の最大高さRmaxは0.5μm以下、中心面山高さRpは0.3μm以下、中心面谷深さRvは0.3μm以下、中心面面積率Srは20〜80%、平均波長λaは5〜300μmが好ましい。磁性層の表面の突起数は、10〜20nmの大きさのものを100μm2あたり5〜1000個の範囲であることが好ましい。これらは支持体のフィラーによる表面性のコントロールや磁性層に添加する粉体の粒径と量、カレンダ処理のロール表面形状などで容易にコントロールすることができる。カールは±3mm以内とすることが好ましい。本発明の磁気記録媒体は、目的に応じ非磁性層と磁性層でこれらの物理特性を変えることができるのは容易に推定されることである。例えば、磁性層の弾性率を高くし、走行耐久性を向上させると同時に非磁性層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りをよくするなどである。
【0138】
マルチメデイア社会になり、画像記録へのニーズは産業界のみならず家庭でも益々強くなっており、本発明の磁気記録媒体は単に文字、数字などのデータ以外に、画像記録用媒体としての機能/コストの要請に十分応えられる能力を持つものである。
本発明の磁気記録媒体は、磁気抵抗型の再生ヘッド(MRヘッド)を用いる磁気記録再生システムに好適に用いることができる。MRヘッドの種類には特に制限はなく、GMRヘッドやTMRヘッドを用いることもできる。記録に用いるヘッドに特に制限はないが、飽和磁化量が1.2T以上であることが好ましく、2.0T以上がさらに好ましい。
本発明の磁気記録媒体は、コンピューターデータ記録用として好適である。
【0139】
【実施例】
以下に、本発明の具体的実施例を説明するが、本発明はこれに限定されるべきものではない。なお、以下の「部」とは別段断らない限り「質量部」のことである。
【0140】
(実施例1)
磁性層形成用塗布液の調製
(磁性層形成用成分)
【0141】
強磁性金属粉末 100部
抗磁力(Hc):189.6kA/m(2400 Oe)
BET法による比表面積:75m2/g
結晶子サイズ:13nm(130Å)
飽和磁化量(σs):120A・m2/kg(120emu/g)
粒子サイズ(平均長軸径):45nm
針状比:5.5
組成Fe/Co=100/30
表面処理層:Al2O3、Y2O3
極性基(−SO3Na基)含有塩化ビニル系共重合体 10部
日本ゼオン製 MR−110
極性基(−SO3Na基)含有ダイマジオール系 10部
ポリウレタン樹脂
[Tg 160℃ −SO3Na基含有量:6×10−5eq/g]
α−アルミナ(粒子サイズ:0.1μm) 5部
カーボンブラック(粒子サイズ: 0.08μm) 0.5部
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 2部
メチルエチルケトン 90部
シクロヘキサノン 30部
トルエン 60部
【0142】
(非磁性層形成用成分)
非磁性粉末 αFe203 ヘマタイト 80部
BET法による比表面積:110m2/g
粒子サイズ(平均長軸長):0.15μm
pH:9.3
タップ密度:0.98g/ml
表面処理層:Al2O3、SiO2
カーボンブラック 20部
平均一次粒子径:16nm(16mμ)
DBP吸油量:80ml/100g
pH:8.0
BET法による比表面積:250m2/g
揮発分:1.5%
極性基(−SO3Na基、エポキシ基) 12部
含有塩化ビニル樹脂[MR−104、日本ゼオン製]
極性基(−SO3Na基)含有ダイマジオール系 10部
ポリウレタン樹脂
[Tg 160℃ −SO3Na基含有量:6×10−5eq/g]
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 2部
メチルエチルケトン 100部
シクロヘキサノン 50部
トルエン 50部
【0143】
上記磁性層、非磁性層を形成する各成分をそれぞれオープンニーダで混練した後、サンドミルを用いて分散させた。得られたそれぞれの分散液にメチルエチルケトン40部を加えて、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層形成用塗布液および磁性層形成用塗布液をそれぞれ調製した。
【0144】
(バックコート層形成用成分)
微粒子状カーボンブラック粉末 100部
[ファーネスブラック、平均粒子サイズ:17nm]
粗粒子状カーボンブラック粉末 30部
[ファーネスブラック、平均粒子サイズ:100nm]
α−アルミナ(硬質無機粉末) 5部
[平均粒子サイズ:100nm、モース硬度:9]
ニトロセルロース樹脂 140部
ポリウレタン樹脂 15部
ポリエステル樹脂 5部
メチルエチルケトン 1200部
酢酸ブチル 300部
トルエン 600部
【0145】
上記バックコート層を形成する各成分をチルドロールで混練した後、サンドミルを用いて分散させた。得られた分散液にポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製コロネートL)40部とメチルエチルケトン1000部を添加した後、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、バックコート層形成用塗布液を調製した。
【0146】
〔磁気テープの作製性〕
下記の化合物を30質量%メチルエチルケトン溶液に調製したものを乾燥後の厚さが0.5μmになるようにコイルバーを用いて、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)支持体(厚さ:6μm、長さ(MD)方向のヤング率800kg/mm2、幅(TD)方向のヤング率750kg/mm2、磁性層塗布面の中心線平均表面粗さRa(カットオフ値:0.25mm)、2nm)上に塗布した後、乾燥させ、塗膜表面に加速電圧175kV、ビ−ム電流5mAで吸収線量が5Mradになるように電子線を照射し下塗り層を形成した。
【0147】
【化12】
【0148】
次いで下塗り層の上に、非磁性層、磁性層の順に乾燥後の厚みがそれぞれ1.5μm、0.1μmとなるように同時重層塗布した。次いで磁性層がまだ湿潤状態にあるうちに、0.3T(3000ガウス)の磁束密度を持つCo磁石と0.15T(1500ガウス)の磁束密度を持つソレノイド磁石を用いて配向処理を行った。その後乾燥させることにより磁性層を形成した。
【0149】
その後、支持体の他方の側(磁性層とは反対側)に、上記バックコート層形成用塗布液を乾燥後の厚さが、0.5μmとなるように塗布し、乾燥してバックコート層を形成した。支持体の一方の面に磁性層そして他方の面にバックコート層がそれぞれ設けられた磁気記録媒体ロールを得た。
上記ロールを加熱金属ロールと熱硬化性樹脂を芯金に被覆した弾性ロールから構成される7段のカレンダー処理機(温度90℃、線圧300kg/cm、速度300m/分)に通してカレンダー処理をおこない、テンション5kg/mで巻き取った。加熱金属ロールの材質はクロムモリブデン鋼にハードクロムメッキを施したものであり、表面粗さRaは0.005μm(カットオフ値0.25mm)である。弾性ロールの熱硬化性樹脂はビス(2−オキソゾリン)加工物と芳香族ジアミンとエポキシ化合物を反応させたものである。
次いで該ロールを1/2インチ幅にスリットした後、0.3T(3000G)の磁束密度を持つソレノイド中を通過させて消磁した。
【0150】
(実施例2)
実施例1の磁気テープの作製において、磁性層、非磁性下層共にTgが105℃のダイマージオール系ポリウレタン樹脂を使用した以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
(実施例3)
実施例1の磁気テープの作製において、磁性層、非磁性下層共にTgが195℃のダイマージオール系ポリウレタン樹脂を使用した以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
(実施例4)
実施例1の磁気テープの作製において、磁性層厚みを30nmに変更した以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
【0151】
(実施例5)
実施例1の磁気テープの作製において、以下の磁性体を使用した以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
【0152】
強磁性金属粉末
抗磁力(Hc):189.6kA/m(2400 Oe)
BET法による比表面積:70m2/g
結晶子サイズ:130Å
飽和磁化量(σs):120A・m2/kg(120emu/g)
粒子サイズ(平均長軸長):60nm
針状比:6
Fe/Co=100/30
表面処理層 Al2O3、Y2O3
【0153】
(実施例6)
実施例1の磁気テープの作製において、磁性層厚みを145nmに変更した以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
【0154】
(比較例1)
実施例1の磁気テープの作製において、磁性層、非磁性下層共に以下のTgが90℃の極性含有ポリエステルポリウレタン樹脂を使用した以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
【0155】
【0156】
(比較例2)
実施例1の磁気テープの作製において、磁性層、非磁性下層共に、Tgが205℃のポリウレタン樹脂を使用した以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
(比較例3)
実施例1の磁気テープの作製において、磁性層厚みを160nmに変更した以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
【0157】
(比較例4)
実施例1の磁気テープの作製において、以下の磁性体を使用した以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
【0158】
強磁性金属粉末
抗磁力(Hc):189.6kA/m(2400 Oe)
BET法による比表面積:65m2/g
結晶子サイズ:130Å
飽和磁化量(σs):125A・m2/kg(125emu/g)
粒子サイズ(平均長軸長):100nm
針状比:6.5
Fe/Co=100/30
表面処理層 Al2O3、Y2O3
【0159】
(比較例5)
実施例1の磁気テープの作製において、下塗り層を塗布せずに磁性層、非磁性層を支持体上に塗布した以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
(比較例6)
実施例1の磁気テープの作製において、下塗り層の厚みを1.5μmに変更した以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
【0160】
[評価方法]
<ポリウレタンのTg>
エーアンドディ社製動的粘弾性測定装置レオバイブロンを用いて周波数110Hz、昇温速度2℃/minで測定し、損失弾性率のピーク温度から求めた。
<強磁性粉末の粒子径>
透過型電子顕微鏡写真を撮影し、その写真から強磁性粉末の短軸径と長軸径とを直接読み取る方法と画像解析装置カールツァイス社製IBASS1で透過型顕微鏡写真をトレースして読み取る方法とを適宜併用して平均粒子径を求めた。
<中心線平均粗さ>
WYKO社製TOPO3Dを用いて、媒体表面をMIRAU法で約250nm×250nmの面積のRaを測定した。測定波長は約650nmで球面補正、円筒補正を加えている。本方式は光干渉にて測定する非接触の表面粗さ計である。
【0161】
<走行耐久性>
40℃80%環境で、磁性層面をDLT4ドライブ記録再生ヘッドに対し2万回往復摺動させた後、ヘッドに付着する汚れの量を5点法で評価した。テープ長は20m、走行テンションは100gr、走行速度は3m/secである。
【0162】
5点:ヘッド汚れ無し
4点:ヘッド汚れがあるがテープとの摺動面に入っていない
3点:ヘッド汚れがテープ摺動面に入っている
2点:ヘッドギャップ付近に汚れ付着
1点:ヘッドギャップ部が汚れで覆われている
【0163】
<PW50測定方法>
二つのリール間でテープを走行させる独自の走行系を組み立て、その間にテープガイドを設けて、精度よく走行させる工夫を盛り込んだ。サーボライト走行は行っていない。
記録ヘッドにはトラック幅25μmでギャップ幅0.3μm、再生ヘッドにはトラック幅12μmでシールド間隔を変更したMRセンサーを持ったSALタイプのマージヘッドを採用している。150kfciで最適記録電流を設定し、100khzの矩形波を記録再生して、孤立波のPW50(孤立波の半値幅)を測定した。
走行速度は2.55m/secで行った。
【0164】
<SNRの測定方法>
(磁気テープのSNR)
DLT7000ドライブを改造したものに、記録ヘッド(MIG、ギャップ0.15μm、1.8T)と、再生ヘッド用MRヘッド(最適Br・t:0.035T・μm)とを取り付けた。これらのヘッドは固定ヘッドである。
SNRについては、線記録密度100kFCIでの再生出力とノイズ(キャリア周波数より1MHz離れた周波数での信号成分)とから求めた。尚、再生出力及びSNRは比較例2の磁気テープを基準とする相対評価とした。
【0165】
【表1】
【0166】
表1より磁性層で使用されるポリウレタン樹脂のTgが100〜200℃であり、強磁性金属粉末の平均長軸長が20〜60nmであり、かつ磁性層の厚みが20〜150μmであり、放射線照射により重合可能な化合物を含有する下塗り層の厚みが0.1〜1μmである磁気記録媒体は、SNR及びPW50が良好であり、走行耐久性が良好であった。
これに対し、ポリウレタン樹脂のTgが100℃未満や、下塗り層の厚みが1μmより大きい場合には、走行耐久性が悪かった(比較例1、5)。さらに、磁性層の厚みが150nmより厚くなると、SNRが低下し、かつPW50が大きくなった(比較例2)。また、強磁性金属粉末の平均長軸長が60nmより大きくなるか、下塗り層の厚みが0.1μm未満になると、SNRが低下した(比較例3、4)。
【0167】
以上のことより、磁性層で使用する結合剤(ポリウレタン樹脂)のTgを高くすることにより、従来の磁気記録媒体よりも安定した耐久性が得られ、さらに用いる強磁性粉末の平均長軸長(平均板径)を小さくし、磁性層の厚みを薄くし、かつ下塗り層の厚みを0.1〜1μmとしたものであれば、高SNRと低PW50値が得られ、エラーレートの安定化を図れることが分かる。
【0168】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に、放射線照射により重合可能な化合物を含有する下塗り層と、その上に磁性層を設け、下塗り層の厚みを0.1〜1μmとし、磁性層のポリウレタン樹脂のガラス転移温度を100〜200℃とし、磁性層の厚みを20〜150nmとし、かつ磁性層の強磁性粉末の平均サイズを20〜60nmとする。これにより、高密度記録において安定したエラーレートと走行耐久性の両立化を低コストで実現できる磁気記録媒体を提供することができる。
Claims (1)
- 非磁性支持体上に、放射線照射により重合可能な化合物を含有する下塗り層を設け、その上に強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を設けた磁気記録媒体であって、
前記下塗り層の厚みが0.1〜1μmで、前記磁性層に含まれる結合剤は、ガラス転移温度が100〜200℃であるポリウレタン樹脂を含み、前記磁性層の厚みが20〜150nmで、かつ前記強磁性粉末の平均サイズが20〜60nmであることを特徴とする磁気記録媒体。
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