本開示の実施形態について以下の順序で説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
1 第1の実施形態
2 第2の実施形態
3 変形例
[記録再生システムの構成]
図1は、本開示の第1の実施形態に係る記録再生システム100の構成の一例を示す概略図である。記録再生システム100は、磁気テープ記録再生システムであり、カートリッジ10と、カートリッジ10をロードおよびアンロード可能に構成された記録再生装置50とを備える。
[カートリッジの構成]
図2は、カートリッジ10の構成の一例を示す分解斜視図である。カートリッジ10は、LTO(Linear Tape-Open)規格に準拠した磁気テープカートリッジであり、下シェル12Aと上シェル12Bとで構成されるカートリッジケース12の内部に、磁気テープ(テープ状の磁気記録媒体)MTが巻かれたリール13と、リール13の回転をロックするためのリールロック14およびリールスプリング15と、リール13のロック状態を解除するためのスパイダ16と、下シェル12Aと上シェル12Bに跨ってカートリッジケース12に設けられたテープ引出口12Cを開閉するスライドドア17と、スライドドア17をテープ引出口12Cの閉位置に付勢するドアスプリング18と、誤消去を防止するためのライトプロテクト19と、カートリッジメモリ11とを備える。リール13は、中心部に開口を有する略円盤状であって、プラスチック等の硬質の材料からなるリールハブ13Aとフランジ13Bとにより構成される。磁気テープMTの一端部には、リーダーピン20が設けられている。
カートリッジメモリ11は、カートリッジ10の1つの角部の近傍に設けられている。カートリッジ10が記録再生装置50にロードされた状態において、カートリッジメモリ11は、記録再生装置50のリーダライタ57と対向するようになっている。カートリッジメモリ11は、LTO規格に準拠した無線通信規格で記録再生装置50、具体的にはリーダライタ57と通信を行う。
[カートリッジメモリの構成]
図3は、カートリッジメモリ11の構成の一例を示すブロック図である。カートリッジメモリ11は、規定の通信規格でリーダライタ57と通信を行うアンテナコイル(通信部)31と、アンテナコイル31により受信した電波から、誘導起電力を用いて発電、整流して電源を生成する整流・電源回路32と、アンテナコイル31により受信した電波から、同じく誘導起電力を用いてクロックを生成するクロック回路33と、アンテナコイル31により受信した電波の検波およびアンテナコイル31により送信する信号の変調を行う検波・変調回路34と、検波・変調回路34から抽出されるデジタル信号から、コマンドおよびデータを判別し、これを処理するための論理回路等で構成されるコントローラ(制御部)35と、情報を記憶するメモリ(記憶部)36とを備える。また、カートリッジメモリ11は、アンテナコイル31に対して並列に接続されたキャパシタ37を備え、アンテナコイル31とキャパシタ37により共振回路が構成される。
メモリ36は、カートリッジ10に関連する情報等を記憶する。メモリ36は、不揮発性メモリ(Non Volatile Memory:NVM)である。メモリ36の記憶容量は、好ましくは約32KB以上である。
メモリ36は、第1の記憶領域36Aと第2の記憶領域36Bとを有する。第1の記憶領域36Aは、LTO8以前のLTO規格のカートリッジメモリ(以下「従来のカートリッジメモリ」という。)の記憶領域に対応しており、LTO8以前のLTO規格に準拠した情報を記憶するための領域である。LTO8以前のLTO規格に準拠した情報は、例えば製造情報(例えばカートリッジ10の固有番号等)、使用履歴(例えばテープ引出回数(Thread Count)等)等である。
第2の記憶領域36Bは、従来のカートリッジメモリの記憶領域に対する拡張記憶領域に相当する。第2の記憶領域36Bは、付加情報を記憶するための領域である。ここで、付加情報とは、LTO8以前のLTO規格で規定されていない、カートリッジ10に関連する情報を意味する。付加情報の例としては、テンション調整情報、管理台帳データ、Index情報、または磁気テープMTに記憶された動画のサムネイル情報等が挙げられるが、これらのデータに限定されるものではない。テンション調整情報は、磁気テープMTの長手方向にかかるテンションを調整するための情報である。テンション調整情報は、磁気テープMTに対するデータ記録時における、隣接するサーボバンド間の距離(隣接するサーボバンドに記録されたサーボパターン間の距離)を含む。隣接するサーボバンド間の距離は、磁気テープMTの幅に関連する幅関連情報の一例である。サーボバンド間の距離の詳細については後述する。以下の説明において、第1の記憶領域36Aに記憶される情報を「第1の情報」といい、第2の記憶領域36Bに記憶される情報を「第2の情報」ということがある。
メモリ36は、複数のバンクを有していてもよい。この場合、複数のバンクうちの一部のバンクにより第1の記憶領域36Aが構成され、残りのバンクにより第2の記憶領域36Bが構成されてもよい。
アンテナコイル31は、電磁誘導により誘起電圧を誘起する。コントローラ35は、アンテナコイル31を介して、規定の通信規格で記録再生装置50と通信を行う。具体的には例えば、相互認証、コマンドの送受信またはデータのやり取り等を行う。
コントローラ35は、アンテナコイル31を介して記録再生装置50から受信した情報をメモリ36に記憶する。例えば、アンテナコイル31を介して記録再生装置50から受信したテンション調整情報をメモリ36の第2の記憶領域36Bに記憶する。コントローラ35は、記録再生装置50の要求に応じて、メモリ36から情報を読み出し、アンテナコイル31を介して記録再生装置50に送信する。例えば、記録再生装置50の要求に応じて、メモリ36の第2の記憶領域36Bからテンション調整情報を読み出し、アンテナコイル31を介して記録再生装置50に送信する。
[磁気テープの構成]
図4は、磁気テープMTの構成の一例を示す断面図である。磁気テープMTは、長尺状の基体41と、基体41の一方の主面上に設けられた下地層42と、下地層42上に設けられた磁性層43と、基体41の他方の主面上に設けられたバック層44とを備える。なお、下地層42およびバック層44は、必要に応じて備えられるものであり、無くてもよい。
磁気テープMTは長尺のテープ状を有し、記録再生の際には長手方向に走行される。なお、磁性層43の表面が、磁気ヘッドが走行される表面となる。磁気テープMTは、記録用ヘッドとしてリング型ヘッドを備える記録再生装置で用いられることが好ましい。磁気テープMTは、1500nm以下または1000nm以下のデータトラック幅でデータを記録可能に構成された記録再生装置に用いられることが好ましい。
(基体)
基体41は、下地層42および磁性層43を支持する非磁性支持体である。基体41は、長尺のフィルム状を有する。基体41の平均厚みの上限値は、好ましくは4.2μm以下、より好ましくは3.8μm以下、さらにより好ましくは3.4μm以下である。基体41の平均厚みの上限値が4.2μm以下であると、1データカートリッジ内に記録できる記録容量を一般的な磁気テープよりも高めることができる。基体41の平均厚みの下限値は、好ましくは3μm以上、より好ましくは3.2μm以上である。基体41の平均厚みの下限値が3μm以上であると、基体41の強度低下を抑制することができる。
基体41の平均厚みは以下のようにして求められる。まず、1/2インチ幅の磁気テープMTを準備し、それを250mmの長さに切り出し、サンプルを作製する。続いて、サンプルの基体41以外の層(すなわち下地層42、磁性層43およびバック層44)をMEK(メチルエチルケトン)または希塩酸等の溶剤で除去する。次に、測定装置としてMitutoyo社製レーザーホロゲージを用いて、サンプル(基体41)の厚みを5点以上の位置で測定し、それらの測定値を単純に平均(算術平均)して、基体41の平均厚みを算出する。なお、測定位置は、サンプルから無作為に選ばれるものとする。
基体41は、ポリエステルを含む。基体41がポリエステルを含むことで、基体41の長手方向のヤング率を低減し、例えば7.5GPa未満にすることができる。したがって、走行時における磁気テープMTの長手方向のテンションを記録再生装置50により調整することで、磁気テープMTの幅を一定またはほぼ一定に保つことができる。
ポリエステルは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレン−p−オキシベンゾエート(PEB)およびポリエチレンビスフェノキシカルボキシレートのうちの少なくとも1種を含む。基体41が2種以上のポリエステルを含む場合、それらの2種以上のポリエステルは混合されていてもよいし、共重合されていてもよいし、積層されていてもよい。ポリエステルの末端および側鎖の少なくとも一方が変性されていてもよい。
基体41にポリエステルが含まれていることは、例えば、次のようにして確認される。まず、基体41の平均厚みの測定方法と同様にして、サンプルの基体41以外の層を除去する。次に、赤外吸収分光法(Infrared Absorption Spectrometry:IR)によりサンプル(基体41)のIRスペクトルを取得する。このIRスペクトルに基づき、基体41にポリエステルが含まれていることを確認することができる。
基体41は、ポリエステル以外に、例えば、ポリアミド、ポリイミドおよびポリアミドイミドのうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよいし、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリオレフィン類、セルロース誘導体、ビニル系樹脂、およびその他の高分子樹脂のうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。ポリアミドは、芳香族ポリアミド(アラミド)であってもよい。ポリイミドは、芳香族ポリイミドであってもよい。ポリアミドイミドは、芳香族ポリアミドイミドであってもよい。
基体41が、ポリエステル以外の高分子樹脂を含む場合、基体41はポリエステルを主成分とすることが好ましい。ここで、主成分とは、基体41に含まれる高分子樹脂のうち、最も含有量(質量比率)が多い成分を意味する。基体41がポリエステル以外の高分子樹脂を含む場合、ポリエステルと、ポリエステル以外の高分子樹脂は、混合されていてもよいし、共重合されていてもよい。
基体41は、長手方向および幅方向に二軸延伸されていてもよい。基体41に含まれる高分子樹脂は、基体41の幅方向に対して斜め方向に配向されていることが好ましい。
(磁性層)
磁性層43は、信号を記録するための記録層である。磁性層43は、例えば、磁性粉および結着剤を含む。磁性層43が、必要に応じて、潤滑剤、帯電防止剤、研磨剤、硬化剤、防錆剤および非磁性補強粒子等のうちの少なくとも1種の添加剤をさらに含んでいてもよい。
磁性層43は、多数の孔部が設けられた表面を有し、これらの多数の孔部には、潤滑剤が蓄えられていることが好ましい。これにより、磁気テープMTとヘッドの接触による摩擦を低減することができる。多数の孔部は、磁性層43の表面に対して垂直方向に延設されていることが好ましい。磁性層43の表面に対する潤滑剤の供給性を向上することができるからである。なお、多数の孔部の一部が垂直方向に延設されていてもよい。
磁性層43は、図5Aに示すように、複数のサーボバンドSBと複数のデータバンドDBとを予め有していることが好ましい。複数のサーボバンドSBは、磁気テープMTの幅方向に等間隔で設けられている。隣り合うサーボバンドSBの間には、データバンドDBが設けられている。サーボバンドSBには、磁気ヘッドのトラッキング制御をするためのサーボ信号が予め書き込まれている。データバンドDBには、ユーザデータが記録される。
磁性層43の表面の面積Sに対するサーボバンドSBの総面積SSBの割合RS(=(SSB/S)×100)の上限値は、高記録容量を確保する観点から、好ましくは4.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらにより好ましくは2.0%以下である。一方、磁性層43の表面の面積Sに対するサーボバンドSBの総面積SSBの割合RSの下限値は、5以上のサーボトラックを確保する観点から、好ましくは0.8%以上である。
磁性層43の表面の面積Sに対するサーボバンドSBの総面積SSBの割合RSは以下のようにして求められる。まず、磁性層43の表面を磁気力顕微鏡(Magnetic Force Microscope:MFM)を用いて観察し、MFM像を取得する。続いて、取得されたMFM像を用いて、サーボバンド幅WSBおよびサーボバンドSBの本数を測定する。次に、以下の式から割合RSを求める。
割合RS[%]=(((サーボバンド幅WSB)×(サーボバンドSBの本数))/(磁気テープMTの幅))×100
サーボバンドSBの数は、好ましくは5以上、より好ましくは5+4n(但し、nは正の整数である。)以上である。サーボバンドSBの数が5以上であると、磁気テープMTの幅方向の寸法変化によるサーボ信号への影響を抑制し、よりオフトラックが少ない安定した記録再生特性を確保できる。サーボバンドSBの数の上限値は特に限定されるものではないが、例えば33以下である。
サーボバンドSBの数は以下のようにして確認可能である。まず、磁性層43の表面を磁気力顕微鏡(MFM)を用いて観察し、MFM像を取得する。次に、MFM像を用いてサーボバンドSBの数をカウントする。
サーボバンド幅WSBの上限値は、高記録容量を確保する観点から、好ましくは95μm以下、より好ましくは60μm以下、さらにより好ましくは30μm以下である。サーボバンド幅WSBの下限値は、好ましくは10μm以上である。10μm未満のサーボバンド幅WSBのサーボ信号を読み取り可能な記録ヘッドは製造が困難である。
サーボバンド幅WSBは以下のようにして求められる。まず、磁性層43の表面を磁気力顕微鏡(MFM)を用いて観察し、MFM像を取得する。次に、MFM像を用いてサーボバンド幅WSBを測定する。
磁性層43は、図5Bに示すように、データバンドDBに複数のデータトラックTkを形成可能に構成されている。データトラック幅Wの上限値は、トラック記録密度を向上し、高記録容量を確保する観点から、好ましくは1500nm以下、より好ましくは1000nmである。データトラック幅Wの下限値は、磁性粒子サイズを考慮すると、好ましくは20nm以上である。
磁性層43は、磁化反転間距離の最小値Lとデータトラック幅Wが好ましくはW/L≦35、より好ましくはW/L≦30、さらにより好もしくはW/L≦25となるように、データを記録可能に構成されている。磁化反転間距離の最小値Lが一定値であり、磁化反転間距離の最小値Lとトラック幅WがW/L>35であると(すなわちトラック幅Wが大きいと)、トラック記録密度が上がらないため、記録容量を十分に確保できなくなる虞がある。また、トラック幅Wが一定値であり、磁化反転間距離の最小値Lとトラック幅WがW/L>35であると(すなわち磁化反転間距離の最小値Lが小さいと)、ビット長さが小さくなり、線記録密度が上がるが、スペーシングロスの影響により、電磁変換特性(例えばSNR(Signal-to-Noise Ratio))が著しく悪化してしまう虞がある。したがって、記録容量を確保しながら、電磁変換特性(例えばSNR)の悪化を抑制するためには、上記のようにW/LがW/L≦35の範囲にあることが好ましい。W/Lの下限値は特に限定されるものではないが、例えば1≦W/Lである。
磁化反転間距離の最小値Lとデータトラック幅Wは、以下のようにして求められる。まず、最短記録波長でデータ信号を磁気テープMTに書き込む。次に、磁気テープMTを切り出しサンプルを取得したのち、このサンプルを導電性両面テープで試料台に固定する。次に、磁気力顕微鏡(Magnetic Force Microscope:MFM、ブルカー製、Dimension Icon Nanoscope III)を用いて、磁性層43の表面の正方形状の領域(サイズ10μm×10μm)を512ピクセル×512ピクセルで測定し、MFM像を取得する。図6に、MFM像の一例を示す。次に、取得したMFM像から無作為に選び出された10箇所にて、磁気テープMTの幅方向における磁化パターン列の寸法をそれぞれ測定し、10箇所のトラック幅WA[nm]を得る。次に、得られた10箇所のトラック幅WAを単純に平均(算術平均)してトラック幅Wを求める。
また、取得したMFM像から無作為に選び出された10箇所にて、磁気テープMTの長手方向における明部と明部の距離または暗部と暗部の距離[nm]をそれぞれ測定し、10箇所の記録波長λAを求める。次に、得られた10箇所の記録波長λAを単純に平均(算術平均)して平均記録波長λ[nm]を求める。その後、平均記録波長λ[nm]の半分の値を求め、磁化反転間距離の最小値L[nm]とする。
磁性層43は、高記録容量を確保する観点から、磁化反転間距離の最小値Lが好ましくは48nm以下、より好ましくは44nm以下、さらにより好ましくは40nm以下となるように、データを記録可能に構成されている。磁化反転間距離の最小値Lの下限値は、磁性粒子サイズを考慮すると、好ましくは20nm以上である。
磁性層43の平均厚みの上限値は、好ましくは90nm以下、特に好ましくは80nm以下、より好ましくは70nm以下、さらにより好ましくは50nm以下である。磁性層43の平均厚みの上限値が90nm以下であると、記録ヘッドとしてはリング型ヘッドを用いた場合に、反磁界の影響を軽減できるため、電磁変換特性を向上することができる。
磁性層43の平均厚みの下限値は、好ましくは35nm以上である。磁性層43の平均厚みの上限値が35nm以上であると、再生ヘッドとしてはMR型ヘッドを用いた場合に、出力を確保できるため、電磁変換特性を向上することができる。
磁性層43の平均厚みは以下のようにして求められる。まず、磁気テープMTを、その主面に対して垂直に薄く加工して試験片を作製し、その試験片の断面を透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)により観察を行う。以下に、装置および観察条件を示す。
装置:TEM(日立製作所製H9000NAR)
加速電圧:300kV
倍率:100,000倍
次に、得られたTEM像を用い、磁気テープMTの長手方向に少なくとも10点以上の位置で磁性層43の厚みを測定した後、それらの測定値を単純に平均(算術平均)して磁性層43の平均厚みを求める。なお、測定位置は、試験片から無作為に選ばれるものとする。
(磁性粉)
磁性粉は、ε酸化鉄を含有するナノ粒子(以下「ε酸化鉄粒子」という。)の粉末を含む。ε酸化鉄粒子は、微粒子でも高保磁力を得ることができる硬磁性粒子である。ε酸化鉄粒子に含まれるε酸化鉄は、磁気テープMTの厚み方向(垂直方向)に優先的に結晶配向していることが好ましい。
ε酸化鉄粒子は、球状もしくはほぼ球状を有しているか、または立方体状もしくはほぼ立方体状を有している。ε酸化鉄粒子が上記のような形状を有しているため、磁性粒子としてε酸化鉄粒子を用いた場合、磁性粒子として六角板状のバリウムフェライト粒子を用いた場合に比べて、磁気テープMTの厚み方向における粒子同士の接触面積を低減し、粒子同士の凝集を抑制することができる。したがって、磁性粉の分散性を高め、より良好な電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。
ε酸化鉄粒子は、コアシェル型構造を有する。具体的には、ε酸化鉄粒子は、図7に示すように、コア部111と、このコア部111の周囲に設けられた2層構造のシェル部112とを備える。2層構造のシェル部112は、コア部111上に設けられた第1シェル部112aと、第1シェル部112a上に設けられた第2シェル部112bとを備える。
コア部111は、ε酸化鉄を含む。コア部111に含まれるε酸化鉄は、ε−Fe2O3結晶を主相とするものが好ましく、単相のε−Fe2O3からなるものがより好ましい。
第1シェル部112aは、コア部111の周囲のうちの少なくとも一部を覆っている。具体的には、第1シェル部112aは、コア部111の周囲を部分的に覆っていてもよいし、コア部111の周囲全体を覆っていてもよい。コア部111と第1シェル部112aの交換結合を十分なものとし、磁気特性を向上する観点からすると、コア部111の表面全体を覆っていることが好ましい。
第1シェル部112aは、いわゆる軟磁性層であり、例えば、α−Fe、Ni−Fe合金またはFe−Si−Al合金等の軟磁性体を含む。α−Feは、コア部111に含まれるε酸化鉄を還元することにより得られるものであってもよい。
第2シェル部112bは、酸化防止層としての酸化被膜である。第2シェル部112bは、α酸化鉄、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素を含む。α酸化鉄は、例えばFe3O4、Fe2O3およびFeOのうちの少なくとも1種の酸化鉄を含む。第1シェル部112aがα−Fe(軟磁性体)を含む場合には、α酸化鉄は、第1シェル部112aに含まれるα−Feを酸化することにより得られるものであってもよい。
ε酸化鉄粒子が、上述のように第1シェル部112aを有することで、熱安定性を確保するためにコア部111単体の保磁力Hcを大きな値に保ちつつ、ε酸化鉄粒子(コアシェル粒子)全体としての保磁力Hcを記録に適した保磁力Hcに調整できる。また、ε酸化鉄粒子が、上述のように第2シェル部112bを有することで、磁気テープMTの製造工程およびその工程前において、ε酸化鉄粒子が空気中に暴露されて、粒子表面に錆び等が発生することにより、ε酸化鉄粒子の特性が低下することを抑制することができる。したがって、磁気テープMTの特性劣化を抑制することができる。
磁性粉の平均粒子サイズ(平均最大粒子サイズ)は、例えば22.5nm以下である。磁性粉の平均粒子サイズ(平均最大粒子サイズ)は、好ましくは22nm以下、より好ましくは8nm以上22nm以下、さらにより好ましくは12nm以上22nm以下、特に好ましくは12nm以上15nm以下、最も好ましくは12nm以上14nm以下である。磁気テープMTでは、記録波長の1/2のサイズの領域が実際の磁化領域となる。このため、磁性粉の平均粒子サイズを最短記録波長の半分以下に設定することで、良好な電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。したがって、磁性粉の平均粒子サイズが22nm以下であると、高記録密度の磁気テープMT(例えば44nm以下の最短記録波長で信号を記録可能に構成された磁気テープMT)において、良好な電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。一方、磁性粉の平均粒子サイズが8nm以上であると、磁性粉の分散性がより向上し、より優れた電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。
磁性粉の平均アスペクト比が、好ましくは1.0以上3.0以下、より好ましくは1.0以上2.5以下、さらにより好ましくは1.0以上2.1以下、特に好ましくは1.0以上1.8以下である。磁性粉の平均アスペクト比が1.0以上3.0以下の範囲内であると、磁性粉の凝集を抑制することができる。また、磁性層43の形成工程において磁性粉を垂直配向させる際に、磁性粉に加わる抵抗を抑制することができる。したがって、磁性粉の垂直配向性を向上することができる。
上記の磁性粉の平均粒子サイズおよび平均アスペクト比は、以下のようにして求められる。まず、測定対象となる磁気テープMTをFIB(Focused Ion Beam)法等により加工して薄片を作製し、TEMにより薄片の断面観察を行う。次に、撮影したTEM写真から50個のε酸化鉄粒子を無作為に選び出し、各ε酸化鉄粒子の長軸長DLと短軸長DSを測定する。ここで、長軸長DLとは、ε酸化鉄粒子の輪郭に接するように、あらゆる角度から引いた2本の平行線間の距離のうち最大のもの(いわゆる最大フェレ径)を意味する。一方、短軸長DSとは、ε酸化鉄粒子の長軸と直交する方向におけるε酸化鉄粒子の長さのうち最大のものを意味する。
続いて、測定した50個のε酸化鉄粒子の長軸長DLを単純に平均(算術平均)して平均長軸長DLaveを求める。このようにして求めた平均長軸長DLaveを磁性粉の平均粒子サイズとする。また、測定した50個のε酸化鉄粒子の短軸長DSを単純に平均(算術平均)して平均短軸長DSaveを求める。そして、平均長軸長DLaveおよび平均短軸長DSaveからε酸化鉄粒子の平均アスペクト比(DLave/DSave)を求める。
磁性粉の平均粒子体積は、好ましくは5600nm3以下、より好ましくは250nm3以上5600nm3以下、さらにより好ましくは900nm3以上5600nm3以下、特に好ましくは900nm3以上1800nm3以下、最も好ましくは900nm3以上1500nm3以下である。一般的に磁気テープMTのノイズは粒子個数の平方根に反比例(すなわち粒子体積の平方根に比例)するため、粒子体積をより小さくすることで、良好な電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。したがって、磁性粉の平均粒子体積が5600nm3以下であると、磁性粉の平均粒子サイズを22nm以下とする場合と同様の効果に、良好な電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。一方、磁性粉の平均粒子体積が250nm3以上であると、磁性粉の平均粒子サイズを8nm以上とする場合と同様の効果が得られる。
ε酸化鉄粒子が球状またはほぼ球状を有している場合には、磁性粉の平均粒子体積は以下のようにして求められる。まず、上記の磁性粉の平均粒子サイズの算出方法と同様にして、平均長軸長DLaveを求める。次に、以下の式により、磁性粉の平均粒子体積Vを求める。
V=(π/6)×DLave3
ε酸化鉄粒子が立方体状またはほぼ立方体状を有している場合には、磁性粉の平均粒子体積は以下のようにして求められる。まず、測定対象となる磁気テープMTをFIB法等により加工して薄片を作製し、TEMにより薄片の断面観察を行う。続いて、撮影したTEM写真から、TEM断面と平行な面を有する50個のε酸化鉄粒子を無作為に選び出し、各ε酸化鉄粒子の一辺の長さLを測定する。次に、測定した50個のε酸化鉄粒子の一辺の長さLを単純に平均(算術平均)して平均の辺の長さLaveを求める。
V=Lave3
(結着剤)
結着剤としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−塩化ビニル共重合体、メタクリル酸エステル−エチレン共重合体、ポリフッ化ビニル、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(セルロースアセテートブチレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロセルロース)、スチレンブタジエン共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、合成ゴム等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
上記の全ての結着剤には、磁性粉の分散性を向上させる目的で、−SO3M、−OSO3M、−COOM、P=O(OM)2(但し、式中Mは水素原子またはリチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属を表す)や、−NR1R2、−NR1R2R3+X-で表される末端基を有する側鎖型アミン、>NR1R2+X-で表される主鎖型アミン(但し、式中R1、R2、R3は水素原子または炭化水素基を表し、X-はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン元素イオン、無機イオンまたは有機イオンを表す。)、さらに−OH、−SH、−CN、エポキシ基等の極性官能基が導入されていてもよい。これら極性官能基の結着剤への導入量は、10-1〜10-8モル/gであるのが好ましく、10-2〜10-6モル/gであるのがより好ましい。
(潤滑剤)
潤滑剤としては、例えば、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸と、炭素数2〜12の1価〜6価アルコールのいずれかとのエステル、これらの混合エステル、ジ脂肪酸エステル、トリ脂肪酸エステル等が挙げられる。潤滑剤の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ペンチル、ステアリン酸ヘプチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル等が挙げられる。
(帯電防止剤)
帯電防止剤としては、例えば、カーボンブラック、天然界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が挙げられる。
(研磨剤)
研磨剤としては、例えば、α化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、窒化珪素、チタンカ−バイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、2硫化モリブデン、磁性酸化鉄の原料を脱水、アニール処理した針状α酸化鉄、必要によりそれらをアルミおよび/またはシリカで表面処理したもの等が挙げられる。
(硬化剤)
硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)と活性水素化合物との付加体等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)と活性水素化合物との付加体等の脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。これらポリイソシアネートの重量平均分子量は、100〜3000の範囲であることが望ましい。
(防錆剤)
防錆剤としては、例えばフェノール類、ナフトール類、キノン類、窒素原子を含む複素環化合物、酸素原子を含む複素環化合物、硫黄原子を含む複素環化合物等が挙げられる。
(非磁性補強粒子)
非磁性補強粒子として、例えば、酸化アルミニウム(α、βまたはγアルミナ)、酸化クロム、酸化珪素、ダイヤモンド、ガーネット、エメリー、窒化ホウ素、チタンカーバイト、炭化珪素、炭化チタン、酸化チタン(ルチル型またはアナターゼ型の酸化チタン)等が挙げられる。
(下地層)
下地層42は、非磁性粉および結着剤を含む非磁性層である。下地層42が、必要に応じて、潤滑剤、帯電防止剤、硬化剤および防錆剤等のうちの少なくとも1種の添加剤をさらに含んでいてもよい。
下地層42の平均厚みは、好ましくは0.3μm以上2.0μm以下、より好ましくは0.5μm以上1.4μm以下である。なお、下地層42の平均厚みは、磁性層43の平均厚みと同様にして求められる。但し、TEM像の倍率は、下地層42の厚みに応じて適宜調整される。下地層42の平均厚みが2.0μm以下であると、外力による磁気テープMTの伸縮性がさらに高くなるため、テンションコントロールによる磁気テープMTの幅の調整がさらに容易となる。
(非磁性粉)
非磁性粉は、例えば無機粒子粉または有機粒子粉の少なくとも1種を含む。また、非磁性粉は、カーボンブラック等の炭素粉を含んでいてもよい。なお、1種の非磁性粉を単独で用いてもよいし、2種以上の非磁性粉を組み合わせて用いてもよい。無機粒子は、例えば、金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物または金属硫化物等を含む。非磁性粉の形状としては、例えば、針状、球状、立方体状、板状等の各種形状が挙げられるが、これらの形状に限定されるものではない。
(結着剤)
結着剤は、上述の磁性層43と同様である。
(添加剤)
潤滑剤、帯電防止剤、硬化剤および防錆剤はそれぞれ、上述の磁性層43と同様である。
(バック層)
バック層44は、結着剤および非磁性粉を含む。バック層44が、必要に応じて潤滑剤、硬化剤および帯電防止剤等のうちの少なくとも1種の添加剤をさらに含んでいてもよい。結着剤および非磁性粉は、上述の下地層42と同様である。
非磁性粉の平均粒子サイズは、好ましくは10nm以上150nm以下、より好ましくは15nm以上110nm以下である。非磁性粉の平均粒子サイズは、上記の磁性粉の平均粒子サイズと同様にして求められる。非磁性粉が、2以上の粒度分布を有する非磁性粉を含んでいてもよい。
バック層44の平均厚みの上限値は、好ましくは0.6μm以下である。バック層44の平均厚みの上限値が0.6μm以下であると、磁気テープMTの平均厚みが5.6μm以下である場合でも、下地層42や基体41の厚みを厚く保つことができるので、磁気テープMTの記録再生装置50内での走行安定性を保つことができる。バック層44の平均厚みの下限値は特に限定されるものではないが、例えば0.2μm以上である。
バック層44の平均厚みは以下のようにして求められる。まず、1/2インチ幅の磁気テープMTを準備し、それを250mmの長さに切り出し、サンプルを作製する。次に、測定装置としてMitutoyo社製レーザーホロゲージを用いて、サンプルの厚みを5点以上で測定し、それらの測定値を単純に平均(算術平均)して、磁気テープMTの平均厚みtT[μm]を算出する。なお、測定位置は、サンプルから無作為に選ばれるものとする。続いて、サンプルのバック層44をMEK(メチルエチルケトン)または希塩酸等の溶剤で除去する。その後、再び上記のレーザーホロゲージを用いてサンプルの厚みを5点以上で測定し、それらの測定値を単純に平均(算術平均)して、バック層44を除去した磁気テープMTの平均厚みtB[μm]を算出する。なお、測定位置は、サンプルから無作為に選ばれるものとする。その後、以下の式よりバック層44の平均厚みtb[μm]を求める。
tb[μm]=tT[μm]−tB[μm]
(磁気テープの平均厚み)
磁気テープMTの平均厚み(平均全厚)の上限値が、好ましくは5.6μm以下、より好ましくは5.0μm以下、さらにより好ましくは4.6μm以下、特に好ましくは4.4μm以下である。磁気テープMTの平均厚みが5.6μm以下であると、1データカートリッジ内に記録できる記録容量を一般的な磁気テープよりも高めることができる。磁気テープMTの平均厚みの下限値は特に限定されるものではないが、例えば3.5μm以上である。
磁気テープMTの平均厚みは、上述のバック層44の平均厚みの求め方において説明した手順により求められる。
(磁気テープの幅変化に関する規定)
温度、相対湿度が(10℃、10%)、(10℃、80%)、(29℃、80%)、(45℃、10%)である4つの環境下で測定された磁気テープMTの幅の平均値のうちの最大値、最小値をそれぞれwmax、wminとした場合、wmaxおよびwminが以下の関係式を満たす。
(wmax−wmin)/wmin≦400[ppm]
wmaxおよびwminが上記の関係式(1)を満たすことで、データトラック幅Wが1500nm以下である磁気テープMTにおいて、オフトラックを抑制することができる。
図8を参照して、磁気テープMTの幅の測定に用いられる測定装置210について説明する。この測定装置210は、台座211と、支持柱212と、発光器213、受光器214、支持板215と、5本の支持部材2161〜2165と、固定部217とを備える。
台座211は、矩形の板状を有する。台座211の中央には、受光器214が設けられている。支持柱212は、台座211の中心から一方の長辺側にずれた位置に、受光器214に隣接して立てられている。台座211の一方の短辺側には、固定部217が設けられている。
支持柱212の先端部には、発光器213が支持されている。発光器213と受光器214とは対向する。測定時には、対向する発光器213と受光器214の間に、支持部材2161〜2165に支持されたサンプル10Sが配置される。発光器213および受光器214は、図示しないPC(パーソナルコンピュータ)に接続され、このPCの制御に基づき、支持部材2161〜2165に支持されたサンプル10Sの幅を測定し、測定結果をPCに出力する。
発光器213および受光器214には、キーエンス社製のデジタル寸法測定器LS−7000が組み込まれている。発光器213は、支持部材2161〜2165に支持されたサンプル10Sの幅方向に平行な線状の光をサンプル10Sに照射する。受光器214は、サンプル10Sに遮断されなかった光量を計測することにより、磁気テープMTの幅を測定する。
支持柱212のおよそ半分の高さ位置には、細長い矩形状の支持板215が固定されている。支持板215は、この支持板215の長辺が台座211の主面と平行となるように支持されている。支持板215の一方の主面には、5本の支持部材2161〜2165が支持されている。支持部材2161〜2165は、円柱の棒状を有し、サンプル10S(磁気テープMT)のバック面を支持する。5本の支持部材2161〜2165(特にその表面)はいずれもステンレス鋼SUS304により構成され、その表面粗さRz(最大高さ)は0.15μm〜0.3μmである。
ここで、5本の支持部材2161〜2165の配置を、図8を参照しながら説明する。図8に示されるとおり、サンプル10Sは、5本の支持部材2161〜2165に乗せられている。以下では、5本の支持部材2161〜2165を、固定部217に最も近いほうから「第1支持部材2161」、「第2支持部材2162」、「第3支持部材2163」(スリット216Aを有する)、「第4支持部材2164」、および「第5支持部材2165」(重り233に最も近い)と適宜称する。これら5本の第1〜第5支持部材2161〜2165の直径はいずれも、7mmである。第1支持部材2161と第2支持部材2162との距離d1(特にはこれら支持部材の中心軸の間の距離)は20mmである。第2支持部材2162と第3支持部材2163との距離d2は30mmである。第3支持部材2163と第4支持部材2164との距離d3は30mmである。第4支持部材2164と第5支持部材2165との距離d4は20mmである。
また、サンプル10Sのうち第2支持部材2162、第3支持部材2163、および第4支持部材2164の間に乗っている部分が、重力方向に対して略垂直な平面を形成するように、これら3つの支持部材2162〜2164は配置されている。また、サンプル10Sが、第1支持部材2161と第2支持部材2162との間では、上記略垂直の平面に対してθ1=30°の角度を形成するように、第1支持部材2161および第2支持部材2162は配置されている。さらに、サンプル10Sが、第4支持部材2164と第5支持部材2165との間では、上記の略垂直な平面に対してθ2=30°の角度を形成するように、第4支持部材2164および第5支持部材2165は配置されている。また、5本の第1〜第5支持部材2161〜2165のうち、第3支持部材2163は回転しないように固定されているが、その他の4本の第1、第2、第4、第5支持部材2161、2162、2164、2165は全て回転可能である。
支持部材2161〜2165のうち、発光器213および受光器214の間に位置し、かつ、固定部217と荷重をかける部分とのほぼ中心に位置する支持部材2163にはスリット216Aが設けられている。スリット216Aを介して発光器213から受光器214に光Lが照射されるようになっている。スリット216Aのスリット幅は1mmであり、光Lは、スリット216Aの枠に遮られることなく、当該スリット216Aを通り抜けられる。
最大値wmaxおよび最小値wminは、上述した構成を有する測定装置210を用いて、以下のようにして求められる。まず、1/2インチ幅の磁気テープMTを準備し、磁気テープMTの長手方向(走行方向)に400mごとに合計3か所の異なる位置から3つのテープ片(長さ1m)を取得し、3つのサンプル10Sとする。
続いて、取得した3つのサンプル10Sの幅を次のようにして測定する。まず、サンプル10Sを測定装置210にセットする。具体的には、長尺状のサンプル10Sの一端を固定部217により固定する。次に、サンプル10Sを、5本の略円柱状且つ棒状の支持部材2161〜2165に載せる。この際、サンプル10Sは、そのバック面が5本の支持部材2161〜2165に接するように、これら支持部材2161〜2165に載せされる。
次に、(10℃、10%)の環境に制御されたチャンバー(一般的な恒温槽)内に測定装置210を収容したのち、サンプル10Sの他端に、0.2Nの荷重をかけるための重り218を取り付け、サンプル10Sを上記環境内に2時間以上保持し、磁気テープMTを上記環境に馴染ませる。2時間置以上保持したのち、発光器213および受光器214によりサンプル10Sの幅を測定する。具体的には、0.2Nの荷重218が取り付けられた状態で、発光器213から受光器214に向けて光Lを照射し、長手方向に荷重が加えられたサンプル10Sの幅を測定する。当該幅の測定は、サンプル10Sがカールしていない状態で行われる。
次に、上述のようにして測定した3つのサンプル10Sの幅を単純に平均(算術平均)する。これにより、(10℃、10%)の環境下における磁気テープMTの幅の平均値wが求められる。
次に、(10℃、10%)の環境下における磁気テープMTの幅の平均値wを求めたのと同様の手順で、(10℃、80%)、(29℃、80%)、(45℃、10%)それぞれの環境下における磁気テープMTの幅の平均値wを求める。そして、上述のようにして求められた4つの環境下における磁気テープMTの幅の平均値wのうちから、最大値wmax、最小値wminを選び出す。
(保磁力Hc)
磁気テープMTの長手方向における磁性層43の保磁力Hcの上限値が、好ましくは2000Oe以下、より好ましくは1900Oe以下、さらにより好ましくは1800Oe以下である。長手方向における磁性層43の保磁力Hcが2000Oe以下であると、高記録密度であっても十分な電磁変換特性を有することができる。
磁気テープMTの長手方向に測定した磁性層43の保磁力Hcの下限値が、好ましくは1000Oe以上である。長手方向に測定した磁性層43の保磁力Hcが1000Oe以上であると、記録ヘッドからの漏れ磁束による減磁を抑制することができる。
上記の保磁力Hcは以下のようにして求められる。まず、長尺状の磁気テープMTから測定サンプルを切り出し、振動試料型磁力計(Vibrating Sample Magnetometer:VSM)を用いて測定サンプルの長手方向(磁気テープMTの走行方向)に測定サンプル全体のM−Hループを測定する。次に、アセトンまたはエタノール等を用いて塗膜(下地層42、磁性層43およびバック層44等)を払拭し、基体41のみを残してバックグラウンド補正用のサンプルとし、VSMを用いて基体41の長手方向(磁気テープMTの走行方向)に基体41のM−Hループを測定する。その後、測定サンプル全体のM−Hループから基体41のM−Hループを引き算して、バックグラウンド補正後のM−Hループを得る。得られたM−Hループから保磁力Hcを求める。なお、上記のM−Hループの測定はいずれも、25℃にて行われるものとする。また、M−Hループを磁気テープMTの長手方向に測定する際の“反磁界補正”は行わないものとする。また、使用するVSMの感度に合わせて、測定するサンプルを複数枚重ねてM−Hループを測定してもよい。
(角形比)
磁気テープMTの垂直方向(厚み方向)における磁性層43の角形比S1が、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらにより好ましくは75%以上、特に好ましくは80%以上、最も好ましくは85%以上である。角形比S1が65%以上であると、磁性粉の垂直配向性が十分に高くなるため、より優れた電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。
角形比S1は以下のようにして求められる。まず、長尺状の磁気テープMTから測定サンプルを切り出し、VSMを用いて磁気テープMTの垂直方向(厚み方向)に対応する測定サンプル全体のM−Hループを測定する。次に、アセトンまたはエタノール等を用いて塗膜(下地層42、磁性層43およびバック層44等)を払拭し、基体41のみを残して、バックグラウンド補正用のサンプルとし、VSMを用いて基体41の垂直方向(磁気テープMTの垂直方向)に対応する基体41のM−Hループを測定する。その後、測定サンプル全体のM−Hループから基体41のM−Hループを引き算して、バックグラウンド補正後のM−Hループを得る。得られたM−Hループの飽和磁化Ms(emu)および残留磁化Mr(emu)を以下の式に代入して、角形比S1(%)を計算する。なお、上記のM−Hループの測定はいずれも、25℃にて行われるものとする。また、M−Hループを磁気テープMTの垂直方向に測定する際の“反磁界補正”は行わないものとする。また、使用するVSMの感度に合わせて、測定するサンプルを複数枚重ねてM−Hループを測定してもよい。
角形比S1(%)=(Mr/Ms)×100
磁気テープMTの長手方向(走行方向)における磁性層43の角形比S2が、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、さらにより好ましくは25%以下、特に好ましくは20%以下、最も好ましくは15%以下である。角形比S2が35%以下であると、磁性粉の垂直配向性が十分に高くなるため、より優れた電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。
角形比S2は、M−Hループを磁気テープMTおよび基体41の長手方向(走行方向)に測定すること以外は角形比S1と同様にして求められる。
(Hc2/Hc1)
垂直方向における磁性層43の保磁力Hc1と、長手方向における磁性層43の保磁力Hc2の比Hc2/Hc1が、Hc2/Hc1≦0.8、好ましくはHc2/Hc1≦0.75、より好ましくはHc2/Hc1≦0.7、さらにより好ましくはHc2/Hc1≦0.65、特に好ましくはHc2/Hc1≦0.6の関係を満たす。保磁力Hc1、Hc2がHc2/Hc1≦0.8の関係を満たすことで、磁性粉の垂直配向度を高めることができる。したがって、磁化遷移幅を低減し、かつ信号再生時に高出力の信号を得ることができるので、電磁変換特性(例えばSNR)を向上することができる。なお、上述したように、Hc2が小さいと、記録ヘッドからの垂直方向の磁界により感度良く磁化が反応するため、良好な記録パターンを形成することができる。
比Hc2/Hc1がHc2/Hc1≦0.8である場合、磁性層43の平均厚みが90nm以下であることが特に有効である。磁性層43の平均厚みが90nmを超えると、記録ヘッドとしてリング型ヘッドを用いた場合に、磁性層43の下部領域(下地層42側の領域)が長手方向に磁化されてしまい、磁性層43を厚み方向に均一に磁化することができなくなる虞がある。したがって、比Hc2/Hc1をHc2/Hc1≦0.8としても(すなわち、磁性粉の垂直配向度を高めても)、電磁変換特性(例えばSNR)を向上することができなくなる虞がある。
Hc2/Hc1の下限値は特に限定されるものではないが、例えば0.5≦Hc2/Hc1である。なお、Hc2/Hc1は磁性粉の垂直配向度を表しており、Hc2/Hc1が小さいほど磁性粉の垂直配向度が高くなる。
垂直方向における磁性層43の保磁力Hc1は、上述の角形比S1の算出方法と同様にして、バックグラウンド補正後のM−Hループを得たのち、このM−Hループから求められる。長手方向における磁性層43の保磁力Hc2の算出方法は、上述した通りである。
(SFD)
磁気テープMTのSFD(Switching Field Distribution)曲線において、メインピーク高さXと磁場ゼロ付近のサブピークの高さYとのピーク比X/Yが、好ましくは3.0以上、より好ましくは5.0以上、さらにより好ましくは7.0以上、特に好ましくは10.0以上、最も好ましくは20.0以上である(図9参照)。ピーク比X/Yが3.0以上であると、実際の記録に寄与するε酸化鉄粒子の他にε酸化鉄特有の低保磁力成分(例えば軟磁性粒子や超常磁性粒子等)が磁性粉中に多く含まれることを抑制できる。したがって、記録ヘッドからの漏れ磁界により、隣接するトラックに記録された磁化信号が劣化することを抑制できるので、より優れた電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。ピーク比X/Yの上限値は特に限定されるものではないが、例えば100以下である。
上記のピーク比X/Yは、以下のようにして求められる。まず、上記の角形比S1の測定方法と同様にして、バックグラウンド補正後のM−Hループを得る。次に、得られたM−HループからSFDカーブを算出する。SFDカーブの算出には測定機に付属のプログラムを用いてもよいし、その他のプログラムを用いてもよい。算出したSFDカーブがY軸(dM/dH)を横切る点の絶対値を「Y」とし、M−Hループで言うところの保磁力Hc近傍に見られるメインピークの高さを「X」として、ピーク比X/Yを算出する。なお、M−Hループの測定は、上記の保磁力Hcの測定方法と同様に25℃にて行われるものとする。また、M−Hループを磁気テープMTの厚み方向(垂直方向)に測定する際の“反磁界補正”は行わないものとする。また、使用するVSMの感度に合わせて、測定するサンプルを複数枚重ねてM−Hループを測定してもよい。
(活性化体積Vact)
活性化体積Vactが、好ましくは8000nm3以下、より好ましくは6000nm3以下、さらにより好ましくは5000nm3以下、特に好ましくは4000nm3以下、最も好ましくは3000nm3以下である。活性化体積Vactが8000nm3以下であると、磁性粉の分散状態が良好になるため、ビット反転領域を急峻にすることができ、記録ヘッドからの漏れ磁界により、隣接するトラックに記録された磁化信号が劣化することを抑制できる。したがって、より優れた電磁変換特性(例えばSNR)が得られなくなる虞がある。
上記の活性化体積Vactは、Street&Woolleyにより導出された下記の式により求められる。
Vact(nm3)=kB×T×Χirr/(μ0×Ms×S)
(但し、kB:ボルツマン定数(1.38×10-23J/K)、T:温度(K)、Χirr:非可逆磁化率、μ0:真空の透磁率、S:磁気粘性係数、Ms:飽和磁化(emu/cm3))
上記式に代入される非可逆磁化率Χirr、飽和磁化Msおよび磁気粘性係数Sは、VSMを用いて以下のようにして求められる。なお、VSMによる測定方向は、磁気テープMTの厚み方向(垂直方向)とする。また、VSMによる測定は、長尺状の磁気テープMTから切り出された測定サンプルに対して25℃にて行われるものとする。また、M−Hループを磁気テープMTの厚み方向(垂直方向)に測定する際の“反磁界補正”は行わないものとする。
(非可逆磁化率Χirr)
非可逆磁化率Χirrは、残留磁化曲線(DCD曲線)の傾きにおいて、残留保磁力Hr付近における傾きと定義される。まず、磁気テープMT全体に−1193kA/m(15kOe)の磁界を印加し、磁界をゼロに戻し残留磁化状態とする。その後、反対方向に約15.9kA/m(200Oe)の磁界を印加し再びゼロに戻し残留磁化量を測定する。その後も同様に、先ほどの印加磁界よりもさらに15.9kA/m大きい磁界を印加しゼロに戻す測定を繰り返し行い、印加磁界に対して残留磁化量をプロットしDCD曲線を測定する。得られたDCD曲線から、磁化量ゼロとなる点を残留保磁力Hrとし、さらにDCD曲線を微分し、各磁界におけるDCD曲線の傾きを求める。このDCD曲線の傾きにおいて、残留保磁力Hr付近の傾きがΧirrとなる。
(飽和磁化Ms)
まず、上記の角形比S1の測定方法と同様にして、バックグラウンド補正後のM−Hループを得る。次に、得られたM−Hループの飽和磁化Ms(emu)の値と、測定サンプル中の磁性層43の体積(cm3)から、Ms(emu/cm3)を算出する。なお、磁性層43の体積は測定サンプルの面積に磁性層43の平均厚みを乗ずることにより求められる。磁性層43の体積の算出に必要な磁性層43の平均厚みの算出方法は、上述した通りである。
(磁気粘性係数S)
まず、磁気テープMT(測定サンプル)全体に−1193kA/m(15kOe)の磁界を印加し、磁界をゼロに戻し残留磁化状態とする。その後、反対方向に、DCD曲線より得られた残留保磁力Hrの値と同等の磁界を印加する。磁界を印加した状態で1000秒間、磁化量を一定の時間間隔で継続的に測定する。このようにして得られた、時間tと磁化量M(t)の関係を以下の式に照らし合わせて、磁気粘性係数Sを算出する。
M(t)=M0+S×ln(t)
(但し、M(t):時間tの磁化量、M0:初期の磁化量、S:磁気粘性係数、ln(t):時間の自然対数)
(寸法変化量Δw)
磁気テープMTの長手方向のテンション変化に対する磁気テープMTの幅方向の寸法変化量Δw[ppm/N]は、好ましくは650ppm/N≦Δwであり、より好ましくは700ppm/N≦Δwであり、さらにより好ましくは750ppm/N≦Δwであり、特に好ましくは800ppm/N≦Δwである。寸法変化量Δwが650ppm/N≦Δwであると、記録再生装置50による磁気テープMTの長手方向のテンションの調整により、磁気テープMTの幅の変化をさらに効果的に抑制することができる。寸法変化量Δwの上限値は特に限定されるものではないが、例えばΔw≦1700000ppm/N、好ましくはΔw≦20000ppm/N、より好ましくはΔw≦8000ppm/N、さらにより好ましくはΔw≦5000ppm/N、Δw≦4000ppm/N、Δw≦3000ppm/N、またはΔw≦2000ppm/Nでありうる。
寸法変化量Δwは、基体41の選択により所望の値に設定することが可能である。例えば、寸法変化量Δwは、基体41の厚みおよび基体41の材料の少なくとも一方を選択することにより所望の値に設定され得る。また、寸法変化量Δwは、例えば基体41の幅方向および長手方向の延伸強度を調整することによって、所望の値に設定されてもよい。例えば、基体41の幅方向により強く延伸することによって、寸法変化量Δwはより低下し、反対に、基体41の長手方向における延伸を強めることによって、寸法変化量Δwは上昇する。
寸法変化量Δwは以下のようにして求められる。まず、1/2インチ幅の磁気テープMTを準備し、それを250mmの長さに切り出し、サンプル10Sを取得する。次に、サンプル10Sの長手方向に0.2N、0.6N、1.0Nの順で荷重をかけ、0.2N、0.6N、および1.0Nの荷重におけるサンプル10Sの幅を測定する。続いて、以下の式より寸法変化量Δwを求める。なお、0.6Nの荷重をかけた場合の測定は、測定において異常が生じていないかを確認するため(特にはこれら3つの測定結果が直線的になっていることを確認するため)に行われるものであり、その測定結果は以下の式において用いられない。
(但し、式中、D(0.2N)およびD(1.0N)はそれぞれ、サンプル10Sの長手方向に0.2Nおよび1.0Nの荷重をかけたときのサンプル10Sの幅を示す。)
各荷重をかけたときのサンプル10Sの幅は以下のようにして測定される。まず、上述した最大値wmaxおよび最小値wminの求め方と同様にして、取得したサンプル10Sを測定装置210にセットする。次に、温度25℃相対湿度50%の一定環境下に制御されたチャンバー内に測定装置210を収容したのち、サンプル10Sの他端に、0.2Nの荷重をかけるための重り233を取り付け、サンプル10Sを上記環境内に2時間以上保持し、磁気テープMTを上記環境に馴染ませる。2時間置以上保持したのち、サンプル10Sの幅を測定する。次に、0.2Nの荷重をかけるための重りを、0.6Nの荷重をかけるための重りに変更し、当該変更の5分後にサンプル10Sの幅を測定する。最後に、1.0Nの荷重をかけるための重りに変更し、当該変更の5分後にサンプル10Sの幅を測定する。
(温度膨張係数α)
磁気テープMTの温度膨張係数αは、6[ppm/℃]≦α≦8[ppm/℃]であることが好ましい。温度膨張係数αが上記範囲であると、記録再生装置50による磁気テープMTの長手方向のテンションの調整により、磁気テープMTの幅の変化を更に抑制することができる。
温度膨張係数αは以下のようにして求められる。まず、寸法変化量Δwの測定方法と同様にしてサンプル10Sを作製し、寸法変化量Δwの測定方法と同様の測定装置210にサンプル10Sをセットしたのち、測定装置210を温度29℃相対湿度24%の一定環境に制御されたチャンバー内に収容する。次に、サンプル10Sの長手方向に0.2Nの荷重をかけ、上記環境にサンプル10Sを馴染ませる。その後、相対湿度24%を保持したまま、45℃、29℃、10℃の順で温度を変え、45℃、10℃におけるサンプル10Sの幅を測定し、以下の式より温度膨張係数αを求める。なお、温度29℃におけるサンプル10Sの幅の測定は、測定において異常が生じていないかを確認するため(特にはこれら3つの測定結果が直線的になっていることを確認するため)に行われるものであり、その測定結果は以下の式において用いられない。
(但し、式中、D(45℃)、D(10℃)はそれぞれ、温度45℃、10℃におけるサンプル10Sの幅を示す。)
(湿度膨張係数β)
磁気テープMTの湿度膨張係数βは、β≦5[ppm/%RH]であることが好ましい。湿度膨張係数βが上記範囲であると、記録再生装置50による磁気テープMTの長手方向のテンションの調整により、磁気テープMTの幅の変化を更に抑制することができる。
湿度膨張係数βは以下のようにして求められる。まず、寸法変化量Δwの測定方法と同様にしてサンプル10Sを作製し、寸法変化量Δwの測定方法と同様の測定装置210にサンプル10Sをセットしたのち、測定装置210を温度29℃相対湿度24%の一定環境に制御されたチャンバー内に収容する。次に、サンプル10Sの長手方向に0.2Nの荷重をかけ、上記環境にサンプル10Sを馴染ませる。その後、温度29℃を保持したまま、80%、24%、10%の順で相対湿度を変え、80%、10%におけるサンプル10Sの幅を測定し、以下の式より湿度膨張係数βを求める。なお、湿度24%におけるサンプル10Sの幅の測定は、測定において異常が生じていないかを確認するため(特にはこれら3つの測定結果が直線的になっていることを確認するため)に行われるものであり、その測定結果は以下の式において用いられない。
(但し、式中、D(80%)、D(10%)はそれぞれ、相対湿度80%、10%におけるサンプル10Sの幅を示す。)
(ポアソン比ρ)
磁気テープMTのポアソン比ρは、0.3≦ρであることが好ましい。ポアソン比ρが上記範囲であると、記録再生装置50による磁気テープMTの長手方向のテンションの調整により、磁気テープMTの幅の変化を更に抑制することができる。
ポアソン比ρは以下のようにして求められる。まず、1/2インチ幅の磁気テープMTを準備し、それを150mmの長さに切り出しサンプルを作製したのち、そのサンプルの中央部に6mm×6mmのサイズのマークを付与する。次に、チャック間の距離が100mmとなるようにサンプルの長手方向の両端部をチャックし、初期荷重2Nをかけ、その際のサンプルの長手方向のマークの長さを初期長とし、サンプルの幅方向のマークの幅を初期幅とする。続いて、引張速度0.5mm/minで、インストロンタイプの万能引張試験装置にて引張り、キーエンス製イメージセンサーにて、サンプルの長手方向のマークの長さ、およびサンプルの幅方向のマークの幅それぞれの寸法変化量を測定する。その後、以下の式よりポアソン比ρを求める。
(長手方向の弾性限界値σMD)
磁気テープMTの長手方向の弾性限界値σMDが、0.8[N]≦σMDであることが好ましい。弾性限界値σMDが上記範囲であると、記録再生装置50による磁気テープMTの長手方向のテンションの調整により、磁気テープMTの幅の変化を更に抑制することができる。また、記録再生装置50側の制御がし易くなる。磁気テープMTの長手方向の弾性限界値σMDの上限値は特に限定されるものではないが、例えばσMD≦5.0[N]である。弾性限界値σMDが、弾性限界測定を行う際の引張速度Vに依らないことが好ましい。弾性限界値σMDが上記引張速度Vに依らないことで、記録再生装置50における磁気テープMTの走行速度や、記録再生装置50のテンション調整速度とその応答性に影響を受けること無く、効果的に磁気テープMTの幅の変化を抑制できるからである。弾性限界値σMDは、例えば、下地層42、磁性層43およびバック層44の硬化条件の選択、基体41の材質の選択により所望の値に設定される。例えば、下地層形成用塗料、磁性層形成用塗料およびバック層形成用塗料の硬化時間を長くするほど、あるいは硬化温度を上げるほど、これらの各塗料に含まれるバインダと硬化剤の反応が促進する。これにより、弾性的な特徴が向上し、弾性限界値σMDが向上する。
弾性限界値σMDは以下のようにして求められる。まず、1/2インチ幅の磁気テープMTを準備し、それを150mmの長さに切り出しサンプルを作製し、チャック間距離λ0がλ0=100mmとなるように、万能引張試験装置にサンプルの長手方向の両端をチャックする。次に、引張速度0.5mm/minでサンプルを引張り、チャック間距離λ(mm)に対する荷重σ(N)を連続的に計測する。続いて、得られたλ(mm)、σ(N)のデータを用い、Δλ(%)とσ(N)の関係をグラフ化する。但し、Δλ(%)は以下の式により与えられる。
Δλ(%)=((λ−λ0)/λ0)×100
次に、上記のグラフ中、σ≧0.2Nの領域で、グラフが直線となる領域を算出し、その最大荷重σを弾性限界値σMD(N)とする。
(層間摩擦係数μ)
磁性面とバック面の層間摩擦係数μが、0.20≦μ≦0.80であることが好ましい。層間摩擦係数μが上記範囲であると、磁気テープMTをリール(例えば図2のリール13)に巻いたときに、巻ズレが発生することを抑制できる。より具体的には、層間摩擦係数μがμ<0.20であると、カートリッジリールに既に巻かれている磁気テープMTのうち最外周に位置する部分の磁性面と、その外側に新たに巻こうとしている磁気テープMTのバック面との間の層間摩擦が極端に低い状態となり、新たに巻こうとしている磁気テープMTが、既に巻かれている磁気テープMTのうち最外周に位置する部分の磁性面からズレやすくなる。したがって、磁気テープMTの巻ズレが発生する。一方、層間摩擦係数μが0.80<μであると、ドライブ側リールの最外周から正に巻き出されようとしている磁気テープMTのバック面と、その直下に位置する、未だドライブリールに巻かれたままの磁気テープMTの磁性面との間の層間摩擦が極端に高い状態となり、上記バック面と上記磁性面とが貼り付いた状態となる。したがって、カートリッジリールへと向かう磁気テープMTの動作が不安定となり、これにより磁気テープMTの巻ズレが発生する。
層間摩擦係数μは以下のようにして求められる。まず、1インチ径の円柱に、1/2インチ幅の磁気テープMTをバック面を表にして巻き付け、磁気テープMTを固定する。次に、この円柱に対し、1/2インチ幅の磁気テープMTを今度は磁性面が接触する様に抱き角θ(°)=180°+1°〜180°−10°で接触させ、磁気テープMTの一端を可動式ストレインゲージと繋ぎ、他方端にテンションT0=0.6(N)を付与する。可動式ストレインゲージを0.5mm/sにて8往復させた際の各往路でのストレインゲージの読みT1(N)〜T8(N)を測定し、T4〜T8の平均値をT
ave(N)とする。その後、以下の式より層間摩擦係数μを求める。
(バック面の表面粗度Rb)
バック面の表面粗度(バック層44の表面粗度)Rbが、Rb≦6.0[nm]であることが好ましい。バック面の表面粗度Rbが上記範囲であると、電磁変換特性を向上することができる。
バック面の表面粗度Rbは以下のようにして求められる。まず、1/2インチ幅の磁気テープMTを準備し、そのバック面を上にしてスライドガラスに貼り付け、試験片とする。次に、その試験片のバック面を下記の光干渉を用いた非接触粗度計により、面粗度を測定する。
装置:光干渉を用いた非接触粗度計
(株式会社菱化システム製 非接触表面・層断面形状計測システム VertScan R5500GL-M100-AC)
対物レンズ:20倍(約237μm×178μm視野)
分解能:640points×480points
測定モード:phase
波長フィルター:520nm
面補正:2次多項式近似面にて補正
上述のようにして、長手方向で少なくとも5点以上の位置にて面粗度を測定したのち、各位置で得られた表面プロファイルから自動計算されたそれぞれの算術平均粗さSa(nm)の平均値をバック面の表面粗度Rb(nm)とする。
(磁気テープの長手方向のヤング率)
磁気テープMTの長手方向のヤング率は、好ましくは8.0GPa未満、より好ましくは7.9GPa以下、さらにより好ましくは7.5GPa以下、特に好ましくは7.1GPa以下である。磁気テープMTの長手方向のヤング率が8.0GPa未満であると、外力による磁気テープMTの伸縮性がさらに高くなるため、テンションコントロールによる磁気テープMTの幅の調整がさらに容易となる。したがって、オフトラックをさらに適切に抑制することができ、磁気テープMTに記録されたデータをさらに正確に再生することが可能となる。
磁気テープMTの長手方向のヤング率は、外力による磁気テープMTの長手方向における伸縮のし難さを示す値であり、この値が大きいほど外力により磁気テープMTは長手方向に伸縮し難く、この値が小さいほど外力により磁気テープMTは長手方向に伸縮しやすい。
なお、磁気テープMTの長手方向のヤング率は、磁気テープMTの長手方向に関する値であるが、磁気テープMTの幅方向の伸縮のし難さとも相関がある。つまり、この値が大きいほど磁気テープMTは外力により幅方向に伸縮し難く、この値が小さいほど磁気テープMTは外力により幅方向に伸縮しやすい。したがって、テンションコントロールの観点から、磁気テープMTの長手方向のヤング率は、小さい方が有利である。
上記の磁気テープMTの長手方向のヤング率は、引っ張り試験機(島津製作所製、AG−100D)を用いて測定される。磁気テープMTを180mmの長さにカットして測定サンプルを準備する。上記引っ張り試験機に測定サンプルの幅(1/2インチ)を固定できる冶具を取り付け、測定サンプルの上下を固定する。距離は100mmにする。測定サンプルをチャック後、測定サンプルを引っ張る方向に応力を徐々にかけていく。引っ張り速度は0.1mm/minとする。この時の応力の変化と伸び量から、以下の式を用いてヤング率を計算する。
E=(ΔN/S)/(Δx/L) ×10-3
ΔN:応力の変化(N)
S:試験片の断面積(mm2)
Δx:伸び量(mm)
L:つかみ治具間距離(mm)
応力の範囲としては0.5Nから1.0Nとし、この時の応力変化(ΔN)と伸び量(Δx)を計算に使用する。
(基体41の長手方向のヤング率)
基体41の長手方向のヤング率は、好ましくは7.5GPa未満、より好ましくは7.4GPa以下、さらにより好ましくは7.0GPa以下、特に好ましくは6.6GPa以下である。基体41の長手方向のヤング率が7.5GPa未満であると、外力による磁気テープMTの伸縮性がさらに高くなるため、テンションコントロールによる磁気テープMTの幅の調整がさらに容易となる。したがって、オフトラックをさらに適切に抑制することができ、磁気テープMTに記録されたデータをさらに正確に再生することが可能となる。
上記の基体41の長手方向のヤング率は、次のようにして求められる。まず、磁気テープMTから下地層42、磁性層43およびバック層44を除去し、基体41を得る。この基体41を用いて、上記の磁気テープMTの長手方向のヤング率と同様の手順で基体41の長手方向のヤング率を求める。
基体41の厚さは、磁気テープMTの全体の厚さの半分以上を占めている。したがって、基体41の長手方向のヤング率は、外力による磁気テープMTの伸縮し難さと相関があり、この値が大きいほど磁気テープMTは外力により幅方向に伸縮し難く、この値が小さいほど磁気テープMTは外力により幅方向に伸縮しやすい。
なお、基体41の長手方向のヤング率は、磁気テープMTの長手方向に関する値であるが、磁気テープMTの幅方向の伸縮のし難さとも相関がある。つまり、この値が大きいほど磁気テープMTは外力により幅方向に伸縮し難く、この値が小さいほど磁気テープMTは外力により幅方向に伸縮しやすい。したがって、テンションコントロールの観点から、基体41の長手方向のヤング率は、小さい方が有利である。
(BET比表面積)
潤滑剤を除去した状態における磁気テープMTの全体のBET比表面積の下限値は、3.5m2/mg以上、好ましくは4m2/mg以上、より好ましくは4.5m2/mg以上、さらにより好ましくは5m2/mg以上である。BET比表面積の下限値が3.5m2/mg以上であると、繰り返し記録または再生を行った後にも(すなわち磁気ヘッドを磁気テープMTの表面に接触させて繰り返し走行を行った後にも)、磁性層43の表面と磁気ヘッドの間に対する潤滑剤の供給量の低下を抑制することができる。したがって、動摩擦係数の増加を抑制することができる。
潤滑剤を除去した状態における磁気テープMTの全体のBET比表面積の上限値は、好ましくは7m2/mg以下、より好ましくは6m2/mg以下、さらにより好ましくは5.5m2/mg以下である。BET比表面積の上限値が7m2/mg以下であると、多数回走行後にも潤滑剤を枯渇することなく十分に供給できる。したがって、動摩擦係数の増加を抑制することができる。
BJH法により求められる磁気テープMTの全体の平均細孔直径は、6nm以上11nm以下、好ましくは7nm以上10nm以下、より好ましくは7.5nm以上10nm以下である。平均細孔直径が6nm以上11nm以下であると、上述した動摩擦係数の増加を抑制する効果をさらに向上することができる。
BET比表面積および細孔分布(細孔容積、脱着時最大細孔容積の細孔直径)は以下のようにして求められる。まず、磁気テープMTをヘキサンで24時間洗浄したのち、面積0.1265m2のサイズに切り出すことにより、測定サンプルを作製する。次に、比表面積・細孔分布測定装置を用いて、BET比表面積を求める。また、BJH法により細孔分布(細孔容積、脱着時最大細孔容積の細孔直径)を求める。以下に、測定装置および測定条件を示す。
測定装置:Micromeritics社製 3FLEX
測定吸着質:N2ガス
測定圧力範囲(p/p0):0〜0.995
(算術平均粗さRa)
磁性面の算術平均粗さRaは、好ましくは2.5nm以下、より好ましくは2.0nm以下である。Raが2.5nm以下であると、より優れた電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。
上記の算術平均粗さRaは以下のようにして求められる。まず、AFM(Atomic Force Microscope)(ブルカー製、Dimension Icon)を用いて磁性層43が設けられている側の表面を観察して、断面プロファイルを取得する。次に、取得した断面プロファイルから、JIS B0601:2001に準拠して算術平均粗さRaを求める。
[磁気テープの製造方法]
次に、上述の構成を有する磁気テープMTの製造方法について説明する。まず、非磁性粉および結着剤等を溶剤に混練、分散させることにより、下地層形成用塗料を調製する。次に、磁性粉および結着剤等を溶剤に混練、分散させることにより、磁性層形成用塗料を調製する。磁性層形成用塗料および下地層形成用塗料の調製には、例えば、以下の溶剤、分散装置および混練装置を用いることができる。
上述の塗料調製に用いられる溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、乳酸エチル、エチレングリコールアセテート等のエステル系溶媒、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2−エトキシエタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、適宜混合して用いてもよい。
上述の塗料調製に用いられる混練装置としては、例えば、連続二軸混練機、多段階で希釈可能な連続二軸混練機、ニーダー、加圧ニーダー、ロールニーダー等の混練装置を用いることができるが、特にこれらの装置に限定されるものではない。また、上述の塗料調製に用いられる分散装置としては、例えば、ロールミル、ボールミル、横型サンドミル、縦型サンドミル、スパイクミル、ピンミル、タワーミル、パールミル(例えばアイリッヒ社製「DCPミル」等)、ホモジナイザー、超音波分散機等の分散装置を用いることができるが、特にこれらの装置に限定されるものではない。
次に、下地層形成用塗料を基体41の一方の主面に塗布して乾燥させることにより、下地層42を形成する。続いて、この下地層42上に磁性層形成用塗料を塗布して乾燥させることにより、磁性層43を下地層42上に形成する。なお、乾燥の際に、例えばソレノイドコイルにより、磁性粉を基体41の厚み方向に磁場配向させる。また、乾燥の際に、例えばソレノイドコイルにより、磁性粉を基体41の走行方向(長手方向)に磁場配向させたのちに、基体41の厚み方向に磁場配向させるようにしてもよい。このように長手方向に磁性粉を一旦配向させる処理を施すことで、磁性粉の垂直配向度(すなわち角形比S1)をさらに向上することができる。磁性層43の形成後、基体41の他方の主面にバック層44を形成する。これにより、磁気テープMTが得られる。
角形比S1、S2は、例えば、磁性層形成用塗料の塗膜に印加される磁場の強度、磁性層形成用塗料中における固形分の濃度、磁性層形成用塗料の塗膜の乾燥条件(乾燥温度および乾燥時間)を調整することにより所望の値に設定される。塗膜に印加される磁場の強度は、磁性粉の保磁力の2倍以上3倍以下であることが好ましい。角形比S1をさらに高めるためには(すなわち角形比S2をさらに低めるためには)、磁性層形成用塗料中における磁性粉の分散状態を向上させることが好ましい。また、角形比S1をさらに高めるためには、磁性粉を磁場配向させるための配向装置に磁性層形成用塗料が入る前の段階で、磁性粉を磁化させておくことも有効である。なお、上記の角形比S1、S2の調整方法は単独で使用されてもよいし、2以上組み合わされて使用されてもよい。
その後、得られた磁気テープMTを大径コアに巻き直し、硬化処理を行う。最後に、磁気テープMTに対してカレンダー処理を行った後、所定の幅(例えば1/2インチ幅)に裁断する。以上により、目的とする細長い長尺状の磁気テープMTが得られる。
[記録再生装置の構成]
記録再生装置50は、上述の構成を有する磁気テープMTの記録および再生を行う。記録再生装置50は、磁気テープMTの長手方向に加わるテンションを調整可能な構成を有している。また、記録再生装置50は、カートリッジ10を装填可能な構成を有している。ここでは、説明を容易とするために、記録再生装置50が、1つのカートリッジ10を装填可能な構成を有している場合について説明するが、記録再生装置50が、複数のカートリッジ10を装填可能な構成を有していてもよい。
記録再生装置50は、ネットワーク70を介してサーバ71およびパーソナルコンピュータ(以下「PC」という。)72等の情報処理装置に接続されており、これらの情報処理装置から供給されたデータをカートリッジ10に記録可能に構成されている。また、これらの情報処理装置からの要求に応じて、カートリッジ10からデータを再生し、これらの情報処理装置に供給可能に構成されている。記録再生装置50の最短記録波長は、好ましくは96nm以下、より好ましくは88nm以下、さらにより好ましくは80nm以下である。
記録再生装置50は、図1に示すように、スピンドル51と、記録再生装置50側のリール52と、スピンドル駆動装置53と、リール駆動装置54と、複数のガイドローラ55と、ヘッドユニット56と、通信部としてのリーダライタ57と、通信インターフェース(以下、I/F)58と、制御装置59とを備えている。
スピンドル51は、カートリッジ10を装着可能に構成されている。磁気テープMTには、サーボ信号としてハの字状のサーボパターンが予め記録されている。リール52は、テープローディング機構(図示せず)を介してカートリッジ10から引き出された磁気テープMTの先端(リーダーピン20)を固定可能に構成される。
スピンドル駆動装置53は、制御装置59からの命令に応じて、スピンドル51を回転させる。リール駆動装置54は、制御装置59からの命令に応じて、リール52を回転させる。複数のガイドローラ55は、カートリッジ10とリール52との間に形成されるテープパスがヘッドユニット56に対して所定の相対位置関係となるように磁気テープMTの走行をガイドする。
磁気テープMTに対してデータの記録が行われる際、または磁気テープMTからデータの再生が行われる際には、スピンドル駆動装置53およびリール駆動装置54により、スピンドル51およびリール52が回転駆動され、磁気テープMTが走行する。磁気テープMTの走行方向は、順方向(カートリッジ10側からリール52側に流れる方向)および逆方向(リール52側からカートリッジ10側へ流れる方向)での往復が可能とされている。
本実施形態では、スピンドル駆動装置53によるスピンドル51の回転の制御、およびリール駆動装置54によるリール52の回転の制御により、データ記録時またはデータ再生時における磁気テープMTの長手方向のテンションが調整可能とされる。なお、磁気テープMTのテンション調整は、スピンドル51およびリール52の回転の制御に代えて、またはこの制御に加えて、ガイドローラ55の移動の制御により行われてもよい。
リーダライタ57は、制御装置59からの命令に応じて、カートリッジメモリ11に対して第1の情報および第2の情報を書き込むことが可能に構成されている。また、リーダライタ57は、制御装置59からの命令に応じて、カートリッジメモリ11から第1の情報および第2の情報を読み出すことが可能に構成されている。リーダライタ57とカートリッジメモリ11との間の通信方式としては、例えば、ISO14443方式が採用される。第2の情報は、テンション調整情報を含む。テンション調整情報は、データ記録時情報の一例である。
制御装置59は、例えば、制御部、記憶部、通信部等を含む。制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等により構成されており、記憶部に記憶されたプログラムに従い、記録再生装置50の各部を制御する。例えば、制御装置59は、サーバ71およびPC72等の情報処理装置の要求に応じて、情報処理装置から供給されるデータ信号をヘッドユニット56により磁気テープMTに記録する。また、制御装置59は、サーバ71およびPC72等の情報処理装置の要求に応じて、ヘッドユニット56により、磁気テープMTに記録されたデータ信号を再生し、情報処理装置に供給する。
記憶部は、各種のデータや各種のプログラムが記録される不揮発性のメモリと、制御部の作業領域として用いられる揮発性のメモリとを含む。上記各種のプログラムは、光ディスク等の可搬性の記録媒体または半導体メモリ等の可搬性の記憶装置から読み取られてもよいし、ネットワーク上のサーバ装置からダウンロードされてもよい。
制御装置59は、磁気テープMTに対するデータの記録時または磁気テープMTからデータの再生時に、ヘッドユニット56により、隣接する2本のサーボバンドSBに記録されたサーボ信号を読み取る。制御装置59は、2本のサーボバンドSBから読み取られるサーボ信号を用いて、ヘッドユニット56がサーボパターンを追従するように、ヘッドユニット56の位置を制御する。
制御装置59は、磁気テープMTに対するデータの記録時に、隣接する2本のサーボバンドSBから読み取られるサーボ信号の再生波形から、隣接する2本のサーボバンドSB間の距離(磁気テープMTの幅方向における距離)d1を求める。そして、求めた距離をリーダライタ57によりメモリ36に書き込む。
制御装置59は、磁気テープMTからのデータの再生時に、隣接する2本のサーボバンドSBから読み取られるサーボ信号の再生波形から、隣接する2本のサーボバンドSB間の距離(磁気テープMTの幅方向における距離)d2を求める。それと共に、制御装置59は、リーダライタ57によりメモリ36から、磁気テープMTに対するデータの記録時に求めた、隣接する2本のサーボバンドSB間の距離d1を読み出す。制御装置59は、磁気テープMTに対するデータの記録時に求めたサーボバンドSB間の距離d1と、磁気テープMTからのデータの再生時に求めたサーボバンドSB間の距離d2との差分Δdが規定の範囲内になるように、スピンドル駆動装置53およびリール駆動装置54の回転を制御し、磁気テープMTの長手方向にかかるテンションを調整する。このテンション調整の制御は、例えばフィードバック制御により行われる。
ヘッドユニット56は、制御装置59からの指令に応じて、磁気テープMTに対してデータを記録することが可能に構成されている。また、ヘッドユニット56は、制御装置59からの指令に応じて、磁気テープMTに記録されたデータを再生することが可能に構成されている。ヘッドユニット56は、例えば、2つのサーボリードヘッドおよび複数のデータライト/リードヘッド等を有している。
サーボリードヘッドは、磁気テープMTに記録されたサーボ信号から発生する磁界をMR素子(MR:Magneto Resistive)等により読み取ることで、サーボ信号を再生可能に構成されている。2つのサーボリードヘッドの幅方向の間隔は、隣接する2本のサーボバンドSB間の距離と略同じとされている。
データライト/リードヘッドは、2つのサーボリードヘッドに挟み込まれる位置に、一方のサーボリードヘッドから他方のサーボリードヘッドに向かう方向に沿って等間隔に配置されている。データライト/リードヘッドは、磁気ギャップから発生する磁界によって、磁気テープMTに対してデータを記録することが可能に構成されている。また、データライト/リードヘッドは、磁気テープMTに記録されたデータから発生する磁界をMR素子等により読み取ることで、データを再生可能に構成されている。
通信I/F58は、サーバ71およびPC72等の情報処理装置と通信するためのものであり、ネットワーク70に対して接続される。
[データ記録時における記録再生装置の動作]
以下、図10を参照して、データ記録時における記録再生装置50の動作の一例について説明する。
まず、制御装置59は、記録再生装置50にカートリッジ10をローディングする(ステップS11)。次に、制御装置59は、スピンドル51およびリール52の回転を制御し、磁気テープMTの長手方向に規定のテンションをかけながら磁気テープMTを走行させる。そして、制御装置59は、ヘッドユニット56のサーボリードヘッドによりサーボ信号を読み取ると共に、ヘッドユニット56のデータライト/リードヘッドにより磁気テープMTに対してデータを記録する(ステップS12)。
このとき、ヘッドユニット56は、ヘッドユニット56の2つのサーボリードヘッドにより隣接する2本のサーボバンドSBをトレースしながら、ヘッドユニット56のデータライト/リードヘッドによりデータバンドDBに対してデータを記録する。
次に、制御装置59は、ヘッドユニット56のサーボリードヘッドにより読み取られたサーボ信号の再生波形から、データ記録時における、隣接する2本のサーボバンドSB間の距離d1を求める(ステップS13)。次に、制御装置59は、リーダライタ57により、データ記録時のサーボバンドSB間の距離d1をカートリッジメモリ11に書き込む(ステップS14)。制御装置59は、サーボバンドSB間の距離d1を連続的に計測し、カートリッジメモリ11に書き込んでもよいし、サーボバンドSB間の距離d1を一定間隔で計測し、カートリッジメモリ11に書き込んでもよい。サーボバンドSB間の距離d1を一定間隔で計測し、カートリッジメモリ11に書き込む場合には、メモリ36に書き込まれる情報量を低減することができる。
[データ再生時における記録再生装置の動作]
以下、図11を参照して、データ再生時における記録再生装置50の動作の一例について説明する。
まず、制御装置59は、記録再生装置50にカートリッジ10をローディングする(ステップS21)。次に、制御装置59は、リーダライタ57によりカートリッジメモリ11から記録時のサーボバンドSB間の距離d1を読み出す(ステップS22)。
次に、制御装置59は、スピンドル51およびリール52の回転を制御し、磁気テープMTの長手方向に規定のテンションをかけながら磁気テープMTを走行させる。そして、制御装置59は、ヘッドユニット56のサーボリードヘッドによりサーボ信号を読み取ると共に、ヘッドユニット56のデータライト/リードヘッドにより磁気テープMTからデータを再生する(ステップS23)。
次に、制御装置59は、ヘッドユニット56のサーボリードヘッドにより読み取られたサーボ信号の再生波形から、データ再生時における、隣接する2本のサーボバンドSB間の距離d2を算出する(ステップS24)。
次に、制御装置59は、ステップS22において読み出したサーボバンドSB間の距離d1と、ステップS24において算出したサーボバンドSB間の距離d2との差分Δdが規定値以内であるか否かを判断する(ステップS25)。
ステップS25にて差分Δdが規定値以内であると判断された場合には、制御装置59は、規定のテンションが維持されるように、スピンドル51およびリール52の回転を制御する(ステップS26)。
一方、ステップS25にて差分Δdが規定値以内でないと判断された場合には、制御装置59は、差分Δdが小さくなるように、スピンドル51およびリール52の回転の制御し、走行する磁気テープMTにかかるテンションを調整し、処理をステップS24に戻す(ステップS27)。
[効果]
以上説明したように、第1の実施形態に係る磁気テープMTでは、垂直方向における磁性層43の角形比S1が、65%以上である。これにより、1500nm以下のデータトラック幅で磁気テープMTにデータを記録した場合にも、良好な電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。
また、第1の実施形態に係る磁気テープMTでは、温度、相対湿度が(10℃、10%)、(10℃、80%)、(29℃、80%)、(45℃、10%)である4つの環境下で測定された磁気テープMTの幅の平均値のうちの最大値、最小値をそれぞれwmax、wminとした場合、wmaxおよびwminが(wmax−wmin)/wmin≦400[ppm]を満たす。これにより、磁気テープMT(カートリッジ10)の環境温度や湿度が変化した場合にも、磁気テープMTの幅の変動を抑制することができる。したがって、1500nm以下のデータトラック幅で磁気テープMTにデータが記録されている場合にも、オフトラックを抑制することができる。
さらに、第1の実施形態に係る磁気テープMTでは、基体41は、ポリエステルを含む。これにより、上記データトラック幅でデータを記録した磁気テープMT(カートリッジ10)の周囲の環境温度や湿度の変化に伴い、磁気テープMTの幅が変化した場合には、走行時に磁気テープMTの長手方向のテンションを記録再生装置50により調整することで、磁気テープMTの幅を一定またはほぼ一定に保つことができる。したがって、環境温度や湿度の変化に起因するオフトラックをさらに抑制することができる。
<2 第2の実施形態>
[記録再生装置の構成]
図12は、本開示の第2の実施形態に係る記録再生システム100Aの構成の一例を示す概略図である。記録再生システム100Aは、カートリッジ10と、記録再生装置50Aとを備える。
記録再生装置50Aは、温度計60と、湿度計61とをさらに備える。温度計60は、磁気テープMT(カートリッジ10)の周囲の温度を測定し、制御装置59へ出力する。また、湿度計61は、磁気テープMT(カートリッジ10)の周囲の湿度を測定し、制御装置59へ出力する。
制御装置59は、磁気テープMTに対するデータの記録時に、温度計60および湿度計61により、磁気テープMT(カートリッジ10)の周囲の温度Tm1および湿度H1を測定し、リーダライタ57を介してカートリッジメモリ11に書き込む。温度Tm1および湿度H1は、磁気テープMTの周囲の環境情報の一例である。
制御装置59は、磁気テープMTに対するデータの記録時に、スピンドル51およびリール52の駆動データに基づいて、磁気テープMTの長手方向にかけられていたテンションTn1を求め、リーダライタ57を介してカートリッジメモリ11に書き込む。
制御装置59は、磁気テープMTに対するデータの記録時に、隣接する2本のサーボバンドSBから読み取られるサーボ信号の再生波形から、隣接する2本のサーボバンドSB間の距離d1を求める。そして、この距離d1に基づいて、データ記録時の磁気テープMTの幅W1を算出し、リーダライタ57によりメモリ36に書き込む。
制御装置59は、磁気テープMTからのデータの再生時に、温度計60および湿度計61により、磁気テープMT(カートリッジ10)の周囲の温度Tm2および湿度H2を測定する。
制御装置59は、磁気テープMTからのデータの再生時に、スピンドル51およびリール52の駆動データに基づいて、磁気テープMTの長手方向にかけられていたテンションTn2を求める。
制御装置59は、磁気テープMTからのデータの再生時に、隣接する2本のサーボバンドSBから読み取られるサーボ信号の再生波形から、隣接する2本のサーボバンドSB間の距離d2を求める。そして、この距離d2に基づいて、データ再生時の磁気テープMTの幅W2を算出する。
制御装置59は、磁気テープMTからのデータの再生時に、リーダライタ57を介してカートリッジメモリ11から、データ記録時に書き込んだ温度Tm1、湿度H1、テンションTn1および幅W1を読み出す。そして、制御装置59は、データの記録時における温度Tm1、湿度H1、テンションTn1および幅W1と、データの再生時における温度Tm2、湿度H2、テンションTn2および幅W2を用いて、データ再生時における磁気テープMTの幅W2がデータ記録時における磁気テープの幅W1に等しくまたはほぼ等しくなるように、磁気テープMTにかけるテンションを制御する。
カートリッジメモリ11のコントローラ35は、アンテナコイル31を介して記録再生装置50Aから受信した温度Tm1、湿度H1、テンションTn1および幅W1をメモリ36の第2の記憶領域36Bに記憶する。カートリッジメモリ11のコントローラ35は、記録再生装置50Aからの要求に応じて、メモリ36から温度Tm1、湿度H1、テンションTn1および幅W1を読み出し、アンテナコイル31を介して記録再生装置50Aに送信する。
[データ記録時における記録再生装置の動作]
以下、図13を参照して、データ記録時における記録再生装置50Aの動作の一例について説明する。
まず、制御装置59は、記録再生装置50Aにカートリッジ10をローディングする(ステップS101)。次に、制御装置59は、スピンドル51およびリール52の回転を制御し、磁気テープMTの長手方向に規定のテンションをかけながら磁気テープMTを走行させる。そして、制御装置59は、ヘッドユニット56により磁気テープMTに対してデータを記録する(ステップS102)。
次に、制御装置59は、温度計60および湿度計61から、データ記録時における磁気テープMTの周囲の温度Tm1および湿度H1(環境情報)を取得する(ステップS103)。
次に、制御装置59は、データ記録時におけるスピンドル51およびリール52の駆動データに基づいて、データ記録時において磁気テープMTの長手方向にかけられていたテンションTn1を算出する(ステップS104)。
次に、制御装置59は、ヘッドユニット56のサーボリードヘッドにより読み取られたサーボ信号の再生波形から、隣接する2本のサーボバンドSBの距離d1を求める。次に、制御装置59は、この距離d1に基づいて、データ記録時の磁気テープMTの幅W1を算出する(ステップS105)。
次に、制御装置59は、リーダライタ57により、温度Tm1、湿度H1、テンションTn1および磁気テープMTの幅W1をデータ記録時情報としてカートリッジメモリ11に書き込む(ステップS106)。
[データ再生時における記録再生装置の動作]
以下、図14を参照して、データ再生時における記録再生装置50Aの動作の一例について説明する。
まず、制御装置59は、記録再生装置50Aにカートリッジ10をローディングする(ステップS111)。次に、制御装置59は、カートリッジメモリ11に書き込まれたデータ記録時情報(温度Tm1、湿度H1、テンションTn1および磁気テープMTの幅W1)を、リーダライタ57によりカートリッジメモリ11から読み出して取得する(ステップS112)。次に、制御装置59は、温度計60および湿度計61により、データ再生時における現在の磁気テープMTの周囲の温度Tm2の情報および湿度H2の情報を取得する(ステップS113)。
次に、制御装置59は、データ記録時における温度Tm1と、データ再生時における温度Tm2との温度差TmD(TmD=Tm2−Tm1)を算出する(ステップS114)。また、制御装置59は、データ記録時における湿度H1と、データ再生時における湿度H2との湿度差HD(HD=H2−H1)を算出する(ステップS115)。
次に、制御装置59は、温度差TmDに係数αを乗算し(TmD×α)、湿度差HDに係数βを乗算する(HD×β)(ステップS116)。係数αは、温度差1℃当たり、磁気テープMTのテンションをデータ記録時のテンションTn1と比べてどの程度変更すればよいかを示す値である。係数βは、湿度差1%あたり、磁気テープMTのテンションをデータ記録時のテンションTn1と比べてどの程度変更すればよいかを示す値である。
次に、制御装置59は、データ記録時におけるテンションTn1に対して、TmD×αの値と、HD×βの値とを加算することで、データ再生時(現在)において、磁気テープMTの長手方向にかけるべきテンションTn2を算出する(ステップS117)。
Tn2=Tn1+TmD×α+HD×β
データ再生時における磁気テープMTのテンションTn2を決定した後、制御装置59は、スピンドル51およびリール52の回転を制御し、そのテンションTn2で磁気テープMTが走行するように磁気テープMTの走行を制御する。そして、制御装置59は、ヘッドユニット56のサーボリードヘッドによりサーボバンドSBのサーボ信号を読み取りながら、ヘッドユニット56のデータライト/リードヘッドにより、データトラックTkに記録されたデータの再生を行う(ステップS118)。
このとき、磁気テープMTのテンションの調整により、磁気テープMTの幅がデータ記録時の幅に合わせられているので、ヘッドユニット56のデータライト/リードヘッドは、データトラックTkに対して正確に位置合わせすることができる。これにより、何らかの原因(例えば、温度、湿度の変動)で、磁気テープMTの幅が変動したような場合でも、磁気テープMTに記録されたデータを正確に再生することができる。
なお、データ再生時(現在)において、磁気テープMTにかけるべきテンションTn2の値は、データ再生時の温度の方がデータ記録時の温度よりも高ければ高くなる。このため、温度が高くなり、データ記録時よりも磁気テープMTの幅が広くなってしまった場合には、磁気テープMTの幅を狭めてデータ再生時と同じ幅を再現することができる。
逆に、データ再生時(現在)において、磁気テープMTにかけるべきテンションTn2の値は、データ再生時の温度の方がデータ記録時の温度よりも低ければ低くなる。このため、温度が低くなり、データ記録時よりも磁気テープMTの幅が狭くなってしまった場合には、磁気テープMTの幅を広げてデータ再生時と同じ幅を再現することができる。
また、データ再生時(現在)において、磁気テープMTにかけるべきテンションTn2の値は、データ再生時の湿度の方がデータ記録時の湿度よりも高ければ高くなる。このため、湿度が高くなり、データ記録時よりも磁気テープMTの幅が広くなってしまった場合には、磁気テープMTの幅を狭めてデータ再生時と同じ幅を再現することができる。
逆に、データ再生時(現在)において、磁気テープMTにかけるべきテンションTn2の値は、データ再生時の湿度の方がデータ記録時の湿度よりも低ければ低くなる。このため、湿度が低くなり、データ記録時よりも磁気テープMTの幅が狭くなってしまった場合には、磁気テープMTの幅を広げてデータ再生時と同じ幅を再現することができる。
ここで、データ再生時において、磁気テープMTにかけるべきテンションTn2を求めるために、データ記録時の温度Tm1、湿度H1、磁気テープMTのテンションTn1に加えて(あるいは、テンションTn1に代えて)、更に、データ記録時における磁気テープMTの幅W1の情報が用いられてもよい。
この場合も、同様に、制御装置59は、温度差TmD(TmD=Tm2−Tm1)と、湿度差HD(HD=H2−H1)とを算出する。そして、制御装置59は、温度差TmDに係数γを乗算し(TmD×γ)、湿度差HDに係数δを乗算する(HD×δ)(ステップS116)。
ここで、係数γは、温度差1℃当たり磁気テープMTの幅がどの程度変動するかを示す値(温度に基づく単位長さ(幅方向)当たりの膨張率を示す値)である。また、係数δは、湿度差1%あたり、磁気テープMTの幅がどの程度変動するかを示す値(湿度に基づく単位長さ(幅方向)当たりの膨張率を示す値)である。
次に、制御装置59は、以下の式により、データ記録時における過去の磁気テープMTの幅W1に基づいて、データ再生時における現在の磁気テープMTの幅W2を予測する。
W2=W1(1+TmD×γ+HD2×δ)
次に、制御装置59は、データ再生時における現在の磁気テープMTの幅W2と、データ記録時における過去の磁気テープMTの幅W1との差WDを算出する(WD=W2−W1=W1(TmD×γ+HD2×δ))。
そして、制御装置59は、幅の差WDに係数εを乗算した値を、データ記録時における磁気テープMTのテンションTn1に加算して、データ再生時における磁気テープMTのテンションTn2を算出する
Tn2=Tn1+WD×ε
ここで、係数εは、磁気テープMTの幅を単位距離分変化させるために必要な磁気テープMTの長手方向でのテンションを表す値である。
データ再生時における磁気テープMTのテンションTn2を決定した後、制御装置59は、スピンドル51およびリール52の回転を制御し、そのテンションTn2で磁気テープMTが走行するように磁気テープMTの走行を制御する。そして、制御装置59は、ヘッドユニット56のサーボリードヘッドによりサーボバンドSBのサーボ信号を読み取りながら、ヘッドユニット56のデータライト/リードヘッドにより、データトラックTkに記録されたデータの再生を行う。
このような方法でテンションTn2が決定された場合においても、何らかの原因(例えば、温度、湿度の変動)で、磁気テープMTの幅が変動したような場合に、磁気テープMTに記録されたデータを正確に再生することができる。
[効果]
以上説明したように、第2の実施形態では、磁気テープMTのデータ記録時情報がカートリッジメモリ11に記憶されているので、この情報をデータ再生時に利用することで、磁気テープMTの幅を適切に調整することができる。したがって、磁気テープMTの幅が何らかの理由で変動したような場合でも、磁気テープMTに記録されたデータを正確に再生することができる。
また、本実施形態では、データ記録時情報として、データ記録時における磁気テープMTの周囲の温度Tm1および湿度H1(環境情報)が書き込まれる。したがって、温度および湿度の変動による、磁気テープMTの幅およびデータトラックTkの幅の変動に適切に対応することができる。
<3 変形例>
(変形例1)
上述の第1の実施形態では、ε酸化鉄粒子が2層構造のシェル部112を有している場合について説明したが、図15に示すように、ε酸化鉄粒子が単層構造のシェル部113を有していてもよい。この場合、シェル部113は、第1シェル部112aと同様の構成を有する。但し、ε酸化鉄粒子の特性劣化を抑制する観点からすると、上述した第1の実施形態におけるように、ε酸化鉄粒子が2層構造のシェル部112を有していることが好ましい。
(変形例2)
上述の第1の実施形態では、ε酸化鉄粒子がコアシェル構造を有している場合について説明したが、ε酸化鉄粒子が、コアシェル構造に代えて添加剤を含んでいてもよいし、コアシェル構造を有すると共に添加剤を含んでいてもよい。この場合、ε酸化鉄粒子のFeの一部が添加剤で置換される。ε酸化鉄粒子が添加剤を含むことによっても、ε酸化鉄粒子全体としての保磁力Hcを記録に適した保磁力Hcに調整できるため、記録容易性を向上することができる。添加剤は、鉄以外の金属元素、好ましくは3価の金属元素、より好ましくはAl、GaおよびInのうちの少なくとも1種、さらにより好ましくはAlおよびGaのうちの少なくとも1種である。
具体的には、添加剤を含むε酸化鉄は、ε−Fe2-xMxO3結晶(但し、Mは鉄以外の金属元素、好ましくは3価の金属元素、より好ましくはAl、GaおよびInのうちの少なくとも1種、さらにより好ましくはAlおよびGaのうちの少なくとも1種である。xは、例えば0<x<1である。)である。
(変形例3)
磁性粉が、ε酸化鉄粒子の粉末に代えて、六方晶フェライトを含有するナノ粒子(以下「六方晶フェライト粒子」という。)の粉末を含むようにしてもよい。六方晶フェライト粒子は、例えば、六角板状またはほぼ六角板状を有する。六方晶フェライトは、好ましくはBa、Sr、PbおよびCaのうちの少なくとも1種、より好ましくはBaおよびSrのうちの少なくとも1種を含む。六方晶フェライトは、具体的には例えばバリウムフェライトまたはストロンチウムフェライトであってもよい。バリウムフェライトは、Ba以外にSr、PbおよびCaのうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。ストロンチウムフェライトは、Sr以外にBa、PbおよびCaのうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
より具体的には、六方晶フェライトは、一般式MFe12O19で表される平均組成を有する。但し、Mは、例えばBa、Sr、PbおよびCaのうちの少なくとも1種の金属、好ましくはBaおよびSrのうちの少なくとも1種の金属である。Mが、Baと、Sr、PbおよびCaからなる群より選ばれる1種以上の金属との組み合わせであってもよい。また、Mが、Srと、Ba、PbおよびCaからなる群より選ばれる1種以上の金属との組み合わせであってもよい。上記一般式においてFeの一部が他の金属元素で置換されていてもよい。
磁性粉が六方晶フェライト粒子の粉末を含む場合、磁性粉の平均粒子サイズは、好ましくは30nm以下、より好ましくは12nm以上25nm以下、さらにより好ましくは15nm以上22nm以下、特に好ましくは15nm以上20nm以下、最も好ましくは15nm以上18nm以下である。磁性粉の平均粒子サイズが30nm以下であると、高記録密度の磁気テープMTにおいて、良好な電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。一方、磁性粉の平均粒子サイズが12nm以上であると、磁性粉の分散性がより向上し、より優れた電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。磁性粉が六方晶フェライト粒子の粉末を含む場合、磁性粉の平均アスペクト比は上述の第1の実施形態と同様である。
なお、磁性粉の平均粒子サイズおよび平均アスペクト比は以下のようにして求められる。まず、測定対象となる磁気テープMTをFIB法等により加工して薄片を作製し、TEMにより薄片の断面観察を行う。次に、撮影したTEM写真から、水平方向に対して75度以上の角度で配向した磁性粉を50個無作為に選び出し、各磁性粉の最大板厚DAを測定する。続いて、測定した50個の磁性粉の最大板厚DAを単純に平均(算術平均)して平均最大板厚DAaveを求める。
次に、磁気テープMTの磁性層43の表面をTEMにより観察を行う。次に、撮影したTEM写真から50個の磁性粉を無作為に選び出し、各磁性粉の最大板径DBを測定する。ここで、最大板径DBとは、磁性粉の輪郭に接するように、あらゆる角度から引いた2本の平行線間の距離のうち最大のもの(いわゆる最大フェレ径)を意味する。続いて、測定した50個の磁性粉の最大板径DBを単純に平均(算術平均)して平均最大板径DBaveを求める。このようにして求めた平均最大板径DBaveを磁性粉の平均粒子サイズとする。次に、平均最大板厚DAaveおよび平均最大板径DBaveから磁性粉の平均アスペクト比(DBave/DAave)を求める。
磁性粉が六方晶フェライト粒子の粉末を含む場合、磁性粉の平均粒子体積は、好ましくは5900nm3以下、より好ましくは500nm3以上3400nm3以下、さらにより好ましくは1000nm3以上2500nm3以下、特に好ましくは1000nm3以上1800nm3以下、最も好ましくは1000nm3以上1500nm3以下である。磁性粉の平均粒子体積が5900nm3以下であると、磁性粉の平均粒子サイズを30nm以下とする場合と同様の効果が得られる。一方、磁性粉の平均粒子体積が500nm3以上であると、磁性粉の平均粒子サイズを12nm以上とする場合と同様の効果が得られる。
なお、磁性粉の平均粒子体積は以下のようにして求められる。まず、上記の磁性粉の平均粒子サイズの算出方法と同様にして、平均最大板厚DAaveおよび平均最大板径DBaveを求める。次に、以下の式により、磁性粉の平均粒子体積Vを求める。
V=3√3/8×DAave×DBave2
(変形例4)
磁性粉は、ε酸化鉄粒子の粉末に代えて、Co含有スピネルフェライトを含有するナノ粒子(以下「コバルトフェライト粒子」という。)の粉末を含むようにしてもよい。コバルトフェライト粒子は、一軸異方性を有することが好ましい。コバルトフェライト粒子は、例えば、立方体状またはほぼ立方体状を有している。Co含有スピネルフェライトが、Co以外にNi、Mn、Al、CuおよびZnのうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
Co含有スピネルフェライトは、例えば以下の式(1)で表される平均組成を有する。
CoxMyFe2OZ ・・・(1)
(但し、式(1)中、Mは、例えば、Ni、Mn、Al、CuおよびZnのうちの少なくとも1種の金属である。xは、0.4≦x≦1.0の範囲内の値である。yは、0≦y≦0.3の範囲内の値である。但し、x、yは(x+y)≦1.0の関係を満たす。zは3≦z≦4の範囲内の値である。Feの一部が他の金属元素で置換されていてもよい。)
磁性粉がコバルトフェライト粒子の粉末を含む場合、磁性粉の平均粒子サイズは、好ましくは25nm以下、より好ましくは8nm以上23nm以下、さらにより好ましくは8nm以上12nm以下、特に好ましくは8nm以上11nm以下である。磁性粉の平均粒子サイズが25nm以下であると、高記録密度の磁気テープMTにおいて、良好な電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。一方、磁性粉の平均粒子サイズが8nm以上であると、磁性粉の分散性がより向上し、より優れた電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。また、磁性粉がコバルトフェライト粒子の粉末を含む場合、磁性粉の平均アスペクト比は上述の第1の実施形態と同様である。なお、磁性粉の平均粒子サイズおよび平均アスペクト比は、上述の第1の実施形態と同様にして求められる。
磁性粉の平均粒子体積は、好ましくは15000nm3以下、より好ましくは500nm3以上12000nm3以下、特に好ましくは500nm3以上1800nm3以下、最も好ましくは500nm3以上1500nm3以下である。磁性粉の平均粒子体積が15000nm3以下であると、磁性粉の平均粒子サイズを25nm以下とする場合と同様の効果が得られる。一方、磁性粉の平均粒子体積が500nm3以上であると、磁性粉の平均粒子サイズを8nm以上とする場合と同様の効果が得られる。なお、磁性粉の平均粒子体積の算出方法は、上述の第1の実施形態における磁性粉の平均粒子体積の算出方法(ε酸化鉄粒子が立方体状またはほぼ立方体状を有している場合の平均粒子体積の算出方法)と同様である。
(変形例5)
磁気テープMTをライブラリ装置に用いるようにしてもよい。この場合、ライブラリ装置は、磁気テープMTの長手方向に加わるテンションを調整可能な構成を有しており、第1の実施形態における記録再生装置50または第2の実施形態における記録再生装置50Aを複数備えるものであってもよい。
(変形例6)
サーボライタが、サーボ信号の記録時等に磁気テープMTの長手方向のテンションを調整することで、磁気テープMTの幅を一定またはほぼ一定に保つようにしてもよい。この場合、サーボライタが、磁気テープMTの幅を検出する検出装置を備え、この検出装置の検出結果に基づき、磁気テープMTの長手方向のテンションを調整するようにしてもよい。
(変形例7)
磁気テープMTは、垂直記録型の磁気テープに限定されるものであなく、水平記録型の磁気テープであってもよい。この場合、磁性粉としてはメタル磁性粉等の針状磁性粉を用いてもよい。
(変形例8)
上述の第1の実施形態では、データ記録時における磁気テープMTに関連する幅関連情報として、サーボバンドSB間の距離を用いる場合について説明したが、磁気テープMTの幅を用いるようにしてもよい。
この場合、制御装置59は、データ記録時に、サーボバンドSB間の距離d1から磁気テープMTの幅W1を算出し、この幅W1をリーダライタ57によりカートリッジメモリ11に書き込む。
制御装置59は、データ再生時に、データ記録時の磁気テープMTの幅W1をカートリッジメモリ11から読み出すと共に、データ再生時のサーボバンドSB間の距離d2からデータ再生時の磁気テープMTの幅W2を算出する。そして、制御装置59は、データ記録時の磁気テープMTの幅W1と、データ再生時の磁気テープMTの幅W2との差分ΔWを算出し、差分ΔWが規定値以内であるか否かを判断する。
差分ΔWが規定値以内である場合には、制御装置59は、規定のテンションが維持されるように、スピンドル51およびリール52の回転駆動を制御する。一方、差分ΔWが規定値以内でない場合には、差分ΔWが規定値以内に収まるように、スピンドル51およびリール52の回転駆動の制御し、走行する磁気テープMTにかかるテンションを調整する。
(変形例9)
上述の第2の実施形態では、データ記録時情報として、温度Tm1、Tm2、湿度H1、H2、テンションTn1、Tn2、幅W1、W2の全てが用いられる場合について説明したが、データ記録時情報は、温度Tm1、Tm2、湿度H1、H2、テンションTn1、Tn2、および幅W1、W2のうちいずれか1つであってもよいし、任意の2つ、3つの組合せであってもよい。
カートリッジメモリ11に対して、データ記録時の情報(温度Tm1、湿度H1、テンションTn1、幅W1)だけでなく、データ再生時の情報(温度Tm2、湿度H2、テンションTn2、幅W2)が記憶されてもよい。例えば、このデータ再生時の情報は、データが再生された後、さらに別の機会に磁気テープMT内のデータが再生されるときに使用される。
(変形例10)
上述の第1、第2の実施形態では、磁気テープMTが、下地層および磁性層等が塗布工程(ウエットプロセス)により作製された塗布型の磁気テープである場合について説明したが、下地層および磁性層等がスパッタリング等の真空薄膜の作製技術(ドライプロセス)により作製される薄膜型の磁気テープであってもよい。薄膜型の磁気テープの場合、磁性層の平均厚みtmは、好ましくは9[nm]≦tm≦90[nm]、より好ましくは9[nm]≦tm≦20[nm]、更により好ましくは9[nm]≦tm≦15[nm]である。磁性層の平均厚みtmが9[nm]≦tm≦90[nm]であると、電磁変換特性を向上することができる。
以下、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
本実施例において、磁性粉の平均粒子体積、磁性粉の平均粒子サイズ、ベースフィルム(基体)の平均厚み、磁性層の平均厚み、下地層の平均厚み、バック層の平均厚み、磁気テープの平均厚み、垂直方向における磁性層の角形比S1、長手方向における磁性層の角形比S2、(wmax−wmin)/wmin、および長手方向における磁気テープのヤング率は、上述の第1の実施形態にて説明した測定方法により求められたものである。
[実施例1〜4、比較例1、2、4、5]
(磁性層形成用塗料の調製工程)
磁性層形成用塗料を以下のようにして調製した。まず、下記配合の第1組成物をエクストルーダで混練した。次に、ディスパーを備えた攪拌タンクに、混練した第1組成物と、下記配合の第2組成物を加えて予備混合を行った。続いて、さらにサンドミル混合を行い、フィルター処理を行い、磁性層形成用塗料を調製した。
(第1組成物)
バリウムフェライト(BaFe12O19)粒子の粉末(六角板状、平均アスペクト比3.0、平均粒子体積2450nm3):100質量部
塩化ビニル系樹脂(シクロヘキサノン溶液30質量%):10質量部
(重合度300、Mn=10000、極性基としてOSO3K=0.07mmol/g、2級OH=0.3mmol/gを含有する。)
酸化アルミニウム粉末:5質量部
(α−Al2O3、平均粒径0.2μm)
カーボンブラック:2質量部
(東海カーボン社製、商品名:シーストTA)
(第2組成物)
塩化ビニル系樹脂:1.1質量部
(樹脂溶液:樹脂分30質量%、シクロヘキサノン70質量%)
n−ブチルステアレート:2質量部
メチルエチルケトン:121.3質量部
トルエン:121.3質量部
シクロヘキサノン:60.7質量部
最後に、上述のようにして調製した磁性層形成用塗料に、硬化剤として、ポリイソシアネート(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン社製):4質量部と、ミリスチン酸:2質量部とを添加した。
(下地層形成用塗料の調製工程)
下地層形成用塗料を以下のようにして調製した。まず、下記配合の第3組成物をエクストルーダで混練した。次に、ディスパーを備えた攪拌タンクに、混練した第3組成物と、下記配合の第4組成物を加えて予備混合を行った。続いて、さらにサンドミル混合を行い、フィルター処理を行い、下地層形成用塗料を調製した。
(第3組成物)
針状酸化鉄粉末:100質量部
(α−Fe2O3、平均長軸長0.15μm)
塩化ビニル系樹脂:55.6質量部
(樹脂溶液:樹脂分30質量%、シクロヘキサノン70質量%)
カーボンブラック:10質量部
(平均粒径20nm)
(第4組成物)
ポリウレタン系樹脂UR8200(東洋紡績製):18.5質量部
n−ブチルステアレート:2質量部
メチルエチルケトン:108.2質量部
トルエン:108.2質量部
シクロヘキサノン:18.5質量部
最後に、上述のようにして調製した下地層形成用塗料に、硬化剤として、ポリイソシアネート(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン社製):4質量部と、ミリスチン酸:2質量部とを添加した。
(バック層形成用塗料の調製工程)
バック層形成用塗料を以下のようにして調製した。下記原料を、ディスパーを備えた攪拌タンクで混合を行い、フィルター処理を行うことで、バック層形成用塗料を調製した。
カーボンブラック(旭カーボン株式会社製、商品名:#80):100質量部
ポリエステルポリウレタン:100質量部
(日本ポリウレタン社製、商品名:N−2304)
メチルエチルケトン:500質量部
トルエン:400質量部
シクロヘキサノン:100質量部
(成膜工程)
上述のようにして作製した塗料を用いて、基体(ベースフィルム)としての長尺のPENフィルム(平均厚み4.2μm)上に平均厚み0.65μmの下地層、および平均厚み85nmの磁性層を以下のようにして形成した。まず、PENフィルムの一方の主面上に、下地層形成用塗料を塗布し、乾燥させることにより、PENフィルムの一方の主面上に下地層を形成した。次に、下地層上に、磁性層形成用塗料を塗布し、乾燥させることにより、下地層上に磁性層を形成した。なお、磁性層形成用塗料の乾燥の際に、ソレノイドコイルにより、磁性粉をPENフィルムの厚み方向に磁場配向させた。また、磁性層形成用塗料の乾燥条件(乾燥温度および乾燥時間)を調整し、磁気テープの厚み方向(垂直方向)における角形比S1を65%および長手方向における角形比S2を35%に設定した。
続いて、下地層、および磁性層が形成されたPENフィルムの他方の主面上にバック層形成用塗料を塗布し、乾燥させることにより、平均厚み0.30μmのバック層を形成した。そして、下地層、磁性層、およびバック層が形成されたPENフィルムに対して硬化処理を行った。その後、カレンダー処理を行い、磁性層表面を平滑化した。
(裁断の工程)
上述のようにして得られた磁気テープを1/2インチ(12.65mm)幅に裁断した。これにより、目的とする長尺状の磁気テープ(平均厚み5.24μm)が得られた。
なお、実施例1〜4、比較例1、2、4、5では、磁気テープの(wmax−wmin)/wminの値が、表1に示すように350ppm〜550ppmの範囲となり、かつ、長手方向のヤング率が、表1に示すように7.2GPaとなるように、PENフィルム(基体)の幅方向および長手方向の延伸量、PENフィルムの平均厚み、下地層の平均厚み、および磁性層の角形比を調整した。
(サーボ信号の書き込み工程)
上述のようにして得られた長尺状の磁気テープに、サーボライタを用いてサーボ信号を書き込むことにより、サーボバンド幅WSBが95μmである5本のサーボバンドを形成した。なお、サーボ信号の書き込みにより、各サーボバンドには、既知の間隔でハの字の磁気パターンの列が形成された。
(巻き取り工程)
サーボ信号が書き込まれた磁気テープを102mm×105mm×22mmサイズのカートリッジ(LTOに準拠したカートリッジ)に巻き取った。
(データ信号の書き込み)
まず、記録再生装置にカートリッジをローディングし、スピンドルにカードリッジを装着し、スピンドル駆動装置およびリール駆動装置を回転駆動させた。そして、カートリッジに収容された磁気テープ全体を往復走行させると共に、サーボ信号によるトラック制御をしつつ、データの書き込みを行った。この際、記録トラック幅Wが1100nm、記録波長λが180nmの単一記録波長となるように記録再生装置を制御した。なお、データ信号の記録波長λ[nm]は、最短記録波長で記録された際の磁化反転間距離L[nm]の4倍(すなわち、最短記録波長L’=2×Lであり、記録波長λ=L’の2倍長)とした。記録ヘッドにはギャップ長0.2μmのリングヘッドを用いた。
[実施例5]
磁性層形成用塗料の乾燥条件(乾燥温度および乾燥時間)を調整し、磁気テープの厚み方向(垂直方向)における角形比S1を75%および長手方向における角形比S2を25%に設定したこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。次に、実施例1と同様にして、得られた磁気テープに対してサーボ信号およびデータ信号を書き込んだ。
[実施例6]
磁性塗料のサンドミルでの分散時間を長くし塗料分散状態を特に良好にしたものを用い、かつ、磁性塗料の配向工程において垂直配向用ソレノイドの磁束の印加時間を実施例1よりも長くすることにより、磁気テープの厚み方向(垂直方向)における角形比S1を80%および長手方向における角形比S2を21%に設定したこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。
[実施例7]
磁性塗料のサンドミルでの分散時間を長くし塗料分散状態を特に良好にしたものを用い、磁性塗料の配向工程において垂直配向用ソレノイドの磁束の印加時間を実施例6よりも長くし、さらに乾燥時間を調整することにより、磁気テープの厚み方向(垂直方向)における角形比S1を85%および長手方向における角形比S2を18%に設定したこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。
[実施例8]
基体(ベースフィルム)として平均厚み3.5μmのPENフィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、平均厚み4.54μmの磁気テープを得た。
[実施例9]
基体(ベースフィルム)として平均厚み3.2μmのPENフィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、平均厚み4.24μmの磁気テープを得た。
[実施例10]
磁性層形成用塗料の塗布厚を調整し、下地層上に平均厚み35nmの磁性層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、平均厚み5.19μmの磁気テープを得た。
[実施例11]
磁性粉としてバリウムフェライト(BaFe12O19)粒子の粉末(六角板状、平均アスペクト比2.5、平均粒子体積1500nm3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。
[実施例12]
磁性粉としてバリウムフェライト(BaFe12O19)粒子の粉末(六角板状、平均アスペクト比2.8、平均粒子体積1800nm3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。
[実施例13]
まず、実施例9と同様にして磁気テープを得た。次に、記録再生装置を用いて、サーボバンド間のデータバンドにデータ信号を書き込んだ。この際、記録トラック幅Wが1000nm、記録波長λが180nmの単一記録波長となるように記録再生装置を制御した。
[実施例14]
磁性粉としてコバルトフェライト粒子の粉末(立方体状、平均粒子体積1200nm3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。
[実施例15]
磁性粉としてε酸化鉄粒子の粉末(球状、平均粒子体積1405nm3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。
[実施例16]
下地層の平均厚みを0.60μm、バック層の平均厚みを0.25μm、磁気テープの平均厚みを5.14μmに変更することにより、長手方向における磁気テープのヤング率を7.0GPaに設定したこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。
[実施例17]
基体(ベースフィルム)としての長尺のPETフィルム(平均厚み4.2μm)を用いることにより、長手方向における磁気テープのヤング率を6.6GPaに設定したこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。
[比較例3]
まず、比較例2と同様にして磁気テープを得た。次に、実施例1と同様にして磁気テープにサーボ信号を書き込んだ。続いて、データトラック幅Wが1900nmとなるように記録再生装置を制御したこと以外は実施例1と同様にして磁気テープにデータ信号を書き込んだ。
[比較例6]
まず、磁性層形成用塗料の乾燥条件(乾燥温度および乾燥時間)を調整し、磁気テープの厚み方向(垂直方向)における角形比S1を55%および長手方向における角形比S2を45%に設定したこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。次に、実施例1と同様にして、得られた磁気テープに対してサーボ信号およびデータ信号を書き込んだ。
[比較例7]
基体(ベースフィルム)としての長尺のアラミドフィルム(平均厚み4.2μm)を用いることにより、長手方向における磁気テープのヤング率を13.5GPaに設定したこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。
(記録容量)
磁気テープの記録容量をA、B、Cの3段階で評価した。A、B、Cの3段階の判定基準は、以下に示す通りである。
A:18TB以上の記録容量を達成可能である
B:16TB以上18TB未満の記録容量を達成可能である
C:記録容量が16TB未満である
(張力調整なしの場合のオフトラック特性)
まず、記録再生装置にカートリッジをローディングし、スピンドルにカードリッジを装着し、スピンドル駆動装置およびリール駆動装置を回転駆動させた。そして、カートリッジに収容された磁気テープ全体を往復走行させると共に、サーボ信号によるトラック制御をしつつ、データの読み取りを行った。
記録再生装置による往復走行は、恒温恒湿槽中で行った。往復走行の速度は5m/secであった。往復走行中の温湿度は、上記の往復走行とは独立に、温度範囲10℃〜45℃、相対湿度範囲10%〜80%で、予め組まれた環境変化プログラム(例:10℃10%→29℃80%→10℃10%を2回繰り返す。10℃10%から29℃80%へ2時間で変化させ、且つ、29℃80%→10℃10%へ2時間で変化させる。)に従って、徐々に且つ繰り返し変化させた。この時、データを読み取れなかった時間の総計を各テープに対して計測し、これをオフトラック時間とした。このオフトラック時間に基づき、磁気テープを9段階で評価した。“9”を最も望ましい判定値(最も良好なオフトラック特性)とし、“1”を最も望ましくない判定値(最も悪いオフトラック特性)とした。具体的な9段階の判定基準は、以下に示す通りである。
9:オフトラックすることはない
8:走行時に、1か所/240秒の割合でオフトトラックすることがある
7:走行時に、1か所/120秒の割合でオフトトラックすることがある。
6:走行時に、1か所/60秒の割合でオフトトラックすることがある。
5:走行時に、1か所/30秒の割合でオフトトラックすることがある。
4:走行時に、1か所/10秒の割合でオフトトラックすることがある。
3:走行時に、1か所/2秒の割合でオフトトラックすることがある。
2:オフトラックでシステムエラーが発生し停止することがある
1:オフトラックによりシステムエラーで即時に停止する
(張力調整ありの場合のオフトラック特性)
記録再生装置により磁気テープを往復走行の際に、磁気テープの長手方向のテンションを調整すること以外は、上述した「張力調整なしの場合のオフトラック特性」の場合と同様にしてオフトラック時間を計測し、計測したオフトラック時間に基づき、磁気テープを9段階で評価した。
磁気テープの長手方向のテンション調整は以下のようにして行った。すなわち、記録再生装置により磁気テープを往復走行ながら、2列以上のサーボトラックを同時に再生し、それらのサーボトラックのハの字の磁気パターン列(サーボ信号)それぞれの再生波形の形状から、走行時の磁気パターン列の間隔を連続的(サーボの位置情報があるポイント毎(具体的には約6mm毎))に計測した。そして、この計測された磁気パターン列の間隔情報に基づき、スピンドル駆動装置とリール駆動装置の回転駆動を制御し、磁気パターン列の間隔が規定の幅に近づくように、磁気テープの長手方向のテンションを自動で調整するようにした。ここで、“規定の幅”とは、記録再生装置が有する2つのサーボヘッド間の距離を意味する。なお、磁気テープの走行時には、2つのサーボヘッドはそれぞれ、データバンドの上下に位置する2つのサーボバンド(サーボトラック)に位置される。
(SNR)
まず、磁気テープからの再生信号をスペクトラムアナライザーにて測定し、再生信号キャリアの大きさをS、積算ノイズの大きさ(0Hz近傍の低周波〜再生信号キャリア周波数の2倍の帯域までを積算)をNとし、SとNからSNR(Signal-to-Noise Ratio)を計算した。次に、求めたSNRを、リファレンスメディアとしての比較例1のSNRを基準とした相対値(dB)に変換した。
表1は、実施例1〜17、比較例1〜7の磁気テープの構成を示す。
表2は、実施例1〜17、比較例1〜7の磁気テープの記録再生フォーマットを示す。
fci:flux change per inch
tpi:track per inch
bpsi:bit per square inch
巻長:リールに巻いた状態で、102mm×105mm×22mmサイズのカートリッジ(LTOに準拠したカートリッジ)に収容可能な磁気テープの巻長
表3は、実施例1〜17、比較例1〜7の磁気テープの評価結果を示す。
実施例1〜17、比較例1〜7の評価結果から、(1)最大値wmaxおよび最小値wminが(wmax−wmin)/wmin≦400[ppm]の関係を満たし、(2)基体(ベースフィルム)がポリエステルを含み、(3)垂直方向における磁性層の角形比が65%以上であることで、データトラック幅Wが1500nm以下である場合にも、磁気テープの再生時におけるSNRの低下を抑制し、かつ、オフトラック特性を向上できることがわかる。また、磁気テープの長手方向のテンションを調整した場合には、磁気テープの長手方向のテンションを調整しない場合に比べて、オフトラック特性をさらに向上できることがわかる。例えば、実施例1では、オフトラック特性の評価結果が「7」から「8」に向上されている。
実施例1、5〜7の評価結果から、SNRの向上の観点からすると、垂直方向における角形比が75%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましいことがわかる。
実施例1、11、12の評価結果から、SNRの向上の観点からすると、磁性粉の平均粒子体積は1800nm3以下であることが好ましく、1500nm3以下であることがより好ましいことがわかる。
実施例1、14、15の評価結果から、上記の構成(1)〜(3)を満たしていれば、磁性粉の種類によらず、上記効果を得ることができることがわかる。
比較例3の評価結果から、トラック幅が1500nmを超える場合には、上記の構成(1)を満たしていなくても、磁気テープの再生時におけるSNRの低下およびオフトラックを抑制することができることがわかる。
比較例7の評価結果から、基体(ベースフィルム)がアラミドを含む場合には、磁気テープの長手方向のテンションを調整した場合にも、磁気テープの長手方向のテンションを調整しない場合と同等のオフトラック特性しか得られないことがわかる。これは、基体(ベースフィルム)がアラミドを含む場合には、磁気テープの長手方向のヤング率が13.5GPaであり、外力による磁気テープMTの伸縮性が低いため、テンションコントロールにより磁気テープMTの幅を調整することが困難となるためである。
また、比較例7では、磁気テープの長手方向のヤング率が非常に高く、伸縮性が悪いため、磁気テープがサーボ信号の書き込みやドライブ走行時の張力変化に敏感となり、サーボ信号品質に悪化が見られた。
[実施例1A〜17A、比較例1A〜7A]
(磁気テープの作製工程、サーボ信号の書き込み工程)
まず、実施例1〜17、比較例1〜7と同様にして磁気テープを作製した。次に、この磁気テープに実施例1〜17、比較例1〜7と同様にしてサーボ信号を書き込んだ。
(巻き取り工程)
まず、カートリッジとして、テンション調整情報を書き込む領域をカートリッジメモリに有し、上記領域に対するテンション調整情報の書き込み、および上記領域からのテンション調整情報の読み出しを行うことが可能なものを準備した。このカートリッジのサイズは、実施例1〜17、比較例1〜7と同様のサイズ(102mm×105mm×22mm)であった。
(データ信号の書き込み)
まず、記録再生装置にカートリッジをローディングし、スピンドルにカードリッジを装着し、スピンドル駆動装置およびリール駆動装置を回転駆動させた。そして、カートリッジに収容された磁気テープ全体を往復走行させると共に、サーボ信号によるトラック制御をしつつ、データの書き込みを行った。さらに、このデータの書き込みと共に、サーボ信号の再生波形の形状から、データ記録時の磁気パターン列の間隔d1を一定間隔(1mの間隔毎)で計測し、その位置と間隔をカートリッジメモリに書き込んだ。データ書き込み時の記録トラック幅Wおよび記録波長λは、実施例1〜17、比較例1〜7と同様にした。
(カートリッジメモリに記憶されたテンション調整情報を用いて張力調整を行った場合のオフトラック特性)
記録再生装置により磁気テープを往復走行させる際に、磁気テープの長手方向のテンションを調整すること以外は、上述した「張力調整なしの場合のオフトラック特性」の場合と同様にしてオフトラック時間を計測し、計測したオフトラック時間に基づき、磁気テープを9段階で評価した。
磁気テープの長手方向のテンション調整は以下のようにして行った。すなわち、記録再生装置により磁気テープを往復走行ながら、2列以上のサーボトラックを同時に再生し、それらのサーボトラックのハの字の磁気パターン列(サーボ信号)それぞれの再生波形の形状から、走行時の磁気パターン列の間隔を連続的(サーボの位置情報があるポイント毎(具体的には約6mm毎))に計測すると共に、カートリッジメモリからデータ記録時の磁気パターン列の間隔d1を読み出した。そして、データ再生時の磁気パターン列の間隔d2が、データ記録時の磁気パターン列の間隔d1に近づくように、スピンドル駆動装置とリール駆動装置の回転駆動を制御し、磁気テープの長手方向のテンションを自動で調整した。
表4は、実施例1A〜17A、比較例1A〜7Aの磁気テープの評価結果を示す。
表4から、カートリッジメモリに記憶されたテンション調整情報を用いて磁気テープの張力調整を行った場合には、記録再生装置に予め記憶された規定の幅(2つのサーボヘッド間の距離)を用いて磁気テープの張力調整を行った場合に比べて、オフトラック特性をさらに向上できることがわかる。
以上、本開示の実施形態および変形例について具体的に説明したが、本開示は、上述の実施形態および変形例に限定されるものではなく、本開示の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の実施形態および変形例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値等を用いてもよい。上述の実施形態および変形例の構成、方法、工程、形状、材料および数値等は、本開示の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
上述の実施形態および変形例にて例示した化合物等の化学式は代表的なものであって、同じ化合物の一般名称であれば、記載された価数等に限定されない。上述の実施形態および変形例で段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値または下限値は、他の段階の数値範囲の上限値または下限値に置き換えてもよい。上述の実施形態および変形例で例示した材料は、特に断らない限り、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、本開示は以下の構成を採用することもできる。
(1)
テープ状の磁気記録媒体であって、
基体と、
前記基体上に設けられた磁性層と
を備え、
温度、相対湿度が(10℃、10%)、(10℃、80%)、(29℃、80%)、(45℃、10%)である4つの環境下で測定された前記磁気記録媒体の幅の平均値のうちの最大値、最小値をそれぞれwmax、wminとした場合、wmaxおよびwminが以下の関係式(1)を満たし、
前記基体は、ポリエステルを含み、
垂直方向における前記磁性層の角形比が、65%以上である磁気記録媒体。
(wmax−wmin)/wmin≦400[ppm] ・・・(1)
(2)
前記磁性層が、複数のデータトラックを形成可能に構成され、
前記データトラックの幅が、1500nm以下である(1)に記載の磁気記録媒体。
(3)
1500nm以下のデータトラック幅でデータを記録可能に構成された記録再生装置に用いられる(1)または(2)に記載の磁気記録媒体。
(4)
長手方向における前記磁気記録媒体のヤング率が、8.0GPa未満である(1)から(3)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(5)
長手方向における前記基体のヤング率が、7.5GPa未満である(1)から(4)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(6)
長手方向における前記磁性層の角形比が、35%以下である(1)から(5)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(7)
前記磁性層が、磁化反転間距離の最小値Lとデータトラックの幅Wの比率W/LがW/L≦35の関係を満たすように、データを記録可能に構成されている(1)から(6)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(8)
前記磁性層が、磁化反転間距離の最小値Lとデータトラックの幅Wの比率W/LがW/L≦30の関係を満たすように、データを記録可能に構成されている(1)から(7)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(9)
前記磁性層が、磁化反転間距離の最小値Lが48nm以下となるように、データを記録可能に構成されている(1)から(8)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(10)
前記磁性層が、複数のサーボバンドを有し、
前記磁性層の表面の面積に対する前記サーボバンドの総面積の割合が、4.0%以下である(1)から(9)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(11)
前記サーボバンドの数が、5以上である(10)に記載の磁気記録媒体。
(12)
前記サーボバンドの数が、5+4n(但し、nは正の整数である。)以上である(10)に記載の磁気記録媒体。
(13)
前記サーボバンドの幅が、95μm以下である(10)から(12)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(14)
前記磁気記録媒体の平均厚みが、5.6μm以下である(1)から(13)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(15)
前記基体の平均厚みが、4.2μm以下である(1)から(14)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(16)
前記磁性層の平均厚みが、90nm以下である(1)から(15)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(17)
長手方向のテンション変化に対する幅方向の寸法変化量Δwが、650[ppm/N]≦Δwである(1)から(16)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(18)
温度膨張係数αが、6[ppm/℃]≦α≦8[ppm/℃]であり、且つ、湿度膨張係数βが、β≦5[ppm/%RH]である(1)から(17)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(19)
ポアソン比ρが、0.3≦ρである(1)から(18)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(20)
長手方向の弾性限界値σMDが、0.8[N]≦σMDである(1)から(19)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(21)
前記磁性層は、磁性粉を含み、
前記磁性粉は、六方晶フェライト、ε酸化鉄またはCo含有スピネルフェライトを含む(1)から(20)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(22)
前記磁性粉の平均アスペクト比が、1.0以上3.0以下である(21)に記載の磁気記録媒体。
(23)
前記六方晶フェライトが、BaおよびSrのうちの少なくとも1種を含み、
前記ε酸化鉄が、AlおよびGaのうちの少なくとも1種を含む(21)または(22)に記載の磁気記録媒体。
(24)
前記磁性粉は、六方晶フェライトを含み、
前記磁性粉の平均粒子体積が、1000nm3以上1800nm3以下である(21)に記載の磁気記録媒体。
(25)
前記基体と前記磁性層の間に設けられた下地層をさらに備える(1)から(24)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(26)
(1)から(25)のいずれかに記載された前記磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体の長手方向にかかるテンションを調整するための調整情報を書き込む領域を有する記憶部と
を備えるカートリッジ。
(27)
記録再生装置と通信を行う通信部と、
前記通信部を介して前記記録再生装置から受信した前記調整情報を前記領域に記憶し、かつ、前記記録再生装置の要求に応じて、前記領域から前記調整情報を読み出し、前記通信部を介して前記記録再生装置に送信する制御部と
をさらに備える(26)に記載のカートリッジ。