以下に、本発明の実施形態に係る電気接続箱およびワイヤハーネスにつき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態]
図1から図17を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、電気接続箱およびワイヤハーネスに関する。図1は、本発明の実施形態に係る電気接続箱およびワイヤハーネスを示す斜視図、図2は、実施形態に係るフレームの平面図、図3は、実施形態に係るフレームの斜視図、図4は、第一ブロックの斜視図、図5は、第二ブロックの斜視図、図6は、第三ブロックの斜視図、図7は、第四ブロックの斜視図、図8は、実施形態に係る接続部材の斜視図、図9は、ブロックの挿入方向を示す斜視図、図10は、接続部材の差し込み方向を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係る電気接続箱1は、フレーム2、アッパーカバー3、およびロワカバー4を有する。電気接続箱1は、電線Wと共にワイヤハーネスWHを構成する。ワイヤハーネスWHは、自動車等の車両に搭載され、当該車両に搭載される各装置間を接続する。ワイヤハーネスWHは、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線Wを有する。各電線Wの一端は、電気接続箱1内に収容されている電子部品と接続される。各電線Wの他端は、コネクタ等を介してバッテリや電装部品等の各装置(外部機器)と接続される。
電気接続箱1は、ジャンクションボックス、ヒューズボックス、リレーボックスなどとも呼ばれる場合があるが、本実施形態ではこれらを総称して「電気接続箱」と呼ぶ。電気接続箱1は、電子部品を収容する筐体を構成するフレーム2、アッパーカバー3、およびロワカバー4を有する。フレーム2、アッパーカバー3、およびロワカバー4は、合成樹脂によって形成されている。フレーム2は、両端が開口した筒形状の外壁20を有する。
電気接続箱1は、アッパーカバー3がフレーム2の上部側に位置し、ロワカバー4がフレーム2の下部側に位置するように車両に搭載される。以下の説明において、「上下方向」は、電気接続箱1が車両に搭載された状態における上下方向を示すものとする。アッパーカバー3は、フレーム2の上部開口部20aを閉塞する。ロワカバー4は、フレーム2の下部開口部20bを閉塞する。
図2および図3に示すように、外壁20の内部には、仕切り壁21,22,23,24,25,26,27によって複数の収容部28が形成されている。本実施形態の外壁20は、断面形状が略矩形の角筒形状である。以下の説明では、外壁20の断面形状の長手方向を「横方向」と称し、断面形状の長手方向と直交する方向を「縦方向」と称する。フレーム2は、第一仕切り壁21、第二仕切り壁22、第三仕切り壁23、第四仕切り壁24、第五仕切り壁25、第六仕切り壁26、および第七仕切り壁27を有する。第一仕切り壁21乃至第四仕切り壁24は、横方向に延在しており、第五仕切り壁25乃至第七仕切り壁27は、縦方向に延在している。第五仕切り壁25は、第一仕切り壁21および第二仕切り壁22と外壁20とをつないでいる。第六仕切り壁26は、第三仕切り壁23と外壁20とをつないでいる。第七仕切り壁27は、第四仕切り壁24と外壁20とをつないでいる。各仕切り壁21,22,23,24,25,26,27は、外壁20と一体に形成されている。
外壁20の内部には、四つの収容部28(第一収容部28A、第二収容部28B、第三収容部28C、第四収容部28D)がある。第一収容部28Aは、外壁20、第一仕切り壁21、および第五仕切り壁25によって囲まれた空間部である。第二収容部28Bは、外壁20、第二仕切り壁22、および第五仕切り壁25によって囲まれた空間部である。つまり、第五仕切り壁25は、第一収容部28Aと第二収容部28Bとを仕切っている。
第三収容部28Cは、外壁20、第三仕切り壁23、および第六仕切り壁26によって囲まれた空間部である。第四収容部28Dは、外壁20、第四仕切り壁24、および第七仕切り壁27によって囲まれた空間部である。第一仕切り壁21と第三仕切り壁23とは隙間71をあけて縦方向において互いに対向している。第二仕切り壁22と第四仕切り壁24とは隙間72をあけて縦方向において互いに対向している。第六仕切り壁26と第七仕切り壁27とは隙間73をあけて横方向において互いに対向している。これらの隙間71,72,73には、図1に示す接続部材5が差し込まれる。
図2に示すように、フレーム2は、接続部材5と係合する爪部20c,20d,20eを有している。爪部20cは、第一仕切り壁21と第三仕切り壁23との間に設けられ、フレーム2の中央側に向けて横方向に突出している。爪部20dは、第二仕切り壁22と第四仕切り壁24との間に設けられ、フレーム2の中央側に向けて横方向に突出している。爪部20eは、第六仕切り壁26と第七仕切り壁27との間に設けられ、フレーム2の中央側に向けて縦方向に突出している。
図1に示すように、各収容部28には、ブロック30(第一ブロック30A、第二ブロック30B、第三ブロック30C、第四ブロック30D)が収容される。第一ブロック30Aは第一収容部28Aに、第二ブロック30Bは第二収容部28Bに、第三ブロック30Cは第三収容部28Cに、第四ブロック30Dは第四収容部28Dに収容される。各ブロック30には、コネクタ、ヒューズ、リレー、分岐部、電子制御ユニット等の電子部品が装着される。収容部28に挿入されたブロック30は、以下に説明する係合機構(ロック機構)によってフレーム本体21と係合する。
図4に示すように、第一ブロック30Aの壁面311には、爪部312が設けられている。壁面311は、第一ブロック30Aが第一収容部28Aに収容された状態で第一仕切り壁21と対向する壁面である。爪部312は、壁面311から突出しており、かつ挿入方向と直交する方向に延在している。ここで、「挿入方向」とは、第一収容部28Aに対して第一ブロック30Aが挿入される際の進行方向である。爪部312は、挿入方向の後端側へ向かうに従って突出高さが高くなっている。爪部312は、第一ブロック30Aにおける挿入方向の先端側の端部近傍に設けられている。
図5に示すように、第二ブロック30Bの壁面321には、爪部322が設けられている。壁面321は、第二ブロック30Bが第二収容部28Bに収容された状態で第二仕切り壁22と対向する壁面である。爪部322は、壁面321から突出しており、かつ挿入方向と直交する方向に延在している。爪部322は、挿入方向の後端側へ向かうに従って突出高さが高くなっている。爪部322は、第二ブロック30Bにおける挿入方向の先端側の端部近傍に設けられている。
図6に示すように、第三ブロック30Cの壁面331には、爪部332が設けられている。壁面331は、第三ブロック30Cが第三収容部28Cに収容された状態で第三仕切り壁23と対向する壁面である。爪部332は、壁面331から突出しており、かつ挿入方向と直交する方向に延在している。爪部332は、挿入方向の後端側へ向かうに従って突出高さが高くなっている。爪部332は、第三ブロック30Cにおける挿入方向の先端側の端部近傍に設けられている。
図7に示すように、第四ブロック30Dの壁面341には、爪部342が設けられている。壁面341は、第四ブロック30Dが第四収容部28Dに収容された状態で第四仕切り壁24と対向する壁面である。爪部342は、壁面341から突出しており、かつ挿入方向と直交する方向に延在している。爪部342は、挿入方向の後端側へ向かうに従って突出高さが高くなっている。爪部342は、第四ブロック30Dにおける挿入方向の先端側の端部近傍に設けられている。
図2および図3に示すように、フレーム2は、四つの保持手段40(第一保持手段40A、第二保持手段40B、第三保持手段40C、第四保持手段40D)を有する。第一保持手段40Aは、第一仕切り壁21に設けられている。第一保持手段40Aは、第一収容部28Aに挿入される第一ブロック30Aと係合する。第二保持手段40Bは、第二仕切り壁22に設けられている。第二保持手段40Bは、第二収容部28Bに挿入される第二ブロック30Bと係合する。第三保持手段40Cは、第三仕切り壁23に設けられている。第三保持手段40Cは、第三収容部28Cに挿入される第三ブロック30Cと係合する。第四保持手段40Dは、第四仕切り壁24に設けられている。第四保持手段40Dは、第四収容部28Dに挿入される第四ブロック30Dと係合する。
保持手段40の構成について、第一保持手段40Aを例に説明する。本実施形態の第一保持手段40Aは、第一仕切り壁21と一体に形成されており、第一仕切り壁21と共に第一収容部28Aを囲んでいる。第一仕切り壁21と第一保持手段40Aとの間には、第一仕切り壁21の上端から下側に向けて延在するスリット21a,21bが形成されている。第一保持手段40Aは、このスリット21a,21bによって、第一仕切り壁21と横方向において切り離されている。第一保持手段40Aは、可撓性を有する本体411と、係合部412とを有する。本体411は、板状の構成部であり、下側の端部(基端側)が第一仕切り壁21につながっている。言い換えると、本体411は、第一仕切り壁21に形成された切り欠き部の奥部(下部)から当該切り欠き部の入口側(上側)に向けて突出している。本体411の先端は、自由端である。
係合部412は、本体411の先端側に設けられている。本実施形態の係合部412は、本体411から第一収容部28Aの中心側に向けて突出する爪部である。係合部412は、本体411における第一収容部28Aを囲む面に形成されており、横方向に延在している。図3に示すように、係合部412は、上側へ向かうに従って突出高さが高くなっている。係合部412の上端面413は、上下方向と略直交している。
第二保持手段40B乃至第四保持手段40Dは、第一保持手段40Aと同様に構成されている。例えば、第二保持手段40Bは、第二仕切り壁22の上端から下側に向けて延在するスリット22a,22bによって、横方向において第二仕切り壁22と切り離されている。第二保持手段40Bは、可撓性を有する本体421と、係合部422とを有する。本体421は、板状の構成部であり、下側の端部(基端側)が第二仕切り壁22につながっている。係合部422は、本体421から第二収容部28Bの中心側に向けて突出する爪部である。係合部422は、上側へ向かうに従って突出高さが高くなっている。また、係合部422の上端面423は、上下方向と略直交している。
同様に、第三保持手段40Cは、基端側が第三仕切り壁23に固定された可撓性を有する本体431と、本体431の先端側に設けられた係合部432とを有する。第三保持手段40Cは、スリット23a,23bによって、横方向において第三仕切り壁23と切り離されている。係合部432の上端面433は、上下方向と略直交している。第四保持手段40Dは、基端側が第四仕切り壁24に固定された可撓性を有する本体441と、本体441の先端側に設けられた係合部442とを有する。第四保持手段40Dは、スリット24a,24bによって、横方向において第四仕切り壁24と切り離されている。係合部442の上端面443は、上下方向と略直交している。
図8に示すように、接続部材5は、バスバー51と、バスバー51の少なくとも一部を被覆する被覆部52とを有する。バスバー51は、導電性の金属等で構成されており、第一端子部511、第二端子部512、第三端子部513、第四端子部514を有する。バスバー51において、端子部511,512,513,514を除く部分は、被覆部52によって覆われている。各端子部511,512,513,514は、被覆部52の内部において相互に電気的に接続されている。
被覆部52は、合成樹脂等の絶縁部材によって形成されている。被覆部52は、バスバー51における端子部511,512,513,514以外の部分を覆っている。被覆部52は、第一挿入部521、第二挿入部522、第三挿入部523、および突出部524を有する。第一挿入部521および第二挿入部522は、板状の構成部である。第二挿入部522は、第一挿入部521の延長線上に位置している。第三挿入部523は、第一挿入部521および第二挿入部522の一方側の面とつながっている。突出部524は、第三挿入部523の側面から側方に向けて突出している。第三挿入部523は、角筒形状の構成部であり、差し込み方向の先端側が開口している。ここで、「差し込み方向」とは、フレーム2に対して接続部材5が差し込まれる際の接続部材5の進行方向である。第一挿入部521および第二挿入部522は、差し込み方向と略平行な板状である。
各端子部511,512,513,514は、被覆部52から差し込み方向の先端側に向けて突出している。第一端子部511および第二端子部512は、挿入部521,522の先端側の端部から突出している。第三端子部513は、第三挿入部523の側方に突出している。第四端子部514は、第三挿入部523によって囲まれている。
第一挿入部521の端部には、爪部53が設けられている。第二挿入部522の端部には、爪部54が設けられている。爪部53,54は、挿入部521,522の延在方向の先端から突出している。突出部524の側面には、爪部55が設けられている。爪部55は、挿入部521,522の延在する方向と直交する方向に向けて突出している。
図9に示すように、第一ブロック30Aは、下方からフレーム2の第一収容部28Aに挿入される。第一収容部28Aに挿入された第一ブロック30Aの爪部312は、第一保持手段40Aの係合部412と係合する。他のブロック30B,30C,30Dは、第一ブロック30Aと同様に、下方からフレーム2の収容部28B,28C,28Dにそれぞれ挿入される。収容部28B,28C,28Dに挿入されたブロック30B,30C,30Dの爪部322,332,342は、係合部422,432,442と係合する。
全てのブロック30A,30B,30C,30Dがフレーム2に挿入された後で、図10に示すように接続部材5がフレーム2に差し込まれる。接続部材5は、上方からフレーム2に差し込まれる。接続部材5の第一挿入部521は、第一保持手段40Aの本体411と第三保持手段40Cの本体431との間の隙間71に差し込まれる。第二挿入部522は、第二保持手段40Bの本体421と第四保持手段40Dの本体441との間の隙間72に差し込まれる。第三挿入部523は、第六仕切り壁26と第四ブロック30Dとの隙間73に挿入される。接続部材5がフレーム2に差し込まれると、接続部材5の爪部53,54,55が、フレーム2側の爪部20c,20d,20eとそれぞれ係合する。図11は、接続部材が差し込まれたフレームを示す平面図である。図11に示すように、フレーム2に差し込まれた接続部材5は、爪部20c,20d,20eと係合し、フレーム2に保持される。
図12は、図11のXII−XII断面図であり、保持手段とブロックとの係合状態を示す断面図である。図12に示すように、接続部材5の第一挿入部521は、隙間71に差し込まれて本体411,421を支持する。より詳しくは、第一挿入部521は、第一保持手段40Aの本体411よりも第一ブロック30A側と反対側に差し込まれて本体411を支持する。第一挿入部521は、縦方向において本体411と対向する。縦方向における隙間71の幅W1は、第一挿入部521の厚さと同等か、第一挿入部521の厚さよりもわずかに大きい。従って、隙間71に差し込まれた第一挿入部521は、第三ブロック30C側へ向けての本体411の変形を規制する。言い換えると、第一挿入部521は、第一ブロック30A側と反対側から本体411を支持して、係合部412と爪部312との係合状態が解除される方向への本体411の変形を規制する。
また、第一挿入部521は、第三保持手段40Cの本体431よりも第三ブロック30C側と反対側に差し込まれて本体431を支持する。第一挿入部521は、第一ブロック30A側へ向けての本体431の変形を規制する。つまり、第一挿入部521は、第三ブロック30C側と反対側から本体431を支持して、係合部432と爪部332との係合状態が解除される方向への本体431の変形を規制する。
第一挿入部521が本体411,431を支持するのと同様に、接続部材5の第二挿入部522は、隙間72に差し込まれて第二ブロック30Bの本体421および第四ブロック30Dの本体441を支持する。このように、接続部材5は、隙間71,72に差し込まれて保持手段40の本体411,421,431,441を支持し、接続部材5が差し込まれていない場合と比較して本体411,421,431,441の実質的な曲げ剛性を高める。その結果、接続部材5が隙間71,72に差し込まれることで、フレーム2がブロック30A,30B,30C,30Dを保持する保持力が増強される。
本実施形態の電気接続箱1では、それぞれのブロック30は、一つの保持手段40によってフレーム2と係合し、フレーム2によって保持される。例えば、第一ブロック30Aは、第一保持手段40Aによってフレーム2と係合している。第一ブロック30Aとフレーム2との係合箇所は、第一ブロック30Aの爪部312と第一保持手段40Aの係合部412とが係合する一箇所のみである。係合箇所が一箇所であっても、接続部材5によって第一保持手段40Aの本体411が支持されていることで、第一保持手段40Aが第一ブロック30Aを保持する保持力が十分な大きさとなっている。同様に、他の保持手段40B,40C,40Dは、接続部材5によって本体421,431,441が支持されることで、十分な保持力でブロック30B,30C,30Dを保持する。
本実施形態では、フレーム2の一部がロック形状とされていることや、各ブロック30について係合箇所が一箇所であることなどにより、省スペース化が図られる。また、接続部材5によって保持力が増強されることから、ロック形状の単純化が可能となっている。また、接続部材5によって保持力が増強されることから、低挿入力・高保持力の両立が実現される。また、係合部412,422,432,442や爪部312,322,332,342の幅を広く取ることが可能である。
次に、接続部材5と各ブロック30との電気的な接続について説明する。図13は、接続部材と第一ブロックとの電気的な接続を示す斜視図である。図13に示すように、第一ブロック30Aのバスバー(以下、「第一バスバー」と称する。)6Aは、コネクタ8Aを介して接続部材5の第一端子部511と電気的に接続される。第一バスバー6Aおよびコネクタ8Aは、第一ブロック30Aに保持されている。接続部材5がフレーム2に差し込まれると、第一端子部511がコネクタ8Aに嵌合する。
図14は、接続部材と第三ブロックとの電気的な接続を示す斜視図である。図14に示すように、第三ブロック30Cのバスバー(以下、「第三バスバー」と称する。)6Cは、コネクタ8Cを介して接続部材5の第三端子部513と電気的に接続される。第三バスバー6Cおよびコネクタ8Cは、第三ブロック30Cに保持されている。接続部材5がフレーム2に差し込まれると、第三端子部513がコネクタ8Cに嵌合する。
図15は、図11のXV−XV断面図であり、接続部材と第二ブロックおよび第四ブロックとの電気的な接続を示す断面図である。図15に示すように、第二ブロック30Bのバスバー(以下、「第二バスバー」と称する。)6Bは、コネクタ8Bを介して接続部材5の第二端子部512と電気的に接続される。第四ブロック30Dのバスバー(以下、「第四バスバー」と称する。)6Dは、コネクタ8Dを介して接続部材5の第四端子部514と電気的に接続される。接続部材5がフレーム2に差し込まれると、第二端子部512がコネクタ8Bに嵌合し、第四端子部514がコネクタ8Dに嵌合する。従って、接続部材5がフレーム2に差し込まれると、バスバー6A,6B,6C,6Dが接続部材5のバスバー51と電気的に接続される。言い換えると、フレーム2に差し込まれた接続部材5は、バスバー51によってブロック30A,30B,30C,30D間を電気的に接続する。
本実施形態の電気接続箱1では、以下に説明するように、収容部28に収容されたブロック30を保持する保持力を確保しつつ、収容部28にブロック30が挿入される際に必要な挿入力が低減されている。図16は、接続部材が差し込まれる前の状態を示す断面図である。図16に示すように、隙間71に接続部材5が差し込まれていない状態では、本体411,431は、隙間71を利用して撓み変形することができる。第一保持手段40Aの本体411は、矢印Y1に示すように第三保持手段40C側に撓み変形することが許容される。第三保持手段40Cの本体431は、矢印Y2に示すように第一保持手段40A側に撓み変形することが許容される。本体411,431の剛性は、ブロック30A,30Cを挿入するために必要とされる挿入力を小さくするように、低剛性化されることが好ましい。必要な挿入力が小さくされることで、フレーム2に各ブロック30A,30B,30C,30Dを挿入する挿入工程の効率化や短縮化、当該工程における半係合状態の発生の抑制が可能となる。
一方で、各ブロック30A,30B,30C,30Dが挿入された後で接続部材5がフレーム2に差し込まれると、図12を参照して説明したように、接続部材5が本体411,421,431,441を支持する。接続部材5は、ブロック30A,30B,30C,30Dから離間する方向の本体411,421,431,441の変形を規制する。接続部材5によって補強された本体411,421,431,441は、外力に抗して大きな保持力でブロック30A,30B,30C,30Dを保持することができる。このように、本実施形態の電気接続箱1では、低挿入力と高保持力の両立が実現されている。
本実施形態の電気接続箱1では、一つのブロック30に対して一つのロック(係合構造)が設定されている。これにより、ブロック30がフレーム2に挿入された後で、ロックが係合しているか、半係合の状態であるかを容易に判定可能である。一つのブロック30に対して複数のロックが設定されている場合、係合していないロックがあるか否かを判定することは困難である。これに対して、本実施形態の電気接続箱1では、一つのブロック30に対してロックが一つである。よって、ブロック30がフレーム2に挿入される挿入工程において、ロックが係合状態となったか否かの判定が容易である。
また、本実施形態の電気接続箱1では、接続部材5がフレーム2に差し込まれる際に、ロックの半係合を検出可能である。図17は、半係合状態の第一ブロックを示す断面図である。図17を参照して説明するように、ロックが半係合状態である場合、接続部材5の差し込みが不可能もしくは困難となる。ここで、ロックの係合状態とは、図17の第三保持手段40Cの係合部432と第三ブロック30Cの爪部332との位置関係のごときものである。爪部332の下端面333と、係合部432の上端面433とが上下方向において対向している。第三ブロック30Cが下方に移動すると、係合部432が下方から爪部332を係止して、第三ブロック30Cが下方に抜け出ることを規制する。このように保持手段40の係合部412,422,432,442がブロック30の爪部312,322,332,342を係止可能な状態を、係合部412,422,432,442と爪部312,322,332,342とで構成されるロックの係合状態と称する。
一方、図17において、第一ブロック30Aは、爪部312が第一保持手段40Aの係合部412と係合する位置まで挿入されていない。第一ブロック30Aは、爪部312が係合部412を乗り越える途中の位置で停止している。この状態を、係合部412と爪部312とで構成されるロックの半係合状態と称する。係合部412と爪部312とが半係合状態である場合、爪部312が係合部412を第三保持手段40C側に押し込んでおり、本体411が撓み変形している。本体411の撓み変形により、隙間71の入口71aの幅が狭くなり、接続部材5が隙間71に進入不可能もしくは進入が困難となる。従って、接続部材5が隙間71に差し込まれようとする際に、第一挿入部521が隙間71に進入不可能または進入が困難であれば、第一保持手段40Aおよび第三保持手段40Cの少なくとも一方が半係合状態であると判定可能である。
なお、接続部材5が隙間71,72にスムーズに差し込まれた場合であっても、ロックが係合状態となっていない可能性がある。例えば、ブロック30が十分な深さまで挿入されておらず、ロックが未係合となっている場合である。一例として、半係合となるよりも手前の位置で第一ブロック30Aの挿入が停止されてしまった場合、第一保持手段40Aの本体411は撓み変形していないため、隙間71に第一挿入部521が挿入可能である。この場合には、第一ブロック30Aにヒューズやヒュージブルリンクが挿入される際に、未係合が検出される。ヒューズやヒュージブルリンクは、ブロック30に対して上側から挿入される。ロックが未係合であると、ヒューズ等が挿入される際にブロック30が沈み込むことで未係合の状態が検出される。
以上説明したように、本実施形態の電気接続箱1は、電子部品が装着された複数のブロック30を収容するフレーム2と、保持手段40と、接続部材5とを有する。保持手段40は、フレーム2に基端側が固定された可撓性を有する本体411,421,431,441と、本体411,421,431,441の先端側に設けられ、フレーム2に挿入されたブロック30と係合する係合部412,422,432,442とを有する。接続部材5は、本体411,421,431,441よりもブロック30側と反対側の空間部に差し込まれ、ブロック30間を電気的に接続する。この空間部は、典型的には、本体411,421,431,441と、本体411,421,431,441に対向する壁面との間に形成されている空間部である。空間部に差し込まれた接続部材5は、本体411,421,431,441と対向し、ブロック30側と反対側へ向かう本体411,421,431,441の変形を規制する。本実施形態の電気接続箱1では、接続部材5をフレーム2に差し込む一つの工程によってブロック30を保持する保持力の増強、および複数のブロック30間の電気的な接続が実現される。よって、本実施形態の電気接続箱1は、組み立て工程の簡素化が可能となる。また、一つの接続部材5によって保持力の増強、および複数のブロック30間の電気的な接続が実現されることで、部品数の低減が可能である。
なお、本実施形態において接続部材5が差し込まれる空間部は、本体411と本体431との隙間71、および本体421と本体441との隙間72等であるが、これには限定されない。接続部材5が差し込まれる空間部は、本体411,421,431,441と外壁20とによって形成される空間部など、本体411,421,431,441が差し込み可能な隙間や凹部であり、かつ差し込まれた本体411,421,431,441を保持できるものであればよい。
また、本実施形態のワイヤハーネスWHは、フレーム2と、電線Wと、保持手段40と、接続部材5と、を有しており、接続部材5を差し込む一つの工程によってブロック30を保持する保持力の増強、および複数のブロック30間の電気的な接続が実現される。よって、本実施形態のワイヤハーネスWHは、組み立て工程の簡素化や部品点数の低減が可能となる。
また、本実施形態の電気接続箱1では、それぞれのブロック30は、一つの保持手段40によってフレーム2と係合する。一つのブロック30につき係合箇所が一箇所であることから、ロックの半係合を判別することが容易である。
また、本実施形態の電気接続箱1では、接続部材5は、一のブロック30と係合する保持手段40と、他のブロック30と係合する保持手段40と、の間に差し込まれる。例えば、図12に示すように、接続部材5の第一挿入部521は、第一ブロック30Aと係合する第一保持手段40Aと、第三ブロック30Cと係合する第三保持手段40Cと、の間に差し込まれる。このように、二つの保持手段40A,40Cの間の隙間71に接続部材5が差し込まれることで、一つの挿入部(例えば、第一挿入部521)によって二つの本体411,431の変形を規制することができる。よって、接続部材5を受け入れるためのスペース(隙間71の断面積や容積)が小さくてすむため、フレーム2の大型化が抑制される。
また、本実施形態の電気接続箱1では、接続部材5は、フレーム2に対するブロック30の挿入方向と反対方向から差し込まれる。ブロック30は、図9に示すように、フレーム2の下方から下部開口部20bを経由して収容部28に挿入される。ここで、電線Wは、ブロック30の電子部品に対して、挿入方向の後端側から接続されている。言い換えると、ブロック30は、電線Wが後端側となるようにして、フレーム2に挿入される。ブロック30に接続されている電線Wは、下部開口部20bから引き出されて配索される。つまり、各ブロック30A,30B,30C,30Dがフレーム2に収容された状態において、下部開口部20b側には電線Wが密集した状態となる。このため、フレーム2に対して下方から接続部材5を差し込もうとする場合、電線Wをかき分ける必要がある。これに対して、本実施形態のように上方からフレーム2に接続部材5を差し込むようにすれば、差し込み作業が容易であり、接続部材5とフレーム2との間に電線Wが噛み込まれることがない。
また、本実施形態の電気接続箱1では、各保持手段40において、係合部412,422,432,442は、本体411,421,431,441の上端の近傍に設けられている。従って、ブロック30と保持手段40とが正常に係合しているか否かを作業者が視認しやすい。
また、本実施形態の電気接続箱1では、ブロック30ごとにバスバー6A,6B,6C,6Dが分けられている。よって、各ブロック30のバスバー6A,6B,6C,6D(の特性(バネ性、導電率、板厚等)を個別に最適な値に設定することが可能である。
なお、係合部412,422,432,442や爪部312,322,332,342の配置や形状は、例示したものには限定されず、適宜変更可能である。また、保持手段40および接続部材5やその他の構成についても配置や形状を適宜変更可能である。
[実施形態の第1変形例]
実施形態の第1変形例について説明する。図18は、実施形態の第1変形例に係る電気接続箱を示す断面図である。実施形態の第1変形例について、上記実施形態と異なる点は、例えば、保持手段40の本体411,431において下端側が自由端となっている点である。図18に示すように、第一保持手段40Aの本体411、および第三保持手段40Cの本体431は、それぞれ上端側がフレーム2に固定されている。また、本体411,431の下端側は自由端となっている。このように本体411,431の下端側が自由端である場合、接続部材5は、矢印Y3で示すようにフレーム2に対して下方から差し込まれてもよい。
[実施形態の第2変形例]
実施形態の第2変形例について説明する。図19は、実施形態の第2変形例に係る電気接続箱を示す断面図である。第2変形例の電気接続箱1において、上記実施形態と異なる点は、例えば、ブロック30によって保持手段40が支持される点である。図19に示すように、第一保持手段40Aの本体411、および第三保持手段40Cの本体431は、上記第1変形例と同様に上端側がフレーム2に固定されており、下端側が自由端である。第三ブロック30Cは、第一保持手段40Aと第三保持手段40Cとの間に挿入される。つまり、第2変形例では、第一保持手段40Aと第三保持手段40Cとの間が第三収容部28Cとなっている。
接続部材5が差し込まれる隙間74は、第三保持手段40Cと外壁20との間に形成されている。第三収容部28Cに収容された第三ブロック30Cは、第一保持手段40Aの本体411を第一ブロック30A側と反対側から支持する。第三ブロック30Cは、本体411の撓み変形を規制することにより、第一保持手段40Aが第一ブロック30Aを保持する保持力を増加させる。隙間74に差し込まれた接続部材5は、第三保持手段40Cの本体431を第三ブロック30C側と反対側から支持する。接続部材5は、本体431の撓み変形を規制することにより、第三保持手段40Cが第三ブロック30Cを保持する保持力を増加させる。
第2変形例の電気接続箱1では、フレーム2に対して、第一ブロック30Aが挿入された後に第三ブロック30Cが挿入されることが好ましい。第一ブロック30Aの爪部312と第一保持手段40Aの係合部412とが半係合状態である場合、第三収容部28Cに対する第三ブロック30Cの挿入が不可能もしくは困難となる。つまり、第三ブロック30Cが挿入される際に、第一ブロック30Aとフレーム2との半係合が判断可能である。第三ブロック30Cの爪部332と第三保持手段40Cの係合部432とが半係合状態である場合、接続部材5の挿入が不可能もしくは困難となる。つまり、第三ブロック30Cとフレーム2との半係合は、接続部材5が挿入される際に判断可能である。
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。