以下に、本発明の実施例に係る記録装置について、添付図面を参照して詳細に説明する。
[実施例1]
最初に、本実施例の記録装置1の全体構成について概説する。
図1は、本実施例の記録装置1の外観斜視図である。
図1において記録装置1は、被記録媒体P(図26参照)に記録を行う装置本体21の上部にスキャナー装置22を備え、装置本体21の下側には増設ユニット23及び24を備えている。装置本体21はカセット4を備え、増設ユニット23は、カセット25を備え、増設ユニット24はカセット26を備えている。増設ユニット23及び24に設けられたカセット25及び26は被記録媒体Pの収容枚数を増やす為のオプションユニットであり、装置本体21に対して任意的に取り付けられる。
また、本実施例の記録装置1には、記録装置1の各種操作を行う操作部27が設けられている。また、記録が行われて排出される被記録媒体Pを受ける排出部8が設けられている。ここで、排出部8は、より具体的には、直近に記録が行われた記録面を下にして排出される被記録媒体Pを受けるフェイスダウン排出トレイである。また、本実施例の記録装置1には、不図示の回動支点を中心にして回動することによって装置本体21に対して開閉可能な、給送ユニット28が設けられている。また、給送ユニット28にはトレイ5が設けられており、ユーザーは、トレイ5に被記録媒体Pをセットして該被記録媒体Pを給送させることにより、被記録媒体Pを手差し給送させることができる。
尚、本実施例の記録装置1は操作部27が配置された側が装置手前側であり、トレイ5が設けられた側が装置右側面となる。即ち記録装置1における被記録媒体Pの給送、搬送、排出は、装置左右方向に沿って行われる。
次に、本実施例の記録装置1の装置本体21の内部構成について説明する。
図2から図4は、本実施例の記録装置1を表す概略側面断面図である。ここで、図2は、被記録媒体Pに記録を行う際の状態を表している。また、図3は、記録部である記録ヘッド2をメンテナンス部であるキャップユニット3でキャッピングしている状態を表している。また、図4は、記録ヘッド2からキャップユニット3にフラッシング(記録を伴わないインクの吐出動作)している状態を表している。
図1、並びに、図2から図4で表されるように、本実施例の記録装置1は、給送する被記録媒体Pをセット可能なカセット4とトレイ5とを備えている。そして、図2から図4で表されるローラー6及び7等の複数のローラーで構成される搬送部により、カセット4及びトレイ5にセットされた被記録媒体Pを搬送方向Aに搬送することで、排出部8まで搬送する。
カセット4及びトレイ5から排出部8までの被記録媒体Pの搬送経路には記録ヘッド2が設けられており、本実施例の記録装置1は記録ヘッド2からインクを吐出して被記録媒体Pに記録(画像を形成)することができる。
また、本実施例の記録装置1には反転機構9が設けられており、被記録媒体Pの一方の面に記録ヘッド2により記録をしたのちに、反転機構9により被記録媒体Pを一度搬送方向Bに搬送することで被記録媒体Pを反転させ、被記録媒体Pの他方の面に記録ヘッド2により記録をして被記録媒体Pを排出部8に搬送することで、被記録媒体Pの両面に記録をすることが可能である。
なお、本実施例の記録装置1は、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク及びイエローインクを収容したインクカートリッジ10K、10C、10M及び10Yから不図示の供給機構によりこれらのインクを記録ヘッド2から吐出させることが可能な構成である。ただし、その他のインクを用いる構成や、インクカートリッジの代わりにインクを収容したボトルからインクを記録ヘッドに供給する構成などとしてもよい。
本実施例の記録ヘッド2は、詳細な構造は後述するが、被記録媒体Pの搬送方向Aと交差する交差方向Cに形成されたノズルの領域が、被記録媒体Pの交差方向C全体をカバー可能なように設けられるラインヘッドである。ただし、ラインヘッドの交差方向Cのノズルの領域が、記録装置1が対応している全ての被記録媒体Pの交差方向C全体をカバー可能でない構成としてもよい。また、ラインヘッドの代わりに、被記録媒体Pの搬送方向Aと交差する交差方向Cに往復移動しながら被記録媒体Pに記録する、記録ヘッドを備える構成としてもよい。
また、本実施例の記録装置1は、記録ヘッド2と対向する側に、記録時において記録ヘッド2と対向する対向位置13で被記録媒体Pを支持面38(図20参照)で支持する支持部12と、メンテナンス時において記録ヘッド2をメンテナンスするキャップユニット3と、を備えている。そして、支持部12とキャップユニット3とを移動させることで、対向位置13において、支持面38の方向を保ちつつ支持部12とキャップユニット3とを入れ替える移動機構11を備えている。
ここで、「メンテナンス」とは、記録ヘッド2の記録状態を向上又は維持するための動作をすべて含む意味である。本実施例の記録装置1では、メンテナンス部としてのキャップユニット3はキャッピング及びフラッシングの動作で使用されるが、支持部12と入れ替え可能なメンテナンス部が他にもワイピング及び吸引などのクリーニング動作などを行う構成としてもよい。
このような構成により、本実施例の記録装置1は、記録ヘッド2を、記録時、キャッピング時及びフラッシング時で移動する必要が無い。すなわち、記録ヘッド2のメンテナンスにかかる時間を低減可能な構成となっている。
また、支持面38の方向を保ちつつ支持部12とキャップユニット3とを入れ替える。別の表現をすると、支持面38を上向き(水平状態)に保った状態で移動する(支持部12の移動経路の少なくとも一部は支持部12を水平方向に移動する移動経路である)ので、支持面38が傾いて支持面38に付着したインクが垂れて装置内を汚すということも抑制できる。なお、「支持面38の方向を保ちつつ」とは、支持面38の方向が多少変化することを許容する意味であり、インクが垂れない程度に多少傾いた状態を含む意味である。
次に、本実施例の記録装置1の要部である、移動機構11について詳細に説明する。
図5から図7は、本実施例の記録装置1の要部である移動機構11の概略斜視図である。ここで、図5は、被記録媒体Pに記録を行う際の状態を表している。また、図6は、被記録媒体Pに記録を行う際の状態から記録ヘッド2をキャップユニット3でキャッピングする状態に移行している状態を表している。また、図7は、記録ヘッド2をキャップユニット3でキャッピングしている状態を表している。
また、図8から図10は、本実施例の記録装置1の要部である移動機構11の概略平面図である。ここで、図8は、図5に対応し、被記録媒体Pに記録を行う際の状態を表している。また、図9は、図6に対応し、被記録媒体Pに記録を行う際の状態から記録ヘッド2をキャップユニット3でキャッピングする状態に移行している状態を表している。また、図10は、図7に対応し、記録ヘッド2をキャップユニット3でキャッピングしている状態を表している。
図5及び図8で表されるように、本実施例の移動機構11は、被記録媒体Pに記録を行う際、記録ヘッド2と対向する対向位置13に支持部12を位置させる。対向位置13に支持部12を位置させることで、対向位置13で被記録媒体Pを確りと支持することができ、被記録媒体Pに形成される画像の品質を高めている。
そして、図5及び図8で表される被記録媒体Pに記録を行う際の状態から、記録ヘッド2のキャッピングを行う場合、移動機構11は、図6及び図9で表される状態を経て、図7及び図10で表される状態に移行する。
図7及び図10で表されるように、本実施例の移動機構11は、記録ヘッド2のキャッピングを行う際、対向位置13にキャップユニット3を位置させる。対向位置13にキャップユニット3を位置させることで、記録ヘッド2を移動させることなく、対向位置13で記録ヘッド2を確りとキャッピングすることができ、記録ヘッド2のノズル形成面F(図25参照)に形成されたノズルNのインクの蒸発を抑制できる。
なお、図5及び図8で表される被記録媒体Pに記録を行う際の状態は図2に対応し、図7及び図10で表される記録ヘッド2をキャップユニット3でキャッピングしている状態は図3に対応している。
図2から図10で表されるように、本実施例の移動機構11は、支持部12及びキャップユニット3を、搬送方向Aと交差する交差方向Cに対して交差する方向である方向Dに移動可能である。
詳細には、図2及び図3で表されるように、移動機構11は、支持部12を少なくとも対向位置13から方向Dのうちの第1の方向としての方向D2に移動可能であるとともに、キャップユニット3を少なくとも対向位置13から方向D2とは反対側の第2の方向としての方向D1に移動可能である。
すなわち、対向位置13を基準にして、支持部12を移動する移動経路を方向D2側に設け、キャップユニット3を移動する移動経路をその反対側(方向D1側)に設けている。そしてこのような構成により、特に高さ方向(支持面38と交差する方向)である方向Eにおいて記録装置1を大型化させることなく、支持部12及びキャップユニット3が干渉しない両者の移動経路を簡単に構成している。
なお、本実施例では、対向位置13から、支持部12を方向D2に、キャップユニット3を方向D1に、移動可能な構成であるが、このような構成に限定されず、例えば、支持部12とキャップユニット3の移動方向が夫々逆であってもよい。
また、本実施例の移動機構11は、上記のように、図4で表されるような、記録ヘッド2からキャップユニット3にフラッシングさせる状態(記録ヘッド2に対してキャップユニット3を対向させつつ所定の間隔を設けた状態)を取ることができる。この状態は、図3で表される状態から、キャップユニット3を交差方向C及び方向Dと共に交差する方向である方向E(本実施例では鉛直方向に対応)に移動させた状態である。
このように、本実施例の移動機構11は、支持部12を対向位置13から移動させる際に、支持部12を記録ヘッド2から離れる方向(方向Eのうちの下方向)に移動させてから方向D2に移動させることができる。また、キャップユニット3を対向位置13から移動させる際に、キャップユニット3を記録ヘッド2から離れる方向に移動させてから方向D1に移動させることができる。したがって、支持部12及びキャップユニット3を、記録ヘッド2に対して簡単に接近及び離間させることができる構成になっている。すなわち、対向位置13において、記録ヘッド2と、支持部12及びキャップユニット3と、の距離を簡単に調整できる構成になっている。
また、図5から図10で表されるように、本実施例の移動機構11は、支持部12及びキャップユニット3の移動をガイドするガイド部を構成するガイド溝14と、リンク部材としての第1のガイドバー15及び補助リンク部材としての第2のガイドバー16と、を有している。そして、支持部12を支持して移動する支持台17と、キャップユニット3を支持して移動する支持台18と、を有している。
なお、本実施例の移動機構11では、ガイド部としてガイド溝14を備え、また、ガイド溝14を移動するガイドバーを備えている。ガイド溝14は、交差方向Cの両端部に設けられて対向する図7のガイド部材60に設けられる。ただし、このような構成に限定されず、支持部12及びキャップユニット3の少なくとも一方の移動をガイドする他の構成のガイド部を有していてもよい。
なお、図6及び図9は、被記録媒体Pに記録を行う際の状態から記録ヘッド2をキャップユニット3でキャッピングする状態に移行している状態であるが、この状態において、本実施例の移動機構11は、記録ヘッド2のノズル形成面Fをワイピングすることができる。図5から図10で表されるように、本実施例の移動機構11は、モーターM3の駆動力により送りネジである移動軸42に沿って交差方向Cに移動することによってノズル形成面Fをワイピングすることが可能なワイパー41を備えている。
次に、支持部12及びキャップユニット3のガイド部を構成するガイド溝14と、第1のガイドバー15及び第2のガイドバー16と、支持部12及びキャップユニット3の支持台17及び18と、について説明する。
図11及び図12は、本実施例の移動機構11の要部の一部である支持台18を表す概略斜視図である。なお、支持台17は、支持台18と同様の構成であり、支持台18が水平方向に反転して移動機構11に構成されている。このように、支持台17及び支持台18は、方向Dにおける長さが長い部分と短い部分とを有し、該長い部分と短い部分とが互い違いに配置されている。このような構成となっていることで、支持台17及び支持台18は、支持部12及びキャップユニット3を広い面積で支持しているとともに方向Dにおける移動機構11の全体の長さが長くなりすぎないようにしている。さらに、このような構成となっていることで、支持台17及び支持台18における軸受部49の間の距離を長くとっており、支持台17及び支持台18の方向Dの移動を安定させている。
なお、支持台17及び支持台18の下部には、支持台17及び支持台18を記録装置1の設置面に対して平行に保つための、移動機構11の底面に対する接触部57が3ヶ所設けられている。
また、図13から図15は、本実施例の移動機構11の要部の概略平面図である。ここで、図13は、被記録媒体Pに記録を行う際の状態に対応している。また、図14は、被記録媒体Pに記録を行う際の状態から記録ヘッド2をキャップユニット3でキャッピングする状態に移行している状態に対応している。また、図15は、記録ヘッド2をキャップユニット3でキャッピングしている状態に対応している。
また、図16及び図17は、本実施例の移動機構11の要部の概略斜視図である。ここで、図16は、図13に対応し、被記録媒体Pに記録を行う際の状態に対応している。また、図17は、図14に対応し、被記録媒体Pに記録を行う際の状態から記録ヘッド2をキャップユニット3でキャッピングする状態に移行している状態に対応している。
また、図18は、本実施例の移動機構11の概略側面図であり、被記録媒体Pに記録を行う際の状態を表している。
図5から図10、並びに、図13から図18で表されるように、本実施例の移動機構11は、支持部12及びキャップユニット3の移動をガイドするガイド溝14、第1のガイドバー15及び第2のガイドバー16を有し、ガイド溝14は支持台17及び18の交差方向Cの両端部に構成されている。
詳細には、図11、図12及び図18で表されるように、支持台17及び18の交差方向Cの両端部には突起部19及び20が構成されており、突起部19に第1のガイドバー15の長手方向における一方の端部が回転移動可能な状態で嵌めこまれ、突起部20に第2のガイドバー16の長手方向における一方の端部が回転移動可能な状態で嵌めこまれている。
なお、図18で表されるように、支持台17に取り付けられた第1のガイドバー15の他方の端部は支持部12の交差方向Cの端部に設けられた突起部33に回転移動可能な状態で嵌めこまれ、支持台17に取り付けられた第2のガイドバー16の他方の端部は支持部12の交差方向Cの端部に設けられた突起部34に回転移動可能な状態で嵌めこまれている。
そして、図18で表されるように、支持台18に取り付けられた第1のガイドバー15の他方の端部はキャップユニット3の交差方向Cの端部に設けられた突起部31に回転移動可能な状態で嵌めこまれ、支持台18に取り付けられた第2のガイドバー16の他方の端部はキャップユニット3の交差方向Cの端部に設けられた突起部32に回転移動可能な状態で嵌めこまれている。
このような構成により、第1のガイドバー15と第2のガイドバー16とは平行に移動する。このように、第1のガイドバー15と第2のガイドバー16の2本(複数)のガイドバーを設けることにより、対向位置13において支持部12及びキャップユニット3を簡単に水平(記録ヘッド2のノズル形成面Fに平行)に維持することができる。このため、記録ヘッド2(ノズル形成面F)と被記録媒体Pとの距離(所謂PG)を一定にできるほか、キャップユニット3に排出したインクがこぼれることを抑制することができる。
また、第1のガイドバー15には、長手方向における中央部付近に突起部29が構成されており、突起部29がガイド溝14に嵌めこまれている。
ガイド溝14は、図18で表されるように、対向位置13から離れた位置において方向Dに沿う直線部35(第1領域)が構成され、対向位置13に近い位置において記録ヘッド2側に向かい、直線部35と斜めに交差する方向に延びる曲線部36(第2領域)が構成されている。ガイド溝14がこのような形状をしていることにより、支持部12及びキャップユニット3が対向位置13から離れた位置にある状態においては、第1のガイドバー15及び第2のガイドバー16は傾いた状態を維持する。そして、支持部12及びキャップユニット3が対向位置13に近い位置に来ると、支持部12及びキャップユニット3が対向位置13に近づくにつれて、第1のガイドバー15及び第2のガイドバー16は、その長手方向が鉛直方向に近づくように姿勢をとる。
このような構成により、本実施例の支持部12及びキャップユニット3は、対向位置13から離れた位置における方向Dの移動、対向位置13に近い位置における方向Eの移動が夫々ガイドされる。
このように、本実施例の移動機構11は、支持部12及びキャップユニット3の移動をガイドするガイド溝14を備えているため、支持部12及びキャップユニット3の移動が容易になっている。
また、上記のような構成をしていることにより、図18で表されるように、本実施例の移動機構11は、支持部用ガイド溝としてのガイド溝14aとキャップユニット用ガイド溝としてのガイド溝14bとが、記録ヘッド2から対向位置13に向かう方向である方向Eから見て重ならないよう配置されている。
このため、支持部12及びキャップユニット3を移動する際に両者が干渉しにくい構成になっている。
また、本実施例の移動機構11は、図5から図18で表されるようにモーターM1及びM2を備え、モーターM1の駆動力により移動軸45に沿って支持台17を方向Dに移動可能であり、モーターM2の駆動力により移動軸46に沿って支持台18を方向Dに移動可能である。すなわち、1つの駆動源で支持部12の方向Dの移動と方向Eの移動とを実現しているとともに、1つの駆動源でキャップユニット3の方向Dの移動と方向Eの移動とを実現している。
別の表現をすると、移動機構11は、支持台17及び18を備える構成とすることで、夫々1つの駆動源で、支持部12及びキャップユニット3の方向Dの移動と方向Eの移動とを実現している。すなわち、支持部12を支持して移動する支持部台としての支持台17を有することで支持部12自体の構成を簡単な構成とし、キャップユニット3を支持して移動するメンテナンス部台としての支持台18を有することでキャップユニット3自体の構成を簡単な構成としている。
また、本実施例のガイド溝14は、曲線部36の先端部30(ガイド溝14の対向位置13側の先端部)が方向Eにおいて記録ヘッド2から離れる側(下側)に傾いて設けられている。このため、突起部29が先端部30に位置する際(対向位置13に支持部12及びキャップユニット3を位置させる際)に該先端部30に確りと保持されることで、突起部29が直線部35側に意図せず戻ってしまう(対向位置13から支持部12及びキャップユニット3が移動してしまう)ことを抑制している。
次に、支持部12の内部構造について説明する。
図19及び図20は本実施例の移動機構11の要部を表す概略斜視図であり、支持部12の内部構造を表す断面図である。
図19及び図20で表されるように、支持部12の内部にはバネ37が設けられ、支持部12の支持面38はバネ37により上側に付勢されている。ただし、バネ37の付勢力以上の力で支持面38を押すことにより、支持面38は下側にも移動可能である。
本実施例の支持部12は、このような構成とすることにより、確りと被記録媒体Pを支持可能にしているとともに、被記録媒体Pが搬送不良を起こした際などにおいて被記録媒体Pが記録ヘッド2と強い力で接触して記録ヘッド2を損傷することを抑制可能にしている。
次に、キャップユニット3の内部構造について説明する。
図21及び図22は本実施例の移動機構11の要部を表す概略斜視図であり、キャップユニット3の内部構造を表す断面図である。なお、図21及び図22は、キャップユニット3からキャップを取り外した状態を表している。
図21及び図22で表されるように、キャップユニット3の内部にはバネ39が設けられ、キャップユニット3のキャップ保持面40はバネ39により上側に付勢されている。
本実施例のキャップユニット3は、このような構成とすることにより、確りと記録ヘッド2にキャップを押し当てること(キャッピングすること)を可能にしている。
なお、上記のように、本実施例の移動機構11は、ワイパー41を備え、ワイパー41により記録ヘッド2のノズル形成面Fをワイピングすることが可能である。そして、ワイパー41は、図5から図10で表されるように、移動軸42に沿って交差方向Cに移動可能である。移動軸42は、移動軸42の拡大図である図23で表されるように、軸部43に螺旋部44を固定して形成される。そして、図5から図10で表されるように、ワイパー41は螺旋部44に軸受部47で支持され、本実施例の移動機構11はモーターM3で移動軸42を回転させることによりワイパー41を軸部43に沿って交差方向Cに移動させる。
なお、本実施例においては、移動軸42は、鉄製の螺旋部44を加熱して軸部43に固定するアニール処理により構成されている。
また、上記のように、本実施例の移動機構11は、支持台17(支持部12)を方向Dに移動する際、送りネジである移動軸45に沿って移動させる。そして、支持台18(キャップユニット3)を方向Dに移動する際、移動軸46に沿って移動させる。ここで、移動軸45及び移動軸46は、図23で表される移動軸42と同様の構成になっている。すなわち、本実施例の移動機構11は、送りネジとしての移動軸45及び移動軸46を有し、支持部12及びキャップユニット3は、移動軸45及び移動軸46に係合する軸受部49(図11から図17参照)を有している。このように、移動機構11を送りネジを有する構成とし、支持部12及びキャップユニット3の少なくとも一方を送りネジに係合する軸受部49を有する構成とすることで、移動機構11を簡単な構成としている。
なお、本実施例の移動機構11は、ワイピングをする際に図6、図9、図14及び図17で表される状態(支持部12及びキャップユニット3が方向Dの両側に退避する状態)を取るために、支持部12及びキャップユニット3を移動軸45及び移動軸46の2軸で移動する(移動機構が各々設けられる)構成である。しかしながら、ワイパー41を備えない構成などにおいては、支持部12及びキャップユニット3の移動軸を1軸(移動機構が共通)としてもよい。
次に、記録ヘッド2のヘッド面2aと当接しメンテナンスを行う位置にあったキャップユニット3(メンテナンス部)が、記録ヘッド2のヘッド面2aから離れて退避するまでの様子について説明する。図51(A)〜(C)、図52(A)、(B)は、用紙Pの搬送方向Aと交差する交差方向Cから見た図で、キャップユニット3が記録ヘッド2のヘッド面2aから離れて退避するまでの様子を説明するための模式図である。
移動機構11は、キャップユニット3より方向Eにおける下方の位置で、用紙Pの搬送方向に移動する支持台18(移動台)と、方向Dに延びるガイド溝14bが設けられたガイド部材60(図7参照)と、ガイド溝14bによってガイドされる突起部29(被ガイド部)を有し、一方の側が支持台18に設けられた突起部19(連結部)と回動可能に連結され、他方の側がキャップユニット3に設けられた突起部31(連結部)と回動可能に連結された第1のガイドバー15(リンク部材)と、を含んで構成される。
また、移動機構11は、一方の側は、支持台18に設けられた突起部20(連結部)と回動可能に連結され、他方の側がキャップユニット3に設けられた突起部32(連結部)と回動可能に連結された第2のガイドバー16(補助リンク部材)を備える。
図51(A)のキャップユニット3は、記録ヘッド2と対向し、記録ヘッド2のヘッド面2aに当接してメンテナンスを行う位置にある。第1のガイドバー15の中央部に設けられた突起部29は、破線で示したガイド溝14bに侵入した状態で備えられる。図51(A)の突起部29は、ガイド溝14bの方向D2側の端部の位置にある。この状態では、第1のガイドバー15、第2のガイドバー16は、長手方向が方向Eに沿った姿勢の状態にある。
図51(B)に示すように、支持台18が方向D1に移動すると、突起部29はガイド溝14bにおける曲線部36に沿って移動する。第1のガイドバー15は、突起部29を支点として方向D3に回動しながら方向D1に移動する。
ここで説明のため、第1のガイドバー15が方向D1への移動動作のみ行われた場合、または第1のガイドバー15が方向D3への回動動作のみ行われた場合について、突起部31の方向Dにおける移動量についてそれぞれ説明する。
第1のガイドバー15が回動せずに方向D1への移動のみ行われた場合は、第1のガイドバー15は、長手方向が方向Eに沿った姿勢を保持したまま方向D1に移動し、図51(B)の破線で示した第1のガイドバー15の位置における突起部31の方向D1への移動量は距離L1である。
一方、第1のガイドバー15が、方向Dにおける図面左側に移動をせずに方向D3に回動した場合、突起部31の方向D2への移動量は距離L1である。
従って、第1のガイドバー15が図面左側への移動動作と、方向D3への回動動作が同時に行われると、突起部31の方向Dにおける、方向D1への移動量としての距離L1、方向D2への移動量としての距離L1は相殺される。そのため、支持台18が方向D1に移動したとき、キャップユニット3は、破線H1に示す位置においてヘッド面2aと交わる方向Eの下方(図面下側)に移動する。これにより、キャップユニット3が記録ヘッド2のヘッド面2aを方向Dに摺動することがないので、ヘッド面2aがキャップユニット3によって摩耗することが抑制される。尚、方向D1への移動量としての距離L1と、方向D2への移動量としての距離L1とが相殺された数値上の結果が0に近い値でもよい。
さらに、図51(C)の支持台18が方向D1に移動すると、突起部29がガイド溝14bにおける曲線部36に沿って方向D1および下方に移動し、第1のガイドバー15は、突起部29を支点として方向D3に回動しながら方向D1に移動する。
さらに、図52(A)に示すように、突起部29がガイド溝14bにおける直線部35に沿ってガイドされ、キャップユニット3は、方向D1に移動する。そして、図52(B)に示すように、突起部29はガイド溝14bにおける方向D1側の端部の位置となり、キャップユニット3は退避位置となる。
図51(B)を用いて、キャップユニット3が記録ヘッド2から離間するとき、キャップユニット3が下方に移動する様子を説明したが、同様に、退避位置にあったキャップユニット3が記録ヘッド2のヘッド面2aに近接しようとするとき、キャップユニット3は、方向Eの上方(図面上側)に移動する。これにより、キャップユニット3が記録ヘッド2のヘッド面2aを方向Dに摺動することがないので、ヘッド面2aがキャップユニット3によって摩耗することが抑制される。
図51(C)の突起部31と突起部19とを結ぶラインJ1は、突起部32と突起部20とを結ぶラインJ2と平行である。これにより、支持台18の移動に伴って、第1のガイドバー15、第2のガイドバー16が回動しながら方向Dに移動するとき、キャップユニット3は水平方向の姿勢を保持した状態で移動が可能である。そのため、キャップユニット3からのインク(液体)の漏れ出しを抑制することができる。
尚、キャップユニット3が記録ヘッド2から離間または記録ヘッド2に近接するとき、キャップユニット3の移動方向は、記録ヘッド2のヘッド面2aと直交する方向に対して斜めの方向でもよい。
次に、本実施例の記録ヘッド2及び該記録ヘッド2の保護部48について説明する。
図24は、本実施例の記録ヘッド2の周辺部を表す概略側面図である。また、図25は、本実施例の記録ヘッド2のノズル形成面Fを表す概略斜視図である。また、図26及び図27は、本実施例の記録ヘッド2の保護部48を表す概略平面図である。
図24で表されるように、本実施例の記録装置1は、記録ヘッド2のノズル形成面Fを保護するための保護部48を備えている。なお、保護部48は記録ヘッド2に対して方向Eにおいて接近及び離間(退避)することが可能である。ここで、図24(A)は記録時における記録ヘッド2と保護部48との位置関係を表しており、図24(B)は記録ヘッド2から保護部48が退避を始めた途中の状態を表しており、図24(C)は記録ヘッド2から保護部48が退避を完了した状態を表している。
記録ヘッド2から保護部48が退避をする際、最初に、保護部48は記録ヘッド2と共に上方(支持部12から離れる方向)の所定位置まで移動する。すなわち、図24(A)の状態から図24(B)の状態に移行する。
保護部48と記録ヘッド2とが所定位置まで移動すると、記録ヘッド2のみがさらに上方の所定位置まで移動する。すなわち、図24(B)の状態から図24(C)の状態に移行する。
このような構成により、記録時においては保護部48で記録ヘッド2を確りと保護しつつ所定のPGで記録することができ、保護部48から記録ヘッド2を離したい場合には十分に保護部48から記録ヘッド2を離すことができる。ただし、保護部48が記録ヘッド2に固定される構成としてもよい。
また、本実施例の記録ヘッド2は、図25で表されるように、ノズル形成面Fに、複数のノズルNで構成されるノズル列が、搬送方向Aに対して傾いて、複数配置されている。このように複数のノズル列が搬送方向Aに対して傾いて配置されることにより、搬送方向Aにおいて所定の間隔以上にノズルNが形成されていない部分ができないようにしている。なお、図25で表されるノズル形成面Fは、各インク(ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク及びイエローインク)に対応して、搬送方向Aに複数並べられて設けられている。
また、本実施例の保護部48は、図26及び図27で表されるように、孔部52が設けられており、孔部52はノズル形成面Fに設けられるノズルNで構成されるノズル列に対応している。なお、図26は支持部12の位置(対向位置13)に被記録媒体Pが搬送される直前の状態を表しており、図27は保護部48の単体を表している。
ここで、本実施例の記録装置1では、図26で表されるように、対向位置13における支持部12の左側に寄せられた状態で被記録媒体Pは搬送される。このため、被記録媒体Pの搬送方向Aにおける右側の先端部54は、左側の先端部53よりも孔部52に引っかかりやすい。
そこで、本実施例の保護部48では、右側の先端部54に対応する右側部分50において、孔部52は搬送方向Aの下流側に抜けている。このため、右側部分50の孔部52に右側の先端部54が引っ掛かったとしても、被記録媒体Pの搬送に伴い先端部54は孔部52から抜け出る。
一方、左側の先端部53に対応する左側部分51では、左側の先端部53は孔部52に引っかかり難い。このため、保護部48の強度を高めるために、左側部分51における孔部52は搬送方向Aの下流側に抜けていない。
すなわち、このような構成により、本実施例の保護部48は、ノズル形成面Fを保護するとともに被記録媒体Pの搬送不良を抑制している。
[実施例2]
次に、実施例2の記録装置について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図28(B)は本実施例の記録装置1の要部である保護部48を表す概略斜視図である。なお、上記実施例1と共通する構成部材は同じ符号で示しており、詳細な説明は省略する。また、図28(B)に対応する実施例1の保護部48を図28(A)に示す。
なお、本実施例の記録装置1は、保護部48の構成以外は、実施例1の記録装置1と同様の構成である。
図28(B)で表されるように、本実施例の保護部48は、右側部分50には、記録ヘッド2のノズル列に対応した複数の孔部52の代わりに、搬送方向Aの下流側に抜けている大きな空間部55が設けられている。このような構成とすることで、左側部分51において被記録媒体Pの搬送に伴うノズル形成面Fを保護するとともに被記録媒体Pの搬送不良を抑制している。
[実施例3]
次に、実施例3の記録装置について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図28(C)は本実施例の記録装置1の要部である保護部48を表す概略斜視図である。なお、上記実施例1及び2と共通する構成部材は同じ符号で示しており、詳細な説明は省略する。
なお、本実施例の記録装置1は、保護部48の構成以外は、実施例1及び2の記録装置1と同様の構成である。
図28(C)で表されるように、本実施例の保護部48は、右側部分50において、搬送方向Aの下流側に抜ける孔部52の代わりに、左側部分51と同様、搬送方向Aの下流側に抜けていない孔部52が設けられている。このような構成とすることで、被記録媒体Pの搬送に伴うノズル形成面Fを保護している。
[実施例4]
次に、実施例4の記録装置について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図29は本実施例の記録装置1の要部である保護部48を表す概略図である。なお、上記実施例1から3と共通する構成部材は同じ符号で示しており、詳細な説明は省略する。
なお、本実施例の記録装置1は、保護部48の構成以外は、実施例1から3の記録装置1と同様の構成である。
図29(A)は、図28(A)から(C)に対応する本実施例の保護部48を表す概略斜視図である。また、図29(B)は、本実施例の保護部48の概略拡大図である。そして、図29(C)は、本実施例の保護部48の概略断面図である。
図29(A)から(C)で表されるように、本実施例の保護部48は、左側部分51から右側部分50までの全体において、搬送方向Aの下流側に抜けていない孔部52が設けられており、孔部52には長手方向に隣接して庇部56が設けられている。このため、図29(C)で表されるように、庇部56により、被記録媒体Pを搬送する際に、孔部52の下側から上側に被記録媒体Pの先端部54が抜け出ることを抑制することができる。すなわち、このような構成とすることで、被記録媒体Pの搬送に伴うノズル形成面Fを保護するとともに被記録媒体Pの搬送不良を抑制している。
なお、保護部48を上記実施例1から4の構成のいずれか又はこれらと異なる構成とし、例えば被記録媒体Pの浮き上がりを抑えることが可能な位置に、被記録媒体Pの搬送経路を構成する板金などを追加して設ける構成としてもよい。
[実施例5]
次に、実施例5の記録装置について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図30は、本実施例の記録装置1の要部である移動機構11を表す概略側面図であり、実施例1の記録装置1における図18に対応する図である。なお、上記実施例1から4と共通する構成部材は同じ符号で示しており、詳細な説明は省略する。
なお、本実施例の記録装置1は、移動機構11の構成以外は、実施例1の記録装置1と同様の構成である。
図18などで表されるように、実施例1の記録装置1では、移動機構11のガイド溝14は、ガイド溝14aとガイド溝14bとが、記録ヘッド2から対向位置13に向かう方向Eから見て重ならないよう配置されていた。一方、本実施例の移動機構11のガイド溝14は、ガイド溝14aの先端部30とガイド溝14bの先端部30とが方向Eから見て重なる配置である。本実施例の移動機構11のガイド溝14のように、ガイド溝14aとガイド溝14bとが方向Eから見て重なる配置とすることで、移動機構11の方向Dにおける長さを短く構成することが可能になり、移動機構11、さらには記録装置1を小型化することが可能になる。
[実施例6]
次に、実施例6の記録装置について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図31は実施例6に係るプリンターの外観斜視図であり、図32は本発明に係るプリンターの用紙搬送経路の第1の状態を示す側断面図であり、図33は本発明に係るプリンターの用紙搬送経路の第2の状態を示す側断面図であり、図34は本発明に係るプリンターの構成を示すブロック図であり、図35は本発明に係るラインヘッド、ベルト搬送手段及びメンテナンス手段の関係を示す斜視図である。
図36は本発明に係るベルト搬送手段の第1の状態を示す斜視図であり、図37は本発明に係るベルト搬送手段においてベルト搬送手段を変位させるアーム部の構造を示す部分断面図であり、図38はベルト搬送手段における駆動部を示す斜視図であり、図39は本発明に係るベルト搬送手段の第2の状態を示す斜視図であり、図40は本発明に係るベルト搬送手段の第3の状態を示す斜視図である。
図41は本発明に係るベルト搬送手段の第4の状態を示す斜視図であり、図42は本発明に係るメンテナンス手段の第1の状態を示す斜視図であり、図43は本発明に係るメンテナンス手段の第4の状態を示す斜視図であり、図44は本発明に係るメンテナンス手段の第1の状態を示す側面図であり、図45は本発明に係るメンテナンス手段の第2の状態を示す側面図である。
図46は本発明に係るメンテナンス手段の第3の状態を示す斜視図であり、図47は本発明に係るメンテナンス手段の第3の状態を示す側面図であり、図48は本発明に係るメンテナンス手段におけるメンテナンス部がラインヘッドと密着した状態を示す斜視図であり、図49は本発明に係るメンテナンス手段におけるメンテナンス部がラインヘッドと密着した状態を示す側面図であり、図50は本発明に係るベルト搬送手段及びメンテナンス手段におけるメンテナンス動作のフローチャート図である。
また、各図において示すX−Y−Z座標系はX方向(装置幅方向)が用紙の全幅方向、Y方向が用紙の搬送方向、Z方向が記録ヘッドと用紙との間の距離(ギャップ)の変化する方向すなわち装置高さ方向を示している。尚、各図において−X方向を装置前面側とし、+X方向側を装置背面側とする。
<<<プリンターの概要>>>
図31を参照して記録装置の一例としてのインクジェットプリンター210(以下、プリンター210という)について説明する。プリンター210は装置本体212と、スキャナーユニット214とを備える複合機として構成されている。装置本体212は、「被記録媒体」としての用紙P(図32参照)を収容する複数の用紙収容カセット216(媒体収容部)を備えている。各用紙収容カセット216は、装置本体212の前面側(図31における−X軸方向側)から着脱可能に取り付けられている。尚、本明細書において用紙Pとは、一例として普通紙や厚紙、写真用紙等の用紙を指している。
また、装置本体212における装置高さ方向(Z軸方向)において、スキャナーユニット214と用紙収容カセット216との間には、後述するラインヘッド218において記録が実行された用紙Pを受ける用紙受けトレイ220が設けられている。
<<<用紙搬送経路について>>>
次いで、図32及び図33を参照して、プリンター210における用紙Pの搬送経路について説明する。尚、図32及び図33には、用紙Pの搬送経路の主要構成のみの符号を付し、その他の構成、特に複数設けられている拍車については符号を省略している。
本実施例におけるプリンター210は、用紙搬送経路222を備えている。用紙搬送経路222は、ストレート経路224、スイッチバック経路226、反転経路228、フェイスダウン排出経路230、用紙収容カセット216からストレート経路224に接続される給送経路232から構成されている。
給送経路232には、用紙Pの搬送方向に沿って順に給送ローラー234と、分離ローラー対236と、搬送ローラー対238とが設けられている。給送ローラー234は図示しない駆動モーターにより回転駆動させられる。分離ローラー対236は、用紙Pをニップすることで用紙Pの分離を行う。搬送ローラー対238は、一方のローラーが図示しない駆動モーターにより回転駆動させられる駆動ローラーとして構成され、他方のローラーが従動ローラーとして構成されている。
尚、以降の説明において、本明細書に登場する各搬送ローラー対における一方のローラーは図示しない駆動モーターにより回転駆動させられる駆動ローラーとして構成され、他方のローラーは従動ローラーとして構成されているものとして説明する。
用紙収容カセット216に収容された用紙Pは給送ローラー234により給送経路232の下流側に給送される。給送ローラー234により給送された用紙Pは、分離ローラー対236及び搬送ローラー対238に順次ニップされて給送経路232の下流側に向けて給送される。また、搬送ローラー対238の搬送方向下流側には、搬送ローラー対240が設けられている。
本実施例では搬送ローラー対240の位置で、給送経路232とストレート経路224とが接続されている。つまり、給送経路232は用紙収容カセット216から搬送ローラー対240までの経路として設定されている。
ストレート経路224は、直線状に延びる経路として構成されている。ストレート経路224には、搬送方向に沿って順に搬送ローラー対240、「支持手段(支持部)」としてのベルト搬送手段242、「記録ヘッド」としてのラインヘッド218、第1フラップ244が設けられている。尚、本実施例においてストレート経路224は、搬送ローラー対240から第1フラップ244までの経路として設定されている。すなわち、ストレート経路224はラインヘッド218を通り、ラインヘッド218の上流側及び下流側に延びる経路として設定されている。
ラインヘッド218は複数のノズルヘッド部246を備えている。本実施例において、ラインヘッド218は、ノズルヘッド部246と対向する領域に用紙Pが搬送された際、用紙Pの記録面にノズルヘッド部246に設けられた複数のノズルからインクを吐出して記録を実行するように構成されている。本実施例におけるラインヘッド218は、一例としてインクを吐出するノズルが用紙幅方向全域をカバーする様に設けられた記録ヘッドであり、用紙幅方向への移動を伴わないで用紙幅全体に記録が可能な記録ヘッドとして構成されている。
また、ノズルヘッド部246、つまりラインヘッド218と対向する領域には「支持手段」としてのベルト搬送手段242が配置されている。ベルト搬送手段242はベルト駆動により、用紙Pを搬送方向下流側に搬送する。この際、ベルト搬送手段242は用紙Pの記録面と反対側を支持する。そして、ベルト搬送手段242により支持された用紙Pの記録面はラインヘッド218と対向し、ノズルヘッド部246からインクが吐出されることにより、用紙Pの記録面に記録が行われる。また、ベルト搬送手段242は、用紙Pを下方から支持することにより、用紙Pの記録面とノズルヘッド部246のヘッド面との間の距離(ギャップ)を規定する。尚、ベルト搬送手段242については、後ほど詳細に説明する。
続いて、ラインヘッド218の搬送方向下流側には第1フラップ244が位置している。第1フラップ244は、装置本体212内に設けられた制御部260(図34参照)が制御する駆動機構により、揺動可能に構成されている。第1フラップ244は、ストレート経路224とスイッチバック経路226とを接続する姿勢(図32の状態)と、ストレート経路224とフェイスダウン排出経路230とを接続する姿勢(図33の状態)とを切換可能に構成されている。
尚、本実施例において第1フラップ244を駆動する駆動機構は、ソレノイドにより構成されている。また、第1フラップ244の姿勢切り換え動作は制御部260(図34参照)により制御されている。
第1フラップ244がストレート経路224とフェイスダウン排出経路230とを接続する姿勢(図33参照)にある場合、用紙Pはベルト搬送手段242によりストレート経路224からフェイスダウン排出経路230へ送られる。
フェイスダウン排出経路230は、装置高さ方向においてストレート経路224から上側へ延びつつ、湾曲反転している。そして、フェイスダウン排出経路230には、複数の搬送ローラー対248が搬送方向において適宜間隔をおいて設けられている。
フェイスダウン排出経路230は、第1フラップ244から搬送方向最下流側に位置する搬送ローラー対248の搬送方向下流側に位置する出口250までを経路としている。つまり、フェイスダウン排出経路230は、ストレート経路224と接続する搬送経路であって、ラインヘッド218を通った用紙Pを湾曲させ、反転させて排出する経路である。
ラインヘッド218で記録面に記録が実行された用紙Pは、フェイスダウン排出経路230において第1フラップ244から搬送方向に沿って順に設けられた搬送ローラー対248により順次ニップされて搬送される。そして、用紙Pは出口250から用紙受けトレイ220に向けて排出される。
ここで用紙Pは、フェイスダウン排出経路230を搬送される際、最後にラインヘッド218で記録された記録面を上向きにして搬送され、次に当該記録面をフェイスダウン排出経路230の湾曲部分の内側に向けて湾曲させられて搬送され、そして前記記録面を下向きにして出口250から用紙受けトレイ220に向けて排出される。
<<<両面記録における用紙の搬送経路について>>>
第1フラップ244がストレート経路224とスイッチバック経路226とを接続する姿勢(図32参照)にある場合、用紙Pはベルト搬送手段242によりストレート経路224からスイッチバック経路226へ送られる。
スイッチバック経路226及び反転経路228は、用紙Pにおける第1面の記録後、第2面に記録を実行する場合、つまり両面記録を実行する場合において用紙Pが通過する経路である。尚、第1面に記録を行わないものの第2面には記録を行う場合も同様に、用紙Pはスイッチバック経路226及び反転経路228を通過する。即ち本明細書において両面記録とは、第1面に記録を行うか否かに拘わらず、用紙Pを反転させて第2面に記録を行うことを意味する。
スイッチバック経路226は、装置高さ方向において上向きに湾曲反転するフェイスダウン排出経路230の内側に位置し、当該フェイスダウン排出経路230に沿って延びている。そして、スイッチバック経路226は、搬送ローラー対252を備えている。
また、本実施例において、スイッチバック経路226は第1フラップ244の上方に設けられた第2フラップ254からスイッチバック経路226の先端に設けられた開口256までの経路として設定されている。スイッチバック経路226は、第1フラップ244によりストレート経路224と接続されている際(図32参照)、用紙Pはベルト搬送手段242によりラインヘッド218と対向する領域から第1フラップ244を経てスイッチバック経路226に送り込まれる。用紙Pはスイッチバック経路226において搬送方向における後端部が搬送ローラー対252にニップされる位置まで送り込まれる。
尚、ここで第2フラップ254について説明する。第2フラップ254は、装置高さ方向(Z軸方向)において第1フラップ244の上方に設けられている。そして、第2フラップ254は第1フラップ244の動作に連動して図示しない連動機構により揺動させられる。つまり、第2フラップ254は、第1フラップ244及び前記連動機構を介して制御部260に制御されている。
第2フラップ254は、第1フラップ244がストレート経路224とスイッチバック経路226とを接続している状態(図32参照)において、スイッチバック経路226と反転経路228との接続を遮る姿勢となる。一方、第1フラップ244がストレート経路224とフェイスダウン排出経路230とを接続している状態(図33参照)では、第2フラップ254はスイッチバック経路226と反転経路228とを接続する姿勢(図33参照)となる。尚、図33においてベルト搬送手段242は、説明のためにノズルヘッド部246から離間した姿勢で図示されているが、用紙Pの搬送中においてベルト搬送手段242はノズルヘッド部246と対向する姿勢を維持する。
第2フラップ254がスイッチバック経路226と反転経路228とを接続する姿勢(図33参照)を取ると、制御部260は、用紙Pをスイッチバック経路226に送り込んだ方向と逆方向に搬送ローラー対252を回転させ、用紙Pの後端側を先端側として反転経路228に用紙Pを送り出す。つまり、用紙Pをスイッチバックさせる。
反転経路228は、第2フラップ254から、ラインヘッド218の上方を通り、ストレート経路224の搬送ローラー対240へ至る経路として設定されている。反転経路228には、複数の搬送ローラー対258が搬送方向において適宜間隔をおいて設けられている。
反転経路228の出口側は、ストレート経路224における搬送ローラー対240の上流位置においてストレート経路224に合流するように構成されている。そして、用紙Pは、ストレート経路224に再度送り込まれる。つまり、反転経路228は、スイッチバック経路226と接続する搬送経路であって、逆方向に搬送された、すなわちスイッチバックされた用紙Pをラインヘッド218の上側を迂回させて反転させ、ストレート経路224におけるラインヘッド218の上流側位置に位置する搬送ローラー対240で合流させる経路として設定されている。
そして、用紙Pは、反転経路228を搬送される際、第1面と第2面とが反転させられ、ストレート経路224におけるラインヘッド218と対向する領域に搬送され、第2面に記録が実行される。その後、用紙Pはフェイスダウン排出経路230を通って用紙受けトレイ220に排出される。
<<<制御部について>>>
装置本体212は、複数の電子部品から構成される電気回路としての制御部260(図34参照)を備えている。制御部260は、スキャナーユニット214、ラインヘッド218、ベルト搬送手段242、第1フラップ244、第2フラップ254、後述するモータードライバー262及びメンテナンス手段264における用紙Pの給送、搬送、排出、記録動作、原稿読取動作、メンテナンス動作等のプリンター210の記録及び画像読取の実行に必要な動作を制御している。
また、制御部260は外部(PCなど)からの指示で原稿読取動作等のプリンター210の記録及び画像読取の実行に必要な動作を制御してもよい。また、制御部260は、ラインヘッド218のノズルヘッド部246におけるインクの吐出を制御する。
また、制御部260により制御されるモータードライバー262は装置本体212内に複数配置され、図示しない複数の駆動モーター、後述するベルト駆動モーター278、揺動駆動モーター298及び移動台駆動モーター318をそれぞれ制御している。つまり、制御部260は本実施例においてモータードライバー262及び前記複数の駆動モーターを介して、給送ローラー234、分離ローラー対236及び各搬送ローラー対238、240、248、252、258の駆動を制御している。
<<<ベルト搬送手段及びメンテナンス手段の概要>>>
次いで、図32、図33及び図35を参照してラインヘッド218、ベルト搬送手段242及びメンテナンス手段264について説明する。装置本体212内には装置高さ方向においてラインヘッド218より下方にベルト搬送手段242及びメンテナンス手段264が設けられている。
ベルト搬送手段242はラインヘッド218のノズルヘッド部246と対向する第1の姿勢(図32参照)と、ノズルヘッド部246と対向する位置から退避する第2の姿勢(図33参照)とを切換可能に構成されている。また、メンテナンス手段264は、本実施例においてベルト搬送手段242の搬送方向下流側に位置している。尚、メンテナンス手段264についてはベルト搬送手段242の説明後に説明する。尚、図35において、説明のためにラインヘッド218、ベルト搬送手段242及びメンテナンス手段264の主要な構成のみ符号を付している。
<<<ベルト搬送手段について>>>
図36ないし図41を参照してベルト搬送手段242について詳説する。ベルト搬送手段242は、ベルト駆動部266とベルト揺動部268とを備えている。まず、ベルト駆動部266について説明する。ベルト駆動部266は、「第1の回転体」としての駆動軸270、「第2の回転体」としての従動軸272、搬送ベルト274及び揺動台276を備えている。また、装置本体212には、ベルト駆動モーター278が設けられている。駆動軸270の一端部には、伝達ギア280(図38参照)が駆動軸270とともに回転可能に取り付けられている。
そして、伝達ギア280はベルト駆動モーター278の駆動軸に取り付けられた駆動ギア282(図38参照)と噛合している。つまり、制御部260によりベルト駆動モーター278が回転駆動させられると、駆動ギア282及び伝達ギア280を介して駆動軸270も回転駆動させられる。尚、本実施例においてベルト駆動モーター278は制御部260により制御されている。
また、従動軸272は、駆動軸270に対して駆動軸270の軸線方向(図36におけるX軸方向)と交差する方向(図36におけるY軸方向)に間隔をおいて設けられている。本実施例では、用紙Pの搬送方向上流側に駆動軸270が設けられ、搬送方向下流側に従動軸272が設けられている。そして、駆動軸270と従動軸272との間には搬送ベルト274が掛け回されている。そして、駆動軸270が回転駆動させられると、搬送ベルト274も駆動軸270の回転方向と同じ方向に回転駆動させられる。
また、本実施例において、搬送ベルト274の幅(図36のX軸方向における長さ)は用紙Pの全幅よりも大きく設定されている。また、本実施例では図示しないが搬送ベルト274の幅方向における両端部には、搬送ベルト274の全周にわたってビードがそれぞれ貼り付けられている。本実施例において不図示のビードは一例としてウレタン樹脂のゴム部材として形成されている。不図示のビードは駆動軸270及び従動軸272の軸線方向(用紙幅方向)において搬送ベルト274が駆動軸270及び従動軸272に対してずれることを防止している。また、本実施例において、搬送ベルト274は一例として静電吸着ベルトとして構成されている。
また、駆動軸270と従動軸272との間には揺動台276が配置されている。揺動台276は装置高さ方向において搬送ベルト274の上側経路274aと下側経路274bとの間に位置している。揺動台276は、駆動軸270の軸線方向に延設されている。また、揺動台276の両端部は、駆動軸270を回転可能に軸支している。
また、揺動台276の両端部には、テンション調整部材284(図37参照)が設けられている。テンション調整部材284の一端部は、従動軸272を回転可能に軸支している。また、テンション調整部材284の他端は、従動軸272が駆動軸270に対して接離する方向にスライド移動可能に揺動台276に取り付けられている。また、揺動台276とテンション調整部材284との間には、付勢部材286が配置されている。本実施例において、付勢部材286はばね部材として構成され、付勢部材286の一端は揺動台276に取り付けられ、他端はテンション調整部材284に取り付けられている。
本実施例において、テンション調整部材284は、付勢部材286の付勢力により従動軸272が駆動軸270に対して離間する方向に揺動台276を押圧している。したがって、テンション調整部材284に軸支される従動軸272は、駆動軸270から離間するようにテンション調整部材284を介して付勢部材286により付勢されている。これにより搬送ベルト274は、従動軸272が駆動軸270に対して離間する方向に付勢部材286の付勢力を受け、搬送ベルト274には搬送ベルト274を引き延ばす方向にテンションが生じる。その結果、搬送ベルト274の上側経路274a及び下側経路274bには撓みが生じ難くなる。
したがって、図32及び図36に示すように、ベルト搬送手段242がラインヘッド218のノズルヘッド部246と対向する第1の姿勢において、搬送ベルト274の上側経路274aはラインヘッド218と対向する領域に搬送されてきた用紙Pの記録面と反対の側を支持する。つまり、ベルト搬送手段242は第1の姿勢において用紙Pを支持する媒体支持部材として機能する。
次にベルト揺動部268について説明する。ベルト揺動部268は、第1アーム288と第2アーム290と、揺動軸292と、揺動ギア294と、揺動駆動ギア296と、「駆動源」としての揺動駆動モーター298とを備えている。第1アーム288の一端部は、揺動台276に対して揺動可能に取り付けられている。また、第1アーム288の他端部は、第2アーム290の一端部に対して揺動可能に取り付けられている。また、第2アーム290は揺動軸292とともに回転するように揺動軸292に取り付けられている。
また、揺動軸292の一端部には揺動ギア294が揺動軸292とともに回転するように取り付けられている。また、揺動駆動モーター298の駆動軸には、揺動駆動ギア296が取り付けられている。本実施例において、揺動駆動ギア296は一例としてウォームギアとして構成されている。そして、揺動ギア294と揺動駆動ギア296とは噛合している。
また、図37を参照するに、第1アーム288には、付勢部材300と押圧部材302が設けられている。付勢部材300の一端部は第1アーム288に取り付けられている。付勢部材300の他端部は押圧部材302に取り付けられている。押圧部材302は、付勢部材300の付勢力により第1アーム288の長手方向に沿って第1アーム288の一端部側に向けて進退自在に第1アーム288に取り付けられている。
また、第1アーム288の一端部には揺動軸288aが設けられている。また、揺動台276の下面には、第1アーム288を揺動可能に取り付けるための軸受け部276aが形成されている。軸受け部276aには長穴状の軸受け穴304が形成されている。軸受け穴304には揺動軸288aが挿入され、第1アーム288が軸受け部276aに対して揺動可能に軸受け部276aに取り付けられている。また、軸受け穴304は長穴として形成されているので、ベルト搬送手段242における揺動動作において軸受け部276aに対する揺動軸288aの変位を許容する。
ここで、図37に示すように、ベルト搬送手段242が第1の姿勢を取ると、押圧部材302は付勢部材300の付勢力により揺動台276の軸受け部276aを押圧する。その結果、揺動台276には装置高さ方向において上向きに付勢される。ここで、図36に示すように揺動台276には係合部276bが設けられている。また、装置本体212にはベルト位置決め部306が設けられている。
本実施例において、ベルト搬送手段242が第1の姿勢を取ると、係合部276bがベルト位置決め部306と接触する。本実施例では、付勢部材300の付勢力が軸受け部276a及び押圧部材302を介して揺動台276を上向きに付勢する。つまり、付勢部材300の付勢力は、ベルト位置決め部306に対して係合部276bを押圧する方向に作用するので、ベルト位置決め部306によりベルト搬送手段242の装置高さ方向における位置決めがなされる。これにより、ラインヘッド218のノズルヘッド部246と搬送ベルト274の上側経路274aとの距離(ギャップ)が規定される。
<<<ベルト搬送手段の動作について>>>
再度、図36、図39ないし図40を参照してベルト搬送手段242の動作について説明する。図36は、ベルト搬送手段242が第1の姿勢を取っている状態を示している。本実施例において、制御部260は揺動駆動モーター298を回転駆動させ、揺動ギア294を図36における時計回り方向に揺動させる。これにより、揺動軸292は、図36における時計回り方向に回転する。その結果、揺動軸292に取り付けられた第2アーム290が図36における時計回り方向に揺動する。
ここで、第1アーム288の一端部が取り付けられている揺動台276はベルト位置決め部306により係合部276bとベルト位置決め部306とが当接した状態から装置高さ方向上方への変位を規制されている。そして、第1アーム288は第2アーム290の時計回り方向への揺動に伴って、第1アーム288の一端部を支点に図36における反時計回り方向に揺動する。
その後、第1アーム288と揺動台276とが接触した状態(図39参照)となり、さらに第2アーム290が時計回り方向に揺動を続けると、ベルト駆動部266が駆動軸270を揺動支点として図39における反時計回り方向に揺動を開始する。尚、本実施例では、ベルト駆動部266が揺動を開始しても、搬送ベルト274の回転駆動は継続している。
さらに、揺動ギア294を時計回り方向に揺動させて、第2アーム290の図39における時計回り方向への揺動を継続すると、図40に示す状態となる。この状態から、さらに第2アーム290を図40における時計回り方向に揺動させると第1アーム288と揺動台276との接触状態が解消される(図41参照)。そして、揺動台276は、第2アーム290の図40における時計回り方向への揺動に伴って第1アーム288の一端部に引っ張られて、駆動軸270を支点に反時計回り方向に揺動する。そして図41に示す状態となった際、制御部260は揺動駆動モーター298の回転駆動を停止させる。
図41に示すベルト搬送手段242の姿勢が、ノズルヘッド部246と対向する位置から退避する第2の姿勢である。尚、本実施例においてベルト搬送手段242の第2の姿勢は、一例としてベルト駆動部266が装置高さ方向に沿った姿勢、つまり略鉛直方向である。また、第2の姿勢にあるベルト搬送手段242において、揺動ギア294を図41における反時計回り方向に揺動させることにより、ベルト駆動部266が図41における時計回り方向に揺動し、ベルト搬送手段242を第2の姿勢から第1の姿勢に切り換えることができる。
<<<メンテナンス手段について>>>
次いで図42ないし図49を参照してメンテナンス手段264について説明する。図42及び図43を参照するに、メンテナンス手段264は、メンテナンス部308と、移動台310と、平行リンク機構312と、ガイド部材314、ベース部材316とを備えている。
ベース部材316は、装置本体212に取り付けられている。また、ベース部材316は用紙幅方向に延設されており、用紙幅方向における両端部にはガイド部材314が互いに対向し、かつ装置高さ方向上方に延びるように取り付けられている。また、ベース部材316には、移動台駆動モーター318と、ボールねじ320とを備えている。
移動台駆動モーター318は、ベース部材316に取り付けられており、その駆動軸にはボールねじ320が取り付けられている。ボールねじ320はベース部材316において用紙搬送方向に延設されている。ボールねじ320にはナット部材(不図示)を介して移動台310がボールねじ320の回転駆動に応じて用紙搬送方向に移動可能に取り付けられている。つまり、移動台310はベース部材316に対して移動台駆動モーター318を回転駆動させることにより用紙搬送方向に往復動可能である。尚、本実施例において移動台駆動モーター318は制御部260により制御されている。
移動台310は、用紙幅方向に延設されており、用紙幅方向における両端部には平行リンク機構312が取り付けられている。平行リンク機構312は、リンク部材としての第1リンク322と、補助リンク部材としての第2リンク324とを備えている。第1リンク322は、本実施例では略三角形状の部材として形成されている。
第1リンク322の第1の頂点に対応する部分は移動台310と連結する連結部326(図42参照)として構成され、第1リンク322は連結部326を回動支点として移動台310に対して回動可能である。また、第2の頂点に対応する部分はメンテナンス部308と連結する連結部328(図42参照)として構成され、第1リンク322は連結部328を回動支点としてメンテナンス部308に対して回動可能である。また、第3の頂点に対応する部分には被ガイド部330が設けられている。本実施例では、第1リンク322において連結部326、連結部328及び被ガイド部330のそれぞれを結ぶラインが略三角形を形成するように構成されている。
第2リンク324は、一端が移動台310に対して回動可能に連結され、他端がメンテナンス部308に対して回動可能に連結されている。また、第2リンク324には補強部332が設けられている。本実施例において補強部332は略三角形状に形成され、第2リンクの一端と他端との間に設けられている。また、補強部332において第2リンク324から突出する頂点に対応する部分は第1リンク322側に延びており、第1リンク322と係合している。補強部332は第1リンク322と係合することにより、メンテナンス部308において用紙幅方向へ力が作用した際、第1リンク322及び第2リンク324がメンテナンス部308を用紙幅方向に支えてメンテナンス部308の用紙幅方向への変位を抑制できる。
また、ガイド部材314には、ガイド溝334が設けられている。ガイド溝334には第2リンク324の被ガイド部330が受け入れられており、ガイド溝334は被ガイド部330をガイドする。また、ガイド溝334は、用紙搬送方向(図42におけるY軸方向)に直線状に延びる第1領域334aと、第1領域334aに接続され、第1領域334aと斜めに交差して装置高さ方向下方側かつ用紙搬送方向上流側に延びる第2領域334bとを備えている。
また、本実施例において、ガイド部材314は図44に示すようにベルト搬送手段242の揺動に必要な領域から外れた位置に設けられている。つまり、ガイド部材314はベルト搬送手段242の揺動に干渉しないように構成されている。尚、本実施例では、図32及び図33に示すようにガイド部材314は、用紙収容カセット216の上方に位置し、用紙搬送方向において装置構成上必須の領域である用紙Pの載置領域内に収まるように配置されている。尚、図44において二点鎖線で描かれた曲線は、ベルト搬送手段242の回動軌跡を示している。これにより、装置の用紙搬送方向における寸法の増大を抑制できる。
メンテナンス部308は、第1リンク322及び第2リンク324に連結されている。また、メンテナンス部308は、複数のキャップ336を備えている。メンテナンス部308に設けられたキャップ336の数は、ラインヘッド218に設けられたノズルヘッド部246の数に対応している。
また、メンテナンス手段264におけるメンテナンス部308は、図43に示すメンテナンス部308が装置高さ方向上方側に持ち上げられた状態、つまりラインヘッド218のノズルヘッド部246と対向した状態となるメンテナンス位置と、図42に示すメンテナンス部308がノズルヘッド部246と対向する位置から退避した位置である非メンテナンス位置との間を移動可能に構成されている。
次いで、図35及び図44ないし図49を参照してメンテナンス手段264の動作について説明する。図35及び図44において、メンテナンス手段264におけるメンテナンス部308は非メンテナンス位置にある。尚、図35及び図44において、ベルト搬送手段242は第1の姿勢から第2の姿勢に切り換えた後の状態を示している。
この状態で、制御部260は移動台駆動モーター318を回転駆動させてボールねじ320を回転駆動させる。これにより、移動台310は用紙搬送方向下流側から上流側に向けて移動を開始する。移動台310が移動を開始すると、図45に示すように第1リンク322の被ガイド部330がガイド溝334の第1領域334aに案内されながら、搬送方向下流側から上流側に向けて直線状に移動する。これにより、移動台310に連結されている平行リンク機構312及びメンテナンス部308が搬送方向上流側に移動する。
次いで、図46及び図47に示すように、移動台310がさらに用紙搬送方向上流側に移動すると、被ガイド部330がガイド溝334にガイドされてガイド溝334の第1領域334aから第2領域334bに移動する。被ガイド部330が第1領域334aから第2領域334bに移動することにより、第1リンク322は、移動台310との連結部326(図42参照)を支点として図46及び図47における反時計回り方向に揺動する。
その結果、メンテナンス部308が装置高さ方向における斜め上方に持ち上げられる。
このメンテナンス部308の動作により第2リンク324も第1リンク322の動作に追従して反時計回り方向に揺動する。尚、図46及び図47の状態において、メンテナンス部308のキャップ336の用紙搬送方向における位置は、ラインヘッド218のノズルヘッド部246の下方に位置し、ノズルヘッド部246と対向している。
次いで、図48及び図49に示すように、移動台310をさらに用紙搬送方向上流側に移動させると、被ガイド部330が第2領域334bのガイド形状に沿って第2領域334bの用紙搬送方向上流側の端部まで移動する。被ガイド部330の第2領域334b内での移動に伴って、平行リンク機構312の第1リンク322及び第2リンク324も図48及び図49における反時計回り方向への回動を続ける。
第1リンク322及び第2リンク324の回動により、メンテナンス部308は図47に示す位置から装置高さ方向において直線状に上方に向けて変位する。そして、キャップ336はラインヘッド218のノズルヘッド部246に接触して、ノズルヘッド部246のノズル面を封止状態とする。尚、キャップ336をノズルヘッド部246と対向する状態においてノズルヘッド部246の手前の位置から直線状に変位させてノズルヘッド部246と接触させることにキャップ336とノズルヘッド部246との密着性を向上させることができる。
この状態において、制御部260はノズルヘッド部246のノズル面に設けられた複数のノズルからインクをキャップ336に向けて吐出させることにより、メンテナンス動作の一例であるフラッシング動作を行う。尚、キャップ336は、装置本体212内に設けられた廃インクタンク(不図示)と廃インクチューブ(不図示)により接続され、キャップ336内に吐き出されたインクは廃インクチューブを介して廃インクタンクに収容される。
尚、本実施例において、図44ないし図49に示されるメンテナンス手段264の一連の動作において、メンテナンス部308は第1リンク322及び第2リンク324に対して回動可能に取り付けられているので、メンテナンス部308、ひいてはキャップ336は水平姿勢を維持しながら図44に示す非メンテナンス位置から図49に示すメンテナンス位置までの間を変位する。
次いで、図50を参照して、プリンター210における用紙Pの搬送時におけるメンテナンス動作の流れを説明する。ステップS1として、プリンター210における用紙搬送動作及び記録動作を開始する。尚、用紙搬送動作の開始とともにベルト搬送手段242の搬送ベルト274の駆動も開始する。ステップS2として、制御部260は用紙搬送動作開始から所定時間が経過したか否かを確認する。尚、本実施例において所定時間は一例として30秒に設定されている。所定時間が経過していない場合にはステップS3として用紙搬送動作を継続する。
用紙搬送動作開始から所定時間が経過した場合、ステップS4として用紙Pの搬送動作を一時停止する。そして、ベルト搬送手段242を第1の姿勢から第2の姿勢に切り換える。尚、本実施例ではベルト搬送手段242の姿勢を切り換えても、制御部260は搬送ベルト274の駆動を継続させる。ステップS5として制御部260は、ベルト搬送手段242が第2の姿勢に切り換わったかを確認する。そして、ベルト搬送手段242が第2の姿勢に切り換わっていない場合には、ステップS6としてベルト搬送手段242の姿勢切換を継続する。
ベルト搬送手段242が第2の姿勢に切り換わった場合には、ステップS7として制御部260はメンテナンス手段264を移動させて、メンテナンス部308を非メンテナンス位置(図44参照)からメンテナンス位置(図49参照)に移動させる。ステップS8として、制御部260はメンテナンス部308がメンテナンス位置に移動したかを確認する。そして、メンテナンス部308がメンテナンス位置に移動し終わっていない場合には、ステップS9として制御部260はメンテナンス部308のメンテナンス位置への移動を継続させる。
メンテナンス部308がメンテナンス位置に移動し終わった場合には、ステップS10としてラインヘッド218のノズルヘッド部246のノズル面からキャップ336に向けてインクを吐出し、フラッシング動作を行う。そして、フラッシング動作が終了すると、ステップS11として制御部260はメンテナンス部308をメンテナンス位置から非メンテナンス位置に移動させる。
次いで、ステップS12として制御部260はベルト搬送手段242の姿勢を第2の姿勢から第1の姿勢に切り換える。そして、ステップS13として制御部260は用紙Pの搬送動作を再開する。尚、本実施例において、ステップS4からステップS13までのベルト搬送手段242及びメンテナンス手段264の一連の動作は、一例として約2秒で完了するように設定されている。
次に、ノズルヘッド部246(記録ヘッド)のヘッド面246aと当接しメンテナンスを行う位置にあったメンテナンス部308が、ノズルヘッド部246のヘッド面246aから離れて退避するまでの様子について説明する。図53(A)〜(C)、図54(A)、(B)は、装置幅方向(X軸方向)から見た図で、メンテナンス部308がノズルヘッド部246のヘッド面246aから離れて退避するまでの様子を説明するための模式図である。
移動機構265は、装置高さ方向(Z軸方向)において、メンテナンス部308より下方の位置において用紙Pの搬送方向(Y軸方向)に移動する移動台310と、用紙Pの搬送方向に延びるガイド溝334が設けられたガイド部材314(図43参照)と、ガイド溝334によってガイドされる被ガイド部330を有し、一方の側が連結部326によって移動台310と回動可能に連結され、他方の側は連結部328によってメンテナンス部308と回動可能に連結された第1リンク322(リンク部材)と、を備える。
また、移動機構265は、一方の側が連結部341によって移動台310と回動可能に連結され、他方の側が連結部340によってメンテナンス部308と回動可能に連結された第2リンク324(補助リンク部材)を備える。
図53(A)のメンテナンス部308は、ノズルヘッド部246と対向し、ノズルヘッド部246のヘッド面246aに当接してメンテナンスを行う位置にある。第1リンク322の連結部326側には、被ガイド部330が設けられ、被ガイド部330は、破線で示したガイド溝334に侵入した状態で備えられる。図53(A)の被ガイド部330は、ガイド溝334のY軸方向における図面右側の端部の位置にある。このとき、第1リンク322、第2リンク324は、Y軸方向における破線H2の位置において長手方向がZ軸方向に沿った姿勢の状態にある。
図53(B)に示すように、移動台310がY軸方向における図面左側に移動すると、被ガイド部330はガイド溝334における第2領域334bに沿って移動し、第1リンク322は、被ガイド部330を支点として方向D4に回動しながらY軸方向における図面左側に移動する。
ここで説明のため、第1リンク322が図面左側への移動動作のみ行われた場合、または方向D4への回動動作のみ行われた場合に、連結部328のY軸方向における移動量についてそれぞれ説明する。
第1リンク322が回動せずに図面左側への移動動作のみ行われた場合、第1リンク322は、長手方向がZ軸方向に沿った姿勢を保持したままY軸方向における図面左側へ移動し、図53(B)の破線で示した第1リンク322の位置における連結部328のY軸方向における図面左側への移動量は距離L2である。
一方、第1リンク322が、Y軸方向における図面左側に移動をせずに方向D4に回動動作のみ行われた場合、連結部328のY軸方向における図面右側への移動量は距離L2である。
従って、第1リンク322において、図面左側への移動動作と、方向D4への回動動作とが同時に行われると、連結部328のY軸方向における、図面左側への移動量としての距離L2、図面右側への移動量としての距離L2は相殺される。そのため、移動台310がY軸方向における図面左側に移動したとき、メンテナンス部308は、破線H2の位置においてヘッド面246aと直交する方向(Z軸方向)の下方(図面下側)に移動する。これにより、メンテナンス部308がノズルヘッド部246のヘッド面246aをY軸方向に摺動することがないので、ヘッド面246aがメンテナンス部308によって摩耗することが抑制される。尚、図面左側への移動量としての距離L2と、図面右側への移動量としての距離L2とが相殺された数値上の結果が0に近い値でもよい。
さらに、図53(C)に示すように、移動台310が図面左側に移動すると、被ガイド部330がガイド溝334における第2領域334bに沿って図面左側および上方に移動し、第1リンク322は、被ガイド部330を支点として方向D4に回動しながらY軸方向における図面左側に移動する。
さらに、図54(A)に示すように、被ガイド部330がガイド溝334における第1領域334aに沿ってガイドされ、メンテナンス部308は、図面左側に移動する。そして、図54(B)に示すように、被ガイド部330はガイド溝334における図面左側の端部の位置となり、メンテナンス部308は退避位置となる。
図53(B)を用いて、メンテナンス部308がノズルヘッド部246のヘッド面246aから離間するとき、メンテナンス部308が下方に移動する様子を説明したが、同様に、退避位置にあったメンテナンス部308がノズルヘッド部246のヘッド面246aに近接しようとするとき、メンテナンス部308は、Z軸方向の上方(図面上側)に移動する。これにより、メンテナンス部308がノズルヘッド部246のヘッド面246aをY軸方向に摺動することがないので、ヘッド面246aがメンテナンス部308によって摩耗することが抑制される。
図53(C)の連結部328と連結部326とを結ぶラインJ3は、連結部340と連結部341を結ぶラインJ4と平行である。これにより、移動台310の移動に伴って、第1リンク322、第2リンク324が回動しながらY軸方向に移動するとき、メンテナンス部308は水平方向の姿勢を保持した状態で移動が可能である。そのため、メンテナンス部308からのインク(液体)の漏れ出しを抑制することができる。
尚、メンテナンス部308がノズルヘッド部246から離間またはノズルヘッド部246に近接するとき、メンテナンス部308の移動方向は、ノズルヘッド部246のヘッド面246aと直交する方向に対して斜めの方向でもよい。
上記説明をまとめると、本実施例におけるプリンター210において、ラインヘッド218のメンテナンスに使用するメンテナンス手段264は、用紙搬送方向に沿った変位動作を含む移動動作によって、非メンテナンス位置とメンテナンス位置との間を変位する。従ってラインヘッド218の下側にメンテナンス手段264の退避位置を設定する必要がなく、プリンター210の高さ方向寸法の抑制を図ることができる。
また、本実施例では平行リンク機構312によって、メンテナンス部308をラインヘッド218に対して進退させる構成を容易に構築することができる。
また、本実施例においてメンテナンス部308は、ラインヘッド218のノズルヘッド部246を封止するキャップ336を備えるとともに、キャップ336の水平姿勢を維持しながらメンテナンス位置と非メンテナンス位置との間を変位するので、キャップ336からの液体の漏れ出しを抑制することができる。
また、本実施例においてメンテナンス部308は、メンテナンス位置の手前からメンテナンス位置までの変位領域では、ラインヘッド218のノズルヘッド部246のヘッド面と直交する方向に沿って移動するので、ヘッド面を確実に且つ精度良く封止することができる。
また、本実施例においてガイド部材314が、ベルト搬送手段242の揺動に必要な揺動領域の外側に設けられているので、ガイド部材314がベルト搬送手段242の揺動動作を阻害することがない。
また、本実施例において駆動軸270は、「駆動源」としてのベルト駆動モーター278により回転駆動される回転体であり、従動軸272は、従動回転する回転体であるので、ベルト搬送手段242を、駆動軸270を揺動中心として揺動させる為の構成を、構造簡単にして低コストに得ることができる。加えて、ベルト搬送手段を揺動させる際に駆動軸270の駆動を停止させる必要もなく、制御の自由度を確保することができる。さらに、駆動軸270を中心にベルト搬送手段242を揺動させる際に駆動軸270の回転駆動を継続するので、駆動軸270の駆動の停止/開始の為の時間を確保する必要がなく、ベルト搬送手段242を揺動させる為の時間を短縮することができる。
<<<実施例の変更例>>>
(1)本実施例において、用紙搬送方向においてベルト搬送手段242を搬送方向上流側に配置し、メンテナンス手段264を搬送方向下流側に配置する構成としたが、この構成に代えて、ベルト搬送手段242を搬送方向下流側に配置し、メンテナンス手段264を搬送方向上流側に配置する構成としてもよい。
(2)本実施例において、ベルト搬送手段242の揺動動作中においても搬送ベルト274の駆動を継続する構成としたが、この構成に代えて、ベルト搬送手段242が第1の姿勢から第2の姿勢に切り換わる際に搬送ベルト274の駆動を停止させ、ベルト搬送手段242が第2の姿勢から第1の姿勢に切り換わる際に搬送ベルト274の駆動を開始する構成としてもよい。
(3)本実施例においてメンテナンス動作は一例としてフラッシング動作としたが、この構成に限定されるものではなく、メンテナンス動作にはワイピング動作やノズル内の残留インクを吸引するキャッピング動作も含まれる。
(4)本実施例において、ベルト搬送手段242の揺動動作及びメンテナンス手段264のメンテナンス位置と非メンテナンス位置との間の移動動作について別々の駆動モーターにより駆動する構成としたが、この構成に代えてカム部材等の連動機構を設けて1つの駆動モーターにより駆動する構成としてもよい。
(5)本実施例において、メンテナンス部308の非メンテナンス位置は、用紙搬送方向において、メンテナンス部308がノズルヘッド部246と対向する領域から完全に外れた領域にまで退避する位置であるが、メンテナンス部308一部がノズルヘッド部246と対向する位置を非メンテナンス位置としても良い。
(6)本実施例において、ラインヘッド218と対向する領域にベルト搬送手段242を設ける構成としたが、この構成に代えて、ラインヘッド218と対向する領域に媒体を支持する媒体支持部材(プラテン)を配置する構成としてもよい。この場合、媒体支持部材はベルト搬送手段242と同様に搬送方向上流側を支点にして揺動可能に設けることができる。尚、メンテナンス部308の非メンテナンス位置が上記実施例とは異なりラインヘッド218に対して搬送方向上流側に位置する場合には、媒体支持部材は、搬送方向下流側を支点にして揺動可能に設けることができる。
上記説明をまとめるとプリンター210は、用紙Pに記録を行うラインヘッド218と、ラインヘッド218と対向する位置で用紙Pを支持するベルト搬送手段242と、ベルト搬送手段242との入れ替わりでラインヘッド218と対向し、ラインヘッド218のメンテナンスに使用するメンテナンス部308とを備えている。ベルト搬送手段242は、用紙搬送方向の上流または下流に揺動中心を有し、揺動することによりラインヘッド218と対向する第1の姿勢とラインヘッド218との対向位置から退避する第2の姿勢とを切り換える。メンテナンス部308は、用紙搬送方向に沿った変位動作を含む移動動作によって、ラインヘッド218と対向するメンテナンス位置と、ベルト搬送手段242の揺動中心が用紙搬送方向の上流にある場合にはラインヘッド218に対し下流側にある非メンテナンス位置、またはベルト搬送手段242の揺動中心が用紙搬送方向の下流にある場合にはラインヘッド218に対し上流側にある非メンテナンス位置との間を変位する。
ベルト搬送手段242は、駆動軸270と従動軸272とに掛け回され、用紙Pを支持するとともに用紙Pを搬送する搬送ベルト274であるとともに、駆動軸270を揺動中心とする。駆動軸270は用紙搬送方向上流側に位置し、従動軸272は用紙搬送方向下流側に位置する。
メンテナンス手段264は、用紙搬送方向に沿って移動する、メンテナンス部308より下方に位置する移動台310と、移動台310とメンテナンス部308とを連結する第1リンク322及び第2リンク324を備えて成る平行リンク機構312と、第1リンク322において第1リンク322とメンテナンス部308との連結部328および第1リンク322と移動台310との連結部326を結ぶラインJ3(図53(C)参照)から用紙搬送方向下流側に外れた位置に設けられた被ガイド部330と、被ガイド部330をガイドするガイド溝334を備えたガイド部材314とを備え、移動台310の移動に伴い被ガイド部330がガイド溝334内を変位することにより、第1リンク322及び第2リンク324が揺動し、メンテナンス部308がラインヘッド218に対して進退する構成を備えている。
被ガイド部330が、連結部328と連結部326とを結ぶラインJ3から用紙搬送方向下流側に外れた位置に設けられていることにより、ベルト搬送手段242の揺動に必要な揺動領域(支持部の変位に必要な空間領域)を、用紙搬送方向において、メンテナンス部308側に寄せて配置できるので、プリンター210の用紙搬送方向における寸法の増大を抑制できる。
ガイド溝334は、用紙搬送方向に沿って直線状に延びる第1領域334aと、第1領域334aと接続するとともに第1領域334aよりラインヘッド218側に設けられ、第1領域334aと斜めに交差する方向であってラインヘッド218から遠ざかる方向に延びる第2領域334bとを有している。これにより、第2領域334bの装置の高さ方向における上方に、ベルト搬送手段242の揺動に必要な揺動領域を確保すれば、装置の高さ方向の寸法の増大を抑制できる。
メンテナンス部308は、ラインヘッド218を封止するキャップ336を備えるとともに、キャップ336の水平姿勢を維持しながらメンテナンス位置と非メンテナンス位置との間を変位する。さらに、メンテナンス部308は、メンテナンス位置の手前からメンテナンス位置までの変位領域では、ラインヘッド218のノズルヘッド部246のヘッド面と直交する方向に沿って移動する。
また、ガイド部材314がベルト搬送手段242の揺動に必要な揺動領域の外側に設けられている。プリンター210は用紙Pを収容する用紙収容カセット216を備えている。ガイド部材314は、用紙収容カセット216の上方において用紙収容カセット216における用紙Pの載置領域内に配置されている。
尚、本実施例においてラインヘッド218は図32に示す様に装置左右方向において右寄りに設けられているので、ガイド部材314を用紙収容カセット216の上方において用紙載置領域内に容易に配置することができる。
また、駆動軸270は、ベルト駆動モーター278により回転駆動される回転体であり、従動軸272は、従動回転する回転体である。
さらに、駆動軸270を中心にベルト搬送手段242を揺動させる際に駆動軸270の回転駆動を継続する。
尚、上記実施例では、記録ヘッドとしてのラインヘッド218は移動せずに固定状態で液体を吐出するタイプであるが、これに限られず、所定方向に記録ヘッドが移動しながら前記記録ヘッドのノズルから液体を吐出するタイプにも本発明を適用可能である。
また、本実施例では本発明に係るベルト搬送手段242及びメンテナンス手段264を記録装置の一例としてのインクジェットプリンターに適用したが、その他液体噴射装置一般に適用することも可能である。
ここで、液体噴射装置とは、インクジェット式記録ヘッドが用いられ、該記録ヘッドからインクを吐出して被記録媒体に記録を行うプリンター、複写機及びファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えてその用途に対応する液体を前記インクジェット式記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから被記録媒体に相当する被噴射媒体に噴射して、前記液体を前記被噴射媒体に付着させる装置を含むものである。
液体噴射ヘッドとして、前記記録ヘッドの他に、液晶ディスプレー等のカラーフィルター製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレーや面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等が挙げられる。
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。