本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。なお、同様のものを指す際にはハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
なお、図において、大きさ、膜(層)の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。
また、電圧は、ある電位と、基準の電位(例えば接地電位(GND)またはソース電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、電圧を電位と言い換えることが可能である。
なお、第1、第2として付される序数詞は便宜的に用いるものであり、工程順または積層順を示すものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書などに記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
なお、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分低い場合は「絶縁体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「絶縁体」は境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書に記載の「半導体」は、「絶縁体」と言い換えることができる場合がある。同様に、本明細書に記載の「絶縁体」は、「半導体」と言い換えることができる場合がある。
また、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分高い場合は「導電体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「導電体」は境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書に記載の「半導体」は、「導電体」と言い換えることができる場合がある。同様に、本明細書に記載の「導電体」は、「半導体」と言い換えることができる場合がある。
なお、半導体の不純物とは、例えば、半導体を構成する主成分以外をいう。例えば、濃度が0.1原子%未満の元素は不純物である。不純物が含まれることにより、例えば、半導体にDOS(Density of State)が形成されることや、キャリア移動度が低下することや、結晶性が低下することなどが起こる場合がある。半導体が酸化物半導体である場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族元素、第2族元素、第14族元素、第15族元素、主成分以外の遷移金属などがあり、特に、例えば、水素(水にも含まれる)、リチウム、ナトリウム、シリコン、ホウ素、リン、炭素、窒素などがある。酸化物半導体の場合、例えば水素などの不純物の混入によって酸素欠損を形成する場合がある。また、半導体がシリコンである場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、酸素、水素を除く第1族元素、第2族元素、第13族元素、第15族元素などがある。
なお、本明細書において、Aが濃度Bの領域を有する、と記載する場合、例えば、Aのある領域における深さ方向全体の濃度がBである場合、Aのある領域における深さ方向の濃度の平均値がBである場合、Aのある領域における深さ方向の濃度の中央値がBである場合、Aのある領域における深さ方向の濃度の最大値がBである場合、Aのある領域における深さ方向の濃度の最小値がBである場合、Aのある領域における深さ方向の濃度の収束値がBである場合、測定上Aそのものの確からしい値の得られる領域における濃度がBである場合などを含む。
また、本明細書において、Aが大きさB、長さB、厚さB、幅Bまたは距離Bの領域を有する、と記載する場合、例えば、Aのある領域における全体の大きさ、長さ、厚さ、幅、または距離がBである場合、Aのある領域における大きさ、長さ、厚さ、幅、または距離の平均値がBである場合、Aのある領域における大きさ、長さ、厚さ、幅、または距離の中央値がBである場合、Aのある領域における大きさ、長さ、厚さ、幅、または距離の最大値がBである場合、Aのある領域における大きさ、長さ、厚さ、幅、または距離の最小値がBである場合、Aのある領域における大きさ、長さ、厚さ、幅、または距離の収束値がBである場合、測定上Aそのものの確からしい値の得られる領域での大きさ、長さ、厚さ、幅、または距離がBである場合などを含む。
なお、チャネル長とは、例えば、トランジスタの上面図において、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが互いに重なる領域、またはチャネルが形成される領域における、ソース(ソース領域またはソース電極)とドレイン(ドレイン領域またはドレイン電極)との間の距離をいう。なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル長が全ての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つのトランジスタのチャネル長は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では、チャネル長は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
チャネル幅とは、例えば、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが互いに重なる領域、またはチャネルが形成される領域における、ソースとドレインとが向かい合っている部分の長さをいう。なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル幅がすべての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つのトランジスタのチャネル幅は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では、チャネル幅は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
なお、トランジスタの構造によっては、実際にチャネルの形成される領域におけるチャネル幅(以下、実効的なチャネル幅と呼ぶ。)と、トランジスタの上面図において示されるチャネル幅(以下、見かけ上のチャネル幅と呼ぶ。)と、が異なる場合がある。例えば、立体的な構造を有するトランジスタでは、実効的なチャネル幅が、トランジスタの上面図において示される見かけ上のチャネル幅よりも大きくなり、その影響が無視できなくなる場合がある。例えば、微細かつ立体的な構造を有するトランジスタでは、半導体の側面に形成されるチャネル領域の割合が大きくなる場合がある。その場合は、上面図において示される見かけ上のチャネル幅よりも、実際にチャネルの形成される実効的なチャネル幅の方が大きくなる。
ところで、立体的な構造を有するトランジスタにおいては、実効的なチャネル幅の、実測による見積もりが困難となる場合がある。例えば、設計値から実効的なチャネル幅を見積もるためには、半導体の形状が既知という仮定が必要である。したがって、半導体の形状が正確にわからない場合には、実効的なチャネル幅を正確に測定することは困難である。
そこで、本明細書では、トランジスタの上面図において、半導体とゲート電極とが互いに重なる領域における、ソースとドレインとが向かい合っている部分の長さである見かけ上のチャネル幅を、「囲い込みチャネル幅(SCW:Surrounded Channel Width)」と呼ぶ場合がある。また、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、囲い込みチャネル幅または見かけ上のチャネル幅を指す場合がある。または、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、実効的なチャネル幅を指す場合がある。なお、チャネル長、チャネル幅、実効的なチャネル幅、見かけ上のチャネル幅、囲い込みチャネル幅などは、断面TEM像などを取得して、その画像を解析することなどによって、値を決定することができる。
なお、トランジスタの電界効果移動度や、チャネル幅当たりの電流値などを計算して求める場合、囲い込みチャネル幅を用いて計算する場合がある。その場合には、実効的なチャネル幅を用いて計算する場合とは異なる値をとる場合がある。
なお、本明細書において、AがBより迫り出した形状を有すると記載する場合、上面図または断面図において、Aの少なくとも一端が、Bの少なくとも一端よりも外側にある形状を有することを示す場合がある。したがって、AがBより迫り出した形状を有すると記載されている場合、例えば上面図において、Aの一端が、Bの一端よりも外側にある形状を有すると読み替えることができる。
なお、本明細書において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略平行」とは、二つの直線が−30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」とは、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表す。
<成膜方法>
以下では、CAAC−OSの成膜方法の一例について説明する。
図1(A)は、成膜室内の模式図である。CAAC−OSは、スパッタリング法により成膜することができる。詳細な説明は後述するが、まずは図1(A)を用いて簡単に成膜モデルの概要を説明する。
図1(A)に示すように、基板220とターゲット230とは向かい合うように配置している。基板220とターゲット230との間にはプラズマ240がある。プラズマ240は、スパッタガスの成分がイオン化したイオン201を有する。
イオン201は、ターゲット230に向けて加速されており、ターゲット230を衝撃することでペレット状の粒子であるペレット200を剥離させる。そのとき、同時に、ターゲット230を構成する原子からなる粒子203も剥離する。そして、ペレット200および粒子203は、プラズマ240中で電荷を受け取ることで帯電する。例えば、酸素イオン(O2−)による負の電荷を帯びる場合がある。
基板220上には既に堆積している酸化物薄膜206がある。ペレット200および粒子203は、酸化物薄膜206上に到達すると、他のペレット200を避けるように堆積する。これは、ペレット200の表面が同じ極性(ここでは負)に帯電していることに起因した反発する力(斥力)による。なお、基板220は加熱されており、堆積するペレット200および粒子203は基板220の表面でマイグレーションを起こす。
したがって、基板220上の酸化物薄膜206およびペレット200は、図1(B)に示すような断面形状となる。
なお、ペレット200は、ターゲット230が劈開した形状となる。例えば、In−M−Zn酸化物(元素Mは、例えばアルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズ)では、図1(C)に示す断面形状、および図1(D)に示す上面形状となる。
以下では、CAAC−OSの成膜モデルについて詳細に説明する。
基板220とターゲット230との距離d(ターゲット−基板間距離(T−S間距離)ともいう。)は0.01m以上1m以下、好ましくは0.02m以上0.5m以下とする(図2(A)参照。)。成膜室内は、ほとんどが成膜ガス(例えば、酸素、アルゴン、または酸素を5体積%以上の割合で含む混合ガス)で満たされ、0.01Pa以上100Pa以下、好ましくは0.1Pa以上10Pa以下に制御される。ここで、ターゲット230に一定以上の電圧を印加することで、放電が始まり、プラズマ240が確認される。なお、ターゲット230の近傍には磁場によって、高密度プラズマ領域が形成される。高密度プラズマ領域では、成膜ガスがイオン化することで、イオン201が生じる。イオン201は、例えば、酸素の陽イオン(O+)やアルゴンの陽イオン(Ar+)などである。なお、基板220の下部には加熱機構260が設けられている。
図示しないが、ターゲット230は、バッキングプレートに接着されている。バッキングプレートを介してターゲット230と向かい合う位置には、複数のマグネット250が配置される。マグネットの磁場を利用して成膜速度を高めるスパッタリング法は、マグネトロンスパッタリング法と呼ばれる。
ターゲット230は、複数の結晶粒を有する多結晶構造を有し、いずれかの結晶粒には劈開面が含まれる。一例として、図3に、ターゲット230に含まれるInMZnO4(元素Mは、例えばアルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズ)の結晶構造を示す。なお、図3は、b軸に平行な方向から観察した場合のInMZnO4の結晶構造である。InMZnO4の結晶では、酸素原子が負の電荷を有することにより、近接する二つのM−Zn−O層の間に斥力が生じている。そのため、InMZnO4の結晶は、近接する二つのM−Zn−O層の間に劈開面を有する。
高密度プラズマ領域で生じたイオン201は、電界によってターゲット230側に加速され、やがてターゲット230と衝突する(図2(A)参照。)。このとき、劈開面から平板状またはペレット状のスパッタ粒子であるペレット200が剥離する。ペレット200は、図3に示す二つの劈開面に挟まれた部分である。よって、ペレット200のみ抜き出すと、その断面は図1(C)のようになり、上面は図1(D)のようになることがわかる。なお、ペレット200は、イオン201の衝突の衝撃によって、構造に歪みが生じる場合がある。
ペレット200は、三角形、例えば正三角形の平面を有する平板状またはペレット状のスパッタ粒子である。または、ペレット200は、六角形、例えば正六角形の平面を有する平板状またはペレット状のスパッタ粒子である。ただし、ペレット200の形状は、三角形、六角形に限定されない。例えば、三角形が複数個合わさった形状となる場合がある。例えば、三角形(例えば、正三角形)が2個合わさった四角形(例えば、ひし形)となる場合もある。
ペレット200は、成膜ガスの種類などに応じて厚さが決定する。例えば、ペレット200は、厚さを0.4nm以上1nm以下、好ましくは0.6nm以上0.8nm以下とする。また、例えば、ペレット200は、幅を1nm以上3nm以下、好ましくは1.2nm以上2.5nm以下とする。例えば、図2(A)に示すように、In−M−Zn酸化物を有するターゲット230にイオン201を衝突させる。そうすると、図2(B)に示すように、M−Zn−O層、In−O層およびM−Zn−O層の3層を有するペレット200が剥離する。なお、ペレット200の剥離に伴い、ターゲット230から粒子203も弾き出される。粒子203は、原子1個または原子数個の集合体を有する。そのため、粒子203を原子状粒子(atomic particles)と呼ぶこともできる。
ペレット200は、プラズマ240を通過する際に、表面が負または正に帯電する場合がある。例えば、ペレット200がプラズマ240中にあるO2−から負の電荷を受け取る場合がある。その結果、ペレット200の表面の酸素原子が負に帯電する場合がある。また、ペレット200は、プラズマ240を通過する際に、プラズマ240中のインジウム、元素M、亜鉛または酸素などと結合することで成長する場合がある。
プラズマ240を通過したペレット200および粒子203は、基板220の表面に達する。なお、粒子203の一部は、質量が小さいため真空ポンプなどによって外部に排出される場合がある。
次に、基板220の表面におけるペレット200および粒子203の堆積について図4を用いて説明する。
まず、一つ目のペレット200が基板220に堆積する。ペレット200は平板状であるため、平面側を基板220の表面に向けて堆積する(図4(A)参照。)。このとき、ペレット200の基板220側の表面の電荷が、基板220を介して抜ける。
次に、二つ目のペレット200が、基板220に達する。このとき、一つ目のペレット200の表面、および二つ目のペレット200の表面が電荷を帯びているため、互いに反発し合う力が生じる(図4(B)参照。)。
その結果、二つ目のペレット200は、一つ目のペレット200上を避け、基板220の表面の少し離れた場所に堆積する(図4(C)参照。)。これを繰り返すことで、基板220の表面には、無数のペレット200が一層分の厚みだけ堆積する。また、ペレット200と別のペレット200との間には、ペレット200の堆積していない領域が生じる。
次に、粒子203が基板220の表面に達する(図5(A)参照。)。
粒子203は、ペレット200の表面などの活性な領域には堆積することができない。そのため、ペレット200の堆積していない領域を埋めるように堆積する。そして、ペレット200間に粒子203が付着し、横方向に成長(ラテラル成長ともいう。)することで、ペレット200間を連結させる。このように、ペレット200の堆積していない領域を埋めるまで粒子203が堆積する。このメカニズムは、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法の堆積メカニズムに類似する。
なお、ペレット200間で粒子203がラテラル成長するメカニズムには複数の可能性がある。例えば、まず図5(B)に示すように一層目のM−Zn−O層の側面から連結し、次に図5(C)に示すように二層目のIn−O層の側面から連結し、次に図5(D)に示すように三層目のM−Zn−O層の側面から連結するメカニズムがある(第1のメカニズム)。
または、例えば、図6(A)に示すように、まず一層目のM−Zn−O層の一側面につき粒子203の一列(奥行き方向)が結合する。次に、図6(B)に示すように二層目のIn−O層の一側面につき一列の粒子203が結合する。次に、図6(C)に示すように三層目のM−Zn−O層の一側面につき一列の粒子203が結合することで連結する場合もある。このように、一層につき粒子203が一列ずつ結合していくことで、図6(D)に示すようにペレット200と同じ厚みの酸化物を隙間なく堆積させることができる(第2のメカニズム)。なお、図6(A)、図6(B)および図6(C)が同時に起こることでペレット200が連結する場合もある(第3のメカニズム)。
以上に示したように、ペレット200間における粒子203のラテラル成長のメカニズムとしては、上記3種類が考えられる。ただし、そのほかのメカニズムによってペレット200間で粒子203がラテラル成長する可能性もある。
したがって、複数のペレット200がそれぞれ異なる方向を向いている場合でも、複数のペレット200間を粒子203がラテラル成長しながら埋めることにより、結晶粒界の形成が抑制される。また、複数のペレット200間を、粒子203が滑らかに結びつけるため、単結晶とも多結晶とも異なる結晶構造が形成される。言い換えると、微小な結晶領域(ペレット200)間に歪みを有する結晶構造が形成される。このように、結晶領域間を埋める領域は、歪んだ結晶領域であるため、該領域を指して非晶質構造と呼ぶのは適切ではないと考えられる。
粒子203が、ペレット200間を埋め終わると、ペレット200と同程度の厚さを有する第1の層が形成される。第1の層の上には新たなペレット200が堆積する(図7(A)参照。)。そして、第2の層が形成される(図7(B)参照。)。さらに、これが繰り返されることで、積層体を有する薄膜構造が形成される(図7(C)参照。)。
なお、ペレット200の堆積の仕方は、基板220の表面温度などによっても変化する。例えば、基板220の表面温度が高いと、ペレット200が基板220の表面でマイグレーションを起こす。その結果、ペレット200と別のペレット200とが、粒子203を介さずに連結する割合が増加するため、配向性の高いCAAC−OSとなる。CAAC−OSを成膜する際の基板220の表面温度は、100℃以上500℃未満、好ましくは140℃以上450℃未満、さらに好ましくは170℃以上400℃未満である。したがって、基板220として第8世代以上の大面積基板を用いた場合でも、CAAC−OSの成膜に起因した反りなどはほとんど生じないことがわかる。
一方、基板220の表面温度が低いと、ペレット200が基板220の表面でマイグレーションを起こしにくくなる。その結果、ペレット200同士が積み重なることで配向性の低いnc−OS(nanocrystalline Oxide Semiconductor)などとなる(図8参照。)。nc−OSでは、ペレット200が負に帯電していることにより、ペレット200は一定間隔を開けて堆積する可能性がある。したがって、配向性は低いものの、僅かに規則性を有することにより、非晶質酸化物半導体と比べて緻密な構造となる。
また、CAAC−OSにおいて、ペレット同士の隙間が極めて小さくなることで、一つの大きなペレットが形成される場合がある。一つの大きなペレットの内部は単結晶構造を有する。例えば、ペレットの大きさが、上面から見て10nm以上200nm以下、15nm以上100nm以下、または20nm以上50nm以下となる場合がある。
以上のようなモデルにより、ペレット200が基板220の表面に堆積していくと考えられる。被形成面が結晶構造を有さない場合においても、CAAC−OSの成膜が可能であることから、エピタキシャル成長とは異なる成長機構であることがわかる。また、CAAC−OSおよびnc−OSは、大面積のガラス基板などであっても均一な成膜が可能である。例えば、基板220の表面(被形成面)の構造が非晶質構造(例えば非晶質酸化シリコン)であっても、CAAC−OSを成膜することは可能である。
また、被形成面である基板220の表面に凹凸がある場合でも、その形状に沿ってペレット200が配列することがわかる。
<ラテラル成長>
以下では、ペレット200の横方向に粒子203が付着(結合または吸着ともいう。)し、ラテラル成長することを説明する。
図9(A)、図9(B)、図9(C)図9(D)および図9(E)は、ペレット200の構造と金属イオンが付着する位置を示す図である。なお、ペレット200としては、InGaZnO4の結晶構造から、化学量論的組成を保持しつつ、84個の原子を抜き出したクラスタモデルを仮定している。また、図9(F)は、ペレット200をc軸に平行な方向から見た構造を示す。図9(G)は、ペレット200をa軸に平行な方向からみた構造を示す。
金属イオンの付着する位置を、位置A、位置B、位置a、位置bおよび位置cで示す。なお、位置Aは、ペレット200上面において、ガリウム1個、亜鉛2個で囲まれた格子間サイトの上方である。位置Bは、ペレット200上面おいて、ガリウム2個、亜鉛1個で囲まれた格子間サイトの上方である。位置aは、ペレット200側面のインジウムサイトである。位置bは、ペレット200側面において、In−O層と、Ga−Zn−O層との間の格子間サイトである。位置cは、ペレット200側面のガリウムサイトである。
次に、仮定した位置A、位置B、位置a、位置bおよび位置cに金属イオンを配置した場合の相対エネルギーを第一原理計算によって評価した。第一原理計算には、VASP(Vienna Ab initio Simulation Package)を用いた。また、交換相関ポテンシャルにはPBE(Perdew−Burke−Ernzerhof)型の一般化勾配近似(GGA:Generallized Gradient Approximation)を用い、イオンのポテンシャルにはPAW(Projector Augmented Wave)法を用いた。また、カットオフエネルギーは400eVとし、k点サンプリングはΓ点のみとした。下表に、位置A、位置B、位置a、位置bおよび位置cに、インジウムイオン(In3+)、ガリウムイオン(Ga3+)および亜鉛イオン(Zn2+)を配置した場合の相対エネルギーを示す。なお、相対エネルギーは、計算したモデルにおいて、最もエネルギーが低いモデルのエネルギーを0eVとしたときの相対値である。
その結果、金属イオンはいずれもペレット200の上面より、側面に付着しやすいことがわかった。特に、位置aのインジウムサイトにおいては、インジウムイオンだけでなく、亜鉛イオンも最も付着しやすい結果が得られた。
同様に、ペレット200への酸素イオン(O2−)の付着しやすさを評価した。図10(A)、図10(B)、図10(C)図10(D)および図10(E)は、ペレット200の構造と酸素イオンが付着する位置を示す図である。また、図10(F)は、ペレット200をc軸に平行な方向から見た構造を示す。図10(G)は、ペレット200をb軸に平行な方向からみた構造を示す。
酸素イオンの付着する位置を、位置C、位置D、位置d、位置eおよび位置fで示す。なお、位置Cは、ペレット200上面のガリウムと結合する位置である。位置Dは、ペレット200上面の亜鉛と結合する位置である。位置dは、ペレット200側面のインジウムと結合する位置である。位置eは、ペレット200側面のガリウムと結合する位置である。位置fは、ペレット200側面の亜鉛と結合する位置である。
次に、仮定した位置C、位置D、位置d、位置eおよび位置fに酸素イオンを配置した場合の相対エネルギーを第一原理計算によって評価する。下表に、位置C、位置D、位置d、位置eおよび位置fに、酸素イオン(O2−)を配置した場合の相対エネルギーを示す。
その結果、酸素イオンもペレット200の上面より、側面に付着しやすいことがわかった。
したがって、ペレット200に近づいた粒子203は、ペレット200の側面に優先的に付着していくことがわかる。即ち、ペレット200の側面に付着した粒子203によって、ペレット200のラテラル成長が起こる上述の成膜モデルは妥当性が高いといえる。
<酸化物半導体の構造>
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体とに分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、CAAC−OS、多結晶酸化物半導体、nc−OS、擬似非晶質酸化物半導体(a−like OS:amorphous like Oxide Semiconductor)、および非晶質酸化物半導体などがある。
また別の観点では、酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体と、それ以外の結晶性酸化物半導体とに分けられる。結晶性酸化物半導体としては、単結晶酸化物半導体、CAAC−OS、多結晶酸化物半導体、nc−OSなどがある。
非晶質構造の定義としては、一般に、準安定状態で固定化していないこと、等方的であって不均質構造を持たないことなどが知られている。また、結合角度が柔軟であり、短距離秩序性は有するが、長距離秩序性を有さない構造と言い換えることもできる。
逆の見方をすると、本質的に安定な酸化物半導体の場合、完全な非晶質(completely amorphous)酸化物半導体と呼ぶことはできない。また、等方的でない(例えば、微小な領域において周期構造を有する)酸化物半導体を、完全な非晶質酸化物半導体と呼ぶことはできない。ただし、a−like OSは、微小な領域において周期構造を有するものの、鬆を有し、かつ後述するように不安定な構造である。そのため、物性的には非晶質酸化物半導体に近いといえる。
このように、不安定であることを定義の一とする非晶質酸化物半導体は、例えば、トランジスタのチャネル形成領域になり得たとしても、製品としての実用性に耐えない可能性がある。これは、a−like OSについても同様である。したがって、製品に用いる場合、非晶質酸化物半導体およびa−like OSの成分は少ない、または存在しないことが好ましい。
また、単結晶酸化物半導体は、高い結晶性を有するものの、形成に高いプロセス温度を要するため、生産性を考慮すると実用的でない可能性がある。また、多結晶酸化物半導体は、結晶粒内の結晶性は高いものの、結晶粒界を有するため、ばらつきなどが生じやすい可能性がある。
一方、CAAC−OSおよびnc−OSは、高い安定性を有し、かつ上述した成膜方法によって基板温度500℃未満でも成膜することができる。また、明確な結晶粒界を有さないため、均質でばらつきなども生じにくい。例えば、第8世代以上の大面積基板上にも均質に成膜できるため、高い信頼性と高い実用性を兼ね備える構造であるといえる。
<電子顕微鏡による解析>
以下では、nc−OS、CAAC−OS、多結晶酸化物半導体および単結晶酸化物半導体を、透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって解析する。
<平面TEM>
まずは、TEMにおける平面像(平面TEM像ともいう。)の画像解析を行う。なお、平面TEM像は、球面収差補正(Spherical Aberration Corrector)機能を用いて観察した。また、平面TEM像の取得には、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM−ARM200Fを用いた。
試料1、試料2および試料3として、熱酸化法により厚さ25nmの酸化シリコンを形成したシリコン基板上のIn−Ga−Zn酸化物(In−M−Zn酸化物において、元素Mがガリウムのもの)を準備した。試料1は、スパッタリング法により室温で成膜したIn−Ga−Zn酸化物である。試料2は、スパッタリング法により基板温度を300℃として成膜したIn−Ga−Zn酸化物である。試料3は、試料2を、さらに1000℃にて1時間の加熱処理(熱アニールともいう。)を行ったIn−Ga−Zn酸化物である。また、比較のため、単結晶In−Ga−Zn酸化物である試料4を準備した。
図11は、試料1乃至試料4の平面TEM像である。試料4は、単結晶であるため、観察範囲の全体において高い周期性を有し、かつ結晶粒界は観察されない。試料3は、それぞれが高い結晶性を有する複数の結晶粒を有し、その境界に結晶粒界を観察することができる。したがって、試料3は多結晶であることがわかる。試料2は、六角形状および三角形状の原子配列を有し、かつ結晶方位の異なる領域間の境界は明確ではない。したがって、試料2はCAAC−OSであることがわかる。試料1は、部分的に原子配列の周期性を有するが、全体としては周期性を有さない。したがって、試料1はnc−OSであることがわかる。
次に、図11に示した平面TEM像の画像解析を行う。
まず、得られた平面TEM像を2次元高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)処理し、FFT像を取得する。得られたFFT像において原点を基準に、2.8nm−1から5.0nm−1の範囲を残すマスク処理する。マスク処理したFFT像を、2次元逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)処理し、FFTフィルタリング像を取得する。なお、単結晶である試料4については、上述の範囲では禁制反射のみとなってしまうため、2.8nm−1から7.4nm−1の範囲を残してマスク処理している。
次に、FFTフィルタリング像から格子点を抽出する。格子点の抽出は、輝度の極大値の座標を抽出することで行う。このとき、ノイズ由来の極大値を取得することのないよう、輝度プロファイルを滑らかにする処理を行う。また、隣り合う極大値の距離が極端に近い場合は、両方の極大値をデータから除去する処理を行う。
次に、抽出した格子点から基準格子点を定め、その最近接である6点の格子点を結び、六角形格子を形成する。その後、該六角形格子の中心点である基準格子点から頂点である各格子点までの距離の平均値Rを導出する。算出したRを各頂点までの距離とし、基準格子点を中心点とした正六角形を形成する。こうして作成した正六角形を、中心点を基準に0.1°刻みで0°から60°まで回転させ、回転した正六角形と六角形格子との平均のずれを算出する。なお、平均のずれは、正六角形の各頂点と、対応する六角形格子の格子点と、の距離の差分の和を6で割ることで算出した。そして、平均のずれが最小となるときの正六角形の回転角度を六角形格子の角度とする。
次に、平面TEM像の観察範囲において、六角形格子の角度が30°となる割合が最も高くなるように調整する。そして、半径1nmの範囲において、六角形格子の角度の平均値を算出する。こうして得られた平面TEM像の画像解析の結果を、六角形格子の角度に応じた濃淡で表示する(図12参照。)。
図12より、単結晶である試料4は、観察範囲の全体において六角形格子の角度が揃っていることがわかる。また、多結晶である試料3は、六角形格子の角度が揃った結晶粒を有する。また、結晶粒間では六角形格子の角度が異なり、かつその境界が明確であることがわかる。また、CAAC−OSである試料2は、六角形格子の角度の揃った領域を複数有し、かつその境界近傍の局所領域において滑らかに六角形格子の角度が変化していることがわかる。即ち、CAAC−OSは、結晶領域間が歪みながら連結する構造を有することがわかる。言い換えると、CAAC−OSは明確な結晶粒界を有さないことがわかる。また、nc−OSである試料1は、六角形格子の角度の分布の秩序性が低いことがわかる。
以上に示したように、平面TEM像による画像解析を行うことで、nc−OSと、CAAC−OSと、多結晶酸化物半導体と、単結晶酸化物半導体と、を区別することができる。
次に、試料1乃至試料4における原子配列を評価する。
図13は、試料1乃至試料4の比較的六角形格子の角度の揃った領域における平面TEM像(左列)、FFTフィルタリング像(中央列)、および格子点抽出像(右列)である。格子点が明瞭となるように、図11よりも拡大した平面TEM像である。格子点抽出像は、上述した方法によって格子点を抽出し、隣接する格子点を線で結んだ像である。ただし、格子点の抽出では、機械的に抽出できなかった明らかな格子点を数点補っている。なお、抽出された全ての輝点が格子点とは限らない。
図13より、単結晶である試料4は、観察範囲の全体において理想的な原子配列を有することがわかる。一方、多結晶である試料3は、試料4では観察されている1/2周期が観察されないものの、理想に近い原子配列を有することがわかる。そのため、試料4から1/2周期を間引いて格子点を抽出することで、試料3と試料4とで同様の格子点抽出像が得られている。一方、CAAC−OSである試料2は、理想的な原子配列を有する試料4と類似した原子配列を有し、かつ歪み(揺らぎまたは乱れと言い換えることもできる。)を有することがわかる。また、nc−OSである試料1は、部分的には原子配列の周期性が見られるものの、それぞれに規則性は見られないことがわかる。
歪みを有しつつ、理想的な原子配列の名残をとどめている結晶構造としては、パラクリスタル(paracrystal)が知られている。パラクリスタルは、有機繊維などで報告されているが、無機材料での報告はほとんどない。ただし、パラクリスタルとCAAC−OSとでは、以下の点が異なる。例えば、パラクリスタルは平面状の構造(布のようなイメージ)を有するが、CAAC−OSは被形成面に沿った形状を有し、積層体で薄膜構造を有する点が異なる。また、CAAC−OSは、成膜温度以上で行う加熱処理(例えば、300℃を超えて1500℃未満、好ましくは350℃を超えて800℃未満)でより緻密な構造が形成される点が異なる。また、結晶構造を変形させる温度以上(例えば、1000℃以上1500℃以下)の加熱処理によって単結晶構造に構造を変形させる点が異なる。そのため、CAAC−OSはパラクリスタルとは異なる新規な結晶構造を有することがわかる。
図14は、試料2および試料3の図13とは異なる領域における平面TEM像(左列)、FFTフィルタリング像(中央列)、および格子点抽出像(右列)である。
図14より、多結晶である試料3は、結晶粒界(欠陥)を境に原子配列が大きく変化していることがわかる。一方、CAAC−OSである試料2は、歪みの大きい領域でも結晶粒界が形成されていないことがわかる。
また、図15(A)は、CAAC−OSである試料2の図13および図14とは異なる領域における平面TEM像である。図15(B)は、図15(A)から、図12で説明した方法を用いて六角形格子の角度分布に変換した平面TEM解析像である。図15(C)は、図15(B)におけるペレットを有する領域の拡大図である。図15(D)は、図15(C)に対応した格子点抽出像である。図15(E)は、図15(B)におけるペレットを有する別の領域の拡大図である。図15(F)は、図15(E)に対応した格子点抽出像である。
また、図15(G)は、多結晶である試料3の図13および図14とは異なる領域における平面TEM像である。図15(H)は、図15(G)から、図12で説明した方法を用いて六角形格子の角度分布に変換した平面TEM解析像である。図15(I)は、図15(H)におけるペレットを有する領域の拡大図である。図15(J)は、図15(I)に対応した格子点抽出像である。図15(K)は、図15(H)におけるペレットを有する別の領域の拡大図である。図15(L)は、図15(K)に対応した格子点抽出像である。
図15(A)、図15(B)、図15(C)、図15(D)、図15(E)および図15(F)より、CAAC−OSである試料2は、明確な結晶粒界は観察されなかった。一方、図15(G)、図15(H)、図15(I)、図15(J)、図15(K)および図15(L)より、多結晶である試料3は、単結晶からなる結晶粒を有し、明確な結晶粒界が観察された。このように、結晶粒界が存在するということは、結晶欠陥を多く含むことを意味する。
図16(A)は、CAAC−OSである試料2において、ペレットの境界部を含む領域を拡大した平面TEM像である。図16(B)は、図16(A)のペレットの境界部と見られる箇所に点線を引いた平面TEM像である。図16(C)は、図16(A)のFFTフィルタリング像である。図16(D)は、図16(B)のペレットの境界部に点線を引いたFFTフィルタリング像である。図16(E)は、図16(D)の格子点抽出像である。
また、図16(F)は、CAAC−OSである試料2において、ペレットの境界部を含む別の領域を拡大した平面TEM像である。図16(G)は、図16(F)のペレットの境界部と見られる箇所に点線を引いた平面TEM像である。図16(H)は、図16(F)のFFTフィルタリング像である。図16(I)は、図16(G)のペレットの境界部に点線を引いたFFTフィルタリング像である。図16(J)は、図16(I)の格子点抽出像である。
また、CAAC−OSである試料2において、図16(E)および図16(J)の破線で示すように、ペレットの周囲の原子配列が歪む様子が確認された。ペレット連結部において、局所的に原子間距離が伸縮し、原子の位置が揺らぎを持ちながら連続的に配列することで、多結晶である試料3のような明確な結晶粒界が形成されないものと推察される。CAAC−OSは、このように明確な結晶粒界が観察されないため、結晶欠陥の少ない酸化物半導体といえる。
上述したような平面TEM像において観察される特徴は、酸化物半導体の構造を一面的に捉えたものである。例えば、CAAC−OS上に導電体が形成されることによって、物理的ダメージまたは化学的ダメージが入り、欠陥が形成される場合もある。
<断面TEM>
平面TEMに限らず、複数の手法を用いることで、より厳密な構造の特定が可能となる。以下では、断面TEM像で現れるCAAC−OSおよびnc−OSの特徴について説明する。
図17(A)に、試料面と略平行な方向から観察したCAAC−OSの断面TEM像を示す。断面TEM像の観察には、球面収差補正機能を用いた。図17(A)より、層状の原子配列を確認できる。層状の原子配列は、CAAC−OSの膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映しており、CAAC−OSの被形成面または上面と平行となる。このように、CAAC−OSは、断面TEM像においても結晶の歪みを観察することができる。
図17(A)に示すように、CAAC−OSは特徴的な原子配列を有する。図17(A)より、ペレット一つの大きさは1nm以上3nm以下程度であることがわかる。このような特徴から、ペレットをナノ結晶(nc:nanocrystal)と呼ぶこともできる。また、CAAC−OSを、c軸配向したナノ結晶(CANC:C−Axis Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
図17(B)に、試料面と略平行な方向から観察したnc−OSの断面TEM像を示す。nc−OSは、層状の原子配列を有さないことがわかる。よって、nc−OSを、特定の方向に配向していないナノ結晶(RANC:Random Aligned nanocrystalsまたはNANC:Non−Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
<電子回折>
以下では、電子回折で現れるCAAC−OSおよびnc−OSの特徴について説明する。
例えば、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OSに対し、試料面に平行にプローブ径が300nmの電子線を入射させると、図18(A)に示すような回折パターンが現れる場合がある。この回折パターンには、InGaZnO4の結晶の(009)面に起因するスポットが含まれる。したがって、電子回折によっても、CAAC−OSに含まれるナノ結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることがわかる。一方、同じ試料に対し、試料面に垂直にプローブ径が300nmの電子線を入射させたときの回折パターンを図18(B)に示す。図18(B)より、リング状の回折パターンが確認される。したがって、電子回折によっても、CAAC−OSに含まれるナノ結晶のa軸およびb軸は配向性を有さないことがわかる。なお、図18(B)における第1リングは、InGaZnO4の結晶の(010)面および(100)面などに起因すると考えられる。また、図18(B)における第2リングは(110)面などに起因すると考えられる。
なお、平面TEM像においても説明したように、CAAC−OSは、六角形格子の角度が揃った領域を有する。したがって、プローブ径の小さい電子線(例えば1nm)を用いることで、試料面に垂直に電子線を入射させた場合でも図18(C)に示すような配向性を示す回折パターンが現れる場合がある。
また、nc−OSも、結晶領域よりも大きいプローブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いると、ハローパターンのような回折パターンが観測される。即ち、結晶領域よりも大きいプローブ径の電子線を用いても、nc−OSの局部的な結晶領域の存在が認められない。一方、結晶領域の大きさと近いか結晶領域より小さいプローブ径の電子線を用いると、スポットを有する回折パターンが観測される。例えば、図19(A)に示すように、厚さが50nm程度のnc−OSに対して、プローブ径が30nm、20nm、10nmまたは1nmの電子線を用いて回折パターンを取得すると、円を描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測される。また、プローブ径を小さくしていくと、リング状の領域が複数のスポットから形成されていることがわかる。
さらに詳細な構造解析のために、nc−OSを厚さ数nm(5nm程度)に薄片化し、プローブ径1nmの電子線を用いて回折パターンを取得する。その結果、結晶性を示すスポットを有する回折パターンが得られた(図19(B)参照。)。図19(B)より、nc−OSにおいても、結晶性を示す回折パターンが得られたが、特定方向の結晶面への配向性は見られないことがわかる。
また、プローブ径の小さい電子線を用いて回折パターンを取得することで、CAAC−OSのペレットの連結部における結晶軸の向きの変化を評価することができる。図20(A)は、CAAC−OSの平面TEM像である。図20(A)において、領域a、領域b、領域c、領域dおよび領域eは、プローブ径が1nmの電子線を用いて回折パターンを取得した領域である。領域a、領域b、領域c、領域dおよび領域eにおける回折パターンを、それぞれ図20(B)、図20(C)、図20(D)、図20(E)および図20(F)に示す。
図20(B)、図20(C)、図20(D)、図20(E)および図20(F)の破線は、a軸またはb軸を示す。領域a、領域b、領域c、領域dおよび領域eにおいて、a軸またはb軸の向きは、−7.5°、−8.4°、−23.1°、−24.6°および−31.0と、なだらかに変化していくことが確認される。
図20(G)は、CAAC−OSの断面TEM像である。図20(G)において、領域a、領域b、領域c、領域dおよび領域eは、プローブ径が1nmの電子線を用いて回折パターンを取得した領域である。領域a、領域b、領域c、領域dおよび領域eにおける回折パターンを、それぞれ図20(H)、図20(I)、図20(J)、図20(K)および図20(L)に示す。
図20(H)、図20(I)、図20(J)、図20(K)および図20(L)の破線は、c軸を示す。領域a、領域b、領域c、領域dおよび領域eにおいて、c軸の向きは、11.8°、1.5°、13.5°、0.4°および−5.5と、なだらかに変化していくことが確認される。
したがって、CAAC−OSにおいて、ペレットの連結部がなだらかに繋がっていることがわかる。
図21(A)に、図20(B)に示した回折パターンを再掲する。図21(A)に示す囲み部のスポットを拡大したものが図21(B)である。図21(B)より、CAAC−OSの回折パターンに現れるスポットは、ブロードで非等方的であることがわかる。これは、非特許文献5に記載の高分子のパラクリスタルの回折パターンと類似している。
なお、多結晶酸化物半導体の結晶粒の一つにおいて、プローブ径が1nmの電子線を入射させると、図21(C)に示すような回折パターンが得られる。図21(C)に示す囲み部のスポットを拡大したものが図21(D)である。図21(D)より、多結晶酸化物半導体の回折パターンに現れるスポットは、シャープで等方的であることがわかる。
よって、CAAC−OSは、多結晶酸化物半導体とは異なり、周期構造を有しつつも、原子配列に揺らぎを有する構造であることがわかる。表現を変えると、CAAC−OSは、周期構造に変位分布を持つ構造ということもできる。このような特徴を有することから、CAAC−OSは、非晶質酸化物半導体とも多結晶酸化物半導体とも単結晶酸化物半導体とも異なる構造であるといえる。
<安定性>
なお、CAAC−OSおよびnc−OSは、安定な構造であるため電子線を用いた構造解析が可能であった。一方、不安定な構造であるa−like OSは、電子線を照射することで容易く状態を変化させてしまう。以下では、CAAC−OS、nc−OSおよびa−like OSの電子線照射に対する安定性について説明する。
図22(A)は、各試料の結晶領域(22箇所から30箇所)の平均の大きさを調査した例である。ここでは、格子縞の長さを結晶領域の大きさとしている。図22(A)より、a−like OSは、電子の累積照射量に応じて結晶領域が大きくなっていくことがわかる。具体的には、図22(A)中に(1)で示すように、TEMによる観察初期においては1.2nm程度の大きさだった結晶領域(初期核ともいう。)が、累積照射量が4.2×108e−/nm2においては1.9nm程度の大きさまで成長していることがわかる。一方、nc−OSおよびCAAC−OSは、電子照射開始時から電子の累積照射量が4.2×108e−/nm2までの範囲で、結晶領域の大きさに変化が見られないことがわかる。具体的には、図22(A)中の(2)および(3)で示すように、電子の累積照射量によらず、nc−OSおよびCAAC−OSの結晶領域の大きさは、それぞれ1.3nm程度および1.8nm程度であることがわかる。なお、電子線照射およびTEMの観察は、日立透過電子顕微鏡H−9000NARを用いた。電子線照射条件は、加速電圧を300kV、電流密度を6.7×105e−/(nm2・s)、照射領域の直径を230nmとした。
図22(B)は、より電子の累積照射量の少ない条件における結晶領域の大きさを調査するために、動画による解析を行った結果である。なお、観察のためのフォーカス調整は、解析領域とは異なる領域で行った。そのため、フォーカス調整時に解析領域へ電子は照射されない。結晶領域の大きさの計測は、TEMの動画から抽出した静止画を用いて行った。図22(B)より、nc−OSおよびCAAC−OSは、電子線照射初期およびTEMの観察初期においても結晶領域の大きさは一定であることがわかる。また、a−like OSは、電子線照射およびTEMの観察初期においても結晶領域が存在することがわかる。なお、電子線照射およびTEMの観察は、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM−ARM200Fの球面収差補正機能を用いた。電子線照射条件は、加速電圧を200kV、電流密度を2.5×106e−/(nm2・s)、照射領域の直径を80nmとした。
次に、加熱処理を行ったCAAC−OS、nc−OSおよびa−like OSの電子線照射による結晶サイズの変化をTEMで測定した。CAAC−OSの結果を図23(A)に、nc−OSの結果を図23(B)、a−like OSの結果を図23(C)に示す。CAAC−OSおよびnc−OSは、加熱処理の温度によらず、また電子線照射によっても結晶サイズの変化はほとんど見られなかった。a−like OSは、電子線照射によって結晶サイズの増大が見られた。これは、a−like OSが有する鬆に起因している可能性がある。また、この傾向は加熱処理の温度が低いほど顕著であった。
先行技術文献に示したように、完全な非晶質構造を有する酸化物半導体は、電子線などによって結晶成長を起こすことが特徴の一つである。この点から、a−like OSは、非晶質酸化物半導体と類似した物性を有することがわかる。ただし、a−like OSは、微小な領域において周期構造を有するため、完全な非晶質酸化物よりも高い秩序性を有する。そのため、例えば、完全な非晶質酸化物半導体を作ることができた場合、a−like OSよりもさらに不安定な構造を有していると推定される。
加熱処理による結晶サイズの変化、および電子線照射による結晶サイズの変化を見ると、CAAC−OSおよびnc−OSはa−like OSよりも高い安定性を有することがわかる。
このように、a−like OSは、電子照射および加熱処理によって構造の変化が見られる場合がある。ナノ結晶、およびその周辺の原子が容易に結晶成長をするということは、トランジスタなどの素子に用いたとしても不安定性を有することになる。よって、実用することができない可能性がある。一方、nc−OSおよびCAAC−OSは、電子照射による結晶領域の成長がほとんど見られないことがわかる。即ち、a−like OSは、nc−OSおよびCAAC−OSと比べて、不安定な構造であることがわかる。即ち、a−like OSおよび非晶質酸化物半導体は、実用に供することができない可能性がある。
また、酸化物半導体が欠陥準位を有する場合、光や熱などによって特性が変動する場合がある。また、酸化物半導体に含まれる不純物は、キャリアトラップとなる場合や、キャリア発生源となる場合がある。また、酸化物半導体中の酸素欠損は、キャリアトラップとなる場合や、水素を捕獲することによってキャリア発生源となる場合がある。
不純物は、酸化物半導体の主成分以外の元素(水素、炭素、シリコン、遷移金属元素など)である。例えば、シリコンなどの、酸化物半導体を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体から酸素を奪うことで酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。言い換えると、結晶性の高い酸化物半導体は不純物および酸素欠損が少ない酸化物半導体ということになる。即ち、CAAC−OSは、不純物および酸素欠損が少ない酸化物半導体であるといえる。
不純物および酸素欠損の少ないCAAC−OSは、キャリア密度の低い酸化物半導体である。具体的には、キャリア密度を8×1011個/cm3未満、好ましくは1×1011個/cm3未満、さらに好ましくは1×1010個/cm3未満であり、1×10−9個/cm3以上とすることができる。そのような酸化物半導体を、高純度真性または実質的に高純度真性な酸化物半導体と呼ぶ。CAAC−OSは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い。即ち、安定な特性を有する酸化物半導体であるといえる。
<密度>
また、a−like OSは、nc−OSおよびCAAC−OSと比べて密度の低い構造である。具体的には、a−like OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の78.6%以上92.3%未満となる。また、nc−OSの密度およびCAAC−OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の92.3%以上100%未満となる。単結晶の密度の78%未満となる酸化物半導体は、成膜すること自体が困難である。
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、菱面体晶構造を有する単結晶InGaZnO4の密度は6.357g/cm3となる。よって、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、a−like OSの密度は5.0g/cm3以上5.9g/cm3未満となる。また、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、nc−OSの密度およびCAAC−OSの密度は5.9g/cm3以上6.3g/cm3未満となる。
なお、同じ組成の単結晶が存在しない場合がある。その場合、任意の割合で組成の異なる単結晶を組み合わせることにより、所望の組成における単結晶に相当する密度を見積もることができる。所望の組成の単結晶に相当する密度は、組成の異なる単結晶を組み合わせる割合に対して、加重平均を用いて見積もればよい。ただし、密度は、可能な限り少ない種類の単結晶を組み合わせて見積もることが好ましい。
<X線回折>
以下では、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)で現れるCAAC−OS、nc−OSおよびa−like OSの特徴について説明する。
例えば、石英基板上に設けられたInGaZnO4の結晶を有するCAAC−OSに対し、out−of−plane法による構造解析を行うと、図24(A)に示すように回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OSの結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。
一方、石英基板上に設けられた同様の組成を有するnc−OSに対し、out−of−plane法による構造解析を行うと、図24(B)に示すように結晶性を示すピークは現れない。また、石英基板上に設けられたa−like OSに対し、out−of−plane法による構造解析を行うと、図24(C)に示すように結晶性を示すピークは現れない。したがって、XRDを用いた構造解析から、nc−OSとa−like OSとを区別することはできない。そのため、XRDを用いた構造解析から酸化物半導体の構造を特定する際には、他の分析法と組み合わせるなど注意を要する場合がある。
なお、CAAC−OSのout−of−plane法による構造解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。なお、CAAC−OSは、out−of−plane法による構造解析では、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
また、CAAC−OSに対し、c軸に略垂直な方向からX線を入射させるin−plane法による構造解析を行うと、2θが56°近傍にピークが現れる。このピークは、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。CAAC−OSの場合は、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行っても、図25(A)に示すように明瞭なピークは現れない。これに対し、InGaZnO4の単結晶酸化物半導体であれば、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合、図25(B)に示すように(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。したがって、XRDを用いた構造解析から、CAAC−OSは、a軸およびb軸の配向が不規則であることが確認できる。
<加熱処理>
ところで、CAAC−OSが歪みまたは揺らぎを有することは、XRDによる構造解析によっても確認することができる。図26に、100nmの厚さの熱酸化膜を有するシリコン基板上に設けられたCAAC−OSに対して加熱処理を行い、out−of−plane法による構造解析を行った結果を示す。なお、構造解析は、X線源の角度ωを試料の上面に対してごく小さい角度に固定し、検出器の角度θを変える薄膜法によって行った。加熱処理は、ランプ加熱によるRTA(Rapid Thermal Annealing)装置を用い、酸素雰囲気化において700℃で30秒間、60秒間、120秒間または180秒間行った。参考のために、加熱処理を行っていないCAAC−OS(as−depoと表記する。)も示す。
また、図26において得られた2θが31°近傍のピークの、ピーク強度および半値全幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)を図27に示す。図27より、CAAC−OSに対して加熱処理を行うことで、ピーク強度が高くなり、半値全幅が小さくなることがわかった。即ち、加熱処理によってCAAC−OSの結晶性が高くなることがわかった。
確認のため、同じ試料に対して断面TEM像を取得した(図28参照。)。図28からも、加熱処理によってCAAC−OSの結晶性が高くなる様子を伺うことができる。
RTA装置による加熱処理は、炉と比べて短時間で済むため、生産性を高めるために有効である。このように、加熱処理の温度および時間を長くしていくことで、CAAC−OSはより高密度化し、いっそう単結晶の物性に近づけることができる。
<組成>
以下では、CAAC−OSの組成について説明する。なお、組成の説明には、CAAC−OSとなる酸化物半導体であるIn−M−Zn酸化物の場合を例示する。なお、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどとする。そのほかの元素Mに適用可能な元素としては、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステンなどがある。
図29は、各頂点にIn、MまたはZnを配置した三角図である。また、図中の[In]はInの原子濃度を示し、[M]は元素Mの原子濃度を示し、[Zn]はZnの原子濃度を示す。
In−M−Zn酸化物の結晶はホモロガス構造を有することが知られており、InMO3(ZnO)m(mは自然数。)で示される。また、InとMとを置き換えることが可能であるため、In1+αM1−αO3(ZnO)mで示すこともできる。これは、[In]:[M]:[Zn]=1+α:1−α:1、[In]:[M]:[Zn]=1+α:1−α:2、[In]:[M]:[Zn]=1+α:1−α:3、[In]:[M]:[Zn]=1+α:1−α:4、および[In]:[M]:[Zn]=1+α:1−α:5と表記した破線で示される組成である。なお、破線上の太線は、例えば、原料となる酸化物を混合し、1350℃で焼成した場合に固溶体となりうる組成である。
よって、上述の固溶体となりうる組成に近づけることで、大きい単結晶構造の領域を有するCAAC−OSを得ることができる。なお、スパッタリング法によってIn−M−Zn酸化物を成膜する場合、ターゲットの組成と膜の組成とが異なる場合がある。例えば、ターゲットとして原子数比が「1:1:1」、「1:1:1.2」、「3:1:2」、「4:2:4.1」、「1:3:2」、「1:3:4」、「1:4:5」のIn−M−Zn酸化物を用いた場合、膜の原子数比はそれぞれ「1:1:0.7(0.5から0.9程度)」、「1:1:0.9(0.8から1.1程度)」、「3:1:1.5(1から1.8程度)」、「4:2:3(2.6から3.6程度)」、「1:3:1.5(1から1.8程度)」、「1:3:3(2.5から3.5程度)」、「1:4:4(3.4から4.4程度)」となる。したがって、所望の組成の膜を得るためには、組成の変化を考慮してターゲットの組成を選択すればよい。
ところで、CAAC−OSを成膜する際には、被成膜面である基板表面の加熱、または空間加熱などの影響で、ソースとなるターゲットなどの組成と膜の組成とが異なる場合がある。例えば、酸化亜鉛は、酸化インジウムや酸化ガリウムなどと比べて昇華しやすいため、ソースと膜との組成のずれが生じやすい。したがって、あらかじめ組成の変化を考慮したソースを選択することが好ましい。なお、ソースと膜との組成のずれ量は、温度以外にも圧力や成膜に用いるガスなどの影響でも変化する。
<スパッタリング装置>
以下では、本発明の一態様に係るスパッタリング装置について説明する。
図30(A)は、スパッタリング装置である成膜室101の断面図である。図30(A)に示す成膜室101は、ターゲットホルダ120と、バッキングプレート110と、ターゲット100と、マグネットユニット130と、基板ホルダ170と、を有する。なお、ターゲット100は、バッキングプレート110上に配置される。また、バッキングプレート110は、ターゲットホルダ120上に配置される。また、マグネットユニット130は、バッキングプレート110を介してターゲット100下に配置される。また、基板ホルダ170は、ターゲット100と向かい合って配置される。なお、本明細書では、複数のマグネット(磁石)を組み合わせたものをマグネットユニットと呼ぶ。マグネットユニットは、カソード、カソードマグネット、磁気部材、磁気部品などと呼びかえることができる。マグネットユニット130は、マグネット130Nと、マグネット130Sと、マグネットホルダ132と、を有する。なお、マグネットユニット130において、マグネット130Nおよびマグネット130Sは、マグネットホルダ132上に配置される。また、マグネット130Nは、マグネット130Sと間隔を開けて配置される。なお、成膜室101に基板160を搬入する場合、基板160は基板ホルダ170上に配置される。
ターゲットホルダ120とバッキングプレート110とは、ネジ(ボルトなど)を用いて固定されており、等電位となる。また、ターゲットホルダ120は、バッキングプレート110を介してターゲット100を支持する機能を有する。
バッキングプレート110は、ターゲット100を固定する機能を有する。
図30(A)に、マグネットユニット130によって形成される磁力線180aおよび磁力線180bを示す。
磁力線180aは、ターゲット100の上面近傍における水平磁場を形成する磁力線の一つである。ターゲット100の上面近傍は、例えば、ターゲット100から垂直距離が0mm以上10mm以下、特に0mm以上5mm以下の領域である。
磁力線180bは、マグネットユニット130の上面から、垂直距離dにおける水平磁場を形成する磁力線の一つである。垂直距離dは、例えば、0mm以上20mm以下または5mm以上15mm以下である。
このとき、強力なマグネット130Nおよび強力なマグネット130Sを用いることで、基板160の上面近傍においても強い磁場を発生させることができる。具体的には、基板160の上面における水平磁場の強度を10G以上100G以下、好ましくは15G以上60G以下、さらに好ましくは20G以上40G以下とすることができる。基板160の上面における水平磁場を上述の範囲とすることにより、後述する成膜モデルを実現することができる。
なお、水平磁場の強度の測定は、垂直磁場の強度が0Gのときの値を測定すればよい。
成膜室101における磁場の強度を上述の範囲とすることで、密度が高く、結晶性の高い酸化物を成膜することができる。また、得られる酸化物は、複数種の結晶相を含むことが少なく、ほとんど単一の結晶相を含む酸化物となる。
図30(B)に、マグネットユニット130の上面図を示す。マグネットユニット130は、円形または略円形のマグネット130Nと、円形または略円形のマグネット130Sと、がマグネットホルダ132に固定されていることわかる。そして、マグネットユニット130を、マグネットユニット130の上面における中央または略中央の法線ベクトルを回転軸として回転させることができる。例えば、マグネットユニット130を、0.1Hz以上1kHz以下のビート(リズム、拍子、パルス、周波、周期またはサイクルなどと言い換えてもよい。)で回転させればよい。
したがって、ターゲット100上の磁場の強い領域は、マグネットユニット130の回転とともに変化する。磁場の強い領域は高密度プラズマ領域となるため、その近傍においてターゲット100のスパッタリング現象が起こりやすい。例えば、磁場の強い領域が特定の箇所となる場合、ターゲット100の特定の領域のみが使用されることになる。一方、図30(B)に示すようにマグネットユニット130を回転させることで、ターゲット100を均一に使用することができる。また、マグネットユニット130を回転させることによって、均一な厚さ、質を有する膜を成膜することができる。
また、マグネットユニット130を回転させることにより、基板160の上面における磁力線の向きも変化させることができる。
なお、ここではマグネットユニット130を回転させる例を示したが、本発明の一態様はこれに限定されるものではない。例えば、マグネットユニット130を上下または/および左右に揺動させても構わない。例えば、マグネットユニット130を、0.1Hz以上1kHz以下のビートで移動させればよい。または、ターゲット100を回転または移動させても構わない。例えば、ターゲット100を、0.1Hz以上1kHz以下のビートで回転または移動させればよい。または、基板160を回転させることで、相対的に基板160の上面における磁力線の向きを変化させても構わない。または、これらの組み合わせても構わない。
成膜室101は、バッキングプレート110の内部または下部などに水路を有してもよい。そして、水路に流体(空気、窒素、希ガス、水、オイルなど)を流すことで、スパッタ時にターゲット100の温度の上昇による放電異常や、部材の変形による成膜室101の損傷などを抑制することができる。このとき、バッキングプレート110とターゲット100とをボンディング材を介して密着させると、冷却性能が高まるため好ましい。
なお、ターゲットホルダ120とバッキングプレート110との間にガスケットを有すると、成膜室101内に外部や水路などから不純物が混入しにくくなるため好ましい。
マグネットユニット130において、マグネット130Nとマグネット130Sとは、それぞれターゲット100側に異なる極を向けて配置されている。ここでは、マグネット130Nをターゲット100側がN極となるように配置し、マグネット130Sをターゲット100側がS極となるように配置する場合について説明する。ただし、マグネットユニット130におけるマグネットおよび極の配置は、この配置に限定されるものではない。また、図30(A)の配置に限定されるものでもない。
成膜時、ターゲットホルダ120に接続する端子V1に印加される電位V1は、例えば、基板ホルダ170に接続する端子V2に印加される電位V2よりも低い電位である。また、基板ホルダ170に接続する端子V2に印加される電位V2は、例えば、接地電位である。また、マグネットホルダ132に接続する端子V3に印加される電位V3は、例えば、接地電位である。なお、端子V1、端子V2および端子V3に印加される電位は上記の電位に限定されない。また、ターゲットホルダ120、基板ホルダ170、マグネットホルダ132の全てに電位が印加されなくても構わない。例えば、基板ホルダ170が電気的に浮いていても構わない。なお、図30(A)では、ターゲットホルダ120に接続する端子V1に電位V1を印加する、いわゆるDCスパッタリング法の例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。例えば、ターゲットホルダ120に、周波数が13.56MHzまたは27.12MHzなどの高周波電源を接続する、いわゆるRFスパッタリング法を用いても構わない。
また、図30(A)では、バッキングプレート110およびターゲットホルダ120と、マグネットユニット130およびマグネットホルダ132と、は電気的に接続されない例を示したが、これに限定されない。例えば、バッキングプレート110およびターゲットホルダ120と、マグネットユニット130およびマグネットホルダ132と、が電気的に接続されており、等電位となっていても構わない。
また、得られる酸化物の結晶性をさらに高めるために、基板160の温度を高くしても構わない。基板160の温度を高くすることで、基板160の上面におけるスパッタ粒子のマイグレーションを助長させることができる。したがって、より密度が高く、より結晶性の高い酸化物を成膜することができる。なお、基板160の温度は、例えば、100℃以上450℃以下、好ましくは150℃以上400℃以下、さらに好ましくは170℃以上350℃以下とすればよい。
また、成膜ガス中の酸素分圧が高すぎると、複数種の結晶相を含む酸化物が成膜されやすいため、成膜ガスはアルゴンなどの希ガス(ほかにヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノンなど)と酸素との混合ガスを用いると好ましい。例えば、全体に占める酸素の割合を50体積%未満、好ましくは33体積%以下、さらに好ましくは20体積%以下、より好ましくは15体積%以下とすればよい。
また、ターゲット100と基板160との垂直距離を、10mm以上600mm以下、好ましくは20mm以上400mm以下、さらに好ましくは30mm以上200mm以下、より好ましくは40mm以上100mm以下とする。ターゲット100と基板160との垂直距離を上述の範囲まで近くすることで、スパッタ粒子が、基板160に到達するまでの間におけるエネルギーの低下を抑制できる場合がある。また、ターゲット100と基板160との垂直距離を上述の範囲まで遠くすることで、スパッタ粒子の基板160への入射方向を垂直に近づけることができるため、スパッタ粒子の衝突による基板160へのダメージを小さくすることができる場合がある。
図31(A)に、図30(A)とは異なる成膜室の例を示す。
図31(A)に示す成膜室101は、ターゲットホルダ120aと、ターゲットホルダ120bと、バッキングプレート110aと、バッキングプレート110bと、ターゲット100aと、ターゲット100bと、マグネットユニット130aと、マグネットユニット130bと、部材140と、基板ホルダ170と、を有する。なお、ターゲット100aは、バッキングプレート110a上に配置される。また、バッキングプレート110aは、ターゲットホルダ120a上に配置される。また、マグネットユニット130aは、バッキングプレート110aを介してターゲット100a下に配置される。また、ターゲット100bは、バッキングプレート110b上に配置される。また、バッキングプレート110bは、ターゲットホルダ120b上に配置される。また、マグネットユニット130bは、バッキングプレート110bを介してターゲット100b下に配置される。
マグネットユニット130aは、マグネット130N1と、マグネット130N2と、マグネット130Sと、マグネットホルダ132と、を有する。なお、マグネットユニット130aにおいて、マグネット130N1、マグネット130N2およびマグネット130Sは、マグネットホルダ132上に配置される。また、マグネット130N1およびマグネット130N2は、マグネット130Sと間隔を開けて配置される。なお、マグネットユニット130bは、マグネットユニット130aと同様の構造を有する。なお、成膜室101に基板160を搬入する場合、基板160は基板ホルダ170上に配置される。
ターゲット100a、バッキングプレート110aおよびターゲットホルダ120aと、ターゲット100b、バッキングプレート110bおよびターゲットホルダ120bと、は部材140によって離間されている。なお、部材140は絶縁体であることが好ましい。ただし、部材140が導電体または半導体であっても構わない。また、部材140が、導電体または半導体の表面を絶縁体で覆ったものであっても構わない。
ターゲットホルダ120aとバッキングプレート110aとは、ネジ(ボルトなど)を用いて固定されており、等電位となる。また、ターゲットホルダ120aは、バッキングプレート110aを介してターゲット100aを支持する機能を有する。また、ターゲットホルダ120bとバッキングプレート110bとは、ネジ(ボルトなど)を用いて固定されており、等電位となる。また、ターゲットホルダ120bは、バッキングプレート110bを介してターゲット100bを支持する機能を有する。
バッキングプレート110aは、ターゲット100aを固定する機能を有する。また、バッキングプレート110bは、ターゲット100bを固定する機能を有する。
図31(A)に、マグネットユニット130aによって形成される磁力線180aおよび磁力線180bを示す。
磁力線180aは、ターゲット100aの上面近傍における水平磁場を形成する磁力線の一つである。ターゲット100aの上面近傍は、例えば、ターゲット100aから垂直距離が0mm以上10mm以下、特に0mm以上5mm以下の領域である。
磁力線180bは、マグネットユニット130aの上面から、垂直距離dにおける水平磁場を形成する磁力線の一つである。垂直距離dは、例えば、0mm以上20mm以下または5mm以上15mm以下である。
このとき、強力なマグネット130N1、マグネット130N2および強力なマグネット130Sを用いることで、基板160の上面近傍においても強い磁場を発生させることができる。具体的には、基板160の上面における水平磁場の強度を10G以上100G以下、好ましくは15G以上60G以下、さらに好ましくは20G以上40G以下とすることができる。基板160の上面における水平磁場を上述の範囲とすることにより、後述する成膜モデルを実現することができる。
成膜室101における磁場の強度を上述の範囲とすることで、密度が高く、結晶性の高い酸化物を成膜することができる。また、得られる酸化物は、複数種の結晶相を含むことが少なく、ほとんど単一の結晶相を含む酸化物となる。
なお、マグネットユニット130bもマグネットユニット130aと同様の磁力線を形成する。
図31(B)に、マグネットユニット130aおよびマグネットユニット130bの上面図を示す。マグネットユニット130aは、長方形または略長方形のマグネット130N1と、長方形または略長方形のマグネット130N2と、長方形または略長方形のマグネット130Sと、がマグネットホルダ132に固定されていることわかる。そして、マグネットユニット130aを、図31(B)に示すように左右に揺動させることができる。例えば、マグネットユニット130aを、0.1Hz以上1kHz以下のビートで揺動させればよい。
したがって、ターゲット100a上の磁場の強い領域は、マグネットユニット130aの揺動とともに変化する。磁場の強い領域は高密度プラズマ領域となるため、その近傍においてターゲット100aのスパッタリング現象が起こりやすい。例えば、磁場の強い領域が特定の箇所となる場合、ターゲット100aの特定の領域のみが使用されることになる。一方、図31(B)に示すようにマグネットユニット130aを揺動させることで、ターゲット100aを均一に使用することができる。また、マグネットユニット130aを揺動させることによって、均一な厚さ、質を有する膜を成膜することができる。
また、マグネットユニット130aを揺動させることにより、基板160の上面における磁力線の状態も変化させることができる。これは、マグネットユニット130bにおいても同様である。
なお、ここではマグネットユニット130aおよびマグネットユニット130bを揺動させる例を示したが、本発明の一態様はこれに限定されるものではない。例えば、マグネットユニット130aおよびマグネットユニット130bを回転させても構わない。例えば、マグネットユニット130aおよびマグネットユニット130bを、0.1Hz以上1kHz以下のビートで回転させればよい。または、ターゲット100を回転または移動させても構わない。例えば、ターゲット100を、0.1Hz以上1kHz以下のビートで回転または移動させればよい。または、基板160を回転させることで、相対的に基板160の上面における磁力線の状態を変化させることができる。または、これらを組み合わせても構わない。
成膜室101は、バッキングプレート110aおよびバッキングプレート110bの内部または下部などに水路を有してもよい。そして、水路に流体(空気、窒素、希ガス、水、オイルなど)を流すことで、スパッタ時にターゲット100aおよびターゲット100bの温度の上昇による放電異常や、部材の変形による成膜室101の損傷などを抑制することができる。このとき、バッキングプレート110aとターゲット100aとをボンディング材を介して密着させると、冷却性能が高まるため好ましい。また、バッキングプレート110bとターゲット100bとをボンディング材を介して密着させると、冷却性能が高まるため好ましい。
なお、ターゲットホルダ120aとバッキングプレート110aとの間にガスケットを有すると、成膜室101内に外部や水路などから不純物が混入しにくくなるため好ましい。また、ターゲットホルダ120bとバッキングプレート110bとの間にガスケットを有すると、成膜室101内に外部や水路などから不純物が混入しにくくなるため好ましい。
マグネットユニット130aにおいて、マグネット130N1およびマグネット130N2とマグネット130Sとはそれぞれターゲット100a側に異なる極を向けて配置されている。ここでは、マグネット130N1およびマグネット130N2をターゲット100a側がN極となるように配置し、マグネット130Sをターゲット100a側がS極となるように配置する場合について説明する。ただし、マグネットユニット130aにおけるマグネットおよび極の配置は、この配置に限定されるものではない。また、図31(A)の配置に限定されるものでもない。これは、マグネットユニット130bについても同様である。
成膜時、ターゲットホルダ120aに接続する端子V1と、ターゲットホルダ120bに接続する端子V4と、の間で、交互に高低が入れ替わる電位を印加すればよい。また、基板ホルダ170に接続する端子V2に印加される電位V2は、例えば、接地電位である。また、マグネットホルダ132に接続する端子V3に印加される電位V3は、例えば、接地電位である。なお、端子V1、端子V2、端子V3および端子V4に印加される電位は上記の電位に限定されない。また、ターゲットホルダ120a、ターゲットホルダ120b、基板ホルダ170、マグネットホルダ132の全てに電位が印加されなくても構わない。例えば、基板ホルダ170が電気的に浮いていても構わない。なお、図31(A)では、ターゲットホルダ120aに接続する端子V1と、ターゲットホルダ120bに接続する端子V4と、の間で、交互に高低が入れ替わる電位を印加する、いわゆるACスパッタリング法の例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。
また、図31(A)では、バッキングプレート110aおよびターゲットホルダ120aと、マグネットユニット130aおよびマグネットホルダ132と、は電気的に接続されない例を示したが、これに限定されない。例えば、バッキングプレート110aおよびターゲットホルダ120aと、マグネットユニット130aおよびマグネットホルダ132と、が電気的に接続されており、等電位となっていても構わない。また、バッキングプレート110bおよびターゲットホルダ120bと、マグネットユニット130bおよびマグネットホルダ132と、は電気的に接続されない例を示したが、これに限定されない。例えば、バッキングプレート110bおよびターゲットホルダ120bと、マグネットユニット130bおよびマグネットホルダ132と、が電気的に接続されており、等電位となっていても構わない。
また、得られる酸化物の結晶性をさらに高めるために、基板160の温度を高くしても構わない。基板160の温度を高くすることで、基板160の上面におけるスパッタ粒子のマイグレーションを助長させることができる。したがって、より密度が高く、より結晶性の高い酸化物を成膜することができる。なお、基板160の温度は、例えば、100℃以上450℃以下、好ましくは150℃以上400℃以下、さらに好ましくは170℃以上350℃以下とすればよい。
また、成膜ガス中の酸素分圧が高すぎると、複数種の結晶相を含む酸化物が成膜されやすいため、成膜ガスはアルゴンなどの希ガス(ほかにヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノンなど)と酸素との混合ガスを用いると好ましい。例えば、全体に占める酸素の割合を50体積%未満、好ましくは33体積%以下、さらに好ましくは20体積%以下、より好ましくは15体積%以下とすればよい。
また、ターゲット100aと基板160との垂直距離を、10mm以上600mm以下、好ましくは20mm以上400mm以下、さらに好ましくは30mm以上200mm以下、より好ましくは40mm以上100mm以下とする。ターゲット100aと基板160との垂直距離を上述の範囲まで近くすることで、スパッタ粒子が、基板160に到達するまでの間におけるエネルギーの低下を抑制できる場合がある。また、ターゲット100aと基板160との垂直距離を上述の範囲まで遠くすることで、スパッタ粒子の基板160への入射方向を垂直に近づけることができるため、スパッタ粒子の衝突による基板160へのダメージを小さくすることができる場合がある。
また、ターゲット100bと基板160との垂直距離を、10mm以上600mm以下、好ましくは20mm以上400mm以下、さらに好ましくは30mm以上200mm以下、より好ましくは40mm以上100mm以下とする。ターゲット100bと基板160との垂直距離を上述の範囲まで近くすることで、スパッタ粒子が、基板160に到達するまでの間におけるエネルギーの低下を抑制できる場合がある。また、ターゲット100bと基板160との垂直距離を上述の範囲まで遠くすることで、スパッタ粒子の基板160への入射方向を垂直に近づけることができるため、スパッタ粒子の衝突による基板160へのダメージを小さくすることができる場合がある。
<成膜装置>
以下では、上述したCAAC−OSを成膜することが可能な成膜室を有する成膜装置について説明する。
まずは、成膜時などに膜中に不純物の混入が少ない成膜装置の構成について図32および図33を用いて説明する。
図32は、枚葉式マルチチャンバーの成膜装置700の上面図を模式的に示している。成膜装置700は、基板を収容するカセットポート761と、基板のアライメントを行うアライメントポート762と、を備える大気側基板供給室701と、大気側基板供給室701から、基板を搬送する大気側基板搬送室702と、基板の搬入を行い、かつ室内の圧力を大気圧から減圧、または減圧から大気圧へ切り替えるロードロック室703aと、基板の搬出を行い、かつ室内の圧力を減圧から大気圧、または大気圧から減圧へ切り替えるアンロードロック室703bと、真空中の基板の搬送を行う搬送室704と、基板の加熱を行う基板加熱室705と、ターゲットが配置され成膜を行う成膜室706a、706bおよび706cと、を有する。なお、成膜室706a、706bおよび706cは、例えば、図30(A)または図31(A)などに示した成膜室101の構成を参酌することができる。
また、大気側基板搬送室702は、ロードロック室703aおよびアンロードロック室703bと接続され、ロードロック室703aおよびアンロードロック室703bは、搬送室704と接続され、搬送室704は、基板加熱室705、成膜室706a、成膜室706bおよび成膜室706cと接続する。
なお、各室の接続部にはゲートバルブ764が設けられており、大気側基板供給室701と、大気側基板搬送室702を除き、各室を独立して真空状態に保持することができる。また、大気側基板搬送室702および搬送室704は、搬送ロボット763を有し、基板を搬送することができる。
また、基板加熱室705は、プラズマ処理室を兼ねると好ましい。成膜装置700は、処理と処理の間で基板を大気暴露することなく搬送することが可能なため、基板に不純物が吸着することを抑制できる。また、成膜や熱処理などの順番を自由に構築することができる。なお、搬送室、成膜室、ロードロック室、アンロードロック室および基板加熱室は、上述の数に限定されず、設置スペースやプロセス条件に合わせて、適宜最適な数を設けることができる。
次に、図32に示す成膜装置700の一点鎖線X1−X2、一点鎖線Y1−Y2、および一点鎖線Y2−Y3に相当する断面を図33に示す。
図33(A)は、基板加熱室705と、搬送室704の断面を示しており、基板加熱室705は、基板を収容することができる複数の加熱ステージ765を有している。なお、基板加熱室705は、バルブを介して真空ポンプ770と接続されている。真空ポンプ770としては、例えば、ドライポンプ、およびメカニカルブースターポンプ等を用いることができる。
また、基板加熱室705に用いることのできる加熱機構としては、例えば、抵抗発熱体などを用いて加熱する加熱機構としてもよい。または、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導または熱輻射によって、加熱する加熱機構としてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)などのRTA(Rapid Thermal Anneal)を用いることができる。LRTAは、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する。GRTAは、高温のガスを用いて熱処理を行う。ガスとしては、不活性ガスが用いられる。
また、基板加熱室705は、マスフローコントローラ780を介して、精製機781と接続される。なお、マスフローコントローラ780および精製機781は、ガス種の数だけ設けられるが、理解を容易にするため一つのみを示す。基板加熱室705に導入されるガスは、露点が−80℃以下、好ましくは−100℃以下であるガスを用いることができ、例えば、酸素ガス、窒素ガス、および希ガス(アルゴンガスなど)を用いる。
搬送室704は、搬送ロボット763を有している。搬送ロボット763は、各室へ基板を搬送することができる。また、搬送室704は、バルブを介して真空ポンプ770と、クライオポンプ771と、接続されている。このような構成とすることで、搬送室704は、大気圧から低真空または中真空(0.1から数百Pa程度)まで真空ポンプ770を用いて排気され、バルブを切り替えて中真空から高真空または超高真空(0.1Paから1×10−7Pa)まではクライオポンプ771を用いて排気される。
また、例えば、クライオポンプ771は、搬送室704に対して2台以上並列に接続してもよい。このような構成とすることで、1台のクライオポンプがリジェネ中であっても、残りのクライオポンプを使って排気することが可能となる。なお、上述したリジェネとは、クライオポンプ内にため込まれた分子(または原子)を放出する処理をいう。クライオポンプは、分子(または原子)をため込みすぎると排気能力が低下してくるため、定期的にリジェネが行われる。
図33(B)は、成膜室706bと、搬送室704と、ロードロック室703aの断面を示している。
ここで、図33(B)を用いて、成膜室(スパッタリング室)の詳細について説明する。図33(B)に示す成膜室706bは、ターゲット766と、防着板767と、基板ステージ768と、を有する。なお、ここでは基板ステージ768には、基板769が設置されている。基板ステージ768は、図示しないが、基板769を保持する基板保持機構や、基板769を裏面から加熱する裏面ヒーター等を備えていてもよい。また、ターゲットの背後にマグネットユニットを備えていてもよい。
なお、基板ステージ768は、成膜時に床面に対して略垂直状態に保持され、基板受け渡し時には床面に対して略水平状態に保持される。なお、図33(B)中において、破線で示す箇所が基板受け渡し時の基板ステージ768の保持される位置となる。このような構成とすることで成膜時に混入しうるゴミまたはパーティクルが、基板769に付着する確率を水平状態に保持するよりも抑制することができる。ただし、基板ステージ768を床面に対して垂直(90°)状態に保持すると、基板769が落下する可能性があるため、基板ステージ768の角度は、80°以上90°未満とすることが好ましい。
また、防着板767は、ターゲット766からスパッタリングされる粒子が不要な領域に堆積することを抑制できる。また、防着板767は、累積されたスパッタリング粒子が剥離しないように、加工することが望ましい。例えば、表面粗さを増加させるブラスト処理、または防着板767の表面に凹凸を設けてもよい。
また、成膜室706bは、ガス加熱機構782を介してマスフローコントローラ780と接続され、ガス加熱機構782はマスフローコントローラ780を介して精製機781と接続される。ガス加熱機構782により、成膜室706bに導入されるガスを40℃以上400℃以下、好ましくは50℃以上200℃以下に加熱することができる。なお、ガス加熱機構782、マスフローコントローラ780、および精製機781は、ガス種の数だけ設けられるが、理解を容易にするため一つのみを示す。成膜室706bに導入されるガスは、露点が−80℃以下、好ましくは−100℃以下であるガスを用いることができ、例えば、酸素ガス、窒素ガス、および希ガス(アルゴンガスなど)を用いる。
成膜室706bに、対向ターゲット式スパッタリング装置を適用してもよい。対向ターゲット式スパッタリング装置は、プラズマがターゲット間に閉じこめられるため、基板へのプラズマダメージを低減することができる。また、ターゲットの傾きによっては、スパッタリング粒子の基板への入射角度を浅くすることができるため、段差被覆性を高めることができる。
なお、成膜室706bに、平行平板型スパッタリング装置、イオンビームスパッタリング装置を適用しても構わない。
なお、ガスの導入口の直前に精製機を設ける場合、精製機から成膜室706bまでの配管の長さを10m以下、好ましくは5m以下、さらに好ましくは1m以下とする。配管の長さを10m以下、5m以下または1m以下とすることで、配管からの放出ガスの影響を長さに応じて低減できる。さらに、ガスの配管には、フッ化鉄、酸化アルミニウム、酸化クロムなどで内部が被覆された金属配管を用いるとよい。前述の配管は、例えばSUS316L−EP配管と比べ、不純物を含むガスの放出量が少なく、ガスへの不純物の入り込みを低減できる。また、配管の継手には、高性能超小型メタルガスケット継手(UPG継手)を用いるとよい。また、配管を全て金属で構成することで、樹脂等を用いた場合と比べ、生じる放出ガスおよび外部リークの影響を低減できて好ましい。
また、成膜室706bは、バルブを介してターボ分子ポンプ772および真空ポンプ770と接続される。
また、成膜室706bは、クライオトラップ751が設けられる。
クライオトラップ751は、水などの比較的融点の高い分子(または原子)を吸着することができる機構である。ターボ分子ポンプ772は大きいサイズの分子(または原子)を安定して排気し、かつメンテナンスの頻度が低いため、生産性に優れる一方、水素や水の排気能力が低い。そこで、水などに対する排気能力を高めるため、クライオトラップ751が成膜室706bに接続された構成としている。クライオトラップ751の冷凍機の温度は100K以下、好ましくは80K以下とする。また、クライオトラップ751が複数の冷凍機を有する場合、冷凍機ごとに温度を変えると、効率的に排気することが可能となるため好ましい。例えば、1段目の冷凍機の温度を100K以下とし、2段目の冷凍機の温度を20K以下とすればよい。なお、クライオトラップに替えて、チタンサブリメーションポンプを用いることで、さらに高真空とすることができる場合がある。また、クライオポンプやターボ分子ポンプに替えてイオンポンプを用いることでもさらに高真空とすることができる場合がある。
なお、成膜室706bの排気方法は、これに限定されず、先の搬送室704に示す排気方法(クライオポンプと真空ポンプとの排気方法)と同様の構成としてもよい。もちろん、搬送室704の排気方法を成膜室706bと同様の構成(ターボ分子ポンプと真空ポンプとの排気方法)としてもよい。
なお、上述した搬送室704、基板加熱室705、および成膜室706bの背圧(全圧)、ならびに各気体分子(原子)の分圧は、以下の通りとすると好ましい。とくに、形成される膜中に不純物が混入され得る可能性があるので、成膜室706bの背圧、ならびに各気体分子(原子)の分圧には注意する必要がある。
上述した各室の背圧(全圧)は、1×10−4Pa以下、好ましくは3×10−5Pa以下、さらに好ましくは1×10−5Pa以下である。上述した各室の質量電荷比(m/z)が18である気体分子(原子)の分圧は、3×10−5Pa以下、好ましくは1×10−5Pa以下、さらに好ましくは3×10−6Pa以下である。また、上述した各室のm/zが28である気体分子(原子)の分圧は、3×10−5Pa以下、好ましくは1×10−5Pa以下、さらに好ましくは3×10−6Pa以下である。また、上述した各室のm/zが44である気体分子(原子)の分圧は、3×10−5Pa以下、好ましくは1×10−5Pa以下、さらに好ましくは3×10−6Pa以下である。
なお、真空チャンバー内の全圧および分圧は、質量分析計を用いて測定することができる。例えば、株式会社アルバック製四重極形質量分析計(Q−massともいう。)Qulee CGM−051を用いればよい。
また、上述した搬送室704、基板加熱室705、および成膜室706bは、外部リークまたは内部リークが少ない構成とすることが望ましい。
例えば、上述した搬送室704、基板加熱室705、および成膜室706bのリークレートは、3×10−6Pa・m3/s以下、好ましくは1×10−6Pa・m3/s以下である。また、m/zが18である気体分子(原子)のリークレートが1×10−7Pa・m3/s以下、好ましくは3×10−8Pa・m3/s以下である。また、m/zが28である気体分子(原子)のリークレートが1×10−5Pa・m3/s以下、好ましくは1×10−6Pa・m3/s以下である。また、m/zが44である気体分子(原子)のリークレートが3×10−6Pa・m3/s以下、好ましくは1×10−6Pa・m3/s以下である。
なお、リークレートに関しては、前述の質量分析計を用いて測定した全圧および分圧から導出すればよい。
リークレートは、外部リークおよび内部リークに依存する。外部リークは、微小な穴やシール不良などによって真空系外から気体が流入することである。内部リークは、真空系内のバルブなどの仕切りからの漏れや内部の部材からの放出ガスに起因する。リークレートを上述の数値以下とするために、外部リークおよび内部リークの両面から対策をとる必要がある。
例えば、成膜室706bの開閉部分はメタルガスケットでシールするとよい。メタルガスケットは、フッ化鉄、酸化アルミニウム、または酸化クロムによって被覆された金属を用いると好ましい。メタルガスケットはOリングと比べ密着性が高く、外部リークを低減できる。また、フッ化鉄、酸化アルミニウム、酸化クロムなどによって被覆された金属の不動態を用いることで、メタルガスケットから放出される不純物を含む放出ガスが抑制され、内部リークを低減することができる。
また、成膜装置700を構成する部材として、不純物を含む放出ガスの少ないアルミニウム、クロム、チタン、ジルコニウム、ニッケルまたはバナジウムを用いる。また、前述の部材を鉄、クロムおよびニッケルなどを含む合金に被覆して用いてもよい。鉄、クロムおよびニッケルなどを含む合金は、剛性があり、熱に強く、また加工に適している。ここで、表面積を小さくするために部材の表面凹凸を研磨などによって低減しておくと、放出ガスを低減できる。
または、前述の成膜装置700の部材をフッ化鉄、酸化アルミニウム、酸化クロムなどで被覆してもよい。
成膜装置700の部材は、極力金属のみで構成することが好ましく、例えば石英などで構成される覗き窓などを設置する場合も、放出ガスを抑制するために表面をフッ化鉄、酸化アルミニウム、酸化クロムなどで薄く被覆するとよい。
成膜室に存在する吸着物は、内壁などに吸着しているために成膜室の圧力に影響しないが、成膜室を排気した際のガス放出の原因となる。そのため、リークレートと排気速度に相関はないものの、排気能力の高いポンプを用いて、成膜室に存在する吸着物をできる限り脱離し、あらかじめ排気しておくことは重要である。なお、吸着物の脱離を促すために、成膜室をベーキングしてもよい。ベーキングすることで吸着物の脱離速度を10倍程度大きくすることができる。ベーキングは100℃以上450℃以下で行えばよい。このとき、不活性ガスを成膜室に導入しながら吸着物の除去を行うと、排気するだけでは脱離しにくい水などの脱離速度をさらに大きくすることができる。なお、導入する不活性ガスをベーキングの温度と同程度に加熱することで、吸着物の脱離速度をさらに高めることができる。ここで不活性ガスとして希ガスを用いると好ましい。また、成膜する膜種によっては不活性ガスの代わりに酸素などを用いても構わない。例えば、酸化物を成膜する場合は、主成分である酸素を用いた方が好ましい場合もある。なお、ベーキングは、ランプを用いて行うと好ましい。
または、加熱した希ガスなどの不活性ガスまたは酸素などを導入することで成膜室内の圧力を高め、一定時間経過後に再び成膜室を排気する処理を行うと好ましい。加熱したガスの導入により成膜室内の吸着物を脱離させることができ、成膜室内に存在する不純物を低減することができる。なお、この処理は2回以上30回以下、好ましくは5回以上15回以下の範囲で繰り返し行うと効果的である。具体的には、温度が40℃以上400℃以下、好ましくは50℃以上200℃以下である不活性ガスまたは酸素などを導入することで成膜室内の圧力を0.1Pa以上10kPa以下、好ましくは1Pa以上1kPa以下、さらに好ましくは5Pa以上100Pa以下とし、圧力を保つ期間を1分以上300分以下、好ましくは5分以上120分以下とすればよい。その後、成膜室を5分以上300分以下、好ましくは10分以上120分以下の期間排気する。
また、ダミー成膜を行うことでも吸着物の脱離速度をさらに高めることができる。ダミー成膜とは、ダミー基板に対してスパッタリング法などによる成膜を行うことで、ダミー基板および成膜室内壁に膜を堆積させ、成膜室内の不純物および成膜室内壁の吸着物を膜中に閉じこめることをいう。ダミー基板は、放出ガスの少ない基板が好ましい。ダミー成膜を行うことで、後に成膜される膜中の不純物濃度を低減することができる。なお、ダミー成膜はベーキングと同時に行ってもよい。
次に、図33(B)に示す搬送室704、およびロードロック室703aと、図33(C)に示す大気側基板搬送室702、および大気側基板供給室701の詳細について以下説明を行う。なお、図33(C)は、大気側基板搬送室702、および大気側基板供給室701の断面を示している。
図33(B)に示す搬送室704については、図33(A)に示す搬送室704の記載を参照する。
ロードロック室703aは、基板受け渡しステージ752を有する。ロードロック室703aは、減圧状態から大気まで圧力を上昇させ、ロードロック室703aの圧力が大気圧になった時に、大気側基板搬送室702に設けられている搬送ロボット763から基板受け渡しステージ752に基板を受け取る。その後、ロードロック室703aを真空引きし、減圧状態としたのち、搬送室704に設けられている搬送ロボット763が基板受け渡しステージ752から基板を受け取る。
また、ロードロック室703aは、バルブを介して真空ポンプ770、およびクライオポンプ771と接続されている。真空ポンプ770、およびクライオポンプ771の排気系の接続方法は、搬送室704の接続方法を参考とすることで接続できるため、ここでの説明は省略する。なお、図32に示すアンロードロック室703bは、ロードロック室703aと同様の構成とすることができる。
大気側基板搬送室702は、搬送ロボット763を有する。搬送ロボット763により、カセットポート761とロードロック室703aとの基板の受け渡しを行うことができる。また、大気側基板搬送室702、および大気側基板供給室701の上方にHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)等のゴミまたはパーティクルを清浄化するための機構を設けてもよい。
大気側基板供給室701は、複数のカセットポート761を有する。カセットポート761は、複数の基板を収容することができる。
ターゲットは、表面温度が100℃以下、好ましくは50℃以下、さらに好ましくは室温程度(代表的には25℃)とする。大面積の基板に対応するスパッタリング装置では大面積のターゲットを用いることが多い。ところが、大面積に対応した大きさのターゲットをつなぎ目なく作製することは困難である。現実には複数のターゲットをなるべく隙間のないように並べて大きな形状としているが、どうしても僅かな隙間が生じてしまう。こうした僅かな隙間から、ターゲットの表面温度が高まることで亜鉛などが揮発し、徐々に隙間が広がっていくことがある。隙間が広がると、バッキングプレートや接着に用いている金属がスパッタリングされることがあり、不純物濃度を高める要因となる。したがって、ターゲットは、十分に冷却されていることが好ましい。
具体的には、バッキングプレートとして、高い導電性および高い放熱性を有する金属(具体的には銅)を用いる。また、バッキングプレート内に水路を形成し、水路に十分な量の冷却水を流すことで、効率的にターゲットを冷却できる。
なお、ターゲットが亜鉛を含む場合、酸素ガス雰囲気で成膜することにより、プラズマダメージが軽減され、亜鉛の揮発が起こりにくい酸化物を得ることができる。
上述した成膜装置を用いることで、CAAC−OS中の水素濃度を、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)において、2×1020atoms/cm3以下、好ましくは5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1018atoms/cm3以下とすることができる。
また、CAAC−OS中の窒素濃度を、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3以下、より好ましくは5×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3以下とすることができる。
また、CAAC−OS中の炭素濃度を、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とすることができる。
また、CAAC−OSを、昇温脱離ガス分光法(TDS:Thermal Desorption Spectroscopy)分析によるm/zが2(水素分子など)である気体分子(原子)、m/zが18である気体分子(原子)、m/zが28である気体分子(原子)およびm/zが44である気体分子(原子)の放出量が、それぞれ1×1019個/cm3以下、好ましくは1×1018個/cm3以下とすることができる。
以上の成膜装置を用いることで、CAAC−OSへの不純物の混入を抑制できる。さらには、以上の成膜装置を用いて、CAAC−OSに接する膜を成膜することで、CAAC−OSに接する膜からCAAC−OSへ不純物が混入することを抑制できる。
<トランジスタ>
以下では、本発明の一態様に係るトランジスタについて説明する。
なお、本発明の一態様に係るトランジスタは、上述したnc−OSまたはCAAC−OSを有すると好ましい。
<トランジスタ構造1>
図34(A)および図34(B)は、本発明の一態様のトランジスタの上面図および断面図である。図34(A)は上面図であり、図34(B)は、図34(A)に示す一点鎖線A1−A2、および一点鎖線A3−A4に対応する断面図である。なお、図34(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
図34(A)および図34(B)に示すトランジスタは、基板400上の導電体413と、基板400上および導電体413上の凸部を有する絶縁体402と、絶縁体402の凸部上の半導体406aと、半導体406a上の半導体406bと、半導体406bの上面および側面と接し、間隔を開けて配置された導電体416aおよび導電体416bと、半導体406b上、導電体416a上および導電体416b上の半導体406cと、半導体406c上の絶縁体412と、絶縁体412上の導電体404と、導電体416a上、導電体416b上および導電体404上の絶縁体408と、絶縁体408上の絶縁体418と、を有する。なお、ここでは、導電体413をトランジスタの一部としているが、これに限定されない。例えば、導電体413がトランジスタとは独立した構成要素であるとしてもよい。
なお、半導体406cは、A3−A4断面において、少なくとも半導体406bの上面および側面と接する。また、導電体404は、A3−A4断面において、半導体406cおよび絶縁体412を介して半導体406bの上面および側面と面する。また、導電体413は、絶縁体402を介して半導体406bの下面と面する。また、絶縁体402が凸部を有さなくても構わない。また、半導体406cを有さなくても構わない。また、絶縁体408を有さなくても構わない。また、絶縁体418を有さなくても構わない。
なお、半導体406bは、トランジスタのチャネル形成領域としての機能を有する。また、導電体404は、トランジスタの第1のゲート電極(フロントゲート電極ともいう。)としての機能を有する。また、導電体413は、トランジスタの第2のゲート電極(バックゲート電極ともいう。)としての機能を有する。また、導電体416aおよび導電体416bは、トランジスタのソース電極およびドレイン電極としての機能を有する。また、絶縁体408は、バリア層としての機能を有する。絶縁体408は、例えば、酸素または/および水素をブロックする機能を有する。または、絶縁体408は、例えば、半導体406aまたは/および半導体406cよりも、酸素または/および水素をブロックする能力が高い。
なお、絶縁体402は過剰酸素を含む絶縁体であると好ましい。
例えば、過剰酸素を含む絶縁体は、加熱処理によって酸素を放出する機能を有する絶縁体である。例えば、過剰酸素を含む酸化シリコン層は、加熱処理などによって酸素を放出することができる酸化シリコン層である。したがって、絶縁体402は膜中を酸素が移動可能な絶縁体である。即ち、絶縁体402は酸素透過性を有する絶縁体とすればよい。例えば、絶縁体402は、半導体406aよりも酸素透過性の高い絶縁体とすればよい。
過剰酸素を含む絶縁体は、半導体406b中の酸素欠損を低減させる機能を有する場合がある。半導体406b中で酸素欠損は、DOSを形成し、正孔トラップなどとなる。また、酸素欠損のサイトに水素が入ることによって、キャリアである電子を生成することがある。したがって、半導体406b中の酸素欠損を低減することで、トランジスタに安定した電気特性を付与することができる。
ここで、加熱処理によって酸素を放出する絶縁体は、TDS分析にて、100℃以上700℃以下または100℃以上500℃以下の表面温度の範囲で1×1018atoms/cm3以上、1×1019atoms/cm3以上または1×1020atoms/cm3以上の酸素(酸素原子数換算)を放出することもある。
ここで、TDS分析を用いた酸素の放出量の測定方法について、以下に説明する。
測定試料をTDS分析したときの気体の全放出量は、放出ガスのイオン強度の積分値に比例する。そして標準試料との比較により、気体の全放出量を計算することができる。
例えば、標準試料である所定の密度の水素を含むシリコン基板のTDS分析結果、および測定試料のTDS分析結果から、測定試料の酸素分子の放出量(NO2)は、下に示す式で求めることができる。ここで、TDS分析で得られる質量電荷比32で検出されるガスの全てが酸素分子由来と仮定する。CH3OHの質量電荷比は32であるが、存在する可能性が低いものとしてここでは考慮しない。また、酸素原子の同位体である質量数17の酸素原子および質量数18の酸素原子を含む酸素分子についても、自然界における存在比率が極微量であるため考慮しない。
NO2=NH2/SH2×SO2×α
NH2は、標準試料から脱離した水素分子を密度で換算した値である。SH2は、標準試料をTDS分析したときのイオン強度の積分値である。ここで、標準試料の基準値を、NH2/SH2とする。SO2は、測定試料をTDS分析したときのイオン強度の積分値である。αは、TDS分析におけるイオン強度に影響する係数である。上に示す式の詳細に関しては、特開平6−275697公報を参照する。なお、上記酸素の放出量は、電子科学株式会社製の昇温脱離分析装置EMD−WA1000S/Wを用い、標準試料として、例えば1×1016atoms/cm2の水素原子を含むシリコン基板を用いて測定する。
また、TDS分析において、酸素の一部は酸素原子として検出される。酸素分子と酸素原子の比率は、酸素分子のイオン化率から算出することができる。なお、上述のαは酸素分子のイオン化率を含むため、酸素分子の放出量を評価することで、酸素原子の放出量についても見積もることができる。
なお、NO2は酸素分子の放出量である。酸素原子に換算したときの放出量は、酸素分子の放出量の2倍となる。
または、加熱処理によって酸素を放出する絶縁体は、過酸化ラジカルを含むこともある。具体的には、過酸化ラジカルに起因するスピン密度が、5×1017spins/cm3以上であることをいう。なお、過酸化ラジカルを含む絶縁体は、ESRにて、g値が2.01近傍に非対称の信号を有することもある。
または、過剰酸素を含む絶縁体は、酸素が過剰な酸化シリコン(SiOX(X>2))であってもよい。酸素が過剰な酸化シリコン(SiOX(X>2))は、シリコン原子数の2倍より多い酸素原子を単位体積当たりに含むものである。単位体積当たりのシリコン原子数および酸素原子数は、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)により測定した値である。
図34(B)に示すように、半導体406bの側面は、導電体416aおよび導電体416bと接する。また、導電体404の電界によって、半導体406bを電気的に取り囲むことができる(導電体から生じる電界によって、半導体を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(s−channel)構造とよぶ。)。そのため、半導体406bの全体(バルク)にチャネルが形成される場合がある。s−channel構造では、トランジスタのソース−ドレイン間に大電流を流すことができ、導通時の電流(オン電流)を高くすることができる。
高いオン電流が得られるため、s−channel構造は、微細化されたトランジスタに適した構造といえる。トランジスタを微細化できるため、該トランジスタを有する半導体装置は、集積度の高い、高密度化された半導体装置とすることが可能となる。例えば、トランジスタは、チャネル長が好ましくは40nm以下、さらに好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下の領域を有し、かつ、トランジスタは、チャネル幅が好ましくは40nm以下、さらに好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下の領域を有する。
また、導電体413に、ソース電極よりも低い電圧または高い電圧を印加し、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向またはマイナス方向へ変動させてもよい。例えば、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向に変動させることで、ゲート電圧が0Vであってもトランジスタが非導通状態(オフ状態)となる、ノーマリーオフが実現できる場合がある。なお、導電体413に印加する電圧は、可変であってもよいし、固定であってもよい。導電体413に印加する電圧を可変にする場合、電圧を制御する回路を導電体413と電気的に接続してもよい。
次に、半導体406a、半導体406b、半導体406cなどに適用可能な半導体について説明する。
半導体406bは、例えば、インジウムを含む酸化物半導体である。半導体406bは、例えば、インジウムを含むと、キャリア移動度(電子移動度)が高くなる。また、半導体406bは、元素Mを含むと好ましい。元素Mは、好ましくは、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどとする。そのほかの元素Mに適用可能な元素としては、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステンなどがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。元素Mは、例えば、酸素との結合エネルギーが高い元素である。例えば、酸素との結合エネルギーがインジウムよりも高い元素である。または、元素Mは、例えば、酸化物半導体のエネルギーギャップを大きくする機能を有する元素である。また、半導体406bは、亜鉛を含むと好ましい。酸化物半導体は、亜鉛を含むと結晶化しやすくなる場合がある。
ただし、半導体406bは、インジウムを含む酸化物半導体に限定されない。半導体406bは、例えば、亜鉛スズ酸化物、ガリウムスズ酸化物などの、インジウムを含まず、亜鉛を含む酸化物半導体、ガリウムを含む酸化物半導体、スズを含む酸化物半導体などであっても構わない。
半導体406bは、例えば、エネルギーギャップが大きい酸化物を用いる。半導体406bのエネルギーギャップは、例えば、2.5eV以上4.2eV以下、好ましくは2.8eV以上3.8eV以下、さらに好ましくは3eV以上3.5eV以下とする。
例えば、半導体406aおよび半導体406cは、半導体406bを構成する酸素以外の元素一種以上、または二種以上から構成される酸化物半導体である。半導体406bを構成する酸素以外の元素一種以上、または二種以上から半導体406aおよび半導体406cが構成されるため、半導体406aと半導体406bとの界面、および半導体406bと半導体406cとの界面において、界面準位が形成されにくい。
半導体406a、半導体406bおよび半導体406cは、少なくともインジウムを含むと好ましい。なお、半導体406aがIn−M−Zn酸化物のとき、InおよびMの和を100atomic%としたとき、好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic%より高く、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%より高いとする。また、半導体406bがIn−M−Zn酸化物のとき、InおよびMの和を100atomic%としたとき、好ましくはInが25atomic%より高く、Mが75atomic%未満、さらに好ましくはInが34atomic%より高く、Mが66atomic%未満とする。また、半導体406cがIn−M−Zn酸化物のとき、InおよびMの和を100atomic%としたとき、好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic%より高く、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%より高くする。なお、半導体406cは、半導体406aと同種の酸化物を用いても構わない。ただし、半導体406aまたは/および半導体406cがインジウムを含まなくても構わない場合がある。例えば、半導体406aまたは/および半導体406cが酸化ガリウムであっても構わない。
半導体406bは、半導体406aおよび半導体406cよりも電子親和力の大きい酸化物を用いる。例えば、半導体406bとして、半導体406aおよび半導体406cよりも電子親和力の0.07eV以上1.3eV以下、好ましくは0.1eV以上0.7eV以下、さらに好ましくは0.15eV以上0.4eV以下大きい酸化物を用いる。なお、電子親和力は、真空準位と伝導帯下端のエネルギーとの差である。
なお、インジウムガリウム酸化物は、小さい電子親和力と、高い酸素ブロック性を有する。そのため、半導体406cがインジウムガリウム酸化物を含むと好ましい。ガリウム原子割合[Ga/(In+Ga)]は、例えば、70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上とする。
なお、半導体406aの組成は、図29に示した太線の組成の近傍であることが好ましい。なお、半導体406bの組成は、図29に示した太線の組成の近傍であることが好ましい。なお、半導体406cの組成は、図29に示した太線の組成の近傍であることが好ましい。こうすることで、トランジスタのチャネル形成領域を、単結晶構造を有する領域とすることができる。または、トランジスタのチャネル形成領域、ソース領域およびドレイン領域を、単結晶構造を有する領域とすることができる場合がある。トランジスタのチャネル形成領域が単結晶構造を有する領域とすることで、トランジスタの周波数特性を高くすることができる場合がある。
このとき、ゲート電圧を印加すると、半導体406a、半導体406b、半導体406cのうち、電子親和力の大きい半導体406bにチャネルが形成される。
ここで、半導体406aと半導体406bとの間には、半導体406aと半導体406bとの混合領域を有する場合がある。また、半導体406bと半導体406cとの間には、半導体406bと半導体406cとの混合領域を有する場合がある。混合領域は、界面準位密度が低くなる。そのため、半導体406a、半導体406bおよび半導体406cの積層体は、それぞれの界面近傍において、エネルギーが連続的に変化する(連続接合ともいう。)バンド構造となる。
このとき、電子は、半導体406a中および半導体406c中ではなく、半導体406b中を主として移動する。上述したように、半導体406aおよび半導体406bの界面における界面準位密度、半導体406bと半導体406cとの界面における界面準位密度を低くすることによって、半導体406b中で電子の移動が阻害されることが少なく、トランジスタのオン電流を高くすることができる。
トランジスタのオン電流は、電子の移動を阻害する要因を低減するほど、高くすることができる。例えば、電子の移動を阻害する要因のない場合、効率よく電子が移動すると推定される。電子の移動は、例えば、チャネル形成領域の物理的な凹凸が大きい場合にも阻害される。
トランジスタのオン電流を高くするためには、例えば、半導体406bの上面または下面(被形成面、ここでは半導体406a)の、1μm×1μmの範囲における二乗平均平方根(RMS:Root Mean Square)粗さが1nm未満、好ましくは0.6nm未満、さらに好ましくは0.5nm未満、より好ましくは0.4nm未満とすればよい。また、1μm×1μmの範囲における平均面粗さ(Raともいう。)が1nm未満、好ましくは0.6nm未満、さらに好ましくは0.5nm未満、より好ましくは0.4nm未満とすればよい。また、1μm×1μmの範囲における最大高低差(P−Vともいう。)が10nm未満、好ましくは9nm未満、さらに好ましくは8nm未満、より好ましくは7nm未満とすればよい。RMS粗さ、RaおよびP−Vは、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製走査型プローブ顕微鏡システムSPA−500などを用いて測定することができる。
または、例えば、チャネルの形成される領域中の欠陥準位密度が高い場合にも、電子の移動は阻害される。
例えば、半導体406bが酸素欠損(VOとも表記。)を有する場合、酸素欠損のサイトに水素が入り込むことでドナー準位を形成することがある。以下では酸素欠損のサイトに水素が入り込んだ状態をVOHと表記する場合がある。VOHは電子を散乱するため、トランジスタのオン電流を低下させる要因となる。なお、酸素欠損のサイトは、水素が入るよりも酸素が入る方が安定する。したがって、半導体406b中の酸素欠損を低減することで、トランジスタのオン電流を高くすることができる場合がある。
半導体406bの酸素欠損を低減するために、例えば、絶縁体402に含まれる過剰酸素を、半導体406aを介して半導体406bまで移動させる方法などがある。この場合、半導体406aは、酸素透過性を有する層(酸素を通過または透過させる層)であることが好ましい。
なお、トランジスタがs−channel構造を有する場合、半導体406bの全体にチャネルが形成される。したがって、半導体406bが厚いほどチャネル領域は大きくなる。即ち、半導体406bが厚いほど、トランジスタのオン電流を高くすることができる。例えば、20nm以上、好ましくは40nm以上、さらに好ましくは60nm以上、より好ましくは100nm以上の厚さの領域を有する半導体406bとすればよい。ただし、半導体装置の生産性が低下する場合があるため、例えば、300nm以下、好ましくは200nm以下、さらに好ましくは150nm以下の厚さの領域を有する半導体406bとすればよい。
また、トランジスタのオン電流を高くするためには、半導体406cの厚さは小さいほど好ましい。例えば、10nm未満、好ましくは5nm以下、さらに好ましくは3nm以下の領域を有する半導体406cとすればよい。一方、半導体406cは、チャネルの形成される半導体406bへ、隣接する絶縁体を構成する酸素以外の元素(水素、シリコンなど)が入り込まないようブロックする機能を有する。そのため、半導体406cは、ある程度の厚さを有することが好ましい。例えば、0.3nm以上、好ましくは1nm以上、さらに好ましくは2nm以上の厚さの領域を有する半導体406cとすればよい。また、半導体406cは、絶縁体402などから放出される酸素の外方拡散を抑制するために、酸素をブロックする性質を有すると好ましい。
また、信頼性を高くするためには、半導体406aは厚く、半導体406cは薄いことが好ましい。例えば、10nm以上、好ましくは20nm以上、さらに好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上の厚さの領域を有する半導体406aとすればよい。半導体406aの厚さを、厚くすることで、隣接する絶縁体と半導体406aとの界面からチャネルの形成される半導体406bまでの距離を離すことができる。ただし、半導体装置の生産性が低下する場合があるため、例えば、200nm以下、好ましくは120nm以下、さらに好ましくは80nm以下の厚さの領域を有する半導体406aとすればよい。
例えば、半導体406bと半導体406aとの間に、例えば、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)において、1×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは2×1018atoms/cm3未満のシリコン濃度となる領域を有する。また、半導体406bと半導体406cとの間に、SIMSにおいて、1×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは2×1018atoms/cm3未満のシリコン濃度となる領域を有する。
また、半導体406bの水素濃度を低減するために、半導体406aおよび半導体406cの水素濃度を低減すると好ましい。半導体406aおよび半導体406cは、SIMSにおいて、2×1020atoms/cm3以下、好ましくは5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1018atoms/cm3以下の水素濃度となる領域を有する。また、半導体406bの窒素濃度を低減するために、半導体406aおよび半導体406cの窒素濃度を低減すると好ましい。半導体406aおよび半導体406cは、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下の窒素濃度となる領域を有する。
上述の3層構造は一例である。例えば、半導体406aまたは半導体406cのない2層構造としても構わない。または、半導体406aの上もしくは下、または半導体406c上もしくは下に、半導体406a、半導体406bおよび半導体406cとして例示した半導体のいずれか一を有する4層構造としても構わない。または、半導体406aの上、半導体406aの下、半導体406cの上、半導体406cの下のいずれか二箇所以上に、半導体406a、半導体406bおよび半導体406cとして例示した半導体のいずれか一以上を有するn層構造(nは5以上の整数)としても構わない。
基板400としては、例えば、絶縁体基板、半導体基板または導電体基板を用いればよい。絶縁体基板としては、例えば、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、安定化ジルコニア基板(イットリア安定化ジルコニア基板など)、樹脂基板などがある。また、半導体基板としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどの単体半導体基板、または炭化シリコン、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、酸化亜鉛、酸化ガリウムなどの化合物半導体基板などがある。さらには、前述の半導体基板内部に絶縁体領域を有する半導体基板、例えばSOI(Silicon On Insulator)基板などがある。導電体基板としては、黒鉛基板、金属基板、合金基板、導電性樹脂基板などがある。または、金属の窒化物を有する基板、金属の酸化物を有する基板などがある。さらには、絶縁体基板に導電体または半導体が設けられた基板、半導体基板に導電体または絶縁体が設けられた基板、導電体基板に半導体または絶縁体が設けられた基板などがある。または、これらの基板に素子が設けられたものを用いてもよい。基板に設けられる素子としては、容量素子、抵抗素子、スイッチ素子、発光素子、記憶素子などがある。
また、基板400として、可とう性基板を用いてもよい。なお、可とう性基板上にトランジスタを設ける方法としては、非可とう性の基板上にトランジスタを作製した後、トランジスタを剥離し、可とう性基板である基板400に転置する方法もある。その場合には、非可とう性基板とトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。なお、基板400として、繊維を編みこんだシート、フィルムまたは箔などを用いてもよい。また、基板400が伸縮性を有してもよい。また、基板400は、折り曲げや引っ張りをやめた際に、元の形状に戻る性質を有してもよい。または、元の形状に戻らない性質を有してもよい。基板400の厚さは、例えば、5μm以上700μm以下、好ましくは10μm以上500μm以下、さらに好ましくは15μm以上300μm以下とする。基板400を薄くすると、半導体装置を軽量化することができる。また、基板400を薄くすることで、ガラスなどを用いた場合にも伸縮性を有する場合や、折り曲げや引っ張りをやめた際に、元の形状に戻る性質を有する場合がある。そのため、落下などによって基板400上の半導体装置に加わる衝撃などを緩和することができる。即ち、丈夫な半導体装置を提供することができる。
可とう性基板である基板400としては、例えば、金属、合金、樹脂もしくはガラス、またはそれらの繊維などを用いることができる。可とう性基板である基板400は、線膨張率が低いほど環境による変形が抑制されて好ましい。可とう性基板である基板400としては、例えば、線膨張率が1×10−3/K以下、5×10−5/K以下、または1×10−5/K以下である材質を用いればよい。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリルなどがある。特に、アラミドは、線膨張率が低いため、可とう性基板である基板400として好適である。
導電体413としては、例えば、ホウ素、窒素、酸素、フッ素、シリコン、リン、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、インジウム、スズ、タンタルおよびタングステンを一種以上含む導電体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、合金や化合物であってもよく、アルミニウムを含む合金、銅およびチタンを含む合金、銅およびマンガンを含む合金、インジウム、スズおよび酸素を含む化合物、チタンおよび窒素を含む化合物などを用いてもよい。
絶縁体402としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、絶縁体402としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルを用いればよい。
絶縁体402は、基板400からの不純物の拡散を防止する役割を有してもよい。また、半導体406bが酸化物半導体である場合、絶縁体402は、半導体406bに酸素を供給する役割を担うことができる。
導電体416aおよび導電体416bとしては、例えば、ホウ素、窒素、酸素、フッ素、シリコン、リン、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、インジウム、スズ、タンタルおよびタングステンを一種以上含む導電体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、合金や化合物であってもよく、アルミニウムを含む合金、銅およびチタンを含む合金、銅およびマンガンを含む合金、インジウム、スズおよび酸素を含む化合物、チタンおよび窒素を含む化合物などを用いてもよい。
導電体416aおよび導電体416bを有することにより、半導体406a、半導体406bまたは半導体406cに欠陥を形成する場合がある。該欠陥は、半導体406a、半導体406bまたは半導体406cをn型化させる場合がある。その結果、半導体406a、半導体406bまたは半導体406cと、導電体416aおよび導電体416bと、の間がオーム接触となる。例えば、半導体406a、半導体406bまたは半導体406cに形成された欠陥を、脱水素化および加酸素化などによって低減した場合、半導体406a、半導体406bまたは半導体406cと、導電体416aおよび導電体416bと、の間がショットキー接触となる。
絶縁体412としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、絶縁体412としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルを用いればよい。
導電体404としては、例えば、ホウ素、窒素、酸素、フッ素、シリコン、リン、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、インジウム、スズ、タンタルおよびタングステンを一種以上含む導電体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、合金や化合物であってもよく、アルミニウムを含む合金、銅およびチタンを含む合金、銅およびマンガンを含む合金、インジウム、スズおよび酸素を含む化合物、チタンおよび窒素を含む化合物などを用いてもよい。
絶縁体408としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。絶縁体408は、好ましくは酸化アルミニウム、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。
絶縁体418としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、絶縁体418としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルを用いればよい。
なお、図34では、トランジスタの第1のゲート電極である導電体404と第2のゲート電極である導電体413とが、電気的に接続しない例を示したが、本発明の一態様に係るトランジスタの構造はこれに限定されない。例えば、図35(A)に示すように、導電体404と導電体413とが電気的に接続する構造であっても構わない。このような構成とすることで、導電体404と導電体413とに同じ電位が供給されるため、トランジスタのスイッチング特性を向上させることができる。または、図35(B)に示すように、導電体413を有さない構造であっても構わない。
また、図36(A)は、トランジスタの上面図の一例である。図36(A)の一点鎖線F1−F2および一点鎖線F3−F4に対応する断面図の一例を図36(B)に示す。なお、図36(A)では、理解を容易にするため、絶縁体などの一部を省略して示す。
また、図34などではソース電極およびドレイン電極として機能する導電体416aおよび導電体416bが半導体406bの上面および側面、絶縁体402の上面などと接する例を示したが、本発明の一態様に係るトランジスタの構造はこれに限定されない。例えば、図36に示すように、導電体416aおよび導電体416bが半導体406bの上面のみと接する構造であっても構わない。
また、図36(B)に示すように、絶縁体418上に絶縁体428を有してもよい。絶縁体428は、上面が平坦な絶縁体であると好ましい。なお、絶縁体428は、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、絶縁体428としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルを用いればよい。絶縁体428の上面を平坦化するために、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)法などによって平坦化処理を行ってもよい。
または、絶縁体428は、樹脂を用いてもよい。例えば、ポリイミド、ポリアミド、アクリル、シリコーンなどを含む樹脂を用いればよい。樹脂を用いることで、絶縁体428の上面を平坦化処理しなくてもよい場合がある。また、樹脂は短い時間で厚い膜を成膜することができるため、生産性を高めることができる。
また、図36(A)および図36(B)に示すように、絶縁体428上に導電体424aおよび導電体424bを有してもよい。導電体424aおよび導電体424bは、例えば、配線としての機能を有する。また、絶縁体428が開口部を有し、該開口部を介して導電体416aと導電体424aとが電気的に接続しても構わない。また、また、絶縁体428が別の開口部を有し、該開口部を介して導電体416bと導電体424bとが電気的に接続しても構わない。このとき、それぞれの開口部内に導電体426a、導電体426bを有しても構わない。
導電体424aおよび導電体424bとしては、例えば、ホウ素、窒素、酸素、フッ素、シリコン、リン、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、インジウム、スズ、タンタルおよびタングステンを一種以上含む導電体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、合金や化合物であってもよく、アルミニウムを含む合金、銅およびチタンを含む合金、銅およびマンガンを含む合金、インジウム、スズおよび酸素を含む化合物、チタンおよび窒素を含む化合物などを用いてもよい。
図36に示すトランジスタは、導電体416aおよび導電体416bは、半導体406bの側面と接しない。したがって、第1のゲート電極として機能する導電体404から半導体406bの側面に向けて印加される電界が、導電体416aおよび導電体416bによって遮蔽されにくい構造である。また、導電体416aおよび導電体416bは、絶縁体402の上面と接しない。そのため、絶縁体402から放出される過剰酸素(酸素)が導電体416aおよび導電体416bを酸化させるために消費されない。したがって、絶縁体402から放出される過剰酸素(酸素)を、半導体406bの酸素欠損を低減するために効率的に利用することのできる構造である。即ち、図36に示す構造のトランジスタは、高いオン電流、高い電界効果移動度、低いサブスレッショルドスイング値、高い信頼性などを有する優れた電気特性のトランジスタである。
図37(A)および図37(B)は、本発明の一態様のトランジスタの上面図および断面図である。図37(A)は上面図であり、図37(B)は、図37(A)に示す一点鎖線G1−G2、および一点鎖線G3−G4に対応する断面図である。なお、図37(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
トランジスタは、図37に示すように、導電体416aおよび導電体416bを有さず、導電体426aおよび導電体426bと、半導体406bとが接する構造であっても構わない。この場合、半導体406bまたは/および半導体406aの、少なくとも導電体426aおよび導電体426bと接する領域に低抵抗領域423a(低抵抗領域423b)を設けると好ましい。低抵抗領域423aおよび低抵抗領域423bは、例えば、導電体404などをマスクとし、半導体406bまたは/および半導体406aに不純物を添加することで形成すればよい。なお、導電体426aおよび導電体426bが、半導体406bの孔(貫通しているもの)または窪み(貫通していないもの)に設けられていても構わない。導電体426aおよび導電体426bが、半導体406bの孔または窪みに設けられることで、導電体426aおよび導電体426bと、半導体406bとの接触面積が大きくなるため、接触抵抗の影響を小さくすることができる。即ち、トランジスタのオン電流を大きくすることができる。
<トランジスタ構造2>
図38(A)および図38(B)は、本発明の一態様のトランジスタの上面図および断面図である。図38(A)は上面図であり、図38(B)は、図38(A)に示す一点鎖線J1−J2、および一点鎖線J3−J4に対応する断面図である。なお、図38(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
図38(A)および図38(B)に示すトランジスタは、基板600上の導電体604と、導電体604上の絶縁体612と、絶縁体612上の半導体606aと、半導体606a上の半導体606bと、半導体606b上の半導体606cと、半導体606a、半導体606bおよび半導体606cと接し、間隔を開けて配置された導電体616aおよび導電体616bと、半導体606c上、導電体616a上および導電体616b上の絶縁体618と、を有する。なお、導電体604は、絶縁体612を介して半導体606bの下面と面する。また、絶縁体612が凸部を有しても構わない。また、基板600と導電体604の間に絶縁体を有しても構わない。該絶縁体は、絶縁体402や絶縁体408についての記載を参照する。また、半導体606aを有さなくても構わない。また、絶縁体618を有さなくても構わない。
なお、半導体606bは、トランジスタのチャネル形成領域としての機能を有する。また、導電体604は、トランジスタの第1のゲート電極(フロントゲート電極ともいう。)としての機能を有する。また、導電体616aおよび導電体616bは、トランジスタのソース電極およびドレイン電極としての機能を有する。
なお、絶縁体618は過剰酸素を含む絶縁体であると好ましい。
なお、基板600は、基板400についての記載を参照する。また、導電体604は、導電体404についての記載を参照する。また、絶縁体612は、絶縁体412についての記載を参照する。また、半導体606aは、半導体406cについての記載を参照する。また、半導体606bは、半導体406bについての記載を参照する。また、半導体606cは、半導体406aについての記載を参照する。また、導電体616aおよび導電体616bは、導電体416aおよび導電体416bについての記載を参照する。また、絶縁体618は、絶縁体402についての記載を参照する。
なお、絶縁体618上には、表示素子が設けられていてもよい。例えば、画素電極、液晶層、共通電極、発光層、有機EL層、陽極、陰極などが設けられていてもよい。表示素子は、例えば、導電体616aなどと接続されている。
また、図39(A)は、トランジスタの上面図の一例である。図39(A)の一点鎖線K1−K2および一点鎖線K3−K4に対応する断面図の一例を図39(B)に示す。なお、図39(A)では、理解を容易にするため、絶縁体などの一部を省略して示す。
なお、半導体の上に、チャネル保護膜として機能させることができる絶縁体を配置してもよい。例えば、図39に示すように、導電体616aおよび導電体616bと、半導体606cとの間に、絶縁体620を配置してもよい。その場合、導電体616a(導電体616b)と半導体606cとは、絶縁体620中の開口部を介して接続される。絶縁体620は、絶縁体618についての記載を参照すればよい。
なお、図38(B)や図39(B)において、絶縁体618の上に、導電体613を配置してもよい。その場合の例を図40(A)および図40(B)に示す。なお、導電体613については、導電体413についての記載を参照する。また、導電体613には、導電体604と同じ電位や同じ信号が供給されてもよいし、異なる電位や信号が供給されてもよい。例えば、導電体613に、一定の電位を供給して、トランジスタのしきい値電圧を制御してもよい。つまり、導電体613は、第2のゲート電極としての機能を有することができる。また、導電体613などによってs−channel構造を形成していても構わない。
<半導体装置>
以下では、本発明の一態様に係る半導体装置を例示する。
<回路>
以下では、本発明の一態様に係るトランジスタを利用した回路の一例について説明する。
〔CMOSインバータ〕
図41(A)に示す回路図は、pチャネル型のトランジスタ2200とnチャネル型のトランジスタ2100を直列に接続し、かつそれぞれのゲートを接続した、いわゆるCMOSインバータの構成を示している。
〔CMOSアナログスイッチ〕
また図41(B)に示す回路図は、トランジスタ2100とトランジスタ2200のそれぞれのソースとドレインを接続した構成を示している。このような構成とすることで、いわゆるCMOSアナログスイッチとして機能させることができる。
〔記憶装置の例〕
本発明の一態様に係るトランジスタを用いた、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置(記憶装置)の一例を図42に示す。
図42(A)に示す半導体装置は、第1の半導体を用いたトランジスタ3200と第2の半導体を用いたトランジスタ3300、および容量素子3400を有している。なお、トランジスタ3300としては、上述したトランジスタを用いることができる。
トランジスタ3300は、酸化物半導体を用いたトランジスタである。トランジスタ3300のオフ電流が小さいことにより、半導体装置の特定のノードに長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、またはリフレッシュ動作の頻度が極めて少なくすることが可能となるため、消費電力の低い半導体装置となる。
図42(A)において、第1の配線3001はトランジスタ3200のソースと電気的に接続され、第2の配線3002はトランジスタ3200のドレインと電気的に接続される。また、第3の配線3003はトランジスタ3300のソース、ドレインの一方と電気的に接続され、第4の配線3004はトランジスタ3300のゲートと電気的に接続されている。そして、トランジスタ3200のゲート、およびトランジスタ3300のソース、ドレインの他方は、容量素子3400の電極の一方と電気的に接続され、第5の配線3005は容量素子3400の電極の他方と電気的に接続されている。
図42(A)に示す半導体装置は、トランジスタ3200のゲートの電位が保持可能という特性を有することで、以下に示すように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線3004の電位を、トランジスタ3300が導通状態となる電位にして、トランジスタ3300を導通状態とする。これにより、第3の配線3003の電位が、トランジスタ3200のゲート、および容量素子3400の電極の一方と電気的に接続するノードFGに与えられる。即ち、トランジスタ3200のゲートには、所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベル電荷、Highレベル電荷という。)のどちらかが与えられるものとする。その後、第4の配線3004の電位を、トランジスタ3300が非導通状態となる電位にして、トランジスタ3300を非導通状態とすることにより、ノードFGに電荷が保持される(保持)。
トランジスタ3300のオフ電流は極めて小さいため、ノードFGの電荷は長期間にわたって保持される。
次に情報の読み出しについて説明する。第1の配線3001に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線3005に適切な電位(読み出し電位)を与えると、第2の配線3002は、ノードFGに保持された電荷量に応じた電位をとる。これは、トランジスタ3200をnチャネル型とすると、トランジスタ3200のゲートにHighレベル電荷が与えられている場合の見かけ上のしきい値電圧Vth_Hは、トランジスタ3200のゲートにLowレベル電荷が与えられている場合の見かけ上のしきい値電圧Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけ上のしきい値電圧とは、トランジスタ3200を「導通状態」とするために必要な第5の配線3005の電位をいうものとする。したがって、第5の配線3005の電位をVth_HとVth_Lの間の電位V0とすることにより、ノードFGに与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、ノードFGにHighレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線3005の電位がV0(>Vth_H)となれば、トランジスタ3200は「導通状態」となる。一方、ノードFGにLowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線3005の電位がV0(<Vth_L)となっても、トランジスタ3200は「非導通状態」のままである。このため、第2の配線3002の電位を判別することで、ノードFGに保持されている情報を読み出すことができる。
なお、メモリセルをアレイ状に配置する場合、読み出し時には、所望のメモリセルの情報を読み出さなくてはならない。ほかのメモリセルの情報を読み出さないためには、ノードFGに与えられた電荷によらずトランジスタ3200が「非導通状態」となるような電位、つまり、Vth_Hより低い電位を第5の配線3005に与えればよい。または、ノードFGに与えられた電荷によらずトランジスタ3200が「導通状態」となるような電位、つまり、Vth_Lより高い電位を第5の配線3005に与えればよい。
図42(B)に示す半導体装置は、トランジスタ3200を有さない点で図42(A)に示した半導体装置と異なる。この場合も図42(A)に示した半導体装置と同様の動作により情報の書き込みおよび保持動作が可能である。
図42(B)に示す半導体装置における、情報の読み出しについて説明する。トランジスタ3300が導通状態になると、浮遊状態である第3の配線3003と容量素子3400とが導通し、第3の配線3003と容量素子3400の間で電荷が再分配される。その結果、第3の配線3003の電位が変化する。第3の配線3003の電位の変化量は、容量素子3400の電極の一方の電位(または容量素子3400に蓄積された電荷)によって、異なる値をとる。
例えば、容量素子3400の電極の一方の電位をV、容量素子3400の容量をC、第3の配線3003が有する容量成分をCB、電荷が再分配される前の第3の配線3003の電位をVB0とすると、電荷が再分配された後の第3の配線3003の電位は、(CB×VB0+C×V)/(CB+C)となる。したがって、メモリセルの状態として、容量素子3400の電極の一方の電位がV1とV0(V1>V0)の2つの状態をとるとすると、電位V1を保持している場合の第3の配線3003の電位(=(CB×VB0+C×V1)/(CB+C))は、電位V0を保持している場合の第3の配線3003の電位(=(CB×VB0+C×V0)/(CB+C))よりも高くなることがわかる。
そして、第3の配線3003の電位を所定の電位と比較することで、情報を読み出すことができる。
この場合、メモリセルを駆動させるための駆動回路に上記第1の半導体が適用されたトランジスタを用い、トランジスタ3300として第2の半導体が適用されたトランジスタを駆動回路上に積層して配置する構成とすればよい。
以上に示した半導体装置は、酸化物半導体を用いたオフ電流の極めて小さいトランジスタを適用することで、長期にわたって記憶内容を保持することが可能となる。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、またはリフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力の低い半導体装置を実現することができる。また、電力の供給がない場合(ただし、電位は固定されていることが好ましい)であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
また、該半導体装置は、情報の書き込みに高い電圧が不要であるため、素子の劣化が起こりにくい。例えば、従来の不揮発性メモリのように、フローティングゲートへの電子の注入や、フローティングゲートからの電子の引き抜きを行わないため、絶縁体の劣化といった問題が生じない。即ち、本発明の一態様に係る半導体装置は、従来の不揮発性メモリとは異なり書き換え可能回数に制限はなく、信頼性が飛躍的に向上した半導体装置である。さらに、トランジスタの導通状態、非導通状態によって、情報の書き込みが行われるため、高速な動作が可能となる。
<撮像装置>
以下では、本発明の一態様に係る撮像装置について説明する。
図43(A)は、本発明の一態様に係る撮像装置4000の例を示す平面図である。撮像装置4000は、画素部4010と、画素部4010を駆動するための周辺回路4060と、周辺回路4070、周辺回路4080と、周辺回路4090と、を有する。画素部4010は、p行q列(pおよびqは2以上の整数)のマトリクス状に配置された複数の画素4011を有する。周辺回路4060、周辺回路4070、周辺回路4080および周辺回路4090は、それぞれ複数の画素4011に接続し、複数の画素4011を駆動するための信号を供給する機能を有する。なお、本明細書等において、周辺回路4060、周辺回路4070、周辺回路4080および周辺回路4090などの全てを指して「周辺回路」または「駆動回路」と呼ぶ場合がある。例えば、周辺回路4060は周辺回路の一部といえる。
また、撮像装置4000は、光源4091を有することが好ましい。光源4091は、検出光P1を放射することができる。
また、周辺回路は、少なくとも、論理回路、スイッチ、バッファ、増幅回路、または変換回路の1つを有する。また、周辺回路は、画素部4010を形成する基板上に作製してもよい。また、周辺回路の一部または全部にICチップ等の半導体装置を用いてもよい。なお、周辺回路は、周辺回路4060、周辺回路4070、周辺回路4080および周辺回路4090のいずれか一以上を省略してもよい。
また、図43(B)に示すように、撮像装置4000が有する画素部4010において、画素4011を傾けて配置してもよい。画素4011を傾けて配置することにより、行方向および列方向の画素間隔(ピッチ)を短くすることができる。これにより、撮像装置4000における撮像の品質をより高めることができる。
<画素の構成例1>
撮像装置4000が有する1つの画素4011を複数の副画素4012で構成し、それぞれの副画素4012に特定の波長帯域の光を透過するフィルタ(カラーフィルタ)を組み合わせることで、カラー画像表示を実現するための情報を取得することができる。
図44(A)は、カラー画像を取得するための画素4011の一例を示す平面図である。図44(A)に示す画素4011は、赤(R)の波長帯域を透過するカラーフィルタが設けられた副画素4012(以下、「副画素4012R」ともいう)、緑(G)の波長帯域を透過するカラーフィルタが設けられた副画素4012(以下、「副画素4012G」ともいう)および青(B)の波長帯域を透過するカラーフィルタが設けられた副画素4012(以下、「副画素4012B」ともいう)を有する。副画素4012は、フォトセンサとして機能させることができる。
副画素4012(副画素4012R、副画素4012G、および副画素4012B)は、配線4031、配線4047、配線4048、配線4049、配線4050と電気的に接続される。また、副画素4012R、副画素4012G、および副画素4012Bは、それぞれが独立した配線4053に接続している。また、本明細書等において、例えばn行目の画素4011に接続された配線4048および配線4049を、それぞれ配線4048[n]および配線4049[n]と記載する。また、例えばm列目の画素4011に接続された配線4053を、配線4053[m]と記載する。なお、図44(A)において、m列目の画素4011が有する副画素4012Rに接続する配線4053を配線4053[m]R、副画素4012Gに接続する配線4053を配線4053[m]G、および副画素4012Bに接続する配線4053を配線4053[m]Bと記載している。副画素4012は、上記配線を介して周辺回路と電気的に接続される。
また、撮像装置4000は、隣接する画素4011の、同じ波長帯域を透過するカラーフィルタが設けられた副画素4012同士がスイッチを介して電気的に接続する構成を有する。図44(B)に、n行(nは1以上p以下の整数)m列(mは1以上q以下の整数)に配置された画素4011が有する副画素4012と、該画素4011に隣接するn+1行m列に配置された画素4011が有する副画素4012の接続例を示す。図44(B)において、n行m列に配置された副画素4012Rと、n+1行m列に配置された副画素4012Rがスイッチ4001を介して接続されている。また、n行m列に配置された副画素4012Gと、n+1行m列に配置された副画素4012Gがスイッチ4002を介して接続されている。また、n行m列に配置された副画素4012Bと、n+1行m列に配置された副画素4012Bがスイッチ4003を介して接続されている。
なお、副画素4012に用いるカラーフィルタは、赤(R)、緑(G)、青(B)に限定されず、それぞれシアン(C)、黄(Y)およびマゼンダ(M)の光を透過するカラーフィルタを用いてもよい。1つの画素4011に3種類の異なる波長帯域の光を検出する副画素4012を設けることで、フルカラー画像を取得することができる。
または、それぞれ赤(R)、緑(G)および青(B)の光を透過するカラーフィルタが設けられた副画素4012に加えて、黄(Y)の光を透過するカラーフィルタが設けられた副画素4012を有する画素4011を用いてもよい。または、それぞれシアン(C)、黄(Y)およびマゼンダ(M)の光を透過するカラーフィルタが設けられた副画素4012に加えて、青(B)の光を透過するカラーフィルタが設けられた副画素4012を有する画素4011を用いてもよい。1つの画素4011に4種類の異なる波長帯域の光を検出する副画素4012を設けることで、取得した画像の色の再現性をさらに高めることができる。
また、例えば、図44(A)において、赤の波長帯域を検出する副画素4012、緑の波長帯域を検出する副画素4012、および青の波長帯域を検出する副画素4012の画素数比(または受光面積比)は、1:1:1でなくても構わない。例えば、画素数比(受光面積比)を赤:緑:青=1:2:1とするBayer配列としてもよい。または、画素数比(受光面積比)を赤:緑:青=1:6:1としてもよい。
なお、画素4011に設ける副画素4012は1つでもよいが、2つ以上が好ましい。例えば、同じ波長帯域を検出する副画素4012を2つ以上設けることで、冗長性を高め、撮像装置4000の信頼性を高めることができる。
また、可視光を吸収または反射して、赤外光を透過するIR(IR:Infrared)フィルタを用いることで、赤外光を検出する撮像装置4000を実現することができる。
また、ND(ND:Neutral Density)フィルタ(減光フィルタ)を用いることで、光電変換素子(受光素子)に大光量光が入射した時に生じる出力飽和することを防ぐことができる。減光量の異なるNDフィルタを組み合わせて用いることで、撮像装置のダイナミックレンジを大きくすることができる。
また、前述したフィルタ以外に、画素4011にレンズを設けてもよい。ここで、図45の断面図を用いて、画素4011、フィルタ4054、レンズ4055の配置例を説明する。レンズ4055を設けることで、光電変換素子が入射光を効率よく受光することができる。具体的には、図45(A)に示すように、画素4011に形成したレンズ4055、フィルタ4054(フィルタ4054R、フィルタ4054Gおよびフィルタ4054B)、および画素回路4030等を通して光4056を光電変換素子4020に入射させる構造とすることができる。
ただし、一点鎖線で囲んだ領域に示すように、矢印で示す光4056の一部が配線4057の一部によって遮光されてしまうことがある。したがって、図45(B)に示すように光電変換素子4020側にレンズ4055およびフィルタ4054を配置して、光電変換素子4020が光4056を効率良く受光させる構造が好ましい。光電変換素子4020側から光4056を光電変換素子4020に入射させることで、検出感度の高い撮像装置4000を提供することができる。
図45に示す光電変換素子4020として、pn型接合またはpin型の接合が形成された光電変換素子を用いてもよい。
また、光電変換素子4020を、放射線を吸収して電荷を発生させる機能を有する物質を用いて形成してもよい。放射線を吸収して電荷を発生させる機能を有する物質としては、セレン、ヨウ化鉛、ヨウ化水銀、ヒ化ガリウム、テルル化カドミウム、カドミウム亜鉛合金等がある。
例えば、光電変換素子4020にセレンを用いると、可視光や、紫外光、赤外光に加えて、X線や、ガンマ線といった幅広い波長帯域にわたって光吸収係数を有する光電変換素子4020を実現できる。
ここで、撮像装置4000が有する1つの画素4011は、図44に示す副画素4012に加えて、第1のフィルタを有する副画素4012を有してもよい。
<画素の構成例2>
以下では、シリコンを用いたトランジスタと、酸化物半導体を用いたトランジスタと、を用いて画素を構成する一例について説明する。
図46(A)、図46(B)は、撮像装置を構成する素子の断面図である。図46(A)に示す撮像装置は、シリコン基板300に設けられたシリコンを用いたトランジスタ351、トランジスタ351上に積層して配置された酸化物半導体を用いたトランジスタ352およびトランジスタ353、ならびにシリコン基板300に設けられたフォトダイオード360を含む。各トランジスタおよびフォトダイオード360は、種々のプラグ370および配線371と電気的な接続を有する。また、フォトダイオード360は、アノード361およびカソード362を有し、アノード361は、低抵抗領域363を介してプラグ370と電気的に接続を有する。
また撮像装置は、シリコン基板300に設けられたトランジスタ351およびフォトダイオード360を有する層310と、層310と接して設けられ、配線371を有する層320と、層320と接して設けられ、トランジスタ352およびトランジスタ353を有する層330と、層330と接して設けられ、配線372および配線373を有する層340を備えている。
なお図46(A)の断面図の一例では、シリコン基板300において、トランジスタ351が形成された面とは逆側の面にフォトダイオード360の受光面を有する構成とする。該構成とすることで、各種トランジスタや配線などの影響を受けずに光路を確保することができる。そのため、高開口率の画素を形成することができる。なお、フォトダイオード360の受光面をトランジスタ351が形成された面と同じとすることもできる。
なお、酸化物半導体を用いたトランジスタを用いて画素を構成する場合には、層310を、酸化物半導体を用いたトランジスタを有する層とすればよい。または層310を省略し、酸化物半導体を用いたトランジスタのみで画素を構成してもよい。
なおシリコンを用いたトランジスタを用いて画素を構成する場合には、層330を省略すればよい。層330を省略した断面図の一例を図46(B)に示す。
なお、シリコン基板300は、SOI基板であってもよい。また、シリコン基板300に替えて、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、ヒ化ガリウム、ヒ化アルミニウムガリウム、リン化インジウム、窒化ガリウムまたは有機半導体を有する基板を用いることもできる。
ここで、トランジスタ351およびフォトダイオード360を有する層310と、トランジスタ352およびトランジスタ353を有する層330と、の間には絶縁体380が設けられる。ただし、絶縁体380の位置は限定されない。
トランジスタ351のチャネル形成領域近傍に設けられる絶縁体中の水素はシリコンのダングリングボンドを終端し、トランジスタ351の信頼性を向上させる効果がある。一方、トランジスタ352およびトランジスタ353などの近傍に設けられる絶縁体中の水素は、酸化物半導体中にキャリアを生成する要因の一つとなる。そのため、トランジスタ352およびトランジスタ353などの信頼性を低下させる要因となる場合がある。したがって、シリコン系半導体を用いたトランジスタの上層に酸化物半導体を用いたトランジスタを積層して設ける場合、これらの間に水素をブロックする機能を有する絶縁体380を設けることが好ましい。絶縁体380より下層に水素を閉じ込めることで、トランジスタ351の信頼性が向上させることができる。さらに、絶縁体380より下層から、絶縁体380より上層に水素が拡散することを抑制できるため、トランジスタ352およびトランジスタ353などの信頼性を向上させることができる。
絶縁体380としては、例えば、酸素または水素をブロックする機能を有する絶縁体を用いる。
また、図46(A)の断面図において、層310に設けるフォトダイオード360と、層330に設けるトランジスタとを重なるように形成することができる。そうすると、画素の集積度を高めることができる。すなわち、撮像装置の解像度を高めることができる。
また、図47(A1)および図47(B1)に示すように、撮像装置の一部または全部を湾曲させてもよい。図47(A1)は、撮像装置を同図中の一点鎖線X1−X2の方向に湾曲させた状態を示している。図47(A2)は、図47(A1)中の一点鎖線X1−X2で示した部位の断面図である。図47(A3)は、図47(A1)中の一点鎖線Y1−Y2で示した部位の断面図である。
図47(B1)は、撮像装置を同図中の一点鎖線X3−X4の方向に湾曲させ、かつ、同図中の一点鎖線Y3−Y4の方向に湾曲させた状態を示している。図47(B2)は、図47(B1)中の一点鎖線X3−X4で示した部位の断面図である。図47(B3)は、図47(B1)中の一点鎖線Y3−Y4で示した部位の断面図である。
撮像装置を湾曲させることで、像面湾曲や非点収差を低減することができる。よって、撮像装置と組み合わせて用いるレンズなどの光学設計を容易とすることができる。例えば、収差補正のためのレンズ枚数を低減できるため、撮像装置を用いた電子機器などの小型化や軽量化を実現することができる。また、撮像された画像の品質を向上させる事ができる。
<CPU>
以下では、上述したトランジスタや上述した記憶装置などの半導体装置を含むCPUについて説明する。
図48は、上述したトランジスタを一部に用いたCPUの一例の構成を示すブロック図である。
図48に示すCPUは、基板1190上に、ALU1191(ALU:Arithmetic logic unit、演算回路)、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、タイミングコントローラ1195、レジスタ1196、レジスタコントローラ1197、バスインターフェース1198、書き換え可能なROM1199、およびROMインターフェース1189を有している。基板1190は、半導体基板、SOI基板、ガラス基板などを用いる。ROM1199およびROMインターフェース1189は、別チップに設けてもよい。もちろん、図48に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。例えば、図48に示すCPUまたは演算回路を含む構成を一つのコアとし、当該コアを複数含み、それぞれのコアが並列で動作するような構成としてもよい。また、CPUが内部演算回路やデータバスで扱えるビット数は、例えば8ビット、16ビット、32ビット、64ビットなどとすることができる。
バスインターフェース1198を介してCPUに入力された命令は、インストラクションデコーダ1193に入力され、デコードされた後、ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195に入力される。
ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195は、デコードされた命令に基づき、各種制御を行なう。具体的にALUコントローラ1192は、ALU1191の動作を制御するための信号を生成する。また、インタラプトコントローラ1194は、CPUのプログラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断し、処理する。レジスタコントローラ1197は、レジスタ1196のアドレスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ1196の読み出しや書き込みを行なう。
また、タイミングコントローラ1195は、ALU1191、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、およびレジスタコントローラ1197の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタイミングコントローラ1195は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、内部クロック信号CLK2を上記各種回路に供給する。
図48に示すCPUでは、レジスタ1196に、メモリセルが設けられている。レジスタ1196のメモリセルとして、上述したトランジスタや記憶装置などを用いることができる。
図48に示すCPUにおいて、レジスタコントローラ1197は、ALU1191からの指示に従い、レジスタ1196における保持動作の選択を行う。即ち、レジスタ1196が有するメモリセルにおいて、フリップフロップによるデータの保持を行うか、容量素子によるデータの保持を行うかを、選択する。フリップフロップによるデータの保持が選択されている場合、レジスタ1196内のメモリセルへの、電源電圧の供給が行われる。容量素子におけるデータの保持が選択されている場合、容量素子へのデータの書き換えが行われ、レジスタ1196内のメモリセルへの電源電圧の供給を停止することができる。
図49は、レジスタ1196として用いることのできる記憶素子1200の回路図の一例である。記憶素子1200は、電源遮断で記憶データが揮発する回路1201と、電源遮断で記憶データが揮発しない回路1202と、スイッチ1203と、スイッチ1204と、論理素子1206と、容量素子1207と、選択機能を有する回路1220と、を有する。回路1202は、容量素子1208と、トランジスタ1209と、トランジスタ1210と、を有する。なお、記憶素子1200は、必要に応じて、ダイオード、抵抗素子、インダクタなどのその他の素子をさらに有していてもよい。
ここで、回路1202には、上述した記憶装置を用いることができる。記憶素子1200への電源電圧の供給が停止した際、回路1202のトランジスタ1209のゲートにはGND(0V)、またはトランジスタ1209がオフする電位が入力され続ける構成とする。例えば、トランジスタ1209のゲートが抵抗等の負荷を介して接地される構成とする。
スイッチ1203は、一導電型(例えば、nチャネル型)のトランジスタ1213を用いて構成され、スイッチ1204は、一導電型とは逆の導電型(例えば、pチャネル型)のトランジスタ1214を用いて構成した例を示す。ここで、スイッチ1203の第1の端子はトランジスタ1213のソースとドレインの一方に対応し、スイッチ1203の第2の端子はトランジスタ1213のソースとドレインの他方に対応し、スイッチ1203はトランジスタ1213のゲートに入力される制御信号RDによって、第1の端子と第2の端子の間の導通または非導通(つまり、トランジスタ1213の導通状態または非導通状態)が選択される。スイッチ1204の第1の端子はトランジスタ1214のソースとドレインの一方に対応し、スイッチ1204の第2の端子はトランジスタ1214のソースとドレインの他方に対応し、スイッチ1204はトランジスタ1214のゲートに入力される制御信号RDによって、第1の端子と第2の端子の間の導通または非導通(つまり、トランジスタ1214の導通状態または非導通状態)が選択される。
トランジスタ1209のソースとドレインの一方は、容量素子1208の一対の電極のうちの一方、およびトランジスタ1210のゲートと電気的に接続される。ここで、接続部分をノードM2とする。トランジスタ1210のソースとドレインの一方は、低電源電位を供給することのできる配線(例えばGND線)に電気的に接続され、他方は、スイッチ1203の第1の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの一方)と電気的に接続される。スイッチ1203の第2の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの他方)はスイッチ1204の第1の端子(トランジスタ1214のソースとドレインの一方)と電気的に接続される。スイッチ1204の第2の端子(トランジスタ1214のソースとドレインの他方)は電源電位VDDを供給することのできる配線と電気的に接続される。スイッチ1203の第2の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの他方)と、スイッチ1204の第1の端子(トランジスタ1214のソースとドレインの一方)と、論理素子1206の入力端子と、容量素子1207の一対の電極のうちの一方と、は電気的に接続される。ここで、接続部分をノードM1とする。容量素子1207の一対の電極のうちの他方は、一定の電位が入力される構成とすることができる。例えば、低電源電位(GND等)または高電源電位(VDD等)が入力される構成とすることができる。容量素子1207の一対の電極のうちの他方は、低電源電位を供給することのできる配線(例えばGND線)と電気的に接続される。容量素子1208の一対の電極のうちの他方は、一定の電位が入力される構成とすることができる。例えば、低電源電位(GND等)または高電源電位(VDD等)が入力される構成とすることができる。容量素子1208の一対の電極のうちの他方は、低電源電位を供給することのできる配線(例えばGND線)と電気的に接続される。
なお、容量素子1207および容量素子1208は、トランジスタや配線の寄生容量等を積極的に利用することによって省略することも可能である。
トランジスタ1209のゲートには、制御信号WEが入力される。スイッチ1203およびスイッチ1204は、制御信号WEとは異なる制御信号RDによって第1の端子と第2の端子の間の導通状態または非導通状態を選択され、一方のスイッチの第1の端子と第2の端子の間が導通状態のとき他方のスイッチの第1の端子と第2の端子の間は非導通状態となる。
トランジスタ1209のソースとドレインの他方には、回路1201に保持されたデータに対応する信号が入力される。図49では、回路1201から出力された信号が、トランジスタ1209のソースとドレインの他方に入力される例を示した。スイッチ1203の第2の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの他方)から出力される信号は、論理素子1206によってその論理値が反転された反転信号となり、回路1220を介して回路1201に入力される。
なお、図49では、スイッチ1203の第2の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの他方)から出力される信号は、論理素子1206および回路1220を介して回路1201に入力する例を示したがこれに限定されない。スイッチ1203の第2の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの他方)から出力される信号が、論理値を反転させられることなく、回路1201に入力されてもよい。例えば、回路1201内に、入力端子から入力された信号の論理値が反転した信号が保持されるノードが存在する場合に、スイッチ1203の第2の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの他方)から出力される信号を当該ノードに入力することができる。
また、図49において、記憶素子1200に用いられるトランジスタのうち、トランジスタ1209以外のトランジスタは、酸化物半導体以外の半導体でなる膜または基板1190にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。例えば、シリコン膜またはシリコン基板にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。また、記憶素子1200に用いられるトランジスタ全てを、チャネルが酸化物半導体で形成されるトランジスタとすることもできる。または、記憶素子1200は、トランジスタ1209以外にも、チャネルが酸化物半導体で形成されるトランジスタを含んでいてもよく、残りのトランジスタは酸化物半導体以外の半導体でなる膜または基板1190にチャネルが形成されるトランジスタとすることもできる。
図49における回路1201には、例えばフリップフロップ回路を用いることができる。また、論理素子1206としては、例えばインバータやクロックドインバータ等を用いることができる。
本発明の一態様に係る半導体装置では、記憶素子1200に電源電圧が供給されない間は、回路1201に記憶されていたデータを、回路1202に設けられた容量素子1208によって保持することができる。
また、酸化物半導体にチャネルが形成されるトランジスタはオフ電流が極めて小さい。例えば、酸化物半導体にチャネルが形成されるトランジスタのオフ電流は、結晶性を有するシリコンにチャネルが形成されるトランジスタのオフ電流に比べて著しく低い。そのため、当該トランジスタをトランジスタ1209として用いることによって、記憶素子1200に電源電圧が供給されない間も容量素子1208に保持された信号は長期間にわたり保たれる。こうして、記憶素子1200は電源電圧の供給が停止した間も記憶内容(データ)を保持することが可能である。
また、スイッチ1203およびスイッチ1204を設けることによって、プリチャージ動作を行う記憶素子であるため、電源電圧供給再開後に、回路1201が元のデータを保持しなおすまでの時間を短くすることができる。
また、回路1202において、容量素子1208によって保持された信号はトランジスタ1210のゲートに入力される。そのため、記憶素子1200への電源電圧の供給が再開された後、容量素子1208に保持された信号によって、トランジスタ1210の導通状態、または非導通状態が切り替わり、その状態に応じて信号を回路1202から読み出すことができる。それ故、容量素子1208に保持された信号に対応する電位が多少変動していても、元の信号を正確に読み出すことが可能である。
このような記憶素子1200を、プロセッサが有するレジスタやキャッシュメモリなどの記憶装置に用いることで、電源電圧の供給停止による記憶装置内のデータの消失を防ぐことができる。また、電源電圧の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。よって、プロセッサ全体、もしくはプロセッサを構成する一つ、または複数の論理回路において、短い時間でも電源停止を行うことができるため、消費電力を抑えることができる。
記憶素子1200をCPUに用いる例として説明したが、記憶素子1200は、DSP(Digital Signal Processor)、カスタムLSI、PLD(Programmable Logic Device)等のLSI、RF−ID(Radio Frequency Identification)にも応用可能である。
<表示装置>
以下では、本発明の一態様に係る表示装置の構成例について説明する。
[構成例]
図50(A)には、本発明の一態様に係る表示装置の上面図を示す。また、図50(B)には、本発明の一態様に係る表示装置の画素に液晶素子を用いた場合における画素回路を示す。また、図50(C)には、本発明の一態様に係る表示装置の画素に有機EL素子を用いた場合における画素回路を示す。
画素に用いるトランジスタは、上述したトランジスタを用いることができる。ここでは、nチャネル型のトランジスタを用いる例を示す。なお、画素に用いたトランジスタと、同一工程を経て作製したトランジスタを駆動回路として用いても構わない。このように、画素や駆動回路に上述したトランジスタを用いることにより、表示品位が高い、または/および信頼性の高い表示装置となる。
アクティブマトリクス型表示装置の一例を図50(A)に示す。表示装置の基板5000上には、画素部5001、第1の走査線駆動回路5002、第2の走査線駆動回路5003、信号線駆動回路5004が配置される。画素部5001は、複数の信号線によって信号線駆動回路5004と電気的に接続され、複数の走査線によって第1の走査線駆動回路5002、および第2の走査線駆動回路5003と電気的に接続される。なお、走査線と信号線とによって区切られる領域には、それぞれ表示素子を有する画素が配置されている。また、表示装置の基板5000は、FPC(Flexible Printed Circuit)等の接続部を介して、タイミング制御回路(コントローラ、制御ICともいう)に電気的に接続されている。
第1の走査線駆動回路5002、第2の走査線駆動回路5003および信号線駆動回路5004は、画素部5001と同じ基板5000上に形成される。そのため、駆動回路を別途作製する場合と比べて、表示装置を作製するコストを低減することができる。また、駆動回路を別途作製した場合、配線間の接続数が増える。したがって、同じ基板5000上に駆動回路を設けることで、配線間の接続数を減らすことができ、信頼性の向上、または/および歩留まりの向上を図ることができる。
〔液晶表示装置〕
また、画素の回路構成の一例を図50(B)に示す。ここでは、VA型液晶表示装置の画素などに適用することができる画素回路を示す。
この画素回路は、一つの画素に複数の画素電極を有する構成に適用できる。それぞれの画素電極は異なるトランジスタに接続され、各トランジスタは異なるゲート信号で駆動できるように構成されている。これにより、マルチドメイン設計された画素の個々の画素電極に印加する信号を、独立して制御できる。
トランジスタ5016のゲート配線5012と、トランジスタ5017のゲート配線5013には、異なるゲート信号を与えることができるように分離されている。一方、データ線として機能するソース電極またはドレイン電極5014は、トランジスタ5016とトランジスタ5017で共通に用いられている。トランジスタ5016とトランジスタ5017は上述したトランジスタを適宜用いることができる。これにより、表示品位が高い、または/および信頼性の高い液晶表示装置を提供することができる。
トランジスタ5016と電気的に接続する第1の画素電極と、トランジスタ5017と電気的に接続する第2の画素電極の形状について説明する。第1の画素電極と第2の画素電極の形状は、スリットによって分離されている。第1の画素電極はV字型に広がる形状を有し、第2の画素電極は第1の画素電極の外側を囲むように形成される。
トランジスタ5016のゲート電極はゲート配線5012と電気的に接続され、トランジスタ5017のゲート電極はゲート配線5013と電気的に接続されている。ゲート配線5012とゲート配線5013に異なるゲート信号を与えてトランジスタ5016とトランジスタ5017の動作タイミングを異ならせ、液晶の配向を制御することができる。
また、容量配線5010と、誘電体として機能するゲート絶縁体と、第1の画素電極または第2の画素電極と電気的に接続する容量電極とで容量素子を形成してもよい。
マルチドメイン構造は、一画素に第1の液晶素子5018と第2の液晶素子5019を備える。第1の液晶素子5018は第1の画素電極と対向電極とその間の液晶層とで構成され、第2の液晶素子5019は第2の画素電極と対向電極とその間の液晶層とで構成される。
なお、本発明の一態様に係る表示装置は、図50(B)に示す画素回路に限定されない。例えば、図50(B)に示す画素回路に新たにスイッチ、抵抗素子、容量素子、トランジスタ、センサー、または論理回路などを追加してもよい。
〔有機ELパネル〕
画素の回路構成の他の一例を図50(C)に示す。ここでは、有機EL素子を用いた表示装置の画素構造を示す。
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、有機EL素子が有する一対の電極の一方から電子が、他方から正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、電子および正孔が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
図50(C)は、画素回路の一例を示す図である。ここでは1つの画素にnチャネル型のトランジスタを2つ用いる例を示す。なお、nチャネル型のトランジスタには、上述したトランジスタを用いることができる。また、当該画素回路は、デジタル時間階調駆動を適用することができる。
適用可能な画素回路の構成およびデジタル時間階調駆動を適用した場合の画素の動作について説明する。
画素5020は、スイッチング用トランジスタ5021、駆動用トランジスタ5022、発光素子5024および容量素子5023を有する。スイッチング用トランジスタ5021は、ゲート電極が走査線5026に接続され、第1電極(ソース電極、ドレイン電極の一方)が信号線5025に接続され、第2電極(ソース電極、ドレイン電極の他方)が駆動用トランジスタ5022のゲート電極に接続されている。駆動用トランジスタ5022は、ゲート電極が容量素子5023を介して電源線5027に接続され、第1電極が電源線5027に接続され、第2電極が発光素子5024の第1電極(画素電極)に接続されている。発光素子5024の第2電極は共通電極5028に相当する。共通電極5028は、同一基板上に形成される共通電位線と電気的に接続される。
スイッチング用トランジスタ5021および駆動用トランジスタ5022は上述したトランジスタを用いることができる。これにより、表示品位の高い、または/および信頼性の高い有機EL表示装置となる。
発光素子5024の第2電極(共通電極5028)の電位は低電源電位に設定する。なお、低電源電位とは、電源線5027に供給される高電源電位より低い電位であり、例えばGND、0Vなどを低電源電位として設定することができる。発光素子5024の順方向のしきい値電圧以上となるように高電源電位と低電源電位を設定し、その電位差を発光素子5024に印加することにより、発光素子5024に電流を流して発光させる。なお、発光素子5024の順方向電圧とは、所望の輝度とする場合の電圧を指しており、少なくとも順方向しきい値電圧を含む。
なお、容量素子5023は駆動用トランジスタ5022のゲート容量を代用することにより省略できる場合がある。駆動用トランジスタ5022のゲート容量については、チャネル形成領域とゲート電極との間で容量が形成されていてもよい。
次に、駆動用トランジスタ5022に入力する信号について説明する。電圧入力電圧駆動方式の場合、駆動用トランジスタ5022がオンまたはオフの二つの状態となるようなビデオ信号を、駆動用トランジスタ5022に入力する。なお、駆動用トランジスタ5022を線形領域で動作させるために、電源線5027の電圧よりも高い電圧を駆動用トランジスタ5022のゲート電極に与える。また、信号線5025には、電源線電圧に駆動用トランジスタ5022のしきい値電圧Vthを加えた値以上の電圧をかける。
アナログ階調駆動を行う場合、駆動用トランジスタ5022のゲート電極に発光素子5024の順方向電圧に駆動用トランジスタ5022のしきい値電圧Vthを加えた値以上の電圧をかける。なお、駆動用トランジスタ5022が飽和領域で動作するようにビデオ信号を入力し、発光素子5024に電流を流す。また、駆動用トランジスタ5022を飽和領域で動作させるために、電源線5027の電位を、駆動用トランジスタ5022のゲート電位より高くする。ビデオ信号をアナログとすることで、発光素子5024にビデオ信号に応じた電流を流し、アナログ階調駆動を行うことができる。
なお、本発明の一態様に係る表示装置は、図50(C)に示す画素構成に限定されない。例えば、図50(C)に示す画素回路にスイッチ、抵抗素子、容量素子、センサー、トランジスタまたは論理回路などを追加してもよい。
図50で例示した回路に上述したトランジスタを適用する場合、低電位側にソース電極(第1の電極)、高電位側にドレイン電極(第2の電極)がそれぞれ電気的に接続される構成とする。さらに、制御回路等により第1のゲート電極の電位を制御し、第2のゲート電極にはソース電極に与える電位よりも低い電位など、上記で例示した電位を入力可能な構成とすればよい。
<電子機器>
本発明の一態様に係る半導体装置は、表示機器、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Disc等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)に用いることができる。その他に、本発明の一態様に係る半導体装置を用いることができる電子機器として、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯データ端末、電子書籍端末、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンタ、プリンタ複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機などが挙げられる。これら電子機器の具体例を図51に示す。
図51(A)は携帯型ゲーム機であり、筐体901、筐体902、表示部903、表示部904、マイクロフォン905、スピーカー906、操作キー907、スタイラス908等を有する。なお、図51(A)に示した携帯型ゲーム機は、2つの表示部903と表示部904とを有しているが、携帯型ゲーム機が有する表示部の数は、これに限定されない。
図51(B)は携帯データ端末であり、第1筐体911、第2筐体912、第1表示部913、第2表示部914、接続部915、操作キー916等を有する。第1表示部913は第1筐体911に設けられており、第2表示部914は第2筐体912に設けられている。そして、第1筐体911と第2筐体912とは、接続部915により接続されており、第1筐体911と第2筐体912の間の角度は、接続部915により変更が可能である。第1表示部913における映像を、接続部915における第1筐体911と第2筐体912との間の角度にしたがって、切り替える構成としてもよい。また、第1表示部913および第2表示部914の少なくとも一方に、位置入力装置としての機能が付加された表示装置を用いるようにしてもよい。なお、位置入力装置としての機能は、表示装置にタッチパネルを設けることで付加することができる。または、位置入力装置としての機能は、フォトセンサとも呼ばれる光電変換素子を表示装置の画素部に設けることでも、付加することができる。
図51(C)はノート型パーソナルコンピュータであり、筐体921、表示部922、キーボード923、ポインティングデバイス924等を有する。
図51(D)は電気冷凍冷蔵庫であり、筐体931、冷蔵室用扉932、冷凍室用扉933等を有する。
図51(E)はビデオカメラであり、第1筐体941、第2筐体942、表示部943、操作キー944、レンズ945、接続部946等を有する。操作キー944およびレンズ945は第1筐体941に設けられており、表示部943は第2筐体942に設けられている。そして、第1筐体941と第2筐体942とは、接続部946により接続されており、第1筐体941と第2筐体942の間の角度は、接続部946により変更が可能である。表示部943における映像を、接続部946における第1筐体941と第2筐体942との間の角度にしたがって切り替える構成としてもよい。
図51(F)は普通自動車であり、車体951、車輪952、ダッシュボード953、ライト954等を有する。