上記本願の第1の発明の導電性高分子組成物は、スチレンスルホン酸と、アクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとの共重合体の存在下で、チオフェンおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を水中または水と水混和性溶剤との混合物からなる水性液中で酸化重合することにより得られる導電性高分子組成物の分散液を乾燥することによって製造される。
すなわち、上記のような酸化重合によりチオフェンおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種が酸化重合されてπ共役系高分子が合成されるが、そのπ共役系高分子の合成時に、上記のスチレンスルホン酸と、アクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとの共重合体が、上記π共役系高分子にドーピングして、π共役系高分子に高い導電性が付与され、それによって、導電性高分子組成物が構成される。つまり、上記のπ共役系高分子とそれにドーピングした共重合体とで導電性高分子組成物が構成される。そして、この導電性高分子組成物には、後述するように、導電性付与剤やバインダを含有させるようにしてもよい。
そして、本願の第2の発明などにおけるスチレンスルホン酸も、第3の発明などにおけるスルホン化ポリエステルおよびフェノールスルホン酸ノボラック樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーアニオンも、上記共重合体と同様に、チオフェンおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種をモノマー成分とするπ共役系高分子の合成時に、該π共役系高分子にドーピングしていく。
本願の第2の発明の導電性高分子組成物は、下記(I)と(II)との存在下で、チオフェンおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を水中または水と水混和性溶剤との混合物からなる水性液中で酸化重合することにより得られる導電性高分子組成物の分散液を乾燥することによって製造される。
(I):スチレンスルホン酸と、アクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとの共重合体
(II):ポリスチレンスルホン酸
本願の第3の発明の導電性高分子組成物は、下記(I)と(II)と(III)との存在下で、チオフェンおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を水中または水と水混和性溶剤との混合物からなる水性液中で酸化重合することにより得られる導電性高分子組成物の分散液を乾燥することによって製造される。
(I):スチレンスルホン酸と、アクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとの共重合体
(II):ポリスチレンスルホン酸
(III):スルホン化ポリエステルおよびフェノールスルホン酸ノボラック樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーアニオン
本願の第4の発明の混合系の導電性高分子組成物は、下記(I)の存在下で、チオフェンおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を水中または水と水混和性溶剤との混合物からなる水性液中で酸化重合することによって得られる導電性高分子組成物の分散液と、下記(III)の存在下で、チオフェンおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を水中または水と水混和性溶剤との混合物からなる水性液中で酸化重合することによって得られる導電性高分子組成物の分散液とを混合し、得られた混合系の導電性高分子組成物の分散液を乾燥することによって製造される。
(I):スチレンスルホン酸と、アクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとの共重合体
(III):スルホン化ポリエステルおよびフェノールスルホン酸ノボラック樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーアニオン
本願の第5の発明の混合系の導電性高分子組成物は、下記(I)と(II)との存在下で、チオフェンおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を水中または水と水混和性溶剤との混合物からなる水性液中で酸化重合することによって得られる導電性高分子組成物の分散液と、下記(III)の存在下で、チオフェンおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を水中または水と水混和性溶剤との混合物からなる水性液中で酸化重合することによって得られる導電性高分子組成物の分散液とを混合し、得られた混合系の導電性高分子組成物の分散液を乾燥することによって製造される。
(I):スチレンスルホン酸と、アクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとの共重合体
(II):ポリスチレンスルホン酸
(III):スルホン化ポリエステルおよびフェノールスルホン酸ノボラック樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーアニオン
本発明の基礎をなす第1の発明においては、導電性高分子組成物の製造にあたって、スチレンスルホン酸と、アクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとの共重合体をドーパントとして用いている。このアクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーに属するものとしては、例えば、アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ドデシルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、3−アクリロイル−2−オキサゾリジノン、6−アクリルアミドヘキサン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−ドデシルアクリルアミド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、4−アクリロイルモルホリン、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのアクリル基を含む重合性モノマー、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド)、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドなどのメタクリル基を含む重合性モノマーなどが挙げられ、このアクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとしては、特にN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミドなどが好ましい。
本願の第1の発明において、上記のようなスチレンスルホン酸と、アクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとの共重合体をドーパントとして用いるのは、前記のように、ESRが低く、かつ耐熱性、耐湿熱性が優れていて高温高湿下における信頼性が高い電解コンデンサを製造するのに適した導電性高分子組成物や、導電性が高く、かつ耐熱性、耐湿熱性が優れた導電性フィルムを製造するのに適した導電性高分子組成物を得るためであるが、ドーパントとして用いる上記共重合体を合成するためのモノマーの一方の成分としてスチレンスルホン酸を用いるのは、そのスルホン酸部分でドーパントとして必要なアニオンを提供するためと共重合体に酸性を付与するためである。
そして、このスチレンスルホン酸と共重合させるモノマーとして、前記アクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーを用いるが、このアクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーは、スチレンスルホン酸が文字通りスルホン酸系モノマーであるのに対して、非スルホン酸系モノマーであり、スルホン酸系モノマーとそれらの非スルホン酸系モノマーとを共重合させるのは、それによって得られる共重合体の方が、スチレンスルホン酸のホモポリマー(つまり、ポリスチレンスルホン酸)より、ドーパントとして用いたときに、導電性が高く、かつ耐熱性、耐湿熱性が優れた導電性高分子組成物が得られるようになるからである。そして、スチレンスルホン酸をモノマー状態で用いるのではなく、高分子化して用いるのは、高分子ドーパントを用いて導電性高分子組成物を製造した場合は、水または溶剤に対する分散性または溶解性が良好で、また、脱ドープされにくい特性が得られるからである。
これまでにも、スチレンスルホン酸と、ヒドロキシメタクリレートやヒドロキシアクリレートとを共重合させて得られる共重合体を、導電性高分子組成物を製造する際のドーパントとして用いた例があるが、本発明のスチレンスルホン酸と、アクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとの共重合体をドーパントして製造した導電性高分子組成物の方が、それら先行技術の共重合体をドーパントとして製造した導電性高分子組成物より、例えば、耐湿熱性が優れるなど、周囲の環境に対する抵抗性が優れていて、周囲の環境による特性低下が少ないという長所を有している。
このスチレンスルホン酸と、アクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとの共重合体におけるスチレンスルホン酸と、アクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとの比率としては、モル比で、9.9:0.1〜0.1:9.9であることが好ましく、9.5:0.5〜4:6がより好ましく、9.5:0.5〜5:5がさらに好ましく、とりわけ9:1〜7:3が好ましい。これは、スチレンスルホン酸の比率が上記より少なくなると、導電性高分子組成物の導電性が低下するおそれがあり、逆にスチレンスルホン酸の比率が上記より多くなると、導電性高分子組成物の耐熱性、耐湿熱性が悪くなるおそれがあるためである。
そして、上記スチレンスルホン酸と、アクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとの共重合体は、その分子量が、重量平均分子量で5,000〜500,000程度のものが、水溶性およびドーパントとしての特性上から好ましく、重量平均分子量で40,000〜200,000程度のものがより好ましい。すなわち、上記共重合体の重量平均分子量が上記より小さい場合は、ドーパントとしての機能が低下し、その結果、導電性が高く、かつ耐熱性が優れた導電性高分子組成物が得られにくくなるおそれがあり、重量平均分子量が上記より大きくなると、水溶性が低下して、取扱性が悪くなるおそれがある。
導電性高分子組成物の製造にあたって、ドーパントとして使用する上記スチレンスルホン酸と、アクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとの共重合体の使用量は、チオフェンおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種に対して質量比で1:0.01〜1:20であることが好ましく、1:0.01〜1:20であることがより好ましく、1:0.1〜1:2であることがさらに好ましい。つまり、スチレンスルホン酸と、アクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとの共重合体の使用量が上記より少ない場合は、上記共重合体のドーパントとしての機能が充分に発揮できなくなるおそれがあり、また、上記共重合体の使用量が上記より多くなっても、その使用量の増加に伴う効果の増加がほとんど見られなくなるだけでなく、逆に得られる導電性高分子組成物の導電性が低下するおそれがある。
一般に、導電性高分子組成物を酸化重合によって製造するための重合性モノマーとしては、チオフェンまたはその誘導体、ピロールまたはその誘導体およびアニリンまたはその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーが用いられるが、本発明において、それらの中からチオフェンおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を用いるのは、それがドーパントとなる上記スチレンスルホン酸と、アクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとの共重合体との相性が良く、特に導電性の高い導電性高分子組成物を製造することができるからである。
上記チオフェンおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種におけるチオフェンの誘導体としては、例えば、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3−アルキルチオフェン、3−アルコキシチオフェン、3−アルキル−4−アルコキシチオフェン、3,4−アルキルチオフェン、3,4−アルコキシチオフェンや、上記の3,4−エチレンジオキシチオフェンをアルキル基で修飾したアルキル化エチレンジオキシチオフェンなどが挙げられ、そのアルキル基やアルコキシ基の炭素数は1〜16が好ましく、特に1〜4が好ましい。上記チオフェンやその誘導体は、それぞれ単独で用いることができるし、また、2種類以上を併用することもできる。
上記の3,4−エチレンジオキシチオフェンをアルキル基で修飾したアルキル化エチレンジオキシチオフェンについて詳しく説明すると、上記3,4−エチレンジオキシチオフェンやアルキル化エチレンジオキシチオフェンは、下記の一般式(1)で表される化合物に該当する。
そして、上記一般式(1)中のRが水素の化合物が、3,4−エチレンジオキシチオフェンであり、これをIUPAC名称で表示すると、「2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2,3−Dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、この化合物は、IUPAC名称で表示されるよりも、一般名称の「3,4−エチレンジオキシチオフェン」で表示されることが多いので、本書では、この「2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン」を「3,4−エチレンジオキシチオフェン」と表示したり、さらに簡略化して「エチレンジオキシチオフェン」と表示している。そして、上記一般式(1)中のRがアルキル基の場合、該アルキル基としては、炭素数が1〜4のもの、つまり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましく、それらを具体的に例示すると、一般式(1)中のRがメチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−メチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Methyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「メチル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。一般式(1)中のRがエチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−エチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Ethyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「エチル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。一般式(1)中のRがプロピル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−プロピル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Propyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「プロピル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。そして、一般式(1)中のRがブチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−ブチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Butyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「ブチル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。また、「2−アルキル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン」を、以下、簡略化して「アルキル化エチレンジオキシチオフェン」で表わす。そして、これらのアルキル化エチレンジオキシチオフェンの中でも、メチル化エチレンジオキシチオフェン、エチル化エチレンジオキシチオフェン、プロピル化エチレンジオキシチオフェン、ブチル化エチレンジオキシチオフェンが好ましい。
これらのアルキル化エチレンジオキシチオフェンも、それぞれ単独で用いることができるし、また、2種類以上を併用することもできる。さらに、これらのアルキル化エチレンジオキシチオフェンと3,4−エチレンジオキシチオフェンとを併用することもできる。
上記スチレンスルホン酸と、アクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとの共重合体を用いてのチオフェンおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化重合は、水中または水と水混和性溶剤との水溶液中で行われる。
上記水性液を構成する水混和性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、アセトニトリルなどが挙げられ、これらの水混和性溶剤の水との混合割合としては、水性液全体中の50質量%以下が好ましい。
化学酸化重合を行うにあたっての酸化剤としては、例えば、過硫酸塩が用いられるが、その過硫酸塩としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸カルシウム、過硫酸バリウムなどが用いられる。
化学酸化重合において、その重合時の条件は、特に限定されることはないが、化学酸化重合時の温度としては、5℃〜95℃が好ましく、10℃〜30℃がより好ましく、また、重合時間としては、1時間〜72時間が好ましく、8時間〜24時間がより好ましい。
上記のようにして得られる導電性高分子組成物は、重合直後、水中または水性液中に分散した状態で得られ、酸化剤としての過硫酸塩や触媒として用いた硫酸鉄塩やその分解物などを含んでいる。そこで、その不純物を含んでいる導電性高分子組成物の分散液を超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、遊星ボールミルなどの分散機にかけて不純物を分散させた後、カチオン交換樹脂で金属成分を除去することが好ましい。このときの導電性高分子組成物の粒径としては、動的光散乱法により測定した粒径で、100μm以下が好ましく、特に10μm以下が好ましく、10nm以上が好ましく、特に100nm以上が好ましい。その後、エタノール沈殿法、限外濾過法、陰イオン交換樹脂などにより、酸化剤や触媒の分解により生成したものを除去し、後述するように、必要に応じて、導電性向上剤やバインダを添加してもよい。
上記の導電性高分子組成物の分散液には、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または糖類を導電性向上剤として含有させてもよい。このように、導電性高分子組成物の分散液中に導電性向上剤を含有させておくと、該導電性高分子組成物の分散液を乾燥して得られる導電性高分子組成物の被膜などの導電性を向上させることができる。
これは、導電性向上剤を導電性高分子組成物の分散液に含有させておくことによって、導電性高分子組成物の分散液を乾燥して得られる導電性高分子組成物の被膜などの導電性を向上させるので、上記導電性高分子組成物を電解質として用いて製造した電解コンデンサのESRをより低くしたり、上記導電性高分子組成物を用いて製造した導電性フィルムや導電性布の表面抵抗値をより低くさせるものと考えられる。
上記の導電性向上剤としては、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または糖類が用いられるが、その沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ブタンジオール、γ一ブチロラクトン、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどが好ましく、また、糖類としては、例えば、エリスリトール、グルコース、マンノース、プルランなどが挙げられるが、この導電性向上剤としては、特にジメチルスルホキシドやブタンジオールが好ましい。なお、上記沸点が150℃以上の有機溶剤における沸点とは、常圧(つまり、1atm=1013.25hPa)下での沸点をいう。
このような導電性向上剤の添加量としては、分散液中の導電性高分子組成物に対して質量基準で5〜3,000%(すなわち、導電性高分子組成物100質量部に対して導電性向上剤が5〜3,000質量部)が好ましく、特に20〜700%が好ましい。導電性向上剤の添加量が上記より少ない場合は、導電性を向上させる作用が充分に発揮されなくなるおそれがあり、導電性向上剤の添加量が上記より多い場合は、分散液の乾燥に時間を要するようになり、また、かえって、導電性の低下を引き起こすおそれがある。
分散液中における導電性高分子組成物の含有量は、電解コンデンサや導電性フィルムなどの製造時における作業性に影響を与えるので、通常、0.5〜15質量%程度が好ましい。つまり、導電性高分子組成物の含有量が上記より少ない場合は、乾燥に時間を要するようになるおそれがあり、また、導電性高分子組成物の含有量が上記より多い場合は、分散液の粘度が高くなって、電解コンデンサや導電性フィルムなどの製造にあたっての作業性が低下するおそれがある。
また、導電性高分子組成物の分散液にバインダを添加しておくと、特に導電性フィルムや導電性布などの製造にあたって、基材や基布に対する導電性高分子組成物の親和性(なじみ性)や密着性を向上させることができるので好ましい。
上記バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリロニトリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック樹脂、スルホン化ポリエステル、スルホン化ポリアリル、スルホン化ポリビニル、スルホン化ポリスチレン、シランカップリング剤などが挙げられ、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、スルホン化ポリエステル、スルホン化ポリアリル、スルホン化ポリビニル、スルホン化ポリスチレンなどが好ましい。
上記のように、導電性高分子組成物の分散液にバインダを添加し、それを乾燥した場合、バインダも導電性高分子組成物中に含まれることになるが、導電性フィルムや導電性布などを製造した際に、その導電性は導電性高分子組成物に基づいて発現し、バインダは補助的なものにすぎないので、本書においては、用途上における要求特性の関係から、上記のように導電性高分子組成物の分散液に添加したバインダに基づいてバインダを含むようになった導電性高分子組成物もバインダを含まない導電性高分子組成物も厳密に区別することなく、同じ導電性高分子組成物という表現で取り扱っている。
本願に第2の発明においては、ドーパントとして、前記のように、(I)で示した上記スチレンスルホン酸と、アクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとの共重合体と、(II)で示したポリスチレンスルホン酸とを併用するが、このポリスチレンスルホン酸としては、重量平均分子量が10,000〜1,000,000のものが好ましい。
すなわち、上記ポリスチレンスルホン酸の重量平均分子量が10,000より小さい場合は、得られる導電性高分子組成物の導電性が低くなるおそれがある。また、上記ポリスチレンスルホン酸の重量平均分子量が1,000,000より大きい場合は、導電性高分子組成物の分散液の粘度が高くなり、使用しにくくなるおそれがある。そして、上記ポリスチレンスルホン酸としては、その重量平均分子量が上記範囲内で、20,000以上のものが好ましく、40,000以上のものがより好ましく、また、800,000以下のものが好ましく、300,000以下のものがより好ましい。
上記のように、ドーパントとして、スチレンスルホン酸と、アクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとの共重合体と、ポリスチレンスルホン酸とを併用することによって、上記共重合体の奏する特性に加えて、導電性高分子組成物の導電性をさらに向上させることができるが、それらの併用にあたって、上記共重合体と、ポリスチレンスルホン酸との比率としては、質量比1:0.01〜1:1が好ましい。
そして、このスチレンスルホン酸とアクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとの共重合体と、ポリスチレンスルホン酸とを併用する場合も、それらの使用量は、両者の合計でチオフェンおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種に対して、質量比で1:0.01〜1:20であることが好ましく、1:0.01〜1:2であることがより好ましい。
上記のように、(I)で示したスチレンスルホン酸と、アクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとの共重合体と(II)で示したポリスチレンスルホン酸と存在下で、チオフェンおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を酸化重合して導電性高分子組成物を製造する場合も、前記の第1の発明の場合、すなわち、スチレンスルホン酸と、アクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとの共重合体の存在下で、チオフェンおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を酸化重合する場合と同様に、水中または水性液中で行われ、同様に、化学酸化重合、電解酸化重合のいずれも採用でき、それらの重合時の条件も上記共重合体を用いてチオフェンおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を酸化重合する場合と同様の条件を採用することができえる。
そこで、上記(III)のスルホン化ポリエステルとフェノールスルホン酸ノボラック樹脂について説明すると、まず、上記スルホン化ポリエステルは、スルホイソフタル酸エステルやスルホテレフタル酸エステルなどのジカルボキシベンゼンスルホン酸ジエステルとアルキレングリコールとを酸化アンチモンや酸化亜鉛などの触媒の存在下で縮重合させたものであり、このスルホン化ポリエステルとしては、その重量平均分子量が5,000〜300,000のものが好ましい。
すなわち、スルホン化ポリエステルの重量平均分子量が5,000より小さい場合は、得られる導電性高分子組成物の導電性が低くなるおそれがある。また、スルホン化ポリエステルの重量平均分子量が300,000より大きい場合は、導電性高分子組成物の分散液の粘度が高くなり、導電性フィルムなどの作製にあたって使用しにくくなるおそれがある。そして、このスルホン化ポリエステルとしては、その重量平均分子量が上記範囲内で、10,000以上のものが好ましく、20,000以上のものがより好ましく、また、100,000以下のものが好ましく、80,000以下のものがより好ましい。
すなわち、上記フェノールスルホン酸ノボラック樹脂の重量平均分子量が5,000より小さい場合は、得られる導電性高分子組成物の導電性が低くなるおそれがある。また、上記フェノールスルホン酸ノボラック樹脂の重量平均分子量が500,000より大きい場合は、導電性高分子組成物の分散液の粘度が高くなり、電解コンデンサの作製にあたって使用しにくくなるおそれがある。そして、このフェノールスルホン酸ノボラック樹脂としては、その重量平均分子量が上記範囲内で、10,000以上のものがより好ましく、また、400,000以下のものが好ましく、80,000以下のものがより好ましい。
そして、上記スルホン化ポリエステルおよびフェノールスルホン酸ノボラック樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーアニオンを用いてのチオフェンおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化重合は、前記第1の発明における共重合体をドーパントとして用いての酸化重合と同様に、水中または水と水混和性溶剤との混合物からなる水性液中で行われ、同様に、化学酸化重合、電解酸化重合のいずれも採用でき、それらの重合時の条件も、前記第1の発明における共重合体をドーパントとして用いてチオフェンおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を酸化重合する場合と同様の条件を採用することができる。
本願の第3の導電性高分子組成物の製造にあたっては、前記のように、(I)で示した「スチレンスルホン酸と、アクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとの共重合体」と、(II)で示した「ポリスチレンスルホン酸」と、(III)で示した「スルホン化ポリエステルおよびフェノールスルホン酸ノボラック樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーアニオン」との存在下で、チオフェンおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を酸化重合するが、その場合、それら(I)と(II)と(III)との使用割合としては、(I)が5〜60質量%、(II)が10〜40質量%、(III)が10〜70質量%が好ましい。
本願の第3の発明と、第5の発明の場合とは、基本的に同じ導電性高分子組成物が得られるが、第5の発明のように、(I)と(II)とをドーパントとして導電性高分子組成物を得る工程と、(III)をドーパントとして導電性高分子組成物を得る工程とを分けて行う方が、第3の発明の場合より、多少、特性の良い導電性高分子組成物が得られる可能性がある。
次に、上記の導電性高分子組成物を電解質として用いて電解コンデンサを製造する例を説明する。上記導電性高分子組成物は、そのまま、つまり、固体状で電解コンデンサの製造に当って用いることができるが、水または水性液への分散液として用いる方が電解コンデンサの製造にあたっては適している。この導電性高分子組成物の分散液は、導電性高分子組成物を水または水性液に分散させてもよいが、導電性高分子組成物の製造が水中または水性液中で行われ、分散液の状態で得られるので、その導電性高分子組成物の分散液をそのまま用いればよい。
まず、上記の導電性高分子組成物の分散液をタンタル電解コンデンサ、ニオブ電解コンデンサ、積層型アルミニウム電解コンデンサなどの製造にあたって用いる場合、例えば、タンタル、ニオブ、アルミニウムから選択される弁金属の多孔体からなる陽極と、それらの弁金属の酸化被膜からなる誘電体層を有するコンデンサ素子を、上記導電性高分子組成物の分散液に浸漬し、取り出した後、乾燥して、導電性高分子組成物からなる電解質の層を形成するか、または、必要に応じて、上記の分散液への浸漬と乾燥する工程を繰り返すことによって、導電性高分子組成物からなる電解質の層を形成した後、カーボンペースト、銀ペーストを塗布し、乾燥した後、外装することによって、タンタル電解コンデンサ、ニオブ電解コンデンサ、積層型アルミニウム電解コンデンサなどを製造することができる。
また、非鉄塩系の有機スルホン酸塩をドーパントとして用い、重合性モノマー、酸化剤を含む液に、上記のコンデンサ素子を浸漬し、取り出した後、乾燥して重合を行い、その後、水に浸漬し、取り出し、洗浄した後、乾燥することによって、いわゆる「その場重合」で導電性高分子組成物を製造した後、それら全体を上記の導電性高分子組成物の分散液に浸漬し、取り出して乾燥する操作を繰り返して上記の導電性高分子組成物からなる電解質の層を形成してもよく、また、その逆の形態にしてもよい。
そして、そのようにして導電性高分子組成物で覆われたコンデンサ素子をカーボンペースト、銀ペーストで覆った後、外装することによって、タンタル電解コンデンサ、ニオブ電解コンデンサ、積層型アルミニウム電解コンデンサなどを製造することもできる。
また、上記の導電性高分子組成物の分散液を巻回型アルミニウム電解コンデンサの製造にあたって用いる場合、例えば、アルミニウム箔の表面をエッチング処理した後、化成処理を行って誘電体層を形成した陽極にリード端子を取り付け、また、アルミニウム箔からなる陰極にリード端子を取り付け、それらのリード端子付き陽極と陰極とをセパレータを介して巻回して作製したコンデンサ素子を上記の導電性高分子組成物の分散液に浸漬し、取り出した後、乾燥して、導電性高分子組成物からなる電解質の層を形成するか、または、必要に応じて、上記の分散液への浸漬と乾燥する工程を繰り返すことによって、導電性高分子組成物からなる電解質の層を形成した後、外装材で外装して、巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造することができる。
本発明の電解コンデンサの製造にあたっては、上記のように導電性高分子組成物のみを電解質とする以外に、上記導電性高分子組成物からなる電解質と電解液とを併用することができる。
上記電解液としては、特に特定のものに限られることなく、例えば、10質量%アジピン酸トリメチルアミンのエチレングリコール溶液(アジピン酸トリメチルアミンが10質量%溶解しているエチレングリコール溶液)などの従来から電解コンデンサの電解液として用いられているものをはじめ、各種のものを用いることができる。
そして、この電解液を導電性高分子組成物からなる電解質と併用して電解コンデンサを製造するときは、通常、コンデンサ素子に導電性高分子組成物からなる電解質層を形成した後、その導電性高分子組成物からなる電解質層を形成したコンデンサ素子を電解液に浸漬するか、あるいは電解液を上記電解質層を有するコンデンサ素子にスプレーなどで塗布する工程を経ることによって電解コンデンサが製造される。
前記のように、本発明の導電性高分子組成物は、高い導電性と優れた耐熱性、耐湿熱性を有している上に、透明性も高いので、電解コンデンサの電解質として用いる以外に、透明導電性フィルムや導電性布などの製造にあたって用いることができる。
例えば、本発明の導電性高分子組成物で導電性フィルムを製造するには、シート状の基材に前記の導電性高分子組成物の分散液を塗布するか、基材を導電性高分子組成物の分散液に浸漬し、取り出した後、乾燥して、導電性フィルムを形成し、その導電性フィルムを基材から剥離すればよい。
本発明の導電性高分子組成物を用いて導電性フィルムを製造するには、上記のように、シート状の基材に前記の導電性高分子組成物の分散液を塗布するか、基材を導電性高分子組成物の分散液に浸漬し、取り出した後、乾燥して、導電性フィルムを形成し、そのフィルムを基材から剥離すればよいが、むしろ、基材の一方の面または両面に形成した導電性フィルムを基材から剥がさずに、基材を支持材とした導電性シートとして使用に供する方が適している場合がある。
上記のような導電性フィルムや導電性布の製造にあたって、導電性高分子組成物の分散液に前記のようなバインダが添加されていると、基材や基布に対する導電性高分子組成物の密着性や親和性(なじみ性)を向上させることができるので好ましい。
併用の態様としては、導電性フィルムの場合、例えば、導電性高分子組成物と金属ナノワイヤーとを混合して複合導電性組成物とし、その複合導電性組成物で導電性フィルムを構成するか、または基材上に金属ナノワイヤーによるフィルムを形成し、その金属ナノワイヤーフィルム上に本発明の導電性高分子組成物を積層して導電性積層フィルムとする態様が採用できる。
上記のような複合導電性組成物とするには、例えば、本発明の導電性高分子組成物の分散液に金属ナノワイヤーを混合して導電性高分子組成物と金属ナノワイヤーとを含む分散液にし、それを乾燥すればよい。また、金属ナノワイヤーに関しても、分散液としたものが市販されているので、それを利用すればよい。
上記のような複合導電性組成物とする場合の導電性高分子組成物と金属ナノワイヤーとの比率は、金属ナノワイヤーに基づく高い導電性を低下させすぎない範囲が好ましく、質量比で0.01:1〜10:1が好ましく、0.1:1〜5:1がより好ましい。
上記のような複合導電性組成物のフィルム化は、例えば、ポリエステルシートなどのシート状の基材に、複合導電性組成物を含む分散液を塗布し、乾燥することによって行うのが好ましい。
上記の複合導電性組成物からなる導電性フィルムは、導電性高分子組成物の高い導電性に加えて、金属ナノワイヤーの有するさらに高い導電性が付加されているので、導電性高分子組成物のみで構成される導電性フィルムより導電性が高く、したがって、表面抵抗値がより低いという特性を有している。
上記のような複合導電性組成物とする場合、本発明の導電性高分子組成物は、導電性が高いことから、従来の導電性高分子組成物を用いていた場合に比べて、導電性がより高い複合導電性組成物が得られる。
また、基材上に形成した金属ナノワイヤーフィルム上に本発明の導電性高分子組成物を積層する導電性積層フィルムの製造にあたり、その金属ナノワイヤーフィルムの形成にあたっては、金属ナノワイヤーの分散液を使用することができる。すなわち、基材上に金属ナノワイヤーの分散液を塗布し、乾燥することによって、金属ナノワイヤーフィルムを形成することができる。
このようにして得られる導電性積層フィルムの場合も、本発明の導電性高分子組成物の導電性が高いことから、金属ナノワイヤーの有する高い導電性を大きく低下させることがないので、導電性が高く、かつフレキシブルなフィルムとすることができる。そして、このようにして製造される本発明の導電性積層フィルムは、その導電性が高く、かつフレキシブルであるという特性を生かして、タッチセンサーやタッチパネルなどに使用される透明電極フィルムなどとして好適に使用することができ、そのような透明電極フィルムにおいて、従来からのものに対して、より低抵抗なものにすることができる。
本発明の導電性高分子組成物や複合導電性組成物を用いて、導電性布を製造する場合、その基布としては、例えば、織布、不織布、マイクロファイバーなどが用いられる。そして、その導電性布の製造にあたっては、例えば、上記の基布に導電性高分子組成物の分散液または複合導電性組成物の分散液を含浸させ、それを乾燥することによって行われる。そのように得られる導電性布においては、導電性高分子組成物や複合導電性組成物は基布に保持されることになる。そして、そのようにして得られる導電性布は、本発明の導電性高分子組成物や複合導電性組成物の有する高い導電性と優れた耐熱性、耐湿熱性に基づき、導電性が高く、耐熱性、耐湿熱性が優れている。そして、上記導電性布は、そのような特性を生かして、例えば、生体認証用の電極などとして有効に使用することができる。
次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に例示のもののみに限定されることはない。なお、以下の実施例などにおいて、濃度や使用量を示す際の%は特にその基準を付記しないかぎり、質量基準による%である。
また、実施例に先立ち、実施例でドーパントとして用いるスチレンスルホン酸とアクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む重合性モノマーとの共重合体の合成例を合成例1〜12で示す。そして、比較例でドーパントとして用いる共重合体の合成例については、比較合成例1〜4で示す。
合成例1
共重合体〔スチレンスルホン酸:N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド=9:1(モル比)〕の合成
この合成例1では、使用開始時のモノマーがスチレンスルホン酸とN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドとであって、それらの比率がモル比で9:1の共重合体の合成について説明する。なお、以下の合成例などにおいても、共重合体の組成の表示にあたっては、使用開始時のモノマーのモル比で表示する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム111.3g(スチレンスルホン酸として98.9gであって、0.54モル)とN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド6.9g(0.06モル)とを添加した。そして、その溶液に酸化剤として、過硫酸アンモニウムを6g添加して、スチレンスルホン酸とN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂[アンバーライト120B(商品名)]を100g添加して、1時間攪拌機で攪拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドとの共重合体について、GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲル濾過クロマトグラフィーであるが、以下、「GPC」のみで示す)カラムを用いたHPLC(High Performance Liquid Chromatography:高速液体クロマトグラフィーであるが、以下、「HPLC」のみで示す)システムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、96,000であった。
合成例2
共重合体〔スチレンスルホン酸:N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド=7:3(モル比)〕の合成)
この合成例2では、スチレンスルホン酸とN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドとのモル比が7:3の共重合体の合成について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム86.6g(スチレンスルホン酸として76.9gであって、0.42モル)とN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド20.7g(0.18モル)とを添加した。そして、その溶液に酸化剤として、過硫酸アンモニウムを6g添加して、スチレンスルホン酸とN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂[アンバーライト120B(商品名)]を100g添加して、1時間攪拌機で攪拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、98,000であった。
合成例3
共重合体〔スチレンスルホン酸:N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド=5:5(モル比)〕の合成
この合成例3では、スチレンスルホン酸とN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドとのモル比が5:5の共重合体の合成について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム61.9g(スチレンスルホン酸として55.0gであって、0.30モル)とN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド34.5g(0.30モル)とを添加した。そして、その溶液に酸化剤として、過硫酸アンモニウムを6g添加して、スチレンスルホン酸とN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂[アンバーライト120B(商品名)]を100g添加して、1時間攪拌機で攪拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、90,000であった。
合成例4
共重合体〔スチレンスルホン酸:N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド=9:1(モル%))の合成
この合成例4では、スチレンスルホン酸とN−(ヒドロキシメチル)アクリルアミドとのモル比が9:1の共重合体の合成について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム111.3g(スチレンスルホン酸として98.9gであって、0.54モル)とN−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド6.1g(0.06モル)とを添加した。そして、その溶液に酸化剤として、過硫酸アンモニウムを6g添加して、スチレンスルホン酸とN−(ヒドロキシメチル)アクリルアミドとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂[アンバーライト120B(商品名)]を100g添加して、1時間攪拌機で攪拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とN−(ヒドロキシメチル)アクリルアミドとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、96,000であった。
合成例5
共重合体〔スチレンスルホン酸:N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド=7:3(モル比)〕の合成
この合成例5では、スチレンスルホン酸とN−(ヒドロキシメチル)アクリルアミドとのモル比が7:3の共重合体の合成について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム86.6g(スチレンスルホン酸として76.9gであって、0.42モル)とN−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド18.2g(0.18モル)とを添加した。そして、その溶液に酸化剤として、過硫酸アンモニウムを6g添加して、スチレンスルホン酸とN−(ヒドロキシメチル)アクリルアミドとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂[アンバーライト120B(商品名)]を100g添加して、1時間攪拌機で攪拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とN−(ヒドロキシメチル)アクリルアミドとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、91,000であった。
合成例6
共重合体〔スチレンスルホン酸:N−メチルメタクリルアミド=9:1(モル比)〕の合成
この合成例6では、スチレンスルホン酸とN−メチルメタクリルアミドとのモル比が9:1の共重合体の合成について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム111.3g(スチレンスルホン酸として98.9gであって、0.54モル)とN−メチルメタクリルアミド5.9g(0.06モル)とを添加した。そして、その溶液に酸化剤として、過硫酸アンモニウムを6g添加して、スチレンスルホン酸とN−メチルメタクリルアミドとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂[アンバーライト120B(商品名)]を100g添加して、1時間攪拌機で攪拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とN−メチルメタクリルアミドとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、102,000であった。
合成例7
共重合体〔スチレンスルホン酸:N−メチルメタクリルアミド=7:3(モル比)〕の合成
この合成例7では、スチレンスルホン酸とN−メチルメタクリルアミドとのモル比が7:3の共重合体の合成について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム86.6g(スチレンスルホン酸として76.9gであって、0.42モル)とN−メチルメタクリルアミド17.8g(0.18モル)とを添加した。そして、その溶液に酸化剤として、過硫酸アンモニウムを6g添加して、スチレンスルホン酸とN−メチルメタクリルアミドとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂[アンバーライト120B(商品名)]を100g添加して、1時間攪拌機で攪拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とN−メチルメタクリルアミドとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、97,000であった。
合成例8
共重合体〔スチレンスルホン酸:N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド=9:1(モル比)〕の合成
この合成例8では、スチレンスルホン酸とN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドとのモル比が9:1の共重合体の合成について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム111.3g(スチレンスルホン酸として98.9gであって、0.54モル)とN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド10.6g(0.06モル)とを添加した。そして、その溶液に酸化剤として、過硫酸アンモニウムを6g添加して、スチレンスルホン酸とN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂[アンバーライト120B(商品名)]を100g添加して、1時間攪拌機で攪拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、100,000であった。
合成例9
共重合体〔スチレンスルホン酸:N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド=7:3(モル比)〕の合成
この合成例9では、スチレンスルホン酸とN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドとのモル比が7:3の共重合体の合成について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム86.6g(スチレンスルホン酸として76.9gであって、0.42モル)とN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド31.9g(0.18モル)とを添加した。そして、その溶液に酸化剤として、過硫酸アンモニウムを6g添加して、スチレンスルホン酸とN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂[アンバーライト120B(商品名)]を100g添加して、1時間攪拌機で攪拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、97,000であった。
合成例10
共重合体〔スチレンスルホン酸:N−フェニルアクリルアミド=9.5:0.5(モル比)〕の合成
この合成例10では、スチレンスルホン酸とN−フェニルアクリルアミドとのモル比が9.5:0.5の共重合体の合成について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム117.5g(スチレンスルホン酸として104.4gであって、0.57モル)とN−フェニルアクリルアミド4.4g(0.03モル)とを添加した。そして、その溶液に酸化剤として、過硫酸アンモニウムを6g添加して、スチレンスルホン酸とN−フェニルアクリルアミドとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂[アンバーライト120B(商品名)]を100g添加して、1時間攪拌機で攪拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とN−フェニルアクリルアミドとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、99,000であった。
合成例11
共重合体〔スチレンスルホン酸:N−フェニルアクリルアミド=9:1(モル比)〕の合成
この合成例11では、スチレンスルホン酸とN−フェニルアクリルアミドとのモル比が9:1の共重合体の合成について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム111.3g(スチレンスルホン酸として98.9gであって、0.54モル)とN−フェニルアクリルアミド8.8g(0.06モル)とを添加した。そして、その溶液に酸化剤として、過硫酸アンモニウムを6g添加して、スチレンスルホン酸とN−フェニルアクリルアミドとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂[アンバーライト120B(商品名)]を100g添加して、1時間攪拌機で攪拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とN−フェニルアクリルアミドとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、103,000であった。
合成例12
共重合体〔スチレンスルホン酸:N−フェニルアクリルアミド=7:3(モル比)〕の合成
この合成例12では、スチレンスルホン酸とN−フェニルアクリルアミドとのモル比が7:3の共重合体の合成について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム86.6g(スチレンスルホン酸として76.9gであって、0.42モル)とN−フェニルアクリルアミド26.5g(0.18モル)とを添加した。そして、その溶液に酸化剤として、過硫酸アンモニウムを6g添加して、スチレンスルホン酸とN−フェニルアクリルアミドとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂[アンバーライト120B(商品名)]を100g添加して、1時間攪拌機で攪拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とN−フェニルアクリルアミドとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、88,000であった。
比較合成例1
共重合体〔スチレンスルホン酸:メタクリル酸ヒドロキシエチル=9:1(モル比)〕の合成
この比較合成例1では、スチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとのモル比が9:1の共重合体の合成について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム111.3g(スチレンスルホン酸として98.9gであって、0.54モル)とメタクリル酸ヒドロキシエチル7.8g(0.06モル)とを添加した。そして、その溶液に酸化剤として、過硫酸アンモニウムを6g添加して、スチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂[アンバーライト120B(商品名)]を100g添加して、1時間攪拌機で攪拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、93,000であった。
なお、この「比較合成例1」における「比較合成例」とは、前記のように、比較例でドーパントとして用いる共重合体の合成例を示すものであって、正確には、「比較例用合成例」とすべきであるが、本書では、一部簡略化して、「比較合成例」で示す。これは以下に示す「比較合成例」に関しても同様である。
比較合成例2
共重合体〔スチレンスルホン酸:メタクリル酸ヒドロキシエチル=7:3(モル比)〕の合成
この比較合成例2では、スチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとのモル比が7:3の共重合体の合成について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム86.6g(スチレンスルホン酸として76.9gであって、0.42モル)とメタクリル酸ヒドロキシエチル20.9g(0.18モル)とを添加した。そして、その溶液に酸化剤として、過硫酸アンモニウムを6g添加して、スチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂[アンバーライト120B(商品名)]を100g添加して、1時間攪拌機で攪拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、89,000であった。
比較合成例3
共重合体〔スチレンスルホン酸:3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン=9:1(モル比)〕の合成
この比較合成例3では、スチレンスルホン酸と3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン-アクリロキシプロピルトリメトキシシランとのモル比が9:1の共重合体の合成について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム111.3g(スチレンスルホン酸として98.9gであって、0.54モル)と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン14.1g(0.06モル)とを添加した。そして、その溶液に酸化剤として、過硫酸アンモニウムを6g添加して、スチレンスルホン酸と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂[アンバーライト120B(商品名)]を100g添加して、1時間攪拌機で攪拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、82,000であった。
比較合成例4
共重合体〔スチレンスルホン酸:3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン=7:3(モル比)〕の合成
この比較合成例4では、スチレンスルホン酸と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランとのモル比が7:3の共重合体の合成について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム86.6g(スチレンスルホン酸として76.9gであって、0.42モル)と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン42.2g(0.18モル)とを添加した。そして、その溶液に酸化剤として、過硫酸アンモニウムを6g添加して、スチレンスルホン酸と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂[アンバーライト120B(商品名)]を100g添加して、1時間攪拌機で攪拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、80,000であった。
次に、実施例の電解コンデンサの電解質を構成するにあたって用いる導電性高分子組成物の分散液の製造を製造例1〜30で示し、比較例の電解コンデンサの電解質を構成するにあたって用いる導電性高分子組成物の製造を比較製造例1〜3で示す。
製造例1
合成例1で得たスチレンスルホン酸とN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドとのモル比が9:1の共重合体の4%水溶液600gを内容積1Lのステンレス鋼製容器に入れ、そこに触媒として硫酸第一鉄・7水和物を0.3g添加して溶解した。その中にエチレンジオキシチオフェンを4mlゆっくり滴下した。ステンレス鋼製の攪拌バネで攪拌し、容器に陽極を取り付け、攪拌バネに陰極を取り付け、1mA/cm2の定電流で18時間電解酸化重合して、導電性高分子組成物を製造した。上記電解酸化重合後、水で4倍希釈した後、超音波ホモジナイザー[日本精機社製、US−T300(商品名)]で30分間分散処理を行った。
その後、オルガノ社のカチオン交換樹脂[アンバーライト120B(商品名)]を100g添加して、1時間攪拌機で撹拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
上記処理後の液を孔径が1μmのフィルターに通し、その通過液を限外濾過装置[ザルトリウス社製Vivaflow200(商品名)、分子量分画5万]で処理して、液中の遊離の低分子成分を除去した。この処理後の液を水で希釈して導電性高分子組成物の濃度を3%に調整し、その3%液40gに対し、導電性向上剤としてブタンジオールを4g添加して、導電性向上剤としてのブタンジオールを添加した導電性高分子組成物の分散液を得た。次いで、28%アンモニア水溶液でpH4.0に調整した。上記ブタンジオールの添加量は導電性高分子組成物に対して333%であった。
製造例2
合成例1で得た共重合体に代えて、合成例2で得たスチレンスルホン酸とN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドとのモル比が7:3の共重合体を用いた以外は、すべて製造例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。なお、この製造例2では、すべて製造例1と同様の操作を行って導電性高分子組成物の分散液を得ていることから、この製造例2の導電性高分子組成物の分散液には、製造例1の場合と同様に、ブタンジオールと28%アンモニア水溶液とが添加されている。そして、このようなブタンジオールと28%アンモニア水溶液との添加は、以下に示す製造例3〜30および比較製造例1〜3の導電性高分子組成物の分散液に対しても同様に行われる。
製造例3
合成例1で得た共重合体に代えて、合成例3で得たスチレンスルホン酸とN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドとのモル比が5:5の共重合体を用いた以外は、すべて製造例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例4
合成例1で得た共重合体に代えて、合成例4で得たスチレンスルホン酸とN−(ヒドロキシメチル)アクリルアミドとのモル比が9:1の共重合体を用いた以外は、すべて製造例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例5
合成例1で得た共重合体に代えて、合成例5で得たスチレンスルホン酸とN−(ヒドロキシメチル)アクリルアミドとのモル比が7:3の共重合体を用いた以外は、すべて製造例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例6
合成例1で得た共重合体に代えて、合成例6で得たスチレンスルホン酸とN−メチルメタクリルアミドとのモル比が9:1の共重合体を用いた以外は、すべて製造例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例7
合成例1で得た共重合体に代えて、合成例7で得たスチレンスルホン酸とN−メチルメタクリルアミドとのモル比が7:3の共重合体を用いた以外は、すべて製造例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例8
合成例1で得た共重合体に代えて、合成例8で得たスチレンスルホン酸とN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドとのモル比が9:1の共重合体を用いた以外は、すべて製造例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例9
合成例1で得た共重合体に代えて、合成例9で得たスチレンスルホン酸とN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドとのモル比が7:3の共重合体を用いた以外は、すべて製造例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例10
合成例1で得た共重合体に代えて、合成例10で得たスチレンスルホン酸とN−フェニルアクリルアミドとのモル比が9.5:0.5の共重合体を用いた以外は、すべて製造例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例11
合成例1で得た共重合体に代えて、合成例11で得たスチレンスルホン酸とN−フェニルアクリルアミドとのモル比が9:1の共重合体を用いた以外は、すべて製造例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例12
合成例1で得た共重合体に代えて、合成例12で得たスチレンスルホン酸とN−フェニルアクリルアミドとのモル比が7:3の共重合体を用いた以外は、すべて製造例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例13
製造例1で使用したエチレンジオキシチオフェン4mlに代えて、エチル化エチレンジオキシチオフェン4mlを用いた以外は、すべて製造例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例14
製造例1で使用したエチレンジオキシチオフェン4mlに代えて、エチレンジオキシチオフェン2mlとエチル化エチレンジオキシチオフェン2mlとを用いた以外は、すべて製造例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例15
製造例1で使用したエチレンジオキシチオフェン4mlに代えて、エチレンジオキシチオフェン2mlとブチル化エチレンジオキシチオフェン2mlとを用いた以外は、すべて製造例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例16
製造例11で使用したエチレンジオキシチオフェン4mlに代えて、エチル化エチレンジオキシチオフェン4mlを用いた以外は、すべて製造例11と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例17
製造例11で使用したエチレンジオキシチオフェン4mlに代えて、エチレンジオキシチオフェン2mlとエチル化エチレンジオキシチオフェン2mlとを用いた以外は、すべて製造例11と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例18
製造例11で使用したエチレンジオキシチオフェン4mlに代えて、エチレンジオキシチオフェン2mlとブチル化エチレンジオキシチオフェン2mlとを用いた以外は、すべて製造例11と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例19
合成例1で得た共重合体の4%水溶液600gに代えて、合成例1で得たスチレンスルホン酸とN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドとのモル比が9:1の共重合体の4%水溶液300gとテイカ社製ポリスチレンスルホン酸(重量平均分子量100,000)の4%水溶液300gとの混合液を用いた以外は、すべて製造例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例20
合成例1で得た共重合体の4%水溶液600gに代えて、合成例11で得たスチレンスルホン酸とN−フェニルアクリルアミドとのモル比が9:1の共重合体の4%水溶液300gとテイカ社製ポリスチレンスルホン酸(重量平均分子量100,000)の4%水溶液300gとの混合液を用いた以外は、すべて製造例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例21
合成例1で得た共重合体の4%水溶液600gに代えて、合成例1で得たスチレンスルホン酸とN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドとのモル比が9:1の共重合体の4%水溶液300gとテイカ社製ポリスチレンスルホン酸(重量平均分子量100,000)の4%水溶液225gとフェノールスルホン酸ノボラック樹脂[小西化学工業社製、重量平均分子量60,000で、一般式(2)におけるR1が水素のもの]の4%水溶液75gとの混合液を用いた以外は、すべて製造例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例22
この製造例22では、まず、製造例1で得た導電性高分子組成物の分散液と混合するためのスルホン化ポリエステルをドーパントとする導電性高分子組成物の分散液を次に示すようにして得た。
スルホン化ポリエステル[互応化学工業社製プラスコートZ−561(商品名)、重量平均分子量27,000]の4%水溶液200gを内容積1Lの容器に入れ、酸化剤として過硫酸アンモニウムを2g添加した後、攪拌機で攪拌して溶解した。次いで、硫酸第二鉄の40%水溶液を0.4g添加し、攪拌しながら、その中にエチレンジオキシチオフェン3mlを滴下し、24時間かけて、エチレンジオキシチオフェンの化学酸化重合を行って、導電性高分子組成物を製造した。
上記重合後、水で4倍に希釈した後、超音波ホモジナイザーで30分間分散処理を行った。その後、オルガノ社のカチオン交換樹脂[アンバーライトIR120B(商品名)]を100g添加して、1時間攪拌機で撹拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
上記処理後の液を孔径が1μmのフィルターに通し、その通過液を限外濾過装置[ザルトリウス社製Vivaflow200(商品名)、分子量分画5万]で処理して、液中の遊離の低分子成分を除去した。この処理後の液を水で希釈して導電性高分子組成物の濃度を3%に調整し、その3%液40gに対し、導電性向上剤としてブタンジオールを4g添加して、導電性向上剤としてのブタンジオールを添加した導電性高分子組成物の分散液を得た。上記ブタンジオールの添加量は導電性高分子組成物に対して333%であった。
このスルホン化ポリエステルをドーパントとする導電性高分子組成物の分散液40gと製造例1で得た導電性高分子組成物の分散液40gとを混合して、異なるドーパントを用いた導電性高分子組成物の分散液の混合液を得た。
製造例23
製造例1で得た導電性高分子組成物の分散液40gに代えて、製造例2で得た導電性高分子組成物の分散液40gを用いた以外は、すべて製造例22と同様の操作を行って、異なるドーパントを用いた導電性高分子組成物の分散液の混合液を得た。
製造例24
製造例1で得た導電性高分子組成物の分散液40gに代えて、製造例4で得た導電性高分子組成物の分散液40gを用いた以外は、すべて製造例22と同様の操作を行って、異なるドーパントを用いた導電性高分子組成物の分散液の混合液を得た。
製造例25
製造例1で得た導電性高分子組成物の分散液40gに代えて、製造例6で得た導電性高分子組成物の分散液40gを用いた以外は、すべて製造例22と同様の操作を行って、異なるドーパントを用いた導電性高分子組成物の分散液の混合液を得た。
製造例26
製造例1で得た導電性高分子組成物の分散液40gに代えて、製造例8で得た導電性高分子組成物の分散液40gを用いた以外は、すべて製造例22と同様の操作を行って、異なるドーパントを用いた導電性高分子組成物の分散液の混合液を得た。
製造例27
製造例1で得た導電性高分子組成物の分散液40gに代えて、製造例11で得た導電性高分子組成物の分散液40gを用いた以外は、すべて製造例22と同様の操作を行って、異なるドーパントを用いた導電性高分子組成物の分散液の混合液を得た。
製造例28
製造例1で得た導電性高分子組成物の分散液40gに代えて、製造例12で得た導電性高分子組成物の分散液40gを用いた以外は、すべて製造例22と同様の操作を行って、異なるドーパントを用いた導電性高分子組成物の分散液の混合液を得た。
製造例29
製造例1で得た導電性高分子組成物の分散液40gに代えて、製造例14で得た導電性高分子組成物の分散液40gを用いた以外は、すべて製造例22と同様の操作を行って、異なるドーパントを用いた導電性高分子組成物の分散液の混合液を得た。
製造例30
製造例1で得た導電性高分子組成物の分散液40gに代えて、製造例17で得た導電性高分子組成物の分散液40gを用いた以外は、すべて製造例22と同様の操作を行って、異なるドーパントを用いた導電性高分子組成物の分散液の混合液を得た。
比較製造例1
合成例1で得たスチレンスルホン酸とN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドとのモル比9:1の共重合体の4%水溶液600gに代えて、ポリスチレンスルホン酸(テイカ社製、重量平均分子量100,000)の4%水溶液600gを用いた以外は、すべて製造例1と同様の操作を行って、導電性向上剤としてのブタンジオールを添加した導電性高分子組成物の分散液を得た。なお、この比較製造例1やそれに続く比較製造例2〜3は、比較例の電解コンデンサの電解質を構成するにあたって使用する導電性高分子組成物の分散液の製造例を示すものであり、正確には、比較例用製造例というべきであるが、簡略化して、上記のように、比較製造例1、比較製造例2〜3という。
比較製造例2
合成例1で得たスチレンスルホン酸とN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドとのモル比9:1の共重合体の4%水溶液600gに代えて、ポリスチレンスルホン酸(テイカ社製、重量平均分子量100,000)の4%水溶液300gとフェノールスルホン酸ノボラック樹脂[小西化学工業社製、重量平均分子量60,000で、一般式(2)におけるR1が水素のもの]の4%水溶液300gとの混合液600gを用いた以外は、すべて製造例1と同様の操作を行って、導電性向上剤としてのブタンジオールを添加した導電性高分子組成物の分散液を得た。
比較製造例3
合成例1で得た共重合体に代えて、比較合成例1で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとのモル比が9:1の共重合体を用いた以外は、すべて製造例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
次に電解コンデンサの実施例を示すが、その実施例のうちの実施例1〜40は巻回型アルミニウム電解コンデンサに関し、実施例41〜50はタンタル電解コンデンサに関し、実施例51〜60は積層型アルミニウム電解コンデンサに関するものである。
[巻回型アルミニウム電解コンデンサでの評価(1)]
実施例1〜20および比較例1〜3
この実施例1〜20および比較例1〜3では、以下に示すように巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造して、その特性を評価する。
アルミニウム箔の表面をエッチング処理した後、化成処理を行って誘電体層を形成した陽極にリード端子を取り付け、また、アルミニウム箔からなる陰極にリード端子を取り付け、それらのリード端子付き陽極と陰極とをセパレータを介して巻回して、コンデンサ素子を作製した。
上記コンデンサ素子を実施例1〜20および比較例1〜3用にそれぞれ20個ずつ用意し、それらコンデンサ素子を製造例1〜20および比較製造例1〜3の導電性高分子組成物の分散液にそれぞれ別々に10分間浸漬し、取り出した後、150℃で30分間乾燥した。これらの操作を3回繰り返すことにより導電性高分子組成物からなる電解質の層を形成した。これを外装材で外装して、実施例1〜20および比較例1〜3の巻回型アルミニウム電解コンデンサを計20個ずつ製造した。
上記のようにして製造した実施例1〜20および比較例1〜3の巻回型アルミニウム電解コンデンサについて、ESRおよび静電容量を測定し、かつ、漏れ電流を測定し、漏れ電流不良の発生を調べた。その結果を使用した導電性高分子組成物の分散液の種類と共に表1に示す。なお、ESR,静電容量および漏れ電流の測定方法ならびに漏れ電流不良の発生の評価方法は次の通りである。
ESR:
HEWLETT PACKARD社製のLCRメーター(4284A)を用い、25℃の条件下で、100kHzで測定する。
静電容量:
HEWLETT PACKARD社製のLCRメーター(4284A)を用い、25℃の条件下で、120Hzで測定する。
漏れ電流:
巻回型アルミニウム電解コンデンサに、25℃で35Vの定格電圧を60秒間印加した後、デジタルオシロスコープにて漏れ電流を測定する。
漏れ電流不良の発生:
上記漏れ電流測定で、漏れ電流が100μA以上のものは、漏れ電流不良が発生していると判断する。
上記の測定は、各試料とも、20個ずつについて行い、ESRに関して表1に示す数値は、それら20個の平均値を求め、小数点第2位を四捨五入して示したものであり、静電容量に関して表1に示す数値は、それら20個の平均値を求め、小数点以下を四捨五入して示したものである。また、漏れ電流不良の発生の有無を調べた結果の表1および表2への表示にあたっては、試験に供した全コンデンサ個数を分母に示し、漏れ電流不良の発生があったコンデンサ個数を分子に示す態様で「漏れ電流不良発生個数」として表示する。
また、上記特性評価後の実施例1〜20および比較例1〜3の巻回型アルミニウム電解コンデンサ(それぞれ10個ずつ)に35Vの定格電圧をかけながら、85℃/85%(上記の85%は相対湿度が85%であることを示しており、これは以下においても同様である)の恒温槽中に静電状態で貯蔵し、300時間後に、前記と同様に、ESRおよび静電容量の測定を行った。その貯蔵期間中に、漏れ電流が500μAを超えたものに関しては、ショート不良(短絡発生不良)とした。その結果を表2に前記表1の場合と同様の態様で示す。ただし、ショート不良に関しては、試験に供した全コンデンサ個数を分母に示し、ショート不良が発生したコンデンサ個数を分子に示す態様で表示した。
前記の表1に示すように、実施例1〜20の巻回型アルミニウム電解コンデンサ(以下、巻回型アルミニウム電解コンデンサを簡略化して、「コンデンサ」と表示する場合がある)は、比較例1〜3のコンデンサに比べて、ESRが低かった(つまり、ESRが小さかった)。また、表2に示すように、85℃85%の恒温槽中で300時間貯蔵後も、実施例1〜20のコンデンサは、比較例1〜3のコンデンサに比べて、ESRが低く、高温高湿下での貯蔵によるESRの増加が少なく、高温高湿下の使用での信頼性が高いことを示していた。
[巻回型アルミニウム固体電解コンデンサでの評価(2)]
実施例21〜40および比較例4〜6
この実施例21〜40および比較例4〜6では、導電性高分子組成物からなる電解質と電解液とを併用した巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造して、その特性を評価する。
アルミニウム箔の表面をエッチング処理した後、化成処理を行って誘電体層を形成した陽極にリード端子を取り付け、また、アルミニウム箔からなる陰極にリード端子を取り付け、それらのリード端子付き陽極と陰極とをセパレータを介して巻回して、コンデンサ素子を作製した。
上記コンデンサ素子を実施例21〜40および比較例4〜6用にそれぞれ20個ずつ用意し、それらコンデンサ素子を製造例1〜20および比較製造例1〜3の導電性高分子組成物の分散液にそれぞれ別々に10分間浸漬し、取り出した後、150℃で30分間乾燥した。これらの操作を2回繰り返すことにより導電性高分子組成物からなる電解質の層を形成した。その後、電解液としての10%アジピン酸トリメチルアミンのエチレングリコール溶液(アジピン酸トリメチルアミンが10%溶解しているエチレングリコール溶液)に上記コンデンサ素子を10分間浸漬し、取り出した後、これを外装材で外装して、実施例21〜40および比較例4〜6の巻回型アルミニウム電解コンデンサを計20個ずつ製造した。
上記のようにして製造した実施例21〜40および比較例4〜6の巻回型アルミニウム電解コンデンサについて、実施例1と同様に、ESRおよび静電容量を測定し、かつ、漏れ電流を測定し、漏れ電流不良の発生を調べた。その結果を表3に前記表1の場合と同様の態様で示す。
また、上記特性評価後の実施例21〜40および比較例4〜6の巻回型アルミニウム電解コンデンサ(それぞれ10個ずつ)に35Vの定格電圧をかけながら、85℃85%の恒温槽中に静電状態で貯蔵し、500時間後に、前記と同様に、ESRおよび静電容量の測定を行った。その貯蔵期間中に、漏れ電流が500μAを超えたものに関しては、ショート不良とした。その結果を表4に前記表2の場合と同様の態様で示す。
前記の表3に示すように、実施例21〜40の巻回型アルミニウム電解コンデンサ(以下、巻回型アルミニウム電解コンデンサを簡略化して、「コンデンサ」と表示する場合がある)は、比較例4〜6のコンデンサに比べて、ESRが低かった(つまり、ESRが小さかった)。また、表4に示すように、85℃85%の恒温槽中に500時間貯蔵後も、実施例21〜40のコンデンサは、比較例4〜6のコンデンサに比べて、ESRが低く、高温高湿下での貯蔵によるESRの増加が少なく、高温高湿下の使用での信頼性が高いことを示していた。
[タンタル電解コンデンサでの評価]
実施例41
この実施例41やそれに続く実施例42〜50および比較例7〜9では、タンタル電解コンデンサを製造して、その特性を評価する。
タンタル焼結体を濃度が1%のリン酸水溶液に浸漬した状態で、35Vの電圧を印加することによって化成処理を行い、タンタル焼結体の表面に酸化被膜を形成して誘電体層を構成して、コンデンサ素子を作製した。
上記コンデンサ素子を濃度が35%のエチレンジオキシチオフェン溶液のエタノール溶液に浸漬し、1分後に取り出し、5分間放置した。その後、あらかじめ用意しておいた濃度が50%のフェノールスルホン酸ブチルアミン水溶液(pH5)と濃度が30%の過硫酸アンモニウム水溶液とを質量比1:1で混合した混合物からなる酸化剤兼ドーパント溶液中に浸漬し、30秒後に取り出し、室温で30分間放置した後、50℃で10分間加熱して、重合を行った。重合後、水中に上記コンデンサ素子を浸漬し、30分間放置した後、取り出して70℃で30分間乾燥した。この操作を6回繰り返して、コンデンサ素子上にエチレンジオキシチオフェンをモノマー成分とするπ共役系高分子にドーパントのフェノールスルホン酸ブチルアミンがドーピングしてなる導電性高分子組成物からなる電解質の層を形成した。
上記のようにして、いわゆる「その場重合」による導電性高分子組成物からなる電解質の層を形成したコンデンサ素子を製造例21で得た導電性高分子組成物の分散液に浸漬し、30秒後に取り出し、150℃で30分間乾燥した。この操作を3回繰り返した後、150℃で60分間放置して、本発明に係る導電性高分子組成物からなる電解質の層を形成した。その後、カーボンペースト、銀ペーストで上記電解質層を覆ってタンタル電解コンデンサを製造した。
実施例42
製造例21の導電性高分子組成物の分散液に代えて、製造例22の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例41と同様の操作を行って、タンタル電解コンデンサを製造した。
実施例43
製造例21の導電性高分子組成物の分散液に代えて、製造例23の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例41と同様の操作を行って、タンタル電解コンデンサを製造した。
実施例44
製造例21の導電性高分子組成物の分散液に代えて、製造例24の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例41と同様の操作を行って、タンタル電解コンデンサを製造した。
実施例45
製造例21の導電性高分子組成物の分散液に代えて、製造例25の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例41と同様の操作を行って、タンタル電解コンデンサを製造した。
実施例46
製造例21の導電性高分子組成物の分散液に代えて、製造例26の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例41と同様の操作を行って、タンタル電解コンデンサを製造した。
実施例47
製造例21の導電性高分子組成物の分散液に代えて、製造例27の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例41と同様の操作を行って、タンタル電解コンデンサを製造した。
実施例48
製造例21の導電性高分子組成物の分散液に代えて、製造例28の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例41と同様の操作を行って、タンタル電解コンデンサを製造した。
実施例49
製造例21の導電性高分子組成物の分散液に代えて、製造例29の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例41と同様の操作を行って、タンタル電解コンデンサを製造した。
実施例50
製造例21の導電性高分子組成物の分散液に代えて、製造例30の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例41と同様の操作を行って、タンタル電解コンデンサを製造した。
比較例7
製造例21の導電性高分子組成物の分散液に代えて、比較製造例1の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例41と同様の操作を行って、タンタル電解コンデンサを製造した。
比較例8
製造例21の導電性高分子組成物の分散液に代えて、比較製造例2の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例41と同様の操作を行って、タンタル電解コンデンサを製造した。
比較例9
製造例21の導電性高分子組成物の分散液に代えて、比較製造例3の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例41と同様の操作を行って、タンタル電解コンデンサを製造した。
上記のように製造した実施例41〜50および比較例7〜9のタンタル電解コンデンサについて、前記と同様に、そのESRおよび静電容量を測定した。その結果を使用した導電性高分子組成物の分散液の種類と共に表5に示す。なお、ESRおよび静電容量の測定においては、いずれの試料も、10個ずつを用い、表5に示すESR値は、それら10個の平均値を求め、小数点第2位を四捨五入して示したものであり、表5に静電容量値は、それら10個の平均値を求め、小終点以下を四捨五入して示したものである。
また、上記実施例41〜50および比較例7〜9のタンタル電解コンデンサをそれぞれ10個ずつ、85℃85%で300時間貯蔵した後、前記と同様に、ESRおよび静電容量を測定した。その結果を表6に前記表5と同様の態様で示す。
前記の表5に示すように、実施例41〜50のタンタル電解コンデンサ(以下、タンタル電解コンデンサを、簡略化して「コンデンサ」と表示する場合がある)は、比較例7〜9のコンデンサに比べて、ESRが低く、コンデンサとしての特性が優れていた。また、表6に示すように、85℃85%で300時間貯蔵後も、実施例41〜50のコンデンサは、比較例7〜9のコンデンサに比べて、ESRが低く、高温高湿下での貯蔵によるESRの増加が少なく、高温高湿下の使用での信頼性が高いことを示していた。
[積層型アルミニウム電解コンデンサでの評価]
実施例51〜60および比較例10〜12
この実施例51〜60および比較例10〜12では、以下に示すように積層型アルミニウム電解コンデンサを製造して、その特性を評価する。
実施例51
縦10mm×横3.3mmのアルミニウムエッチド箔について、縦方向の一方の端から4mmの部分と、他方の端から5mmの部分とに分けるように、上記箔の横方向に幅1mmでポリイミド溶液を塗布し、乾燥した。次に、上記アルミニウムエッチド箔の縦方向の片端(だだし、前記他方の端)から5mmの部分の、該片端から2mmの箇所に、陽極としての銀線を取り付けた。また、上記箔の縦方向の片端(だだし、前記一方の端)から4mmの部分(4mm×3.3mm)を、濃度が10%のアジピン酸アンモニウム水溶液を用いて化成処理を行って誘電体層を形成し、設定静電容量が25μF以上、設定ESRが10mΩ以下のコンデンサ素子を作製した。
次に、上記コンデンサ素子を製造例1の導電性高分子組成物の分散液に浸漬し、1分後に取り出し、120℃で10分間乾燥する操作を3回繰り返した。その後、酸化防止剤として販売されているテイカトロンKA100(フェノールスルホン酸塩)をエタノールと水を容量比で等量混合した混合液に濃度5%になるように溶解した溶液に上記コンデンサ素子を浸漬し、1分後に取り出し、120℃で5分間乾燥した。その後、製造例22の導電性高分子組成物の分散液に上記コンデンサ素子を浸漬し、1分後に取り出し、120℃で30分間乾燥した。その後、カーボンペーストおよび銀ペーストで導電性高分子組成物層からなる電解質層を覆い、縦方向の端部から3mmの箇所に陰極としての銀線を取り付け、さらにエポキシ樹脂で外装し、エージング処理を行って、積層型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
実施例52
製造例1の導電性高分子組成物の分散液に代えて、製造例2の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例51と同様の操作を行って、積層型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
実施例53
製造例1の導電性高分子組成物の分散液に代えて、製造例4の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例51と同様の操作を行って、積層型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
実施例54
製造例1の導電性高分子組成物の分散液に代えて、製造例6の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例51と同様の操作を行って、積層型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
実施例55
製造例1の導電性高分子組成物の分散液に代えて、製造例8の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例51と同様の操作を行って、積層型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
実施例56
製造例1の導電性高分子組成物の分散液に代えて、製造例11の導電性高分子組成物の分散液を用い、かつ、製造例22の導電性高分子組成物の分散液に代えて、製造例23の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例51と同様の操作を行って、積層型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
実施例57
製造例1の導電性高分子組成物の分散液に代えて、製造例12の導電性高分子組成物の分散液を用い、かつ、製造例22の導電性高分子組成物の分散液に代えて、製造例25の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例51と同様の操作を行って、積層型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
実施例58
製造例1の導電性高分子組成物の分散液に代えて、製造例14の導電性高分子組成物の分散液を用い、かつ、製造例22の導電性高分子組成物の分散液に代えて、製造例26の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例51と同様の操作を行って、積層型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
実施例59
製造例1の導電性高分子組成物の分散液に代えて、製造例17の導電性高分子組成物の分散液を用い、かつ、製造例22の導電性高分子組成物の分散液に代えて、製造例27の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例51と同様の操作を行って、積層型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
実施例60
製造例1の導電性高分子組成物の分散液に代えて、製造例20の導電性高分子組成物の分散液を用い、かつ、製造例22の導電性高分子組成物の分散液に代えて、製造例29の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例51と同様の操作を行って、積層型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例10
製造例1の導電性高分子組成物の分散液に代えて、比較製造例1の導電性高分子組成物の分散液を用い、かつ、製造例22の導電性高分子組成物の分散液に代えて、比較製造例1の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例51と同様の操作を行って、積層型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例11
製造例1の導電性高分子組成物の分散液に代えて、比較製造例2の導電性高分子組成物の分散液を用い、かつ、製造例22の導電性高分子組成物の分散液に代えて、比較製造例2の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例51と同様の操作を行って、積層型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例12
製造例1の導電性高分子組成物の分散液に代えて、比較製造例3の導電性高分子組成物の分散液を用い、かつ、製造例22の導電性高分子組成物の分散液に代えて、比較製造例3の導電性高分子組成物の分散液を用いた以外は、すべて実施例51と同様の操作を行って、積層型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
上記のように製造した実施例51〜60および比較例10〜12の積層型アルミニウム電解コンデンサについて、前記と同様に、そのESRおよび静電容量を測定した。その結果を使用した導電性高分子組成物の分散液の種類と共に表7に示す。ただし、使用した導電性高分子組成物の分散液の表7への表示にあたっては、スペース上の関係で、「導電性高分子組成物の分散液」を簡略化して「分散液」で表示する。また、ESRおよび静電容量の測定においては、いずれの試料も、10個ずつを用い、表7に示すESR値および静電容量値は、それら10個の平均値を求め、小数点第2位を四捨五入して示したものである。
また、上記実施例51〜60および比較例10〜12の積層型アルミニウム電解コンデンサをそれぞれ10個ずつ、85℃85%で100時間貯蔵した後、前記と同様に、ESRおよび静電容量を測定した。その結果を表8に前記表7と同様の態様で示す。
前記の表7に示すように、実施例51〜60の積層型アルミニウム電解コンデンサ(以下、積層型アルミニウム電解コンデンサを、簡略化して「コンデンサ」と表示する場合がある)は、比較例10〜12のコンデンサに比べて、ESRが低く、コンデンサとしての特性が優れていた。また、実施例51〜60のコンデンサは、表8に示すように、85℃85%で100時間貯蔵後も、比較例10〜12のコンデンサに比べて、ESRが低く、高温高湿下での貯蔵によるESRの増加が少なく、高温高湿下の使用での信頼性が高いことを示していた。
次に、実施例の導電性フィルムを構成するにあたって用いる導電性高分子組成物の分散液の製造を製造例31〜38で示し、比較例の導電性フィルムを構成するにあたって用いる導電性高分子組成物の分散液の製造を比較製造例4〜8で示す。
製造例31
合成例1で得たスチレンスルホン酸とN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドとのモル比が9:1の共重合体の4%水溶液600gを内容積1Lのステンレス鋼製容器に入れ、そこに触媒として硫酸第一鉄・7水和物を0.3g添加して溶解した。その中にエチレンジオキシチオフェンを4mlゆっくり滴下した。ステンレス鋼製の攪拌バネで攪拌し、容器に陽極を取り付け、攪拌バネに陰極を取り付け、1mA/cm2の定電流で18時間電解酸化重合して、導電性高分子組成物を製造した。上記電解酸化重合後、水で4倍希釈した後、超音波ホモジナイザー[日本精機社製、US−T300(商品名)]で30分間分散処理を行った。
その後、オルガノ社のカチオン交換樹脂[アンバーライト120B(商品名)]を100g添加して、1時間攪拌機で撹拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
上記処理後の液を孔径が1μmのフィルターに通し、その通過液を限外濾過装置[ザルトリウス社製Vivaflow200(商品名)、分子量分画5万]で処理して、液中の遊離の低分子成分を除去した。この処理後の液を水で希釈して導電性高分子組成物の濃度を1.5%に調整し、その1.5%液40gに対し、導電性向上剤として1,3−プロパンジオールを4g添加して、導電性向上剤としての1,3−プロパンジオールを添加した導電性高分子の分散液を得た。上記1,3−プロパンジオールの添加量は導電性高分子に対して666%であった。このような1,3−プロパンジオールの添加は、以下に示す製造例31〜38及び比較製造例7〜11の導電性高分子組成物の分散液に対しても同様に行われる。
製造例32
合成例1で得た共重合体に代えて、合成例2で得たスチレンスルホン酸とN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドとのモル比が7:3の共重合体を用いた以外は、すべて製造例31と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例33
合成例1で得た共重合体に代えて、合成例4で得たスチレンスルホン酸とN−(ヒドロキシメチル)アクリルアミドとのモル比が9:1の共重合体を用いた以外は、すべて製造例31と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例34
合成例1で得た共重合体に代えて、合成例6で得たスチレンスルホン酸とN−メチルメタクリルアミドとのモル比が9:1の共重合体を用いた以外は、すべて製造例31と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例35
合成例1で得た共重合体に代えて、合成例8で得たスチレンスルホン酸とN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドとのモル比が9:1の共重合体を用いた以外は、すべて製造例31と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例36
合成例1で得た共重合体に代えて、合成例10で得たスチレンスルホン酸とN−フェニルアクリルアミドとのモル比が9.5:0.5の共重合体を用いた以外は、すべて製造例31と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例37
合成例1で得た共重合体に代えて、合成例11で得たスチレンスルホン酸とN−フェニルアクリルアミドとのモル比が9:1の共重合体を用いた以外は、すべて製造例31と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
製造例38
合成例1で得た共重合体に代えて、合成例12で得たスチレンスルホン酸とN−フェニルアクリルアミドとのモル比が7:3の共重合体を用いた以外は、すべて製造例31と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
比較製造例4
合成例1で得た共重合体に代えて、ポリスチレンスルホン酸(テイカ社製、重量平均分子量100,000)を用いた以外は、すべて製造例31と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
比較製造例5
合成例1で得た共重合体に代えて、比較合成例1で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとのモル比が9:1の共重合体を用いた以外は、すべて製造例31と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
比較製造例6
合成例1で得た共重合体に代えて、比較合成例2で得たスチレンスルホン酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルとのモル比が7:3の共重合体を用いた以外は、すべて製造例31と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
比較製造例7
合成例1で得た共重合体に代えて、比較合成例3で得たスチレンスルホン酸と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランとのモル比が9:1の共重合体を用いた以外は、すべて製造例31と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
比較製造例8
合成例1で得た共重合体に代えて、比較合成例4で得たスチレンスルホン酸と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランとのモル比が7:3の共重合体を用いた以外は、すべて製造例31と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
〔透明導電性フィルムでの評価〕
実施例61
この透明導電性フィルムでの評価では、上記製造例31に記載の1,3−プロパンジオール添加後の導電性高分子組成物の分散液44gにバインダとしてスルホン化ポリエステル〔互応化学工業社製プラスコートZ−565(商品名)〕の20%水溶液を9g、メタノールを20g添加して、1時間攪拌機で撹拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過して、製造例31の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料を調製した。なお、この透明導電性フィルム製造用塗料を簡略化して「透明導電性フィルム用塗料」という場合がある。本書では、製造例31〜38などの導電性高分子組成物の分散液とそれにバインダを添加したものとを区別するために、後者を「透明導電性フィルム用塗料」という表現で表しているが、この「透明導電性フィルム用塗料」も導電性高分子組成物の分散液の一種であることには変わりはない。
透明導電性フィルム製造時の基材となる透明ポリエステルシートとしては、東洋紡績社製コスモシャインA4300(商品名、厚さ188μm、両面易接着処理、全光線透過率92.3%、Haze0.9%)を用い、この透明ポリエステルシートに上記製造例31の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料をバーコーターNo.06(膜厚13.74μm)で塗布し、130℃で90秒間乾燥して、透明導電性フィルムを製造した。
実施例62〜68
まず、製造例32〜38の導電性高分子組成物の分散液のそれぞれに、実施例61の場合と同様にバインダとしてスルホン化ポリエステルを添加して、製造例32〜38の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料を調製した。
そして、その上で、実施例61の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料に代えて、製造例32〜38の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料をそれぞれ別々に用いた以外は、実施例61と同様にして、実施例63〜68の透明導電性フィルムを製造した。
比較例13〜17
この比較例13〜17においても、比較製造例4〜8の導電性高分子組成物の分散液のそれぞれに、実施例61と同様にバインダとしてスルホン化ポリエステルを添加して、比較製造例4〜8の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料を調製した。
そして、その上で、製造例31の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料に代えて、比較製造例4〜8の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料をそれぞれ別々に用いた以外は、実施例61と同様にして、比較例13〜17の透明導電性フィルムを製造した。
上記のようにして製造した実施例61〜68の透明導電性フィルム(簡略化して、「導電性フィルム」という場合がある)および比較例13〜17の導電性フィルムについて、表面抵抗値、全光線透過率およびHaze(曇価)を測定し、その結果を初期特性値として後記の表9に使用した透明導電性フィルム製造用塗料の種類と共に示す。ただし、上記透明導電性フィルム製造用塗料の種類はそれらのベースとして使用した導電性高分子組成物の分散液の製造例番号や比較製造例番号で示す。これは後記の表10においても同様である。なお、表面抵抗値、全光線透過率、Hazeの測定は、それぞれの導電性フィルムを4cm×8cmの長方形に切り出し、全光線透過率、Hazeの測定は次に示す通りに行った。
表面抵抗値:
三菱化学アナリテック社製ロレスタ−GP〔MCP−T610型、直列4探針プローブ(ASP)〕を用いて温度25℃で測定した。
測定にあたっては、各試料とも10個ずつ用い、表9に示す表面抵抗値は、それら10個の平均値を求め、小数点以下を四捨五入して示したものである。
全光線透過率:
スガ試験機株式会社製HZ−2P型〔ダブルビ−ム形式(C光・D65光)〕を用い、温度25℃で測定した。測定にあたっては、各試料とも10個ずつ用い、表9に示す全光線透過率値は、それら10個の平均値を求め、小数点第二位を四捨五入して示したものである。
Haze:
スガ試験機株式会社製HZ−2P型〔ダブルビ−ム形式(C光・D65光)〕を用い、温度25℃で測定した。測定にあたっては、各試料とも10個ずつ用い、表2に示すHaze値は、それら10個の平均値を求め、小数点第二位を四捨五入して示したものである。そして、このHazeは、値が小さいほど、透明性が高いことを示す。
上記のようにして測定した実施例61〜68および比較例13〜17のフィルムの初期特性値を前記のように表9に示すが、これらの実施例61〜68および比較例13〜17のフィルムについては、耐湿熱性試験および耐熱性試験を行って、それらの評価をしているので、その耐湿熱性試験や耐熱性試験の条件、評価方法を表9の表示に先立って〔透明導電性フィルムの耐湿熱性評価および耐熱性評価〕という項目で示す
〔透明導電性フィルムの耐湿熱性評価および耐熱性評価〕
上記表面抵抗値や全光線透過率などの初期特性値の測定に使用したものとは別途製造した実施例61〜68の導電性フィルムおよび比較例13〜17の透明導電性フィルム(以下、これらの「透明導電性フィルム」を簡略化して「フィルム」という場合がある)について、前記と同様に、表面抵抗値を測定した後、耐湿熱性試験については、それらのフィルムを下記の(A)および(B)の条件
(A)65℃で相対湿度95%の恒温恒湿機中
(B)85℃で相対湿度85%の恒温恒湿機中
という条件下において静置状態でそれぞれ別々に250時間貯蔵し、その貯蔵後、130℃で90秒間乾燥し、その後、前記と同様に、表面抵抗値(以下、簡略化して、「抵抗値」という場合がある)を測定した。その抵抗値の測定結果に基づき、次の式により、耐湿熱性試験下での貯蔵による抵抗値の変化率を求めた。
(抵抗値変化率) = (耐湿熱性試験後の抵抗値) ÷ (耐湿熱性試験前の抵抗値)
また、耐熱性試験に関しては、上記耐湿熱性試験に供したものとは別途製造した実施例61〜68および比較例13〜17のフィルムを下記(C)の条件
(C)85℃のオーブン中
という条件下において静置状態でそれぞれ別々に250時間貯蔵した後、前記と同様に、抵抗値を測定し、その貯蔵による抵抗値の変化率を次の式により求めた。
(抵抗値変化率) = (耐熱性試験後の抵抗値) ÷ (耐熱性試験前の抵抗値)
そして、上記のようにして求めた耐湿熱性試験および耐熱性試験によるフィルムの抵抗値の変化率を表10に示す。ただし、表10への耐湿熱性試験や耐熱性試験の条件の表示にあたっては、スペース上の関係で、次のように簡略化して示す。
(A)「65℃相対湿度95%の恒温恒湿機中」→「65℃/95%」
(B)「85℃相対湿度85%の恒温恒湿機中」→「85℃/85%」
(C)「85℃のオーブン中」→「85℃」
上記実施例61〜68のフィルムは、表9に示すように、初期の表面抵抗値に関しては、比較例13〜17のフィルムと同程度であるが、表10に示すように、耐湿熱性試験での抵抗値変化率が比較例13〜17のフィルムに比べて小さく、耐湿熱性が優れていた。
また、実施例61〜68のフィルムは、初期の表面抵抗値が比較例13〜17のフィルムと同等であるものの、この種の導電性高分子組成物のみで構成される透明導電性フィルムとしては充分に低い表面抵抗値を示しており、透明性の指標となるHaze値も小さく、耐熱性試験での抵抗値変化率も小さく、透明性が優れ、かつ導電性が高く、しかも耐熱性が優れた透明導電性フィルムであることを示していた。
また、導電性フィルムについては、耐湿熱性試験に関して、(A)の65℃/95%の条件下250時間の貯蔵で、抵抗値変化率が1.3以下、(B)の85℃/85%の条件下250時間の貯蔵で、抵抗値変化率が1.3以下、耐熱性試験に関して、(C)の85℃の条件下250時間の貯蔵で、抵抗値変化率が1.3以下であることが要求されるが、表10に示すように、実施例61〜68のフィルムは、抵抗値変化率に関する上記(A)から(C)における1.3以下という要求をいずれも満たしていた。
〔透明導電性複合フィルムでの評価〕
この透明導電性複合フィルムでの評価では、上記実施例61〜68で調製した製造例31〜38の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料とシグマアルドリッチ社製の銀ナノワイヤーの分散液(製品番号730785、銀ナノワイヤーの直径10nm、濃度0,02mg/mlの水分散液)を用いて実施例69〜76の透明導電性複合フィルムを製造し、それらとの比較のため、比較例13〜17で調製した比較例製造例4〜8の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料と上記銀ナノワイヤーの分散液とを用いて比較例18〜22の透明導電性複合フィルムを製造して、それらの特性を評価する。なお、ここでは、導電性高分子組成物と銀ナノワイヤーとの混合物からなる複合導電性組成物を用いてフィルムを形成しているので、形成されたフィルムを導電性複合フィルムと表現しているが、この導電性複合フィルムも導電性フィルムの範疇に属するものである。
実施例69
シグマアルドリッチ社製の銀ナノワイヤーの分散液(製品番号730785、銀ナノワイヤーの直径10nm、濃度0,02mg/mLの水分散液)と実施例61で調製した製造例31の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料とを混合し、銀ナノワイヤー:導電性高分子組成物の比率が2.5:1に調製した複合導電性組成物の分散液を基材となる東洋紡績社製の透明ポリエステルシート〔コスモシャインA4300(商品名)、厚さ188μm、両面易接着処理、全光線透過率92.3%、Haze0.9%〕にバーコーターNo.06(膜厚13.74μm)で塗布し、130℃で90秒間乾燥して、透明ポリエステルシートからなる基材上に、上記複合導電性組成物からなる透明導電性複合フィルムを製造した。
実施例70〜76
実施例61で調製した製造例31の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料に代えて、実施例62〜68で調製した製造例32〜38の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料をそれぞれ別々に用いた以外は、実施例69と同様にして、実施例70〜76の透明導電性複合フィルムを製造した。
比較例18〜22
実施例61で調製した製造例31の導電性高分子組成物の分散液塗料をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料に代えて、比較例13〜17で調製した比較製造例4〜8の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料をそれぞれ別々に用いた以外は、実施例69と同様にして、比較例18〜22の透明導電性複合フィルムを製造した。
上記のようにして製造した実施例69〜76の透明導電性複合フィルム(簡略化して、「複合フィルム」という場合がある)および比較例18〜22の複合フィルムについて、表面抵抗値、全光線透過率およびHaze(曇価)を測定した。その結果を初期特許性値として表11に使用した透明導電性フィルム製造用塗料の種類と共に示す。ただし、上記透明導電性フィルム製造用塗料の種類はそれらのベースとして使用した導電性高分子組成物の製造例番号や比較製造例番号などで示す。これは後記の表12においても同様である。なお、表面抵抗値、全光線透過率、Hazeの測定は、それぞれの複合フィルムを4cm×8cmの長方形に切り出し、前記実施例61の透明導電性フィルムの場合と同様に行った。
また、上記表面抵抗値や全光線透過率などの測定に使用したものとは別途製造した実施例69〜76の複合フィルムおよび比較例18〜22の複合フィルムについて、前記実施例61の透明導電性フィルムと同様に、表面抵抗値を測定した後、耐湿熱性試験、耐熱性試験をし、複合フィルムの抵抗値変化率を調べた。その結果を表12に示す。
上記実施例69〜76の複合フィルムは、表11に示すように、初期の表面抵抗値に関しては、比較例18〜22の複合フィルムと同等であるが、表12に示すように、耐湿熱性試験での抵抗値変化率が比較例18〜22の複合フィルムに比べて小さく、耐湿熱性が優れていた。
また、実施例69〜76の複合フィルムは、初期の表面抵抗値が比較例18〜22の複合フィルムと同等であるものの、この種の複合フィルムとしては充分に低い表面抵抗値を示しており、透明性の指標となるHaze値も小さく、耐熱性試験での抵抗値変化率も小さく、透明性が優れ、かつ、導電性が高く、しかも耐熱性が優れた透明導電性複合フィルムであることを示していた。
〔透明導電性積層フィルムでの評価〕
この透明導電性積層フィルムでの評価では、上記実施例61〜68で調製した製造例31〜38の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料と前記導電性複合フィルムの製造にあたって用いたものと同様のシグマアルドリッチ社製の銀ナノワイヤーの分散液(前出の製品番号730785)とを用いて実施例77〜84の透明導電性積層フィルムを製造し、それらとの比較のため、比較例13〜17で調製した比較製造例4〜8の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料と上記銀ナノワイヤーの分散液とを用いて比較例23〜27の透明導電性積層フィルムを製造して、それらの特性を評価する。
実施例77
上記シグマアルドリッチ社製の銀ナノワイヤーの分散液(前出の製品番号730785)を東洋紡績社製の透明ポリエステルシート〔コスモシャインA4300(商品名)、厚さ188μm、両面易接着処理、全光線透過率92.3%、Haze0.9%〕にバーコーターNo.06(膜厚13.74μm)で塗布し、130℃で90秒間乾燥して、透明ポリエステルシートからなる基材上に透明銀ナノワイヤーフィルムを形成した。次いで、この透明銀ナノワイヤーフィルム上に、上記製造例31の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料をクリアランス25μmのアプリケーターバーで塗布し、130℃で90秒間乾燥して、銀ナノワイヤーフィルム上に導電性高分子組成物フィルムを積層することによって、透明導電性積層フィルムを製造した。
実施例78〜84
製造例31の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料に代えて、製造例32〜38の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料をそれぞれ別々に用いた以外は、実施例77と同様にして、実施例78〜84の透明導電性積層フィルムを製造した。
比較例23〜27
製造例31の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料に代えて、比較製造例4〜8の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料をそれぞれ別々に用いた以外は、実施例77と同様にして、比較例23〜27の透明導電性積層フィルムを製造した。
上記のようにして製造した実施例77〜84の透明導電性積層フィルム(簡略化して、「導電性積層フィルム」という場合がある)および比較例23〜27の導電性積層フィルムについて、表面抵抗値、全光線透過率およびHaze(曇価)を測定した。その結果を初期特性値として表13に使用した透明導電性フィルム製造用塗料の種類と共に示す。ただし、上記透明導電性フィルム製造用塗料の種類はそれらのベースとして使用した導電性高分子組成物の分散液の製造例番号や比較製造例番号などで示す。これは後記の表14においても同様である。なお、表面抵抗値、全光線透過率、Hazeの測定は、それぞれの導電性積層フィルムを4cm×8cmの長方形に切り出し、前記実施例61の透明導電性フィルムの場合と同様に行った。
上記表面抵抗値や全光線透過率などの測定に使用したものとは別途製造した実施例77〜84の導電性積層フィルムおよび比較例23〜27の導電性積層フィルムについて、前記実施例61の透明導電性フィルムと同様に、表面抵抗値を測定した後、耐湿熱性試験、耐熱性試験をし、導電性積層フィルム(簡略化して、「積層フィルム」という場合がある)の抵抗値の変化率を調べた。その結果を表14に示す。
上記実施例77〜84の積層フィルムは、表13に示すように、初期の表面抵抗値に関しては、比較例23〜27の積層フィルムと同等であるが、表14に示すように、耐湿熱性試験での抵抗値変化率が比較例23〜27の積層フィルムに比べて小さく、耐湿熱性が優れていた。
また、実施例77〜84の積層フィルムは、初期の表面抵抗値が比較例23〜27の積層フィルムと同等であるものの、この種の積層フィルムとしては充分に低い表面抵抗値を示しており、また、透明性の指標となるHaze値も小さく、耐熱性試験での抵抗値変化率も小さく、透明性が優れ、かつ導電性が高く、しかも耐熱性が優れた透明導電性積層フィルムであることを示していた。
〔導電性不織布での評価〕
この導電性不識布での評価では、実施例61〜68で調製した製造例31〜38の導電性高分子組成物の分散液をベースとする塗料を用いて実施例85〜92の導電性不織布を製造し、それらとの比較のため、比較例13〜17で調製した比較製造例4〜8の導電性高分子組成物の分散液をベースとする塗料を用いて比較例28〜32の導電性不織布を製造して、それらの特性を評価する。
実施例85
導電性不織布の製造時の基布となる不織布としては、目付け100g/m2のポリエステル不織布を用い、この不織布に製造例31の導電性高分子組成物の分散液をベースとする塗料を含浸し、ピックアップ量を不織布重量の200%量に調整し、130℃で90秒間乾燥して、基布となる不織布に導電性高分子組成物を保持させることによって、導電性不織布を製造した。
実施例86〜92
製造例31の導電性高分子組成物の分散液をベースとする塗料に代えて、製造例32〜38の導電性高分子組成物の分散をベースとする塗料をそれぞれ別々に用いた以外は、実施例85と同様にして、実施例86〜92の導電性不織布を製造した。
比較例28〜32
製造例31の導電性高分子組成物の分散液をベースとする塗料に代えて、比較製造例4〜8の導電性高分子組成物の分散液をベースとする塗料をそれぞれ別々に用いた以外は、実施例85と同様にして、比較例28〜32の導電性不織布を製造した。
上記のようにして製造した実施例85〜92の導電性不織布および比較例28〜32の導電性不織布について、表面抵抗値を測定した。その結果を初期特性値として表15に使用した塗料の種類と共に示す。ただし、上記塗料の種類はそれらのベースとして使用した導電性高分子組成物の分散液の製造例番号や比較製造例番号で示す。なお、表面抵抗値は、それぞれの導電性不織布を4cm×8cmの長方形に切り出し、前記実施例61の透明導電性フィルムの場合と同様に測定した。
また、上記表面抵抗値の測定に使用したものとは別途製造した実施例85〜92の導電性不織布および比較例28〜32の導電性不織布について、前記実施例61の透明導電性フィルムと同様に、表面抵抗値を測定した後、耐湿熱性試験、耐熱性試験をし、その抵抗値の変化率を調べた。その結果を表16に示す。
上記実施例85〜92の導電性不織布は、表15に示すように、初期の表面抵抗値に関しては、比較例28〜32の導電性不織布と同等であるが、表16に示すように、耐湿熱性試験での抵抗値変化率が比較例28〜32の導電性不織布に比べて小さく、耐湿熱性が優れていた。
また、実施例85〜92の導電性不織布は、初期の表面抵抗値が比較例28〜32の導電性不織布と同等であるものの、この種の導電性不織布としては充分に低い表面抵抗値を示しており、また、耐熱性試験での抵抗値変化率も小さく、導電性が高く、かつ耐熱性が優れた導電性不織布であることを示していた。