本発明の導電性高分子組成物は、スチレンスルホン酸65〜99.9モル%からなる成分(a)と、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレートおよび前記一般式(1)で表されるフェノキシポリエチレングリコールアクリレートまたはフェノキシポリエチレングリコールメタクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種のエステル系モノマー0.1〜35モル%からなる成分(b)とを共重合して得られた共重合体の存在下で、エチレンジオキシチオフェンおよびアルキル化エチレンジオキシチオフェンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーを水中または水と水混和性溶剤との混合物からなる水性液中で酸化重合することにより得られた導電性高分子組成物の分散液を乾燥することによって得られる。すなわち、上記エチレンジオキシチオフェンおよびアルキル化エチレンジオキシチオフェンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーの酸化重合により合成されるπ共役系高分子の合成時に、上記成分(a)と成分(b)とをモノマー成分とする上記の共重合体が上記π共役系高分子にドーピングしていくことによって、導電性高分子組成物が形成され、その分散液を乾燥することによって導電性高分子組成物が製造される。
そして、その製造にあたって、前記共重合体をドーパントとして用いるのは、該共重合体をドーパントとして用いることにより、導電性が高く、かつ耐熱性が優れた導電性高分子組成物が得られるからである。ドーパントとして用いる上記共重合体を合成するためにモノマーの一方の成分〔つまり、成分(a)〕としてスチレンスルホン酸を用いるのは、そのスルホン酸部分でドーパントとして必要なアニオンを提供するためとともに共重合体に水溶性を付与するためである。
そして、このスチレンスルホン酸と共重合させるモノマー〔つまり、成分(b)〕としては、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレートおよび前記一般式(1)で表されるフェノキシポリエチレングリコールアクリレートまたはフェノキシポリエチレングリコールメタクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種のエステル系モノマーを用いるが、このエステル系モノマーは、スチレンスルホン酸が文字通りスルホン酸系モノマーであるのに対して、非スルホン酸系モノマーであり、スルホン酸系モノマーとそれらの非スルホン酸系モノマーとを共重合させるのは、それによって得られる共重合体の方が、スチレンスルホン酸のホモポリマー(つまり、ポリスチレンスルホン酸)より、ドーパントとして用いたときに、各種の基材との密着性に優れ、導電性が高く、かつ耐熱性が優れた導電性高分子組成物が得られるようになるからである。そして、スチレンスルホン酸をモノマー状態で用いるのではなく、高分子化して用いるのは、高分子ドーパントを用いて導電性高分子組成物を製造した場合は、水または溶剤に対する分散性または溶解性が良好で、また、脱ドープされにくい特性が得られるからである。
前記特許文献3においても、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどのエステル系モノマーとスチレンスルホン酸との共重合体をドーパントとして用いているが、前記特許文献3では、スチレンスルホン酸が20〜45モル%と全体の半分にも満たないのに対し、本発明ではスチレンスルホン酸が65〜99.9モル%と50モル%を超えており、しかも、その下限が65%と前記特許文献3の場合の上限の45%よりはるかに多い。そして、それに伴って、特許文献3では、前記エステル系モノマーが55〜80モル%とエステル系モノマーが全体の半分を超えているのに対して、本発明では0.1〜35モル%と全体の半分にも満たない。
このように、スチレンスルホン酸とエステル系モノマーとの比率が本発明と特許文献3とで異なっているのは、本発明では導電性の向上を主目的としているのに対し、特許文献3では溶剤への可溶性を主目的としているからである。
本発明において、成分(a)のスチレンスルホン酸を65〜99.9モル%としているのは、スチレンスルホン酸が65モル%より少ない場合は、所望とする高い導電性が得られず、スチレンスルホン酸が99.9モル%より多い場合は、成分(b)のエステル系モノマーの含有量が少ないため、エステル系モノマーによる導電率の向上効果が得られないためである。
そして、本発明において、上記成分(a)のスチレンスルホン酸と成分(b)のエステル系モノマーとの共重合体における両者の比率は、前記のように、スチレンスルホン酸が65〜99.9モルで、エステル系モノマーが0.1〜35モル%であることを必要としているが、その範囲内で、スチレンスルホン酸が75〜95モル%で、エステル系モノマーが5〜25モル%とするのが好ましい。
上記のようなスチレンスルホン酸とエステル系モノマーとの共重合体をドーパントとして製造した導電性高分子組成物は、導電性が高く、それより得られるフィルムは、後記の実施例で示すように、三菱化学アナリテック社製ロレスターなどの抵抗率計を用いて、温度25℃で測定した導電率が300S/cm以上の高い導電性を有しているが、特許文献3に基づいて製造したフィルムは、比較例2〜4に示すように、導電率が本発明に比べてかなり低く、本発明との目的の相違を明確に示している。
そして、上記スチレンスルホン酸とエステル系モノマーとの共重合体は、その分子量が、重量平均分子量で5,000〜500,000程度のものが、水溶性およびドーパントとしての特性上から好ましく、重量平均分子量で40,000〜200,000程度のものがより好ましい。すなわち、上記共重合体の重量平均分子量が上記より小さい場合は、ドーパントとしての機能が低下し、その結果、導電性が高く、かつ耐熱性が優れた導電性高分子組成物が得られにくくなるおそれがあり、重量平均分子量が上記より大きくなると、水溶性が低下して、取扱性が悪くなるおそれがある。
導電性高分子組成物の製造にあたって、ドーパントとして使用する上記スチレンスルホン酸とエステル系モノマーとの共重合体の使用量は、エチレンジオキシチオフェンおよびアルキル化エチレンジオキシチオフェンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーに対して質量比で1:0.01〜1:20であることが好ましく、1:0.1〜1:2であることがより好ましい。つまり、上記スチレンスルホン酸とエステル系モノマーとの共重合体の使用量が上記より少ない場合は、上記共重合体のドーパントとしての機能が充分に発揮できなくなるおそれがあり、また、上記共重合体の使用量が上記より多くなっても、その使用量の増加に伴う効果の増加がほとんど見られなくなるだけでなく、得られる導電性高分子組成物の導電性が低下してしまうおそれがある。
一般に、導電性高分子組成物を酸化重合によって製造するための重合性モノマーとしては、チオフェンまたはその誘導体、ピロールまたはその誘導体およびアニリンまたはその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーが用いられるのに対し、本発明において、それらの中からエチレンジオキシチオフェンおよびアルキル化エチレンジオキシチオフェンよりなる群から選ばれる少なくとも1種を用いるのは、それがドーパントとなる上記スチレンスルホン酸とエステル系モノマーとの共重合体との相性が良く、特に導電性の高い導電性高分子組成物を製造することができるからである。
本発明において用いるモノマー中のアルキル化エチレンジオキシチオフェンとは、エチレンジオキシチオフェンをアルキル基で修飾したものであり、このエチレンジオキシチオフェンやアルキル化エチレンジオキシチオフェンについて詳しく説明すると、上記エチレンジオキシチオフェンやアルキル化エチレンジオキシチオフェンは、下記の一般式(2)で表される化合物に該当する。
上記スチレンスルホン酸とエステル系モノマーとの共重合体を用いてのエチレンジオキシチオフェンおよびアルキル化エチレンジオキシチオフェンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーの酸化重合は、水中または水と水混和性溶剤との水溶液中で行われる。
上記水性液を構成する水混和性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、アセトニトリルなどが挙げられ、これらの水混和性溶剤の水との混合割合としては、水性液全体中の50質量%以下が好ましい。
化学酸化重合を行うにあたっての酸化剤としては、例えば、過硫酸塩が用いられるが、その過硫酸塩としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸カルシウム、過硫酸バリウムなどが用いられる。
化学酸化重合において、その重合時の条件は、特に限定されることはないが、化学酸化重合時の温度としては、5℃〜95℃が好ましく、10℃〜30℃がより好ましく、また、重合時間としては、1時間〜72時間が好ましく、8時間〜24時間がより好ましい。
上記のようにして得られる導電性高分子組成物は、重合直後、水中または水性液中に分散した状態で得られ、酸化剤としての過硫酸塩や触媒として用いた硫酸鉄塩やその分解物などを含んでいる。そこで、その不純物を含んでいる導電性高分子組成物の分散液を超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、遊星ボールミルなどの分散機にかけて不純物を分散させた後、カチオン交換樹脂で金属成分を除去することが好ましい。このときの導電性高分子組成物の粒径としては、動的光散乱法により測定した粒径で、100μm以下が好ましく、特に10μm以下が好ましく、10nm以上が好ましく、特に100nm以上が好ましい。その後、エタノール沈殿法、限外濾過法、陰イオン交換樹脂などにより、酸化剤や触媒の分解により生成したものを除去し、後述するように、必要に応じて、導電性向上剤やバインダを添加してもよい。
本発明の導電性高分子組成物は、導電性フィルムの製造、金属ナノワイヤーと混合することによる複合導電性組成物の製造、基材上に形成された金属ナノワイヤーフィルム上に導電性高分子組成物を積層することによる導電性積層フィルムの製造、基布に保持させることによる導電性布の製造などに使用されるが、それらの製造にあたっては、導電性高分子組成物そのもの(つまり、固体状での導電性高分子組成物)より、水または水性液に分散させた分散液の状態で使用する方が適している。この導電性高分子組成物の分散液は、固体状の導電性高分子組成物を水または水性液に分散させることによって調製することができるが、前記導電性高分子組成物製造時における導電性高分子組成物の分散液を用いればよい。
そして、この導電性高分子組成物の分散液には、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または糖類を導電性向上剤として含有させてもよい。このように、導電性高分子組成物の分散液中に導電性向上剤を含有させておくと、該導電性高分子組成物の分散液を乾燥して得られる導電性高分子組成物の被膜などの導電性を向上させることができる。
これは、導電性向上剤を導電性高分子組成物の分散液に含有させておくことによって、導電性高分子組成物の分散液を乾燥して得られる導電性高分子組成物の被膜などの導電性が向上できるので、上記導電性高分子組成物を用いて製造した導電性フィルムや帯電防止材の抵抗値をより低くさせることができるからである。
上記の導電性向上剤としては、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または糖類が用いられるが、その沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ブタンジオール、γ一ブチロラクトン、スルホラン、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどが好ましく、また、糖類としては、例えば、エリスリトール、グルコース、マンノース、プルランなどが挙げられるが、この導電性向上剤としては、特にジメチルスルホキシドやブタンジオールが好ましい。なお、上記沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤における沸点とは、常圧(つまり、1atm=1013.25hPa)下での沸点をいう。
このような導電性向上剤の添加量としては、分散液中の導電性高分子組成物に対して質量基準で5〜3,000%(すなわち、導電性高分子組成物100質量部に対して導電性向上剤が5〜3,000質量部)が好ましく、特に20〜700%が好ましい。導電性向上剤の添加量が上記より少ない場合は、導電性を向上させる作用が充分に発揮されなくなるおそれがあり、導電性向上剤の添加量が上記より多い場合は、分散液の乾燥に時間を要するようになり、また、かえって、導電性の低下を引き起こすおそれがある。
分散液中における導電性高分子組成物の含有量は、導電性フィルムなどの製造時における作業性に影響を与えるので、通常0.5〜15質量%程度が好ましい。つまり、導電性高分子組成物の含有量が上記より少ない場合は、乾燥に時間を要するようになるおそれがあり、また、導電性高分子組成物の含有量が上記より多い場合は、分散液の粘度が高くなって、導電性フィルムなどの製造にあたっての作業性が低下するおそれがある。
上記導電性高分子組成物の分散液は、特に透明電極フィルムなどとして使用する導電性フィルムの製造に際して用いるのに適している。これは、上記導電性高分子組成物の分散液を乾燥して得られる本発明の導電性高分子組成物が、導電性が高く、かつ耐熱性が優れ、しかも透明性を有しているので、透明電極フィルムとしての特性が優れた導電性フィルムを製造するのに適しているからである。
例えば、本発明の導電性高分子組成物で導電性フィルムを製造するには、シート状の基材に前記の導電性高分子組成物の分散液を塗布するか、基材を導電性高分子組成物の分散液に浸漬し、取り出した後、乾燥して、導電性フィルムを形成し、その導電性フィルムを基材から剥離すればよい。
本発明の導電性高分子組成物を用いて導電性フィルムを製造するには、上記のように、シート状の基材に前記の導電性高分子組成物の分散液を塗布するか、基材を導電性高分子組成物の分散液に浸漬し、取り出した後、乾燥して、導電性フィルムを形成し、そのフィルムを基材から剥離すればよいが、むしろ、基材の一方の面または両面に形成した導電性フィルムを基材から剥がさずに、基材を支持材とした導電性シートとして使用に供する方が適している場合がある。本発明の導電性高分子組成物の分散液を用いて上記導電性フィルムや導電性布を製造するにあたって、上記導電性高分子組成物の分散液にバインダを添加しておくと、基材や基布に対する導電性高分子組成物の密着性や親和性(なじみ性)を向上させることができるので好ましい。
上記バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリロニトリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック樹脂、スルホン化ポリエステル、スルホン化ポリアリル、スルホン化ポリビニル、スルホン化ポリスチレン、シランカップリング剤などが挙げられ、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、スルホン化ポリエステル、スルホン化ポリアリル、スルホン化ポリビニル、スルホン化ポリスチレンなどが好ましい。
本発明において導電性高分子組成物とは、基本的には、前記成分(a)および成分(b)をモノマー成分とする共重合体が、エチレンジオキシチオフェンおよびアルキル化エチレンジオキシチオフェンよりなる群から選ばれる少なくとも1種をモノマー成分とするπ共役系高分子にドーピングしたもの、すなわち、π共役系高分子とそれにドーピングした共重合体とで構成されるものをいうが、上記のように、導電性高分子組成物の分散液にバインダを添加し、それを乾燥した場合、バインダも導電性高分子組成物中に含まれることになるが、導電性フィルムや導電性布などを製造した際に、その導電性は導電性高分子組成物に基づいて発現するので、本書においては、その用途との関係上から、添加したバインダを含んだものも導電性高分子組成物という範疇に入れて取り扱っている。
また、導電性高分子組成物の分散液に導電性付与剤を添加した場合、その導電性付与剤が高沸点有機溶剤の場合、その導電性高分子組成物の分散液を乾燥した時に高沸点有機溶剤は導電性高分子組成物中から脱け出ていくが、導電性付与剤が糖類の場合は、乾燥後も導電性高分子組成物中に残る。このような導電性付与剤としての糖類を含んだものも、本発明では、前記バインダを含んだ場合と同様に導電性高分子組成物という範疇に入れて取り扱っている。
併用の態様としては、導電性高分子組成物と金属ナノワイヤーとを混合して複合導電性組成物とし、その複合導電性組成物で導電性フィルムを構成するか、または基材上に金属ナノワイヤーによるフィルムを形成し、その金属ナノワイヤーフィルム上に本発明の導電性高分子組成物を積層して導電性積層フィルムとする態様が採用できる。
上記のような複合導電性組成物とするには、例えば、本発明の導電性高分子組成物の分散液に金属ナノワイヤーを混合して導電性高分子組成物と金属ナノワイヤーとを含む分散液にし、それを乾燥すればよい。また、金属ナノワイヤーに関しても、分散液としたものが市販されているので、それを利用すればよい。
上記のような複合導電性組成物とする場合の導電性高分子組成物と金属ナノワイヤーとの比率は、金属ナノワイヤーに基づく高い導電性を低下させすぎない範囲が好ましく、質量比で0.01:1〜10:1が好ましく、0.1:1〜5:1がより好ましい。
上記のような複合導電性組成物のフィルム化は、例えば、ポリエステルシートなどのシート状の基材に、複合導電性組成物を含む分散液を塗布し、乾燥することによって行うのが好ましい。
上記複合導電性組成物からなる導電性フィルムは、導電性高分子組成物の高い導電性に加えて、金属ナノワイヤーの有するさらに高い導電性が付加されているので、導電性高分子組成物で構成される導電性フィルムより導電性が高く、したがって、表面抵抗値がより低いという特性を有している。
上記のような複合導電性組成物とする場合、本発明の導電性高分子組成物は、導電性が高いことから、従来の導電性高分子組成物を用いていた場合に比べて、導電性がより高い複合導電性組成物が得られる。
また、基材上に形成した金属ナノワイヤーフィルム上に本発明の導電性高分子組成物を積層する導電性積層フィルムの製造にあたり、その金属ナノワイヤーフィルムの形成にあたっては、金属ナノワイヤーの分散液を使用することができる。すなわち、基材上に金属ナノワイヤーの分散液を塗布し、乾燥することによって、金属ナノワイヤーフィルムを形成することができる。
このようにして得られる導電性積層フィルムも、本発明の導電性高分子組成物の導電性が高いことから、金属ナノワイヤーの有する高い導電性を大きく低下させることがないので、導電性が高く、かつフレキシブルなフィルムとすることができる。そして、このようにして製造される本発明の導電性積層フィルムは、その導電性が高く、かつフレキシブルであるという特性を生かして、タッチセンサーやタッチパネルなどに使用される透明電極フィルムなどとして好適に使用することができ、そのような透明電極フィルムにおいて、従来からのものに対して、より低抵抗なものにすることができる。
本発明の導電性高分子組成物や複合導電性組成物を用いて、導電性布を製造する場合、その基布としては、例えば、織布、不織布、マイクロファイバーなどが用いられる。そして、その導電性布の製造にあたっては、例えば、上記の基布に導電性高分子組成物の分散液または複合導電性組成物の分散液を含浸させ、それを乾燥することによって行われる。そのようにして得られる導電性布においては、導電性高分子組成物や複合導電性組成物は基布に保持されることになる。そして、そのようにして得られる導電性布は、本発明の導電性高分子組成物や複合導電性組成物の有する高い導電性と優れた耐熱性に基づき、導電性が高く、耐熱性が優れている。そして、上記導電性布は、そのような特性を生かして、例えば、生体認証用の電極などとして有効に使用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に例示のもののみに限定されることはない。なお、以下の実施例などにおいて、濃度や使用量を示す際の%は特にその基準を付記しないかぎり、質量基準による%である。
また、実施例に先立ち、実施例でドーパントとして用いるスチレンスルホン酸と前記エステル系モノマーとの共重合体の製造例を製造例1〜18で示す。そして、比較例で用いるドーパントの製造例については、製造例A〜Dで示す。
製造例1
〔共重合体(スチレンスルホン酸:フェノキシジエチレングリコールアクリレート=99.9モル%:0.1モル%)の製造〕
この製造例1では、使用開始時のモノマーがスチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレート〔これは、一般式(1)において、R1が水素であり、nが2のものに該当する〕とであって、それらの比率が99.9モル%:0.1モル%、つまり、モル比で99.9:0.1の共重合体の製造について説明する。なお、以下の製造例などにおいても、共重合体の組成の表示にあたっては、使用開始時のモノマーのモル比で表示する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム199.8g(スチレンスルホン酸として177.5gであって、0.97モル)とフェノキシジエチレングリコールアクリレート0.23g(0.00097モル)とを添加した。そして、その溶液に酸化剤として、過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で攪拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとの共重合体について、GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲル濾過クロマトグラフィーであるが、以下、「GPC」のみで示す)カラムを用いたHPLC(High performance liquid chromatography:高速液体クロマトグラフィーであるが、以下、「HPLC」のみで示す)システムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、13.0万であった。
製造例2
〔共重合体(スチレンスルホン酸:フェノキシジエチレングリコールアクリレート=99モル%:1モル%)の製造〕
この製造例2では、スチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとの比率が99モル%:1モル%、つまり、モル比で99:1の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム197.7g(スチレンスルホン酸として175.7gであって、0.96モル)とフェノキシジエチレングリコールアクリレート2.3g(0.0097モル)とを添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拝し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、11.0万であった。
製造例3
〔共重合体(スチレンスルホン酸:フェノキシジエチレングリコールアクリレート=95モル%:5モル%)の製造〕
この製造例3では、スチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとの比率が95モル%:5モル%、つまり、モル比で95:5の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム188.6g(スチレンスルホン酸として167.6gであって、0.92モル)とフェノキシジエチレングリコールアクリレート0.94g(0.0040モル)とを添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拝し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、12.5万であった。
製造例4
〔共重合体(スチレンスルホン酸:フェノキシジエチレングリコールアクリレート=85モル%:15モル%)の製造〕
この製造例4では、スチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとの比率が85%:15%、つまり、モル比で85:15の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム166.36g(スチレンスルホン酸として147.8gであって、0.807モル)とフェノキシジエチレングリコールアクリレート33.6g(0.14モル)とを添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拝し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、13.0万であった。
製造例5
〔共重合体(スチレンスルホン酸:フェノキシジエチレングリコールアクリレート=75モル%:25モル%)の製造〕
この製造例5では、スチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとの比率が75モル%:25モル%、つまり、モル比で75:25の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム144.7g(スチレンスルホン酸として128.6gであって、0.70モル)とフェノキシジエチレングリコールアクリレート55.3g(0.23モル)とを添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拝し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、12.0万であった。
製造例6
〔共重合体(スチレンスルホン酸:フェノキシジエチレングリコールアクリレート=65モル%:35モル%)の製造〕
この製造例6では、スチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとの比率が65モル%:35モル%、つまり、モル比で65:35の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム123.7g(スチレンスルホン酸として109.9gであって、0.60モル)とフェノキシジエチレングリコールアクリレート76.3g(0.32モル)とを添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拝し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、10.5万であった。
製造例7
〔共重合体(スチレンスルホン酸:フェノキシエチルアクリレート=99.9モル%:0.1モル%)の製造〕
この製造例7では、スチレンスルホン酸とフェノキシエチルアクリレートとの比率が99.9モル%:0.1モル%、つまり、モル比で99.9:0.1の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム199.80g(スチレンスルホン酸として177.5gであって、0.97モル)とフェノキシエチルアクリレート0.2g(0.00097モル)とを添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とフェノキシエチルアクリレートとの重合反応を12時間行った。
その後、オルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拝し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とフェノキシエチルアクリレートとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、9.5万であった。
製造例8
〔共重合体(スチレンスルホン酸:フェノキシエチルアクリレート=95モル%:5モル%)の製造〕
この製造例8では、スチレンスルホン酸とフェノキシエチルアクリレートとの比率が95モル%:5モル%、つまり、モル比で95:5の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム190.65g(スチレンスルホン酸として169.39gであって、0.93モル)とフェノキシエチルアクリレート9.35g(0.049モル)とを添加した。そして、その溶液に酸化剤として、過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とフェノキシエチルアクリレートとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拝し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とフェノキシエチルアクリレートとの共重合体について、GPCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、10.0万であった。
製造例9
〔共重合体(スチレンスルホン酸:フェノキシエチルアクリレート=85モル%:15モル%)の製造〕
この製造例9では、スチレンスルホン酸とフェノキシエチルアクリレートとの比率が85モル%:15モル%、つまり、モル比で85:15の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム171.76g(スチレンスルホン酸として152.61gであって、0.83モル)とフェノキシエチルアクリレート28.24g(0.15モル)とを添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とフェノキシエチルアクリレートとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拝し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とフェノキシエチルアクリレートとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、9.0万であった。
製造例10
〔共重合体(スチレンスルホン酸:フェノキシエチルアクリレート=65モル%:35モル%の製造〕
この製造例10では、スチレンスルホン酸とフェノキシエチルアクリレートとの比率が65モル%:35モル%、つまり、モル比で65:35の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム133.17g(スチレンスルホン酸として118.32gであって、0.65モル)とフェノキシエチルアクリレート66.83g(0.35モル)とを添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とフェノキシエチルアクリレートとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拝し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とフェノキシエチルアクリレートとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、8.0万であった。
製造例11
〔共重合体(スチレンスルホン酸:ベンジルメタクリレート=99.9モル%:0.1モル%)の製造〕
この製造例11では、スチレンスルホン酸とベンジルメタクリレートとの比率が99.9モル%:0.1モル%、つまり、モル比で99.9:0.1の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム199.83g(スチレンスルホン酸として177.55gであって、0.97モル)とベンジルメタクリレート0.17g(0.00096モル)とを添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とベンジルメタクリレートとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拝し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とベンジルメタクリレートとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、11.0万あった。
製造例12
〔共重合体(スチレンスルホン酸:ベンジルメタクリレート=95モル%:5モル%)の製造〕
この製造例12では、スチレンスルホン酸とベンジルメタクリレートとの比率が95モル%:5モル%、つまり、モル比で95:5の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム191.39g(スチレンスルホン酸として170.05gであって、0.93モル )とベンジルメタクリレート8.61g(0.049モル)とを添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とベンジルメタクリレートとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拝し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とベンジルメタクリレートとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、14.5万であった。
製造例13
〔共重合体(スチレンスルホン酸:ベンジルメタクリレート=85モル%:15モル%)の製造〕
この製造例13では、スチレンスルホン酸とベンジルメタクリレートとの比率が85モル%:15モル%、つまり、モル比で85:15の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム173.79g(スチレンスルホン酸として154.41gであって、0.84モル)とベンジルメタクリレート26.21g(0.15モル)とを添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とベンジルメタクリレートとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拝し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とベンジルメタクリレートとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、13.0万であった。
製造例14
〔共重合体(スチレンスルホン酸:ベンジルアクリレート=65モル%:35モル%)の製造〕
この製造例14では、スチレンスルホン酸とベンジルアクリレートとの比率が65モル%:35モル%、つまり、モル比で65:35の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム136.97g(スチレンスルホン酸として121.70gであって、0.78モル)とベンジルアクリレート63.03g(0.36モル)とを添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とベンジルアクリレートとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拝し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とベンジルアクリレートとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、12.5万であった。
製造例15
〔共重合体(スチレンスルホン酸:フェノキシポリエチレングリコールアクリレート=99.9モル%:0.1モル%)の製造〕
この製造例15では、スチレンスルホン酸とフェノキシポリエチレングリコールアクリレート〔これは、一般式(1)において、R1が水素であり、n≒3のものに該当する〕とであって、それらの比率が99.9モル%:0.1モル%、つまり、モル比で99.9:0.1の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム199.73g(スチレンスルホン酸として177.46gであって、0.97モル)とフェノキシポリエチレングリコールアクリレート0.27g(0.00096モル)とを添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とフェノキシポリエチレングリコールアクリレートとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とフェノキシポリエチレングリコールアクリレートとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、12.5万であった。
製造例16
〔共重合体(スチレンスルホン酸:フェノキシポリエチレングリコールアクリレート=95モル%:5モル%)の製造〕
この製造例16では、スチレンスルホン酸とフェノキシポリエチレングリコールアクリレート〔これは、一般式(1)において、R1が水素であり、n≒3のものに該当する〕との比率が95モル%:5モル%、つまり、モル比で95:5の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム186.65g(スチレンスルホン酸として165.84gであって、0.91モル)とフェノキシポリエチレングリコールアクリレート13.35g(0.048モル)とを添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とフェノキシポリエチレングリコールアクリレートの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とフェノキシポリエチレングリコールアクリレートとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、9.5万であった。
製造例17
〔共重合体(スチレンスルホン酸:フェノキシポリエチレングリコールアクリレート=85モル%:15モル%)の製造〕
この製造例17では、スチレンスルホン酸とフェノキシポリエチレングリコールアクリレート〔これは、一般式(1)において、R1が水素であり、n≒3のものに該当する〕との比率が85モル%:5モル%、つまり、モル比で85:15の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム161.31g(スチレンスルホン酸として143.32gであって、0.78モル)とフェノキシポリエチレングリコールアクリレート38.69g(0.14モル)とを添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とフェノキシポリエチレングリコールアクリレートとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とフェノキシポリエチレングリコールアクリレートとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、11.0万であった。
製造例18
〔共重合体(スチレンスルホン酸:フェノキシポリエチレングリコールアクリレート=65モル%:35モル%)の製造〕
この製造例18では、スチレンスルホン酸とフェノキシポリエチレングリコールアクリレート〔これは、一般式(1)において、R1が水素であり、n≒3のものに該当する〕との比率が65モル%:35モル%、つまり、モル比で65:35の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム115.48g(スチレンスルホン酸として102.60gであって、0.56モル)とフェノキシポリエチレングリコールアクリレート84.52g(0.30モル)とを添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とフェノキシポリエチレングリコールアクリレートとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とフェノキシポリエチレングリコールアクリレートとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、10.0万であった。
製造例A(比較例用)
〔共重合体(スチレンスルホン酸:フェノキシジエチレングリコールアクリレート=45モル%:55モル%)の製造〕
この製造例Aでは、スチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとの比率が45モル%:55モル%、つまり、モル比で45:55の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム83.3g(スチレンスルホン酸として74.0gであって、0.404モル)とフェノキシジエチレングリコールアクリレート116.7g(0.494モル)を添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拝し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、12.5万であった。
製造例B(比較例用)
〔共重合体(スチレンスルホン酸:フェノキシエチルアクリレート=45モル%:55モル%)の製造〕
この製造例Bでは、スチレンスルホン酸とフェノキシエチルアクリレートとの比率が45モル%:55モル%、つまり、モル比で45:55の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム93.48g(スチレンスルホン酸として83.06gであって、0.45モル)とフェノキシエチルアクリレート106.52g(0.55モル)とを添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とフェノキシエチルアクリレートとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とフェノキシエチルアクリレートとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、13.5万であった。
製造例C(比較例用)
〔共重合体(スチレンスルホン酸:ベンジルアクリレート=45モル%:55モル%)の製造〕
この製造例Cでは、スチレンスルホン酸とベンジルアクリレートとの比率が45モル%:55モル%、つまり、モル比で45:55の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム97.82g(スチレンスルホン酸として86.91gであって、0.47モル)とベンジルアクリレート102.18g(0.58モル)とを添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とベンジルアクリレートとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とベンジルアクリレートとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、10.5万であった。
製造例D(比較例用)
〔共重合体(スチレンスルホン酸:フェノキシポリエチレングリコールアクリレート=45モル%:55モル%)の製造〕
この製造例Dでは、スチレンスルホン酸とフェノキシポリエチレングリコールアクリレート〔これは、一般式(1)において、R1が水素であり、n≒3のものに該当する〕とであって、それらの比率が45モル%:55モル%、つまり、モル比で45:55の共重合体の製造について説明する。
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム75.15g(スチレンスルホン酸として66.77gであって、0.36モル)とフェノキシポリエチレングリコールアクリレート124.85g(0.45モル)とを添加した。そして、その溶液に過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とフェノキシポリエチレングリコールアクリレートとの重合反応を12時間行った。
その後、その反応液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間撹拌機で撹拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
得られたスチレンスルホン酸とフェノキシポリエチレングリコールアクリレートとの共重合体について、GPCカラムを用いたHPLCシステムを用いて分析を行った結果、上記共重合体のデキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、12.0万であった。
次に、実施例を示す。まず、実施例1〜18において導電性高分子組成物の分散液の実施例を示し、次いで、実施例19〜36においてそれらの導電性高分子組成物の分散液を用いて製造した導電性フィムの実施例を示す。ただし、実施例1〜18においては導電性高分子組成物の薄膜を形成し、その導電率を測定する。
〔導電性高分子組成物の分散液の製造〕
実施例1
製造例1で得たスチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとのモル比が99.9:0.1の共重合体の4%水溶液600gを内容積1Lのステンレス鋼製容器に入れ、そこに触媒として硫酸第一鉄・7水和物を0.3g添加して溶解した。その中にエチレンジオキシチオフェンを4mLゆっくり滴下した。ステンレス鋼製の撹拌バネで撹拌し、容器に陽極を取り付け、撹拌バネに陰極を取り付け、1mA/cm2の定電流で18時間電解酸化重合して、導電性高分子組成物を製造した。上記電解酸化重合後、水で4倍に希釈した後、超音波ホモジナイザー〔日本精機社製、US−T300(商品名)〕で30分間分散処理を行った。
その後、その分散液にオルガノ社のカチオン交換樹脂〔アンバーライト120B(商品名)〕を100g添加して、1時間攪拌機で撹拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中のカチオン成分をすべて除去した。
上記処理後の液を孔径1μmのフィルターに通し、その通過液を限外濾過装置〔ザルトリウス社製Vivaflow200(商品名)、分子量分画5万〕で処理して、液中の遊離の低分子成分を除去した。この処理後の液を水で希釈して導電性高分子組成物の濃度を1.5%に調整し、その1.5%液40gに対し、導電性向上剤として1,3-プロパンジオールを4g添加して、導電性向上剤としての1,3-プロパンジオールを添加した導電性高分子組成物の分散液を得た。上記1,3-プロパンジオールの添加量は導電性高分子組成物に対して666%であった。
得られた導電性高分子組成物の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、導電性高分子組成物の厚みが 100nmの薄膜を形成した。その導電性高分子組成物膜の導電率を三菱化学アナリテック社製ロレスタ−GP〔MCP−T610型、直列4探針プローブ(ASP)〕を用いて温度25℃で測定した。その結果を後記の表1に示す。
上記導電率の測定は、10個の試料について行い、表1に示す導電率値は、それら10個の平均値を求め、小数点以下を四捨五入して示したものである。
実施例2
製造例1で得た共重合体に代えて、製造例2で得たスチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとのモル比が99:1の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
得られた導電性高分子組成物の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、導電性高分子組成物の厚みが 90nmの薄膜を形成し、その導電性高分子組成物膜の導電率を実施例1と同様に測定した。その結果を後記の表1に実施例1と同様の態様で示す。
実施例3
製造例1で得た共重合体に代えて、製造例3で得たスチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとのモル比が95:5の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
得られた導電性高分子組成物の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、導電性高分子組成物の厚みが90nmの薄膜を形成し、その導電性高分子組成物膜の導電率を実施例1と同様に測定した。その結果を後記の表1に実施例1と同様の態様で示す。
実施例4
製造例1で得た共重合体に代えて、製造例4で得たスチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとのモル比が85:15の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
得られた導電性高分子組成物の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、導電性高分子組成物の厚みが100nmの薄膜を形成し、その導電性組成物膜の導電率を実施例1と同様に測定した。その結果を後記の表1に実施例1と同様の態様で示す。
実施例5
製造例1で得た共重合体に代えて、製造例5で得たスチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとのモル比が75:25の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
得られた導電性高分子組成物の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、導電性高分子組成物の厚みが90nmの薄膜を形成し、その導電性高分子組成物膜の導電率を実施例1と同様に測定した。その結果を後記の表1に実施例1と同様の態様で示す。
実施例6
製造例1で得た共重合体に代えて、製造例6で得たスチレンスルホン酸とフェノキシジエチレングリコールアクリレートとのモル比が65:35の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
得られた導電性高分子組成物の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、導電性高分子組成物の厚みが90nmの薄膜を形成し、その導電性高分子組成物膜の導電率を実施例1と同様に測定した。その結果を後記の表1に実施例1と同様の態様で示す。
実施例7
製造例1で得た共重合体に代えて、製造例7で得たスチレンスルホン酸とフェノキシエチルアクリレートとのモル比が99.9:0.1の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
得られた導電性高分子組成物の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、導電性高分子組成物の厚みが 100nmの薄膜を形成し、その導電性高分子組成物膜の導電率を実施例1と同様に測定した。その結果を後記の表1に実施例1と同様の態様で示す。
実施例8
製造例1で得た共重合体に代えて、製造例8で得たスチレンスルホン酸とフェノキエチルアクリレートとのモル比が95:5の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
得られた導電性高分子組成物の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、導電性高分子組成物の厚みが90nmの薄膜を形成し、その導電性高分子組成物膜の導電率を実施例1と同様に測定した。その結果を後記の表1に実施例1と同様の態様で示す。
実施例9
製造例1で得た共重合体に代えて、製造例9で得たスチレンスルホン酸とフェノキシエチルアクリレートとのモル比が85:15の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
得られた導電性高分子組成物の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、導電性高分子組成物の厚みが90nmの薄膜を形成し、その導電性高分子組成物膜の導電率を実施例1と同様に測定した。その結果を後記の表1に実施例1と同様の態様で示す。
実施例10
製造例1で得た共重合体に代えて、製造例10で得たスチレンスルホン酸とフェノキシエチルアクリレートとのモル比が65:35の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
得られた導電性高分子組成物の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、導電性高分子組成物の厚みが90nmの薄膜を形成し、その導電性高分子組成物の導電率を実施例1と同様に測定した。その結果を後記の表1に実施例1と同様の態様で示す。
実施例11
製造例1で得た共重合体に代えて、製造例11で得たスチレンスルホン酸とベンジルメタクリレートとのモル比が99.9:0.1の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
得られた導電性高分子組成物の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、導電性高分子組成物の厚みが90nmの薄膜を形成し、その導電性高分子組成物膜の導電率を実施例1と同様に測定した。その結果を後記の表1に実施例1と同様の態様で示す。
実施例12
製造例1で得た共重合体に代えて、製造例12で得たスチレンスルホン酸とベンジルメタクリレートとのモル比が95:5の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
得られた導電性高分子組成物の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、導電性高分子組成物の厚みが100nmの薄膜を形成し、その導電性高分子組成物膜の導電率を実施例1と同様に測定した。その結果を後記の表1に実施例1と同様の態様で示す。
実施例13
製造例1で得た共重合体に代えて、製造例13で得たスチレンスルホン酸とベンジルメタクリレートとのモル比が85:15の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子組成物の分散液を得た。
得られた導電性高分子組成物の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、導電性高分子組成物の厚みが90nmの薄膜を形成し、その導電性高分子組成物膜の導電率を実施例1と同様に測定した。その結果を後記の表1に実施例1と同様の態様で示す。
実施例14
製造例1で得た共重合体に代えて、製造例14で得たスチレンスルホン酸とベンジルアクリレートとのモル比が65:35の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
得られた導電性高分子組成物の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、導電性高分子組成物の厚みが90nmの薄膜を形成し、その導電性高分子組成物膜の導電率を実施例1と同様に測定した。その結果を後記の表1に実施例1と同様の態様で示す。
実施例15
製造例1で得た共重合体に代えて、製造例15で得たスチレンスルホン酸とフェノキシポリエチレングリコールアクリレートとのモル比が99.9:0.1の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
得られた導電性高分子組成物の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、導電性高分子組成物の厚みが90nmの薄膜を形成し、その導電性高分子組成物膜の導電率を実施例1と同様に測定した。その結果を後記の表1に実施例1と同様の態様で示す。
実施例16
製造例1で得た共重合体に代えて、製造例16で得たスチレンスルホン酸とフェノキシポリエチレングリコールアクリレートとのモル比が95:5の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
得られた導電性高分子組成物の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm ×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、導電性高分子組成物の厚みが90nmの薄膜を形成し、その導電性高分子組成物膜の導電率を実施例1と同様に測定した。その結果を後記の表1に実施例1と同様の態様で示す。
実施例17
製造例1で得た共重合体に代えて、製造例17で得たスチレンスルホン酸とフェノキシポリエチレングリコールアクリレートとのモル比が85:15の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
得られた導電性高分子組成物の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、導電性高分子組成物の厚みが90nmの薄膜を形成し、その導電性高分子組成物膜の導電率を実施例1と同様に測定した。その結果を後記の表1に実施例1と同様の態様で示す。
実施例18
製造例1で得た共重合体に代えて、製造例18で得たスチレンスルホン酸とフェノキシポリエチレングリコールアクリレートとのモル比が65:35の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
得られた導電性高分子組成物の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、導電性高分子組成物の厚みが 100nmの薄膜を形成し、その導電性高分子組成物膜の導電率を実施例1と同様に測定した。その結果を後記の表1に実施例1と同様の態様で示す。
比較例1
製造例1で得た共重合体に代えて、ポリスチレンスルホン酸(テイカ社製、重量平均分子量100,000)を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
得られた導電性高分子組成物の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、導電性高分子組成物の厚みが100nmの薄膜を形成し、その導電性高分子組成物膜の導電率を実施例1と同様に測定した。その結果を後記の表1に実施例1と同様の態様で示す。
比較例2
製造例1で得た共重合体に代えて、製造例Aで得たスチレンスルホン酸とフェノキジエチレングリコールアクリレートとのモル比が45:55の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
得られた導電性高分子組成物の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、導電性高分子組成物の厚みが100nmの薄膜を形成し、その導電性高分子組成物膜の導電率を実施例1と同様に測定した。その結果を後記の表1に実施例1と同様の態様で示す。
比較例3
製造例1で得た共重合体に代えて、製造例Bで得たスチレンスルホン酸とフェノキシエチルアクリレートとのモル比が45:55の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
得られた導電性高分子組成物の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、導電性高分子組成物の厚みが100nmの薄膜を形成し、その導電性高分子組成物膜の導電率を実施例1と同様に測定した。その結果を後記の表1に実施例1と同様の態様で示す。
比較例4
製造例1で得た共重合体に代えて、製造例Cで得たスチレンスルホン酸とベンジルアクリレートとのモル比が45:55の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
得られた導電性高分子組成物の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、導電性高分子組成物の厚みが90nmの薄膜を形成し、その導電性高分子組成物膜の導電率を実施例1と同様に測定した。その結果を後記の表1に実施例1と同様の態様で示す。
比較例5
製造例1で得た共重合体に代えて、製造例Dで得たスチレンスルホン酸とフェノキシポリエチレングリコールアクリレートとのモル比が45:55の共重合体を用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、導電性高分子組成物の分散液を得た。
得られた導電性高分子組成物の分散液をスピンコート(3,000rpm、60秒)で6cm×6cmのガラス基板に塗布した後、130℃で5分間乾燥して、導電性高分子組成物の厚みが90nmの薄膜を形成し、その導電性高分子組成物膜の導電率を実施例1と同様に測定した。その結果を次記の表1に実施例1と同様の態様で示す。
表1に示すように、実施例1〜18の導電性高分子組成物は、いずれも、導電率が350S/cm以上であって、比較例1〜5の導電性高分子組成物に比べて、導電性が優れていた。特に実施例1〜18の導電性高分子組成物は、比較例2〜5の導電性高分子組成物に比べると、導電率が高く、導電性が優れていた。
〔透明導電性フィルムでの評価〕
実施例19
この透明導電性フィルムでの評価では、上記実施例1に記載の1,3-プロパンジオール添加後の導電性高分子組成物の分散液44gにバインダとしてスルホン化ポリエステル〔互応化学工業社製プラスコートZ−565(商品名)〕の20%水溶液を9g、メタノールを20g添加して、1時間攪拌機で撹拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過して、実施例1の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料を調製した。なお、この透明導電性フィルム製造用塗料を簡略化して「透明導電性フィルム用塗料」という場合がある。本書では、実施例1〜18などの導電性高分子組成物の分散液とそれにバインダを添加したものとを区別するために、後者を「透明導電性フィルム製造用塗料」という表現で表しているが、この「透明導電性フィルム製造用塗料」も導電性高分子組成物の分散液の一種であることには変わりはない。
透明導電性フィルム製造時の基材となる透明ポリエステルシートとしては、東洋紡績社製コスモシャインA4300(商品名、厚さ188μm、両面易接着処理、全光線透過率92.3%、Haze0.9%)を用い、この透明ポリエステルシートに上記実施例1の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料をバーコーターNo.06(膜厚13.74μm)で塗布し、130℃で90秒間乾燥して、透明導電性フィルムを製造した。
実施例20〜36
まず、実施例2〜18の導電性高分子組成物の分散液のそれぞれに、実施例19の場合と同様にバインダとしてスルホン化ポリエステルを添加して、実施例2〜18の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料を調製した。
そして、その上で、実施例1の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料に代えて、実施例2〜18の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料をそれぞれ別々に用いた以外は、実施例19と同様にして、実施例20〜36の透明導電性フィルムを製造した。
比較例6〜10
この比較例6〜10においても、比較例1〜5の導電性高分子組成物の分散液のそれぞれに、実施例19と同様にバインダとしてスルホン化ポリエステルを添加して、比較例1〜5の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料を調製した。
そして、その上で、実施例1の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料に代えて、比較例1〜5の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料をそれぞれ別々に用いた以外は、実施例19と同様にして、比較例6〜10の透明導電性フィルムを製造した。
上記のようにして製造した実施例19〜36の透明導電性フィルム(簡略化して、「導電性フィルム」という場合がある)および比較例6〜10の導電性フィルムについて、表面抵抗値、全光線透過率およびHaze(曇価)を測定し、その結果を表2に使用した透明導電性フィルム製造用塗料の種類と共に示す。ただし、上記透明導電性フィルム製造用塗料の種類はそれらのベースとして使用した導電性高分子組成物の分散液の実施例番号や比較例番号で示す。これは後記の表3においても同様である。なお、表面抵抗値、全光線透過率、Hazeの測定は、それぞれの導電性フィルムを4cm×8cmの長方形に切り出し、次に示す通りに行った。
表面抵抗値:
三菱化学アナリテック社製ロレスタ−GP〔MCP−T610型、直列4探針プローブ(ASP)〕を用いて温度25℃で測定した。
測定にあたっては、各試料とも10個ずつ用い、表2に示す表面抵抗値は、それら10個の平均値を求め、小数点以下を四捨五入して示したものである。
全光線透過率:
スガ試験機株式会社製HZ−2P型〔ダブルビ−ム形式(C光・D65光)〕を用い、温度25℃で測定した。測定にあたっては、各試料とも10個ずつ用い、表2に示す全光線透過率値は、それら10個の平均値を求め、小数点第二位を四捨五入して示したものである。
Haze:
スガ試験機株式会社製HZ−2P型〔ダブルビ−ム形式(C光・D65光)〕を用い、温度25℃で測定した。測定にあたっては、各試料とも10個ずつ用い、表2に示すHaze値は、それら10個の平均値を求め、小数点第二位を四捨五入して示したものである。そして、このHazeは、値が小さいほど、透明性が高いことを示す。
表2に示すように、実施例19〜36の透明導電性フィルム(以下、この「透明導電性フィルム」を簡略化して「フィルム」という場合がある)は、比較例6〜10のフィルムに比べて、表面抵抗値が低く、導電性が優れていた。また、実施例19〜36のフィルムは、比較例6〜10のフィルムに比べて、透明性の指標となるHaze値が小さく、透明性が優れていた。そして、実施例19〜36のフィルムの上記表面抵抗値は、透明性フィルムに必要とされる全光線透過率が87%以上という条件を満たした上で充分に低い表面抵抗値であることから、実施例19〜36のフィルムが透明性を有し、かつ導電性が優れた透明導電性フィルムであることを示している。
〔透明導電性フィルムの耐湿熱性評価および耐熱性評価〕
上記表面抵抗値や全光線透過率などの測定に使用したものとは別途製造した実施例19〜36の導電性フィルムおよび比較例6〜10の導電性フィルム(以下、これらの「導電性フィルム」を簡略化して「フィルム」という場合がある)について、前記と同様に、表面抵抗値を測定した後、耐湿熱性試験については、それらのフィルムを下記の(A)および(B)の条件
(A)65℃で相対湿度95%の恒温恒湿機中
(B)85℃で相対湿度85%の恒温恒湿機中
という条件下において静置状態でそれぞれ別々に250時間貯蔵し、その貯蔵後、130℃で90秒間乾燥し、その後、前記と同様に、表面抵抗値(以下、簡略化して、「抵抗値」という場合がある)を測定した。その抵抗値の測定結果に基づき、次の式により、耐湿熱性試験下での貯蔵による抵抗値の変化率を求めた。
(抵抗値変化率) = (耐湿熱性試験後の抵抗値) ÷ (耐湿熱性試験前の抵抗値)
また、耐熱性試験に関しては、上記耐湿熱性試験に供したものとは別途製造した実施例19〜36および比較例6〜10のフィルムを下記(C)の条件
(C)85℃のオーブン中
という条件下において静置状態でそれぞれ別々に250時間貯蔵した後、前記と同様に、抵抗値を測定し、その貯蔵による抵抗値の変化率を次の式により求めた。
(抵抗値変化率) = (耐熱性試験後の抵抗値) ÷ (耐熱性試験前の抵抗値)
そして、上記のようにして求めた耐湿熱性試験および耐熱性試験によるフィルムの抵抗値の変化率を表3に示す。ただし、表3への耐湿熱性試験や耐熱性試験の条件の表示にあたっては、スペース上の関係で、次のように簡略化して示す。
(A)「65℃相対湿度95%の恒温恒湿機中」→「65℃/95%」
(B)「85℃相対湿度85%の恒温恒湿機中」→「85℃/85%」
(C)「85℃のオーブン中」→「85℃」
表3に示すように、実施例19〜36のフィルムは、比較例6〜10のフィルムに比べて、抵抗値変化率が小さく、耐湿熱性および耐熱性が優れていた。
導電性フィルムについては、耐湿熱性試験に関して、(A)の65℃/95%の条件下250時間の貯蔵で、抵抗値変化率が1.3以下、(B)の85℃/85%の条件下250時間の貯蔵で、抵抗値変化率が1.3以下、耐熱性試験に関して、(C)の85℃の条件下250時間の貯蔵で、抵抗値変化率が1.3以下であることが要求されるが、表3に示すように、実施例19〜36のフィルムは、抵抗値変化率に関する上記(A)から(C)における1.3以下という要求をいずれも満たしていた。
これに対して、比較例6〜10のフィルムは、上記(A)、(B)、(C)における1.3以下という要求値のすべてを満たすものはなかった。
〔透明導電性複合フィルムでの評価〕
この透明導電性複合フィルムでの評価では、上記実施例19〜36で調製した実施例1〜18の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料とシグマアルドリッチ社製の銀ナノワイヤーの分散液(製品番号730785、銀ナノワイヤーの直径10nm、濃度0,02mg/mLの水分散液)を用いて実施例37〜54の透明導電性複合フィルムを製造し、それらとの比較のため、比較例6〜10で調製した比較例1〜5の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料と上記銀ナノワイヤーの分散液とを用いて比較例11〜15の透明導電性複合フィルムを製造して、それらの特性を評価する。なお、ここでは、導電性高分子組成物と銀ナノワイヤーとの混合物からなる複合導電性組成物を用いてフィルムを形成しているので、形成されたフィルムを導電性複合フィルムと表現しているが、この導電性複合フィルムも導電性フィルムの範疇に属するものである。
実施例37
シグマアルドリッチ社製の銀ナノワイヤーの分散液(製品番号730785、銀ナノワイヤーの直径10nm、濃度0,02mg/mLの水分散液)と実施例1の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料とを混合し、銀ナノワイヤー:導電性高分子組成物の比率が2.5:1に調製した複合導電性組成物の分散液を基材となる東洋紡績社製の透明ポリエステルシート〔コスモシャインA4300(商品名)、厚さ188μm、両面易接着処理、全光線透過率92.3%、Haze0.9%〕にバーコーターNo.06(膜厚13.74μm)で塗布し、130℃で90秒間乾燥して、透明ポリエステルシートからなる基材上に、上記複合導電性組成物からなる透明導電性複合フィルムを製造した。
実施例38〜54
実施例19で調製した実施例1の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料に代えて、実施例20〜36で調製した実施例2〜18の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料をそれぞれ別々に用いた以外は、実施例37と同様にして、実施例38〜54の透明導電性複合フィルムを製造した。
比較例11〜15
実施例19で調製した実施例1の導電性高分子組成物の分散液塗料をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料に代えて、比較例6〜10で調製した比較例1〜5の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料をそれぞれ別々に用いた以外は、実施例37と同様にして、比較例11〜15の透明導電性複合フィルムを製造した。
上記のようにして製造した実施例37〜54の透明導電性複合フィルム(簡略化して、「複合フィルム」という場合がある)および比較例11〜15の複合フィルムについて、表面抵抗値、全光線透過率およびHaze(曇価)を測定した。その結果を表4に使用した透明導電性フィルム製造用塗料の種類と共に示す。上記透明導電性フィルム製造用塗料の種類はそれらのベースとして使用した導電性高分子組成物の実施例番号や比較例番号などで示す。これは後記の表5においても同様である。なお、表面抵抗値、全光線透過率、Hazeの測定は、それぞれの複合フィルムを4cm×8cmの長方形に切り出し、前記実施例19の透明導電性フィルムの場合と同様に行った。
表4に示すように、実施例37〜54の複合フィルムは、全光線透過率が87%以上という状況下で、比較例11〜15の複合フィルムに比べて、表面抵抗値が低く、導電性が優れていた。また、実施例37〜54の複合フィルムは、比較例11〜15の複合フィルムに比べて、透明性の指標となるHaze値が小さく、透明性が優れていた。
〔透明導電性複合フィルムの耐湿熱性評価および耐熱性評価〕
上記表面抵抗値や全光線透過率などの測定に使用したものとは別途製造した実施例37〜54の透明導電性複合フィルム(以下、これを簡略化して、「複合フィルム」という場合がある)および比較例11〜15の複合フィルムについて、前記実施例19の透明導電性フィルムと同様に、表面抵抗値を測定した後、耐湿熱性試験、耐熱性試験をし、複合フィルムの抵抗値変化率を調べた。その結果を表5に示す。
表5に示すように、実施例37〜54の複合フィルムは、比較例11〜15の複合フィルムに比べて、抵抗値変化率が小さく、耐湿熱性および耐熱性が優れていた。
〔透明導電性積層フィルムでの評価〕
この透明導電性積層フィルムでの評価では、上記実施例19〜36で調製した実施例1〜18の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料と前記導電性複合フィルムの製造にあたって用いたものと同様のシグマアルドリッチ社製の銀ナノワイヤーの分散液(前出の製品番号730785)とを用いて実施例55〜72の透明導電性積層フィルムを製造し、それらとの比較のため、比較例6〜10で調製した比較例1〜5の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料と上記銀ナノワイヤーの分散液とを用いて比較例16〜21の透明導電性積層フィルムを製造して、それらの特性を評価する。
実施例55
上記シグマアルドリッチ社製の銀ナノワイヤーの分散液(前出の製品番号730785)を東洋紡績社製の透明ポリエステルシート〔コスモシャインA4300(商品名)、厚さ188μm、両面易接着処理、全光線透過率92.3%、Haze0.9%〕にバーコーターNo.06(膜厚13.74μm)で塗布し、130℃で90秒間乾燥して、透明ポリエステルシートからなる基材上に透明銀ナノワイヤーフィルムを形成した。次いで、この透明銀ナノワイヤーフィルム上に、上記実施例1の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料をクリアランス25μmのアプリケーターバーで塗布し、130℃で90秒間乾燥して、銀ナノワイヤーフィルム上に導電性高分子組成物フィルムを積層することによって、透明導電性積層フィルムを製造した。
実施例56〜72
実施例1の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料に代えて、実施例2〜18の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料をそれぞれ別々に用いた以外は、実施例55と同様にして、実施例56〜72の透明導電性積層フィルムを製造した。
比較例16
銀ナノワイヤーフィルム上に導電性高分子組成物からなるフィルムを積層することなく、その銀ナノワイヤーフィルムを比較例16とした。
比較例17〜21
実施例1の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料に代えて、比較例1〜5の導電性高分子組成物の分散液をベースとする透明導電性フィルム製造用塗料をそれぞれ別々に用いた以外は、実施例55と同様にして、比較例17〜21の透明導電性積層フィルムを製造した。
上記のようにして製造した実施例55〜72の透明導電性積層フィルム(簡略化して、「導電性積層フィルム」という場合がある)および比較例16〜21の導電性積層フィルムについて、表面抵抗値、全光線透過率およびHaze(曇価)を測定した。その結果を表6に使用した透明導電性フィルム製造用塗料の種類と共に示す。上記透明導電性フィルム製造用塗料の種類はそれらのベースとして使用した導電性高分子組成物の分散液の実施例番号や比較例番号などで示す。これは後記の表7においても同様である。なお、表面抵抗値、全光線透過率、Hazeの測定は、それぞれの導電性積層フィルムを4cm×8cmの長方形に切り出し、前記実施例19の透明導電性フィルムの場合と同様に行った。
表6に示すように、実施例55〜72の導電性積層フィルム(簡略化して、「積層フィルム」という場合がある)は、比較例16〜21の積層フィルムに比べて、表面抵抗値が小さく、導電性が優れていて、透明性の指標となるHaze値が比較例16〜21の積層フィルムに比べて小さく、透明性が優れていた。
〔透明導電性積層フィルムの耐湿熱性評価および耐熱性評価〕
上記表面抵抗値や全光線透過率などの測定に使用したものとは別途製造した実施例55〜72の導電性積層フィルムおよび比較例16〜21の導電性積層フィルムについて、前記実施例19の透明導電性フィルムと同様に、表面抵抗値を測定した後、耐湿熱性試験、耐熱性試験をし、積層フィルムの抵抗値の変化率を調べた。その結果を表7に示す。
表7に示すように、実施例55〜72の積層フィルムは、比較例16〜21の積層フィルムに比べて、抵抗値変化率が小さく、耐湿熱性および耐熱性が優れていた。
〔導電性不織布での評価〕
この導電性不識布での評価では、実施例19〜36で調製した実施例1〜18の導電性高分子組成物の分散液をベースとする塗料を用いて実施例73〜90の導電性不織布を製造し、それらとの比較のため、比較例6〜10で調製した比較例1〜5の導電性高分子組成物の分散液をベースとする塗料を用いて比較例22〜26の導電性不織布を製造して、それらの特性を評価する。
実施例73
導電性不織布の製造時の基布となる不織布としては、目付け100g/m2のポリエステル不織布を用い、この不織布に実施例1の導電性高分子組成物の分散液をベースとする塗料を含浸し、ピックアップ量を不織布重量の200%量に調製し、130℃で90秒間乾燥して、基布となる不織布に導電性高分子組成物を保持させることによって、導電性不織布を製造した。
実施例74〜90
実施例1の導電性高分子組成物の分散液をベースとする塗料に代えて、実施例2〜18の導電性高分子組成物の分散をベースとする塗料をそれぞれ別々に用いた以外は、実施例73と同様にして、実施例74〜90の導電性不織布を製造した。
比較例22〜26
実施例1の導電性高分子組成物の分散液をベースとする塗料に代えて、比較例1〜5の導電性高分子組成物の分散液をベースとする塗料をそれぞれ別々に用いた以外は、実施例73と同様にして、比較例22〜26の導電性不織布を製造した。
上記のようにして製造した実施例73〜90の導電性不織布および比較例22〜26の導電性不織布について、表面抵抗値を測定した。その結果を表8に使用した塗料の種類と共に示す。上記塗料の種類はそれらのベースとして使用した導電性高分子組成物の分散液の実施例番号や比較例番号で示す。なお、表面抵抗値は、それぞれの導電性不織布を4cm×8cmの長方形に切り出し、前記実施例19の透明導電性フィルムの場合と同様に測定した。
表8に示すように、実施例73〜90の導電性不織布は、比較例22〜26の導電性不織布に比べて、表面抵抗値が低く、導電性が優れていた。