JP6576022B2 - 成形体の製造方法 - Google Patents

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本発明は、成形体及びその製造方法に関する。
従来、家電製品、事務機器製品、自動車の内外装及び化粧品容器等の樹脂製品には、成形性、外観及び物性バランスなどを考慮して、ABS樹脂、AS樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ASA樹脂、AES樹脂及びアクリル樹脂又はそれらの混合物などを含む樹脂組成物が使用されている。これらの樹脂組成物には、意匠性を付与するために、様々な着色が施されている。このような着色に加えて、高級感を付与したり、他の意匠との差別化を図ったりすることを目的として、樹脂製品にメタリック調等の加飾を施すことがある。
樹脂製品にメタリック調等の加飾を施す材料としては、金属光沢粒子を熱可塑性樹脂に添加した材料が知られている。中でも、アルミニウムフレーク(アルミニウム顔料)を各樹脂に配合した樹脂組成物は、塗装工程が不要になることによる有機溶剤による健康被害の問題解消や、塗膜除去が不要になることによるリサイクル性向上等の点から非常に有効である。
例えば、特許文献1には、特定のメタリック顔料を配合した合成樹脂組成物が開示されており、特許文献2には、特定のアルミニウムフレークとパール顔料とを配合した樹脂組成物が提案されている。
特開昭62−020574号公報 特開2011−218662号公報
これらの樹脂組成物を用い射出成形にて成形品を得る場合、成形品外観の光沢を高めたり、ウェルドラインが発生する形状であれば、そのウェルドラインを低減したりするために、金型温度を樹脂の充填時に樹脂のガラス転移温度以上にして成形すると、より成形品の意匠性が向上する。しかしながら、金型温度をガラス転移温度以上にして成形すると、アルミニウムフレークが金型に付着し、金型を汚染するという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、金型汚染を抑制しつつ、しかも優れた美観を有する成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記視点を踏まえ鋭意研究を重ねた結果、上述の問題は、特に金型温度を樹脂のガラス転移温度よりも20℃以上高くして成形した場合に顕著となることを見出した。この点について、本発明者らは、その要因について詳細に検討した結果、アルミニウムフレークの金型に対する密着性と樹脂に対する密着性との違いに起因するところが大きいことを見出した。そして、非晶性樹脂と、表面に樹脂を被覆したアルミニウムフレークとを用いることにより上記目的を達成できるという知見を得て、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]非晶性樹脂(A)と、前記非晶性樹脂(A)100質量部に対して0.1質量部〜10質量部の表面に樹脂が被覆されたアルミニウム顔料(B)と、を含有する熱可塑性樹脂組成物を、樹脂充填部内壁の表面温度が前記非晶性樹脂(A)のガラス転移温度よりも20℃以上高い金型内で射出成形して成形体を得る工程を有する、成形体の製造方法であって、前記非晶性樹脂(A)が、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ASA樹脂及びAES樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂であり、前記アルミニウム顔料(B)を被覆した前記樹脂が、ラジカル重合性二重結合を有するカルボン酸、及びラジカル重合性二重結合を有するホスホン酸モノエステル若しくはジエステルからなる群より選ばれる1種以上の化合物に由来する単位(C)と、ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体に由来する単位(D)と、を有する重合体から構成される樹脂である、製造方法。
本発明によれば、金型汚染を抑制しつつ、しかも優れた美観を有する成形体及びその製造方法を提供することができる。
実施例で用いた平板状の試験片の模式的な平面図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
本実施形態の成形体は、非晶性樹脂(A)と、非晶性樹脂(A)100質量部に対して0.1質量部〜10質量部の表面に樹脂が被覆されたアルミニウム顔料(B)(以下、「樹脂被覆Al顔料(B)」とも表記する。)とを含有する熱可塑性樹脂組成物を、樹脂充填部内壁の表面温度が非晶性樹脂(A)のガラス転移温度よりも20℃以上高い金型内で射出成形して得られる成形体である。本実施形態の成形体は、少なくとも成形時に金型汚染のような不具合を抑制できる。さらには、本実施形態の成形体は、樹脂被覆Al顔料(B)を含有することによって、いわゆるメタリック調の光沢を発現させることも期待できる。またさらに、金型温度を樹脂のガラス転移温度よりも20℃以上高くすることで、光沢やウェルドを低減した優れた美観を有する成形体を得ることができる。ただし、本実施形態の作用はこれらに限定されない。
<非晶性樹脂(A)>
ここでいう非晶性樹脂とは、結晶化に伴う発熱ピークが観察されない(結晶領域を持たない)か、あるいは観察されたとしても結晶融解熱量が10J/g以下となるような結晶化度が極めて低い熱可塑性樹脂のことをいう。結晶融解熱量は、示差走査熱量計により測定されるものである。非晶性樹脂としては、例えば、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ASA(アクリレート−スチレン−アクリロニトリル)樹脂、AES(アクリロニトリル−エチレン−スチレン)樹脂及びアクリル樹脂が挙げられ、これらの中では、ABS樹脂、AS樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ASA樹脂、及びAES樹脂が好ましい。
ABS樹脂、ASA樹脂及びAES樹脂は、それぞれ、芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体とその他の共重合可能な単量体とを重合させた共重合体の1種である。かかる樹脂は、好ましくは、ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体と必要によりその他の共重合可能な単量体とをグラフトさせたグラフト共重合体であってもよく、そのグラフト共重合体に、更に芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体と必要によりその他の共重合可能な単量体とを重合させた共重合体であってもよく、それらの混合物であってもよい。
ゴム質重合体としては、例えば、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム及びエチレン系ゴム、並びに、ジエン系単量体、アクリル系単量体及びエチレンのうちの2種以上の単量体の共重合体が挙げられる。ゴム質重合体の具体例としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸n−ブチル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸n−ブチル−メタクリル酸メチル共重合体、ブタジエン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体、エチレン−イソプレン共重合体及びエチレン−アクリル酸メチル共重合体が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ゴム質重合体の体積平均粒子径は、特に限定されないが、耐衝撃性等の機械的強度、成形加工性及び成形品外観のバランスの観点から、0.1〜1.2μmであると好ましく、0.15〜0.8μmであるとより好ましく、0.2〜0.4μmであるとさらに好ましい。この体積平均粒子径は、実施例に記載の方法に準拠して測定される。
芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン及びp−t−ブチルスチレンが挙げられる。これらの中でも、実用物性及び生産性の観点から、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シアン化ビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、及びエタクリロニトリルが挙げられる。これらの中でも、実用物性及び生産性の観点から、アクリロニトリルが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記その他の共重合可能な単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、及び(メタ)アクリル酸n−ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル、さらに、(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸類、N−フェニルマレイミド及び無水マレイン酸が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態において用いられる得るポリカーボネートとしては、芳香族ヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物をホスゲン又は炭酸のジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体又は共重合体であると好ましい。熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体又は共重合体の製造方法は、特に限定されず、公知の方法、すなわち、ホスゲン法(界面重合法)及び溶融法(エステル交換法)が採用される。
アクリル樹脂としては、例えば、下記のアクリル系ゴム含有重合体及び/又は熱可塑性重合体を用いることができる。
アクリル系ゴム含有重合体としては、アクリル酸アルキルを主成分として含む単量体成分を重合して得られるゴム質重合体の存在下に、メタクリル酸アルキルを主成分として含む単量体成分をグラフト重合して得られたゴム含有重合体が挙げられる。ここで、ある単量体を「主成分」とすることは、重合体を構成する各種の単量体の中でそのある単量体の含有割合が最も多いことを意味する、主成分である単量体の含有割合は、重合体を基準として、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは、重合体がその単量体からなることである。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味する。
単量体成分中の上記アクリル酸アルキルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル及びアクリル酸n−オクチルが挙げられる。これらの中では、実用物性及び生産性の観点から、アクリル酸メチル及びアクリル酸n−ブチルが好ましく、アクリル酸n−ブチルがより好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
単量体成分中の上記アクリル酸アルキル以外の単量体としては、例えば、メタクリル酸アルキル、これらと共重合可能な二重結合を有する他の単量体、及び多官能性単量体が挙げられる。
メタクリル酸アルキルとしては、例えば、アルキル基が直鎖状は分岐鎖状のものが挙げられる。メタクリル酸アルキルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル及びメタクリル酸n−ヘキシルが挙げられる。これらの中では、実用物性及び生産性の観点から、メタクリル酸メチル好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
これらのアクリル酸アルキル及び/又はメタクリル酸アルキルと共重合可能な二重結合を有する他の単量体としては、例えば、アクリル酸低級アルコール、アクリル酸シアノエチル、アクリルアミド及び(メタ)アクリル酸等のアクリル系単量体;スチレン及びアルキル置換スチレン等の芳香族ビニル単量体;並びに、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
上記以外のアクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル及び(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル等の(メタ)アクリル酸アルキル以外の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
非晶性樹脂(A)のガラス転移温度は、特に限定されず、例えば、80〜200℃であってもよい。本明細書において、ガラス転移温度は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7121に準じて測定される。より具体的には、非晶性樹脂(A)を溶融状態から20℃/分の降温速度で30℃まで降温した後、20℃/minの昇温速度で昇温した場合に現れる階段状吸熱ピークの中点として得られる温度をガラス転移温度とする。
非晶性樹脂(A)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物における非晶性樹脂(A)の含有割合は、強度及び生産性の観点から、熱可塑性樹脂組成物を基準として、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。熱可塑性樹脂組成物における非晶性樹脂(A)の含有割合の上限は、後述の樹脂被覆Al顔料(B)の含有割合を満足するものであれば、特に限定されない。本実施形態の成形体は、熱可塑性樹脂組成物における非晶性樹脂の含有割合がリッチである態様であっても、優れた外観を示すことができる。
<表面に樹脂が被覆されたアルミニウム顔料(B)>
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、表面に樹脂が被覆されたアルミニウム顔料(B)を含有する。ここで、「アルミニウム顔料」とは、アルミニウムを主成分として含む材質からなる顔料を意味し、その形状は薄片であることが好ましい。また、材質がアルミニウムを「主成分」として含むことは、材質を構成する各種の元素の中でアルミニウムの含有割合が最も多いことを意味する、主成分であるアルミニウムの含有割合は、材質を基準として、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは、その材質がアルミニウムからなることである。
アルミニウム顔料は、耐衝撃性及びメタリック感の観点から、その平均粒子径が5μm以上50μm以下であることが好ましく、7μm以上30μm以下であることがより好ましい。アルミニウム顔料の平均粒子径は、レーザー顕微鏡によりその長径を測定し、それを個々のアルミニウム顔料の粒子径とし、n=50以上の任意のアルミニウム顔料の測定結果から、すなわちアルミニウム顔料の測定サンプル数を50個以上として、相加平均値を算出することにより求められる。
また、アルミニウム顔料は、耐衝撃性及び輝度感の観点から、平均厚さが0.05〜0.4μmであることが好ましく、0.08〜0.35μmであることがより好ましい。アルミニウム顔料の平均厚さは、例えば、光学顕微鏡やSEM(走査型電子顕微鏡)等の電子顕微鏡によりアルミニウム顔料の断面を観察し、n=50以上の任意のアルミニウム顔料の厚さの測定結果から、すなわちアルミニウム顔料の測定サンプル数を50個以上として、相加平均値を算出することにより求められる。
(アルミニウム顔料の表面を被覆する樹脂)
上記樹脂としては、本発明の効果をより有効かつ確実に奏する観点から、1種又は2種以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体を構成単位とする樹脂が好ましく、ラジカル重合性二重結合を1個又は2個有する1種以上の化合物に由来する単位(C)と、ラジカル重合性二重結合を2個以上有する1種以上の単量体(以下、「単位(D)を構成する単量体」ともいう。)に由来する単位(D)とを有する重合体から構成される樹脂がより好ましい。同様の観点から、ラジカル重合性二重結合を1個又は2個有する化合物としては、ラジカル重合性二重結合を有するカルボン酸、ラジカル重合性二重結合を有するリン酸モノエステル若しくはジエステル、ラジカル重合性二重結合を有するホスホン酸モノ若しくはジエステル、及びラジカル重合性二重結合を有するカップリング剤からなる群より選ばれる1種以上の化合物(以下、「単位(C)を構成する化合物」ともいう。)が好ましい。なお、上記樹脂を合成する際には、必要に応じて重合開始剤を用いることができる。
(単位(C)を構成する化合物)
単位(C)を構成する化合物のうち、ラジカル重合性二重結合を有するカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸及びフマル酸が挙げられる。これらのカルボン酸は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記カルボン酸の好適な使用量は、アルミニウム顔料の種類と特性、特にその表面積によって異なるが、アルミニウム顔料100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5.0質量部であることがより好ましい。ラジカル重合性二重結合を有するカルボン酸の使用量が上記範囲内であることにより、アルミニウム顔料に樹脂が付着しやすい傾向にある。
単位(C)を構成する化合物のうち、ラジカル重合性二重結合を有するリン酸モノエステル若しくはジエステルとしては、特に限定されないが、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、トリ−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジ−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、トリ−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、及び2−メタクリロイルオキシプロピルホスフェートが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、単位(C)を構成する化合物のうち、ラジカル重合性二重結合を有するホスホン酸モノ若しくはジエステルとしては、特に限定されないが、例えば、ビス(2−クロロエチル)ビニルホスホネート、及びジアリルジブチルホスホノサクシネートが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合性二重結合を有するリン酸モノエステル若しくはジエステル及びホスホン酸モノエステル若しくはジエステルのうちでは、ラジカル重合性二重結合を有するリン酸モノエステルが好ましい。このリン酸モノエステルは、2個のOH基を有するリン酸基を有する。そのため、リン酸モノエステルを構成単位として含む樹脂は、より強固にアルミニウム粒子の表面に固定されると推定される。より好ましいリン酸モノエステルとしては、特に限定されないが、例えば、メタクリロイルオキシ基及びアクロイルオキシ基を有するモノエステルが挙げられ、具体的には、2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート及び2−アクロイルオキシエチルホスフェートが挙げられる。
ラジカル重合性二重結合を有するリン酸モノエステル若しくはジエステル及びホスホン酸モノエステル若しくはジエステルの好適な使用量は、アルミニウム顔料の種類と特性、特にその表面積によって異なるが、アルミニウム顔料100質量部に対して、0.01〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜20質量部である。
単位(C)を構成する化合物のうち、ラジカル重合性二重結合を有するカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤及びアルミニウム系カップリング剤が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
上記シランカップリング剤の例としては、特に限定されないが、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン及びビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シランが挙げられる。
上記チタネート系カップリング剤の例としては、特に限定されないが、例えば、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネートが挙げられる。
上記アルミニウム系カップリング剤の例としては、特に限定されないが、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート及びジルコアルミネート等が挙げられる。
上記ラジカル重合性二重結合を有するカップリング剤の好適な使用量は、アルミニウム顔料の種類と特性、特に表面積によって異なるが、アルミニウム顔料100質量部に対して0.01〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部である。使用量が上記範囲であることにより、アルミニウム顔料に対して樹脂の付着性が向上する傾向にある。
(単位(D)を構成する単量体)
単位(D)を構成する単量体である、ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体としては、単位(C)を構成する化合物以外のラジカル重合性二重結合を2個以上有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジ−ペンタエリスリトールヘキサアクリレートが挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体の好適な使用量は、アルミニウム顔料100質量部に対して0.1〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部〜40質量部である。この使用量が0.1質量部以上であることにより、本実施形態の成形体の衝撃強度を保持する性質がより向上する傾向にある。また、この使用量が50質量部以下であることにより、光輝性等のアルミニウム顔料としての特性がより向上する傾向にある。
(その他の単量体)
また、アルミニウム顔料の表面を被覆する樹脂として、必要に応じて、単位(C)を構成する化合物以外の、1分子中にラジカル重合性二重結合を1個有する単量体を用いてもよい。1分子中に重合性二重結合を1個有する単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン及びアクリル酸メチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル並びにプロピオン酸ビニルが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
〔表面に樹脂が被覆されたアルミニウム顔料の製造方法〕
本実施形態の樹脂被覆Al顔料(B)の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、下記の製造方法が挙げられる。まず、樹脂で被覆されていないアルミニウム顔料を有機溶剤中に分散後、加温し、攪拌しながら単位(C)を構成する化合物を添加し、これによりアルミニウム顔料の表面を処理する。次に、その系内に、単位(D)を構成する単量体と重合開始剤とを一括で添加するか、又は、連続的に添加し、単位(D)を構成する単量体を重合させて、アルミニウム顔料表面に付着した樹脂層を形成させる。その後、必要に応じて、有機溶剤を適量除去して、樹脂被覆Al顔料(B)が有機溶剤中に分散したアルミニウムペーストが得られる。以下、より詳細に説明する。
まず、樹脂で被覆されていないアルミニウム顔料を有機溶剤に分散後、加温し、攪拌しながら、その系内に単位(C)を構成する化合物を添加する。この際、特に限定されないが、有機溶剤中のアルミニウム顔料の含有割合を1〜30質量%にすることが好ましい。この含有割合が1%以上であることにより、最終的に有機溶剤を取り除く操作がより容易となる傾向にある。また、この含有割合が30%以下であることにより、アルミニウム顔料の分散がより均一になりやすい傾向にある。なお、この工程において系内の加温の温度は、40℃〜150℃の温度であることが好ましく、単位(C)を構成する化合物の添加後の撹拌時間は5分〜10時間程度であることが好ましい。加温の温度が40℃以上であることにより、その後の工程において単位(D)を構成する単量体の重合温度まで昇温するのに要する時間が短くなる傾向にある。また、加温の温度が150℃以下であることにより、有機溶剤の蒸気の発火等のおそれをより抑制する傾向にある。また、上記所要時間が5分以上であることにより、単位(C)を構成する化合物が拡散しやすい傾向にある。また、上記所要時間が10時間以下であることにより、より短時間で操作を終えることができる傾向にある。
次に、上記系内に単位(D)を構成する単量体と重合開始剤とを一括で添加するか、又は徐々に連続的に追加しながら添加し、単位(D)を構成する単量体を重合させてアルミニウム顔料表面に付着した樹脂層を形成させる。その後、必要に応じて(例えばろ過することにより)有機溶剤を除去して、樹脂被覆Al顔料(B)を含有するアルミニウムペーストが得られる。重合温度は特に限定されないが、60℃〜150℃であることが好ましい。また、窒素及びヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で重合させることが好ましい。上記条件とすることにより、重合効率がより高くなる傾向にある。
上記有機溶剤としては、樹脂層の形成を阻害しないものであれば特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン及びソルベントナフサ等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン及びジエチルエーテル等のエーテル類;並びに、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
本実施形態で用いられる重合開始剤は、一般にラジカル発生剤として知られるものであれば特に制限されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド及びビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキサイド類;2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル及び2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、単位(D)を構成する単量体100質量部に対して、0.1質量部〜50質量部であると好ましい。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において、樹脂被覆Al顔料(B)の含有量は、成形体の輝度の観点から、非晶性樹脂(A)100質量部に対して0.1〜10質量部であり、好ましくは0.5〜10質量部であり、より好ましくは1〜5質量部である。樹脂被覆Al顔料(B)の含有量が上記範囲内にあることにより、成形体の輝度感をより優れたものとできる。
(添加剤)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、成形体の剛性、耐衝撃性及び耐熱性等を損なわない範囲で、必要に応じて他の添加剤を含んでもよい。その他の添加剤としては、例えば、ホスファイト系、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤及び酸化防止剤;亜リン酸塩及び次亜リン酸塩等の着色防止剤;核剤;アミン系、スルホン酸系及びポリエーテル系等の帯電防止剤;アルミニウム顔料以外の顔料等の着色剤が挙げられる。
〔熱可塑性樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、非晶性樹脂(A)、樹脂被覆Al顔料(B)を含むアルミニウムペースト及びその他の添加剤を予め混合、混練した混練物を、例えばオープンロール、インテシブミキサー、インターナルミキサー、コニーダー、二軸ローター付の連続混練機及び押出機等の一般的な混和機を用いて溶融混練することにより、製造することができる。
〔成形体及びその製造方法〕
本実施形態の成形体は、上述の熱可塑性樹脂組成物を、その熱可塑性樹脂組成物の充填の際に樹脂充填部内壁の表面温度が全体、部分的を問わず非晶性樹脂(A)のガラス転移温度よりも20℃以上高い金型内で射出成形して得られる。言い換えれば、本実施形態の成形体の製造方法は、上述の熱可塑性樹脂組成物を、その熱可塑性樹脂組成物の充填の際に樹脂充填部内壁の表面温度が全体、部分的を問わず非晶性樹脂(A)のガラス転移温度よりも20℃以上高い金型内で射出成形して成形体を得る工程を有するものである。ここで、「樹脂充填部内壁」とは、金型のうち樹脂が充填される空間を区画する壁の部分をいう。この製造方法における熱可塑性樹脂組成物の成形法としては、例えば、溶融した熱可塑性樹脂組成物を金型に充填する際には金型温度を高くしておき、充填完了後に金型温度を下げて成形品を取り出すいわゆるヒートサイクル成形法を用いることができる。ヒートサイクル成形法としては、キャビティ表面を熱媒にて加熱する工程と冷媒にて冷却する工程とを繰り返す方法が一般的に用いられる。加熱方法としては、例えば、加熱したオイル、蒸気、電気ヒータ及び高周波による加熱が挙げられる。
上記表面温度は、本発明の効果を奏する観点から、非晶性樹脂(A)のガラス転移温度よりも20℃以上高い温度であれば特に限定されないが、例えば、そのガラス転移温度よりも50℃以上高い温度であると好ましく、100℃以上高い温度であるとより好ましい。なお、上記内壁温度の上限は特に限定されず、成形体を製造できる温度であれば特に限定されず、例えば、300℃であってもよい。
本実施形態において、上記内壁温度以外の条件は、従来の射出成形の条件と同様であってもよく、また、用いられる射出成形機も特に限定されない。さらに、成形体の製造方法は、上記の工程以外に、通常の射出成形によって成形体を製造する方法で採用される各種工程を備えていてもよい。
本実施形態の成形体は、特に限定されないが、メタリック調の意匠が求められる成形体であると好ましく、例えば、自動車内外装、家電製品、事務機器、住設及び雑貨に用いられる成形体が挙げられる。成形体の形状や寸法は、これらの用途に適したものであれば特に限定されない。本実施形態の成形体は、光沢やウェルドを低減した優れた美観を有するものである。
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
[実施例に用いた原料]
<非晶性樹脂(A)>
(A−1)ABS樹脂(ブタジエン系ゴム50質量%(体積平均粒子径0.3μm)、アクリロニトリル12質量%、スチレン38質量%、グラフト率45%、非グラフト成分の還元粘度0.38m3/kg)
(A−2)AS樹脂(アクリロニトリル30質量%、スチレン70質量%、ポリスチレン換算の重量平均分子量137000)
(A−3)アクリロニトリル・ブチルアクリレート・スチレン共重合体(AS樹脂にブチルアクリレートを共重合したもの)(アクリロニトリル27質量%、スチレン63質量%、ブチルアクリレート10質量%、ポリスチレン換算の重量平均分子量110000)
(A−4)アクリル樹脂(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名「デルペット80N」)
(A−5)ポリカーボネート(奇美実業社製、商品名「ワンダーライトPC−110」)
(A−6)ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名「PSJ−ポリスチレン H9152」
なお、重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー社製、商品名「HLC8220GPC」)、カラム(東ソー社製、商品名「TSK−GEL」、G6000HXL−G5000HXL−G5000HXL−G4000HXL−G3000HXLを直列に連結したもの)を用いて測定した。樹脂試料20mg±0.5mgをテトラヒドロフラン10mLに溶解した後、その溶液を0.45μmのフィルターで濾過した。濾過後の溶液を40℃のカラムに100μL注入し、検出器RI温度を40℃に設定して測定し、市販の標準ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。
グラフト率は、ゴム質重合体(ブタジエン系ゴム等)にグラフト共重合した成分の、ゴム質重合体に対する質量割合として定義した。重合反応により生成した重合体をアセトンに溶解し、遠心分離器によりアセトン可溶分と不溶分とに分離した。この時、アセトン可溶分は、重合反応した共重合体のうちグラフト反応しなかった成分(非グラフト成分)であり、アセトン不溶分は、ゴム質重合体、及びゴム質重合体にグラフト反応した成分(グラフト成分)である。アセトン不溶分の質量からゴム質重合体の質量を差し引いた値がグラフト成分の質量として定義されるので、これらの値からグラフト率を求めた。
熱可塑性樹脂をアセトンに溶解し、これを遠心分離機によりアセトン可溶分、及びアセトン不溶分に分離した。熱可塑性樹脂におけるゴム質重合体にグラフトしていない成分(非グラフト成分)の還元粘度は、アセトン可溶分0.25gを2−ブタノン50mLにて溶解した溶液について、30℃にてCannon−Fenske型毛細管中の流出時間を測定することにより求めた。
ゴム質重合体の体積平均粒子径は以下のようにして求めた。
体積平均粒子径は測定対象の樹脂をエポキシ樹脂に包埋させ、四酸化オスミウム及び四酸化ルテニウム等の染色剤にて染色処理して、厚さ約50nmの超薄切片を作製した後、その超薄切片を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察し、超薄切片の任意の10μm×10μmの範囲を撮影した。得られた画像において、染色部が上記ゴム質重合体部分として観察されたので、その染色部の体積平均粒子径を測定し、上記ゴム質重合体の体積平均粒子径とした。なお、染色部の体積平均粒子径は画像解析ソフトを用いて、個々のゴム粒子像の面積を測定し、それと同じ面積となるような円の直径から求めた。体積平均粒子径は、画像解析ソフト「A像くん」(旭化成エンジニアリング株式会社製」を用い、測定した。
(アルミペースト1)
容積1Lの四つ口フラスコに、旭化成ケミカルズ(株)製の旭化成アルミペーストであるFD−5060(商品名、アルミニウム分72%、平均粒子径6μm、平均厚さ0.12μm)67.6g及びミネラルスピリット300gを加え、窒素ガスを導入しながら攪拌し、系内の温度を80℃に昇温した。次いで、そこに、アクリル酸0.375gを添加し、80℃で30分間攪拌を続けた。次に、トリメチロールプロパントリメタクリレート3.5gとジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート1.5gと2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル1.0gとをミネラルスピリット40gに溶解させ、その溶液を定量ポンプにより約0.26g/minの速度で3時間かけて上記四つ口フラスコ内に添加し、その後、系内の温度を80℃に保ちながら合計6時間重合した。この時点でサンプリングしたろ液中のトリメチロールプロパントリメタアクリレートの未反応量をガスクロマトグラフィで分析したとろ、添加量の99.5%以上が反応していた。重合終了後、スラリーをろ過し、アルミニウムペースト(以下、単に「アルミペースト」ともいう。)1を得た。アルミペースト1中の樹脂被覆Al顔料の含有割合は、50質量%であった。
(アルミペースト2)
旭化成アルミペーストFD−5060を旭化成アルミペーストBS−120(商品名、アルミニウム分65%、平均粒子径13μm、平均厚さ0.11μm)に変更した以外はアルミペースト1の製造と同様にして、アルミペースト2を得た。アルミペースト2中の樹脂被覆Al顔料の含有割合は、50質量%であった。
(アルミペースト3)
旭化成アルミペーストFD−5060を旭化成アルミペーストMC−808(商品名、アルミニウム分56%、平均粒子径12μm、平均厚さ0.18μm)に変更した以外はアルミペースト1の製造と同様にして、アルミペースト3を得た。アルミペースト3中の樹脂被覆Al顔料の含有割合は、50質量%であった。
(アルミペースト4)
旭化成アルミペーストFD−5060を旭化成アルミペーストGA−40A(商品名、アルミニウム分74%、平均粒子径19μm、平均厚さ0.36μm)に変更した以外はアルミペースト1の製造と同様にして、アルミペースト4を得た。アルミペースト4中の樹脂被覆Al顔料の含有割合は、64質量%であった。
(アルミペースト5)
旭化成アルミペーストFD−5060を旭化成アルミペーストBS−800(商品名、アルミニウム分66%、平均粒子径34μm、平均厚さ0.44μm)に変更した以外はアルミペースト1の製造と同様にしてアルミペースト5を得た。アルミペースト5中の樹脂被覆Al顔料の含有割合は、61質量%であった。
(アルミペースト6)
旭化成ケミカルズ社製の旭化成アルミペーストFD−5060(商品名)をそのまま、アルミペースト6として用いた。
(アルミペースト7)
旭化成ケミカルズ社製の旭化成アルミペーストBS−120(商品名)をそのまま、アルミペースト7として用いた。
(アルミペースト8)
旭化成ケミカルズ社製の旭化成アルミペーストMC−808(商品名)をそのまま、アルミペースト8として用いた。
(アルミペースト9)
旭化成ケミカルズ社製の旭化成アルミペーストGA−40A(商品名)をそのまま、アルミペースト9として用いた。
(アルミペースト10)
旭化成ケミカルズ社製の旭化成アルミペーストBS−800(商品名)をそのまま、アルミペースト10として用いた。
アルミニウム顔料の平均粒子径は下記のようにして測定した。まず、その顔料が含まれるアルミペーストをガラス板の表面に乾燥膜厚が10μmになるように塗布し、60℃のオーブンで30分乾燥して塗板を得た。その塗板の表面をレーザー顕微鏡により観察して個々のアルミニウム顔料の長径を測定し、それを個々のアルミニウム顔料の粒子径とした。n=50以上の任意のアルミニウム顔料の粒子径測定結果から、すなわちアルミニウム顔料の測定サンプル数を50個以上として、粒子径の相加平均値を算出することにより平均粒子径を求めた。また、アルミニウム顔料の平均厚さは、金属成分1g当たりの水面拡散面積WCA(m2/g)を測定し、下式により算出した。
平均厚さ(μm)=0.4/[WCA(m2/g)]
水面拡散面積WCAの測定に際し、前処理として、アルミニウム顔料粉末約1gに、5%ステアリン酸のミネラルスピリット溶液を1〜2mL加え、予備分散後、石油ベンジン50mLを加えて混合し、40〜45℃で2時間加温後、フィルターで吸引濾過し、パウダー化した。前処理以外はJIS K5906(1998)に準じて、平均厚さを導き出した。
〔例1〜20〕
上記非晶性樹脂及びアルミペーストを、下記表1及び2に示す組成で混合して混合物を得た。次いで、田辺プラスチック機械社製の単軸押出機(型番:HS30)を用い、そのシリンダー温度を表1及び表2に示す温度に設定して、上記混合物を溶融混練することにより、熱可塑性樹脂組成物であるペレットを得た。得られたペレットを、東芝機械社製の射出成形機(型番:EC−100S4A)を用いて溶融してから金型内に射出した。この際、金型のコア(可動側)の温調機の設定温度を70℃にし、キャビティ(固定側)は金型に内蔵したヒーターにて加熱し、内壁の表面温度(表中、「キャビ側金型温度」と表記。)が下記表3〜6に示す条件に達した時点で射出速度3mm/秒にてペレットの溶融物を射出した。上記溶融物の金型内への充填完了後、ヒーターの電源を切り、冷却水を通水して金型を冷却し、キャビティ(固定)側内壁の表面温度が80℃に達した時点で試験片を取り出した。こうして、模式的な平面図で図1に示す厚み2.5mmの円形の穴が形成された平板状の試験片(寸法も図1内に記載。)を射出成形にて作製した。なお、上記溶融物の金型内への充填完了後、キャビティ(固定)側内壁の表面温度が80℃に達するまでの間、上記溶融物すなわち熱可塑性樹脂組成物の冷却を行ったが、その時間が30秒以内の場合は充填完了から30秒経過後に試験片を取り出した。得られた試験片を射出成形機から取り出した後の金型のキャビティ(固定)側の内壁表面を目視で確認し、下記のように評価した。
〔金型付着物評価〕
金型のキャビティ(固定)側の内壁表面の外観状態を目視にて観察し、下記のように評価した。
3:アルミニウム顔料の付着は見られなかった。
2:1cm2あたり1〜2個のアルミニウム顔料の付着が見られた。
1:1cm2あたり3個以上のアルミニウム顔料の付着が見られた。
〔成形体の外観評価〕
また、成形体の外観を、下記のようにして評価した。成形体のキャビティ(固定側)に対応する面において、模式的な平面図で図1に示すように、穴の円周端のゲート側とは反対側にある位置から延びているウェルドラインの長さを目視にて測定して、下記のように評価した。
3:ウェルドラインの長さが10mm未満
2:ウェルドラインの長さが10mm以上、20mm未満
1:ウェルドラインの長さが20mm以上
各例の組成を表1及び表2に示し、評価結果を表3〜6に示す。
Figure 0006576022
Figure 0006576022
Figure 0006576022
Figure 0006576022
Figure 0006576022
Figure 0006576022
表1〜6に示す結果からも明らかなように、本発明の実施例に相当する例ではいずれも、少なくとも金型汚染を抑制し、優れた美観を有する成形体を得られることが確認できた。
本発明の成形体はメタリック調の美観に優れており、特に意匠性が求められる多様な製品に適用することが可能であり、その点で産業上の利用可能性を有している。

Claims (1)

  1. 非晶性樹脂(A)と、前記非晶性樹脂(A)100質量部に対して0.1質量部〜10質量部の表面に樹脂が被覆されたアルミニウム顔料(B)と、を含有する熱可塑性樹脂組成物を、樹脂充填部内壁の表面温度が前記非晶性樹脂(A)のガラス転移温度よりも20℃以上高い金型内で射出成形して成形体を得る工程を有する、成形体の製造方法であって、
    前記非晶性樹脂(A)が、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ASA樹脂及びAES樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂であり、
    前記アルミニウム顔料(B)を被覆した前記樹脂が、ラジカル重合性二重結合を有するカルボン酸、及びラジカル重合性二重結合を有するホスホン酸モノエステル若しくはジエステルからなる群より選ばれる1種以上の化合物に由来する単位(C)と、ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体に由来する単位(D)と、を有する重合体から構成される樹脂である、製造方法
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