JP6576022B2 - 成形体の製造方法 - Google Patents
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[1]非晶性樹脂(A)と、前記非晶性樹脂(A)100質量部に対して0.1質量部〜10質量部の表面に樹脂が被覆されたアルミニウム顔料(B)と、を含有する熱可塑性樹脂組成物を、樹脂充填部内壁の表面温度が前記非晶性樹脂(A)のガラス転移温度よりも20℃以上高い金型内で射出成形して成形体を得る工程を有する、成形体の製造方法であって、前記非晶性樹脂(A)が、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ASA樹脂及びAES樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂であり、前記アルミニウム顔料(B)を被覆した前記樹脂が、ラジカル重合性二重結合を有するカルボン酸、及びラジカル重合性二重結合を有するホスホン酸モノエステル若しくはジエステルからなる群より選ばれる1種以上の化合物に由来する単位(C)と、ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体に由来する単位(D)と、を有する重合体から構成される樹脂である、製造方法。
ここでいう非晶性樹脂とは、結晶化に伴う発熱ピークが観察されない(結晶領域を持たない)か、あるいは観察されたとしても結晶融解熱量が10J/g以下となるような結晶化度が極めて低い熱可塑性樹脂のことをいう。結晶融解熱量は、示差走査熱量計により測定されるものである。非晶性樹脂としては、例えば、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ASA(アクリレート−スチレン−アクリロニトリル)樹脂、AES(アクリロニトリル−エチレン−スチレン)樹脂及びアクリル樹脂が挙げられ、これらの中では、ABS樹脂、AS樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ASA樹脂、及びAES樹脂が好ましい。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、表面に樹脂が被覆されたアルミニウム顔料(B)を含有する。ここで、「アルミニウム顔料」とは、アルミニウムを主成分として含む材質からなる顔料を意味し、その形状は薄片であることが好ましい。また、材質がアルミニウムを「主成分」として含むことは、材質を構成する各種の元素の中でアルミニウムの含有割合が最も多いことを意味する、主成分であるアルミニウムの含有割合は、材質を基準として、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは、その材質がアルミニウムからなることである。
上記樹脂としては、本発明の効果をより有効かつ確実に奏する観点から、1種又は2種以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体を構成単位とする樹脂が好ましく、ラジカル重合性二重結合を1個又は2個有する1種以上の化合物に由来する単位(C)と、ラジカル重合性二重結合を2個以上有する1種以上の単量体(以下、「単位(D)を構成する単量体」ともいう。)に由来する単位(D)とを有する重合体から構成される樹脂がより好ましい。同様の観点から、ラジカル重合性二重結合を1個又は2個有する化合物としては、ラジカル重合性二重結合を有するカルボン酸、ラジカル重合性二重結合を有するリン酸モノエステル若しくはジエステル、ラジカル重合性二重結合を有するホスホン酸モノ若しくはジエステル、及びラジカル重合性二重結合を有するカップリング剤からなる群より選ばれる1種以上の化合物(以下、「単位(C)を構成する化合物」ともいう。)が好ましい。なお、上記樹脂を合成する際には、必要に応じて重合開始剤を用いることができる。
単位(C)を構成する化合物のうち、ラジカル重合性二重結合を有するカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸及びフマル酸が挙げられる。これらのカルボン酸は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記カルボン酸の好適な使用量は、アルミニウム顔料の種類と特性、特にその表面積によって異なるが、アルミニウム顔料100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5.0質量部であることがより好ましい。ラジカル重合性二重結合を有するカルボン酸の使用量が上記範囲内であることにより、アルミニウム顔料に樹脂が付着しやすい傾向にある。
単位(D)を構成する単量体である、ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体としては、単位(C)を構成する化合物以外のラジカル重合性二重結合を2個以上有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジ−ペンタエリスリトールヘキサアクリレートが挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、アルミニウム顔料の表面を被覆する樹脂として、必要に応じて、単位(C)を構成する化合物以外の、1分子中にラジカル重合性二重結合を1個有する単量体を用いてもよい。1分子中に重合性二重結合を1個有する単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン及びアクリル酸メチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル並びにプロピオン酸ビニルが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の樹脂被覆Al顔料(B)の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、下記の製造方法が挙げられる。まず、樹脂で被覆されていないアルミニウム顔料を有機溶剤中に分散後、加温し、攪拌しながら単位(C)を構成する化合物を添加し、これによりアルミニウム顔料の表面を処理する。次に、その系内に、単位(D)を構成する単量体と重合開始剤とを一括で添加するか、又は、連続的に添加し、単位(D)を構成する単量体を重合させて、アルミニウム顔料表面に付着した樹脂層を形成させる。その後、必要に応じて、有機溶剤を適量除去して、樹脂被覆Al顔料(B)が有機溶剤中に分散したアルミニウムペーストが得られる。以下、より詳細に説明する。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、成形体の剛性、耐衝撃性及び耐熱性等を損なわない範囲で、必要に応じて他の添加剤を含んでもよい。その他の添加剤としては、例えば、ホスファイト系、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤及び酸化防止剤;亜リン酸塩及び次亜リン酸塩等の着色防止剤;核剤;アミン系、スルホン酸系及びポリエーテル系等の帯電防止剤;アルミニウム顔料以外の顔料等の着色剤が挙げられる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、非晶性樹脂(A)、樹脂被覆Al顔料(B)を含むアルミニウムペースト及びその他の添加剤を予め混合、混練した混練物を、例えばオープンロール、インテシブミキサー、インターナルミキサー、コニーダー、二軸ローター付の連続混練機及び押出機等の一般的な混和機を用いて溶融混練することにより、製造することができる。
本実施形態の成形体は、上述の熱可塑性樹脂組成物を、その熱可塑性樹脂組成物の充填の際に樹脂充填部内壁の表面温度が全体、部分的を問わず非晶性樹脂(A)のガラス転移温度よりも20℃以上高い金型内で射出成形して得られる。言い換えれば、本実施形態の成形体の製造方法は、上述の熱可塑性樹脂組成物を、その熱可塑性樹脂組成物の充填の際に樹脂充填部内壁の表面温度が全体、部分的を問わず非晶性樹脂(A)のガラス転移温度よりも20℃以上高い金型内で射出成形して成形体を得る工程を有するものである。ここで、「樹脂充填部内壁」とは、金型のうち樹脂が充填される空間を区画する壁の部分をいう。この製造方法における熱可塑性樹脂組成物の成形法としては、例えば、溶融した熱可塑性樹脂組成物を金型に充填する際には金型温度を高くしておき、充填完了後に金型温度を下げて成形品を取り出すいわゆるヒートサイクル成形法を用いることができる。ヒートサイクル成形法としては、キャビティ表面を熱媒にて加熱する工程と冷媒にて冷却する工程とを繰り返す方法が一般的に用いられる。加熱方法としては、例えば、加熱したオイル、蒸気、電気ヒータ及び高周波による加熱が挙げられる。
<非晶性樹脂(A)>
(A−1)ABS樹脂(ブタジエン系ゴム50質量%(体積平均粒子径0.3μm)、アクリロニトリル12質量%、スチレン38質量%、グラフト率45%、非グラフト成分の還元粘度0.38m3/kg)
(A−2)AS樹脂(アクリロニトリル30質量%、スチレン70質量%、ポリスチレン換算の重量平均分子量137000)
(A−3)アクリロニトリル・ブチルアクリレート・スチレン共重合体(AS樹脂にブチルアクリレートを共重合したもの)(アクリロニトリル27質量%、スチレン63質量%、ブチルアクリレート10質量%、ポリスチレン換算の重量平均分子量110000)
(A−4)アクリル樹脂(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名「デルペット80N」)
(A−5)ポリカーボネート(奇美実業社製、商品名「ワンダーライトPC−110」)
(A−6)ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名「PSJ−ポリスチレン H9152」
体積平均粒子径は測定対象の樹脂をエポキシ樹脂に包埋させ、四酸化オスミウム及び四酸化ルテニウム等の染色剤にて染色処理して、厚さ約50nmの超薄切片を作製した後、その超薄切片を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察し、超薄切片の任意の10μm×10μmの範囲を撮影した。得られた画像において、染色部が上記ゴム質重合体部分として観察されたので、その染色部の体積平均粒子径を測定し、上記ゴム質重合体の体積平均粒子径とした。なお、染色部の体積平均粒子径は画像解析ソフトを用いて、個々のゴム粒子像の面積を測定し、それと同じ面積となるような円の直径から求めた。体積平均粒子径は、画像解析ソフト「A像くん」(旭化成エンジニアリング株式会社製」を用い、測定した。
容積1Lの四つ口フラスコに、旭化成ケミカルズ(株)製の旭化成アルミペーストであるFD−5060(商品名、アルミニウム分72%、平均粒子径6μm、平均厚さ0.12μm)67.6g及びミネラルスピリット300gを加え、窒素ガスを導入しながら攪拌し、系内の温度を80℃に昇温した。次いで、そこに、アクリル酸0.375gを添加し、80℃で30分間攪拌を続けた。次に、トリメチロールプロパントリメタクリレート3.5gとジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート1.5gと2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル1.0gとをミネラルスピリット40gに溶解させ、その溶液を定量ポンプにより約0.26g/minの速度で3時間かけて上記四つ口フラスコ内に添加し、その後、系内の温度を80℃に保ちながら合計6時間重合した。この時点でサンプリングしたろ液中のトリメチロールプロパントリメタアクリレートの未反応量をガスクロマトグラフィで分析したとろ、添加量の99.5%以上が反応していた。重合終了後、スラリーをろ過し、アルミニウムペースト(以下、単に「アルミペースト」ともいう。)1を得た。アルミペースト1中の樹脂被覆Al顔料の含有割合は、50質量%であった。
旭化成アルミペーストFD−5060を旭化成アルミペーストBS−120(商品名、アルミニウム分65%、平均粒子径13μm、平均厚さ0.11μm)に変更した以外はアルミペースト1の製造と同様にして、アルミペースト2を得た。アルミペースト2中の樹脂被覆Al顔料の含有割合は、50質量%であった。
旭化成アルミペーストFD−5060を旭化成アルミペーストMC−808(商品名、アルミニウム分56%、平均粒子径12μm、平均厚さ0.18μm)に変更した以外はアルミペースト1の製造と同様にして、アルミペースト3を得た。アルミペースト3中の樹脂被覆Al顔料の含有割合は、50質量%であった。
旭化成アルミペーストFD−5060を旭化成アルミペーストGA−40A(商品名、アルミニウム分74%、平均粒子径19μm、平均厚さ0.36μm)に変更した以外はアルミペースト1の製造と同様にして、アルミペースト4を得た。アルミペースト4中の樹脂被覆Al顔料の含有割合は、64質量%であった。
旭化成アルミペーストFD−5060を旭化成アルミペーストBS−800(商品名、アルミニウム分66%、平均粒子径34μm、平均厚さ0.44μm)に変更した以外はアルミペースト1の製造と同様にしてアルミペースト5を得た。アルミペースト5中の樹脂被覆Al顔料の含有割合は、61質量%であった。
旭化成ケミカルズ社製の旭化成アルミペーストFD−5060(商品名)をそのまま、アルミペースト6として用いた。
(アルミペースト7)
旭化成ケミカルズ社製の旭化成アルミペーストBS−120(商品名)をそのまま、アルミペースト7として用いた。
(アルミペースト8)
旭化成ケミカルズ社製の旭化成アルミペーストMC−808(商品名)をそのまま、アルミペースト8として用いた。
(アルミペースト9)
旭化成ケミカルズ社製の旭化成アルミペーストGA−40A(商品名)をそのまま、アルミペースト9として用いた。
旭化成ケミカルズ社製の旭化成アルミペーストBS−800(商品名)をそのまま、アルミペースト10として用いた。
平均厚さ(μm)=0.4/[WCA(m2/g)]
水面拡散面積WCAの測定に際し、前処理として、アルミニウム顔料粉末約1gに、5%ステアリン酸のミネラルスピリット溶液を1〜2mL加え、予備分散後、石油ベンジン50mLを加えて混合し、40〜45℃で2時間加温後、フィルターで吸引濾過し、パウダー化した。前処理以外はJIS K5906(1998)に準じて、平均厚さを導き出した。
上記非晶性樹脂及びアルミペーストを、下記表1及び2に示す組成で混合して混合物を得た。次いで、田辺プラスチック機械社製の単軸押出機(型番:HS30)を用い、そのシリンダー温度を表1及び表2に示す温度に設定して、上記混合物を溶融混練することにより、熱可塑性樹脂組成物であるペレットを得た。得られたペレットを、東芝機械社製の射出成形機(型番:EC−100S4A)を用いて溶融してから金型内に射出した。この際、金型のコア(可動側)の温調機の設定温度を70℃にし、キャビティ(固定側)は金型に内蔵したヒーターにて加熱し、内壁の表面温度(表中、「キャビ側金型温度」と表記。)が下記表3〜6に示す条件に達した時点で射出速度3mm/秒にてペレットの溶融物を射出した。上記溶融物の金型内への充填完了後、ヒーターの電源を切り、冷却水を通水して金型を冷却し、キャビティ(固定)側内壁の表面温度が80℃に達した時点で試験片を取り出した。こうして、模式的な平面図で図1に示す厚み2.5mmの円形の穴が形成された平板状の試験片(寸法も図1内に記載。)を射出成形にて作製した。なお、上記溶融物の金型内への充填完了後、キャビティ(固定)側内壁の表面温度が80℃に達するまでの間、上記溶融物すなわち熱可塑性樹脂組成物の冷却を行ったが、その時間が30秒以内の場合は充填完了から30秒経過後に試験片を取り出した。得られた試験片を射出成形機から取り出した後の金型のキャビティ(固定)側の内壁表面を目視で確認し、下記のように評価した。
金型のキャビティ(固定)側の内壁表面の外観状態を目視にて観察し、下記のように評価した。
3:アルミニウム顔料の付着は見られなかった。
2:1cm2あたり1〜2個のアルミニウム顔料の付着が見られた。
1:1cm2あたり3個以上のアルミニウム顔料の付着が見られた。
また、成形体の外観を、下記のようにして評価した。成形体のキャビティ(固定側)に対応する面において、模式的な平面図で図1に示すように、穴の円周端のゲート側とは反対側にある位置から延びているウェルドラインの長さを目視にて測定して、下記のように評価した。
3:ウェルドラインの長さが10mm未満
2:ウェルドラインの長さが10mm以上、20mm未満
1:ウェルドラインの長さが20mm以上
Claims (1)
- 非晶性樹脂(A)と、前記非晶性樹脂(A)100質量部に対して0.1質量部〜10質量部の表面に樹脂が被覆されたアルミニウム顔料(B)と、を含有する熱可塑性樹脂組成物を、樹脂充填部内壁の表面温度が前記非晶性樹脂(A)のガラス転移温度よりも20℃以上高い金型内で射出成形して成形体を得る工程を有する、成形体の製造方法であって、
前記非晶性樹脂(A)が、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ASA樹脂及びAES樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂であり、
前記アルミニウム顔料(B)を被覆した前記樹脂が、ラジカル重合性二重結合を有するカルボン酸、及びラジカル重合性二重結合を有するホスホン酸モノエステル若しくはジエステルからなる群より選ばれる1種以上の化合物に由来する単位(C)と、ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体に由来する単位(D)と、を有する重合体から構成される樹脂である、製造方法。
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