JP2006205571A - 射出成形品及び射出成形方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ウエルド部におけるフィラーの配向方向が一様で無いことが極めて容易に認識されるといった問題点を解消し得る射出成形方法を提供する。
【解決手段】射出成形方法は、アスペクト比が2以上であるフィラーが添加された透明な非晶性熱可塑性樹脂(ガラス転移温度Tg゜C)を用いた射出成形方法であって、金型温度を(Tg)〜(Tg+50)とした状態で、溶融非晶性熱可塑性樹脂をキャビティ18内に射出した後、金型温度を(Tg)〜(Tg+50)とした状態で、キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂における少なくともウエルド部を、第1の方向に、次いで、第2の方向に流動させることで、少なくともウエルド部に対して第1の方向及び第2の方向に剪断力を与える操作を、少なくとも1回、実行した後、金型温度を(Tg−20)以下に降下させてキャビティ18内の非晶性熱可塑性樹脂を冷却、固化させる各工程から成る。
【選択図】 図1
【解決手段】射出成形方法は、アスペクト比が2以上であるフィラーが添加された透明な非晶性熱可塑性樹脂(ガラス転移温度Tg゜C)を用いた射出成形方法であって、金型温度を(Tg)〜(Tg+50)とした状態で、溶融非晶性熱可塑性樹脂をキャビティ18内に射出した後、金型温度を(Tg)〜(Tg+50)とした状態で、キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂における少なくともウエルド部を、第1の方向に、次いで、第2の方向に流動させることで、少なくともウエルド部に対して第1の方向及び第2の方向に剪断力を与える操作を、少なくとも1回、実行した後、金型温度を(Tg−20)以下に降下させてキャビティ18内の非晶性熱可塑性樹脂を冷却、固化させる各工程から成る。
【選択図】 図1
Description
本発明は、射出成形品及び射出成形方法に関し、更に詳しくは、所謂スコリム(SCORIM,Shear Controlled ORientated Injection Molding)法を適用した射出成形方法、及び、係る射出成形方法によって得られた射出成形品に関する。
従来の射出成形法によって成形品を製造すると、成形品の表面にひけが発生したり、成形品に反りが発生し、成形品の寸法精度が著しく損なわれる場合があることが知られている。また、1カ所にゲート部が設けられた金型を使用して成形品を射出成形する場合、ゲート部から離れたキャビティの部分(樹脂充填末端)内の溶融樹脂に保圧圧力が加わり難く、成形品の寸法精度が損なわれる場合がある。一方、2カ所以上にゲート部が設けられた金型を使用して成形品を成形する場合、溶融樹脂合流点に相当する成形品の部分にウエルドが発生し易い。ウエルドが発生した射出成形品の部分(以下、ウエルド部と呼ぶ)は、外観不良、強度低下、寸法精度の低下などを引き起こす。特に、板状や針状、繊維状等のフィラーを配合した樹脂組成物を用いる場合、キャビティ内に射出された溶融樹脂組成物内におけるフィラーの配向方向は、一様ではなく、射出成形品の形状(開口部の有無、肉厚の変化等)、ゲート部の位置等によって複雑に変化する。その結果、ウエルド部にあっては、寸法精度が著しく低下したり、強度ばらつきが生じ易いだけでなく、フィラーの配向状態に大きな変化が生じる結果、ウエルド部が顕著に認められるといった問題が生じる。このような問題を解決するために、金型温度や射出速度、保圧圧力等の種々の成形条件を変更する方法が種々試みられているが、その効果は小さい。
このような従来の射出成形方法の課題を解決するための一方法として、特開昭61−17915号公報には、モールドキャビティに供給された溶融樹脂組成物の少なくとも一部に剪断力を加えつつ、溶融樹脂組成物を固化させることから成る射出成形方法(スコリム法)、並びに、剪断力を加える成形装置が開示されている。この射出成形方法によれば、射出用シリンダーから射出された溶融樹脂組成物でモールドキャビティ内を充填する。その後、剪断力を加える装置である2つのピストンにてモールドキャビティ内の溶融樹脂組成物に交互に剪断力を加えながら、樹脂組成物を固化させる。このように、モールドキャビティ内の溶融樹脂組成物に剪断力を加えることによって、固化しかけた熱可塑性樹脂が移動する結果、ウエルドの発生を抑制することができるとされている。
特開昭61−17915号公報に開示された方法にあっては、ウエルド部の内部におけるフィラーの配向方向を或る程度、一様とすることができるものの、ウエルド部の表面部分におけるフィラーの配向方向を一様とすることが困難であり、期待したほど、射出成形品のウエルド部の外観が向上しないといった問題がある。特に、射出成形品を透明な非晶性熱可塑性樹脂から成形した場合、ウエルド部の表面部分におけるフィラーの配向方向が一様で無いことが極めて容易に認識されてしまう。
従って、本発明の目的は、フィラーが添加された透明な非晶性熱可塑性樹脂から成形品を射出成形した場合、射出成形品のウエルド部におけるフィラーの配向方向が一様で無いことが極めて容易に認識されるといった従来のスコリム法の問題点を解消し得る射出成形方法、及び、係る射出成形方法によって得られた射出成形品を提供することにあり、特に、メタリック調フィラーやパール調フィラーを含む透明な非晶性熱可塑性樹脂から成形品を射出成形した場合、ウエルド部の外観が非常に優れた成形品を得ることができる射出成形方法、及び、係る射出成形方法によって得られた射出成形品を提供することにある。
上記の目的を達成するための本発明の射出成形方法は、キャビティを備えた金型を使用し、アスペクト比が2以上であるフィラーが添加された透明な溶融非晶性熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出し、冷却、固化させることで、ウエルド部を有する射出成形品を成形する射出成形方法であって、
使用する非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tをg(単位:゜C)としたとき、金型温度(単位:゜C)を(Tg)乃至(Tg+50)とした状態で、溶融非晶性熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出した後、
金型温度を(Tg)乃至(Tg+50)とした状態で、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂における少なくともウエルド部を、第1の方向に流動させ、次いで、第1の方向とは反対方向である第2の方向に流動させる操作を、少なくとも1回、実行した後、
金型温度を(Tg−20)以下に降下させて、キャビティ内の非晶性熱可塑性樹脂を冷却、固化させる、
各工程から成ることを特徴とする。
使用する非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tをg(単位:゜C)としたとき、金型温度(単位:゜C)を(Tg)乃至(Tg+50)とした状態で、溶融非晶性熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出した後、
金型温度を(Tg)乃至(Tg+50)とした状態で、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂における少なくともウエルド部を、第1の方向に流動させ、次いで、第1の方向とは反対方向である第2の方向に流動させる操作を、少なくとも1回、実行した後、
金型温度を(Tg−20)以下に降下させて、キャビティ内の非晶性熱可塑性樹脂を冷却、固化させる、
各工程から成ることを特徴とする。
尚、第1の方向及び第2の方向は、射出成形品の軸線と平行であることが望ましい。また、溶融非晶性熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出するために、少なくとも2つのゲート部を金型は備えていることが望ましい。尚、金型温度を(Tg)乃至(Tg+50)とした状態で、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂における少なくともウエルド部を、第1の方向に流動させ、次いで、第1の方向とは反対方向である第2の方向に流動させる操作を実行することで、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂における少なくともウエルド部に対して、第1の方向及び第2の方向に剪断力を与えることができる。
上記の目的を達成するための本発明の射出成形品は、アスペクト比が2以上であるフィラーが添加された透明な非晶性熱可塑性樹脂から成り、厚さがt(mm)であり、且つ、射出成形品の軸線と平行な方向に沿った長さを0.3t(mm)とするウエルド部を有する射出成形品であって、
射出成形品の表面から厚さ方向0.3t乃至0.7tを占めるウエルド部中心領域においては、射出成形品の軸線とフィラーの長軸との成す角度θCが0度乃至20度であるフィラーが、ウエルド部中心領域内に存在するフィラーの7割以上を占めることを特徴とする。
射出成形品の表面から厚さ方向0.3t乃至0.7tを占めるウエルド部中心領域においては、射出成形品の軸線とフィラーの長軸との成す角度θCが0度乃至20度であるフィラーが、ウエルド部中心領域内に存在するフィラーの7割以上を占めることを特徴とする。
本発明の射出成形品、あるいは、本発明の射出成形方法(以下、これらを総称して、単に、本発明と呼ぶ場合がある)において、フィラーの添加率は、0.01重量%乃至10重量%、好ましくは、0.02重量%乃至8重量%、より好ましくは0.03重量%乃至6重量%であることが望ましい。尚、フィラーの添加率が0.01重量%未満では、フィラーを添加した効果が認め難く、一方、フィラーの添加率が10重量%を超えると、射出成形品表面の凹凸が大きくなり、外観が悪くなるばかりか、衝撃性が著しく低下するといった現象が発生し、好ましくない。
上記の好ましい形態を含む本発明において、フィラーのアスペクト比は2以上であればよいが、3以上であることがより好ましく、5以上であることが一層好ましい。フィラーの形状は、針状や繊維状であってもよいし、板状であってもよい。ここで、フィラーの形状が針状であるとは、フィラーの平均長さが1×10-4m以下であって、アスペクト比(平均長さ/平均フィラー径)が2〜50程度の範囲であることを意味する。また、フィラーの形状が繊維状であるとは、フィラーの平均長さが1×10-4mを超え、アスペクト比(平均長さ/平均フィラー径)が2〜1000程度の範囲であることを意味する。更には、フィラーの形状が板状であるとは、アスペクト比(平均フィラー径/平均厚さ)が2〜1000程度の範囲であることを意味する。ここで、平均フィラー径とは、X線透過による液相沈降方式で測定されたD50の値を指す。このような測定を行う装置として、例えば、Sedigraph粒子径分析器(Micromeritics Instruments 社製、モデル5100)を挙げることができる。また、平均長さや平均厚さは、電子顕微鏡写真に基づき測定することができる。ここで、針状や繊維状のフィラーにおいては、フィラーの長軸は平均長さの方向と平行な方向である。一方、板状のフィラーにおいては、フィラーの長軸は平均フィラー径の方向と平行な方向である。
また、以上に説明した好ましい形態を含む本発明において、限定するものではないが、板状フィラーとして、タルク等の珪酸マグネシウム;クレー;マイカ;黒鉛;セリサイト;モンモリロナイト;板状炭酸カルシウム;板状アルミナ;ガラスフレーク;純アルミニウム、アルミニウム化合物あるいはアルミニウム合金から成るアルミニウム・フレークを挙げることができるし、これらに真空蒸着法やメッキ法にて表面処理を施し、メタリック調としたものを挙げることもできる。一方、針状あるいは繊維状フィラーとしては、ウォラストナイト等の珪酸カルシウム;モスハイジ;ゾノトライト;チタン酸カルシウム;硼酸アルミニウム;針状炭酸カルシウム;針状酸化チタン;テトラポット型酸化亜鉛;ガラス繊維;アラミド繊維;炭素繊維;チタン酸カリウム;塩基性硫酸マグネシウム;硫酸カルシウムを挙げることができるし、これらに真空蒸着法やメッキ法にて表面処理を施し、メタリック調としたフィラーを挙げることもできる。
本発明におけるフィラーとして、好ましくは、メタリック調フィラーやパール調フィラー、より好ましくは、メタリック調フィラーを挙げることができ、これによって、金属外観を有する射出成形品を得ることができる。メタリック調フィラーとして、アルミニウム、銅、ステンレス等の金属粒子を原料とした顔料や、メタリック調に表面処理したガラスフレーク等を挙げることができる。一方、パール調フィラーとして、マイカ等を原料とした顔料や、パール調に表面したガラスフレーク等を挙げることができる。真空蒸着法やメッキ法にて表面処理を施し、透明な非晶性熱可塑性樹脂とメタリック調としたフィラーとの組合せを用いることで、射出成形品に、メッキ等の処理を施さなくとも、金属光沢を与えることができる。
更には、以上に説明した好ましい形態を含む本発明において、非晶性熱可塑性樹脂は、限定するものではないが、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂(硬質及び軟質を含む)、アクリル酸エステル系樹脂(酸としてアクリル酸、メタクリル酸等、アルキル基としてメチル基、エチル基等を含む)、及び、スチレン系樹脂から成る群から選択された1種類の非晶性熱可塑性樹脂であることが好ましい。尚、各種の非晶性熱可塑性樹脂に、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤等の各種安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、滑剤、着色剤等を、適宜、添加することができる。
更には、以上に説明した好ましい形態を含む本発明の射出成形品にあっては、射出成形品の表面から厚さ方向0.3mmまでのウエルド部表面領域においては、射出成形品の軸線とフィラーの長軸との成す角度θSが70度乃至90度であるフィラーが、ウエルド部表面領域内に存在するフィラーの5%以下であることが好ましい。
本発明の射出成形品において、射出成形品のウエルド部の近傍の領域(射出成形品の厚さ方向全体の領域)においては、射出成形品の軸線とフィラーの長軸との成す角度θが0度乃至20度であるフィラーが、射出成形品のウエルド部の近傍の領域内に存在するフィラーの7割以上を占めることが好ましい。
本発明の射出成形品において、ウエルド部の厚さ(t)とは、成形品表面のウエルドラインにおける成形品の肉厚の値であると定義することができるし、射出成形品の軸線と平行な方向に沿ったウエルド部の長さ(0.3t)とは、ウエルドラインを中心に両側にウエルド部肉厚の0.3倍の範囲であると定義することができる。ウエルド部の厚さ(t)の測定は、マイクロメータを用いて測定することができる。
本発明の射出成形品において、フィラーが、ウエルド部表面領域内に存在するフィラーにおける射出成形品の軸線とフィラーの長軸との成す角度θSの測定は、以下の方法基づき行うことができるが、測定範囲は、射出成形品の表面から厚さ方向0.3mmまでのウエルド部表面領域である。また、射出成形品の表面から厚さ方向0.3t乃至0.7tを占めるウエルド部中心領域内に存在するフィラーにおける射出成形品の軸線とフィラーの長軸との成す角度θCの測定も、同様の方法で測定することができる。
[断面研磨]
ウエルドラインと垂直方向に射出成形品を切断する。その後、ウエルド部切断面をポリシャー(リファインテック株式会社製ポリシャーAUTOMAX)にて研磨する。
[断面写真撮影]
研磨されたウエルド部断面をデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製VHX−100)にて観察し、画像を記録する。記録例を図7(実施例1)及び図8(比較例1)に示す。尚、図7(実施例1)及び図8(比較例1)に示した白黒写真は、白黒を反転させている。
[画像処理]
こうして得られたモノクロ画像をMediaCybernetics社製ImagePro Plus Ver5を用いて画像処理をし、フィラーを抽出し、2値化する。画像処理をした例を図9に示す。2値化基準はフィラーのみが抽出されるよう適切な明度の値に設定する。2値化した画像より、フィラーの角度を自動計測させる。
ウエルドラインと垂直方向に射出成形品を切断する。その後、ウエルド部切断面をポリシャー(リファインテック株式会社製ポリシャーAUTOMAX)にて研磨する。
[断面写真撮影]
研磨されたウエルド部断面をデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製VHX−100)にて観察し、画像を記録する。記録例を図7(実施例1)及び図8(比較例1)に示す。尚、図7(実施例1)及び図8(比較例1)に示した白黒写真は、白黒を反転させている。
[画像処理]
こうして得られたモノクロ画像をMediaCybernetics社製ImagePro Plus Ver5を用いて画像処理をし、フィラーを抽出し、2値化する。画像処理をした例を図9に示す。2値化基準はフィラーのみが抽出されるよう適切な明度の値に設定する。2値化した画像より、フィラーの角度を自動計測させる。
本発明の射出成形方法において、金型温度(単位:゜C)を(Tg)乃至(Tg+50)とした状態で溶融非晶性熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出するが、この状態は、金型内に配設された配管に水蒸気や適切な熱媒体を流すことで達成することができる。また、金型温度を(Tg−20)以下に降下させて、キャビティ内の非晶性熱可塑性樹脂を冷却、固化させるが、この状態は、金型内に配設された配管に水や適切な熱媒体を流すことで達成することができる。尚、このような方法は、一般的には、ヒートサイクル成形法と呼ばれる。ここで、金型温度とは、具体的には、金型のキャビティを構成するキャビティ面の表面温度を指す。
溶融非晶性熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出するときの金型温度と、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂における少なくともウエルド部を、第1の方向に流動させ、次いで、第1の方向とは反対方向である第2の方向に流動させる操作を行うときの金型温度は、(Tg)乃至(Tg+50)であれば、同じ金型温度であってもよいし、異なる金型温度であってもよい。また、金型温度を(Tg−20)以下に降下させて、キャビティ内の非晶性熱可塑性樹脂を冷却、固化させるが、金型温度が(Tg−20)以下になる時点は、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂における少なくともウエルド部を、第1の方向に流動させ、次いで、第1の方向とは反対方向である第2の方向に流動させる操作の完了後であって、金型の型開きを行う前であれば、いつの時点であってもよい。
本発明の射出成形方法において、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂の少なくともウエルド部を、第1の方向に流動させ、次いで、第1の方向とは反対方向である第2の方向に流動させる操作を、少なくとも1回、実行するが、このような操作[以下、スコリム(SCORIM)法に基づく操作と呼ぶ]は、以下に例示する方法で実行することができる。即ち、このようなスコリム法に基づく操作を、最低1回、望ましくは数回、具体的には、例えば3回乃至5回、繰り返すことが好ましい。繰り返しの周期は、0.1秒乃至60秒に1回(10Hz乃至1/60Hz)以上、好ましくは、1Hz乃至1/5Hzとすることが望ましい。また、射出成形品の容積をVとしたとき、0.02V乃至0.5Vの量、好ましくは0.05V乃至0.4Vの量だけ、キャビティ内で溶融非晶性熱可塑性樹脂を流動させることが望ましい。但し、以上の方法は一例であり、このような方法に限定するものではない。
即ち、第1の方向を「正」の符号で表現し、第2の方向を「負」の符号で表現したとき、
(A)射出用シリンダーに連通した第1樹脂流路及び第2樹脂流路、
(B)キャビティ、
(C)第1樹脂流路に連通し、キャビティに開口した第1ゲート部、
(D)第2樹脂流路に連通し、キャビティに開口した第2ゲート部、
(E)キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂に対して、第1の方向に圧力を加えるための第1加圧手段、及び、
(F)キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂に対して、第2の方向に圧力を加えるための第2加圧手段、
を備えた金型組立体を使用し、
(a)射出用シリンダーにて可塑化、溶融された非晶性熱可塑性樹脂を、第1樹脂流路及び第1ゲート部、並びに、第2樹脂流路及び第2ゲート部を介してキャビティ内に射出した後、
(b)キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂に第1加圧手段により+|P1|の圧力を加えることで[尚、この状態にあっては、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂に第2加圧手段により圧力を加えなくてもよいし、−|P2|の圧力(但し、|P1|>|P2|>0)を加えてもよいし、+|P2|の圧力を加えてもよい]、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂に対して第1の方向に(例えば、第1ゲート部から第2ゲート部に向かう方向に)剪断力を与えて、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂を第1の方向に流動させて、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂の少なくともウエルド部を第1の方向に流動させ、
次いで、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂に第2加圧手段により−|P’2|の圧力を加えることで[尚、この状態にあっては、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂に第1加圧手段により圧力を加えなくてもよいし、−|P’1|の圧力を加えてもよいし、+|P’1|の圧力(但し、|P’2|>|P’2|>0)を加えてもよい]、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂に対して第2の方向に(例えば、第2ゲート部から第1ゲート部に向かう方向に)剪断力を与えて、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂を第2の方向に流動させて、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂の少なくともウエルド部を第2の方向に流動させる。
(A)射出用シリンダーに連通した第1樹脂流路及び第2樹脂流路、
(B)キャビティ、
(C)第1樹脂流路に連通し、キャビティに開口した第1ゲート部、
(D)第2樹脂流路に連通し、キャビティに開口した第2ゲート部、
(E)キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂に対して、第1の方向に圧力を加えるための第1加圧手段、及び、
(F)キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂に対して、第2の方向に圧力を加えるための第2加圧手段、
を備えた金型組立体を使用し、
(a)射出用シリンダーにて可塑化、溶融された非晶性熱可塑性樹脂を、第1樹脂流路及び第1ゲート部、並びに、第2樹脂流路及び第2ゲート部を介してキャビティ内に射出した後、
(b)キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂に第1加圧手段により+|P1|の圧力を加えることで[尚、この状態にあっては、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂に第2加圧手段により圧力を加えなくてもよいし、−|P2|の圧力(但し、|P1|>|P2|>0)を加えてもよいし、+|P2|の圧力を加えてもよい]、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂に対して第1の方向に(例えば、第1ゲート部から第2ゲート部に向かう方向に)剪断力を与えて、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂を第1の方向に流動させて、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂の少なくともウエルド部を第1の方向に流動させ、
次いで、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂に第2加圧手段により−|P’2|の圧力を加えることで[尚、この状態にあっては、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂に第1加圧手段により圧力を加えなくてもよいし、−|P’1|の圧力を加えてもよいし、+|P’1|の圧力(但し、|P’2|>|P’2|>0)を加えてもよい]、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂に対して第2の方向に(例えば、第2ゲート部から第1ゲート部に向かう方向に)剪断力を与えて、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂を第2の方向に流動させて、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂の少なくともウエルド部を第2の方向に流動させる。
上記の射出成形方法(以下、スコリム法に基づく射出成形方法と呼ぶ場合がある)にあっては、工程(b)において、最初に、+|P1|を加えるか、−|P’2|を加えるかは、本質的に任意であり、どちらを採用してもよい。また、|P1|,|P’2|,|P2|,|P’1|は成形条件により任意に設定することができるが、例えば、(|P1|−|P2|)若しくは(|P’2|−|P’1|)の値として、例えば、1×106Pa乃至3×108Pa、好ましくは5×106Pa乃至1.5×108Paを例示することができるし、更には、|P1|,|P’2|の値として、それぞれ、例えば、2×106Pa乃至1.6×108Pa、好ましくは3×107Pa乃至1×108Paを例示することができる。また、工程(b)を繰り返すとき、|P1|,|P2|,|P’1|,|P’2|の値を一定としてもよいし、変化させてもよい。
スコリム法に基づく射出成形方法においては、工程(b)の完了後、第1加圧手段及び第2加圧手段によってキャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂に圧力P0を加えることが好ましい。即ち、第1加圧手段及び第2加圧手段によって保圧工程を実行することが好ましい。これによって、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂の冷却に伴う体積減少を補償することができる。
スコリム法に基づく射出成形方法にあっては、射出用シリンダーを1つとし、第1樹脂流路及び第2樹脂流路をこの1つの射出用シリンダーに連通させることが、構成の簡素化といった観点から望ましい。そして、この場合、第1加圧手段及び第2加圧手段として、油圧シリンダーとピストンの組合せを例示することができ、第1樹脂流路内及び第2樹脂流路内にピストンを配置すればよい。あるいは又、射出成形品の長手方向の一方及び他方の端部を形成すべきキャビティの部分に第1樹脂溜り及び第2樹脂溜りを設け、第1加圧手段及び第2加圧手段として油圧シリンダーとピストンの組合せを採用し、第1樹脂溜り内及び第2樹脂溜り内にピストンを配置すればよい。但し、このような構成に限定するものではなく、射出用シリンダーを2つとし、第1樹脂流路を一方の射出用シリンダーに連通させ、第2樹脂流路を他方の射出用シリンダーに連通させてもよく、この場合、これらの2つの射出用シリンダーから溶融非晶性熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出すればよい。あるいは又、射出用シリンダーを複数装備した二色成形機あるいはサンドイッチ成形機を使用することもでき、この場合には、例えば、2つの射出用シリンダーのスクリューを交互に前進動作及び後退動作させて発生させればよい。尚、これらの場合、2つの射出用シリンダーが、第1加圧手段及び第2加圧手段を兼用する。
スコリム法に基づく射出成形方法における第1樹脂流路及び第2樹脂流路は、例えば、スプルーとコールドランナーの組合せ、あるいは又、ホットランナーから構成することができる。尚、これらの樹脂流路をホットランナーから構成する場合、スコリム法に基づく射出成形方法における第1ゲート部及び第2ゲート部を、例えば、バルブゲートで開閉自在とすることが好ましい。また、スコリム法に基づく射出成形方法においては、第1ゲート部や第2ゲート部の構造は、本質的に任意であり、成形すべき射出成形品の形状等に基づき決定すればよく、例えば、オープンタイプ構造、ダイレクト構造、サイドゲート構造、オーバーラップゲート構造、トンネルゲート構造、ピンポイントゲート構造を例示することができる。
尚、射出成形品の長さをLとした場合、第1ゲート部を、射出成形品の長手方向(軸線方向)の一方の端部を形成すべきキャビティの部分あるいはその近傍に配置し、第2ゲート部を、射出成形品の長手方向(軸線方向)の他方の端部を形成すべきキャビティの部分あるいはその近傍に配置することが好ましい。具体的には、射出成形品の長手方向の一方の端部を形成すべきキャビティの部分から第1ゲート部までの距離を、0乃至0.1Lとすることが好ましく、射出成形品の長手方向の他方の端部を形成すべきキャビティの部分から第2ゲート部までの距離を、0乃至0.1Lとすることが好ましい。
フィラーが添加された透明な溶融非晶性熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出し、冷却、固化させることで、ウエルド部を有する射出成形品を成形した場合、従来の射出成形方法においては、射出成形品のウエルド部表面領域においてもウエルド部中心領域においても、射出成形品の軸線とフィラーの長軸との成す角度が20度を越えるフィラーが多く存在するようになる。
本発明の射出成形方法にあっては、スコリム法に基づく操作を実行するので、射出成形品のウエルド部表面領域においては、射出成形品の軸線とフィラーの長軸との成す角度θSが20度を越えるフィラーが多く存在し、一方、ウエルド部中心領域においては、射出成形品の軸線とフィラーの長軸との成す角度θCが0度乃至20度であるフィラーが多く存在するようになる。ところで、スコリム法に基づく操作を実行する際の金型温度をガラス転移温度Tg未満にした場合、金型のキャビティを構成するキャビティ面と接するウエルド部表面領域が直ちに冷却され始めるため、射出成形品のウエルド部表面領域の厚さが厚くなってしまう。その結果、射出成形品の軸線とフィラーの長軸との成す角度θSが20度を越えるフィラーが目立ち、射出成形品のウエルド部におけるフィラーの配向方向が一様で無いことが容易に認識されてしまう場合がある。然るに、本発明の射出成形方法にあっては、スコリム法に基づく操作を実行する際の金型温度を(Tg)乃至(Tg+50)とする。これによって、射出成形品のウエルド部表面領域の厚さを薄くすることができ、射出成形品のウエルド部におけるフィラーの配向方向が一様で無いことが目立たなくなる。更には、スコリム法に基づく操作を実行する際の金型温度を(Tg)乃至(Tg+50)とし、金型温度を(Tg−20)以下に降下させてキャビティ内の非晶性熱可塑性樹脂を冷却、固化させるので、射出成形品のウエルド部におけるフィラーの配向方向が一様で無いことが一層目立たなくなるし、成形サイクルが長くなることもない。
また、本発明の射出成形品にあっては、射出成形品のウエルド部中心領域におけるフィラーの長軸の射出成形品の軸線に対する角度、及び、係る角度を有するフィラーの割合を規定することで、射出成形品のウエルド部におけるフィラーの配向方向が一様で無いことが目立たなくなる。
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。
実施例1は、本発明の射出成形品、及び、本発明の射出成形方法、より具体的には、第1の態様に係る射出成形方法に関する。
実施例1においては、透明な非晶性熱可塑性樹脂として、ガラス転移温度Tgが140゜Cのポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、ユーピロンS3000R)を用いた。また、フィラーとして、板状の形状を有し、アスペクト比が30(平均フィラー径=30μm、平均厚さ=1μm)であるアルミニウム・フレークを用いた。尚、フィラーの添加率は0.8重量%である。射出成形品の外形形状を板状とし、その大きさを、長さ150mm、幅150mm、厚さ3mmとした。
実施例1の射出成形方法の実行に適した金型組立体の概念図を図1の(A)に示す。この金型組立体10は、
(A)射出用シリンダー11に連通した第1樹脂流路14A及び第2樹脂流路14B、
(B)キャビティ18、
(C)第1樹脂流路14Aに連通し、キャビティ18に開口した第1ゲート部15A、
(D)第2樹脂流路14Bに連通し、キャビティ18に開口した第2ゲート部15B、
(E)第1樹脂流路14A内を介してキャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂に対して、第1の方向に圧力を加えるための第1加圧手段、及び、
(F)第2樹脂流路14B内を介してキャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂に対して、第2の方向に圧力を加えるための第2加圧手段、
を備えている。
(A)射出用シリンダー11に連通した第1樹脂流路14A及び第2樹脂流路14B、
(B)キャビティ18、
(C)第1樹脂流路14Aに連通し、キャビティ18に開口した第1ゲート部15A、
(D)第2樹脂流路14Bに連通し、キャビティ18に開口した第2ゲート部15B、
(E)第1樹脂流路14A内を介してキャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂に対して、第1の方向に圧力を加えるための第1加圧手段、及び、
(F)第2樹脂流路14B内を介してキャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂に対して、第2の方向に圧力を加えるための第2加圧手段、
を備えている。
より具体的には、金型組立体10は、固定金型部12及び可動金型部13を有し、固定金型部12と可動金型部13を型締めすることによってキャビティ18が形成される。第1樹脂流路14A及び第2樹脂流路14Bは、固定金型部12内に設けられ、所謂ホットランナーから構成されている。また、第1加圧手段は、油圧シリンダー21Aと、油圧シリンダー21Aに取り付けられ、油圧シリンダー21Aの作動に基づき第1樹脂流路14A内で前後に移動(摺動)させられるピストン20Aから構成されている。一方、第2加圧手段は、油圧シリンダー21Bと、油圧シリンダー21Bに取り付けられ、油圧シリンダー21Bの作動に基づき第2樹脂流路14B内で前後に移動(摺動)させられるピストン20Bから構成されている。第1ゲート部15A及び第2ゲート部15Bはオープンタイプ構造を有する。そして、射出成形品の長手方向の長さをLとしたとき、射出成形品の長手方向の一方の端部を形成すべきキャビティ18の部分18Aから第1ゲート部15Aまでの距離は0.05Lであり、射出成形品の長手方向の他方の端部を形成すべきキャビティ18の部分18Bから第2ゲート部15Bまでの距離は0.05Lである。
以下、金型組立体等の概念図である図2〜図4を参照して実施例1の射出成形方法を説明するが、図2〜図4においては、射出用シリンダー11の図示を省略した。
[工程−100]
まず、射出用シリンダー11にて可塑化、溶融された非晶性熱可塑性樹脂30を、第1樹脂流路14A及び第1ゲート部15A、並びに、第2樹脂流路14B及び第2ゲート部15Bを介して、キャビティ18内に射出し、キャビティ18内を溶融非晶性熱可塑性樹脂30で完全に充填した(図2参照)。これによって、キャビティ18の中央部においては、ウエルド部41が形成される。射出条件を、以下の表1に例示する。尚、溶融非晶性熱可塑性樹脂30の射出時、第1加圧手段を構成するピストン20Aを中間位置に位置させ、第2加圧手段を構成するピストン20Bも中間位置に位置させる。溶融非晶性熱可塑性樹脂30の射出によってこれらのピストン20A,20Bの位置が変化しないように、油圧シリンダー21A,21Bを制御する。
まず、射出用シリンダー11にて可塑化、溶融された非晶性熱可塑性樹脂30を、第1樹脂流路14A及び第1ゲート部15A、並びに、第2樹脂流路14B及び第2ゲート部15Bを介して、キャビティ18内に射出し、キャビティ18内を溶融非晶性熱可塑性樹脂30で完全に充填した(図2参照)。これによって、キャビティ18の中央部においては、ウエルド部41が形成される。射出条件を、以下の表1に例示する。尚、溶融非晶性熱可塑性樹脂30の射出時、第1加圧手段を構成するピストン20Aを中間位置に位置させ、第2加圧手段を構成するピストン20Bも中間位置に位置させる。溶融非晶性熱可塑性樹脂30の射出によってこれらのピストン20A,20Bの位置が変化しないように、油圧シリンダー21A,21Bを制御する。
[表1]
樹脂温度:300゜C
金型温度:190゜C(=Tg+50)
射出圧力:8×107Pa
射出時間:0.9秒
樹脂温度:300゜C
金型温度:190゜C(=Tg+50)
射出圧力:8×107Pa
射出時間:0.9秒
[工程−110]
そして、金型温度を(Tg+50)に保持したまま、キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30における少なくともウエルド部41を(実施例1においてはキャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30全体を)、第1の方向に流動させ、次いで、キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30における少なくともウエルド部41を(実施例1においてはキャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30全体を)、第1の方向とは反対方向である第2の方向に流動させることで、キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30における少なくともウエルド部41(実施例1においてはキャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30全体)に対して第1の方向及び第2の方向に剪断力を与える操作(スコリム法に基づく操作)を、少なくとも1回、実行する。
そして、金型温度を(Tg+50)に保持したまま、キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30における少なくともウエルド部41を(実施例1においてはキャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30全体を)、第1の方向に流動させ、次いで、キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30における少なくともウエルド部41を(実施例1においてはキャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30全体を)、第1の方向とは反対方向である第2の方向に流動させることで、キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30における少なくともウエルド部41(実施例1においてはキャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30全体)に対して第1の方向及び第2の方向に剪断力を与える操作(スコリム法に基づく操作)を、少なくとも1回、実行する。
具体的には、キャビティ18への溶融非晶性熱可塑性樹脂30の射出完了と同時に、油圧シリンダー21Aを作動させて、ピストン20Aを前進端へと移動させ、このピストン20Aの動きと同期して、ピストン20Bを後進端へと移動させた。このとき、第1樹脂流路14A内を介してキャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30に対して、第1の方向に第1加圧手段(具体的には、ピストン20A)により+|P1|の圧力(=+6.7×107Pa)を加えた。一方、キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30には、第2加圧手段(具体的には、ピストン20B)により何ら圧力を加えなかった。これによって、キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30に対して第1ゲート部15Aから第2ゲート部15Bに向かう方向(第1の方向)に剪断力を与えて、キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30を第1ゲート部15Aから第2ゲート部15Bに向かう方向(第1の方向)に流動させた。この状態を図3に示す。ピストン20Aの移動時間を0.5秒とした。キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30を、約8cm3、第1ゲート部15Aから第2ゲート部15Bに向かう方向に移動させた。
[工程−120]
ピストン20Aが前進端に達し、ピストン20Bが後進端に達したならば(図3参照)、直ちに、キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30には第1加圧手段(具体的には、ピストン20A)から何ら圧力を加えず、第2樹脂流路14B内を介してキャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30に対して、第2の方向に第2加圧手段(具体的には、ピストン20B)により−|P’2|の圧力(=−6.7×107Pa)を加えることで、キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30に対して第2ゲート部15Bから第1ゲート部15Aに向かう方向(第2の方向)に剪断力を与えて、キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30を第2ゲート部15Bから第1ゲート部15Aに向かう方向(第2の方向)に流動させた。この状態を図4に示す。ピストン20Bの移動時間を0.5秒とした。キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30を、約8cm3、第2ゲート部15Bから第1ゲート部15Aに向かう方向に移動させた。
ピストン20Aが前進端に達し、ピストン20Bが後進端に達したならば(図3参照)、直ちに、キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30には第1加圧手段(具体的には、ピストン20A)から何ら圧力を加えず、第2樹脂流路14B内を介してキャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30に対して、第2の方向に第2加圧手段(具体的には、ピストン20B)により−|P’2|の圧力(=−6.7×107Pa)を加えることで、キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30に対して第2ゲート部15Bから第1ゲート部15Aに向かう方向(第2の方向)に剪断力を与えて、キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30を第2ゲート部15Bから第1ゲート部15Aに向かう方向(第2の方向)に流動させた。この状態を図4に示す。ピストン20Bの移動時間を0.5秒とした。キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30を、約8cm3、第2ゲート部15Bから第1ゲート部15Aに向かう方向に移動させた。
[工程−130]
ピストン20Aが後進端に達し、ピストン20Bが前進端に達したならば(図4参照)、直ちに、[工程−110]、[工程−120]を順次繰り返す。こうして、[工程−110]、[工程−120]を1回の操作としたとき、5回の操作を行った。5回の操作に要した時間は5秒である。また、金型温度を、(Tg+50)に保持した。
ピストン20Aが後進端に達し、ピストン20Bが前進端に達したならば(図4参照)、直ちに、[工程−110]、[工程−120]を順次繰り返す。こうして、[工程−110]、[工程−120]を1回の操作としたとき、5回の操作を行った。5回の操作に要した時間は5秒である。また、金型温度を、(Tg+50)に保持した。
[工程−140]
その後、第1加圧手段及び第2加圧手段(具体的には、ピストン20A,20B)によってキャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30に圧力P0(=6.7×107Pa)を加えた。そして、金型温度を(Tg−20)以下に降下させて、具体的には、120゜Cまで降下させて、キャビティ18内の非晶性熱可塑性樹脂30を冷却、固化させた。圧力P0を加える時間を10秒間とし、次いで、第1加圧手段及び第2加圧手段によってキャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30に圧力を加える操作を中止した。その後、30秒が経過した後、金型組立体を開き、成形品を取り出した。成形品を取り出す直前の金型温度(取出し温度)は120゜Cであった。
その後、第1加圧手段及び第2加圧手段(具体的には、ピストン20A,20B)によってキャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30に圧力P0(=6.7×107Pa)を加えた。そして、金型温度を(Tg−20)以下に降下させて、具体的には、120゜Cまで降下させて、キャビティ18内の非晶性熱可塑性樹脂30を冷却、固化させた。圧力P0を加える時間を10秒間とし、次いで、第1加圧手段及び第2加圧手段によってキャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30に圧力を加える操作を中止した。その後、30秒が経過した後、金型組立体を開き、成形品を取り出した。成形品を取り出す直前の金型温度(取出し温度)は120゜Cであった。
こうして得られた射出成形品40のウエルド部41近傍の模式的な一部断面図を図1の(B)に示す。この射出成形品40は、アスペクト比が2以上であるフィラーが添加された透明な非晶性熱可塑性樹脂から成り、厚さがt(mm)であり、且つ、射出成形品40の軸線(図1の(B)には白抜きの矢印で示す)と平行な方向に沿った長さを0.3t(mm)とするウエルド部41を有する。尚、溶融樹脂合流線に相当するウエルド・ラインを参照番号42で示す。そして、射出成形品40の表面から厚さ方向0.3mmまでのウエルド部表面領域43(点線で囲まれた領域)においては、射出成形品40の軸線とフィラー45(図1の(B)には短い線分で示す)の長軸との成す角度θSが70度乃至90度であるフィラー45が、ウエルド部表面領域43内に存在するフィラーの5%以下であり、射出成形品40の表面から厚さ方向0.3t乃至0.7tを占めるウエルド部中心領域44(一点鎖線で囲まれた領域)においては、射出成形品40の軸線とフィラー45の長軸との成す角度θCが0度乃至20度であるフィラー45が、ウエルド部中心領域44内に存在するフィラーの7割以上を占める。尚、ウエルド部中心領域44において、射出成形品40の軸線とフィラー45の長軸との成す角度θCが0度乃至20度以外の残りのフィラーのほぼ全てにあっては、射出成形品40の軸線とフィラー45の長軸との成す角度θCが20度乃至70度の角度範囲であった。
また、射出成形品のウエルド部の近傍の領域(射出成形品の厚さ方向全体の領域)においては、射出成形品の軸線とフィラーの長軸との成す角度θが0度乃至20度であるフィラーが、射出成形品のウエルド部の近傍の領域内に存在するフィラーの7割以上を占めている。尚、図1の(B)においては、フィラーの図示を省略している。
実施例1において得られた射出成形品は、優れた外観、優れた寸法精度を有しており、ひけや反りは認められなかった。射出成形品40のウエルド部41の、射出成形品40の厚さtは3(mm)であった。尚、射出成形品40の軸線と平行な方向に沿ったウエルド部41の長さを、0.3t(mm)と規定している。
使用した非晶性熱可塑性樹脂の組成、成形条件、射出成形品における射出成形品の表面から厚さ方向0.3t乃至0.7tを占めるウエルド部中心領域44において、射出成形品の軸線とフィラーの長軸との成す角度θCが0度乃至20度であるフィラーが、ウエルド部中心領域内に存在する割合[ウエルド部中心領域におけるフィラーの割合(%)]、射出成形品40のウエルド部表面領域43(射出成形品の表面から厚さ方向0.3mmまでを占める領域)において、射出成形品の軸線とフィラーの長軸との成す角度θSが70度乃至90度であるフィラーが、ウエルド部表面領域内に存在する割合[ウエルド部表面領域におけるフィラーの割合(%)]を、表2に示す。尚、表2において、「樹脂」とは、使用した透明な非晶性熱可塑性樹脂を意味する。また、「ウエルド部の外観」は、目視によった。実施例1の射出成形品は、ウエルド部が目立たず、ウエルド部の外観は非常に良好であった。
実施例2は、実施例1の変形である。実施例2にあっては、実施例1と同じポリカーボネート樹脂及びフィラーを用いた。但し、実施例2にあっては、実施例1の[工程−100]と同様の工程における射出条件の金型温度を140゜C(=Tg)に変更し、実施例1の[工程−110]〜[工程−130]と同様の工程における金型温度を(Tg)に保持し、実施例1の[工程−140]と同様の工程において、金型温度を(Tg−20)以下に(具体的には、80゜Cに)降下させて、キャビティ18内の非晶性熱可塑性樹脂30を冷却、固化させた。更には、成形品を取り出す直前の金型温度(取出し温度)を80゜Cとした。
実施例2において得られた射出成形品は、優れた外観、優れた寸法精度を有しており、ひけや反りは認められなかった。射出成形品のウエルド部の厚さtは、実施例1とほぼ同じであった。射出成形品の特性を表2に示す。実施例2の射出成形品は、ウエルド部が目立たず、ウエルド部の外観は非常に良好であった。
実施例3も、実施例1の変形である。実施例3にあっては、ガラス転移温度Tgが90゜Cのポリスチレン樹脂(PSジャパン株式会社製、ポリスチレンHF77)を用いた。また、フィラーとして、板状の形状を有し、アスペクト比が20(平均フィラー径=60μm、平均厚さ=3μm)であるアルミニウム・フレークを用いた。尚、フィラーの添加率は1.0重量%である。射出成形品の外形形状、寸法は、実施例1と同じである。
また、実施例3にあっては、実施例1の[工程−100]と同様の工程における射出条件の金型温度を140゜C(=Tg+50)に変更し、実施例1の[工程−110]〜[工程−130]と同様の工程における金型温度を(Tg+50)に保持し、[工程−110]、[工程−120]を1回の操作としたとき、3回の操作を行い、実施例1の[工程−140]と同様の工程において、金型温度を(Tg−20)以下に(具体的には、70゜Cに)降下させて、キャビティ18内の非晶性熱可塑性樹脂30を冷却、固化させた。更には、成形品を取り出す直前の金型温度(取出し温度)を70゜Cとした。
実施例3において得られた射出成形品は、優れた外観、優れた寸法精度を有しており、ひけや反りは認められなかった。射出成形品のウエルド部の厚さtは、実施例1とほぼ同じであった。射出成形品の特性を表2に示す。実施例2の射出成形品は、ウエルド部が目立たず、ウエルド部の外観は、実施例1あるいは実施例2よりも若干劣っていたが、良好であった。
実施例4は、実施例3の変形である。実施例4にあっては、実施例3と同じポリスチレン樹脂及びフィラーを用いた。また、実施例4にあっては、実施例1の[工程−100]と同様の工程における射出条件の金型温度を90゜C(=Tg)に変更し、実施例1の[工程−110]〜[工程−130]と同様の工程における金型温度を(Tg)に保持し、[工程−110]、[工程−120]を1回の操作としたとき、3回の操作を行い、実施例1の[工程−140]と同様の工程において、金型温度を(Tg−20)以下に(具体的には、70゜Cに)降下させて、キャビティ18内の非晶性熱可塑性樹脂30を冷却、固化させた。更には、成形品を取り出す直前の金型温度(取出し温度)を70゜Cとした。
実施例4において得られた射出成形品は、優れた外観、優れた寸法精度を有しており、ひけや反りは認められなかった。射出成形品のウエルド部の厚さtは、実施例1とほぼ同じであった。射出成形品の特性を表2に示す。実施例2の射出成形品は、ウエルド部が目立たず、ウエルド部の外観は、実施例3と同様に良好であった。
[比較例1]
比較のために、実施例1と同様に、但し、[工程−100]を実行した後、[工程−110]〜[工程−130]を省略し、直ちに、[工程−140]を実行した。その結果得られた射出成形品の物性を表2に示すが、ウエルド部中心領域におけるフィラーの割合(%)が少なかった。即ち、大部分のフィラーが、射出成形品の軸線とフィラーの長軸との成す角度θCが0度乃至20度であるフィラーではなかった。そして、比較例1の射出成形品は、ウエルド部が目立ち、ウエルド部の外観は不良であった。
比較のために、実施例1と同様に、但し、[工程−100]を実行した後、[工程−110]〜[工程−130]を省略し、直ちに、[工程−140]を実行した。その結果得られた射出成形品の物性を表2に示すが、ウエルド部中心領域におけるフィラーの割合(%)が少なかった。即ち、大部分のフィラーが、射出成形品の軸線とフィラーの長軸との成す角度θCが0度乃至20度であるフィラーではなかった。そして、比較例1の射出成形品は、ウエルド部が目立ち、ウエルド部の外観は不良であった。
[比較例2]
また、比較のために、実施例1と同様に、但し、[工程−100]を実行した後、[工程−110]〜[工程−130]を実行し、更に、[工程−140]を実行した。但し、実施例1の[工程−100]と同様の工程における射出条件の金型温度を100゜C(<Tg)に変更し、実施例1の[工程−110]〜[工程−130]と同様の工程における金型温度を100゜Cに保持し、実施例1の[工程−140]と同様の工程において、金型温度を(Tg−20)以下(具体的には、100゜C)として、キャビティ18内の非晶性熱可塑性樹脂30を冷却、固化させた。更には、成形品を取り出す直前の金型温度(取出し温度)を100゜Cとした。
また、比較のために、実施例1と同様に、但し、[工程−100]を実行した後、[工程−110]〜[工程−130]を実行し、更に、[工程−140]を実行した。但し、実施例1の[工程−100]と同様の工程における射出条件の金型温度を100゜C(<Tg)に変更し、実施例1の[工程−110]〜[工程−130]と同様の工程における金型温度を100゜Cに保持し、実施例1の[工程−140]と同様の工程において、金型温度を(Tg−20)以下(具体的には、100゜C)として、キャビティ18内の非晶性熱可塑性樹脂30を冷却、固化させた。更には、成形品を取り出す直前の金型温度(取出し温度)を100゜Cとした。
その結果得られた射出成形品の物性を表2に示すが、ウエルド部中心領域におけるフィラーの割合(%)は多いものの、射出成形品のウエルド部表面領域の厚さが厚く、射出成形品は、ウエルド部が目立ち、ウエルド部の外観は不良であった。
[比較例3]
更には、比較のために、実施例3と同様に、但し、実施例1の[工程−100]と同様の工程を実行した後、実施例1の[工程−110]〜[工程−130]と同様の工程を実行し、更に、実施例1の[工程−140]と同様の工程を実行した。但し、実施例1の[工程−100]と同様の工程における射出条件の金型温度を140゜C(=Tg+50)に変更し、実施例1の[工程−110]〜[工程−130]と同様の工程における金型温度を140゜Cに保持し、実施例1の[工程−140]と同様の工程において、金型温度を140゜C(=Tg+50)とした状態で、キャビティ18内の非晶性熱可塑性樹脂30を保持した。更には、成形品を取り出す直前の金型温度(取出し温度)を140゜Cとした。
更には、比較のために、実施例3と同様に、但し、実施例1の[工程−100]と同様の工程を実行した後、実施例1の[工程−110]〜[工程−130]と同様の工程を実行し、更に、実施例1の[工程−140]と同様の工程を実行した。但し、実施例1の[工程−100]と同様の工程における射出条件の金型温度を140゜C(=Tg+50)に変更し、実施例1の[工程−110]〜[工程−130]と同様の工程における金型温度を140゜Cに保持し、実施例1の[工程−140]と同様の工程において、金型温度を140゜C(=Tg+50)とした状態で、キャビティ18内の非晶性熱可塑性樹脂30を保持した。更には、成形品を取り出す直前の金型温度(取出し温度)を140゜Cとした。
比較例3にあっては、成形品を取り出す直前の金型温度(取出し温度)を140゜Cとしたので、金型から射出成形品を取り出すことができなかった。
[比較例4]
更には、比較のために、比較例3と同様に、但し、実施例1の[工程−100]と同様の工程を実行した後、実施例1の[工程−110]〜[工程−130]と同様の工程を省略し、直ちに、実施例1の[工程−140]と同様の工程を実行した。ここで、実施例1の[工程−100]と同様の工程における射出条件の金型温度を120゜C(=Tg+30)に変更し、実施例1の[工程−140]と同様の工程において、金型温度を(Tg−20)以下(具体的には、60゜C)とした状態で、キャビティ18内の非晶性熱可塑性樹脂30を冷却、固化させた。更には、成形品を取り出す直前の金型温度(取出し温度)を60゜Cとした。
更には、比較のために、比較例3と同様に、但し、実施例1の[工程−100]と同様の工程を実行した後、実施例1の[工程−110]〜[工程−130]と同様の工程を省略し、直ちに、実施例1の[工程−140]と同様の工程を実行した。ここで、実施例1の[工程−100]と同様の工程における射出条件の金型温度を120゜C(=Tg+30)に変更し、実施例1の[工程−140]と同様の工程において、金型温度を(Tg−20)以下(具体的には、60゜C)とした状態で、キャビティ18内の非晶性熱可塑性樹脂30を冷却、固化させた。更には、成形品を取り出す直前の金型温度(取出し温度)を60゜Cとした。
その結果得られた射出成形品の物性を表2に示すが、ウエルド部中心領域におけるフィラーの割合(%)が少なかった。即ち、大部分のフィラーが、射出成形品の軸線とフィラーの長軸との成す角度θCが0度乃至20度であるフィラーではなかった。そして、比較例4の射出成形品は、ウエルド部が目立ち、ウエルド部の外観は不良であった。
以上、本発明を、好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例にて説明した金型や金型組立体の構成、構造、実施例にて使用した非晶性熱可塑性樹脂、射出成形条件、射出成形品の大きさ、形状等は例示であり、適宜変更することができる。
図5に変形例を示すように、射出成形品の長手方向の一方の端部を形成すべきキャビティ18の部分18Aから第1ゲート部15Aまでの距離を0とし、射出成形品の長手方向の他方の端部を形成すべきキャビティ18の部分18Bから第2ゲート部15Bまでの距離を0とすることもできる。
更には、図6に変形例を示すように、射出成形品の長手方向の一方及び他方の端部を形成すべきキャビティ18の部分に第1樹脂溜り19A及び第2樹脂溜り19Bを設け、ピストン20Aを油圧シリンダー21Aによって第1樹脂溜り19A内を移動(摺動)させ、ピストン20Bを油圧シリンダー21Bによって第2樹脂溜り19B内を移動(摺動)させ得る構造としてもよい。
このような構造においては、実施例1の[工程−110]と同様の工程にあっては、キャビティ18への溶融非晶性熱可塑性樹脂30の射出完了と同時に、油圧シリンダー21Aを作動させて、ピストン20Aを前進端へと移動させ、このピストン20Aの動きと同期して、ピストン20Bを後進端へと移動させる。このとき、第1樹脂溜り19A内を介してのキャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30に第1加圧手段(具体的には、ピストン20A)により+|P1|の圧力を加える。一方、キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30には、第2加圧手段(具体的には、ピストン20B)により何ら圧力を加えない。これによって、キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30に対して第1樹脂溜り19Aから第2樹脂溜り19Bに向かう方向に剪断力を与えて、キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30を第1樹脂溜り19Aから第2樹脂溜り19Bに向かう方向に流動させる。
一方、実施例1の[工程−120]と同様の工程にあっては、ピストン20Aが前進端に達し、ピストン20Bが後進端に達したならば、直ちに、キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30には第1加圧手段(具体的には、ピストン20A)から何ら圧力を加えず、第2樹脂溜り19B内を介してキャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30に第2加圧手段(具体的には、ピストン20B)により−|P’2|の圧力を加えることで、キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30に対して第2樹脂溜り19Bから第1樹脂溜り19Aに向かう方向に剪断力を与えて、キャビティ18内の溶融非晶性熱可塑性樹脂30を第2樹脂溜り19Bから第1樹脂溜り19Aに向かう方向に流動させる。
10・・・金型組立体、11・・・射出用シリンダー、12・・・固定金型部、13・・・可動金型部、14A・・・第1樹脂流路、14B・・・第2樹脂流路、15A・・・第1ゲート部、15B・・・第2ゲート部、18・・・キャビティ、19A,19B・・・樹脂溜り、20A,20B・・・ピストン、21A,21B・・・油圧シリンダー、30・・・溶融非晶性熱可塑性樹脂、40・・・射出成形品、41・・・ウエルド部、42・・・ウエルド・ライン、43・・・ウエルド部表面領域、44・・・ウエルド部中心領域、45・・・フィラー
Claims (9)
- キャビティを備えた金型を使用し、アスペクト比が2以上であるフィラーが添加された透明な溶融非晶性熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出し、冷却、固化させることで、ウエルド部を有する射出成形品を成形する射出成形方法であって、
使用する非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg(単位:゜C)としたとき、金型温度(単位:゜C)を(Tg)乃至(Tg+50)とした状態で、溶融非晶性熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出した後、
金型温度を(Tg)乃至(Tg+50)とした状態で、キャビティ内の溶融非晶性熱可塑性樹脂における少なくともウエルド部を、第1の方向に流動させ、次いで、第1の方向とは反対方向である第2の方向に流動させる操作を、少なくとも1回、実行した後、
金型温度を(Tg−20)以下に降下させて、キャビティ内の非晶性熱可塑性樹脂を冷却、固化させる、
各工程から成ることを特徴とする射出成形方法。 - フィラーの添加率は、0.01重量%乃至10重量%であることを特徴とする請求項1に記載の射出成形方法。
- フィラーは、メタリック調フィラー及びパール調フィラーから成る群から選択された少なくとも1種類のフィラーから成ることを特徴とする請求項1に記載の射出成形方法。
- 非晶性熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、及び、スチレン系樹脂から成る群から選択された1種類の非晶性熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の射出成形方法。
- アスペクト比が2以上であるフィラーが添加された透明な非晶性熱可塑性樹脂から成り、厚さがt(mm)であり、且つ、射出成形品の軸線と平行な方向に沿った長さを0.3t(mm)とするウエルド部を有する射出成形品であって、
射出成形品の表面から厚さ方向0.3t乃至0.7tを占めるウエルド部中心領域においては、射出成形品の軸線とフィラーの長軸との成す角度θCが0度乃至20度であるフィラーが、ウエルド部中心領域内に存在するフィラーの7割以上を占めることを特徴とする射出成形品。 - フィラーの添加率は、0.01重量%乃至10重量%であることを特徴とする請求項5に記載の射出成形品。
- フィラーは、メタリック調フィラー及びパール調フィラーから成る群から選択された少なくとも1種類のフィラーから成ることを特徴とする請求項5に記載の射出成形品。
- 非晶性熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、及び、スチレン系樹脂から成る群から選択された1種類の非晶性熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項5に記載の射出成形品。
- 射出成形品の表面から厚さ方向0.3mmまでのウエルド部表面領域においては、射出成形品の軸線とフィラーの長軸との成す角度θSが70度乃至90度であるフィラーが、ウエルド部表面領域内に存在するフィラーの5%以下であることを特徴とする請求項5に記載の射出成形品。
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