JP2006264192A - プラスチック光学素子及びその成形方法 - Google Patents

プラスチック光学素子及びその成形方法 Download PDF

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Abstract

【課題】複雑な金型構造も高価な成形設備も必要とせず、低圧での多数個取りが可能となるような成形方法を提供し、非光学面のみにヒケを誘導することにより内部歪みの少ない光学素子を提供すること。
【解決手段】少なくとも1つ以上の光学面を持つキャビティに軟化温度以上の熱可塑性樹脂材料を射出充填し、軟化温度以下に冷却した後型開きして取り出すプラスチック光学素子の成形方法において、光学面にヒケが発生しない限界保圧をaとし、非光学面にヒケが発生しない限界保圧をbとしたときに、非光学面に少なくとも1つ以上の凸形状を有するキャビティに樹脂を充填する際の保圧cをa<b<cの範囲内とするように構成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱可塑性樹脂を成形加工する際の成形方法に関するもので、特に、光学面が形成され、且つ、内部歪みの少ないプラスチック光学素子を低コスト且つ高精度に成形するための成形方法に関する。
熱可塑性樹脂を溶融し、キャビティ内に射出充填後、冷却固化させて成形品を得る従来の射出成形方法では、キャビティ面を成形品に転写させるために、成形品にヒケが発生しない程度の射出圧力及び保圧を掛ける必要があった。
又、成形品形状によっては、偏肉形状である場合もあり、厚肉部と薄肉部では厚肉部の方がヒケが発生し易いため、射出圧力及び保圧は、特に、厚肉部にヒケが発生しないように注意して設定しなければならない。
しかしながら、樹脂充填時の成形品に掛かる圧力は静水圧であり、場所によらず同じであるから、厚肉部を転写させるのに必要な保圧を掛けると薄肉部には過剰な圧力が掛かることとなる。これにより、成形品の薄肉部には大きな内部歪みが残留することになり、複屈折や屈折率分布といった光学性能や成形品の形状精度の悪化といった問題に繋がる。
この問題を解決する成形方法として、特許文献1では、非光学面に凸部を設けこの部分をヒータにより加熱し、凸部のみにヒケを発生させることにより、内部歪みが少なく、且つ、ヒケが光学素子として機能する部分に発生しない方法を提案している(以下、従来例1とする)。
又、特許文献2では、プラスチック成形品の冷却途中に空気を非光学面に対応するキャビティ面と樹脂の間に進入させることによりヒケを非光学面に発生させる方法において、非光学面及び非光学面と光学面の境界に段差を設けることにより、ヒケが発生する個所を段差内に制御し、ヒケが光学面に発生しない方法を提案している(以下、従来例2とする)。
特開平11−19956号公報 特開平10−278077号公報
しかしながら、従来例1のようにすれば、ヒケを非光学面に誘導することが可能であるが、ヒータを組込み加熱するために樹脂の冷却時間が長くなり、成形サイクルが延びるために成形に関わるコストが高くなるという問題がある。
又、従来例2のようにすれば、キャビティまでの通気孔を設けなければならず、金型構造が複雑になり、且つ、キャビティに空気を供給する装置も必要となるために成形設備自体が高価になるという問題がある。
更に、光学素子形状によっては、その大きさにより型締方向の投影面積が大きくなるために、従来の成形方法では成形機自体の型締力が不足し、取個数を減らす、若しくは、より大きな型締力を発生できる成形機を導入するといった対応を取らなければならず、成形コスト若しくは設備に掛かるコストが増大するといった問題も発生する。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複雑な金型構造も高価な成形設備も必要とせず、低圧での多数個取りが可能となるような成形方法を提供し、非光学面のみにヒケを誘導することにより内部歪みの少ない光学素子を提供することである。
上記課題を達成するため、請求項1記載の発明は、少なくとも1つ以上の光学面を持つキャビティに軟化温度以上の熱可塑性樹脂材料を射出充填し、軟化温度以下に冷却した後型開きして取り出すプラスチック光学素子の成形方法において、光学面にヒケが発生しない限界保圧をaとし、非光学面にヒケが発生しない限界保圧をbとしたときに、非光学面に少なくとも1つ以上の凸形状を有するキャビティに樹脂を充填する際の保圧cをa<b<cの範囲内とするように構成する。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の成形方法により製造されるプラスチック光学素子において、少なくとも1つ以上の凸形状を非光学面に有しその非光学面にヒケが発生しているように構成する。
請求項3記載の発明は、少なくとも1つ以上の光学面を持つキャビティに軟化温度以上の熱可塑性樹脂材料を射出充填し、軟化温度以下に冷却した後型開きして取り出すことにより製造されるプラスチック光学素子において、非光学面に少なくとも1つ以上の凸形状を有しその凸形状の高さが光学素子高さの5%以上であり、且つ、凸形状が非光学面端部から最大光学素子肉厚の15%以上離れて位置しているように構成する。
非光学面に凸形状を設けることにより、凸形状と非光学面の境界部分の樹脂(例えば図4中の10)は金型への放熱を十分に行うことができなくなる。これにより、この部分の樹脂は他の部分の成形品表面よりも冷却が遅れる。即ち、光学面よりも凸形状の境界部分の方がヒケが発生し易い状況になるため、光学面にヒケが発生しない限界保圧をaとし、非光学面にヒケが発生しない限界保圧をbとしたときに、a<bとなる状況を作り出すことができる。
故に、請求項1記載のような成形方法によれば、光学面は完全転写し、且つ、非光学面にヒケが発生しているプラスチック光学素子を得ることができる。非光学面は光学素子としての機能を有していない面であるため、ヒケが発生しても光学素子としての支障はなく、且つ、ヒケが発生することにより、内部歪みの原因となる残留応力は解放されるために結果として内部歪みの少ない光学素子が得られる。
又、非光学面に有する凸形状は、その高さが光学素子高さの5%以下であれば、樹脂冷却を遅らせる効果を得るには十分ではないため、確実に非光学面にヒケを誘導することができず、凸形状が非光学面端部から最大光学素子肉厚の15%以上離れていなければ、光学面においても樹脂冷却が遅れてしまうため、光学面の方が非光学面よりもヒケが発生し易い状況となってしまう。そのため、請求項2記載のような寸法の凸形状を非光学面に有することにより、ヒケを確実に非光学面に誘導することができる。
従来の成形方法では、キャビティ面を成形品に完全に転写させなければならなかったため、保圧cはa<c且つb<cを満たす条件でなければならなかった。しかし、請求項1記載のような成形方法によれば、a<c<bという条件を満たせば良いので、従来の成形方法よりも低い保圧で成形することが可能となる。これにより、投影面積の大きな成形品を成形する場合においても、従来の成形設備を用いて型締力が不足することなく成形することが可能となる。
本発明を実施するための形態を図1〜図5を参照して説明する。図1は光学素子成形品の斜視図、図2は光学素子成形品の三面図、図3は射出成形用金型の概略断面図の一部、図4は光学素子成形品の断面内温度分布の一例、図5は光学素子成形品の表面温度の時間経過の一例を示すものである。
図3に示すように、光学素子の非光学面に対応するキャビティ表面を凹形状とすることで、この金型を用いて通常の射出成形により成形すると、図1に示した側面(非光学面)に凸形状2を有する光学素子が得られる。尚、この凸形状2は、光学素子としての光軸11に対し光学素子を対称に冷却するために、光学素子の両側面に同様に設けることが望ましい。又、図3に示したようにパーティングライン9を設けると、光学素子の凸形状2はアンダーカット部となるのでキャビティ側面を画成する部材5はスライド機構を有することが望ましい。
ここで、冷却途中の成形品表面及び内部の温度分布は図4及び図5に示したようになり、凸形状と非光学面の境界部分10の表面温度が高くなり、他の表面よりも樹脂剛性が低い状態となる。
従って、図3に示した金型を用いて、キャビティ面が成形品に完全に転写される保圧よりも低い保圧で成形すれば、ヒケは剛性が低い非光学面と凸形状の境界部分10を起点として発生するため、光学面にヒケが発生することはない。
本発明によれば、従来の射出成形時の保圧より低い保圧で成形しているため、内部歪みは従来の光学素子より少ない上に、側面に発生するヒケによって樹脂内部の引張応力が解放されるため、更に内部歪みが解消される。従って、高品質の光学素子を特別な設備を用いなくとも得ることができる。
本発明の実施例1を説明する。本発明の実施例1では、図2において光学素子長さa=100mm、光学素子肉厚b=20mm、光学素子高さc=15mmとする。このとき、非光学面の凸形状の寸法は凸形状長さd=50mm、凸形状幅e=14mm、凸形状高さf=1mmとする。凸形状は、どの部分においても非光学面端部より3mm以上離れているものとする。
本発明において形成されるヒケは、凸形状の周辺部分及び凸形状部に発生するため、上記寸法の光学素子の場合、凸形状が非光学面端部より3mm以上離れていなければ、非光学面に発生したヒケが光学面の形状精度に悪影響を及ぼす可能性がある。又、凸形状高さfが1mm以下であれば、本発明の効果が十分に得られず、光学面にヒケが発生してしまう可能性がある。
上記の光学素子をレーザー結像用レンズ等で良く用いられるシクロオレフィンポリマー(例えば、日本ゼオン製ZEONEX)等で成形する場合、射出時の保圧は60〜100MPa程度とすることが望ましい。
60MPa以下であれば、保圧不足によりヒケが大きくなり光学素子の機能に支障を来たす可能性があり、100MPa以上であれば、保圧過剰によりヒケが発生しなかった場合に本発明の効果が得られない。
本発明の実施例1によれば、非光学面の凸形状周辺部においてヒケが発生し、且つ、光学面は完全に転写した光学素子が得られるので、内部歪みの少ない光学素子成形品を得ることができる。
本発明の実施例2を説明する。図6は本発明の実施例2における光学素子成形品の斜視図である。本発明の実施例2では、図7において光学素子長さa=100mm、光学素子肉厚b=20mm、光学素子高さc=15mmとする。このとき、非光学面の凸形状の寸法は凸形状長さd=20mm、凸形状幅e=10mm、凸形状高さf=2mmとする。凸形状はどの部分においても非光学面端部より3mm以上離れているものとする。又、非光学面に設ける凸形状を2つとし、厚肉部ではなく内部歪みの残留し易い薄肉部に配置する。
上記の光学素子をレーザー結像用レンズ等で良く用いられるシクロオレフィンポリマー(例えば、日本ゼオン製ZEONEX)等で成形する場合、光学素子の容積は実施例1と同等であるため、射出時の保圧は60〜100MPa程度とすることが望ましい。
本発明の実施例2によれば、実施例1と同等の効果を得ることができ、更に、凸形状を薄肉部のみに配置することにより、偏肉形状の成形品の場合に内部歪みが問題になる薄肉部分にヒケを発生させ内部歪みを開放することができる。
本発明の実施例3を説明する。図8は本発明の実施例3における光学素子成形品の斜視図である。本発明の実施例3では、光学素子長さa=100mm、光学素子肉厚b=20mm、光学素子高さc=15mmとする。このとき、非光学面の中央部を凸形状幅e=2mm、凸形状高さf=2mmで取り囲むように配置する。凸形状はどの部分においても非光学面端部より3mm以上離れているものとする。
上記の光学素子をレーザー結像用レンズ等で良く用いられるシクロオレフィンポリマー(例えば、日本ゼオン製ZEONEX)等で成形する場合、光学素子の容積は実施例1と同等であるため、射出時の保圧は60〜100MPa程度とすることが望ましい。
本発明の実施例3によれば、実施例1と同等の効果を得ることができ、更に、非光学面中央部を取り囲むように凸形状が配置されているため、凸形状によって囲まれた中央部に優先的にヒケを発生させることができる。これは、肉厚の厚い中央部になるほどヒケが発生し易いためで、ヒケが発生する部分を凸形状で取り囲むことによってヒケの発生による光学面の形状悪化を防止できる。
本発明の実施例4を説明する。図9は本発明の実施例4における光学素子成形品の斜視図である。本発明の実施例4では、光学素子長さa=100mm、光学素子肉厚b=20mm、光学素子高さc=15mmとする。凸形状は半径3mm、高さ2mmの円柱形状で非光学面に9つ有するものとする。凸形状はどの部分においても非光学面端部より3mm以上離れているものとする。
上記の光学素子をレーザー結像用レンズ等で良く用いられるシクロオレフィンポリマー(例えば、日本ゼオン製ZEONEX)等で成形する場合、光学素子の容積は実施例1と同等であるため、射出時の保圧は60〜100MPa程度とすることが望ましい。
本発明の実施例4によれば、実施例1と同等の効果を得ることができ、更に、凸形状を複数個有することにより、ヒケの発生起点を増やすことができ、より広範囲においてヒケを発生させることができる。これによって、光学素子においてもより広範囲に内部歪みの少ない光学素子を得ることができる。
本発明の実施例5を説明する。図10は本発明の実施例5における光学素子成形品の斜視図である。本発明の実施例5では、光学素子長さa=100mm、光学素子肉厚b=20mm、光学素子高さc=15mmとする。凸形状は半径2mm、高さ2mmの円柱形状で薄肉部の非光学面に8つ有するものとする。厚肉部には凸形状は設けない。凸形状はどの部分においても非光学面端部より3mm以上離れているものとする。
上記の光学素子をレーザー結像用レンズ等で良く用いられるシクロオレフィンポリマー(例えば、日本ゼオン製ZEONEX)等で成形する場合、光学素子の容積は実施例1と同等であるため、射出時の保圧は60〜100MPa程度とすることが望ましい。
本発明の実施例5によれば、実施例1、2及び4と同等の効果を得ることができる。即ち、偏肉形状の光学素子成形品において内部歪みの発生し易い薄肉部において広範囲にヒケを発生させ内部歪みを開放することができる。
本発明の実施例1による光学素子成形品を示す斜視図である。 本発明の実施例1による光学素子成形品の三面図である。 本発明による成形用金型の断面図の一部である。 本発明による光学素子成形品の冷却途中における断面内温度分布を説明する模式図である。 本発明による光学素子成形品の冷却途中における表面温度の時間経過を説明する図である。 本発明の実施例2による光学素子成形品を示す斜視図である。 本発明の実施例2による光学素子成形品の三面図である。 本発明の実施例3による光学素子成形品を示す斜視図である。 本発明の実施例4による光学素子成形品を示す斜視図である。 本発明の実施例5による光学素子成形品を示す斜視図である。
符号の説明
1 光学面
2 凸形状
3 非光学面
4 金型キャビティ
5 側面スライド
9 パーティングライン
10 凸形状境界部
11 光学素子光軸

Claims (3)

  1. 少なくとも1つ以上の光学面を持つキャビティに軟化温度以上の熱可塑性樹脂材料を射出充填し、軟化温度以下に冷却した後型開きして取り出すプラスチック光学素子の成形方法において、
    光学面にヒケが発生しない限界保圧をaとし、非光学面にヒケが発生しない限界保圧をbとしたときに、非光学面に少なくとも1つ以上の凸形状を有するキャビティに樹脂を充填する際の保圧cをa<b<cの範囲内とすることを特徴とするプラスチック光学素子の成形方法。
  2. 請求項1記載の成形方法により製造されるプラスチック光学素子において、少なくとも1つ以上の凸形状を非光学面に有しその非光学面にヒケが発生していることを特徴とするプラスチック光学素子。
  3. 少なくとも1つ以上の光学面を持つキャビティに軟化温度以上の熱可塑性樹脂材料を射出充填し、軟化温度以下に冷却した後型開きして取り出すことにより製造されるプラスチック光学素子において、非光学面に少なくとも1つ以上の凸形状を有しその凸形状の高さが光学素子高さの5%以上であり、且つ、凸形状が非光学面端部から最大光学素子肉厚の15%以上離れて位置していることを特徴とするプラスチック光学素子。
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