JP2019019311A - 熱可塑性樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物及びその成形品 Download PDF

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Kimiyuki Kuroda
公之 黒田
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Abstract

【課題】優れた耐衝撃性、光沢を有する成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物を得る。【解決手段】ゴム質重合体からなる幹ポリマーと、グラフト鎖とを有するグラフト共重合体(A)と、シアン化ビニル系単量体単位を含む重合体を含有する熱可塑性樹脂(B)とを含有し、(A+B)に対し(A)10〜60質量%、(B)90〜40質量%、ゴム質重合体は質量平均粒子径が0.20〜0.50μm未満であるゴム質重合体(a1)と、0.10〜0.20μm未満であるゴム質重合体(a2)との双峰性の粒子径分布を有し、(a1+a2)に対し(a1)20〜80質量%、(a2)80〜20質量%、(a1)の粒子径分布における「(d84%−d16%)/2」が0.01以上0.07未満、(a2)の粒子径分布における「(d84%−d16%)/2」が0.01〜0.07未満、(a1)及び(a2)の質量平均粒子径の差が0.10〜0.25μm未満である熱可塑性樹脂組成物。【選択図】図2

Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びその成形品に関する。
近年、一般機器用途や家電用途等においては、商品価値をさらに高める目的で、耐衝撃性等の性能に加えて、良好な表面光沢を併せ持つ樹脂組成物が求められている。
しかしながら、一般に、耐衝撃性等の特性を高める目的で樹脂組成物中にゴム質重合体を含有させ、当該ゴム質重合体の粒子径を小さくすると、表面光沢は良好となるが耐衝撃性は低下し、その逆に、ゴム質重合体の粒子径を大きくすると、耐衝撃性は向上するが光沢は低下する、という問題を有している。
上述した問題を解決する方法として、従来、特定の平均粒子径と粒子径分布を有する2種類のゴム成分を併用することにより、優れた耐衝撃性と良好な光沢とを得る方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
特開平9−310002号公報 特開平9−310003号公報
しかしながら、さらに意匠性を付与させる目的で樹脂組成物中に着色剤を添加すると、耐衝撃性が低下してしまい、上述した従来技術においては、着色しても優れた耐衝撃性を維持しつつ、良好な光沢が得られる樹脂組成物は得られていない、という問題を有している。
そこで本発明においては、着色しても優れた耐衝撃性を維持しつつ、良好な光沢を有す
る成形品、及びその成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した課題に対して鋭意研究を行った結果、グラフト共重合体(A)と、シアン化ビニル系単量体単位を含む重合体を含有する熱可塑性樹脂(B)とを、それぞれ所定量含有する熱可塑性樹脂組成物であって、
前記グラフト共重合体(A)が、ゴム質重合体からなる幹ポリマーと、その幹ポリマーにグラフト重合したグラフト鎖と、を有し、
前記ゴム質重合体は、質量平均粒子径が、0.20μm以上0.50μm未満であるゴム質重合体(a1)と、質量平均粒子径が、0.10μm以上0.20μm未満であるゴム質重合体(a2)との、双峰性の粒子径分布を有し、
前記ゴム質重合体(a1)と、ゴム質重合体(a2)とは、各々所定の割合で含有されており、
ゴム質重合体(a1)の粒子径分布における、「(d84%−d16%)/2」、及びゴム質重合体(a2)の粒子径分布における、「(d84%−d16%)/2」が、各々特定の数値範囲であり、
前記ゴム質重合体(a1)の質量平均粒子径と、前記ゴム質重合体(a2)の質量平均粒子径との差が、特定の数値範囲であるものとすることにより、上述した従来技術の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
ゴム質重合体からなる幹ポリマーと、その幹ポリマーにグラフト重合したグラフト鎖と、を有するグラフト共重合体(A)と、
シアン化ビニル系単量体単位を含む重合体を含有する熱可塑性樹脂(B)と、
を、含有する熱可塑性樹脂組成物であって、
前記グラフト共重合体(A)と前記熱可塑性樹脂(B)の合計量に対して、前記グラフト共重合体(A)を10〜60質量%、前記熱可塑性樹脂(B)を90〜40質量%含有し、
前記ゴム質重合体は、質量平均粒子径が、0.20μm以上0.50μm未満であるゴム質重合体(a1)と、質量平均粒子径が、0.10μm以上0.20μm未満であるゴム質重合体(a2)との、双峰性の粒子径分布を有し、
前記ゴム質重合体(a1)と前記ゴム質重合体(a2)の合計量に対して、前記(a1)が20〜80質量%、前記(a2)が80〜20質量%であり、
前記ゴム質重合体(a1)の粒子径分布における、「(d84%−d16%)/2」が、0.01以上0.07未満であり、前記ゴム質重合体(a2)の粒子径分布における、「(d84%−d16%)/2」が、0.01以上0.07未満であり、
前記ゴム質重合体(a1)の質量平均粒子径と、前記ゴム質重合体(a2)の質量平均粒子径の差が0.10μm以上0.25μm未満である、
熱可塑性樹脂組成物。
〔2〕
前記グラフト共重合体(A)における、tanδが、2つ以上のピークを有し、前記2つ以上のピークのうち、少なくとも1つのピークが、−100℃以上0℃未満の範囲内にピークトップを有するピークIであり、前記ピークIのピークトップ位置が、−73℃以上−68℃未満であり、
前記tanδのピークIの「半値幅/ピーク高さ」が、40以上60未満である、
前記〔1〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔3〕
前記グラフト共重合体(A)において、前記ゴム質重合体以外の全単量体単位(100質量%)中のシアン化ビニル系単量体単位の含有割合(C)が15〜50質量%である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔4〕
前記熱可塑性樹脂(B)における全単量体単位(100質量%)中のシアン化ビニル系単量体単位の含有割合(D)が15〜55質量%である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔5〕
前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の熱可塑性樹脂組成物を含有する成形品。
本発明によれば、着色しても優れた耐衝撃性を維持しつつ、良好な光沢を有する成形品、及びその成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
グラフト共重合体の各温度におけるtanδを示す図である。 グラフト共重合体の各温度におけるtanδのピークのピークトップ、ピーク高さ、及び半値幅を示す図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
また、本明細書における「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。
〔熱可塑性樹脂組成物〕
本実施形態の熱可塑性組成物は、グラフト共重合体(A)(以下、(A)成分と記載する場合がある。)と、シアン化ビニル系単量体単位を含む重合体を含有する熱可塑性樹脂(B)(以下、熱可塑性樹脂(B)、(B)成分と記載する場合がある。)を含有する。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、
グラフト共重合体(A)と、シアン化ビニル系単量体単位を含有する重合体を含有する熱可塑性樹脂(B)との合計量に対して、
前記グラフト共重合体(A)10〜60質量%と、
前記シアン化ビニル系単量体単位を含む重合体を含有する熱可塑性樹脂(B)90〜40質量%と、を、含有する熱可塑性樹脂組成物である。
前記グラフト共重合体(A)は、ゴム質重合体からなる幹ポリマーと、その幹ポリマーにグラフト重合したグラフト鎖と、を有し、
前記熱可塑性樹脂組成物における前記ゴム質重合体は、質量平均粒子径が、0.20μm以上0.50μm未満であるゴム質重合体(a1)と、質量平均粒子径が、0.10μm以上0.20μm未満であるゴム質重合体(a2)との、双峰性の粒子径分布を有し、
ゴム質重合体(a1)とゴム質重合体(a2)の合計量に対して、(a1)が20〜80質量%、(a2)が80〜20質量%と、を含有し、
ゴム質重合体(a1)の粒子径分布における、「(d84%−d16%)/2」が、0.01以上0.07未満であり、ゴム質重合体(a2)の粒子径分布における、「(d84%−d16%)/2」が、0.01以上0.07未満であり、
前記ゴム質重合体(a1)の質量平均粒子径と、前記ゴム質重合体(a2)の質量平均粒子径の差が0.10μm以上0.25μm未満である。
(グラフト共重合体(A))
前記グラフト共重合体(A)は、ゴム質重合体からなる幹ポリマーと、その幹ポリマーにグラフト重合したグラフト鎖とを有している。
本実施形態におけるグラフト共重合体(A)を構成するゴム質重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム及びエチレン系ゴムが挙げられる。具体的には、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル共重合体、ブタジエン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体、エチレン−イソプレン共重合体及びエチレン−アクリル酸メチル共重合体が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのうち、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びアクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体、からなる群より選ばれる1種以上のゴム質重合体が、耐衝撃性の観点から好ましい。
前記ゴム質重合体が共重合体である場合、ゴム質重合体における各構成単位の組成(分布)は、均一であってもよいし、異なる組成であってもよいし、また、連続的に組成が変化しているものであってもよい。これらの各構成単位の組成は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)により確認できる。
なお、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物に含まれるグラフト共重合体(A)において、ゴム質重合体は、幹ポリマーを構成するものである。
グラフト共重合体(A)中のゴム質重合体は、熱可塑性樹脂(B)の連続相(海)の中に分散した分散相(島)の形態であり、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、海島形態をとっている。
分散したゴム質重合体の分散相の形状は、特に限定されず、例えば、不定形、棒状、平板状及び粒子状が挙げられる。これらの中では、耐衝撃性の観点から、粒子状が好ましい。
分散相は、前記熱可塑性樹脂(B)の連続相中に1つ1つ独立して分散してもよく、いくつかの分散相が凝集した集合体の状態で分散してもよいが、耐衝撃性の観点から、1つ1つが独立して分散した方が好ましい。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において、ゴム質重合体の粒子径の分布は、光沢及び着色時の耐衝撃性保持率の観点から、質量平均粒子径の範囲が異なるゴム質重合体(a1)と、ゴム質重合体(a2)との、双峰性の粒子径分布(2山分布)である。
前記ゴム質重合体の大きさは、ゴム質重合体の形状が粒子状である場合、ゴム質重合体(a1)の質量平均粒子径として、光沢及び着色時の耐衝撃性保持率の観点から0.20μm以上0.50μm未満である。好ましくは0.25〜0.40μmであり、より好ましくは0.30〜0.40μm、さらに好ましくは0.30〜0.35μmである。
一方、ゴム質重合体(a2)の質量平均粒子径として、耐衝撃性及び着色時の耐衝撃性保持率の観点から0.10μm以上0.20μm未満である。好ましくは0.12〜0.20μmであり、より好ましくは0.14〜0.20μmであり、さらに好ましくは0.16〜0.20μmである。
ここで、ゴム質重合体の質量平均粒子径を制御する方法について説明する。
例えば、乳化重合にてゴム質重合体を製造する場合、ゴム質重合体の質量平均粒子径を制御する方法として、乳化剤の濃度を調整する、重合開始前に仕込むモノマーと脱イオン水の比率を調整する、等の方法が挙げられる。
モノマーと脱イオン水の比率を調整する場合、ゴム質重合体(a1)の重合において、好ましいモノマーと脱イオン水の比率は、1.20〜1.80であり、より好ましくは1.30〜1.70であり、さらに好ましくは1.40〜1.60である。
一方、ゴム質重合体(a2)の重合において、好ましいモノマーと脱イオン水の比率は0.95〜1.20であり、より好ましくは1.00〜1.15であり、さらに好ましくは1.05〜1.10である。
なお、モノマーと脱イオン水の比率は「モノマー(質量部)/脱イオン水(質量部)」で定義される。モノマーと脱イオン水の比率を前記範囲とすることで、ゴム質重合体(a1)及び(a2)の質量平均粒子径を好ましい範囲に制御することが可能となる。
ゴム質重合体((a1)+(a2)=100質量%)中のゴム質重合体(a1)の含有割合は、光沢及び着色時の耐衝撃性保持率の観点から、20〜80質量%であるものとする。好ましくは40〜80質量%、より好ましくは60〜80質量%、さらに好ましくは70〜80質量%である。
一方、ゴム質重合体((a1)+(a2)=100質量%)中のゴム質重合体(a2)の含有割合は、耐衝撃性及び着色時の耐衝撃性保持率の観点から、20質量%以上80質量%以下であるものとする。好ましくは20〜60質量%、より好ましくは20〜40質量%、さらに好ましくは20〜30質量%である。
ゴム質重合体(a1)とゴム質重合体(a2)の比率は、粒子径制御の観点から各ゴム質重合体を別々に作製しておき、後で任意の比率でブレンドすることにより、上記数値範囲に制御することができる。
ゴム質重合体の粒子径分布の指標として「(d84%−d16%)/2」(d84%:累積84%径、d16%:累積16%径)を用いることが好ましい。この値が小さいほど、粒子径分布が狭いことを表わす。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物においては、ゴム質重合体(a1)の粒子径分布における、「(d84%−d16%)/2」が、光沢及び着色時の耐衝撃性保持率の観点から、0.01以上0.07未満であり、好ましくは0.02〜0.07、より好ましくは0.03〜0.07、さらに好ましくは0.03〜0.06である。
一方、ゴム質重合体(a2)の粒子径分布における、「(d84%−d16%)/2」が、耐衝撃性及び着色時の耐衝撃性保持率の観点から、0.01以上0.07未満であり、好ましくは0.02〜0.07、より好ましくは0.03〜0.07、さらに好ましくは0.03〜0.06である。
ゴム質重合体(a1)の粒子径分布における「(d84%−d16%)/2」及びゴム質重合体(a2)の粒子径分布における「(d84%−d16%)/2」は、ゴム質重合体の重合時における乳化剤濃度を調整することにより上述した数値範囲に制御することができる。
前記ゴム質重合体(a1)の質量平均粒子径と、前記ゴム質重合体(a2)の質量平均粒子径の差は、着色時の耐衝撃性保持率の観点から、0.10μm以上0.25μm未満であり、好ましくは0.12〜0.23μm、より好ましくは0.14〜0.23μm、さらに好ましくは0.16〜0.20μmである。
ゴム質重合体(a1)及びゴム質重合体(a2)の質量平均粒子径は、公知の方法で求められる。例えば、下記のようにして求められる。
まず、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の成形品から超薄切片を作製し、その超薄切片を四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム等の染色剤にて染色処理する。
その後、染色処理した超薄切片を、透過型電子顕微鏡(TEM)により撮影し、超薄切片の任意の範囲(15μm×15μm)について、画像解析することで求められる。画像は、例えば画像解析ソフト「A像くん」(旭化成エンジニアリング株式会社製)を用いて解析することができる。
ゴム質重合体((a1)+(a2)=100質量%)中のゴム質重合体(a1)及びゴム質重合体(a2)の含有割合は、上述のようにしてゴム質重合体(a1)及びゴム質重合体(a2)の質量平均粒子径を測定し、当該測定された、質量平均粒子径が0.20μm以上0.50μm未満であるゴム質重合体(a1)と、質量平均粒子径が、0.10μm以上0.20μm未満であるゴム質重合体(a2)の、これらの合計量に対する含有割合を、各々算出することにより得られる。
ゴム質重合体(a1)及びゴム質重合体(a2)の粒子径分布における、「(d84%−d16%)/2」は、上述のようにしてゴム質重合体(a1)及びゴム質重合体(a2)の質量平均粒子径の測定方法と同様の方法により得られ、透過型電子顕微鏡(TEM)により撮影された画像を解析し、d84%:累積84%径、及びd16%:累積16%径を求め、上記式に当てはめることにより得られる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物のグラフト共重合体(A)のグラフト鎖由来の成分の還元比粘度(ηsp/c)は、耐衝撃性の観点から、0.20〜0.80dL/gの範囲にあることが好ましい。
前記還元比粘度は、より好ましくは0.25〜0.70dL/gであり、さらに好ましくは0.30〜0.60dL/gであり、さらにより好ましくは0.35〜0.50dL/gである。
前記グラフト鎖由来の成分の還元比粘度を0.20dL/g以上とすることで、耐衝撃性や強度の低下をより抑制することができ、還元比粘度を0.80dL/g以下とすることで、更に十分な成形性を得ることができる。
グラフト鎖由来の成分の還元比粘度は、測定試料0.25gを2−ブタノン50mLにて溶解した溶液を、30℃におけるCannon−Fenske型毛細管を用いて粘度測定することにより求めることができる。
グラフト共重合体(A)のグラフト鎖由来の成分の還元比粘度(ηsp/c)は、グラフト重合時における、開始剤及び連鎖移動剤の添加量を調整することにより、前記数値範囲に制御することができる。
グラフト共重合体(A)のグラフト鎖由来の成分は、グラフト共重合体(A)の酸化分解を経て得られる。酸化分解の方法としては、例えば、オゾン分解、オスミウム酸分解などを用いることができる。より具体的には、高分子論文集(井手文雄ら、vol.32、No.7、PP.439−444(July.1975))に記載の方法を用いることができる。この文献において、単離された枝ポリマーが、本実施形態におけるグラフト鎖由来の成分に該当する。
グラフト共重合体(A)のtanδは2つ以上のピークを有することが好ましい。
グラフト共重合体(A)のtanδが2つ以上のピークを有する場合、当該2つ以上のピークのうち1つ以上が、−100℃以上0℃未満の範囲内にピークトップを有するピーク(以下、「ピークI」という。)であり、前記2つ以上のピークのうちの、他の1つ以上が、0℃以上150℃未満の範囲内にピークトップを有するピーク(以下、「ピークII」という。)である。
耐衝撃性及び着色時の耐衝撃性保持率の観点から、ピークIのピークトップ位置は、−80℃以上−60℃未満の範囲内にあることが好ましく、−73℃以上−68℃未満の範囲内にあることがより好ましく、−71℃以上−69℃未満の範囲内にあることがさらに好ましい。
また、ピークIIのピークトップ位置は、耐衝撃性及び色調の観点から、90℃以上150℃未満の範囲内にあることが好ましく、100℃以上140℃未満の範囲内にあることがより好ましく、110℃以上130℃未満の範囲内にあることがさらに好ましい。
グラフト共重合体(A)のtanδのピークIの「半値幅/ピーク高さ」は、耐衝撃性及び着色時の耐衝撃性保持率の観点から、40以上であることが好ましく、より好ましくは42以上、さらに好ましくは44以上である。
また、ピークIの「半値幅/ピーク高さ」は、光沢及び着色時の耐衝撃性保持率の観点から、60未満であることが好ましく、より好ましくは58以下、さらに好ましくは56以下である。
グラフト共重合体(A)のtanδのピークIの半値幅/ピーク高さは、後述する方法より、上記数値範囲に制御することができる。
グラフト共重合体(A)のtanδのピークIのピークトップ位置は、後述する方法より、上記数値範囲に制御することができる。
グラフト共重合体(A)のtanδが−100℃以上0℃未満の範囲内に2つ以上のピークを有する場合、すなわちピークIが2つ以上存在する場合、すべてのピークIが上記範囲を満たすことが好ましい。
ここで、グラフト共重合体(A)のtanδピークIの「半値幅/ピーク高さ」及びピークトップ位置を制御する方法について説明する。
グラフト共重合体(A)のtanδのピークIの「半値幅/ピーク高さ」を制御する方法としては、(1)グラフト共重合体(A)のグラフト率を調整する方法、(2)ゴム質重合体の架橋度を調整する方法、が挙げられ、前記(1)又は(2)の方法を単独で、又は組み合わせて使用することが可能である。
前記(1)の方法の場合、グラフト率は、グラフト重合での重合開始剤及び連鎖移動剤の添加量を調整することにより制御することができる。グラフト率を後述する数値範囲である10%以上200%以下とすることにより、グラフト共重合体(A)のtanδのピークIの「半値幅/ピーク高さ」を好ましい範囲に制御することが可能となる。
前記(2)の方法場合、ゴム質重合体の架橋度を示す指標として膨潤指数を用いるとよい。ゴム質重合体の膨潤指数は10〜50%が好ましく、より好ましくは15〜40%であり、さらに好ましくは20〜30%である。膨潤指数を前記範囲に調整することにより、グラフト共重合体(A)のtanδのピークIの「半値幅/ピーク高さ」を好ましい範囲に制御することが可能となる。
膨潤指数の制御は、例えば、乳化重合でゴム質重合体を製造する場合、連鎖移動剤の添加量を増やす、重合温度を高くする、重合終了時の重合転化率を高める、重合中のモノマー/ポリマー比率を小さくして重合する、等の方法を採用することができ、このようにすると、膨潤指数が小さくなり、架橋度を高めることができる。さらに、架橋性のモノマー、例えばジビニルベンゼン等を共重合して使用することにより、膨潤指数を小さくすることもできる。
グラフト共重合体(A)のtanδのピークIのピークトップ位置を制御する方法としては、ゴム質重合体の各構成単位におけるジエン系単量体の含有率を調整する方法が挙げられる。例えば、ゴム質重合体がスチレン−ブタジエン共重合体の場合、好ましいブタジエン含有率は50〜99質量%であり、より好ましくは80〜97質量%であり、さらに好ましくは90〜95質量%である。ブタジエン含有率をこの範囲に調整することにより、グラフト共重合体(A)のtanδのピークIのピークトップ位置を好ましい範囲に制御することが可能となる。
図1及び図2は、グラフト共重合体(A)の各温度におけるtanδを示す図である。
横軸に温度を示し、縦軸にtanδを示す。
図2に示すように、ピークIのベースライン(図2中の破線)と、ピークIのピークトップからの垂線との交点を点Pとする。
ピークIのピーク高さは、ピークIのピークトップにおけるtanδと点Pにおけるtanδの差から求められ、「半値幅/ピーク高さ」が求められる。
例えば、ピーク高さ:0.5、半値幅:20℃の場合、「半値幅/ピーク高さ」=20/0.5=50が算出できる。
グラフト共重合体(A)のtanδは、下記のようにして求められる。
グラフト共重合体(A)を設定温度240℃のヒートプレスによって厚さ0.1〜0.3mmのシート状に成形し、長さ30mm×幅10mmに切り出して測定サンプルを作製する。
動的粘弾性測定装置を用い、サンプルの長辺の両端各5mm部分を引張治具で固定し、以下の条件で測定する。
測定装置:動的粘弾性測定装置(イプレクサー500N GABO社製)
モード:引張
周波数:8Hz
昇温速度:3℃/分
測定温度:−100〜150℃
本実施形態において、グラフト共重合体(A)は、幹ポリマーであるゴム質重合体に、シアン化ビニル系単量体と、そのシアン化ビニル系単量体と共重合可能な1種以上の単量体とを含む単量体の混合物をグラフト重合したグラフト共重合体であることが好ましい。
グラフト共重合体(A)におけるグラフト率は、10%以上200%以下であることが好ましい。このグラフト率は、より好ましくは20%以上150%未満、さらに好ましくは30%以上100%以下、さらにより好ましくは40%以上70%以下である。
グラフト率をこの範囲とすることで、グラフト共重合体(A)における、tanδのピークIの「半値幅/ピーク高さ」を好ましい範囲に制御することができる。
グラフト率は、幹ポリマーの質量に対するグラフト鎖の質量の割合で定義される。グラフト率の測定方法は、下記のとおりである。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物をアセトンに溶解し、遠心分離器によりアセトン可溶分とアセトン不溶分とに分離する。この時、アセトンに不溶な成分は、ゴム質重合体からなる幹ポリマーと、その幹ポリマーにグラフト重合したグラフト鎖であり、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物におけるグラフト共重合体(A)を含むものである。アセトンに可溶な成分は、熱可塑性樹脂(B)を含むものである。
アセトンに不溶な成分を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)により分析することによって、幹ポリマー及びグラフト鎖の構成比が得られ、その結果を元にして、グラフト率を求めることができる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において、グラフト共重合体(A)と、シアン化ビニル系単量体単位を含む重合体を含有する熱可塑性樹脂(B)との合計量を100質量%としたとき、グラフト共重合体(A)の含有割合は10〜60質量%であり、好ましくは15〜55質量%であり、より好ましくは20〜50質量%である。熱可塑性樹脂(B)の含有割合は90〜40質量%であり、好ましくは85〜45質量%であり、より好ましくは80〜50質量%である。
グラフト共重合体(A)の含有割合を10質量%以上とすることは、耐衝撃性、特にデュポン衝撃試験に基づく耐衝撃性の観点から好ましい。
一方、グラフト共重合体(A)の含有割合を60質量%以下とすることは、流動性の観点から好ましい。
さらに、グラフト共重合体(A)中のゴム質重合体以外の構成単位の組成(構成単位の種類及び含有割合。以下同様。)と、シアン化ビニル系単量体単位を含む重合体を含有する熱可塑性樹脂(B)の組成とを制御して相溶性を高めると、ゴム質重合体の分散状態が更に良好となり、成形品の耐衝撃性、外観性のバランスを一層向上させることができる。
上記相溶性を高めるには、例えば、グラフト共重合体(A)中のゴム質重合体以外の構成単位の種類と、シアン化ビニル系単量体単位を含む重合体を含有する熱可塑性樹脂(B)の構成単位の種類を同一のものにしたり、それぞれの構成単位の含有割合を近づけたりする、好ましくは同一にしたりする方法が挙げられる。
グラフト共重合体(A)において、ゴム質重合体にグラフト重合される単量体として好ましいシアン化ビニル系単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。
シアン化ビニル系単量体単位は、少なくとも一部が、これと共重合可能な1種以上の単量体単位と共重合していてもよい。
シアン化ビニル系単量体と共重合可能な単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸等のアクリル酸類;N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド等のN−置換マレイミド系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有単量体が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
これらの中で好ましいのは、強度及び耐熱性の観点から、スチレン、α−メチルスチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、N−フェニルマレイミド、グリシジルメタクリレートであり、強度の観点から、特に好ましくはスチレンである。
グラフト共重合体(A)において、ゴム質重合体以外の全単量体単位(100質量%)中のシアン化ビニル系単量体単位の含有割合(C)は、耐衝撃性及び着色時の耐衝撃性保持率の観点から、15質量%以上であることが好ましく、色調の観点から50質量%以下が好ましく、より好ましくは20〜45質量%、さらに好ましくは25〜40質量%、さらにより好ましくは30〜38質量%、よりさらに好ましくは32〜36質量%である。
(シアン化ビニル系単量体単位を含む重合体を含有する熱可塑性樹脂(B))
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)との相溶性の観点から、シアン化ビニル系単量体単位を含む重合体を含有する熱可塑性樹脂(B)を含む。
当該熱可塑性樹脂(B)中に含有されているシアン化ビニル系単量体単位を含む重合体を構成するシアン化ビニル系単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。
シアン化ビニル系単量体単位は、これと共重合可能な1種以上の単量体単位と共重合していてもよい。
シアン化ビニル系単量体と共重合可能な単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸等のアクリル酸類;N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド等のN−置換マレイミド系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有単量体が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中で好ましいのは、強度及び耐熱性の観点から、スチレン、α−メチルスチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、N−フェニルマレイミド、グリシジルメタクリレートであり、強度の観点から、特に好ましくはスチレンである。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、(B)熱可塑性樹脂として、シアン化ビニル系単量体単位を含む重合体以外の熱可塑性樹脂を含有してもよい。
当該シアン化ビニル系単量体単位を含む重合体以外の熱可塑性樹脂(その他の熱可塑性樹脂、と記載する場合がある。)は、射出成形可能な樹脂であってもよく、射出成形品に実用上必要な強度、硬さ、耐熱性を付与できるものであってもよい。
当該その他の熱可塑性樹脂としては、グラフト共重合体(A)との混和性の観点から、非晶性の熱可塑性樹脂が好ましい。
さらに、その他の熱可塑性樹脂が、90〜300℃のガラス転移温度(Tg)を有することにより、実用上必要な強度、硬さ、耐熱性をも有する射出成形品を、より有効かつ確実に得ることができる。
このようなその他の熱可塑性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂、メタクリル樹脂、メチルメタクリレート−スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエーテル樹脂、非晶性ポリエステルが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物に含有されている熱可塑性樹脂(B)は、シアン化ビニル系単量体単位を含む重合体を含有しているが、熱可塑性樹脂(B)における全単量体単位(100質量%)中のシアン化ビニル系単量体単位の含有割合(D)は、耐衝撃性及び着色時の耐衝撃性保持率の観点から、15質量%以上であることが好ましく、色調の観点から、55質量%以下であることが好ましい。
この含有割合(D)は、より好ましくは20〜50質量%、さらに好ましくは25〜45質量%、さらにより好ましくは30〜40質量%、よりさらに好ましくは35〜40質量%である。
なお、グラフト共重合体(A)におけるゴム質重合体の含有割合、ゴム質重合体以外の全単量体単位中のシアン化ビニル系単量体単位の含有割合(C)、熱可塑性樹脂(B)における全単量体単位中のシアン化ビニル系単量体単位の含有割合(D)は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)により求めることができる。
例えば、グラフト共重合体(A)におけるゴム質重合体以外の全単量体単位中のシアン化ビニル系単量体単位の含有割合(C)は、予めゴム質重合体における全単量体単位中の各単量体単位の含有割合(組成比)を求め、その後、グラフト共重合体(A)における全単量体単位中の各単量体単位の含有割合(組成比)をFT−IRにより求め、グラフト共重合体(A)におけるゴム質重合体とゴム質重合体にグラフト重合したグラフト鎖との含有割合を勘案することで、求めることができる。
グラフト共重合体(A)におけるゴム質重合体の含有割合、ゴム質重合体以外の全単量体単位中のシアン化ビニル系単量体単位の含有割合(C)、熱可塑性樹脂(B)における全単量体単位中のシアン化ビニル系単量体単位の含有割合(D)は、グラフト共重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)の重合工程における、シアン化ビニル系単量体の添加量、重合時間等の重合条件を調整することにより制御することができる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂(B)の還元比粘度(ηsp/c)は、耐衝撃性の観点から0.20〜1.50dL/gの範囲にあることが好ましい。この還元比粘度は、より好ましくは0.30〜0.80dL/gであり、さらに好ましくは0.40〜0.70dL/gであり、さらにより好ましくは0.50〜0.60dL/gである。還元比粘度を0.20dL/g以上とすることで、耐衝撃性や強度の低下をより抑制することができ、還元比粘度を1.50dL/g以下とすることで、更に十分な成形性を得ることができる。
(その他の成分)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)及びシアン化ビニル系単量体単位を含む重合体を含有する熱可塑性樹脂(B)の他、必要に応じて、その他の任意成分の1種以上を含んでいてもよい。
そのような任意成分としては、例えば、後述する本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の成形品に含まれ得る各種添加剤や、通常の熱可塑性樹脂組成物に含まれるものが挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物に含まれる任意成分の含有割合は、本発明の目的を達成できる範囲において特に限定されず、例えば、0.05〜4.00質量%であってもよく、0.15〜3.50質量%であってもよい。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、上記の事項のいずれを組み合わせたものであってもよい。
〔熱可塑性樹脂組成物の製造方法〕
(グラフト共重合体(A)の製造方法)
グラフト共重合体(A)は、当該グラフト共重合体(A)に含まれるゴム質重合体に、所定のビニル単量体をグラフト重合させることにより得られる。
グラフト共重合体(A)に含まれるゴム質重合体の製造方法としては、特に限定されず、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状懸濁重合法、乳化重合等の方法が使用できる。これらのうち、粒子形状のゴム成分(分散相)が得られ、その粒子径の制御が容易であることから、乳化重合法、懸濁重合法、塊状懸濁重合法が好ましく用いられる。
乳化重合にてゴム質重合体を製造する場合、熱によりラジカルを発生する熱分解型の開始剤や、レドックス型の開始剤を用いることができる。
また、別途乳化重合により得たゴム質重合体を用い、さらにビニル単量体をグラフト重合させる方法等を用いてもよい。ここで得られたグラフト鎖としては、熱可塑性樹脂(B)と相溶するものが、耐衝撃性の観点から好ましい。
なお、粒子状のゴム質重合体を製造した後、同一の反応器で連続的に上記グラフト重合を行ってもよく、ゴム粒子を一旦ラテックスとして単離したのち、改めてグラフト重合を行ってもよい。
具体的には、乳化重合により得たポリブタジエンラテックスに、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体及びアクリル系単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体をラジカル重合することにより、グラフト共重合体を得る方法が挙げられる。
前記1種以上の単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン及びアクリロニトリル;スチレン及びメタクリル酸メチル;スチレン;メタクリル酸メチル;及びアクリロニトリルが挙げられる。
(シアン化ビニル系単量体単位を含む重合体を含有する熱可塑性樹脂(B)の製造方法)
熱可塑性樹脂(B)の製造方法としては、特に限定されず、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状懸濁重合法、乳化重合等の方法が挙げられる。
例えば、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体及びアクリル系単量体からなる群より選ばれる2種以上の単量体を用いて、ラジカル重合により共重合体を製造することにより、シアン化ビニル系単量体単位を含む重合体及び必要に応じてそれ以外の熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂(B)が製造できる。
また、熱可塑性樹脂(B)は、グラフト共重合体(A)を製造する際に併せて製造されてもよい。例えば、グラフト共重合体(A)を製造する際にゴム質重合体にグラフト重合させるために添加する単量体自体が重合して、熱可塑性樹脂(B)を形成してもよい。
(熱可塑性樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、前記グラフト共重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)、及びその他の任意の材料を混合することにより得られる。
グラフト共重合体(A)と熱可塑性樹脂(B)との混合(混練)方法としては、特に限定されず、例えば、オープンロール、インテシブミキサー、インターナルミキサー、コニーダー、二軸ローター付の連続混練機、押出機等の混和機を用いた溶融混練方法が挙げられる。押出機としては、単軸又は二軸の押出機のいずれを用いることもできる。
グラフト共重合体(A)と熱可塑性樹脂(B)とを溶融混練機に供給する方法について、それら全てを同一の供給口に一度に供給してもよく、それらをそれぞれ異なる供給口から供給してもよい。例えば、投入口を2ヶ所有する押出機を用い、スクリュー根元側に設置した主投入口からグラフト共重合体(A)を供給し、主投入口と押出機先端との間に設置した副投入口から熱可塑性樹脂(B)を供給して、溶融混練してもよい。
また、グラフト共重合体(A)と熱可塑性樹脂(B)とを同一の供給口から供給する場合、予め両者を混合した後、押出機ホッパーに投入してもよく、また、各々別個に投入した後に混練してもよい。
好ましい溶融混練温度は、熱可塑性樹脂(B)の種類によって異なり、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル−スチレン樹脂を溶融混練する場合、シリンダー設定温度で180〜270℃程度であると好ましい。溶融混練温度をこのような範囲にすることにより、ゴム質重合体の分散状態が良好となり、成形品の耐衝撃性、外観性のバランスを向上させることができる。
また、押出機を用いる場合、シリンダー温度のうち、供給ゾーンの温度を30〜200℃とすることが好ましく、溶融混練が行われる混練ゾーンの温度を、結晶性樹脂の場合はその融点+30〜100℃、非晶性樹脂の場合はそのTg+60〜150℃の範囲とすることが好ましい。
温度設定をこのように二段階とすることにより、グラフト共重合体(A)と熱可塑性樹脂(B)との混練がより円滑に行われ、成形品、特に射出成形品の表面平滑性が向上し、外観性が一段と優れたものとなる。また、シリンダー温度を上述の範囲にすることにより、一層優れた外観性が得られる。
溶融混練時間は、特に限定されないが、耐衝撃性の観点から、0.5〜5分程度であることが好ましい。
また、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を押出機により生産し、成形品を射出成形機で製造する場合、射出成形機に供給する段階で、熱可塑性樹脂組成物中の揮発分は1500ppm以下であることが好ましい。揮発分をかかる範囲にすることにより、一層優れた外観性が得られる。このような範囲の揮発分にするためには、例えば、二軸押出機のシリンダーの中央部から押出機先端の間に設置されたベント孔から、減圧度−100〜−800hPaで揮発分を吸引することが好ましい。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を押出機により生産する場合、押し出された熱可塑性樹脂組成物を、直接切断してペレット化するか、又はストランドを形成した後ペレタイザーで切断してペレット化することができる。
ペレットの形状は、特に限定されず、例えば、円柱、角柱、球状など、一般的な形状をとり得るが、円柱形状が好適である。
〔成形品〕
本実施形態の成形品は、上記熱可塑性樹脂組成物を含有するものであり、熱可塑性樹脂組成物を含む材料を成形することにより得られる。
熱可塑性樹脂組成物を含む材料の成形には、例えば射出成形、射出圧縮成形、押出成形、ブロー成形、インフレーション成形、真空成形、プレス成形等の方法を用いることができる。
特に、射出成形の方法として、例えば、射出圧縮成形、窒素ガスや炭酸ガスなどによるガスアシスト成形、及び金型温度を高温化にする高速ヒートサイクル成形が挙げられる。
これらは単独で又は組み合わせて用いることができる。これらの中で、好ましくは、ガスアシスト成形、高速ヒートサイクル成形、及び、ガスアシスト成形と高速ヒートサイクル成形との組み合わせである。
ここで、「ガスアシスト成形」とは、一般的に公知の窒素ガスや炭酸ガスを用いた射出成形である。
例えば、特公昭57−14968号公報等に記載のように、熱可塑性樹脂組成物を金型キャビティ内に射出した後に、成形品内部に加圧ガスを注入する方法、特許3819972号公報等に記載のように、熱可塑性樹脂組成物を金型キャビティ内に射出した後に、成形品の片面に対応するキャビティに加圧ガスを圧入する方法、特許3349070号公報等に記載のように、熱可塑性樹脂組成物に予めガスを充填させ成形する方法が挙げられる。これらのうち、成形品の片面に対応するキャビティに加圧ガスを圧入する方法が好ましい。
本実施形態では、ヒケ、ソリを防止するための保圧は、ガスアシストによる保圧が好ましい。ガスアシストによる保圧は、樹脂(組成物)による保圧と比較して、金型温度が比較的低いため、バリの発生をより抑制できると共に、ヒケやソリを防止するために必要な保圧時間を短縮することができる。
グラフト共重合体(A)及び熱可塑性樹脂(B)、更にはその他の任意成分との混練物を、上記のようにして製造したペレットから、射出成形機を用いることにより射出成形品を成形することができる。
成形機の金型としては、好ましくは♯4000番手以上、より好ましくは♯12000番手以上のヤスリで仕上げられた金型を使用することができる。外観性の点から、金型の算術平均表面粗さRaは、好ましくは0.02μm以下、より好ましくは0.01μm以下である。
金型の算術平均表面粗さRaを前記範囲にする方法としては、特に制限はなく、例えば、ダイヤモンドヤスリ、砥石、セラミック砥石、ルビー砥石、GC砥石等を用いて、超音波研磨機又は手作業で磨くことが挙げられる。また、用いる金型の鋼材は40HRC以上の焼入れ焼き戻し鋼が好ましく、さらに好ましくは50HRC以上である。金型を磨く代わりに、クロムめっきした金型を用いてもよいし、上述のように磨いた金型にクロムめっきをした金型を用いてもよい。
射出成形における金型温度は、外観性の観点からグラフト共重合体(A)と熱可塑性樹脂(B)とを含む混練物のビカット軟化点付近に設定して、成形を行うことが好ましい。具体的には、ISO306に準拠したビカット軟化点に対して−25〜+20℃が好ましく、さらに好ましくは、−15〜+5℃である。金型温度がこのような範囲である場合、キャビティ表面への転写性が更に向上し、より外観性に優れた射出成形品を得ることができる。
一般に、金型(キャビティ表面)温度を高くすると冷却までの時間が長くなるため、成形サイクルが長くなってしまう問題がある。そこで、キャビティ表面を短時間で加熱冷却する高速ヒートサイクル成形法を用いることが好ましい。これによって、外観性の向上と生産性とを両立することが可能となる。成形体表面は、成形体の外観性の観点から、1〜100℃/秒で冷却されることが好ましい。この成形体表面の冷却速度は、30〜90℃/秒がより好ましく、40〜80℃/秒がさらに好ましい。
また、スチーム配管や電熱線を内蔵させた金型を用いて、金型温度を上下させる成形法や、超臨界のCO2を用いた成形法も好ましく使用できる。
射出成形時の熱可塑性樹脂組成物(上記混練物)温度は、成形される混練物に適した温度とし、成形されることが好ましい。例えば、混練物が、ABS系樹脂、ゴム変性ポリスチレン、及び/又は、メチルメタクリレート系樹脂を含む場合、220〜260℃の温度が好ましく、ポリカーボネートを含む場合には、260〜300℃の温度が好ましい。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の射出成形品の製造工程においては、外観性の観点から、射出速度が1〜50mm/sであることが好ましく、5〜30mm/sであることがより好ましい。
本実施形態の成形品は、本発明の目的を達成できる範囲で、ホスファイト系、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエー系及びシアノアクリレート系の紫外線吸収剤及び酸化防止剤;高級脂肪酸や酸エステル系及び酸アミド系、さらに高級アルコール等の滑剤及び可塑剤;モンタン酸及びその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステラアマイド及びエチレンワックス等の離型剤;亜リン酸塩、次亜リン酸塩等の着色防止剤;核剤、アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系等の帯電防止剤;1,3−フェニレンビス(2,6−ジメチルフェニル=ホスファート)、テトラフェニル−m−フェニレンビスホスファート、フェノキシホスホリル、フェノキシホスファゼン等のリン系難燃剤;ハロゲン系難燃剤等の任意の添加剤を1種以上含んでもよい。
これらの添加量は、耐候性の観点から、それぞれ0.01〜3質量%であることが好ましく、0.05〜1質量%であることがさらに好ましい。
外観性を付与する目的で、成形品は、以下に限定されるものではないが、例えば、無機顔料、有機系顔料、メタリック顔料、染料を含むこともできる。着色剤の中では、成形品の色を白、黒、赤にするものが、成形品の外観に特に際立った高級感を付与することができるため、好ましく用いられる。
無機顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄系顔料、群青、コバルトブルー、酸化クロム、スピネルグリーン、クロム酸鉛系顔料、カドミウム系顔料が挙げられる。
有機顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アゾレーキ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジアリリド顔料、縮合アゾ顔料等のアゾ系顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料が挙げられる。
メタリック顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、リン片状のアルミのメタリック顔料、ウェルド外観を改良するために使用されている球状のアルミ顔料、パール調メタリック顔料用のマイカ粉、その他ガラス等の無機物の多面体粒子に金属をメッキやスパッタリングで被覆したものが挙げられる。
染料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、スチルベンアゾ染料、ケトイミン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン/ポリメチン染料、チアゾール染料、インダミン/インドフェノール染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料、アミノケトン/オキシケトン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、フタロシアニン染料が挙げられる。
これらの着色剤は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの添加量は、色調の観点から、グラフト共重合体(A)及び熱可塑性樹脂(B)の合計質量に対し、0.05〜2質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜1.5質量%である。
本実施形態の成形品は、上記の事項のいずれを組み合わせたものであってもよい。
本実施形態によると、着色しても優れた耐衝撃性を維持しつつ、良好な光沢を有する成形品、及びその成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本実施形態について詳細に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例に適用した、評価方法及び物性の測定方法は以下のとおりである。
耐衝撃性の評価として、ノッチ付シャルピー衝撃強度(kJ/m2)、及びデュポン衝撃強度(cm・kg)を用いた。
((1)ノッチ付シャルピー衝撃強度(kJ/m2))
東芝機械製射出成形機(品番:EC60N)を用いて、熱可塑性樹脂組成物をシリンダー温度250℃、金型温度60℃にて成形し、縦8cm×横1cm、厚さ4mmの試験片を切り出した後、ISO179に準じて測定し、下記のようにして評価した。
ノッチ付シャルピー衝撃強度が24kJ/m2以上であれば、一般機器、家電等の用途で実用上問題なく良好に使用できると判断し、下記のようにして評価した。
ノッチ付シャルピー衝撃強度が24kJ/m2未満のものを不可
24kJ/m2以上26kJ/m2未満を可
26kJ/m2以上28kJ/m2未満を良
28kJ/m2以上を優良
((2)デュポン衝撃強度(cm・kg))
東芝機械製射出成形機(品番:EC60N)を用いて、熱可塑性樹脂組成物からシリンダー温度250℃、金型温度60℃にて、5cm×9cm、厚さ2.5mmの平板を成形し、ISO−6272に準じて測定し、下記のようにして評価した。
デュポン衝撃強度が100cm・kg以上であれば、一般機器、家電等の用途で実用上問題なく使用できると判断し、下記のようにして評価した。
デュポン衝撃強度が100cm・kg未満のものを「不可」
100cm・kg以上110cm・kg未満のものを「可」
110cm・kg以上120cm・kg未満のものを「良」
120cm・kg以上125cm・kg未満のものを「優良」
125cm・kg以上のものを「最優良」
((3)曲げ弾性率(MPa))
前記「(1)ノッチ付シャルピー衝撃強度」で作製した試験片を用いて、ISO178に準じて測定し、下記のようにして評価した。
曲げ弾性率が1800MPa未満のものを不可
1800MPa以上24000MPa未満を可
2400MPa以上25000MPa未満を良
2500MPa以上26000MPa未満を優良
2600MPa以上を最優良
((4)光沢(%))
東芝機械製射出成形機(品番:EC60N)を用いて、熱可塑性樹脂組成物からシリンダー温度250℃、金型温度60℃にて、5cm×9cm、厚さ2.5mmの平板を成形した。
金型は、10000番手のヤスリにて、その表面を表面粗さRaが0.01μmになるまで磨いたものを使用した。この平板を温度23℃、相対湿度50%の大気雰囲気下に24時間放置した後、スガ試験機製変角光沢計(品番:UGV−5K)を用いて、入射角60度での平板の表面光沢を測定した。
光沢を90%以上とすることで、高品位の外観性が得られやすくなると判断し、下記のようにして評価した。
光沢が90%未満のものを「不可」
90%以上92%未満のものを「可」
92%以上94%未満のものを「良」
94%以上95%未満のものを「優良」
95%以上のものを「最優良」
((5)黄色度(YI:イエローインデックス))
前記「(4)光沢」で作製した平板を、温度23℃、相対湿度50%の大気雰囲気下に24時間放置した後、スガ試験機製多光源分光側色計(品番:MSC−5N−GV5)を用いて、平板の黄色度(YI)を測定した。
明度測定条件は下記のとおりである。
・分光5nm光学反射
・光源:C光2°視野
・正反射光を除いた測定(d/8)条件
・観察視野:直径15mm
黄色度を25%未満とすることで、高品位の外観性、色調が得られやすくなると判断し、下記のようにして評価した。
黄色度が25%以上のものを「不可」
24%以上25%未満のものを「可」
23%以上24%未満のものを「良」
22%以上23%未満のものを「優良」
23%未満のものを「最優良」
((6)流動性(MVR))
熱可塑性樹脂組成物の流動性を、メルトボリュームフローレイト(MVR)(cm3/10分)により評価した。
後述の各実施例及び比較例で得られたペレットを用いて、ISO1133に準拠して、220℃、10kg荷重の条件でMVRを測定し、下記のようにして評価した。
MVRが2未満のものを「不可」
2以上5未満のものを「可」
5以上8未満のものを「良」
8以上のものを「優良」
((7)着色時のシャルピー衝撃保持率(kJ/m2))
東芝機械製射出成形機(品番:EC60N)を用いて、熱可塑性樹脂組成物100質量部と酸化チタン1質量部を含む着色混練物を、シリンダー温度250℃、金型温度60℃にて成形し、縦8cm×横1cm、厚さ4mmの試験片を切り出した後、ISO179に準じて、シャルピー衝撃強度を測定し、下記のようにして評価した。
着色時のシャルピー衝撃保持率が85%未満のものを不可
85%以上87%未満を可
87%以上89%未満を良
89%以上91%未満を優良
91%以上を最優良
着色時のシャルピー衝撃保持率は、前記(1)に記載の方法で評価されたシャルピー衝撃強度に対する(7)に記載の方法で評価されたシャルピー衝撃強度の割合で定義される。
(熱可塑性樹脂組成物を構成するグラフト共重合体、熱可塑性樹脂の特性)
<ゴム質重合体(a1)及びゴム質重合体(a2)の質量平均粒子径の測定方法>
ゴム質重合体(a1)及びゴム質重合体(a2)の質量平均粒子径を、下記の方法により求めた。
まず、熱可塑性樹脂組成物の成形品から超薄切片を作製し、その超薄切片を四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム等の染色剤にて染色処理した。
その後、染色処理した超薄切片を、透過型電子顕微鏡(TEM)により撮影し、超薄切片の任意の範囲(15μm×15μm)について、画像解析することで求めた。
画像は、画像解析ソフト「A像くん」(旭化成エンジニアリング株式会社製)を用いて解析した。
<ゴム質重合体中のゴム質重合体(a1)及びゴム質重合体(a2)の含有割合>
前記<ゴム質重合体(a1)及びゴム質重合体(a2)の質量平均粒子径の測定方法>により測定された、質量平均粒子径が0.20μm以上0.50μm未満であるゴム質重合体(a1)と、質量平均粒子径が、0.10μm以上0.20μm未満であるゴム質重合体(a2)の、これらの合計量に対する含有割合を算出した。
<ゴム質重合体(a1)及び(a2)の「(d84%−d16%)/2」>
前記<ゴム質重合体(a1)及びゴム質重合体(a2)の質量平均粒子径の測定方法>と同様の方法により、ゴム質重合体(a1)とゴム質重合体(a2)の、粒子径の測定を行い、透過型電子顕微鏡(TEM)により撮影された画像を解析し、d84%:累積84%径、及びd16%:累積16%径を求め、各々の「(d84%−d16%)/2」を算出した。
<tanδピークの「半値幅/ピーク高さ」及びピークトップ位置>
図1及び図2は、グラフト共重合体(A)の各温度におけるtanδを示す図である。
横軸に温度を示し、縦軸にtanδを示す。
図2に示すように、ピークIのベースライン(図2中の破線)と、ピークIのピークトップからの垂線との交点を点Pとする。
ピークIのピーク高さは、ピークIのピークトップにおけるtanδと点Pにおけるtanδの差から求め、「半値幅/ピーク高さ」が求めた。
<グラフト率>
熱可塑性樹脂組成物をアセトンに溶解し、遠心分離器によりアセトン可溶分とアセトン不溶分とに分離した。
この時、アセトンに不溶な成分は、ゴム質重合体からなる幹ポリマーと、その幹ポリマーにグラフト重合したグラフト鎖であり、熱可塑性樹脂組成物におけるグラフト共重合体(A)を含むものである。
アセトンに可溶な成分は、熱可塑性樹脂(B)を含むものである。
アセトンに不溶な成分を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)により分析することによって、幹ポリマー及びグラフト鎖の構成比を得、その結果を元にして、グラフト率を求めた。
<グラフト共重合体(A)における全単量体単位中の各単量体単位の含有割合(組成比)>
前記<グラフト率>の測定と同様の方法により得られたアセトンに不溶な成分を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)により分析することにより、グラフト共重合体(A)における全単量体単位中の各単量体単位の含有割合(組成比)を算出した。
<グラフト共重合体のゴム質重合体以外の全単量体単位中のシアン化ビニル系単量体単位の含有割合(C)>
グラフト共重合体(A)における、ゴム質重合体以外の全単量体単位中のシアン化ビニル系単量体単位の含有割合(C)は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)により求めた。
具体的に、グラフト共重合体(A)におけるゴム質重合体以外の全単量体単位中のシアン化ビニル系単量体単位の含有割合(C)は、予めゴム質重合体における全単量体単位中の各単量体単位の含有割合(組成比)を求めておき、その後、グラフト共重合体(A)における全単量体単位中の各単量体単位の含有割合(組成比)をFT−IRにより求め、グラフト共重合体(A)におけるゴム質重合体とゴム質重合体にグラフト重合したグラフト鎖との含有割合を勘案することで、求めた。
<熱可塑性樹脂(B)の全単量体単位中のシアン化ビニル単量体単位の含有割合(D)>
熱可塑性樹脂(B)における全単量体単位中のシアン化ビニル系単量体単位の含有割合(D)は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)により求めた。
<グラフト共重合体(A)のグラフト鎖由来の成分の還元比粘度>
グラフト共重合体(A)のグラフト鎖由来の成分の還元比粘度(ηsp/c)は、測定試料0.25gを2−ブタノン50mLにて溶解した溶液を、30℃において、Cannon−Fenske型毛細管を用いて粘度測定することにより求めた。
なお、グラフト共重合体(A)のグラフト鎖由来の成分は、グラフト共重合体(A)の酸化分解を経て得た。
酸化分解の方法としては、オゾン分解を用いた。
具体的には、高分子論文集(井手文雄ら、vol.32、No.7、PP.439−444(July.1975))に記載の方法を用いた。この文献において、単離された枝ポリマーが、グラフト鎖由来の成分に該当する。
<熱可塑性樹脂(B)の還元比粘度>
熱可塑性樹脂(B)の還元比粘度(ηsp/c)は、測定試料0.25gを2−ブタノン50mLにて溶解した溶液を、30℃において、Cannon−Fenske型毛細管を用いて粘度測定することにより求めた。
(製造例1)
[ゴムラテックス(L−1)の製造]
ブタジエン93質量部、アクリロニトリル2質量部、スチレン5質量部、脱イオン水(鉄濃度:0.02ppm未満)67質量部、ロジン酸カリウム0.54質量部、ステアリン酸ナトリウム0.06質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.25質量部、水酸化ナトリウム0.15質量部、過硫酸ナトリウム0.35質量部、重炭酸ナトリウム0.5質量部を、真空に脱気した撹拌機を装備した耐圧容器に収納して、温度を室温から65℃まで上昇させ、重合を開始した。
重合開始から7時間経過後、ロジン酸カリウム0.72質量部、ステアリン酸ナトリウム0.08質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.63質量部、ステアリン酸ナトリウム0.07質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.18質量部、ステアリン酸ナトリウム0.02質量部を添加し、系を80℃まで昇温した後、ロジン酸カリウム0.45質量部、ステアリン酸ナトリウム0.05質量部、脱イオン水15質量部を添加した。
重合開始から30時間経過後に冷却して重合を終了した。
得られた重合液中、固形分は54.9質量%であり、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(商品名:nanotrac150)にて測定した固形分の質量平均粒子径は340nmであり、後述する方法で測定した膨潤指数は22%であった。
また、前記固形分であるゴム質重合体における単量体の組成比を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(日本分光株式会社製、品番:FT/IR−7000)を用いて分析した結果、ブタジエン単位は93.1質量%、アクリロニトリル単位は1.8質量%、スチレン単位は5.1質量%、であった。
(製造例2)
[ゴムラテックス(L−2)の製造]
ブタジエン93質量部、アクリロニトリル2質量部、スチレン5質量部、脱イオン水(鉄濃度:0.02ppm未満)75質量部、ロジン酸カリウム0.54質量部、ステアリン酸ナトリウム0.06質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.25質量部、水酸化ナトリウム0.15質量部、過硫酸ナトリウム0.35質量部、重炭酸ナトリウム0.5質量部を、真空に脱気した撹拌機を装備した耐圧容器に収納して、温度を室温から65℃まで上昇させ、重合を開始した。
重合開始から7時間経過後、ロジン酸カリウム0.72質量部、ステアリン酸ナトリウム0.08質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.63質量部、ステアリン酸ナトリウム0.07質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.18質量部、ステアリン酸ナトリウム0.02質量部を添加し、系を80℃まで昇温した後、ロジン酸カリウム0.45質量部、ステアリン酸ナトリウム0.05質量部、脱イオン水15質量部を添加した。重合開始から23時間経過後に冷却して重合を終了した。
得られた重合液中、固形分は52.6質量%であり、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(商品名:nanotrac150)にて測定した固形分の質量平均粒子径は260nmであり、後述する方法で測定した膨潤指数は23%であった。
また、前記固形分であるゴム質重合体における単量体の組成比を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(日本分光株式会社製、品番:FT/IR−7000)を用いて分析した結果、ブタジエン単位は93.2質量%、アクリロニトリル単位は1.8質量%、スチレン単位は5.0質量%、であった。
(製造例3)
[ゴムラテックス(L−3)の製造]
ブタジエン83質量部、アクリロニトリル2質量部、スチレン15質量部、脱イオン水(鉄濃度:0.02ppm未満)67質量部、ロジン酸カリウム0.54質量部、ステアリン酸ナトリウム0.06質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.25質量部、水酸化ナトリウム0.15質量部、過硫酸ナトリウム0.35質量部、重炭酸ナトリウム0.5質量部を、真空に脱気した撹拌機を装備した耐圧容器に収納して、温度を室温から65℃まで上昇させ、重合を開始した。
重合開始から7時間経過後、ロジン酸カリウム0.72質量部、ステアリン酸ナトリウム0.08質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.63質量部、ステアリン酸ナトリウム0.07質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.18質量部、ステアリン酸ナトリウム0.02質量部を添加し、系を80℃まで昇温した後、ロジン酸カリウム0.45質量部、ステアリン酸ナトリウム0.05質量部、脱イオン水15質量部を添加した。重合開始から30時間経過後に冷却して重合を終了した。
得られた重合液中、固形分は54.5質量%であり、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(商品名:nanotrac150)にて測定した固形分の質量平均粒子径は335nmであり、後述する方法で測定した膨潤指数は21%であった。
また、前記固形分であるゴム質重合体における単量体の組成比を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(日本分光株式会社製、品番:FT/IR−7000)を用いて分析した結果、ブタジエン単位は83.3質量%、アクリロニトリル単位は1.9質量%、スチレン単位は14.8質量%、であった。
(製造例4)
[ゴムラテックス(L−4)の製造]
ブタジエン93質量部、アクリロニトリル2質量部、スチレン5質量部、脱イオン水(鉄濃度:0.02ppm未満)67質量部、ロジン酸カリウム0.54質量部、ステアリン酸ナトリウム0.06質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.35質量部、水酸化ナトリウム0.15質量部、過硫酸ナトリウム0.35質量部、重炭酸ナトリウム0.5質量部を、真空に脱気した撹拌機を装備した耐圧容器に収納して、温度を室温から65℃まで上昇させ、重合を開始した。
重合開始から7時間経過後、ロジン酸カリウム0.72質量部、ステアリン酸ナトリウム0.08質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.63質量部、ステアリン酸ナトリウム0.07質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.18質量部、ステアリン酸ナトリウム0.02質量部を添加し、系を80℃まで昇温した後、ロジン酸カリウム0.45質量部、ステアリン酸ナトリウム0.05質量部、脱イオン水15質量部を添加した。重合開始から30時間経過後に冷却して重合を終了した。
得られた重合液中、固形分は54.0質量%であり、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(商品名:nanotrac150)にて測定した固形分の質量平均粒子径は335nmであり、後述する方法で測定した膨潤指数は15%であった。
また、前記固形分であるゴム質重合体における単量体の組成比を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(日本分光株式会社製、品番:FT/IR−7000)を用いて分析した結果、ブタジエン単位は93.1質量%、アクリロニトリル単位は1.7質量%、スチレン単位は5.2質量%、であった。
(製造例5)
[ゴムラテックス(L−5)の製造]
ブタジエン93質量部、アクリロニトリル2質量部、スチレン5質量部、脱イオン水(鉄濃度:0.02ppm未満)67質量部、ロジン酸カリウム0.54質量部、ステアリン酸ナトリウム0.06質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.15質量部、水酸化ナトリウム0.15質量部、過硫酸ナトリウム0.35質量部、重炭酸ナトリウム0.5質量部を、真空に脱気した撹拌機を装備した耐圧容器に収納して、温度を室温から65℃まで上昇させ、重合を開始した。
重合開始から7時間経過後、ロジン酸カリウム0.72質量部、ステアリン酸ナトリウム0.08質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.63質量部、ステアリン酸ナトリウム0.07質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.18質量部、ステアリン酸ナトリウム0.02質量部を添加し、系を80℃まで昇温した後、ロジン酸カリウム0.45質量部、ステアリン酸ナトリウム0.05質量部、脱イオン水15質量部を添加した。重合開始から30時間経過後に冷却して重合を終了した。
得られた重合液中、固形分は54.8質量%であり、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(商品名:nanotrac150)にて測定した固形分の質量平均粒子径は340nmであり、後述する方法で測定した膨潤指数は35%であった。
また、前記固形分であるゴム質重合体における単量体の組成比を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(日本分光株式会社製、品番:FT/IR−7000)を用いて分析した結果、ブタジエン単位は93.3質量%、アクリロニトリル単位は1.7質量%、スチレン単位は5.0質量%、であった。
(製造例6)
[ゴムラテックス(L−6)の製造]
ブタジエン93質量部、アクリロニトリル2質量部、スチレン5質量部、脱イオン水(鉄濃度:0.02ppm未満)67質量部、ロジン酸カリウム0.27質量部、ステアリン酸ナトリウム0.03質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.25質量部、水酸化ナトリウム0.15質量部、過硫酸ナトリウム0.35質量部、重炭酸ナトリウム0.5質量部を、真空に脱気した撹拌機を装備した耐圧容器に収納して、温度を室温から65℃まで上昇させ、重合を開始した。
重合開始から7時間経過後、ロジン酸カリウム0.72質量部、ステアリン酸ナトリウム0.08質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.63質量部、ステアリン酸ナトリウム0.07質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.18質量部、ステアリン酸ナトリウム0.02質量部を添加し、系を80℃まで昇温した後、ロジン酸カリウム0.45質量部、ステアリン酸ナトリウム0.05質量部、脱イオン水15質量部を添加した。重合開始から30時間経過後に冷却して重合を終了した。
得られた重合液中、固形分は54.4質量%であり、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(商品名:nanotrac150)にて測定した固形分の質量平均粒子径は330nmであり、後述する方法で測定した膨潤指数は22%であった。
また、前記固形分であるゴム質重合体における単量体の組成比を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(日本分光株式会社製、品番:FT/IR−7000)を用いて分析した結果、ブタジエン単位は93.1質量%、アクリロニトリル単位は1.8質量%、スチレン単位は5.1質量%、であった。
(製造例7)
[ゴムラテックス(L−7)の製造]
ブタジエン93質量部、アクリロニトリル2質量部、スチレン5質量部、脱イオン水(鉄濃度:0.02ppm未満)60質量部、ロジン酸カリウム0.54質量部、ステアリン酸ナトリウム0.06質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.25質量部、水酸化ナトリウム0.15質量部、過硫酸ナトリウム0.35質量部、重炭酸ナトリウム0.5質量部を、真空に脱気した撹拌機を装備した耐圧容器に収納して、温度を室温から65℃まで上昇させ、重合を開始した。
重合開始から7時間経過後、ロジン酸カリウム0.72質量部、ステアリン酸ナトリウム0.08質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.63質量部、ステアリン酸ナトリウム0.07質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.18質量部、ステアリン酸ナトリウム0.02質量部を添加し、系を80℃まで昇温した後、ロジン酸カリウム0.45質量部、ステアリン酸ナトリウム0.05質量部、脱イオン水15質量部を添加した。重合開始から35時間経過後に冷却して重合を終了した。
得られた重合液中、固形分は57.1質量%であり、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(商品名:nanotrac150)にて測定した固形分の質量平均粒子径は450nmであり、後述する方法で測定した膨潤指数は21%であった。
また、前記固形分であるゴム質重合体における単量体の組成比を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(日本分光株式会社製、品番:FT/IR−7000)を用いて分析した結果、ブタジエン単位は93.3質量%、アクリロニトリル単位は1.6質量%、スチレン単位は5.1質量%、であった。
(製造例8)
[ゴムラテックス(L−8)の製造]
ブタジエン93質量部、アクリロニトリル2質量部、スチレン5質量部、脱イオン水(鉄濃度:0.02ppm未満)50質量部、ロジン酸カリウム0.54質量部、ステアリン酸ナトリウム0.06質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.25質量部、水酸化ナトリウム0.15質量部、過硫酸ナトリウム0.35質量部、重炭酸ナトリウム0.5質量部を、真空に脱気した撹拌機を装備した耐圧容器に収納して、温度を室温から65℃まで上昇させ、重合を開始した。
重合開始から7時間経過後、ロジン酸カリウム0.72質量部、ステアリン酸ナトリウム0.08質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.63質量部、ステアリン酸ナトリウム0.07質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.18質量部、ステアリン酸ナトリウム0.02質量部を添加し、系を80℃まで昇温した後、ロジン酸カリウム0.45質量部、ステアリン酸ナトリウム0.05質量部、脱イオン水15質量部を添加した。重合開始から40時間経過後に冷却して重合を終了した。
得られた重合液中、固形分は60.6質量%であり、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(商品名:nanotrac150)にて測定した固形分の質量平均粒子径は800nmであり、後述する方法で測定した膨潤指数は21%であった。
また、前記固形分であるゴム質重合体における単量体の組成比を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(日本分光株式会社製、品番:FT/IR−7000)を用いて分析した結果、ブタジエン単位は93.0質量%、アクリロニトリル単位は1.9質量%、スチレン単位は5.1質量%、であった。
(製造例9)
[ゴムラテックス(L−9)の製造]
ブタジエン93質量部、アクリロニトリル2質量部、スチレン5質量部、脱イオン水(鉄濃度:0.02ppm未満)92質量部、ロジン酸カリウム0.54質量部、ステアリン酸ナトリウム0.06質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.25質量部、水酸化ナトリウム0.15質量部、過硫酸ナトリウム0.35質量部、重炭酸ナトリウム0.5質量部を、真空に脱気した撹拌機を装備した耐圧容器に収納して、温度を室温から65℃まで上昇させ、重合を開始した。
重合開始から7時間経過後、ロジン酸カリウム0.72質量部、ステアリン酸ナトリウム0.08質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.63質量部、ステアリン酸ナトリウム0.07質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.18質量部、ステアリン酸ナトリウム0.02質量部を添加し、系を80℃まで昇温した後、ロジン酸カリウム0.45質量部、ステアリン酸ナトリウム0.05質量部、脱イオン水15質量部を添加した。重合開始から15時間経過後に冷却して重合を終了した。
得られた重合液中、固形分は48.3質量%であり、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(商品名:nanotrac150)にて測定した固形分の質量平均粒子径は180nmであり、後述する方法で測定した膨潤指数は22%であった。
また、前記固形分であるゴム質重合体における単量体の組成比を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(日本分光株式会社製、品番:FT/IR−7000)を用いて分析した結果、ブタジエン単位は93.2質量%、アクリロニトリル単位は1.7質量%、スチレン単位は5.1質量%、であった。
(製造例10)
[ゴムラテックス(L−10)の製造]
ブタジエン93質量部、アクリロニトリル2質量部、スチレン5質量部、脱イオン水(鉄濃度:0.02ppm未満)92質量部、ロジン酸カリウム0.27質量部、ステアリン酸ナトリウム0.03質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.25質量部、水酸化ナトリウム0.15質量部、過硫酸ナトリウム0.35質量部、重炭酸ナトリウム0.5質量部を、真空に脱気した撹拌機を装備した耐圧容器に収納して、温度を室温から65℃まで上昇させ、重合を開始した。
重合開始から7時間経過後、ロジン酸カリウム0.72質量部、ステアリン酸ナトリウム0.08質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.63質量部、ステアリン酸ナトリウム0.07質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.18質量部、ステアリン酸ナトリウム0.02質量部を添加し、系を80℃まで昇温した後、ロジン酸カリウム0.45質量部、ステアリン酸ナトリウム0.05質量部、脱イオン水15質量部を添加した。重合開始から15時間経過後に冷却して重合を終了した。
得られた重合液中、固形分は48.3質量%であり、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(商品名:nanotrac150)にて測定した固形分の質量平均粒子径は180nmであり、後述する方法で測定した膨潤指数は23%であった。
また、前記固形分であるゴム質重合体における単量体の組成比を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(日本分光株式会社製、品番:FT/IR−7000)を用いて分析した結果、ブタジエン単位は93.0質量%、アクリロニトリル単位は1.8質量%、スチレン単位は5.2質量%、であった。
(製造例11)
[ゴムラテックス(L−11)の製造]
ブタジエン93質量部、アクリロニトリル2質量部、スチレン5質量部、脱イオン水(鉄濃度:0.02ppm未満)100質量部、ロジン酸カリウム0.54質量部、ステアリン酸ナトリウム0.06質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.25質量部、水酸化ナトリウム0.15質量部、過硫酸ナトリウム0.35質量部、重炭酸ナトリウム0.5質量部を、真空に脱気した撹拌機を装備した耐圧容器に収納して、温度を室温から65℃まで上昇させ、重合を開始した。
重合開始から7時間経過後、ロジン酸カリウム0.72質量部、ステアリン酸ナトリウム0.08質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.63質量部、ステアリン酸ナトリウム0.07質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.18質量部、ステアリン酸ナトリウム0.02質量部を添加し、系を80℃まで昇温した後、ロジン酸カリウム0.45質量部、ステアリン酸ナトリウム0.05質量部、脱イオン水15質量部を添加した。重合開始から13時間経過後に冷却して重合を終了した。
得られた重合液中、固形分は46.5質量%であり、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(商品名:nanotrac150)にて測定した固形分の質量平均粒子径は125nmであり、後述する方法で測定した膨潤指数は22%であった。
また、前記固形分であるゴム質重合体における単量体の組成比を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(日本分光株式会社製、品番:FT/IR−7000)を用いて分析した結果、ブタジエン単位は93.3質量%、アクリロニトリル単位は1.9質量%、スチレン単位は4.8質量%、であった。
(製造例12)
[ゴムラテックス(L−12)の製造]
ブタジエン93質量部、アクリロニトリル2質量部、スチレン5質量部、脱イオン水(鉄濃度:0.02ppm未満)120質量部、ロジン酸カリウム0.54質量部、ステアリン酸ナトリウム0.06質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.25質量部、水酸化ナトリウム0.15質量部、過硫酸ナトリウム0.35質量部、重炭酸ナトリウム0.5質量部を、真空に脱気した撹拌機を装備した耐圧容器に収納して、温度を室温から65℃まで上昇させ、重合を開始した。
重合開始から7時間経過後、ロジン酸カリウム0.72質量部、ステアリン酸ナトリウム0.08質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.63質量部、ステアリン酸ナトリウム0.07質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.18質量部、ステアリン酸ナトリウム0.02質量部を添加し、系を80℃まで昇温した後、ロジン酸カリウム0.45質量部、ステアリン酸ナトリウム0.05質量部、脱イオン水15質量部を添加した。重合開始から10時間経過後に冷却して重合を終了した。
得られた重合液中、固形分は42.5質量%であり、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(商品名:nanotrac150)にて測定した固形分の質量平均粒子径は30nmであり、後述する方法で測定した膨潤指数は21%であった。
また、前記固形分であるゴム質重合体における単量体の組成比を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(日本分光株式会社製、品番:FT/IR−7000)を用いて分析した結果、ブタジエン単位は93.0質量%、アクリロニトリル単位は1.7質量%、スチレン単位は5.3質量%、であった。
(製造例13)
[ゴムラテックス(L−13)の製造]
ブタジエン100質量部、脱イオン水(鉄濃度:0.02ppm未満)67質量部、ロジン酸カリウム0.54質量部、ステアリン酸ナトリウム0.06質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.25質量部、水酸化ナトリウム0.15質量部、過硫酸ナトリウム0.35質量部、重炭酸ナトリウム0.5質量部を、真空に脱気した撹拌機を装備した耐圧容器に収納して、温度を室温から65℃まで上昇させ、重合を開始した。
重合開始から7時間経過後、ロジン酸カリウム0.72質量部、ステアリン酸ナトリウム0.08質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.63質量部、ステアリン酸ナトリウム0.07質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.18質量部、ステアリン酸ナトリウム0.02質量部を添加し、系を80℃まで昇温した後、ロジン酸カリウム0.45質量部、ステアリン酸ナトリウム0.05質量部、脱イオン水15質量部を添加した。
重合開始から30時間経過後に冷却して重合を終了した。
得られた重合液中、固形分は54.9質量%であり、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(商品名:nanotrac150)にて測定した固形分の質量平均粒子径は340nmであり、後述する方法で測定した膨潤指数は22%であった。
また、前記固形分であるゴム質重合体における単量体の組成比を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(日本分光株式会社製、品番:FT/IR−7000)を用いて分析した結果、ブタジエン単位は100.0質量%であった。
(製造例14)
[ゴムラテックス(L−14)の製造]
ブタジエン100質量部、脱イオン水(鉄濃度:0.02ppm未満)92質量部、ロジン酸カリウム0.54質量部、ステアリン酸ナトリウム0.06質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.25質量部、水酸化ナトリウム0.15質量部、過硫酸ナトリウム0.35質量部、重炭酸ナトリウム0.5質量部を、真空に脱気した撹拌機を装備した耐圧容器に収納して、温度を室温から65℃まで上昇させ、重合を開始した。
重合開始から7時間経過後、ロジン酸カリウム0.72質量部、ステアリン酸ナトリウム0.08質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.63質量部、ステアリン酸ナトリウム0.07質量部を添加し、さらに4時間後、ロジン酸カリウム0.18質量部、ステアリン酸ナトリウム0.02質量部を添加し、系を80℃まで昇温した後、ロジン酸カリウム0.45質量部、ステアリン酸ナトリウム0.05質量部、脱イオン水15質量部を添加した。重合開始から15時間経過後に冷却して重合を終了した。
得られた重合液中、固形分は48.3質量%であり、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(商品名:nanotrac150)にて測定した固形分の質量平均粒子径は180nmであり、後述する方法で測定した膨潤指数は22%であった。
また、前記固形分であるゴム質重合体における単量体の組成比を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(日本分光株式会社製、品番:FT/IR−7000)を用いて分析した結果、ブタジエン単位は100.0質量%であった。
(膨潤指数(スウェル・インデックス)の算出方法)
膨潤指数は下記の方法で求めた。
ゴムラテックスを乾燥後、25℃のトルエンに48時間浸漬させた後、これを濾過して、少量のトルエンで洗浄した後、表面に付着しているトルエンを拭き取って質量(W1)を測定した。
次に、60℃に設定した熱風乾燥器で30分乾燥し、その後60±2℃に調整された真空乾燥器で14時間乾燥した。さらにデシケータ内で30分放冷した後、ゴム質重合体の質量(W2)を測定した。
求めたW1及びW2から次式により、膨潤指数(スウェル・インデックス)を求めた。
膨潤指数(%)=[(W1−W2)/W2]×100
膨潤指数が大きいと、架橋度は小さいことになる。
(製造例15)
[樹脂組成物(I−1)の製造]
前記(製造例1)で得られたゴムラテックス(L−1)37.5質量部(固形分)と前記(製造例9)で得られたゴムラテックス(L−9)12.5質量部(固形分)に、脱イオン水(鉄濃度:0.02ppm未満)125質量部を添加し、気相部を窒素置換し、そこに、脱イオン水20質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.080質量部、硫酸第一鉄0.003質量部、エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム塩0.020質量部を溶解してなる水溶液を添加した(以上、表1中の「初添」。)。
その後、70℃に昇温した。
続いて、5時間かけて、アクリロニトリル17.5質量部、スチレン32.5質量部とクメンハイドロパーオキシド0.1質量部とターシャリードデシルメルカプタン0.4質量部とからなる単量体混合液、及び、脱イオン水15質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.045質量部を溶解してなる水溶液を添加した(以上、表1中の「追添」。)。
それらの添加終了後に、クメンハイドロパーオキシド0.02質量部を更に添加した後、さらに1時間、反応槽を70℃に制御しながら重合反応を完結させ、そこにロジン酸カリウム0.6質量部を添加した(以上、表1中の「ショット」)。
こうしてABSゴムラテックスを得た。
このようにして得られたABSゴムラテックス100質量部に、シリコーン樹脂製消泡剤0.07質量部、及びフェノール系酸化防止剤エマルジョン0.6質量部を添加した後、固形分濃度が10質量%となるように脱イオン水を加えて調整し、70℃に加温した後、硫酸アルミニウム水溶液を加えて凝固させ、スクリュープレス機にて固液分離を行った。この時の含水率は10質量%であった。
これを乾燥させて樹脂組成物(I−1)を得た。
この樹脂組成物(I−1)は、グラフト共重合体(I−A−1)と、熱可塑性樹脂(I−B−1)とからなり、アセトン不溶分、すなわちグラフト共重合体(I−A−1)の含有割合は80.5質量%、アセトン可溶分、すなわち熱可塑性樹脂(I−B−1)の含有割合は19.5質量%であった。
また、熱可塑性樹脂(I−B−1)の還元比粘度(ηsp/c)は0.37dL/gであった。なお、還元比粘度は、試料0.25gを2−ブタノン50mLにて溶解した溶液を、30℃におけるCannon−Fenske型毛細管を用いて粘度測定することで求めた(以下同様。)。
(製造例16〜32)
[樹脂組成物(I−2)〜(I−18)の製造]
表1に記載の処方とした以外は、前記(製造例15)と同様にして、樹脂組成物(I−2)〜(I−18)を製造した。
(製造例15〜32)の樹脂組成物の材料及び仕込み比、並びにアセトン不溶分、アセトン可溶分の含有割合、アセトン可溶分の還元比粘度を下記表1、2に示す。
(製造例33)
[熱可塑性樹脂(II−B−1)の製造]
アクリロニトリル43.4質量部、スチレン32.5質量部、エチルベンゼン24.1質量部、α−メチルスチレンダイマー0.3質量部、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.01質量部からなる単量体混合物を、空気と接触させない状態で調製し、連続的に撹拌機を装備した反応器に供給した。
重合温度は142℃に調整した。
撹拌機の撹拌回転数は95回転に設定して十分に混合し、そのP/V値は4.0kw/m3であった。平均滞留時間は1.65時間とした。
こうして得られた重合率60%、ポリマー濃度50質量%の重合混合液を、連続的に反応器から抜き出して第一分離槽へ移送した。第一分離槽において、熱交換器にて160℃に重合混合物を加熱し、真空度60Torrで脱揮して、重合混合物中のポリマー濃度を65質量%に調整した後、第一分離槽から排出して第二分離槽へ移送した。第二分離槽において、熱交換器にて260℃に重合混合物を加熱し、真空度32Torrで脱揮して、重合混合物中の揮発性成分の含有割合を0.7質量%、ポリマー濃度を99.4質量%に調整した後、排出してペレット状の熱可塑性樹脂(II−B−1)を得た。
この熱可塑性樹脂(II−B−1)における各単量体単位の組成比は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR、日本分光株式会社製、品番:FT/IR−7000。以下同様。)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル単位が40.0質量%、スチレン単位が60.0質量%であった。
なお、熱可塑性樹脂(II−B−1)はアセトンに可溶であり、還元比粘度(ηsp/c)は0.58dL/gであった。
(製造例34)
[熱可塑性樹脂(II−B−2)の製造]
アクリロニトリル33.2質量部、スチレン29.9質量部、ブチルアクリレート8.1質量部、エチルベンゼン28.8質量部、α−メチルスチレンダイマー0.3質量部、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.01質量部からなる単量体混合物を、空気と接触させない状態で調製し、連続的に撹拌機を装備した反応器に供給した。
重合温度は142℃に調整した。
撹拌機の撹拌回転数は95回転に設定して十分に混合し、そのP/V値は4.0kw/m3であった。平均滞留時間は1.65時間とした。
こうして得られた重合率60%、ポリマー濃度50質量%の重合混合液を、連続的に反応器から抜き出して第一分離槽へ移送した。第一分離槽において、熱交換器にて160℃に重合混合物を加熱し、真空度60Torrで脱揮して、重合混合物中のポリマー濃度を65質量%に調整した後、第一分離槽から排出して第二分離槽へ移送した。第二分離槽において、熱交換器にて260℃に重合混合物を加熱し、真空度32Torrで脱揮して、重合混合物中の揮発性成分の含有割合を0.7質量%、ポリマー濃度を99.4質量%に調整した後、排出してペレット状の熱可塑性樹脂(II−B−2)を得た。
この熱可塑性樹脂(II−B−2)における各単量体単位の組成比は、フーリエ変換赤外分光光度計を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル単位が38.6質量%、スチレン単位が51.3質量%、アクリル酸ブチル単位が10.1質量%であった。
なお、熱可塑性樹脂(II−B−2)はアセトンに可溶であり、還元比粘度(ηsp/c)は0.42dL/gであった。
(実施例1)
十分に乾燥し、水分を除去した後の樹脂組成物(I−1)30質量部及び熱可塑性樹脂(II−B−1)70質量部、エチレンビスステアロアマイド1質量部、を混合した後、その混合物をホッパーに投入し、二軸押出機(品番:PCM−30、L/D=28、池貝鉄工株式会社製)を使用して、シリンダー設定温度250℃、スクリュー回転数200rpm、混練物の吐出速度15kg/時間の条件で混練して熱可塑性樹脂組成物であるペレットを得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物における各樹脂の含有割合を表3に示す。
なお、表3、表4中、樹脂組成物(I)におけるグラフト共重合体(I−A)及び熱可塑性樹脂(I−B)を、それぞれ「I−A−n」、「I−B−n」(nは1〜18の整数)と示しているが、これは、表1、表2に示す樹脂組成物(I−n)に対応するものである。
すなわち、例えば、実施例2において用いられた表3に示すグラフト共重合体(I−A−2)及び熱可塑性樹脂組成物(I−B−2)は、表1に示す樹脂組成物(I−2)に含まれるグラフト共重合体及び熱可塑性樹脂を指す。
この熱可塑性樹脂組成物中に分散するゴム質重合体(a1)及び(a2)の質量平均粒子径を、上記の方法に準拠して(染色剤:四酸化オスミウム)求めたところ、(a1)0.34μm、(a2)0.18μmであった。
また、ゴム質重合体(100質量%)中のゴム質重合体(a1)及び(a2)の含有割合を、上記の方法に準拠して求めたところ、(a1)75質量%、(a2)25質量%、であった。
また、ゴム質重合体(a1)の粒子径分布における、「(d84%−d16%)/2」を、上記の方法に準拠して求めたところ、(a1)0.051、(a2)0.042、であった。
また、前記ゴム質重合体(a1)の質量平均粒子径と、前記ゴム質重合体(a2)の質量平均粒子径の差は0.16μmであった。
グラフト共重合体(A)における、tanδピークIの半値幅/ピーク高さを、上記方法に準拠して求めたところ、50であった。また、tanδピークIのピークトップ位置を、上記方法に準拠して求めたところ、−70℃であった。
グラフト共重合体(A)における単量体の組成比を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(日本分光株式会社製、品番:FT/IR−7000)を用いて分析した結果、ブタジエン単位は57.8質量%、アクリロニトリル単位は14.5質量%、スチレン単位は27.7質量%、であり、ゴム質重合体以外の全単量体単位中のシアン化ビニル系単量体単位の含有割合(C)は35.1質量%であり、グラフト率は61%であった。
一方、熱可塑性樹脂(B)における全単量体単位中のアクリロニトリル単位の含有割合(D)は39.6質量%であり、還元比粘度(ηsp/c)は0.56dL/gであった。これらの結果、及び各評価の結果を表5に示す。
(実施例2〜12、比較例1〜10)
グラフト共重合体(A)及び熱可塑性樹脂(B)の含有割合を表3及び表4に示すように変更した。
その他の条件は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物であるペレットを得て、各評価を行った。
評価結果を表5及び表6に示す。
実施例1〜12では、耐衝撃性に優れ、また、光沢及び着色時の耐衝撃性保持率に優れる結果となった。
一方、比較例1はゴム質重合体(100質量%)中のゴム質重合体(a1)の含有割合が本発明の範囲外であるため、光沢及び着色時の耐衝撃性保持率が不十分であった。
比較例2はゴム質重合体(100質量%)中のゴム質重合体(a1)の含有割合が本発明の範囲外であるため、耐衝撃性及び着色時の耐衝撃性保持率が不十分であった。
比較例3は、ゴム質重合体(a1)の粒子径分布における、「(d84%−d16%)/2」が本発明の範囲外であるため、光沢及び着色時の耐衝撃性保持率が不十分であった。
比較例4は、ゴム質重合体(a2)の粒子径分布における、「(d84%−d16%)/2」が本発明の範囲外であるため、耐衝撃性及び着色時の耐衝撃性保持率が不十分であった。
比較例5は、前記ゴム質重合体(a1)の質量平均粒子径と、前記ゴム質重合体(a2)の質量平均粒子径の差が本発明の範囲外であるため、着色時の耐衝撃性保持率が不十分であった。
比較例6は、前記ゴム質重合体(a1)の質量平均粒子径と、前記ゴム質重合体(a2)の質量平均粒子径の差が本発明の範囲外であるため、着色時の耐衝撃性保持率が不十分であった。
比較例7は、ゴム質重合体(a1)の質量平均粒子径が本発明の範囲外であるため、光沢及び着色時の耐衝撃性保持率が不十分であった。
比較例8は、ゴム質重合体(a2)の質量平均粒子径が本発明の範囲外であるため、耐衝撃性及び着色時の耐衝撃性保持率が不十分であった。
比較例9は、グラフト共重合体(A)の含有量が本発明の範囲外であるため、光沢及び流動性が不十分であった。
比較例10は、グラフト共重合体(A)の含有量が本発明の範囲外であるため、耐衝撃性が不十分であった。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、一般機器、家電用途等の成形材料として、産業上の利
用可能性がある。

Claims (5)

  1. ゴム質重合体からなる幹ポリマーと、その幹ポリマーにグラフト重合したグラフト鎖と、を有するグラフト共重合体(A)と、
    シアン化ビニル系単量体単位を含む重合体を含有する熱可塑性樹脂(B)と、
    を、含有する熱可塑性樹脂組成物であって、
    前記グラフト共重合体(A)と前記熱可塑性樹脂(B)の合計量に対して、前記グラフト共重合体(A)を10〜60質量%、前記熱可塑性樹脂(B)を90〜40質量%含有し、
    前記ゴム質重合体は、質量平均粒子径が、0.20μm以上0.50μm未満であるゴム質重合体(a1)と、質量平均粒子径が、0.10μm以上0.20μm未満であるゴム質重合体(a2)との、双峰性の粒子径分布を有し、
    前記ゴム質重合体(a1)と前記ゴム質重合体(a2)の合計量に対して、前記(a1)が20〜80質量%、前記(a2)が80〜20質量%であり、
    前記ゴム質重合体(a1)の粒子径分布における、「(d84%−d16%)/2」が、0.01以上0.07未満であり、前記ゴム質重合体(a2)の粒子径分布における、「(d84%−d16%)/2」が、0.01以上0.07未満であり、
    前記ゴム質重合体(a1)の質量平均粒子径と、前記ゴム質重合体(a2)の質量平均粒子径の差が0.10μm以上0.25μm未満である、
    熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記グラフト共重合体(A)における、tanδが、2つ以上のピークを有し、前記2つ以上のピークのうち、少なくとも1つのピークが、−100℃以上0℃未満の範囲内にピークトップを有するピークIであり、前記ピークIのピークトップ位置が、−73℃以上−68℃未満であり、
    前記tanδのピークIの「半値幅/ピーク高さ」が、40以上60未満である、
    請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記グラフト共重合体(A)において、前記ゴム質重合体以外の全単量体単位(100
    質量%)中のシアン化ビニル系単量体単位の含有割合(C)が15〜50質量%である、
    請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記熱可塑性樹脂(B)における全単量体単位(100質量%)中のシアン化ビニル系
    単量体単位の含有割合(D)が15〜55質量%である、
    請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含有する成形品。
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