この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
(実施の形態1)
図1は、結像光学素子を用いた空中映像表示装置を示す概略図である。図1を参照して、空中映像表示装置は、結像光学素子(マイクロミラーアレイ)10および表示部13を有する。
表示部13は、たとえば、液晶ディスプレイであり、被投影物となる画像を表示可能に構成されている。表示部13に替わって、被投影物となる2次元または3次元の物体が配置されてもよい。結像光学素子10は、被投影物の鏡映像14を、結像光学素子10に対して面対称となる空間位置に結像する。結像光学素子10は、一方の面10aと、一方の面10aの裏側に配置される他方の面10bとを有する平板(パネル)形状を有する。被投影物は、結像光学素子10の一方の面10a側に配置され、鏡映像14は、結像光学素子10の他方の面10b側に結像される。
図2は、図1中の結像光学素子を示す斜視図である。図3は、図1中の結像光学素子の分解組み立て図である。なお、図2中では、便宜上、透明基材41が2点鎖線により示されている。
図2および図3を参照して、結像光学素子10は、ミラーシート21Pおよびミラーシート21Qと、2枚の透明基材41とを有する。ミラーシート21Pおよびミラーシート21Qは、互いに略同一の構成を有する(以下、ミラーシート21Pおよびミラーシート21Qを特に区別しない場合には、ミラーシート21という)。
ミラーシート21は、平板形状を有する。ミラーシート21は、矩形形状の平面視を有する。ミラーシート21は、複数枚のミラープレート22を有する。図3中に示すように、ミラーシート21は、複数枚のミラープレート22が面方向において接合されることにより、1枚の大型パネルとして構成されている。複数枚のミラープレート22は、接着剤により互いに接合されている。本実施の形態では、複数枚のミラープレート22として、4枚のミラープレート22(ミラープレート22A,ミラープレート22B,ミラープレート22C,ミラープレート22D)が用いられている。
ミラーシート21Pおよびミラーシート21Qは、ミラーシート21の厚み方向に重ね合わされている。ミラーシート21Pおよびミラーシート21Qは、ミラーシート21Pに形成された後述の光反射部7と、ミラーシート21Qに形成された後述の光反射部7とが互いに直交するように重ね合わされている。ミラーシート21Pおよびミラーシート21Qは、接着剤により互いに接合されている。
ミラープレート22A〜22Dは、互いに略同一の構成を有する。ミラープレート22A〜22Dの各ミラープレート22は、ミラーシート21をその平面視において4分割した構成を有する。ミラープレート22は、複数の透明板材6と、複数の光反射部7とを有する。ミラープレート22は、光反射部7が形成された透明板材6が一方向に積層されることにより構成されている。透明板材6は、透明樹脂またはガラスにより形成されている。光反射部7は、反射面を形成する平面形状を有する。光反射部7は、たとえば、銀またはアルミニウム等の金属から形成されている。光反射部7は、透明板材6の互いに対向する2つの主面の少なくとも一方に形成されている。
複数の透明板材6は、接着剤により互いに接合されている。光反射部7は、ミラープレート22の面内で一方向に延びている。複数の光反射部7は、互いに平行に延びている。複数の光反射部7は、透明板材6の積層方向において互いに間隔を隔てて配置されている。複数の光反射部7は、等間隔に配置されている。ミラープレート22A〜22Dは、これらミラープレート22間において、光反射部7が互いに平行となるように接合されている。
なお、ミラーシート21は、4枚以外の複数枚のミラープレート22が組み合わさって構成されてもよい。
透明基材41は、主表面41aを有する平板形状を有する。透明基材41は、たとえば、透明樹脂またはガラスにより形成されている。
透明基材41の主表面41aには、接着剤を用いて、ミラーシート21が接合されている。透明基材41は、互いに重ね合わされたミラーシート21Pおよびミラーシート21Qを両側から挟み込むように設けられている。
続いて、図2中の結像光学素子10の製造装置について説明する。図4は、図2中の結像光学素子の製造装置を示す側面図である。図5は、図2中の結像光学素子の製造装置を示す上面図である。
図4および図5を参照して、結像光学素子の製造装置30は、被投影物32と、被投影物支持部31と、カメラ(撮像装置)37と、紫外線照射装置38と、レーザオートコリメータ39とを有する。
被投影物支持部31は、定盤46に設置されている。被投影物支持部31は、被投影物32を支持するように構成されている。被投影物支持部31としては、たとえば、磁力により被投影物32を支持するマグネットベースが用いられる。
透明基材41は、定盤46上で水平方向に支持されている。結像光学素子10の製造時、透明基材41の主表面41a上には、ミラープレート22がその面方向に並んで配置される。透明基材41に対してミラープレート22とは反対側から、後述する参照ミラープレート36が重ね合わされている。
カメラ37は、複数枚のミラープレート22により結像される被投影物32の鏡映像50を撮像する撮像装置として設けられている。カメラ37は、透明基材41の主表面41a上に配置されたミラープレート22の他方の面側に設けられている。カメラ37により撮像された鏡映像50は、別に設けられたディスプレイに表示される。
紫外線照射装置38は、透明基材41の主表面41a上に配置されたミラープレート22に対して紫外線を照射可能に構成されている。レーザオートコリメータ39は、透明基材41の主表面41a上に配置されたミラープレート22の傾きを検出するための角度測定器として設けられている。
結像光学素子の製造装置30は、上記構成に加えて、ミラープレート22を移動可能に支持するプレート支持部を有してもよい。プレート支持部としては、たとえば、ミラープレート22を、直交3軸であるX軸、Y軸およびZ軸方向に移動させる移動機構と、ミラープレート22を、X軸、Y軸およびZ軸周りの回転方向に移動させる移動機構とを備える6軸ステージを用いることができる。
図6および図7は、図4および図5中の結像光学素子の製造装置が備える被投影物の例を示す平面図である。図4から図7を参照して、被投影物32は、透明基材41の主表面41a上に配置されたミラープレート22の一方の面側に配置されている。
図6中に示す例では、被投影物32として、複数本の第1直線が平行に延びるチャート(横チャート)が用いられている。図7中に示す例では、被投影物32として、複数本の第1直線と、複数本の第2直線とが直交して延びるチャート(クロスチャート)が用いられている。被投影物32は、このようなチャート(図表)に限られず、たとえば、写真や物体であってもよい。
図8は、この発明の実施の形態1における結像光学素子の製造方法の工程を示す断面図である。続いて、この発明の実施の形態1における結像光学素子の製造方法について説明する。以下においては、代表的に、図4および図5中の製造装置30を用いて図2中の結像光学素子10を製造する方法の工程について説明する。
図4、図5および図8を参照して、まず、透明基材41の主表面41a上に、複数枚のミラープレート22をその面方向(図8中の矢印101に示す方向)に並ぶように配置する。
より具体的には、製造装置30に透明基材41をセッティングする。セッティングされた透明基材41の主表面41a上に複数枚のミラープレート22(22A〜22D)を配置する。この際、複数枚のミラープレート22間で光反射部7が平行に延びるように、複数枚のミラープレート22を配置する。
なお、本工程におけるミラープレート22および透明基材41の位置関係は特に限定されない。製造装置30においては、ミラープレート22が透明基材41に対して鉛直上側から配置されているが、たとえば、鉛直下側から配置されてもよい。本明細書においては、特に「鉛直上側」または「鉛直下側」といわない限り、鉛直方向における上下関係を特定する記載ではない。
ミラープレート22と略同一の構成を有する参照ミラープレート36を準備する。参照ミラープレート36をミラープレート22に対して重ね合わせる。
より具体的には、参照ミラープレート36を、主表面41aの裏側から透明基材41上に配置する。この際、参照ミラープレート36を、ミラープレート22に形成された光反射部7と、参照ミラープレート36に形成された光反射部7とが直交するように配置する。また、参照ミラープレート36を、少なくとも互いに隣り合うミラープレート22間に跨るように配置する。本実施の形態では、参照ミラープレート36を、透明基材41の主表面41a上に配置されたミラープレート22A〜22Dの中心に配置する。これにより、参照ミラープレート36は、隣り合うミラープレート22の全てに跨るように設けられている。
次に、複数枚のミラープレート22により結像された鏡映像50を確認しながら、鏡映像50が被投影物32の形状に対応するように、複数枚のミラープレート22を相互に位置決めする。
より具体的には、被投影物32からの光が、参照ミラープレート36に形成された光反射部7により反射され、その反射光が、ミラープレート22に形成された光反射部7により反射されることにより、ミラープレート22の他方の面側に鏡映像50が形成される。鏡映像50は、一方のミラープレート22と参照ミレープレート36とで形成された映像と、他方のミラープレート22と参照ミラープレート36とで形成された映像とからなる。作業者は、カメラ37により撮像された鏡映像50をディスプレイにより確認しながら、鏡映像50が被投影物32の形状に対応するように、すなわち、2枚のミラープレート22でそれぞれ形成された鏡映像が一致し、被投影物32の形状が再現されるように、ミラープレート22A〜22Dの相互の位置関係を調整する。
なお、ミラープレート22の他方の面側に透過型または反射型スクリーンを設置して、そのスクリーンに映った鏡映像50を確認してもよいし、ミラープレート22により結像された鏡映像50を肉眼により確認してもよい。また、ミラープレート22を移動可能に支持するプレート支持部として6軸ステージを使用すれば、ミラープレート22の位置や姿勢を自在に調整することができる。
次に、複数枚のミラープレート22間と、複数枚のミラープレート22および透明基材41の主表面41aの間とを、接着剤により同時に接合する。
本実施の形態では、接着剤として、紫外線硬化性接着剤を用いる。予め、ミラープレート22同士の接合部(隣り合うミラープレート22の接合面23間)と、ミラープレート22および透明基材41の接合部(ミラープレート22と、透明基材41の主表面41aとの間)とに紫外線硬化性接着剤を充填する。ミラープレート22A〜22Dを相互に位置決めした後に、紫外線照射装置38から紫外線を照射することにより、複数枚のミラープレート22間と、複数枚のミラープレート22および透明基材41の主表面41aの間とを同時に接合する。複数枚のミラープレート22間と、複数枚のミラープレート22および透明基材41の主表面41aの間とには、接着剤層26が形成される。
以上に説明した工程により、4枚のミラープレート22(ミラープレート22A,ミラープレート22B,ミラープレート22C,ミラープレート22D)と、透明基材41とからなる2組のミラーアセンブリ51を製造する。
次に、接着剤を用いて、2組のミラーアセンブリ51をミラープレート22の厚み方向(図8中の矢印102に示す方向)において接合する。
より具体的には、2組のミラーアセンブリ51を、先の工程で互いに接合された4枚のミラープレート22同士が向かい合わせとなり、かつ、一方のミラーアセンブリ51に形成された光反射部7と、他方のミラーアセンブリ51に形成された光反射部7とを直交するように重ね合わせる。
以上の工程により、図2中の結像光学素子10が完成する。
続いて、この発明の実施の形態1における結像光学素子の製造方法によって奏される作用効果について説明する。
本実施の形態では、複数枚のミラープレート22により結像された鏡映像50を確認しながら、鏡映像50が被投影物32の形状に対応するように複数枚のミラープレート22を相互に位置決めすることによって、ミラープレート22同士の接合に起因する鏡映像の歪みが生じることのない結像光学素子10を製造することができる。
また、本実施の形態における結像光学素子の製造方法によれば、ミラープレート22同士の接合部を鏡映像で目立たなくすることができる。以下、比較例を交えながらこの効果について説明する。
図9は、比較例における結像光学素子の製造方法の工程を示す断面図である。図10は、図9中の2点鎖線Xにより囲まれた範囲を拡大して示す断面図である。
図9および図10を参照して、本比較例では、まず、ミラープレート22を鏡映像の確認により位置決めしつつ、接着剤により複数枚のミラープレート22を互いに接合する。次に、互いに接合された複数枚のミラープレート22を、接着剤により透明基材41の主表面41aに接合する。これにより、4枚のミラープレート22と、透明基材41とからなる2組のミラーアセンブリ151を製造する。次に、2組のミラーアセンブリ151をミラープレート22の厚み方向において接合することにより、図2中の結像光学素子10を得る。
このような結像光学素子の製造方法では、仮に複数枚のミラープレート22を互いに接合する工程時と、複数枚のミラープレート22を透明基材41の主表面41aに接合する工程時とにおいて同じ接着剤を用いたとしても、接着剤の硬化収縮時に起こる表面クラックにより、ミラープレート22同士の接合部における接着剤層26pと、ミラープレート22および透明基材41の接合部における接着剤層26qとの間に界面27が生じる。このような界面27の発生は、得られる鏡映像においてミラープレート22同士の接合部を目立たせる原因となる。
また、他の比較例として、透明基材41を用いずに、4枚のミラープレート22からなる2組のミラーアセンブリを、ミラープレート22の厚み方向において接合することにより結像光学素子を得る方法もある。この場合、ミラープレート22を鏡映像の確認により位置決めしつつ、接着剤により複数枚のミラープレート22を互いに接合した後に、ミラープレート22同士の接合部からはみ出た接着剤を拭き取る必要がある。
図11は、他の比較例における結像光学素子を部分的に拡大して示す断面図である。図11中には、図9中の2点鎖線XIで囲まれた範囲に対応する部分の断面が示されている。
図11を参照して、ミラープレート22同士の接合部からはみ出た接着剤を拭き取る場合、接合部から盛り上がった接着剤のみを除去することは困難であり、実際には、ミラープレート22の接合面23間の隙間を充填する接着剤も部分的に除去されてしまう。これにより、接合面23における反射面に接着剤層から露出する部分が生じることとなり、得られる鏡映像においてミラープレート22同士の接合部を目立たせる原因となる。
図12は、図8中の2点鎖線XIIで囲まれた範囲を拡大して示す断面図である。図12を参照して、これに対して、本実施の形態における結像光学素子の製造方法では、複数枚のミラープレート22間と、複数枚のミラープレート22および透明基材41の主表面41aの間とを、接着剤により同時に接合する。このような構成により、ミラープレート22同士の接合部における接着剤層26pと、ミラープレート22および透明基材41の接合部における接着剤層26qとの間に界面が生じるということがない。結果、ミラープレート22同士の接合部を鏡映像で目立たなくすることができる。
接着剤層26を形成する接着剤は、ミラープレート22および透明基材41の屈折率と略等しい屈折率を有することが好ましい。具体的には、ミラープレート22および透明基材41の屈折率nd(またはnD)がXである場合に、接着剤の屈折率が、X±0.01の範囲であることが好ましく、X±0.001の範囲であることがさらに好ましい。
ミラープレート22の接合面23は、鏡面であることが好ましい。隣り合うミラープレート22間の接着剤層の厚み(図8中の寸法b)は、10μm以下であることが好ましい。
このような構成によれば、結像光学素子10で得られる鏡映像において、ミラープレート22同士の接合部をさらに目立たたなくすることができる。
ミラープレート22同士を接合する紫外線硬化性樹脂は、2%以下の硬化収縮率を有することが好ましい。
このような構成によれば、相互に位置決めされたミラープレート22同士の位置関係が、接着剤の硬化時に崩れることを抑制できる。
続いて、ミラープレート22のミラー面接合および積層面接合について説明する。図13は、ミラープレートのミラー面接合の様子を示す斜視図である。図14は、ミラープレートの積層面接合の様子を示す斜視図である。
図13および図14を参照して、ミラープレート22の接合面23には、ミラー面23mおよび積層面23nがある。ミラー面23mは、透明板材6の積層方向に直交する平面であり、光反射部7が形成する反射面に平行な平面である。積層面23nは、ミラー面23mに直交する平面である。
上記の結像光学素子の製造方法の工程において、ミラープレート22のミラー面23m同士を接合する場合をミラー面接合といい、ミラープレート22の積層面23n同士を接合する場合を積層面接合という。
図13中には、基準となるミラープレート22Aに対してミラープレート22Bをミラー面接合する場合が示されている。さらに、接合するミラープレート22Aおよびミラープレート22Bの並び方向がY軸方向と示され、ミラープレート22の厚み方向がZ軸方向と示され、Y軸およびZ軸に直交する方向がX軸方向と示されている。X軸、Y軸およびZ軸周りの回転方向が、それぞれ、α(ミラー面傾き)方向、β(ミラー面ねじれ)方向およびθ(ミラー面回転)方向と示されている。
図14中には、基準となるミラープレート22Aに対してミラープレート22Cを積層面接合する場合が示されている。さらに、接合するミラープレート22Aおよびミラープレート22Cの並び方向がY軸方向と示され、ミラープレート22の厚み方向がZ軸方向と示され、Y軸およびZ軸に直交する方向がX軸方向と示されている。X軸、Y軸およびZ軸周りの回転方向が、それぞれ、α(ミラー面ねじれ)方向、β(ミラー面傾き)方向およびθ(ミラー面回転)方向と示されている。
鏡映像に歪みを生じさせないためには、接合するミラープレート22間において光反射部7による反射面が平行関係にあることが特に重要である。反射面同士の傾きおよび回転のずれは、0.025°以内であることが好ましい。本実施の形態における結像光学素子の製造方法によれば、上記に説明したミラープレート22を相互に位置決めする工程の実施によって、要求される反射面の平行関係を得ることができる。
ミラー面接合では、主に、α方向およびθ方向におけるミラープレート22の姿勢が、光反射部7による反射面の平行関係に影響を与え、積層面接合では、主に、β方向およびθ方向におけるミラープレート22の姿勢が、光反射部7による反射面の平行関係に影響を与える。しかしながら、ミラー面接合では、反射面に平行なミラープレート22のミラー面23m同士を接合するため、一般的には、θ方向におけるミラープレート22の姿勢の調整を経ることなく(つまり、α方向におけるミラープレート22の姿勢の調整のみで)、要求される反射面の平行関係を得ることができる。
図15および図16は、図7中のクロスチャートを用いてミラー面接合した場合において、ミラープレートの位置関係の調整時の鏡映像の変化を示す図である。
図15および図16を参照して、図4中の被投影物32として、図7中のクロスチャートを用い、2枚のミラープレート22をミラー面接合により接合した。α方向におけるミラープレート22の姿勢(ミラー面の傾き)を調整することにより、図15中の2点鎖線103により囲まれた範囲にある鏡映像50の歪みを解消することができた。
図17から図19は、図7中のクロスチャートを用いて積層面接合した場合において、ミラープレートの位置関係の調整時の鏡映像の変化を示す図である。
図17から図19を参照して、図4中の被投影物32として、図7中のクロスチャートを用い、2枚のミラープレート22を積層面接合により接合した。β方向におけるミラープレート22の姿勢(ミラー面の傾き)を調整したが、図17中の2点鎖線104により囲まれた範囲にある鏡映像50の歪みのうち、クロスチャートの縦方向における歪みが残った(図18中の2点鎖線105に囲まれた範囲にある鏡映像50の歪み)。さらにθ方向におけるミラープレート22の姿勢(ミラー面の回転)を調整すると、図18中の2点鎖線105に囲まれた範囲にある鏡映像50の歪みを解消することができた。
図19中に示すように、積層面接合では、得られる鏡映像50においてミラープレート22同士の接合部が目立ちやすいという課題が明らかになった。積層面接合では、反射面と異なる位置にミラープレート22同士の接合部があり、この接合部が光の反射面として機能するためである。本実施の形態における結像光学素子の製造方法によれば、ミラープレート22同士の接合部と、ミラープレート22および透明基材41の接合部との間に界面を生じさせることなく、これら接合部に接着剤層26を設けることによって、ミラー面接合および積層面接合にかかわらず、鏡映像50においてミラープレート22同士の接合部を目立たなくすることができる。
本実施の形態における結像光学素子の製造方法においては、図6および図7中のチャートを、鏡映像50として現れる複数本の直線がミラープレート22同士の接合部に対して非平行となるようにセッティングする。これにより、複数枚のミラープレート22によって形成される鏡映像50として現れる複数本の直線の連続性を確認することによって、鏡映像50がチャートの形状に対応するか否か容易に判断することができる。特に図7中のクロスチャートを用いた場合、クロスチャートを構成する縦線および横線がミラープレート22同士の接合部に交わるため、直交する2方向において鏡映像50のずれを認識することができる。これにより、複数枚のミラープレート22間において反射面の平行関係をより確実に得ることができる。
以上に説明した、この発明の実施の形態1における結像光学素子の製造方法によれば、面方向に並べられた複数枚のミラープレート22を接合して得られる結像光学素子10において、ミラープレート22同士の接合に起因する鏡映像の歪みが生じることを防止できる。また、得られる鏡映像において、ミラープレート22同士の接合部を目立たなくすることができる。
(実施の形態2)
図20は、この発明の実施の形態2における結像光学素子の製造方法の工程を示す断面図である。本実施の形態における結像光学素子の製造方法は、実施の形態1における結像光学素子の製造方法と比較して、基本的には同様の工程を備える。以下、重複する工程については、その説明を繰り返さない。
図20を参照して、まず、透明基材41の主表面41a上に、複数枚のミラープレート22をその面方向に並ぶように配置する。
次に、複数枚のミラープレート22により結像された鏡映像50を確認しながら、鏡映像50が被投影物32の形状に対応するように、複数枚のミラープレート22を相互に位置決めする。
次に、透明基材41の主表面41a上で位置決めされたミラープレート22を透明基材41の主表面41aに仮接合する。本実施の形態では、予め、ミラープレート22および透明基材41の接合部に紫外線硬化性接着剤をスポット塗布しておく。複数枚のミラープレート22を相互に位置決めした後に、紫外線を照射することにより、ミラープレート22を透明基材41の主表面41aに仮接合する。
上記の位置決め工程と、仮接合の工程とを複数回繰り返すことによって、複数枚のミラープレート22を透明基材41の主表面41aに仮接合する。
次に、複数枚のミラープレート22を互いに接合すると同時に、透明基材41の主表面41aに接合する。本実施の形態では、上記の仮接合工程の後に、ミラープレート22同士の接合部と、ミラープレート22および透明基材41の接合部とに紫外線硬化性接着剤を充填する。紫外線を照射することにより、複数枚のミラープレート22間と、複数枚のミラープレート22および透明基材41の主表面41aの間とを同時に接合する。
以上の工程により、4枚のミラープレート22と、透明基材41とからなる2組のミラーアセンブリ52を製造する。
次に、2組のミラーアセンブリ52をミラープレート22の厚み方向において接合する。以上の工程により、図2中の結像光学素子10が完成する。
このように構成された、この発明の実施の形態2における結像光学素子の製造方法によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に奏することができる。
(実施の形態3)
図21は、この発明の実施の形態3において製造される結像光学素子を示す斜視図である。
図21を参照して、本実施の形態において製造される結像光学素子120は、ミラーシート60と、透明基材41とを有する。ミラーシート60は、接着剤を用いて、透明基材41の主表面41aに接合されている。
ミラーシート60は、ベース板63および複数の突出部62を有する。ベース板63は、主表面63aを有する平板形状を有する。複数の突出部62は、主表面63aから突出するように設けられている。複数の突出部62は、主表面63aを平面視した場合に、アレイ状(碁盤の目状)に配置されている。
ミラーシート60には、第1光反射部61aと、第2光反射部61bとが互いに直交する方向に延びて形成されている。第1光反射部61aおよび第2光反射部61bは、各突出部62において直交する側面として設けられている。複数の第1光反射部61aは、複数の突出部62間で互いに平行に配置され、複数の第2光反射部61bは、複数の突出部62間で互いに平行に配置されている。
ミラーシート60は、複数枚のミラープレート66を有する。ミラーシート60は、複数枚のミラープレート66が面方向に接合されることにより、1枚の大型パネルとして構成されている。複数枚のミラープレート66は、接着剤により互いに接合されている。本実施の形態では、複数枚のミラープレート66として、4枚のミラープレート66(ミラープレート66A,ミラープレート66B,ミラープレート66C,ミラープレート66D)が用いられている。
ミラープレート66A〜66Dは、互いに略同一の構成を有する。ミラープレート66A〜66Dの各ミラープレート66は、ミラーシート60をその平面視において4分割した構成を有する。ミラープレート66A〜66Dは、これらミラープレート66間において、第1光反射部61aが互いに平行に延び、第2光反射部61bが互いに平行に延びるように接合されている。
図22は、この発明の実施の形態3における結像光学素子の工程を示す断面図である。
図22を参照して、まず、透明基材41の主表面41a上に、複数枚のミラープレート66をその面方向に並ぶように配置する。この際、複数枚のミラープレート66間で、第1光反射部61aが互いに平行となり、第2光反射部61bが互いに平行となるように複数枚のミラープレート66を配置する。
次に、複数枚のミラープレート66により結像された鏡映像を確認しながら鏡映像が被投影物の形状に対応するように、透明基材41の主表面41a上で複数枚のミラープレート66を相互に位置決めする。なお、本実施の形態では、図4中の参照ミラープレート36をミラープレート66に重ね合わせて配置する必要がない。
次に、複数枚のミラープレート66間と、複数枚のミラープレート66および透明基材41の主表面41aの間とを、接着剤により同時に接合する。本実施の形態では、ベース板63の端面部が、ミラープレート66同士の接合面となる。複数枚のミラープレート66間と、複数枚のミラープレート66および透明基材41の主表面41aの間とには、接着剤層68が形成される。
以上の工程により、図21中の結像光学素子120が完成する。
このように構成された、この発明の実施の形態3における結像光学素子の製造方法によれば、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
(実施例)
以下に説明する実施例1、実施例2、実施例3および比較例において、鏡映像の確認によるミラープレート22のアクティブアライメントを行ないながら、透明基材(ベースガラス)41に4枚のミラープレート22(22A,22B,22C,22D)を接合(タイリング)した。
図23は、透明基材、ミラープレート、参照ミラープレート、ガラス接合治具および紫外線硬化性樹脂(UV接着剤)の種類および特性等をまとめた表である。図23を参照して、透明基材(ベースガラス)41として、150mm角、厚み2.5mmのガラスを用いた。ミラープレート22および参照ミラープレート36として、0.5mm厚のガラス板を積層したもの(60mm角、厚み1.5mm)を用いた。
実施例1では、図4および図5中の製造装置30を用いて、以下に説明する工程によりミラープレート22のタイリングを実施した。
まず、透明基材41および参照ミラープレート36を製造装置30にセッティングした。次に、ミラープレート22A〜22Dを透明基材41の主表面41a上に配置した。この際、ミラープレート22同士の接合部と、ミラープレート22および透明基材41の接合部とに紫外線硬化性接着剤を充填した。
次に、カメラ37により撮像された鏡映像50を確認しながら、ミラープレート22の相互の位置関係(θ(回転)方向)を調整することにより、鏡映像50の歪みを解消した。次に、紫外線照射装置38からの紫外線照射により、ミラープレート22同士と、ミラープレート22および透明基材41の主表面41aの間とを同時に接合した。
図24は、実施例2で用いた結像光学素子の製造装置を示す側面図である。図25は、実施例2で用いた結像光学素子の製造装置を示す上面図である。図24および図25を参照して、水平方向に支持された透明基材41に対して、鉛直上側から参照ミラープレート36が重ね合わされ、鉛直下側からミラープレート22A〜22Dが配置される。ミラープレート22は、6軸ステージであるプレート支持部33により移動可能に支持されている。
実施例2では、図24および図25中の製造装置を用いて、以下に説明する工程によりミラープレート22のタイリングを実施した。
まず、透明基材41および参照ミラープレート36を製造装置にセッティングした。レーザオートコリメータ39により、透明基材41の主表面41aとミラープレート22との平行関係を確認しながら、紫外線硬化性樹脂を用いて、透明基材41に基準となるミラープレート22(ミラープレート22A)を仮接合した。この際、後に続いて接合するミラープレート22(ミラープレート22B〜22D)の姿勢の調整代を考慮して、接着剤層の厚みを0.1mmに設定した。
次に、以下に説明する工程により、ミラープレート22のアクティブアライメントを実施した。
(1)エア吸着により、ミラープレート22をプレート支持部(6軸ステージ)33にセッティング。
(2)ミラープレート22の表面に紫外線硬化性樹脂をスポット塗布(ミラープレート22A〜22Dの中心部を除いた領域の3点)。
(3)ミラープレート22を基準となるミラープレート22Aに向けて近接移動。
(4)プレート支持部(6軸ステージ)33により、ミラープレート22の6軸を微調整し、鏡映像の歪みを解消。
(5)接着剤層の厚みが10μm以下となるように、プレート支持部(6軸ステージ)33により、隣り合うミラープレート22間の隙間の大きさを調整。
(6)紫外線を照射することにより、ミラープレート22を透明基材41の主表面41aに仮接合。
(7)プレート支持部33のエア吸着によるミラープレート22の支持を解除。
以上の工程を3回繰り返すことによって、ミラープレート22B,22C,22Dを透明基材41の主表面41aに仮接合した。
次に、ミラープレート22同士の接合部と、ミラープレート22および透明基材41の接合部とに紫外線硬化性接着剤を充填した。紫外線照射装置38からの紫外線照射により、ミラープレート22同士と、ミラープレート22および透明基材41の主表面41aの間とを同時に接合した。
図26は、比較例において用いられるガラス接合治具を示す図である。図26を参照して、比較例では、図4および図5中の製造装置30においてガラス接合治具71を用い、以下に説明する工程によりミラープレート22のタイリングを実施した。ガラス接合治具71には、ミラープレート22同士の接合部からはみ出した接着剤を逃すための溝72(幅2mm、深さ1mm)が形成されている。
まず、ガラス接合治具71および参照ミラープレート36を製造装置30にセッティングした。次に、ミラープレート22A〜22Dを透明基材41の主表面41a上に配置した。この際、ミラープレート22同士の接合部に紫外線硬化性接着剤を充填した。
次に、カメラ37により撮像された鏡映像50を確認しながら、ミラープレート22の相互の位置関係(θ(回転)方向)を調整することにより、鏡映像50の歪みを解消した。次に、紫外線照射装置38からの紫外線照射により、ミラープレート22同士を接合した。この際、ミラープレート22の接合部からはみ出た接着剤を、溶剤(EE3310)により拭き取った。
次に、互いに接合されたミラープレート22A〜22Dと、透明基材41とを製造装置30にセッティングした。この際、ミラープレート22および透明基材41の接合部に紫外線硬化性接着剤を充填した。次に、紫外線照射装置38からの紫外線照射により、ミラープレート22A〜22Dを透明基材41の主表面41aに接合した。
図27は、実施例1、実施例2および比較例において、鏡映像の歪みおよび接合部の見えにくさの評価結果を示す表である。図中では、好ましい評価を「A」と示し、好ましくない評価を「B」と示した。
図27を参照して、上記の実施例1、実施例2および比較例において、鏡映像の歪みを評価したところ、ミラープレート22のアクティブアライメントによる効果により、いずれにおいても鏡映像の歪みは確認されなかった。また、上記の実施例1、実施例2および比較例において、鏡映像におけるミラープレート22同士の接合部の見えにくさを評価したところ、実施例1および実施例2では接合部を目立たなくすることができた。その一方で、比較例では、ミラープレート22同士を接合する工程と、ミラープレート22を透明基材41の主表面41aに接合する工程とを別々に実施したため、接合部が目立つ結果となった。
図28は、実施例3で用いた結像光学素子の製造装置を示す側面図である。図29は、実施例3で用いた結像光学素子の製造装置を示す上面図である。図28および図29中に示す結像光学素子の製造装置は、図24および図25中に示す結像光学素子の製造装置と同様の構造を有する。
実施例3では、図28および図29中の製造装置を用いて、以下に説明する工程によりミラープレート22のタイリングを実施した。
まず、透明基材41および参照ミラープレート36を製造装置にセッティングした。レーザオートコリメータ39により、透明基材41の主表面41aとミラープレート22との平行関係を確認しながら、紫外線硬化性樹脂を用いて、透明基材41に基準となるミラープレート22(ミラープレート22A)を仮接合した。
本実施例では、透明基材41の主表面41aと対向するミラープレート22Aの表面の全体に、紫外線硬化性樹脂を塗布した。さらに、紫外線硬化性樹脂が塗布されたミラープレート22Aの表面に局所的に紫外線を照射することによって、ミラープレート22Aを透明基材41の主表面41aに仮接合した。
また、後に続いて接合するミラープレート22(ミラープレート22B〜22D)の姿勢の調整代を考慮して、接着剤層の厚みを0.1mmに設定した。
次に、以下に説明する工程により、ミラープレート22のアクティブアライメントを実施した。
(1)エア吸着により、ミラープレート22をプレート支持部(6軸ステージ)33にセッティング。
(2)透明基材41の主表面41aと対向するミラープレート22の表面の全体に、紫外線硬化性樹脂を塗布。
(3)ミラープレート22を基準となるミラープレート22Aに向けて近接移動。
(4)プレート支持部(6軸ステージ)33により、ミラープレート22の6軸を微調整し、鏡映像の歪みを解消。
(5)接着剤層の厚みが10μm以下となるように、プレート支持部(6軸ステージ)33により、隣り合うミラープレート22間の隙間の大きさを調整。
(6)ミラープレート22の表面に局所的に紫外線を照射することにより、ミラープレート22を透明基材41の主表面41aに仮接合。
なお、本実施例では、ミラープレート22A〜22Dの中心部を除いた各ミラープレート22の外側領域の3点に紫外線を照射したが、紫外線の照射領域は、後の工程でミラープレート22同士の接合部となる位置から離れた位置であれば、特に限定されない。
(7)プレート支持部33のエア吸着によるミラープレート22の支持を解除。
以上の工程を3回繰り返すことによって、ミラープレート22B,22C,22Dを透明基材41の主表面41aに仮接合した。
次に、ミラープレート22同士の接合部に紫外線硬化性樹脂を充填した。紫外線照射装置38から、紫外線硬化性樹脂が塗布されたミラープレート22の表面および紫外線硬化性樹脂が充填されたミラープレート22同士の接合部への紫外線照射により、ミラープレート22同士と、ミラープレート22および透明基材41の主表面41aの間とを同時に接合した。
図30は、実施例3において、鏡映像の歪みおよび接合部の見えにくさの評価結果を示す表である。図中では、好ましい評価を「A」と示した。図30を参照して、実施例3においては、鏡映像の歪みは確認されず、また、接合部を目立たなくすることができた。
本実施例では、ミラープレート22の仮接合時、紫外線の照射領域の周囲が紫外線硬化性樹脂によって満たされている。このような工程により、ミラープレート22および透明基材41の主表面41a間の接着剤層において、仮接合部と本接合部との間の界面が目立ったり、仮接合部と本接合部との間に空気が混入してクラックが発生したりすることを防止できる。実施例3における結像光学素子の製造方法は、1.0%以上の硬化収縮率を有する紫外線硬化性接着剤(たとえば、アクリル系UV接着剤)を用いる場合により好適に適用される。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。