以下、本発明の実施の形態に係る建設機械として、クローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
まず、図1ないし図5は、本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、油圧ショベル1は、土砂の掘削作業等に用いられる建設機械を構成している。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、前記下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、前記上部旋回体3に俯仰動可能に設けられたフロント装置4とを含んで構成されている。
フロント装置4は、後述する旋回フレーム5の前側に俯仰動可能に取付けられたブーム4Aと、前記ブーム4Aの先端部に俯仰動可能に取付けられたアーム4Bと、前記アーム4Bの先端部に回動可能に取付けられたバケット4Cと、これらを駆動するブームシリンダ4D、アームシリンダ4E、バケットシリンダ4Fとにより構成されている。
図2に示すように、ブーム4Aは、その基端側のフート部4A1が後述する旋回フレーム5の左,右の縦板5B,5Cに回動可能に取付けられている。また、左,右のブームシリンダ4Dは、その基端側がシリンダブラケット5Eに回動可能に取付けられている。ここで、フロント装置4は、例えば深穴を掘削するためにブーム4Aを深く倒した姿勢(最俯動位置)と、図1中に二点鎖線で示すように、高い位置の掘削、バケット4Cに取込んだ土砂等の移送を行うためにブーム4Aを最も後側まで回動させて立ち上げた姿勢(最仰動位置)との間で俯仰動するものである。
旋回フレーム5は、上部旋回体3の支持構造体を構成するものである。図2に示すように、支持構造体としての旋回フレーム5は、前,後方向に延びる厚肉な平板状の底板5Aと、前記底板5A上に立設され、左,右方向に所定の間隔をもって前,後方向に延びた左縦板5B,右縦板5Cと、前記各縦板5B,5Cから左,右方向の外向きに延びる複数本の張出しビームの先端に取付けられて前,後方向に延びた左サイドフレーム(いずれも図示せず)、右サイドフレーム5Dとにより構成されている。各縦板5B,5Cの前側には、ブームシリンダ4Dの基端側が取付けられるシリンダブラケット5Eが設けられている。
カウンタウエイト6は、旋回フレーム5の後側に設けられている。このカウンタウエイト6は、フロント装置4との重量バランスをとるもので、後面側が円弧状をした重量物として形成されている。
エンジン7は、カウンタウエイト6の前側に位置して旋回フレーム5の後側に搭載されている(図1中に点線で図示)。エンジン7は、旋回フレーム5上に左,右方向に延びる横置き状態で載置されている。また、エンジン7の右側には、油圧ポンプ8が取付けられている。この油圧ポンプ8は、エンジン7によって駆動されることにより、後述する作動油タンク10からの作動油を、下部走行体2の走行モータ、フロント装置4の各シリンダ4D,4E,4F等の油圧アクチュエータに向け圧油として吐出するものである。
キャブ9は、旋回フレーム5の前側で、かつブーム4Aのフート部4A1を挟んで左,右方向の一側となる左側位置に設けられている。キャブ9は、前,後方向に延びたボックス状体からなり、その周面には、周囲の視界を確保するための前窓9A、後窓、左窓(いずれも図示せず)、右窓9Bが設けられている。また、キャブ9の左前側には、上部旋回体3に昇降するときに掴むためのキャブ用手摺り9Cが上,下方向に延びて設けられている。
キャブ9の内部には、運転席9D、各種操作レバー等(図示せず)が配設されている。運転席9Dは、オペレータが着座するもので、オペレータの頭部が配置される位置にアイポイントEPを有している。実際のオペレータのアイポイントは、頭部が左,右方向や上,下方向に振られることから、一点に定めることはできないが、この実施の形態では、アイポイントEPは、平均的な位置を示すことにより後述する目線ELの位置をわかり易くしている。
作動油タンク10は、フロント装置4を構成するブーム4Aのフート部4A1を挟んで左,右方向の他側位置、即ち、旋回フレーム5の右縦板5Cの右側(外側)に配置されている。さらに、作動油タンク10は、キャブ9の斜め後方となるエンジン7の前側に位置している。作動油タンク10は、上,下方向に延びる直方体状の耐圧容器として形成され、本発明の貯油タンクを構成している。図4に示すように、作動油タンク10の上面10Aには、左,右方向の外側に位置して後述する作業用後手摺り23が取付けられている。
燃料タンク11は、作動油タンク10の前側で旋回フレーム5の右縦板5Cの右側に配置されている。この燃料タンク11は、上,下方向に延びる直方体状の容器として形成され、作動油タンク10と共に本発明の貯油タンクを構成している。燃料タンク11の上面11Aには、燃料を供給する給油口11Bが設けられている。燃料タンク11の上面11Aには、作業用後手摺り23と前,後方向で連続するように、左,右方向の外側に位置して後述する作業用前手摺り18が取付けられている。さらに、作業用前手摺り18よりも前側となる上面11Aの前端部には、後述する昇降用手摺り14の取付部材16が取付けられている。
最下段ステップ12は、旋回フレーム5の右前端に突出して設けられている(図2参照)。この最下段ステップ12は、上部旋回体3上に昇降するときに足を掛ける1段目のステップとなっている。
物品収容ケース13は、燃料タンク11の前側に位置して旋回フレーム5の右前側に設けられている。この物品収容ケース13の内部には、工具等を収容することができる。物品収容ケース13の上面および前面は、前側に位置する2段目のステップ13Aと、ステップ13Aの後側に位置する3段目のステップ13Bとなっている。
これにより、作業者は、下部走行体2上から最下段ステップ12、物品収容ケース13のステップ13A,13Bに順番に足を掛けることにより、上部旋回体3上に容易に昇ることができる。一方、逆順の動作を行えば、上部旋回体3から地上に降りることができる。
次に、作業者が上部旋回体3上に昇降するときに掴まる昇降用手摺り14、作業用前手摺り18、作業用後手摺り23について説明する。
昇降用手摺り14は、物品収容ケース13の外側に沿わせて旋回フレーム5の前端部位と燃料タンク11の前部位置との間に亘って配置されている。この昇降用手摺り14は、作業者が最下段ステップ12および物品収容ケース13の各ステップ13A,13Bを足場として上部旋回体3に昇降するときに掴むことにより、昇降時の安全性を確保するものである。そして、昇降用手摺り14は、手摺り部材15、取付部材16、補強部材17を含んで構成されている。
手摺り部材15は、円筒状のパイプ材等を折曲げることにより形成され、旋回フレーム5の前端と燃料タンク11の前部位置との間に設けられている。手摺り部材15は、旋回フレーム5の前端で最下段ステップ12の右側から上側に延びた前パイプ部15Aと、前記前パイプ部15Aの上端部から上方に向け斜め後側に延びた傾斜パイプ部15Bと、前記傾斜パイプ部15Bの上端部から後側に延びた上パイプ部15Cと、前記上パイプ部15Cの後端部から下向きに延びた後パイプ部15Dとにより構成されている。前パイプ部15Aの下端部は、旋回フレーム5の前端にボルト止めされている。
この場合、傾斜パイプ部15Bおよび上パイプ部15Cは、作業者が最下段ステップ12と物品収容ケース13の各ステップ13A,13Bとを昇降するときに、把持することができる高さ位置に配設されている。
取付部材16は、手摺り部材15の後パイプ部15Dの下端部に溶接等の固着手段を用いて一体的に取付けられている。取付部材16は、例えば1枚の板材の下部を前側にL字状に折曲げることにより形成されている。取付部材16は、手摺り部材15の後側を燃料タンク11の上面11Aに固定するブラケットとなるもので、例えば上面11Aの最前部にボルト止めされている。
補強部材17は、取付部材16から前側に延び、その前端が手摺り部材15の傾斜パイプ部15Bに固着されている。補強部材17は、手摺り部材15の強度を高めるもので、手摺り部材15と同様に円筒状のパイプ材等により形成されている。
作業用前手摺り18は、燃料タンク11の上部位置に燃料タンク11の外側に沿って前,後方向に延びて配置され、燃料タンク11の上面11Aに固定されている。即ち、作業用前手摺り18は、燃料タンク11の左,右方向の外側に位置して、昇降用手摺り14の後方に連なるように配設されている。作業用前手摺り18は、作業者が燃料タンク11上で作業するときの安全性を確保するために設けられたものである。そして、作業用前手摺り18は、手摺り部材19、前取付部材20、後取付部材21、補強部材22を含んで構成されている。
手摺り部材19は、昇降用手摺り14の手摺り部材15と同様に、円筒状のパイプ材等が用いられ、このパイプ材を門型状に折曲げることにより形成されている。手摺り部材19は、昇降用手摺り14を構成する手摺り部材15の上パイプ部15Cとほぼ同じ高さ位置で前,後方向に延びた上パイプ部19Aと、前記上パイプ部19Aの前端部から下向きに延びた前パイプ部19Bと、前記上パイプ部19Aの後端部から下向きに延びた後パイプ部19Cとにより形成されている。
前取付部材20は、手摺り部材19の前パイプ部19Bの下端部に溶接等の固着手段を用いて一体的に取付けられている。前取付部材20は、例えば1枚の板材の下部を後側にL字状に折曲げることにより形成されている。前取付部材20は、手摺り部材15の前側を燃料タンク11の上面11Aに固定するブラケットとなるもので、例えば上面11Aの前側部分にボルト止めされている。
一方、後取付部材21は、前取付部材20と前,後方向で対面するように、手摺り部材19の後パイプ部19Cの下端部に溶接等の固着手段を用いて一体的に取付けられている。後取付部材21は、前取付部材20とほぼ同様に、例えば1枚の板材の下部を前側にL字状に折曲げることにより形成されている。後取付部材21は、手摺り部材19の後側を燃料タンク11の上面11Aに固定するブラケットとなるもので、例えば上面11Aの後側部分にボルト止めされている。
補強部材22は、手摺り部材19の上パイプ部19Aから下側に離間した位置に上パイプ部19Aとほぼ平行に延びて設けられている。補強部材22は、前,後方向に延びる円筒状のパイプ材等により形成されている。補強部材22の前端は、前パイプ部19Bの上,下方向の中間部に溶接手段等を用いて固着され、後端は、後パイプ部19Cの上,下方向の中間部に固着されている。これにより、補強部材22は、手摺り部材19の強度を高めている。
作業用後手摺り23は、作動油タンク10の上部位置に作動油タンク10に沿って前,後方向に延びて配置され、作動油タンク10の上面10Aに固定されている。従って、作業用後手摺り23は、作業用前手摺り18の後方に連なるように配設されている。作業用後手摺り23は、作業者が作動油タンク10上で作業するときの安全性を確保するために設けられたものである。ここで、作業用後手摺り23は、前述した作業用前手摺り18と比較し、前,後方向の寸法が小さく形成されているだけで、基本的な構成は同様となっている。
即ち、作業用後手摺り23は、作業用前手摺り18と同様に、上パイプ部24A、前パイプ部24Bおよび後パイプ部24Cからなる手摺り部材24と、手摺り部材24の前パイプ部24Bの下端部に取付けられた前取付部材25と、手摺り部材24の後パイプ部24Cの下端部に取付けられた後取付部材26と、前パイプ部24Bの中間部と後パイプ部24Cの中間部に固着された補強部材27とにより構成されている。
作業用後手摺り23は、前取付部材25が作動油タンク10の上面10Aの前側部分にボルト止めされ、後取付部材26が作動油タンク10の上面10Aの後側部分にボルト止めされている。これにより、作業用後手摺り23は、作動油タンク10の上部位置に設けられている。
ここで、作業用後手摺り23を作動油タンク10の上部位置に設ける構成は、作業用後手摺り23の大部分が作動油タンク10の上側に配置されていればよい。即ち、作業用後手摺り23が作動油タンク10の上側に配置されていれば、前取付部材25が燃料タンク11に取付けられていてもよく、また、後取付部材26が後述する外装カバー38の上面カバー部38Aに取付けられていてもよいものである。
次に、昇降用手摺り14に設けられたメイン側方ミラー装置28の構成および視野について説明する。
図2に示すように、メイン側方ミラー装置28は、フロント装置4を構成するブーム4Aのフート部4A1を挟んで、キャブ9の右側方に設けられている。詳しくは、メイン側方ミラー装置28は、物品収容ケース13よりも前側に位置して最下段ステップ12の右側に設けられている。具体的には、メイン側方ミラー装置28は、上部旋回体3の右前角部に配置された昇降用手摺り14に取付けられている。メイン側方ミラー装置28は、キャブ9内から作動油タンク10、燃料タンク11を含む後方、即ち、上部旋回体3の右側方部およびその周辺を目視するためのものである。
メイン側方ミラー装置28は、基端側が昇降用手摺り14を構成する手摺り部材15の前パイプ部15Aに取付けられ、先端側が左,右方向の外側(右側)に向けて延びたステー28Aと、このステー28Aの先端部に取付けられたミラー本体28Bとにより構成されている。メイン側方ミラー装置28は、ステー28Aとミラー本体28Bの取付角度を調整することにより、キャブ9内に搭乗したオペレータからは直接的に目視することができない上部旋回体3の右側方部およびその周辺を映すことができる。この場合の目視可能な範囲は、例えば、図2中に実線で示された範囲Aとなる。
ここで、キャブ9内のオペレータは、メイン側方ミラー装置28を目視することによって上部旋回体3の右側方部位を視認することができる。しかし、キャブ9とメイン側方ミラー装置28との間には、フロント装置4のブーム4Aとブームシリンダ4Dが配置されている。このため、図1に示すように、ブーム4Aを前側に倒した状態では、キャブ9内のオペレータは、ブーム4Aのフート部4A1またはブームシリンダ4Dに遮られてメイン側方ミラー装置28を目視できなくなる。
次に、フロント装置4に遮られてキャブ9からメイン側方ミラー装置28が目視できないときに、上部旋回体3の右側方部およびその周辺を目視するために設けられた後視ミラー装置29と前視ミラー装置34のそれぞれの構成および視野について説明する。
後視ミラー装置29は、上部旋回体3の前,後方向の中間に位置する作動油タンク10の後方(上部旋回体3の右側方かつ後方)を目視するもので、作業用後手摺り23に設けられている。後視ミラー装置29は、後述のクランプ部材30、ステー31、ミラー本体32、位置決め部材33により構成されている。
後視ミラー装置29は、フロント装置4の姿勢によってキャブ9内からメイン側方ミラー装置28が目視できなくなったときに、フロント装置4を避けてキャブ9内から目視可能な位置に配設されている。具体的には、図1中に二点鎖線で示すように、フロント装置4のブーム4Aが最も後側に立上った姿勢では、ブーム4Aのフート部4A1の後端が後視ミラー装置29を目視するときの障害となり得る。
そこで、フート部4A1の左,右の後端のうち、キャブ9側の左角部を点Pとする。図2に示すように、後視ミラー装置29は、キャブ9内のオペレータのアイポイントEPと最も後側に立上ったブーム4Aのフート部4A1の左角部の点Pとを結ぶ直線を目線ELとすると、この目線(直線)ELの位置よりも後側に配置されている。一方で、後視ミラー装置29は、直線EAよりも前側の範囲に配置されている。この直線EAは、キャブ9内のオペレータが後方を見るときの目の移動範囲であり、オペレータのアイポイントEPの位置から後方に角度αだけ回転した位置に設定されている。この角度αは、現状ではJIS規格によって後方45°(真直前方から時計回り又は反時計回りに135°)に定められている。
図3、図4に示すように、クランプ部材30は、作業用後手摺り23を構成する補強部材27の前側部位に取付けられている。クランプ部材30は、補強部材27を挟んで対向して配置された第1クランプ30A、第2クランプ30Bと、補強部材27を挟むように第1クランプ30Aと第2クランプ30Bとの間に螺合された複数本、例えば2本のボルト30Cとにより構成されている。クランプ部材30は、各ボルト30Cを締付けることにより、補強部材27に固定されている。これにより、クランプ部材30は、各ボルト30Cを緩めた状態では、後述のミラー本体32を補強部材27の周方向に角度調整することができる。
ステー31は、クランプ部材30の第1クランプ30Aに取付けられたパイプ材または棒材から形成されている。ステー31は、基端側が作業用後手摺り23の補強部材27にクランプ部材30を介して取付けられている。さらに、ステー31は、補強部材27の径方向に延びた後にL字状に屈曲して後方に延び、その先端側には、ミラー本体32が設けられている。
ミラー本体32は、ステー31の先端側に設けられている。このミラー本体32は、正面側に鏡面を有し、背面側にはジョイント部32Aが設けられている。このジョイント部32Aは、ミラー本体32の取付角度を調整することができる上に、締付けた状態では、ステー31に対して角度、位置を固定することができる。これにより、ミラー本体32は、ジョイント部32Aによってステー31に対する角度を調整することができる。
ここで、後視ミラー装置29は、ステー31を左,右方向の外側に倒した位置(図3、図4に示す位置)にミラー本体32を配している。この位置が、通常の稼働時に配置される後視ミラー装置29の基本位置となる。一方で、後視ミラー装置29は、クランプ部材30を緩めることで、作業用後手摺り23側に折畳むことができ、この状態が、輸送時に後視ミラー装置29が突出しないように作業用後手摺り23側に格納した輸送位置となる。
そして、後視ミラー装置29は、基本位置に配置されることにより、キャブ9内のオペレータの目線ELよりも後側に配置されるから、フロント装置4のブーム4Aが最も後側に立上った姿勢をとった状態でも、キャブ9内から目視することができる。このときの後視ミラー装置29の目視可能な範囲は、例えば、図2中に二点鎖線で示された範囲Bとなる。
次に、後視ミラー装置29を前述した基本位置に位置決めするための位置決め部材33について述べる。
図5に示すように、位置決め部材33は、後視ミラー装置29が自重または車体稼働に伴う振動によって前述した基本位置よりも下側に回動しないようにすると共に、この基本位置に位置決めするものである。位置決め部材33は、作業用後手摺り23の補強部材27に溶接手段等によって固着されている。位置決め部材33は、クランプ部材30の各クランプ30A,30B間に位置して補強部材27の径方向の外向きに突出したブロック体により構成されている。
この位置決め部材33は、ステー31と共にクランプ部材30を後視ミラー装置29の基本位置に回動させたときに、この基本位置で第2クランプ30Bに当接することにより、この位置で後視ミラー装置29を位置決めすることができる。これにより、稼動時に振動等が作用しても、後視ミラー装置29を基本位置に保持することができる上に、輸送位置から基本位置に戻すときの面倒な位置決め作業を省略することができる。
次に、後視ミラー装置29と一緒に作業用後手摺り23に設けられた前視ミラー装置34について述べる。
前視ミラー装置34は、上部旋回体3の前,後方向の中間に位置する作動油タンク10の前方(上部旋回体3の右側方かつ前方)を目視するもので、作業用後手摺り23に設けられている。前視ミラー装置34は、後視ミラー装置29と同様に、後述のクランプ部材35、ステー36、ミラー本体37等により構成されている。前視ミラー装置34は、後視ミラー装置29とほぼ同様の構成となっているから、その説明を簡略化するものとする。
前視ミラー装置34は、キャブ9内のオペレータの目線ELの位置よりも後側に配置されている。一方で、前視ミラー装置34は、目の移動範囲となる直線EAよりも前側の範囲に配置されている。
図3、図4に示すように、クランプ部材35は、作業用後手摺り23の手摺り部材24を構成する後パイプ部24Cの上側部位に取付けられている。クランプ部材35は、後視ミラー装置29のクランプ部材30と同様に、第1クランプ35A、第2クランプ35Bおよびボルト35Cにより構成されている。これにより、クランプ部材35は、後パイプ部24Cに固定的に取付けられると共に、各ボルト35Cを緩めた状態では、後述のミラー本体37を後パイプ部24Cの周方向(水平方向)に角度調整することができる。
ステー36は、クランプ部材35の第1クランプ35Aに取付けられたパイプ材または棒材から形成されている。ステー36は、基端側が手摺り部材24の後パイプ部24Cにクランプ部材35を介して取付けられている。さらに、ステー36は、後パイプ部24Cの径方向に延びた後にL字状に屈曲して下方に延びている。
ミラー本体37は、ステー36の先端側に設けられている。このミラー本体37は、後視ミラー装置29のミラー本体32とほぼ同様に、正面側の鏡面と背面側のジョイント部37Aを有している。ミラー本体37は、ジョイント部37Aを介してステー36に対して角度調整可能に取付けられている。
ここで、前視ミラー装置34は、ステー36を左,右方向の外側に回動させた位置(図3、図4に示す位置)にミラー本体37を配している。この位置が、通常の稼働時に配置される前視ミラー装置34の基本位置となる。一方で、前視ミラー装置34は、クランプ部材35を緩めることで、輸送時に前視ミラー装置34が突出しないように左側に回動させて格納した輸送位置に配置することができる。
この前視ミラー装置34は、後視ミラー装置29と同様に、基本位置に配置された状態で、キャブ9内のオペレータの目線ELよりも後側に配置されている。従って、前視ミラー装置34は、ブーム4Aが立上った姿勢をとった状態でも、キャブ9内から目視することができる。このときの前視ミラー装置34の目視可能な範囲は、例えば、図2中に一点鎖線で示された範囲Cとなる。
そして、キャブ9内のオペレータは、後視ミラー装置29と前視ミラー装置34を目視することにより、後視ミラー装置29の目視範囲Bと前視ミラー装置34の目視範囲Cとを目視することができる。これにより、メイン側方ミラー装置28がフロント装置4で目視できない状態でも、メイン側方ミラー装置28の目視範囲Aを、後視ミラー装置29の目視範囲Bと前視ミラー装置34の目視範囲Cとによって補うことができる。
なお、前視ミラー装置34には、位置決め部材33と同様の位置決め部材を設けることができる。この位置決め部材を設けた場合には、振動等による前視ミラー装置34の位置ずれを防止できる上に、輸送位置から基本位置に戻すときの面倒な位置決め作業を省略することができる。
外装カバー38は、キャブ9の後側からカウンタウエイト6までの範囲に設けられている。具体的には、外装カバー38は、エンジン7等を覆う上面カバー部38Aと、前記上面カバー部38Aの左端から下向きに延びた左面カバー部38Bと、前記上面カバー部38Aの右端から下向きに延びた右面カバー部38Cと、前記上面カバー部38Aに設けられた開閉可能なエンジンカバー部38Dとを含んで構成されている。
キャブミラー装置39は、キャブ9のキャブ用手摺り9Cに設けられている。このキャブミラー装置39は、メイン側方ミラー装置28とほぼ同様に構成されている。キャブミラー装置39は、キャブ9内から上部旋回体3の左側方を含む後方を目視するものである。
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、この油圧ショベル1の動作について説明する。
オペレータは、キャブ9に搭乗して運転席9Dに着座する。この状態でエンジン7を始動して走行用の操作レバーを操作することにより、下部走行体2を駆動して油圧ショベル1を前進または後退させることができる。また、運転席9Dに着座したオペレータは、作業用の操作レバーを操作することにより、フロント装置4を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
上述した油圧ショベル1の稼動時には、オペレータは、キャブ9内から目視できる範囲に加え、キャブ9内から直接目視できない範囲、例えば上部旋回体3の右側方、左側方およびその周囲を、メイン側方ミラー装置28とキャブミラー装置39を利用することによって目視することができる。
しかし、キャブ9の右側には、フロント装置4を構成するブーム4Aのフート部4A1およびブームシリンダ4Dが配置されている。従って、フロント装置4のブーム4Aを前側に傾けた状態、即ち、図1に示すフロント装置4の状態では、キャブ9内からメイン側方ミラー装置28を目視するときの目線がフート部4A1等によって遮られることになる。これにより、キャブ9内のオペレータは、上部旋回体3の右側方部位およびその周辺を目視できなくなってしまう。
然るに、第1の実施の形態によれば、貯油タンクを構成する作動油タンク10の上部位置には、上部旋回体に昇降するときに掴むための作業用後手摺り23が設けられている。また、作業用後手摺り23には、前記作動油タンク10の後方(上部旋回体3の右側方かつ後方)を目視する後視ミラー装置29が設けられると共に、前記作動油タンク10の前方(上部旋回体3の右側方かつ前方)を目視する前視ミラー装置34が設けられている。
ここで、キャブ9内からメイン側方ミラー装置28を目視するときに、フロント装置4が障害となってメイン側方ミラー装置28が目視できない場合がある。この場合には、キャブ9内のオペレータは、右斜め後側に配置された後視ミラー装置29と前視ミラー装置34を目視することにより、上部旋回体3の右側方位置、即ち、後視ミラー装置29の目視範囲Bと前視ミラー装置34の目視範囲Cとを目視することができる。
この結果、キャブ9内のオペレータは、メイン側方ミラー装置28が目視できない場合でも、このメイン側方ミラー装置28の目視範囲Aを、後視ミラー装置29の目視範囲Bと前視ミラー装置34の目視範囲Cとによって補うことができる。これにより、キャブ9内のオペレータは、メイン側方ミラー装置28または後視ミラー装置29、前視ミラー装置34を目視することにより、フロント装置4の作業姿勢に関係なく、作動油タンク10、燃料タンク11を含む上部旋回体3の側方部位およびその周辺を目視することができ、作業時の安全性を高めることができる。
後視ミラー装置29と前視ミラー装置34とは、フロント装置4のブーム4Aが最も後側に立上った姿勢で、キャブ9内のオペレータのアイポイントEPとフロント装置4のブーム4Aの後端となる左角部の点Pとを結ぶ目線ELの位置よりも後側に配置されている。従って、後視ミラー装置29と前視ミラー装置34とは、フロント装置4がどのような作業姿勢であっても、キャブ9内から常時目視することができる。
後視ミラー装置29は、基端側が作業用後手摺り23の補強部材27に取付けられたステー31と、前記ステー31の先端側に設けられたミラー本体32とを含んで構成されている。また、前視ミラー装置34は、基端側が作業用後手摺り23を構成する手摺り部材24の後パイプ部24Cに取付けられたステー36と、前記ステー36の先端側に設けられたミラー本体37とを含んで構成されている。そして、それぞれのミラー本体32,37は、作業用後手摺り23に対する角度を調整可能としている。これにより、各ミラー装置29,34は、オペレータの体格、作業現場の状況等に応じてミラー本体32,37に映る範囲を適宜に調整することができ、状況に応じた最適な視界を得ることができる。また、各ミラー装置29,34は、作業用後手摺り23の上パイプ部24Aを除いた位置に取付けられているため、手摺りの掴み代を十分に確保することができ、作業者の上部旋回体3上での作業や移動時の安全性を確保することができる。
さらに、ステー31,36には、作業用後手摺り23に固定するためのクランプ部材30,35が設けられている。クランプ部材30,35の締結を緩めた場合には、各ミラー装置29,34を作業用後手摺り23側に折畳んで格納することができ、輸送時の損傷を防止して信頼性を向上することができる。
しかも、作業用後手摺り23の補強部材27には、クランプ部材30を位置決めする位置決め部材33が設けられている。従って、位置決め部材33は、後視ミラー装置29を左,右方向の外側に倒した基本位置に位置決めすることができる。また、稼動時に振動等が作用しても、後視ミラー装置29は、基本位置に保持することができるから、作業時の安全性を高めることができる。また、後視ミラー装置29を作業用後手摺り23側に格納した輸送位置から基本位置に戻すときの面倒な位置決め作業を省略することができる。
次に、図6ないし図8は、本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、手摺りには、手摺り側ブラケットが設けられており、後視ミラー装置と前視ミラー装置とのうち、少なくとも一方のミラー装置には、手摺り側ブラケットと対面するミラー側ブラケットが設けられており、手摺り側ブラケットとミラー側ブラケットとは、ねじ部材を用いて取付けられている。なお、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
図6において、第2の実施の形態による作業用後手摺り41は、第1の実施の形態による作業用後手摺り23とほぼ同様に、作動油タンク10の上部位置に作動油タンク10に沿って前,後方向に延びた状態で、作動油タンク10の上面10Aに固定されている。また、図7、図8に示すように、作業用後手摺り41は、上パイプ部42A、前パイプ部42Bおよび後パイプ部42Cからなる手摺り部材42と、手摺り部材42の前パイプ部42Bの下端部に取付けられた前取付部材43と、手摺り部材42の後パイプ部42Cの下端部に取付けられた後取付部材44と、前パイプ部42Bの中間部と後パイプ部42Cの中間部に固着された補強部材45とにより構成されている。
しかし、第2の実施の形態による作業用後手摺り41は、手摺り部材42の後パイプ部42Cに後述の手摺り側ブラケット46が設けられている点で、第1の実施の形態による作業用後手摺り23と相違している。また、手摺り部材42の後パイプ部42Cは、手摺り側ブラケット46を溶接するための強度を確保するために、上,下方向の中間部位から下側が円柱状の中実部42C1となっている。この場合、中実部42C1以外にも、上,下方向の中間部位から下側でパイプ部材の厚さ寸法を大きくすることで溶接に対する強度を高める構成とすることもできる。
作業用後手摺り41の手摺り側ブラケット46は、左,右方向に長尺な長方形状の平板体からなり、手摺り部材42の後パイプ部42Cに溶接手段を用いて固着されている。具体的には、手摺り側ブラケット46は、補強部材45と対向する位置で、後パイプ部42Cの中実部42C1の後部上側に設けられている。これにより、手摺り側ブラケット46を後パイプ部42Cに溶接したときに生じる後パイプ部42Cの全体の変形(湾曲、反り等)は、補強部材45によって抑えることができる。また、後パイプ部42Cの部分的な変形は、中実部42C1によって抑えることができる。
手摺り側ブラケット46には、例えば後パイプ部42Cを挟んだ位置に複数個、例えば3個のめねじ孔46Aが設けられている。このように、めねじ孔46Aを複数個設けたことにより、後述するミラー側ブラケット48(後視ミラー装置47、前視ミラー装置52)が回動しないように強固に支持することができる。
次に、上部旋回体3の右側方部およびその周辺を目視するために設けられた後視ミラー装置47と前視ミラー装置52の構成について説明する。
第2の実施の形態による後視ミラー装置47は、第1の実施の形態による後視ミラー装置29とほぼ同様に、上部旋回体3の前,後方向の中間に位置する作動油タンク10の後方(上部旋回体3の右側方かつ後方)を目視するもので、作業用後手摺り41に設けられている。後視ミラー装置47は、後述のミラー側ブラケット48、ステー50、ミラー本体51により構成されている。
ここで、第2の実施の形態による後視ミラー装置47は、第1の実施の形態による後視ミラー装置29と同様に、キャブ9内のオペレータが右斜め後側を目視したときに、最も後側に立上ったブーム4Aのフート部4A1の後端を通る直線(目線)の位置よりも後側に配置されている。一方で、後視ミラー装置47は、第1の実施の形態で述べた直線EAよりも前側の範囲に配置されている。
ミラー側ブラケット48は、作業用後手摺り41の手摺り側ブラケット46と対面して設けられている。ミラー側ブラケット48は、手摺り側ブラケット46と面接触する平板体からなる当接板部48Aと、この当接板部48Aの右端部からL字状に屈曲して後側に延びたアーム部48Bとを含んで構成されている。当接板部48Aには、手摺り側ブラケット46の各めねじ孔46Aに対応した位置にボルト挿通孔48Cが設けられている。
ミラー側ブラケット48は、当接板部48Aを手摺り側ブラケット46に後面側から当接(面接触)させた状態で、各ボルト挿通孔48Cにそれぞれ挿通したねじ部材としてのボルト49を手摺り側ブラケット46のめねじ孔46Aに螺合させる。これにより、ミラー側ブラケット48は、手摺り側ブラケット46に一体的に取付けることができる。
ステー50は、ミラー側ブラケット48に取付けられたパイプ材または棒材から形成されている。ステー50は、基端側(前端側)がミラー側ブラケット48のアーム部48Bに溶接手段等を用いて取付けられている。一方、ステー50は、後方に直線状に延びた先端側には、ミラー本体51が設けられている。
ミラー本体51は、ステー50の先端側に設けられている。このミラー本体51は、第1の実施の形態によるミラー本体32とほぼ同様に、正面側の鏡面と背面側のジョイント部51Aを有している。ミラー本体51は、ジョイント部51Aを介してステー50に対して角度調整可能に取付けられている。
前視ミラー装置52は、上部旋回体3の前,後方向の中間に位置する作動油タンク10の前方(上部旋回体3の右側方かつ前方)を目視するもので、作業用後手摺り41に設けられている。前視ミラー装置52は、後述のステー53、ミラー本体54により構成されている。ここで、前視ミラー装置52は、後視ミラー装置47と同様に、キャブ9内のオペレータが右斜め後側を目視したときに、最も後側に立上ったブーム4Aのフート部4A1の後端を通る直線(目線)の位置よりも後側に配置されている。一方で、前視ミラー装置52は、直線EAよりも前側の範囲に配置されている。
ステー53は、ミラー側ブラケット48に取付けられたパイプ材または棒材から形成されている。ステー53は、上,下方向に延びた基端側(下端側)がミラー側ブラケット48の当接板部48Aに溶接手段等を用いて取付けられている。一方、ステー53のL字状に屈曲して右側に延びた先端側には、ミラー本体54が設けられている。
ミラー本体54は、ステー53の先端側に設けられている。このミラー本体54は、前述したミラー本体51とほぼ同様に、正面側の鏡面と背面側のジョイント部54Aを有している。ミラー本体54は、ジョイント部54Aを介してステー53に対して角度調整可能に取付けられている。
ここで、後視ミラー装置47は、第1の実施の形態による後視ミラー装置29の目視範囲Bと同等の目視範囲を有している。また、前視ミラー装置52は、第1の実施の形態による前視ミラー装置34の目視範囲Cと同等の目視範囲を有している。これにより、キャブ9内のオペレータは、後視ミラー装置47と前視ミラー装置52を目視することにより、メイン側方ミラー装置28がフロント装置4で目視できない状態でも、第1の実施の形態で述べたメイン側方ミラー装置28の目視範囲Aを、後視ミラー装置47の目視範囲と前視ミラー装置52の目視範囲とによって補うことができる。
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用、効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、作業用後手摺り41には、手摺り側ブラケット46が設けられている。また、後視ミラー装置47には、手摺り側ブラケット46と対面するミラー側ブラケット48が設けられている。この上で、手摺り側ブラケット46とミラー側ブラケット48とは、ボルト49を用いて取付ける構成としている。
従って、手摺り側ブラケット46とミラー側ブラケット48とは、互いに面接触させた状態で、各ボルト49によって固定することができる。これにより、クランプ部材をパイプに取付ける場合に比較し、振動等による位置ずれを抑えることができるから、良好な視界を安定的に提供でき、安全性を高めることができる。
また、作業用後手摺り41の手摺り側ブラケット46は、後パイプ部42Cのうち、補強部材45に対向する位置に設けているから、手摺り側ブラケット46を溶接したときの後パイプ部42Cの全体の変形(湾曲、反り等)を補強部材45によって抑えることができる。しかも、手摺り側ブラケット46は、後パイプ部42Cの中実部42C1に溶接しているから、部分的な変形も抑えることができる。
さらに、平板体からなる手摺り側ブラケット46は、後パイプ部42Cに容易に取付けることができる上に、めねじ孔46Aの大きさも適宜に設定できるから、例えばボルト49のサイズを大きくして取付強度を高めることができる。
なお、第1の実施の形態では、貯油タンクとしての作動油タンク10の上側位置に作業用後手摺り23を設け、この作業用後手摺り23に後視ミラー装置29と前視ミラー装置34を設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、貯油タンクとしての燃料タンク11の上側位置に作業用後手摺り23を設け、この作業用後手摺り23に後視ミラー装置29と前視ミラー装置34を設ける構成としてもよい。この構成は、第2の実施の形態にも適用することができる。
各実施の形態では、建設機械として、クローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、ホイール式の油圧ショベルや油圧クレーン等の他の建設機械にも広く適用することができる。