JP6564156B2 - ガス検知素子及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ガス検知素子及びその製造方法に関する。
空気中を漂う希薄な匂いを高感度に検知したり、モニタリングしたりする需要が高まっている。例えば、食品が腐敗すると脂肪酸等の匂い物質が放出されたり、カビ等の発生に伴う芳香成分が放出されたりする。それゆえ、これらのガスを選択的に検知するガス検知素子により、食品の腐敗を検知することが可能となる。また、特定の体臭を検知するガス検知素子を美容や健康の維持改善に利用したり、あるいは美容関連の化粧料ないし医薬品等の開発に利用したりすることも必要になると考えられる。
近年、ヘルスチェックへのガス検知素子の適用が検討され、呼気中の特定のガス成分を検知することにより疾病のスクリーニングをする試みもなされている。例えば肺癌又は乳癌に罹患すると呼気中の特定のガス成分が増加することが知られている。このような呼気中ガス成分として、2−エチル−1−ヘキサノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ヘキサナール、トルエン、エチルベンゼン、1,3−ジメチルベンゼン、スチレン、1−メチルエチルベンゼン、エタン、ペンタン、シクロペンタン、3−メチル−ペンタン、メチルシクロペンタン、2,3−ジメチル−ペンタン、ヘプタン、1,4−ジメチルシクロヘキサン、2,4−ジメチルヘプタン、2,3,4−トリメチルヘプタン、デカン、α−ピネン等の炭化水素ガスが報告されている。したがって、これらのガス成分を必要により組み合わせて、選択的に検知することにより、特定の癌のスクリーニングが可能になると期待されている。
目的のガス成分を特異的に検出する方法としては、ガスクロマトグラフィーが知られている。しかし、ガスクロマトグラフィー装置をガス検知の現場へと持ち込むのは現実的でなく、またリアルタイム測定ができず、測定時間も長い。それゆえ、ガスクロマトグラフィーを用いて必要なときにその場で簡易にガスを検出すること(例えばPOCT(Point of Care Teating)等への適用)は難しい。
他方、ガス検知素子を用いたガス検出技術が知られている。ガス検知素子は、特定種のガス分子を吸着し、吸着の有無ないし吸着量をセンサーで検出することにより目的のガスを検出する。このようなセンサーの例として、質量マイクロバランシング(Mass micro−balancing)法を利用したものが知られている。
質量マイクロバランシング法によるセンシングでは、微細な誘電体センサ(圧電センサ)に電圧をかけて誘電体センサーを一定の周波数(共振周波数)で振動させ、誘電体センサー表面へのガス吸着による質量増加を共振周波数の減少として検出するものである。この誘電体センサーの代表的なものとしてQCM(Quartz Crystal Mass micro−balancing)が知られている。
QCMは、特定の角度(AT−カット)で切り出した水晶の薄膜の両面に電極を設け、電圧をかけることにより水晶面と水平方向に共振周波数でずり振動させる。この共振周波数は電極上に吸着したガスの質量に応じて減少するため、電極上の物質の質量変化を捉えることができる。
水晶の他にも、チタン酸ジルコン酸(PZT)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AIN)等のセラミック誘電体材料(圧電材料)が質量マイクロバランシング法に適用できる。これらの材料は水晶と異なり、スパッタ法、真空蒸着法等による成膜が可能であり、小型のガス検知素子をMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術で製造できる利点がある。
質量マイクロバランシング法を利用したガス検知素子として、例えば特許文献1には、一端部又は両端部が基板に固定された梁状で、感応膜に質量を有した物質が付着又は吸着することにより振動特性が変化する振動子を有するガス検出センサーが記載され、感応膜として多孔性金属錯体、ポリブタジエン、ポリアクリロニトリル−ブタジエン、又はスチレン−ブタジエンコポリマーを用いてトルエン等のガスを検出したことが記載されている。
特開2012−220454号公報
特許文献1に記載されるように、質量マイクロバランシング法によるガス検知においては、センサー表面に感応膜(ガス吸着膜)を設け、このガス吸着膜のガス吸着の選択性ないし特異性により目的のガスを検出するものである。しかし、ガス吸着膜による選択的吸着だけで目的のガスを高い選択性で識別して検知することは容易ではない。例えば、炭化水素ガスを検出する場合、分子量が同程度で構造が異なる炭化水素ガス(例えば直鎖状炭化水素と分岐状ないし環状炭化水素)の一方のみを、ガス吸着膜の吸着特性により選択的に吸着させることは通常、困難である。
本発明は、ガス吸着膜の吸着特性に基づく選択的な検出が困難な2種以上のガス成分を含む混合ガスを接触させるだけで、この混合ガスから特定のガス成分を選択的に検知することを可能とするガス検知素子を提供することを課題とする。また本発明は、上記ガス検知素子を得るのに好適なガス検知素子の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、ガス吸着層に吸着したガスの質量により共振周波数の変化を生じる共振式センサーとガス吸着層とを積層し、このガス吸着層に接してさらに、ガス分子を分子サイズに基づき選択的に透過するフィルター層を設けたガス検知素子により、ガス吸着層の吸着特性に基づく選択的な検知が困難なガス分子を、選択的に検知することが可能になることを見出した。
本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ねて完成されるに至ったものである。
すなわち、上記の課題は下記の手段により解決された。
〔1〕
ガス吸着層に吸着したガスの質量により共振周波数の変化を生じる共振式センサーと、ガス吸着層と、ガス分子を分子サイズに基づき選択的に透過するフィルター層とをこの順に積層してなるガス検知素子であって、
上記ガス検知素子は、直鎖状化合物のガスと、分岐構造及び/又は環構造を有する化合物のガスとを含む混合ガスから、直鎖状化合物のガスを選択的に検出するために用いられ、
上記フィルター層が下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド化合物を含有する、ガス検知素子。
Figure 0006564156
式(1)中、X及びZは単結合又は2価の基を示す。R 及びR は、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、又は、置換もしくは無置換のアリール基を示す。m及びnは0〜4の整数である。
〔2
上記ポリイミド化合物のガラス転移温度が150〜300℃である、〔〕に記載のガス検知素子。

脂肪族炭化水素ガスの検出に用いる、〔1〕又は〔2〕のいずれか1つに記載のガス検知素子
〔4
ガス吸着層に吸着したガスの質量により共振周波数の変化を生じる共振式センサーと、ガス吸着層とを積層してなる積層体の該ガス吸着層上に、ガス分子を分子サイズに基づき選択的に透過する材料を溶解してなる塗布液を塗布して塗布膜を形成する工程、及び
上記塗布膜を乾燥してフィルター層とする工程
を含むガス検知素子の製造方法であって、
上記ガス検知素子は、直鎖状化合物のガスと、分岐構造及び/又は環構造を有する化合物のガスとを含む混合ガスから、直鎖状化合物のガスを選択的に検出するために用いられ、
上記材料が下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド化合物を含む、ガス検知素子の製造方法。
Figure 0006564156
式(1)中、X及びZは単結合又は2価の基を示す。R 及びR は、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、又は、置換もしくは無置換のアリール基を示す。m及びnは0〜4の整数である。

上記塗布膜を熱硬化する工程を含む、〔〕に記載のガス検知素子の製造方法。

上記熱硬化温度が350℃未満である、〔〕に記載のガス検知素子の製造方法。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明のガス検知素子は、ガス吸着膜の吸着特性に基づく選択的な検出が従来、困難だった2種以上のガス成分を含むガス試料を接触させるだけで、このガス試料から、特定のガス成分を選択的に検知することを可能とする。また本発明のガス検知素子の製造方法は、本発明のガス検知素子を得るのに適した製造方法である。
図1は、本発明のガス検知素子の積層構造を模式的に示す断面図である。
本発明の好ましい実施形態について以下に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
[ガス検知素子]
本発明のガス検知素子の積層構造を模式的に示す断面を図1に示す。図1に示すガス検知素子は、ガス吸着層に吸着したガスの質量により共振周波数の変化(減少)を生じる共振式センサー1、ガス吸着層2、及びガス分子を分子サイズに基づき選択的に透過するフィルター層3がこの順に設けられた積層構造を有する。
本発明において分子サイズとは、ガス分子の採り得る立体構造における最小幅を意味する。フィルター層を構成する分子の分子間距離を、検知対象のガス分子が採り得る立体構造における最小幅よりも大きく、かつ検知対象でないガス分子の立体構造における最小幅よりも小さく設計することにより、検知対象のガス分子を選択的に、フィルター層内を透過させることができる。結果、フィルター層内を選択的に透過したガス成分がガス吸着層に吸着し、目的のガス成分の選択的な検知が可能となる。
<共振式センサー>
本発明のガス検知素子に用いる共振式センサーとしては、水晶振動子を用いたQCMセンサーが挙げられる。QCMセンサーによるガス分子の検知は、水晶振動子の振動体表面にガス分子が付着すると、その付着量(質量)に応じて共振周波数が変化(減少)することを利用する。QCMセンサーに用いる水晶振動子としては、通常、ATカット型の水晶振動子が用いられる。ATカットとは、水晶結晶軸に対し、特定の方位にカットした水晶基板であり、室温における温度係数変化が極小となり、温度安定性に優れている。
ATカット水晶振動子の両面には電極が形成され、電極間に特定の電圧を印加することにより振動子の両面が互い違いにスライドするいわゆる厚みすべり振動モードで動作する。その共振振動数は水晶振動子の厚さに反比例する。また、このATカット水晶振動子を用いたQCMセンサーの吸着物質量と周波数変化量の関係は、いわゆるSauerbreyの式で表されることが知られている。
本発明のガス検知素子に用いるQCMセンサーは、上記のように水晶振動子とこの振動子の両面に形成された電極から構成される。QCMセンサーそれ自体は公知であり、常法により調製することができ、また市販品を用いてもよい。
また、共振式センサーとして、セラミック誘電体材料(圧電材料)を用いたセンサーを採用することもできる。セラミック誘電体材料は、スパッタ法や真空蒸着等により基板上に製膜できるため、MEMS技術を用いた素子の作製に適用できる利点がある。このようなセラミック誘電体材料として、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ニオブをドープしたチタン酸ジルコン酸鉛(PZTN)、酸化亜鉛(ZnO)、及び窒化アルミニウム(AIN)等を挙げることができる。
これらのセラミック誘電体材料で形成した膜の両面に電極を配してセンサーとし、このセンサーの電極間に特定の電圧を印加することにより、センサーを共振駆動させることができる。共振駆動しているセンサーの表面に特定のガス種が付着すると、その付着量(質量)に応じて共振周波数が変化(減少)するため、ガスを検知することができる。
本発明のガス検知素子に用いる共振式センサーは、センサーの作製工程の簡便性及び測定精度の観点から、QCMセンサーが好ましい。
共振式センサーの厚さは10〜2000μmが好ましく、50〜1000μmがより好ましい。
<ガス吸着層>
本発明のガス検知素子において、共振式センサーの表面に設けるガス吸着層は、検出対象とするガス成分に対する吸着能を有すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜に選択される。ガス吸着層の構成材料は無機材料でもよく、有機材料であってもよく、種々の有機ガスを選択検知する目的から有機材料であることが好ましい。
ガス吸着層の構成材料として用い得る有機ポリマーとしては、例えば、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ−9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、6−ナイロン、セルロースアセテート、ポリ−9,9−ジオクチレフルオレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンオキシド、ポリ塩化ビニル、ポリ−p−フェニレンエーテルスルホン、ポリ−1−ブテン、ポリブタジエン、ポリフェニルメチルシラン、ポリカプロラクトン、ポリビスフェノキシホスファゼン、ポリプロピレン、これらのポリマーの共重合体、又はこれらのポリマーないし共重合体を混合したブレンドポリマーなどが挙げられる。
また、ガス吸着層の構成材料として用い得る有機低分子化合物としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、α−NPD(N,N’−Di(1−naphthyl)−N,N’−diphenylbenzidine)、BCP(2,9−dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline)、CBP(4,4’−N,N’−dicarbazole−biphenyl)、ポルフィリン化合物、銅フタロシアニン、C60、ペンタセン、アントラセン、チオフェン、Ir(ppy)3、トリアジンチオール誘導体、フルオレン誘導体、テトラテトラコンタン、パリレンなどが挙げられる。
また、ガス吸着層の構成材料として用い得る無機材料としては、例えば、アルミナ、チタニア、五酸化バナジウム、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、アルミニウム、金、銀、スズ、インジウム・シン・オキサイド(ITO)、カーボンナノチューブ、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、ゼオライト、活性炭などが挙げられる。
さらに、ガス吸着層の構成材料として有機無機複合材料(例えば、金属有機構造体(MOF))を用いることもできる。
ガス吸着層は、常法により形成することができる。例えば、ガス吸着層を有機材料で形成する場合、各種塗布方法により形成することができる。例えば、ガス吸着層の構成材料を溶解してなる塗布液を調製し、この塗布液を第1電極上に塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥することによりガス吸着層を形成することができる。また、塗布液中に、上記有機ポリマーを導く重合性化合物、重合開始剤などを含有させ、塗布膜形成後に重合硬化させてもよい。布方法に特に制限はなく、インクジェット法、ディップコート法、スピンコート法等を採用することができる。
ガス吸着層の厚さは1nm〜500μmが好ましく、10nm〜100μmがより好ましい。
<フィルター層>
本発明のガス検知素子を構成するフィルター層は、ガス分子を分子サイズに基づき選択的に透過させる層である。すなわち、フィルター層はその構成材料の選択により任意の分子鎖間距離を有し、フィルター層の分子鎖間距離よりも立体構造の最小幅が小さなガス分子を選択的に透過させることができる。
フィルター層の構成材料は通常は有機ポリマーである。この有機ポリマーの分子鎖間距離は、ポリマーが有する官能基の種類ないし量を調節することにより制御することができる。有機ポリマー中に凝集エネルギーの高い構造を導入することにより、ポリマーの配向性を高めて分子鎖間距離を短くすることができるため、特定の分子サイズのガス成分を選択的に透過する層を形成することが可能となる。凝集エネルギーが高い構造としては、芳香族性の環構造、アミド構造(アミド基及びアミド結合)、イミド構造(イミド結合)、ウレア構造(ウレア結合)、酸無水物構造(−CO−O−CO−)、水酸基、スルホニル基等が挙げられる。
凝集エネルギーが高い構造を含むポリマーとしては、例えば、ポリイミド化合物、ポリアミド化合物、ポリアミドイミド化合物、ポリエーテルスルホン化合物、ポリビニルアルコール化合物、又はこれらの化合物以外の、芳香族性の環構造を含む重合性液晶や液晶ポリマーが挙げられる。これらのポリマーのフィルター層中の含有量は、70質量%以上が好ましく、80〜100質量%がより好ましい。
なかでも、耐熱性、分子設計の自由度(モノマー材料の選択性)、合成のしやすさ等の観点から、フィルター層の構成材料としてポリイミド化合物を用いることが好ましい。フィルター層の構成材料として好適なポリイミド化合物について以下に説明する。
なお、下記で説明するフィルター層の形成については、フィルター層の構成材料としてポリイミド化合物以外の材料を用いる場合にも適宜に参照し、適用することができる。
ポリイミド化合物は一般に、1段重合法又は2段重合法により合成される。1段重合法は、高温の有機極性溶媒中でテトラカルボン酸化合物(好ましくはテトラカルボン類酸無水物)とジアミン化合物とを重合させる方法である。また、2段重合法は、低温下でテトラカルボン化合物とジアミン化合物とを重合してポリアミド酸化合物(ポリアミック酸化合物)を合成し、このポリアミド酸化合物を用いて製膜等した後、高温に曝してポリアミド酸化合物をイミド化する方法である。
1段重合法における重合温度は、通常は100〜250℃、好ましくは150〜200℃であり、重合時間は、通常は0.5〜20時間、好ましくは1〜15時間である。重合反応後の溶液をガス吸着層表面に塗布し、溶媒を蒸発させることにより、ポリイミド化合物からなるフィルター層を得ることができる。また、必要に応じて重合反応溶液をメタノール、水などの貧溶媒に再沈した後、固形物を良溶媒に溶解させ、その溶液をガス吸着層表面に塗布し、溶媒を蒸発させることによりフィルター層を形成することもできる。
また、イミド化が不十分な場合には層形成後、ポリイミド化合物のガラス転移温度付近まで加熱することによってイミド化してもよい。
2段重合法の場合、低温下の重合によるポリアミド酸化合物の合成反応は、通常は0〜120℃、好ましくは15〜120℃、さらに好ましくは20〜110℃の温度で、通常は0.5〜100時間、好ましくは1〜70時間行う。得られたポリアミド酸化合物の溶液をガス吸着層表面に塗布し、次いで200℃〜350℃に加熱してイミド化させることにより、フィルター層を形成することができる。
重合温度、重合時間、反応液中濃度を調節しても、所望の分子量のポリイミド化合物が得られない場合、反応液に添加剤を加えても良い。添加剤としては、触媒(例えば、トリエチルアミンやピリジンが挙げられる)、共沸剤(例えば、トルエンやキシレンが挙げられる)、縮合剤、脱水剤(例として亜リン酸トリフェニルや無水酢酸が挙げられる)等が挙げられる。なかでも亜リン酸トリフェニルとピリジンを併用すると、未精製の合成原料を用いても高分子量のポリイミド化合物を得ることができる。反応液中の添加剤の濃度は、合成原料(モノマー)100モルに対して、0.5〜70モルとすることが好ましく、1〜50モルとすることがより好ましく、さらに好ましくは5〜30モルである。
本発明におけるポリイミド化合物の合成反応、あるいはフィルター層の形成する際の塗布液に用いる溶剤(有機溶媒)は、目的の溶解性を有すれば特に制限はない。そのような溶剤として、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、p−クロロフェノール、m−クレゾール等が挙げられる。溶剤は、単独または2種以上を混合して用いてもよい。
フィルター層を構成するポリイミド化合物の分子量は、重量平均分子量で5千〜50万であることが好ましく、1万〜30万であることがより好ましく、2万〜20万であることが特に好ましい。ポリイミド化合物の分子量が2万以上とした場合、良好な力学特性を維持しやすいため好ましい。一方、ポリイミド化合物の分子量が50万以下とした場合、合成上分子量をコントロールしやすく、また適度な粘度の溶液が得られやすいため好ましい。
また、ポリイミド化合物ないしポリアミド酸化合物を含む塗布液の濃度は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。ポリイミド化合物およびポリアミド酸化合物の濃度を0.5質量%以上とすることにより、塗工の効率を高めることができる。また、ポリイミド化合物およびポリアミド酸化合物の濃度の上限は、ポリイミド化合物およびポリアミド酸化合物を溶媒に十分に溶解させる観点から80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。
フィルター層を構成するポリイミド化合物のガラス転移温度(Tg)は、ガス吸着層の劣化防止の観点から350℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは320℃以下であることがより好ましく、300℃以下であることがさらに好ましい。また、このTgは、分子間距離をより狭める観点から150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることが好ましい。
2段重合法を採用する場合、イミド化の促進のために、フィルター層を構成するポリイミド化合物のガラス転移温度は製膜温度以下であることが好ましい。
本発明におけるフィルター層を構成するポリイミド化合物は、下記式(1)で表される構造単位を有することが好ましい。
Figure 0006564156
式(1)中、X及びZは単結合又は2価の基を示す。
Xが2価の基の場合、Xの分子量は14〜250が好ましく、14〜100がより好ましい。
Xが2価の基の場合、−CO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCO−、−OCONH−、−NHCONH、−OCOO−、−O−、−S−、−SO−、−CO−、−C(CF−、−CH−、−CHR−、−CR−、−CHCHO−、−CHCHRO−、−CHRCHO−、置換または無置換のアリーレン基(好ましくは1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、2,6−ナフチレン基などの炭素数6〜14の単環式または縮合多環式の芳香族基である。)、および置換または無置換のシクロアルキレン基(好ましくは1,4−シクロへキシレン基、1,3−シクロへキシレン基など炭素数6〜14の単環式または多環式の脂肪族基である。)からなる群から選ばれる2価の基であるか、これらの2価の基の2つ以上を組合せてなる2価の基であることが好ましい。
Xは、単結合、又はアルキレン基が好ましく、より好ましくは単結合である。
式(1)中、Zが2価の基の場合、Zの分子量は10〜700が好ましく、10〜400がより好ましい。
Zは、−CO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCO−、−OCONH−、−NHCONH、−OCOO−、−O−、−S−、−SO−、−CO−、−C(CF−、−CH−、−CHR−、−CR−、−CHCHO−、−CHCHRO−、−CHRCHO−、置換または無置換のアリーレン基(好ましくは1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、2,6−ナフチレン基などの炭素数6〜14の単環式または縮合多環式の芳香族基である。)、および置換または無置換のシクロアルキレン基(好ましくは1,4−シクロへキシレン基、1,3−シクロへキシレン基など炭素数6〜14の単環式または多環式の脂肪族基である。)からなる群から選ばれる2価の基であるか、これらの2価の基の2つ以上を組合せてなる2価の基であることが好ましい。
式(1)において、R、R、R及びRは、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、および置換または無置換のアリール基を表す。これらの基の例としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子およびヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子、塩素原子または臭素原子である。)、置換または無置換のアルキル基(好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、トリフルオロメチル基などの炭素数1〜8のアルキル基であり、中でもメチル基、トリフルオロメチル基、イソプロピル基が特に好ましい。)、置換または無置換のアルコキシ基(好ましくは、エトキシ基、メトキシ基などの炭素数1〜8のアルコキシ基であり、中でもフェノキシ基、メトキシ基が特に好ましい。)、置換または無置換のアリール基(好ましくは、フェニル基、ナフチル基、p−メトキシフェニル基などの炭素数6〜14の単環式または縮合多環式の芳香族基であり、中でもフェニル基が特に好ましい。)が挙げられる。R、R、R及びRは、ハロゲン原子及び置換もしくは無置換のアルキル基が好ましい。R、R、R及びRとして採り得るハロゲン原子としてはフッ素原子又は塩素原子が好ましい。また、R、R、R及びRとして採り得る置換もしくは無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
式(1)中、mおよびnは、それぞれ独立して0〜4の整数を表し、好ましくは1〜4の整数であり、より好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。
フィルター層を構成するポリイミド化合物中、式(1)の構造単位の含有量は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましい。また、フィルター層を構成するポリイミド化合物は、式(1)の構造単位からなるものであることも好ましい。
フィルター層を構成するポリイミド化合物の原料として用いるテトラカルボン酸化合物としては、例えば次の化合物の1種又は2種以上を用いることができる。なお、下記に例示するテトラカルボン酸化合物は、テトラカルボン酸二無水物の形態であることも好ましい。
(トリフルオロメチル)ピロメリット酸、ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸、ジフェニルピロメリット酸、ジメチルピロメリット酸、ビス〔3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェノキシ〕ピロメリット酸、2,3,3',4'−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3',4,4'−テトラカルボキシジフェニルエーテル、2,3',3,4'−テトラカルボキシジフェニルエーテル、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−テトラカルボキシナフタレン、1,4,5,8−テトラカルボキシナフタレン、3,3',4,4'−テトラカルボキシジフェニルメタン、3,3',4,4'−テトラカルボキシジフェニルスルホン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、5,5'−ビス(トリフルオロメチル)−3,3',4,4'−テトラカルボキシビフェニル、2,2',5,5'−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3',4,4'−テトラカルボキシビフェニル、5,5'−ビス(トリフルオロメチル)−3,3',4,4'−テトラカルボキシジフェニルエーテル、5,5'−ビス(トリフルオロメチル)−3,3',4,4'−テトラカルボキシベンゾフェノン、ビス〔(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ〕ベンゼン、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ビス(ジカルボキシフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン、3,4,9,10−テトラカルボキシペリレン、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)テトラメチルジシロキサン、ジフルオロピロメリット酸、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン。
上記例示のテトラカルボン酸化合物のなかでも、分子鎖間距離をより狭める観点から、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸が好ましい。
フィルター層を構成するポリイミド化合物の原料として用いるジアミン化合物としては、例えば次の化合物の1種又は2種以上を用いることができる。
p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフロオロプロパン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ビス−(4−[4−アミノフェノキシ]フェニル)エーテル、4,4’−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)]ジアニリン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド。
上記例示のジアミン化合物のなかでも、分子鎖間距離をより狭める観点から、ビス−(4−[4−アミノフェノキシ]フェニル)エーテル、4,4’−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)]ジアニリン、又はビス(4−アミノフェニル)スルフィドが好ましい。
検知対象とするガスの分子サイズに応じて、上記各原料を組合せて用いて、分子サイズに基づく所望の選択的透過性を実現するポリイミド化合物を調製することができる。
フィルター層の形成温度(乾燥温度、ポリマーの熱硬化温度)はガス吸着層及び共振式センサーの劣化を防ぐ観点から350℃未満とすることが好ましく、320℃以下とすることがより好ましい。すなわち、所望のガス検知性能を発現する観点から、熱硬化温度が350℃以上のポリマーを用いてフィルター層を形成することは好ましくない。
なお、上記乾燥温度と熱硬化温度は明確に区別されるものではなく、乾燥のための加熱が熱硬化のための加熱を兼ねてもよいし、熱硬化のための加熱が乾燥のための加熱を兼ねていてもよい。すなわち、本発明において「熱硬化する工程」という場合、この熱硬化する工程は、塗布膜の乾燥工程を兼ねることもできる。
フィルター層の厚さは100nm〜50μmが好ましく、500nm〜25μmがより好ましい。
本発明のガス検知素子は、ガス分子を分子サイズに基づき選択的に透過するフィルター層を有するため、例えば、直鎖状化合物のガスと、分岐構造及び/又は環構造を有する化合物のガスとを含む混合ガスから、直鎖状化合物のガスを選択的に検出する素子として好適である。
また、フィルター層との物理化学的相互作用の少ない脂肪族炭化水素ガスの検出に用いることも好ましい。本発明において「脂肪族炭化水素」という場合、炭化水素鎖のみからなる化合物の他、炭化水素鎖の構造の一部を変化させたものを含む意味である。すなわち、化合物中に占める脂肪族炭化水素鎖の割合が70質量%(好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上)である化合物は、本発明においては「脂肪族炭化水素」に含まれるものとする。
本発明を実施例に基づきより詳細に説明するが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
[実施例1] ガス検知素子の製造−1
<共振式センサーの調製>
共振式センサーとして、QCMセンサー(多摩デバイス社製、9MHz、φ5mm)を用いた。
<ガス吸着層−1の形成>
ガス吸着層は次のようにして形成した。
9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン1.00g、光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィン=オキシド25mgを、メチルエチルケトン49g中に溶解し、QCMセンサー上に1000rpmでスピンコートした。空気下で、80℃で10分間乾燥した後、窒素雰囲気下で、120mW/cm、1J/cmの照射条件で光照射した。これらの操作を計2回繰り返し、共振式センサー上にガス吸着層−1を形成した。
<フィルター層−1の形成>
− ポリアミド酸の調製 −
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(和光純薬社製)2.94g、4,4’−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)]ジアニリン4.10g(東京化成工業社製)を、N−メチルピロリドン55g中に添加し、室温で4時間撹拌し、ポリアミド酸溶液を得た。
− フィルター層−1の形成 −
上記ポリアミド酸溶液をN−メチルピロリドンで希釈してポリアミド酸を1質量%含有する溶液とした。この溶液をガス吸着層−1上にスピンコートにより塗布して塗布膜を形成した。この塗布膜を、窒素フローオーブンを用いて100℃で1時間、200℃で1時間、300℃で2時間加熱し、放冷した後、120℃で5時間の真空乾燥に付してフィルター層−1を形成した。
こうして実施例1のガス検知素子を得た。
[実施例2] ガス検知素子の製造−2
実施例1において、ガス吸着層−1の形成に代えて次のようにガス吸着層−2を形成したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2のガス検知素子を得た。
<ガス吸着層−2の形成>
[5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシフェニル)ポルフィリナト]コバルト(II)(東京化成工業(株)製)0.5g、9,9−ビス[4−(2−アクリロイロキシエトキシ)フェニル]フルオレン0.25g、ジビニルベンゼン0.25g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)30mgをトルエン49gに溶解ないし分散させ、QCMセンサー上に1000rpmでスピンコートした。窒素雰囲気下、80℃で1時間、次いで100℃で1時間乾燥させ、さらに120℃で5時間真空乾燥した。こうして共振式センサー上にガス吸着層−2を形成した。
[比較例1] 比較ガス検知素子の製造−1
実施例1において、フィルター層−1の形成に代えて次のように比較フィルター層−1を形成したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1のガス検知素子を得た。
<比較フィルター層−1の形成>
− ポリアミド酸の調製 −
ピロメリット酸無水物2.18g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル2.0gを、N−メチルピロリドン55g中に添加し、室温で4時間撹拌し、ポリアミド酸溶液を得た。
− 比較フィルター層−1の形成 −
上記ポリアミド酸溶液をN−メチルピロリドンで希釈してポリアミド酸を1質量%含有する塗布液とした。この塗布液をガス吸着層−1上にスピンコートにより塗布して塗布膜を形成した。この塗布膜を、窒素フローオーブンを用いて100℃で1時間、200℃で1時間、350℃で2時間加熱し、放冷した後、120℃で5時間の真空乾燥に付して比較フィルター層−1を形成した。
[比較例2] 比較ガス検知素子の製造−2
実施例1において、フィルター層−1の形成に代えて次のように比較フィルター層−2を形成したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2のガス検知素子を得た。
− 比較フィルター層−2の形成 −
ポリメチルメタクリレートをトルエンに溶解し、ポリメチルメタクリレートを1質量%含有する塗布液を得た。この塗布液をガス吸着層−1上にスピンコートにより塗布して塗布膜を形成した。この塗布膜を、100℃で1時間乾燥し、次いで120℃で5時間の真空乾燥に付して比較フィルター層−2を形成した。
[試験例1]
上記各ガス検知素子をフローセル(多摩デバイス社製)に入れ、窒素ガスとヘプタンガス(直鎖状脂肪族炭化水素)の混合ガス(ヘプタンガス濃度3ppm)をフローセル内に流すことにより、フローセル内を混合ガス雰囲気とした。こうしてガス検知素子によりヘプタンガスを検知した。
ヘプタンガスに代えて、同濃度のジメチルペンタンガス(分岐状脂肪族炭化水素)及びメチルシクロペンタンガス(環状脂肪族炭化水素)をそれぞれ用いたこと以外は、上記と同様にして、ガス検知素子によりジメチルペンタンガス及びメチルシクロペンタンガスをそれぞれ検知した。
上記の各ガス検知素子を用いた各ガスの検出感度を、下記評価基準に基づき評価した。下記評価基準において、共振周波数の減少ないし増加は、ガス吸着層及びフィルター層を設けていないQCMセンサーをフローセル内に入れ、窒素ガスとヘプタンガスの混合ガス(ヘプタンガス濃度3ppm)をフローセル内に流した状態におけるQCMセンサーの共振周波数を基準とし、この基準の共振周波数からの減少ないし増加である。
<評価基準>
A:共振式センサーの共振周波数が51Hz以上減少した。
B:共振式センサーの共振周波数が21Hz以上50Hz以下減少した。
C:共振式センサーの共振周波数が11Hz以上20Hz以下減少した。
D:共振式センサーの共振周波数が1Hz以上10Hz以下減少した。
E:共振周波数が増加した。
結果を下表に示す。下表には、フィルター層を構成するポリマーのガラス転移温度(TTg)も示した。上述したのと同様にしてガラス基板上にフィルター層を形成し、このフィルター層を削りとり、示差走査熱量計を用いて、JIS K7121 2012の補外ガラス転移開始温度を測定し、この測定値をTgとした。
Figure 0006564156
表1に示されるように、フィルター層をアクリル系ポリマーで形成した場合、ガスを分子サイズで選択的に透過させることができなかった(比較例2)。この比較例2の結果は、ガス吸着層の吸着性により、ヘプタン、ジメチルペンタン及びメチルシクロペンタンのいずれかを選択的に検出することが困難であることも示す。
また、フィルター層の形成において350℃の高温に曝したガス検知素子を用いた場合、共振周波数が増加した。これは、吸着層中の分解物の揮散が原因と考えられる(比較例1)。
これに対し、フィルター層を、分子配向性が高く、かつより低温で形成できるポリイミド化合物で形成した場合には、ヘプタンに対する検出感度が、ジメチルペンタンないしメチルシクロペンタンの検出感度よりも格段に向上した。つまり、分子配向性の高いフィルター層を設けることにより、分子サイズ(ガス分子の立体構造におけるガス分子の最小幅)の小さなガスを選択的に検知できることがわかる(実施例1、2)。
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
本願は、2017年3月28日に日本国で特許出願された特願2017−63605に基づく優先権を主張するものであり、これはいずれもここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
1 共振式センサー
2 ガス吸着層
3 フィルター層

Claims (6)

  1. ガス吸着層に吸着したガスの質量により共振周波数の変化を生じる共振式センサーと、ガス吸着層と、ガス分子を分子サイズに基づき選択的に透過するフィルター層とをこの順に積層してなるガス検知素子であって、
    前記ガス検知素子は、直鎖状化合物のガスと、分岐構造及び/又は環構造を有する化合物のガスとを含む混合ガスから、直鎖状化合物のガスを選択的に検出するために用いられ、
    前記フィルター層が下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド化合物を含有する、ガス検知素子。
    Figure 0006564156
    式(1)中、X及びZは単結合又は2価の基を示す。R 及びR は、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、又は、置換もしくは無置換のアリール基を示す。m及びnは0〜4の整数である。
  2. 前記ポリイミド化合物のガラス転移温度が150〜300℃である、請求項に記載のガス検知素子。
  3. 脂肪族炭化水素ガスの検出に用いる、請求項1又は2に記載のガス検知素子。
  4. ガス吸着層に吸着したガスの質量により共振周波数の変化を生じる共振式センサーと、ガス吸着層とを積層してなる積層体の該ガス吸着層上に、ガス分子を分子サイズに基づき選択的に透過する材料を溶解してなる塗布液を塗布して塗布膜を形成する工程、及び
    前記塗布膜を乾燥してフィルター層とする工程
    を含むガス検知素子の製造方法であって、
    前記ガス検知素子は、直鎖状化合物のガスと、分岐構造及び/又は環構造を有する化合物のガスとを含む混合ガスから、直鎖状化合物のガスを選択的に検出するために用いられ、
    前記材料が下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド化合物を含む、ガス検知素子の製造方法。
    Figure 0006564156
    式(1)中、X及びZは単結合又は2価の基を示す。R 及びR は、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、又は、置換もしくは無置換のアリール基を示す。m及びnは0〜4の整数である。
  5. 前記塗布膜を熱硬化する工程を含む、請求項に記載のガス検知素子の製造方法。
  6. 前記熱硬化温度が350℃未満である、請求項に記載のガス検知素子の製造方法。
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