JP6564156B2 - ガス検知素子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
目的のガス成分を特異的に検出する方法としては、ガスクロマトグラフィーが知られている。しかし、ガスクロマトグラフィー装置をガス検知の現場へと持ち込むのは現実的でなく、またリアルタイム測定ができず、測定時間も長い。それゆえ、ガスクロマトグラフィーを用いて必要なときにその場で簡易にガスを検出すること(例えばPOCT(Point of Care Teating)等への適用)は難しい。
質量マイクロバランシング法によるセンシングでは、微細な誘電体センサ(圧電センサ)に電圧をかけて誘電体センサーを一定の周波数(共振周波数)で振動させ、誘電体センサー表面へのガス吸着による質量増加を共振周波数の減少として検出するものである。この誘電体センサーの代表的なものとしてQCM(Quartz Crystal Mass micro−balancing)が知られている。
QCMは、特定の角度(AT−カット)で切り出した水晶の薄膜の両面に電極を設け、電圧をかけることにより水晶面と水平方向に共振周波数でずり振動させる。この共振周波数は電極上に吸着したガスの質量に応じて減少するため、電極上の物質の質量変化を捉えることができる。
水晶の他にも、チタン酸ジルコン酸(PZT)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AIN)等のセラミック誘電体材料(圧電材料)が質量マイクロバランシング法に適用できる。これらの材料は水晶と異なり、スパッタ法、真空蒸着法等による成膜が可能であり、小型のガス検知素子をMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術で製造できる利点がある。
質量マイクロバランシング法を利用したガス検知素子として、例えば特許文献1には、一端部又は両端部が基板に固定された梁状で、感応膜に質量を有した物質が付着又は吸着することにより振動特性が変化する振動子を有するガス検出センサーが記載され、感応膜として多孔性金属錯体、ポリブタジエン、ポリアクリロニトリル−ブタジエン、又はスチレン−ブタジエンコポリマーを用いてトルエン等のガスを検出したことが記載されている。
本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ねて完成されるに至ったものである。
〔1〕
ガス吸着層に吸着したガスの質量により共振周波数の変化を生じる共振式センサーと、ガス吸着層と、ガス分子を分子サイズに基づき選択的に透過するフィルター層とをこの順に積層してなるガス検知素子であって、
上記ガス検知素子は、直鎖状化合物のガスと、分岐構造及び/又は環構造を有する化合物のガスとを含む混合ガスから、直鎖状化合物のガスを選択的に検出するために用いられ、
上記フィルター層が下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド化合物を含有する、ガス検知素子。
〔2〕
上記ポリイミド化合物のガラス転移温度が150〜300℃である、〔1〕に記載のガス検知素子。
〔3〕
脂肪族炭化水素ガスの検出に用いる、〔1〕又は〔2〕のいずれか1つに記載のガス検知素子。
〔4〕
ガス吸着層に吸着したガスの質量により共振周波数の変化を生じる共振式センサーと、ガス吸着層とを積層してなる積層体の該ガス吸着層上に、ガス分子を分子サイズに基づき選択的に透過する材料を溶解してなる塗布液を塗布して塗布膜を形成する工程、及び
上記塗布膜を乾燥してフィルター層とする工程
を含むガス検知素子の製造方法であって、
上記ガス検知素子は、直鎖状化合物のガスと、分岐構造及び/又は環構造を有する化合物のガスとを含む混合ガスから、直鎖状化合物のガスを選択的に検出するために用いられ、
上記材料が下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド化合物を含む、ガス検知素子の製造方法。
〔5〕
上記塗布膜を熱硬化する工程を含む、〔4〕に記載のガス検知素子の製造方法。
〔6〕
上記熱硬化温度が350℃未満である、〔5〕に記載のガス検知素子の製造方法。
本発明のガス検知素子の積層構造を模式的に示す断面を図1に示す。図1に示すガス検知素子は、ガス吸着層に吸着したガスの質量により共振周波数の変化(減少)を生じる共振式センサー1、ガス吸着層2、及びガス分子を分子サイズに基づき選択的に透過するフィルター層3がこの順に設けられた積層構造を有する。
本発明において分子サイズとは、ガス分子の採り得る立体構造における最小幅を意味する。フィルター層を構成する分子の分子間距離を、検知対象のガス分子が採り得る立体構造における最小幅よりも大きく、かつ検知対象でないガス分子の立体構造における最小幅よりも小さく設計することにより、検知対象のガス分子を選択的に、フィルター層内を透過させることができる。結果、フィルター層内を選択的に透過したガス成分がガス吸着層に吸着し、目的のガス成分の選択的な検知が可能となる。
本発明のガス検知素子に用いる共振式センサーとしては、水晶振動子を用いたQCMセンサーが挙げられる。QCMセンサーによるガス分子の検知は、水晶振動子の振動体表面にガス分子が付着すると、その付着量(質量)に応じて共振周波数が変化(減少)することを利用する。QCMセンサーに用いる水晶振動子としては、通常、ATカット型の水晶振動子が用いられる。ATカットとは、水晶結晶軸に対し、特定の方位にカットした水晶基板であり、室温における温度係数変化が極小となり、温度安定性に優れている。
これらのセラミック誘電体材料で形成した膜の両面に電極を配してセンサーとし、このセンサーの電極間に特定の電圧を印加することにより、センサーを共振駆動させることができる。共振駆動しているセンサーの表面に特定のガス種が付着すると、その付着量(質量)に応じて共振周波数が変化(減少)するため、ガスを検知することができる。
本発明のガス検知素子において、共振式センサーの表面に設けるガス吸着層は、検出対象とするガス成分に対する吸着能を有すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜に選択される。ガス吸着層の構成材料は無機材料でもよく、有機材料であってもよく、種々の有機ガスを選択検知する目的から有機材料であることが好ましい。
ガス吸着層の構成材料として用い得る有機ポリマーとしては、例えば、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ−9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、6−ナイロン、セルロースアセテート、ポリ−9,9−ジオクチレフルオレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンオキシド、ポリ塩化ビニル、ポリ−p−フェニレンエーテルスルホン、ポリ−1−ブテン、ポリブタジエン、ポリフェニルメチルシラン、ポリカプロラクトン、ポリビスフェノキシホスファゼン、ポリプロピレン、これらのポリマーの共重合体、又はこれらのポリマーないし共重合体を混合したブレンドポリマーなどが挙げられる。
ガス吸着層の厚さは1nm〜500μmが好ましく、10nm〜100μmがより好ましい。
本発明のガス検知素子を構成するフィルター層は、ガス分子を分子サイズに基づき選択的に透過させる層である。すなわち、フィルター層はその構成材料の選択により任意の分子鎖間距離を有し、フィルター層の分子鎖間距離よりも立体構造の最小幅が小さなガス分子を選択的に透過させることができる。
凝集エネルギーが高い構造を含むポリマーとしては、例えば、ポリイミド化合物、ポリアミド化合物、ポリアミドイミド化合物、ポリエーテルスルホン化合物、ポリビニルアルコール化合物、又はこれらの化合物以外の、芳香族性の環構造を含む重合性液晶や液晶ポリマーが挙げられる。これらのポリマーのフィルター層中の含有量は、70質量%以上が好ましく、80〜100質量%がより好ましい。
なかでも、耐熱性、分子設計の自由度(モノマー材料の選択性)、合成のしやすさ等の観点から、フィルター層の構成材料としてポリイミド化合物を用いることが好ましい。フィルター層の構成材料として好適なポリイミド化合物について以下に説明する。
なお、下記で説明するフィルター層の形成については、フィルター層の構成材料としてポリイミド化合物以外の材料を用いる場合にも適宜に参照し、適用することができる。
また、イミド化が不十分な場合には層形成後、ポリイミド化合物のガラス転移温度付近まで加熱することによってイミド化してもよい。
2段重合法を採用する場合、イミド化の促進のために、フィルター層を構成するポリイミド化合物のガラス転移温度は製膜温度以下であることが好ましい。
Xが2価の基の場合、Xの分子量は14〜250が好ましく、14〜100がより好ましい。
Xが2価の基の場合、−CO2−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCO2−、−OCONH−、−NHCONH、−OCOO−、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−C(CF3)2−、−CH2−、−CHR7−、−CR7R8−、−CH2CH2O−、−CH2CHR7O−、−CHR7CH2O−、置換または無置換のアリーレン基(好ましくは1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、2,6−ナフチレン基などの炭素数6〜14の単環式または縮合多環式の芳香族基である。)、および置換または無置換のシクロアルキレン基(好ましくは1,4−シクロへキシレン基、1,3−シクロへキシレン基など炭素数6〜14の単環式または多環式の脂肪族基である。)からなる群から選ばれる2価の基であるか、これらの2価の基の2つ以上を組合せてなる2価の基であることが好ましい。
Xは、単結合、又はアルキレン基が好ましく、より好ましくは単結合である。
Zは、−CO2−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCO2−、−OCONH−、−NHCONH、−OCOO−、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−C(CF3)2−、−CH2−、−CHR7−、−CR7R8−、−CH2CH2O−、−CH2CHR7O−、−CHR7CH2O−、置換または無置換のアリーレン基(好ましくは1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、2,6−ナフチレン基などの炭素数6〜14の単環式または縮合多環式の芳香族基である。)、および置換または無置換のシクロアルキレン基(好ましくは1,4−シクロへキシレン基、1,3−シクロへキシレン基など炭素数6〜14の単環式または多環式の脂肪族基である。)からなる群から選ばれる2価の基であるか、これらの2価の基の2つ以上を組合せてなる2価の基であることが好ましい。
式(1)中、mおよびnは、それぞれ独立して0〜4の整数を表し、好ましくは1〜4の整数であり、より好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。
(トリフルオロメチル)ピロメリット酸、ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸、ジフェニルピロメリット酸、ジメチルピロメリット酸、ビス〔3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェノキシ〕ピロメリット酸、2,3,3',4'−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3',4,4'−テトラカルボキシジフェニルエーテル、2,3',3,4'−テトラカルボキシジフェニルエーテル、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−テトラカルボキシナフタレン、1,4,5,8−テトラカルボキシナフタレン、3,3',4,4'−テトラカルボキシジフェニルメタン、3,3',4,4'−テトラカルボキシジフェニルスルホン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、5,5'−ビス(トリフルオロメチル)−3,3',4,4'−テトラカルボキシビフェニル、2,2',5,5'−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3',4,4'−テトラカルボキシビフェニル、5,5'−ビス(トリフルオロメチル)−3,3',4,4'−テトラカルボキシジフェニルエーテル、5,5'−ビス(トリフルオロメチル)−3,3',4,4'−テトラカルボキシベンゾフェノン、ビス〔(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ〕ベンゼン、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ビス(ジカルボキシフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン、3,4,9,10−テトラカルボキシペリレン、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)テトラメチルジシロキサン、ジフルオロピロメリット酸、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン。
上記例示のテトラカルボン酸化合物のなかでも、分子鎖間距離をより狭める観点から、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸が好ましい。
p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフロオロプロパン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ビス−(4−[4−アミノフェノキシ]フェニル)エーテル、4,4’−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)]ジアニリン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド。
上記例示のジアミン化合物のなかでも、分子鎖間距離をより狭める観点から、ビス−(4−[4−アミノフェノキシ]フェニル)エーテル、4,4’−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)]ジアニリン、又はビス(4−アミノフェニル)スルフィドが好ましい。
なお、上記乾燥温度と熱硬化温度は明確に区別されるものではなく、乾燥のための加熱が熱硬化のための加熱を兼ねてもよいし、熱硬化のための加熱が乾燥のための加熱を兼ねていてもよい。すなわち、本発明において「熱硬化する工程」という場合、この熱硬化する工程は、塗布膜の乾燥工程を兼ねることもできる。
また、フィルター層との物理化学的相互作用の少ない脂肪族炭化水素ガスの検出に用いることも好ましい。本発明において「脂肪族炭化水素」という場合、炭化水素鎖のみからなる化合物の他、炭化水素鎖の構造の一部を変化させたものを含む意味である。すなわち、化合物中に占める脂肪族炭化水素鎖の割合が70質量%(好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上)である化合物は、本発明においては「脂肪族炭化水素」に含まれるものとする。
<共振式センサーの調製>
共振式センサーとして、QCMセンサー(多摩デバイス社製、9MHz、φ5mm)を用いた。
ガス吸着層は次のようにして形成した。
9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン1.00g、光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィン=オキシド25mgを、メチルエチルケトン49g中に溶解し、QCMセンサー上に1000rpmでスピンコートした。空気下で、80℃で10分間乾燥した後、窒素雰囲気下で、120mW/cm2、1J/cm2の照射条件で光照射した。これらの操作を計2回繰り返し、共振式センサー上にガス吸着層−1を形成した。
− ポリアミド酸の調製 −
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(和光純薬社製)2.94g、4,4’−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)]ジアニリン4.10g(東京化成工業社製)を、N−メチルピロリドン55g中に添加し、室温で4時間撹拌し、ポリアミド酸溶液を得た。
上記ポリアミド酸溶液をN−メチルピロリドンで希釈してポリアミド酸を1質量%含有する溶液とした。この溶液をガス吸着層−1上にスピンコートにより塗布して塗布膜を形成した。この塗布膜を、窒素フローオーブンを用いて100℃で1時間、200℃で1時間、300℃で2時間加熱し、放冷した後、120℃で5時間の真空乾燥に付してフィルター層−1を形成した。
こうして実施例1のガス検知素子を得た。
実施例1において、ガス吸着層−1の形成に代えて次のようにガス吸着層−2を形成したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2のガス検知素子を得た。
[5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシフェニル)ポルフィリナト]コバルト(II)(東京化成工業(株)製)0.5g、9,9−ビス[4−(2−アクリロイロキシエトキシ)フェニル]フルオレン0.25g、ジビニルベンゼン0.25g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)30mgをトルエン49gに溶解ないし分散させ、QCMセンサー上に1000rpmでスピンコートした。窒素雰囲気下、80℃で1時間、次いで100℃で1時間乾燥させ、さらに120℃で5時間真空乾燥した。こうして共振式センサー上にガス吸着層−2を形成した。
実施例1において、フィルター層−1の形成に代えて次のように比較フィルター層−1を形成したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1のガス検知素子を得た。
− ポリアミド酸の調製 −
ピロメリット酸無水物2.18g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル2.0gを、N−メチルピロリドン55g中に添加し、室温で4時間撹拌し、ポリアミド酸溶液を得た。
上記ポリアミド酸溶液をN−メチルピロリドンで希釈してポリアミド酸を1質量%含有する塗布液とした。この塗布液をガス吸着層−1上にスピンコートにより塗布して塗布膜を形成した。この塗布膜を、窒素フローオーブンを用いて100℃で1時間、200℃で1時間、350℃で2時間加熱し、放冷した後、120℃で5時間の真空乾燥に付して比較フィルター層−1を形成した。
実施例1において、フィルター層−1の形成に代えて次のように比較フィルター層−2を形成したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2のガス検知素子を得た。
ポリメチルメタクリレートをトルエンに溶解し、ポリメチルメタクリレートを1質量%含有する塗布液を得た。この塗布液をガス吸着層−1上にスピンコートにより塗布して塗布膜を形成した。この塗布膜を、100℃で1時間乾燥し、次いで120℃で5時間の真空乾燥に付して比較フィルター層−2を形成した。
上記各ガス検知素子をフローセル(多摩デバイス社製)に入れ、窒素ガスとヘプタンガス(直鎖状脂肪族炭化水素)の混合ガス(ヘプタンガス濃度3ppm)をフローセル内に流すことにより、フローセル内を混合ガス雰囲気とした。こうしてガス検知素子によりヘプタンガスを検知した。
ヘプタンガスに代えて、同濃度のジメチルペンタンガス(分岐状脂肪族炭化水素)及びメチルシクロペンタンガス(環状脂肪族炭化水素)をそれぞれ用いたこと以外は、上記と同様にして、ガス検知素子によりジメチルペンタンガス及びメチルシクロペンタンガスをそれぞれ検知した。
上記の各ガス検知素子を用いた各ガスの検出感度を、下記評価基準に基づき評価した。下記評価基準において、共振周波数の減少ないし増加は、ガス吸着層及びフィルター層を設けていないQCMセンサーをフローセル内に入れ、窒素ガスとヘプタンガスの混合ガス(ヘプタンガス濃度3ppm)をフローセル内に流した状態におけるQCMセンサーの共振周波数を基準とし、この基準の共振周波数からの減少ないし増加である。
A:共振式センサーの共振周波数が51Hz以上減少した。
B:共振式センサーの共振周波数が21Hz以上50Hz以下減少した。
C:共振式センサーの共振周波数が11Hz以上20Hz以下減少した。
D:共振式センサーの共振周波数が1Hz以上10Hz以下減少した。
E:共振周波数が増加した。
結果を下表に示す。下表には、フィルター層を構成するポリマーのガラス転移温度(TTg)も示した。上述したのと同様にしてガラス基板上にフィルター層を形成し、このフィルター層を削りとり、示差走査熱量計を用いて、JIS K7121 2012の補外ガラス転移開始温度を測定し、この測定値をTgとした。
また、フィルター層の形成において350℃の高温に曝したガス検知素子を用いた場合、共振周波数が増加した。これは、吸着層中の分解物の揮散が原因と考えられる(比較例1)。
これに対し、フィルター層を、分子配向性が高く、かつより低温で形成できるポリイミド化合物で形成した場合には、ヘプタンに対する検出感度が、ジメチルペンタンないしメチルシクロペンタンの検出感度よりも格段に向上した。つまり、分子配向性の高いフィルター層を設けることにより、分子サイズ(ガス分子の立体構造におけるガス分子の最小幅)の小さなガスを選択的に検知できることがわかる(実施例1、2)。
2 ガス吸着層
3 フィルター層
Claims (6)
- ガス吸着層に吸着したガスの質量により共振周波数の変化を生じる共振式センサーと、ガス吸着層と、ガス分子を分子サイズに基づき選択的に透過するフィルター層とをこの順に積層してなるガス検知素子であって、
前記ガス検知素子は、直鎖状化合物のガスと、分岐構造及び/又は環構造を有する化合物のガスとを含む混合ガスから、直鎖状化合物のガスを選択的に検出するために用いられ、
前記フィルター層が下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド化合物を含有する、ガス検知素子。
- 前記ポリイミド化合物のガラス転移温度が150〜300℃である、請求項1に記載のガス検知素子。
- 脂肪族炭化水素ガスの検出に用いる、請求項1又は2に記載のガス検知素子。
- ガス吸着層に吸着したガスの質量により共振周波数の変化を生じる共振式センサーと、ガス吸着層とを積層してなる積層体の該ガス吸着層上に、ガス分子を分子サイズに基づき選択的に透過する材料を溶解してなる塗布液を塗布して塗布膜を形成する工程、及び
前記塗布膜を乾燥してフィルター層とする工程
を含むガス検知素子の製造方法であって、
前記ガス検知素子は、直鎖状化合物のガスと、分岐構造及び/又は環構造を有する化合物のガスとを含む混合ガスから、直鎖状化合物のガスを選択的に検出するために用いられ、
前記材料が下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド化合物を含む、ガス検知素子の製造方法。
- 前記塗布膜を熱硬化する工程を含む、請求項4に記載のガス検知素子の製造方法。
- 前記熱硬化温度が350℃未満である、請求項5に記載のガス検知素子の製造方法。
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